説明

抗体結合親和性リガンド

本願は、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基または1つ以上の複素芳香族官能基とを含む固相支持物質であって、少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性/複素芳香族官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する固相支持物質を開示する。一般に、親和性樹脂は、親和性樹脂1mL当たりモノクローナル抗体5mgより高い結合能力を有する。タンパク質、特に、抗体(モノクローナル抗体など)、またはその誘導体のような生体分子の単離方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、ポリマーマトリックスのような固相支持物質と共有結合している親和性リガンド、およびタンパク質、特に、抗体(モノクローナル抗体など)のような生体分子の精製および/または単離におけるその使用に関する。親和性リガンドは2つの異なるドメインまたは官能基:(i)疎水性ドメインおよび(ii)カチオン性ドメインを含む。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
アフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体のような生物学的物質を、親和性カラムに充填された固相支持物質上に固定されている親和性リガンドのような補助的結合物質に選択的かつ可逆的に吸着させることができる。
【0003】
親和性カラムは、固相支持物質、通常多孔性のポリマーマトリックスを含んでいることが多く、そのポリマーマトリックスに、好適なリガンドが直接またはリンカーによって共有結合している。リガンドに対して親和性を有する生物学的物質を含むサンプルを、固相支持物質に共有結合により固定化されている親和性リガンドと、リガンドとそのリガンドに対して親和性を有する生物学的物質との特異的結合を促進する好適な結合条件下で接触させることができる。その後、そのカラムをバッファーで洗浄して、結合していない物質を除去することができ、後続の工程でそのリガンドに対して親和性を有する生物学的物質を溶出し、精製または単離形態で得ることができる。従って、リガンドは、好ましくは、精製または単離することが望ましい、抗体のような生物学的物質と、特異的および可逆的結合特性を示すものでなければならない。
【0004】
抗体は、4つのポリペプチド鎖からなるY形ユニットの1以上のコピーを有する。各Yは、「重」鎖の2つの同一コピーと、「軽鎖」の2つの同一コピーを含み、それ自体はそれらの相対分子量により名前が付けられている。
【0005】
抗体は、Yユニットの数と重鎖のタイプに基づいて5クラス:IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEに分けることができる。重鎖により各抗体のサブクラスが決定される。IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEの重鎖は、それぞれ、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、およびエプシロンとして知られている。いずれの抗体の軽鎖も、カッパ(κ)またはラムダ(λ)タイプ(ポリペプチドの分子特性の表示)のいずれかに分類することができる。
【0006】
製剤への応用で、最も一般に使用される抗体はIgGであり、このIgGはタンパク質分解酵素であるパパインにより3つの部分、2つのF(ab)領域と1つのFc領域に、またはタンパク質分解酵素であるペプシンにより2つの部分、1つのF(ab')と1つのFc領域に切断され得る。
【0007】
F(ab)領域は、抗原結合に重要である抗体の「アーム」を含む。Fc領域は抗体の「テール」を含み、免疫応答において役割を果たすのはもちろんのこと、免疫化学的方法中に抗体を操作するのに有用な「ハンドル」にもなる。抗体のF(ab)領域の数は、そのサブクラスに対応しており、それにより抗体「価」が決まる(広義には、抗体がその抗原と結合する際に用いる「アーム」の数)。
【0008】
「抗体」とは、天然であるか、完全もしくは部分的に合成により生産されたものであるかにかかわらず、免疫グロブリンを意味する。特異的結合能力を維持する全てのフラグメントおよびその誘導体もこの用語に含められる。典型的なフラグメントは、FC、FAB、重鎖、および軽鎖である。この用語はまた、アミノ酸配列を免疫グロブリン結合ドメインと比較した際に、相同またはほぼ相同(少なくとも95%同一など)である結合ドメインを有するいずれのポリペプチドも包含する。これらのポリペプチドは、自然源から得てもよいし、または部分的もしくは完全に合成により生産されたものでもよい。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいかなるものも含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーでもよい。しかしながら、本発明の一実施形態ではIgGクラスの誘導体が好ましい。
【0009】
「抗体フラグメント」とは、全長より短い、抗体のいずれの誘導体も指す。好ましくは、抗体フラグメントは、全長抗体の特異的結合能力の少なくともかなりの部分を保持する。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab'、F(ab')、scFv、Fv、dsFvダイアボディー、およびFdフラグメントが含まれる。抗体フラグメントは、いずれの手段によっても生産されたものでもよい。例えば、抗体フラグメントは、無傷抗体のフラグメント化により酵素的または化学的に生産されたものでよいし、部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換えにより生産されたものでもよい。あるいは、抗体フラグメントは、完全もしくは部分的に合成により生産されたものでもよい。抗体フラグメントは、所望により、一本鎖抗体フラグメントであってよい。あるいは、抗体フラグメントは、例えば、ジスルフィド結合によって互いに結合している複数鎖を含んでいてよい。抗体フラグメントは、所望により、多分子複合体であってもよい。機能的抗体フラグメントは、一般には、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より一般には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0010】
「一本鎖Fvs」(scFvs)は、ポリペプチドリンカーによって互いに共有結合している軽鎖可変鎖(V)と重鎖可変鎖(V)だけで構成されている組換え抗体フラグメントである。VまたはVのいずれかはアミノ末端ドメインであり得る。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが、重大な立体的干渉がなく、架橋している限り、長さと組成を自由に変えられるものであり得る。一般に、リンカーは、主としてグリシンおよびセリン残基のストレッチで構成されており、溶解性のため若干グルタミン酸またはリジン残基が散在している。「ダイアボディー」は二量体のscFvである。ダイアボディーの成分は、一般に、大部分のscFvよりも短いペプチドリンカーを有しており、二量体として会合することを好む。「Fv」フラグメントは、非共有相互作用によって結合している1つのVと1つのVドメインからなる抗体フラグメントである。「dsFv」は、V−V対を安定させるように操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvを言及するために、本明細書において用いられる。「F(ab')」フラグメントは、pH4.0〜4.5での酵素ペプシンを用いた消化により免疫グロブリン(一般に、IgG)から得られたものと本質的に等しい抗体フラグメントである。F(ab')フラグメントは、組換えにより生産されたものでもよい。「Fab'」フラグメントは、F(ab')フラグメントの2つの重鎖種をつないでいるジスルフィド架橋の還元により得られたものと本質的に等しい抗体フラグメントである。Fab'フラグメントは、組換えにより生産されたものでもよい。「Fab」フラグメントは、酵素パパインを用いた免疫グロブリン(一般に、IgG)の消化により得られたものと本質的に等しい抗体フラグメントである。Fabフラグメントは、組換えにより生産されたものでもよい。Fabフラグメントの重鎖セグメントはFd種である。「Fc」領域は、特定クラスの抗体の定常領域である。
【0011】
抗原と抗体の結合は、水素結合、疎水結合、静電気力、およびファン・デル・ワールス力に依存している。これらは全て弱い非共有性の結合であるにもかかわらず、抗原と抗体が非常に強く結合する場合がある。よって、抗体−抗原結合に関する親和定数は、広い範囲にわたり、10mol−1未満から1012mol−1を超えるまでに及び得る。親和定数は温度、pHおよび溶媒の影響を受ける。リガンドに対する抗体の親和性は別として、抗体−リガンド複合体の総合安定性は、抗原および抗体の結合価と相互作用部分の構造配列によっても決まる。
【0012】
正確な親和定数は、抗原の単一エピトープを認識する遺伝学的に同一の分子であるモノクローナル抗体でのみ決定することができ、ポリクローナル抗体では、親和性の分布が広いため、見かけの親和定数となる可能性がある。ポリクローナル抗体が同じ抗原の2つ以上のエピトープを認識する可能性があるという事実からも見かけの親和定数がもたらされ得る。抗体は通常、分子集合(molecule multiple)当たり2つ以上の結合ドメインを有しているため、抗体とそれらの抗原との間で協同的結合が起こる;この作用はアビディティと呼ばれている。モノクローナル抗体は、抗原の1つのエピトープとしか反応しないため、モノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体よりも抗原の化学的処置によるエピトープ欠損を受けやすい。これは、同じ抗原に対する2種類以上のモノクローナル抗体をプールすることにより補うことができる。
【0013】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを生産するためのBリンパ球と不死化細胞培養物との融合によりもたらされ得る。ハイブリドーマは、全く同じ抗体の多数のコピーを産生する−これは治療的または診断的適用のための抗体の開発における本質的特性である。
【0014】
現今、モノクローナル抗体のような生体分子の精製および単離用に最も研究されている親和性リガンドはプロテインAである。プロテインAは、広く使用されているリガンドであるが、このリガンドは、不安定性だけでなく、カラムからの浸出および最終産物からそれを除去する必要性またはクロマトグラフィー樹脂の衛生不良に関する問題などのいくつかの欠点を有している可能性があり、さらに、プロテインAはかなり高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、天然物由来もしくは組換え由来かにかかわらず、抗体、特に、モノクローナル抗体、またはその類似体、誘導体、フラグメントおよび前駆体を単離するために、新規の安定で安価なリガンドが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要約
本発明の一態様では、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含む固相支持物質であって、
少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、
前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する、
固相支持物質が提供される。
【0017】
本発明のもう1つの態様では、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上の複素芳香族官能基とを有する固相支持物質であって、
少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つの複素芳香族官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、かつ
前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する、
固相支持物質が提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様では、タンパク質、例えば、抗体、特に、モノクローナル抗体、またはその誘導体のような生体分子の単離方法であって、
(i) 本明細書に記載の、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質を提供する工程、
(ii) 前記リガンドに対して親和性を有する抗体を推定上含むサンプルを提供する工程、
(iii) 前記リガンドを、前記抗体を推定上含む前記サンプルと接触させる工程、
(iv) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に結合させる工程、および
(v) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に単離する工程を含む方法が提供される。
【0019】
図面の簡単な説明
図1:樹脂B2選択性解析。1=発酵上清、2=フロースルー(Flow trough)(サイクル1)、3=溶出(サイクル1)、4=再生/消毒(sanitation)(サイクル1)、5=洗浄(サイクル2)、6=溶出(サイクル2)、7=タンパク質なし、8=mAb参照サンプル。
図2:樹脂B3選択性解析。1=発酵上清、2=フロースルー(サイクル1)、3=溶出(サイクル1)、4=再生/消毒(サイクル1)、5=洗浄(サイクル2)、6=溶出(サイクル2)、7=再生/消毒(サイクル2)、8=mAb参照サンプル。
図3:樹脂D1選択性解析。1=mAb参照サンプル、2=発酵上清、3=フロースルー(サイクル1)、4=溶出(サイクル1)、5=再生/消毒(サイクル1)、6=洗浄(サイクル2)、7=溶出(サイクル2)、8=再生/消毒(サイクル2)。
図4:樹脂D2選択性解析。1=mAb参照サンプル、2=発酵上清、3=フロースルー(サイクル1)、4=溶出(サイクル1)、5=再生/消毒(サイクル1)、6=洗浄(サイクル2)、7=溶出(サイクル2)、8=再生/消毒(サイクル2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の詳細な開示
上述のとおり、本発明は、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する新規固相支持物質であって、そのリガンドが特定の一連の官能基を含む固相支持物質に関する。そのような物質は、タンパク質、例えば、抗体、特に、モノクローナル抗体、またはその誘導体のような生体分子の精製および単離に特に有用である。
【0021】
リガンド
本明細書において、「リガンド」とは、標的化合物、例えば、抗体、特に、モノクローナル抗体と結合し得る分子を意味する。リガンドは、それらの結合パートナーと少なくとも実質的に特異的に結合する(「特異的結合」)ことが好ましい。
【0022】
「特異的結合」とは、(1)結合パートナー(例えば、モノクローナル抗体)と結合する、(2)優先的に、結合した結合パートナー(例えば、モノクローナル抗体)の相対的質量が、結合パートナー(例えば、モノクローナル抗体)以外に結合した種の相対的質量より少なくとも2倍(50倍など、例えば、100倍、1000倍など)、またはそれ以上大きいような、リガンドの特性を指す。結合した化合物の相対的質量とは、結合した化合物の質量から結合していない化合物の質量を引いたものを結合パートナーの全質量で割った値を意味する、すなわち、
結合した化合物の相対的質量=(結合した化合物の質量−結合していない化合物の質量)/(結合した化合物の質量+結合していない化合物の質量)、
化合物は結合パートナーまたは他の種である。
【0023】
「結合パートナー」とは、特定のリガンドによって、好ましくは、実質的に特異的に結合するいずれの生体分子も意味する。結合パートナーは、2種類以上のリガンドで共有されてもよい。好ましい結合パートナーは抗体であり、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。さらなる好ましい結合パートナーは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体からの抗体フラグメントである。
【0024】
本明細書における説明または叙述から明らかなように、本発明のリガンドには、任意または全ての不斉原子についての富化または分割された光学異性体が含まれる。ラセミおよびジアステレオマー混合物の両方、ならびに個々の光学異性体は、それらのエナンチオマーまたはジアステレオマーパートナーを実質的に含まないように、単離または合成することができ、これらは全て本発明の範囲内である。
【0025】
試験では、驚くべきことに、特定クラスの親和性リガンド、とりわけ、リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含むものが選択的にmAbと結合するということが分かった。親和性リガンドのもう1つの有望なクラスは、リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上の複素芳香族官能基とを含むものである。
【0026】
さらに、少なくとも1つの疎水性官能基が、少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜30Åの結合距離(例えば、5Å〜20Åの結合距離、5〜19Åの結合距離など、例えば、5〜18Åの結合距離、5〜17Åの結合距離など、例えば、5〜16Åの結合距離、5〜15Åの結合距離など、例えば、5〜14Åの結合距離、5〜13Åの結合距離など、例えば、5〜12Åの結合距離、5〜11Åの結合距離など、例えば、5〜10Åの結合距離、6〜14Åの結合距離など、または7〜20Åの結合距離など、例えば、7〜19Åの結合距離、7〜18Åの結合距離など、例えば、7〜17Åの結合距離、7〜16Åの結合距離など、例えば、7〜15Åの結合距離、7〜14Åの結合距離など、例えば、7〜13Åの結合距離、7〜12Åの結合距離など、例えば、7〜11Åの結合距離、7〜10Åの結合距離など、例えば、8〜12Åの結合距離、または例えば、9〜20Åの結合距離、9〜18Åの結合距離など、例えば、9〜16Åの結合距離、9〜14Åの結合距離など、例えば、9〜12Åの結合距離、9〜11Åの結合距離など、例えば、約10Åの結合距離)だけ離れていることが好ましいということも見出された。
【0027】
結合距離は、共有結合している化学物質間の、化学結合に沿った、最短分子内結合距離である。この結合距離は、最短分子内パスに沿った個々の原子−原子結合距離を加えることにより計算される。典型的な原子−原子結合距離は1.2Å〜1.4Åである。
【0028】
リガンドの少なくとも1つの疎水性官能基と少なくとも1つのカチオン性官能基との間の空間距離(distance through space)は、30Å未満(28Å未満など、例えば、26Å未満、24Å未満など、例えば、22Å未満、20Å未満など、例えば、18Å未満、約16Å以下など、例えば、15Å未満、約14Å以下など、例えば、13Å未満、約12Å以下など、例えば、11Å未満、約10Å以下など、例えば、約8Å以下など、約6Åなど、例えば、5〜20Åの範囲、5〜19Åの空間距離など、例えば、5〜18Åの空間距離、5〜17Åの空間距離など、例えば、5〜16Åの空間距離、5〜15Åの空間距離など、例えば、5〜14Åの空間距離、5〜13Åの空間距離など、例えば、5〜12Åの空間距離、5〜11Åの空間距離など、例えば、5〜10Åの空間距離、7〜20Åの空間距離など、例えば、7〜19Åの空間距離、7〜18Åの空間距離など、例えば、7〜17Åの空間距離、7〜16Åの空間距離など、例えば、7〜15Åの空間距離、7〜14Åの空間距離など、例えば、7〜13Åの空間距離、7〜12Åの空間距離など、例えば、7〜11Åの空間距離、7〜10Åの空間距離など、例えば、9〜20Åの空間距離、9〜18Åの空間距離など、例えば、9〜16Åの空間距離、9〜14Åの空間距離など、例えば、9〜12Åの空間距離、9〜11Åの空間距離など)であることが好ましい。
【0029】
当業者ならば、技術水準に従って、結合距離および空間距離を算出または決定することができる。異なるリガンド官能基の原子間の最小距離を決定するために、分子モデリングを利用することもできる。分子モデリングは、例えば、ステレオグラフィックビュワーを備えたEvans and Sutherland PS390 グラフィックスコンピューターを使用してSybyl/Mendyl 5.4(Tripos Associates, St. Louis, Mo.)を用いて実施することができる。好適なリガンドの構造は、Concordプログラムを用いたまたはライブラリーからの構築後、エネルギー最小化を行うことによって得ることができる。エネルギー計算は、Sybyl/Mendyl力場および水素についての1.2Åファン・デル・ワールスパラメーターを用いて行うことができる。電荷は、σ結合およびπ結合を含むGasteigner-Huckel法を用いて計算することができる。
【0030】
リガンドは、分子量が5,000Da未満(4,000Da未満など、例えば、3,500Da未満、3,000Da未満など、例えば、2,500Da未満、2,000Da未満など、1,800Da未満など、例えば、1,600Da未満、1,500Da未満など、1,400Da未満など、例えば、1,300Da未満、1,200Da未満など、1,100Da未満など、例えば、1,000Da未満)であることが好ましい。
【0031】
加えて、リガンドは、分子量が120Daを超えている(140Daを超えているなど、例えば、160Daを超えている、180Daを超えているなど、例えば、200Daを超えている、220Daを超えているなど、例えば、分子量が240Daを超えている)ことが好ましい。
【0032】
カチオン性基との非特異的結合の程度を低減するために、リガンドには、リガンドの正電荷がいくらか相殺されるように、1つ以上のアニオン性基をさらに含めてよい。アニオン性基としては、限定されるものではないが、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基および他の負荷電イオン性基が含まれ、アニオン性基は、例えば、リガンドのペンダント基に配置することができる。
【0033】
リガンド官能基
好適なリガンドの1つの主要な群では、各リガンドは、1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含む。
【0034】
好適なリガンドのもう1つの主要な群では、各リガンドは、1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上の複素芳香族官能基とを含む。
【0035】
本明細書において、カチオン性官能基は、pH範囲3〜7において正電荷を有する有機基である。カチオン性基の典型的な例は、1級、2級、および3級アミンである。グアニジンは、さらなる関連例である。カチオン性官能基のさらなる例については、下記の節「カチオン性官能基」に示している。
【0036】
疎水性官能基は、生体分子の表面と、主として、疎水性相互作用により結合することができる有機基である。疎水性官能基は、通常の生理条件において本質的に非極性で非荷電であることを特徴とする。リガンドが水性媒質中に存在する場合、疎水性残基は水溶液によってはじかれて、リガンドの構造における内部位置を求める。また、通常の生理条件下でリガンドが結合パートナーと結合する場合も、疎水性残基は、リガンド結合パートナーの疎水性ポケットまたは溝を求めるであろう。
【0037】
本明細書において、「通常の生理条件」とは、生存生物または細胞内の典型的な条件を意味する。一部の器官または生物が極限状態になっていることが確認されても、生物内および細胞内環境は、通常、pH7近く(すなわち、pH6.5〜pH7.5)で変化し、主要溶媒として水を含み、0℃より高く50℃より低い温度で存在する。様々な塩の濃度が、参照として用いられる器官、生物、細胞、または細胞区画に依存することは分かるであろう。
【0038】
有機疎水基は、一般に、炭素原子を多く含んでいる。疎水基の典型的な例は、直鎖および分岐アルカン、環状炭化水素、芳香族化合物、ならびに直鎖および分岐アルカン、環状炭化水素、および芳香族化合物の組合せである。また、そのような基の置換変形形態も炭素の相対含量がある限度を上回っている限り、疎水性を有していると考えられる。しかしながら、炭素原子の割合は疎水性に影響を及ぼす唯一のパラメーターではない。他の原子の位置および性質も重要な役割を果たす。例えば、エーテルは、一般に、同数の炭素原子および酸素原子を有するアルコールよりも疎水性が高く、エステルは、同じ元素組成を有するジオールよりも疎水性が高い。有機基の1つ以上の起こり得る非炭素および非水素原子が1位に存在する場合、疎水性である基についての炭素原子の相対数は、起こり得る非炭素および非水素原子が2位、3位、または4位に存在する場合よりも多いに違いない。このことに留意して、本発明者らは、疎水基を、その非水素原子の75%以上が炭素原子である(その非水素原子の80%以上など、好ましくは、85%以上が炭素原子である)有機基と定義する。例えば、低い値、75%は、エーテルおよびエステルに当てはまり、中間の値、80%は、アミド、ならびに2級および3級アミンに当てはまり、一方、高い値、85%は、アルコールおよび1級アミンに当てはまる。疎水性官能基の例については、下記の節「リガンド官能基」に示している。
【0039】
少なくとも1つの疎水性官能基は、本明細書において下記に定義される、「アルキル」、「環状アルキル」、「置換アルキル」、「アリール」、「置換アリール」、「アルケニル」、「置換アルケニル」、「アルキニル」、「置換アルキニル」、「アラルキル」、「置換アラルキル」、「ヘテロシクリル」、「置換ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリルアルキル」、「置換ヘテロシクリルアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、「置換アルキルアミノアルキル」、「ジアルキルアミノアルキル」、「置換ジアルキルアミノアルキル」、「ヘテロシクリルオキシアルキル」、「置換ヘテロシクリルオキシアルキル」、「アリールアミノアルキル」、「置換アリールアミノアルキル」、「ヘテロシクリルアミノアルキル」、「置換ヘテロシクリルアミノアルキル」、「アルキルアミノアルコキシ」、「置換アルキルアミノアルコキシ」、「ジアルキルアミノアルコキシ」、「置換ジアルキルアミノアルコキシ」、「ヘテロシクリルオキシ」、および「置換ヘテロシクリルオキシ」から選択される1つ以上の基を含み得るまたはからなり得る。
【0040】
脂肪族残基を含む疎水性官能基
少なくとも1つの疎水性官能基は、所望により置換されている脂肪族残基および/または所望により置換されている芳香族残基を含み得るまたはからなり得る。脂肪族残基とは、一般に、例えば、置換または非置換であり得る、アルキル、アルキレンおよびアルキニル残基のような炭化水素を指す。
【0041】
本明細書において「アルキル」とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどのような直鎖アルキル基を含む。また、「アルキル」は、直鎖アルキル基の分岐異性体も含み、限定されるものではないが、一例として示す以下を含む:−CH(CH)、−CH(CH)(CHCH)、−CH(CHCH)、−C(CH)、−C(CHCH)、−CHCH(CH)、−CHCH(CH)(CHCH)、−CHCH(CHCH)、−CHC(CH)、−CHC(CHCH)、−CH(CH)CH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CH)、−CHCHCH(CH)(CHCH)、−CHCHCH(CHCH)、−CHCHC(CH)、−CHCHC(CHCH)、−CH(CH)CHCH(CH)、−CH(CH)CH(CH)CH(CH)CH(CH)、−CH(CHCH)CH(CH)CH(CH)(CHCH)など。
【0042】
脂肪族残基は、所望により置換されている直鎖脂肪族残基または所望により置換されている分岐脂肪族残基であり得る。脂肪族残基はまた、所望により置換されている環状アルキルである場合もある。「環状アルキル」には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルのような基が含まれ、それらの環は上記の直鎖および分岐アルキル基で置換されている。また、「環状アルキル」には、限定されるものではないが、アダマンチル、ノルボルニル、およびビシクロ[2.2.2]オクチルのような多環状アルキル基も含まれ、それらの環は上記の直鎖および分岐アルキル基で置換されている。よって、非置換アルキル基には、1級アルキル基、2級アルキル基、および3級アルキル基が含まれる。非置換アルキル基は、リガンド中の1個以上の炭素原子、酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子と結合してもよい。
【0043】
環状脂肪族残基は、例えば、C−C16シクロアルキル基を含み得るまたはからなり得る。一般に、シクロアルキルがアリールまたはヘテロアリール残基で置換されている場合には、短鎖長のものも生じ得る。
【0044】
「置換アルキル」とは、炭素または水素との1以上の結合が非水素および非炭素原子(限定されるものではないが、ハロゲン化物中のハロゲン原子(F、Cl、Br、およびIなど);およびヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、およびエステル基のような基の酸素原子;チオール基、アルキルおよびアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホキシド基のような基の硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N−オキシド、イミド、およびエナミンのような基の窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、およびトリアリールシリル基のような基のケイ素原子;ならびに様々な他の基の他のヘテロ原子など)との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。
【0045】
置換アルキル基には、炭素または水素原子との1以上の結合がヘテロ原子(カルボニル、カルボキシル、およびエステル基の酸素;イミン、オキシム、ヒドラゾン、およびニトリルのような基の窒素など)との結合に置き換えられている基も含まれる。また、置換アルキル基には、とりわけ、炭素または水素原子との1以上の結合がハロゲン原子との1以上の結合に置き換えられているアルキル基も含まれる。他の置換アルキル基としては、置換アルキル基がヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ基、またはヘテロシクリルオキシ基を含むように、炭素または水素原子との1以上の結合が酸素原子との結合に置き換えられているものが含まれる。さらに他のアルキル基としては、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、(アルキル)(アリール)アミン、ジアリールアミン、ヘテロシクリルアミン、(アルキル)(ヘテロシクリル)アミン、(アリール)(ヘテロシクリル)アミン、またはジヘテロシクリルアミン基を有するアルキル基が含まれる。
【0046】
一実施形態では、脂肪族官能基は、本明細書において以下に記載する(C−C12)アリール基のようなアリール基で置換されていることが好ましく、そのアリール基も、本明細書においてさらに記載するように、置換されていてもよい。置換アリール基の例としては、置換または非置換であり得る「アラルキル基」が含まれる。
【0047】
よって、「アラルキル」とは、非置換アルキル基の水素または炭素結合が上記のアリール基との結合で置換されている、上記の非置換アルキル基を指す。例えば、メチル(−CH)は非置換アルキル基である。メチル基の水素原子がフェニル基との結合に置き換えられているならば(メチルの炭素がベンゼンの炭素と結合している場合など)、その化合物は非置換アラルキル基(すなわち、ベンジル基)である。このような基としては、限定されるものではないが、ベンジル、ジフェニルメチル、および1−フェニルエチル(−CH(C)(CH))、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基などのような基が含まれる。
【0048】
「置換アラルキル」は、非置換アラルキル基に対して、置換アリール基が非置換アリール基に対して有するものと同じ意味を有する。しかしながら、置換アラルキル基には、基のアルキル部分の炭素または水素結合が非炭素または非水素原子との結合に置き換えられている基も含まれる。置換アラルキル基の例としては、限定されるものではないが、とりわけ、−CHC(=O)(C)、および−CH(2−メチルフェニル)が含まれる。
【0049】
一実施形態では、所望により置換されている脂肪族残基は、C−C20アルキル基を含むまたはからなる。典型的には、アルキルがアリールまたはヘテロアリール残基で置換されている場合には、短鎖長のものも生じ得る。アリールまたはヘテロアリールで置換されているアルキル基のさらなる例としては、例えば、直鎖(C−C10)、分岐(C−C10)または環状(C−C10)基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基およびイソプロピル基など)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基など)、n−アミル基、ペンチル基(ネオペンチル基、シクロペンチル基など)、ヘキシル基(n−ヘキシル基、シクロヘキシル基など)、ヘプチル基、オクチル基(n−オクチル基など)、ノニル基(n−ノニル基など)、デシル基(n−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基など)、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基など)が含まれる。
【0050】
一実施形態では、C−C20アルキル基も、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基で置換され得る。ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子である。アルコキシル基の例としては、例えば、(C−C)アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基など)が含まれる。アルキルチオ基の例としては、例えば、上記の(C−C10)アルキル基と、チオ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などが含まれる。アリールチオ基の例としては、例えば、上記の(C−C12)アリール基と、チオ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、フェニルチオ基などが含まれる。アリール、ヘテロアリール、および飽和炭化水素基に存在し得るアリールオキシ基の例としては、例えば、上記の(C−C12)アリール基と、オキシ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、フェノキシ基などが含まれる。
【0051】
本明細書において上記したアルキル基は、1以上の炭素−炭素二重結合(アルケニル基)または1以上の炭素−炭素三重結合(アルキニル基)を含む場合がある。
【0052】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合が2個の炭素原子間に存在することを除き、上記の非置換アルキル基に対して記載したもののような、直鎖および分岐基、ならびに環式基を指す。例としては、限定されるものではないが、とりわけ、ビニル、−CH=C(H)(CH)、−CH=C(CH)、−C(CH)=C(H)、−C(CH)=C(H)(CH)、−C(CHCH)=CH、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、およびヘキサジエニルが含まれる。
【0053】
「置換アルケニル」は、非置換アルケニル基に対して、置換アルキル基が非置換アルキル基に対して有するものと同じ意味を有する。置換アルケニル基には、非炭素または非水素原子が、別の炭素と二重結合している炭素と結合しているアルケニル基、および非炭素または非水素原子のうちの1個が、別の炭素との二重結合には関係していない炭素と結合しているアルケニル基が含まれる。
【0054】
「アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合が2個の炭素原子間に存在することを除き、上記のアルキル基に対して記載したもののような、直鎖および分岐基を指す。例としては、限定されるものではないが、とりわけ、−CC(H)、−CC(CH)、−CC(CHCH)、−C(H)CC(H)、−C(H)CC(CH)、および−C(H)CC(CHCH)が含まれる。
【0055】
「置換アルキニル」は、非置換アルキニル基に対して、置換アルキル基が非置換アルキル基に対して有するものと同じ意味を有する。置換アルキニル基には、非炭素または非水素原子が、別の炭素と三重結合している炭素と結合しているアルキニル基および非炭素または非水素原子が、別の炭素との三重結合には関係していない炭素と結合しているアルキニル基が含まれる。
【0056】
置換アルキル基のさらなる例については、本明細書において以下に記載する。
【0057】
「アルキルアミノアルキル」とは、炭素または水素結合が、水素原子および上記の非置換アルキル基と結合している窒素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。例えば、メチル(−CH)は非置換アルキル基である。メチル基の水素原子が、水素原子およびエチル基と結合している窒素原子との結合に置き換えられているならば、得られる化合物は非置換アルキルアミノアルキル基である−CH−N(H)(CHCH)である。
【0058】
「置換アルキルアミノアルキル」とは、一方または両方のアルキル基における炭素または水素原子との1以上の結合が、上記の非炭素または非水素原子との結合に置き換えられている場合を除き、置換アルキル基に関して上記したとおりの非置換アルキルアミノアルキル基を指し、ただし、単に、全てのアルキルアミノアルキル基における窒素原子と結合しているだけでは、全てのアルキルアミノアルキル基が置換されているとは見なされない。しかしながら、置換アルキルアミノアルキル基には、基の窒素原子と結合している水素が非炭素および非水素原子に置き換えられている基は含まれない。
【0059】
「ジアルキルアミノアルキル」とは、炭素結合または水素結合が、上記の他の2つの類似したまたは異なる非置換アルキル基と結合している窒素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。
【0060】
「置換ジアルキルアミノアルキル」とは、1つ以上のアルキル基における炭素または水素原子との1以上の結合が、置換アルキル基に関して記載されているとおりの非炭素および非水素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換ジアルキルアミノアルキル基を指す。ただし、単に、全てのジアルキルアミノアルキル基における窒素原子と結合しているだけでは、全てのジアルキルアミノアルキル基が置換されているとは見なされない。
【0061】
「ヘテロシクリルオキシアルキル」とは、炭素結合または水素結合が、上記の非置換ヘテロシクリル基と結合している酸素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。
【0062】
「置換ヘテロシクリルオキシアルキル」とは、ヘテロシクリルオキシアルキル基のアルキル基の炭素または水素基との結合が、置換アルキル基に関して上記したとおりの非炭素および非水素原子と結合しているか、またはヘテロシクリルオキシアルキル基のヘテロシクリル基が上記の置換ヘテロシクリル基である、上記の非置換ヘテロシクリルオキシアルキル基を指す。
【0063】
「アリールアミノアルキル」とは、炭素結合または水素結合が、上記の少なくとも1つの非置換アリール基と結合している窒素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。
【0064】
「置換アリールアミノアルキル」とは、アリールアミノアルキル基のアルキル基が上記の置換アルキル基であるか、またはアリールアミノアルキル基のアリール基が置換アリール基である場合を除き、上記の非置換アリールアミノアルキル基を指し、ただし、単に、全てのアリールアミノアルキル基における窒素原子と結合しているだけでは、全てのアリールアミノアルキル基が置換されているとは見なされない。しかしながら、置換アリールアミノアルキル基には、基の窒素原子と結合している水素が非炭素および非水素原子に置き換えられている基は含まれる。
【0065】
「ヘテロシクリルアミノアルキル」とは、炭素または水素結合が、上記の少なくとも1つの非置換ヘテロシクリル基と結合している窒素原子との結合に置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。
【0066】
「置換ヘテロシクリルアミノアルキル」とは、ヘテロシクリル基が上記の置換ヘテロシクリル基であり、かつ/またはアルキル基が上記の置換アルキル基である、上記の非置換ヘテロシクリルアミノアルキル基を指す。単に、全てのヘテロシクリルアミノアルキル基における窒素原子と結合しているだけでは、全てのヘテロシクリルアミノアルキル基が置換されているとは見なされない。しかしながら、置換ヘテロシクリルアミノアルキル基には、基の窒素原子と結合している水素が非炭素および非水素原子に置き換えられている基は含まれる。
【0067】
「アルキルアミノアルコキシ」とは、炭素または水素結合が、親化合物と結合している酸素原子との結合に置き換えられており、かつ非置換アルキル基の別の炭素または水素結合が、水素原子および上記の非置換アルキル基と結合している窒素原子と結合している、上記の非置換アルキル基を指す。
【0068】
「置換アルキルアミノアルコキシ」とは、親化合物と結合している酸素原子と結合しているアルキル基の炭素または水素原子との結合が、置換アルキル基に関して上記したとおりの非炭素および非水素原子との1以上の結合に置き換えられており、かつ/あるいはアミノ基と結合している水素が非炭素および非水素原子と結合している場合、ならびに/あるいはアミンの窒素と結合しているアルキル基が、置換アルキル基に関して上記したとおりの非炭素および非水素原子と結合している場合の、上記の非置換アルキルアミノアルコキシ基を指す。単に、全てのアルキルアミノアルコキシ基においてアミンおよびアルコキシ官能基が存在していることだけでは、そのような基全てが置換アルキルアミノアルコキシ基とは見なされない。
【0069】
「非置換ジアルキルアミノアルコキシ」とは、炭素または水素結合が、親化合物と結合している酸素原子との結合に置き換えられており、かつ非置換アルキル基の別の炭素または水素結合が、上記の他の2つの類似したまたは異なる非置換アルキル基と結合している窒素原子と結合している、上記の非置換アルキル基を指す。
【0070】
「置換ジアルキルアミノアルコキシ」とは、親化合物と結合している酸素原子と結合しているアルキル基の炭素または水素原子との結合が、置換アルキル基に関して上記したとおりの非炭素および非水素原子との1以上の結合に置き換えられており、かつ/あるいはアミンの窒素と結合している1つ以上のアルキル基が、置換アルキル基に関して上記したとおりの非炭素および非水素原子と結合している場合の、上記の非置換ジアルキルアミノアルコキシ基を指す。単に、全てのジアルキルアミノアルコキシ基においてアミンおよびアルコキシ官能基が存在していることだけでは、そのような基全てが置換ジアルキルアミノアルコキシ基とは見なされない。
【0071】
「ヘテロシクリルオキシ」とは、水素原子との結合が、上記の他の非置換ヘテロシクリル基の環原子との結合に置き換えられている、ヒドロキシル基(−OH)を指す。
【0072】
「置換ヘテロシクリルオキシ」とは、水素原子との結合が、上記の他の置換ヘテロシクリル基の環原子との結合に置き換えられている、ヒドロキシル基(−OH)を指す。
【0073】
芳香族残基を含む疎水性官能基
芳香族残基は、所望により置換されているアリールまたはヘテロアリール残基であり得る。「アリール」としては、限定されるものではないが、一例として、フェニル、ビフェニル、アントラセニル、ナフテニルのような基が含まれる。「アリール」には、ナフタレンのような縮合環を含む基が含まれるが、環員の1個と結合している、アルキルまたはハロ基のような他の基を有するアリール基は含まれず、トリルのようなアリール基は、本明細書において以下に記載するとおり、本明細書において置換アリール基と見なされる。アリール基は、リガンド中の1個以上の炭素原子、酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子と結合する可能性がある。
【0074】
「置換アリール基」は、非置換アリール基に対して、置換アルキル基が非置換アルキル基に対して有するものと同じ意味を有する。しかしながら、置換アリール基には、芳香族炭素のうちの1個が上記の非炭素または非水素原子のうちの1個と結合しているアリール基も含まれ、同様に、アリール基の1個以上の芳香族炭素が、上記の置換および/もしくは非置換アルキル、アルケニル、またはアルキニル基と結合しているアリール基も含まれる。これには、縮合環構造を定義するために、アリール基の2個の炭素原子がアルキル、アルケニル、またはアルキニル基の2個の原子と結合している結合配置(例えば、ジヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチル)が含まれる。
【0075】
アリールおよびヘテロアリールの例としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基などのような(C−C12)アリール基、および(C−C)ヘテロアリール基、またはピリジル基などが含まれる。
【0076】
また、少なくとも1つの疎水性官能基が所望により置換されている芳香族残基を含むまたはからなる場合には、芳香族残基は、フルオレニル、ピロリル(pyrroyl)、フラニル、チエニル、チオフェニル、チアゾリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、およびプリニルを含むまたはからなる芳香族残基からなる群から選択され得る。さらなる例としては、限定されるものではないが、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドレニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシインドリル、ベンズオキサゾリニル、およびイサチノイルが含まれる。
【0077】
一例として、限定されるものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2位、3位、4位、5位または6位、ピリダジンの3位、4位、5位または6位、ピリミジンの2位、4位、5位または6位、ピラジンの2位、3位、5位または6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール、またはテトラヒドロピロールの2位、3位、4位または5位、オキサゾール、イミダゾール、またはチアゾールの2位、4位または5位、イソキサゾール、ピラゾール、またはイソチアゾールの3位、4位または5位、アジリジンの2位または3位、アゼチジンの2位、3位または4位、キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位または8位、あるいはイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位または8位に結合し得る。さらに典型的には、炭素結合複素環としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、または5−チアゾリルが含まれる。
【0078】
一例として、限定されるものではないが、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、およびカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位に結合し得る。典型的に、窒素結合複素環としては、1−アジリジル、1−アゼチジル(azetedyl)、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、および1−ピペリジニルが含まれる。
【0079】
上記から明らかになるように、複素芳香族基は、所望により置換されている縮合複素芳香族化合物を含むまたはからなる複素芳香族基からなる群からも選択され得る。例としては、例えば、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゼンおよびキノリンが含まれる。
【0080】
一実施形態では、芳香族残基は、1つ以上の所望により置換されている脂肪族基(本明細書において直前に記載する、直鎖、分岐または環状(C−C10)アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基)などのような所望により置換されている脂肪族基など)で置換され得る。
【0081】
芳香族残基は、1個以上のヘテロ原子で置換され得るし、または1つ以上の芳香族基で置換され得るし、または1つ以上の複素芳香族基で置換され得る。
【0082】
また、芳香族残基は、例えば、置換アルキルまたはアリールまたはヘテロアリールで置換され得、その場合には、芳香族残基、またはアルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールが、O、N、Sおよびハロゲンから選択されるヘテロ原子で置換されているか、またはヒドロキシル、アミノ、チオール、ハロゲン、カルボニル、カルボン酸、エーテルおよびエステルから選択される1つ以上の基で置換されている。
【0083】
アリールおよびヘテロアリール基はまた、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基で置換され得る。ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子である。アルコキシル基の例としては、例えば、(C−C)アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、t−ブトキシ基など)が含まれる。アルキルチオ基の例としては、例えば、上記の(C−C10)アルキル基と、チオ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、n−プロピルチオ基、t−ブチルチオ基などが含まれる。アリールチオ基の例としては、例えば、上記の(C−C12)アリール基と、チオ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、フェニルチオ基などが含まれる。アリール、ヘテロアリール、および飽和炭化水素基に存在し得るアリールオキシ基の例としては、例えば、上記の(C−C12)アリール基と、オキシ基とからなるものが含まれ、その具体的な例としては、例えば、フェノキシ基などが含まれる。
【0084】
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、芳香環化合物および非芳香環化合物の両方を指し、3個以上の環員を含有しており、そのうちの1個以上の環員がヘテロ原子(限定されるものではないが、N、O、およびSなど)である、単環、二環、および多環化合物を含む(例えば、限定されるものではないが、キヌクリジル)。「ヘテロシクリル」には、ベンズイミダゾリルのような縮合複素環が含まれるが、環員の1個と結合している、アルキルまたはハロ基のような他の基を有するヘテロシクリル基は含まれず、2−メチルベンズイミダゾリルのような化合物は置換ヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基の例としては、限定されるものではないが、1〜4個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど)、テトラゾリル(例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど)など);1〜4個の窒素原子を含有する飽和3〜8員環(限定されるものではないが、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルなど);1〜4個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基(限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルなど);1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリルなど)など);1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜8員環(限定されるものではないが、モルホリニルなど);1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基(例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサジニル(例えば、2H−1,4−ベンゾキサジニルなど));1〜3個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリルなど)など);1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する飽和3〜8員環(限定されるものではないが、チアゾロジニルなど);1〜2個の硫黄原子を含有する飽和および不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、チエニル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピランなど);1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環(限定されるものではないが、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアジニル(例えば、2H−1,4−ベンゾチアジニルなど)、ジヒドロベンゾチアジニル(例えば、2H−3,4−ジヒドロベンゾチアジニルなど)など)、酸素原子を含有する不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、フリルなど);1〜2個の酸素原子を含有する不飽和縮合複素環(ベンゾジオキソリル(例えば、1,3−ベンゾジオキソイルなど)など);1個の酸素原子および1〜2個の硫黄原子を含有する不飽和3〜8員環(限定されるものではないが、ジヒドロオキサチイニルなど);1〜2個の酸素原子と1〜2個の硫黄原子を含有する飽和3〜8員環(1,4−オキサチアンなど);1〜2個の硫黄原子を含有する不飽和縮合環(ベンゾチエニル、ベンゾジチイニルなど);ならびに1個の酸素原子と1〜2個の酸素原子を含有する不飽和縮合複素環(ベンゾオキサチイニルなど)が含まれる。ヘテロシクリル基には、環の1個以上のS原子が、1または2個の酸素原子と二重結合している上記のもの(スルホキシドおよびスルホン)も含まれる。例えば、ヘテロシクリル基としては、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェンオキシド、およびテトラヒドロチオフェン 1,1−ジオキシドが含まれる。好ましいヘテロシクリル基は、5または6個の環員を含有するものである。より好ましいヘテロシクリル基としては、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、チオモルホリン、チオモルホリンのS原子が1個以上のO原子と結合しているチオモルホリン、ピロール、ホモピペラジン、オキサゾリジン−2−オン、ピロリジン−2−オン、オキサゾール、キヌクリジン、チアゾール、イソキサゾール、フラン、およびテトラヒドロフランが含まれる。
【0085】
「置換ヘテロシクリル」とは、環員の1個が、置換アルキル基および置換アリール基に関して上記したような非水素原子と結合している、上記の非置換ヘテロシクリル基を指す。例としては、限定されるものではないが、とりわけ、2−メチルベンズイミダゾリル、5−メチルベンズイミダゾリル、5−クロロベンズチアゾリル、1−メチルピペラジニル、および2−クロロピリジルが含まれる。
【0086】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、非置換アルキル基の水素または炭素結合が、上記のヘテロシクリル基との結合と置き換えられている、上記の非置換アルキル基を指す。例えば、メチル(−CH)は非置換アルキル基である。メチル基の水素原子がヘテロシクリル基との結合に置き換えられているならば(メチルの炭素がピリジンの炭素2(ピリジンのNと結合している炭素のうちの1個)またはピリジンの炭素3または4と結合している場合など)、その化合物は非置換ヘテロシクリルアルキル基である。
【0087】
「置換ヘテロシクリルアルキル」は、非置換ヘテロシクリルアルキル基に対して、置換アラルキル基が非置換アラルキル基に対して有するものと同じ意味を有する。しかしながら、置換ヘテロシクリルアルキル基には、非水素原子がヘテロシクリルアルキル基のヘテロシクリル基のヘテロ原子(限定されるものではないが、ピペリジニルアルキル基のピペリジン環の窒素原子など)と結合している基も含まれる。
【0088】
特定の一実施形態では、所望により置換されている芳香族残基は、フェニル、ナフチル、フルオレニル、ピリジン、フラン、チオフェン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、オキサゾール、ピラミジンおよびプリンを含むまたはからなる芳香族および複素芳香族残基からなる群から選択してよい。
【0089】
また、置換芳香族残基は、1つ以上の脂肪族基で置換されていてよく、または1個以上のヘテロ原子で置換されていてよく、または1つ以上の芳香族基で置換されていてよく、または1つ以上の複素芳香族基で置換されていてよい。
【0090】
少なくとも1つの疎水性官能基は、所望により置換されている複素芳香族残基、例えば、フラン、ピロールおよびチオフェンを含むまたはからなる複素芳香族残基からなる群から選択される複素芳香族残基、あるいはインドール、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゼンおよびキノリンからなる群から選択される縮合複素芳香族化合物のような縮合複素芳香族化合物を含むまたはからなる複素芳香族残基からなる群から選択される複素芳香族残基も含んでよくまたはからなってよい。
【0091】
上記の実施形態では、芳香族残基は、アルキルまたはアリールまたはヘテロアリールで置換されていてよい。
【0092】
また、芳香族残基、またはアルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールは、O、N、Sおよびハロゲンから選択されるヘテロ原子で置換されていてよく、かつ/または芳香族残基、またはアルキルもしくはアリールもしくはヘテロアリールは、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ハロゲン、カルボニル、カルボン酸、エーテルおよびエステルから選択される1つ以上の基で置換されていてよい。
【0093】
一実施形態では、リガンドは、疎水基(例えば、芳香族基を含むまたはからなる疎水基、あるいは脂肪族基を含むまたはからなる疎水基)を含む少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0094】
カチオン性官能基
カチオン性官能基は、永久正電荷によるか、または通常の生理条件下でHイオンと結合することにより正に帯電している。通常の生理条件下でリガンドが水性媒質中に存在する場合、カチオン性官能基は、リガンドの構造における表面位置を求めるように、水溶液に引き寄せられる。通常の生理条件下でリガンドが結合パートナーと結合する場合、カチオン性官能基は、リガンド結合パートナーのアニオン性基を求めるであろう。
【0095】
カチオン性官能基は、1個以上の正帯電窒素、1個以上のリン原子および/または1個以上の硫黄原子を含むカチオン性基から選択されることが好ましい。
【0096】
好ましいカチオン性基は、例えば、アルキルアンモニウム(トリメチルアンモニウム、もしくはトリエチルアンモニウム、またはジメチルアンモニウム、もしくはベンジルジメチルアンモニウムなど)、またはグアニジンのような基の永久正帯電窒素、あるいは正帯電複素環(イミダゾリニウム、ピペリジニウムおよびピロリジニウムなど)の正帯電窒素を含む。グアニジンが特に好ましい。
【0097】
他の好ましいカチオン性基は、pH3〜8の範囲、特に、3〜7の範囲の水溶液中で部分的正電荷を有する一置換および二置換アミン(モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、複素環アミンおよび芳香族アミンなど)である。
【0098】
正帯電窒素は、アミノ酸残基(リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、ジアミノペンタン酸、ジアミノヘキサン酸、ジアミノピメリン酸、ホモアルギニン、ホモシトルリン、p−アミノフェニルアラニンおよび3−アミノチロシンなど)によっても供与することができる。アルギニンが特に好ましい。
【0099】
アミノ酸の側鎖により、1つ以上の疎水性官能基と1つ以上のカチオン性官能基の両方を与えることができる。通常、アミノ酸によって前記官能基の両方を与えている場合には、少なくとも1つの疎水性官能基と少なくとも1つのカチオン性官能基は、リガンドの異なるアミノ酸によって与えられる。アミノ酸は別として、本明細書において以下にさらに詳細に記載するように、リガンドは他のリガンド残基を含み得る。
【0100】
本発明の範囲内で「アミノ酸」とは、広義に用いられ、天然に存在するL−アミノ酸またはその残基を含むものである。天然に存在するアミノ酸に対して一般に用いられる1文字および3文字略語を本明細書において用いる(Lehninger, Biochemistry, 2d ed., pp. 71-92, (Worth Publishers: New York, 1975)。この用語は、D−アミノ酸(およびその残基)、ならびに化学修飾されたアミノ酸(通常タンパク質には組み込まれない天然に存在するアミノ酸(ノルロイシンなど)を含むアミノ酸類似体など)、さらにアミノ酸特有の、当技術分野で公知の特性を有する化学合成された化合物も含む。
【0101】
例えば、天然PheまたはProと同じ、リガンドの立体配座制限を可能にする、フェニルアラニンまたはプロリンの類似体またはミメティクスは、アミノ酸の定義内に含まれる。そのような類似体およびミメティクスは、本明細書においてアミノ酸の「機能的等価物」と称する。アミノ酸の他の例については、Roberts and Vellaccio, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Eds. Gross and Meiehofer, Vol. 5, p. 341 (Academic Press, Inc.: N.Y. 1983)により挙げられている。
【0102】
アミノ酸は、典型的には、アミド結合によって連結されるが、例えば、−NHN(R)CO−;−NHC(R)CO−;−NHC(RR')CO−;−NHC(=CHR)CO−;−NHCCO−;−NHCHCHRCO−;−NHCHRCHCO−;−COCH−;−COS−;−CONR−;−COO−;−CSNH−;−CHNH−;−CHCH−;−CHS−;−CHSO−;−CHSO−;−CH(CH)S−;−CH=CH−;−NHCO−;−NHCONH−;−CONHO−;−C(=CH)CH−;−PONH−;−POCH−;−POCH−;−SONH−から選択される任意の1以上の結合のような他の結合によっても、本発明のリガンドのアミノ酸残基を結合させることができる。R(およびR')は官能基(例えば、疎水性官能基またはカチオン性基など)、あるいは上記の基が結合した別の構造部分を示す。「アミノ酸」間の現在最も好ましい結合はアミド結合である。
【0103】
発明のリガンドに組み込むことができるアミノ酸の例については、本明細書において以下に記載する:
【0104】
グリシル;アミノポリカルボン酸(例えば、アスパラギン酸、p−ヒドロキシアスパラギン酸、グルタミン酸、β−ヒドロキシグルタミン酸、β−メチルアスパラギン酸、β−メチルグルタミン酸、β,β−ジメチルアスパラギン酸、γ−ヒドロキシグルタミン酸、β,γ−ジヒドロキシグルタミン酸、β−フェニルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、3−アミノアジピン酸、2−アミノピメリン酸、2−アミノスベリン酸および2−アミノセバシン酸残基);アミノ酸アミド(グルタミニルおよびアスパラギニルなど);ポリアミノ−または多塩基性−モノカルボン酸(アルギニン、リジン、β−アミノアラニン、γ−アミノブチリン、オルニチン、シトルリン、ホモアルギニン、ホモシトルリン、5−ヒドロキシ−2,6−ジアミノヘキサン酸(一般に、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジンを含む)およびジアミノ酪酸残基など);他の塩基性アミノ酸残基(ヒスチジニルなど);ジアミノジカルボン酸(α,α'−ジアミノコハク酸、α,α'−ジアミノグルタル酸、α,α'−ジアミノアジピン酸、α,α'−ジアミノピメリン酸、α,α'−ジアミノ−β−ヒドロキシピメリン酸、α,α'−ジアミノスベリン酸、α,α'−ジアミノアゼライン酸、およびα,α'−ジアミノセバシン酸残基など);イミノ酸(プロリン、4−または3−ヒドロキシ−2−ピロリジン−カルボン酸(一般に、ヒドロキシプロリン、アロヒドロキシプロリンを含む)、γ−メチルプロリン、ピペコリン酸、5−ヒドロキシピペコリン酸、−N([CHCOORPR)(式中、nは1、2、3、4、5または6であり、RPRは−Hまたは保護基である)、およびアゼチジン−2−カルボン酸残基など);モノ−またはジ−アルキル(一般には、C−C25分岐または直鎖)アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、アリルグリシン、ブチリン、ノルバリン、ノルロイシン、ヘプチリン、α−メチルセリン、α−アミノ−α−メチル−γ−ヒドロキシ吉草酸、α−アミノ−α−メチル−6−ヒドロキシ吉草酸、α−アミノ−α−メチル−ε−ヒドロキシカプロン酸、イソバリン、α−メチルグルタミン酸、α−アミノイソ酪酸、α−アミノジエチル酢酸、α−アミノジイソプロピル酢酸、α−アミノジ−n−プロピル酢酸、α−アミノジイソブチル酢酸、α−アミノジ−n−ブチル酢酸、α−アミノエチルイソプロピル酢酸、α−アミノ−n−プロピル酢酸、α−アミノジイソアミル酢酸、α−メチルアスパラギン酸、α−メチルグルタミン酸、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸;イソロイシン、アロイソロイシン、tert−ロイシン、β−メチルトリプトファンおよびα−アミノ−α−エチル−β−フェニルプロピオン酸残基など);β−フェニルセリニル;脂肪族α−アミノ−β−ヒドロキシ酸(セリン、β−ヒドロキシロイシン、β−ヒドロキシノルロイシン、β−ヒドロキシノルバリン、およびα−アミノ−α−ヒドロキシステアリン酸残基など);α−アミノ、α−、γ−、δ−またはε−ヒドロキシ酸(ホモセリン、γ−ヒドロキシノルバリン、δ−ヒドロキシノルバリンおよびε−ヒドロキシノルロイシン残基など);カナビニル(canavinyl)およびカナリニル;γ−ヒドロキシオルニチニル;2−ヘキソサミン酸(2-Hexosaminic acids)(D−グルコサミン酸またはD−ガラクトサミン酸残基など);α−アミノ−β−チオール(ペニシラミン、β−チオールノルバリンまたはβ−チオールブチリン残基など);システインをはじめとする他の硫黄含有アミノ酸残基;ホモシスチン;β−フェニルメチオニン;メチオニン;S−アリル−(L)−システインスルホキシド;2−チオールヒスチジン;シスタチオニン;ならびにシステインまたはホモシステインのチオールエーテル;フェニルアラニン、トリプトファンおよび環置換アミノ酸(フェニル−またはシクロヘキシルアミノ酸、α−アミノフェニル酢酸、α−アミノシクロヘキシル酢酸およびα−アミノ−β−シクロヘキシルプロピオン酸など);アリール、低級アルキル(C−C)、ヒドロキシ、グアニジノ、オキシアルキルエーテル、ニトロ、硫黄またはハロ置換フェニルを含むフェニルアラニン類似体および誘導体(例えば、チロシン、メチルチロシンおよびo−クロロ−、p−クロロ−、3,4−ジクロロ、o−、m−またはp−メチル−、2,4,6−トリメチル−、2−エトキシ−5−ニトロ、2−ヒドロキシ−5−ニトロおよびp−ニトロ−フェニルアラニン);フリル−、チエニル−、ピリジル−、ピリミジニル−、プリンまたはナフチルアラニン;およびトリプトファン類似体および誘導体(キヌレニン、3−ヒドロキシキヌレニン、2−ヒドロキシトリプトファンおよび4−カルボキシトリプトファン残基を含む);α−アミノ置換アミノ酸残基(サルコシン(N−メチルグリシン)、N−ベンジルグリシン、N−メチルアラニン、N−ベンジルアラニン、N−メチルフェニルアラニン、N−ベンジルフェニルアラニン、N−メチルバリンおよびN−ベンジルバリンを含む);ならびにα−ヒドロキシおよび置換α−ヒドロキシアミノ酸残基(セリン、トレオニン、アロトレオニン、ホスホセリンおよびホスホトレオニン残基を含む)。モノ−もしくはジ−アルキルまたはアリールアミノ酸、シクロアルキルアミノ酸などのような疎水性アミノ酸も重要である。
【0105】
好ましいリガンド
本明細書において以下に引用する選択リガンド残基を記載する:
PPC:4−フェニルピペリジン−4−カルボン酸
Dap:ジアミノプロピオン酸
L−Orn:L−オルニチン
DPPAA:2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ酢酸
DMBA:3,5−ジメトキシ安息香酸
TMPPA:3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)プロピオン酸
DBHPA:3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸
1H2NA:1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
DPPA:3,3−ジフェニルプロピオン酸
SAA:サリチル酸
DBBA:3,5−ジ−tert−ブチル安息香酸
DPPBA:4−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸
TEBA:3,4,5−トリエトキシ安息香酸
PCAA:α−フェニルシクロペンタン酢酸
MDCA:3,4−(メチレンジオキシ)桂皮酸
Gly:グリシン
L−Phe:L−フェニルアラニン
L−Arg:L−アルギニン
L−His:L−ヒスチジン
L−Trp:L−トリプトファン
L−Pro:L−プロリン
L−Asn:L−アスパラギン
L−Lys:L−リジン
L−Asp:L−アスパラギン酸
D−Phe:D−フェニルアラニン
D−Arg:D−アルギニン
D−Tyr:D−チロシン
D−Ser:D−セリン
D−Trp:D−トリプトファン
D−Pro:D−プロリン
D−Leu:D−ロイシン
Ahx:6−アミノヘキサン酸
Aib:α−アミノイソ酪酸
DBHBA:3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸
INA:イソニペコチン酸(isonipectoic acid)
Nle:L−ノルロイシン
PPC:4−フェニル−ピペリジン−4−カルボン酸
SAA:サリチル酸
3HBA:3−ヒドロキシ安息香酸
4HBA:4−ヒドロキシ安息香酸
【0106】
好ましい親和性リガンドの主要なクラスでは、各リガンドは、1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含み、少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、かつ前記リガンドが分子量120Da〜1,500Daを有する。
【0107】
1つの好ましい実施形態では、親和性リガンドは、共有結合している残基X−X−Xを含みまたはからなり、所望により、X、Xおよび/またはX、特に、Xおよび/またはXはリンカー残基Lと結合している。
【0108】
好ましくは、X、X、X、および任意のリンカー残基は、厳しい化学的条件(例えば、1M強酸または1M強塩基)および生物学的条件(例えば、高プロテアーゼ活性)に対する反復曝露に耐え得る、好ましくは高度に安定した分子である。同様に、X、X、X、および任意のリンカー残基それぞれの間の各結合も、高度に安定し、厳しい化学的および生物学的条件に耐え得る。
【0109】
残基Xは、好ましくは、Arg、Phe、PPC、DBHBA、SAA、DAP、DAB、(DBHBA)−DAP、(MDCA)−DAP、DPBBA、DBBA、PCAA、DPPAA、Trp、TMPPA、DBHPAからなる群から選択され、その場合の各メンバーは、所望により、光学活性の単離残基およびその残基の両型の光学活性異性体を含むラセミ混合物からさらに選択される。好ましい一変形形態では、Xは、L−Arg、D−Lys、D−Phe、D−Pro、INA、PPC、DBHBA、3HBA、4HBAおよびSAAからなる群から選択される。
【0110】
残基Xは、好ましくは、Arg、Asn、Leu、Lys、Phe、Pro、PPC、DAP、DAB、His、Trp、Tyr、Serからなる群から選択され、その場合の各メンバーは、所望により、光学活性の単離残基およびその残基の両型の光学活性異性体を含むラセミ混合物からさらに選択される。好ましい一変形形態では、Xは、L−Arg、L−Asn、D−Leu、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−Pro、AIB、AHX、INA、NleおよびPPCからなる群から選択される。
【0111】
残基Xは、好ましくは、Arg、Asn、Pro、PPC、Asp、Orn、(1H2NA)Dapからなる群から選択され、その場合の各メンバーは、所望により、光学活性の単離残基およびその残基の両型の光学活性異性体を含むラセミ混合物からさらに選択される。特に、Xは、好ましくは、L−Arg、L−Asn、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−ProおよびPPCからなる群から選択される。
【0112】
抗体(モノクローナル抗体など)に対する親和性を有する、現在有望なリガンドセットは、(X−X−Xに対応する)1以上のセットを含むまたはからなるリガンドである:
【0113】
D−Phe−(L)Arg−(L)Arg
L−Arg−D−Phe−(L)Arg
PPC−D−Pro−(L)Arg
PPC−D−Leu−PPC
INA−D−Phe−PPC
PPC−Aib−PPC
D−Phe−(L)Arg−(L)Arg
L−Arg−D−Phe−(L)Arg
L−Arg−(L)Arg−D−Phe
PPC−(L)Arg−D−Pro
D−Pro−PPC−(L)Arg
L−Arg−D−Pro−PPC
L−Arg−D−Lys−(L)Arg
L−Arg−(L)Arg−D−Lys
D−Lys−INA−(L)Arg
INA−(L)Arg−D−Lys
PPC−Ahx−PPC
PPC−Nle−PPC
SAA−(L)Arg−(L)Pro
SAA−(L)Pro−(L)Arg
DBHBA−(L)Arg−(L)Asn
DBHBA−(L)Asn−(L)Arg
3HBA−(L)Arg−(L)Pro
3HBA−(L)Pro−(L)Arg
4HBA−(L)Arg−(L)Pro
4HBA−(L)Pro−(L)Arg
【0114】
もう1つの現在有望な実施形態では、リガンドは、D−Leu;D−Lys;D−Phe;D−Pro;L−Arg;L−Asn;L−Pro;Ahx;Aib;DBHBA;INA;Nle;PPC;SAA;3HBAおよび4HBAからなる群から選択される5つ未満の残基(4つ未満の残基など、例えば、3つの残基)を含むまたはからなる。よって、リガンドは、D−Leu;D−Lys;D−Phe;D−Pro;L−Arg;L−Asn;L−Pro;Ahx;Aib;DBHBA;INA;Nle;PPC;SAA;3HBAおよび4HBAからなる群から個別に選択される3つの残基、X−X−Xからなり得る。
【0115】
リガンドが3つの残基、X−X−Xを含むまたはからなる場合には、
は、好ましくは、D−Lys;D−Phe;D−Pro;L−Arg;DBHBA;INA;PPC;SAA;3HBAおよび4HBAからなる群から選択され、
は、好ましくは、D−Leu;D−Lys;D−Phe;D−Pro;L−Arg;L−Asn;L−Pro;Ahx;AIB;INA;Nle;PPCからなる群から選択され、かつ
は、好ましくは、D−Lys;D−Phe;D−Pro;L−Arg;L−Asn;L−Pro;PPCからなる群から選択される。
【0116】
さらなる実施形態では、リガンドは、3つの共有結合している残基、X−X−Xを含みまたはからなり、
前記共有結合している残基は、L−PM (式中、PMは固相支持物質、好ましくは、所望により、架橋および/またはビーズ形態の、ポリマーマトリックスである)のリンカー残基Lとさらに共有結合しており、
は、D−および/もしくはL−配置の天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
は、D−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり(ただし、Xはトレオニン残基ではない)、かつ
は、D−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
、XおよびXのうちの少なくとも1つは、カチオン性官能基を含み、かつ
、XおよびXのうちの少なくとも1つは、疎水性官能基を含み、
は、L−Arg、D−Lys、D−Phe、D−Pro、INA、PPC、DBHBA、3HBA、4HBAおよびSAAから選択され、
は、L−Arg、L−Asn、D−Leu、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−Pro、AIB、AHX、INA、NLEおよびPPCから選択され、かつ
は、L−Arg、L−Asn、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−ProおよびPPCから選択される。
【0117】
さらに有望な実施形態では、リガンドは、3つの共有結合している残基、X−X−Xを含みまたはからなり、
前記共有結合している残基は、L−PMのリンカーLと共有結合しており、
は、D−および/もしくはL−配置の天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
は、D−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり(ただし、Xはトレオニン残基ではない)、かつ
は、D−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
、XおよびXのうちの少なくとも1つは、カチオン性官能基を含み、かつ
、XおよびXのうちの少なくとも1つは、疎水性官能基を含み、
は、L−Arg、D−Lys、D−Phe、D−Pro、INA、PPC、DBHBA、3HBA、4HBAおよびSAAから選択され、
は、L−Arg、L−Asn、D−Leu、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−Pro、AIB、AHX、INA、NLEおよびPPCから選択され、かつ
は、L−Arg、L−Asn、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−ProおよびPPCから選択される。
【0118】
一実施形態では、ポリマーマトリックスに結合したリンカー残基Lは、酸、塩基、温度、光によるか、または化学試薬と接触させることにより切断可能である。従来どおり、ポリマーマトリックスに結合しているリンカーは、(3−ホルミルインドール−1−イル)酢酸、2,4−ジメトキシ−4'−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、HMPA、HMPB、HMPPA、Rink酸、Rinkアミド、Knorrリンカー、PALリンカー、DCHDリンカー、Wangリンカーおよびトリチルリンカーから選択されるものであってよい。切断可能なリンカーによってポリマーマトリックスと結合しているリガンドは、解析目的に、例えば、診断的適用のために使用することができる。
【0119】
本発明の一実施形態では、X、X、およびXは、天然アミノ酸およびそれらの立体異性体の群から選択される。
【0120】
側鎖グアニジノまたはアミノ基、特に、グアニジノ基を有する少なくとも1つのアミノ酸を含めることにより、一般に、結合能力に関して有利な特性を与えることができる。ということが見出されている。よって、リガンドに含めるのに特に関連のあるアミノ酸は、アルギニン、ホモアルギニン、リジン、ホモリジンおよびオルニチン(ornitine)、特に、アルギニンおよびホモアルギニンである。
【0121】
リガンドの特に有望なサブクラスは、リガンドが2つのアルギニン部分を含む場合のものである。よって、この実施形態において特に有利なリガンドは、
【化1】

N−(D)Phe−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OH
および
【化2】

N−(L)Arg−(D)Phe−(L)Arg−Gly−OH
である。
【0122】
さらなる実施形態では、X、X、およびXは、天然および非天然アミノ酸の群から選択される。
【0123】
よって、リガンドのさらに有望なサブクラスでは、
は、Arg、Phe、PPC、DBHBA、SAA、DAP、DAB、(DBHBA)−DAP、(MDCA)−DAP、DPBBA、DBBA、PCAA、DPPAA、Trp、TMPPA、およびDBHPAからなる群から選択され、
は、Arg、Asn、Leu、Lys、Phe、Pro、PPC、DAP、DAB、His、Trp、Tyr、およびSerからなる群から選択され、
は、Arg、Asn、Pro、PPC、Asp、Orn、および(1H2NA)Dapからなる群から選択される。
【0124】
このサブクラスに属する特に有利なリガンドは、
【化3】

HN−PPC−(D)Pro−(L)Arg−Gly−OH
および
【化4】

HN−PPC−(D)Leu−PPC−Gly−OH
である。
【0125】
リガンドのさらなるサブクラスでは、各リガンドは、1つ以上の置換もしくは非置換フェニルまたはナフチル基と、1つ以上の1級アミンまたはグアニジンとを含む。
【0126】
この実施形態において特に有利なリガンドは、
【化5】

DBBA−(L)His−(L)Arg−Gly−OH、
DBBA−His−Arg−Gly−OH、
DBBA−His−Arg−Arg−Gly−OH、
【化6】

DPPBA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
【化7】

PCAA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
【0127】
【化8】

DPPBA−(L)Lys−(L)Arg−Gly−OH、
【化9】

SAA−(L)Arg−(L)Pro−Gly−OH、
【化10】

SAA−(L)Pro−(L)Arg−Gly−OH、
【化11】

DBHBA−(L)Arg−(L)Asn−Gly−OH、
【0128】
【化12】

DBHBA−(L)Asn−(L)Arg−Gly−OH、
【化13】

DPPBA−(L)Trp−(L)Arg−Gly−OH、
【化14】

(MDCA)−DAP−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH、
【0129】
【化15】

(MDCA)−DAP−(L)Arg−(L)Asp−Gly−OH、
【化16】

DPPAA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
【化17】

DPPAA−PPC−(L)Arg−Gly−OH、
【0130】
【化18】

DBHBA−(D)Phe−(D)Arg−Gly−OH、
【化19】

DPPAA−(D)tyr−(D)Arg−Gly−OH、
【化20】

N−(D)Trp−(D)Ser−(1H2NA)DAP−Aib−OH、
【0131】
【化21】

N−(L)His−(D)Ser−(1H2NA)DAP−Aib−OH、
【化22】

(DPPA)−DAP−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH、
【化23】

(DBHBA)−DAP−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OH、
DBHBA−DAP−Arg−Gly−OH、
DBHBA−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
【0132】
【化24】

TMPPA−(L)Trp−(L)Arg−Gly−OH、
【化25】

DBHPA−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH
である。
【0133】
代替親和性リガンド
親和性リガンドのもう1つの現在有望なクラスは、リガンドが1つ以上の疎水基と、1つ以上の複素芳香族基とを含む場合のものである。
【0134】
よって、好ましい親和性リガンドのもう1つの主要なクラスでは、各リガンドは、1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上の複素芳香族官能基とを含み、少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つの複素芳香族官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、かつ前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する。
【0135】
好ましくは、固定化されたそのような親和性リガンドをその上に有する親和性樹脂は、親和性樹脂1mL当たりモノクローナル抗体5mgより高い結合能力を有する。
【0136】
用語「複素芳香族官能基」とは、上文に、「芳香族残基を含む疎水性官能基」および「カチオン性官能基」において定義された複素芳香族種を包含するものである。
【0137】
親和性リガンドの主要なクラスについて、上記でさらに示された結合距離、空間距離(through space distances)、分子量などに関する詳細および優先は、このクラスの親和性リガンドにも当てはまり、当然のことながら、記載される「距離」とは、疎水性官能基と複素芳香族官能基との間である。
【0138】
このクラスに属するリガンドの一例は、
【化26】

(TEBA)−DAP−(L)Trp−(L)Trp−Gly−OH
である。
【0139】
固相支持物質
本発明のリガンドは、固相支持物質(ポリマー樹脂、高分子物質の表面、ガラス表面など)に共有結合により固定化されており、抗体(モノクローナル抗体など)を精製および/または単離するために使用することができる。
【0140】
固相支持物質は、一般に、ポリマーマトリックス(例えば、架橋ポリマーマトリックス)を含む。ほとんどの場合、そのポリマーマトリックスはビーズ状であり、あるいは、そのポリマーマトリックスは、モノリシックなユニットとして調製される。好ましくは、ビーズ状のポリマーマトリックスの少なくとも表面には親水性部分が含まれる。
【0141】
よって、固相支持物質は、一般に、樹脂、モノリス、フィルター、プレート形態(例えば、マイクロアレイ、繊維、センサー(カンチレバー(cantelever)、表面プラスモン共鳴センサー、または水晶振動子微量天秤など)である。
【0142】
樹脂は、液体中の化合物の分離に用いられる多孔性固体物質である。樹脂は、架橋ポリマー、セラミック(無機酸化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)であり得る。樹脂は、粒子(球状粒子または不規則形状粒子など)として提供される。
【0143】
リガンドは、好ましくは、湿潤樹脂1mL当たり抗体5mgより高い(樹脂1mL当たり抗体6mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体7mgより高い、樹脂1mL当たり抗体8mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体9mgより高い、樹脂1mL当たり抗体10mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体12mgより高い、樹脂1mL当たり抗体14mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体16mgより高い、樹脂1mL当たり抗体18mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体20mgより高い、樹脂1mL当たり抗体22mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体24mgより高い、樹脂1mL当たり抗体26mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体28mgより高い、樹脂1mL当たり抗体30mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体35mgより高い、樹脂1mL当たり抗体40mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり抗体45mgより高い、樹脂1mL当たり抗体50mgより高いなど、例えば、樹脂1mL当たり最大で抗体500mgであるなど)結合能力を特徴とする。
【0144】
「結合能力」とは、標的化合物(例えば、抗体など)と結合する樹脂の能力を意味する。結合能力は、樹脂(またはビーズ状物質の他の形態)1mL当たりの標的(例えば、抗体)mgで示され、既知濃度の純粋な標的の溶液を樹脂に通し、標的化合物の漏出まで容量を測定することにより、測定することができる。そういうわけで、結合能力は、漏出点容量に濃度を乗じ、ベッド容量で除した値で算出される。本明細書において、結合能力とは、抗体と結合する樹脂の能力を意味する。結合能力は、樹脂1mL当たりの抗体mgで示され、既知濃度の純粋な抗体の水性緩衝液(50mMリン酸Na、pH=7.0)を通し、樹脂を出た溶液のUV吸光度(280nm)の展開を記録することにより、測定することができる。漏出点容量とは、UV吸光度がその終値の5%に達した時点において樹脂から排出されている溶液の容量である。そういうわけで、結合能力は、漏出点容量に、供給溶液における抗体の濃度を乗じ、ベッド容量で除した値で算出される。
【0145】
リガンドが本質的に非多孔性の物質の表面(例えば、アレイ表面またはセンサー表面など)に結合している場合、リガンドの結合能力は、表面積当たりの結合したタンパク質の質量として測定される。リガンドは、好ましくは、1cm当たり抗体1ngより高い(1cm当たり抗体5ngより高いなど、例えば、1cm当たり抗体10ngより高い、1cm当たり抗体50ngより高いなど、例えば、1cm当たり抗体100ngより高い結合能力を特徴とする。
【0146】
樹脂の好適な例については、本明細書において以下にさらに詳細に開示する。
【0147】
ポリマーマトリックス
リガンドは、所望により、架橋および/またはビーズ形態の、あるいはモノリシックな多孔性物質としての、多孔性無機マトリックスまたはポリマーマトリックスのような固相支持体に共有結合し得る。ポリマーマトリックスの孔は、標的タンパク質が前記孔を通って拡散し、前記孔の内部表面のリガンドと相互作用するのに十分に広いことが好ましい。モル質量およそ150kDaのモノクローナル抗体に対しては、平均孔径50〜200nm(およそ100nmなど)が好ましい。数多くの市販の好適なポリマー樹脂(例えば、Sepharose(商標)、Fractogel(商標)、CIMGEL(商標)、Toyopearl)が入手可能である。
【0148】
一実施形態におけるビーズ状の、所望により、架橋型のポリマーマトリックスは、複数の親水性部分を含む。親水性部分は、架橋する際に、架橋ポリマーマトリックスを形成するポリマー鎖であり得る。例としては、例えば、ポリエチレングリコール部分、ポリアミン部分、ポリビニルアミン部分、およびポリオール部分が含まれる。
【0149】
いくつかの実施形態では、ビーズ状ポリマーマトリックスのコアおよび/または表面は、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される高分子物質を含む。
【0150】
ビーズ状ポリマーマトリックスは、PS、POEPS、POEPOP、SPOCC、PEGA、CLEAR、Expansin、ポリアミド、Jandagel、PS−BDODMA、PS−HDODA、PS−TTEGDA、PS−TEGDA、GDMA−PMMA、PS−TRPGDA、ArgoGel、Argopore樹脂、ULTRAMINE、架橋LUPAMINE、高機能PEGA、シリカ、Fractogel、Sephadex、Sepharose、ガラスビーズ、架橋ポリアクリレート、および前記のものの誘導体からなる群からも選択され得る;特に、ポリマーマトリックスは、SPOCC、PEGA、HYDRA、POEPOP、PEG−ポリアクリレートコポリマー、ポリエーテル−ポリアミンコポリマーおよび架橋ポリエチレンジアミンからなる群から選択される。
【0151】
上記の例は別として、ポリマーマトリックスを形成することができるいずれの物質も、おおむね、本発明のビーズの製造に使用することができる。好ましくは、ビーズのコア物質はポリマーである。いくつかの実施形態では、コアは、親水性高分子物質を含むまたはからなる。他の実施形態では、コアは、疎水性高分子物質を含むまたはからなる。いくつかの実施形態では、ビーズの表面は、コアと同じ物質を含むまたはからなる。
【0152】
大規模利用に有用な樹脂は、上記のまたは他の市販の樹脂のうちの1つ、Sephadex(商標)、Sepharose(商標)、Fractogel(商標)、CIMGEL(商標)、Toyopearl、架橋アガロース、およびマクロ多孔性ポリスチレンまたはポリアクリレートなどであってもよい。マトリックスは、主として、無機性のもの(マクロ多孔性ガラスまたは粘土無機物、あるいは樹脂と無機物の組合せ(Ceramic HyperD(商標)など)であってもよい。
【0153】
本発明のポリマービーズは、種々の重合性モノマー(スチレン、アクリレートおよび不飽和塩化物、エステル、アセテート、アミドおよびアルコールを含む)から調製することができ、それらとしては、限定されるものではないが、ポリスチレン(臭素化ポリスチレンのような高密度ポリスチレンラテックスを含む)、ポリメチルメタクリレートおよび他のポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデンおよびポリジビニルベンゼンが含まれる。他の実施形態では、ビーズは、スチレンモノマーまたはPEG型マクロモノマーから調製される。好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリエーテル、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアシルアミド、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、およびそれらの組合せからなる群から選択される。非常に好ましい表面およびコア部分としては、架橋PEG部分、ポリアミン部分、ポリビニルアミン部分、およびポリオール部分が含まれる。
【0154】
本発明の成分のビーズの製造に使用するのに好ましい疎水性ポリマーは、PS−DVB(ポリスチレンジビニルベンゼン)である。PS−DVBは、固相ペプチド合成(SPPS)に広く使用されており、つい最近では、特定の有機分子のポリマー担持調製での有用性が証明された(Adams et al. (1998) J. Org. Chem. 63:3706-3716)。適切に調製すれば(Grotli et al. (2000) J. Combi. Chem. 2:108-119)、PS−DVB担体は化学合成に最適な特性(高荷重、有機溶媒中での適度な膨潤および物理的安定性など)を示す。
【0155】
本発明の一実施形態では、リガンドは、センサーまたはアレイプレートの表面に結合しており、生体サンプル中の抗体を検出および/または定量するのに使用される。
【0156】
本明細書において、用語「生体サンプル」とは、天然サンプルまたは産業プロセス、例えば、組換えプロセスから得られたサンプルを含み、「体液」、すなわち、生物または生物の組織から抽出、排出、または分泌されたあらゆる液体物質を含む。体液は、必ずしも細胞を含んでいる必要はない。本発明に関連する体液には、限定されるものではないが、全血、血清、尿、血漿、脳脊髄液、涙、乳汁、滑液、および羊水が含まれる。
【0157】
さらなる実施形態では、複数のリガンドは、アレイプレートの表面に結合しており、複数のスポットとして配列されており、各スポットが一リガンドに相当する。そのような機能性アレイは、溶液中の抗体の存在を検出するために使用することができる。そのようなアレイは、生体サンプル中の特定の抗体の存在を検出する診断的適用のために使用することができる。
【0158】
さらなる実施形態では、複数のリガンドは、抗体の検出のため、所望により、定量のためにカンチレバーセンサーの結合表面に結合している。複数の親和性リガンドを複数のカンチレバーに結合することができ、各カンチレバーが一リガンドに相当する。そのような機能性アレイは、溶液中の様々な抗体の存在を検出するために使用することができる。そのようなマルチセンサーは、生体サンプル中の特定の抗体の存在を検出する診断的適用のために使用することができる。
【0159】
リンカー
上記のリガンドは、場合によって、リンカーを通じて、固相支持物質に共有結合により固定化されている。好ましい実施形態では、リガンドは、ポリマーマトリックスと共有結合しているリンカーと共有結合している。親和性リガンドを固相支持物質と結合させる一般技術については、Hermanson、Krishna Mallia and Smith, Immobilized Affinity Ligand Techniques”, Academic Press, 1992で見ることができる。
【0160】
リンカーは、リガンドを、例えば、ポリマーマトリックスまたは無機支持体のような固相支持体と結合させるのに使用される。リンカーによって、リガンドと固相支持体とが強く永続的に結合することが好ましい。本発明の固相支持物質をモノクローナル抗体またはそのフラグメントの反復精製に使用する場合には、このことが特に重要である。
【0161】
しかしながら、本発明の一実施形態では、リンカーは、選択的に切断可能であり得る。固相支持体を解析目的に使用する場合には、このことが有用であり得る。
【0162】
典型的なリンカーの例がアミノ酸およびポリペプチドである。考えられる他のリンカーとしては、炭水化物および核酸が含まれる。
【0163】
一実施形態では、ポリマーマトリックスに結合したリンカー残基Lは、酸、塩基、温度、光によるか、または化学試薬と接触させることにより切断可能である。特に、ポリマーマトリックスに結合しているリンカーは、(3−ホルミルインドール−1−イル)酢酸、2,4−ジメトキシ−4'−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、HMPA、HMPB、HMPPA、Rink酸、Rinkアミド、Knorrリンカー、PALリンカー、DCHDリンカー、Wangリンカーおよびトリチルリンカーであり得る。
【0164】
リガンドは、好ましくは、50Å未満の長さ(3〜30Åの長さなど、例えば、3〜20Åの長さ、3〜10Åの長さなど)のリンカーを通じて、固相支持体と結合し得る。
【0165】
リンカーは、疎水性官能基と、またはカチオン性官能基と、あるいは疎水性官能基とカチオン性官能基を連結するリガンドの構造部分と結合し得る。一実施形態では、リンカーはカチオン性官能基と結合している。しかしながら、リンカーは、カルボン酸基、またはアミノ基を介して、特にカルボン酸基を介して、親和性リガンドと結合していることが好ましい。
【0166】
リンカーには、例えば、サブユニットが同一または非同一リンカーサブユニットから選択されるように、複数の共有結合したサブユニットも含めてよい。一変形形態では、リンカーは、フレキシブルであり、3から、好ましくは50個未満の、同一または非同一の、共有結合したサブユニットを含む。
【0167】
本発明の好ましい実施形態では、リンカーLは、グリシン、アラニン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、およびHMBAからなる群から選択される。
【0168】
リンカーは、多分散ポリエチレングリコール;単分散ポリエチレングリコール(トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコールなど);アミノ酸;ジペプチド;トリペプチド;テトラペプチド;ペンタペプチド;ヘキサペプチド;ヘプタペプチド;オクタペプチド;ノナペプチド;デカペプチド、ポリアラニン;ポリグリシン、ポリリジン、ポリアルギニン(それらのいずれの組合せも含む)からなる群からも選択され得る。
【0169】
好ましい実施形態
好ましい一実施形態は、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含む、固相支持物質であって、
少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、
前記リガンドが分子量120Da〜1,500Daを有し、
前記リガンドが側鎖グアニジノ基を有する1つ以上のアミノ酸と、側鎖置換フェニルまたはナフチル基を有する1つ以上のアミノ酸とを含む、
固相支持物質に関する。
【0170】
上記の点から考えて、特に興味深いリガンドはDBBA−(L)His−(L)Arg−Gly−OHおよび(DBHBA)−DAP−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OHからなる群から選択されるものであることが分かった。
【0171】
構成物
本発明は、共有結合により固定化された複数の異なる親和性リガンドをその上に有する固相支持物質も提供する。そのような構成物は、生体サンプル由来の様々な抗体を分離するために使用することができる。
【0172】
抗体の単離方法
本発明のもう1つの態様は、タンパク質、例えば、抗体、特に、モノクローナル抗体のような生体分子の単離のための方法であって、
(i) 本明細書に記載の、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質を提供する工程、
(ii) 前記リガンドに対して親和性を有する抗体を推定上含むサンプルを提供する工程、
(iii) 前記リガンドを、前記抗体を推定上含む前記サンプルと接触させる工程、
(iv) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に結合させる工程、および
(v) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に単離する工程
を含む方法に関する。
【0173】
一変形形態では、この方法は、本明細書に記載のリガンドを提供する工程、前記リガンドを、例えば、ビーズ状および/または架橋型のポリマーマトリックスのような固相支持体に結合させる工程、前記リガンドに対して親和性を有する抗体を推定上含むサンプルを提供する工程、前記リガンドを、前記抗体を推定上含む前記サンプルと接触させる工程、前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に結合させる工程、および前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に単離する工程を含む。
【0174】
リガンドの結合能力は、樹脂1mL当たり抗体5mgより高いか、または「固相支持物質」において上記でさらに記載するようにさらに高いことが好ましい。
【0175】
当然のことながら、固相支持物質の取り扱いおよび手順は、従来の親和性クロマトグラフ法のものに本質的に従う。
【実施例】
【0176】
実施例
次の限定されない実施例により、本発明をさらに例示する。
【0177】
実施例では、大きなライブラリーをどのように設計し、モノクローナル抗体に対するそれらの親和性について試験するかを記載する。
【0178】
材料および方法
全ての試薬および溶媒は、商業的供給業者から入手し、さらなる精製は行わずに使用した。使用した全ての溶媒はHPLC用であった(モレキュラーシーブス上で保持)。Fmoc保護アミノ酸およびHMBAリンカーは、Bachem AG, Bubendorf, Switzerlandから入手した。PPCおよびACCは、Neosystem, Strasbourg, Franceから購入した。Sepharose(商標)はSterogeneから購入し、Fractogel(商標)はMerckから購入した。全てのリガンドは、PEGA1900(Versabeads(商標)A)樹脂で合成した。コンビナトリアルライブラリー合成では、20ウェルマルチプルカラムペプチドシンセサイザーを使用した。H NMRスペクトルは、CDCl溶液中、Varian Unity Inova 500MHz分光計を使用して記録した。化学シフトは、テトラメチルシランに対するδ値で報告する。ESI−質量スペクトルは、Waters Global Ultima質量分析計で記録し、MALDI−TOFスペクトルは、Bruker Reflex III質量分析計で、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を用いて記録した。分析および予備逆相HPLC分離は、Waters HPLCシステムで、分析用Zorbax 300SB−C18(4.5×50mm)およびDelta PAK(25×300mm)C18カラムを用いて、それぞれ流速1cm/分および10cm/分で実施した。検出は、分析目的では215nmにて多波長検出器(Waters 490E)により、予備分離にはフォトダイオードアレイ検出器(Waters M991)を使用した。A:水中0.1%TFAおよびB:90:10 アセトニトリル/水中0.1%TFAからなる溶媒系を使用した。
【0179】
Fcフラグメントの標識
抗体のFcフラグメントを重炭酸バッファー(pH8)での透析により精製した。精製したFcフラグメントをDMF中のオレゴングリーン色素(50×)で処理し、室温にて1時間維持した。ヒドロキシルアミン(1.5M、pH8.5)を加えて反応を停止させた。標識されたポリペプチドを重炭酸バッファー(pH8)での透析により精製した。
【0180】
実施例1.リガンドの合成
固相合成は以下のスキームに従った:
【化27】

【0181】
全ての化合物は、ポリエチレングリコール−アクリルアミド系アミノ官能性樹脂、PEGA1900で合成する。リガンドを、塩基不安定性p−ヒドロキシメチル安息香酸HMBAリンカーを介して、グリシン誘導体化樹脂に結合させた。
【0182】
DMFに溶かしたビルディングブロック(酸/アミノ酸;3当量)およびN−エチルモルホリン(4当量)およびTBTU(2.88当量)を加えた。反応混合物を5分間維持し、DMFで膨潤させた樹脂に2時間加えた。その樹脂をDMF、EtOH−DMFおよびDCMで洗浄した。
【0183】
標識Fcフラグメント中での合成化合物のインキュベーション
ビーズ(10mg)を水(10×)、重炭酸バッファー(pH8、10×)で洗浄し、重炭酸バッファーに1時間懸濁した。次いで、標識ポリペプチドを樹脂に加え、室温にて一晩維持した。その樹脂を重炭酸バッファー(pH8)および水で洗浄した。
【0184】
ビーズの蛍光を、蛍光顕微鏡とデジタルカメラを使用して記録した。発光フィルターを備えた水銀ランプにより可視青色域での励起を行った。ビーズの画像は水中で記録した。
【0185】
以下の式は合成に使用したビルディングブロックを示す。
【0186】
以下の表では、リガンドと、単純にサンプルを見て、サンプル間で見かけの色の強さを比較することにより決定したそれに対応する見かけの蛍光レベルを記載している。0〜3の任意の尺度では、0は無蛍光であることを示し、3は観察された蛍光が最強レベルであることを示す。
【0187】
【表1】

【0188】
実施例2.(実施例1の)リガンドのクロマトグラフ評価
クロマトグラフィーカラムの調製
新しい樹脂を充填モードで評価した。各樹脂の1mLをHR5クロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)に充填し、標準条件で適用した。
【0189】
充填後、カラムのベッド高は3.9cmであり、総容量は0.76mLであった。
【0190】
平衡化、ロード、溶出
マトリックスにモノクローナル抗体をロードする前に、カラムを50mMリン酸Na(pH7.0;条件9mS cm−1)含有平衡化バッファー6カラム容量で平衡化した。平衡化後、そのカラムに平衡化バッファー中のモノクローナル抗体溶液(タンパク質濃度1.14mg/mL)をロードした。続いて、そのカラムを平衡化バッファー6カラム容量で洗浄し、溶出バッファー1(25mM酢酸ナトリウム pH5.5;条件1.8mS cm−1)6カラム容量および溶出バッファー2(25mM酢酸ナトリウムバッファー pH3.8;0.5mS cm−1)6カラム容量で溶出した。このカラムを20%エタノール中で保存した。その後、マトリックスを40mMリン酸および20mM水酸化ナトリウムで再生した。平衡化、ロードおよび洗浄での流速は60cm/時間とし、溶出および再生は流速30cm/時間で実施した。
【0191】
【表2】

【0192】
【表3】

【0193】
結果の概要:
2つのリガンドに関して、最適操作条件を適用しないで、mAbの結合および溶出を示した。リガンド55では、フロースルー中には限られた物質だけが存在し、一方、リガンド16ではフロースルー中に何も検出されなかった。
【0194】
実施例3
リガンド TMPPA−(L)Trp−(L)Arg−Gly−OH、DBHPA−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH、(DPPA)−DAP−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OHおよび(DBHBA)−DAP−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OHを、アミノ活性化Toyopearl樹脂(Tosohによる供給品)で合成した。得られた親和性樹脂各々(それぞれ、B2、B3、D1、およびD2)の、mAbに対する結合能力を、以下の一連の工程を2回(サイクル1およびサイクル2)実施することにより評価した、
1)mAbの水溶液(50mMリン酸Na、pH=7.0)を、樹脂を充填したカラムに通す一方で、透過液のUV吸光度の発展を記録し、カラムから出てきた液体サンプルを集める工程(フロースルー)、
2)水性溶出バッファー(25mM酢酸塩 pH=3.7)をカラムに通し、カラムから出てきた液体サンプルを集める工程(溶出)、
3)水性消毒バッファー(1M酢酸)をカラムに通し、カラムから出てきた液体サンプルを集める工程(再生/消毒)。
【0195】
次いで、各サンプルについて、各サイクルでのmAbの質量、m、i=1、2、3を決定した。
【0196】
「結合能力」は、カラムに加えたmAbの全質量、mにUV吸光度がその終値の5%に達した時点においてカラムに加えたバッファーの容量、V5%を乗じ、使用したバッファーの総容量、Vで除し、さらに湿潤樹脂の容量、V樹脂で除した値で算出される。
【数1】

【0197】
以下の表では、B2、B3、D1、およびD2についての結果を示す(フロースルー=m/m、溶出=m/m、および洗浄=m/m)
【0198】
【表4】

【0199】
試験した全てのリガンドの結合能力が5mg/mLより高いということは表から明らかである。
【0200】
樹脂B2およびB3のmAbに対する選択性を確認するために、試験を繰り返し、この場合、工程1では未精製発酵上清を使用した。試験後、サンプルの純度をSDS Pageにより決定した。B2、B3、D1、およびD2についてのその結果をそれぞれ、図1、2、3、および4に示している。
【0201】
図1〜4からは、B2およびD1では試験した4つ全てのリガンドがmAbに対する選択性を示し、特定の条件において特に選択的であるということが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】樹脂B2選択性解析。1=発酵上清、2=フロースルー(サイクル1)、3=溶出(サイクル1)、4=再生/消毒(サイクル1)、5=洗浄(サイクル2)、6=溶出(サイクル2)、7=タンパク質なし、8=mAb参照サンプル。
【図2】樹脂B3選択性解析。1=発酵上清、2=フロースルー(サイクル1)、3=溶出(サイクル1)、4=再生/消毒(サイクル1)、5=洗浄(サイクル2)、6=溶出(サイクル2)、7=再生/消毒(サイクル2)、8=mAb参照サンプル。
【図3】樹脂D1選択性解析。1=mAb参照サンプル、2=発酵上清、3=フロースルー(サイクル1)、4=溶出(サイクル1)、5=再生/消毒(サイクル1)、6=洗浄(サイクル2)、7=溶出(サイクル2)、8=再生/消毒(サイクル2)。
【図4】樹脂D2選択性解析。1=mAb参照サンプル、2=発酵上清、3=フロースルー(サイクル1)、4=溶出(サイクル1)、5=再生/消毒(サイクル1)、6=洗浄(サイクル2)、7=溶出(サイクル2)、8=再生/消毒(サイクル2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含む、固相支持物質であって、
少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、
前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する、固相支持物質。
【請求項2】
親和性樹脂が親和性樹脂1mL当たりモノクローナル抗体5mgより高い結合能力を有する、請求項1に記載の固相支持物質。
【請求項3】
親和性リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上のカチオン性官能基とを含み、少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つのカチオン性官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、かつリガンドが分子量120Da〜1,500Daを有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項4】
親和性リガンドが、共有結合している残基X−X−Xを含みまたはからなり、所望により、X、Xおよび/またはXがリンカー残基と結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項5】
残基XがArg、Phe、PPC、DBHBA、SAA、DAP、DAB、(DBHBA)−DAP、(MDCA)−DAP、DPBBA、DBBA、PCAA、DPPAA、Trp、TMPPA、およびDBHPAからなる群から選択される、請求項4に記載の固相支持物質。
【請求項6】
残基XがArg、Asn、Leu、Lys、Phe、Pro、PPC、DAP、DAB、His、Trp、Tyr、およびSerからなる群から選択される、請求項4〜5のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項7】
残基XがArg、Asn、Pro、PPC、Asp、Orn、および(1H2NA)Dapからなる群から選択される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項8】
リガンドが3つの共有結合している残基、X−X−Xを含みまたはからなり、
前記共有結合している残基がL−PM (式中、Lはリンカーであり、PMは固相支持物質、好ましくは、所望により、架橋および/またはビーズ形態の、ポリマーマトリックスである)のリンカーLとさらに共有結合しており、
がD−および/もしくはL−配置の天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
がD−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり(ただし、Xはトレオニン残基ではない)、かつ
がD−および/もしくはL−配置いずれかの天然もしくは非天然アミノ酸、または所望により置換されている芳香族基を含むカルボン酸残基であり、
、XおよびXのうちの少なくとも1つがカチオン性官能基を含み、かつ
、XおよびXのうちの少なくとも1つが疎水性官能基を含み、
がL−Arg、D−Lys、D−Phe、D−Pro、INA、PPC、DBHBA、3HBA、4HBAおよびSAAから選択され、
がL−Arg、L−Asn、D−Leu、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−Pro、AIB、AHX、INA、NLEおよびPPCから選択され、かつ
がL−Arg、L−Asn、D−Lys、D−Phe、D−Pro、L−ProおよびPPCから選択される、請求項4〜7のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項9】
リガンドが
N−(D)Phe−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OH、
N−(L)Arg−(D)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
HN−PPC−(D)Pro−(L)Arg−Gly−OH、
HN−PPC−(D)Leu−PPC−Gly−OH、
DBBA−(L)His−(L)Arg−Gly−OH、
DBBA−His−Arg−Gly−OH、
DBBA−His−Arg−Arg−Gly−OH、
DPPBA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
PCAA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
DPPBA−(L)Lys−(L)Arg−Gly−OH、
SAA−(L)Arg−(L)Pro−Gly−OH、
SAA−(L)Pro−(L)Arg−Gly−OH、
DBHBA−(L)Arg−(L)Asn−Gly−OH、
DBHBA−(L)Asn−(L)Arg−Gly−OH、
DPPBA−(L)Trp−(L)Arg−Gly−OH、
(MDCA)−DAP−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH、
(MDCA)−DAP−(L)Arg−(L)Asp−Gly−OH、
DPPAA−(L)Phe−(L)Arg−Gly−OH、
DPPAA−PPC−(L)Arg−Gly−OH、
DBHBA−(D)Phe−(D)Arg−Gly−OH、
DPPAA−(D)tyr−(D)Arg−Gly−OH、
N−(D)Trp−(D)Ser−(1H2NA)DAP−Aib−OH、
N−(L)His−(D)Ser−(1H2NA)DAP−Aib−OH、
(DPPA)−DAP−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OH、
DBHBA−DAP−Arg−Gly−OH、
DBHBA−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
(DBHBA)−DAP−Arg−Arg−Gly−OH、
TMPPA−(L)Trp−(L)Arg−Gly−OH、および
DBHPA−(L)Arg−(L)Orn−Gly−OH
からなる群から選択されるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項10】
リガンドがDBBA−(L)His−(L)Arg−Gly−OHおよび(DBHBA)−DAP−(L)Arg−(L)Arg−Gly−OHからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項11】
共有結合により固定化された親和性リガンドを有する固相支持物質において、前記リガンドが1つ以上の疎水性官能基と、1つ以上の複素芳香族官能基とを有する、固相支持物質であって、
少なくとも1つの疎水性官能基が少なくとも1つの複素芳香族官能基から5Å〜20Åの結合距離だけ離れており、かつ
前記リガンドが分子量120Da〜5,000Daを有する、固相支持物質。
【請求項12】
親和性樹脂が親和性樹脂1mL当たりモノクローナル抗体5mgより高い結合能力を有する、請求項11に記載の固相支持物質。
【請求項13】
リガンドが(TEBA)−DAP−(L)Trp−(L)Trp−Gly−OHである、請求項11〜12のいずれか一項に記載の固相支持物質。
【請求項14】
抗体またはその誘導体の単離方法であって、
(i) 請求項1〜13のいずれか一項に記載の、共有結合により固定化された親和性リガンドをその上に有する固相支持物質を提供する工程、
(ii) 前記リガンドに対して親和性を有する抗体を含むサンプルを提供する工程、
(iii) 前記リガンドを、前記抗体を含む前記サンプルと接触させる工程、
(iv) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に結合させる工程、および
(v) 前記抗体が前記サンプルに含まれる場合に前記抗体を選択的に単離する工程
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−525327(P2008−525327A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547187(P2007−547187)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000828
【国際公開番号】WO2006/066598
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(395018066)ノヴォ ノルディスク アクティーゼルスカブ (7)
【Fターム(参考)】