抗アレルゲン清掃用繊維製品
【目的】種々のアレルゲンを不活性化する抗アレルゲン剤を具備し、このアレルゲン及びアレルゲン含有物質の吸着状態を保持してアレルゲンのアレルゲン性を高効率に低減できる抗アレルゲン清掃用繊維製品を提供することを目的とする。
【構成】少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる抗アレルゲン清掃用繊維製品、または油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持される抗アレルゲン清掃用繊維製品である。
【構成】少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる抗アレルゲン清掃用繊維製品、または油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持される抗アレルゲン清掃用繊維製品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、吸着剤として繊維に油剤を含浸させた清掃用繊維製品に関し、更に詳細には前記繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減可能な抗アレルゲン清掃用繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
アトピー性皮膚炎、ぜん息、発熱、湿疹、じんま疹等のアレルギー性疾患は、長年にわたり、多くの人々を悩ませている。特に、ダニアレルギーは、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息に関与することが知られており（著者：眞弓光文など「１−３ 気管支ぜん息発症に関わる因子の検索と検査手法の開発に関する研究成果集」独立行政法人環境保全機構ホームページ、第４期の調査研究（http://www.erca.go.jp/asthma2/library/investigate/index.html）（非特許文献１）参照）、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息の予防において、屋内のダニを駆除することが重要である。特開平１０−７５９２４号公報（特許文献１）には、掃除用具の表面及び内部に吸着保持されたダニの増殖を抑制するために、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤の処理が施された掃除用具が記載されている。しかしながら、ダニ由来のアレルゲンは、ダニの死骸や糞等にも含まれており、アレルゲン性の低減化のためには、ダニ由来のアレルゲン性を不活性化する抗アレルゲン剤を用いた掃除用具が求められる。
【０００３】
更に、アレルギー性疾患についての多くの研究が行われ、上述のようなアレルギー性疾患の原因物質（アレルゲン）に作用して、アレルゲン性を低減又は不活性化する種々の物質が明らかにされている。特開平２００２−３２６９４４号公報（特許文献２）には、アレルゲン不活性化剤として、タンニン酸が好適であることが記載され、アレルゲン不活性剤を掃除機のフィルターに塗布し、このフィルターに付着するアレルゲンを不活性化することが記載されている。
【０００４】
【特許文献１】特開平１０−７５９２４号公報
【特許文献２】特開２００２−３２６９４４号公報
【非特許文献１】著者：眞弓光文など「１−３ 気管支ぜん息発症に関わる因子の検索と検査手法の開発に関する研究成果集」独立行政法人環境保全機構ホームページ、第４期の調査研究（http://www.erca.go.jp/asthma2/library/investigate/index.html）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１には、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤の処理が施された掃除用具が記載されているが、ダニ由来のアレルゲンは、ダニの死骸にも含有されていると共に、ダニの糞等にも含まれている。即ち、ダニ由来のアレルゲン性を抑制するためには、アレルゲンを含有するダニを駆除するだけでなく、ダニの死骸及び糞等に含まれるアレルゲンの活性を不活性化又は低減化する必要性がある。しかしながら、特許文献１に記載されるような従来の掃除用具には、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤が含有されており、アレルゲンの活性自体を低減化するものではなかった。従って、ダニの死骸及び糞等に含まれるアレルゲンが従来の清掃用繊維製品から脱離して、アレルゲンとして人間に作用する虞があった。従って、本発明の第１の目的は、種々のアレルゲンを不活性化する抗アレルゲン剤を具備する清掃用繊維製品を提供することにある。
【０００６】
特許文献２には、アレルゲン不活性剤がフィルターに塗布された掃除機が記載されているが、掃除機のフィルターは、所定の流量を保持する必要性があり、フィルターの網目をかなり小さくしても、ダニの糞、花粉などの微細なアレルゲン物質を除去することは困難であった。更に、フィルターへの吸着力が弱く、アレルゲン不活性化剤がアレルゲンの活性を低減化するために十分な時間の間、アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物をフィルター表面に付着させることが困難であった。従って、本発明の目的は、種々のアレルゲン物質を清掃用繊維製品を構成する繊維に確実に吸着させると共に、抗アレルゲン剤によりアレルゲンが分解される間、このアレルゲン及びアレルゲン含有物質の吸着状態を保持し、アレルゲンを再び放出することのない清掃用繊維製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第１の形態は、少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる清掃用繊維製品である。
【０００８】
本発明の第２の形態は、油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる清掃用繊維製品である。
【０００９】
本発明の第３の形態は、第１又は第２の形態において、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である清掃用繊維製品である。
【００１０】
本発明の第４の形態は、第１、第２又は第３の形態において、前記抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分である清掃用繊維製品である。
【００１１】
本発明の第５の形態は、第１〜第４のいずれかの形態において、前記アレルゲンがダニ由来のアレルゲンである清掃用繊維製品である。
【００１２】
本発明の第６の形態は、第１〜第５のいずれかの形態において、前記吸着剤が防カビ剤及び／又は抗菌剤を含有する清掃用繊維製品である。
【００１３】
本発明の第７の形態は、第１〜第６のいずれかの形態において、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される清掃用繊維製品である。
【００１４】
本発明の第８の形態は、第１〜第６のいずれかの形態において、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される清掃用繊維製品である。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の第１の形態によれば、少なくとも油剤を含む吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が繊維に担持されるから、前記吸着剤にアレルゲンやアレルゲン含有物と共に塵や埃などを前記繊維に確実に吸着し、前記アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を高効率に低減させることができる。前記抗アレルゲン剤が分散又は溶解する液体を前記吸着剤が担持された繊維に噴霧して抗アレルゲン剤を前記繊維に担持しても良く、繊維又は清掃用繊維製品を前記液体中に浸漬して攪拌・浸とうさせることにより、前記抗アレルゲン剤を前記繊維に担持することができる。また、前記抗アレルゲン剤を前記吸着剤に添加し、この吸着剤の担持に伴って抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることもできる。本発明に係る清掃用繊維製品は、モップ、マット、クロス、ハタキなど全ての清掃用具に用いられる繊維製品を包含しており、前記清掃用具を用いることにより清潔な生活環境を提供できると共に生活者のアレルギー性疾患を防止することができる。また、清掃用繊維製品は、綿布やレーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの合成繊維の布、繊維をパイル状にしたモップ状のもの、レーヨン、ビニロン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを材質とする不織布、パルプやビニロン、レーヨン、その他の合成繊維を材質とするものが用いられる。
ダニ由来のアレルゲン（ダニ、ダニの死骸、糞など）、ペットの毛や上皮、カビ由来のアレルゲン、植物由来のアレルゲン（花粉など）、ハウスダスト等を前記吸着剤に捕集することができ、これらのアレルゲン性を低減可能な抗アレルゲン剤としては、ポリフェノール類など（特開２００２−３２６９４４号公報）が挙げられ、より具体的には、タンニン酸、ガロタンニン、没食子酸、エピカテキンエピカロカテキン、エピガロカテキンガレート、オレウロペインなどが挙げられる。更に、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ピリラミン、トリペレンナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、プロメタジン、テルフェナジン、アステミゾール、ダイメンハイドリネート又はそれらの塩など（特表平９−５１０９７６号公報）が挙げられる。従って、これら種々の抗アレルゲン剤を適宜に１種以上選択し、前記繊維に担持することができ、種々のアレルゲン性を低減させることができる。
【００１６】
本発明の第２の形態によれば、吸着剤が少なくとも油剤と界面活性剤を含み、油剤が界面活性剤によりエマルジョン化された吸着剤を前記繊維に含浸させ、吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させるから、前記吸着剤を前記繊維に確実に且つ強固に担持させることができ、前記アレルゲンをより確実に清掃用繊維製品に吸着して抗アレルゲン剤により前記アレルゲン性を低減化することができる。換言すれば、前記吸着剤が前記繊維から脱離することがなく、アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物を確実に吸着して、これらのアレルゲン性を高効率に低減することができる。前記界面活性剤として好ましくは、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤のうち、１つ又は２つの以上の界面活性剤が用いられる。
更に、前記第１の形態と同様に、ダニ由来のアレルゲン（ダニ、ダニの死骸及び糞など）、ペットの毛や上皮、カビ由来のアレルゲン、植物由来のアレルゲン（花粉など）、ハウスダスト等を前記吸着剤に捕集することができ、抗アレルゲン剤として、ポリフェノール類などを担持することができる。更に、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ピリラミン、トリペレンナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、プロメタジン、テルフェナジン、アステミゾール、ダイメンハイドリネート又はそれらの塩などを抗アレルゲン剤として１種以上担持させることができる。
【００１７】
本発明の第３の形態によれば、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質であるから、抗アレルゲン剤を水に溶解させて抗アレルゲン溶液を生成することができ、この抗アレルゲン溶液に前記繊維を浸漬することにより、前記吸着剤及び抗アレルゲン剤を容易に且つ高効率に担持することができる。また、この抗アレルゲン溶液に吸着剤を投入して、前記吸着剤と抗アレルゲン剤を前記繊維に同時に担持させても良く、前記抗アレルゲン溶液に吸着剤を投入して、この吸着剤に抗アレルゲン剤を添加して、前記繊維に担持させても良い。更に、抗アレルゲン溶液を前記繊維に噴霧することにより、簡易に抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることができる。即ち、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である場合、容易に抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることができるから、アレルゲン性低減効果を有する清掃用繊維製品を低コストで提供することができる。
【００１８】
本発明の第４の形態によれば、抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分であるから、容易に且つ安全に抗アレルゲン剤を生成することができ、アレルゲン性低減効果を有する清掃用繊維製品を低コストで提供することができる。また、前記抗アレルゲン剤を合成する必要が無く、合成工程における種々の化学物質の使用や副産物の生成を抑制することができ、環境汚染等を防止することができる。更に、天然物に含有される抗アレルゲン剤は、人体に害を及ぼす可能性が低く、前記抗アレルゲン剤による人体への副作用等を防止できる可能性がある。ツバキ科の茶、ウルシ科のヌルデ、ユリ科のハスナゲ、イネ科タケ亜科の竹や笹、モクセイ科オリーブ属のオリーブ、モクセイ科イボタノキ属のイボタ、ミヤマイボタ、オオバイボタ、サイコクイボタ、ネズミモチ、トウネズミモチなど、ハーブ（シソ科のローズマリーなど）などから抽出した成分が前記抗アレルゲン剤として用いられ、生葉、果実又は葉や果実の乾燥粉末などから前記抗アレルゲン剤となる成分を抽出し、前記繊維に担持することができる。例えば、茶の場合、市販の緑茶用の茶葉からカテキン等の抗アレルゲン剤を抽出することができ、茶葉、オリーブ、ハーブ、竹、笹などは、人間が長年に亘り種々の目的に使用してきたものであり、人体への高い安全性が確保されている。
【００１９】
本発明の第５の形態によれば、ダニ由来のアレルゲン性を確実に低減させる抗アレルゲン剤を前記繊維に担持してアレルゲンを不活性化させるから、ダニ由来のアレルゲンが原因とされるアトピー性皮膚炎や気管支ぜん息等の発症を防止することができる。例えば、コナヒョウダニ（Dermatophagoides farinae）やヤケヒョウダニ（Dermatophagoides pteronyssinus）等のアレルゲンは、糞やそれらの死骸もアレルゲン性を有し、ダニを殺しただけではアレルゲン性を除去できないことが知られており、コナヒョウダニ及びヤケヒョウダニの糞由来のアレルゲンは、それぞれ、Derf１及びDerp1と呼ばれ、虫体由来のアレルゲンはDer2と呼ばれ、区別されている。本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、ハウスダスト中に含まれるDerf１、Derp1及びDer2等をダニの糞や虫体と共に確実に吸着し、そして前記繊維から脱離させることなく長時間に亘り吸着状態を維持することができ、前記繊維に担持された抗アレルゲン剤によりアレルゲン性を効果的に低減させることができる。更に、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、上記以外の種々アレルゲンを含有するダニ（ケナガコナダニ、チビコナダニ、ウモウダニ、イエダニなど）及びその糞、死骸等を確実に吸着し、好適な抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることにより、ダニ由来のアレルゲン性を低減させることができる。また、ダニアレルゲンに対して好ましい抗アレルゲン剤としては、タンニン酸などの茶抽出物、没食子酸、没食子酸プロピルやハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。
【００２０】
本発明の第６の形態によれば、前記吸着剤に防カビ剤及び／又は抗菌剤が含有されるから、カビや菌の増殖を同時に防止できる。更に、アレルゲンを放出し得るカビ及び／又は菌の場合には、カビや菌の増殖抑制だけでなく、前記抗アレルゲン剤によりカビ及び／又は菌に含まれるアレルゲンの活性が低減されるから、アレルギー性疾患の発症を予防することができる。
【００２１】
本発明の第７の形態によれば、前記繊維１００重量部に対して、５重量部〜５０重量部の油剤が含浸されるから、高効率にハウスダストやこれらに含まれるアレルゲン及びアレルゲン含有物を高効率に吸着することができ、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持されることにより、吸着されたアレルゲン及びアレルゲン含有物のアレルゲン性を好適に低減させることができる。これらの数値範囲は、本発明者等の経験から導出された範囲である。油剤の数値範囲として、５重量部以下では、ハウスダストの吸塵効率が低下し、５０重量部以上では吸塵しても油剤が被清掃面に転移する可能性が高くなる。また、界面活性剤の数値範囲として、０．０１重量部以下では、油剤のエマルジョン化が低下し、３重量部以上では過剰添加となって界面活性剤のコストが増大し、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の製造コストを急増させる。
【００２２】
本発明の第８の形態によれば、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部担持されるから、前記第７の形態と同様に、前記繊維に好適な吸塵効率を付与できると共に、油剤が被清掃面に転移することが殆ど無い清掃用繊維製品を提供することができる。更に、抗アレルゲン剤の数値範囲として、０．０１重量部以下では、アレルゲン性を低減作用が低下し、１０重量部以上では過剰担持となり抗アレルゲン剤のコストを急激に増大させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２３】
本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品には、繊維が使用される清掃用具の全てが包含され、前記繊維には、紙を含む天然繊維や合成繊維があり、織布、編布、不織布、その他の繊維成形体が含まれる。以下、抗アレルゲン清掃用繊維製品としてモップ及びマットを例に本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【００２４】
図１は、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の実施例１であるモップ１の斜視図である。モップ１は基布２及びパイル２ａから構成され、前記モップ１には吸着剤が含浸され、抗アレルゲン剤が担持されている。また、パイル２ａのみに抗アレルゲン剤を担持しても良い。前記油剤に界面活性剤を添加し、油剤のエマルジョン液を生成し、前記繊維を含浸させる。このとき、前記エマルジョン液には、水溶性の抗アレルゲン剤が投入される。更に、ｐＨ調整剤により前記エマルジョン液は酸性側に調整され、モップ１にエマルジョン粒子を吸着させて含油処理が施される。処理モップを電気洗濯機で脱水し、乾燥後、前記モップ１が完成される。また、比較例１として、抗アレルゲン剤を担持せずに、ダニ駆除剤を油剤に添加したモップを製造する。
【００２５】
図２は、含油処理且つ抗アレルゲン処理が施されたモップ（実施例１）、含油処理且つダニ駆除剤が担持されたモップ（比較例１）及び抗アレルゲン剤のみ（含油処理せず）が担持されたモップ（比較例２）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。比較例２のモップは、抗アレルゲン剤の溶液が含油処理されていないモップにスプレーされている。切断した各モップ片にコナヒョウヒダニを接種した。これを２５℃、相対湿度約７５％の条件下で保存し、コナヒョウヒダニのアレルゲン（Derf１）の量が測定される。図２では、吸着剤及び抗アレルゲン剤が担持されていないモップ（ブランク）に比べ、Derf１の量が８０％以上低いものを◎、５０％〜８０％程度低減されているものを○、２０％〜５０％低減されているものを△、低減率が２０％以下ものを×としている。図２に示されるように、吸着剤に加えて抗アレルゲン剤が担持されたモップ（実施例１）では、８０％以上の顕著なダニアレルゲンの低減が測定された。一方、吸着剤にダニ駆除剤が添加されたモップ（比較例１）では、２０％以下のDerｆ1の減少しか測定されなかった。他方、抗アレルゲン剤のみからなる比較例２では、２０％〜５０％のアレルゲン低減率が得られた。即ち、吸着剤が前記繊維に担持される場合には、より一層のダニアレルゲン低減効果が発揮されることが分かった。
【００２６】
図３は、抗アレルゲン処理が施されたマット（実施例２）、ダニ駆除剤が担持されたマット（比較例３）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたマット（比較例４）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。実施例２のマットも図２のモップと同様に、油剤がマットを構成する繊維に含浸されている。更に、比較例４のマットは、抗アレルゲン剤の溶液が含油処理されていないマットにスプレーされている。図３に示されるように、吸着剤に加えて抗アレルゲン剤が担持されたマット（実施例２）では、８０％以上の顕著なダニアレルゲンの低減が測定されている。また、図２と同様に、吸着剤及び抗アレルゲン剤が担持されていないマット（ブランク）に比べ、Derf１の量が８０％以上低いものを◎、５０％〜８０％程度低減されているものを○、２０％〜５０％低減されているものを△、２０％以下のものを×としている。吸着剤に加えてダニ駆除剤が添加されたマット（比較例３）では、２０％以下のDerｆ1の減少しか測定されず、更に、吸着剤が担持されず、抗アレルゲン剤のみが担持された比較例４でも２０％〜５０％の低減効果しか得られなかった。従って、マットにおいても、吸着剤と抗アレルゲン剤を同時に担持する場合に低減効果が最も高くなることが立証された。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、モップ、マット、クロス、ハタキなど全ての清掃用具に用いられ、アトピー性皮膚炎、ぜん息、発熱、湿疹、じんま疹等のアレルギー性疾患など、長年に亘り人々を苦しめてきたアレルゲンのアレルゲン活性を有効に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の実施例であるモップ１の斜視図である。
【図２】抗アレルゲン含油処理が施されたモップ（実施例１）、ダニ駆除剤が担持されたモップ（比較例１）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたモップ（比較例２）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。
【図３】抗アレルゲン含油処理が施されたマット（実施例２）、ダニ駆除剤が担持されたマット（比較例３）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたマット（比較例４）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。
【符号の説明】
【００２９】
１ モップ
２ 基布
２ａ パイル
４ 保持部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、吸着剤として繊維に油剤を含浸させた清掃用繊維製品に関し、更に詳細には前記繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減可能な抗アレルゲン清掃用繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
アトピー性皮膚炎、ぜん息、発熱、湿疹、じんま疹等のアレルギー性疾患は、長年にわたり、多くの人々を悩ませている。特に、ダニアレルギーは、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息に関与することが知られており（著者：眞弓光文など「１−３ 気管支ぜん息発症に関わる因子の検索と検査手法の開発に関する研究成果集」独立行政法人環境保全機構ホームページ、第４期の調査研究（http://www.erca.go.jp/asthma2/library/investigate/index.html）（非特許文献１）参照）、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息の予防において、屋内のダニを駆除することが重要である。特開平１０−７５９２４号公報（特許文献１）には、掃除用具の表面及び内部に吸着保持されたダニの増殖を抑制するために、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤の処理が施された掃除用具が記載されている。しかしながら、ダニ由来のアレルゲンは、ダニの死骸や糞等にも含まれており、アレルゲン性の低減化のためには、ダニ由来のアレルゲン性を不活性化する抗アレルゲン剤を用いた掃除用具が求められる。
【０００３】
更に、アレルギー性疾患についての多くの研究が行われ、上述のようなアレルギー性疾患の原因物質（アレルゲン）に作用して、アレルゲン性を低減又は不活性化する種々の物質が明らかにされている。特開平２００２−３２６９４４号公報（特許文献２）には、アレルゲン不活性化剤として、タンニン酸が好適であることが記載され、アレルゲン不活性剤を掃除機のフィルターに塗布し、このフィルターに付着するアレルゲンを不活性化することが記載されている。
【０００４】
【特許文献１】特開平１０−７５９２４号公報
【特許文献２】特開２００２−３２６９４４号公報
【非特許文献１】著者：眞弓光文など「１−３ 気管支ぜん息発症に関わる因子の検索と検査手法の開発に関する研究成果集」独立行政法人環境保全機構ホームページ、第４期の調査研究（http://www.erca.go.jp/asthma2/library/investigate/index.html）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１には、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤の処理が施された掃除用具が記載されているが、ダニ由来のアレルゲンは、ダニの死骸にも含有されていると共に、ダニの糞等にも含まれている。即ち、ダニ由来のアレルゲン性を抑制するためには、アレルゲンを含有するダニを駆除するだけでなく、ダニの死骸及び糞等に含まれるアレルゲンの活性を不活性化又は低減化する必要性がある。しかしながら、特許文献１に記載されるような従来の掃除用具には、殺ダニ活性及び／又はダニの増殖の抑制活性を有する薬剤が含有されており、アレルゲンの活性自体を低減化するものではなかった。従って、ダニの死骸及び糞等に含まれるアレルゲンが従来の清掃用繊維製品から脱離して、アレルゲンとして人間に作用する虞があった。従って、本発明の第１の目的は、種々のアレルゲンを不活性化する抗アレルゲン剤を具備する清掃用繊維製品を提供することにある。
【０００６】
特許文献２には、アレルゲン不活性剤がフィルターに塗布された掃除機が記載されているが、掃除機のフィルターは、所定の流量を保持する必要性があり、フィルターの網目をかなり小さくしても、ダニの糞、花粉などの微細なアレルゲン物質を除去することは困難であった。更に、フィルターへの吸着力が弱く、アレルゲン不活性化剤がアレルゲンの活性を低減化するために十分な時間の間、アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物をフィルター表面に付着させることが困難であった。従って、本発明の目的は、種々のアレルゲン物質を清掃用繊維製品を構成する繊維に確実に吸着させると共に、抗アレルゲン剤によりアレルゲンが分解される間、このアレルゲン及びアレルゲン含有物質の吸着状態を保持し、アレルゲンを再び放出することのない清掃用繊維製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第１の形態は、少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる清掃用繊維製品である。
【０００８】
本発明の第２の形態は、油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させる清掃用繊維製品である。
【０００９】
本発明の第３の形態は、第１又は第２の形態において、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である清掃用繊維製品である。
【００１０】
本発明の第４の形態は、第１、第２又は第３の形態において、前記抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分である清掃用繊維製品である。
【００１１】
本発明の第５の形態は、第１〜第４のいずれかの形態において、前記アレルゲンがダニ由来のアレルゲンである清掃用繊維製品である。
【００１２】
本発明の第６の形態は、第１〜第５のいずれかの形態において、前記吸着剤が防カビ剤及び／又は抗菌剤を含有する清掃用繊維製品である。
【００１３】
本発明の第７の形態は、第１〜第６のいずれかの形態において、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される清掃用繊維製品である。
【００１４】
本発明の第８の形態は、第１〜第６のいずれかの形態において、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される清掃用繊維製品である。
【発明の効果】
【００１５】
本発明の第１の形態によれば、少なくとも油剤を含む吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が繊維に担持されるから、前記吸着剤にアレルゲンやアレルゲン含有物と共に塵や埃などを前記繊維に確実に吸着し、前記アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を高効率に低減させることができる。前記抗アレルゲン剤が分散又は溶解する液体を前記吸着剤が担持された繊維に噴霧して抗アレルゲン剤を前記繊維に担持しても良く、繊維又は清掃用繊維製品を前記液体中に浸漬して攪拌・浸とうさせることにより、前記抗アレルゲン剤を前記繊維に担持することができる。また、前記抗アレルゲン剤を前記吸着剤に添加し、この吸着剤の担持に伴って抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることもできる。本発明に係る清掃用繊維製品は、モップ、マット、クロス、ハタキなど全ての清掃用具に用いられる繊維製品を包含しており、前記清掃用具を用いることにより清潔な生活環境を提供できると共に生活者のアレルギー性疾患を防止することができる。また、清掃用繊維製品は、綿布やレーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロンなどの合成繊維の布、繊維をパイル状にしたモップ状のもの、レーヨン、ビニロン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを材質とする不織布、パルプやビニロン、レーヨン、その他の合成繊維を材質とするものが用いられる。
ダニ由来のアレルゲン（ダニ、ダニの死骸、糞など）、ペットの毛や上皮、カビ由来のアレルゲン、植物由来のアレルゲン（花粉など）、ハウスダスト等を前記吸着剤に捕集することができ、これらのアレルゲン性を低減可能な抗アレルゲン剤としては、ポリフェノール類など（特開２００２−３２６９４４号公報）が挙げられ、より具体的には、タンニン酸、ガロタンニン、没食子酸、エピカテキンエピカロカテキン、エピガロカテキンガレート、オレウロペインなどが挙げられる。更に、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ピリラミン、トリペレンナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、プロメタジン、テルフェナジン、アステミゾール、ダイメンハイドリネート又はそれらの塩など（特表平９−５１０９７６号公報）が挙げられる。従って、これら種々の抗アレルゲン剤を適宜に１種以上選択し、前記繊維に担持することができ、種々のアレルゲン性を低減させることができる。
【００１６】
本発明の第２の形態によれば、吸着剤が少なくとも油剤と界面活性剤を含み、油剤が界面活性剤によりエマルジョン化された吸着剤を前記繊維に含浸させ、吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させるから、前記吸着剤を前記繊維に確実に且つ強固に担持させることができ、前記アレルゲンをより確実に清掃用繊維製品に吸着して抗アレルゲン剤により前記アレルゲン性を低減化することができる。換言すれば、前記吸着剤が前記繊維から脱離することがなく、アレルゲン及び／又はアレルゲン含有物を確実に吸着して、これらのアレルゲン性を高効率に低減することができる。前記界面活性剤として好ましくは、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤のうち、１つ又は２つの以上の界面活性剤が用いられる。
更に、前記第１の形態と同様に、ダニ由来のアレルゲン（ダニ、ダニの死骸及び糞など）、ペットの毛や上皮、カビ由来のアレルゲン、植物由来のアレルゲン（花粉など）、ハウスダスト等を前記吸着剤に捕集することができ、抗アレルゲン剤として、ポリフェノール類などを担持することができる。更に、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ピリラミン、トリペレンナミン、ブロムフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、プロメタジン、テルフェナジン、アステミゾール、ダイメンハイドリネート又はそれらの塩などを抗アレルゲン剤として１種以上担持させることができる。
【００１７】
本発明の第３の形態によれば、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質であるから、抗アレルゲン剤を水に溶解させて抗アレルゲン溶液を生成することができ、この抗アレルゲン溶液に前記繊維を浸漬することにより、前記吸着剤及び抗アレルゲン剤を容易に且つ高効率に担持することができる。また、この抗アレルゲン溶液に吸着剤を投入して、前記吸着剤と抗アレルゲン剤を前記繊維に同時に担持させても良く、前記抗アレルゲン溶液に吸着剤を投入して、この吸着剤に抗アレルゲン剤を添加して、前記繊維に担持させても良い。更に、抗アレルゲン溶液を前記繊維に噴霧することにより、簡易に抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることができる。即ち、前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である場合、容易に抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることができるから、アレルゲン性低減効果を有する清掃用繊維製品を低コストで提供することができる。
【００１８】
本発明の第４の形態によれば、抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分であるから、容易に且つ安全に抗アレルゲン剤を生成することができ、アレルゲン性低減効果を有する清掃用繊維製品を低コストで提供することができる。また、前記抗アレルゲン剤を合成する必要が無く、合成工程における種々の化学物質の使用や副産物の生成を抑制することができ、環境汚染等を防止することができる。更に、天然物に含有される抗アレルゲン剤は、人体に害を及ぼす可能性が低く、前記抗アレルゲン剤による人体への副作用等を防止できる可能性がある。ツバキ科の茶、ウルシ科のヌルデ、ユリ科のハスナゲ、イネ科タケ亜科の竹や笹、モクセイ科オリーブ属のオリーブ、モクセイ科イボタノキ属のイボタ、ミヤマイボタ、オオバイボタ、サイコクイボタ、ネズミモチ、トウネズミモチなど、ハーブ（シソ科のローズマリーなど）などから抽出した成分が前記抗アレルゲン剤として用いられ、生葉、果実又は葉や果実の乾燥粉末などから前記抗アレルゲン剤となる成分を抽出し、前記繊維に担持することができる。例えば、茶の場合、市販の緑茶用の茶葉からカテキン等の抗アレルゲン剤を抽出することができ、茶葉、オリーブ、ハーブ、竹、笹などは、人間が長年に亘り種々の目的に使用してきたものであり、人体への高い安全性が確保されている。
【００１９】
本発明の第５の形態によれば、ダニ由来のアレルゲン性を確実に低減させる抗アレルゲン剤を前記繊維に担持してアレルゲンを不活性化させるから、ダニ由来のアレルゲンが原因とされるアトピー性皮膚炎や気管支ぜん息等の発症を防止することができる。例えば、コナヒョウダニ（Dermatophagoides farinae）やヤケヒョウダニ（Dermatophagoides pteronyssinus）等のアレルゲンは、糞やそれらの死骸もアレルゲン性を有し、ダニを殺しただけではアレルゲン性を除去できないことが知られており、コナヒョウダニ及びヤケヒョウダニの糞由来のアレルゲンは、それぞれ、Derf１及びDerp1と呼ばれ、虫体由来のアレルゲンはDer2と呼ばれ、区別されている。本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、ハウスダスト中に含まれるDerf１、Derp1及びDer2等をダニの糞や虫体と共に確実に吸着し、そして前記繊維から脱離させることなく長時間に亘り吸着状態を維持することができ、前記繊維に担持された抗アレルゲン剤によりアレルゲン性を効果的に低減させることができる。更に、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、上記以外の種々アレルゲンを含有するダニ（ケナガコナダニ、チビコナダニ、ウモウダニ、イエダニなど）及びその糞、死骸等を確実に吸着し、好適な抗アレルゲン剤を前記繊維に担持させることにより、ダニ由来のアレルゲン性を低減させることができる。また、ダニアレルゲンに対して好ましい抗アレルゲン剤としては、タンニン酸などの茶抽出物、没食子酸、没食子酸プロピルやハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。
【００２０】
本発明の第６の形態によれば、前記吸着剤に防カビ剤及び／又は抗菌剤が含有されるから、カビや菌の増殖を同時に防止できる。更に、アレルゲンを放出し得るカビ及び／又は菌の場合には、カビや菌の増殖抑制だけでなく、前記抗アレルゲン剤によりカビ及び／又は菌に含まれるアレルゲンの活性が低減されるから、アレルギー性疾患の発症を予防することができる。
【００２１】
本発明の第７の形態によれば、前記繊維１００重量部に対して、５重量部〜５０重量部の油剤が含浸されるから、高効率にハウスダストやこれらに含まれるアレルゲン及びアレルゲン含有物を高効率に吸着することができ、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持されることにより、吸着されたアレルゲン及びアレルゲン含有物のアレルゲン性を好適に低減させることができる。これらの数値範囲は、本発明者等の経験から導出された範囲である。油剤の数値範囲として、５重量部以下では、ハウスダストの吸塵効率が低下し、５０重量部以上では吸塵しても油剤が被清掃面に転移する可能性が高くなる。また、界面活性剤の数値範囲として、０．０１重量部以下では、油剤のエマルジョン化が低下し、３重量部以上では過剰添加となって界面活性剤のコストが増大し、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の製造コストを急増させる。
【００２２】
本発明の第８の形態によれば、前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部担持されるから、前記第７の形態と同様に、前記繊維に好適な吸塵効率を付与できると共に、油剤が被清掃面に転移することが殆ど無い清掃用繊維製品を提供することができる。更に、抗アレルゲン剤の数値範囲として、０．０１重量部以下では、アレルゲン性を低減作用が低下し、１０重量部以上では過剰担持となり抗アレルゲン剤のコストを急激に増大させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２３】
本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品には、繊維が使用される清掃用具の全てが包含され、前記繊維には、紙を含む天然繊維や合成繊維があり、織布、編布、不織布、その他の繊維成形体が含まれる。以下、抗アレルゲン清掃用繊維製品としてモップ及びマットを例に本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【００２４】
図１は、本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の実施例１であるモップ１の斜視図である。モップ１は基布２及びパイル２ａから構成され、前記モップ１には吸着剤が含浸され、抗アレルゲン剤が担持されている。また、パイル２ａのみに抗アレルゲン剤を担持しても良い。前記油剤に界面活性剤を添加し、油剤のエマルジョン液を生成し、前記繊維を含浸させる。このとき、前記エマルジョン液には、水溶性の抗アレルゲン剤が投入される。更に、ｐＨ調整剤により前記エマルジョン液は酸性側に調整され、モップ１にエマルジョン粒子を吸着させて含油処理が施される。処理モップを電気洗濯機で脱水し、乾燥後、前記モップ１が完成される。また、比較例１として、抗アレルゲン剤を担持せずに、ダニ駆除剤を油剤に添加したモップを製造する。
【００２５】
図２は、含油処理且つ抗アレルゲン処理が施されたモップ（実施例１）、含油処理且つダニ駆除剤が担持されたモップ（比較例１）及び抗アレルゲン剤のみ（含油処理せず）が担持されたモップ（比較例２）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。比較例２のモップは、抗アレルゲン剤の溶液が含油処理されていないモップにスプレーされている。切断した各モップ片にコナヒョウヒダニを接種した。これを２５℃、相対湿度約７５％の条件下で保存し、コナヒョウヒダニのアレルゲン（Derf１）の量が測定される。図２では、吸着剤及び抗アレルゲン剤が担持されていないモップ（ブランク）に比べ、Derf１の量が８０％以上低いものを◎、５０％〜８０％程度低減されているものを○、２０％〜５０％低減されているものを△、低減率が２０％以下ものを×としている。図２に示されるように、吸着剤に加えて抗アレルゲン剤が担持されたモップ（実施例１）では、８０％以上の顕著なダニアレルゲンの低減が測定された。一方、吸着剤にダニ駆除剤が添加されたモップ（比較例１）では、２０％以下のDerｆ1の減少しか測定されなかった。他方、抗アレルゲン剤のみからなる比較例２では、２０％〜５０％のアレルゲン低減率が得られた。即ち、吸着剤が前記繊維に担持される場合には、より一層のダニアレルゲン低減効果が発揮されることが分かった。
【００２６】
図３は、抗アレルゲン処理が施されたマット（実施例２）、ダニ駆除剤が担持されたマット（比較例３）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたマット（比較例４）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。実施例２のマットも図２のモップと同様に、油剤がマットを構成する繊維に含浸されている。更に、比較例４のマットは、抗アレルゲン剤の溶液が含油処理されていないマットにスプレーされている。図３に示されるように、吸着剤に加えて抗アレルゲン剤が担持されたマット（実施例２）では、８０％以上の顕著なダニアレルゲンの低減が測定されている。また、図２と同様に、吸着剤及び抗アレルゲン剤が担持されていないマット（ブランク）に比べ、Derf１の量が８０％以上低いものを◎、５０％〜８０％程度低減されているものを○、２０％〜５０％低減されているものを△、２０％以下のものを×としている。吸着剤に加えてダニ駆除剤が添加されたマット（比較例３）では、２０％以下のDerｆ1の減少しか測定されず、更に、吸着剤が担持されず、抗アレルゲン剤のみが担持された比較例４でも２０％〜５０％の低減効果しか得られなかった。従って、マットにおいても、吸着剤と抗アレルゲン剤を同時に担持する場合に低減効果が最も高くなることが立証された。
【産業上の利用可能性】
【００２７】
本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品は、モップ、マット、クロス、ハタキなど全ての清掃用具に用いられ、アトピー性皮膚炎、ぜん息、発熱、湿疹、じんま疹等のアレルギー性疾患など、長年に亘り人々を苦しめてきたアレルゲンのアレルゲン活性を有効に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２８】
【図１】本発明に係る抗アレルゲン清掃用繊維製品の実施例であるモップ１の斜視図である。
【図２】抗アレルゲン含油処理が施されたモップ（実施例１）、ダニ駆除剤が担持されたモップ（比較例１）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたモップ（比較例２）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。
【図３】抗アレルゲン含油処理が施されたマット（実施例２）、ダニ駆除剤が担持されたマット（比較例３）及び抗アレルゲン剤のみが担持されたマット（比較例４）のダニアレルゲンに対するアレルゲン性低減作用の比較図である。
【符号の説明】
【００２９】
１ モップ
２ 基布
２ａ パイル
４ 保持部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させることを特徴とする抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項２】
油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させることを特徴とする抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項３】
前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である請求項１又は２に記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項４】
前記抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分である請求項１、２又は３に記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項５】
前記アレルゲンがダニ由来のアレルゲンである請求項１〜４のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項６】
前記吸着剤が防カビ剤及び／又は抗菌剤を含有する請求項１〜５のいずれかに記載の清掃用繊維製品。
【請求項７】
前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される請求項１〜６のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項８】
前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される請求項２〜６のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項１】
少なくとも油剤を含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させることを特徴とする抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項２】
油剤と界面活性剤を少なくとも含む吸着剤が繊維に含浸される清掃用繊維製品において、前記吸着剤に加えて１種以上の抗アレルゲン剤が前記繊維に担持され、この繊維に吸着されるアレルゲン及び／又はアレルゲン含有物のアレルゲン性を低減させることを特徴とする抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項３】
前記抗アレルゲン剤が水溶性物質である請求項１又は２に記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項４】
前記抗アレルゲン剤が植物から抽出された成分である請求項１、２又は３に記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項５】
前記アレルゲンがダニ由来のアレルゲンである請求項１〜４のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項６】
前記吸着剤が防カビ剤及び／又は抗菌剤を含有する請求項１〜５のいずれかに記載の清掃用繊維製品。
【請求項７】
前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される請求項１〜６のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【請求項８】
前記繊維１００重量部に対して、前記油剤が５重量部〜５０重量部、前記界面活性剤が０．０１重量部〜３重量部、抗アレルゲン剤が０．０１重量部〜１０重量部担持される請求項２〜６のいずれかに記載の抗アレルゲン清掃用繊維製品。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２００７−７７５５７（Ｐ２００７−７７５５７Ａ）
【公開日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２７１０５９（Ｐ２００５−２７１０５９）
【出願日】平成１７年９月１６日（２００５．９．１６）
【出願人】（０００１３３４４５）株式会社ダスキン (119)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年３月２９日（２００７．３．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年９月１６日（２００５．９．１６）
【出願人】（０００１３３４４５）株式会社ダスキン (119)
【Ｆターム（参考）】
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