説明

投射型画像表示装置

【課題】設置精度を確保しつつ設置面上での滑りを防止することができる投射型画像表示装置を提供する。
【解決手段】設置面W上に画像を投射可能な投射型画像表示装置2において、前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置関係を決定する複数の突起部32と、前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置ズレを防止する、前記突起部とは異なる位置ズレ防止突起部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタが設置された机面上に斜め方向から画像を投射するプロジェクタが存在する(例えば、特許文献1参照)。画像を斜め方向から投射する場合、机面上に投射される画像に台形歪が生じるが、このプロジェクタによれば光学系に自由曲面レンズや自由曲面ミラーを用いて台形歪を良好に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−209670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のプロジェクタでは比較的短距離の位置に画像を投射するため、投射光の入射角が大きくなり、また投射光が広角に投射されるため、設置する際の机面とプロジェクタの下面の平行度の精度が良くない場合には、光学系により良好に補正された台形歪が悪化する恐れがある。また、画像の縦横比が著しく変化する恐れもある。そこで、机面とプロジェクタの下面の平行度を高精度で確保するためにプロジェクタの筐体の下面に複数の突起部を設けて、突起部の頂点で平行度の精度を確保することが行われている。
【0005】
この場合にプロジェクタの筐体はプラスチックや金属の部材により形成されていることから、突起部もプラスチックや金属により形成される。ここでプラスチックや金属の表面と机面との間の摩擦係数は小さいため、机面上をプロジェクタが滑りやすいという問題があった。特に、プロジェクタに設けられた操作スイッチを操作する場合や、プロジェクタに接続されたインターフェースケーブル、電源ケーブル等によりプロジェクタが引っ張られる場合にプロジェクタが滑ることが起こりやすい。その対策として、突起部にゴム脚等の滑り止め部材を取り付けることも考えられるが、滑り止め部材の寸法精度が悪いことから、机面とプロジェクタの下面の平行度を高精度で確保することができなという問題があった。また、滑り止め部材は経時変化によりへたりを生じて寸法精度が悪化するという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、設置精度を確保しつつ設置面上での滑りを防止することができる投射型画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の投射型画像表示装置は、設置面上に画像を投射可能な投射型画像表示装置において、前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置関係を決定する複数の突起部と、前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置ズレを防止する、前記突起部とは異なる位置ズレ防止突起部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設置精度を確保しつつ設置面上での滑りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る投射型画像表示装置の画像投射時の状態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る投射型画像表示装置の画像投射時の状態を示す側断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る投射型画像表示装置の位置ズレ防止突起部を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る投射型画像表示装置の位置ズレ防止突起部を示す図である。
【図5】第3の実施の形態に係る投射型画像表示装置の位置ズレ防止突起部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る投射型画像表示装置(以下、プロジェクタという。)について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るプロジェクタの画像投射時の状態を示す斜視図である。プロジェクタ2が水平面である机面W上に設置されている状態で、プロジェクタ2に内蔵されたレンズ24(図2参照)により投射された光束は、プロジェクタ2に内蔵されたミラー26(図2参照)により反射される。これにより机面W上には、投射画像12が表示される。プロジェクタ2の上面には、プロジェクタ2の各種の操作を行う操作スイッチ6が設けられている。また、プロジェクタ2の側面には、プロジェクタ2へ電源供給を行う電源ケーブル8及び画像データの転送を行うインターフェースケーブル10が接続されている。
【0011】
図2は、実施の形態に係るプロジェクタ2の内部の構成を示す側断面図である。白色LED14から射出された照明光は照明レンズ16を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)18に入射する。PBS18は内部にS偏光成分の光を反射しP偏光成分の光を透過させる薄膜が入射光に対して45°の角度を成して形成されており、照明光のうちS偏光成分の光のみが反射されて反射型液晶素子(LCOS)20に入射する。LCOS20上には画素が形成され、各画素において偏光を制御する。入射したS偏光成分の光がP偏光成分の光に変換される画素からの光はPBS18を透過し白画像となる。入射したS偏光成分の光がS偏光成分の光のまま反射される画素からの光はPBS18で反射されて黒画像となる。画素ごとに電圧を制御することにより、LCOS20上で2次元の画像が形成される。PBS18から射出された光はレンズ22及びレンズ24を透過し、ミラー26で反射されて机面W上に投射画像12が拡大投射される。ここで、投射される画像の台形補正、収差補正を良好に行うため、レンズ22は軸対称非球面レンズ、レンズ24は自由曲面レンズ、ミラー26は自由曲面ミラーとすることが望ましい。
【0012】
プロジェクタ2が机面W上で傾いて設置された場合、例えば、プロジェクタ2の筐体の底部30(図3参照)に設けられたプロジェクタ2と机面W上の位置関係を決定するための複数の突起部32が、寸法精度が悪いゴム脚等で形成された場合には、机面W上に投射画像12´が表示される。この場合投射画像12´は投射画像12に対して歪が生じ、台形歪や縦横比が悪化する。ここで、図2においては便宜上プロジェクタ2が机面Wに固定された状態を示しているが、実際には机面Wに対してプロジェクタ2が傾く。また、図2においてはプロジェクタ2の傾き量は実際よりも誇張して示している。なお、図2では位置ズレ防止突起部を省略している。
【0013】
図3は、プロジェクタ2の筐体の底部30及び位置ズレ防止突起部を示す側断面図である。図3に示すように、筐体の底部30には複数の突起部32が設けられており、プロジェクタ2は各突起部32の頂点が机面Wと接する状態で机面W上に設置される。突起部32は、プロジェクタ2の机面Wに対する姿勢、即ちプロジェクタ2の設置精度を確保するため3箇所以上設けられることが好ましく、本実施の形態においては4つの突起部32が設けられている。また筐体の底部30には、プロジェクタ2と机面Wの位置ズレ、即ち机面Wに平行な面内でのプロジェクタ2の滑りを防止するための位置ズレ防止突起部40が、所定距離離れた2箇所に設けられている。
【0014】
位置ズレ防止突起部40は、スライド脚42、圧縮ばね44、Eリング46及びゴムシート48で構成されている。スライド脚42が筐体の底部30に形成された穴を貫通し、かつスライド脚42と筐体の底部30の間に圧縮ばね44を挟んだ状態で、Eリング46がスライド脚42に形成された溝に挿入されている。これによりスライド脚42が筐体の底部30に対して上下方向(図中の矢印方向)にスライド可能に取付けられている。また、スライド脚42の机面Wと接する面にはゴムシート48が貼り付けられている。
【0015】
プロジェクタ2が机面W上に設置される場合、スライド脚42が圧縮ばね44の作用により机面W上に押し付けられる方向に付勢される。スライド脚42が机面W上に押し付けられることにより机面Wから垂直抗力を受け、ゴムシート48と机面Wとの間に摩擦力が生じプロジェクタ2の机面W上での滑りを防止する。ここで2つのスライド脚42が圧縮ばね44により机面W上に押し付けられることにより机面Wから受ける垂直抗力(2箇所の合計)は、プロジェクタ2の重量より小さい。なお、プロジェクタ2の重量はプロジェクタ2の質量と重力加速度の積で表される。従って、突起部32によりプロジェクタ2の設置精度を確保している状態で、位置ズレ防止突起部40によりプロジェクタ2の机面W上での滑りを防止することができる。
【0016】
本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタによれば、プロジェクタと机面との位置関係を決定する複数の突起部及びプロジェクタと机面との位置ズレを防止する、突起部とは異なる位置ズレ防止突起部を備えるため、机面上に設置されたプロジェクタの設置精度を確保しつつ机面上での滑りを防止することができる。
【0017】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタについて説明する。なお、第2の実施の形態に係るプロジェクタ50の構成は、図3に示す第1の実施の形態に係るプロジェクタ2の位置ズレ防止突起部40を、板ばねを用いた位置ズレ防止突起部に代えたものである。従って第1の実施の形態と同様の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0018】
図4は、第2の実施の形態に係るプロジェクタの筐体の底部及び位置ズレ防止突起部を示す側断面図である。図4に示すように、プロジェクタ50の筐体の底部30には位置ズレ防止突起部60が、所定距離離れた2箇所に設けられている。位置ズレ防止突起部60は、スライド脚62、板ばね64、Eリング66、ゴムシート68及び固定部材69で構成されている。スライド脚62が筐体の底部30に形成された穴を貫通し、かつ板ばね64に形成された穴を貫通した状態で、Eリング66がスライド脚62に形成された溝に挿入されている。また、板ばね64が筐体の底部30に固定部材69により固定されており、スライド脚62が筐体の底部30に対して上下方向(図中の矢印方向)にスライド可能に取付けられている。また、スライド脚62の机面Wと接する面にはゴムシート68が貼り付けられている。
【0019】
プロジェクタ50が机面W上に設置される場合、スライド脚62が板ばね64の作用により机面W上に押し付けられる方向に付勢される。スライド脚62が机面W上に押し付けられることにより机面Wから垂直抗力を受け、ゴムシート68と机面Wとの間に摩擦力が生じプロジェクタ50の机面W上での滑りを防止する。ここで2つのスライド脚62が板ばね64により机面W上に押し付けられることにより机面Wから受ける垂直抗力(2箇所の合計)は、プロジェクタ50の重量より小さい。従って、突起部32によりプロジェクタ50の設置精度を確保している状態で、位置ズレ防止突起部60によりプロジェクタ50の机面W上での滑りを防止することができる。
【0020】
本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタによれば、プロジェクタと机面との位置関係を決定する複数の突起部及びプロジェクタと机面との位置ズレを防止する、突起部とは異なる位置ズレ防止突起部を備えるため、机面上に設置されたプロジェクタの設置精度を確保しつつ机面上での滑りを防止することができる。
【0021】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るプロジェクタについて説明する。なお、第3の実施の形態に係るプロジェクタ70の構成は、図3に示す第1の実施の形態に係るプロジェクタ2の位置ズレ防止突起部40を位置ズレ防止突起部として機能するゴム脚に代えたものである。従って第1の実施の形態と同様の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0022】
図5は、第3の実施の形態に係るプロジェクタの筐体の底部及びゴム脚を示す側断面図である。図5(a)に示すように、プロジェクタ70の筐体の底部30にはゴム脚72が所定距離離れた2箇所に固定されている。ゴム脚72のL寸法は、プロジェクタ70が机面W上に設置された際の縮み量であり、プロジェクタ70が机面W上に設置された際に最適な摩擦力が発生するように、ゴム脚72の数(本実施形態では2個)及びゴムの弾性率から決定される。
【0023】
図5(b)に示すように、プロジェクタ70が机面W上に設置される場合、ゴム脚72が圧縮され机面W上に押し付けられることにより机面Wから垂直抗力を受け、ゴム脚72と机面Wとの間に摩擦力が生じプロジェクタ70の机面W上での滑りを防止する。ここで2つのゴム脚72が机面W上に押し付けられることにより机面Wから受ける垂直抗力(2箇所の合計)は、プロジェクタ70の重量より小さい。従って、突起部32によりプロジェクタ70の設置精度を確保している状態で、ゴム脚72によりプロジェクタ70の机面W上での滑りを防止することができる。
【0024】
本発明の第3の実施の形態に係るプロジェクタによれば、プロジェクタと机面との位置関係を決定する複数の突起部及びプロジェクタと机面との位置ズレを防止する、突起部とは異なるゴム脚を備えるため、机面上に設置されたプロジェクタの設置精度を確保しつつ机面上での滑りを防止することができる。
【0025】
また、上述の各実施の形態においては、プロジェクタ2(50,70)を机面W上に精度よく設置できるため歪曲や縦横比の悪化のない良好な投射画像を机面W上に表示しつつ、操作スイッチ6の操作によるプロジェクタ2(50,70)の机面W上での位置ズレを防止することができる。また、接続された電源ケーブル8及びインターフェースケーブル10が外部から引っ張られた場合にもプロジェクタ2(50,70)の机面W上での位置ズレを防止することができる。
【0026】
なお、上述の実施の形態においては、位置ズレ防止突起部40(60)またはゴム脚72が筐体の底部30に2箇所設けられているが、1箇所設けるようにしてもよい。この場合、位置ズレ防止突起部40(60)またはゴム脚72と机面Wとの接触面積を所定の面積以上にし、また位置ズレ防止突起部40(60)については筐体の底部30に対して回転を防止する構成にすることにより、1つの位置ズレ防止突起部40(60)または1つのゴム脚72によって机面Wに平行な面内でのプロジェクタ2(50,70)の回転方向の滑りを防止するようにしてもよい。
【0027】
また、上述の実施の形態において、2つのスライド脚42(62)または2つのゴム脚72により机面W上に押し付けられることにより机面Wから受ける垂直抗力(2箇所の合計)は、プロジェクタ2(50,70)の重量より小さくする必要があることから、プロジェクタ2(50,70)の重量の90%以下であることが望ましい。
【0028】
また、LCOS20及びPBS18の替わりにDLP(登録商標)及び全反射プリズム(TIR)を用いてもよい。また、LCOS20の替わりに透過型LCDを用いても良い。また、LED14の替わりにハロゲンランプ、蛍光ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の光源を用いてもよい。
【0029】
また、ゴムシート48、68は机面Wとの摩擦係数が大きい材質であれば良く、替わりにコルクシート、フェルト、エラストマーを用いても良い。
【0030】
また、上述の実施の形態において、LCOS20はモノクロタイプの他に、各画素にフィルターが装着されたカラータイプのものとしてもよい。また、白色LED14の代わりに、赤、緑、青の3個のLEDを順次点灯する色順次方式としてカラー画像を表示するようにしてもよい。
【0031】
また、上述の実施の形態においては、プロジェクタ2(50,70)の光学系にレンズ2枚(レンズ22及びレンズ24)とミラー1枚(ミラー26)を用いているが、より良好な台形補正、収差補正を行うために必要に応じてレンズ22及びレンズ24をそれぞれ複数のレンズ群からなる構成として用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
2,50,70…プロジェクタ、12…投射画像、32…突起部、40,60…位置ズレ防止突起部、72…ゴム脚、W…机面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に画像を投射可能な投射型画像表示装置において、
前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置関係を決定する複数の突起部と、
前記投射型画像表示装置と前記設置面との位置ズレを防止する、前記突起部とは異なる位置ズレ防止突起部と
を備えることを特徴とする投射型画像表示装置。
【請求項2】
前記位置ズレ防止突起部は、弾性部材を介して前記投射型画像表示装置の筐体を支持することを特徴とする請求項1記載の投射型画像表示装置。
【請求項3】
前記位置ズレ防止突起部は弾性を有し、前記投射型画像表示装置の筐体を支持することを特徴とする請求項1記載の投射型画像表示装置。
【請求項4】
前記位置ズレ防止突起部が前記設置面から受ける垂直抗力は、前記投射型画像表示装置の重量より小さいことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の投射型画像表示装置。
【請求項5】
前記位置ズレ防止突起部は、所定距離離れた位置に2つ設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の投射型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234119(P2012−234119A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104197(P2011−104197)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】