説明

抗がん用機能水

【課題】中性で使用するには、適当なpH調整剤を用いる必要があるアルカリイオン水に替わる、高い抗酸化機能を備えた抗がん用機能水の提供。
【解決手段】アルカリpHとならないように非隔膜とした電解室を備えて、電気分解した水素ガスを溜め置きし、この水素ガスを高濃度に溶存させ、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−100mV以下であり、溶存水素濃度が0.05mg/L以上であり、かつpHが6〜8である機能水を用いることにより、消化器上部がんまたは呼吸器がんまたは体表がんの予防および/または転移抑制および/または再発防止に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん用機能水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2003−175390号公報には、電解水素が溶存した機能水が開示されている。この機能水は、純水中に塩化ナトリウムを加え、電導率を100μS/cm以上とした後に、電気分解し、陰極水を中性として得られるものである。
しかしながら、上記機能水の製造には、隔膜を備えた電解槽を使用しているため、陰極水はアルカリ性となり、pH調節が必要となる。このために、リン酸ナトリウムなどを用意しておき添加するのは手間が掛かる。また、pH調節のために陽極水を用いると、陽極水中の活性酸素が加えられてしまうので、好ましくない。
このため、本発明者らは、特開2005−186034号公報に開示された水素水生成装置を開発した。この装置は、陽極と陰極との間を非隔膜状態で、電気分解を行い、発生した水素ガスを溜め置きし、その水素ガスを高濃度に水中に溶解することにより、機能水を調製するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−175390号公報
【特許文献2】特開2005−186034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが開発に成功した機能水については、その特性および用途が十分に知られていなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い抗酸化機能を備えた抗がん用機能水を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る抗がん用機能水は、pHが6から8までの中性水(以下、pHが6〜8の機能水を「中性水」と略記する)と、この中性水を電気分解し、発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた機能水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−100mV以下であり、溶存水素濃度が0.05mg/L以上であり、かつpHが6〜8であり、消化器上部がんまたは呼吸器がんまたは体表がんの予防および/または転移抑制および/または再発防止に使用することを特徴とする。
【0006】
本発明において、体表がんとは、メラノーマ、基底がん、有棘がん、繊維肉腫などの体表に発生するがんを意味している。
【0007】
第2の発明に係る機能水の利用方法は、pHが6から8までの中性水と、この中性水を電気分解し、発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた機能水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−100mV以下であり、溶存水素濃度が0.05mg/L(好ましくは、0.8mg/L)以上であり、かつpHが6〜8である機能水を消化器上部がんまたは呼吸器がんまたは体表がんの予防および/または転移抑制および/または再発防止に使用することを特徴とする。
【0008】
第2の発明においては、溶存水素濃度が0.8mg/L以上、酸化還元電位がー200mV以下であり、かつpHが6.2〜7.8であることが更に好ましい。
本発明の機能水を使用するについては、例えば経口、注射、点滴、経直腸などの方法を用いて体内に摂取することができる。このうち、経口摂取することが最も好ましい。この場合には、1日あたり、20ミリリットル/キログラム(体重)〜70ミリリットル/キログラム(体重)(好ましくは、40ミリリットル/キログラム(体重)〜50ミリリットル/キログラム(体重))の機能水を飲むことにより摂取を行う。なお、機能水は1日に数回に分けて摂取することができる。
【0009】
また、経口摂取が困難な場合には、点滴溶液そのものとして(或いは、他剤を調製するための水として)機能水を利用することができる。この場合には、1日あたり、5ミリリットル/キログラム(体重)〜70ミリリットル/キログラム(体重)(好ましくは、15ミリリットル/キログラム(体重)〜30ミリリットル/キログラム(体重))の機能水を点滴する。
また、第1の発明に係る機能水を密封容器に封入したことを特徴とする機能水含有ボトルを提供することができる。
【0010】
また、第1の発明に係る機能水を保持する保水層と、この保水層の周囲を取り囲むと共に前記保水層を皮膚に接触させつつ皮膚に粘着する粘着層とを備えたことを特徴とするシートを提供することができる。
保水層とは、機能水を保持する層を意味しており、例えばパッド、不織布、吸水性スポンジなどが含まれる。
粘着層とは、保水層からの機能水の蒸発・飛散を防止しつつ、保水層を皮膚に接触させた状態で、皮膚に粘着する層を意味しており、例えばビニール製のものが例示される。粘着層において、皮膚に粘着する側には、粘着剤を設けておく。
本発明のシートによれば、例えば体表がんに対しては、直接に機能水を接触させておくことができる。
【0011】
また、機能水を製造した後には、できるだけ速やかに用いることが好ましい。しかしながら実際には、機能水を溜め置きしたり、持ち運びつつ用いるという事態が考えられる。このためには、機能水を含有するボトルを提供することが好ましい。そのようなボトルを構成するには、容器内部の空気(酸素)を減少させ、密封シールすることが好ましい。空気を減少させるためには、機能水の密封作業を減圧下で行う、或いは容器内部を不活性ガス(例えば、窒素ガス)で満たした後に機能水の密封作業を行うという方法が例示される。また、密封容器中に気体層が形成される場合には、その気体層内の水素分圧を高くしておくことが好ましい。そのようにすれば、ボトル内に封入された機能水からの水素の発散を抑えることができるからである。具体的には、気体層として、水素・或いは水素分圧を上昇させた気体(窒素、空気など)を封入しておく。
【0012】
ボトルの材料としては、金属(例えば、鉄、アルミニウム、スズなどの単体或いは合金)、ガラス、プラスチックなどを用いることができる。また、ボトルの形状は問われない。このとき、プラスチックを用いる場合には、水素ガスの透過性が低いもの(例えば、水素透過性の低いポリエチレン、PETなど)を使用することが好ましい。
本発明の機能水含有ボトルによれば、機能水の運搬・保存に好適に用いることができる。
【0013】
また、第1の発明に係る機能水を微粒子状として呼吸用器官に到達させるための装置に連結し、前記機能水を持続的に供給するための機能水含有保存容器を提供することができる。
微粒子状とは、呼吸によって、呼吸用器官に機能水を到達させるための形状を意味しており、具体的には霧状あるいは微小な粒子として分散させた状態を意味している。また、機能水を微粒子状とする装置としては、例えばネブライザー、噴霧吸入装置などがある。
【0014】
呼吸用器官とは、空気を体内に取り込むための器官を意味しており、例えば鼻腔、気管、肺などが含まれる。
また、機能水保存容器としては、前述の機能水含有ボトルと同様の構成を備えたものを用いることができる。
本発明の保存容器によれば、呼吸器用器官に到達させるための機能水を保存しておき、必要に応じて用いることができる。
また、この発明においては、キャップ部に上下一対のシール部を備えていることが好ましい。キャップ部とは、機能水を保存容器内に注ぎ込むことができる開口部分を意味している。また、シール部とは、適当な部材を挟みつけることにより、キャップ部からの水或いは溶存水素の発散を防止することが可能な部位を意味している。このような構成とすることにより、キャップ部に排気管を接続し、その排気管の上下面をシール部で密封することができる。こうして、機能水の保存の際、及び機能水を微粒子状として使用する際のいずれにおいても、利用性が向上した保存容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い溶存水素濃度と低酸化還元電位を示し、高い活性酸素除去能力およびビタミンC保持活性を備えた新規な抗がん用機能水が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0017】
<機能水の物理化学的特性>
機能水の調製は、特開2005−186034号公報に開示された技術を用いて作成した装置により行った。この装置及び機能水の特性を次のようにして確認した。
1.調製された機能水の溶存水素濃度および酸化還元電位の測定
電解条件が200mAx6時間、電解圧力が0.04MPa、給水圧力が0.18MPa、水温が27℃の条件で機能水を調製した。この装置から機能水を水量が3.5L/min、空間速度(SV)が140hr−1となる速度で通水したときの時間と、溶存水素・溶存酸素(mg/L)および酸化還元電位(mV)との関係を測定した。
結果を図1に示した。このときの機能水のpHは6.6とほぼ中性であった。
【0018】
2.調製後に放置された装置中の機能水の溶存水素濃度の測定
上記と同様の条件によって、機能水を調製した後に、14℃または16℃において、0.5時間〜60時間の間、装置中に放置された機能水を貯留した装置に通水を行ったときの通水中の溶存水素濃度を測定した。
結果を図2に示した。
【0019】
また、通水量が2.2Lのときの溶存水素量(図2において、ほぼピーク時の溶存水素量に該当する)と、放置時間との関係を図3に示した。
本実施形態に用いた機能水製造装置においては、アルカリpHとなることを規制するために非隔膜とした電解室を備えて、電気分解して発生した水素ガスを溜め置きし、この水素ガスを高濃度に溶存させた機能水を製造する。このため、装置に通水し始めると、時間に応じて、通水中の溶存水素濃度は減少し、酸化還元電位および溶存酸素濃度は上昇する。
【0020】
一般に、家庭で水道水を飲食用として用いる場合には、通水開始からせいぜい1分間程度(容量として2〜3L程度)で通水処理を完了する。このため、3L程度の量が流れたとき(図1において、約0.8minの位置)に、十分な溶存水素濃度と酸化還元電位とを維持していれば、機能水は、その効能を十分に備えた状態のままである。
図1〜図3によれば、機能水の溶存水素濃度は、そのような一般的な使用条件において、最高で0.8mg/L以上であった。また、このときの酸化還元電位は、−200mVよりも低かった。
【0021】
<機能水の活性酸素除去能確認試験>
次に、純水、アルカリイオン水、及び本実施形態の機能水について、活性酸素除去能を比較した。
アルカリイオン水として、医療認可を受けた製造元の異なる2種類のアルカリイオン整水器を選定し、その整水器によって製造されたものを用いた。これらのアルカリイオン水は、水中に乳酸カルシウムなどのイオン源を加えて電解する従来の方法によって製造されたものである。
また、機能水として、溶存水素濃度が0.8mg/L以上、酸化還元電位が−200mV以下、pHが約7のものを用いた。
【0022】
上記3種類の水中に活性酸素源として過酸化水素を添加し、残存するヒドロキシラジカルをESRで測定した。
結果を図4に示した。なお、2種類のアルカリイオン水では、ほぼ同等の結果が得られたため、図4(B)に代表的なグラフを示した。
図より、ヒドロキシラジカル濃度に該当するピーク値(R)を相対的に比較すると、純水100%に対し、アルカリイオン水では48%であったのに対し、機能水では32%であった。このことから、従来の方法で得られたアルカリイオン水に比べ、本実施形態の機能水は、より強い抗酸化力を持っていることが示された。
【0023】
<ビタミンC保持効果確認試験>
次に、アルカリイオン水と機能水とについて、ビタミンCを保持する効果を比較した。
アルカリイオン水として、医療認可を受けた製造元の異なる2種類のアルカリイオン整水器を選定し、その整水器によって調製されたものを用いた。
また、機能水として、溶存水素濃度が0.8mg/L以上、酸化還元電位が−200mV以下、pHが約7のものを用いた。
純水にビタミンCとしてアスコルビン酸を添加し、初期濃度が80μMとなるようにアルカリイオン水または機能水によって希釈した。この溶液をバイアルに対して適当量に分注した後、37℃インキュベータに投入した。投入後、6時間及び30時間して、バイアルをインキュベータから取り出し、ビタミンCの酸化を防ぐために50μMジチオスレイトールを添加し、4℃にて保存した。
【0024】
全ての反応が終了後、各サンプル溶液中のビタミンC濃度をHPLCによって測定した。HPCL測定用の移動相として、0.1M KHPO−HPO+0.1mM EDTA−2Naを用いた。
結果を図5に示した。図より、アルカリイオン水では、6時間後に38%、30時間後には14%の残存率となっており、ビタミンCが急速に分解されたことを示した。一方、機能水では、6時間後に96%、30時間後には67%と、非常に良好な残存率を示した。このことより、機能水は、アルカリイオン水に比べて、非常に高いビタミンC保持効果を示すことが分かった。
【0025】
<がん浸潤阻止効果確認試験>
次に、がん細胞の浸潤に対する阻止効果を確認した。
機能水のガン浸潤阻止効果を確認するに際し、まず、イオン交換水(MQW)、アルカリイオン水、及び本実施形態の機能水について、ヒドロキシラジカル除去能を比較した。
アルカリイオン水として、医療認可を受けたアルカリイオン整水器を選定し、その整水器によって製造されたものを用いた。このアルカリイオン水は、水中に乳酸カルシウムなどのイオン源を加えて電解する従来の方法によって製造されたものである。pH9.50、酸化還元電位−250mV、溶存酸素濃度5.00mg/L、溶存水素濃度0.10mg/Lのアルカリイオン水にMQWで希釈した希塩酸水を添加して、pH7.3に調製した水を「ERWdt」とした。この水は、酸化還元電位−150mV、溶存酸素濃度5.30mg/L、溶存水素濃度0.05mg/Lであった。
【0026】
また、機能水として、pH6.50、酸化還元電位−120mV、溶存酸素濃度3.00mg/L、溶存水素濃度0.25mg/Lのものを用いた。この機能水にMQWで希釈した水酸化ナトリウム水を添加して、pH7.3に調製した水を「ERWnon−dt」とした。この水は、酸化還元電位−150mV、溶存酸素濃度4.50mg/L、溶存水素濃度0.05mg/Lであった。
また、コントロールとして、イオン交換水(MQW)を用いた。
【0027】
上記3種類の水中に活性酸素源として過酸化水素を、触媒として酸化マンガン(MnO)を、ラジカル補足剤としてDMPO(5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-oxide)をそれぞれ添加し、残存するヒドロキシラジカル(DMPOへのラジカルの補足によって生成されたDMPO−OH)をESRで測定した。また、コントロールとして、1.57M DMSOを用いた。
結果を図6および図7に示した。図より、ヒドロキシラジカル濃度に該当するピーク値(R)を相対的に比較すると、MQW100%に対し、アルカリイオン水で調製した水(ERWdt)では約70%であったのに対し、機能水で調製した水(ERWnon−dt)では約55%であった。
【0028】
次に、上記3種類の水(MQW、ERWdt、ERWnon−dt)について、スーパーオキサイドアニオン除去能を比較した。
上記3種類の水中に活性酸素源として過酸化水素を、触媒として酸化マンガン(MnO)を、ラジカル補足剤としてDMPO(5,5-Dimethyl-1-pyrroline N-oxide)をそれぞれ添加し、残存するスーパーオキサイドアニオン(DMPOへのラジカルの補足によって生成されたDMPO−OH)をESRで測定した。また、スーパーオキサイドアニオンを除去するための陽性コントロールとして、350UのSODを添加した水を用いた。
【0029】
結果を図8および図9に示した。図より、スーパーオキサイドアニオン濃度に該当するピーク値(R)を相対的に比較すると、MQW100%に対し、アルカリイオン水で調製した試料水(ERWdt)では約85%であったのに対し、機能水で調製した試料水(ERWnon−dt)では約65%であった。
このように、アルカリイオン水及び機能水のいずれについても抗酸化能が認められたものの、機能水の抗酸化能は、従来のアルカリイオン水のそれに比較して、高いことが認められた。また、スーパーオキサイドアニオンよりもヒドロキシラジカルに対する消去能が高いことが示された。
【0030】
次に、がん細胞の浸潤に対する阻止効果を確認した。
カルチャーディッシュに培養しておいたヒト線維肉腫細胞株HT−1080をディッシュから剥がし、スピッツ管に集めた。これを4℃、3000rpmにて10分間遠心した後、上記3種類の試料水を用いて調製したMEM培地(MQW、ERWdt、ERWnon−dt)を用いて適当に希釈し、細胞数を計測した。エッペンドルフチューブに上記3種類のMEM培地を添加しておき、ここに1x10個/mLとなるように、細胞を添加した。ボイデンチャンバー(Boyden chamber:pore直径8μm、Matrigel塗布)に、上記細胞を懸濁したMEM培地0.75mLを添加した。
【0031】
37℃のCOインキュベータに入れ、3時間の培養(浸潤)を行った後、チャンバー内の培地を脱脂綿で取り除いた。これをディフ・クイック固定液(水色)、ディフ・クイック染色液(赤色)、およびディフ・クイック染色液(青色)に漬け、細胞を染色した。染色した細胞を顕微鏡下で観察した。
結果を図10及び図11に示した。図より、機能水で調製したMEM培地(ERWnon−dt)を用いた場合には、アルカリイオン水で調製したMEM培地(ERWdt)を用いた場合に比べると、明らかにがん細胞の浸潤が抑制されていることが分かった。
【0032】
また、上記3種類のMEM培地を用いて、細胞毒性を確認した。HT−1080を各培地にて希釈し、1時間後〜3時間後のビアビリティを吸光度(A450)により評価した。結果を図12に示した。その結果、3種類のMEM培地において、ほぼ同等のビアビリティを示したことから、機能水には細胞毒性は認められなかった。
【0033】
これらのことより、機能水は、基底膜へのガン細胞の浸潤を抑制することが分かった。また、この効果は、細胞毒性を介したものではないことが示された。こうして、機能水は、ガン細胞内において活性酸素を消去し、ガン細胞浸潤能を抑制していることが示唆された。
HT−1080細胞は、ヒト線維肉腫から分離されて、株化されたものであり、一般に、消化器上部がん、呼吸器がん、または体表がんのモデル系細胞株として知られている。このため、今回の試験結果から見ると、機能水が、これらのがんについて、予防、転移抑制、或いは再発防止に効果を備えている可能性が高いことを示している。
【0034】
<シートの構成>
図13及び図14には、本実施形態のシートの構造を示した。シート1には、機能水を保持する保水層2と、この保水層2の周囲を取り囲む粘着層3が設けられている。保水層2は、保水性を備えた材質(例えば、パッド、不織布、吸収性スポンジなど)によって形成されている。保水層2の一面側(皮膚に接触しない面側)と粘着層3とは、粘着剤によって固定されている。また、保水層2の他面側は皮膚に接触することで、機能水が皮膚に接触できるようになっている。
粘着層3は、水分の透過を妨げる材質(例えば、ビニールなど)によって、保水層2よりも一回り大きな形状に形成されている。粘着層3において、保水層2が設けられる面側には、粘着剤が施されている。この粘着剤によって、シート1が皮膚に粘着されるとともに、保水層2の周囲が粘着層3に取り囲まれるようにして皮膚表面に保持されることで、機能水の蒸発・飛散が防止される。
本実施形態のシート1によれば、体表がんに対して、機能水を持続的かつ直接に接触させておくことができるので、機能水のがん浸潤阻止効果を発揮しやすい。
【0035】
<機能水含有ボトル1>
図15及び図16には、本実施形態の機能水含有ボトル(以下、単に「ボトル」という)の構造を示した。ボトル4の本体部分には、機能水5を貯留することができる。ボトル4を構成する材料として、機能水5中の溶存水素の発散を抑える材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、鉄・アルミなどの金属材料、ポリエチレン・PETなどの樹脂材料を用いることができる。金属材料を用いる場合には、金属イオンの溶出を防止するために、機能水5が接触する内面の表面に、フッ素樹脂などの樹脂コーティングを施すことが好ましい。また、樹脂材料を用いる場合には、有機物の溶出がほとんどなく、かつ機能水5に含まれる水素ガスの透過性が低いもの(この点で、ポリスチレンを用いることは、本実施形態においては、好ましいとは言えない)を用いることが好ましい。そのような樹脂材料としては、水素ガス透過性の低いポリエチレン、PETなどが例示される。
【0036】
ボトル4の上部には、機能水5を封入するための構成が備えられている。図16には、その部分S(図15を参照)の拡大図を示した。ボトル4の上端には、開口6が設けられており、その下方に雄ネジ部7が設けられている。この雄ネジ部7には、雌ネジ部8を備えたキャップ9が回し付けられるようになっている。また、開口6の上端部には、両部材4、9の間を密封するための円形状の密封シール10が設けられている。
機能水5の水面からキャップ9の下面に設けられる気体層11については、なるべく小さくすることが好ましい。これは、機能水5に含有される水素の発散をなるべく抑えるための構成である。そのためには、気体層11の容量を小さくすることが好ましい。また、気体層11の内部に、機能水5中の水素分圧を上回る水素分圧を備えた気体(例えば、水素ガス、あるいは高濃度の水素ガスを含んだ混合ガス(例えば、窒素、空気など)を封入しておくことが好ましい。
このような構成を備えたボトル4に機能水5を封入することにより、長期間に渡って安定して保存することができる。
【0037】
<超音波ネブライザ>
図17には、機能水を微粒子状として呼吸用器官に到達させるための装置としての超音波ネブライザ16を示した。ネブライザ16の下部には、水17(例えば、水道水を利用できる)を溜めておく作用漕18が設けられている。作用漕18の下端部には、超音波振動子19が設けられている。また、作用漕18の内側には、薬液漕20が設けられており、その内部に機能水21が溜められている。薬液漕20は、0.2mm〜0.3mm程度の厚さを備えたプラスチックにより形成されている。薬液漕20の上部には、蓋部22が設けられており、その一部には、吸引マスク(図示せず)に通じる通路23が設けられている。
【0038】
超音波振動子19に給電すると、水17を介して薬液漕20に溜められた機能水21の水分子が振動し、霧状の微粒子24となる。この微粒子24は、通路23を通り、吸引マスクに供給される。
このようにして機能水を吸引摂取する場合には、機能水中の溶存水素が時間の経過と共に発散する。このため、機能水は、使用時にネブライザ16に充填しつつ速やかに用いることが好ましい。
なお、本実施形態では、超音波方式のネブライザ16について説明したが、本発明によれば、コンプレッサを使用したジェット気流式ネブライザを用いることもできる。
【0039】
<機能水含有ボトル2>
図18及び図19には、本実施形態の機能水含有ボトル(以下、単に「ボトル」という)の構造を示した。ボトル30の本体部分には、機能水31を貯留することができる。ボトル30を構成する材料として、機能水31中の溶存水素の発散を抑えると共に、超音波ネブライザに使用できるものが用いられている。樹脂材料には、有機物の溶出がほとんどなく、かつ機能水31に含まれる水素ガスの透過性が低いもの(この点で、ポリスチレンを用いることは、本実施形態においては、好ましいとは言えない)を用いることが好ましい。そのような樹脂材料としては、水素ガス透過性の低いポリエチレン、PETなどが例示される。
【0040】
ボトル30の底部30Aの板厚は、超音波による機能水蒸気の発生効率を良くするために、0.1mm〜0.5mm(好ましくは、0.2mm〜0.3mm)程度とされている。また、保存中の底部30Aの破損を防ぐために、底部30Aを覆う保護キャップ32が設けられている。
ボトル30の上部には、機能水31を封入するための構成が備えられている。すなわち、ボトル30の上端には、開口33が設けられており、その下方外周に雄ネジ部34が設けられている。この雄ネジ部34には、雌ネジ部35を備えたキャップ36が回し付けられるようになっている。キャップ36の上面中央には、円形状の開口部43が設けられている。
【0041】
また、開口33の上端部、及びキャップ36の裏面側には、円形状の密封シール38、39(本発明におけるシール部に該当する)が上下一対に設けられている。密封シール38、39は、適度な弾性を備え、かつ機能水中の水素の発散を防ぐ材料(例えば、ゴム(合成ゴム、シリコンゴム)など)で構成されている。開口33を閉止するための構成であるキャップ36とその周辺が、発明におけるキャップ部に該当する。
【0042】
排気管40は、中空の筒状に形成されており、その下端には、外径方向に張り出したフランジ部41が設けられている。このフランジ部41が、上下一対の密封シール38、39によって挟み付けられている。排気管40の上端部分には、開閉可能なバルブBが取り付けられており、機能水31の保管時には閉止されている。
このような構成を備えたボトル30に機能水31を封入することにより、長期間に渡って安定して保存することができる。
【0043】
図20には、ボトル30を超音波ネブライザ16に装着した様子を示した。なお、ネブライザについて、前述と同様の構成については、同じ符号を付して、説明を省略する。ネブライザ16の蓋体44中央に設けられた装着孔45にバルブBとキャップ36を挿通させ、水17を注いだ作用漕18にボトル30を沈めておく。装着孔45の下面側には、キャップ36の下端フランジ部47の上面に当接することで、ここを密封状態とする密封シール46が設けられている。また、バルブBの上端には、別の排気管43に連結されており、その先端には図示しない吸引マスクが設けられている。
【0044】
超音波振動子19に給電すると、水17を介して、ボトル30に溜められた機能水31の水分子が振動し、霧状の微粒子24となる。この微粒子24は、排気管40、43を通り、吸引マスクに供給される。
このように本実施形態によれば、キャップ部に設けられた排気管40のフランジ部41の上下面が一対の密封シール38、39で密封されている。こうして、機能水31の保存の際、及び機能水31を微粒子状として使用する際のいずれにおいても、利用性が向上した保存容器を提供することができる。
なお、本実施形態では、超音波方式のネブライザ16について説明したが、本発明によれば、コンプレッサを使用したジェット気流式ネブライザを用いることもできる。
【0045】
また、本実施形態においては、図21に示すように、密封シール38、39の間には、排気管40及びバルブBに代えて、円形状の蓋部材37を設けることができる。保存期間が長期に渡るような事態が考慮される場合には、このような構成を採ることができる。なお、使用の際には、キャップ36を回してネジ部34、35の係合を解除し、蓋部材37を取り外して、排気管40及びバルブBを取り付ける。
このように本実施形態によれば、0.05mg/L程度の濃度の溶存水素を含み、かつ−100mV以下の酸化還元電位を示す機能水を用いることで、高い活性酸素消去能力を発揮し、強いがん浸潤活性を示すことから、この機能水を呼吸器または体表の抗がん用として使用することができる。
さらに、0.8mg/L以上の濃度の溶存水素を含み、かつ−200mV以下の酸化還元電位を示す機能水を用いれば、前記機能水に比較し、著しく活性酸素消去能力を向上する。がん細胞は活性酸素存在下において増殖活性を有することから、0.8mg/L以上の高濃度の溶存水素を含む機能水を使用することで、前述の抗がん作用を上回る効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】製造装置によって製造された機能水の特性を示すグラフである。
【図2】製造装置によって製造された機能水を0.5時間〜60時間放置した後に通水したときの通水量と溶存水素濃度との関係を示すグラフである。
【図3】図2において、放置時間と、通水量が2.2Lのときの溶存水素量との関係を示すグラフである。
【図4】各溶液中に残存するヒドロキシラジカルをESRで測定したときの結果を示すチャート図である。それぞれ、(A)純水、(B)アルカリイオン水、および(C)機能水の結果を示している。
【図5】各溶液中のビタミンC残存量を示すグラフである。それぞれ、(A)機能水、および(B)アルカリイオン水の結果を示している。
【図6】各MEM培地中に残存するヒドロキシラジカルをESRで測定したときの結果を示すチャート図である。それぞれ、MQW:イオン交換水、ERWdt:アルカリイオン水にMQWで希釈した希塩酸水/水酸化ナトリウム水を添加して、pH7.3に調製した水、ERWnon−dt:機能水にMQWで希釈した希塩酸水/水酸化ナトリウム水を添加して、pH7.3に調製した水を示している(図7〜図12においても同様である)。
【図7】ヒドロキシラジカルをESRで測定した結果に基づき、ピーク強度を測定、比較したグラフである。
【図8】各MEM培地中に残存するスーパーオキサイドアニオンをESRで測定したときの結果を示すチャート図である。
【図9】スーパーオキサイドアニオンをESRで測定した結果に基づき、ピーク強度を測定、比較したグラフである。
【図10】機能水のがん浸潤阻止効果を確認したときの顕微鏡写真図である。
【図11】機能水のがん浸潤阻止効果を確認したときのグラフである。横軸は培養後の時間(hr)を示し、縦軸は細胞数を示している。
【図12】機能水の細胞毒性を確認したときのグラフである。横軸は培養後の時間(hr)を示し、縦軸はビアビリティを示している。
【図13】パッドにおいて、皮膚に接触する面側を示す図である。
【図14】パッドの側断面図である。
【図15】機能水含有ボトルの側断面図である。
【図16】図15において、符号Sの拡大図である。
【図17】超音波ネブライザの側断面図である。
【図18】機能水含有ボトルの側断面図である。
【図19】図18において、符号Tの拡大図である。
【図20】ボトルを超音波ネブライザに装着し、機能水を噴霧しているときの様子を示す側断面図である。
【図21】ボトルの開口を蓋部材で閉止したときの様子を示す側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6から8までの中性水と、この中性水を電気分解し、発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた機能水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−100mV以下であり、溶存水素濃度が0.05mg/L以上であり、かつpHが6〜8であることを特徴とする消化器上部がんまたは呼吸器がんまたは体表がんの予防および/または転移抑制および/または再発防止に使用する抗がん用機能水。
【請求項2】
pHが6から8までの中性水と、この中性水を電気分解し、発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた機能水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−100mV以下であり、溶存水素濃度が0.05mg/L以上であり、かつpHが6〜8である機能水を消化器上部がんまたは呼吸器がんまたは体表がんの予防および/または転移抑制および/または再発防止に使用することを特徴とする機能水の利用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の機能水を保持する保水層と、この保水層の周囲を取り囲むと共に前記保水層を皮膚に接触させつつ皮膚に粘着する粘着層とを備えたことを特徴とするシート。
【請求項4】
請求項1に記載の機能水を密封容器に封入したことを特徴とする機能水含有ボトル。
【請求項5】
請求項1に記載の機能水を微粒子状として呼吸用器官に到達させるための装置に連結し、前記機能水を持続的に供給するための機能水含有保存容器。
【請求項6】
請求項5に記載のものにおいて、キャップ部に上下一対のシール部を備え、機能水を噴霧可能であることを特徴とする機能水含有保存容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−254435(P2007−254435A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84377(P2006−84377)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000108580)タカオカ化成工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】