説明

投影ディスプレイ用の光カプラ

陰極線管(110)の面板(120)と、面板に面するレンズ素子(130)とを備える光学素子(100)が、開示される。光学素子は、レンズ素子と面板との間に配置される光結合材料(180)をさらに備える。光結合材料は、流体ホスト材料(186)の中に分散されるナノ粒子(185)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、陰極線管(CRT)投影ディスプレイに関する。本発明は、熱ドリフトの小さいCRT投影ディスプレイに特に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
CRT投影ディスプレイは、ホームエンターテイメントセンターなどの一般消費者向け用途およびビデオ会議、情報提示およびデータ表示などの商業用途に一般に用いられる。
【0003】
CRT投影ディスプレイは一般に、CRT画像形成源(ソース)および投影システムを備える。CRT画像形成源は、源の出力で小さな画像、たとえば、対角線が12〜25cmを形成する。投影システムは、源の画像を拡大して投影スクリーンに投影するために用いられる1つ以上、一般に少なくとも3つの投射レンズ素子を備える。
【0004】
さらに一般的には、CRT投影ディスプレイは3つのCRT画像源、原色(赤色、緑色および青色)ごとに1つのCRTを備える。一般に、各CRT画像源は、それ自体の専用の投影システムおよび投射レンズ素子を有する。投影システムは、3つの源画像を拡大して、投影スクリーンの上に投影して重ねることによって、投影されたカラー表示を生じる。
【0005】
CRT投影ディスプレイは、前面投影ディスプレイまたは背面投影ディスプレイであってもよい。前面投影ディスプレイでは、画像源および目視者は、表示画像平面の対向する側に位置している。対照的に、背面投影ディスプレイでは、目視者は表示画像平面の一方の側に位置しているのに対し、投影システムおよび源によって作成される画像は画像平面の他方の側に位置している。表示画像は一般に、投影スクリーン上に表示される。投影スクリーンは一般に、前面投影ディスプレイでは反射性であり、背面投影ディスプレイでは透過性である。
【0006】
CRTガラス板および源に最も近い投射レンズ素子の第1の面における光学反射は、画像輝度、コントラストおよび解像度を低下させる恐れがある。光学反射を低減するために、CRTガラス板と第1のレンズ素子との間の空間を満たし、光学的に結合するために、流体媒体が一般に用いられる。周知の流体としては、エチレングリコール、エチレングリコールとグリセロールとの混合物、エチレングリコールと水との混合物、アルキルジアリールアルカン、メチル側鎖とフェニル側鎖と親水性側鎖とを有するシロキサンポリマーを含む液体、ならびに、メチル側鎖およびフェニル側鎖を有するシロキサンポリマーとメチル側鎖および親水性側鎖を有するシロキサンポリマーとの混合物を含む液体が挙げられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、本発明は、CRT投影ディスプレイに関する。
【0008】
本発明の一実施形態において、光学素子は、陰極線管の面板と、面板に面するレンズ素子と、レンズ素子と面板との間に配置される光結合材料とを備える。光結合材料は、ホスト材料の中に分散される粒子を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態において、投影ディスプレイシステムは、面板を有するCRT画像源と、面板に面するレンズ素子とを備える。投影ディスプレイシステムは、レンズ素子と面板との間に配置される光結合材料をさらに備える。光結合材料は、ホスト材料の中に分散される粒子を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態において、陰極線管投影システムは、陰極線管の面板およびレンズ素子を備える。面板およびレンズ素子は、カプラキャビティを画定する離隔された対向位置に配置される。陰極線管投影システムは、カプラキャビティの中に分散される結合流体をさらに備える。結合流体は、ナノ粒子を含む。
【0011】
本発明は、添付図面と共に、本発明の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明を考慮すれば、さらに完全に理解され、認識されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は一般に、投影ディスプレイに関する。本発明は、特にCRT投影ディスプレイに適用可能であり、さらにCRT画像源と投射レンズ素子との間に光結合材料を有するCRT投影ディスプレイに適用可能である。
【0013】
CRT投影システムの例は、米国特許第4,838,665号明細書、米国特許第5,157,554号明細書、米国特許第5,381,189号明細書、米国特許第5,625,496号明細書、米国特許第5,440,429号明細書および米国公開特許第2002/0196556号明細書および米国公開特許第2003/0071929号明細書に見出すことができる。
【0014】
周知の光結合材料としては、屈折率が低く、流体温度に関する屈折率の変化率dn/dTが高い結合流体が挙げられる。そのようなカプラの例は、米国特許第5,117,162号明細書、米国特許第5,115,163号明細書、米国特許第4,982,289号明細書、米国特許第4,904,899号明細書、米国特許第4,780,640号明細書、米国特許第4,734,613号明細書、米国特許第4,725,755号明細書、米国特許第4,665,336号明細書、米国特許第4,405,949号明細書、米国特許第4,651,217号明細書および米国公開特許第2003/0034727号明細書および米国公開特許第2003/0098944号明細書に見出される。周知の光カプラの屈折率は一般に、光カプラの両側に位置している光学素子より低く、いずれかの光カプラが光学的に結合するように設計される。たとえば、周知の結合流体の屈折率は、約1.43である。対照的に、面板の屈折率は約1.56であり、レンズ素子の屈折率は約1.49〜1.53の範囲にある。光結合材料とCRTガラス板および/または第1の投射レンズ素子との間、すなわち流体カプラが光学的に結合するように設計される2つの媒体の屈折率不整合により、表示画像平面における輝度およびコントラストの低下を生じる残余光学反射を生じうる。
【0015】
さらに、周知の結合流体は一般に、温度に関する屈折率の変化率dn/dTを有し、その変化率は投影システムにおける他の光学素子のdn/dTより実質的に大きい。たとえば、周知の結合流体のdn/dTは一般に、約−30×10-5/℃である。対照的に、プラスチックレンズ素子のdn/dTは一般に、約−10×10-5/℃であり、ガラスCRT面板のdn/dTは一般に、+0.4×10-5/℃である。大きなdn/dTは、投影ディスプレイの全体の焦点距離および倍率の許容し難い変化を生じうる。たとえば、流体光カプラを備えるCRT投影ディスプレイのコントラストおよび解像度は、大幅にウォームアップ中に変化(構成部材の温度が室温から動作温度まで増大するときに、光カプラ、レンズ素子およびCRT面板を備える一部の光学部品の屈折率が変化する)しうる。さらに、焦点距離および倍率の変化は原色ごとに異なる可能性があり、たとえば、目視用スクリーン上に3つのCRT画像源によって形成される画像の間で、たとえば重ね合わせの誤差を生じる。
【0016】
プラスチックまたは液体からなる光学素子の屈折率の変化は一般に、たとえば、素子の熱膨張または収縮に起因する素子の密度における変化の結果である。たとえば、素子の温度が上昇するとき、素子は膨張して、密度の減少のために屈折率の減少を生じる。同様に、温度の低下は素子の収縮を生じ、密度の増大のために素子の屈折率の増大を生じうる。したがって、光学素子のdn/dTは、負になることが多い。一部のガラスまたは半導体などの一部の材料は、たとえば、米国公開特許第2002/0120048号明細書に記載されているように、分極率の変化のために正のdn/dTを有する。
【0017】
CRT投影システムにおける光学レンズの熱膨張または収縮は、レンズの光学特性を変化させることができる。たとえば、レンズの焦点距離および倍率を変化させることができる。さらに、レンズ素子の温度の変化は、レンズの形状の変化を生じうる。そのような変化は、レンズの軸上特性および軸外特性の両方に影響しうる。たとえば、そのような変化は、望ましくない収差を導入または増大しうる。
【0018】
CRT画像源の面板を投射レンズシステムに光学的に結合するための光結合材料が記載されている。光結合材料は、カプラハウジングに収容された流体ホスト材料を含む。光結合材料は、流体ホスト材料の中に分散されるナノ粒子をさらに含む。ナノ粒子の平均サイズは、30nm以下であることが好ましい。光結合材料は、屈折率がn2である。CRT画像源は、CRTの面板、たとえば面板の入力面に画像を形成することができる。面板の屈折率は、n1である。投射レンズシステムは、源画像を拡大して、目視用スクリーン、一般に投影スクリーンの上に投影するために用いられる。投射レンズシステムは、1つ以上の投射レンズ素子を備えることができる。一般に、投射レンズシステムは、少なくとも3つ、一般に4つのレンズ素子を備え、第1のレンズ素子はCRT面板に最も近い。第1のレンズ素子の屈折率は、n3である。光結合材料は、ホスト材料の中に分散される小さな粒子を含みうる。
【0019】
本発明の利点は、光カプラの光学透明度が高いことである。光カプラにおけるヘイズまたは光学散乱は、ディスプレイの解像度およびコントラストを低下させうる。本発明の光結合材料は、高い鏡面光透過を含む高い光透過率を有することができる。本発明の光結合材料は、きわめて低い光学的なヘイズを有することができる。光結合材料中の粒子は、光学散乱をほとんどまたは全く持ち込まないほど十分に小さくてもよい。たとえば、小さな粒子はナノ粒子であってもよく、その平均粒度は、たとえば500nm以下のナノメートルの範囲、10〜50nmなどの範囲にあることを意味する。したがって、光結合材料は、CRT投影ディスプレイの解像度およびコントラストにほとんどまたは全く悪影響を及ぼさない。
【0020】
本発明の別の利点は、第1のレンズ素子へのCRT面板の効率的な光結合である。たとえば、光結合材料の屈折率は、面板の屈折率を第1のレンズ素子の屈折率に効率的に整合するほどの屈折率であってもよい。本発明の一実施形態によれば、光結合材料の屈折率n2は、n1およびn3の低い方の屈折率以上でありうる。さらに、n2は、n1およびn3の高い方の屈折率以下でありうる。光結合材料の屈折率整合特性は、光学反射を低減することができ、したがって、目視用スクリーンに表示される画像の輝度、解像度およびコントラストを向上させることができる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、n2は、n1およびn3の平均であってもよい。一部の用途では、n2は、n1およびn3の積の平方根であってもよい。一部の別の用途では、n2は、n1またはn3に等しくてもよい。
【0022】
本発明の別の利点は、Tが温度である場合に、温度に関する屈折率の変化率dn/dTを小さくすることである。周知の光結合材料は一般に、有機流体である。したがって、周知の光カプラのdn/dTは、たとえば、ガラスまたはプラスチック製のCRT面板およびレンズ素子などの投影システムにおける一部の別の光学素子のdn/dTより実質的に高くてもよい。たとえば、周知の流体光結合材料のdn/dTは、CRT面板およびレンズ素子などの投影ディスプレイにおける他の光学素子の少なくとも2倍であってもよい。高いdn/dTは、温度に応じて全体の焦点距離および倍率における認識可能な変化を生じうる。この変化は、熱ドリフトと呼ばれることがある。この変化は軸上および軸外の両方において、温度に応じて表示画像の解像度およびコントラストに影響を及ぼしうる。さらに、それぞれが専用の投射レンズシステムを有する3つのCRT画像源を用いる投影ディスプレイにおいて、熱ドリフトは、投影システムごとに異なっている可能性がある。これにより、軸上および軸外の両方における2つ以上の投影画像の間に位置合わせのずれを生じる。光結合材料の流体ホスト材料に小さな粒子を添加することにより、光結合材料のdn/dTを小さくし、熱ドリフトを低減することができる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による光学素子100の概略側面図を示す。光学素子100は、CRT110、屈折率n1のCRT面板120、屈折率n2の光結合材料180および投射レンズシステム170を備える。投射レンズシステム170は、屈折率n3の第1のレンズ素子130を備える。投射レンズシステム170は、レンズ素子140および150などの別のレンズ素子をさらに備えることができる。面板120は、入力面121および出力面122を有する。同様に、第1のレンズ素子130は、入力面131および出力面132を有する。光結合材料180は、ホスト媒体186に分散される小さな粒子185を備えることができる。光結合材料180は、高い光学透過率および低いヘイズを有する。ヘイズは、一般に曇り度の尺度である。ヘイズは、本願明細書で用いられるとき、全体の透過光に比べた拡散透過された光の割合である。光結合材料180は、ヘイズが2%以下であることが好ましく、1%以下であればさらに好ましく、0.5%以下であればさらに一層好ましく、0.2%以下であればさらに一段と好ましい。光学散乱およびヘイズは、粒子185のサイズによって影響されうる。一般に、粒度が減少すると、光学散乱およびヘイズが減少する。さらに、光学散乱およびヘイズは、粒子185の屈折率とホスト材料186の屈折率との間の不整合によって影響されうる。一般に、屈折率不整合が低減すると、光学散乱およびヘイズが減少する。粒子とホスト材料との間の屈折率不整合より粒度の範囲を制御しやすいことが多い。たとえば、粒子をふるいの中に通すことによって、粒度範囲の上端を制御してもよい。対照的に、可視域などの所望の波長帯にわたって粒子とホスト材料との間の屈折率不整合を制御しにくい場合もある。これは、粒子およびホスト材料の組成の変動のために起こる場合がある。さらに、温度および/または波長に応じて粒子およびホスト材料の屈折率分散を整合することが一般に困難である。したがって、粒子186は、光学散乱およびヘイズを許容可能なレベルまで低減するほど十分に小さいことが好ましい。特に、小さな粒子185は、ナノ粒子であることが好ましく、これは平均粒度がナノメートル範囲にあることを意味する。さらに一層詳細には、粒子185の平均サイズは、500nm以下であることが好ましい。粒子185の平均サイズは、10〜100nmの範囲にあることがさらに好ましい。粒子185の平均サイズは、10〜50nmの範囲にあればさらに一層好ましく、10〜30nmの範囲にあればさらに一段と好ましい。所与の用途では、粒子185とホスト材料186との間の屈折率不整合が光学散乱およびヘイズを低くするほど十分に小さい場合には、より大きな粒子を用いてもよいことは十分に認識されよう。たとえば、粒子が球または略球である場合、または一般に、直径を粒子に割り当てても差し支えない場合には、粒度は粒子の直径であってもよい。粒度は、異なる方向に沿った粒子寸法の平均であってもよい。たとえば、粒子が棒状である場合には、粒度は、その長軸および短軸に沿った粒子寸法の平均であってもよい。一部の用途では、粒度は、最大の粒子寸法であってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、粒子185はホスト媒体186にコロイド状に分散されるため、粒子185の少なくとも大部分は光学素子100の少なくとも予想耐用期間の間、ホスト媒体186の中に依然として分散された状態である。光学素子の予想耐用期間は、用途に左右される可能性がある。たとえば、消費者向け背面投射テレビの予想耐用期間は、約20,000時間であってもよい。そのような用途では、粒子185の大部分は、少なくとも20,000時間の間、ホスト媒体186の中に依然として分散された状態に維持され得る。
【0025】
さらに、本発明の一実施形態によれば、粒子185は、光学素子100の予想耐用期間の間、凝結しないか、または光学素子100の予想耐用期間中生じうる任意の凝結が著しい光の散乱またはヘイズを生じることはない。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、粒子185は、正のdn/dTを有する。そのような粒子系の例は、米国特許第6,441,077号明細書に記載される酸化マグネシウムである。本発明の一部の実施形態において、粒子185は、負のdn/dTを有する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、粒子185の表面は、分散を容易にして維持するように処理されてもよい。表面処理は、ホスト媒体186と互換性があることが好ましく、これは、処理される粒子186が依然としてホスト材料の中で溶解した状態であるか、またはホスト材料の中に分散可能であることを意味する。適切な表面処理により、粒子の析出および/または凝結を低減または排除することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、n2は、光結合材料180における粒子185の重量分率または体積分率の略一次関数である。たとえば、ホスト材料186の屈折率nbと粒子185の屈折率naとの間のn2の関係は、以下の関係式によって推定することができることが多い。
2=nb(1−VF)+na(VF) (1)
式中、VFは、光結合材料180における粒子185の体積分率である。体積分率VFは一般に、総体積に対する粒子185の体積の比として定義され、総体積はその中に分散される粒子185を有するホスト材料186の体積である。体積分率VFは、たとえば、流体ホスト材料186の体積V1を最初に測定することによって決定されることができる。次に、粒子185は流体に添加され、混合物の体積V2が測定される。したがって、添加された粒子185の体積は、V2−V1である。粒子185の体積分率VFは、比(V2−V1)/V2を計算することによって決定される。類似の手法を用いて、体積ではなく重量を用いることによって、粒子185の重量分率を決定してもよい。関係式(1)に戻って参照すると、屈折率の変化率は、以下の関係式によって推定することが多い。
dn2/dT=dnb/dT(1−VF)+dna/dT(VF) (2)
式中、Tは温度である。したがって、光結合材料のdn/dTは、ホスト材料186における粒子185の体積分率の一次関数であってもよい。関係式(2)によれば、粒子の体積分率が増大すると、dn2/dTはdna/dTに近づく。粒子185は、光学素子100における他の光学部品の一部、面板120または第1のレンズ素子130などと同一の範囲にあるdn/dTを備えていてもよい。たとえば、面板120はガラス製であり、粒子185はシリカなどの無機物であってもよい。ガラスおよびシリカは匹敵するdn/dT値を有するため、粒子185の体積分率を増大することによって、光結合材料180のdn/dTは、面板のdn/dTに近づくことができる。したがって、光結合材料のdn/dTは、面板のdn/dTと同一の範囲にあってもよい。
【0029】
本発明の具体的な利点は、低減したdn2/dTである。本発明の一実施形態によれば、dn2/dTは、dnb/dTより少なくとも15%小さいことが好ましく、dnb/dTより少なくとも20%小さければさらに好ましく、dnb/dTより少なくとも30%小さければさらに一層好ましく、dnb/dTより少なくとも40%小さければさらに一層好ましく、dnb/dTより少なくとも50%小さければさらに一段と好ましい。dn/dTの減少は、20℃〜60℃の温度範囲であれば好ましく、20℃〜70℃であればさらに好ましく、10℃〜80℃であればさらに一層好ましい。一般に、体積分率VFの上限はホスト材料186の中に依然として分散された状態にとどまる粒子185の性能によって制御されてもよいのに対し、体積分率の下限はdn2/dTに関する所望の値の値によって確立されてもよい。本発明の一実施形態によれば、体積分率VFは、10%〜80%の範囲にあれば好ましく、10%〜60%であればさらに好ましく、10%〜40%であればさらに一層好ましい。上記で与えられた値は粒子185の体積分率に関連しているが、粒子185の重量分率に関する同様の値または類似の好ましい値が適していてもよい。
【0030】
光結合材料180は、流体であることが好ましい。流体という語によって、液体、ゲルおよびゾル・ゲルをはじめとする流れることができる任意の材料を指すが、これらに限定されるわけではない。一部の用途では、固体の光結合材料を用いてもよい。小さな粒子に組み込まれる固体材料については、既に述べた。たとえば、米国特許第6,586,096号明細書は、その中に分散されるサイズが10nmの酸化マグネシウム粒子を有するポリメチルメタクリレート材料について記載している。他の例は、米国特許第6,552,111号明細書、米国特許第6,441,077号明細書、米国特許第4,710,820号明細書、米国特許第6,498,208号明細書および米国公開特許第2002/0123549号明細書および米国公開特許第2002/0123550号明細書に見出すと思われる。流体の光結合材料の利点は、熱伝達が高いことである。CRT110が作動しているとき、面板120の温度は70℃以上に達しうる。光結合材料が、面板120で生成された熱を面板から周囲の領域まで伝達することが望ましい。固体の光結合材料の場合には、面板120から光結合材料180までの熱の伝達は、主に伝導によって行われる。対照的に、流体型光結合材料では、面板120から光結合材料180までの熱の伝達は、主に対流によって行われる。そのような場合には、対流は、自然対流であってもよく、強制対流であってもよい。強制対流では、流体の流れは、少なくとも部分的には循環ポンプなどの外部力によって誘発される。自然対流では、流体の流れは、主に流体自体の特性により、たとえば、面板から最も遠くにある冷たい方の流体は、面板により近い暖かい方の流体を置き換えるか、またはその逆である。熱伝導率は、熱を伝導する材料の性能の尺度である。一般に、液体は、固体ポリマーより熱伝導率が高い。たとえば、ポリスチレンの熱伝導率は、約0.12ワット/mKである。Kはケルビン温度である。対照的に、エチレングリコールの熱伝導率は、約0.26ワット/mKであり、水の熱伝導率は、約0.6ワット/mKである。したがって、一般に、流体は、面板120で生成される熱を周囲の領域に伝達するのにより効率的である。
【0031】
流体の光結合材料180は、流体のホスト材料186を含みうる。光結合材料180およびホスト材料186に関する具体的な流体材料は、エチレングリコール、アルキルジアリールアルカン、エチレングリコールとグリセロールとの混合物、エチレングリコールと水との混合物、メチル側鎖とフェニル側鎖と親水性側鎖とを有するシロキサンポリマーを含む液体、ならびに、メチル側鎖およびフェニル側鎖を有するシロキサンポリマーとメチル側鎖および親水性側鎖を有するシロキサンポリマーとの混合物を含む液体が挙げられる。一般に、流体材料は、所望の用途で用いることができる任意の適切な流体であってもよい。
【0032】
流体ホスト材料186は、沸点が高く、凝固点が低いことが好ましい。ホスト材料186の沸点は、少なくとも120℃であることが好ましく、少なくとも160℃であればさらに好ましく、少なくとも200℃であればさらに一層好ましい。ホスト材料186の凝固点は、−20℃以下であれば好ましく、−40℃以下であればさらに好ましく、−60℃であればさらに一層好ましい。
【0033】
粒子185はナノ粒子であることが好ましいが、一部の用途ではn2とnbとの間の差に応じて、マイクロ粒子などのより大きな粒子を用いてもよい。一般に、すべてのCRT動作温度および波長に関して、n2とnbとの間の差を十分に小さく、許容可能なレベルまで小さくすることは困難である。したがって、本発明の一実施形態によれば、粒子185の平均サイズは、500nm以下であれば好ましく100nm以下であればさらに好ましく、50nm以下であればさらに一層好ましく30nm以下であればさらに一段と好ましい。平均サイズは、平均(mean)サイズまたは中心サイズであってもよく、または粒子のサイズを特徴付けるために一般に用いられてもよい任意の他の平均であってもよい。
【0034】
面板120は、任意のタイプの光学的に透明なガラスから構成されることが好ましい。具体的なガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、ケイ酸ガラス、酸化物ガラスおよびシリカガラスまたは面板として用いるのに適していると考えられる任意の他のガラス材料が挙げられる。図1の面板120は、矩形断面を有するように示されている。一般に、面板120は、任意の形状の断面を有してもよい。一般に、面板の入力面121および出力面122は、同一の形状である必要はない。たとえば、入力面121は湾曲していてもよく、出力面122は直線または平坦であってもよい。別の例として、出力面122が湾曲していてもよい。さらに、面板120は、光学パワーを有することができ、それによって部分的にレンズとして作用することができる。光結合材料180は、面板120と接触することができる。特に、光結合材料180は、面板120の出力面122と接触することができる。一部の用途または設計では、面板120と光結合材料180との間に他の構成部材を配置してもよい。
【0035】
光学素子100は、光結合材料180を収容するためのカプラハウジング160をさらに備えてもよい。カプラハウジング160は、光結合材料が流体を含む場合に必要であると考えられる。そのような場合には、ハウジングは、光結合材料に封止するために、1つ以上の封止機構(図1には図示せず)を備えていてもよい。カプラハウジング160は主に、光結合材料180を収容するように設計されてもよい。光カプラハウジング160は、第1のレンズ素子130および面板120などの別の素子を収容するようにさらに設計されてもよい。一般に、光学素子100は、種々の素子および構成部材を収容するための1つ以上のハウジングを備えていてもよい。カプラハウジング160は、金属またはプラスチック製であってもよい。具体的な金属材料としては、アルミニウム、銅、マグネシウムおよび亜鉛が挙げられる。一般に、カプラハウジング160は、光結合材料180を収容するのに適した任意の材料から構成されてもよい。
【0036】
さらに、光学素子100は、流体の光結合材料180を循環するためのポンプなどの機構(図1には図示せず)を備えていてもよい。循環する光結合材料は、面板120からの熱の伝達を向上させることができる。さらに、光学素子100は、たとえば、流体の循環に役立つか、または流体の漏洩の場合に光路に泡の生成を防止するために、余分な光結合材料191を収容するための任意の貯槽190を備えていてもよい。貯槽190は、流体の膨張を可能にするために、満タンでなくてもよい。そのような膨張室の例は、米国特許第4,740,727号明細書に記載されている。
【0037】
簡単にするためおよび一般性を失うことなく、図1の第1のレンズ素子130は、湾曲した断面を有するように示されている。第1のレンズ素子130は、光学パワーを有してもよい。第1のレンズ素子130は、軸上および軸外の両方に関して目視用スクリーンにわたる画質を補正または改善するためのフィールド補正特性を有してもよい。
【0038】
第1のレンズ素子130は、プラスチックまたはガラス製であってもよい。一般に、可能かつ適切であれば、ガラスではなく、プラスチックからCRT投影システムにおけるレンズ素子を製作することが望ましい。プラスチックレンズは、費用有効性がより高い。さらに、プラスチックレンズは、たとえば非球面形状を有するように成形してもよい。一般に、非球面レンズの使用により、目視用スクリーンに許容可能な投影画像を生成するために、投影システムに必要なレンズの総数を減らすことができる。したがって、可能であれば、CRT投影システムにおけるレンズなどの光学素子は、プラスチックから構成される。また、光学素子、特に光学パワーを有する素子の場合には、dn/dTが小さいことが望ましい。したがって、CRT投影システムにおける拡大レンズは一般に、約10-5〜5×10-6/℃以下の範囲にあるdn/dTの低いガラス製である。
【0039】
第1のレンズ素子130に用いられる通常のプラスチック材料としては、アクリルが挙げられる。第2のレンズ素子140および第3のレンズ素子150は、ガラス製であってもよく、またはプラスチック製であってもよい。光結合材料180は、レンズ素子130と接触することが好ましい。特に、光結合材料180は、第1のレンズ素子130の入力面131と接触することが好ましい。一部の用途および/または設計では、光結合材料180と第1のレンズ素子130との間に、他の光学部品を配置してもよい。
【0040】
光学素子100は、簡単にするためおよび一般性を失うことなく、図1に図示されていない他の構成部材を備えていてもよい。たとえば、光学素子100は、たとえば、面板120の入力面121の上に配置される1層以上の蛍光体を備えることができる。別の例として、光学素子100は、種々の素子を支持し、所定の位置に維持するためのマウントおよび別のレンズ素子を備えることができる。
【0041】
本発明に記載される屈折率は、所定の具体的な波長で測定されてもよい。たとえば、屈折率は、ナトリウムD線(約590nm)または633nm(HeNeレーザ)などの所望のレーザ波長で測定されてもよい。屈折率は、赤色(たとえば、624nm)、緑色(たとえば、544nm)または青色(たとえば、455nm)などの1つ以上のCRT主要輝線で測定されてもよい。屈折率はまた、たとえば可視域にわたる平均値であってもよい。可視域は、420〜650nmの範囲を含みうる。そのような場合には、屈折率はまず、複数の波長(たとえば、CRTの主要輝線)で測定されてもよい。次に、測定値は、公式、たとえばセルマイヤ(Sellmeier)の分散式に適合させて、屈折率対波長分散曲線を生成してもよい。続いて、たとえば、可視域などの所望の波長帯における分散曲線下の面積を計算して、計算した面積を波長帯によって除算することによって、屈折率の平均を決定してもよい。
【0042】
粒子185は、有機、無機またはその組み合わせのいずれであってもよい。粒子185は、酸化物、フッ化物および硫化物を含むことができる。たとえば、粒子185としては、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、イットリアおよび亜鉛酸化物が挙げられる。粒子185は、可視域などの波長関心領域における光吸収が少ないことが好ましい。シリカなどの一部の粒子材料は、可視域における光吸収がほとんどまたは全くない場合がある。チタニアなどの一部の別の粒子は、可視域でわずかに吸収しうる。セリアなどの一部のさらに別の粒子は、特にスペクトルの青色領域で光吸収率が高い場合がある。粒子185の光透過率は、可視域では90%を超えることが好ましく、98%を超えればさらに好ましく、99.5%を超えればさらに一層好ましい。たとえば、青色では光を吸収するが、赤色では吸収しない粒子は、輝度およびコントラストなどの画像特性に悪影響を及ぼすことなく、赤色CRTと共に用いてもよいことは、十分に認識されよう。
【0043】
粒子185は、任意の形状であってもよい。粒子185は、不規則な形状であってもよく、または規則的な形状であってもよい。粒子185は、所与の方向に向けられてもよく、または不規則な配向であってもよい。粒子185は、狭いサイズ分布であってもよく、広いサイズ分布であってもよい。狭いサイズ分布は一般に、明確な著しいピークを中心とした粒度分布を指す。対照的に、広いまたは広範囲のサイズ分布は一般に、粒度分布が明確な著しいピークを含まないか、または粒度分布が複数のピークを含むことを意味する。一般に、平均粒度が増大すると、ヘイズおよび光学散乱を低減するために、より狭い粒度分布が好ましい。
【0044】
粒子185は、2種類以上の粒子を含んでもよい。たとえば、粒子185は、2つの異なる種類AおよびBからなる粒子を含んでもよい。粒子Aは主に、光結合材料180のdn/dTを小さくするように設計されてもよい。粒子Bは、主に、光結合材料180の屈折率を増大するように設計されてもよい。一般に、異なる粒子の種類が主に、異なる要件を満たすように設計されてよい場合には、粒子185は1種類以上の粒子を含んでもよい。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による投影ディスプレイシステム200の概略側面図を示す。本願明細書では、複数の図で用いられる同一の参照符号は、同一または類似の特性および機能性を有する同一の素子または類似の素子を指す。投影ディスプレイシステム200は、光学素子100および目視用スクリーン220を備える。前面投影ディスプレイシステムでは、目視者は、位置240などの光学素子100と同じスクリーン220の側に位置してもよい。背面投影ディスプレイシステムでは、目視者は、位置230などの目視用スクリーン220の対向する側に位置してもよい。
【0046】
図2の光学素子100は、図1に関して説明した光学素子100と類似である。特に、光学素子100は、画像を形成するためのCRT画像源110を備える。光学素子100は、屈折率n1のCRT面板120と、面板120に面し、屈折率n3であるレンズ素子130と、をさらに備える。レンズ素子130は、CRT画像源110によって形成される画像を拡大および/または投影する。光学素子100は、CRT画像源110によって形成される画像を拡大および/または投影する別のレンズ素子をさらに備えてもよい。面板120およびレンズ素子130は、カプラキャビティ183を画定する離隔された対向位置に配置されることができる。光学素子100は、屈折率n2であり、面板120とレンズ素子130との間に配置される光結合材料180をさらに備える。光結合材料180は、小さな粒子、たとえば、ホスト材料の中に分散されるナノ粒子を備える。ホスト材料は流体であることが好ましいが、一部の用途では、ホスト材料は固体であってもよい。結合流体は、カプラキャビティ183の中で分散されてもよい。本発明の一実施形態において、n2はn1およびn3の最低値以上であり、n1およびn3の最高値以下である。
【0047】
目視用スクリーン220は、レンズ素子130および光学素子100に備えられてもよい他のレンズ素子によって拡大および/または投影される源画像を受光する。投影システム200は、1つのCRTに基づく光学素子100を備えていてもよい。そのような場合には、光学素子100は、カラー画像を生成するように設計されてもよい。一部の用途では、光学素子100は、目視用スクリーン220に拡大および投影される白黒画像を生成するように設計されてもよい。投影ディスプレイシステム200は、2つ以上のCRT画像源を備えていてもよい。たとえば、投影システム200は、光学素子100に加えて、光学素子201および202を備えていてもよい。尚、光学素子201および202は、光学素子100に類似していてもよい。一般に、光学素子110、201および202のそれぞれは、異なるレンズおよび/または異なる光結合材料を含む他の素子を備えていてもよい。3つのCRT投影ディスプレイシステムにおいて、光学素子100、201および202のそれぞれは、異なる原色の同一画像を生成するように設計されてもよい。たとえば、光学素子202は、赤色画像を生成し、拡大して投影してもよい。光学素子100は、緑色画像を生成し、拡大して投影してもよい。光学素子201は、青色画像を生成し、拡大して投影してもよい。3つの投影画像は、目視用スクリーン220の上で重ねられ、結果としてカラー画像を生じうる。
【0048】
前面投射システム200において、目視用スクリーン220は、実質的に光学的に反射性であってもよい。背面投射システム200において、目視用スクリーン220は、実質的に光学的に透過性であってもよい。
【0049】
図3は、本発明の別の実施形態による光学素子300の概略側面図を示す。説明しやすくするためおよび一般性を失うことなく、図1に示される素子の一部は、図3で再現されない。光学素子300は、CRT110、CRT面板120および投射レンズシステム370を備える。投射レンズシステム370は、第1のレンズ素子130、第2のレンズ素子140、第3のレンズ素子150および第4のレンズ素子155を備える。第4のレンズ素子155は一般に、出力レンズであり、主に画像収差を補正するように設計され、「A」レンズと呼ばれることが多い。第2のレンズ素子140および第3のレンズ素子150は、「B」レンズと呼ばれることが多く、一般に光学パワーを有し、主にCRT110によって制せされる画像を拡大するように設計される。たとえば、第3のレンズ素子150は「B1」レンズと呼ばれることが多く、第2のレンズ素子140は「B2」レンズと呼ばれることが多い。第1のレンズ素子130は、「C」レンズまたは「Cシェル」レンズと呼ばれることが多く、主にCRT110に光学的に結合するように設計される。CRT投影システムにおいて用いられるレンズ素子の例は、米国特許第4,776,681号明細書および米国公開特許第2003/0071929号明細書に見出される。
【0050】
投射レンズシステム370は、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子との間に配置される第1の間隙領域310と、第2のレンズ素子と第3のレンズ素子との間に配置される第2の間隙領域320と、第3のレンズ素子と第4のレンズ素子との間に配置される第3の間隙領域330と、をさらに備える。光学素子300は、たとえば、第2のレンズ素子、第3のレンズ素子および第4のレンズ素子などのレンズ素子を収容し、同レンズ素子を所定の位置に維持するためのマウント340をさらに備える。
【0051】
第1のレンズ素子、第2のレンズ素子、第3のレンズ素子および第4のレンズ素子のうちの任意の1つ以上のレンズ素子はガラスまたはプラスチックから構成されることができるが、一般に、第1のレンズ素子130、第2のレンズ素子140および第4のレンズ素子155はプラスチック製であり、第3のレンズ素子150はガラス製である。
【0052】
第3のレンズ素子150は一般に、目視用スクリーン(図3には図示せず)の上に表示するために、CRT110によって形成される画像を拡大するように設計される。したがって、第3のレンズ素子150は、ガラスなどのdn/dTの低い材料から構成されることが好ましい。第1のレンズ素子130、第2のレンズ素子140および第4のレンズ素子155は一般に、目視用カリーン(careen)の上に投影される画像の特性を向上するように設計される。そのような画像特性としては、コントラスト、解像度および輝度が挙げられる。第1の間隙領域、第2の間隙領域および第3の間隙領域のそれぞれは一般に、空気間隙であり、大部分は空気を含む領域であることを意味するが、間隙領域のそれぞれは流体材料または固体材料などの空気以外の材料を含んでもよい。
【0053】
本発明の特定の一実施形態によれば、第1のレンズ素子130は、カプラキャビティ380を画定する面板120に面する。光学素子300は、カプラキャビティ380の中の面板120とレンズ素子130との間に配置される光結合材料180をさらに備える。光結合材料180は、たとえば、ホスト材料186の中に分散されるナノ粒子などの小さな粒子185を含む。ホスト材料は流体であることが好ましいが、一部の用途では、ホスト材料は固体であってもよい。結合ホスト流体材料186は、カプラキャビティ380の中に分散されてもよい。
【0054】
本発明の利点および実施形態は、以下の実施例によってさらに示される。これらの実施例に記載される具体的な材料、量および寸法のほか、他の条件および詳細も本発明を過度に制限するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0055】
実施例1:
シリカ粒子が、プロピレングリコール結合流体の中に分散された。平均(mean)粒度は、20nmであった。粒子は、約590nm(ナトリウムD線)で測定した屈折率が1.46であった。20℃で590nmにおけるプロピレングリコールの屈折率は、1.432であった。粒子充填量は、60重量%であった。プロピレングリコールを充填したシリカのdn/dTは、粒子を含まないプロピレングリコールの約1/2であった。
【0056】
プロピレングリコールを充填したシリカは、約1.5%のヘイズであった。粒子を含まないプロピレングリコールは、約0.2%のヘイズであった。ヘイズは、ハンターラボ(Hunterlab)社製のカラークエスト(Colorquest)XE分光光度計を用いて測定された。
【0057】
次に、投影システムの熱ドリフトが、光結合材料として粒子を含むプロピレングリコールおよび粒子を含まないエチレングリコールを用いて測定された。緑色(550nm)の主要放射波長の図1の光学素子100に類似のCRT画像源は、光学ターゲットを拡大して投影スクリーンの上に投影するために用いられた。ターゲットは、透明な正方形と境界をなす不透明な正方形を含んでいた。これはエッジターゲットと呼ばれることがある。
【0058】
まず、ターゲットの画像が、光結合材料として粒子を含まないプロピレングリコールを用いてスクリーンの上に投影された。源の位置は、2つの異なる温度、20℃および60℃でスクリーンにおける最も鮮明な画像に関して決定された。熱ドリフトは、2つの温度に関する源の位置のシフトとして定義された。熱ドリフトは、投影された水平エッジおよび投影された垂直エッジに関してけっていされた。さらに、熱ドリフトは、軸上で50%の点(画像の中心と画像のエッジとの間の2分の1の距離にある点)および90%の点(画像の中心から90%であって、画像のエッジから10%)で決定された。次に、同一の実験が、光結合材料としてその中に分散される粒子を有するプロピレングリコール溶液を用いて繰り返された。投影された垂直エッジに関して生じた値が、以下の表1に与えられている。投影された水平画像に関する類似の値が、以下の表2に与えられている。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1および表2に列挙された測定値は、プロピレングリコールにナノ粒子を添加することにより、熱ドリフトを大幅に低下させることができることを示している。
【0062】
実施例2:
シリカ粒子は、エチレングリコール結合材料流体の中に分散された。シリカ粒子の平均サイズは、20nmであった。粒子は、約590nm(ナトリウムD線)で屈折率1.433であった。エチレングリコールの屈折率は、590nmで1.431であった。粒子充填量は、30重量%であった。エチレングリコールを充填したシリカのdn/dTの測定値は、2.3×10-4であった。粒子を含まないエチレングリコールのdn/dTは、2.7×10-4であった。粒子の添加により、dn/dTは約14.8%低減した。
【0063】
上記に記載したすべての特許、特許出願および他の出版物は、完全に再現されるかのごとく、本願明細書に参照によって援用されるものとする。本発明の種々の態様の説明を容易にするために、本発明の特定の実施例について上記に詳細に説明したが、実施例の詳細に本発明を限定することを意図していないことを理解すべきである。さらに正確に言えば、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神および範囲に包含されるすべての改変、実施形態および別法を網羅するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態による光学素子の概略側面図を示す。
【図2】本発明の別の実施形態によるCRT投影ディスプレイの概略側面図を示す。
【図3】本発明のさらに別の実施形態による光学素子の概略側面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視域にわたって平均屈折率n1の陰極線管の面板と、
可視域にわたって平均屈折率n3であって、前記面板に面するレンズ素子と、
前記面板を前記レンズ素子に光学的に結合するための前記レンズ素子と前記面板との間に配置される光結合材料と、を備え、前記光結合材料は可視域にわたって屈折率n2であり、流体ホスト材料の中に分散されるナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は可視域にわたって平均屈折率naであり、前記ホスト材料は可視域にわたって平均屈折率nbである光学素子。
【請求項2】
前記流体ホスト材料は、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、アルキルジアリールアルカン、水およびシロキサンポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光結合材料を収容するためのカプラハウジングをさらに備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
2は、n1およびn3の最低値以上であり、最高値以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
2は、n1およびn3の平均である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
2は、n1およびn3の積の平方根である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
2は、n1に等しい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
2は、n3に等しい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記光結合材料は、前記面板と接触する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
前記光結合材料は、前記レンズ素子と接触する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記光結合材料における前記ナノ粒子の重量分率は、10%〜80%の範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
前記光結合材料における前記ナノ粒子の重量分率は、20%〜70%の範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
前記光結合材料における前記ナノ粒子の重量分率は、30%〜70%の範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
ナノ粒子の平均サイズは、500nm以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項15】
ナノ粒子の平均サイズは、10〜100nmの範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
ナノ粒子の平均サイズは、10〜50nmの範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
ナノ粒子の平均サイズは、10〜30nmの範囲にある、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記ナノ粒子は、前記流体ホスト材料の中にコロイド状に分散される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項19】
2は、前記光結合材料におけるナノ粒子の前記重量分率の一次関数である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項20】
温度Tに関するn2の変化率は、前記光結合材料におけるナノ粒子の前記重量分率の一次関数である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項21】
温度に関するn2の変化率は、20℃〜60℃の温度範囲の温度に関するnbの変化率より少なくとも5%小さい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項22】
温度に関するn2の変化率は、20℃〜60℃の温度範囲の温度に関するnbの変化率より少なくとも10%小さい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項23】
温度に関するn2の変化率は、20℃〜60℃の温度範囲の温度に関するnbの変化率より少なくとも15%小さい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項24】
温度に関するn2の変化率は、20℃〜60℃の温度範囲の温度に関するnbの変化率より少なくとも20%小さい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項25】
温度に関するn2の変化率は、20℃〜60℃の温度範囲の温度に関するnbの変化率より少なくとも25%小さい、請求項1に記載の光学素子。
【請求項26】
前記光結合材料は、2%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項27】
前記光結合材料は、1%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項28】
前記光結合材料は、0.5%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項29】
前記光結合材料は、0.2%以下のヘイズを有する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項30】
温度に関する粒子の屈折率の変化率は、正である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項31】
温度に関する粒子の屈折率の変化率は、負である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項32】
画像を形成するためのCRT画像源であって、面板を有するCRTと、
前記源に形成される前記画像を投影するためのレンズ素子であって、前記面板に面するレンズ素子と、
前記面板を前記レンズ素子に光学的に結合するために、前記レンズ素子と前記面板との間に配置される光結合材料であって、流体ホスト材料の中に分散されるナノ粒子を含む光結合材料と、を備える投影ディスプレイシステム。
【請求項33】
前記レンズ素子によって投影される前記画像を表示するための目視用スクリーンをさらに備える、請求項32に記載の投影ディスプレイシステム。
【請求項34】
3つのCRT画像源を備える、請求項32に記載の投影ディスプレイシステム。
【請求項35】
前面投影ディスプレイシステムである、請求項32に記載の投影ディスプレイシステム。
【請求項36】
背面投影ディスプレイシステムである、請求項32に記載の投影ディスプレイシステム。
【請求項37】
カプラキャビティを画定する離隔された対向位置に配置される陰極線管の面板およびレンズ素子と、
前記カプラキャビティの中に分散される結合流体であって、ナノ粒子を含む結合流体と、を備える陰極線管投影システム。
【請求項38】
前記面板、前記レンズ素子および前記結合流体を収容するためのカプラハウジングをさらに備える、請求項37に記載の陰極線管投影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515052(P2007−515052A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545681(P2006−545681)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039523
【国際公開番号】WO2005/066995
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】