説明

抗トロンビン作用、血小板凝集抑制作用、並びに血栓予防作用を有する医薬品及び健康食品

【課題】血小板凝集抑制剤、抗トロンビン剤、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防剤を提供すること、さらに、血小板凝集抑制用健康食品、抗トロンビン用健康食品、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防用健康食品を提供すること。
【解決手段】血小板凝集抑制剤・抗トロンビン剤・血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防剤が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することからなる。また、血小板凝集抑制用健康食品・抗トロンビン用健康食品・血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防用健康食品が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板凝集抑制剤、抗トロンビン剤、血栓予防剤、血小板凝集抑制用健康食品、抗トロンビン用健康食品、並びに血栓予防用健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は通常けが等による出血を止めたり、また、血管損傷の修復等に重要な役割を果たす血液中の不可欠の細胞の一つである。一方、血管内における血小板の凝固は血栓症などを引き起こすため、それらの疾患の予防、治療などのために、抗血小板薬が研究開発されている。特に、アスピリンは血小板の凝集を引き起こすトロンボキサンの産生を抑制し、血小板凝集抑制作用を有することから、心筋梗塞などの疾患の予防のための抗血小板療法用薬剤として広く用いられている。一方、トロンビンは血液の凝固に関する酵素の一種で、フィブリノーゲンをフィブリンに変換する酵素として知られている。すなわち、トロンビンの働きを阻害したり、血小板凝集を抑制して血栓の形成を抑制することで、血栓症の発症を予防することが可能となる。これらの考えをもとに、現在種々の血栓予防および治療剤が開発されている。
【0003】
一方、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)はタコノキ科植物で、その果実は長さ約1m、10kgにも達し、熟すると真っ赤になる。原産地のパプアニューギニアでは、その果実をブアメラと称し、強壮薬として用いられている。
また、タコノキ科の植物を育毛剤として利用する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
しかし、その血栓予防作用、さらに抗トロンビン作用や血小板凝集抑制作用については知られていなかった。
【特許文献1】特開2004−43392
【特許文献2】特開2000−33617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、新たな血小板凝集抑制剤、抗トロンビン剤、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防剤を提供すること、さらに、血小板凝集抑制用健康食品、抗トロンビン用健康食品、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防用健康食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、血小板凝集抑制剤が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することからなる。また、抗トロンビン剤が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することからなる。また、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防剤が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することからなる。
また、血小板凝集抑制用健康食品が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することからなる。また、抗トロンビン用健康食品が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することからなる。また、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防用健康食品が、パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することからなる。
【0006】
血小板凝集抑制剤・抗トロンビン剤・血栓予防剤は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、老人性痴呆症などの予防および/又は治療に有用なものである。
【0007】
本発明で用いられる植物はPandanus conoideusであり、この植物を構成する部位全て、又は果実、葉、茎、根などの一部を用いることができ、これらを乾燥した後、粉砕して粉末状にして用いることもできる。
【0008】
本発明においては、この植物の抽出物を用いる。本願において抽出物は抽出液・エキス・個体・粉末等を含む概念である。抽出物を得る方法としては、例えばこの植物の果実、葉、茎、根などを水および/又は親水性有機溶媒を用いて抽出して抽出液を得る方法;さらにこのような抽出液から凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧留去などにより粉末を得る方法などが挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール、アセトンなどが挙げられる。特にエタノールが好ましい。これらの溶媒は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく。また、水とこれらの親水性有機溶媒を混合して使用してもよい。好ましい抽出溶媒としては、含水アルコールが挙げられ、特に含水エタノールが好ましい。これらの抽出溶媒の使用量は特に制限されないが、例えばエキス剤、チンキ剤などを製する際に用いられる冷浸法、温浸法、パーコレーション法などを適用することができる。得られた抽出液はそのまま、又はさらに濃縮したり、希釈したり、精製したりして用いることができる。
さらに、これらの抽出液や粉末を、カラムクロマトグラフィーなどを用いて精製することにより、単一成分としたものを用いることもできる。
【0009】
この抽出液、エキス、個体、粉末に必要に応じて製剤学的に受容可能な添加物(例えば賦形剤、界面活性剤等)を加えることにより、薬剤を製造することが出来る。また、抽出液、エキス等は瓶詰めにしたり、個体、粉末等はカプセルに入れる等して健康食品として用いることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる植物は、優れた血小板凝集抑制作用・抗トロンビン作用を有し、また、血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防作用を有する薬剤・健康食品を提供することが出来、それらは狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、老人性痴呆症などの予防および/又は治療に有用なものである。
【実施例】
【0011】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0012】
参考例1
Pandanus conoideusの果実(以下、ブアメラとする)を、10倍量のエタノールにて1時間2回熱時抽出し、減圧下でエタノールを留去して得られたエキス(収率;7.9%)を被検体とした。
【0013】
実施例1(抗トロンビン作用)
参考例1で得られた被検体の抗トロンビン作用を調べた。
1.被検液の調製
被検体を10% dimethyl sulfoxide(DMSO)含有0.15M NaCl−0.05 Tris−acetate buffer(pH 7.4)に溶解し、これを被検液とした。
2.抗トロンビン作用
抗トロンビン作用はfibrinogen液のthrombinによる凝固時間を指標に検討した。すなわち、0.15M NaCl−0.05M Tris−acetate buffer(pH7.4)に溶解した0.5%fibrinogen液1.8mLに被検液0.1mLを加え、1分後に0.2U/mLのthrombin溶液0.1mLを添加することにより凝固反応を惹起し、fibrinogen液が凝固するまでの時間を測定した。
【0014】
実験結果を表1に示す。対照群は490.0±26.5秒でfibrinogen液が凝固したが、ブアメラエキス添加群はその凝固時間を顕著に延長した。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例2(血小板凝集抑制作用)
参考例1で得られた被検体の血小板凝集抑制作用を調べた。
1.被検液の調製
被検体を10%DMSO含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH 7.4)に溶解し、これを被検液とした。
2.血小板血漿の調製
18−24時間絶食したウサギから無麻酔下心臓より血液9容量に対して3.8%sodium citrate 1容量の割合で採血して得られた血液を220×g、10分間、室温にて遠心分離した。上層を多血小板血漿(platelet rich plasma;PRP)とし、下層を880×g、15分間、室温にて遠心分離し、その上層を乏血小板血漿(platelet poor plasma;PPP)とした。
3.血小板凝集抑制作用
付属のキュベットに2.5−3.5×105個/μLになるようにPPPで希釈したPRP200μLを分注した。PPPを透過度100%、PRPを透過度0%の標準値に設定した。キュベットにPRP200μLを分注し、37℃、3×gで3分間撹拌した後、被検液11μLを添加した。さらに37℃、3×gで3分間保温撹拌した後、凝集刺激剤としてcollagen(最終濃度;5μg/mL)溶液11μLを添加した。血小板凝集によって生じるPRPの透過度の変化をアグリコメーター(NKK Hema tracer 1、NIKO Bioscience Inc.)を用いて経時的に記録した。血小板凝集率は凝集剤添加時の最大凝集から評価した。
【0017】
実験結果を表2に示す。表2から明らかなように、ブアメラから得た抽出エキスはコラーゲンによる血小板凝集を抑制した。
【0018】
【表2】

【0019】
なお、前述したように、トロンビンの働きを阻害したり、血小板凝集を抑制して血栓の形成を抑制することで、血栓症の発症を予防することが出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制剤。
【請求項2】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することを特徴とする抗トロンビン剤。
【請求項3】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)の抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防剤。
【請求項4】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制用健康食品。
【請求項5】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することを特徴とする抗トロンビン用健康食品。
【請求項6】
パンダナス コノイデウス(Pandanus conoideus)又はその抽出物を含有することを特徴とする血小板凝集抑制作用又は抗トロンビン作用に基づく血栓予防用健康食品。

【公開番号】特開2008−308454(P2008−308454A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158778(P2007−158778)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(506375451)光和産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】