説明

抗う蝕性調味料の製造方法、抗う蝕性調味料、及び抗う蝕剤

【課題】 高額で複雑な装置を用いることなく、強い抗う蝕性を有しながら味が良く、食品に加えても風味を損なわない抗う蝕性調味料を製造する。
【解決手段】 マグロを蒸煮して蒸煮肉を得るとともに、その煮汁を回収し、蒸煮肉を煮汁に加えて加熱してマグロエキスを抽出し、得られた抽出液を調味料の成分として含有させる。また、マグロエキスを抽出するにあたり、蒸煮肉を煮汁中で70℃〜90℃で15分以上、50℃で120分以上煮出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグロを原料とする調味料の製造方法に関し、特に抗う蝕性を有する調味料等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
缶詰に使用されるマグロは、肉の部分はマグロ缶詰、マグロ味付け缶詰、ペットフードの原料などとして、頭部、皮、骨は魚粉や魚油の原料などとして、加熱したときにでる煮汁はマグロエキスとして、ほぼ余すところなく利用されている。
マグロ缶詰の製造において、マグロを蒸煮釜で蒸煮し、皮や骨を取り除くクリーニング工程を経て、蒸煮肉が得られる。そして、得られた蒸煮肉の血合肉の部分を削って全て取り除いた普通肉を、マグロ缶詰の原料としている。
【0003】
この蒸煮肉から血合肉を削り取る際、普通肉の一部が削り取られてしまう。このような普通肉は、従来は、醤油味付け缶詰や、ペットフード原料として使用されるに留まっていた。
また、マグロ缶詰製造時にでる煮汁は、数十年前は廃棄されるか、又はフィッシュミールとして利用されていたが、現在では、煮汁を油分分離して不溶性固形分を除去し、これを濃縮してマグロエキスとして、加工食品の原料として使用されている。
【0004】
ところで、マグロやカツオなどの回遊魚には、アミノ酸の1つであるヒスチジンやヒスチジン関連化合物であるアンセリンが多く含まれている。
ヒスチジンは、中性付近での緩衝能が強く、水溶液にヒスチジンを含有させることにより、その水溶液に酸やアルカリを加えたときのpHの変動を低減させる性質がある。
このようなヒスチジンの強いpH緩衝能を利用して、う蝕誘発性細菌が産生する酸を中和することで、口腔内のpH低下を防止する口腔用組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
う蝕は、口腔内に生息するストレプトコッカス ミュータンス菌(Streptococcus mutans)やストレプトコッカス ソブリナス菌(Streptococcus sobrinus)などのう蝕誘発性細菌が、糖から乳酸などの酸を産生することによって、口腔内のpHが低下する結果、歯質が脱灰を起こすことが原因で生じる。
そこで、特許文献1では、口腔用組成物にヒスチジンを含有させることによってだ液のpH低下を抑制し、う蝕防止効果を得ることを可能としている。
【0006】
また、う蝕予防に関連する技術として、特許文献2や特許文献3に記載のう蝕予防剤を挙げることもできる。
特許文献2に記載のう蝕予防剤は、海産物脂質由来の脂肪酸により歯垢の原因となるグルカンの形成を抑制することで、う蝕のリスクを低減させるものである。
また、特許文献3に記載のう蝕予防剤によれば、魚類精巣より抽出したプロタミン又はその塩により、う蝕誘発性細菌の活動を妨げることで、う蝕を予防することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−301742号公報
【特許文献2】特開昭63−211216号公報
【特許文献3】特開平2−250815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、ヒスチジンには、苦味があるため、これをそのまま食品に添加すると、食品の風味が損なわれてしまうという問題がある。
特許文献1に記載の口腔用組成物では、ヒスチジンそのものが用いられているため、苦味があると考えられ、調味料などの食品やサプリメント等に適するものではなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載のう蝕予防剤は、海産物脂質由来の脂肪酸が使用されており、不飽和脂肪酸の割合が高いため酸化しやすく、また臭いに問題があるため、食品などに適するものではなかった。
さらに、特許文献3に記載のう蝕予防剤では、分子量が4,000〜5,000の塩基性のタンパク質であるプロタミンが用いられているため、その精製には限外ろ過やイオン交換樹脂が必要となり、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0010】
一方、抗う蝕効果のある素材を調味料などの食品として使用する場合には、食品に影響があるような味がないこと、高価にならないこと、汎用性が高いことが望ましく、また天然由来のものであることが望ましい。
そこで、本発明者は鋭意研究し、強い抗う蝕性をもちながら、味が良く、また食品に加えても風味を損なわず、さらに高額で複雑な装置を必要としない調味料の製造方法を見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、マグロエキス中でマグロ蒸煮肉を煮出すことにより、強い抗う蝕性をもち、風味が良く、高コストにならない抗う蝕性調味料を製造する方法、抗う蝕性調味料、及び抗う蝕剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の抗う蝕性調味料の製造方法は、マグロを蒸煮して蒸煮肉を得るとともに、その煮汁を回収し、蒸煮肉を煮汁に加えて加熱してマグロエキスを抽出し、得られた抽出液を調味料の成分として含有させる方法としてある。
また、本発明の抗う蝕性調味料は、マグロを蒸煮して得られた蒸煮肉を、その煮汁に加えて加熱し、抽出して得られたマグロエキスを含有する構成としてある。
さらに、本発明の抗う蝕剤は、マグロを蒸煮して得られた蒸煮肉を、その煮汁に加えて加熱し、抽出して得られたマグロエキスを含有する構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高額で複雑な装置を用いることなく、強い抗う蝕性を有しながら味が良く、食品に加えても風味を損なわない抗う蝕性調味料等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における抗う蝕性調味料の製造方法を示す概略工程図である。
【図2】実施例及び参考例の抽出エキス、並びに比較例のヒスチジン含有水溶液によるpHの変動値を示す図である。
【図3】実施例の抽出エキスによる各種抽出温度及び抽出時間におけるpHの変動値を示す図である。
【図4】乳酸菌によるpH低下抑制効果に関する実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明するが、本発明は実施形態の構成に限定されるものではない。
本実施形態の抗う蝕性調味料の製造方法は、図1に示すように、(1)煮汁の回収工程、(2)煮汁の調整工程、(3)蒸煮肉の回収工程、及び(4)エキスの抽出工程を有するものとすることができる。
【0016】
(1)煮汁の回収工程
マグロの缶詰の製造では、蒸煮肉を得るために、マグロを蒸気で蒸す処理が行われるが、このときに生じる煮汁を回収する。
このようなマグロ缶詰製造時にできる煮汁は、従来は廃棄されるか、又はフィッシュミールとして利用されていたが、現在では、油分分離して不溶性固形分を除去し、濃縮して、加工食品の原料として使用されている。
本実施形態では、以下に説明するように、この煮汁を第一のマグロエキス(又は第一のエキス)と称し、この煮汁の中で蒸煮肉からさらにエキスを抽出して、第二のマグロエキス(第二のエキス)を得る。このように、本実施形態では、蒸煮肉を煮汁に加えて煮出すことで、ヒスチジン含有量の多いマグロエキスを得ることが可能となっている。
【0017】
本実施形態で使用するマグロの種類は、特に限定されるものではないが、例えば、キハダマグロ、ビンチョウマグロ、クロマグロ等の煮汁を用いることができる。また、カツオやブリなど、他の魚類を蒸煮したときに回収される煮汁を用いても良い。
【0018】
(2)煮汁の調整工程
次に、煮汁を三層分離機などにより分離し、油分と不溶性固形分を除去する。そして、得られた成分を濃縮して殺菌する。
煮汁としては、マグロを蒸煮、煮熟及び加熱したときにでる煮汁を好適に使用することができ、このように煮汁から油分を分離し、不溶性固形分を除去し、濃縮したものを好適に使用できる。また、さらに脂質やタンパク質などの酵素分解を行ったものでも良い。また、上記の通り、マグロと成分が類似しているカツオなど他の魚類の煮汁を代替して用いることも可能である。
【0019】
(3)蒸煮肉の回収工程
次に、マグロの缶詰の製造において、得られた蒸煮肉から血合肉を削り取る際に、削り取られてしまった普通肉を回収する。
すなわち、マグロ缶詰製造時には、蒸煮釜でマグロを蒸煮し、皮や骨を取り除くクリーニング工程を経ることで、蒸煮肉が得られ、この蒸煮肉の血合肉の部分を全て取り除いた普通肉を、マグロ缶詰の原料として使用する。
【0020】
ここで、ヒスチジンは、マグロの血合肉にはあまり含まれておらず、普通肉に多く含まれている。このため、エキスを抽出するための蒸煮肉としては、普通肉を用いることが好ましい。ただし、血合肉が混ざっていてもかまわない。
上記の通り、蒸煮肉からマグロ缶詰の原料を得る際には、普通肉の一部が血合肉と一緒に削り取られてしまうが、このような血合い肉と共に削り取られた普通肉は、従来は、醤油味付け缶詰や、ペットフード原料として使用されるに留まっていた。
本実施形態によれば、このような普通肉からヒスチジンを多く含有するエキスを抽出し、抗う蝕性調味料等として使用することで、その付加価値を高めることが可能となっている。
【0021】
(4)エキスの抽出工程
次に、上記調整を行った煮汁に、蒸煮肉(特に普通肉)を入れて加熱し、マグロエキスを抽出する。使用する煮汁と蒸煮肉の割合は、マグロエキスを十分に抽出できるものであれば、特に限定されないが、例えば蒸煮肉100重量部に対して、煮汁100重量部〜1,000重量部とすることができる。
また、抽出温度及び抽出時間は、マグロエキスを十分に抽出できるものであれば、特に限定されないが、70℃〜90℃で15分以上、50℃で120分以上煮出すようにすれば、強い抗う蝕性をもつエキスを得ることができるため好ましい。
【0022】
そして、加熱して得られた溶液をろ過して、第二のマグロエキスを得る。このようにして得られたエキスは、そのまま抗う蝕性をもつ調味料や、抗う蝕剤として使用することができる。また、このエキスを一部に含む抗う蝕性調味料や抗う蝕剤とすることもできる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の抗う蝕性調味料の製造方法によれば、蒸煮肉を煮汁で加熱してエキスを抽出することで、強い抗う蝕性をもつ調味料等を製造することが可能である。
また、本実施形態の抗う蝕性調味料の製造方法によれば、マグロの煮汁を回収した後に、この煮汁を調整して蒸煮肉を加え、マグロエキスの抽出を行うものであり、ヒスチジン特有の苦味がなく、また臭いに問題のない調味料等を得ることが可能となっている。
【0024】
また、本実施形態におけるマグロエキスは、加熱抽出により得られるものであるため、高額で複雑な装置等を必要とすることなく、調味料等を製造することが可能である。
さらに、本実施形態の抗う蝕性調味料の製造方法によれば、マグロから抽出して得られたマグロエキスに蒸煮肉を入れて、さらにエキスの抽出を行う二段階抽出を行うことにより、pHの変動抑制効果の高いマグロエキスを得ることが可能である。このとき、ツナ缶製造時に発生する利用価値の低い削り肉をマグロエキスに加えて再度エキスの抽出を行うことで、コストを抑え、かつ抗う蝕性効果の高いマグロエキスを得ることが可能である。
【実施例】
【0025】
以下、上記実施形態の製造方法により得られた抗う蝕性調味料及び抗う蝕剤の抗う蝕性等を検証するために行った実施例、比較例、及び参考例について説明する。
【0026】
<抗う蝕性の検証>
(実施例1)
まず、キハダマグロの缶詰の製造時において、キハダマグロを蒸煮したときに得られた煮汁を回収した。この煮汁を第一のマグロエキスと称する。
次に、三層分離機(アルファ・ラバル社 AFPX407BGP−14)を使用して、第一のマグロエキスから油分と不溶性固形分を除去した。さらに、得られた成分を濃縮、殺菌して、調整後の第一のマグロエキスを得た。
【0027】
蒸煮肉は、蒸煮したキハダマグロから骨及び皮を除去し、約1cmにほぐした普通肉を使用した。
次に、調整後の第一のマグロエキスを固形分が2%となるように蒸留水を加えて希釈した。そして、この希釈したエキス750gと、蒸煮肉250gとをビーカーに入れて、撹拌しながら90℃で30分間加熱した。加熱後、得られた溶液をろ紙でろ過し、第二のマグロエキスを得た。なお、本明細書において、百分率は重量%を示している。
【0028】
次に、ケルダール法により第二のマグロエキスのタンパク値を測定し、タンパク質濃度が1%になるように、蒸留水で希釈して溶液の濃度調整を行った。
次いで、得られた溶液を50ml測りとり、0.1Mの乳酸を0.2ml添加した。このとき、添加前と添加後のpHを計測して、その変動値を算出した。
ここで、乳酸は、う蝕誘発性細菌が糖を分解して産生する酸の1つであり、溶液の緩衝能が強いほど、乳酸を溶液に添加した場合のpHの変動が小さくなる。
本実施例では、第二のマグロエキスのタンパク質濃度1%溶液のpHの変動値は0.31であった。その結果を図2に示す。
【0029】
(比較例1)
L−ヒスチジン(和光純薬工業株式会社製)の濃度が1%になるように蒸留水で希釈してヒスチジン溶液を得た。そして、実施例1と同様に、この溶液を50ml測りとり、0.1Mの乳酸を0.2ml添加した。このとき、添加前と添加後のpHを計測して、その変動値を算出した。その結果、本比較例のヒスチジン溶液のpHの変動値は0.42であった。
【0030】
(参考例1)
実施例1で得られた調整後の第一のマグロエキスを蒸留水で希釈し、タンパク質濃度が1%となるように調整した溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、pHの変動値を算出した。その結果、本参考例の第一のマグロエキスのタンパク質濃度1%溶液のpHの変動値は0.41であった。
【0031】
(参考例2)
市販の花鰹80gを、沸騰水1Lに加えて1分間加熱した。加熱後、10分間経過した後、ろ紙でろ過したものを、実施例1と同様に、タンパク質濃度が1%となるように調整した溶液を得た。そして、実施例1と同様にして、pHの変動値を算出した。その結果、本参考例の鰹エキスのタンパク質濃度1%溶液のpHの変動値は0.34であった。
【0032】
(参考例3)
実施例1で得られた調整後の第一のマグロエキスを固形分2%に希釈したものを1L沸騰させ、市販の花鰹80gを加えて1分間加熱した。加熱後10分間経過した後、この加熱した溶液をろ紙でろ過したものを、実施例1と同様に、タンパク質濃度が1%となるように調整し、そのpHの変動値を算出した。その結果、本参考例のマグロ・鰹エキスのタンパク質濃度1%溶液のpHの変動値は0.37であった。
【0033】
上記の通り、実施例1により得られた第二のマグロエキスのpHの変動値は、比較例1のヒスチジン溶液のpHの変動値に比較して、0.11小さくなっていた。
すなわち、本発明の抗う蝕性調味料(又は抗う蝕剤)により、同じタンパク質濃度のヒスチジン溶液に比較して、pHの低下をさらに0.11抑制できていることがわかる。溶液のpHが0.11低下すると、その水素イオン濃度はおよそ30%増加するため、う蝕のリスクは大きく増大することになる。
このように、実施例1と比較例1の溶液が同じように口腔内に存在した場合、う蝕誘発性細菌が産生する乳酸を、実施例1の溶液は、比較例1のものと比較してより高い能力で緩衝することができ、口腔内のpH低下を一層効率的に抑制できることがわかる。
【0034】
また、実施例1により得られた第二のマグロエキスは、マグロの缶詰製造時に得られる煮汁(参考例1)と比較しても、pHの低下をさらに0.1抑制できている。さらに、鰹節抽出液(参考例2)や、マグロエキス中で鰹節を煮出したエキス(参考例3)と比較しても、pHの低下を一層強く抑制できており、第二のマグロエキスによれば、優れた抗う蝕効果が得られることがわかる。
【0035】
<抽出温度及び抽出時間の検証>
蒸煮肉を煮汁で加熱して第二のマグロエキスを抽出するときの抽出温度及び抽出時間を種々の条件とし、それ以外は実施例1と同様にして新たに実験を行い、得られた溶液のpHの変動値を算出した。
すなわち、実験した抽出温度は、90℃、70℃、及び50℃、抽出時間は、それぞれの抽出温度毎に、15分、30分、60分、120分に設定して、実験を行った(実施例2〜13)。その結果を図3に示す。
【0036】
抽出温度が90℃及び70℃の場合、抽出時間が15分間でpHの変動値は、ほぼ安定し、以降の数値は、およそ0.34〜0.35を示している。
また、抽出温度が50℃の場合、pHの変動値は、抽出時間が60分間の時点ではまだ0.36を示しており、120分間の時点で0.34となり、90℃及び70℃で15分間抽出した場合の値と同等レベルにまで低下している。
これらのことから、第二のマグロエキスを抽出するときの、抽出温度及び抽出時間は、70℃〜90℃では15分以上、50℃では120分以上とすることが、緩衝能の強いエキスを抽出するために好適であることが明らかとなった。
【0037】
<乳酸菌によるpH低下抑制効果の検証>
(実施例14)
実施例1で得られた第二のマグロエキス(タンパク濃度1%に希釈したもの)1mlに、10%砂糖水を9ml、及び乳酸菌(Pedeoccus halophilus)懸濁液1mlを混合し、35℃で24時間保温後、pHを測定した。
その結果を図4に示す。同図に示すように、砂糖水及び乳酸菌の添加前のpHは5.5、砂糖水及び乳酸菌の添加24時間後のpHは4.2であり、pHの変動値は、1.3であった。
【0038】
(比較例2)
比較例1と同様の1%ヒスチジン溶液1mlに、10%砂糖水を9ml、及び乳酸菌(Pedeoccus halophilus)懸濁液1mlを混合し、35℃で24時間保温後、pHを測定した。
その結果、砂糖水及び乳酸菌の添加前のpHは6.3、砂糖水及び乳酸菌の添加24時間後のpHは4.5であり、pHの変動値は、1.8であった。
【0039】
上記の通り、実施例14の1%溶液(第二のマグロエキス)のpHの変動値は、比較例2の1%ヒスチジン溶液のpHの変動値に比較して、0.5小さくなっている。
これは、上記第二のマグロエキスによれば、上記ヒスチジン溶液に比較してより一層pHの変動を抑制することができており、より強い緩衝効果が得られることを示している。
したがって、本発明の抗う蝕性調味料によれば、砂糖を添加した食品に使用した場合でも、抗う蝕効果を得ることのできるものであることが明らかとなった。
さらに、本実施形態の抗う蝕性調味料は、砂糖を混合して、抗う蝕効果のある甘味料として用いることも可能である。
【0040】
本発明は、以上の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、鰹などの煮汁を溶媒としてマグロや鰹の蒸煮肉からエキスを抽出し、抗う蝕性調味料を製造するなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高額で複雑な装置を用いることなく、強い抗う蝕性を有しながら味が良く、食品に加えても風味を損なわない抗う蝕性調味料を製造する場合に好適に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグロを蒸煮して蒸煮肉を得るとともに、その煮汁を回収し、前記蒸煮肉を前記煮汁に加えて加熱してマグロエキスを抽出し、得られた抽出液を調味料の成分として含有させる
ことを特徴とする抗う蝕性調味料の製造方法。
【請求項2】
前記煮汁中で前記蒸煮肉を、70℃〜90℃で15分以上、50℃で120分以上煮出す
ことを特徴とする請求項1記載の抗う蝕性調味料の製造方法。
【請求項3】
マグロを蒸煮して得られた蒸煮肉を、その煮汁に加えて加熱し、抽出して得られたマグロエキスを含有することを特徴とする抗う蝕性調味料。
【請求項4】
前記蒸煮肉が、普通肉であることを特徴とする請求項3記載の抗う蝕性調味料。
【請求項5】
マグロを蒸煮して得られた蒸煮肉を、その煮汁に加えて加熱し、抽出して得られたマグロエキス及び砂糖を含有することを特徴とする請求項3又は4記載の抗う蝕性調味料。
【請求項6】
マグロを蒸煮して得られた蒸煮肉を、その煮汁に加えて加熱し、抽出して得られたマグロエキスを含有することを特徴とする抗う蝕剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−85564(P2012−85564A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233707(P2010−233707)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(591273960)はごろもフーズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】