抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体グリコシル化改変体
【課題】Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを提供する。
【解決手段】本発明は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、上記宿主細胞により産生される上記ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメントおよび免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、上記GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物を保有する上記ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される宿主細胞に関する。
【解決手段】本発明は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、上記宿主細胞により産生される上記ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメントおよび免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、上記GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物を保有する上記ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される宿主細胞に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、タンパク質のグリコシル化操作の分野に関する。より詳細には、本発明は、改良された処置的特性を有するタンパク質(抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体)を生成するためのグリコシル化操作に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
糖タンパク質は、ヒト、その他の真核生物およびいくつかの原核生物における多数の不可欠な機能(触媒作用、シグナル伝達、細胞間コミュニケーション、ならびに分子認識および会合)を媒介する。それらは、真核生物において非細胞質ゾルタンパク質の大部分を構成する(Lisら、Eur.J.Biochem.218:1−27(1993))。多数の糖タンパク質が処置目的のために開発されてきており、過去20年の間、天然に存在する分泌糖タンパク質の組換えバージョンが生物工学産業の主要な産物であった。例としては、エリスロポエチン(EPO)、処置用モノクローナル抗体(処置用mAb)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、インターフェロン−β(IFN−β)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が挙げられる(Cummingら、Glycobiology 1:115−130(1991))。
【0003】
オリゴ糖成分は、処置用糖タンパク質の有効性に関係のある特性(物理学的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態および特異的生物学的活性)に有意に影響を及ぼし得る。このような特性は、オリゴ糖の存在または非存在だけでなく、その特異的構造に依存し得る。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間のいくつかの一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴ糖構造は、特定の糖質結合タンパク質との相互作用による血流からの糖タンパク質の迅速クリアランスを媒介するが、他のオリゴ糖構造は、抗体により結合され、望ましくない免疫反応を誘発し得る(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0004】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のために最も適合した形態でタンパク質をグリコシル化するこれらの能力に起因して、処置用糖タンパク質の産生のために好ましい宿主である(Cummingら、Glycobiology 1:115−30(1991);Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。細菌がタンパク質をグリコシル化することは非常に稀であり、同様に他の型の一般的な宿主(例えば酵母、糸状菌、昆虫および植物細胞)は、血流からの迅速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、およびいくつかの特定の場合には減少した生物学的活性に関連した、グリコシル化パターンを生じる。哺乳動物細胞の中でも、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間、最も一般的に用いられてきた。適切なグリコシル化パターンを示すことに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な、高度に生産的なクローン細胞株の一貫した生成を可能にする。それらは、無血清培地を用いた単純なバイオリアクター中で高密度に培養されることができ、安全且つ再現可能な生物プロセスの開発を可能にする。その他の一般的に用いられる動物細胞としては、新生仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−マウスミエローマ細胞およびSP2/0−マウスミエローマ細胞が挙げられる。さらに最近、トランスジェニック動物からの産生も試験されている(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0005】
抗体はすべて、重鎖定常領域の保存位置に糖質構造を含有し、各アイソタイプはN結合型糖質構造の異なるアレイを保有し、これがタンパク質のアセンブリー、分泌または機能的活性に様々な影響を及ぼす(Wright,A.,およびMorrison,S.L.,Trends Biotech.15:26−32(1997))。付着N結合型糖質の構造は、プロセシングの程度に依存してかなり変化し、高マンノース、多分枝、ならびにビアンテナリ(biantennary)複合オリゴ糖を包含し得る(Wright,A.,およびMorrison,S.L.,Trends Biotech.15:26−32(1997))。典型的には、モノクローナル抗体でさえ多様なグリコフォーム(multiple glycoform)として存在するよう、特定のグリコシル化部位に結合されるコアオリゴ糖構造の不均質プロセシングが存在する。同様に、抗体グリコシル化における大きな差異は細胞株間で起こり、異なる培養条件下で増殖された所定の細胞株に関しては、小さな差異さえも観察される、ということが示された(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5(8):813−22(1995))。
【0006】
非結合モノクローナル抗体(mAb)は、CD20陽性B細胞、下級または濾胞性非ホジキンリンパ腫の処置のためのRituximab(RituxanTM;IDEC Pharmaceuticals,San Diego,CAおよびGenentech Inc.,San Francisco,CA)および進行性乳癌の処置のためのTrastuzumab(HerceptinTM;Genentech Inc,)についての米国食品医薬品局の認可により実証されたような、癌の処置に有用な薬であり得る(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これらの製品が成功したのは、その効力のためだけでなく、その顕著な安全プロフィールのためでもある(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999)Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これら2つの薬剤の業績にもかかわらず、非結合mAb療法により通常得られるものより高い特異的抗体活性を得ることに現在大きな関心がある。
【0007】
簡単な製造方法を維持し、有意の望ましくない副作用を潜在的に回避しながら、効力を大きく高めるための一方法は、mAbの天然の細胞媒介性エフェクター機能を、それらのオリゴ糖成分を操作することにより強化することである(Uman〜a,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。癌免疫療法において最も一般的に用いられる抗体であるIgG1型抗体は、各々のCH2ドメインのAsn297に保存N結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合される2つの複合ビアンテナリオリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋められて、ポリペプチドバックボーンとの広範な接触を形成するため、それらの存在は、抗体がエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介するために不可欠である(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5:813−822(1995);Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998);Wright,A.およびMorrison,S.L.,Trends Biotechnol.15:26−32(1997))。
【0008】
バイセクト(bisected)オリゴ糖の生成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中での過剰発現が、操作されたCHO細胞により産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を有意に増強する、ということを以前に本発明者等は示した(非特許文献1、特許文献1参照)(これら各々の記載内容全体が、この全体を参考として本明細書中に援用される)。抗体chCE7は、高腫瘍親和性および特異性を有するが、効力が弱すぎるためにGnTIII酵素を欠く、標準的な工業用の細胞株中で産生される場合に臨床的に有用ではない非結合mAbの大きいクラスに属する(非特許文献1)。その試験は、天然に存在する抗体に見出されるレベルを上回るように定常領域(Fc)関連バイセクトオリゴ糖の割合を増大することにより、最大インビトロADCC活性を大きく高めることができることを示した最初のものであった。この発見が、バイセクトオリゴ糖の非存在下で有意のADCC活性をすでに有する非結合mAbに外挿され得るか否かを確定するために、本発明者等は、この技術を、Rituximab、抗CD20、IDEC−C2B8キメラ抗体に適用した。本発明者等は、同様に本技術を非結合抗癌mAb chG250に適用した。
【特許文献1】国際公開第99/54342号パンフレット
【非特許文献1】Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な概要)
テトラサイクリン調節様式で、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII;EC2.1.4.144)を過剰発現する遺伝子操作されたmAb産生細胞株を用いて、抗−CD20モノクローナル抗体(mAb)IDEC−C2B8(Rituximab)および抗癌mAb chG250の新規のグリコシル化改変体を、本発明者等はここに生成した。GnTIIIは、天然に存在するヒト抗体中に低から中レベルで見出されるが、標準工業細胞株中に産生されるmAbを欠いているバイセクトオリゴ糖の合成に必要とされる。新規のグリコシル化バージョンは、MabtheraTM(欧州で販売されているRixtuximabのバージョン)およびマウスミエローマ由来chG250より生物学的(ADCC)活性が優れていた。例えば、MabtheraTMのような最大ADCC活性に達するために必要とされる量は、最高レベルのバイセクトオリゴ糖を保有する改変体では10分の1であった。chG250に関しては、最高レベルのバイセクトオリゴ糖を保有する改変体は、非修飾コントロールchG250にさらに低いADCC活性を検出するために必要とされるものの125分の1の濃度で有意のADCC活性を媒介した。GnTIII発現およびADCC活性のレベル間に明らかな相関が見出された。
【0010】
したがって、一局面において、本発明は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、上記宿主細胞により産生される上記ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメントおよび免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、上記GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物を保有する上記ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される宿主細胞に関する。
【0011】
好ましい実施形態では、上記ポリペプチドはIgGまたはそのフラグメントであり、最も好ましくはIgG1またはそのフラグメントである。さらに好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質である。
【0012】
本特許請求される発明の別の局面では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子が、上記宿主中に導入された。好ましい実施形態では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子が上記宿主細胞染色体中に導入された。
【0013】
あるいは、宿主細胞は、例えば遺伝子発現を増強するDNA要素の宿主染色体中への挿入により内因性GnTIII遺伝子が活性化されるよう、操作された。好ましい実施形態では、内因性GnTIIIは、宿主細胞染色体中への、プロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素、あるいはそれらの組合せの挿入により活性化された。別の局面では、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択された。好ましくは宿主細胞は、CHO細胞変異体lec10である。
【0014】
本特許請求される発明のさらに好ましい実施形態では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸が構成的プロモーター要素に作動可能に連結される。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、またはハイブリドーマ細胞、Y0ミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、もしくはPER.C6細胞であり、上記ポリペプチドは、抗CD20抗体である。別の好ましい実施形態では、宿主細胞はSP2/0細胞であり、上記ポリペプチドはモノクローナル抗体chG250である。
【0016】
別の局面では、本特許請求される発明は、抗体分子、抗体フラグメントまたは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸をさらに含む宿主細胞に関する。好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、抗CD20抗体、キメラ抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体chCE7、キメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250、キメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体ING−1、ヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体3622W94、ヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体A33、GD3ガングリオシドR24に対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体、またはキメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体SF−25、抗ヒトEGFR抗体、抗ヒトEGFRvIII抗体、抗ヒトPSMA抗体、および抗ヒトPSCA抗体、抗ヒトCD22抗体、抗ヒトCD30抗体、抗ヒトCD33抗体、抗ヒトCD38抗体、抗ヒトCD40抗体、抗ヒトCD45抗体、抗ヒトCD52抗体、抗ヒトCD138抗体、抗ヒトHLA−DR改変体抗体、抗ヒトEpCAM抗体、抗ヒトCEA抗体、抗ヒトMUC1抗体、抗ヒトMUC1コアタンパク質抗体、抗ヒト異常グリコシル化MUC1抗体、ED−Bドメインを含有するヒトフィブロネクチン改変体に対する抗体、および抗ヒトHER2/neu抗体をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸を含む。
【0017】
別の局面において、本特許請求される発明は、宿主細胞中でのポリペプチドの産生方法であって、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う上記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で上記宿主細胞のいずれかを培養することを包含する方法に関する。好ましい実施形態では、上記方法は、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う上記ポリペプチドを単離することをさらに包含する。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、免疫グロブリンのグリコシル化Fc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0019】
好ましい実施形態では、上記ポリペプチドのFc領域中のバイセクトオリゴ糖の割合は、50%より大きく、より好ましくは70%より大きい。別の実施形態では、Fc領域中のバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合体オリゴ糖あるいはそれらの混合物の割合は、上記ポリペプチドのFc領域中のバイセクト複合オリゴ糖の割合より大きい。
【0020】
本特許請求される方法の好ましい局面では、上記ポリペプチドは、抗CD20抗体であり、上記宿主細胞により産生される抗CD20抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図2Eに示されたものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する。
【0021】
本特許請求される方法の別の好ましい局面では、上記ポリペプチドは、chG250モノクローナル抗体であり、上記宿主細胞により産生されるchG250抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図7Dに示されたものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する。
【0022】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、上記の方法のいずれかにより産生される抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う抗体に関する。好ましい実施形態では、抗体は、抗CD20抗体、chCE7、ch−G250、ヒト化抗HER2モノクローナル抗体、ING−1、3622W94、SF−25、A33およびR24から成る群から選択される。あるいは、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、上記の方法のいずれかにより産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う抗体フラグメントであり得る。
【0023】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、上記の方法のいずれかにより産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う融合タンパク質に関する。
【0024】
さらなる局面において、本特許請求される発明は、本発明の抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物に関する。
【0025】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、処置上有効な量の前記の薬学的組成物を、該薬学的組成物を必要とする患者に投与することを包含する癌の処置方法に関する。
【0026】
さらなる局面において、本発明は、処置上有効な量の免疫学的活性抗体を、該免疫学的活性抗体を必要とするヒト被験者に投与することを包含する、B細胞欠乏を基礎にした病原性自己抗体により全体的または部分的に引き起こされる自己免疫疾患を処置するための改良型方法であって、改良が上記のように調製されるADCCの増強を伴う処置上有効な量の抗体を投与することを包含する改良型方法に関する。好ましい実施形態では、抗体は、抗CD20抗体である。自己免疫疾患または障害の例としては、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑および慢性特発性血小板減少性紫斑、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎(post−streptococcal nephritis)、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形紅斑、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェーゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎、炎症性応答(例えば乾癬および皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患);全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性結腸炎)に関連する応答;呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;結腸炎;糸球体腎炎;アレルギー症状(例えば湿疹および喘息)、ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症性応答を含むその他の症状;アテローム硬化症;白血球粘着不全症;慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば1型真性糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的には結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および血管炎に見出されるサイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延性過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(寒冷グロブリン血症(cryoglobinemia)またはクームス陽性貧血が挙げられるが、これらに限定されない);重症筋無力症;抗原−抗体複合体媒介性疾患;抗腎糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート−イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多発性内分泌症;ライター病;スティッフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;特発性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫血小板減少症等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のこの局面において、本発明の抗体は、正常B細胞の血液を長期間枯渇させるために用いられる。
上記に加えて、本発明は、さらに以下の項目を提供する。
(項目1)
β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、該宿主細胞により産生される該ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメント、および免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、ここで、該GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖、あるいはそれらの混合物を保有する該ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される、宿主細胞。
(項目2)
前記ポリペプチドがIgGまたはそのフラグメントである、項目1に記載の宿主細胞。
(項目3)
前記ポリペプチドがIgG1またはそのフラグメントである、項目1に記載の宿主細胞。
(項目4)
前記ポリペプチドがヒトIgGのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質である、項目1に記載の宿主細胞。
(項目5)
GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子が前記宿主細胞中に導入されている、項目1に記載の宿主細胞。
(項目6)
内因性GnTIII遺伝子が活性化されるよう操作されている、項目1に記載の宿主細胞。
(項目7)
前記内因性GnTIIIが宿主染色体中への遺伝子発現を増強するDNA要素の挿入により活性化されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目8)
内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目9)
CHO細胞変異体lec10である、項目8に記載の宿主細胞。
(項目10)
CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、Y0ミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞である、項目1に記載の宿主細胞。
(項目11)
前記ポリペプチドが抗CD20抗体である、項目10に記載の宿主細胞。
(項目12)
前記抗CD20抗体がIDEC−C2B8である、項目11に記載の宿主細胞。
(項目13)
SP2/0細胞である、項目10に記載の宿主細胞。
(項目14)
前記抗体がキメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250である、項目13に記載の宿主細胞。
(項目15)
GnTIIIをコードする前記少なくとも1つの遺伝子が前記宿主細胞染色体中に導入されている、項目5に記載の宿主細胞。
(項目16)
前記内因性GnTIIIは、前記宿主細胞染色体中へのプロモーター要素、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素の挿入により活性化されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目17)
抗体分子、抗体フラグメントまたは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸をさらに含む、項目1に記載の宿主細胞。
(項目18)
GnTIIIをコードする前記少なくとも1つの核酸が、構成プロモーター要素に作動可能に連結される、項目1に記載の宿主細胞。
(項目19)
項目17に記載の宿主細胞であって、該宿主細胞は、以下:抗CD20抗体、キメラ抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体chCE7、キメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250、キメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体ING−1、ヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体3622W94、ヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体A33、GD3ガングリオシドR24に対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体、キメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体SF−25、抗ヒトEGFR抗体、抗ヒトEGFRvIII抗体、抗ヒトPSMA抗体、抗ヒトPSCA抗体、抗ヒトCD22抗体、抗ヒトCD30抗体、抗ヒトCD33抗体、抗ヒトCD38抗体、抗ヒトCD40抗体、抗ヒトCD45抗体、抗ヒトCD52抗体、抗ヒトCD138抗体、抗ヒトHLA−DR改変体抗体、抗ヒトEpCAM抗体、抗ヒトCEA抗体、抗ヒトMUC1抗体、抗ヒトMUC1コアタンパク質抗体、抗ヒト異常グリコシル化MUC1抗体、ED−Bドメインを含有するヒトフィブロネクチン改変体に対する抗体または抗ヒトHER2/neu抗体、をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸を含む、宿主細胞。
(項目20)
宿主細胞中でのポリペプチドの産生方法であって、該方法は、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で、項目1〜19のいずれか一項記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目21)
Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う前記ポリペプチドを単離する工程をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記宿主細胞が、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を含む、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記ポリペプチドのFc領域中の50%より多いオリゴ糖がバイセクトされる、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記ポリペプチドのFc領域中の70%より多いオリゴ糖がバイセクトされる、項目20に記載の方法。
(項目25)
Fc領域中のバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物の割合が、前記ポリペプチドのFc領域中のバイセクト複合オリゴ糖の割合より大きい、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記ポリペプチドは、抗CD20抗体IDEC−C2B8であり、前記宿主細胞により産生されるIDEC−C2B8抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図2Eに示されるものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記ポリペプチドは、chG250モノクローナル抗体であり、前記宿主細胞により産生される前記chG250抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図7Dに示されるものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する、項目20に記載の方法。
(項目28)
項目21に記載の方法により産生される抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う、抗体。
(項目29)
IDEC−C2B8、chCE7、ch−G250、ヒト化抗HER2モノクローナル抗体、ING−1、3622W94、SF−25、A33およびR24から成る群から選択される、項目28に記載の抗体。
(項目30)
免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、項目21に記載の方法により産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う、抗体フラグメント。
(項目31)
免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、かつ項目21に記載の方法により産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う、融合タンパク質。
(項目32)
項目28に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目33)
項目30に記載の抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目34)
項目31に記載の融合タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目35)
項目32〜34のいずれか一項に記載の処置上有効な量の薬学的組成物を、該薬学的組成物を必要とする患者に投与する工程を包含する、癌の処置方法。
(項目36)
処置上有効な量の抗体を、該抗体を必要とするヒト被験者に投与するこ工程を包含する、B細胞欠乏を基礎にした疾患処置の改良型方法であって、該改良が、項目28に記載の方法により産生される処置上有効な量の抗体を投与する工程を包含する、改良型方法。
(項目37)
前記抗体が抗CD20モノクローナル抗体である、項目36に記載の改良型方法。
(項目38)
前記抗CD20抗体がIDEC−C2B8である、項目37に記載の改良型方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
用語は、別に定義しない限り、以下のように当該技術分野で一般的に用いられるように本明細書中で用いられる。
【0028】
本明細書中で用いる場合、「抗体」という用語は、全抗体分子、抗体フラグメント、あるいは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質を包含するよう意図される。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリンのFc領域と等価の領域」という用語は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子改変体、ならびに置換、付加または欠失を生じるが抗体依存性細胞傷害性を媒介する免疫グロブリンの能力を実質的に低減しない変更を有する改変体を包含するよう意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸が、生物学的機能の実質的損失を伴わずに、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失され得る。このような改変体は、活性に及ぼす最小限の影響を有するよう、当該技術分野で公知の一般原則に従って選択され得る(例えばBowie,J.U.ら、Science 247:1306−10(1990)参照)。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ」という用語は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をいう。
【0031】
本明細書中で用いる場合、「操作する」、「操作された」、「操作」および「グリコシル化操作」という用語は、天然に存在するポリペプチドまたはそのフラグメントのグリコシル化パターンの任意の操作を包含するとみなされる。グリコシル化操作としては、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作(細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変更を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む)が挙げられる。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する、変異および細胞環境の影響を包含する。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「宿主細胞」という用語は、目的のタンパク質、タンパク質フラグメントまたはペプチド(抗体および抗体フラグメントを含む)の修飾グリコフォームを生じるよう操作され得る任意の種類の細胞系を網羅する。典型的には、宿主細胞は、最適化されたレベルのGnTIIIを発現するよう操作されている。宿主細胞としては、少数名前を挙げるとすれば、培養細胞(例えば哺乳動物培養細胞(例えばCHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞)、酵母細胞および昆虫細胞)が挙げられるが、トランスジェニック動物または培養組織内に含まれる細胞も挙げられる。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「Fc媒介性細胞傷害性」という用語は、抗体依存性細胞傷害性、ならびにヒトFc領域を含有する可溶性Fc融合タンパク質により媒介される細胞傷害性を包含する。Fc媒介性細胞傷害性は、「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体標的化細胞」の溶解をもたらす免疫メカニズムであって、ここで、
「ヒト免疫エフェクター細胞」は、抗体またはFc融合タンパク質のFc領域と結合し、エフェクター機能を実施する、それらの表面上にFc受容体を提示する白血球の集団である。このような集団としては、末梢血単核球(PBMC)および/またはナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0034】
「抗体標的化細胞」は、抗体またはFc融合タンパク質により結合される細胞である。抗体またはFc融合タンパク質は、Fc領域に対してN末端側のタンパク質部分を介して標的細胞と結合する。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「Fc媒介性細胞傷害性の増強」という用語は、上記のFc媒介性細胞傷害性のメカニズムにより、標的細胞周囲の媒質中で、所定時間で、抗体またはFc融合タンパク質の所定濃度で溶解される「抗体標的細胞」の数の増大、および/またはFc媒介性細胞傷害性のメカニズムにより、所定時間で、「抗体標的細胞」の所定数の溶解を達成するのに必要とされる、標的細胞周囲の媒質中での、抗体またはFc融合タンパク質の濃度の低減と定義される。Fc媒介性細胞傷害性は、当業者に既知である同一の標準的な産生方法、精製方法、配合方法および貯蔵方法を用いて、同一型の宿主細胞により産生されるが、本明細書中に記載される方法によりグリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを発現するよう操作された宿主細胞によっては産生されたことがない、同一の抗体またはFc融合タンパク質により媒介される細胞傷害性に関連する。
【0036】
「抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う抗体」とは、当業者に既知の任意の適切な方法により確定されるようなADCCの増強を伴う抗体を意味する。許容可能なインビトロADCCアッセイの1つを以下に示す:
1)本アッセイは、抗体の抗原結合領域により認識される標的抗原を発現することが既知である標的細胞を用いる。
【0037】
2)本アッセイは、エフェクター細胞として無作為に選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核球(PBMC)を用いる。
【0038】
3)本アッセイは、以下のプロトコールに従って実行される:
i)PBMCを、標準密度遠心分離法を用いて単離し、5×106細胞/mlでRPMI細胞培地中に懸濁する。
【0039】
ii)標的細胞を標準組織培養法により増殖させ、90%より高い成育可能度で指数増殖期から回収し、RPMI細胞培地中で洗浄し、100μキュリーの51Crで標識し、細胞培地で2回洗浄し、105細胞/mlの密度で細胞培地中に再懸濁する。
【0040】
iii)上記の最終標的細胞懸濁液100μlを、96ウエルマイクロタイタープレートの各ウエルに移す。
【0041】
iv)抗体を、細胞培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlに連続希釈し、得られた抗体溶液50μlを96ウエルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の全濃度範囲を網羅する種々の抗体濃度を三重反復試験する。
【0042】
v)最大放出(MR)コントロールに関しては、標識した標的細胞を含有するプレート中の3つの付加的ウエルに、抗体溶液(上記iv時点)の代わりに、非イオン性洗剤(Nonidet、Sigma,St.Louis)の2%(容量/容量)水溶液50μlを添加する。
【0043】
vi)自発性放出(SR)コントロールに関しては、標識した標的細胞を含有するプレート中の3つの付加的ウエルに、抗体溶液(上記iv時点)の代わりに、RPMI細胞培地50μlを添加する。
【0044】
vii)次に、96ウエルマイクロタイタープレートを50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートする。
【0045】
viii)PBMC懸濁液(上記i時点)50μlを各ウエルに添加して、25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、5%CO2大気下で37℃で4時間、インキュベーター中にプレートを入れる。
【0046】
ix)各ウエルから無細胞上清を回収し、ガンマ計数器を用いて実験的放出放射能(ER)を定量する。
【0047】
x)特異的溶解のパーセンテージを、式(ER−MR)/(MR−SR)×100(式中、ERはその抗体濃度に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)であり、MRは、MRコントロール(上記v時点参照)に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)であり、SRは、SRコントロール(上記vi時点参照)に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)である)に従って各抗体濃度に関して算定する。
【0048】
4)「ADCCの増強」とは、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増大、および/または上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の低減と定義される。ADCCの増強は、当業者に既知である同一の標準的な産生方法、精製方法、配合方法および貯蔵方法を用いて、同一型の宿主細胞により産生されるが、しかしグリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを過剰発現するよう操作された宿主細胞によっては産生されたことがない同一の抗体により媒介される、上記のアッセイを用いて測定されるADCCに関連する。
【0049】
本明細書中で用いる場合、「抗CD20抗体」という用語は、典型的には、一般的にCD20と呼ばれるヒトBリンパ球限定分化抗原Bp35として示される35,000ダルトンの細胞表面非グリコシル化リンタンパク質を特異的に認識する抗体を意味するよう意図される。
【0050】
(グリコシル化パターンの変更が望ましいタンパク質Aをコードする核酸の同定および生成)
本発明は、グリコフォームの抗体または抗体フラグメント、あるいは抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体フラグメントを含む融合タンパク質の産生のための宿主細胞系の生成および使用の方法を提供する。標的エピトープの同定、ならびにグリコシル化パターンの変更が望ましい潜在的処置値を有する抗体の生成、ならびにそれらのそれぞれのコード核酸配列の単離は、本発明の範囲内である。
【0051】
当業界で既知の種々の手法は、当該エピトープを標的化するための抗体の産生に用いられ得る。このような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリにより産生されるフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、例えば診断薬または処置薬として有用であり得る。処置薬としては、中和抗体、すなわち、リガンド、基質またはアダプター分子と結合に関して競合するものが、特に好ましいものである。
【0052】
抗体の産生のために、当該標的タンパク質を注射することにより種々の宿主動物、例えばウサギ、マウス、ラット等(これらに限定されない)が免疫される。宿主種に応じて種々のアジュバントを、免疫学的応答を増強するために用いることができ、その例としては、フロイント(完全および不完全)アジュバント、無機質ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性剤(例えばリゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、サポニン、油乳剤、カギアナカサガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント(例えばBCG(bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvum)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
当該標的に対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いて調製され得る。これらの例としては、Kohler and
Milstein,Nature 256:495−97(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al., Immunology Today 4: 72(1983); Cote et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:2026−30
(1983))、およびEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77−96 (Alan R.Liss,Inc.,1985)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851−55(1984);Neuberger et al.,Nature 312:604−08(1984);Takeda et al.,Nature 314:452−54(1985))が用いられ得る。あるいは、一本鎖抗体の産生に関して記載された技法(米国特許第4,946,778号)が、所望の特異性を有する一本鎖抗体を産生するために適合され得る。
【0054】
当該標的タンパク質の特異的結合部位を含有する抗体フラグメントは、既知の技法で生成され得る。例えばこのようなフラグメントとしては、抗体分子のペプシン消化により産生され得るF(ab’)2フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFabフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリが、当該標的タンパク質に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速且つ容易な同定を可能にするよう構築され得る(Huseら、Science 246: 1275−81(1989))。
【0055】
グリコシル化パターンの変更が望ましい抗体または抗体フラグメントが一旦同定されれば、当該技術分野で周知の技法を用いて、コード核酸配列が同定され、単離される。
【0056】
a.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質の産生のための細胞株の生成
本発明は、変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質の生成のための宿主細胞発現系を提供する。特に本発明は、改良された処置値を有するグリコフォームのタンパク質の生成のための宿主細胞系を提供する。したがって、本発明は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ、すなわちβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)の発現を増強するよう選択または操作された宿主細胞発現系を提供する。特に、このような宿主細胞発現系は、任意に構成的プロモーター
系または調節プロモーター系に作動可能に連結されるGnTIIIをコードする組換え核酸分子を含むように操作され得る。あるいは、GnTIIIを天然に産生し、産生するよう誘導され、かつ/または産生するよう選択される宿主細胞発現系が用いられ得る。
【0057】
特定の一実施形態において、本発明は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸を発現するよう操作された宿主細胞を提供する。一局面では、宿主細胞は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子を用いて形質転換されるかまたはトランスフェクトされる。代替的局面では、宿主細胞は、内因性GnTIIIが活性化されるような方法で操作および/または選択された。例えば、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択され得る。特定の一実施形態では、宿主細胞はCHO lec10変異体である。あるいは、宿主細胞は、内因性GnTIIIが活性化されるよう操作され得る。さらに別の代替的実施形態では、宿主細胞は、内因性GnTIIIが構成的プロモーター要素、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素の宿主細胞染色体中への挿入により活性化されるように操作される。
【0058】
一般に、任意の種類の培養細胞株が、本発明の宿主細胞株を操作するための背景として用いられ得る。好ましい実施形態では、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、あるいは昆虫細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するための背景細胞株として用いられる。
【0059】
本発明は、本明細書中に記載されたようなGnTIIIを発現する任意の操作された宿主細胞を包含するよう意図される。
【0060】
GnTIIIをコードする1つまたは複数の核酸は、構成的プロモーターの、あるいは調節された発現系の制御下で発現され得る。適切な調節化発現系としては、テトラサイクリン調節発現系、エクジソン誘導性発現系、lac−スイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性プロモーター系およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が挙げられるが、これらに限定されない。GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系内に含まれる場合、構成プロモーターの制御下で発現され得るものがある一方、調節プロモーターの制御下で発現されるものもある。最大発現レベルは、細胞増殖速度に有意の悪影響を及ぼさない安定GnTIII発現の最大限可能なレベルであると考えられ、ルーチン実験を用いて確定される。発現レベルは、当該技術分野で一般に既知である方法により、例えばGnTIII特異的抗体を用いるウエスタンブロット分析、GnTIII特異的核酸プローブを用いるノーザンブロット分析、あるいは酵素活性の測定により確定される。あるいは、GnTIIIの生合成産物と結合するレクチン、例えばE4−PHAレクチンが用いられ得る。さらなる代替例では、核酸はレポーター遺伝子に作動可能に連結されることができ、GnTIIIの発現レベルは、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することにより確定される。レポーター遺伝子は、単一mRNA分子として上記GnTIIIをコードする核酸(単数または複数)と一緒に転写されてもよく、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)のいずれかにより連結され得る。レポーター遺伝子は、単一ポリペプチド鎖が形成されるよう、上記GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。GnTIIIをコードする核酸は、GnTIIIをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に転写されるよう、単一プロモーターの制御下でレポーター遺伝子と作動可能に連結され得る。その結果生じるmRNAのうちの1つは上記レポータータンパク質に翻訳され、他のものは上記GnTIIIに翻訳される。
【0061】
GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が発現される場合、それらは、1つのまたは複数のmRNA分子として転写されるように配置され得る。それらが単一mRNA分子として転写される場合、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)のいずれかにより連結され得る。それらは、いくつかの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に単一プロモーターから転写され得、これは次に、それらのそれぞれのコードGnTIIIに翻訳される。
【0062】
その他の実施形態では、本発明は、抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う処置用抗体の生成のための宿主細胞発現系、およびFc媒介性細胞傷害性を促すために表面にIgG Fc領域を提示する細胞を提供する。一般に、宿主細胞発現系は、変更グリコフォームの産生が望ましい抗体をコードする核酸を、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に発現するよう操作および/または選択されている。一実施形態では、宿主細胞系は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子をトランスフェクトされる。典型的には、トランスフェクト細胞は、GnTIIIを安定に発現するクローンを同定し、単離するよう選択される。別の実施形態では、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現のために選択されている。例えば、そうでなければサイレントGnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有する細胞が選択され得る。例えば、CHO細胞は、ある種の変異体において、例えば変異体Lec10において活性であるサイレントGnTIII遺伝子を保有することが既知である。さらに、調節プロモーターまたは構成性プロモーターの挿入、トランスポゾン、レトロウイルス要素等の使用を含む当該技術分野で既知の方法を、サイレントGnTIIIを活性化し得る。遺伝子ノックアウト技術の使用、あるいはリボサイム法の使用はまた、宿主細胞のGnTIII発現レベルを調整するために用いることができるため、本発明の範囲内である。
【0063】
任意の種類の培養細胞株を、本発明の宿主細胞株を操作するためのバックグラウンドとして用いることができる。好ましい実施形態では、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞または昆虫細胞が用いられ得る。典型的には、このような細胞株は、全抗体分子、抗体フラグメント、または免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクト核酸をさらに含むよう操作される。代替的実施形態では、当該特定の抗体を発現するハイブリドーマ細胞株が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためのバックグラウンド細胞株として用いられる。
【0064】
典型的には、宿主細胞系における少なくとも1つの核酸は、GnTIIIをコードする。
【0065】
GnTIIIをコードする1つまたは複数の核酸は、構成プロモーターの、あるいは調節発現系の制御下で発現され得る。適切な調節発現系としては、テトラサイクリン調節発現系、エクジソン誘導性発現系、lac−スイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性プロモーター系およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が挙げられるが、これらに限定されない。GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系内に含まれる場合、構成プロモーターの制御下で発現され得るものがある一方、調節プロモーターの制御下で発現されるものもある。最大発現レベルは、細胞増殖速度に重大な悪影響を及ぼさない安定GnTIII発現の最大限レベルであると考えられ、日常的な実験を用いて確定される。発現レベルは、当該技術分野で一般に既知である方法(GnTIII特異的抗体を用いるウエスタンブロット分析、GnTIII特異的核酸プローブを用いるノーザンブロット分析、あるいはGnTIIIの酵素活性の測定を含む)により確定される。あるいは、GnTIIIの生合成産物に結合するレクチン、例えばE4−PHAレクチンが用いられ得る。さらなる代替例では、核酸はレポーター遺伝子に作動可能に連結されることができ、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼの発現レベルは、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することにより確定される。レポーター遺伝子は、単一mRNA分子として上記糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸と一緒に転写されてもよく、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)により連結され得る。レポーター遺伝子は、単一ポリペプチド鎖が形成されるよう、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。GnTIIIをコードする核酸は、GnTIIIをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に転写されるよう、単一プロモーターの制御下でレポーター遺伝子と作動可能に連結され得る。その結果生じるmRNAのうちの1つは上記レポータータンパク質に翻訳され、他のものは上記GnTIIIに翻訳される。
【0066】
GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が発現される場合、それらは、1つまたは複数のmRNA分子として転写されるように配置され得る。それらが単一mRNA分子として転写される場合、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)により連結され得る。それらは、いくつかの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に単一プロモーターから転写され、これは次に、それらのそれぞれのコードGnTIIIに翻訳される。
【0067】
(i.発現系)
当業者に既知である方法を用いて、目的のタンパク質のコード配列、ならびにGnTIIIおよび適切な転写/翻訳制御シグナルのコード配列を含有する発現ベクターを構築し得る。これらの方法としては、組換えDNA法、合成法およびインビボ組換え/遺伝子組換えが挙げられる(例えば、Maniatisら、Molecular Cloning
A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989)およびAusubelら、Current
Protocols in Molecular Biology,Greene Pubulishing AssociatesおよびWiley Interscience,N.Y.(1989)に記載された技法を参照)。
【0068】
種々の宿主発現ベクター系が、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を発現するために利用され得る。好ましくは哺乳動物細胞は、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞系として用いられる。最も好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、あるいは昆虫細胞が宿主細胞系として用いられる。代替的な実施形態では、その他の真核生物宿主細胞系、(目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞;目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは二重微小染色体(例えばマウス細胞株)中で安定に増幅される(CHO/dhfr)かまたは不安定に増幅される、目的のタンパク質をコードするDNAの多重コピーおよびGnTIIIのコード配列を含有するよう操作された細胞株を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染した動物細胞系を含む)が意図され得る。
【0069】
本発明の方法については、安定発現は、一般的に、典型的にはより再現可能な結果が得られ、かつ大規模生成もより容易であるので、一過性発現のために好ましい。ウイルスの複製起源を含有する発現ベクターを用いるよりむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)、および選択可能マーカーにより制御されるそれぞれのコード核酸で形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作された細胞は栄養強化(enriched)培地中で1〜2時間増殖させられ、次に選択培地に切り替えられ得る。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、それらの染色体中にプラスミドを安定的に組み込み、増殖して増殖巣を形成し、これが次にクローニングされて細胞株に増大され得る細胞の選択を可能にする。
【0070】
以下の多くの選択系、が用いられ得るが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026(1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、Cell 22:817(1980))(これらはtk−細胞、hgprt−細胞またはaprt―細胞のそれぞれにおいて用いられ得る)。代謝拮抗物質耐性も、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1989);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸(mycophenolic acid)に対する耐性を付与するgpt遺伝子(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo遺伝子(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981));およびヒグロマイシンに対する耐性を付与するhygro遺伝子(Santerreら、Ggne 30:147(1984))に対する選択の基礎として用いられ得る。近年、さらに別の選択可能遺伝子、すなわちトリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させるtrpB;ヒスチジンの代わりにヒスチノールを細胞に利用させるhisD(Hartman & Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047(1988));グルタミンシンターゼ系;およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue,in:Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編(1987))が記載されている。
【0071】
(ii.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質を発現するトランスフェクト体または形質転換体の同定)
コード配列を含有し、生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、少なくとも4つの一般的アプローチにより同定され得る;(a)DNA−DNAハイブリダイゼーションまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在;(c)宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写体の発現により測定した場合の転写のレベルの評価;および(d)イムノアッセイにより、またはその生物学的活性により測定した場合の遺伝子産物の検出。
【0072】
第一のアプローチでは、発現ベクター中に挿入された目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列の存在は、それぞれのコード配列とそれぞれが相同であるヌクレオチド配列、あるいはその一部分または誘導体を含むプローブを用いる、DNA−DNAハイブリダイゼーションまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションにより検出され得る。
【0073】
第二のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系は、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキセートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成等)の存在または非存在に基づいて、同定および、選択され得る。例えば、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、それぞれのコード配列を含有する組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在により同定され得る。あるいは、マーカー遺伝子は、コード配列の発現を制御するために用いられる同一のまたは異なるプロモーターの制御下でコード配列と縦列に配置され得る。誘導または選択に応答するマーカーの発現は、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列の発現を示す。
【0074】
第三のアプローチでは、目的のタンパク質のコード領域およびGnTIIIのコード配列についての転写活性は、ハイブリダイゼーションアッセイにより評価され得る。例えば、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列と相同なプローブまたはその特定部分を用いたノーザンブロットにより、RNAが単離され、分析され得る。あるいは、宿主細胞の全核酸が抽出され、このようなプローブとのハイブリダイゼーションについてアッセイされ得る。
【0075】
第四のアプローチでは、目的のタンパク質およびGnTIIIのコード配列のタンパク質産物の発現は、例えばウエスタンブロット、イムノアッセイ(例えば、放射免疫沈降法、酵素結合イムノアッセイ等)により、免疫学的に評価され得る。しかしながら、発現系の成功の最終試験は、生物学的に活性な遺伝子産物の検出を包含する。
【0076】
(b.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質およびタンパク質フラグメントの生成および使用)
(i.抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体の生成および使用)
好ましい実施形態において、本発明は、抗体依存性細胞傷害性の増強を伴うグリコフォームの抗体および抗体フラグメントを提供する。
【0077】
いくつかの種類の癌の処置のための非結合モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験は、近年、励みになる結果をもたらした(Dillman,Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997);Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。キメラ非結合IgG1は、低級または濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫に関して認可された(Dillman,Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997))が、別の非結合mAb、ヒト化IgG1ターゲッティング固形乳房腫瘍もまた、III期臨床試験において有望な結果を示している(Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。これら2つのmAbの抗原は、それぞれの腫瘍細胞中で高く発現され、抗体はインビトロおよびインビボエフェクター細胞による強力な腫瘍破壊を媒介する。これに対比して、良好な腫瘍特異性を有する多くの他の非結合mAbは、臨床的に有用であるほど十分な効力を有するエフェクター機能を誘発し得ない(Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996))。これらの弱いmAbのいくつかについて、サイトカインによる補助処置(adjunct cytokine therapy)が現在試験されている。サイトカインの添加により、循環リンパ球の活性および数を高めることにより、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を刺激することができる(Frostら、Cancer 80:317−33(1997)Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996))ADCC(抗体標的細胞上での溶解性攻撃)は、白血球受容体と抗体の定常領域(Fc)との結合の際に誘発される(Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。
【0078】
非結合IgG1のADCC活性を増強するための異なるが相補的な手法は、リンパ球受容体(FcγR)に対するその親和性を増強するよう抗体のFc領域を操作することである。タンパク質操作試験は、FcγRがIgG CH2ドメインのより低いヒンジ領域と相互作用することを示した(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。しかし、FcγR結合は、CH2領域中の保存Asn297に共有結合されたオリゴ糖の存在も要する(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996);WrightおよびMorrison、Trends Biotech.15:26−31(1997))が、このことは、オリゴ糖およびポリペプチドがともに相互作用部位に直接関与することを、あるいは活性CH2ポリペプチド立体配座を保持するためにオリゴ糖が必要であることを示唆する。したがって、オリゴ糖構造の改変は、相互作用の親和性を増強するための一手段として検討され得る。
【0079】
IgG分子は、各重鎖上に1つずつ、そのFc領域中に2つのN結合型オリゴ糖を保有する。任意の糖タンパク質として、抗体は、同一ポリペプチド骨格を共有するが、グリコシル化部位に結合された異なるオリゴ糖を有する、グリコフォームの一集団として産生される。血清IgGのFc領域中に通常見出されるオリゴ糖は、複合ビアンテナリ型のものであって(Wormaldら、Biochemistry 36:130−38(1997))、低レベルの末端シアル酸およびバイセクトN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ならびに種々の程度の末端ガラクトシル化およびコアフコシル化を伴う。FcγR結合に必要とされる最小糖質構造は、オリゴ糖コア内に存在することをいくつかの試験が示唆している(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。末端ガラクトースの除去は、ADCC活性を約2分の1に低減するが、これは、FcγR受容体結合におけるこれらの残基に関する役割を示す(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。
【0080】
非結合体化型処置用mAbの産生のために工業的および学究的に用いられるマウス由来細胞株またはハムスター由来細胞株は、通常は、必要なオリゴ糖決定基をFc部位に結合する。しかしこれらの細胞株中で発現されるIgGは、血清IgG中に少量で見出されるバイセクトGlcNAcを欠く(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。対照的に、ラットミエローマ産生ヒト化IgG1(CAMPATH−1H)は、そのグリコフォームのいくつかでバイセクトGlcNAcを保有することが近年観察された(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。ラット細胞由来抗体は、標準細胞株中に産生されるCAMPATH−1H抗体と同様のインビトロでのADCC活性に達するが、抗体濃度は有意に低い。
【0081】
CAMPATH抗原は、通常はリンパ腫細胞上に高レベルで存在し、このキメラmAbはバイセクトGlcNAcの非存在下で高ADCC活性を有する(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。N結合型グリコシル化経路では、バイセクトGlcNAcは、酵素β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)に付加される(Schachter、Biochem.Cell Biol.64:163−81(1986))。
【0082】
本発明者らは、異なるレベルのクローン化GnTIII遺伝子を、外部調節様式で発現するよう予め操作された単一抗体産生CHO細胞株を用いた。この手法は、GnTIIIの発現と改変された抗体のADCC活性との間の強い相関を最初に確定した。
【0083】
本発明者らは、以前に、開示された方法により改変されたC2B8抗体が、同一の細胞培養および精製条件下で産生された標準非改変C2B8抗体の約16倍のADCC活性を有する、ということを示した。要するに、GnTIII発現を示さないCHO−tTA−C2B8細胞中で発現されたC2B8抗体サンプルは、ヒトリンパ球によるSB細胞(CD20+)のインビトロでの溶解物として測定される、約31%(1μg/mlの抗体濃度で)の細胞傷害活性を示した。対照的に、基本的高抑制レベルでGnTIIIを発現するCHO細胞培養由来のC2B8抗体は、1μg/mlの抗体濃度で、同一抗体濃度のコントロールに対してADCC活性の33%増を示した。さらに、GnTIIIの発現増強は、同一抗体濃度でのコントロールと比較して、最大ADCC活性のほぼ80%という大きい増加(1μg/mlの抗体濃度で)を生じた(国際公開番号WO99/54342参照)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)。
【0084】
抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う本発明のさらに他の抗体としては、本発明の方法により産生される抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体(chCE7)、本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体(ch−G250)、本発明の方法により産生されるヒト化抗HER2モノクローナル抗体(例えばトラスツズマブ(HERCEPTIN))、本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体(ING−1)、本発明の方法により産生されるヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体(3622W94)、本発明の方法により産生されるヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33)、本発明の方法により産生されるGD3ガングリオシドに対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体(R24)、ならびに本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体(SF−25)、本発明の方法により産生される抗ヒト小細胞肺癌モノクローナル抗体(BEC2、ImClone Systems,Merck KgaA)、本発明の方法により産生される抗ヒト非ホジキンリンパ腫モノクローナル抗体(Bexxar(トシツモマブ(tositumomab)、Coulter Pharmaceuticals)、オンコリム(Oncolym)(Techniclone,Alpha Therapeutic))、本発明の方法により調製される抗ヒト扁平上皮細胞頭頚部癌モノクローナル抗体(C225、ImClone Systems)、本発明の方法により調製される抗ヒト直腸および結腸癌モノクローナル抗体(Panorex(エドレコロマブ(edrecolomab))、Centocor,Glaxo Wellcome)、本発明の方法により産生される抗ヒト卵巣癌モノクローナル抗体(テラギン(Theragyn)、Antisoma)、本発明の方法により産生される抗ヒト急性骨髄性白血病モノクローナル抗体(Smart M195、Protein Design Labs、Kanebo)、本発明の方法により産生される抗ヒト悪性神経膠腫モノクローナル抗体(Cotara、Techniclone,Cambridge Antibody Technology)、本発明の方法により産生される抗ヒトB細胞非ホジキンリンパ腫モノクローナル抗体(IDEC−Y2B8、IDEC Pharmaceuticals)、本発明の方法により産生される抗ヒト固形腫瘍モノクローナル抗体(CEA−Cide、Immunomedics)、本発明の方法により産生される抗ヒト結腸直腸癌モノクローナル抗体(ヨウ素131−MN−14、Immunomedics)、本発明の方法により産生される抗ヒト卵巣、腎臓、乳房および前立腺癌モノクローナル抗体(MDX−210、Medarex,Novartis)、本発明の方法により産生される抗ヒト結腸直腸および膵臓癌モノクローナル抗体(TTMA、Pharmacie & Upjohn)、本発明の方法により産生される抗ヒトTAG−72発現癌モノクローナル抗体(MDX−220、Medarex)、本発明の方法により産生される抗ヒトEGFr発現癌モノクローナル抗体(MDX−447)、本発明の方法により産生される抗VEGFモノクローナル抗体(Genentech)、本発明の方法により産生される抗ヒト乳房、肺、前立腺および膵臓の癌および悪性黒色腫モノクローナル抗体(BrevaRex、AltaRex)、ならびに本発明の方法により産生される抗ヒト急性骨髄性白血病モノクローナル抗体(モノクローナル抗体結合体、Immunex)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、免疫グロブリンのFc領域と等価である領域を含む抗体フラグメントおよび融合タンパク質に関する。
【0085】
(ii.Fc媒介性細胞傷害性を促す免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質の生成および使用)
上記のように、本発明は、処置用抗体のADCC活性を増強するための方法に関する。これは、このような抗体のFc領域のグリコシル化パターンを操作することにより、特にそれらのFc領域の保存グリコシル化部位にN結合されるバイセクト複合オリゴ糖およびバイセクトハイブリッドオリゴ糖を保有する抗体分子の割合を最大にすることにより、達成される。この戦略は、処置用抗体によってだけでなく、免疫グロブリンのFc領域と等価である領域を保有する任意の分子により媒介される望ましくない細胞に対するFc媒介性細胞傷害性を増強するために適用され得るが、これは、グリコシル化の操作により導入される変化が、Fc領域のみに、したがってADCCメカニズムに関与するエフェクター細胞の表面のFc受容体とのその相互作用に、影響を及ぼすためである。本明細書に開示された方法が適用され得るFc含有分子としては、(a)Fc領域のN末端に融合されたターゲッティングタンパク質ドメインから作製される可溶性融合タンパク質(ChamovおよびAshkenazi,Trends Biotech.14:52(1996))、および(b)Fc領域のN末端に融合された原形質膜に局在化されるII型膜貫通ドメインから作製される原形質膜固定融合タンパク質(Stabila,P.F.,Nature Biotech.16:1357(1998))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
可溶性融合タンパク質(a)の場合、ターゲッティングドメインは、望ましくない細胞、例えば癌細胞との融合タンパク質の結合を指向する(すなわち処置用抗体と同様の様式である)。したがって、これらの分子により媒介されるFc媒介性細胞性細胞毒活性を増強するためのここに開示された方法の適用は、処置用抗体に適用される方法と同一である。
【0087】
膜固定融合タンパク質(b)の場合、身体中の望ましくない細胞は、融合タンパク質をコードする遺伝子を発現しなければならない。これは、遺伝子療法の手法により、すなわち望ましくない細胞に対して融合タンパク質コード遺伝子の発現を指向するプラスミドまたはウイルスベクターを用いて、インビボで細胞をトランスフェクトすることによってか、あるいはそれらの表面に融合タンパク質を発現するよう遺伝的に操作された細胞の身体中への移植により、達成され得る。後者の細胞は、普通は、ポリマーカプセル内で身体に移殖される(カプセル化細胞療法)が、この場合、それらはFc媒介性細胞傷害性メカニズムにより破壊され得ない。しかし、カプセル装置が故障すると、漏出細胞は望ましくないものになり、次いでそれらはFc媒介性細胞傷害性により排除され得る(Stabilaら、Nature Biotech.16:1357(1998))。この場合、GnTIIIの適切または最大発現レベルを指向する付加的遺伝子発現カセットを遺伝子療法ベクター中に組み入れることによってか、あるいは適切または最大レベルのGnTIIIを発現するために移殖されるよう細胞を操作することにより、本明細書中に開示された方法が適用される。両方の場合、開示された方法の目的は、バイセクト複合オリゴ糖および/またはバイセクトハイブリッドオリゴ糖を保有する表面提示Fc領域の割合を増大するかまたは最大にすることである。
【0088】
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明する。以下の調製物および実施例は、当業者に本発明をより明確に理解させ、本発明を実施させるために示している。しかし、本発明は、本発明の単一の態様の説明として意図されているに過ぎない例示的実施形態の範囲内に限定されず、機能的に等価である方法は、本発明の範囲内である。実際、本明細書中に記載されたものの他の本発明の種々の修正は、上記の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。このような修正は、添付の特許請求の範囲内であるよう意図される。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
(IDEC−CEB8産生細胞株のグリコシル化操作により得られる、増強された抗体依存性細胞傷害性を有する、キメラ抗CD20抗体IDEC−C2B8の新規バージョン)
IDEC−C2B8のVHおよびVLのコード領域の合成ならびに哺乳動物発現ベクターの構築。IDEC−C2B8抗体のVHおよびVL領域をコードするcDNAを、PCRを用いて、一段階法で、一組の重複一本鎖オリゴヌクレオチドから構築した(Kobayashi,N.ら、Biotechniques 23:500−503(1997))。国際公開特許出願(国際公開番号WO94/11026)から、IDEC−C2B8
VLおよびVHをコードするオリジナル配列データを得た。構築されたVLおよびVHcDNAフラグメントをpBluescriptIIKS(+)にサブクローニングし、配列決定して、オリジナルアミノ酸残基配列を変更せずに、可変領域および定常領域接合部に導入された独特の制限部位を用いて、それぞれヒト定常軽鎖(Igκ)および重鎖(IgG1)cDNAへの連結により直接結合した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Reff,M.E.ら、Blood 83:435−445(1994))。各完全長cDNAをpcDNA3.1(+)(Invitrogen,Leek,The Netherlands)に個別にサブクローニングし、キメラC2B8軽鎖(pC2B8L)および重鎖(pC2B8H)に関する哺乳動物発現ベクターを得た。
【0090】
異なるレベルのGnTIIIを発現するCHO細胞中でのIDEC−C2B8の産生。2つのCHO細胞株、すなわち培地中のテトラサイクリン濃度に依存して異なるレベルのGnTIIIを発現するCHO−tet−GnTIII;およびGnTIIIを発現しない親細胞株であるCHO−tTAの確立は、以前に記載されている(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Umana,P.ら、Biotechnol.Bioeng.65:542−549(1999))。リン酸カルシウム法を用いて、各細胞株に、ベクターpC2B8L、pC2B8HおよびpZeoSV2(+)(ゼオシン(Zeocin)耐性に関して;Invitrogen,Leek,The Netherlands)を同時トランスフェクトした。ゼオシン耐性クローンを96ウエルプレートに移して、ヒト定常領域に特異的なELISAアッセイを用いて、IDEC−C2B8産生に関してアッセイした(4)。選定クローン(CHO−tet−GnTIII−C2H8)の並行培養から3つのIDEC−C2B8サンプルを得て、テトラサイクリン濃度のみを変えて、培地に添加した(それぞれ25ng/mL、50ng/mLおよび2000ng/mL)。培養上清を後期対数期に回収した。同一条件下で、しかし培地にテトラサイクリンを添加せずに培養したCHO−tTA由来クローンであるCHO−tTA−C2B8から、さらに別の抗体サンプルを得た。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより抗体サンプルを培地から精製し、上記のように陽イオン交換カラムで緩衝液をPBSに交換した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。標準として用いられるリツキシマブを有するMolecular Probes製の蛍光ベースのキット(Leiden The Netherlands)を用いて、抗体濃度を測定した。
【0091】
間接的免疫蛍光法。CD20陽性細胞(SB細胞;ATCC寄託番号ATCC CCL120)およびCD20陰性細胞(HSB細胞;ATCC寄託番号ATCC CCL120.1)を各々、ハンクス平衡塩溶液(GibcoBRL,Basel,Switzerland)中の2.5μg/mlのCHO−tet−GnTIII由来IDEC−C2B8抗体、および2%ウシ血清アルブミン分画V(Roche Diagnostics,Rotkreuz,Switzerland)(HBSSB)とともに1時間インキュベートした。陰性コントロールとして、HBSSBをC2B8抗体の代わりに用いた。FITC結合体化抗ヒトFcポリクローナル抗体を、全サンプルに関して、二次抗体(SIGMA,St Louis)として用いた。ライカ蛍光顕微鏡(Wetzlar,Germany)を用いて、細胞を検査した。
【0092】
MALDI/TOF−MSによるオリゴ糖プロファイリング 上記(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))のように、C2B8抗体サンプル、MabTheraTM(リツキシマブの欧州等価物;R.Stahel,Universitatspital,Switzerlandの御厚意により得た)、C2B8−25t、C2B8−50t、C2B8−2000tおよびC2B8−nt(各々100μg)から、中性N結合型オリゴ糖を得た。要するに、抗体サンプルをまず、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ(Oxford Glycosciences,Abingson,UK)で処理して、いかなるシアル酸単糖残基をも除去した。次に、ペプチド−N−グリコシダーゼF(Oxford Glycosciences)を用いて、中性N結合型オリゴ糖を脱シアリル化抗体サンプルから放出し、微小カラムを用いて精製して、Elite Voyager 400分光計(Perseptive Biosystems,Farmingham,MA)でMALDI/TOF−MSにより分析した。
【0093】
ADCC活性アッセイ。フィコール−パック(Ficoll−Paque)(Pharmacia Biotech,Deubendorf,Switzerland)勾配上での遠心分離により、ヘパリン処理新鮮ヒト血液(全実験において、同一健常ドナーから得た)から末梢血単核球(PBMC)を分離した。プラスチック接着により、PBMC(エフェクター)から単球を枯渇させた。CD20陽性SB(標的)細胞を、37℃で、100μCi51Cr(Amersham,Deubendorf,Switzerland)を用いて90分間標識し、RPMI(GibcoBRL,Basel,Switzerland)中で2回洗浄して、105細胞/mlの濃度で再懸濁させた。RPMI培地中に希釈したC2B8mAb 50μlを、96ウエル丸底マイクロタイタープレート(Greiner,Langenthal,Switzerland)中の100μlのSB細胞(10,000細胞/ウエル)に添加し、50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートした。その後、エフェクター細胞(RPMI培地中に2×107細胞/mlで懸濁)50μlを各96ウエルに添加して、最終E:T比100を得た。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、Skatron回収システム(Skatron Instruments,Sterling,VA)を用いて回収し、コブラ(Cobra)05005γ計数器(Canberra Packard,Meriden,CT)で計数した(ER、実験的放出)。C2B8mAbの代わりに、それぞれ100μlの1%Nonidet(Sigma,St Louis)または100μlのRPMI培地を100μlの標識標的細胞に添加することにより、最大(MR)および自発性放出(SR)を得た。データポイントはすべて、三連で実施した。以下の式:(ER−SR)/(MR−SR)×100を用いて、特異的溶解(%)を算定した。
【0094】
(結果および考察)
IDEC−C2B8の産生および特異的抗原結合の立証。GnTIIIの安定テトラサイクリン調節発現およびIDEC−C2B8の安定構成性発現を示すCHO−tet−GnTIII細胞を確立し、一組の抗体サンプルの産生のためにスケールアップした。スケールアップ中、同一クローンからの並行培養を、3つの異なるテトラサイクリン濃度、25ng/ml、50ng/mlおよび2000ng/ml下で増殖させた。これらのレベルのテトラサイクリンは、異なるレベルのGnTIIIおよびバイセクトオリゴ糖を生じることが以前に示されている(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Umana,P.ら、Biotechnol.Bioeng.65:542−549(1999))。GnTIIIを発現しないC2B8産生コントロール細胞株も確立し、CHO−tet−GnTIIIの3つの並行培養に関するのと同一条件下で培養した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー後、SDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色により、mAb純度を95%より高いと概算した。それらの産生のために培養培地に添加されたテトラサイクリン濃度に従い、サンプルを以下のように命名した:C2B8−25t、C2B8−50t、C2B8−2000tおよびC2B8−nt(すなわち非バイセクトコントロールに関しては無テトラサイクリン)。サンプルC2B8−25tは、CD20陽性細胞およびCD20陰性細胞を用いた間接的免疫蛍光法により、特異的抗原結合を示したが(図1)、これは、合成VLおよびVHの遺伝子フラグメントが機能的に誤りがなかったことを示す。
【0095】
MALDI/TOF−MSを用いたオリゴ糖プロファイリング 放出中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSにより、各抗体サンプルのグリコシル化プロフィールを分析した。この技法では、異なる質量のオリゴ糖は、スペクトルにおいて別個のピークとして現れ、それらの割合は、相対的ピーク高により定量的に反映される(Harvey,D.J.,Rapid Common Mass Spectrom.7:614−619(1993);Harvey,D.J.ら、Glycoconj J.15:333−338(1998))。オリゴ糖構造は、それらの予測分子量、同一宿主中で産生されるIgGI mAb由来のオリゴ糖に関する過去の構造データ、ならびにN結合型オリゴ糖生合成経路に関する情報に基づいて異なるピークに割り当てられた。
【0096】
GnTIII発現レベル(すなわちテトラサイクリン濃度)と異なる抗体サンプルから得られるバイセクト(bisected)オリゴ糖の量との間に、明らかな相関が見出された。予測どおり、GnTIIIを発現しない宿主から得られるMabTheraTMおよびC2B8−ntは、バイセクトオリゴ糖を保有しなかった(図2Aおよび2B)。これに対比して、バイセクト構造は、サンプルC2B8−2000t中で、すなわちGnTIII発現の基底レベルで、オリゴ糖プールの約35%までに達した。この場合、主なバイセクトオリゴ糖ピークは複合型であり、m/z1689およびm/z1851のピークに明確に割り当てられた(図2C)。次のより高いGnTIII発現レベル、サンプルC2B8−50tは、約20%のこれらのピーク(m/z1705およびm/z1861でのそれらの会合カリウム付加物を含む)の増大をもたらした。この増大は、それぞれm/z1486およびm/z1648でのそれらの非バイセクト等価物の同時低減を伴った(図2D)。最高GnTIII発現レベルでは、GnTIII、m/z1486に関する主基質であるサンプルC2B8−25tは、ほぼベースラインレベルに低減したが、複合バイセクト構造(m/z1689および1851)は、m/z1664、1810および1826でのピークの増大を有利に低減した(図2E)。これらのピークは、バイセクトハイブリッド化合物、ガラクトシル化複合オリゴ糖、または両方の混合物に割り当てられ得る。しかしながら、GnTIII過剰発現は経路の初期段階での生合成の流れを方向転換し得るので、それらの相対的増加は、バイセクトハイブリッド化合物の蓄積と一致する(図3Aおよび3B参照)。バイセクトオリゴ糖構造(複合型およびハイブリッド型)の量は、このサンプルに関しては約80%に達した。
【0097】
(IDEC−C2B8グリコシル化改変体のADCC活性)
異なるC2B8mAbグリコシル化改変体を、CD20陽性SB細胞のインビトロ溶解として測定したADCC活性について比較した。GnTIIIを欠いている親細胞株由来の、さらに別のmAbサンプルであるC2B8−ntも試験した。基底GnTIII発現レベルで産生され、低レベルのバイセクトオリゴ糖を保有するサンプルC2B8−2000tは、C2B8−tよりわずかに活性であった(図4A)。GnTIII発現の次に高いレベルでは、サンプルC2B8−50tはほぼ等レベルのバイセクトオリゴ糖および非バイセクトオリゴ糖を保有したが、有意により高い標的細胞溶解を媒介しなかった。しかしながら、最低テトラサイクリン濃度では、80%までのバイセクトオリゴ糖構造を含有するサンプルC2B8−25tは、全抗体濃度範囲で、残りのサンプルより有意に活性であった。C2B8−25tは10分の1の抗体濃度で、サンプルC2B8−ntの最大レベルのADCC活性に達した(図4A)。サンプルC2B8−25tは、コントロールに関しての最大ADCC活性の有意の増強も示した(50%対30%溶解)。
【0098】
最高比率のバイセクトオリゴ糖を保有するサンプルC2B8−50tおよびC2B8−25tを、欧州で一般に販売されているRituxanTMのバージョンであるMabtheraTMのADCC活性とさらに比較した(図4B)。サンプルC2B8−50tは活性のわずかな増強を示したが、サンプルC2B8−25tは、全抗体濃度でMabtheraTMより明らかに性能がよかった。マブテラ(商標)の最大ADCC活性に達するにはC2B8−25tの約5〜10分の1の濃度が必要であり、C2B8−25tの最大活性は、MabtheraTMより約25%高かった。
【0099】
これらの結果は、一般に、C2B8抗体のインビトロADCC活性がFc領域中にバイセクトオリゴ糖を保有する分子の割合と相関することを示す。低ベースラインレベルのADCC活性を有する抗体であるchCE7の場合、活性の有意な増強は天然に存在する抗体で見出されるレベルを上回るバイセクトオリゴ糖の画分を増大することにより得られる、ということをわれわれは以前に報告した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。同じことは、バイセクトオリゴ糖の非存在下で高ADCC活性をすでに有するC2B8mAbに当てはまる。しかしながらchCE7の場合、ADCC活性の非常に大きい増強が、バイセクトオリゴ糖が主として複合型のものであるGnTIII発現のレベルで観察された(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。強力なC2B8mAbに関しては、活性のこのような大きい増加は、研究したGnTIII発現の最高レベルで観察されただけあったが、この場合、バイセクトオリゴ糖は主にハイブリッド型に転じていた(図2)。両mAbに関して、最高活性を有するサンプルは、非バイセクトオリゴ糖よりかなり高レベルのバイセクトオリゴ糖を有した。これらの観察はともに、おそらくは複合およびハイブリッドのバイセクトオリゴ糖がともにADCC活性に重要であることを示す。
【0100】
複合オリゴ糖およびハイブリッドオリゴ糖の両方において、バイセクトGlcNAcはオリゴ糖立体配座の大きい変化をもたらす(Balaji,P.V.ら、Int.J.Biol.Macromol.18:101−114(1996))。変化は、CH2ドメインにおいてポリペプチドと広範に相互作用するオリゴ糖の一部で起こる(Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998))。ポリペプチドはこの位置では比較的柔軟性であるため(Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998))、バイセクトN−アセチルグルコサミンがFc領域における配座変化によりその生物学的作用を媒介する可能性がある。すべての血清IgGはバイセクトオリゴ糖を保有するので、潜在的に変更された立体配座は天然ですでに存在する。操作された抗体と天然抗体との間の主な差は、より活性な立体配座を表示する分子の割合である。
【0101】
非結合体化mAbの活性を増強するための種々の手法は、現在、臨床評価(放射免疫療法、抗体依存性酵素/プロドラッグ療法、サイトカインを用いた免疫毒素およびアジュバント療法を含む)の下にある(Hjelm Skog,A.ら、Cancer Immunol Immunother.48:463−470(1990);Blakey,D.C.ら、Cell Biophys.25:175−183(1994);Wiseman,G.A.ら、Clin Cancer Res.5:3281s−3296s(1999);Hank,J.A.ら、Cancer Res.50:5234−5239(1990))。これらの技法により活性が大きく増加し得るが、これらの技法は、非結合体化mAbと比較した場合、有意に高い副作用、生産コスト上昇、ならびに生産から患者への投与までの複雑なロジスティクスももたらし得る。ここに示した技法は、簡単な生産方法を維持しながら、効力の増強を得るための代替的方法を提供するものであって、多数の非結合体化mAbに適用可能であるべきである。
【0102】
(実施例2)
(chG250産生細胞株のグリコシル化操作により得られる抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う、抗腎細胞癌抗体chG250の新規バージョン)
(1.細胞培養)
chG250キメラmAbを産生するSP2/0マウスミエローマ細胞(wt−chG250−SP2/0細胞)を、1:100(容量/容量)のペニシリン/ストレプトマイシン/抗真菌性溶液(SIGMA,Buchs,Switzerland)を補充した標準細胞培地中で増殖させた。細胞を、組織培養フラスコ中で5%CO2湿潤大気中、37℃で培養した。培地を、3〜4日ごとに取り替えた。細胞を、10%DMSOを含有する培地中で凍結させた。
【0103】
(2.pGnTIII−puro発現を有するSP2/0細胞の生成)
IRESを介してプロマイシン耐性遺伝子に作動可能に連結されるGnTIIIの構成性発現のためのベクターを用いて、電気穿孔により、wt−chG250−SP2/0ミエローマ細胞をトランスフェクトした。電気穿孔の24時間前に、培地を取り替えて、細胞を5×105細胞/mlで接種した。700万個の細胞を、4℃にて1300rmpで4分間、遠心分離した。細胞を3mLの新しい培地で洗浄し、再び遠心分離した。培地中の1.25%(容量/容量)DMSOおよび20〜30μgのDNAを含有する反応混合物0.3〜0.5mlの容量中に細胞を再懸濁した。次に電気穿孔混合物を0.4cmキュベットに移して、遺伝子パルサー(Bio Rad製)を用いて、低電圧(250〜300V)および高キャパシタンス(960μF)でパルスをかけた。電気穿孔後、細胞を迅速にT25培養フラスコ中の6mLの1.25%(容量/容量)DMSO培地に移して、37℃でインキュベートした。電気穿孔後2日目に培地に2μg/mLのプロマイシンを適用することにより、安定構成部分を選択した。2〜3週間後、安定したプロマイシン耐性混合集団を得た。単一細胞由来クローンをFACSにより得て、その後、展開し、プロマイシン選択下で保持した。
【0104】
(3.ウエスタンブロット)
ウエスタンブロッティングにより、GnTIII発現に関してプロマイシン耐性クローンをスクリーニングした。ウエスタンブロットは、クローン5H12、4E6および4E8が最高レベルのGnTIIIを発現していることを明らかに示した。5G2も中強度のGnTIII帯域を示したが、2F1、3D3および4G3は最低帯域強度を有し、したがって低量のGnTIIIを発現した(図5)。
【0105】
(4.野生型を含めた7つのGnTIII発現クローンからのchG250モノクローナル抗体の産生および精製)
クローン2F1、3D3、4E6、4E8、4G3、5G2、5H12および野生型(wt−chG250−SP2/0細胞)を、130ml培地の総容量中に3×105細胞/mLで接種し、単一三重フラスコ中で培養した。接種のために用いた細胞は、すべて完
全対数増殖期であり、したがって細胞は、生産バッチ開始時に同一の増殖状態であったと考えられた。細胞を4日間培養した。抗体を含有する上清を後期対数増殖期に収集して、再現性を保証した。chG250モノクローナル抗体を、2クロマトグラフィー工程で精製した。各バッチから得られたchG250モノクローナル抗体を含有する培養上清をまず、HiTrapプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。プロテインAは、ヒトIgGFc領域に高度に特異的である。プロテイン溶離物からのプールサンプルを、ResourceS 1mlカラム(Amersham Pharmacia Biotech)上での陽イオン交換クロマトグラフィーによりPBSに緩衝液交換した。SDS染色およびクーマシーブルー染色から、最終純度を95%より高いと判定した(図6)。既知の濃度を有する野生型抗体を用いた標準較正曲線で、各サンプルの濃度を確定した。
【0106】
(5.異なるGnTIIIレベルを発現する7つのクローン由来のmAb調製物のオリゴ糖プロファイリング)
異なるオリゴ糖構造の分子量を正確に提供するマトリクス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI/TOF−MS)によって、オリゴ糖プロフィールを得た。この技法は、混合物内の異なるオリゴ糖構造間の割合の定量的分析を可能にする。中性オリゴ糖は、主に[M+Na+]イオンとして出現したが、時としてそれらはより小さい[M+K+]イオンを伴い、m/z16の質量増大をもたらした。カリウムイオン付加物として出現する構造のパーセンテージはマトリクスの含量に依存し、したがってサンプル間で変化し得る。各抗体調製物由来の中性N結合型オリゴ糖の混合物を、マトリクスとして2,5−デヒドロ安息香酸(2,5−DHB)を用いて分析した。既知の単糖組成および独特の質量のために、スペクトル中のピークのいくつかは、特定のオリゴ糖構造に明確に割り当てられた。しかしながら、多重構造はしばしば、特定の質量に割り当てられ得る。MALDIによって質量を確定することはできるが、異性体間の区別はできない。生合成経路についての知識および過去の構造データは、ほとんどの場合に、スペクトル中のピークへのオリゴ糖構造の割り当てを可能にする。
【0107】
GnTIIIを発現しないwt−chG250−SP2/0細胞株中で産生されたmAbサンプル由来のオリゴ糖は、非バイセクトビアンテナリ(biantennary)複合体(m/z1486)およびモノガラクトシル化非バイセクトビアンテナリ複合体構造またはジガラクトシル化非バイセクトビアンテナリ複合体構造(図7A)(ともにコア領域でα(1,6)−フコシル化される)を含有した(それぞれピークm/z1648および1810)。
【0108】
GnTIIIの発現は、2つの型、すなわち複合型またはハイブリッド型のバイセクトFc会合オリゴ糖構造を生じた。複合バイセクトオリゴ糖は明確に、m/z1543、1689、1705、1851および1867でのピークに割り当てられた([M+K+]付加物)。予測どおり、バイセクトオリゴ糖の増大は、非バイセクト複合オリゴ糖に対応するピークm/z1486および1648の同時低減を伴った。GnTIII発現クローン由来の全サンプルに関して、GnTIIIの主基質(m/z1486)は劇的に低減した。予測どおり、m/z1648のピークに割り当てられた非バイセクト複合オリゴ糖型のパーセンテージは、最高GnTIIIレベルを発現するクローン(クローン4E6、4E8、5G2および5H12)に関して最低値を有した。これら2つのピークは、バイセクト複合型オリゴ糖およびバイセクトハイブリッド型オリゴ糖の蓄積を有利に低減した(図7A〜図7Dおよび図8A〜図8D)。バイセクト複合オリゴ糖のパーセンテージは、低量のGnTIIIを発現するクローン由来のサンプルではより低かった。これは、より高いGnTIII発現レベルがおそらくは生合成の流れをバイセクトハイブリッド構造に転向し、それにより複合体および複合バイセクト化合物の相対的割合を低減する、という事実と一致する。バイセクトハイブリッド構造に関しては、2つの考え得る構造がしばしば、単一ピークに割り当てられ得る。したがって、全オリゴ糖プール全体のこれらの構造のパーセンテージを概算するために、いくつかの仮定を行った。ピークm/z1664、1680、1810および1826は、バイセクトハイブリッド型、ガラクトシル化複合オリゴ糖、またはそれらの混合物に割り当てられ得る。wt−抗体調製物がピーク1664の比較的低いパーセンテージを有したという事実により、異なるクローン由来の抗体サンプル中に有意量で出現するこのピークは完全に、バイセクトハイブリッド構造に対応すると仮定された(図7A〜図7Dおよび図8A〜図8D)。しかしながら、特定構造をピークm/z1810および1826に割り当てるためには、さらなる特性化を実施しなければならない。要するに、GnTIIIの過剰発現により、バイセクトオリゴ糖構造が生成され、それらの相対的割合はGnTIII発現レベルと相関した。
【0109】
(6.カルセイン−AM保持による抗体媒介性細胞毒活性の測定)
細胞傷害性を測定するカルセイン−AM保持法は、抗体を用いたインキュベーション後に細胞中に残留する染料蛍光を測定する。400万個のG250抗原陽性細胞(標的)を、10%ウシ胎仔血清を補充した1.8mLのRPMI−1640細胞培地(GIBCO
BRL,Basel,Switzerland)中の10μMのカルセイン−AM(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて、5%CO2湿潤大気中で37℃にて30分間標識した。細胞を培地中で2回洗浄し、12mLのAIMV無血清培地(GIBCO BRL, Basel, Switzerland)中に再懸濁した。次に、標識細胞をU底96ウェルに移し(30,000細胞/ウェル)、異なる濃度の抗体を用いて、4℃で1時間、三連でインキュベートした。フィコール−パック(Pharmacia Biotech,Dubendorf,Switzerland)勾配上での遠心分離により、ヘパリン処理新鮮ヒト血液(全実験において、同一健常ドナーから得た)から末梢血単核球(PBMC)を分離した。PBMCを50μL容量で三連ウェルに添加し、25:1のエフェクター対標的比(E:T比)および200μLの最終容量を生じた。次に96ウエルプレートを、5%CO2大気中で37℃にて4時間インキュベートした。その後、96ウエルプレートを700×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞ペレットをハンクス平衡塩溶液(HBSS)で2回洗浄し、200μLの0.05M ホウ酸ナトリウム、pH9、0.1%トリトンX−100中で溶解した。標的細胞中の蛍光染料の保持を、FLUOstar微小プレート読取器(BMG LabTechnologies,Offenburg,Germany)で測定した。抗体に曝露する代わりに、サポニン(AIMV中200μg/mL;SIGMA,Buchs,Switzerland)に標的細胞を曝露することにより、特異的溶解を総溶解コントロールに関して算定した。以下の式を用いて、特異的溶解(%)を算定した:
細胞傷害性%=(Fmed−Fexp)/(Fmed−Fdet)
(式中、Fmedは培地単独で処理した標的細胞の蛍光を表し、PMBCによる非特異的溶解を考察し、Fexpは抗体で処理した細胞の蛍光を表し、Fdetは抗体の代わりにサポニンで処理した細胞の蛍光を表す)。
【0110】
インビトロADCC活性に対するchG250の修飾グリコシル化改変体の効果を確定するために、G250抗原陽性標的細胞を、異なる濃度のchG250抗体サンプルを用いて、および用いずに、PBMCを用いて培養した。野生型細胞株由来の非修飾chG250抗体の細胞傷害性を、それぞれ中度および高度のGnTIIIレベルを発現する2つの細胞株(3D3、5H12)由来の2つの抗体調製物と比較した(図5参照)。
【0111】
非修飾chG250抗体は、アッセイで用いられる濃度範囲全体で有意のADCC活性を媒介しなかった(活性はバックグラウンドと有意に異ならなかった)。2μg/mLでのADCC活性の増強(ほぼ20%、図9参照)は、中度のGnTIIIレベルを発現するクローン3D3由来の抗体サンプルを用いて観察された。この抗体サンプルの細胞毒活性は、より高い抗体濃度では増殖しなかった。予測どおり、クローン5H12由来の抗体調製物は、標的細胞に対してADCCを媒介するその能力において、サンプル3D3および非修飾抗体全体で顕著な増強を示した。この抗体調製物の最大ADCC活性は約50%であり、非修飾コントロールサンプルと比較した場合、125分の1の濃度で、有意のADCC活性を顕著に媒介した。
【0112】
(実施例3)
(慢性対宿主性移植片病を有する患者における免疫媒介性血小板減少症の処置)
慢性対宿主性移植片病における自己免疫血小板減少症は、臨床疾患を引き起こすB細胞調節不全の一例を示す。慢性対宿主性移植片病を有する被験者における免疫媒介性血小板減少症を処置するために、本発明の方法により調製され、ADCCの増強を伴う抗CD20キメラモノクローナル抗体を、Ratanatharathorn,V.ら、Ann.Intern.Med.133(4):275−79(2000)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されたように被験者に投与する。特に、抗体375mg/m2の毎週注入を被験者に4週間施した。抗体療法は、末梢血中のB細胞の顕著な枯渇ならびに血小板関連抗体レベルの低減を生じた。
【0113】
(実施例4)
(重症免疫媒介性赤芽球ろうおよび溶血性貧血の処置)
免疫媒介性後天性赤芽球ろう(PRCA)は、しばしばその他の自己免疫現象に関連するまれな障害である。被験者における免疫媒介性後天性赤芽球ろうを処置するために、本発明の方法により調製され、ADCCの増殖を伴う抗CD20キメラモノクローナル抗体を、Zecca,M.ら、Blood 12:3995−97(1997)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されたように、被験者に投与する。特に、PRCAおよび自己免疫性溶血性貧血を有する被験者には、抗体375mg/m2/週を2用量投与する。抗体療法後、静脈内免疫グロブリンを用いた変換処置を開始する。この処置は、B細胞の顕著な枯渇およびヘモグロビンレベル増大を伴う網状赤血球数の有意の増大を生じる。
【0114】
本発明は、上記の説明および実施例に特に記載されたものと別の方法で実行され得ることは明らかである。本発明の多数の変更および改変は上記の教示にかんがみて可能であり、したがって添付の特許請求の範囲内である。
【0115】
本明細書中に引用された全出版物(特許、特許出願、季刊誌、実験マニュアル、書籍またはその他の文を含む献)の開示内容はすべて、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】CD20陽性SB細胞に対する抗体調製物C2B8−25tの反応性を示す間接的免疫蛍光アッセイ。陰性コントロール(HSB CD20陰性細胞株を含む)および二次FITC結合体化抗ヒトFcポリクローナル抗体だけで処理された細胞は示されていない。
【図2A】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2B】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2C】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2D】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2E】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図3】典型的なヒトIgG Fc会合オリゴ糖構造(A)および部分的N結合型グリコシル化経路(B)の説明。(図3A)オリゴ糖のコアは、Asn297に結合される3個のマンノース(M)および2個のN−アセチルグルコサミン(Gn)の単糖残基で構成される。ガラクトース(G)、フコース(F)およびバイセクトN−アセチルグルコサミン(Gn、矩形)は、存在する場合もしない場合もある。末端N−アセチルノイラミン酸も存在し得るが、図中に含まれていない。(図3B)部分的N結合型グリコシル化経路は、主要なオリゴ糖クラス(点線枠)の生成をもたらす。バイセクトN−アセチルグルコサミンは、Gnbとして示される。下付数字は、各オリゴ糖中に存在する単糖残基の数を示す。各構造は、そのナトリウム関連[M+Na+]質量と一緒に出現する。フコース(f)を含有する構造の質量も含まれる。
【図4A】Rituximabグリコシル化改変体のADCC活性。異なるmAb濃度により媒介されるヒトリンパ球(E:T比100:1)による51Cr標識CD20陽性SB細胞の溶解により、細胞傷害性のパーセンテージを測定した。(図4A)しかし、単一細胞株由来のC2B8サンプルの活性は、漸増GnTIII発現レベル(すなわち漸減テトラサイクリン濃度)を生じた。サンプルは、C2B8−2000t、C2B8−50t、C2B8−25tおよびC2B8−nt(GnTIIIを発現しないクローン由来のコントロールmAb)である。(図4B)C2B8−50tおよびC2B8−25tのADCC活性を、MabtheraTMと比較した。
【図4B】Rituximabグリコシル化改変体のADCC活性。異なるmAb濃度により媒介されるヒトリンパ球(E:T比100:1)による51Cr標識CD20陽性SB細胞の溶解により、細胞傷害性のパーセンテージを測定した。(図4A)しかし、単一細胞株由来のC2B8サンプルの活性は、漸増GnTIII発現レベル(すなわち漸減テトラサイクリン濃度)を生じた。サンプルは、C2B8−2000t、C2B8−50t、C2B8−25tおよびC2B8−nt(GnTIIIを発現しないクローン由来のコントロールmAb)である。(図4B)C2B8−50tおよびC2B8−25tのADCC活性を、MabtheraTMと比較した。
【図5】7つのGnTIII発現クローンおよび野生型のウエスタンブロット分析。各サンプル30μgを8.75%SDSゲル上にロードし、PVDF膜に移して、抗c−mycモノクローナル抗体(9E10)でプローブした。WTはwt−chG250−SP2/0細胞をいう。
【図6】分解精製抗体サンプルのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。
【図7A】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7B】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7C】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7D】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8A】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8B】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8C】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8D】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図9】コントロールwt−chG250−SP2/−細胞およびGnTIIIトランスフェクト(transect)クローン3D3および5H12由来の抗体サンプルのインビトロADCCアッセイ。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、タンパク質のグリコシル化操作の分野に関する。より詳細には、本発明は、改良された処置的特性を有するタンパク質(抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体)を生成するためのグリコシル化操作に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
糖タンパク質は、ヒト、その他の真核生物およびいくつかの原核生物における多数の不可欠な機能(触媒作用、シグナル伝達、細胞間コミュニケーション、ならびに分子認識および会合)を媒介する。それらは、真核生物において非細胞質ゾルタンパク質の大部分を構成する(Lisら、Eur.J.Biochem.218:1−27(1993))。多数の糖タンパク質が処置目的のために開発されてきており、過去20年の間、天然に存在する分泌糖タンパク質の組換えバージョンが生物工学産業の主要な産物であった。例としては、エリスロポエチン(EPO)、処置用モノクローナル抗体(処置用mAb)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、インターフェロン−β(IFN−β)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が挙げられる(Cummingら、Glycobiology 1:115−130(1991))。
【0003】
オリゴ糖成分は、処置用糖タンパク質の有効性に関係のある特性(物理学的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態および特異的生物学的活性)に有意に影響を及ぼし得る。このような特性は、オリゴ糖の存在または非存在だけでなく、その特異的構造に依存し得る。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間のいくつかの一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴ糖構造は、特定の糖質結合タンパク質との相互作用による血流からの糖タンパク質の迅速クリアランスを媒介するが、他のオリゴ糖構造は、抗体により結合され、望ましくない免疫反応を誘発し得る(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0004】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のために最も適合した形態でタンパク質をグリコシル化するこれらの能力に起因して、処置用糖タンパク質の産生のために好ましい宿主である(Cummingら、Glycobiology 1:115−30(1991);Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。細菌がタンパク質をグリコシル化することは非常に稀であり、同様に他の型の一般的な宿主(例えば酵母、糸状菌、昆虫および植物細胞)は、血流からの迅速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、およびいくつかの特定の場合には減少した生物学的活性に関連した、グリコシル化パターンを生じる。哺乳動物細胞の中でも、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間、最も一般的に用いられてきた。適切なグリコシル化パターンを示すことに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な、高度に生産的なクローン細胞株の一貫した生成を可能にする。それらは、無血清培地を用いた単純なバイオリアクター中で高密度に培養されることができ、安全且つ再現可能な生物プロセスの開発を可能にする。その他の一般的に用いられる動物細胞としては、新生仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−マウスミエローマ細胞およびSP2/0−マウスミエローマ細胞が挙げられる。さらに最近、トランスジェニック動物からの産生も試験されている(Jenkinsら、Nature Biotechnol.14:975−81(1996))。
【0005】
抗体はすべて、重鎖定常領域の保存位置に糖質構造を含有し、各アイソタイプはN結合型糖質構造の異なるアレイを保有し、これがタンパク質のアセンブリー、分泌または機能的活性に様々な影響を及ぼす(Wright,A.,およびMorrison,S.L.,Trends Biotech.15:26−32(1997))。付着N結合型糖質の構造は、プロセシングの程度に依存してかなり変化し、高マンノース、多分枝、ならびにビアンテナリ(biantennary)複合オリゴ糖を包含し得る(Wright,A.,およびMorrison,S.L.,Trends Biotech.15:26−32(1997))。典型的には、モノクローナル抗体でさえ多様なグリコフォーム(multiple glycoform)として存在するよう、特定のグリコシル化部位に結合されるコアオリゴ糖構造の不均質プロセシングが存在する。同様に、抗体グリコシル化における大きな差異は細胞株間で起こり、異なる培養条件下で増殖された所定の細胞株に関しては、小さな差異さえも観察される、ということが示された(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5(8):813−22(1995))。
【0006】
非結合モノクローナル抗体(mAb)は、CD20陽性B細胞、下級または濾胞性非ホジキンリンパ腫の処置のためのRituximab(RituxanTM;IDEC Pharmaceuticals,San Diego,CAおよびGenentech Inc.,San Francisco,CA)および進行性乳癌の処置のためのTrastuzumab(HerceptinTM;Genentech Inc,)についての米国食品医薬品局の認可により実証されたような、癌の処置に有用な薬であり得る(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999);Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これらの製品が成功したのは、その効力のためだけでなく、その顕著な安全プロフィールのためでもある(Grillo−Lopez,A.−J.ら、Semin.Oncol.26:66−73(1999)Goldenberg,M.M.,Clin.Ther.21:309−18(1999))。これら2つの薬剤の業績にもかかわらず、非結合mAb療法により通常得られるものより高い特異的抗体活性を得ることに現在大きな関心がある。
【0007】
簡単な製造方法を維持し、有意の望ましくない副作用を潜在的に回避しながら、効力を大きく高めるための一方法は、mAbの天然の細胞媒介性エフェクター機能を、それらのオリゴ糖成分を操作することにより強化することである(Uman〜a,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999))。癌免疫療法において最も一般的に用いられる抗体であるIgG1型抗体は、各々のCH2ドメインのAsn297に保存N結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合される2つの複合ビアンテナリオリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋められて、ポリペプチドバックボーンとの広範な接触を形成するため、それらの存在は、抗体がエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介するために不可欠である(Lifely,M.R.ら、Glycobiology 5:813−822(1995);Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998);Wright,A.およびMorrison,S.L.,Trends Biotechnol.15:26−32(1997))。
【0008】
バイセクト(bisected)オリゴ糖の生成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中での過剰発現が、操作されたCHO細胞により産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を有意に増強する、ということを以前に本発明者等は示した(非特許文献1、特許文献1参照)(これら各々の記載内容全体が、この全体を参考として本明細書中に援用される)。抗体chCE7は、高腫瘍親和性および特異性を有するが、効力が弱すぎるためにGnTIII酵素を欠く、標準的な工業用の細胞株中で産生される場合に臨床的に有用ではない非結合mAbの大きいクラスに属する(非特許文献1)。その試験は、天然に存在する抗体に見出されるレベルを上回るように定常領域(Fc)関連バイセクトオリゴ糖の割合を増大することにより、最大インビトロADCC活性を大きく高めることができることを示した最初のものであった。この発見が、バイセクトオリゴ糖の非存在下で有意のADCC活性をすでに有する非結合mAbに外挿され得るか否かを確定するために、本発明者等は、この技術を、Rituximab、抗CD20、IDEC−C2B8キメラ抗体に適用した。本発明者等は、同様に本技術を非結合抗癌mAb chG250に適用した。
【特許文献1】国際公開第99/54342号パンフレット
【非特許文献1】Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176−180(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な概要)
テトラサイクリン調節様式で、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII;EC2.1.4.144)を過剰発現する遺伝子操作されたmAb産生細胞株を用いて、抗−CD20モノクローナル抗体(mAb)IDEC−C2B8(Rituximab)および抗癌mAb chG250の新規のグリコシル化改変体を、本発明者等はここに生成した。GnTIIIは、天然に存在するヒト抗体中に低から中レベルで見出されるが、標準工業細胞株中に産生されるmAbを欠いているバイセクトオリゴ糖の合成に必要とされる。新規のグリコシル化バージョンは、MabtheraTM(欧州で販売されているRixtuximabのバージョン)およびマウスミエローマ由来chG250より生物学的(ADCC)活性が優れていた。例えば、MabtheraTMのような最大ADCC活性に達するために必要とされる量は、最高レベルのバイセクトオリゴ糖を保有する改変体では10分の1であった。chG250に関しては、最高レベルのバイセクトオリゴ糖を保有する改変体は、非修飾コントロールchG250にさらに低いADCC活性を検出するために必要とされるものの125分の1の濃度で有意のADCC活性を媒介した。GnTIII発現およびADCC活性のレベル間に明らかな相関が見出された。
【0010】
したがって、一局面において、本発明は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、上記宿主細胞により産生される上記ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメントおよび免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、上記GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物を保有する上記ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される宿主細胞に関する。
【0011】
好ましい実施形態では、上記ポリペプチドはIgGまたはそのフラグメントであり、最も好ましくはIgG1またはそのフラグメントである。さらに好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質である。
【0012】
本特許請求される発明の別の局面では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子が、上記宿主中に導入された。好ましい実施形態では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子が上記宿主細胞染色体中に導入された。
【0013】
あるいは、宿主細胞は、例えば遺伝子発現を増強するDNA要素の宿主染色体中への挿入により内因性GnTIII遺伝子が活性化されるよう、操作された。好ましい実施形態では、内因性GnTIIIは、宿主細胞染色体中への、プロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素、あるいはそれらの組合せの挿入により活性化された。別の局面では、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択された。好ましくは宿主細胞は、CHO細胞変異体lec10である。
【0014】
本特許請求される発明のさらに好ましい実施形態では、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸が構成的プロモーター要素に作動可能に連結される。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、またはハイブリドーマ細胞、Y0ミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、もしくはPER.C6細胞であり、上記ポリペプチドは、抗CD20抗体である。別の好ましい実施形態では、宿主細胞はSP2/0細胞であり、上記ポリペプチドはモノクローナル抗体chG250である。
【0016】
別の局面では、本特許請求される発明は、抗体分子、抗体フラグメントまたは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸をさらに含む宿主細胞に関する。好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、抗CD20抗体、キメラ抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体chCE7、キメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250、キメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体ING−1、ヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体3622W94、ヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体A33、GD3ガングリオシドR24に対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体、またはキメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体SF−25、抗ヒトEGFR抗体、抗ヒトEGFRvIII抗体、抗ヒトPSMA抗体、および抗ヒトPSCA抗体、抗ヒトCD22抗体、抗ヒトCD30抗体、抗ヒトCD33抗体、抗ヒトCD38抗体、抗ヒトCD40抗体、抗ヒトCD45抗体、抗ヒトCD52抗体、抗ヒトCD138抗体、抗ヒトHLA−DR改変体抗体、抗ヒトEpCAM抗体、抗ヒトCEA抗体、抗ヒトMUC1抗体、抗ヒトMUC1コアタンパク質抗体、抗ヒト異常グリコシル化MUC1抗体、ED−Bドメインを含有するヒトフィブロネクチン改変体に対する抗体、および抗ヒトHER2/neu抗体をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸を含む。
【0017】
別の局面において、本特許請求される発明は、宿主細胞中でのポリペプチドの産生方法であって、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う上記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で上記宿主細胞のいずれかを培養することを包含する方法に関する。好ましい実施形態では、上記方法は、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う上記ポリペプチドを単離することをさらに包含する。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、上記宿主細胞は、免疫グロブリンのグリコシル化Fc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0019】
好ましい実施形態では、上記ポリペプチドのFc領域中のバイセクトオリゴ糖の割合は、50%より大きく、より好ましくは70%より大きい。別の実施形態では、Fc領域中のバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合体オリゴ糖あるいはそれらの混合物の割合は、上記ポリペプチドのFc領域中のバイセクト複合オリゴ糖の割合より大きい。
【0020】
本特許請求される方法の好ましい局面では、上記ポリペプチドは、抗CD20抗体であり、上記宿主細胞により産生される抗CD20抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図2Eに示されたものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する。
【0021】
本特許請求される方法の別の好ましい局面では、上記ポリペプチドは、chG250モノクローナル抗体であり、上記宿主細胞により産生されるchG250抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図7Dに示されたものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する。
【0022】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、上記の方法のいずれかにより産生される抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う抗体に関する。好ましい実施形態では、抗体は、抗CD20抗体、chCE7、ch−G250、ヒト化抗HER2モノクローナル抗体、ING−1、3622W94、SF−25、A33およびR24から成る群から選択される。あるいは、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、上記の方法のいずれかにより産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う抗体フラグメントであり得る。
【0023】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、上記の方法のいずれかにより産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う融合タンパク質に関する。
【0024】
さらなる局面において、本特許請求される発明は、本発明の抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質、および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物に関する。
【0025】
さらなる局面では、本特許請求される発明は、処置上有効な量の前記の薬学的組成物を、該薬学的組成物を必要とする患者に投与することを包含する癌の処置方法に関する。
【0026】
さらなる局面において、本発明は、処置上有効な量の免疫学的活性抗体を、該免疫学的活性抗体を必要とするヒト被験者に投与することを包含する、B細胞欠乏を基礎にした病原性自己抗体により全体的または部分的に引き起こされる自己免疫疾患を処置するための改良型方法であって、改良が上記のように調製されるADCCの増強を伴う処置上有効な量の抗体を投与することを包含する改良型方法に関する。好ましい実施形態では、抗体は、抗CD20抗体である。自己免疫疾患または障害の例としては、免疫媒介性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑および慢性特発性血小板減少性紫斑、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎(post−streptococcal nephritis)、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形紅斑、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェーゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎、炎症性応答(例えば乾癬および皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患);全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性結腸炎)に関連する応答;呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;結腸炎;糸球体腎炎;アレルギー症状(例えば湿疹および喘息)、ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症性応答を含むその他の症状;アテローム硬化症;白血球粘着不全症;慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);真性糖尿病(例えば1型真性糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的には結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および血管炎に見出されるサイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延性過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(寒冷グロブリン血症(cryoglobinemia)またはクームス陽性貧血が挙げられるが、これらに限定されない);重症筋無力症;抗原−抗体複合体媒介性疾患;抗腎糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート−イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多発性内分泌症;ライター病;スティッフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;特発性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫血小板減少症等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のこの局面において、本発明の抗体は、正常B細胞の血液を長期間枯渇させるために用いられる。
上記に加えて、本発明は、さらに以下の項目を提供する。
(項目1)
β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする少なくとも1つの核酸の発現によりFc媒介性細胞傷害性の増強を伴うポリペプチドを産生するよう操作された宿主細胞であって、該宿主細胞により産生される該ポリペプチドは、全抗体分子、抗体フラグメント、および免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質から成る群から選択され、ここで、該GnTIIIは、Fc領域中にバイセクト複合オリゴ糖を保有するポリペプチドと比較して、Fc領域中にバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖、あるいはそれらの混合物を保有する該ポリペプチドの割合を増大するのに十分な量で発現される、宿主細胞。
(項目2)
前記ポリペプチドがIgGまたはそのフラグメントである、項目1に記載の宿主細胞。
(項目3)
前記ポリペプチドがIgG1またはそのフラグメントである、項目1に記載の宿主細胞。
(項目4)
前記ポリペプチドがヒトIgGのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質である、項目1に記載の宿主細胞。
(項目5)
GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子が前記宿主細胞中に導入されている、項目1に記載の宿主細胞。
(項目6)
内因性GnTIII遺伝子が活性化されるよう操作されている、項目1に記載の宿主細胞。
(項目7)
前記内因性GnTIIIが宿主染色体中への遺伝子発現を増強するDNA要素の挿入により活性化されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目8)
内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目9)
CHO細胞変異体lec10である、項目8に記載の宿主細胞。
(項目10)
CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、Y0ミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞である、項目1に記載の宿主細胞。
(項目11)
前記ポリペプチドが抗CD20抗体である、項目10に記載の宿主細胞。
(項目12)
前記抗CD20抗体がIDEC−C2B8である、項目11に記載の宿主細胞。
(項目13)
SP2/0細胞である、項目10に記載の宿主細胞。
(項目14)
前記抗体がキメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250である、項目13に記載の宿主細胞。
(項目15)
GnTIIIをコードする前記少なくとも1つの遺伝子が前記宿主細胞染色体中に導入されている、項目5に記載の宿主細胞。
(項目16)
前記内因性GnTIIIは、前記宿主細胞染色体中へのプロモーター要素、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素の挿入により活性化されている、項目6に記載の宿主細胞。
(項目17)
抗体分子、抗体フラグメントまたは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸をさらに含む、項目1に記載の宿主細胞。
(項目18)
GnTIIIをコードする前記少なくとも1つの核酸が、構成プロモーター要素に作動可能に連結される、項目1に記載の宿主細胞。
(項目19)
項目17に記載の宿主細胞であって、該宿主細胞は、以下:抗CD20抗体、キメラ抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体chCE7、キメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体chG250、キメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体ING−1、ヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体3622W94、ヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体A33、GD3ガングリオシドR24に対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体、キメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体SF−25、抗ヒトEGFR抗体、抗ヒトEGFRvIII抗体、抗ヒトPSMA抗体、抗ヒトPSCA抗体、抗ヒトCD22抗体、抗ヒトCD30抗体、抗ヒトCD33抗体、抗ヒトCD38抗体、抗ヒトCD40抗体、抗ヒトCD45抗体、抗ヒトCD52抗体、抗ヒトCD138抗体、抗ヒトHLA−DR改変体抗体、抗ヒトEpCAM抗体、抗ヒトCEA抗体、抗ヒトMUC1抗体、抗ヒトMUC1コアタンパク質抗体、抗ヒト異常グリコシル化MUC1抗体、ED−Bドメインを含有するヒトフィブロネクチン改変体に対する抗体または抗ヒトHER2/neu抗体、をコードする少なくとも1つのトランスフェクトされた核酸を含む、宿主細胞。
(項目20)
宿主細胞中でのポリペプチドの産生方法であって、該方法は、Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で、項目1〜19のいずれか一項記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
(項目21)
Fc媒介性細胞傷害性の増強を伴う前記ポリペプチドを単離する工程をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記宿主細胞が、免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を含む、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記ポリペプチドのFc領域中の50%より多いオリゴ糖がバイセクトされる、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記ポリペプチドのFc領域中の70%より多いオリゴ糖がバイセクトされる、項目20に記載の方法。
(項目25)
Fc領域中のバイセクトハイブリッドオリゴ糖またはガラクトシル化複合オリゴ糖あるいはそれらの混合物の割合が、前記ポリペプチドのFc領域中のバイセクト複合オリゴ糖の割合より大きい、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記ポリペプチドは、抗CD20抗体IDEC−C2B8であり、前記宿主細胞により産生されるIDEC−C2B8抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図2Eに示されるものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記ポリペプチドは、chG250モノクローナル抗体であり、前記宿主細胞により産生される前記chG250抗体は、MALDI/TOF−MSにより分析した場合に、図7Dに示されるものと実質的に等価であるグリコシル化プロフィールを有する、項目20に記載の方法。
(項目28)
項目21に記載の方法により産生される抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う、抗体。
(項目29)
IDEC−C2B8、chCE7、ch−G250、ヒト化抗HER2モノクローナル抗体、ING−1、3622W94、SF−25、A33およびR24から成る群から選択される、項目28に記載の抗体。
(項目30)
免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、項目21に記載の方法により産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う、抗体フラグメント。
(項目31)
免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含み、かつ項目21に記載の方法により産生されるFc媒介性細胞傷害性の増強を伴う、融合タンパク質。
(項目32)
項目28に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目33)
項目30に記載の抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目34)
項目31に記載の融合タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目35)
項目32〜34のいずれか一項に記載の処置上有効な量の薬学的組成物を、該薬学的組成物を必要とする患者に投与する工程を包含する、癌の処置方法。
(項目36)
処置上有効な量の抗体を、該抗体を必要とするヒト被験者に投与するこ工程を包含する、B細胞欠乏を基礎にした疾患処置の改良型方法であって、該改良が、項目28に記載の方法により産生される処置上有効な量の抗体を投与する工程を包含する、改良型方法。
(項目37)
前記抗体が抗CD20モノクローナル抗体である、項目36に記載の改良型方法。
(項目38)
前記抗CD20抗体がIDEC−C2B8である、項目37に記載の改良型方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
用語は、別に定義しない限り、以下のように当該技術分野で一般的に用いられるように本明細書中で用いられる。
【0028】
本明細書中で用いる場合、「抗体」という用語は、全抗体分子、抗体フラグメント、あるいは免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質を包含するよう意図される。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリンのFc領域と等価の領域」という用語は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子改変体、ならびに置換、付加または欠失を生じるが抗体依存性細胞傷害性を媒介する免疫グロブリンの能力を実質的に低減しない変更を有する改変体を包含するよう意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸が、生物学的機能の実質的損失を伴わずに、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失され得る。このような改変体は、活性に及ぼす最小限の影響を有するよう、当該技術分野で公知の一般原則に従って選択され得る(例えばBowie,J.U.ら、Science 247:1306−10(1990)参照)。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ」という用語は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をいう。
【0031】
本明細書中で用いる場合、「操作する」、「操作された」、「操作」および「グリコシル化操作」という用語は、天然に存在するポリペプチドまたはそのフラグメントのグリコシル化パターンの任意の操作を包含するとみなされる。グリコシル化操作としては、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作(細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変更を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む)が挙げられる。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する、変異および細胞環境の影響を包含する。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「宿主細胞」という用語は、目的のタンパク質、タンパク質フラグメントまたはペプチド(抗体および抗体フラグメントを含む)の修飾グリコフォームを生じるよう操作され得る任意の種類の細胞系を網羅する。典型的には、宿主細胞は、最適化されたレベルのGnTIIIを発現するよう操作されている。宿主細胞としては、少数名前を挙げるとすれば、培養細胞(例えば哺乳動物培養細胞(例えばCHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞)、酵母細胞および昆虫細胞)が挙げられるが、トランスジェニック動物または培養組織内に含まれる細胞も挙げられる。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「Fc媒介性細胞傷害性」という用語は、抗体依存性細胞傷害性、ならびにヒトFc領域を含有する可溶性Fc融合タンパク質により媒介される細胞傷害性を包含する。Fc媒介性細胞傷害性は、「ヒト免疫エフェクター細胞」による「抗体標的化細胞」の溶解をもたらす免疫メカニズムであって、ここで、
「ヒト免疫エフェクター細胞」は、抗体またはFc融合タンパク質のFc領域と結合し、エフェクター機能を実施する、それらの表面上にFc受容体を提示する白血球の集団である。このような集団としては、末梢血単核球(PBMC)および/またはナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0034】
「抗体標的化細胞」は、抗体またはFc融合タンパク質により結合される細胞である。抗体またはFc融合タンパク質は、Fc領域に対してN末端側のタンパク質部分を介して標的細胞と結合する。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「Fc媒介性細胞傷害性の増強」という用語は、上記のFc媒介性細胞傷害性のメカニズムにより、標的細胞周囲の媒質中で、所定時間で、抗体またはFc融合タンパク質の所定濃度で溶解される「抗体標的細胞」の数の増大、および/またはFc媒介性細胞傷害性のメカニズムにより、所定時間で、「抗体標的細胞」の所定数の溶解を達成するのに必要とされる、標的細胞周囲の媒質中での、抗体またはFc融合タンパク質の濃度の低減と定義される。Fc媒介性細胞傷害性は、当業者に既知である同一の標準的な産生方法、精製方法、配合方法および貯蔵方法を用いて、同一型の宿主細胞により産生されるが、本明細書中に記載される方法によりグリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを発現するよう操作された宿主細胞によっては産生されたことがない、同一の抗体またはFc融合タンパク質により媒介される細胞傷害性に関連する。
【0036】
「抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を伴う抗体」とは、当業者に既知の任意の適切な方法により確定されるようなADCCの増強を伴う抗体を意味する。許容可能なインビトロADCCアッセイの1つを以下に示す:
1)本アッセイは、抗体の抗原結合領域により認識される標的抗原を発現することが既知である標的細胞を用いる。
【0037】
2)本アッセイは、エフェクター細胞として無作為に選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核球(PBMC)を用いる。
【0038】
3)本アッセイは、以下のプロトコールに従って実行される:
i)PBMCを、標準密度遠心分離法を用いて単離し、5×106細胞/mlでRPMI細胞培地中に懸濁する。
【0039】
ii)標的細胞を標準組織培養法により増殖させ、90%より高い成育可能度で指数増殖期から回収し、RPMI細胞培地中で洗浄し、100μキュリーの51Crで標識し、細胞培地で2回洗浄し、105細胞/mlの密度で細胞培地中に再懸濁する。
【0040】
iii)上記の最終標的細胞懸濁液100μlを、96ウエルマイクロタイタープレートの各ウエルに移す。
【0041】
iv)抗体を、細胞培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlに連続希釈し、得られた抗体溶液50μlを96ウエルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の全濃度範囲を網羅する種々の抗体濃度を三重反復試験する。
【0042】
v)最大放出(MR)コントロールに関しては、標識した標的細胞を含有するプレート中の3つの付加的ウエルに、抗体溶液(上記iv時点)の代わりに、非イオン性洗剤(Nonidet、Sigma,St.Louis)の2%(容量/容量)水溶液50μlを添加する。
【0043】
vi)自発性放出(SR)コントロールに関しては、標識した標的細胞を含有するプレート中の3つの付加的ウエルに、抗体溶液(上記iv時点)の代わりに、RPMI細胞培地50μlを添加する。
【0044】
vii)次に、96ウエルマイクロタイタープレートを50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートする。
【0045】
viii)PBMC懸濁液(上記i時点)50μlを各ウエルに添加して、25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、5%CO2大気下で37℃で4時間、インキュベーター中にプレートを入れる。
【0046】
ix)各ウエルから無細胞上清を回収し、ガンマ計数器を用いて実験的放出放射能(ER)を定量する。
【0047】
x)特異的溶解のパーセンテージを、式(ER−MR)/(MR−SR)×100(式中、ERはその抗体濃度に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)であり、MRは、MRコントロール(上記v時点参照)に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)であり、SRは、SRコントロール(上記vi時点参照)に関して定量された平均放射能(上記ix時点参照)である)に従って各抗体濃度に関して算定する。
【0048】
4)「ADCCの増強」とは、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増大、および/または上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の低減と定義される。ADCCの増強は、当業者に既知である同一の標準的な産生方法、精製方法、配合方法および貯蔵方法を用いて、同一型の宿主細胞により産生されるが、しかしグリコシルトランスフェラーゼGnTIIIを過剰発現するよう操作された宿主細胞によっては産生されたことがない同一の抗体により媒介される、上記のアッセイを用いて測定されるADCCに関連する。
【0049】
本明細書中で用いる場合、「抗CD20抗体」という用語は、典型的には、一般的にCD20と呼ばれるヒトBリンパ球限定分化抗原Bp35として示される35,000ダルトンの細胞表面非グリコシル化リンタンパク質を特異的に認識する抗体を意味するよう意図される。
【0050】
(グリコシル化パターンの変更が望ましいタンパク質Aをコードする核酸の同定および生成)
本発明は、グリコフォームの抗体または抗体フラグメント、あるいは抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体フラグメントを含む融合タンパク質の産生のための宿主細胞系の生成および使用の方法を提供する。標的エピトープの同定、ならびにグリコシル化パターンの変更が望ましい潜在的処置値を有する抗体の生成、ならびにそれらのそれぞれのコード核酸配列の単離は、本発明の範囲内である。
【0051】
当業界で既知の種々の手法は、当該エピトープを標的化するための抗体の産生に用いられ得る。このような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリにより産生されるフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、例えば診断薬または処置薬として有用であり得る。処置薬としては、中和抗体、すなわち、リガンド、基質またはアダプター分子と結合に関して競合するものが、特に好ましいものである。
【0052】
抗体の産生のために、当該標的タンパク質を注射することにより種々の宿主動物、例えばウサギ、マウス、ラット等(これらに限定されない)が免疫される。宿主種に応じて種々のアジュバントを、免疫学的応答を増強するために用いることができ、その例としては、フロイント(完全および不完全)アジュバント、無機質ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性剤(例えばリゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、サポニン、油乳剤、カギアナカサガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント(例えばBCG(bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvum)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
当該標的に対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いて調製され得る。これらの例としては、Kohler and
Milstein,Nature 256:495−97(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al., Immunology Today 4: 72(1983); Cote et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:2026−30
(1983))、およびEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77−96 (Alan R.Liss,Inc.,1985)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851−55(1984);Neuberger et al.,Nature 312:604−08(1984);Takeda et al.,Nature 314:452−54(1985))が用いられ得る。あるいは、一本鎖抗体の産生に関して記載された技法(米国特許第4,946,778号)が、所望の特異性を有する一本鎖抗体を産生するために適合され得る。
【0054】
当該標的タンパク質の特異的結合部位を含有する抗体フラグメントは、既知の技法で生成され得る。例えばこのようなフラグメントとしては、抗体分子のペプシン消化により産生され得るF(ab’)2フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され得るFabフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリが、当該標的タンパク質に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速且つ容易な同定を可能にするよう構築され得る(Huseら、Science 246: 1275−81(1989))。
【0055】
グリコシル化パターンの変更が望ましい抗体または抗体フラグメントが一旦同定されれば、当該技術分野で周知の技法を用いて、コード核酸配列が同定され、単離される。
【0056】
a.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質の産生のための細胞株の生成
本発明は、変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質の生成のための宿主細胞発現系を提供する。特に本発明は、改良された処置値を有するグリコフォームのタンパク質の生成のための宿主細胞系を提供する。したがって、本発明は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ、すなわちβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)の発現を増強するよう選択または操作された宿主細胞発現系を提供する。特に、このような宿主細胞発現系は、任意に構成的プロモーター
系または調節プロモーター系に作動可能に連結されるGnTIIIをコードする組換え核酸分子を含むように操作され得る。あるいは、GnTIIIを天然に産生し、産生するよう誘導され、かつ/または産生するよう選択される宿主細胞発現系が用いられ得る。
【0057】
特定の一実施形態において、本発明は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸を発現するよう操作された宿主細胞を提供する。一局面では、宿主細胞は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子を用いて形質転換されるかまたはトランスフェクトされる。代替的局面では、宿主細胞は、内因性GnTIIIが活性化されるような方法で操作および/または選択された。例えば、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有するよう選択され得る。特定の一実施形態では、宿主細胞はCHO lec10変異体である。あるいは、宿主細胞は、内因性GnTIIIが活性化されるよう操作され得る。さらに別の代替的実施形態では、宿主細胞は、内因性GnTIIIが構成的プロモーター要素、トランスポゾンまたはレトロウイルス要素の宿主細胞染色体中への挿入により活性化されるように操作される。
【0058】
一般に、任意の種類の培養細胞株が、本発明の宿主細胞株を操作するための背景として用いられ得る。好ましい実施形態では、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、あるいは昆虫細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するための背景細胞株として用いられる。
【0059】
本発明は、本明細書中に記載されたようなGnTIIIを発現する任意の操作された宿主細胞を包含するよう意図される。
【0060】
GnTIIIをコードする1つまたは複数の核酸は、構成的プロモーターの、あるいは調節された発現系の制御下で発現され得る。適切な調節化発現系としては、テトラサイクリン調節発現系、エクジソン誘導性発現系、lac−スイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性プロモーター系およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が挙げられるが、これらに限定されない。GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系内に含まれる場合、構成プロモーターの制御下で発現され得るものがある一方、調節プロモーターの制御下で発現されるものもある。最大発現レベルは、細胞増殖速度に有意の悪影響を及ぼさない安定GnTIII発現の最大限可能なレベルであると考えられ、ルーチン実験を用いて確定される。発現レベルは、当該技術分野で一般に既知である方法により、例えばGnTIII特異的抗体を用いるウエスタンブロット分析、GnTIII特異的核酸プローブを用いるノーザンブロット分析、あるいは酵素活性の測定により確定される。あるいは、GnTIIIの生合成産物と結合するレクチン、例えばE4−PHAレクチンが用いられ得る。さらなる代替例では、核酸はレポーター遺伝子に作動可能に連結されることができ、GnTIIIの発現レベルは、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することにより確定される。レポーター遺伝子は、単一mRNA分子として上記GnTIIIをコードする核酸(単数または複数)と一緒に転写されてもよく、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)のいずれかにより連結され得る。レポーター遺伝子は、単一ポリペプチド鎖が形成されるよう、上記GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。GnTIIIをコードする核酸は、GnTIIIをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に転写されるよう、単一プロモーターの制御下でレポーター遺伝子と作動可能に連結され得る。その結果生じるmRNAのうちの1つは上記レポータータンパク質に翻訳され、他のものは上記GnTIIIに翻訳される。
【0061】
GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が発現される場合、それらは、1つのまたは複数のmRNA分子として転写されるように配置され得る。それらが単一mRNA分子として転写される場合、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)のいずれかにより連結され得る。それらは、いくつかの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に単一プロモーターから転写され得、これは次に、それらのそれぞれのコードGnTIIIに翻訳される。
【0062】
その他の実施形態では、本発明は、抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う処置用抗体の生成のための宿主細胞発現系、およびFc媒介性細胞傷害性を促すために表面にIgG Fc領域を提示する細胞を提供する。一般に、宿主細胞発現系は、変更グリコフォームの産生が望ましい抗体をコードする核酸を、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に発現するよう操作および/または選択されている。一実施形態では、宿主細胞系は、GnTIIIをコードする少なくとも1つの遺伝子をトランスフェクトされる。典型的には、トランスフェクト細胞は、GnTIIIを安定に発現するクローンを同定し、単離するよう選択される。別の実施形態では、宿主細胞は、内因性GnTIIIの発現のために選択されている。例えば、そうでなければサイレントGnTIIIの発現を誘発する突然変異を保有する細胞が選択され得る。例えば、CHO細胞は、ある種の変異体において、例えば変異体Lec10において活性であるサイレントGnTIII遺伝子を保有することが既知である。さらに、調節プロモーターまたは構成性プロモーターの挿入、トランスポゾン、レトロウイルス要素等の使用を含む当該技術分野で既知の方法を、サイレントGnTIIIを活性化し得る。遺伝子ノックアウト技術の使用、あるいはリボサイム法の使用はまた、宿主細胞のGnTIII発現レベルを調整するために用いることができるため、本発明の範囲内である。
【0063】
任意の種類の培養細胞株を、本発明の宿主細胞株を操作するためのバックグラウンドとして用いることができる。好ましい実施形態では、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞または昆虫細胞が用いられ得る。典型的には、このような細胞株は、全抗体分子、抗体フラグメント、または免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質をコードする少なくとも1つのトランスフェクト核酸をさらに含むよう操作される。代替的実施形態では、当該特定の抗体を発現するハイブリドーマ細胞株が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためのバックグラウンド細胞株として用いられる。
【0064】
典型的には、宿主細胞系における少なくとも1つの核酸は、GnTIIIをコードする。
【0065】
GnTIIIをコードする1つまたは複数の核酸は、構成プロモーターの、あるいは調節発現系の制御下で発現され得る。適切な調節発現系としては、テトラサイクリン調節発現系、エクジソン誘導性発現系、lac−スイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性プロモーター系およびメタロチオネイン金属誘導性発現系が挙げられるが、これらに限定されない。GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系内に含まれる場合、構成プロモーターの制御下で発現され得るものがある一方、調節プロモーターの制御下で発現されるものもある。最大発現レベルは、細胞増殖速度に重大な悪影響を及ぼさない安定GnTIII発現の最大限レベルであると考えられ、日常的な実験を用いて確定される。発現レベルは、当該技術分野で一般に既知である方法(GnTIII特異的抗体を用いるウエスタンブロット分析、GnTIII特異的核酸プローブを用いるノーザンブロット分析、あるいはGnTIIIの酵素活性の測定を含む)により確定される。あるいは、GnTIIIの生合成産物に結合するレクチン、例えばE4−PHAレクチンが用いられ得る。さらなる代替例では、核酸はレポーター遺伝子に作動可能に連結されることができ、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼの発現レベルは、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することにより確定される。レポーター遺伝子は、単一mRNA分子として上記糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸と一緒に転写されてもよく、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)により連結され得る。レポーター遺伝子は、単一ポリペプチド鎖が形成されるよう、GnTIIIをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。GnTIIIをコードする核酸は、GnTIIIをコードする核酸およびレポーター遺伝子が、2つの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に転写されるよう、単一プロモーターの制御下でレポーター遺伝子と作動可能に連結され得る。その結果生じるmRNAのうちの1つは上記レポータータンパク質に翻訳され、他のものは上記GnTIIIに翻訳される。
【0066】
GnTIIIをコードするいくつかの異なる核酸が発現される場合、それらは、1つまたは複数のmRNA分子として転写されるように配置され得る。それらが単一mRNA分子として転写される場合、それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)により、またはキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)により連結され得る。それらは、いくつかの別個のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に代替的にスプライシングされるRNA分子に単一プロモーターから転写され、これは次に、それらのそれぞれのコードGnTIIIに翻訳される。
【0067】
(i.発現系)
当業者に既知である方法を用いて、目的のタンパク質のコード配列、ならびにGnTIIIおよび適切な転写/翻訳制御シグナルのコード配列を含有する発現ベクターを構築し得る。これらの方法としては、組換えDNA法、合成法およびインビボ組換え/遺伝子組換えが挙げられる(例えば、Maniatisら、Molecular Cloning
A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989)およびAusubelら、Current
Protocols in Molecular Biology,Greene Pubulishing AssociatesおよびWiley Interscience,N.Y.(1989)に記載された技法を参照)。
【0068】
種々の宿主発現ベクター系が、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を発現するために利用され得る。好ましくは哺乳動物細胞は、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞系として用いられる。最も好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、あるいは昆虫細胞が宿主細胞系として用いられる。代替的な実施形態では、その他の真核生物宿主細胞系、(目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞;目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは二重微小染色体(例えばマウス細胞株)中で安定に増幅される(CHO/dhfr)かまたは不安定に増幅される、目的のタンパク質をコードするDNAの多重コピーおよびGnTIIIのコード配列を含有するよう操作された細胞株を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染した動物細胞系を含む)が意図され得る。
【0069】
本発明の方法については、安定発現は、一般的に、典型的にはより再現可能な結果が得られ、かつ大規模生成もより容易であるので、一過性発現のために好ましい。ウイルスの複製起源を含有する発現ベクターを用いるよりむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)、および選択可能マーカーにより制御されるそれぞれのコード核酸で形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作された細胞は栄養強化(enriched)培地中で1〜2時間増殖させられ、次に選択培地に切り替えられ得る。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、それらの染色体中にプラスミドを安定的に組み込み、増殖して増殖巣を形成し、これが次にクローニングされて細胞株に増大され得る細胞の選択を可能にする。
【0070】
以下の多くの選択系、が用いられ得るが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026(1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、Cell 22:817(1980))(これらはtk−細胞、hgprt−細胞またはaprt―細胞のそれぞれにおいて用いられ得る)。代謝拮抗物質耐性も、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA 77:3567(1989);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸(mycophenolic acid)に対する耐性を付与するgpt遺伝子(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo遺伝子(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981));およびヒグロマイシンに対する耐性を付与するhygro遺伝子(Santerreら、Ggne 30:147(1984))に対する選択の基礎として用いられ得る。近年、さらに別の選択可能遺伝子、すなわちトリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させるtrpB;ヒスチジンの代わりにヒスチノールを細胞に利用させるhisD(Hartman & Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047(1988));グルタミンシンターゼ系;およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue,in:Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編(1987))が記載されている。
【0071】
(ii.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質を発現するトランスフェクト体または形質転換体の同定)
コード配列を含有し、生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、少なくとも4つの一般的アプローチにより同定され得る;(a)DNA−DNAハイブリダイゼーションまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在;(c)宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写体の発現により測定した場合の転写のレベルの評価;および(d)イムノアッセイにより、またはその生物学的活性により測定した場合の遺伝子産物の検出。
【0072】
第一のアプローチでは、発現ベクター中に挿入された目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列の存在は、それぞれのコード配列とそれぞれが相同であるヌクレオチド配列、あるいはその一部分または誘導体を含むプローブを用いる、DNA−DNAハイブリダイゼーションまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションにより検出され得る。
【0073】
第二のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系は、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキセートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成等)の存在または非存在に基づいて、同定および、選択され得る。例えば、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、それぞれのコード配列を含有する組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在により同定され得る。あるいは、マーカー遺伝子は、コード配列の発現を制御するために用いられる同一のまたは異なるプロモーターの制御下でコード配列と縦列に配置され得る。誘導または選択に応答するマーカーの発現は、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列の発現を示す。
【0074】
第三のアプローチでは、目的のタンパク質のコード領域およびGnTIIIのコード配列についての転写活性は、ハイブリダイゼーションアッセイにより評価され得る。例えば、目的のタンパク質のコード配列およびGnTIIIのコード配列と相同なプローブまたはその特定部分を用いたノーザンブロットにより、RNAが単離され、分析され得る。あるいは、宿主細胞の全核酸が抽出され、このようなプローブとのハイブリダイゼーションについてアッセイされ得る。
【0075】
第四のアプローチでは、目的のタンパク質およびGnTIIIのコード配列のタンパク質産物の発現は、例えばウエスタンブロット、イムノアッセイ(例えば、放射免疫沈降法、酵素結合イムノアッセイ等)により、免疫学的に評価され得る。しかしながら、発現系の成功の最終試験は、生物学的に活性な遺伝子産物の検出を包含する。
【0076】
(b.変更されたグリコシル化パターンを有するタンパク質およびタンパク質フラグメントの生成および使用)
(i.抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う抗体の生成および使用)
好ましい実施形態において、本発明は、抗体依存性細胞傷害性の増強を伴うグリコフォームの抗体および抗体フラグメントを提供する。
【0077】
いくつかの種類の癌の処置のための非結合モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験は、近年、励みになる結果をもたらした(Dillman,Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997);Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。キメラ非結合IgG1は、低級または濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫に関して認可された(Dillman,Cancer Biother.& Radiopharm.12:223−25(1997))が、別の非結合mAb、ヒト化IgG1ターゲッティング固形乳房腫瘍もまた、III期臨床試験において有望な結果を示している(Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。これら2つのmAbの抗原は、それぞれの腫瘍細胞中で高く発現され、抗体はインビトロおよびインビボエフェクター細胞による強力な腫瘍破壊を媒介する。これに対比して、良好な腫瘍特異性を有する多くの他の非結合mAbは、臨床的に有用であるほど十分な効力を有するエフェクター機能を誘発し得ない(Frostら、Cancer 80:317−33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996))。これらの弱いmAbのいくつかについて、サイトカインによる補助処置(adjunct cytokine therapy)が現在試験されている。サイトカインの添加により、循環リンパ球の活性および数を高めることにより、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を刺激することができる(Frostら、Cancer 80:317−33(1997)Surfusら、J.Immunother.19:184−91(1996))ADCC(抗体標的細胞上での溶解性攻撃)は、白血球受容体と抗体の定常領域(Fc)との結合の際に誘発される(Deoら、Immunology Today 18:127(1997))。
【0078】
非結合IgG1のADCC活性を増強するための異なるが相補的な手法は、リンパ球受容体(FcγR)に対するその親和性を増強するよう抗体のFc領域を操作することである。タンパク質操作試験は、FcγRがIgG CH2ドメインのより低いヒンジ領域と相互作用することを示した(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。しかし、FcγR結合は、CH2領域中の保存Asn297に共有結合されたオリゴ糖の存在も要する(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996);WrightおよびMorrison、Trends Biotech.15:26−31(1997))が、このことは、オリゴ糖およびポリペプチドがともに相互作用部位に直接関与することを、あるいは活性CH2ポリペプチド立体配座を保持するためにオリゴ糖が必要であることを示唆する。したがって、オリゴ糖構造の改変は、相互作用の親和性を増強するための一手段として検討され得る。
【0079】
IgG分子は、各重鎖上に1つずつ、そのFc領域中に2つのN結合型オリゴ糖を保有する。任意の糖タンパク質として、抗体は、同一ポリペプチド骨格を共有するが、グリコシル化部位に結合された異なるオリゴ糖を有する、グリコフォームの一集団として産生される。血清IgGのFc領域中に通常見出されるオリゴ糖は、複合ビアンテナリ型のものであって(Wormaldら、Biochemistry 36:130−38(1997))、低レベルの末端シアル酸およびバイセクトN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ならびに種々の程度の末端ガラクトシル化およびコアフコシル化を伴う。FcγR結合に必要とされる最小糖質構造は、オリゴ糖コア内に存在することをいくつかの試験が示唆している(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。末端ガラクトースの除去は、ADCC活性を約2分の1に低減するが、これは、FcγR受容体結合におけるこれらの残基に関する役割を示す(Lundら、J.Immunol.157:4963−69(1996))。
【0080】
非結合体化型処置用mAbの産生のために工業的および学究的に用いられるマウス由来細胞株またはハムスター由来細胞株は、通常は、必要なオリゴ糖決定基をFc部位に結合する。しかしこれらの細胞株中で発現されるIgGは、血清IgG中に少量で見出されるバイセクトGlcNAcを欠く(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。対照的に、ラットミエローマ産生ヒト化IgG1(CAMPATH−1H)は、そのグリコフォームのいくつかでバイセクトGlcNAcを保有することが近年観察された(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。ラット細胞由来抗体は、標準細胞株中に産生されるCAMPATH−1H抗体と同様のインビトロでのADCC活性に達するが、抗体濃度は有意に低い。
【0081】
CAMPATH抗原は、通常はリンパ腫細胞上に高レベルで存在し、このキメラmAbはバイセクトGlcNAcの非存在下で高ADCC活性を有する(Lifelyら、Glycobiology 318:813−22(1995))。N結合型グリコシル化経路では、バイセクトGlcNAcは、酵素β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)に付加される(Schachter、Biochem.Cell Biol.64:163−81(1986))。
【0082】
本発明者らは、異なるレベルのクローン化GnTIII遺伝子を、外部調節様式で発現するよう予め操作された単一抗体産生CHO細胞株を用いた。この手法は、GnTIIIの発現と改変された抗体のADCC活性との間の強い相関を最初に確定した。
【0083】
本発明者らは、以前に、開示された方法により改変されたC2B8抗体が、同一の細胞培養および精製条件下で産生された標準非改変C2B8抗体の約16倍のADCC活性を有する、ということを示した。要するに、GnTIII発現を示さないCHO−tTA−C2B8細胞中で発現されたC2B8抗体サンプルは、ヒトリンパ球によるSB細胞(CD20+)のインビトロでの溶解物として測定される、約31%(1μg/mlの抗体濃度で)の細胞傷害活性を示した。対照的に、基本的高抑制レベルでGnTIIIを発現するCHO細胞培養由来のC2B8抗体は、1μg/mlの抗体濃度で、同一抗体濃度のコントロールに対してADCC活性の33%増を示した。さらに、GnTIIIの発現増強は、同一抗体濃度でのコントロールと比較して、最大ADCC活性のほぼ80%という大きい増加(1μg/mlの抗体濃度で)を生じた(国際公開番号WO99/54342参照)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)。
【0084】
抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う本発明のさらに他の抗体としては、本発明の方法により産生される抗ヒト神経芽細胞腫モノクローナル抗体(chCE7)、本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト腎細胞癌モノクローナル抗体(ch−G250)、本発明の方法により産生されるヒト化抗HER2モノクローナル抗体(例えばトラスツズマブ(HERCEPTIN))、本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト結腸、肺および乳癌モノクローナル抗体(ING−1)、本発明の方法により産生されるヒト化抗ヒト17−1A抗原モノクローナル抗体(3622W94)、本発明の方法により産生されるヒト化抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33)、本発明の方法により産生されるGD3ガングリオシドに対して向けられる抗ヒト黒色腫抗体(R24)、ならびに本発明の方法により産生されるキメラ抗ヒト扁平上皮細胞癌モノクローナル抗体(SF−25)、本発明の方法により産生される抗ヒト小細胞肺癌モノクローナル抗体(BEC2、ImClone Systems,Merck KgaA)、本発明の方法により産生される抗ヒト非ホジキンリンパ腫モノクローナル抗体(Bexxar(トシツモマブ(tositumomab)、Coulter Pharmaceuticals)、オンコリム(Oncolym)(Techniclone,Alpha Therapeutic))、本発明の方法により調製される抗ヒト扁平上皮細胞頭頚部癌モノクローナル抗体(C225、ImClone Systems)、本発明の方法により調製される抗ヒト直腸および結腸癌モノクローナル抗体(Panorex(エドレコロマブ(edrecolomab))、Centocor,Glaxo Wellcome)、本発明の方法により産生される抗ヒト卵巣癌モノクローナル抗体(テラギン(Theragyn)、Antisoma)、本発明の方法により産生される抗ヒト急性骨髄性白血病モノクローナル抗体(Smart M195、Protein Design Labs、Kanebo)、本発明の方法により産生される抗ヒト悪性神経膠腫モノクローナル抗体(Cotara、Techniclone,Cambridge Antibody Technology)、本発明の方法により産生される抗ヒトB細胞非ホジキンリンパ腫モノクローナル抗体(IDEC−Y2B8、IDEC Pharmaceuticals)、本発明の方法により産生される抗ヒト固形腫瘍モノクローナル抗体(CEA−Cide、Immunomedics)、本発明の方法により産生される抗ヒト結腸直腸癌モノクローナル抗体(ヨウ素131−MN−14、Immunomedics)、本発明の方法により産生される抗ヒト卵巣、腎臓、乳房および前立腺癌モノクローナル抗体(MDX−210、Medarex,Novartis)、本発明の方法により産生される抗ヒト結腸直腸および膵臓癌モノクローナル抗体(TTMA、Pharmacie & Upjohn)、本発明の方法により産生される抗ヒトTAG−72発現癌モノクローナル抗体(MDX−220、Medarex)、本発明の方法により産生される抗ヒトEGFr発現癌モノクローナル抗体(MDX−447)、本発明の方法により産生される抗VEGFモノクローナル抗体(Genentech)、本発明の方法により産生される抗ヒト乳房、肺、前立腺および膵臓の癌および悪性黒色腫モノクローナル抗体(BrevaRex、AltaRex)、ならびに本発明の方法により産生される抗ヒト急性骨髄性白血病モノクローナル抗体(モノクローナル抗体結合体、Immunex)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、免疫グロブリンのFc領域と等価である領域を含む抗体フラグメントおよび融合タンパク質に関する。
【0085】
(ii.Fc媒介性細胞傷害性を促す免疫グロブリンのFc領域と等価の領域を含む融合タンパク質の生成および使用)
上記のように、本発明は、処置用抗体のADCC活性を増強するための方法に関する。これは、このような抗体のFc領域のグリコシル化パターンを操作することにより、特にそれらのFc領域の保存グリコシル化部位にN結合されるバイセクト複合オリゴ糖およびバイセクトハイブリッドオリゴ糖を保有する抗体分子の割合を最大にすることにより、達成される。この戦略は、処置用抗体によってだけでなく、免疫グロブリンのFc領域と等価である領域を保有する任意の分子により媒介される望ましくない細胞に対するFc媒介性細胞傷害性を増強するために適用され得るが、これは、グリコシル化の操作により導入される変化が、Fc領域のみに、したがってADCCメカニズムに関与するエフェクター細胞の表面のFc受容体とのその相互作用に、影響を及ぼすためである。本明細書に開示された方法が適用され得るFc含有分子としては、(a)Fc領域のN末端に融合されたターゲッティングタンパク質ドメインから作製される可溶性融合タンパク質(ChamovおよびAshkenazi,Trends Biotech.14:52(1996))、および(b)Fc領域のN末端に融合された原形質膜に局在化されるII型膜貫通ドメインから作製される原形質膜固定融合タンパク質(Stabila,P.F.,Nature Biotech.16:1357(1998))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
可溶性融合タンパク質(a)の場合、ターゲッティングドメインは、望ましくない細胞、例えば癌細胞との融合タンパク質の結合を指向する(すなわち処置用抗体と同様の様式である)。したがって、これらの分子により媒介されるFc媒介性細胞性細胞毒活性を増強するためのここに開示された方法の適用は、処置用抗体に適用される方法と同一である。
【0087】
膜固定融合タンパク質(b)の場合、身体中の望ましくない細胞は、融合タンパク質をコードする遺伝子を発現しなければならない。これは、遺伝子療法の手法により、すなわち望ましくない細胞に対して融合タンパク質コード遺伝子の発現を指向するプラスミドまたはウイルスベクターを用いて、インビボで細胞をトランスフェクトすることによってか、あるいはそれらの表面に融合タンパク質を発現するよう遺伝的に操作された細胞の身体中への移植により、達成され得る。後者の細胞は、普通は、ポリマーカプセル内で身体に移殖される(カプセル化細胞療法)が、この場合、それらはFc媒介性細胞傷害性メカニズムにより破壊され得ない。しかし、カプセル装置が故障すると、漏出細胞は望ましくないものになり、次いでそれらはFc媒介性細胞傷害性により排除され得る(Stabilaら、Nature Biotech.16:1357(1998))。この場合、GnTIIIの適切または最大発現レベルを指向する付加的遺伝子発現カセットを遺伝子療法ベクター中に組み入れることによってか、あるいは適切または最大レベルのGnTIIIを発現するために移殖されるよう細胞を操作することにより、本明細書中に開示された方法が適用される。両方の場合、開示された方法の目的は、バイセクト複合オリゴ糖および/またはバイセクトハイブリッドオリゴ糖を保有する表面提示Fc領域の割合を増大するかまたは最大にすることである。
【0088】
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明する。以下の調製物および実施例は、当業者に本発明をより明確に理解させ、本発明を実施させるために示している。しかし、本発明は、本発明の単一の態様の説明として意図されているに過ぎない例示的実施形態の範囲内に限定されず、機能的に等価である方法は、本発明の範囲内である。実際、本明細書中に記載されたものの他の本発明の種々の修正は、上記の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。このような修正は、添付の特許請求の範囲内であるよう意図される。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
(IDEC−CEB8産生細胞株のグリコシル化操作により得られる、増強された抗体依存性細胞傷害性を有する、キメラ抗CD20抗体IDEC−C2B8の新規バージョン)
IDEC−C2B8のVHおよびVLのコード領域の合成ならびに哺乳動物発現ベクターの構築。IDEC−C2B8抗体のVHおよびVL領域をコードするcDNAを、PCRを用いて、一段階法で、一組の重複一本鎖オリゴヌクレオチドから構築した(Kobayashi,N.ら、Biotechniques 23:500−503(1997))。国際公開特許出願(国際公開番号WO94/11026)から、IDEC−C2B8
VLおよびVHをコードするオリジナル配列データを得た。構築されたVLおよびVHcDNAフラグメントをpBluescriptIIKS(+)にサブクローニングし、配列決定して、オリジナルアミノ酸残基配列を変更せずに、可変領域および定常領域接合部に導入された独特の制限部位を用いて、それぞれヒト定常軽鎖(Igκ)および重鎖(IgG1)cDNAへの連結により直接結合した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Reff,M.E.ら、Blood 83:435−445(1994))。各完全長cDNAをpcDNA3.1(+)(Invitrogen,Leek,The Netherlands)に個別にサブクローニングし、キメラC2B8軽鎖(pC2B8L)および重鎖(pC2B8H)に関する哺乳動物発現ベクターを得た。
【0090】
異なるレベルのGnTIIIを発現するCHO細胞中でのIDEC−C2B8の産生。2つのCHO細胞株、すなわち培地中のテトラサイクリン濃度に依存して異なるレベルのGnTIIIを発現するCHO−tet−GnTIII;およびGnTIIIを発現しない親細胞株であるCHO−tTAの確立は、以前に記載されている(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Umana,P.ら、Biotechnol.Bioeng.65:542−549(1999))。リン酸カルシウム法を用いて、各細胞株に、ベクターpC2B8L、pC2B8HおよびpZeoSV2(+)(ゼオシン(Zeocin)耐性に関して;Invitrogen,Leek,The Netherlands)を同時トランスフェクトした。ゼオシン耐性クローンを96ウエルプレートに移して、ヒト定常領域に特異的なELISAアッセイを用いて、IDEC−C2B8産生に関してアッセイした(4)。選定クローン(CHO−tet−GnTIII−C2H8)の並行培養から3つのIDEC−C2B8サンプルを得て、テトラサイクリン濃度のみを変えて、培地に添加した(それぞれ25ng/mL、50ng/mLおよび2000ng/mL)。培養上清を後期対数期に回収した。同一条件下で、しかし培地にテトラサイクリンを添加せずに培養したCHO−tTA由来クローンであるCHO−tTA−C2B8から、さらに別の抗体サンプルを得た。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより抗体サンプルを培地から精製し、上記のように陽イオン交換カラムで緩衝液をPBSに交換した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。標準として用いられるリツキシマブを有するMolecular Probes製の蛍光ベースのキット(Leiden The Netherlands)を用いて、抗体濃度を測定した。
【0091】
間接的免疫蛍光法。CD20陽性細胞(SB細胞;ATCC寄託番号ATCC CCL120)およびCD20陰性細胞(HSB細胞;ATCC寄託番号ATCC CCL120.1)を各々、ハンクス平衡塩溶液(GibcoBRL,Basel,Switzerland)中の2.5μg/mlのCHO−tet−GnTIII由来IDEC−C2B8抗体、および2%ウシ血清アルブミン分画V(Roche Diagnostics,Rotkreuz,Switzerland)(HBSSB)とともに1時間インキュベートした。陰性コントロールとして、HBSSBをC2B8抗体の代わりに用いた。FITC結合体化抗ヒトFcポリクローナル抗体を、全サンプルに関して、二次抗体(SIGMA,St Louis)として用いた。ライカ蛍光顕微鏡(Wetzlar,Germany)を用いて、細胞を検査した。
【0092】
MALDI/TOF−MSによるオリゴ糖プロファイリング 上記(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))のように、C2B8抗体サンプル、MabTheraTM(リツキシマブの欧州等価物;R.Stahel,Universitatspital,Switzerlandの御厚意により得た)、C2B8−25t、C2B8−50t、C2B8−2000tおよびC2B8−nt(各々100μg)から、中性N結合型オリゴ糖を得た。要するに、抗体サンプルをまず、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ(Oxford Glycosciences,Abingson,UK)で処理して、いかなるシアル酸単糖残基をも除去した。次に、ペプチド−N−グリコシダーゼF(Oxford Glycosciences)を用いて、中性N結合型オリゴ糖を脱シアリル化抗体サンプルから放出し、微小カラムを用いて精製して、Elite Voyager 400分光計(Perseptive Biosystems,Farmingham,MA)でMALDI/TOF−MSにより分析した。
【0093】
ADCC活性アッセイ。フィコール−パック(Ficoll−Paque)(Pharmacia Biotech,Deubendorf,Switzerland)勾配上での遠心分離により、ヘパリン処理新鮮ヒト血液(全実験において、同一健常ドナーから得た)から末梢血単核球(PBMC)を分離した。プラスチック接着により、PBMC(エフェクター)から単球を枯渇させた。CD20陽性SB(標的)細胞を、37℃で、100μCi51Cr(Amersham,Deubendorf,Switzerland)を用いて90分間標識し、RPMI(GibcoBRL,Basel,Switzerland)中で2回洗浄して、105細胞/mlの濃度で再懸濁させた。RPMI培地中に希釈したC2B8mAb 50μlを、96ウエル丸底マイクロタイタープレート(Greiner,Langenthal,Switzerland)中の100μlのSB細胞(10,000細胞/ウエル)に添加し、50×gで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートした。その後、エフェクター細胞(RPMI培地中に2×107細胞/mlで懸濁)50μlを各96ウエルに添加して、最終E:T比100を得た。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、Skatron回収システム(Skatron Instruments,Sterling,VA)を用いて回収し、コブラ(Cobra)05005γ計数器(Canberra Packard,Meriden,CT)で計数した(ER、実験的放出)。C2B8mAbの代わりに、それぞれ100μlの1%Nonidet(Sigma,St Louis)または100μlのRPMI培地を100μlの標識標的細胞に添加することにより、最大(MR)および自発性放出(SR)を得た。データポイントはすべて、三連で実施した。以下の式:(ER−SR)/(MR−SR)×100を用いて、特異的溶解(%)を算定した。
【0094】
(結果および考察)
IDEC−C2B8の産生および特異的抗原結合の立証。GnTIIIの安定テトラサイクリン調節発現およびIDEC−C2B8の安定構成性発現を示すCHO−tet−GnTIII細胞を確立し、一組の抗体サンプルの産生のためにスケールアップした。スケールアップ中、同一クローンからの並行培養を、3つの異なるテトラサイクリン濃度、25ng/ml、50ng/mlおよび2000ng/ml下で増殖させた。これらのレベルのテトラサイクリンは、異なるレベルのGnTIIIおよびバイセクトオリゴ糖を生じることが以前に示されている(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999);Umana,P.ら、Biotechnol.Bioeng.65:542−549(1999))。GnTIIIを発現しないC2B8産生コントロール細胞株も確立し、CHO−tet−GnTIIIの3つの並行培養に関するのと同一条件下で培養した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー後、SDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色により、mAb純度を95%より高いと概算した。それらの産生のために培養培地に添加されたテトラサイクリン濃度に従い、サンプルを以下のように命名した:C2B8−25t、C2B8−50t、C2B8−2000tおよびC2B8−nt(すなわち非バイセクトコントロールに関しては無テトラサイクリン)。サンプルC2B8−25tは、CD20陽性細胞およびCD20陰性細胞を用いた間接的免疫蛍光法により、特異的抗原結合を示したが(図1)、これは、合成VLおよびVHの遺伝子フラグメントが機能的に誤りがなかったことを示す。
【0095】
MALDI/TOF−MSを用いたオリゴ糖プロファイリング 放出中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSにより、各抗体サンプルのグリコシル化プロフィールを分析した。この技法では、異なる質量のオリゴ糖は、スペクトルにおいて別個のピークとして現れ、それらの割合は、相対的ピーク高により定量的に反映される(Harvey,D.J.,Rapid Common Mass Spectrom.7:614−619(1993);Harvey,D.J.ら、Glycoconj J.15:333−338(1998))。オリゴ糖構造は、それらの予測分子量、同一宿主中で産生されるIgGI mAb由来のオリゴ糖に関する過去の構造データ、ならびにN結合型オリゴ糖生合成経路に関する情報に基づいて異なるピークに割り当てられた。
【0096】
GnTIII発現レベル(すなわちテトラサイクリン濃度)と異なる抗体サンプルから得られるバイセクト(bisected)オリゴ糖の量との間に、明らかな相関が見出された。予測どおり、GnTIIIを発現しない宿主から得られるMabTheraTMおよびC2B8−ntは、バイセクトオリゴ糖を保有しなかった(図2Aおよび2B)。これに対比して、バイセクト構造は、サンプルC2B8−2000t中で、すなわちGnTIII発現の基底レベルで、オリゴ糖プールの約35%までに達した。この場合、主なバイセクトオリゴ糖ピークは複合型であり、m/z1689およびm/z1851のピークに明確に割り当てられた(図2C)。次のより高いGnTIII発現レベル、サンプルC2B8−50tは、約20%のこれらのピーク(m/z1705およびm/z1861でのそれらの会合カリウム付加物を含む)の増大をもたらした。この増大は、それぞれm/z1486およびm/z1648でのそれらの非バイセクト等価物の同時低減を伴った(図2D)。最高GnTIII発現レベルでは、GnTIII、m/z1486に関する主基質であるサンプルC2B8−25tは、ほぼベースラインレベルに低減したが、複合バイセクト構造(m/z1689および1851)は、m/z1664、1810および1826でのピークの増大を有利に低減した(図2E)。これらのピークは、バイセクトハイブリッド化合物、ガラクトシル化複合オリゴ糖、または両方の混合物に割り当てられ得る。しかしながら、GnTIII過剰発現は経路の初期段階での生合成の流れを方向転換し得るので、それらの相対的増加は、バイセクトハイブリッド化合物の蓄積と一致する(図3Aおよび3B参照)。バイセクトオリゴ糖構造(複合型およびハイブリッド型)の量は、このサンプルに関しては約80%に達した。
【0097】
(IDEC−C2B8グリコシル化改変体のADCC活性)
異なるC2B8mAbグリコシル化改変体を、CD20陽性SB細胞のインビトロ溶解として測定したADCC活性について比較した。GnTIIIを欠いている親細胞株由来の、さらに別のmAbサンプルであるC2B8−ntも試験した。基底GnTIII発現レベルで産生され、低レベルのバイセクトオリゴ糖を保有するサンプルC2B8−2000tは、C2B8−tよりわずかに活性であった(図4A)。GnTIII発現の次に高いレベルでは、サンプルC2B8−50tはほぼ等レベルのバイセクトオリゴ糖および非バイセクトオリゴ糖を保有したが、有意により高い標的細胞溶解を媒介しなかった。しかしながら、最低テトラサイクリン濃度では、80%までのバイセクトオリゴ糖構造を含有するサンプルC2B8−25tは、全抗体濃度範囲で、残りのサンプルより有意に活性であった。C2B8−25tは10分の1の抗体濃度で、サンプルC2B8−ntの最大レベルのADCC活性に達した(図4A)。サンプルC2B8−25tは、コントロールに関しての最大ADCC活性の有意の増強も示した(50%対30%溶解)。
【0098】
最高比率のバイセクトオリゴ糖を保有するサンプルC2B8−50tおよびC2B8−25tを、欧州で一般に販売されているRituxanTMのバージョンであるMabtheraTMのADCC活性とさらに比較した(図4B)。サンプルC2B8−50tは活性のわずかな増強を示したが、サンプルC2B8−25tは、全抗体濃度でMabtheraTMより明らかに性能がよかった。マブテラ(商標)の最大ADCC活性に達するにはC2B8−25tの約5〜10分の1の濃度が必要であり、C2B8−25tの最大活性は、MabtheraTMより約25%高かった。
【0099】
これらの結果は、一般に、C2B8抗体のインビトロADCC活性がFc領域中にバイセクトオリゴ糖を保有する分子の割合と相関することを示す。低ベースラインレベルのADCC活性を有する抗体であるchCE7の場合、活性の有意な増強は天然に存在する抗体で見出されるレベルを上回るバイセクトオリゴ糖の画分を増大することにより得られる、ということをわれわれは以前に報告した(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。同じことは、バイセクトオリゴ糖の非存在下で高ADCC活性をすでに有するC2B8mAbに当てはまる。しかしながらchCE7の場合、ADCC活性の非常に大きい増強が、バイセクトオリゴ糖が主として複合型のものであるGnTIII発現のレベルで観察された(Umana,P.ら、Nat Biotechnol.17:176−180(1999))。強力なC2B8mAbに関しては、活性のこのような大きい増加は、研究したGnTIII発現の最高レベルで観察されただけあったが、この場合、バイセクトオリゴ糖は主にハイブリッド型に転じていた(図2)。両mAbに関して、最高活性を有するサンプルは、非バイセクトオリゴ糖よりかなり高レベルのバイセクトオリゴ糖を有した。これらの観察はともに、おそらくは複合およびハイブリッドのバイセクトオリゴ糖がともにADCC活性に重要であることを示す。
【0100】
複合オリゴ糖およびハイブリッドオリゴ糖の両方において、バイセクトGlcNAcはオリゴ糖立体配座の大きい変化をもたらす(Balaji,P.V.ら、Int.J.Biol.Macromol.18:101−114(1996))。変化は、CH2ドメインにおいてポリペプチドと広範に相互作用するオリゴ糖の一部で起こる(Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998))。ポリペプチドはこの位置では比較的柔軟性であるため(Jefferis,R.ら、Immunol Rev.163:59−76(1998))、バイセクトN−アセチルグルコサミンがFc領域における配座変化によりその生物学的作用を媒介する可能性がある。すべての血清IgGはバイセクトオリゴ糖を保有するので、潜在的に変更された立体配座は天然ですでに存在する。操作された抗体と天然抗体との間の主な差は、より活性な立体配座を表示する分子の割合である。
【0101】
非結合体化mAbの活性を増強するための種々の手法は、現在、臨床評価(放射免疫療法、抗体依存性酵素/プロドラッグ療法、サイトカインを用いた免疫毒素およびアジュバント療法を含む)の下にある(Hjelm Skog,A.ら、Cancer Immunol Immunother.48:463−470(1990);Blakey,D.C.ら、Cell Biophys.25:175−183(1994);Wiseman,G.A.ら、Clin Cancer Res.5:3281s−3296s(1999);Hank,J.A.ら、Cancer Res.50:5234−5239(1990))。これらの技法により活性が大きく増加し得るが、これらの技法は、非結合体化mAbと比較した場合、有意に高い副作用、生産コスト上昇、ならびに生産から患者への投与までの複雑なロジスティクスももたらし得る。ここに示した技法は、簡単な生産方法を維持しながら、効力の増強を得るための代替的方法を提供するものであって、多数の非結合体化mAbに適用可能であるべきである。
【0102】
(実施例2)
(chG250産生細胞株のグリコシル化操作により得られる抗体依存性細胞傷害性の増強を伴う、抗腎細胞癌抗体chG250の新規バージョン)
(1.細胞培養)
chG250キメラmAbを産生するSP2/0マウスミエローマ細胞(wt−chG250−SP2/0細胞)を、1:100(容量/容量)のペニシリン/ストレプトマイシン/抗真菌性溶液(SIGMA,Buchs,Switzerland)を補充した標準細胞培地中で増殖させた。細胞を、組織培養フラスコ中で5%CO2湿潤大気中、37℃で培養した。培地を、3〜4日ごとに取り替えた。細胞を、10%DMSOを含有する培地中で凍結させた。
【0103】
(2.pGnTIII−puro発現を有するSP2/0細胞の生成)
IRESを介してプロマイシン耐性遺伝子に作動可能に連結されるGnTIIIの構成性発現のためのベクターを用いて、電気穿孔により、wt−chG250−SP2/0ミエローマ細胞をトランスフェクトした。電気穿孔の24時間前に、培地を取り替えて、細胞を5×105細胞/mlで接種した。700万個の細胞を、4℃にて1300rmpで4分間、遠心分離した。細胞を3mLの新しい培地で洗浄し、再び遠心分離した。培地中の1.25%(容量/容量)DMSOおよび20〜30μgのDNAを含有する反応混合物0.3〜0.5mlの容量中に細胞を再懸濁した。次に電気穿孔混合物を0.4cmキュベットに移して、遺伝子パルサー(Bio Rad製)を用いて、低電圧(250〜300V)および高キャパシタンス(960μF)でパルスをかけた。電気穿孔後、細胞を迅速にT25培養フラスコ中の6mLの1.25%(容量/容量)DMSO培地に移して、37℃でインキュベートした。電気穿孔後2日目に培地に2μg/mLのプロマイシンを適用することにより、安定構成部分を選択した。2〜3週間後、安定したプロマイシン耐性混合集団を得た。単一細胞由来クローンをFACSにより得て、その後、展開し、プロマイシン選択下で保持した。
【0104】
(3.ウエスタンブロット)
ウエスタンブロッティングにより、GnTIII発現に関してプロマイシン耐性クローンをスクリーニングした。ウエスタンブロットは、クローン5H12、4E6および4E8が最高レベルのGnTIIIを発現していることを明らかに示した。5G2も中強度のGnTIII帯域を示したが、2F1、3D3および4G3は最低帯域強度を有し、したがって低量のGnTIIIを発現した(図5)。
【0105】
(4.野生型を含めた7つのGnTIII発現クローンからのchG250モノクローナル抗体の産生および精製)
クローン2F1、3D3、4E6、4E8、4G3、5G2、5H12および野生型(wt−chG250−SP2/0細胞)を、130ml培地の総容量中に3×105細胞/mLで接種し、単一三重フラスコ中で培養した。接種のために用いた細胞は、すべて完
全対数増殖期であり、したがって細胞は、生産バッチ開始時に同一の増殖状態であったと考えられた。細胞を4日間培養した。抗体を含有する上清を後期対数増殖期に収集して、再現性を保証した。chG250モノクローナル抗体を、2クロマトグラフィー工程で精製した。各バッチから得られたchG250モノクローナル抗体を含有する培養上清をまず、HiTrapプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。プロテインAは、ヒトIgGFc領域に高度に特異的である。プロテイン溶離物からのプールサンプルを、ResourceS 1mlカラム(Amersham Pharmacia Biotech)上での陽イオン交換クロマトグラフィーによりPBSに緩衝液交換した。SDS染色およびクーマシーブルー染色から、最終純度を95%より高いと判定した(図6)。既知の濃度を有する野生型抗体を用いた標準較正曲線で、各サンプルの濃度を確定した。
【0106】
(5.異なるGnTIIIレベルを発現する7つのクローン由来のmAb調製物のオリゴ糖プロファイリング)
異なるオリゴ糖構造の分子量を正確に提供するマトリクス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI/TOF−MS)によって、オリゴ糖プロフィールを得た。この技法は、混合物内の異なるオリゴ糖構造間の割合の定量的分析を可能にする。中性オリゴ糖は、主に[M+Na+]イオンとして出現したが、時としてそれらはより小さい[M+K+]イオンを伴い、m/z16の質量増大をもたらした。カリウムイオン付加物として出現する構造のパーセンテージはマトリクスの含量に依存し、したがってサンプル間で変化し得る。各抗体調製物由来の中性N結合型オリゴ糖の混合物を、マトリクスとして2,5−デヒドロ安息香酸(2,5−DHB)を用いて分析した。既知の単糖組成および独特の質量のために、スペクトル中のピークのいくつかは、特定のオリゴ糖構造に明確に割り当てられた。しかしながら、多重構造はしばしば、特定の質量に割り当てられ得る。MALDIによって質量を確定することはできるが、異性体間の区別はできない。生合成経路についての知識および過去の構造データは、ほとんどの場合に、スペクトル中のピークへのオリゴ糖構造の割り当てを可能にする。
【0107】
GnTIIIを発現しないwt−chG250−SP2/0細胞株中で産生されたmAbサンプル由来のオリゴ糖は、非バイセクトビアンテナリ(biantennary)複合体(m/z1486)およびモノガラクトシル化非バイセクトビアンテナリ複合体構造またはジガラクトシル化非バイセクトビアンテナリ複合体構造(図7A)(ともにコア領域でα(1,6)−フコシル化される)を含有した(それぞれピークm/z1648および1810)。
【0108】
GnTIIIの発現は、2つの型、すなわち複合型またはハイブリッド型のバイセクトFc会合オリゴ糖構造を生じた。複合バイセクトオリゴ糖は明確に、m/z1543、1689、1705、1851および1867でのピークに割り当てられた([M+K+]付加物)。予測どおり、バイセクトオリゴ糖の増大は、非バイセクト複合オリゴ糖に対応するピークm/z1486および1648の同時低減を伴った。GnTIII発現クローン由来の全サンプルに関して、GnTIIIの主基質(m/z1486)は劇的に低減した。予測どおり、m/z1648のピークに割り当てられた非バイセクト複合オリゴ糖型のパーセンテージは、最高GnTIIIレベルを発現するクローン(クローン4E6、4E8、5G2および5H12)に関して最低値を有した。これら2つのピークは、バイセクト複合型オリゴ糖およびバイセクトハイブリッド型オリゴ糖の蓄積を有利に低減した(図7A〜図7Dおよび図8A〜図8D)。バイセクト複合オリゴ糖のパーセンテージは、低量のGnTIIIを発現するクローン由来のサンプルではより低かった。これは、より高いGnTIII発現レベルがおそらくは生合成の流れをバイセクトハイブリッド構造に転向し、それにより複合体および複合バイセクト化合物の相対的割合を低減する、という事実と一致する。バイセクトハイブリッド構造に関しては、2つの考え得る構造がしばしば、単一ピークに割り当てられ得る。したがって、全オリゴ糖プール全体のこれらの構造のパーセンテージを概算するために、いくつかの仮定を行った。ピークm/z1664、1680、1810および1826は、バイセクトハイブリッド型、ガラクトシル化複合オリゴ糖、またはそれらの混合物に割り当てられ得る。wt−抗体調製物がピーク1664の比較的低いパーセンテージを有したという事実により、異なるクローン由来の抗体サンプル中に有意量で出現するこのピークは完全に、バイセクトハイブリッド構造に対応すると仮定された(図7A〜図7Dおよび図8A〜図8D)。しかしながら、特定構造をピークm/z1810および1826に割り当てるためには、さらなる特性化を実施しなければならない。要するに、GnTIIIの過剰発現により、バイセクトオリゴ糖構造が生成され、それらの相対的割合はGnTIII発現レベルと相関した。
【0109】
(6.カルセイン−AM保持による抗体媒介性細胞毒活性の測定)
細胞傷害性を測定するカルセイン−AM保持法は、抗体を用いたインキュベーション後に細胞中に残留する染料蛍光を測定する。400万個のG250抗原陽性細胞(標的)を、10%ウシ胎仔血清を補充した1.8mLのRPMI−1640細胞培地(GIBCO
BRL,Basel,Switzerland)中の10μMのカルセイン−AM(Molecular Probes,Eugene,OR)を用いて、5%CO2湿潤大気中で37℃にて30分間標識した。細胞を培地中で2回洗浄し、12mLのAIMV無血清培地(GIBCO BRL, Basel, Switzerland)中に再懸濁した。次に、標識細胞をU底96ウェルに移し(30,000細胞/ウェル)、異なる濃度の抗体を用いて、4℃で1時間、三連でインキュベートした。フィコール−パック(Pharmacia Biotech,Dubendorf,Switzerland)勾配上での遠心分離により、ヘパリン処理新鮮ヒト血液(全実験において、同一健常ドナーから得た)から末梢血単核球(PBMC)を分離した。PBMCを50μL容量で三連ウェルに添加し、25:1のエフェクター対標的比(E:T比)および200μLの最終容量を生じた。次に96ウエルプレートを、5%CO2大気中で37℃にて4時間インキュベートした。その後、96ウエルプレートを700×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞ペレットをハンクス平衡塩溶液(HBSS)で2回洗浄し、200μLの0.05M ホウ酸ナトリウム、pH9、0.1%トリトンX−100中で溶解した。標的細胞中の蛍光染料の保持を、FLUOstar微小プレート読取器(BMG LabTechnologies,Offenburg,Germany)で測定した。抗体に曝露する代わりに、サポニン(AIMV中200μg/mL;SIGMA,Buchs,Switzerland)に標的細胞を曝露することにより、特異的溶解を総溶解コントロールに関して算定した。以下の式を用いて、特異的溶解(%)を算定した:
細胞傷害性%=(Fmed−Fexp)/(Fmed−Fdet)
(式中、Fmedは培地単独で処理した標的細胞の蛍光を表し、PMBCによる非特異的溶解を考察し、Fexpは抗体で処理した細胞の蛍光を表し、Fdetは抗体の代わりにサポニンで処理した細胞の蛍光を表す)。
【0110】
インビトロADCC活性に対するchG250の修飾グリコシル化改変体の効果を確定するために、G250抗原陽性標的細胞を、異なる濃度のchG250抗体サンプルを用いて、および用いずに、PBMCを用いて培養した。野生型細胞株由来の非修飾chG250抗体の細胞傷害性を、それぞれ中度および高度のGnTIIIレベルを発現する2つの細胞株(3D3、5H12)由来の2つの抗体調製物と比較した(図5参照)。
【0111】
非修飾chG250抗体は、アッセイで用いられる濃度範囲全体で有意のADCC活性を媒介しなかった(活性はバックグラウンドと有意に異ならなかった)。2μg/mLでのADCC活性の増強(ほぼ20%、図9参照)は、中度のGnTIIIレベルを発現するクローン3D3由来の抗体サンプルを用いて観察された。この抗体サンプルの細胞毒活性は、より高い抗体濃度では増殖しなかった。予測どおり、クローン5H12由来の抗体調製物は、標的細胞に対してADCCを媒介するその能力において、サンプル3D3および非修飾抗体全体で顕著な増強を示した。この抗体調製物の最大ADCC活性は約50%であり、非修飾コントロールサンプルと比較した場合、125分の1の濃度で、有意のADCC活性を顕著に媒介した。
【0112】
(実施例3)
(慢性対宿主性移植片病を有する患者における免疫媒介性血小板減少症の処置)
慢性対宿主性移植片病における自己免疫血小板減少症は、臨床疾患を引き起こすB細胞調節不全の一例を示す。慢性対宿主性移植片病を有する被験者における免疫媒介性血小板減少症を処置するために、本発明の方法により調製され、ADCCの増強を伴う抗CD20キメラモノクローナル抗体を、Ratanatharathorn,V.ら、Ann.Intern.Med.133(4):275−79(2000)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されたように被験者に投与する。特に、抗体375mg/m2の毎週注入を被験者に4週間施した。抗体療法は、末梢血中のB細胞の顕著な枯渇ならびに血小板関連抗体レベルの低減を生じた。
【0113】
(実施例4)
(重症免疫媒介性赤芽球ろうおよび溶血性貧血の処置)
免疫媒介性後天性赤芽球ろう(PRCA)は、しばしばその他の自己免疫現象に関連するまれな障害である。被験者における免疫媒介性後天性赤芽球ろうを処置するために、本発明の方法により調製され、ADCCの増殖を伴う抗CD20キメラモノクローナル抗体を、Zecca,M.ら、Blood 12:3995−97(1997)(この記載内容全体が、参照により本明細書中に援用される)に記載されたように、被験者に投与する。特に、PRCAおよび自己免疫性溶血性貧血を有する被験者には、抗体375mg/m2/週を2用量投与する。抗体療法後、静脈内免疫グロブリンを用いた変換処置を開始する。この処置は、B細胞の顕著な枯渇およびヘモグロビンレベル増大を伴う網状赤血球数の有意の増大を生じる。
【0114】
本発明は、上記の説明および実施例に特に記載されたものと別の方法で実行され得ることは明らかである。本発明の多数の変更および改変は上記の教示にかんがみて可能であり、したがって添付の特許請求の範囲内である。
【0115】
本明細書中に引用された全出版物(特許、特許出願、季刊誌、実験マニュアル、書籍またはその他の文を含む献)の開示内容はすべて、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】CD20陽性SB細胞に対する抗体調製物C2B8−25tの反応性を示す間接的免疫蛍光アッセイ。陰性コントロール(HSB CD20陰性細胞株を含む)および二次FITC結合体化抗ヒトFcポリクローナル抗体だけで処理された細胞は示されていない。
【図2A】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2B】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2C】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2D】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図2E】MabtheraTM(図2A)、C2B8−nt(図2B)、C2B8−2000t(図2C)、C2B8−50t(図2D)およびC2B8−25t(図2E)抗体サンプル由来のオリゴ糖のMALDI/TOF−MSスペクトル。オリゴ糖は、[M+Na+]イオンおよび[M+K+]イオンとして現れる。最初の2つのスペクトル中に出現するオリゴ糖は、GnTIIIを発現しない細胞培養物に由来し、一方で、C、DおよびEのオリゴ糖は、異なるレベル(すなわちテトラサイクリン濃度)でGnTIIIを発現する単一細胞株に由来した。
【図3】典型的なヒトIgG Fc会合オリゴ糖構造(A)および部分的N結合型グリコシル化経路(B)の説明。(図3A)オリゴ糖のコアは、Asn297に結合される3個のマンノース(M)および2個のN−アセチルグルコサミン(Gn)の単糖残基で構成される。ガラクトース(G)、フコース(F)およびバイセクトN−アセチルグルコサミン(Gn、矩形)は、存在する場合もしない場合もある。末端N−アセチルノイラミン酸も存在し得るが、図中に含まれていない。(図3B)部分的N結合型グリコシル化経路は、主要なオリゴ糖クラス(点線枠)の生成をもたらす。バイセクトN−アセチルグルコサミンは、Gnbとして示される。下付数字は、各オリゴ糖中に存在する単糖残基の数を示す。各構造は、そのナトリウム関連[M+Na+]質量と一緒に出現する。フコース(f)を含有する構造の質量も含まれる。
【図4A】Rituximabグリコシル化改変体のADCC活性。異なるmAb濃度により媒介されるヒトリンパ球(E:T比100:1)による51Cr標識CD20陽性SB細胞の溶解により、細胞傷害性のパーセンテージを測定した。(図4A)しかし、単一細胞株由来のC2B8サンプルの活性は、漸増GnTIII発現レベル(すなわち漸減テトラサイクリン濃度)を生じた。サンプルは、C2B8−2000t、C2B8−50t、C2B8−25tおよびC2B8−nt(GnTIIIを発現しないクローン由来のコントロールmAb)である。(図4B)C2B8−50tおよびC2B8−25tのADCC活性を、MabtheraTMと比較した。
【図4B】Rituximabグリコシル化改変体のADCC活性。異なるmAb濃度により媒介されるヒトリンパ球(E:T比100:1)による51Cr標識CD20陽性SB細胞の溶解により、細胞傷害性のパーセンテージを測定した。(図4A)しかし、単一細胞株由来のC2B8サンプルの活性は、漸増GnTIII発現レベル(すなわち漸減テトラサイクリン濃度)を生じた。サンプルは、C2B8−2000t、C2B8−50t、C2B8−25tおよびC2B8−nt(GnTIIIを発現しないクローン由来のコントロールmAb)である。(図4B)C2B8−50tおよびC2B8−25tのADCC活性を、MabtheraTMと比較した。
【図5】7つのGnTIII発現クローンおよび野生型のウエスタンブロット分析。各サンプル30μgを8.75%SDSゲル上にロードし、PVDF膜に移して、抗c−mycモノクローナル抗体(9E10)でプローブした。WTはwt−chG250−SP2/0細胞をいう。
【図6】分解精製抗体サンプルのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。
【図7A】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7B】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7C】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図7D】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン、ならびにwt−chG250−SP2/0細胞:WT(図7A)、2F1(図7B)、3D3(図7C)、4E6(図7D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8A】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8B】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8C】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図8D】異なるGnTIIIレベルを発現するクローン:4E8(図8A);5G2(図8B);4G3(図8C);5H12(図8D)により産生されるchG250mAbサンプルからの中性オリゴ糖混合物のMALDI/TOF−MSスペクトル。
【図9】コントロールwt−chG250−SP2/−細胞およびGnTIIIトランスフェクト(transect)クローン3D3および5H12由来の抗体サンプルのインビトロADCCアッセイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【公開番号】特開2009−114201(P2009−114201A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331038(P2008−331038)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2003−517069(P2003−517069)の分割
【原出願日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【出願人】(504043853)グリカート バイオテクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2003−517069(P2003−517069)の分割
【原出願日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【出願人】(504043853)グリカート バイオテクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
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