説明

抗不安薬及びそのスクリーニング方法

【課題】新規な抗不安薬、及び抗不安作用を有する化合物をスクリーニングする新規な方法を提供する。
【解決手段】本発明の抗不安薬は、オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含むことを特徴とする。本発明の抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法は、オレキシン-Aを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗不安薬、及び抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレキシン-A及びオレキシン-Bは、2つのオーファンGPCRの内在性ペプチドリガンド(神経ペプチド)として同定されている(非特許文献1参照)。哺乳類のオレキシン-Aは33アミノ酸から構成され2つのジスルフィド結合を有し、オレキシン-Bは28アミノ酸から構成される。このようなオレキシンを産生するニューロンは、視床下部外側野(lateral hypothalamic area (LHA))と視床下部後部(posterior hypothalamus)とに局在しており、また脳内の様々な領域(例えば、大脳皮質、嗅球、海馬、扁桃体、中隔野、ブローカー対角束(diagonal band of Broca)、分界条基底核(bed nucleus of the stria terminals)、視床、視床下部前部及び後部(anterior and posterior hypothalamus)、中脳、脳幹、脊髄)に投射している(非特許文献1〜5参照)。オレキシン産生ニューロンが上記のごとく広範囲の領域に投射していることは、オレキシンが神経ペプチドとして様々な生理学的機能に関与していることを示唆するものである。
【0003】
哺乳類においては、2つのオレキシン受容体サブタイプが同定されており、これらのサブタイプは、それぞれ、オレキシン受容体-1(OX1R)及びオレキシン受容体-2(OX2R)と名付けられている(非特許文献1参照)。これらに関しては、OX2Rが、オレキシン-A及びオレキシン-Bのいずれに対してもほぼ同程度の結合親和性を有するのに対し、OX1Rは、オレキシン-Aに対する親和性の方がオレキシン-Bに対する親和性に比べて100〜1000倍程度も高いという特徴を有することが知られている。従って、特にオレキシン-Aが、生理活性物質として重要なものと言える。
【0004】
これまでにも、例えば、オレキシン-Aが覚醒や摂食行動の調節に関与していることが報告されている(非特許文献1,6,7参照)。さらに近年では、ストレスとの関係についても報告されており、例えば、オレキシン-Aをマウスの脳室内に投与することにより、face washing、grooming、searching、burrowing等といったストレス様行動の増加が認められている(非特許文献8,9参照)。一方で、これら各種行動との関係性に基づき、種々のOX1Rアンタゴニストについても報告さている(特許文献1〜18)。
【0005】
ところで、現代においては、個人を取り巻く社会環境における種々の不安要素の存在が問題視されている。具体的には、過労やストレスによる不安、国内及び世界情勢に対する不安、就職難等による将来に対する不安、あるいはうつ病に伴う不安のほか、医療分野では麻酔や手術に伴う不安など、漠然としたものから具体的なものまで様々ある。また、遺伝的要因による不安神経症等の自律神経性疾患に基づく不安もある。このような不安感は、異常な緊張感をもたらすほか、睡眠障害等の自覚症状も引き起こす要因となる。そこで、こういった不安感や緊張感を選択的に緩和する又は除去するため、種々の緩和精神安定剤(マイナートランキライザー)、すなわち抗不安薬が適宜常用されている。
【特許文献1】国際公開第99/9024号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/58533号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/47577号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/47580号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/47576号パンフレット
【特許文献6】国際公開第01/96302号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/44172号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/51368号パンフレット
【特許文献9】国際公開第03/51873号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/37847号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/41711号パンフレット
【特許文献12】国際公開第03/32991号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/2561号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/2559号パンフレット
【特許文献15】国際公開第02/90355号パンフレット
【特許文献16】国際公開第02/89800号パンフレット
【特許文献17】国際公開第02/51838号パンフレット
【特許文献18】国際公開第01/68609号パンフレット
【非特許文献1】T. Sakurai et al., Cell, vol.92 (1998), p.573-585
【非特許文献2】Y. Date et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.96 (1999), p-748-753
【非特許文献3】L. de Lecea et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.95 (1998), p-322-327
【非特許文献4】T. Nambu et al., Brain Res., vol.827 (1999), p-243-260
【非特許文献5】C. Peyron et al., J. Neurosci., vol.18 (1998), p-9996-10015
【非特許文献6】R.M. Chemelli et al., Cell, vol.98 (1999), p-437-451
【非特許文献7】J.J. Hagan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.96 (1999), p-10911-10916
【非特許文献8】T. Ida et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., vol.270 (2000), p-318-323
【非特許文献9】T. Ida et al., Brain Res., vol.821 (1999), p-526-529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、新規な抗不安薬を提供すること、さらには、抗不安作用を有する化合物をスクリーニングする新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その過程において、前述のごとく様々な生理学的機能に関与すると考えられている神経ペプチド「オレキシン」(特にオレキシン-A)が、不安感や緊張感の発生に深く関わっていること、すなわち不安惹起作用を奏し得ることを初めて確認した。そこで、オレキシン受容体アンタゴニストであれば、このような不安感に対しても有効な対抗作用を発揮するのではないかということに着目した。その結果、当該化合物を抗不安薬の有効成分として用いることが非常に有用であることを見出して、本発明を完成した。また、オレキシン-Aを用いて、不安を緩和又は除去し得る候補物質を選択することにより抗不安作用を有する化合物をスクリーニングできることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
(1) オレキシン受容体とオレキシン-Aとの結合を阻害する化合物、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、抗不安薬。
【0010】
(2) オレキシン-Aを用いることを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。当該スクリーニング方法においては、例えば、オレキシン受容体アンタゴニスト活性を有する候補物質を選択することができる。
【0011】
(3) 被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物の体内で分泌させ、又は、被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させた後若しくは分泌させると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【0012】
(4) 被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物に投与し、又は、被験動物にオレキシン-Aを投与した後若しくは投与すると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【0013】
(5)オレキシン-Aを含有する、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング用キット。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規な抗不安薬を提供すること、さらには、抗不安作用を有する化合物をスクリーニングする新規な方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
【0016】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

1.本発明の概要
「オレキシン-A」は、これと同様に神経ペプチドの一種であるオレキシン-Bと比較して、オレキシン受容体-1に対する結合反応性が顕著に高い物質である。また、オレキシン産生ニューロンが脳内の非常に広範囲な領域に投射しているということも考慮すると、「オレキシン-A」は様々な生理学的機能の発現に密接に関与していると推測され、例えば、覚醒や摂食行動の調節、及びストレス等への関与については既に確認されている。しかしながら、不安や緊張への関与については、これまで明確に認知されておらず、推測の域を超えるものではなかった。そこで本発明者は、不安に関わるオレキシン-Aの中枢作用の有無について、脳室内にオレキシン-Aを投与したマウスを用い、明暗探査試験(light-dark exploration test)及び高架式十字迷路試験により検証した。その結果、「オレキシン-A」による不安惹起作用が認められ、「オレキシン-A」が不安に深く関わる生理活性ペプチドであることが初めて明確に実証された。
【0017】
本発明者は、この新たな知見に基づいて鋭意検討を行い、オレキシン受容体アンタゴニストを、抗不安薬という全く新たな用途の有効成分として用いることができることを見出した。また、当該オレキシン-Aを用いて、候補物質の上記結合反応に対する拮抗作用の存在を確認する手法により、優れた抗不安作用を有する化合物をスクリーニングできることを見出した。

2.抗不安薬
本発明の抗不安薬は、前述したように、オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含むことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の抗不安薬は、限定はされないが、公知の抗不安薬と同様に、主として持続時間の短い不安や緊張に有効な薬物であり、不安を伴うあらゆる疾患及び病態に適応がある。例えば、不安神経症、心気神経症、強迫神経症、抑うつ神経症、ヒステリー、恐怖症の主症としてみられる不安、焦燥、抑うつ、不眠、及び自律神経症状等の疾患のほか、不安障害、その類縁疾患焦燥を伴う自律神経失調症、統合失調症、うつ病、アルコール禁断症状等の病態の予防や治療に有効である。ここで「不安」とは、一般的には、「明らかに確認し得る刺激に結びつかないのに、不穏、緊張、頻脈、呼吸困難等を伴って、差し迫った危険を感じ、恐れること」と説明することができる(ステッドマン医学大辞典 第5版、発行者:中尾俊治、発行所:株式会社メジカルビュー社、2002年2月発行)。DSM-IVに関しては『不安障害』の中に分類があり、パニック障害(300.01、300.21)、広場恐怖(300.22)、恐怖症(300.29)、社会恐怖(300.29)、強迫性障害(300.3)、外傷後ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害、一般身体疾患による不安障害に分けられる。ICD-10に関してはF4の『神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害』という項目のなかに分類があり、恐怖性不安障害(F40)、他の不安障害(F41)、強迫性障害(F42)、ストレス応答および適応障害(F43)などがある。本発明でいう不安とは、そのうちストレス性の不安を含まない不安、例えば、DSM-IVにおける外傷後ストレス障害(309.81) 、急性ストレス障害(308.3)および/またはICD-10におけるストレス応答および適応障害(F43)を含まない不安であると定義されるものとする。従って、本発明における抗不安薬は、ストレス性の不安を除いた不安に適用されるものとする。
【0019】
オレキシン受容体アンタゴニストとは、オレキシン受容体(オレキシン受容体-1、オレキシン受容体-2)とオレキシン-Aとの結合反応に対し拮抗作用を有することにより当該結合を阻害し得る化合物のうち、それ自身はその受容体を介した生理作用を現さず、オレキシン受容体に対する拮抗作用により、オレキシン受容体から発生するシグナルの強さを減弱する作用を有する化合物、またはオレキシン受容体からのシグナルの発生を阻害する作用を有する化合物である。中でも、本発明においては、オレキシン受容体-1アンタゴニストが好ましい。なお、上記結合の阻害とは、当該結合反応を完全に阻害するものであってもよいし、その一部を阻害するものであってもよく、限定はされないが、例えば、当該結合反応の10%以上阻害するものであることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、さらに特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%阻害するものが挙げられる。
【0020】
オレキシン受容体アンタゴニストは、いわゆる競合的拮抗作用を有するものであってもよいし、非競合的拮抗作用を有するものであってもよく、限定はされない。
【0021】
本発明におけるオレキシン受容体アンタゴニストは、例えば、生体内で酸化、還元、加水分解、又は抱合などの代謝を受けるオレキシン受容体アンタゴニスト及びその塩をも包含するほか、生体内で酸化、還元、又は加水分解などの代謝を受けてオレキシン受容体アンタゴニスト及びその塩を生成する化合物をも包含するものとする。
【0022】
オレキシン受容体アンタゴニストは、化合物の構造上生じ得るすべての異性体(例えば、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、及び互変異性体等)及びこれら異性体の2種以上の混合物をも包含し、便宜上の構造式の記載等に限定されるものではない。
【0023】
オレキシン受容体アンタゴニストは、S-体、R-体あるいはRS-体のいずれであってもよく、限定はされない。
【0024】
ここで、オレキシン受容体アンタゴニストは、in vitroスクリーニングにより得ることができる。
【0025】
オレキシン受容体アンタゴニストをin vitroでスクリーニングする方法としては、限定はされず、公知のスクリーニング方法を、適宜手段及び条件等を設定して用いることができる。例えば、受容体リガンド(オレキシン-A)を用いた方法が好ましく、具体的には、バインディングアッセイ、セカンドメッセンジャーの濃度測定、[35S]-GTPγsの結合活性測定等に基づく方法が好ましく挙げられる。通常、これらスクリーニング方法では、受容体(オレキシン受容体(オレキシン受容体-1、オレキシン受容体-2))を発現(細胞表面に発現)するようにした細胞、及び当該細胞の膜画分等を使用する。当該細胞としては、限定はされないが、例えば、動物細胞(CHO細胞、HEK293細胞、マウスミエローマ細胞、サルCOS細胞等)、酵母、昆虫細胞、大腸菌(HB101、JM103等)等を用いることができる。
【0026】
上記バインディングアッセイは、オレキシン受容体アンタゴニストをスクリーニングするために用いることができる。例えば、オレキシン受容体(オレキシン受容体-1、オレキシン受容体-2)(human)を発現した細胞(例えば、CHO細胞等)の膜を調製し、当該膜と候補物質(候補化合物)とを、受容体リガンド(オレキシン-A)の存在下で接触させ、機能的応答(例えばオレキシン-Aとオレキシン受容体との結合反応)の阻害を分析することによりアンタゴニスト活性を有する候補物質をスクリーニングすることができる。この際、オレキシン-Aとして、例えば、放射能ラベルをしたもの(例えば、[125I]、[3H]、[14C]、及び[35S]等)を用いてもよいし、オレキシン-A又は候補物質として、蛍光ラベル化したものを用いてもよい。また、バインディングアッセイは、オレキシン受容体アンタゴニストのアンタゴニスト活性の評価に用いることもできる。
【0027】
上記セカンドメッセンジャーの濃度測定の場合は、限定はされないが、例えば、細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定することが好ましい。具体的には、オレキシン受容体(オレキシン受容体-1、オレキシン受容体-2)(human)を発現した細胞(例えば、CHO細胞、HEK293細胞等)を用い、fluorometric imagining plate reader(FLIPR; molecular Devices, UK)等を使用して、細胞内カルシウムイオン濃度を測定することができる。手順としては、限定はされないが、まず、壁が黒く底が透明な384穴プレートに細胞を播いた後(例えば5000 cells/well)、細胞にカルシウムインジケーターのFluo-3AM (株式会社同仁科学研究所製)を添加し、37℃で1時間、細胞をインキュベートし、その後、候補物質を添加する。その後、さらに30分間、同温度でインキュベートした後に、オレキシン-A(例えば3nM)を添加し、FLIPRで蛍光(λEX=488 nm, λEM=540 nm)を測定する。この蛍光量を、候補物質を添加しなかった場合と比較することにより、候補物質のアンタゴニスト活性を評価することができる。
【0028】
オレキシン受容体-1アンタゴニストの具体例としては、限定はされないが、例えば、下記一般式(1)〜(14)で表される化合物を挙げることができる。
【0029】
【化1】

【0030】
〔一般式(1)中、
R1aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8aCO-又はNR9aR10aCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8aCO-、R8aSO2NH-、R8aSO2O-、R8aCON(R11a)-、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、-COOR9a、R11aC(=NOR8a)、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基で任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7aは、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは各々、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、N3、-OCOR9a又はR8aCON(R11a)-で任意に置換されていてもよい)であり、
R8aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、複素環(C2〜C6)アルケニル基、アリール基、アリール(C1〜C6)アルキル基又はアリール(C2〜C6)アルケニル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R9a及びR10aは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R11aは、水素原子又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基であり、
X1a及びY1aは、互いに独立して、CH又は窒素原子(但し、X1a及びY1aがいずれもCHの場合は除く)であり、
X2a及びY2aは、互いに独立して、CH又は窒素原子(但し、X2a及びY2aがいずれも窒素原子の場合は除く)であり、
Zは、酸素原子又は硫黄原子であり、
nは、X2a及びY2aがいずれもCHのときは0、1、2、3又は4であり、X2a及びY2aの一方がCHで他方が窒素原子のときは0、1、2又は3である。〕
一般式(1)で表される化合物は、例えば、WO 99/09024、WO 99/58533、WO 00/47577若しくはWO 00/47580に記載の製法、又はそれらに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。具体的には、一般式(1)において、以下の(1-1)〜(1-4)の態様が好ましく例示できる。
【0031】
(1-1)
1つの態様において、R1aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8aCO-又はNR9aR10aCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8aCO-、R8aSO2NH-、R8aCON(R11a)-、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、-COOR9a、又は複素環基で任意に置換されていてもよいが、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの少なくとも1つは水素原子以外である)であるか、あるいは、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7aは、水素原子であり、
R8aは、C1〜C6アルキル基又はアリール基であり、
R9a及びR10aは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基であり、
R11aは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
X1a及びY1aは、互いに独立して、CH又は窒素原子(但し、X1a及びY1aがいずれもCHの場合は除く)であり、
X2a及びY2aは、いずれもCHであり、
Zは、酸素原子又は硫黄原子であり、
nは、0、1、2、3又は4である。
【0032】
(1-2)
また、他の態様では、R1aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8aCO-又はNR9aR10aCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8aCO-、R8aSO2NH-、R8aCON(R11a)-、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、-COOR9a、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基で任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7aは、水素原子であり、
R8aは、C1〜C6アルキル基又はアリール基であり、
R9a及びR10aは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基であり、
R11aは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
X1aはCH、Y1aは窒素原子であり、
X2a及びY2aは、一方がCHで他方が窒素原子であり、
Zは、酸素原子又は硫黄原子であり、
nは、0、1、2又は3である。
【0033】
(1-3)
さらに、別の態様において、R1aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8aCO-又はNR9aR10aCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8aCO-、R8aSO2NH-、R8aSO2O-、R8aCON(R11a)-、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、-COOR9a、R11aC(=NOR8a)、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基で任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは各々、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、N3、-OCOR9a又はR8aCON(R11a)-で任意に置換されていてもよい)であり、
R8aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、複素環(C2〜C6)アルケニル基、アリール基、アリール(C1〜C6)アルキル基又はアリール(C2〜C6)アルケニル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R9a及びR10aは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R11aは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
X1aはCH、Y1aは窒素原子であり、
X2a及びY2aは、いずれもCHであり、
Zは、酸素原子又は硫黄原子であり、
nは、0、1、2又は3である。
【0034】
(1-4)
さらに、別の態様において、R1aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8aCO-又はNR9aR10aCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8aCO-、R8aSO2NH-、R8aSO2O-、R8aCON(R11a)-、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、-COOR9a、R11aC(=NOR8a)、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基で任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2a、R3a、R4a、R5a及びR6aのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは各々、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、NR9aR10a-、NR9aR10aCO-、N3、-OCOR9a又はR8aCON(R11a)-で任意に置換されていてもよい)であり、
R8aは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、複素環(C2〜C6)アルケニル基、アリール基、アリール(C1〜C6)アルキル基又はアリール(C2〜C6)アルケニル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R9a及びR10aは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R11aは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
X1aはCH、Y1aは窒素原子であり、
X2a及びY2aは、一方がCHで他方が窒素原子であり、
Zは、酸素原子又は硫黄原子であり、
nは、0、1、2又は3である。
【0035】
【化2】

【0036】
〔一般式(2)中、
R1bは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基又はC1〜C6アルコキシ基(これらは、各々、ハロゲン原子、R8bCO-又はNR9bR10bCO-で任意に置換されていてもよい)であり、
R2b、R3b、R4b、R5b及びR6bは、互いに独立して、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは、各々、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリールオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキルオキシ基、アリール(C1〜C6)アルキル基、R8bCO-、R8bSO2NH-、R8bSO2O-、R8bCON(R11b)-、NR9bR10b-、NR9bR10bCO-、-COOR9b、R11bC(=NOR8b)、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基で任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2b、R3b、R4b、R5b及びR6bのうちの近接した2つがその炭素原子を共有することで炭素環又は複素環(これら炭素環及び複素環は、任意に置換されていてもよい)を形成するものであり、
R7bは、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基又はC1〜C6アルキルチオ基(これらは各々、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、NR9bR10b-、NR9bR10bCO-、N3、-OCOR9b又はR8bCON(R11b)-で任意に置換されていてもよい)であり、
R8bは、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R9b及びR10bは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、複素環基、複素環(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアリール(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R11bは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
Xb及びYbは、互いに独立して、CH又は窒素原子(但し、Xb及びYbがいずれも窒素原子である場合は除く)であり、
nは、Xb及びYbがいずれもCHのときは0、1、2、3又は4であり、Xb及びYbの一方がCHで他方が窒素原子のときは0、1、2又は3である。〕
一般式(2)で表される化合物は、例えば、WO 00/47576に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0037】
【化3】

【0038】
〔一般式(3)中、
R1c、R2c、R3c及びR4cは、互いに独立して、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基、C2〜C6アルケニルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環オキシ基、複素環アルキルオキシ基、R11cCO-、NR12cR13cCO-、R12cR13cN-、R11cOOC-、R11cSO2NH-又はR14c-CO-NH-であるか、あるいは、R2cとR3c、R1cとR2c、又はR3cとR4cが、フェニル環と融合して、1個又は2個の酸素原子を含む5員環、6員環又は7員環を形成するものであってもよく、
R5c、R6c、R7c、R8c、R9c及びR10cは、互いに独立して、水素原子、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、トリフルオロメチル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R11cは、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R12c及びR13cは、互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R14cは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、R12cR13cN-又はR11cO-である。〕
一般式(3)で表される化合物は、限定はされないが、例えば、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマー混合物、ラセミ化合物(ラセミ混合物)、光学的に純粋なジアステレオアイソマー、ジアステレオアイソマー混合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物混合物及びメソ化合物等であってもよい。
【0039】
一般式(3)で表される化合物は、例えば、WO 01/68609に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0040】
【化4】

【0041】
〔一般式(4)中、
R1d及びR2dは、互いに独立して、水素原子、水酸基、メトキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、フェニル環と融合して、1個又は2個の酸素原子を含む5員環、6員環又は7員環を形成するものであってもよく、
R3d、R4d及びR5dは、互いに独立して、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、トリフルオロメチル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基である。〕
一般式(4)で表される化合物は、限定はされないが、例えば、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマー混合物、ラセミ化合物(ラセミ混合物)、光学的に純粋なジアステレオアイソマー、ジアステレオアイソマー混合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物混合物及びメソ化合物等であってもよい。
【0042】
一般式(4)で表される化合物は、例えば、WO 01/68609に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0043】
【化5】

【0044】
〔一般式(5)中、
R1e、R2e、R3e及びR4eは、互いに独立して、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基、C2〜C6アルケニルオキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環オキシ基、複素環アルキルオキシ基、R11eCO-、NR12eR13eCO-、R12eR13eN-、R11eOOC-、R11eSO2NH-又はR14e-CO-NH-であるか、あるいは、R2eとR3e、R1eとR2e、又はR3eとR4eが、フェニル環と融合して、1個又は2個の酸素原子を含む5員環、6員環又は7員環を形成するものであってもよく、
R5eは、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、トリフルオロメチル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R6eは、水素原子、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、トリフルオロメチル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R7e及びR8eは、互いに独立して、水素原子、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R9e及びR10eは、互いに独立して、水素原子、アリール基、アリールシクロアルキル基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C3〜C6アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基(これらは各々、1個、数個又は全部の水素原子がハロゲン原子で任意に置換されているか、あるいは、1個又は2個の水素原子が、水酸基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、-O-(C1〜C6)アルキル基、-NH-(C1〜C6)アルキル基、-N(C1〜C6アルキル基)2、-S-(C1〜C6)アルキル基、-COO-(C1〜C6)アルキル基、-CONH-(C1〜C6)アルキル基、-CON(C1〜C6アルキル基)2、-CO-(C1〜C6)アルキル基、-NHCO-(C1〜C6)アルキル基、-O-(C3〜C5)アルケニル基、-NH-(C3〜C5)アルケニル基、-N(C3〜C5アルケニル基)2、-S-(C3〜C5)アルケニル基、-COO-(C3〜C5)アルケニル基、-CONH-(C3〜C5)アルケニル基、-CON(C3〜C5アルケニル基)2、-CO-(C3〜C5)アルケニル基、-NHCO-(C3〜C5)アルケニル基、-O-(C3〜C5)アルキニル基、-NH-(C3〜C5)アルキニル基、-N(C3〜C5アルキニル基)2、-S-(C3〜C5)アルキニル基、-COO-(C3〜C5)アルキニル基、-CONH-(C3〜C5)アルキニル基、-CON(C3〜C5アルキニル基)2、-CO-(C3〜C5)アルキニル基又は-NHCO-(C3〜C5)アルキニル基で任意に置換されていてもよい)であり、
R11eは、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R12e及びR13eは、互いに独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R14eは、C1〜C6アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、R12eR13eN-又はR11eO-であり、
-Xe-Ye-は、-CH2-CH2-、-O-CH2-、-S-CH2-、-SO2-CH2-又は-NR15e-CO-であり、
R15eは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はアラルキル基である。〕
一般式(5)で表される化合物は、限定はされないが、例えば、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマー混合物、ラセミ化合物(ラセミ混合物)、光学的に純粋なジアステレオアイソマー、ジアステレオアイソマー混合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物混合物及びメソ化合物等であってもよい。
【0045】
一般式(5)で表される化合物は、例えば、WO 02/51838に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0046】
【化6】

【0047】
〔一般式(6)中、
R1f及びR2fは、互いに独立して、水素原子、水酸基、C1〜C6アルコキシ基、C2〜C6アルケニルオキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、フェニル環と融合して、1個又は2個の酸素原子を含む5員環、6員環又は7員環を形成するものであってもよく、
R3fは、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
R4f及びR5fは、互いに独立して、水素原子、アリール基、アラルキル基、C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、シクロアルキル基、複素環基又は複素環(C1〜C6)アルキル基であり、
-Xf-Yf-は、-CH2-CH2-、-O-CH2-、-S-CH2-、-SO2-CH2-又は-NR6f-COであり、
R6fは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はアラルキル基である。〕
一般式(6)で表される化合物は、限定はされないが、例えば、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマー混合物、ラセミ化合物(ラセミ混合物)、光学的に純粋なジアステレオアイソマー、ジアステレオアイソマー混合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物、ジアステレオアイソマーラセミ化合物混合物及びメソ化合物等であってもよい。
【0048】
一般式(6)で表される化合物は、例えば、WO 02/51838に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0049】
【化7】

【0050】
〔一般式(7)中、
R1gは、水素原子であり、
R2gは、C1〜C3アルキル基であり、R3gは、水素原子又はC1〜C3アルキル基であるか、あるいは、R2gとR3gは、炭素原子を共有してC3〜C5シクロアルキル基を形成するものであり、
あるいは、
R1gは、C1〜C3アルキル基であり、
R2gは、水素原子であり、R3gは、水素原子又はC1〜C3アルキル基であり、
R4g及びR5gは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルCO-、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルコキシ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルOCO-、及び任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルNHCO-から選択されるもの(但し、R4g及びR5gがいずれも水素原子の場合は除く)であり、
R6gは、水素原子又はハロゲン原子であり、
Argは、任意に置換されていてもよいアリール基であるか、又は、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環又は6員環の芳香族複素環基(ここで、芳香族複素環基は任意に置換されていてもよい)であり、あるいは、Argは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む二環式のヘテロアリール基(ここで、ヘテロアリール基は任意に置換されていてもよい)であり、
Xgは、-CH2-又は単結合であり、
Ygは、-NHCO-又は単結合である。〕
一般式(7)で表される化合物は、例えば、WO 03/37847に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0051】
【化8】

【0052】
〔一般式(8)中、
Yhは、酸素原子又は(CH2)n(ここでnは0、1又は2である)であり、
R1hは、フェニル基、ナフチル基、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基、又は、NR3hR4h基(ここで、R3h及びR4hは、一方が、水素原子又は任意に置換されたC1〜C4アルキル基であり、他方が、フェニル基、ナフチル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基であるか、あるいは、R3hとR4hは、窒素原子を共有した、任意にフェニル環と融合する5員環、6員環又は7員環の環式アミンである)(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R2hは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基又はヘテロアリール基は、R5h及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2hは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式芳香環基又は二環式へテロ芳香環基であり、
R5hは、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。〕
一般式(8)で表される化合物は、例えば、WO 01/96302若しくはWO 02/44172に記載の製法、又はそれらに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。具体的には、一般式(8)において、以下の(8-1)及び(8-2)の態様が好ましく例示できる。
【0053】
(8-1)
1つの態様において、Yhは、(CH2)n(ここでnは0、1又は2である)であり、
R1hは、フェニル基、ナフチル基、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基、又は、NR3hR4h基(ここで、R3h及びR4hは、一方が、水素原子又は任意に置換されたC1〜C4アルキル基であり、他方が、フェニル基、ナフチル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基であるか、あるいは、R3hとR4hは、窒素原子を共有した、任意にフェニル環と融合する5員環、6員環又は7員環の環式アミンである)(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R2hは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基又はヘテロアリール基は、R5h及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2hは、任意に置換されていてもよい二環式芳香環基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式芳香環基又は二環式へテロ芳香環基であり、
R5hは、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。
【0054】
(8-2)
また、他の態様では、Yhは、酸素原子であり、
R1hは、フェニル基、ナフチル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
R2hは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基又はヘテロアリール基は、R5h及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、R2hは、任意に置換されていてもよい二環式芳香環基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式芳香環基又は二環式へテロ芳香環基であり、
R5hは、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。
【0055】
【化9】

【0056】
〔一般式(9)中、
Yiは、単結合、酸素原子、(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)又はNR2iであり、
mは、1、2又は3であり、
pは、0又は1であり、
Xiは、O、S、C=O、SO2、-CH=CH-、NH又はN(C1〜C4)アルキルであり、
Ar1iは、アリール基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
Ar2iは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、R1i及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2iは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1iは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
R2iは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルキル基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルカノイル基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルカノキシカルボニル基、又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルアリールオキシカルボニル基である。〕
一般式(9)で表される化合物は、例えば、WO 02/89800、WO 02/90355若しくはWO 03/32991に記載の製法、又はそれらに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。具体的には、一般式(9)において、以下の(9-1)〜(9-3)の態様が好ましく例示できる。
【0057】
(9-1)
1つの態様において、Yiは、単結合、酸素原子、又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
mは、1、2又は3であり、
pは、0又は1であり、
Xiは、O、S、C=O、SO2又は-CH=CH-であり、
Ar1iは、アリール基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
Ar2iは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、R1i及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2iは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1iは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。
【0058】
(9-2)
また、他の態様では、Yiは、単結合、酸素原子、又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
mは、1、2又は3であり、
pは、0又は1であり、
Xiは、NH又はN(C1〜C4)アルキルであり、
Ar1iは、アリール基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
Ar2iは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、R1i及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2iは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1iは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。
【0059】
(9-3)
さらに、別の態様において、Yiは、NR2iであり、
mは、1、2又は3であり、
pは、0又は1であり、
Xiは、O、S、C=O、SO2又は-CH=CH-であり、
Ar1iは、アリール基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む単環式若しくは二環式のヘテロアリール基(これらは各々、任意に置換されていてもよい)であり、
Ar2iは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、R1i及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2iは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1iは、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
R2iは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルキル基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルカノイル基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルカノキシカルボニル基、又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルアリールオキシカルボニル基である。
【0060】
【化10】

【0061】
〔一般式(10)中、
Yjは、単結合、酸素原子又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
Ar1jは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい単環式若しくは二環式のヘテロアリール基であり、
Ar2jは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、R1j及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2jは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又は二環式のヘテロ芳香族基であり、
R1jは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
Yjが単結合であるとき、Ar2jは2-ナフチル基ではない。〕
一般式(10)で表される化合物は、例えば、WO 02/90355に記載の製法、又はそれらに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0062】
【化11】

【0063】
〔一般式(11)中、
Xkは、単結合、酸素原子、NR3k、又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
Ykは、CH2、CO、CH(OH)又は-CH2CH(OH)-であり、
Ar1kは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式のヘテロアリール基であるか、あるいは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の単環式のヘテロアリール基(ここで、単環式のヘテロアリール基は任意に(例えば、少なくともR2kにより)置換されていてもよい)であり、
Ar2kは、フェニル基、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基、複素環基又はヘテロアリール基は、任意に(例えば、R1k及び更なる任意の置換基により)置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2kは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1kは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
R2kは、任意に置換されていてもよいアリール基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい単環式若しくは二環式のヘテロアリール基であり、
R3kは、水素原子、又は任意に置換されていてもよいC1〜C4アルキル基である。〕
一般式(11)で表される化合物は、例えば、WO 03/2559若しくはWO 03/2561に記載の製法、又はそれらに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。具体的には、一般式(11)において、以下の(11-1)及び(11-2)の態様が好ましく例示できる。
【0064】
(11-1)
1つの態様において、Xkは、単結合、酸素原子、NR3k、又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
Ykは、CH2、CO、CH(OH)又は-CH2CH(OH)-であり、
Ar1kは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の単環式のヘテロアリール基(ここで、ヘテロアリール基は、少なくともR2kにより、任意に置換されている)であり、
Ar2kは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基又はヘテロアリール基は、少なくともR1k及び更なる任意の置換基により、任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2kは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1kは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
R2kは、任意に置換されていてもよいアリール基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい単環式若しくは二環式のヘテロアリール基であり、
R3kは、水素原子又はC1〜C4アルキル基である。
【0065】
(11-2)
また、他の態様では、Xkは、単結合、酸素原子、NR3k、又は(CH2)n(ここで、nは1、2又は3である)であり、
Ykは、CH2、CO、CH(OH)又は-CH2CH(OH)-であり、
Ar1kは、N、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式のヘテロアリール基であり、
Ar2kは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、フェニル基又は複素環基は、少なくともR1k及び更なる任意の置換基により、任意に置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2kは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R1kは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
R3kは、Ar1kがインドリルであるときは水素原子又はC1〜C4アルキル基であり、Ar1kがインドリル以外のときは水素原子又は任意に置換されていてもよいC1〜C4アルキル基であり、
XkがNH、YkがCH2かつAr1kがインドリルであるときは、Ar2kは、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルではない。
【0066】
ただし、上記(11-2)の場合、一般式(11)で表される化合物は、(2R)-1-(3,5-ジクロロベンゾイル)-2-[(1H-インドール-3-イル)メチル]ピペラジン、(2R)-2-[(1H-インドール-3-イル)メチル]-1-[(3-メトキシ-5-トリフルオロメチル)ベンゾイル]ピペラジン、及び 1-ベンゾイル-2-[(1H-インドール-3-イル)メチル]ピペラジンを除く化合物である。
【0067】
【化12】

【0068】
〔一般式(12)中、
Ylは、水素原子又はC1〜C6アルキル基であり、
R1lは、任意に置換されていてもよいアリール基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基であり、
Arlは、アリール基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環の複素環基(ここで、アリール基又は複素環基は、R2l及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であり、
R2lは、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる4個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。〕
一般式(12)で表される化合物は、例えば、WO 03/41711に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0069】
【化13】

【0070】
〔一般式(13)中、
Xsは、単結合、酸素原子、NR3s又は(CH2)n(ここで、nは1又は2である)であり、
Ysは、-(CH2)qNHC(O)、-(CH2)qO(CH2)p、-(CH2)qS(CH2)p、-(CH2)qC(O)(CH2)p、-(CH2)qSO2(CH2)p、-(CH2)qCH=CH(CH2)p、-(CH2)qCH(OH)(CH2)p、-C(O)、(CH2)3、-(CH2)qNH、-(CH2)qNHCONH又は-(CH2)qCONH(ここで、qは1又は2であり、pは0又は1である)であり、
Ar1sは、フェニル基、ナフチル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基、あるいはN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む二環式のヘテロアリール基であり、
Ar2sは、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基であり、
Ar3sは、任意に置換されていてもよい下記式:
【0071】
【化14】

【0072】
で示される基(ここで、R5sは、-O(CH2)mNR1sR2s又は(CH2)mNR1sR2sであり、mは2から6までの整数である)であり、
R1s及びR2sは、各々独立して、水素原子、若しくは任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基であるか、又は、R1sとR2sは、窒素原子を共有してC3〜C6アザシクロアルカン環又はC3〜C6(2-オキソ)アザシクロアルカン環の一部を形成するものであり、
あるいは、
R1sは、前記R5sの(CH2)m部分のうちの少なくとも1つのCH2と共に、C3〜C6アザシクロアルカン環又はC3〜C6(2-オキソ)アザシクロアルカン環を形成し、R2sは、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、ピペリジン基、ピロリジン基、モルフォリン基又は窒素原子と共に、第1のC3〜C6アザシクロアルカン環に融合される第2のC3〜C6アザシクロアルカン環を形成するものであり、
R3sは、水素原子、又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基であり、
Ar3sは、アミドカルボニル基に対してオルソ位となるようにAr2sに結合したものである。〕
一般式(13)で表される化合物は、例えば、WO 03/51368に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0073】
【化15】

【0074】
〔一般式(14)中、
R1t及びR2tは、互いに独立して、水素原子、又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基であり、
Ar1tは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環のヘテロアリール基であるか、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式のヘテロアリール基であり、
Ar2tは、フェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む5員環若しくは6員環のヘテロアリール基(ここで、フェニル基又はヘテロアリール基は、R3t及び更なる任意の置換基により置換されていてもよい)であるか、あるいは、Ar2tは、N、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい二環式の芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R3tは、それぞれ独立して、水素原子、任意に置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ基、ハロゲン原子、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、任意に置換されていてもよいフェニル基、又はN、O及びSから選ばれる3個以下のヘテロ原子を含む任意に置換されていてもよい5員環若しくは6員環の複素環基である。〕
一般式(14)で表される化合物は、例えば、WO 03/51873に記載の製法、又はそれに準ずる方法により得ることができるが、限定はされない。
【0075】
オレキシン受容体アンタゴニストの薬理学的に許容し得る塩(以下「オレキシン受容体アンタゴニストの塩」とも言う。)としては、限定はされないが、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、及び重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、及びクエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びカンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、及びカルシウム塩など)、有機アミン塩(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、アルギニン及びリジンなどの有機塩基との塩)、アンモニウム塩などが好ましく挙げられるが、なかでも塩酸塩が特に好ましい。オレキシン受容体アンタゴニスト及びその塩は、その種類により溶媒和物の形で存在する場合もあり、本発明においては当該溶媒和物もオレキシン受容体アンタゴニスト又はその塩に含むものとする。溶媒和物としては、水和物及び非水和物のいずれであってもよいが、なかでも水和物が好ましい。非水和物としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール)、及びジメチルホルムアミドなどが使用され得る。
【0076】
本発明の抗不安薬において、有効成分としてのオレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の含有割合は、限定はされず、適宜設定することができるが、例えば、抗不安薬全体に対し、0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。有効成分の含有割合が上記範囲を満たすことにより、十分な抗不安作用を発揮することができる。
【0077】
また、有効成分としてのオレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、より高純度となるよう精製されたものであることが好ましく、限定はされないが、例えば、50%以上の純度が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0078】
本発明の抗不安薬は、ヒト又は非ヒト哺乳動物に対し、種々の投与経路、具体的には、経口又は非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)で投与することができる。従って、本発明に使用する化合物(オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物)は、単独で用いることも可能であるが、投与経路に応じて慣用される方法により薬学的に許容し得る担体を用いて適当な剤形に製剤化することができる。
【0079】
好ましい剤形としては、経口剤では、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、及びトローチ剤等が好ましく挙げられ、非経口剤では、例えば、吸入剤、坐剤、注射剤(点滴剤を含む)、軟膏剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤、及びリポソーム剤等が好ましく挙げられる。
【0080】
これら製剤の製剤化に用い得る担体としては、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤のほか、必要に応じ、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、及び無痛化剤等が挙げられ、医薬品製剤の原料として用いることができる公知の成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
【0081】
当該成分として使用可能な無毒性のものとしては、例えば、大豆油、牛脂、及び合成グリセライド等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、及び固形パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸オクチルドデシル、及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;セトステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子;エタノール、及びイソプロパノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、及びポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);グルコース、及びショ糖等の糖;無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩;精製水等が挙げられ、いずれもその塩またはその溶媒和物であってもよい。
【0082】
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、及びメグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、及びカルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、及び硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、及び桂皮末等が、それぞれ好ましく挙げられ、いずれもその塩又はそれらの溶媒和物であってもよい。
【0083】
例えば経口製剤の場合は、本発明に使用する化合物(オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物)に、賦形剤、さらに必要に応じて、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤等を加えた後、常法により、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、及びカプセル剤等とすることができる。錠剤及び顆粒剤の場合には、例えば、糖衣するほか、必要に応じ、その他の公知の手法で適宜コーティングすることもできる。シロップ剤及び注射用製剤等の場合は、例えば、pH調整剤、溶解剤、及び等張化剤等、並びに必要に応じて溶解補助剤、及び安定化剤等を加えて、常法により製剤化することができる。また、外用剤の場合は、特に製法は限定されず、常法により製造することができる。使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば、動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、及び精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、及び香料等を添加することができる。さらに必要に応じて、血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、及び角質溶解剤等の成分を配合することもできる。この場合、有効成分の担体に対する割合は、限定はされないが、1〜90重量%の間で変動され得る。
【0084】
本発明の抗不安薬を非経口投与(例えば注射投与)する場合、その有効な投与量は、例えば、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態、塩の種類、及び疾患の具体的な種類等に応じて異なり、限定はされないが、例えば、成人の場合は体重60kgの人で1日あたり、30μg〜1,000mg、好ましくは100μg〜500mg、より好ましくは100μg〜30mg、さらに好ましくは1〜30mgを、それぞれ1回で又は複数回に分けて投与することができる。
【0085】
本発明の抗不安薬を経口投与する場合、その投与形態及び有効な投与量は、有効成分として用いる化合物(オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物)の種類の選択、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、及び医師の判断等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば、成人の場合は体重60kgの人で1日あたり、30μg〜10,000mg、好ましくは100μg〜5,000mg、より好ましくは100μg〜100mg、さらに好ましくは1〜100mgを、それぞれ1回で又は複数回に分けて投与することができる。
【0086】
投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動し得ることが予測され、例えば、経口投与は、静脈注射等の非経口投与の場合よりも高い投与量を必要とすると考えられる。小児に投与される場合は、用量は成人に投与される量よりも少ない可能性がある。実際に用いられる投与法は、大幅に変動することもあり、本明細書に記載の好ましい投与法から逸脱してもよい。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的かつ経験的な最適化手順を用いて適宜調整することができる。
【0087】
本発明の抗不安薬を、前述した各種疾患及び病態等の予防や治療に用いた場合の効果の確認方法としては、限定はされないが、例えば、ハミルトン不安尺度、臨床不安尺度、自己評価不安尺度、及びシーハン不安尺度等が挙げられる。
【0088】
なお本発明は、抗不安薬の製造のための、オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物の使用をも含むものである。
【0089】
本発明は、オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を患者に投与することを特徴とする、不安の治療及び/又は予防方法をも含むものである。

3.スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法(以下「本発明の方法」とも言う。)は、前述したように、オレキシン-Aを用いることにより、抗不安作用を有する化合物を選択する(スクリーニングする)方法である。詳しくは、本発明の方法は、オレキシン-Aとオレキシン受容体(オレキシン受容体-1、オレキシン受容体-2)、中でもオレキシン-Aとオレキシン受容体-1との結合反応性が非常に高いという知見に加え、オレキシン-Aの当該結合により不安作用が惹起されること等の新規知見にも基づく方法であり、オレキシン-Aを用いることで、候補物質(候補化合物)のうち、当該オレキシン-Aの存在下において当該結合を阻害し得る物質(オレキシン-Aに対して拮抗作用を有する物質)、特にオレキシン受容体アンタゴニストをスクリーニングする方法である。
【0090】
なお、本発明の方法においては、スクリーニングに用いる候補物質として、予め公知の方法等により選択及び評価したものを準備しておいてもよい。これにより、本発明のスクリーニング方法をより効果的かつ容易なものとすることができる。例えば、前述した「抗不安薬」に関する説明中の「in vitroでのスクリーニング方法」(例えばバインディングアッセイ等)を事前に行い、より有用な候補物質を準備しておくことが好ましい。
【0091】
このような本発明の方法としては、具体的には、例えば、以下の2つのスクリーニング方法が好ましく挙げられる。
【0092】
1つ目の方法は、被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物の体内で分泌させ、又は、被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させた後若しくは分泌させると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法である。
【0093】
2つ目の方法は、被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物に投与し、又は、被験動物にオレキシン-Aを投与した後若しくは投与すると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法である。
【0094】
これら2つの方法では、得られた解析結果に基づき、投与した候補物質が抗不安作用を有するものであるか否かを容易に評価できる。なお、被験動物に不安を惹起させるためにはオレキシン-Aの生理活性作用(不安惹起作用)を利用するが、具体的な操作としては、上述のように、被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させることや、被験動物の体内にオレキシン-Aを投与することが好ましい。
【0095】
以下に、本発明のスクリーニング方法について、その種類及び工程を例示説明する。
【0096】
(1) オレキシン-Aを分泌させることにより不安を惹起させる場合
<方法1>
方法1は、下記工程1a〜1cの順で行う方法である。
【0097】
工程1a:被験動物に候補物質を投与する。候補物質の投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0098】
工程1b:所望の試験方法(例えば明暗探査試験及び高架式十字迷路試験など(方法2〜6においても同様);詳細は後述する)に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置く。つまり、この方法では、環境の変化によって被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させるようにする。
【0099】
工程1c:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)を解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0100】
<方法2>
方法2は、下記工程2a〜2cの順で行う方法である。方法2は、上記方法1における工程1bの後に工程1aを行うようにすること(つまり、工程1aと工程1bの順序を逆にすること)以外は方法1と同様である。
【0101】
工程2a:所望の試験方法に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置く。つまり、この方法では、環境の変化によって被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させるようにする。
【0102】
工程2b:被験動物に候補物質を投与する。候補物質の投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0103】
工程2c:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)を解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0104】
<方法3>
方法3は、下記工程3a及び3bの順で行う方法である。方法3は、上記方法1における工程1aと工程1bとを同時に行うようにすること以外は方法1と同様である。
【0105】
工程3a:所望の試験方法に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置くのと同時に被験動物に候補物質を投与する。つまり、この方法では、環境の変化によって被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させるようにするとともに、候補物質の投与も行う。候補物質の投与は、脳室内への投与が好ましい。すなわち、方法3においては、候補物質を、オレキシン-Aを分泌させるのと同時に投与する。「同時に投与する」とは、体内でのオレキシン-Aの分泌時と時間を全く同一にして投与するといった厳密な解釈には限定されず、医学及び生理学的見地等から実質的に同時と言える範囲内であれば、「同時に投与する」に含めるものとする。例えば、連続的又は断続的に体内への候補物質の投与を自動又は手動で行いながらオレキシン-Aを分泌させるようにしてもよいし、分泌と投与に多少の時間差があってもよく、これらは実質的に同時であり、実施態様は適宜設定できる。
【0106】
工程3b:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)について解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0107】
(2) オレキシン-Aを投与することにより不安を惹起させる場合
<方法4>
方法4は、下記工程4a〜4dの順で行う方法である。
【0108】
工程4a:被験動物に候補物質を投与する。候補物質の投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0109】
工程4b:被験動物にオレキシン-Aを投与する。オレキシン-Aの投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0110】
工程4c:所望の試験方法に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置く。
【0111】
工程4d:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)について解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0112】
<方法5>
下記工程5a〜5dの順で行う方法である。方法5は、上記方法4における工程4bの後に工程4aを行うようにすること(つまり、工程4aと工程4bの順序を逆にすること)以外は方法4と同様である。
【0113】
工程5a:被験動物にオレキシン-Aを投与する。オレキシン-Aの投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0114】
工程5b:被験動物に候補物質を投与する。候補物質の投与は、脳室内への投与が好ましい。
【0115】
工程5c:所望の試験方法に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置く。
【0116】
工程5d:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)について解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0117】
<方法6>
方法6は、下記工程6a〜6cの順で行う方法である。方法6は、上記方法4における工程4aと工程4bとを同時に行うようにすること以外は方法4と同様である。
【0118】
工程6a:被験動物に候補物質及びオレキシン-Aを同時に投与する。候補物質及びオレキシン-Aの投与は、脳室内への投与が好ましい。また、同時に投与するとは、候補物質及びオレキシン-Aの両者を混合して、両者を時間を全く同一にして投与することには限定されず、医学及び生理学的見地等から実質的に同時と言える範囲内であれば、「同時に投与する」に含めるものとする。例えば、両者の投与に多少の時間差があってもよいし、また各々投与経路が異なっていてもよく、これらは実質的に同時であり、投与形態は適宜設定できる。
【0119】
工程6b:所望の試験方法に準じ、被験動物を不安の惹起を伴う環境下に置く。
【0120】
工程6c:試験結果に基づいて被験動物の不安の有無(程度)について解析及び評価し、候補物質が抗不安作用を有するものであるか、判断及び選択する。
【0121】
上記(2)の場合の方法4、5、6は、被験動物の体内にオレキシン-Aを積極的に投与する工程を含むこと以外は、それぞれ、上記(1)の場合の方法1、2、3と同様の方法であると言える。従って、方法4〜6では、他の工程の条件が大きく異ならない限り、被験動物の体内におけるオレキシン-Aの量は方法1〜3の場合よりも多くなると考えられるため、より優れた抗不安作用を発揮する候補物質をスクリーニングできる可能性がある。
【0122】
上記方法1〜6においては、被験動物として、例えば、マウス、ラット及びモルモット等を用いることができる。なかでも、上記所望の試験方法として明暗探査試験(後述する)を行う場合は、マウス、ラットを用いることが好ましく、高架式十字迷路試験(後述する)を行う場合は、マウス、ラットを用いることが好ましい。被験動物は、明期及び暗期の繰り返しサイクルで(例えば、明期及び暗期が各々12時間のサイクル(例えば、明期が7:00〜19:00、暗期が19:00〜7:00など))、水や餌は自由に摂取できるようにして飼育したものを好適に用いることができる。飼育数に関しては、マウスの場合、1ゲージ当たり、例えば2〜10匹程度、好ましくは10匹程度飼育したもの、ラットの場合、1ゲージ当たり、例えば2〜5匹程度、好ましくは2匹程度飼育したものを好適に用いることができる。
【0123】
候補物質の被験動物への投与方法は、限定はされず、適宜設定できる。例えば、脳室内投与の場合、薬物等を脳室内の所望の位置へ投与する際の常法に従えばよく、限定はされない。例えば、まず被験動物を麻酔した上で、ガイドカニューレを所定の位置に固定する手術を施しておき、適当な回復期間(例えば7〜14日、好ましくは少なくとも1週間程度)の経過後、ガイドカニューレにインジェクションニードルを挿し込み、還流ポンプを接続したマイクロシリンジを用い、上記ニードルを介して候補物質を投与することができる。候補物質の投与量は、限定はされず、適宜設定できる。
【0124】
候補物質は、人工脳脊髄液を用いて所望の濃度の溶液として調製しておくことができる。人工脳脊髄液としては、公知の常用されているものを用いればよく、限定はされないが、例えば、aCSF(glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl2 2.5mM、MgSO4 1.2mM、NaHCO3 25mM、KH2PO4 2.2mM;pH7.4)等が好ましく挙げられる。
【0125】
オレキシン-Aの被験動物への投与方法は、候補物質の場合と同様の方法が適用できる。オレキシン-Aも、候補物質と同様に、人工脳脊髄液を用いて所望の濃度の溶液として調製しておくことができる。
【0126】
所望の試験方法としては、被験動物を、不安の惹起を誘引し得る環境下に置くことができる公知の試験方法であればよく、限定はされないが、例えば、「明暗探査試験(Light-Dark Exploration Test)」及び「高架式十字迷路試験」等が好ましく挙げられる。これら両試験について、被験動物の不安の有無(程度)の解析及び評価方法等を含め、以下に説明する。
【0127】
<明暗探査試験>
明暗探査試験は、暗コンパートメント(dark compartment)及び明コンパートメント(light compartment)の2つのコンパートメントから構成される試験装置を用いて行うことができる。暗コンパートメントは、プラスチック製等の黒い材質の部材で囲まれており、上に蓋を備えた構造をしており、明コンパートメントは、プラスチック製等の白い材質の部材で囲まれており、上が開いている構造をしている。明暗の両コンパートメントは、プラスチック製等の黒い材質のトンネルで連結されており、互いに行き来可能となっている。
【0128】
試験室の照度は、適宜(例えば10〜1000ルクス、好ましくは150ルクス)に設定しておく。被験動物は試験開始前(例えば1時間以上前、好ましくは3時間以上前)から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で比較的暗い照度(例えば50ルクス以下、好ましくは10ルクス)に慣らしておく。当該試験は所定の時間帯(例えば9:00〜19:00の間、好ましくは13:00〜16:00の間)に行うようにする。試験前に投与を行う場合、当該投与は、例えば試験開始180分前までに、好ましくは15〜30分前に行う。
【0129】
当該試験は、被験動物を暗コンパートメントに入れた状態で開始する。試験開始から一定時間(例えば5分以上、好ましくは5分)、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画する。当該試験では、1グループ(1試験条件)あたり6〜15匹、好ましくは8〜15匹の被験動物について同様の試験を行う。
【0130】
試験終了後に、各被験動物について明コンパートメントに入っていた合計時間を測定し、結果を例えば「平均値+S.E.M.」で表記する。なお、被験動物の全肢が明コンパートメントに入っていた時間を、被験動物が明コンパートメントに入っていた時間と定義して測定する。試験結果の統計学的解析は、例えば、ANOVA(one-way analysis of variance)と、それに引き続き採用されるDunnett's testにより行うことができるほか、Welch's t-test等により行うこともできるが、これらに限定はされない。
【0131】
当該試験で用いる被験動物は、上記のように、試験直前まで比較的暗い照度に慣らしておいた動物であるため、その後の比較的明るい照度の領域に対して不安感を持つと考えられる。従って、この明暗探査試験では、明コンパートメントにより長い時間入っていた被験動物ほど、不安感が少ない動物、すなわち不安感が緩和若しくは除去された動物であると評価することができる。
【0132】
当該試験においては、候補物質の溶液の調製に用いた人工脳脊髄液のみをネガティブコントロールとして用いる。一方、候補物質を含む人工脳脊髄液については、候補物質の濃度が異なるものを予め2種以上準備しておき、それぞれについて試験を行うことができる。この場合、当該候補物質が抗不安作用を有するとすればどの程度の投与量(濃度)で効果が発揮されるか(有意差が認められるか)、あるいは投与量(濃度)依存性の傾向が認められるか等を解析及び評価することができる。
【0133】
<高架式十字迷路試験>
高架式十字迷路試験は、S.Pellowらの論文(J. Neurosci. Methods, vol.14 (1985), p-149-167)に記載された試験手順に準じて行うことができる。
【0134】
試験装置としては、2つのオープンアーム(open arm)と、2つのクローズドアーム(closed arm)が、それぞれ、中心部分(common central platform)に同一線上に位置するように連結して構成される十字型の装置を用いることができ、これを床から一定の高さ(例えば30〜100cm、好ましくは40〜50cm)に設置する。オープンアームの周囲(幅方向の端部)には、一定の高さ(例えば0.1〜1.0cm、好ましくは0.3〜0.5cm)のリップ部分が設けられており、被験動物が容易に落下しないようにされている。試験装置の構成部品の材質は、全てプラスチック製等であることが好ましい。試験装置の色や透明性については、床及びリップ部分が灰色等の暗色系の色であり、クローズドアームは壁が無色透明であることが好ましい。
【0135】
試験室の照度は適宜(例えば5〜200ルクス、好ましくは5〜20ルクス)設定しておく。被験動物は試験開始前(例えば1時間以上前、好ましくは3時間以上前)から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で比較的明るい照度(例えば10〜1000ルクス、好ましくは20〜500ルクス)に慣らしておく。当該試験は所定の時間帯(例えば9:00〜19:00の間、好ましくは13:00〜16:00の間)に行うようにする。試験前に投与を行う場合、当該投与は、例えば試験開始180分前までに、好ましくは15〜30分前に行う。
【0136】
当該試験は、被験動物を、クローズドアームの先端に試験装置の中心部分から外側方向を向くようにして置いた状態で開始する、あるいは、被験動物を、中心部分に設置した透明な箱に入れ一定時間後にこの箱を取り除いて開始する。試験開始から一定時間(例えば5分以上、好ましくは5分)、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画する。当該試験では、1グループ(1試験条件)あたり6〜15匹、好ましくは8〜15匹の被験動物について同様の試験を行う。
【0137】
試験終了後に、各被験動物についてオープンアーム上に居た合計時間を測定し、結果を例えば「平均値+S.E.M.」で表記する。なお、被験動物の全肢がオープンアーム上にある時間を、被験動物がオープンアーム上に居た時間と定義して測定する。試験結果の統計学的解析は、例えば、ANOVA(one-way analysis of variance)とそれに引き続き採用されるDunnett's test又はWelch's t-testにより行うことができるが、これに限定はされない。
【0138】
当該試験で用いる被験動物は、試験直前まで比較的明るい照度に慣らしておいた動物であるため、その後の比較的暗い照度の試験条件下では、横に壁が無いオープンアーム上に居ることに対して不安感を持つと考えられる。従って、この高架式十字迷路試験では、結果的にオープンアーム上により長い時間居た被験動物ほど、不安感が少ない動物、すなわち不安感が緩和若しくは除去された動物であると評価することができる。
【0139】
高架式十字迷路試験等においては、候補物質の溶液の調製に用いた人工脳脊髄液のみをネガティブコントロールとして用いる。一方、候補物質を含む人工脳脊髄液については、候補物質の濃度が異なるものを予め2種以上準備しておき、それぞれについて試験を行うことができる。この場合、当該候補物質が抗不安作用を有するとすればどの程度の投与量(濃度)で効果が発揮されるか(有意差が認められるか)、あるいは投与量(濃度)依存性の傾向が認められるか等を解析及び評価することができる。
【0140】
本発明のスクリーニング方法で得られる化合物は、抗不安作用を有するため、抗不安薬の有効成分として用いることができる。

4.スクリーニング用キット
上記本発明のスクリーニング方法を実施するに当たっては、構成要素としてオレキシン-Aを含む、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング用キットを用いることができる。
【0141】
上記キットにおいては、オレキシン-Aは、その安定性(保存性)を考慮し、例えば、粉末状態で凍結保存し、実験を行う日に前述した人工脳脊髄液に溶解させて使用することが好ましい。
【0142】
上記キットは、オレキシン-A以外に他の構成要素を含んでいてもよい。他の構成要素としては、例えば、ガイドカニューレ、デンタルセメント(カニューレ固定材)、インジェクションニードル、マイクロシリンジ、及び還流ポンプ等を挙げることができる。
【0143】
上記キットは、構成要素として少なくともオレキシン-Aを備えているものであればよい。従って、抗不安作用を有する化合物のスクリーニングに必須となる構成要素の全てを、当該オレキシン-Aと共に備えているものであってもよいし、そうでなくてもよく、限定はされない。後者の場合は、オレキシン-A以外の必須構成要素の一部又は全部を、少なくともスクリーニング方法を実際に行う時までに準備すればよい。
【0144】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0145】
「オレキシン-Aによる不安惹起作用の確認(1)」
(1) 被験動物
明暗探査試験用に、C57BL/6NCrjマウス(オス, 25〜30 g, Charles River, Japan)を使用した。マウスは1ケージに10匹飼育したものを用いた。
【0146】
高架式十字迷路試験用に、WISTARラット(オス, 300〜400 g, Charles River, Japan)を使用した。マウスは1ケージに2匹飼育したものを用いた。
【0147】
これら被験動物は、12時間の明暗サイクル(明期:7:00〜19:00,暗期:19:00〜7:00)で、水と餌は自由に摂取できるようにして飼育した。
【0148】
(2) オレキシン-A溶液の調製
オレキシン-A(Peptide Institute Inc., Osaka, Japan)は、人工脳脊髄液(aCSF:glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl2 2.5mM、MgSO4 1.2mM、NaHCO3 25mM、KH2PO4 2.2mM;pH7.4)に溶解させ、所定の各種溶液濃度(0.1nmol/μl, 0.3nmol/μl, 1.0nmol/μl, 3.0nmol/μl)に調整した。なお、人工脳脊髄液のみを、ネガティブコントロール用として用いた。
【0149】
(3) ガイドカニューレの固定手術
手術前のマウスの麻酔は、ケタミン(ketamine)(100mg/kg, i.p.)とキシラジン(xylazine)(10mg/kg, i.p.)を用いて行った。
【0150】
マウス用のガイドカニューレ(長さ10mm)を、その先端が側脳室(lateral ventricle)の所定の位置(ブレグマ(Bregma)縫合から0.3mm後ろ(ラムダ(Lambda)縫合寄り)、0.9mm右で、皮質表面から深さ2.3mmの位置)になるよう挿入する手術を行い、KetacTM Cem MaxicapTM デンタルセメント(3M ESPE, Seefeld, Germany)を用いて固定した。
【0151】
手術前のラットの麻酔は、ケタミン(ketamine)(80mg/kg, i.p.)とキシラジン(xylazine)(8mg/kg, i.p.)を用いて行った。
【0152】
ラット用のガイドカニューレ(長さ17mm)を、その先端が側脳室(lateral ventricle)の所定の位置(ブレグマ(Bregma)縫合から0.8mm後ろ(ラムダ(Lambda)縫合寄り)、1.4mm右で、皮質表面から深さ3.0mmの位置)になるよう挿入する手術を行い、デンタルセメント(GC Co., Tokyo. Japan)を用いて固定した。
【0153】
マウス及びラットのいずれにおいても、手術後は試験の実施まで少なくとも一週間の回復期間を設けた。
【0154】
(4) 脳室内投与
ガイドカニューレの先端よりさらに0.5mm深く側脳室内に挿入できるステンレス製のインジェクションニードルを用いて、オレキシン-A溶液の脳室内投与を行った。投与量は、マウスは2μl、ラットは5μlとした。マイクロシリンジ(705N 50μl, Hamilton, Nevada, USA)を還流ポンプ(CMA100, BAS Inc., Tokyo, Japan)に接続し、正確に定速注入を行った(マウスには1μl/min、ラットには2.5μl/min)。
【0155】
インジェクションニードルは、投与後1分間はガイドカニューレに挿したままにし、正確な量が脳室内に投与されるようにした。
【0156】
なお、カニューレが所定の位置に埋め込まれていたかを、試験終了後にカニューレからインク(水性顔料インク)を投与して確認した。
【0157】
(5) 行動試験及び統計解析
行動試験として、マウスに対しては「明暗探査試験」を、ラットに対しては「高架式十字迷路試験」を、以下の手順により行った。
【0158】
<明暗探査試験>
当該試験では、下記の4群を被験対象とした。
【0159】
aCSF(vehicle)投与群 (aCSF, n=14)
0.1nmol オレキシン-A投与群 (OXA-0.1, n=15)
0.3nmol オレキシン-A投与群 (OXA-0.3, n=16)
1.0nmol オレキシン-A投与群 (OXA-1.0, n=17)
試験装置としては、暗コンパートメント(dark compartment:縦10cm×横15cm×長さ20cm)と、明コンパートメント(light compartment:縦20cm×横15cm×長さ20cm)との2つのコンパートメントから構成した装置を用いた。具体的には、暗コンパートメントとしては、黒いプラスチック製で上に蓋がある構造をした部材を用い、明コンパートメントとしては、白いプラスチック製で上が開いている構造をした部材を用い、明暗の両コンパートメントを黒いプラスチック製のトンネル(縦7cm×横10cm×長さ4.5cm)で連結して、互いに行き来できるようにした。
【0160】
試験室の照度は150ルクスに設定しておいた。被験動物は試験開始の3時間以上前から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で10ルクスの照度に慣らしておいた。試験は13:00〜16:00の間に行った。
【0161】
いずれの被験対象についても、被験動物への脳室内投与は試験開始15分前に行った。
【0162】
当該試験は、被験動物を暗コンパートメントに入れた状態で開始した。試験開始から5分間、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画した。当該試験では、aCSF投与群では14匹、0.1nmol オレキシン-A投与群では15匹、0.3nmol オレキシン-A投与群では16匹、1.0nmol オレキシン-A投与群では17匹について、個々に同様の試験を行った。
【0163】
試験終了後に、各被験動物について明コンパートメントに入っていた合計時間を測定し、被験対照ごとに、その結果を「平均値+S.E.M.」で表記した(図1参照)。なお、前述したように、被験動物の全肢が明コンパートメント入っていた時間を、被験動物が明コンパートメントに入っていた時間と定義して測定した。試験結果の統計学的解析は、ANOVA(one-way analysis of variance)と、それに引き続き採用されるDunnett's testとにより行った。
【0164】
<高架式十字迷路試験>
当該試験では、下記の5群を被験対象とした。
【0165】
aCSF(vehicle)投与群 (aCSF, n=6)
0.1nmol オレキシン-A投与群 (ORX-0.1, n=5)
0.3nmol オレキシン-A投与群 (ORX-0.3, n=5)
1.0nmol オレキシン-A投与群 (ORX-1.0, n=6)
3.0nmol オレキシン-A投与群 (ORX-3.0, n=5)
基本的には、S.Pellowらの論文(J. Neurosci. Methods, vol.14 (1985), p-149-167)に記載された高架式十字迷路試験の手順に準じて行った。
【0166】
試験装置としては、2つのオープンアーム(open arm:幅10cm×長さ50cm)と、2つのクローズドアーム(closed arm:幅10cm×長さ50cm,幅方向の端に設けられた壁の高さ40cm)が、それぞれ、中心部分(common central platform:縦10cm×横10cm)に同一線上に位置するように連結して構成した十字型の装置を用い、これを床から約50cmの高さに設置した。オープンアームの周囲(幅方向の端部)には、高さ0.5cmのリップ部分を設け、被験動物が容易に落下しないようにした。装置の構成部品は全てプラスチック製とし、床は灰色で、クローズドアームの壁は無色透明とした。
【0167】
試験室の照度は8ルクスに設定しておいた。被験動物は試験開始の3時間以上前から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で500ルクスの照度に慣らしておいた。試験は13:00〜16:00の間に行った。
【0168】
両被験対象とも、被験動物への脳室内投与は試験開始15分前に行った。
【0169】
当該試験は、被験動物を、クローズドアームの先端に試験装置の中心部分から外側方向を向くようにして置いた状態で開始した。試験開始から5分間、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画した。当該試験では、aCSF投与群では6匹、0.1nmol オレキシン-A投与群では5匹、0.3nmol オレキシン-A投与群では5匹、1.0nmol オレキシン-A投与群では6匹、3.0nmol オレキシン-A投与群の被験動物では5匹について、個々に同様の試験を行った。
【0170】
試験終了後に、各被験動物についてオープンアーム上に居た合計時間を測定し、被験対照ごとに、その結果を「平均値+S.E.M.」で表記した(図2参照)。なお、前述したように、被験動物の全肢がオープンアーム上にある時間を、被験動物がオープンアーム上に居た時間と定義して測定した。試験結果の統計学的解析は、ANOVA(one-way analysis of variance)と、それに引き続き採用されるDunnett's testとにより行った。
【0171】
(6) 評価結果
以下の評価結果より、オレキシン-Aは不安惹起作用を有することが確認できた。
【0172】
すなわち、マウスへのオレキシン-A溶液の脳室内投与により、明コンパートメントでの滞在時間が有意に減少した(図1参照)。具体的には、特に、0.1nmol オレキシン-A投与群、及び1.0nmol オレキシン-A投与群と、aCSF投与群との間で、顕著な有意差が認められた(*p < 0.05, t-test;**p < 0.01, t-test)。
【0173】
また、ラットへのオレキシン-A溶液の脳室内投与により、オープンアーム上の滞在時間が減少した(図2参照)。容量依存的なオープンアーム上の滞在時間の減少傾向が観察された。
【実施例2】
【0174】
「オレキシン-Aによる不安惹起作用の確認(2)」
(1) 被験動物
C57BL/6NCrjマウス(オス, 25〜30 g, Charles River, Japan)を使用した。マウスは1ケージに10匹飼育したものを用いた。
【0175】
これら被験動物は、12時間の明暗サイクル(明期:7:00〜19:00,暗期:19:00〜7:00)で、水と餌は自由に摂取できるようにして飼育した。
【0176】
(2) オレキシン-A溶液の調製
オレキシン-A(Peptide Institute Inc., Osaka, Japan)は、人工脳脊髄液(aCSF:glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl2 2.5mM、MgSO4 1.2mM、NaHCO3 25mM、KH2PO4 2.2mM;pH7.4)に溶解させ、所定の溶液濃度(1.0nmol/μl)に調整した。なお、人工脳脊髄液のみを、ネガティブコントロール用として用いた。
【0177】
(3) ガイドカニューレの固定手術
手術前のマウスの麻酔は、ケタミン(ketamine)(100mg/kg, i.p.)とキシラジン(xylazine)(10mg/kg, i.p.)を用いて行った。
【0178】
マウス用のガイドカニューレ(長さ10mm)を、その先端が側脳室(lateral ventricle)の所定の位置(ブレグマ(Bregma)縫合から0.3mm後ろ(ラムダ(Lambda)縫合寄り)、0.9mm右で、皮質表面から深さ2.3mmの位置)になるよう挿入する手術を行い、KetacTM Cem MaxicapTM デンタルセメント(3M ESPE, Seefeld, Germany)を用いて固定した。
【0179】
手術後は試験の実施まで少なくとも一週間の回復期間を設けた。
【0180】
(4) 脳室内投与
ガイドカニューレの先端よりさらに0.5mm深く側脳室内に挿入できるステンレス製のインジェクションニードルを用いて、オレキシン-A溶液の脳室内投与を行った。投与量は2μlとした。マイクロシリンジ(705N 50μl, Hamilton, Nevada, USA)を還流ポンプ(CMA100, BAS Inc., Tokyo, Japan)に接続し、正確に定速注入を行った(1μl/min)。
【0181】
インジェクションニードルは、投与後1分間はガイドカニューレに挿したままにし、正確な量が脳室内に投与されるようにした。
【0182】
なお、カニューレが所定の位置に埋め込まれていたかを、試験終了後にカニューレからインク(水性顔料インク)を投与して確認した。
【0183】
(5) 行動試験及び統計解析
行動試験として「高架式十字迷路試験」を以下の手順により行った。
【0184】
<高架式十字迷路試験>
当該試験では、下記の2群を被験対象とした。
【0185】
aCSF(vehicle)投与群(aCSF, n=8)
1.0nmol オレキシン-A投与群(ORX-1.0, n=9)
基本的には、S.Pellowらの論文(J. Neurosci. Methods, vol.14 (1985), p-149-167)に記載された高架式十字迷路試験の手順に準じて行った。
【0186】
試験装置としては、2つのオープンアーム(open arm:幅5cm×長さ30cm)と、2つのクローズドアーム(closed arm:幅5cm×長さ30cm,幅方向の端に設けられた壁の高さ15cm)が、それぞれ、中心部分(common central platform:縦5cm×横5cm)に同一線上に位置するように連結して構成した十字型の装置を用い、これを床から約45cmの高さに設置した。オープンアームの周囲(幅方向の端部)には、高さ0.3cmのリップ部分を設け、被験動物が容易に落下しないようにした。装置の構成部品は全てプラスチック製とし、床及びクローズドアームの壁はいずれも灰色とした。
【0187】
試験室の照度は10ルクスに設定しておいた。被験動物は試験開始の3時間以上前から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で20ルクスの照度に慣らしておいた。試験は13:00〜16:00の間に行った。
【0188】
両被験対象とも、被験動物への脳室内投与は試験開始15分前に行った。
【0189】
当該試験は、被験動物を、中心部分に設置した透明な箱(縦7.8cm×横7.8cm×高さ18cm)に入れ、1分後にこの箱を取り除き試験を開始した。試験開始から5分間、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画した。当該試験では、aCSF投与群では8匹、1.0nmol オレキシン-A投与群では9匹の被験動物について、個々に同様の試験を行った。
【0190】
試験終了後に、各被験動物についてオープンアーム上に居た合計時間を測定し、被験対照ごとに、その結果を「平均値+S.E.M.」で表記した(図3参照)。なお、前述したように、被験動物の全肢がオープンアーム上にある時間を、被験動物がオープンアーム上に居た時間と定義して測定した。試験結果の統計学的解析は、Welch's t-testにより行った。
【0191】
(6) 評価結果
以下の評価結果より、オレキシン-Aは不安惹起作用を有することが確認できた。すなわち、オレキシン-A溶液の脳室内投与によりオープンアーム上の滞在時間が減少した(図3参照)。具体的には、1.0nmol オレキシン-A投与群とaCSF投与群との2群間で、顕著な有意差が認められた(*p <0.05, t-test)。
【実施例3】
【0192】
「オレキシン受容体アンタゴニストを含む抗不安薬」
1.オレキシン受容体-1アンタゴニストの合成
オレキシン受容体-1アンタゴニストとしての機能を有する化合物(1-(2-メチルベンズオキサゾール-6-イル)-3-[1,5]ナフチリジン-4-イル ウレア(SB-334867)塩酸塩)を合成した。具体的には、国際公開第99/58533号パンフレット中の実施例6に記載の方法に準じ、以下の(1)〜(3)の手順で合成した。

(1) 4-アミノ-1,5-ナフチリジン(CAS No. 7689-63-6)の合成
4-ヒドロキシ-1,5-ナフチリジン(CAS No.5423-54-1、Specs社より購入)700mgにオキシ塩化リン(15ml)を加え、1時間加熱還流した。反応を室温に戻し、混合物を氷に注ぎ、アンモニア水でアルカリ性とし、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、NHシリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧濃縮して4-クロロ-1,5-ナフチリジン(CAS No. 7689-63-6)456mgを得た。得られた4-クロロ-1,5-ナフチリジン(456mg)にピリジン(19ml)およびn-プロピルアミン塩酸塩(1.32g)を加え、3.5時間加熱還流した。混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮し、得られた残渣をジエチルエーテルと2N水酸化ナトリウム水溶液に分配した。エーテル層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をNHシリカゲルで精製(酢酸エチル−ヘプタン系)して、345mgの標題化合物(CAS No. 7689-63-6)を得た。同様の操作を繰り返し、952mgを追加合成した。以下に、得られた標題化合物の構造式とNMR測定の結果を示す。
【0193】
【化16】

【0194】
1H NMR (CDCl3) d (ppm): 5.54 (2H, brs), 6.74 (1H, d, J=5Hz), 7.58 (1H, dd, J=4+8Hz), 8.25 (1H, dd, J=2+8Hz), 8.53 (1H, d, J=5Hz), 8.75 (1H, dd, J=2+4Hz).

(2) 2-メチル-6-ベンズオキサゾールカルボン酸(CAS No. 13452-14-7)の合成
メチル4-アミノ-3-ヒドロキシベンゾエート(CAS No. 63435-16-5、Lancaster社より購入)11.0gを、キシレン(220ml)−テトラヒドロフラン(110ml)に室温で溶解した。この溶液にアセチルクロリド(4.73ml)を加え、6時間加熱還流した。混合物を1N塩酸水と酢酸エチルに分配し、酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマト(酢酸エチル−ヘプタン系)を通して、メチル4-アセトアミド-3-ヒドロキシベンゾエート粗生成物10gを得た。粗成生物に酢酸(250ml)を加え、6時間加熱還流した後、混合物を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に分配し、酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥後、NHシリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧濃縮して9.52gの2-メチル-6-ベンズオキサゾールカルボン酸メチルエステルを得た。得られた2-メチル-6-ベンズオキサゾールカルボン酸メチルエステル(9.52g)にエタノール(100ml)と2N水酸化ナトリウム水溶液(49.8ml)を加え、60℃で30分間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、5N塩酸水で酸性とし、析出物を濾取、水洗、乾燥した後、エタノールで再結晶して、4.62gの標題化合物(CAS No. 13452-14-7)を得た。以下に、得られた標題化合物の構造式とNMR測定の結果を示す。
【0195】
【化17】

【0196】
1H NMR (CD3OD) d (ppm): 2.67 (3H, s), 7.67 (1H, d, J=8Hz), 8.05 (1H, dd, J=1+8Hz), 8.19 (1H, d, J=1Hz).

(3) 1-(2-メチルベンズオキサゾール-6-イル)-3-[1,5]ナフチリジン-4-イル ウレア塩酸塩(CAS No. 249889-64-3)の合成
2-メチル-6-ベンズオキサゾールカルボン酸(1.060g)のトルエン(111ml)混合液に、トリエチルアミン(0.867ml)及びN,N-ジメチルホルムアミド(22ml)を加えた。この混合物にジフェニルホスホリルアジド(1.65ml)を加え、65℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、4-アミノ-1,5-ナフチリジン(0.878g)を加え、混合物を65℃でさらに72時間撹拌した。冷却した混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して、1-(2-メチルベンズオキサゾール-6-イル)-3-[1,5]ナフチリジン-4-イル ウレアの粗精製物0.797gを得た。粗精製物を酢酸エチルに60℃で溶解させ、4N−塩化水素酢酸エチル溶液を加えた後、氷冷で撹拌した。析出した塩酸塩を濾取し、60℃で風乾して、840mgの標題化合物(CAS No. 249889-64-3)を得た。以下に、得られた標題化合物の構造式とNMR測定の結果を示す。
【0197】
【化18】

【0198】
1H NMR (DMSO-d6) d (ppm): 2.61 (3H, s), 7.30 (1H, dd, J=2+9Hz), 8.08 (1H, d, J=2Hz), 8.13 (1H, dd, J=4+9Hz), 8.62 (1H, dd, J=1+9Hz), 8.73 (1H, d, J=6Hz), 9.09 (1H, d, J=6Hz), 9.19 (1H, dd, 1+4Hz), 10.71 (1H, s), 10.79 (1H, s).
MS(ESI): 320 (MH+), 342 (MNa+).

2.抗不安作用の確認
(1) 被験動物
C57BL/6NCrjマウス(オス, 25〜30 g, Charles River, Japan)を使用した。マウスは1ケージに10匹飼育したものを用いた。
【0199】
被験動物は、12時間の明暗サイクル(明期:7:00〜19:00,暗期:19:00〜7:00)で、水と餌は自由に摂取できるようにして飼育した。
【0200】
(2) 候補物質の調製
合成したSB-334867を、人工脳脊髄液aCSF(glucose 10mM、KCl 2mM、NaCl 115mM、CaCl2 2.5mM、MgSO4 1.2mM、NaHCO3 25mM、KH2PO4 2.2mM;pH7.4)に溶解させ、所定の溶液濃度に調整し、当該溶液を候補物質とした。
【0201】
具体的には、0.50nmol/μl、1.50nmol/μlの2種類の溶液を準備した。なお、人工脳脊髄液aCSFのみを、ネガティブコントロール用として用いた。
【0202】
(3) ガイドカニューレの固定手術
実施例1の(3)と同様にして、ガイドカニューレの固定手術を行った。回復期間についても同様に設けた。
【0203】
(4) 脳室内投与
実施例1の(4)と同様にして、SB-334867溶液の脳室内投与を行った。カニューレの挿入位置の確認についても同様に行った。
【0204】
(5) 行動試験及び統計解析
行動試験として「明暗探査試験」を以下の手順により行った。
【0205】
<明暗探査試験>
当該試験では、下記の3群を被験対象とした。
【0206】
aCSF(vehicle)投与群 (VEH, n=10)
1nmol SB-334867投与群 (SB-1n, n=10)
3nmol SB-334867投与群 (SB-3n, n=10)
試験装置としては、暗コンパートメント(dark compartment:縦10cm×横15cm×長さ20cm)と、明コンパートメント(light compartment:縦20cm×横15cm×長さ20cm)との2つのコンパートメントから構成した装置を用いた。具体的には、暗コンパートメントとしては、黒いプラスチック製で上に蓋がある構造をしたものを用い、明コンパートメントとしては、白いプラスチック製で上が開いている構造をしたものを用い、明暗の両コンパートメントを黒いプラスチック製のトンネル(縦7cm×横10cm×長さ4.5cm)で連結して、互いに行き来できるようにした。
【0207】
試験室の照度は150ルクスに設定しておいた。被験動物は試験開始の3時間以上前から試験開始時まで(投与時は除く)、別室で10ルクスの照度に慣らしておいた。試験は13:00〜16:00の間に行った。
【0208】
いずれの被験対象についても、被験動物への脳室内投与は試験開始15分前に行った。
【0209】
当該試験は、被験動物を暗コンパートメントに入れた状態で開始した。試験開始から5分間、被験動物を自由に行動させ、その様子をビデオテープに録画した。当該試験では、aCSF投与群、1nmol SB-334867投与群、及び3nmol SB-334867投与群のいずれの被験対象についてもそれぞれ10匹の被験動物について、個々に同様の試験を行った。
【0210】
試験終了後に、各被験動物について明コンパートメントに入っていた合計時間を測定し、被験対照ごとに、その結果を「平均値+S.E.M.」で表記した(図4参照)。なお、前述したように、被験動物の全肢が明コンパートメント入っていた時間を、被験動物が明コンパートメントに入っていた時間と定義して測定した。試験結果の統計学的解析は、ANOVA(one-way analysis of variance)と、それに引き続き採用されるDunnett's testとにより行った。
【0211】
(6) 評価結果
以下の評価結果より、SB-334867(SB-334867を含有する溶液)は、抗不安作用を有する化合物であり、抗不安薬として有用であることが判った。すなわち、SB-334867の脳室内投与により明コンパートメントでの投与量依存的な滞在時間の増加傾向が認められた(図4参照)。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】実施例1において、オレキシン-Aの不安惹起作用の確認の為に行った明暗探査試験の結果を示す図である。
【図2】実施例1において、オレキシン-Aの不安惹起作用の確認の為に行った高架式十字迷路試験の結果を示す図である。
【図3】実施例2において、オレキシン-Aの不安惹起作用の確認の為に行った高架式十字迷路試験の結果を示す図である。
【図4】実施例3において、候補物質をSB-334867溶液として、抗不安作用を有する化合物のスクリーニングをする為に行った明暗探査試験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレキシン受容体アンタゴニスト、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、抗不安薬。
【請求項2】
オレキシン-Aを用いることを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【請求項3】
オレキシン受容体アンタゴニスト活性を有する候補物質を選択することを特徴とする、請求項2記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物の体内で分泌させ、又は、被験動物の体内でオレキシン-Aを分泌させた後若しくは分泌させると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【請求項5】
被験動物に候補物質を投与した後にオレキシン-Aを当該被験動物に投与し、又は、被験動物にオレキシン-Aを投与した後若しくは投与すると同時に候補物質を当該被験動物に投与し、その後、当該被験動物の不安の有無を解析することを特徴とする、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【請求項6】
オレキシン-Aを含有する、抗不安作用を有する化合物のスクリーニング用キット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−328057(P2006−328057A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120671(P2006−120671)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】