説明

投写型表示装置

【課題】輝度が急激に変化する場合にも、投写画像にちらつきが生じるのを抑制可能な投写型表示装置を提供する。
【解決手段】プロジェクタは、光源ランプ201と、光源ランプ201からの光を映像信号に基づいて変調する液晶パネル212、214、217と、液晶パネル212、214、217へ向かう光の光量を調整する絞り装置205と、映像信号に基づいて絞り装置205を所定の周期で制御するCPU407とを備える。CPU407は、各制御タイミングにおける絞り装置205の制御量に上限値を設け、映像信号に基づく絞り装置205の制御量がこの上限値を超える場合には、この上限値を当該制御タイミングにおける制御量として、絞り装置205を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を変調して被投写面に投写する投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光を光変調素子により変調してスクリーン等の被投写面に投写する投写型表示装置(以下、「プロジェクタ」という)が知られている。この種のプロジェクタでは、投写画像のコントラスト感を高めるために、絞り装置が用いられる。絞り装置によって、光変調素子に照射される光の光量が調整される。絞り装置は、光源と光変調素子の間に配置され、光源からの光が通過する開口の大きさ(以下、「開口量」という)を、映像信号に応じて変化させる。たとえば、入力された映像信号から投写画像(画面)の平均輝度(APL:Average Picture Level)が取得され、APLが小さくなるほど、絞り装置の開口量が抑制される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−158012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の投写型表示装置を用いて動画が投写される場合、投写画像の輝度が急激に変化するタイミングにおいて、かかる輝度の変化に絞り装置が適正に追従できないことが起こり得る。その結果、投写画像にフリッカーのようなちらつきが発生し、自然な映像が提供されなくなるとの問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、輝度が急激に変化する場合にも、投写画像にちらつきが生じるのを抑制可能な投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主たる態様は、画像を被投写面に投写する投写型表示装置に関する。本態様に係る投写型表示装置は、光源と、前記光源からの光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、前記光変調素子へ向かう光の光量を調整する絞り部と、前記映像信号に基づいて前記絞り部を所定の周期で制御する制御部と、を備える。前記制御部は、各制御タイミングにおける前記絞り部の制御量に上限値を設け、前記映像信号に基づく前記絞り部の制御量が前記上限値を超える場合には、前記上限値を当該制御タイミングにおける制御量として、前記絞り部を制御する。
【0007】
本態様に係る投写型表示装置によれば、映像信号に基づく絞り部の制御量が所定の上限値を超える場合に、上限値を制御量として、絞り部が制御されるため、投写画像の輝度が急激に変化しても、絞り部が上限値を超えて大きく制御されることがない。よって、輝度が急激に変化する場合にも、投写画像にちらつきが生じるのを効果的に抑制することができる。
【0008】
本態様に係る投写型表示装置は、前記映像信号に基づいて被投写面に投写される画像の輝度を検出する検出部をさらに備える構成とされ得る。この場合、前記制御部は、前記検出部により検出された前記輝度に基づいて、各制御タイミングにおける前記絞り部の制御量を算出する構成とされ得る。
【0009】
この場合、前記制御部は、前記輝度に応じて前記上限値を変化させるよう構成され得る。こうすると、ちらつきの起こり易さに応じて上限値が変化するため、上限値が画一的に設定される場合に比べ、絞り部の制御量が過度に抑制されることが回避される。このため、画質の低下を抑えながら、効率的に、ちらつきを抑制することができる。
【0010】
この場合、前記制御部は、前記輝度が最も低い場合の前記上限値を、前記輝度が最も高い場合の前記上限値よりも大きく設定するのが望ましい。こうすると、ちらつきが起こりにくい低輝度の範囲において絞り部の制御量が抑制されにくくなり、画質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、輝度が急激に変化する場合にも、投写画像にちらつきが生じるのを抑制可能な投写型表示装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る光学エンジンの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係るプロジェクタの回路系の構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る、アイリス制御テーブルの構成と、絞り装置の制御に係る処理動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態に係る絞り装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】実施の形態の変更例に係る、アイリス制御テーブルの構成と、絞り装置の制御に係る処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施の形態に係るプロジェクタについて説明する。
【0015】
図1は、プロジェクタの構成を示す図である。同図を参照して、プロジェクタは、横長の略直方体形状を有するキャビネット10を備えている。キャビネット10には、前面左側に投写窓101が形成されており、前面右側および右側面にキャビネット10内部から排気を行うための排気口102、103がそれぞれ形成されている。また、キャビネット10の上面には、操作部104が設けられている。操作部104には、複数の操作キーが配されている。
【0016】
キャビネット10の内部には、光学エンジン20および投写レンズ30が配されている。光学エンジン20は、映像信号に基づいて変調された光(以下、「映像光」という)を生成する。光学エンジン20には、投写レンズ30が装着されており、投写レンズ30の前端部が、投写窓101から前方に露出している。投写レンズ30は、光学エンジン20で生成された映像光を、プロジェクタの前方に配されたスクリーン面に拡大投写する。
【0017】
図2は、光学エンジン20の構成を示す図である。
【0018】
光源ランプ201は、白色光を発する発光体と、発光体から発せられた光を反射するリフレクターとを備えている。発光体としては、たとえば、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0019】
光源ランプ201から出射された白色光は、フライアイインテグレータ202、PBSアレイ203、コンデンサレンズ204を通過する。フライアイインテグレータ202は一対のレンズ202a、202bからなり、各レンズ202a、202bは蠅の目状に配列された多数の小レンズから構成されている。これら小レンズによって、フライアイインテグレータ202に入射された光が分割される。分割された各光は、コンデンサレンズ204により液晶パネル(後述する)に重畳される。これにより、液晶パネルに照射される光の光量分布が均一化される。また、フライアイインテグレータ202により分割された各光は、PBSアレイ203によって偏光方向が一方向に揃えられる。
【0020】
フライアイインテグレータ202のレンズ202aとレンズ202bとの間には、絞り装置205が配されている。絞り装置205は、一対の開閉扉205aと、これら開閉扉205aを、それぞれ回動可能に支持する軸部205bとを備える。軸部205bには、後述する駆動モータ205c(図3参照)が、図示しない伝達機構を介して連結されている。本実施の形態において、駆動モータ205cは、ステッピングモータである。駆動モータ205cが動作すると、図の矢印のごとく、2つの開閉扉205aが連動して開閉する。開閉扉205aの開口量に応じて光源からの光量が絞られる。一対の開閉扉205aが完全に開放されると、ほぼ全ての光が絞り装置205を通過し、一対の開閉扉205aが完全に閉鎖されると、ほぼ全ての光が絞り装置205によって遮断される。
【0021】
コンデンサレンズ204を通過した光は、ダイクロイックミラー206に入射される。ダイクロイックミラー206は、入射された光のうち、赤色波長帯の光(以下、「R光」という)と緑色波長帯(以下、「G光」という)を透過し、青色波長帯(以下、「B光」という)を反射する。
【0022】
ダイクロイックミラー206を透過したR光およびG光は、ダイクロイックミラー207に入射する。ダイクロイックミラー207は、R光を透過しG光を反射する。
【0023】
ダイクロイックミラー207を透過したR光は、リレーレンズ208および反射ミラー209、210によってコンデンサレンズ211に導かれ、コンデンサレンズ211を通過して液晶パネル212に照射される。液晶パネル212は、赤色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動状態に応じてR光を変調する。なお、液晶パネル212の入射側には、図示しない入射側偏光板が配されており、入射側偏光板を介して液晶パネル212にR光が照射される。また、液晶パネル212の出射側には図示しない出射側偏光板が配されており、液晶パネル212から出射されたR光が出射側偏光板に入射される。
【0024】
ダイクロイックミラー207で反射されたG光は、コンデンサレンズ213を通過して液晶パネル214に照射される。液晶パネル214は、緑色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動状態に応じてG光を変調する。なお、液晶パネル214の入射側には、図示しない入射側偏光板が配されており、入射側偏光板を介して液晶パネル214にG光が照射される。また、液晶パネル214の出射側には図示しない出射側偏光板が配されており、液晶パネル214から出射されたG光が出射側偏光板に入射される。
【0025】
ダイクロイックミラー206で反射されたB光は、反射ミラー215によってコンデンサレンズ216に導かれ、コンデンサレンズ216を通過して液晶パネル217に照射される。液晶パネル217は、青色用の映像信号に応じて駆動され、その駆動状態に応じてB光を変調する。なお、液晶パネル217の入射側には、図示しない入射側偏光板が配されており、入射側偏光板を介して液晶パネル217にB光が照射される。また、液晶パネル217の出射側には図示しない出射側偏光板が配されており、液晶パネル217から出射されたB光が出射側偏光板に入射される。
【0026】
液晶パネル212、214、217によって変調され、出射側偏光板から出射されたR光、G光、B光は、ダイクロイックプリズム218に入射する。ダイクロイックプリズム218は、R光、G光およびB光のうち、R光とB光を反射するとともにG光を透過し、これにより、B光、G光およびR光を色合成する。こうして、色合成された映像光が、ダイクロイックプリズム218から投写レンズ30に向けて出射される。
【0027】
なお、光学エンジン20を構成する光変調素子としては、上記透過型の液晶パネル212、214、217の他、反射型の液晶パネルや、MEMSデバイスを用いることもできる。また、光学エンジン20は、上記のように3つの光変調素子を備えた3板式の光学系ではなく、たとえば、1つの光変調素子とカラーホイールを用いた単板式の光学系により構成することもできる。
【0028】
図3は、プロジェクタの回路系の構成を示す図である。
【0029】
入力切替回路401は、複数の入力端子の中から接続する入力端子を切り替える。入力切替回路401によって接続された入力端子から映像信号が入力される。入力された映像信号がアナログ信号である場合には、A/Dコンバータ402によってデジタル信号に変換されて映像信号処理回路403に入力される。なお、映像信号がデジタル信号である場合には、A/Dコンバータ402を介することなく映像信号処理回路403に入力される。
【0030】
映像信号処理回路403は、スケーリング補正(画素数の補正)、ガンマ補正など各種の補正処理を行う。また、映像信号処理回路403は、入力された映像信号がRGB信号以外の形式、たとえば、輝度信号と色差信号の形式である場合には、補正処理された映像信号を、さらにRGBの信号に変換してパネル駆動回路404に出力する。パネル駆動回路404は、入力されたRGB信号に従って液晶パネル212、214、217を駆動する。
【0031】
映像信号処理回路403は、輝度検出回路403aを含む。
【0032】
輝度検出回路403aは、映像信号に含まれる輝度信号を用いて1フレーム分の画像の画面平均輝度(APL:average picture level)を求め、求めたAPLを検出信号としてCPU407へ出力する。なお、入力された映像信号がRGB信号の場合には、RGB信号から所定の演算によって輝度が算出され、算出された輝度からAPLが求められる。
【0033】
キー入力回路405は、操作部104のキー操作に応じた入力信号をCPU407へ出力する。
【0034】
メモリ406は、RAM、ROMを含む。メモリ406には、CPU407に制御機能を付与するための制御プログラムが記憶されている。また、メモリ406には、絞り装置205の制御に用いられるアイリス制御テーブル406aが記憶されている。
【0035】
図4(a)は、アイリス制御テーブル406aの構成を示す図である。アイリス制御テーブル406aは、APLの範囲(APL範囲:R1〜Rn)に対応付けて開閉扉205aの位置(アイリス位置:P1〜Pn)が保持されている。APL範囲R1〜Rnは、平均輝度値の最大値から最小値までの範囲を均等に区分したものである。R1が最も低輝度の範囲で、Rnが最も高輝度の範囲である。アイリス位置P1〜Pnは、それぞれ、原点位置からの駆動モータ205cの駆動量(ステップ数)である。原点位置は、たとえば、開閉扉205aが完全に閉じられた位置とされる。
【0036】
アイリス制御テーブル406aには、さらに、上限ステップ数S0が保持されている。上限ステップ数は、開閉扉205aの駆動量(ステップ数)の上限値を規定するものである。本実施の形態では、上限ステップ数は、全てのAPL範囲R1〜Rnに対して画一的に規定されている。
【0037】
図3に戻り、CPU407は、メモリ406に記憶された制御プログラムに従って、映像信号処理回路403を制御する。また、CPU407は、制御プログラムに従って、ランプ駆動回路408およびモータ駆動回路409に制御信号を出力することにより、光源ランプ201および駆動モータ205cを制御する。
【0038】
ランプ駆動回路408は、CPU407からの制御信号に従って光源ランプ201を駆動する。
【0039】
モータ駆動回路409は、CPU407からの制御信号に従って駆動モータ205cを駆動する。上記の如く、駆動モータ205cは、ステッピングモータである。この場合、モータ駆動回路409から駆動モータ205cにパルス電力が供給され、駆動モータ205cは、パルス数に応じた量だけ回転する。
【0040】
図4(b)は、絞り装置205の制御に係る処理動作を示すフローチャートである。
【0041】
プロジェクタが起動されると、CPU407は、開閉扉205aを原点位置に位置づける。その後、外部から映像信号が入力されると、開閉扉205aの開閉制御を行う。
【0042】
映像信号が入力されると、CPU407は、タイマーを起動させ、制御タイミングが到来したかを判別する(S11)。制御タイミングは、一定周期となっている。したがって、CPU407は、一定周期で、開閉扉205aに対する開閉制御を行う。制御タイミングが到来すると(S11:YES)、CPU407は、映像信号処理回路403内の輝度検出回路403aから、当該制御タイミングにおける投写画像のAPLを取得する(S12)。
【0043】
次に、CPU407は、メモリ406に保持されたアイリス制御テーブル406aを参照し、S12で取得したAPLに対応するアイリス位置(原点位置からの駆動モータ205cの駆動ステップ数:目標アイリス位置)を取得する。そして、CPU407は、取得したアイリス位置と、現在の開閉扉205aのアイリス位置(原点からの駆動モータ205cの駆動ステップ数:現在アイリス位置)との差分を算出し、当該制御タイミングにおける駆動モータ205cの駆動ステップ数Snを取得する(S13)。ここで、駆動ステップ数Snは、次式で求められる。
【0044】
Sn=(目標アイリス位置)−(現在アイリス位置) …(1)
開閉扉205aが最も閉じられた位置が原点位置である場合、駆動ステップ数Snの符号がプラスであると、開閉扉205aの駆動方向は開閉扉205aを開ける方向であり、駆動ステップ数Snの符号がマイナスであると、開閉扉205aの駆動方向は開閉扉205aを閉じる方向である。
【0045】
こうして駆動ステップ数Snを取得すると、CPU407は、取得した駆動ステップ数Snの絶対値と、アイリス制御テーブル406aに保持された上限ステップ数S0とを比較する(S14)。そして、駆動ステップ数Snの絶対値が上限ステップ数S0を超えていると(S14:YES)、CPU407は、上限ステップ数S0だけ駆動モータ205cを駆動するようモータ駆動回路409を制御する(S15)。また、駆動ステップ数S
nの絶対値が上限ステップ数S0を超えていなければ(S14:NO)、CPU407は、駆動ステップ数Snだけ駆動モータ205cを駆動するようモータ駆動回路409を制御する(S16)。
【0046】
なお、ステップS15、S16における駆動モータ205cの駆動方向は、式(1)で求めた駆動ステップ数Snの符号に基づいて決定される。すなわち、上記のように開閉扉205aが最も閉じられた位置が原点位置である場合、駆動ステップ数Snの符号がプラスであると、駆動モータ205cの駆動方向は開閉扉205aを開ける方向とされ、駆動ステップ数Snの符号がマイナスであると、駆動モータ205cの駆動方向は開閉扉205aを閉じる方向とされる。
【0047】
こうして、当該制御タイミングにおける開閉扉205aの開閉制御が終わると、CPU407は、映像信号に基づく投写動作が終了したかを判別する(S17)。そして、投写動作が終了していなければ、CPU407は、S11に戻り、次の制御タイミングの到来を待つ。
【0048】
図5は、図4(b)の処理を行った場合の絞り装置205の動作を示すタイミングチャートである。
【0049】
図5において、T0〜T5は、制御タイミングである。制御タイミングは、一定周期ΔT毎に到来する。図5の上段には、各制御タイミングにおけるAPLの値が黒丸によって示され、図5の中段には、図4(a)のアイリス制御テーブルにおいて、各制御タイミングにおけるAPLの値に対応付けられたアイリス位置(原点位置に対する駆動ステップ数:目標アイリス位置)が示されている。また、図5の下段には、図4(b)の処理を行った場合の開閉扉205aの駆動位置(原点位置に対する駆動ステップ数:実動アイリス位置)が示されている。
【0050】
各制御タイミングT0〜T5において取得されたAPLの値が図5の上段のように変化すると、これに応じて、各制御タイミングにおける目標アイリス位置は、図5の中段の実線のように変化する。この場合、開閉扉205aの駆動量(駆動ステップ数)に上限値(上限ステップ数S0)が設けられないと、開閉扉205aの位置は、図5の中段の点線のように変化する。すなわち、制御タイミングT1に到達した後、駆動ステップ数S1に相当する個数の駆動パルスが駆動モータ205cに供給される。しかしながら、この場合、APLの変化が激しいため、駆動モータ205cに供給される駆動パルスの数が多くなる。このため、次の制御タイミングT2の到来時において、駆動モータ205cの駆動が完了せず、開閉扉205aがAPLの変化に追従しなくなる。
【0051】
これに対し、図4(b)の処理のように開閉扉205aの駆動量(駆動ステップ数)に上限値(上限ステップ数S0)が設けられた場合、開閉扉205aの位置は、図5の下段の実線のように変化する。図5の下段には、便宜上、目標アイリス位置が点線で示されている。
【0052】
図4(b)の処理に従えば、制御タイミングT1において、駆動ステップ数S1が上限ステップ数S0を超えるため、上限ステップ数S0に相当する個数の駆動パルスが駆動モータ205cに供給される。これにより、開閉扉205aは、上限ステップ数S0に相当する位置まで駆動される。
【0053】
その後、制御タイミングT2においては、制御タイミングT1において駆動された開閉扉205aの位置と、制御タイミングT2における目標アイリス位置との差分が駆動ステップ数S2として算出される。このときも、駆動ステップ数S2が上限ステップ数S0を
超えるため、上限ステップ数S0に相当する個数の駆動パルスが駆動モータ205cに供給され、開閉扉205aは、上限ステップ数S0に相当する位置まで駆動される。
【0054】
制御タイミングT3においては、制御タイミングT2において駆動された開閉扉205aの位置と、制御タイミングT3における目標アイリス位置との差分が駆動ステップ数S3として算出される。このときは、駆動ステップ数S3が上限ステップ数S0を超えないため、駆動ステップ数S3に相当する個数の駆動パルスが駆動モータ205cに供給される。これにより、開閉扉205aは、制御タイミングT2における目標アイリス位置まで駆動される。
【0055】
制御タイミングT4においては、制御タイミングT3において駆動された開閉扉205aの位置と、制御タイミングT4における目標アイリス位置との差分が駆動ステップ数S4として算出される。このとき、駆動ステップ数S4が上限ステップ数S0を超えるため、上限ステップ数S0に相当する個数の駆動パルスが駆動モータ205cに供給され、上限ステップ数S0に相当する位置まで駆動される。
【0056】
以上のように、図4(b)の処理によれば、APLの変化が大きい場合、開閉扉205aは、上限ステップ数S0を上限として、徐々に開閉される。このため、APLが急激に変化するタイミングにおいて、投写画像にフリッカーのようなちらつきが発生することが抑制され、自然な映像が提供され易くなる。
【0057】
なお、発明者らが検証を行ったところ、開閉扉205aの駆動量(駆動ステップ数)に上限値(上限ステップ数S0)を設けない従来の開閉制御では、APLが急激に変化するタイミングにおいて、投写画像にフリッカーのようなちらつきが視認された。これに対し、同一機種のプロジェクタにおいて、図4(b)のように、開閉扉205aの駆動量(駆動ステップ数)に上限値(上限ステップ数S0)を設けると、APLが急激に変化するタイミングにおいて、投写画像におけるちらつきが解消された。
【0058】
なお、上限ステップ数S0は、投写画像を実際に確認しながら、投写画像のちらつきが最も抑制される値に設定される。この場合、制御タイミングの周期ΔTも変更しながら、投写画像のちらつきが最も抑制される周期ΔTと上限ステップ数S0の組み合わせを、実際に検証を行いながら探求し、最もちらつきが抑制された周期ΔTと上限ステップ数S0が採用される。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0060】
たとえば、図4(b)の処理の適用対象が動画であるか静止画であるかを特に区別しなかった。本発明は、投写画像が動画である場合に用いて特に好ましいものであるが、投写画像が静止画である場合を、本発明の適用対象から排除するものではなく、適宜、静止画の投写処理にも適用可能なものである。
【0061】
また、上記実施の形態では、全てのAPL範囲について画一的に上限ステップ数が設定されたが、図6(a)のように、APL範囲に応じて上限ステップ数を変化させても良い。図6(a)では、APL範囲R1〜R6に対して上限ステップ数S01が設定され、APL範囲Rn−4〜Rnに対して上限ステップ数S0kが設定されている。これと同様に、APL範囲R6とAPL範囲Rn−4の間においても、上限ステップ数が変更されている。
【0062】
一般に、APLが低い場合よりも、APLが高い場合の方が、投写画像にちらつきが起
こり易いと想定される。よって、図6(a)のように上限ステップ数を変化させる場合には、APLが高い場合の上限ステップ数を、APLが低い場合の上限ステップ数よりも小さくするのが望ましい。ただし、投写画像におけるちらつきの生じ方は、APLの変化に応じて一様ではない場合もある。たとえば、APLが最高値である場合よりも、APLが最高値からやや低い場合の方が、投写画像におけるちらつきが顕著になることもある。したがって、図6(a)のように上限ステップ数を変化させる場合には、投写画像のちらつきを実際に確認しながら、最適な上限ステップ数をそれぞれのAPL範囲に対応づけるのが望ましい。ただし、少なくとも、APLが最高値である場合の上限ステップ数は、APLが最低値である場合の上限ステップ数よりも、小さくするのが望ましい。
【0063】
図6(b)は、図6(a)のように上限ステップ数を変化させる場合の開閉扉205aの制御処理を示す図である。図6(b)の制御処理は、図6(a)に比べ、ステップS21〜S23が変更されている。
【0064】
図6(b)を参照して、ステップS13にて駆動ステップ数Snを算出すると、CPU407は、ステップS12で取得したAPLに対応する上限ステップ数S0mを、図6(a)のアイリス制御テーブルから取得する(S21)。そして、CPU407は、駆動ステップ数Snの絶対値と、ステップS21で取得した上限ステップ数S0mとを比較する(S22)。そして、駆動ステップ数Snの絶対値が上限ステップ数S0mを超えていると(S22:YES)、CPU407は、上限ステップ数S0mだけ駆動モータ205cを駆動するようモータ駆動回路409を制御する(S23)。また、駆動ステップ数Snの絶対値が上限ステップ数S0mを超えていなければ(S22:NO)、CPU407は、駆動ステップ数Snだけ駆動モータ205cを駆動するようモータ駆動回路409を制御する(S16)。
【0065】
図6(b)の処理によれば、ちらつきの起こり易さに応じて上限値が変化するため、上記実施の形態のように上限値が画一的に設定される場合に比べ、開閉扉205aの制御量が過度に抑制されることが回避される。このため、画質の低下を抑えながら、効率的に、ちらつきを抑制することができる。また、APLが低い場合の上限ステップ数を、APLが高い場合の上限ステップ数よりも大きく設定することにより、ちらつきが起こりにくい低輝度の範囲において、開閉扉205aの制御量が抑制されにくくなり、画質の向上を図ることができる。
【0066】
また、上記実施の形態では、輝度検出回路403aが、映像信号に含まれる輝度信号を用いて1フレーム分の画像のAPLを求め、求めたAPLを検出信号として出力するような構成とされている。すなわち、APLは、画像を構成する各画素の輝度を平均した値である。しかしながら、これに限らず、たとえば、輝度検出回路403aは、画像を構成する各画素の輝度を合算し、合算した輝度を検出信号として出力するような構成とされても良い。
【0067】
さらに、上記実施の形態では、絞り装置205が、回動する2つの開閉扉205aにより開口量が変えられるような構成とされている。しかしながら、絞り装置205は、開口量が変えられる構成であれば、どのような構成とされても良い。
【0068】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
201 光源ランプ(光源)
212、214、217 液晶パネル(光変調素子)
205 絞り装置(絞り部)
403a 輝度検出回路(検出部)
407 CPU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を被投写面に投写する投写型表示装置において、
光源と、
前記光源からの光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、
前記光変調素子へ向かう光の光量を調整する絞り部と、
前記映像信号に基づいて前記絞り部を所定の周期で制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、各制御タイミングにおける前記絞り部の制御量に上限値を設け、前記映像信号に基づく前記絞り部の制御量が前記上限値を超える場合には、前記上限値を当該制御タイミングにおける制御量として、前記絞り部を制御する、
ことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投写型表示装置において、
前記映像信号に基づいて被投写面に投写される画像の輝度を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、検出部により検出された前記輝度に基づいて、各制御タイミングにおける前記絞り部の制御量を算出する、
ことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の投写型表示装置において、
前記制御部は、前記輝度に応じて前記上限値を変化させる、
ことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の投写型表示装置において、
前記制御部は、前記輝度が最も低い場合の前記上限値を、前記輝度が最も高い場合の前記上限値よりも大きく設定する、
ことを特徴とする投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109226(P2013−109226A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255306(P2011−255306)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】