説明

投写型映像表示装置

【課題】投写されるテストパターンの視認性を向上させることにより、映像の歪み補正作業を効率化できるようにした投写型映像表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る投写型映像表示装置は、入力された映像信号を変換して投写映像を表示するための表示映像信号を生成する映像信号処理部と、映像歪み補正用のテストパターン7を投写映像に重ねて表示するためのテストパターン信号を生成するOSD信号処理部と、出力されたテストパターン信号を出力された映像信号に合成する合成部とを備える。テストパターン7は、パターン線を表示する前景71とパターン線以外の地の部分を表示する背景72とから成るとともに、投写映像全体に重なりテストパターン7のみが表示されるように投写される。さらに、前記テストパターン7は、前景71と背景72とが異なる表示色の組み合わせから成るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型映像表示装置に関し、特に、テストパターンを投写することにより映像の歪みを視認できるようにした投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来映像データをスクリーン等の投写面に表示するために投写型映像表示装置が使用されている。このような投写型映像表示装置では、スクリーン、壁面などの投写面は投写型映像表示装置の投写レンズの光軸に対して垂直でなければならない。仮に、投写面が投写レンズの光軸に対して傾いている場合は、映像が長方形にならず歪んでしまい、台形やその他の形状になってしまう。
【0003】
そこで、このような投写型映像表示装置においては、投写型映像表示装置や投写面の設置状態等に起因する映像の歪みを補正するために、テストパターンを投写し、これにより映像の歪みを視認しながら、映像の歪み補正を行うようにした技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では格子状のパターン線が、また、特許文献2では、複数の水平ライン及ぶ垂直ラインからなるパターン線が、また、特許文献3では長方形状のパターン線がそれぞれ投写されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−176601号公報
【特許文献2】特開2009−258334号公報
【特許文献3】特開2011−66738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら投写型映像表示装置では、一般に、電源の投入により投写すべき映像(以下単に投写映像という)が表示されるため、テストパターンはユーザの指示により投写映像に重ねて表示されている。また、これら従来のテストパターンは、パターン線以外の地の部分には投写映像が見える状態となっている。このため、テストパターンのパターン線を視認することが難しいという問題があった。
【0006】
なお、特許文献3は、このような問題点に着目して、テストパターンのパターン線の表示色を変更できるようにしているが、投写映像がパターン線に混じって表示されるため、パターン線の視認性についてなお改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するものであって、投写されるテストパターンの視認性を向上させることにより、映像歪み補正作業を効率化できるようにした投写型映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明に係る投写型映像表示装置は、入力された映像信号を変換して投写映像を表示するための表示映像信号を生成する映像信号処理部と、ユーザにより映像の歪み補正処理が指示された場合に、映像の歪み補正用のテストパターンを投写映像に重ねて表示するためのテストパターン信号を生成するOSD信号処理部と、OSD信号処理部から出力されたテストパターン信号と、映像信号処理部から出力された映像信号とを合成する合成部とを備えた投写型映像表示装置において、前記テストパターンは、パターン線を表示する前景とパターン線以外の地の部分を表示する背景とから成るとともに、投写映像全体に重なって表示されることにより、テストパターンのみが表示されるように投写され、さらに、前景と背景とが異なる表示色の組み合わせとなるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ユーザにより映像の歪み補正処理が指示された場合に、投写面にはテストパターンのみが表示される。また、テストパターンは、パターン線を表示する前景とパターン線以外の地の部分を表示する背景とから成るとともに前景と背景とが異なる表示色の組み合わせとなるように構成されている。したがって、前景の表示色と背景の表示色との組み合わせをコントラストが明確となるように構成することにより、テストパターンの視認性が向上する。また、テストパターンの視認性が向上することにより、映像歪み補正作業を効率化することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の投写型映像表示装置において、前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、変更できるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ユーザは、前景と投写面との識別が容易となるように、前景の表示色と背景の表示色との組み合わせを変更することができる。また、このように変更することにより、テストパターンの視認性を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の投写型映像表示装置において、前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、前景の表示色と背景の表示色とを個別に変更できるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、投写面の色を加味しながらテストパターンの前景及び背景の表示色をそれぞれ個別に変更することができるので、ユーザが、自己の意思に従い見やすいと思う色の組み合わせに変更して最適化することができる。これにより、テストパターンの視認性を向上させることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の投写型映像表示装置において、前景及び背景の表示色は、予め設定された色の中から両者異なる色を選択できるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、前景及び背景の表示色の選択範囲が予め設定された表示色に限定されているため、ユーザによる前景及び背景の表示色の選択が簡便化される。また、このように前景及び背景の表示色の選択範囲が限定されていても、前景及び背景の表示色を代表的な表示色の中から選択するようにすれば、前景と背景のコントラストを大きくすることができ、テストパターンの視認性を向上させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の投写型映像表示装置において、前景と背景の表示色の組み合わせは、予め設定された表示色の組み合わせの中から選択できるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、予め投写面の色を想定し、想定される色の投写面に対し、テストパターンにおける前景と背景の好ましい表示色の組み合わせを設定しておくと、ユーザによる前景及び背景の表示色の選択を簡便化することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の投写型映像表示装置において、前景と背景の表示色の組み合わせは、補色関係となるように予め設定されていることを特徴とする。
このような構成によれば、前景と背景との区別がより明確となる。これにより、テストパターンの視認性を向上させることができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、色合いの他に明るさをも変更できるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、色合い(すなわち色相)の他に明るさ(すなわち明度)を変更することにより、ユーザにより選択される表示色の幅を多様化することができる。これにより、ユーザの好みを発揮させながら、テストパターンの視認性をさせることができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、前記テストパターンは、前景が格子状のパターン線に形成されていることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、周囲のみならずその内方にも垂直方向と水平方向のパターン線があるので、これらパターン線の傾きにより、又は、格子状のパターン線間に形成される長方形の形状により、垂直方向のみならず他の方向の台形歪みをも容易に視認することができる。また、このような格子状のパターンにより、台形歪のみならず、投写面の部分的な歪みなどによる部分的な映像の歪みをも視認することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る投写型映像表示装置によれば、ユーザにより映像の歪み補正処理が指示された場合に、投写面にはテストパターンのみが表示される。また、テストパターンは、パターン線を表示する前景とパターン線以外の地の部分を表示する背景とが異なる表示色の組み合わせとなるように構成されているので、テストパターンの視認性が向上し、惹いては映像歪み補正作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】同投写型映像表示装置におけるテストパターンの一例である。
【図3】同テストパターンの仕様を設定するためのメニューの一例である。
【図4】同投写型映像表示装置においてメニューを重ね表示したテストパターンの一例である。
【図5】同投写型映像表示装置におけるリモコンの平面図である。
【図6】同投写型映像表示装置における台形歪み補正作業の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態1に係る投写型映像表示装置について図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、3板式液晶投写型映像表示装置である。この3板式液晶投写型映像表示装置は、本体1の内部に光学系機器2と、映像信号を生成する信号処理系3と、リモコン4aを備えた操作部4等を備えたものであって、リモコン4aにより操作され、光学系機器2から出射される映像光をスクリーン、壁面等の投写面6に投写するようにしたものである。
【0026】
本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、光学系機器2として、光源ランプ21、液晶パネル22、投写レンズ23等を備えている。
光源ランプ21は、ランプ用電源部(図示せず)から高圧の電力供給を受けて点灯する放電型ランプが発光体として使用されている。そして、発光体からの照明光は、リフレクタによって平行光となって、発行体の軸方向に出射され、分離光学系(図示せず)により赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)及び青色光(以下「B光」という)に分離されて液晶パネル22へ供給される。
【0027】
液晶パネル22は、光変調する光変調素子として機能するものであって、具体的には図示しないが入射側偏光板、光学補償板、出射側偏光板などと組み合わされて液晶変調装置を構成する。また、液晶パネル22は、R光用、G光用及びB光用のものから成り、分離光学系(図示せず)で分離された光源ランプ21から出射されたR光、G光及びB光がそれぞれ各色光用の液晶パネル22に入射される。各液晶パネル22は、信号処理系3から入力される映像信号に応じた回転角を持ち、入射される光を光変調する。そして、液晶パネル22によって変調されたR光、G光及びB光は、ダイクロイックプリズム(図示せず)によって色合成された後に、投写レンズ23によって投写面6に拡大投写される。
【0028】
投写レンズ23は、投写光を投写面6に形成されるレンズ群と、これらレンズ群の一部を光軸方向に変化させて、投写映像のズーム状態及びフォーカス状態を調整するアクチュエータを備えている。
【0029】
次に、映像信号を生成する信号処理系3について説明する。
信号処理系3は、図1のブロック図に示すように、制御部31、記憶部32、映像信号入力部33、映像信号処理部34、テストパターン信号を生成するOSD信号処理部35、合成部36、映像歪み補正部37、液晶パネル駆動部38、光源ランプ駆動部39等を備えている。
【0030】
制御部31は、記憶部32、映像信号処理部34、OSD信号処理部35、光源ランプ駆動部39、操作部4と接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)や各種データ等の一次記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備え、記憶部32に記憶された制御プログラム等を実行して、プロジェクタの動作を総括制御する。このために、制御部31は、それ自身に接続されている各部から入力される各種データを演算するとともに、演算結果を各部に出力する。また、制御部31は、操作部4の操作に応じて手動歪み補正する際に、ユーザが操作するキーの操作量に応じて台形補正するように映像歪み補正部37を制御する。
【0031】
記憶部32は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリ等の不揮発メモリにより構成されている。記憶部32には、制御部31が実行する制御プログラムや、映像歪み補正する際に使用されるOSD映像データを記憶するとともに、投写型映像表示装置の各種設定値等を記憶している。さらに、記憶部32には、投写光軸の水平方向に対する傾斜角度に応じた台形歪みの補正に必要な情報が記憶されている。
【0032】
映像信号入力部33には、入力端子33aを介し、各種映像再生機器からの映像信号が入力される。映像信号入力部33は、アナログPC、デジタルPC、ビデオ、テレビなどの各種映像再生機器からの投写映像信号に対応し得るようにアナログI/F、デジタルI/F、ビデオI/F、などの入力インターフェースを備えている。そして、映像信号入力部33に入力された映像信号は、A/D変換、デコード等の適宜の処理が行われてデジタル信号に変換されて映像信号処理部34へ出力される。
【0033】
映像信号処理部34は、映像信号入力部33から出力された映像信号を、1フレーム毎に付属のフレームメモリ(図示せず)に書き込むとともに、フレームメモリーに記憶された映像を読み出す機能を有する。そして、映像信号処理部34は、制御部31の指示に基づき、入力された映像信号に対しスケーリング処理、ガンマ補正、輝度補正などの一般的な映像処理を行い、このように処理された映像信号を投写映像用の映像信号として生成して合成部36へ出力する。
【0034】
OSD信号処理部35は、制御部31の指示に基づいて、メニュー映像やメッセージ等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)映像を、投写映像上に重畳して表示するための処理を行う。OSD信号処理部35は、ユーザの操作部4からOSD映像表示の指示に従い、必要なOSD映像情報を記憶部32から読み出し、OSD映像信号を生成して合成部36へ出力する。この実施の形態においては、OSD映像信号として、映像の台形歪み補正を行うためのテストパターン7(図2参照)及びテストパターン7の仕様を確定するメニュー8(図3参照)を投写映像に重ねて表示するためのテストパターン信号及びメニュー信号などがこれに含まれている(図4参照)。
【0035】
合成部36は、映像信号処理部34から出力された投写用の映像信号に対し、OSD信号処理部35から出力されたOSD映像信号を合成し、合成映像信号を映像データとして生成し、これを映像歪み補正部37へ出力する。前記テストパターン7は、投写映像の大きさに合わせて表示されるように調整されているため、テストパターン7が表示されている間は主の映像である投写映像はテストパターン7の背部に隠されるように構成されている。なお、OSD映像を表示しない場合は、このような合成処理が行われず、映像信号処理部34から出力された投写用の映像信号がそのまま液晶パネル駆動部38へ出力される。
【0036】
映像歪み補正部37は、スクリーン等の投写面6に対して投写型映像表示装置から射出される投写光が傾いた状態で投写される場合に生じる台形歪みを補正するものであって、操作部4を介し制御部31に与えられたユーザからの補正指示量に応じて、合成部36から出力された合成映像信号を調整して補正映像信号を生成する。具体的には、ユーザからの補正指示量は、投写面6上に表示されているテストパターン7における四隅の各点の位置を、ユーザが操作部4を操作して変位させることにより得られるものである。したがって、映像歪み補正部37は、制御部31の制御に従ってこの補正指示量に応じ液晶パネル22に歪んだ映像を形成させて、投写映像の歪みを補正する。このように補正された映像信号は、映像歪み補正部37から液晶パネル駆動部38へ出力される。なお、台形歪み補正が行われない場合は、映像信号処理部34から出力された映像データがそのまま液晶パネル駆動部38へ出力される。
【0037】
液晶パネル駆動部38は、映像歪み補正部37から出力された映像信号、すなわち、信号処理系3から供給される映像信号を、R光用、G光用及びB光用の液晶パネル22を駆動することのできる信号形態に変換する。また、この液晶パネル駆動部38においては、R光用、G光用及びB光用の液晶パネル22を駆動するための駆動パルスが同時に生成される。
【0038】
光源ランプ駆動部39は、電源部(図示せず)から入力された直流の電圧を光源ランプ21を駆動するのに適した波形の電圧に変換するものであって、光源ランプ21の始動時あるいは定常動作時などに、それぞれに適した波形の電圧を出力するものであり、光源ランプ電源部とも言われるものである。
【0039】
次に、前述のOSD信号処理部35により生成されるテストパターン7の構成及びテストパターン7を設定するためのメニュー8の例について説明する。
テストパターン7は、図2に示すように、投写映像一杯に広がるように形成されたものであって、外周を含み縦方向及び横方向にそれぞれ9本の直線を備えた格子状のパターン線が描かれている。このテストパターン7においては、このパターン線を前景71といい、このパターン線以外の地の部分、換言するとパターン線を構成する線間部分を背景72と称する。
【0040】
そして、本実施の形態において、テストパターン7は、テストパターン7の視認性を向上させるために、投写面6の色との識別を考えながら前景71と背景72とが異なる表示色の組み合わせにすることができるように構成されている。具体的には、この実施の形態においては、前景71及び背景72は何れも代表的な色である白、黒、赤、緑、青の基本色から適切なものを選択できるように構成されている。
【0041】
例えば、投写面6が白色の壁面、或いはホワイトボードのような場合は、パターン線である前景71の表示色として視覚の感度が高い緑色を選択し、背景72の表示色を黒色又は緑色とすると、格子パターンの視認性が良好になる。また、投写面6が緑色のボードなどの場合は、パターン線である前景71の表示色として白色を選択し、背景72の表示色を黒色又は緑色とすると、格子パターンが明るく見えるため視認性が良好になる。
【0042】
そして、このようなパターンの仕様を設定するためのメニュー8は、例えば、図3のように構成する。
この図から分かるように、メニュー8は、ユーザが選択できる仕様項目を左欄に記載し、その右欄において、ユーザが選択した内容を表示するようにしたものである。この選択は、投写画面を見ながらユーザが操作部4を操作して選べるように構成されている。選択できる仕様項目は、前景71の表示色である前景色、背景72の表示色である背景色、及び、前景色の明るさ、すなわち前景色については色相以外に明度をも選択できるようにしたものである。なお、黒色については基本的に明るさを変更できないものとしている。また、メニュー画面の文字の表示色及び地の表示色は、テストパターン7の表示色と異なる表示色となるように予め設定されている。
【0043】
また、このメニュー8は、テストパターン7が表示された状態でメニュー表示が選ばれたときには、図4に示すように、テストパターン7に重畳されて投写面6に表示される。このとき、メニュー画面の文字の表示色及び地の表示色は、テストパターン7と区別して見やすくなるように予め自動的に選択される。そして、この例においては、前景71の表示色である前景色として白が選択され、背景72の表示色である背景色として黒が選択され、明るさは100パーセントが選択されている。したがって、前景色である白の明度は100パーセントであることを示している。また、メニュー画面の表示色は、例えば、薄い空色の地に対し濃紺の文字及び線が描かれている。
【0044】
次に、操作部4について説明する。
操作部4は、ユーザが機器を操作するために設けられたものであって、本体1に取り付けられている操作キーによる操作とリモコン4aによる操作とを可能としている。このために、操作部4は、リモコン4aと、リモコン4aからの操作信号を受信して制御部31へ伝送する操作信号受信部4bと、リモコン4aと同様の操作キーを備えている、本体1に形成された操作パネル4cとから形成されている。なお、このように、リモコン4aと操作パネル4cとは、基本的に同様の操作キーを備えたものであるので、以下、リモコン4aの構成についてのみ、図5に基づきさらに説明する。
【0045】
リモコン4aは、電源のオンオフを切り替えるための電源キー41を備えている。また、リモコン4aは、テストパターン7の表示に係わる操作キーとして、テストパターン7の表示を指示するTPキー42、テストパターン7の仕様を設定するためのメニューキー43、メニュー内容を選択する選択キー44、選択された内容を確定する設定キー45、設定された内容を取り消すための取消キー46を備えている。また、リモコン4aは、メニュー映像における項目の選択等に用いられる方向キー47を備えている。
【0046】
方向キー47は、上下左右に対応する上方向キー47a、下方向キー47b、左方向キー47c、右方向キー47dを備えている。また、リモコン4aは、映像歪み補正に係る操作キーとして、歪み補正の開始を指示する歪補正キー51、最外側のパターン線により描かれている左上隅の点を保持する上左キー52、同上右隅の点を保持する上右キー53、同下左隅の点を保持する下左キー54、同下右隅の点を保持する下右キー55を備えている。また、四隅の各点は、ユーザが方向キー47を操作することにより上下左右に変位され、この変位量がユーザの操作に応じた補正指示量として制御部31に送信される。そして、映像歪み補正部37において、制御部31の制御によりユーザからの補正指示量に基づく投写映像の歪補正が行われる。また、リモコン4aは、テストパターン7の四隅の各点についての変位が完了したときに、補正作業の完了を指示する完了キー56を備えている。
【0047】
次に以上のように構成された、本実施の形態に係る投写型映像表示装置の動作について、図6を参照しながら説明する。なお、以下の動作説明は、リモコン4aを用いて行う投写映像の台形歪み補正の操作手順についてのものであるが、操作パネル4cの操作キーを使って行う操作も基本的にはこれと同様であるので、これについては説明を省略する。
【0048】
本実施の形態に係る投写映像表示装置において、電源キー41が投入されると、光源ランプ21が点灯され投写映像が投写面6に投写される。この状態の下、リモコン4aの操作により図6に示すような手順に従い、テストパターン7を表示しながら映像歪み補正作業、この場合は投写映像の台形歪補正、を行うことができる。
【0049】
テストパターン7を表示しながらの台形歪作業を行うときは、先ずリモコン4aのTPキー42を押下することにより、テストパターン7が表示される(ステップS1)。
このときのテストパターン7は、投写映像と同じ大きさに表示される。また、このテストパターン7は、パターン線である前景71と、パターン線以外の地の部分である背景72とにより投写映像の全面が見えない状態となっている。また、このとき表示されるテストパターン7は、前回表示時の前景色(すなわち、前景71の表示色)、背景色(すなわち、背景72の表示色)、及び明るさ(すなわち、明度)により表示される。
【0050】
この状態において、ユーザが表示されたテストパターン7の表示色及び明度を変更してテストパターン7の視認性を高めたい思うときは、ユーザがリモコン4aのメニューキー43を押下すると、図4に示すようにテストパターン7に重なってメニュー8が表示される(ステップS2)。
【0051】
ここで、ユーザは、表示されたメニュー8に従い、前景71及び背景72の表示色や明度を変更して設定する。
前景71の表示色を選定するときは、方向キー47により前景色を選ぶ。そして選択キー44を押下すると、押下する毎に選択可能な表示色の文字が順次表示される。選択可能な表示色は、この実施の形態の場合は、白、黒、赤、緑、青である。選択したい表示色の文字が表示されたときに設定キー45を押下すると、その色に設定される。背景色についても同様に設定することができる。また、前景色の明度を設定したいときは、方向キー47により前景色明るさの欄を選択し、選択キー44を押下することにより、100%、90%、80%、70%、60%、…と順次10%ずつ変化する明度が順次表示される。そして、好みの明度のところで設定キー45を押下することにより、好みの明度を選択することができる。
【0052】
以上のような操作により、この例においては図4に図示されるように、前景色が白、背景色が黒、前景色の明度が100%と設定されている。
なお、一旦設定された色や明るさを変更したいときは、方向キー47により、変更したい欄を選択し、取消キー46を押下すると当初表示の内容に戻る。そこで、改めて選択キー44を押下することにより、再度設定作業を行うことができる。
【0053】
以上により、テストパターン7の表示色及び明度が設定されたところで、歪補正キー51が押下されると、メニュー8が消去され台形歪を補正する作業を実行することができる状態となるとともに(ステップS4)、メニュー画面が消去される(ステップS5)。
【0054】
投写映像の台形歪補正作業は、テストパターン7の外周のパターン線により形成される四隅の各点を移動させることにより行われる。
この作業を行うときは、テストパターン7の四隅の各点のうち変位させる隅の点を選択して保持する。この保持は、上左キー52、上右キー53、下左キー54、及び下右キー55の中から選択する四隅の各点に対応するものを押下することにより行われる。
【0055】
テストパターン7の保持された四隅の各点は、方向キー47により変位可能な状態となる。そして、テストパターン7の保持された四隅の各点は、方向キー47の上方向キー47a、下方向キー47b、左方向キー47c、又は右方向キー47dが押下されることにより、押下されている間その方向へ移動され、押下が中止された位置でその移動が停止される。このような操作により、テストパターン7の四隅の各点を適宜の位置へ変位させることができる。また、この操作に基づく変位量が、ユーザの操作に応じた変位量として、操作部4から制御部31に指示される。そして、映像歪み補正部37においてこの変位量に基づく補正が行われる(ステップS6)。
【0056】
このようにして、表示されたテストパターン7の四隅の各点の変位が完了したときにユーザが完了キー56を押下すると、映像歪み補正作業が完了となり(ステップS7)、テストパターン7が消去される(ステップS8)。これにより、一連の映像歪み補正作業が完了する。そして、テストパターン7の消去に伴い、投写面6には歪補正後の投写映像が表示される。
【0057】
本実施の形態に係る投写型映像表示装置は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
(1)ユーザにより映像の歪み補正処理が指示された場合に、投写面6にはテストパターン7のみが表示される。また、テストパターン7は、パターン線を表示する前景71とパターン線以外の地の部分を表示する背景72とから成るとともに前景71と背景72とが異なる表示色の組み合わせから成るように構成されている。したがって、前景71の表示色と背景72の表示色との組み合わせをコントラストが明確となるような色で構成することにより、テストパターン7の視認性が向上する。また、テストパターン7の視認性が向上することにより、映像歪み補正作業を効率化することができる。
【0058】
(2)ユーザは、前景71と背景72の表示色の組み合わせを変更することができるので、前景71と投写面6との識別が容易となるように、前景71の表示色と背景72の表示色との組み合わせを変更することができ、これによりテストパターン7の視認性を向上させることができる。
【0059】
(3)ユーザは、投写面6の色を加味しながらテストパターン7の前景71及び背景72の表示色をそれぞれ個別に選択することができるので、ユーザの意思に従いユーザが見やすいと思う色の組み合わせを広い選択範囲の中から変更することができる。これにより、テストパターン7の視認性を向上させることができる。
【0060】
(4)ユーザは、前景71及び背景72の表示色を、予め設定された表示色、すなわち、この実施の形態においては白色、黒色、赤色、緑色及び青色の中から選択できるように構成されている。このように選択できる表示色が代表的なものに限定されているため、ユーザによる表示色の選択が簡便化される。また、このように選択できる表示色が限定されていても、代表的な表示色を選択することができるように構成されているので、テストパターン7の視認性を向上させることができる。
【0061】
(5)前景71と背景72の異なる表示色の組み合わせは、ユーザの選択により、色合い(すなわち色相)の他に明度(すなわち明度)をも変更できるように構成されているので、表示色の選択範囲を拡大することができる。
【0062】
(6)テストパターン7は、前景71が格子状のパターンに形成されているので、周囲のみならずその内方にも垂直方向と水平方向のパターン線が形成されている。したがって、これらパターン線の傾きにより、又は、格子状のパターン線の内部に形成される各長方形の形状により、垂直方向のみならず他の方向の台形歪みを容易に視認することができる。また、このような格子状のパターンにより、台形歪の視認のみならず、投写面6の部分的な歪みなどによる部分的な映像の歪みをも視認することができる。
【0063】
(変形例)
本発明は、上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
・上記実施の形態においては、前景71及び背景72の表示色の選択範囲を簡便化するために、前景71及び背景72の表示色として選択できる表示色を何れも代表的な色である白、黒、赤、緑、青の基本色に限定している。しかし、この代表的な色を拡大してもよい。例えば、白、黒、灰色の3種の無彩色と、赤、黄赤、黄、黄緑、緑。青緑、青、青紫、紫、赤紫の10種の有彩色とから選べるようにしてもよい。
【0064】
・また、これら選択できる表示色を投写面6の色を想定し、想定できる色の投写面6に適合する前景71及び背景72の表示色の組み合わせを予め設定登録しておいてもよい。そして、テストパターン7の表示の際、ユーザはこの登録されている表示色の組み合わせの中から前景71及び背景72の表示色を設定できるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザは投写面6の色に適応するテストパターン7の表示色を簡単に設定することができる。
【0065】
・また、この場合の表示色の組み合わせは、前景71の表示色と背景72の表示色とが補色関係になるように設定されていることが好ましい。このようにすれば、前景71の表示色と背景72の表示色とのコントラストが大きくなりより視認性が向上する。
【0066】
・また、上記実施の形態においては、前景71及び背景72の表示色の選択範囲を簡便化するために、選択できる前景71及び背景72の表示色を代表的な色に限定しているが、選択できる色を多様化するために、投写型映像表示装置として表示可能な色全てに拡大してもよい。なお、この場合は、文字で色を表現することが難しいので、実際の色見本を表示させるようにし、この色見本を見ながら選択できるようにしてもよい。
【0067】
・また、上記実施の形態においては、前景71の表示色のみについて明度を変更できるように構成されているが、前景71及び背景72ともに個別にそれぞれの明度を変更できるように形成してもよい。なお、このようにすれば、前景71及び背景72の表示色の選択範囲をより多様化することができる。
【0068】
・また、前記実施の形態においては、テストパターン7は、長方形格子状のパターン線を備えたものに構成されているが、他の形状とすることも可能である。なお、本発明は台形歪みを判別するものであるので、水平及び垂直の線から構成されるものが好ましい。例えば、正方形格子状パターンや、台形歪補正用のパターンとしてよく用いられている一重又は複数重の長方形パターンとしてもよい。
【0069】
・本発明は種々の投写型映像表示装置に適用できる。例えば、先の実施の形態においては、3板式液晶プロジェクタを示したが、他の映像光生成系を備えた投写型映像表示装置や、DLP(Digital Light Processingの略であって、テキサス・インスツルメント(TI社)の登録商標)方式のプロジェクタなどに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
7…テストパターン、34…映像信号処理部、35…OSD信号処理部、36…合成部、71…前景、72…背景。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号を変換して投写映像を表示するための表示映像信号を生成する映像信号処理部と、
ユーザにより映像の歪み補正処理が指示された場合に、映像の歪み補正用のテストパターンを投写映像に重ねて表示するためのテストパターン信号を生成するOSD信号処理部と、
OSD信号処理部から出力されたテストパターン信号と、映像信号処理部から出力された映像信号とを合成する合成部とを備えた投写型映像表示装置において、
前記テストパターンは、パターン線を表示する前景とパターン線以外の地の部分を表示する背景とから成るとともに、投写映像全体に重なって表示されることにより、テストパターンのみが表示されるように投写され、さらに、前景と背景とが異なる表示色の組み合わせとなるように構成されている
ことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の投写型映像表示装置において、
前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、変更できるように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の投写型映像表示装置において、
前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、前景の表示色と背景の表示色とを個別に変更できるように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の投写型映像表示装置において、
前景及び背景の表示色は、予め設定された複数の色の中から両者異なる色を選択できるように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項5】
請求項2記載の投写型映像表示装置において、
前景と背景の表示色の組み合わせは、予め設定された表示色の組み合わせの中から選択できるように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の投写型映像表示装置において、
前景と背景の表示色の組み合わせは、補色関係となるように予め設定されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、
前景と背景の表示色の組み合わせは、ユーザの指示により、色合いの他に明るさをも変更できるように構成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置において、
前記テストパターンは、前景が格子状のパターン線に形成されている
ことを特徴する投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77881(P2013−77881A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215034(P2011−215034)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】