説明

抗レトロウィルス性エナンチオマー性ヌクレオチドアナログ

【課題】非環式ヌクレオチドアナログ、それらの調製および使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、非環式ヌクレオチドアナログを提供し、この化合物は、この化合物の塩を包含し、ここで、式IAまたはIBの化合物は、実質的にこの化合物のエナンチオマーを含まず、Bは、置換または非置換のプリンまたはピリミジン部分、もしくはそのアザおよび/またはデアザのアナログであり、そしてBは、グアニン以外であり、そしてRは、独立して、H、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、非環式ヌクレオチドアナログ、それらの調製および使用に関する。特に、本発明は、プリン塩基およびピリミジン塩基の2−ホスホノメトキシプロピル誘導体の個々のエナンチオマーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ウィルス性疾患の治療における化学療法剤の開発が緊急に必要である。特に、レトロウィルスによって引き起こされる疾患の治療は、人間医療における最も困難な挑戦の1つである。登録済みまたは現在研究中の多数の抗ウィルス剤は、効果的に疾患を治癒し、症状を緩和し、またはある種の慢性ウィルス性感染症の再発の間隔を実質的に延ばし得るが、多くの場合、レトロウィルス性疾患の例として特にAIDSの場合、確実な成果は未だ達成されていなかった。新しい抗ウィルス剤に対して重要な要件である抗ウィルス作用の選択性は、達成されていなかった。
【0003】
抗ウィルス性化学療法に臨床的に有用である大部分の化合物は、プリン塩基またはピリミジン塩基のいずれかおよび/または炭水化物部分において修飾されたヌクレオシドである。このような化合物は、主として、ウィルスの核酸の合成に関するプロセスにおいて作用する;それらの作用は、リン酸化、それに続くトリホスフェートへの変換を受ける能力に依存する。修飾ヌクレオシドを投与する1つの問題は、宿主細胞における適切なリン酸化活性の欠如およびウィルス特異性リン酸化活性を欠いたウィルス株の存在である。酵素的に耐性のヌクレオチドアナログは、可能性のある抗ウィルス剤として特に有用のようであるが、それらの極性の特性は、細胞膜の適切なヌクレオチドレセプターを欠いているので、これらアナログの細胞への効果的な侵入を妨げる。
【0004】
この困難性は、ヒドロキシル基を有し、糖部分を置換している脂肪族鎖を含む一連の非環式ヌクレオチドアナログにより克服されるように思われる。例えば、抗ウィルス性ヌクレオシドアナログのガンシクロビル(Cytovene)から誘導されるホスフェートまたはホスホン酸誘導体が、抗ヘルペスウィルス活性を有すると報告されている(Reistらの「抗ウィルス剤としてのヌクレオチドアナログ」, ACSシンポジウムシリーズ,第401号, 17ー34頁 (1989);Tolman, 同上, 35−50頁;Prisbeら, J Med Chem (1986), 29:671)。
【0005】
以下の式により、幾つかのクラスの先行技術の化合物が記載される。
【0006】
【化10】

抗ウィルス作用が複素環塩基の性質によってそれほど厳密に制限されない別の群の抗ウィルス化合物は、ホスホン酸部分がメチレン単位を介して脂肪族鎖糖置換基のヒドロキシル基に結合しているホスホン酸アナログを包含する。このような化合物の例としては、HPMP誘導体(1)があり、UK特許出願第2134907号およびHolyらのEP206,459として1986年12月30日付けで現在公開されたPV−3017により開示されていた。このような化合物は、もっぱらDNAウィルスに対して作用し、De ClercqらのNature (1986) 323:464−467に報告され、そしてHolyらのAntiviral Res (1990) 13:295に概説されている。
【0007】
類似のタイプの抗ウィルス剤は、PME誘導体(2)により表され、これは、Holyらの欧州特許出願第0206459号により開示され、そしてDe ClercqらのAntiviral Res (1987) 8:261およびHolyらのCollection Czech Chem Commun (1987) 52:2801;同上 (1989), 54:2190に詳細に記載されている。これらの化合物は、DNAウィルスおよびレトロウィルス(HIV−1およびHIV−2を包含する)の両方に対して作用する。アデニン誘導体、すなわちPMEAは、マウスにおけるモロニィ(Moloney)肉腫ウィルス、アカゲザルにおけるサル免疫不全ウィルス、および、ネコにおけるネコ免疫不全ウィルスに対して顕著な活性を示すことが実証された(Balzariniら, AIDS (1991) 5:21; Egberinkら, Proc Natl Acad Sci U.S.A. (1990) 87:3087)。
【0008】
側鎖の修飾に集中した広範な構造−活性の調査(Holyらの「抗ウィルス剤としてのヌクレオチドアナログ」, ACSシンポジウムシリーズ, 第401号 (1989), 51頁に記載されている)は、さらなる実質的に活性な抗ウィルス剤を示さなかった。フッ素原子によりこのヒドロキシルを置換すると、FPMP化合物(3)が得られ、これは、幾らかの抗DNA−ウィルス活性を有するのに加えて、HIV−1、HIV−2、およびネズミ肉腫ウィルスの両方に対して実質的な効果を示す(EP 454,127として1991年10月30日付けで現在公開されたHolyらのチェコスロバキア特許出願PV2047−90、および、Balzariniら, Proc Natl Acad Sci U.S.A.(1991) 88:4961に開示されている)。
【0009】
9−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニンおよび9−(2−ホスホノメトキシプロピル)グアニン(PMPAおよびPMPG)のラセミ混合物もまた、Holyらの欧州特許出願第0206459号(PMPA)およびHolyら,Collection Czech Chem Commun (1988) 53:2753 (PMPA)、ならびに米国特許出願第932,112 (PMPG)に記載されていた。PMPAは、評価可能な抗ヘルペス効果を全く欠いているが、PMPGの抗ヘルペス効果は、その実質的な細胞毒性によるようであった。PMPGの臨床的な形、およびその関連化合物、すなわち9−(3−ヒドロキシ−2−(ホスホノメトキシ)プロピル)グアニン(HPMPG)の臨床的な形が、EP出願第452935号に開示されている。これらのグアニン形に関して、R−エナンチオマーは、特にレトロウィルスのHIVに関して、より大きい抗ウィルス活性を一貫して与えた。ある種のDNAウィルスに関して、抗ウィルス活性において、RおよびSのエナンチオマーの間の差はほとんどなかった。この活性のパターンが、グアニン以外のPMP化合物にまで広げられるかどうかは予測できない。
【0010】
上記の文献またはそれらの組み合わせによって、本発明の分割されたエナンチオマーが抗レトロウィルス活性を示すということ、あるいは、好適なエナンチオマーは何かということを予測することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、非環式ヌクレオチドアナログ、それらの調製および使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の式:
【0013】
【化11】

で示される化合物を提供し、この化合物は、この化合物の塩を包含し、ここで、式IAまたはIBの化合物は、実質的にこの化合物のエナンチオマーを含まず、Bは、置換または非置換のプリンまたはピリミジン部分、もしくはそのアザおよび/またはデアザのアナログであり、そしてBは、グアニン以外であり、そしてRは、独立して、H、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである。
【0014】
1つの実施形態において、RがHであり、そしてBが、アデニン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、ヒポキサンチン、およびキサンチン、およびそれらの1−デアザアナログ、3−デアザアナログおよび8−アザアナログからなる群より選択されるプリン部分であり、このプリン部分は、非置換の、プリンまたはアナログの誘導体、あるいは、2位および/または6位および/または8位をアミノ、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキルアミノ、ヘテロアラルキルアミノ、複素環式アミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ヒドラジノ、アジド、メルカプトまたはアルキルチオで置換された、プリンまたはアナログの誘導体のいずれかであり、そしてこの誘導体はグアニン以外である。
【0015】
1つの実施形態において、RがHであり、そしてBが、シトシン、ウラシル、チミンおよび5−メチルシトシンおよびそれらの6−アザアナログからなる群より選択されるピリミジンであり、このピリミジンが、非置換か、あるいは、4位の任意の環外アミノ基がアルキル、アラルキル、ヒドロキシまたはアミノで置換されているかのいずれかである。
【0016】
1つの実施形態において、Bが、アデニン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、8−ブロモアデニン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、2−メチルチオアデニン、3−デアザアデニン、8−アザアデニン、8−アザグアニン、1−デアザアデニンまたは8−アザ−2,6−ジアミノプリンであり、上記化合物は、式IAで示される。
【0017】
1つの実施形態において、Bが、アデニン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、8−ブロモアデニン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、2−メチルチオアデニン、3−デアザアデニン、8−アザアデニン、8−アザグアニン、1−デアザアデニンまたは8−アザ−2,6−ジアミノプリンであり、上記化合物は、式IBで表される。
【0018】
1つの実施形態において、Bが、アデニン、8−アザグアニンまたは2,6−ジアミノプリンである。
【0019】
1つの実施形態において、Bが、2,6−ジアミノプリンである。
【0020】
1つの実施形態において、Bが、8−アザグアニンである。
【0021】
1つの実施形態において、Bが、シトシン、チミン、ウラシル、5−メチルシトシン、6−アザウラシルまたは6−アザシトシンである。
【0022】
別の局面において、本発明は、以下の式:
【0023】
【化12】

(ここで、Bは上記で定義されたのと同様である)
で示される化合物を調製する方法を提供し、この方法は、以下の式:
【0024】
【化13】

(ここで、Rは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される化合物を、極性非プロトン性溶媒媒質中でハロトリアルキルシランで処理することによって加水分解する工程を包含する。
【0025】
1つの実施形態において、両Rが、2−プロピルである。
【0026】
1つの実施形態において、上記式VIIAまたはVIIBで示される化合物が、以下の式:
【0027】
【化14】

(ここで、B’は、明細書中で定義されるようなBの保護された形である)
で示される化合物を、式VIAまたはVIBで示される化合物を少なくとも1種の脱保護試薬で処理することによって脱保護する工程を包含するプロセスにより調製される。
【0028】
1つの実施形態において、上記式VIAまたはVIBで示される化合物が、以下の式:
【0029】
【化15】

(ここで、B’は、明細書中で定義されるようなBの保護された形である)
で示される化合物を、以下の式:
【0030】
【化16】

(ここで、LvOは、脱離基であり、そして各Rは、独立して、アルキル(1〜6C)である)
で示される化合物と、式VおよびIVで示される化合物が反応して式VIAまたはVIBで示される化合物を形成する条件下で、反応させる工程を包含するプロセスにより調製される。
【0031】
1つの実施形態において、LvOが、p−トルエンスルホニルオキシ(TsO)基である。
【0032】
1つの実施形態において、上記VIIAまたはVIIBの化合物が、水素化アルカリ金属または炭酸アルカリ金属の存在下、上記で定義されるようなプリンまたはピリミジン部分Bを、以下の式:
【0033】
【化17】

(ここで、LvOは、脱離基であり、そしてRは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される(R)−または(S)−2−O−ジアルキルホスホニルメチル化合物でアルキル化することにより調製される。
【0034】
1つの実施形態において、上記炭酸アルカリが、炭酸セシウムである。
【0035】
1つの実施形態において、LvOが、p−トルエンスルホニルオキシ(TsO)基である。
【0036】
別の局面において、本発明は、本発明の化合物を合成する方法を提供し、この方法は、 以下の式II:
【0037】
【化18】

(ここで、Bは、上記に定義されるのと同様である)
で示されるプリンまたはピリミジン塩基の(R)−または(S)−N−(2−ヒドロキシプロピル)誘導体を保護して、以下の式III:
【0038】
【化19】

(ここで、B’残基は、少なくとも1つのN−アセチル、N−ベンゾイル、N−ピバロイル、N−ジメチルアミノメチレン、N−トリチルまたはN−テトラヒドロピラニル基で置換された塩基Bの残基を表す)
で示される塩基が保護された誘導体を得る工程;
次いで不活性非プロトン性溶媒中−20℃〜100℃で、式IIIの化合物をジアルキル p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネートおよび水素化ナトリウムで処理して、以下の式IV:
【0039】
【化20】

(ここで、各Rは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される中間体を得、次いで不活性非プロトン性溶媒中で、式IVの中間体をハロトリメチルシランと反応させる工程を包含する。
【0040】
1つの実施形態において、上記ハロトリメチルシランが、ブロモトリメチルシランである。
【0041】
1つの実施形態において、上記不活性非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、または塩素化炭化水素である。
【0042】
別の局面において、本発明は、本発明の化合物を調製する方法を提供し、この方法は、水素化アルカリ金属または炭酸アルカリの存在下、不活性有機溶媒中で複素環式プリンまたはピリミジン塩基Bを、以下の式XVI:
【0043】
【化21】

(ここで、各Rは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される(R)−または(S)−2−O−ジアルキルホスホニルメチル−1−O−p−トルエンスルホニル−1,2−プロパンジオールで処理して、以下の式VI:
【0044】
【化22】

で示される(R)−または(S)−N−(2−ジアルキルホスホニルメトキシプロピル)誘導体を得、次いで不活性非プロトン性溶媒の存在下、式VIの誘導体をハロトリメチルシランで処理する工程を包含する。
【0045】
1つの実施形態において、上記炭酸アルカリが、炭酸セシウムである。
【0046】
1つの実施形態において、上記不活性非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドまたはハロゲン化炭化水素である。
【0047】
1つの実施形態において、上記ハロトリメチルシランが、ブロモトリメチルシランである。
【0048】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0049】
【化23】

(LvOは脱離基である)
で示される化合物を提供する。
【0050】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0051】
【化24】

(Bは、上記に定義されるのと同様であるか、またはその保護形である)
で示される化合物を提供する。
【0052】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0053】
【化25】

(Bは、置換または非置換のプリンまたはピリミジン部分、グアニン以外のそのアザおよび/またはデアザのアナログ、または明細書中で定義されたのと同様の保護形である)
で示される化合物の、エンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーを提供する。
【0054】
別の局面において、本発明は、エンリッチされたまたは分割されたRエナンチオマーとしての、以下の式:
【0055】
【化26】

で示される化合物を提供する。
【0056】
別の局面において、本発明は、エンリッチされたまたは分割されたRエナンチオマーとしての、以下の式:
【0057】
【化27】

で示される化合物を提供する。
【0058】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0059】
【化28】

(ここで、Rは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される化合物を提供する。
【0060】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0061】
【化29】

(ここで、Rは、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される化合物を提供する。
【0062】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0063】
【化30】

(ここで、LvOは、脱離基であり、そしてRは、独立して、アルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルである)
で示される化合物を提供する。
【0064】
別の局面において、本発明は、薬学的に受容可能な担体と混合して、抗ウィルス的に有効な量の、本発明の化合物を含有する、抗レトロウィルス的に使用するための薬学的組成物を提供する。
【0065】
1つの実施形態において、上記抗ウィルス化合物が、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニンである。
【0066】
1つの実施形態において、上記抗ウィルス化合物が、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンである。
【0067】
別の局面において、本発明は、治療を必要とする哺乳動物に抗ウィルス効果を達成する薬学的組成物であって、抗ウィルス的に有効な量の、本発明の化合物を含む、薬学的組成物を提供する。
【0068】
1つの実施形態において、上記抗ウィルス化合物が、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニンである。
【0069】
1つの実施形態において、上記抗ウィルス化合物が、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンである。
【0070】
1つの実施形態において、上記複素環式アミノ基が、酸素ヘテロ原子を含有する。
【0071】
1つの実施形態において、上記複素環式アミノ基が、飽和である。
【0072】
別の局面において、本発明の化合物は、以下から選択される:
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジメチルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジエチルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ブチルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−(2−ブチル)アミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロプロピルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロペンチルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロヘキシルアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピロリジノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピペリジノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−モルホリノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ベンジルアミノプリン;
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン;
8−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン;
8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン;
7−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリン;
8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−6−メルカプトプリン;
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−N1,N6−エテノアデニン;ならびに
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンおよびその1,3−ジデアザ、1−デアザ、3−デアザまたは8−アザのアナログからなる群より選択される化合物。
【0073】
別の局面において、本発明は、Bが、6位をアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノまたは複素環式アミノで置換された2−アミノプリンである、本発明の化合物を合成する方法を提供し、この方法は、対応するアミンまたは複素環式アミンを、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリンのアルキル(1〜6C)、アリールまたはアラルキルジエステルと反応させる工程を包含する。
【0074】
別の局面において、本発明は、ラセミ体としての、あるいはエンリッチされたまたは分割されたエナンチオマーとしての、以下の式:
【0075】
【化31】

(ここで、Bは、置換または非置換のプリンまたはピリミジン部分、そのアザおよび/またはデアザアナログ、またはその保護形である)
で示される化合物を提供し、ただしBは、アデニン、8−アザアデニン、2−アミノプリン、または6位をハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、−NHNHまたは−NHOHで置換されたアデニン、ではない。
【0076】
1つの実施形態において、Bが、置換または非置換のプリン部分、そのアザおよび/またはデアザのアナログ、またはその保護形である。
【0077】
1つの実施形態において、Bが、置換または非置換のプリン部分、そのアザおよび/またはデアザのアナログ、またはその保護形である。
【0078】
発明の要旨
プリン塩基およびピリミジン塩基のN−(2−ホスホノメトキシプロピル)誘導体の分割されたエナンチオマー形が合成されて、特にレトロウィルスに対しての有用かつ予期せぬ抗ウィルス活性を有することが見い出された。これらの化合物は、式IAおよびIBからなり、IAはRエナンチオマーを表し、そしてIBはSエナンチオマーを表す。
【0079】
【化32】

式IAおよびIBにおいて、Bはプリン塩基またはピリミジン塩基、もしくはグアニン以外のそれらのアザおよび/またはデアザアナログであり、そしてRは、独立して、H、アルキル(1−6C)、アリールまたはアラルキルである。
【0080】
従って、1つの局面では、本発明は、対応する式IBの化合物の実質的な量を伴わない式IAを含む組成物に関し、そして対応する式IAの化合物の実質的な量を伴わない式IBを含む組成物に関する。
【0081】
「実質的な量」とは、約5モル%より少ないこと、好ましくは約2モル%より少ないこと、より好ましくは約1モル%より少ないこと、最も好ましくは検出不可能な量のことを意味する。「対応する化合物」とは、示された化合物のエナンチオマーを意味する。
【0082】
本発明の他の局面は、これら組成物の調製、抗ウィルス性薬学的組成物へのそれらの処方物およびレトロウィルス感染症を治療するためのこれら処方物の使用を包含する。
【発明の効果】
【0083】
本発明により、非環式ヌクレオチドアナログ、それらの調製および使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
発明の詳細な説明
本発明の化合物は、構造式Iを有する、プリン塩基およびピリミジン塩基のN−(2−ホスホノメトキシプロピル)誘導体の分割された(R)−エナンチオマーおよび(S)−エナンチオマーである。
【0085】
【化33】

Bは、プリン塩基またはピリミジン塩基、もしくはグアニン以外のそれらのアザおよび/またはデアザアナログである。Rエナンチオマーが好ましい。本明細書中で用いられるように、「プリン」は、置換または非置換の以下の式(以下の式において、遊離原子価および水素は示されていない)で表される部分を示す:
【0086】
【化34】

そして「ピリミジン」は、置換または非置換の以下の式で表される部分を示す:
【0087】
【化35】

アザアナログにおいては、上記式において少なくとも1つのCは、Nで置き換えられる;デアザアナログにおいては、少なくとも1つのNは、Cで置き換えられる。このような置換の組み合わせはまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
従って、1−デアザプリンアナログは以下の式:
【0089】
【化36】

である;
3−デアザプリンアナログは以下の式:
【0090】
【化37】

である;
8−アザプリンアナログは以下の式:
【0091】
【化38】

である;そして
1−デアザ−8−アザプリンアナログは以下の式:
【0092】
【化39】

である。
【0093】
Bの好ましい実施態様として、Bは、アデニン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、ヒポキサンチン、キサンチン;およびそれらの1−デアザアナログ、3−デアザアナログまたは8−アザアナログ;および
プリンまたは上記アナログの誘導体からなる群から選択されるプリン塩基であり、この誘導体は、グアニン以外であり、アミノ、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキルアミノ、ヘテロアラルキルアミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ヒドラジノ、複素環式アミノ、アジド、メルカプトまたはアルキルチオにより2位および/または6位および/または8位が置換されている。
【0094】
本明細書中の記載の目的では、互変異性体は、特定の基の記載に含まれ、例えば、チオ/メルカプト、またはオキソ/ヒドロキシルである。
【0095】
本発明に包含される実施態様として、Bは、シトシン、ウラシル、チミン、5−メチルシトシン、およびそれらの6−アザアナログ;および
アルキル、アラルキル、ヒドロキシまたはアミノにより4位の環外アミノ基が置換されたピリミジン誘導体からなる群から選択されるピリミジン塩基である。
【0096】
本明細書中に示されるように、ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIを示す;アルキルは、1−6Cを含む直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を示し、例えば、メチル、エチル、2−プロピル、n−ペンチル、ネオペンチルなどである;アルコキシは、式−ORの基であり、ここで、Rは上記で定義されるようなアルキルである;アルキルチオは、式−SRの基であり、ここで、Rは上記で定義されるようなアルキルである;アラルキルまたはヘテロアラルキルは、式−R−Arの基であり、ここで、−R−は上記で定義されるようなアルキル(−R)に対応するアルキレンであり、Arは置換(ヒドロキシル、ハロ、アミノ、スルホニル、カルボニル、あるいはヒドロキシル、ハロ、アミノ、スルホニルまたはカルボニルで置換されたC1−C3アルキルによる)または非置換で、6−10Cを有し、そして必要に応じて酸素または窒素から選ばれるヘテロ原子を有する芳香族基(例えば、フェニル、ナフチル(napthyl)、キノリル、およびベンジル)である;アラルキルアミノまたはヘテロアラルキルアミノは、式−N(Z)2の基であり、ここで、Zは、独立して、Hまたは−R−Arである(しかし、少なくとも1個のZは−R−Arである);複素環式アミノは、少なくとも1個のN原子(通常1個)および必要に応じてさらに少なくとも1個の他のヘテロ原子を含む置換または非置換の複素環(例えば、ピロリジン、モルホリノ、ピペリジンなどの基)である。典型的には、環状構造は、3〜6員環原子を含み、単環式である。ある実施態様では、プリンの6−アミノ基の置換基は、プリンのN1と結合し合って、例えば、N1,N6−エテノ−アデニンにおけるように、プリニル部分に融合したN−複素環を形成する。
【0097】
本発明の化合物は、遊離酸、塩の形で、あるいは少なくとも1個のアミノ官能基の付いた複素環塩基を有する化合物の場合には、両性イオンの形で単離され得る。酸または両性イオンの形は、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、溶出液として揮発性有機酸(酢酸またはギ酸)を用いて、脱イオン化された粗物質を精製して得られ得る。遊離酸は、当該分野で公知の方法により、生理学的に受容可能な塩に容易に変換され得る。このような塩は、アンモニウムイオン、Li+、Na+、K+、Mg++、およびCa++、あるいは薬学的に受容可能な有機陽イオンの塩を包含する;それらの塩は一塩基性または二塩基性であり得る。Bに含まれる少なくとも1個のアミノ官能基もまた、HBr、HCl、H2SO4またはHOAcなどの無機酸または有機酸との酸付加塩として調製され得る。
【0098】
ある場合には、式IAおよびIBの化合物の酸または両性イオンの形は、水に難溶性である。このような環境下では、炭酸水素トリエチルアンモニウムなどの弱アルカリ揮発性緩衝液中で、中程度の塩基性陰イオン交換体(例えば、DEAE−セルロース、DEAE−セファデックス)上で精製が行われる。得られた水溶性トリエチルアンモニウム塩は、対応する形の陽イオン交換体を用いて、例えば陽イオン交換により他の陽イオンの塩に変換され得る。
【0099】
式IAまたはIBの化合物の遊離酸、両性イオンまたは塩は、固体状態において、あるいは、無菌の水溶液または水−アルコール溶液において安定である。
調製方法
本発明の化合物は、スキーム1または2を用いて、分割された乳酸エステルエナンチオマーから誘導されて容易に調製されるキラルな中間体Xから調製され得る。
【0100】
反応スキーム1は以下の通りである:
スキーム1
【0101】
【化40】

ここで、Bは、上記で定義される通りであり、そしてB’はその適切に保護された形である;キラルな中心の上の *は、分割されたエナンチオマーが用いられることを示す。Bの保護は、ヒドロキシ、アミノまたはカルバミド基などの、Bに含まれる活性水素原子のブロッキングを包含する。アセチル、ベンゾイル、ピバロイルまたはアミジン(ジメチルアミノメチレン基など)などの、アルカリに不安定な基の導入により、あるいは、トリチル、置換トリチル、テトラヒドロピラニル基などの、酸に不安定な基により、保護は達成され得る。
【0102】
式Xの2−O−テトラヒドロ−ピラニルプロパン−1,2−ジオールの所望のエナンチオマーは、通常の条件下で、すなわち、p−トルエンスルホニルクロライドとピリジン中で反応させて、工程1において対応する1−O−p−トルエンスルホニルエステルに変換される。示されるトシル基が好ましいが、メシレート、トリフレートまたはハライドなどの標準的な有機脱離基もまた用いられ得る。
【0103】
式XIの保護された中間体は、直接の結晶化またはシリカゲルクロマトグラフィーのいずれかにより単離され、複雑なNMRスペクトルを与えるジアステレオマーの混合物として得られる。
【0104】
工程2における式XIのシントンによる複素環塩基のアルキル化は、不活性溶媒(ジメチルホルムアミドなど)中で塩基を水素化アルカリで前処理すること、あるいは炭酸アルカリによりインサイチュで生じる陰イオン形成のいずれかにより生じ得る陰イオンの形成により媒介される。後者の場合には、触媒として炭酸セシウムの重要性が認識されなければならない。この触媒は、塩基のアルキル化を実質的に促進するだけでなく、プリン環系におけるシントンXIによるアルキル化の位置特異性(regiospecificity)に有利に影響し、これにより、プリンの好ましいN9の位置あるいはアザまたはデアザ塩基内の対応する位置のところでアルキル化を行う。
【0105】
テトラヒドロピラン−2−イル基は、工程3において、酸性媒質中で開裂されて、中間体IIIを与える。この開裂は、無機酸(例えば、硫酸)陰イオン交換樹脂、または、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸)の作用、それに続く脱イオン化により達成され得る。
【0106】
式IIIのN−(2−ヒドロキシプロピル) 誘導体は、工程4において、選択的N−アセチル化、N−ベンゾイル化、ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールとの反応、N−トリチル化、3,4−ジヒドロ−2H−ピランとの反応などのような、この目的に一般に利用可能な種々の方法のうち任意の方法を用いて、式Vの塩基の保護された誘導体に変換される。
【0107】
スキーム1の工程5において、式Vの保護された中間体は、非反応性溶媒(ジメチルホルムアミドなど)中で、適切な塩基(水素化アルカリ金属など)で処理することによって、アルコキシド陰イオンに転換し、そしてそのアルコキシドは、ジアルキル p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(式IV)で処理される。好ましくは、ホスホネートエステルは、2−プロピルアルコールのエステルである。反応は、式Vの中間体と式IVのトシル誘導体との混合物を、3当量(中間体Vに対して)の水素化アルカリ(例えば、NaH、KH)または他の適切な試薬の存在下、−10℃から80℃まで、大抵は0℃から20 ℃までの範囲の温度で撹拌することによって行われる。反応は、反応成分の性質および濃度に依存して、数時間から数日間続ける。ガス状水素が反応中放出されるので、反応は、湿気に対して適切に保護された開放系において行われることが必須である。
【0108】
次いで、保護基はB’から除去され、そしてホスホネートエステル結合は加水分解される。工程6において、B’からの保護基の除去は、加メタノール分解、酸加水分解などのような一般に受容可能な方法によって達成され得る。アルカリに不安定な基は、混合物をメタノールで希釈することによって簡単に除去され得る。得られた式VIIのジエステルは、シリカゲルクロマトグラフィーにより、または他の適切な支持体を用いて単離され、あるいは混入した非ヌクレオチド物質は、Dowex 50のような陽イオン交換体上での脱イオン化によって、または疎水性シリカクロマトグラフィーによって除去され得る。次いで、精製された式VIIの中間体は、工程7において、例えば、極性非プロトン性溶媒(アセトニトリル、またはDMFなど)中で、ハロトリアルキルシラン(ブロモトリメチルシラン、またはヨードトリメチルシランなど)で4〜20時間室温で処理することによって加水分解される。次いで、揮発分は真空下でエバポレートされ、次いで最終生成物は、その特性に依存してさらなる精製および単離技術によって得られ得る。マイナスに荷電されたホスホネート基の存在を利用するイオン交換クロマトグラフィーが好ましい。
【0109】
あるいは、式Iの化合物は、反応スキーム2によって調製され得る。
スキーム2
【0110】
【化41】

スキーム2において、式XVIIのシントンは、最後に、キラルなPMP前駆体を提供するために用いられる。そのシントンは、トシル脱離基を結合しており、そして複素環塩基またはその保護された誘導体のアルキル化に用いられて、式VII、すなわち本発明の化合物の保護されたジエステル体を与える。
【0111】
反応スキーム2において、反応スキーム1におけるように、式Xの2−O−(テトラヒドロピラニル)−プロパン−1,2−ジオールの分割体は、所望の分割されたエナンチオマーを提供する。式Xの分割された化合物は、工程1において、標準条件下でベンジル化(例えば、DMF中で水素化ナトリウムの存在下ベンジルブロマイドとの反応)により、ベンジルエーテルXIIを与える。次いで、このベンジルエーテルは、工程2において、酸加水分解により、式XIIIの分割されたエナンチオマーの2−O−ベンジルプロパン−1,2−ジオールに変換される。いずれかのエナンチオマー(蒸留可能なオイル)は、工程3において、塩化水素の存在下で1,3,5−トリオキサンまたはパラホルムアルデヒドとのクロロメチル化により、中間体の式XIVのクロロメチルエーテルを与える。この式XIVのクロロメチルエーテルは、精製することなく、工程4において、同時に2−プロピルクロライドを除去しながらトリ(2−プロピル)ホスファイトと加熱することによって、ホスホネートジエステルXVに変換される。式XVの中間体は、高い真空度で蒸留可能であるが、この手法によりラセミ化が起こり得る。次いで、この反応物の部分的に精製された生成物は、パラジウム/活性炭触媒のメタノール液の存在下での水素化のような標準条件下で加水素分解され、そして工程5から得られた中間体の式XVIのジエステルは、単離することなく、工程6において、トシルクロライドのピリジン液の作用により、トシル誘導体XVIIに変換される。
【0112】
X→XVIIの系列は、6つの工程を含むが、中間体の精製を必要としない。すべての反応は高い転換率で進み、その結果、この系列の全体の収率は40%を越える。ホスホネートの2−プロピルエステルが好ましいが、他のホスホネート保護エステル基(メチル、エチル、ベンジル、および環状ジエステルなど)は同様な効果に用いられ得る。さらに、式XVIIのシントン内のトシル基は、例えば、メシル、トリフリル、p−ニトロフェニルスルホニルなどの他の脱離基によっても置き換えら得る。
【0113】
この合成系列の工程7は、式XVIIのシントンによる複素環塩基のアルキル化にある。これは、複素環に対して当モル量の塩基を必要とする。アルキル化は、水素化ナトリウム反応による複素環塩基から生じるナトリウム塩、あるいは複素環塩基と、やや過剰の炭酸カリウムまたは有利には炭酸セシウムとの混合物のいずれかを用いて、上昇した温度でDMF中で最適に行われる。この反応は、非保護または保護(例えば、N−ベンゾイル化)の塩基、あるいはスキーム1による反応の記載で述べたようなそれらの前駆体のいずれかを用いて行われ得る。
【0114】
式VIの保護された中間体は、複素環塩基のところを変換するのに都合よく適用し得、式Iの広範な種類の付加化合物を与える。式VIIの2−アミノ−6−クロロプリン誘導体の6位のハロゲン(例えば、塩素)原子の反応性は、広範な種類の6−置換2−アミノプリン化合物の調製に適用可能である;従って、アジ化ナトリウムまたはアジ化リチウムと加熱することによって、2−アミノ−6−アジドプリン誘導体を調製することが可能になり、その誘導体はさらに、2,6−ジアミノプリン化合物に還元され得る。あるいは、クロロ誘導体をチオ尿素で処理すると、6−チオグアニン化合物を与えるが、一方、それと一級または二級アミンとの反応は、N6置換の、または二置換の2,6−ジアミノプリン誘導体を与える。
【0115】
類似の変換もまた、6−クロロプリンから誘導される式VIのジエステルに適用可能である。このジエステルは、最終的に、6−メルカプトプリン、あるいは、N6−モノまたは二置換アデニンを含む式Iの化合物になる。
【0116】
アルキル化は、速やかに進み、そして所望の式VIIの中間体は、反応混合物から容易に単離され、そしてクロマトグラフィーにより精製され得る。式IAおよびIBの化合物になるこれらの中間体のさらなる処理はスキーム1に記載の手順と同一である。
【0117】
スキーム1により記載の方法に比べた、式Iの化合物のこの調製方法の利点は、塩基の保護の回避が可能であることに加えて、中間体の式IIのN−(2−ヒドロキシプロピル)誘導体の調製に必須の酸性条件、および、最終のハロトリメチルシラン処理を除く任意の他の脱保護、がいらないということにある。従って、この代替の手順は、鋭敏な複素環塩基の結合している式Iの化合物の合成に適用され得る。
【0118】
両反応スキーム1および2に関して、本発明の化合物は、示されるような所望の複素環塩基Bのアルキル化により、あるいは、ある場合には、Bの前駆体のアルキル化により、調製され得る。従って、グアニン誘導体は、2−アミノ−6−クロロプリンのアルキル化、次いでC−Cl結合の酸加水分解によって最適に合成され得る。シトシン誘導体は、炭酸セシウムの存在下でのシトシンの直接アルキル化により、適度な収量で合成され得る;より高い収量は、シントンXIによる4−メトキシ−2−ピリミドンのアルキル化により形成される中間体の加アンモニア分解により得られる。
【0119】
複素環塩基での同様のその後の変更は、そのスキームの最終生成物、すなわち、本発明の主題である式Iの化合物を用いて行われ得る:アデニン、2,6−ジアミノプリンまたはグアニンの誘導体は、亜硝酸またはそのエステルで脱アミノ化することにより、対応するヒポキサンチン、2−ヒドロキシアデニンまたはキサンチンの誘導体に変換され得る;同様に、ウラシル誘導体は、シトシン誘導体に同様に転換され得る。式Iの化合物のさらなる変換は、核酸化学の常法により実現され得る:例えば、アデニン部分とクロロアセトアルデヒドとの反応は、N1,6−エテノ誘導体を与える;8−ブロモ誘導体を得るためのプリン塩基の臭素化;プリンおよびピリミジン化合物の両方におけるNH−官能基のN−アルキル化など。これらその後の変換のどれも、式Iの化合物の側鎖またはホスホネート基でのいかなる変化にも関与しない。
【0120】
スキーム1および2の経路の一部である中間体化合物は、それ自身、新規化合物であり、従って、本発明の一部であることが認められる。
【0121】
スキーム1および2のプロセスを用いることの利点は、光学的に純粋な形として容易に入手可能である式Xの出発物質の利用にある。スキーム1およびスキーム2の両方において用いられるキラルなシントンXを調製するための反応系列は、スキーム3に記載される。
スキーム3
【0122】
【化42】

あらゆる非対照合成の極めて重要な工程は、光学的に純粋なキラルな出発物質の入手可能性に依存する。本発明に用いられる方法は、市販の(Merck)、式VIIIの乳酸アルキルエステルのエナンチオマーを使用する。最初に、これらのエステルは、テトラヒドロピラニル基によってヒドロキシル官能基のところで保護される;この反応は、酸触媒の存在下、直接の添加により溶媒なしで行われる。式IXのエステルは、真空下での分留により得られる。これらの中間体は、エーテル中で水素化リチウムアルミニウムにより、あるいは、エーテルまたは他の不活性溶媒中で水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムにより還元されて、式Xの化合物になる。
生物学的活性および使用
エナンチオマー的に分割された本発明の化合物は、インビトロおよびインビボの両方において、顕著な抗レトロウィルス活性を示す。これらのインビトロでの有効性は、MT4およびCEM細胞中のヒト免疫不全ウィルス1型(HIV−1)および2型(HIV−2)について、およびC3H/3T3細胞中のモロニィネズミ肉腫ウィルス(MSV)について実証された。これらのインビボでの有効性は、MSV感染したNMRIマウスにおいて証明された。ここで、この化合物は、非経口投与および経口投与のいずれの場合でも、腫瘍のイニシエーションの平均日数を著しく延ばし、そして平均生存日数を実質的に延長した。
【0123】
本発明の化合物は、プロトタイプ化合物(PMEA、PMEADAP、PMEG)および/またはFPMP誘導体、例えば、FPMPA、FPMP−DAP)、および最も関連のある未分割のPMPG+PMPAに比べていくつかの利点を有している:(a)これらの抗レトロウィルス活性は、明らかに、他の抗ウィルス活性と区別される(例えば、ヘルペスウィルスに対して);(b)これらの抗レトロウィルス活性は、細胞毒性によるものではない。従って、これらの化合物のインビトロでの治療指数は、プロトタイプ化合物の治療指数より非常に高く、そしていくつかの場合、>2000の値に達する。このような化合物は、理想的には、慢性疾患、例えば、AIDSの長期治療に適し得る。
【0124】
本発明の主題を提示する試験化合物の構造は、AIDS患者の臨床試験に一般に用いられてきた化合物のいずれとも、全く無関係である。これにより、このような治療(例えば、AZT、DDI、DDC、TIBO、ネビラピン(nevirapine)、ピリジノンなど)に対して耐性になったそれらのウィルス株に対して、これらの化合物の交差耐性が避けられる
これらの化合物の生物学的活性は、高度にエナンチオマー性特異的である。一般に、抗レトロウィルス活性の原因は、(R)−エナンチオマーである。グアニン系における(S)−エナンチオマーの活性は、実質的に増大した毒性を伴う。
【0125】
本発明の化合物は、レトロウィルス、例えば、ヒト免疫不全ウィルス(AIDS)、ヒトT細胞白血病ウィルス(ヘアリーセル白血病、急性T細胞白血病(HTL))によって引き起こされる疾患の治療に適用され得る。これらの化合物の抗ウィルス作用の分子標的が、ウィルスにコードされる逆転写酵素であるので、これらはまた、抗ヘパドナ(hepadna)ウィルス活性(例えば、B型肝炎ウィルス)を有するべきである。
【0126】
本発明の化合物はまた、インビトロでの方法で有用な他の化合物の調製において、中間体としても有用である。例えば、ワトソン−クリック塩基対形成が可能な塩基を含有する化合物は、公知の方法によってジホスホリル化され、そしてこれまで通常、核酸配列決定に用いられていたジデオキシNTP類に対するアナログとして使用される。本発明の化合物は、ジデオキシNTP類と同様に、核酸鎖ターミネーターとして作用する。この特性に基づく他の用途は、当業者には明白である。
【0127】
本発明の化合物はまた、オリゴヌクレオチドまたは核酸のハイブリダイゼーションに基づく予備的方法または診断方法にも有用である。例えば、この化合物は、非酵素的合成法(例えば、H−ホスホネート化学またはホスホルアミダイト化学)を用いてオリゴヌクレオチド中に組み込まれるのに適したモノマーに転換される。次いで、このモノマーは、このような方法を用いるオリゴヌクレオチド合成において、3’末端塩基として用いられる。モノマーのPMP部分、モノマー中に存在する任意の改変された塩基、またはその両者は、抗体による認識および結合のために容易に利用可能である。この抗体は、次々に、(標的分析物の配列に対するモノマーでラベルされたプローブのハイブリダイゼーションを検出するために)ラベルされ、あるいはこの抗体は(プローブに結合した核酸の予備的分離のために)固定化される。この種の方法の例は、EP 144,913;EP 146,039;WO 85/02415;UK 2,125,964Aにさらに記載されている;これらは、本発明のモノマーがワトソン−クリック塩基対形成可能であること、または本発明のモノマーが任意のポリメラーゼによって認識されることを必要としない。
【0128】
この化合物は、局所的または全身的に、すなわち、経口的、経直腸的、経膣内的、および非経口的(筋間、静脈内、皮下、および鼻内の経路により)に投与され得る。一般に、経口での適用は、非経口的に与えられた量に匹敵する治療効果を生じさせるためには、多量の活性物質を必要とする。
【0129】
ヒトレトロウィルス疾患の治療のための薬学的組成物は、少なくとも1種の式IAまたはIBの化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含有し、この化合物は、一般には、薬学的に受容可能な担体および非毒性の不活性アジュバントを組み合わせて、この組成物の重量に対して95〜0.5重量%を含有する。他の治療剤もまた存在し得る。さらに、式IAおよび/またはIBの化合物の混合物も、このような混合物の各成分が実質的にそのエナンチオマーを含まないならば、使用され得る。
【0130】
式Iの化合物を含有する薬学的組成物は、通常、錠剤、トローチ剤(lozenge)、カプセル、散剤、水性または油性懸濁液、シロップ、および水性溶液として調製される。この化合物は、全身投与、局所(topical)投与、または局在性(localized)投与を包含する種々の投与形態のために処方され得る。技術および処方は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版に、見い出され得る。活性成分は、一般に、投与形態および投与剤型の性質に依存して、希釈剤または賦形剤のような担体と組み合わせられ、この担体は充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、または潤滑剤を包含し得る。典型的な投与剤型は、錠剤、散剤、液体調製物(懸濁液、乳濁液、液剤など)、顆粒、カプセル、および坐剤、ならびにリポソーム調製物を包含する注射用液体調製物を包含する。
【0131】
全身投与に対しては、注射が好ましく、これには、経筋肉、静脈内、腹腔内、および皮下が包含される。注射に対しては、本発明の化合物は、液状溶液、好ましくは、ハンクス液またはリンゲル液のような生理学的に適合可能な緩衝液中に処方される。さらに、この化合物は、固形状に処方され得、そして使用の直前に再溶解または懸濁され得る。凍結乾燥体もまた包含される。系統的投与はまた、経粘膜または経皮的な手段によっても行われ得、あるいはこの化合物は、経口で投与され得る。経粘膜または経皮的投与に対しては、浸透されるべき障壁に適した浸透剤が処方物中に用いられる。このような浸透剤は、一般に、当該分野で公知であり、そして、例えば、経粘膜投与のための胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を包含する。さらに、浸透を促進するために、界面活性剤が用られ得る。経粘膜投与は、例えば、鼻内用スプレーまたは坐剤の使用により行われ得る。経口投与に対しては、この化合物は、カプセル、錠剤、およびトニックのような通常の経口投与剤型中に処方される。
【0132】
局所投与に対しては、本発明の化合物は、当該分野で一般に公知であるように、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲル剤、またはクリーム中に処方される。この化合物はまた、適切に処方される場合、眼の適応症(optalmic or ocular)に対しても投与され得る。
【0133】
本発明の活性化合物の有効量は、約0.01〜50mg/kg体重であることが期待され、1〜20mg/kgの範囲であることが好ましい。臨床的な適用における投与量は、患者の年齢、体重および症状、投与経路、病気の性質および重篤度を考慮して、専門的に調整されなければならない。一般的に、調製物は、1日当たり約100mgから約1000mg、1日1回〜3回、経口経路により投与されることが期待される。
【0134】
本発明の化合物、その調製方法およびその生物学的活性は、以下の実施例の実験からさらに明らかとなる。これらの実施例は、単に例示として示されており、そして本発明をこの実施例の範囲に限定するものとは見なされない。全ての融点は、Koflerのブロックの使用により算定されており、未補正である。溶液は、特定されない場合は、40℃/2kPaでエバポレートされた。薄層クロマトグラフィーは、蛍光指示薬を含有するシリカプレートの使用によって行われた;UV光によって検出される。核磁気共鳴(NMR)スペクトル特性は、基準化合物としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して百万分率(ppm)で表される化学シフト(δ)を示す。シグナルの多重度は、一重線(s)、二重線(d)、二重の二重線(dd)、多重線(m)、三重線(t)、または四重線(q)として報告される;他の略号には、ブロード(br)なシグナル、芳香環プロトン(arom.)、ヘキサジューテリオジメチルスルホキシドに対するd6−DMSO、酸化重水素に対するD2O、重水素化ナトリウムに対するNaOD、およびジューテリオクロロホルムに対するCDCl3が包含される。他の略号は通常どおりである。
【0135】
以下の実施例は、例示を意図するものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0136】
I.式IIの中間体の合成
A.分割された式XIの前駆体
実施例1
(R)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール.
イソブチル(R)−ラクテート(73g, 0.5モル,Merck)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(70g, 0.83モル,Merck)との混合物を、ジメチルホルムアミド(4ml)中で5M塩化水素で処理し、塩化カルシウムで保護された250mlの丸底フラスコ中で室温にて一晩放置した。酸化銀(15g)を加え、混合物を2時間マグネチックスターラーを用いて撹拌し、次いで濾過した。この生成物を蒸留(13Pa,沸点94〜96℃)によって単離して、イソブチル2−O−テトラヒドロピラニル−(R)−ラクテート(102.5g, 89%)を無色のオイルとして得た。
【0137】
1リットルの三ツ口丸底フラスコをオーブンで乾燥し、そして塩化カルシウム保護管を有する還流冷却器、250mlの滴下ロート、および磁気撹拌子を取り付けた。次いで、それに、水素化リチウムアルミニウム(15.8g, 0.415モル)とエーテル(500ml, 五酸化リンから蒸留した)との懸濁液を入れ、そして氷水浴中に置いた。
【0138】
混合物が連続して穏やかな還流状態になるようなスピードで撹拌しながら、イソブチル2−O−テトラヒドロピラニル−(R)−ラクテートの溶液を(約30分)滴下した。冷却浴を取り除き、混合物を外から加熱することによって、さらに3時間還流下で撹拌した。次いで、氷水浴によって再び冷却し、そして酢酸エチル(75ml)を20分間にわたって加え、次いで水(15ml)および4M NaOH(15ml)を加えた。次いで、得られた混合物をCelite 521(Janssen)上で吸引濾過し、そしてクロロホルム(500ml)で洗浄した。合わせた濾液を真空下に置き、残渣をエーテル(300ml)中に再溶解させ、そして無水硫酸マグネシウム(50g)を加えた。室温で一晩放置した後、この混合物を吸引濾過し、エーテル(200ml)で洗浄し、そしてその濾液の溶媒を真空下で除いた。残留したオイルを蒸留(13Pa,75〜76℃)することによって、2−O−テトラヒドロピラニル−(R)−プロパン−1,2−ジオール(67.5g, 0.422モル, 95%)を無色のオイルとして得た。
【0139】
2−O−テトラヒドロピラニル−(R)−プロパン−1,2−ジオール(67.2g, 0.42モル)のピリジン(600ml)溶液を、磁気撹拌子および塩化カルシウム管で保護されているサイドチューブを有する500mlの滴下ロートを備えた2リットルの丸底フラスコに入れた。4−ジメチルアミノピリジン(2g)を加え、このフラスコを氷水冷浴に入れ、そしてp−トルエンスルホニルクロライド(91g, 0.477モル)のピリジン(300ml)溶液を撹拌しながら1時間にわたって加えた。この混合物を氷冷しながらさらに3時間撹拌し、そして一晩冷蔵装置内で4℃に保った。次いで、水(20ml)をこの混合物に加え、そして1時間放置した後、ピリジン(約300ml)を真空下で留去した。残渣を酢酸エチル(2.5リットル)で希釈し、そして水(300ml)と共に振とうした。下側の水層を分離した後、有機層を水で洗浄(300mlで2度)し、真空下でエバポレートし、そして残渣を真空下でトルエンと共にエバポレートした(250mlで4度)。残留したコハク色のオイルをシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルムで溶出)によって精製することにより、(R)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2ジオール122g(0.39モル,93%)を濃厚な無色のオイル(RF 0.60(TLC,クロロホルム))として得た。この生成物を、+4℃で数カ月間、明らかな分解なしに保存した。
【0140】
【化43】

実施例2
(S)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール.
エチルL−(−)ラクテート(59g, 0.5モル,Merck)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(70g, 0.83モル)との混合物を、実施例1に記載のようにして、正確に扱い、そして処理して、蒸留(2kPa, 102−104℃)後、エチル2−O−テトラヒドロピラニル−(S)−ラクテート(98g, 0.485モル,97%)を無色のオイルとして得た。
【0141】
この物質(91g, 0.45モル)を水素化リチウムアルミニウムで実施例2に記載のように処理して、蒸留(13Pa, 72−75℃)後、2−O−テトラヒドロピラニル−(S)−プロパン−1,2−ジオール(67.7g, 0.423モル,94%)を無色のオイルとして得た。
【0142】
実施例1に記載の条件にした後、2−O−テトラヒドロピラニル−(S)−プロパン−1,2−ジオール(67.2g,0.42モル)を、(S)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオールに変換した。シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルムで溶出)によって精製することにより、生成物(121g, 0.386モル,92%)を濃厚な無色のオイル(クロマトグラフィー的に、TLC, RF 0.60(クロロホルム)で均一)として得た。
【0143】
【化44】

B.式IIの化合物
実施例3
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン
微粉末化したアデニン(13.6g; 0.1モル)と炭酸セシウム(16.4g; 0.05モル)とのジメチルホルムアミド(400ml, 五酸化リンから蒸留)中の懸濁液を、250mlの滴下ロートおよび塩化カルシウム保護管を備えた1リットルの丸底フラスコ中に入れた。この混合物を100℃に予熱し、そして(S)−(2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニル)プロパン−1,2−ジオール(31.4g, 0.1モル)のジメチルホルムアミド(200ml)溶液をマグネチックスターラーで撹拌しながら30分間にわたって滴下した。得られた透明の溶液をさらに6時間100℃で加熱し、冷却し、そして溶媒を50℃/13Paで留去した。残渣を沸騰したクロロホルムで抽出(300mlで3度)し、濾過し、そして真空下でその濾液の溶媒を除いた。残渣を、沸騰エタノールから結晶化することにより、9−(S)−(2−O−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)アデニン(13.2g, 0.048モル,48%)、RF 0.40(TLC,クロロホルム−メタノール,4:1)を得た。融点172℃。
【0144】
【化45】

9−(S)−(2−O−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)アデニン(13g, 0.047モル)の0.25M硫酸(300ml)溶液を、一晩室温で放置し、そして飽和水酸化バリウム水溶液でpH7.0−7.1まで中和した(pHメーター使用)。得られた懸濁液を80℃まで昇温し、そして30分間放置した後、Celite 521(Janssen)層を通して濾過し、沈澱物を沸騰水(500ml)で洗浄した。合わせた濾液および洗浄液を真空下でエバポレートして、乾燥させ、その残渣をエタノールと共にエバポレート(200mlで2度)し、そして沸騰エタノール(エーテルを添加して濁った状態)から結晶化した。この生成物を濾過により回収して、9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(7.7g, 0.04モル,85%)を得た。融点202℃。
【0145】
【化46】

実施例4
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン.
アデニン(13.6g, 0.1モル)と(R)−(2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(31.4g, 0.1モル)との縮合を、炭酸セシウム(16.4g, 0.05モル)の存在下で、実施例3に記載のようにして行った。沸騰クロロホルムによる抽出の後、エタノール(エーテルを添加して濁った状態)から残渣を結晶化して、9−(R)−(2−O−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)アデニン(14.6g, 0.053モル,53%)を得た。融点171〜172℃。
【0146】
【化47】

9−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)アデニン(14.0g, 0.05モル)の0.25M硫酸溶液を、一晩室温で放置し、そして実施例3に記載のように処理した。この生成物を単離することにより、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(8.1g, 0.042モル,84%)を得た。融点202℃。
【0147】
【化48】

実施例5
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン
2,6−ジアミノプリン(15g, 0.1モル)と炭酸セシウム(16.4g, 0.05モル)とのジメチルホルムアミド(250ml)懸濁液を、磁気撹拌子および塩化カルシウム保護管を備えた500ml丸底フラスコに入れ、そして100℃に予熱した。(R)−(2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(32.8g, 0.104モル)を一度に加え、そしてこの混合物を100℃で20時間撹拌した。溶媒を50℃/13Paでエバポレートし、そして残渣を沸騰クロロホルムで抽出した(300mlで3度)。濾液をシリカゲルカラム(500ml)で分離して、生成物をクロロホルム−メタノール混合液(95:5)で溶出し、酢酸エチル(エーテルを添加して濁った状態)から結晶化した後、9−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(14.2g, 0.0485モル, 48.5%)を得た。融点150〜152℃。
【0148】
【化49】

9−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(11.7g, 0.04モル)の0.25M硫酸(400ml)溶液を一晩室温に放置し、アンモニア水で中和し、そして真空下で濃縮した。この溶液をDowex 50X8のカラム(250ml, 100〜200メッシュ,酸型)にかけ、そして溶出物のUV吸収および導電率が初期値まで低下するまで、このカラムを水で洗浄した。この生成物を希釈した(1:10)アンモニア水で溶出し、UV吸収を示す溶出液を集めて、そして真空下で溶媒を除いた。残渣をエタノールから結晶化することにより、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(6.5g, 0.031モル, 77.5%)を得た。融点192℃。
【0149】
【化50】

実施例6
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン
実施例5と同様にして、(S)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(34.5g, 0.11モル)を用いて、合成を行った。粗反応生成物を0.25M硫酸(300ml)に溶解し、そして一晩室温で放置した。この混合物をアンモニアによってアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートしておよその容量とした。次いで、その150mlをDowex 50X8(酸型)のカラム(300ml, 100〜200メッシュ)にかけた。溶出物のUV吸収が消失するまで、カラムを完全に洗浄した。希釈した(1:10)アンモニアで引き続き溶出してUV吸収を示す画分を得、真空下で溶媒を除き、そしてメタノールから結晶化することにより、粗9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンを得た(含量、>95%; 9.2g, 0.044モル,44%)。これは次の合成工程に続けて用いた。[α]D=+41.2°(c=0.5, 0.1M HCl)。
【0150】
実施例7
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン
2−アミノ−6−クロロプリン(18.6g, 0.11モル,Mack)と炭酸セシウム(17.9g, 0.055モル)とのジメチルホルムアミド(350ml)懸濁液を、塩化カルシウム保護管下で100℃で撹拌し、そして(R)−(2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(42g, 0.134モル)のジメチルホルムアミド(100ml)溶液を30分間にわたる間隔で滴下した。この混合物をさらに6時間100℃で撹拌し、冷却し、そして50℃/13Paでエバポレートした。残渣を沸騰クロロホルムで抽出(300mlで3度)し、そしてこの抽出液を真空下で濃縮した。この物質をクロロホルム中シリカゲル(500ml)カラムにかけ、そして同じ溶媒で溶出した。関係あるUV吸収画分をプールし、エバポレートし、そして真空下で乾燥した。9−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリンを黄色の不定形の泡状物として得た(RF 0.64(クロロホルム−メタノール、95:5中でのTLC)。
【0151】
【化51】

9−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(10g, 0.032モル)の1M塩酸(200ml)溶液を、1時間撹拌しながら還流し、冷却し、アンモニアでアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。残渣を沸騰水から結晶化(活性炭で脱色)することにより、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン(6.0g, 0.029モル, 91%)を得た。融点255℃。
【0152】
【化52】

実施例8
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン.
塩化カルシウム保護管を備えた1リットルの丸底フラスコ中の蒸留ジメチルホルムアミド(300ml)中のミネラルオイル(Janssen)中の60% NaH分散液の4g(0.1モル)のスラリーに、2−アミノ−6−クロロプリン(17.5g, 0.1モル,Mack)を一度に加え、そしてこの混合物を1時間室温でマグネチックスターラーで撹拌した。次いで、(S)−(2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(34.5g, 0.11モル)を、一度に加え、この混合物を60℃で3時間および80℃で8時間撹拌した。次いで、溶媒を50℃/13Paで除去し、そして残渣を沸騰クロロホルムで粉砕(300mlで2度)し、そして濾過した。この濾液をシリカゲルカラム(300ml)でクロマトグラフすることにより、9−(S)−(2−O−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(10.9g, 0.035モル,35%)を不定形の泡状物として得た。この物質を、2M塩酸(100ml)とジオキサン(100ml)との混合物中で1時間還流し、冷却し、アンモニア水で中和し、そして真空下でエバポレートした。この残渣を水から結晶化することにより(活性炭で脱色)、9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン(5.7g, 0.027モル,77%)を得た。融点256℃。
【0153】
【化53】

実施例9
1−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)シトシン
蒸留ジメチルホルムアミド(300ml)中のシトシン(8.5g, 76ミリモル,Fluka)と、炭酸セシウム(13g, 40ミリモル)と、(R)−2−O−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(24g, 76ミリモル)との混合物を、100℃で12時間撹拌し、そして熱い状態で濾過した。この濾液の溶媒を高真空で除き、そして残渣を沸騰クロロホルムで粉砕(200mlで3度)し、そして濾過した。この濾液をシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけることにより、1−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)シトシン(4.6g,18ミリモル,23.5%)を得た(酢酸エチル−石油エーテル混合物から結晶化した)。融点259〜260℃。
【0154】
【化54】

1−(R)−(2−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)シトシン(4.0g, 16ミリモル)の0.25M硫酸(50ml)溶液を一晩室温で放置し、そして飽和水酸化バリウム水溶液でpH7.0〜7.1まで中和した。この懸濁液を80℃に加温し、Celite 521(Janssen)層を通して濾過し、そして沸騰水(500ml)でフィルターを洗浄した。この濾液を真空下で乾燥状態にし、そして残渣をエタノール(200ml)で共蒸留(codistilled)した。この残渣をエタノール(エーテルを添加して濁った状態)から結晶化することにより、1−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)シトシン(2.5g, 15ミリモル, 94%)を得た。融点246℃。
【0155】
【化55】

実施例10
1−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)シトシン
蒸留ジメチルホルムアミド(300ml)中の水素化ナトリウム(4g, 0.1モル, 60%懸濁液)のスラリーに、4−メトキシ−2−ピリミドン(12.6g, 0.1モル)を撹拌しながら加え、そしてこの混合物を水分を除いた状態(塩化カルシウム保護管)で1時間撹拌した。得られた透明の溶液を(R)−2−O−−テトラヒドロピラニル−1−O−p−トルエンスルホニルプロパン−1,2−ジオール(31.4g, 0.1モル)で処理し、そしてこの反応混合物を撹拌しながら8時間80℃で加熱した。次いで、溶媒を真空下で除去し、そして残渣を沸騰クロロホルムで粉砕(200mlで3度)し、そして濾過した。この濾液を、シリカクロマトグラフィーによって精製することにより、1−(R)−(2−O−テトラヒドロピラニルオキシプロピル)−4−メトキシ−2−ピリミドン(16.9g, 63ミリモル, 63%)を不定形の泡状物として得た。
【0156】
この生成物をアンモニアのメタノール溶液(500ml, 0℃で飽和)と共に110℃で8時間スチール製のオートクレーブ中で加熱し、冷却し、そしてこの懸濁液を真空下でエバポレートした。残渣を0.25M硫酸(300ml)に溶解し、そしてこの溶液を70℃で5時間加温した。混合物をアンモニア水で中和し、Celite 521(Janssen)層を通して濾過し、そして濾液を真空下で濃縮した。得られた溶液をDowex 50X8のカラム(250ml, 100〜200メッシュ(酸型))にかけ、そしてこのカラムを溶出物のUV吸収が消失するまで水で溶出した。希釈した(1:10)アンモニア水で引き続き溶出することにより、UV吸収を示す画分を得、これをプールし、そして真空下でエバポレートした。エタノールから結晶化することにより、1−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)シトシン(7.8g, 46ミリモル, 73%)を得、これは実施例9に従って調製した生成物と一致した。
【0157】
実施例11
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(5.8g, 30ミリモル)のピリジン(160ml)懸濁液を、クロロトリメチルシラン(26ml)で処理し、そしてこの混合物を1時間撹拌した。次いで、塩化ベンゾイル(20ml)を加えて、そしてこの混合物をさらに2時間撹拌した。反応混合物を氷水浴中に入れ、そして氷冷水(30ml)、その後に濃アンモニア水(70ml)を撹拌しながら15分間かけて滴下した。混合物を真空下でエバポレートした。残渣をエタノールと共蒸留(150mlで3度)し、そして沸騰水から結晶化した。この結晶生成物を回収し、エタノール(エーテルを添加して濁った状態)から再結晶することにより、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン(7.8g, 26ミリモル,87%)得た。融点227℃。RF 0.40(TLC, クロロホルム−メタノール,4:1)。
【0158】
【化56】

実施例12
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)アデニン(6.8g, 35ミリモル)のピリジン(160ml)撹拌懸濁液に、クロロトリメチルシラン(26ml)を加え、そしてこの混合物を1時間撹拌した。塩化ベンゾイル(20ml)を一度に加え、混合物をさらに2時間撹拌し、そして氷水浴で冷却した。氷冷水(30ml)および濃アンモニア水(70ml)を15分間隔にわたって加え、そして混合物をさらに30分間0℃で撹拌した。溶媒を真空下でエバポレートし、そして残渣を水と共蒸留した。水から結晶化した後、生成物を回収し、そしてエタノールから再結晶することにより、9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン(4.4g, 15ミリモル,43%)、融点230℃を得た。合わせた母液を真空下でエバポレートし、そして残渣をエタノール(150ml)と共に30分間撹拌した。懸濁液を濾過し、そして無機塩の沈澱物をエタノール(50ml)で洗浄し、そして捨てた。濾液を真空下で乾燥状態にし、そして残渣をクロロホルムで粉砕(150mlで2度)し、そして濾過した。濾液をシリカゲルカラム(200ml)でクロマトグラフィーにかけ、酢酸エチル(石油エーテルを添加して濁った状態)から結晶化した後、さらに生成物を得た。総収量、7.4g(25ミリモル,71.5%)。
【0159】
【化57】

実施例13
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−N2−ベンゾイルグアニン
クロロトリメチルシラン(20ml)を、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン(5.0g, 24ミリモル)のピリジン(130ml)撹拌懸濁液に一度に加え、そして1時間撹拌した後、塩化ベンゾイル(16ml)を一度に加えた。この混合物をさらに2時間撹拌し、氷水浴で冷却し、そして氷水(24ml)次いで、濃アンモニア水(56ml)を10分間隔にわたって滴下した。この反応混合物をさらに30分間撹拌し、そして真空下でエバポレートした。残渣を水(200ml)と酢酸エチル(200ml)との混合物で粉砕し、濾過し、水、エーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥した。得られた9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−N2−ベンゾイルグアニン(3.4g, 11ミリモル, 45%)はクロマトグラフィー的に純粋であった:RF 0.33(TLC, クロロホルム−メタノール,4:1)。融点278℃。
【0160】
【化58】

実施例14
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N2−ベンゾイルグアニン
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン(2.5g, 12ミリモル)と、ピリジン(65ml)と、クロロトリメチルシラン(10ml)とからなる反応混合物を、栓付きフラスコ中で1時間室温にて撹拌し、そして塩化ベンゾイル(8ml)を一度に加えた。さらに2時間撹拌した後、この混合物を氷および氷水(12ml)で冷却し、次いで、濃アンモニア水(28ml)を5分間にわたって加えた。0℃で30分後、溶媒を真空下でエバポレートし、そして残渣をエタノールと共蒸留した。80%エタノール水溶液から結晶化することにより、9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N2−ベンゾイルグアニン(2.4g, 7.6ミリモル,63.5%)、融点276℃を得た。
【0161】
【化59】

II. 式XVIIの中間体の合成
実施例15
(S)−2−(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ)−1−(p−トルエンスルホニルオキシ)プロパン
滴下ロートおよび塩化カルシウム保護管を備えた1リットルの丸底フラスコ中に入れた水素化ナトリウム(17.2g, オイル中60%分散液,0.43モル)のジメチルホルムアミド(400ml)中の懸濁液に、撹拌し、そして氷で冷却しながら、30分間にわたって(S)−2−O−テトラヒドロピラニル−1,2−プロパンジオール(69.2g, 0.43モル)を滴下した。この懸濁液を0℃でさらに1時間撹拌し、そして臭化ベンジル(51ml, 0.43モル)を0℃で滴下した。混合物を0℃で4時間撹拌し、そして室温で48時間放置した。メタノール性アンモニア(30%溶液、20ml)を加え、そして2時間放置後、溶媒を真空下で除去した。酢酸エチル(500ml)を加え、そしてこの混合物を水(100mlで4度)で洗浄した。有機層をエバポレートし、そして70%メタノール水溶液(400ml)中の得られたオイルを50mlのDowex 50X8(酸型)で4時間還流しながら撹拌した。温かい混合物を濾過し、メタノールで洗浄し、そしてこの濾液を真空下でエバポレートした。残留オイルをエーテル(200ml)中にとり、水(50ml)で洗浄し、乾燥し、そして真空下で蒸留した。収量、60.8g(85%,沸点100〜105℃/20Pa)(S)−1−O−ベンジル−1,2−プロパノール、[α]D=−13.6°(c=0.5, CHCl3)。
【0162】
1,2−ジクロルエタン(200ml)中のこの物質(0.37モル)を、乾燥塩化水素を0℃で2時間同時に導入しながら、パラホルムアルデヒド(20g)および塩化カルシウム(10g)と共に撹拌した。この混合物を真空下に置き、残渣をトルエン(50mlで3度)と共蒸留し、そしてトリ(2−プロピル)ホスファイト(50g)を加えた。この混合物を撹拌しながら110℃まで加熱し、そして発生した揮発物質を留去した。発熱反応がおさまった後、混合物を150℃まで加熱し、そして最後に揮発物を140℃/1kPaで留去した。得られた物質をアルミナのカラム(200ml)を通して濾過し、ベンゼン(0.5リットル)で溶出した。この溶出物をエバポレートし、そして残渣を真空下で蒸留して、(S)−1−ベンジルオキシ−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]プロパン(44g, 35%, 沸点125〜130℃/13Pa)を得た。
【0163】
【化60】

メタノール(400ml)中のこの生成物(44g, 0.128モル)を、大気圧下で、10%の活性炭担持パラジウム(1.5g, Merck)および濃塩酸(0.7モル)と共に、水素化した。この混合物を濾過し、濾液をトリエチルアミンを加えることによりアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。エーテル(200ml)中の残渣を水(20mlで2度)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして真空下でエバポレートすることにより、(S)−2−(ジ−(2−プロピル)ホスホニルメチル)プロパン−1,2−ジオール(24.4g, 75%)を無色のオイルとして得た。
【0164】
ピリジン(200ml)中のこの残渣(24.4g, 96ミリモル)およびジメチルアミノピリジン(1g)を、0℃で撹拌しながら塩化トシル(22g, 0.115モル)のピリジン(100ml)溶液を滴下して処理し、そしてこの混合物を0℃で一晩置いた。水(10ml)を加え、そしてこの溶媒を元の容量の約半量になるまで真空下でエバポレートした。酢酸エチル(300ml)を加え、この混合物を、水、1M HCl(酸性にする)、水、飽和炭酸水素ナトリウム、および水(100mlずつ)で連続的に洗浄した。最後にこの溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、そして真空下でエバポレートすることにより、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムのクロマトグラフィー(クロロホルムによって溶出)によって精製した。(S)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパンが、濃厚な黄色のオイルとして得られた。これはさらなる調製物のために用いられた(28g, 69ミリモル)。
【0165】
実施例16
(R)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパン
実施例15と本質的に同様にして、この合成を行ったが、(R)−2−O−テトラヒドロピラニル−1,2−プロパンジオール(42g, 0.262モル)を用いて開始した。1−O−ベンジル−(R)−プロパン−1,2−ジオールを、真空下で蒸留することによって得た(33g, 76%,沸点98〜102℃/Pa)。[α]D=−12.2°(c=0.5, CHCl3)。クロロメチル化およびトリ(2−プロピル)ホスファイトとの反応により、粗リン酸ジエステル(32g)が得られた。これは10%の活性炭担持パラジウム触媒(1g)および塩酸(0.5ml)を有するメタノール中で水素化した。中間体を実施例15に記載のように操作した後、(R)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパン(24g, 59ミリモル)が得られた。
【0166】
III. 式Iの生成物の合成
実施例17
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン(3g, 10ミリモル)とジ(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(4.2g, 12ミリモル)との混合物を、ジメチルホルムアミド(25mlで2度)と40℃/13Paで共蒸留した。この残渣をジメチルホルムアミド(50ml)中に再溶解し、氷で冷却し、そして水素化ナトリウム(1.2g, 30ミリモル,オイル中60%分散液)を一度に加えた。得られた混合物を塩化カルシウム保護管をつけて室温下で48時間撹拌した。メタノール(150ml)中の0.1Mナトリウムメトキシド溶液を加え、そしてこの混合物を湿気を遮断して一晩置いた。次いで、Dowex 50X8(酸型)を加えて混合物を酸に反応させ、次いでトリエチルアミンを加えて懸濁液をアルカリに反応させた。濾過し、そしてメタノール(200ml)で樹脂を洗浄した後、濾液を乾燥状態までエバポレートした(最終的に40℃/13Pa)。水(200ml)中の残渣を、エーテル(100mlで2度)で抽出し、そして水相を真空下で濃縮した(約100mlまで)。この溶液をDowex 50X8カラム(250ml)上に付与し、そして溶出物のUV吸収が初期レベルまで下がるまで、20%メタノール水溶液で洗浄した。次いで、この生成物を希(1:10)アンモニアで溶出し、適切なUV吸収性画分をプールし、そして真空下でエバポレートした。残渣をエタノール(50mlで2度)と共蒸留し、そして一晩五酸化リンで13Paで乾燥することにより、粗ジ(2−プロピル)エステル(3g), RF=0.55(TLC クロロホルム−メタノール, 4:1)が得られた。
【0167】
アセトニトリル(50ml)およびブロモトリメチルシラン(5ml)を、この残渣に加え、そしてこの懸濁液を撹拌によって溶解した。栓付きフラスコ中に室温で一晩置いた後、この混合物を真空下でエバポレートし、そして水(100ml)をこの残渣に加えた。この混合物をアンモニア水でアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。水に溶解した残渣を、Dowex 50X8のカラム(250ml, 酸型)に付与した。これを溶出液のUV吸収が下がるまで水で洗浄し、次いでアンモニア水(1:10)溶液で溶出した。この生成物を含有する画分を真空下で乾燥状態までエバポレートし、そして残渣を濃アンモニアでpH9〜9.5までアルカリ性にすることにより、水(50ml)中に再溶解した。この溶液をDowex 1X2のカラム(250ml,酢酸型)上に付与した。次いでこれを溶出物のUV吸収が下がるまで0.02M酢酸で洗浄した。次いで、酢酸濃度を直線的に上昇させることによって(2リットルで0.02M〜1M)この溶出を持続させ;この生成物を1M酢酸で溶出した。関連する画分をプールし、真空下でエバポレートし、そして残渣を水(50mlで3度)と共蒸留した。沸騰水からの結晶化(3容量のエタノールを溶解後に加えた)により、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(1.35g, 4.7ミリモル,47%)、融点279°を得た。
【0168】
【化61】

実施例18
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−N6−ベンゾイルアデニン(3.57g, 12ミリモル)とジ(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(5.25g, 15ミリモル)とのジメチルホルムアミド(50ml)溶液を、−20℃まで冷却し、そして水素化ナトリウム(1.44g, 36ミリモル)をオイル中の60%分散液として一度に加えた。この混合物を0℃で3時間および室温で48時間湿気から保護しながら撹拌した。さらに、この反応混合物を実施例17に記載のようにして処理した。Dowex 1X2のカラムでのクロマトグラフィーによって精製した後、生成物を水−エタノールから結晶化することにより、9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(1.9g, 6.7ミリモル,56%)が得られた。融点276〜278℃。
【0169】
【化62】

実施例19
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(2.1g,10ミリモル)を、ジメチルホルムアミド(40ml)とジメチルホルムアミドジメチルアセタール(25ml)との混合物中で加温することによって溶解し、そしてこの溶液を栓付きフラスコ中に一晩置いた。混合物を40℃/13Paでエバポレートし、そしてジメチルホルムアミド(20mlで2度)と共蒸留した。50%のピリジン水溶液(50ml)を残渣に加え、次いでドライアイスを加え、この混合物を40℃/13Paでエバポレートし、ピリジン(25mlで4度)と共蒸留し、そしてジ(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(4.2g, 12ミリモル)を残渣に加えた。次いで、混合物をジメチルホルムアミド(25mlで2度)と共蒸留し、同じ溶媒(40ml)中に再溶解し、そして−10℃まで冷却した。水素化ナトリウムをオイル中の60%懸濁液として一度に加え、そしてこの混合物を0℃で3時間および室温で48時間、湿気から保護した状態で撹拌した。酢酸(1.8ml, 30ミリモル)を加え、この混合物を40℃/13Paで乾燥状態までエバポレートした。この残渣を希釈した(1:1)アンモニア水に溶解し、(100ml)、一晩置き、そして真空下で乾燥状態までエバポレートした。残渣を実施例15に記載のように、Dowex 50X8のカラム(200ml)上で脱イオン化し、そしてこのアンモニア溶出物を13Paで一晩、五酸化リンで乾燥した。
【0170】
アセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)を加え、そしてこの混合物を栓付きフラスコ中で穏やかに振とうすることによってホモジナイズした。この溶液を一晩置き、そして真空下でエバポレートした。残渣を水(100ml)に溶解し、そして30分間放置後、この溶液をアンモニアによってアルカリ性にし、そしてエバポレートした。残渣を実施例17に記載のように、Dowex 50X8カラム(200ml, 酸型)上で脱イオン化した。アンモニア塩の残渣を水(50ml)に溶解し、アンモニアを加えることによってpH9〜9.5とし、そしてこの溶液をSephadex A−25のカラム(200ml)上に炭酸水素塩型で付与し、0.02M炭酸水素トリエチルアンモニウムによって平衡化した。このカラムを、まずUV吸収が下がるまで平衡化緩衝液によって、次いで直線的なグラジエントの炭酸水素トリエチルアンモニウム(pH7.5)(0.02Mおよび0.3M緩衝液、各1リットルから形成された)によって溶出した。この生成物を0.10〜0.15M濃度で溶出し、関連の画分をプールし、真空下でエバポレートし、そして残渣をメタノール(50mlで3度)と共にエバポレートした。水(25ml)に溶解した残渣をDowex 1X2のカラム(50ml)(アセテート)上に付与し、まず、UV吸収が消失するまで水で洗浄した。樹脂を300mlのビーカーに移し、そして1M酢酸(200ml)と共に撹拌した。懸濁液を濾過し、そして樹脂を沸騰水(1リットル)で洗浄した。合わせた濾液を真空下でエバポレートし、そして残渣を水(50mlで3度)と共蒸留した。残渣を、沸騰水(100ml)に溶解し、熱いうちに濾過し、そしてエタノール(150ml)をこの濾液に加えた。氷冷により結晶化した生成物を、濾過により集め、エタノール、エーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥した。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(1.4g, 4.7ミリモル, 47%)が、遊離の酸(融点287℃)として得られた。
【0171】
【化63】

実施例20
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン
この化合物を、9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンから、本質的にその(R)−エナンチオマーについての実施例19に記載のように、調製した。水−エタノールからの遊離酸として結晶化された9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリンの収量は、33%(1.0g, 3.3ミリモル)に達した。融点275〜278℃。
【0172】
【化64】

実施例21
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)グアニン
9−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)−N2−ベンゾイルグアニン(2.5g, 7ミリモル)とジ(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(2.9g, 8.4ミリモル)との混合物を、ジメチルホルムアミド(25mlで2度)と40℃/13Paで共蒸留し、そして残渣をジメチルホルムアミド(30ml)で再溶解した。オイル中の60%分散液中の水素化ナトリウム(0.84g, 21ミリモル)を、一度に加え、そしてこの混合物を室温で湿気を遮断して24時間撹拌した。メタノール(100ml)をこの混合物に加え、次いで、一晩置いて、Dowex 50X8(酸型)で中和し、そして濾過した。濾液を高圧で乾燥状態までエバポレートし、そして水(150ml)中の残渣をエーテル(50mlで2度)で抽出した。この水溶液を真空下で約50mlまで濃縮し、そしてDowex 50X8のカラム(150ml)(酸型)上に付与した。これをまず、UV吸収が下がるまで水で、次いで希釈した(1:10)アンモニアで洗浄した。このアンモニア画分をエバポレートし、残渣をエタノール(50mlで2度)と共蒸留し、そして最後に一晩、13Paで五酸化リンで乾燥した。
【0173】
アセトニトリル(40ml)およびブロモトリメチルシラン(4ml)を残渣に加え、そして栓付きフラスコ中で撹拌することによってこの混合物を溶解した。一晩室温で放置後、この混合物を真空下でエバポレートし、そして残渣を水(100ml)中に溶解した。30分後、溶液をアンモニアでアルカリ性にし、そしてエバポレートした。Dowex 1X2での脱イオン化および精製を、本質的に、実施例17に記載のように行った。最終的な精製された遊離酸型の9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)グアニンを、エーテルを含むエタノールから沈澱させることにより、融点286℃を有する物質0.90g(3ミリモル, 43%)が得られた。
【0174】
【化65】

実施例22
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)グアニン
9−(S)−(2−ヒドロキシプロピル)グアニン(1.57g, 5ミリモル)とジ(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシメチルホスホネート(2.1g, 6ミリモル)との混合物を、ジメチルホルムアミド(20mlで2度)と40℃/13Paで共蒸留し、そして残渣をジメチルホルムアミド(20ml)に再溶解した。水素化ナトリウム(0.6g, 15ミリモル)をオイル中の60%分散液として一度に加え、そしてこの混合物を3日間室温で湿気を遮断して撹拌した。メタノール(30ml)を加え、そして溶液を一晩置いた。Dowex 50X8(酸型)での中和、および、濾過の後、濾液を真空下で乾燥状態までエバポレートし、そして実施例17に記載のように残渣を脱イオン化した。粗ジエステルのアンモニア溶出物を、五酸化リンで13Paで乾燥した。アセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)を加え、そしてこの混合物を撹拌することによって溶解した。室温で一晩置いた後、実施例17に記載のように反応混合物を処理した。9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)グアニンが、その(R)−エナンチオマー(実施例21)についての記載と同様に、遊離酸として43%収率(0.65g, 2.15ミリモル)で単離された。融点287℃。
【0175】
【化66】

実施例23
1−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)シトシン
1−(R)−(2−ヒドロキシプロピル)シトシン(1.7g, 10ミルモル)と、ジメチルホルムアミド(40ml)と、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(15ml)との混合物を、一晩撹拌し、そして40℃/13Paでエバポレートした。50%のピリジン水溶液(20ml)および十分な量のドライアイスを加えて、15分間過剰量を保った。この混合物を再びエバポレートし、そして40°/13Paにてピリジン(25mlで3度)と共蒸留した。ジ−(2−プロピル)p−トルエンスルホニルオキシホスホネート(4.2g, 12ミリモル)を加え、そしてこの混合物を同様の条件下でジメチルホルムアミド(25mlで2度)と共蒸留した。ジメチルホルムアミド(40ml)中の残渣を水素化ナトリウム(720mg, 30ミリモル)と共に−10℃で処理し、そしてこの混合物を湿気を遮断して室温で48時間撹拌した。0.1Mのナトリウムメトキシド(メタノール(100ml)中)を加え、そして一晩置いた後、この混合物をDowex 50X8(酸型)で中和した。懸濁液を濾過し、真空下で乾燥状態までエバポレートし、そして残渣をDowex 50X8(酸型、150ml)のカラム上で脱イオン化した 。アンモニア溶出物をエバポレートし、五酸化リンで真空下で乾燥し、そして残渣をブロモトリメチルシラン(3ml)およびアセトニトリル(30ml)で一晩処理した。真空下でエバポレートした後、残渣を水(50ml)で処理し、アンモニアでアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。残渣をDowex 50X8(上記参照)のカラム上で脱イオン化し、そして粗製の物質をDowex 1X2(アセテート)カラム(100ml)の陰イオン交換クロマトグラフィーによって、直線的なグラジエントの酢酸(1リットルの水および1リットルの0.3M酢酸からなる)によって精製した。この生成物画分をエバポレートし、水(30mlで3度)と共蒸留し、そして1−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)シトシン(0.90g, 19%)を水−エタノールから結晶化することにより得た。融点261℃。
【0176】
【化67】

実施例24
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン
アデニン(1.62g, 12ミリモル)と炭酸セシウム(2.1g, 6.5ミリモル)とのジメチルホルムアミド中の混合物を、100℃で撹拌し、そして(S)−2−[(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−トルエンスルホニルオキシプロパン(4.1g, 10ミリモル)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液を一度に加えた。この混合物を湿気を遮断して撹拌しながら8時間110℃で加熱し、そして真空下でエバポレートした。この残渣を沸騰クロロホルム(50mlで3度)で粉砕し、濾過し、そして真空下でエバポレートした。この粗製の物質をシリカゲルクロマトグラフィー(150ml)によって精製することにより、ジ−(2−プロピル)(S)−9−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニンが得られた。これはエーテルから結晶化し(1.7g, 46%)、融点97〜98℃であった。
【0177】
【化68】

アセトニトリル(25ml)中のこの生成物(1.4g, 3.9ミリモル)をブロモトリメチルシラン(2.5ml)で一晩室温で処理した。この混合物を真空下に置き、そしてこの生成物を脱塩し、そして実施例17に記載のように、Dowex 1X2カラム(100ml)のクロマトグラフィーで精製した。収率76%,融点277〜278℃。[α]D=+21.7。
【0178】
実施例25
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン
実施例22に記載のように、12ミリモルのアデニンおよび10ミリモルの(R)−2−[(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−トルエンスルホニルオキシプロパンを用いて、反応させた。ジ(2−プロピル)(R)−9−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(融点97℃)が、シリカゲルのクロマトグラフィーによって得られ、そしてエーテルから結晶化された(2.8g, 75.5%)。
【0179】
【化69】

この生成物(1.8g, 4.9ミリモル)とブロモトリメチルシラン(3ml)およびアセトニトリル(30ml)とを、実施例22に記載のように反応させた。収率、80%の9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン。[α]D=21.5°、融点279℃。
【0180】
実施例26
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノプリン
水素化ナトリウム(1.4g, 60%分散液, 35ミリモル)を、撹拌した2−アミノ−6−クロロプリン(5.94g, 35ミリモル)のジメチルホルムアミド(60ml)溶液に加え、そして1時間室温で撹拌後、ジメチルホルムアミド(20リットル)中の(R)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパン(12.2g, 30ミリモル)を一度に加えた。この混合物を80℃で10時間撹拌し、そして真空下でエバポレートした。残渣を沸騰クロロホルム(300ml)で抽出し、濾過し、そしてこの濾液を真空下でエバポレートした。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール混合物、95:5で溶出)にかけることにより、ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(7.5g, 53%)が濃厚なオイルとして得られた(RF 0.55(クロロホルム−メタノール、9:1におけるシリカゲルでのTLC))。
【0181】
200mlメタノールおよび0.5ml濃塩酸中のこのジエステル(2.5g, 6.2ミリモル)の溶液を、室温で一晩、10% Pd/C触媒(1g)で水素化し、この混合物を濾過し、濾液をトリエチルアミンでアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。この残渣を実施例24に記載のように、Dowex 50 x 8(酸型)(100ml)で脱イオン化し、そしてアンモニア溶出物をエバポレートし、そして真空下で五酸化リンで乾燥した。アセトニトリル(25ml)およびブロモトリメチルシラン(2.5ml)を加え、そしてこの溶液を室温で一晩置いた。この混合物を乾燥状態までエバポレートし、そして残渣を水(25ml)中に取り出した。30分後、この溶液をアンモニアでアルカリ性にし、そしてエバポレートした。この残渣をDowex 1 x 2(アセテート)(150ml)で直線的なグラジエントの酢酸(0.75リットルの水、0.75リットルの0.5M酢酸)を用いて脱イオン化することによって、生成物が得られた。これを水−エタノール(1:1)から結晶化することによって、プールされた画分から単離した。収量、0.62g(35.5%)の9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノプリン、融点156℃。
【0182】
【化70】

実施例27
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−チオプリン
ジ(2−プロピル)−9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(2.5g、6.2ミリモル)溶液(実施例26に従って調製)、チオ尿素(2.0g)および無水エタノール(100ml)を還流しながら1時間撹拌し、トリエチルアミンでアルカリ性にし、そしてエバポレートした。残渣をクロロホルム(2×100ml)で抽出し、濾過し、そして濾液を乾燥し、そして真空下でエバポレートした。残渣(RF 0.40、シリカゲルでのTLC、クロロホルム−メタノール、4:1)を五酸化リンで一晩乾燥し、そしてアセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)で処理した。室温で一晩置いた後、混合物を乾燥状態までエバポレートし、水中(50ml)に取った。30分後、アンモニアでアルカリ性にし、真空でエバポレートし、残渣をDowex 50で脱イオン化した(実施例25を参照)。アンモニア溶出物を真空下に置き、Dowex 1×2(アセテート)のカラム(150ml)にかけ、まず水で、そして1Mの酢酸で(各500ml)洗浄した。これらの溶出物を捨て、樹脂を2Mのギ酸(500ml)と共に撹拌し、濾過し、そして沸騰水(合計で1リットル)で洗浄した。濾液を乾燥状態までエバポレートし、残渣を水(50mlで3回)と共蒸留し、そして水から結晶化した(溶解後、等容量のエタノールを添加)。収量、1.0g(50%) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−チオプリン、融点188℃(分解)。
【0183】
【化71】

実施例28
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−アジドプリン
ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2− ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン (2.5g, 6.2ミリモル)(実施例26に従って調製)およびアジ化リチウム(1.0g)のジメチルホルムアミド(40ml)溶液を、100℃で4時間、湿気を遮断して撹拌し、セライト(Celite)上で濾過し、ジメチルホルムアミド(20ml)で洗浄し、そして濾液を真空下でエバポレートした。残渣(RF 0.30、シリカゲルでのTLC、クロロホルム−メタノール、9:1)を五酸化リンで一晩乾燥し、そしてアセトニトリル(20ml)およびブロモトリメチルシラン(2 ml) で処理した。室温で一晩置いた後、混合物を乾燥状態までエバポレートしそして水(50ml)中に置いた。30分後、アンモニアでアルカリ性にし、真空下でエバポレートし、そして残渣をDowex 50(酸型)カラム(100ml)にかけた。水で洗浄することにより、生成物のUV吸収ピークを保持しながら溶出した。これを真空下でエバポレートし、そして残渣を水から結晶化した(溶解後、等量のエタノールを添加)。収量、0.95g(47%)、 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−アジドプリン、300℃まで溶融せず。
【0184】
【化72】

実施例29
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−アジドプリン(0.30g、実施例27に従って調製)の、塩酸(0.5ml)含有50%水性メタノール(200ml)を、室温で一晩、10%Pd/C(0.5g)上で水素化した。混合物を濾過し、水で洗浄し、濾液をアンモニアでアルカリ性にし、そして真空下でエバポレートした。残渣をDowex 50×8(50ml)のカラムで脱イオン化し(実施例25を参照)、そしてアンモニア溶出物を乾燥状態までエバポレートした。水中の残渣(pHを9に調整)をDowex 1×2(アセテート)のカラムにかけ、まず水で洗浄して塩を除去し、次いで生成物を1Mの酢酸で溶出した。生成物を含有する画分をプールし、乾燥状態までエバポレートし、そして水(20mlで3回)と共蒸留した。残渣を水から結晶化し(濁りを生ずるまでエタノールを添加した)、実施例19に従った調製と同様にして、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノプリン(120mg)を得た。
【0185】
実施例30
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−3−デアザアデニン
3−デアザアデニン(1.45g、10.8ミリモル)、炭酸セシウム(1.75g、5.4ミリモル)、およびジメチルホルムアミド(25ml)を100℃で1時間撹拌し、そして(R)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパン(3.67g、9ミリモル)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液を一度に加えた。次いで、混合物を110℃で24時間、湿気を遮断して加熱し、そして乾燥した。残渣を沸騰クロロホルム(合計300ml)で抽出し、濾過し、そして濾液をエバポレートした。残渣をクロロホルム中のシリカゲル(300ml)のカラムでクロマトグラフし、酢酸エチル−石油エーテルから関連する画分を結晶化した後、ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−3−デアザアデニンを、1.07g(32.2%)の収量で得た。(融点122℃)。
【0186】
【化73】

このジエステル(1.0g, 2.7ミリモル)をアセトニトリル(25ml)およびブロモトリメチルシラン(2.5ml)で一晩処理した。次いで、実施例27に記載されるように混合物を処理し、脱イオン化し、そしてDowex 1×2でクロマトグラフした後、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−3−デアザアデニンを78%の収率で得た(300℃まで融解せず)。
【0187】
【化74】

実施例31
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニンおよび8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニン
8−アザアデニン(1.45g, 10.8ミリモル)、炭酸セシウム(1.75g、5.4ミリモル)、およびジメチルホルムアミド(25ml)の混合物を100℃まで予備加熱し、そして (R)−2−[ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−p−トルエンスルホニルオキシプロパン(3.67g, 9ミリモル)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液を一度に加えた。次いで、混合物を110℃で6時間、湿気を遮断して加熱し、そして乾燥した。残渣を沸騰クロロホルム(合計300ml)で抽出し、濾過し、そして濾液をエバポレートした。残渣をシリカゲル(300ml)のカラムでクロマトグラフした。5%メタノールを含有するクロロホルムでの溶出により、濃厚なオイルとして、ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニンを0.90g(37%)の収量で得た。
【0188】
【化75】

同様の溶媒でのさらなる溶出により、ジ(2−プロピル)8−(R)−2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニンを、半固体状物質として、0.75g(22%)の収量で得た。
【0189】
【化76】

それぞれの画分を別々に、アセトニトリル(25 ml)およびブロモトリメチルシラン(2.5ml)で一晩処理し、そして混合物を実施例27に記載されるように処理した。Dowex 1×2 カラム(50ml)のクロマトグラフィーの2Mの酢酸による溶出により、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニンが生じた。収率(水−エタノールからの結晶化後)79%。
【0190】
【化77】

8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザアデニンを、同様に1M酢酸を用いた溶出により得た。収率、72%。
【0191】
【化78】

実施例32
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)ヒポキサンチン
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(400mg、 1.4ミリモル)および亜硝酸ナトリウム(1.4g, 20ミリモル)の水(40ml)溶液を氷浴で冷却し、そして濃塩酸(2ml)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、0℃で3時間、次いで室温で一晩撹拌した。混合物を、Dowex 50×8(酸型)のカラム(100 ml)にかけ、そしてカラムを水で溶出した。生成物を保持しながら溶出した;関連する画分を真空下でエバポレートし、残渣をエタノール(2×50ml)と共蒸留し、そして結晶状残渣をエーテルと共に濾過した。収量、250 mg(62%) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)ヒポキサンチン、
【0192】
【化79】

実施例33
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)ヒポキサンチン
9−(S)−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(400mg、1.4ミリモル)および亜硝酸ナトリウム(1.4g、 20ミリモル)の水(40ml)溶液を氷浴で冷却し、そして濃塩酸(2ml)を加えた。実施例31に記載されるようにさらに反応させた。収率、66%、9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)ヒポキサンチン収量、66%。
【0193】
【化80】

実施例34
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジメチルアミノプリン
ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)の、20%ジメチルアミンのメタノール溶液を、110℃で20時間、耐圧容器内で加熱し、そして溶液を真空下でエバポレートする。50%水性メタノール(20ml)中の残渣を、20%水性メタノール中のDowex 50×8 (H+型)のカラム(50ml)にかけ、そしてUV吸収が最初の値に低下するまで、カラムを同じ溶出液で洗浄する。 次いで、カラムを20%水性メタノールの2.5%アンモニア溶液で洗浄し、そしてUV吸収溶出物を乾燥するために取り出し、エタノール(各25ml)と2回共蒸留し、そして13Pa下で五酸化リン上で乾燥する。得られた生成物をアセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)で室温で一晩処理し、そして溶液を真空下でエバポレートする。水(50ml)を加え、混合物を濃アンモニア水を加えてアルカリ性にし、そして溶液をエバポレートする。さらなる処理および精製は、本質的に、実施例17に記載されるように行われる。収量、0.40g (95%) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジメチルアミノプリン、融点154〜156℃、
【0194】
【化81】

実施例35
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジメチルアミノプリン
ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)とジエチルアミン(2 ml)のメタノール(20ml)の混合物を、加圧容器中で、110℃で20時間加熱し、そして溶液を真空下でエバポレートする。50%水性メタノール(20ml)中の残渣を、20%水性メタノール中のDowex 50×8(H+型)のカラム(50ml)にかけ、そしてUV吸収が最初の値に低下するまで、カラムを同じ溶出液で洗浄する。次いで、カラムを、20%水性メタノールの2.5%アンモニア溶液で洗浄し、そしてUV吸収溶出物を乾燥するために取り出し、エタノール(各 25ml)と2回共蒸留し、そして13Pa下で五酸化リン上で乾燥する。得られた生成物をアセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)で一晩室温で処理し、そして溶液を真空下でエバポレートする。水(50 ml)を加え、混合物を濃アンモニア水を加えてアルカリ性にし、そして溶液をエバポレートする。さらなる処理および精製は、本質的に実施例17に記載されるように行われる。収量、0.40g(95%)、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ジメチルアミノプリン、融点162〜164℃、
【0195】
【化82】

実施例36
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ブチルアミノプリン
ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、ブチルアミン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して6時間還流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ブチルアミノプリンの収量、0.40g(87%) 、融点140〜142℃、
【0196】
【化83】

実施例37
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−(2−ブチル)アミノプリン
ジ(2−プロピル) 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、2−ブチルアミン(2.0 ml)およびエタノール(20 ml)の混合物を、湿気を遮断して8時間還流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−(2−ブチル)アミノプリンの収量、0.35g(75%)、融点148〜149℃、
【0197】
【化84】

実施例38
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロプロピルアミノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g, 実施例26に従って調製)、シクロプロピルアミン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して12時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロプロピルアミノプリンの収量、0.35g(80%)、融点178〜179℃、
【0198】
【化85】

実施例39
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロペンチルアミノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、シクロペンチルアミン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して12時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロペンチルアミノプリンの収量、0.36 g(76%)、融点167〜170℃、
【0199】
【化86】

実施例40
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロヘキシルアミノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、シクロヘキシルアミン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して10時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−シクロヘキシルアミノプリンの収量、0.32 g(65%)融点164〜165℃、
【0200】
【化87】

実施例41
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピロリジノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、ピロリジン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して6時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピロリジノプリンの収量、0.35g(78%)、融点181〜182℃
【0201】
【化88】

実施例42
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピペリジノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、ピペリジン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して3時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ピペリジノプリンの収量、0.40g(84%)融点154〜156℃、
【0202】
【化89】

実施例43
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−モルホリノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、モルホリン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して2時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−モルホリノプリンの収量、0.45g(94.5%)、融点160〜162℃、
【0203】
【化90】

実施例44
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ベンジルアミノプリン
ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−クロロプリン(0.50g、実施例26に従って調製)、ベンジルアミン(2.0ml)およびエタノール(20ml)の混合物を、湿気を遮断して6時間環流し、そして真空下でエバポレートする。ブロモトリメチルシランとの反応に続いて、反応混合物の処理および生成物の単離を、本質的に実施例34に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2−アミノ−6−ベンジルアミノプリンの収量、0.45 g(90%)、融点158〜160℃、
【0204】
【化91】

実施例45
9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニンおよび8−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン
8−アザグアニン(3.5g)、ジメチルホルムアミド(35ml)およびジメチルホルムアミドジネオペンチルアセタール(15ml)の混合物を、湿気を遮断して80℃で16時間加熱する。室温で冷却後、沈殿生成物を吸引濾過し、エタノールおよびエーテルで洗浄し、真空下で乾燥する。N2−ジメチルアミノメチレン−8−アザグアニンの収量、3.1g(65%)、HPLC的に純粋。この化合物(2.1g、10ミリモル)、炭酸セシウム(1.75g、5.4ミリモル)および(S)−2−[(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−トルエンスルホニルオキシプロパンのジメチルホルムアミド(40ml)混合物を、湿気を遮断して100℃で4時間撹拌を行う。混合物を熱いうちに濾過し、40℃/13Paでエバポレートし、そして残渣をメタノールと濃アンモニア水との混合液(1:1、200ml)で周囲温度で一晩処理する。溶媒を真空下でエバポレートし、そしてメタノール−クロロホルム混合液(5:95)のシリカゲルカラム(200ml)上で残渣をクロマトグラフィーにかける。非結晶性泡状物である蛍光性生成物(Rf=0.42、TLC/メタノール−クロロホルム、1:9、シリカゲルプレート)、収量0.9g(23%)を真空下で乾燥し、アセトニトリル(25ml)およびブロモトリメチルシラン(2.5ml)で室温で一晩処理する。この混合物の処理は、実施例34に記載されるように行う。生成物を、イオン交換クロマトグラフィーによりDowex 50×8(H+型)上で単離し、そして水から結晶化する。収量、0.45g。
【0205】
シリカゲルカラムのさらなる溶出物、9−異性体(Rf=0.36、TLC/メタノール−クロロホルム、1:9、シリカゲルプレート)を0.9g(23%)の収量で与える。アセトニトリル中のブロモトリメチルシランによる転換(実施例34)により、脱イオン化および水からの結晶化の後、9−(S)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン(0.50g, HPLC的に純粋)を生ずる。
【0206】
実施例46
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン、8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニンおよび7−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザグアニン
(S)−エナンチオマーに関して、本質的に実施例44に記載されるように反応を行う。メタノール性アンモニア水との縮合混合物の処理後、ビス(2−プロピル)エステルの粗混合物をDowex 50×8(H+型)(150ml)のカラムにかけ、そして20%水性メタノールでカラムから溶出させた。UV吸収画分を真空下で採取し、乾燥して、非結晶性泡状物の9−異性体を与える。残渣をアセトニトリル(30ml)およびブロモトリメチルシラン(3ml)により一晩処理し、真空下でエバポレートし、残渣を2.5%アンモニア中に溶解し、そして真空下で再エバポレートする。この残渣を、Dowex 1×2(アセテート型)のカラム(100ml)にかけ、そして水(1リットル)で洗浄し、そして1M酢酸(500ml)で洗浄する。溶出物を捨て、そして樹脂を沸騰水(500ml)により、フィルター上で抽出する。この溶出物を真空下でエバポレートし、そして残渣を水から結晶化して(微溶解性)、9−(R)−異性体(0.50g)を生ずる。
【0207】
【化92】

2.5%アンモニア水によるDowex50のカラムのさらなる溶出は、UV吸収画分を与える。その画分を真空下でエバポレートし、乾燥し、アセトニトリル(20ml)およびブロモトリメチルシラン(2ml)で処理する。反応混合物をエバポレートし、そして残渣を5%アンモニア水(100ml)を加えて溶解し、そして混合物を、Dowex 50×8(H+型)のカラム(100ml)上で脱イオン化する。アンモニア溶出物は、ゲル形成混合物を生じ、これは、アンモニアを加えると水に溶解し、そして0.02M炭酸水素トリエチルアンモニウム中でSephadex A−25(150ml)のカラムにかける。カラムから、直線勾配をかけた同一緩衝液(0.02〜0.20M、各1リットル)で溶出することにより、7−および8−異性体(EUp 0.92, 蛍光スポット)の混合物からなる主画分を与える。メタノールで共蒸留後の残渣を、Dowex 1×2(アセテート)のカラム(20ml)にかけ、そのカラムを水(100ml)で洗浄し、そして生成物を1M酢酸で溶出する。真空下でエバポレートし、水との共蒸留を行い、そしてエタノールと共にすり潰してから、生成物を濾過し、エタノールおよびエーテルで洗浄し、そして乾燥すると、7−異性体と8−異性体との比率が1:4の混合物0.50gを生ずる(13C−NMRによる)。7−および8−位置異性体(regioisomer)は、DEAE Sephadex A25上でのクロマトグラフィーにより、0.02モル〜0.2モルの勾配をかけた水性炭酸水素トリエチルアンモニウム(pH7.5)による溶出を用いて、分離した。
【0208】
【化93】

実施例47
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリンおよび8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリン
8−アザ−2,6−ジアミノプリンヘミスルフェート(25ミリモル)の水(100ml)懸濁液を、Dowex 50×8(H+型)を加えながら溶解するまで撹拌し、懸濁液を同じ陽イオン交換体のカラム(100ml)上に注ぎ、そして中性になるまでカラムを水で洗浄する。次いで、樹脂を水(200ml)に懸濁させ、そしてアルカリになるまでアンモニア水で処理し、濾過し、そして沸騰水(合計、1リットル)で洗浄する。濾液と洗浄物を真空下で乾燥し、残渣をエタノール(2×50 ml)で共蒸留し、そして得られた遊離の8−アザ−2,6−ジアミノプリンをエーテルから濾過し、同じ溶媒で洗浄し、そして真空下で五酸化リン上で乾燥する。
【0209】
この化合物(3.02g、20ミリモル)および炭酸セシウム(3.3g、10ミリモル)のジメチルホルムアミド(60ml)懸濁液を、100℃で1時間加熱し、そして(R)−2−[(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−トルエンスルホニルオキシプロパン(8.6g、21 ミリモル)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液を、撹拌しながら15分間かけて加える。次いで、加熱と撹拌をさらに16時間続け、真空下で混合物から溶媒を取り除き、そして残渣を沸騰クロロホルム(合計、300ml)で抽出する。抽出物を、クロロホルムを用いてシリカゲルカラム(250ml)上でクロマトグラフィーにかけ、そしてカラムからクロロホルム−メタノール混合液(95:5)により溶出する。溶出により、ジ(2−プロピル)9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリン(RF0.70、TLC/シリカゲル、クロロホルム−メタノール、4:1)を生じ、その後、関連画分をエバポレートし、そして酢酸エチル−石油エーテルから結晶化すると、1.75g (22.5%)の結晶物質を与える。融点120〜122℃、
【0210】
【化94】

この生成物を、アセトニトリル(25 ml)およびブロモトリメチルシラン(2.5 ml)で一晩室温で処理し、そして溶液を真空下でエバポレートする。水(50ml)を加え、混合物に濃アンモニア水を加えてアルカリ性にし、そして溶液をエバポレートする。さらなる処理および精製を、本質的に実施例17に記載されるように行う。9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−2,6−ジアミノ−8−アザアデニンの収量、0.90g(65.5%)、融点238〜242℃、
【0211】
【化95】

シリカゲルカラムのさらなる溶出により、ジ(2−プロピル)8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリンの1.40g(18%)を得る。(RF 0.50、TLC/シリカゲル、クロロホルム−メタノール、4:1)、融点148〜150℃(酢酸エチル−石油エーテル)、
【0212】
【化96】

ブロモトリメチルシランとの反応を、本質的に9−異性体に関して記載されるように行う;8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−8−アザ−2,6−ジアミノプリンの収量、0.80g(72.5%)、融点238〜240℃、
【0213】
【化97】

実施例48
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−6−メルカプトプリン 水素化ナトリウム(0.40g, パラフィン中に60%分散、10ミリモル)を、6−クロロプリン(1.55g、10ミリモル)のジメチルホルムアミド(25ml)溶液に加え、そしてその混合物を周囲温度で1時間撹拌する。(R)−2−[(ジ(2−プロピル)ホスホニルメトキシ]−1−トルエンスルホニルオキシプロパン(6.5g、15.9 ミリモル)のジメチルホルムアミド(50ml)溶液を加え、そしてその混合物を60℃で8時間撹拌する。次いで、混合物から真空下で溶媒を取り除き、そして残渣を熱クロロホルム(合計、250ml)で抽出する。次いで、抽出液を真空下でエバポレートし、そしてクロロホルムによりシリカゲルカラム(250 ml)上で残渣をクロマトグラフィーにかける。生成物をクロロホルム−メタノール(95:5)で溶出し、そして生成物を含む関連画分を乾燥するまでエバポレートする。油状のジ(2−プロピル) 8−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−6−クロロプリンの収量、2.35g、(60%)(RF 0.70、TLC/シリカゲル、クロロホルム−メタノール、4:1)、融点148〜150℃(酢酸エチル−石油エーテル)、
【0214】
【化98】

この生成物を、チオ尿素(2g)のエタノール液と共に1時間環流して処理し、その溶液をトリエチルアミンでアルカリ性にし、乾燥し、そして残渣をクロロホルム(200ml)で抽出する。抽出液を真空下でエバポレートし、そして残渣(RF0.63、TLC/シリカゲル、クロロホルム−メタノール、4:1)を真空下で乾燥する。アセトニトリル(40ml)とブロモトリメチルシラン(4ml)を加え、そして混合物を溶解するまで撹拌する。混合物を室温で一晩静置し、真空下で乾燥し、そして濃アンモニア水でアルカリ性にすることにより水(100ml)に溶解する。次いで、アルカリ溶液を真空下でエバポレートし、そして水(20ml)に溶かした残渣(アンモニアでアルカリ性にしたもの)を、0.05M炭酸水素トリエチルアンモニウム(pH7.5)で平衡化したSephadex A−25のカラム(150ml)にかける。溶出物の吸収値が初期の値に低下するまで、そのカラムから同じ緩衝液で溶出し、次いで0.02M〜0.2Mの炭酸水素トリエチルアンモニウム(pH 7.5)(各1リットル)により直線勾配をかけて溶出を行う。主要なUV吸収画分を乾燥し、そしてメタノール(5×50ml)と共に真空下で共蒸留する。残渣を10mlの水に溶かして、Dowex 1×2(アセテート型)カラム(50ml)にかけ、カラムを水で洗浄し、そしてイオン交換体(ionex)を10%水性ギ酸(200ml)中で15分間撹拌する。懸濁物を濾過し、そして樹脂を沸騰水(合計、1 リットル)で繰り返し洗浄する。濾液を真空下で濃縮し、そして水から再結晶して、9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−6−チオプリン(0.90g, 49%)、融点156〜158℃を生ずる。
【0215】
【化99】

実施例49
9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)−N1,N6−エテノアデニン 9−(R)−(2−ホスホノメトキシプロピル)アデニン(0.40g)を1Mクロロアセトアルデヒド溶液−水(20ml)に溶かした溶液を、37℃で48時間インキュベートし、そして真空下でエバポレートする。水(10ml)に溶かした残渣を、オクタデシルシリカゲル(20−30μ)のカラム(250ml)にかけ、そして水(3 ml/min)で洗浄する。画分(20ml)を0.05M炭酸水素トリエチルアンモニウム(pH7.5)を用いてHPLCにより分析し、そして適切な画分をプールして、そして真空下で処理する。生成物をエタノールと共にすり潰し、そして濾過する。収量、0.35g(80%)、融点180〜182℃、
【0216】
【化100】

実施例50
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)およびモロニィネズミ肉腫ウィルス(MSV)に対するインビトロでの評価
細胞変性を誘発するHIV−1およびHIV−2に対する化合物の活性を、ヒトリンパ球MT−4細胞において試験した。細胞(250000細胞/ml)を、HIV−1あるいはHIV−2の100 CCID50(1 CCID50は、実験条件下で細胞の50%に細胞変性効果を起こすウィルス量である)で感染させ、そして試験化合物の異なる希釈液を含むマイクロタイタープレートの200μl−ウェルに加える。次いで、感染した細胞培養物を、37℃で5日間、加湿CO2制御のインキュベーター中でインキュベートした。次いで、ウィルスの細胞変性を、トリパンブルー染料の染色によるMT−4の生存率の測定により試験した。プロトタイプ化合物のデータと比較して、結果を表 1にまとめる。
【0217】
さらに、ネズミ胎児線維芽細胞C3H/3T3細胞において、MSV誘発形質転換に対する化合物の活性の試験結果も、表1に示されている。48ウェルマイクロタイタープレートの1−ml−ウェル内に細胞を接種し、60〜90分間80 PFU(プラーグ形成単位)に曝した。次いで、ウィルスを除去し、そして適切な濃度の試験化合物を含む培地を加えた(1ml/ウェル)。感染後6日目に、細胞培養物のMSV誘発形質転換を顕微鏡により調べた。プロトタイプ化合物のデータと比較して、結果を表1にまとめる。
【0218】
【表1】


結論:
(1)試験された式Iの分割された化合物の大部分は、インビトロで、顕著な抗HIV活性を示した。HIV−1およびHIV−2は、試験化合物に対する感受性に差は無かった。
【0219】
(2)(R)−PMPAは、レトロウィルスの複製に対して、1〜2μg/mlで著しく阻害し、そして100 mg/mlで細胞に対して非毒性であった。その選択指数(細胞毒性用量/抗ウィルス活性用量の比率)は、プロトタイプ化合物PMEAの選択指数より優れていることがわかった。PMEAの(S)−エナンチオマーは、顕著な抗レトロウィルス活性に欠けていた。
【0220】
(3)(R)−PMPDAPは、レトロウィルスの複製を強く阻害し、(EC50 0.01〜0.1μg/ml)、そして100μg/mlで細胞に対して非毒性であった。それは、PMEAおよび他のプロトタイプ化合物より、抗ウィルス活性および毒性の欠如の両方の点で、優れていることがわかった。その選択指数は、HIV−1およびHIV−2に対して、>2000であった。
【0221】
実施例51
腹腔内投与によるマウスにおけるモロニィネズミ肉腫ウィルス(MSV)感染の処置
2グラムの新生児NMRIマウスに、モロニィネズミ肉腫ウィルスの250倍希釈した貯蔵調製物50μlを左後脚に筋肉内注射した。ウィルス感染の2〜4時間前から開始して、10匹からなる群において、各動物に、式Iの分割された化合物あるいはプロトタイプ化合物の50、20、または10mg/kgの試験化合物を、単回投与により、腹腔内に注入した(略語は、表1の脚注を参照のこと);化合物(R)−PMPAおよび(R)−PMPDAPを、5および2mg/kgの用量でも投与した。マウスの別の群(20匹の動物)には、RPMI−1640培地をプラセボとして投与した。全ての化合物をRPMI−1640培地に溶解した。マウスを20日間毎日観察し、そして腫瘍のイニシエーションの日と、動物の死亡した日を各動物に対して記録した。標準偏差を計算することにより、統計解析を行った。まとめた結果を表2に示す。
【0222】
【表2】


PMPA(およびFPMPA)の(S)−エナンチオマーは、50mg/kgの用量では、インビボで顕著な抗レトロウィルス活性を有さないが、(R)−PMPA、(R)−PMPDAPは、腫瘍のイニシエーションの阻害およびMSV感染したマウスの寿命の延長に非常に有効であることがわかった。1回の(R)−PMPAの50mg/kgの用量は、MSV誘発された腫瘍の発生に対して完全に防御した。低用量では、この化合物は、腫瘍のイニシエーションの日および動物の死亡の平均日数を延長する点において、(S)−FPMPAより優れていた。1回の(R)−PMPDAPの10〜20mg/kgの用量は、MSV誘発された腫瘍の発生に対して、動物(90〜95%)を実質的に完全に防御した; 2mg/kgの用量では、腫瘍形成を有意に予防し(動物の36%)、そして70%もの長期間生存動物が観察された。
【0223】
結論:
(1) (R)−PMPAは、1回の10〜50mg/kgの用量で、腫瘍のイニシエーションおよび動物の死亡の平均日数の増加において顕著に有効であることがわかった。それは、これらのアッセイにおいて、プロトタイプ化合物PMEAより優れている。
【0224】
(2)(R)−PMPDAPは、インビボで試験した一連の化合物の中で最も活性な抗MSV化合物の1つであった。それは、(R)−PMPA より5倍も優れていることがわかった。それは、アデニン誘導体の方が、アッセイにおいて、ジアミノプリン対応物よりも活性があるというFPMP系と対照的である。
【0225】
(3)式Iの化合物のインビボの活性は、インビトロにおけるHIVおよびMSVに対するそれらの抗ウィルス活性と一致する。
【0226】
実施例52
経口投与によるマウスにおけるモロニィネズミ肉腫ウィルス(MSV)感染の処置
3週齢のNMRIマウス(体重約10グラム)に、モロニィネズミ肉腫ウィルスの20倍希釈した貯蔵調製物50μlを、左後脚に筋肉内注射した。ウィルス感染の2〜4時間前に開始して、6匹の動物に、試験化合物を1日当たり100mg/kg(合計用量)で1日2回連続5日間経口投与した。コントロール(プラセボ)群は、14匹の動物からなっていた。実験は、実施例35に記載されるように評価した。まとめた結果を表3に示す。
【0227】
【表3】

100mg/kg/日の用量では、(R)−PMPDAPは、腫瘍のイニシエーションの平均日数を50%増加させた;マウスの67%にしか腫瘍が発生しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のヌクレオチドアナログ。

【公開番号】特開2008−120820(P2008−120820A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326607(P2007−326607)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【分割の表示】特願2004−29994(P2004−29994)の分割
【原出願日】平成5年8月4日(1993.8.4)
【出願人】(502274705)インスティテュート オブ オーガニック ケミストリー アンド バイオケミストリー アーエスツェーエル (1)
【出願人】(504046843)
【Fターム(参考)】