説明

抗凝固処理全血から産生される自己又は同種の凝固剤

全血からの安定な自己又は同種の凝固剤調製方法を開示する。抗凝固処理された全血を直接沈殿させることによって、血漿分離の工程の必要性が除かれ、予想外の結果をもたらす。本発明の方法によって産生された自己又は同種の凝固剤は、市販のウシトロンビン及びヒトトロンビン調製物と同等の凝固時間を有し、ウシトロンビン調製物と比べて、活性化された血小板からの改良された成長因子の放出動態を示した。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は2003年1月27日に出願された、米国仮出願第60/442,974号を優先権主張した非仮出願であり、その全内容は参照として本願に含まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、抗凝固処理した全血からの、効果の早い自己又は同種の凝固剤の生産方法に関するものである。
【発明の背景】
【0003】
ヒト又は動物血漿由来のトロンビンは、血液や血液誘導体〔精製フィブリノーゲン、多血小板血漿(PRP)、濃縮血小板(PC)、乏血小板血漿(PPP)〕の効果的な凝固剤である。トロンビンはフィブリノーゲンに働き、フィブリノーゲンをフィブリンに変え、フィブリンマトリックスの形成をもたらす。止血剤としては、ウシのトロンビン(BT)の臨床的な使用が一般的である。一方、ヒトの血漿由来トロンビンは、局所の止血剤として、例えばティセル(商標)・フィブリン・シーラント(バクスターコーポレーション)のような、ヒト血漿由来フィブリンシーラント、及び様々な外科的処置のヒト血漿由来創傷シーラントと組み合わせて使用することが認可されているのみである。
【0004】
ウシ由来トロンビンは、外科的領域において、臨床的に止血を行うための処置の標準として、数十年間利用されてきた。ウシ由来トロンビンは、溶媒洗浄剤で処理されたヒトのプール血漿由来のフィブリンシーラントを調製する手段として利用されてきた。また、ウシトロンビンを使用して、試験室(例えば血液銀行)で調製された寒冷沈降物、及びポイントオブケアで調製された多血小板血漿、濃縮血小板、乏血小板血漿(それぞれ、PRP、PC及びPPPと称する)を凝固させる。
【0005】
ウシのトロンビンの使用に関連するリスクとして、疾患(ウシ海綿状脳症、BSE)の伝搬の可能性、及びヒト第V因子に対する抗体の産生が挙げられる。ウシトロンビンの臨床用途によるBSEの感染の報告は、文字どおり無いが、異常な出血時間をもたらした抗体産生の報告がある(1−5)。クロマトグラフィーで精製したウシトロンビンの局所的な暴露の後に、ヒト第V因子の阻害物質が、報告されてきた(6)。局所のウシトロンビンへの暴露は、複数のタンパク質や糖鎖抗原に対する抗体の産生を引き起こしてきた。これらの抗体は暴露された患者の30%から55%で報告され、抗核抗体ばかりでなく、カルジオリピンの性質を持っている(7,8)。
【0006】
ウシトロンビンの使用に関連した問題の結果として、患者自身の血液(自己)又は供血者の血液(同種)から調製する代替の凝固剤が研究されてきている。
【0007】
今まで、本発明者は、1分から5分の凝固時間をもつ凝固促進剤を生産してきた。そして、凝固促進剤は、PRP又はPPPと混合されたとき、及び硬質の移植組織片材料(例えば自己移植、異種移植、外来移植、及び合成)に塗布されると、効果的であることが証明されてきている。これらの材料に塗布された前記組成物は、移植材料の硬化をもたらし、それによって取扱適正を改良し、及び外科的欠陥部位への輸送を簡易化する。結果として得られたこの形態の移植材料は、欠陥部位にぴったり適合し、そして安定化されることができる。また、PRP及びPC中に存在する特定のタンパク質も、より迅速な傷の回復に寄与している。
【0008】
1分から5分の凝固時間の凝固促進剤は、前記の適応においては効果的でもあるけれども、特定の軟組織への適用は効果的でないかもしれず、その結果、早い凝固時間を持つ、ウシ由来でない凝固剤が必要となる。日常的に止血を行うためには、およそ10秒(ウシのトロンビンで標準的)の凝固時間が、必要とされる。それより長い凝固時間はより好ましくなく、毛細血管出血の制御のためには、より効果的でないことがある。
【0009】
今まで、ウシ由来でない効果の早い凝固剤の開発研究は、血液の細胞成分の分離、そして血液の血漿画分からタンパク質を分離するための様々な方法の適用に焦点が当てられてきた。寒冷沈降、物理化学的沈殿、マイクロフィルター技術の使用、密度勾配法などの方法が使用されている。血漿分画が分離され、そして解析されてきている。
【0010】
さらに、様々な一般に知られている沈殿剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、硫酸アンモニウム、及びエタノールも、また研究されてきている。それぞれの薬剤は特定のタンパク質の分離において、一定の利点を有しているが、一方で他のタンパク質の部分的沈殿をもたらす。それにもかかわらず、これらの沈殿剤が、分離工程の最大の効果を達成するために、無細胞の血漿に利用され、適用されてきている。
【0011】
最近まで、前記第1の焦点は、いくつかのエタノールの使用濃度に当てられており、例えば無細胞の血漿に10%−25%のエタノールが適用されていた(USパテントNo.6,274,090は、例えば1人の供血者からのプラズマから安定なトロンビンの成分の調製の方法を開示している)。この方法に使用しているトロンビンの調製は時間を要し、そして血漿をエタノールと混合させる前に、最初に全血からの血漿画分を調製する必要があるので、多数の工程を必要とする。
【0012】
血漿に適用される特定のエタノールの濃度は、PRP又はPPPを凝固させるための、例えば5秒から15秒(USパテントNo.6,274,090)の改良された凝固時間を提供してきた。しかし組成物の調製後1時間で、凝固時間は25秒より長くなり、調製から2時間後には、凝固時間は40秒より長くなった。
【0013】
そのため、求められていることは、自己又は同種の凝固剤の調製のための方法であって、前記方法は、少容量の全血から20秒より少ない時間で凝固する凝固剤を産生すること、4時間より長く活性を維持する凝固剤を産生すること、及び総調製時間が60分より短い凝固剤を産生することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明者は、血漿分離工程を省略すること、及び抗凝固処理済みの全血に直接沈殿剤を添加することによって、早い凝固時間を有しており、その組成物によって長時間、その凝固時間が維持される、ヒト凝固剤が得られることを見出した。それにより、凝固剤の調製に必要な総時間は、血漿分画の分離の所要時間の分、減少した。
【0015】
注目すべきことに、本発明の方法によって生産される凝固剤の性能の有効性は、血漿の分離工程を省略する結果として起こる、若干の溶血によって減少することはない。更に、特定の論理に固執することはないが、赤血球の存在が細胞集塊や阻害タンパク質の沈殿に、実質的に寄与しているのではないかと考えられる。
【0016】
従って、1つの観点としては、本発明は、抗凝固処理した全血からの効果の早い凝固剤を調製するための迅速法に関するものである。この方法は、供血者からのある容量の抗凝血処理した全血を得ること、前記抗凝固処理した全血と沈殿剤を混合すること、細胞及び血漿成分の沈殿が起きるように充分な時間混合物をインキュベートすること、そして、その後に、即効性の凝固剤を含んでいる上清を得るために沈殿を分離することとを含む。
【0017】
関連した観点としては、前記発明は、抗凝固処理した全血からの自己凝固剤を調製するための迅速法に関するものである。この方法は、凝固剤が調製される患者からある容量の抗凝固処理した全血を得ること、前記抗凝固処理した全血と沈殿剤を混合すること、細胞及び血漿成分の沈殿が起きるように充分な時間、混合物をインキュベートすること、そして、その後に、その前記上清中に自己又は同種の凝固剤を含んでいる上清を取得するために得られた沈殿を分離することとを含む。
【0018】
本発明の方法は、患者又は同種の供血者から得られた約8〜10mLの比較的少量の全血と同じように、必要に応じ様々な量の凝固剤を生産するように比率を変えることが可能である。全血は抗凝固剤、例えば、ACDで抗凝固処理するが、場合により、ACDは5−10mg/mLの濃度のマンニトールを含む。
【0019】
別の観点としては、(本)発明は血清分離を必要としない自己の凝固剤の調製方法に関すものである。本発明の方法は、事前に全血から分離した血漿とは対照的に、抗凝固処理された全血を、例えばエタノールのような沈殿剤で、直接沈殿することを含んでいる。
【0020】
関連した観点としては、(本)発明は、前記方法によって生産されるヒト血液画分に関するものである。その画分はプロトロンビン−トロンビンタンパク質80−90%を含み、検出可能なフィブリノーゲンは含まず、ATIII、プロテインC、プロテインSの基準値レベル20−30%を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は、5人の供血者の、トロンビンで活性化された血小板濃縮血液検体から放出されたPDGF−ABの濃度と血小板数の関係を示したグラフである。
【0022】
図2は、5人の供血者の、トロンビンで活性化された血小板濃縮血液検体から放出されたTGF−β1の濃度と血小板数の関係を示したグラフである。
【0023】
図3−7は、5人の供血者のウシトロンビン又は自己のトロンビンで活性化された濃縮血小板のPDGF−AB及びTGF−β1の成長因子放出動態を示したグラフである。

【発明の詳細な説明】
【0024】
本願でリスト化された、すべての特許、出願、出版物、又は他の参考文献は、参照によって本願に盛込まれている。下記の記載のように、専門用語の使用に関しては慣用されているものに従う。
ACD acid−citrate−dextrose
(酸性キトレートデキストロース)
CaCl 塩化カルシウム
CPD citrate−phosphate−dextrose
(キトレートリン酸デキストロース)
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ETOH エタノール、エチルアルコール
PEG ポリエチレングリコール
PPP patelet−poor plasma(乏血小板血漿)
PRP patelet−rich plasma(多血小板血漿)
PC patelet concentrate(濃縮血小板)
「抗凝固剤」という用語は、全血の凝固を防止することのできる物質を意味している。
「自己血」という用語は、患者自身の血液を意味している。
「同種血」という用語は、凝固剤を調製する個人以外の血液提供者から得られる血液を意味している。
「凝固剤」という用語は、全血又は血液成分(血漿、血小板)が凝血塊を形成させることができる物質を意味している。
【0025】
本発明に関連する自己凝固剤の分離の方法論はエタノール分画法を改変したものを基礎としている。しかしながら標準で、又は一般に使用されている開始材料である、血漿や寒冷沈殿の乏血漿と比較すると、前記工程は全血を利用している。従って、本発明の方法は、
a)供血者から1容量の抗凝固処理された全血を得ること
b)沈殿剤と抗凝固処理された全血とを混合すること
c)前記b)の混合物を細胞及び特定の血漿成分の沈殿を起こすために充分な時間、インキュベートすること
d)前記c)で得られた沈殿を上清から分離すること(通常、遠心分離及び/又は濾過)、及び
e)凝固剤として使用する上清を回収すること
を含む。
【0026】
1つの実施態様としては、少量の抗凝固処理された全血を、例えば酸性キトレートデキストロースのような抗凝固剤を含む採血管や注射筒に、供血者から採血することによって得る。完全だが、しかし穏やかな混合の後、抗凝固処理された全血は清潔なガラス又はプラスチックのチューブに移され、そして、沈殿剤、例えばエタノールを抗凝固処理された全血と混合する。この得られた混合物は、血液中の細胞及び特異的な血漿成分の沈殿を起こすために充分な時間、約20分から60分間、室温でインキュベートする。充分な沈殿は、固まりとなった細胞及び不溶性のタンパク質からなる粘性のある沈殿が形成されることによってわかるであろう。
【0027】
その後、混合物を1,000−3,000xgで、約5−30分遠心分離し、沈殿物をチューブの底に凝集させる。最後に、沈殿の上部の上清をチューブから分離する。上清は、所望の凝固剤を含む混合物の画分である。
【0028】
1つの実施態様としては、凝固剤を調製するために用いる全血の容量は、少量であり、例えば僅かに8−10mLであろう。血液は非ヘパリンの抗凝固剤の入った採血管(例えば、VACUTAINER(商標)チューブ)又は注射筒に採血する。本発明で使用することのある抗凝固剤の例として、カルシウムイオン結合又は金属イオン封鎖性の抗凝固剤、例えばキトレートリン酸デキストラン(CPD)、酸性キトレートデキストラン(ACD)又はクエン酸ナトリウムなどが挙げられる。典型的には、好適な抗凝固剤は酸性キトレートデキストラン(ACD)及びACD/マンニトールである。
【0029】
典型的な沈殿剤としては、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムのような成分と同様に、例えばポリエチレングリコール、硫酸アンモニウム、又はエタノールが含まれる。
【0030】
1つの実施態様としては、エタノールを沈殿剤として使用する。エタノールの終濃度は好ましくは10%から25%の間であろう。そのため、8−10mLの開始全血容量に対して、1−2mLの100%又は95%のエタノールを全血に加える。
【0031】
さらに、0.05から0.4mLの間の10%塩化カルシウム溶液を抗凝固剤処理した全血と沈殿剤の混合物に加える。例えば、1つの実施態様として、抗凝固剤処理した開始容量8mLの全血に1.6mLのエタノールと0.1mLの10%CaClを使用した。
【0032】
細胞及び特異的な血漿成分が沈殿を起こすための充分な時間に関して、沈殿をチューブ中で、約5分から45分内に形成することが期待できる。
【0033】
1つの実施態様として、最初の全血の容量は1mLのACD当たり5−10mg濃度のマンニトールを含んだ、ACD及びマンニトールの混合物で最初の全血は抗凝固処理されることができる。
【0034】
本発明の方法を説明するために、以下の実施例を提供する。

実施例1
【0035】
自己のトロンビン及び全血検体において、関連する血漿タンパク質濃度の比較を、放射性免疫拡散法を使用して行った。全血はACD−マンニトール抗凝固剤を含んだチューブに採血した。そして抗凝固処理した全血を2mLの95%エタノールと30分間、反応させた。次に、混合物をSMARTPREP(商標)system(Harvest Technologies,Plymouth,MA)で遠心し、同時に濃縮血小板を調製した。トロンビンを含む上清を、血清フィルターシステム、例えばserum filter separetor(例を挙げると、Fisher Brand,Fisher Scientific,Rochester,NY)を使って、又は注射筒で上清を吸引することによって、沈殿した細胞成分及び特異的な血漿成分から分離した。
【0036】
乏血小板血漿は、以下のように調製した。自己のトロンビンを調製するために使用した同じ供血者の、全血をACD抗凝固溶液(Cytosol Laboratories,Braintree,MA)に採血する。前記血液検体を遠心分離し、血漿試料を試験のために取得した。血漿試料は、放射性免疫拡散解析の基準検体として使用した。
【0037】
自己のトロンビン(AT)は前記のように調製した。基本的には、9mLの全血を1mLのACD−マンニトール抗凝固剤(Cytosol Laboratories,Braintree,MA)中に採血した。8mLの抗凝固処理した血液を1.7mlのエタノール塩化カルシウム溶液(Cytosol Laboratories,Braintree,MA)と30分間室温でインキュベートした。そして、混合物をSMARTPREP(商標)2 systemで遠心した。自己のトロンビンを含む上清を、blood serum filter systemを用い、沈殿したタンパク質及び赤血球から分離した。得られた上清をRIDで解析した。
【0038】
14人の供血者について、すべてRIDを行った。以下のタンパク質、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンIII、アルブミン、フィブリノーゲン、第XIII因子の濃度を解析した。PPPの検体は、前記タンパク質基準値を得るために解析した。ATを含むAT上清検体は、エタノール分画の結果として除去された前記のタンパク質の比率を計算するため、(前記)タンパク質濃度を測定した。
[放射性免疫拡散法の手順]
【0039】
RIDのプレートは、The Binding Site社(Birmingham UK)から入手し、製造メーカーの説明書に従って使用した。前記RIDプレートは、アルミホイルの袋から取り出し、傷みがないかチェックし、そして10−15分室温で放置した。次に、校正用の溶液を静かに混合し、必要に応じて希釈した。対照及び試験検体は、使用の前に1/10に希釈した。基準物質、対照検体、及び試験検体は、使用前に素早く穏やかに撹拌した。
【0040】
必要な数のウェルを、5μLの検体で満たし、30分間拡散させた。前記プレートを、水平に室温で保存し、少なくとも48時間の間アルブミンの解析を、72時間の間アンチトロンビンIIIの解析を、96時間の間第XIII因子、プロテインC、プロテインS、及びフィブリノーゲンを解析を行った。それぞれの反応円の直径に該当する検体濃度を、直接RID参照表から読み取った。
【0041】
実験の結果を、表1及び2に示した。自己トロンビン調製物の活性は、濃縮血小板を凝固させることによって確認した。2つの比率における凝固時間の平均は、我々の予測の範囲内であった。3つの検体を外部の施設で解析したところ、85%のトロンビンが調製物中に残存していた。フィブリノーゲンは、完全に自己トロンビン調製物からは除かれていた。トロンビン活性の潜在的阻害物質であるアンチトロンビンIIIは、平均79.86±2.6%減少していた。残存しているアンチトロンビンIIIの濃度20%は、臨床的欠乏の範囲と考えられる。さらに4時間の反応を行っても、ATIII、プロテインC及びプロテインSの除去は増加しなかった(データは示していない)。表1は、自己のトロンビン、及び自己トロンビンを調製した全血検体の血漿中の、プロテインC、プロテインS、及びアンチトロンビンIIIのタンパク質濃度の比較を示している。表2は、同じ検体の第13因子、アルブミン、及びフィブリノーゲンのレベルを示している。
【表1】

【表2】

【0042】
そのため、本発明の方法に従って得られた上清は、プロトロンビンートロンビンタンパク質の80−90%を含んでいる。上清中にフィブリノーゲンは検出されず、ATIII、プロテインC及びプロテインSは、基準値の20−30%のみである。

《上清中のヘモグロビンの測定》
【0043】
6%を越えるエタノール濃度は、全血検体で溶血を引き起こす。前記のように、マンニトールは抗凝固剤に添加されると、微少小胞(micro vesicle)形成を減らし、エタノールの導入の結果である溶血を減少させる。
【0044】
表3に示したように、自己のトロンビンの調製物中のヘモグロビン総量の平均は69mgである。この値は、平均8%の溶血の割合と一致し、局所の適用には重要ではない。
【表3】

《残存エタノール量の測定》
【0045】
エタノールの百分率(容量/容量)を、認定試験機関(Chemic Laboratories,Canton,MA)で測定した。検査された生成物は、自己トロンビンを作製した全血検体の血漿、自己トロンビン生成物、及び濃縮血小板の集塊から得られた上清が含まれていた。最後の生成物である、血小板ゲルは、以下の局所での適用で存在するエタノール量を含んでいる。
【0046】
凝固活性化剤として自己トロンビンを使用し、濃縮血小板に凝血塊を形成させた。全血からのPPPの検体、AT上清、及び凝血塊放出物検体が前記のように、測定のために得られた。測定は5人の供血者について行った。
【0047】
0.5mLのPCを、12x75mmのホウケイ酸ガラスの培養チューブに添加した。ATを校正済みのピペットで1:3又は1:5の割合で加えた。チューブは、固形の凝血塊ができるまで前後に傾けた。次に、凝血塊を遠心し、上清を得た。
【0048】
エタノールの解析は、Chemic Laboratories,Canton,Maachusettsで行った。結果を表4に示す。全血検体中に見られた痕跡量のアルコールは、明らかに放血部位で使用されたアルコールの結果であった。自己トロンビンや血小板のゲル中の濃度は、予想された数値の範囲内だった。
【表4】

【0049】
そのため、濃縮血小板に凝固剤を混合し、試験管内でゲル化させたときに、残存するエタノール量は、4%未満である。この残存濃度は、生体の創傷部位に適用されるときには、さらに大幅に減少している。

《自己のトロンビンによる濃縮血小板と乏血小板血漿の凝固時間の比較》
【0050】
試験管内での、実験室凝固時間の実験は、凝固剤の有効性の標準化試験で行った。凝固時間は、自己トロンビンを用い、濃縮血小板及び乏血小板血漿の、凝固を開始させることによって測定した。凝固時間は2重で測定した。個々の反応と個々の凝固時間の計時/記録は、独立して行った。
【0051】
凝固試験は、遠心後の4回のポイントで行った。上清を移し、ATを回収した直後の0時間と、自己トロンビンの調製後2時間と、4時間と、及び6時間である。簡潔に述べると、0.5mLのPCを、12x75mmのホウケイ酸ガラスの培養チューブに添加した。校正されたピペットを用い、PCの含まれているチューブに、ATを1:3又は1:5の割合で添加した。ATを添加するとすぐにタイマーをスタートさせた。固形の凝血塊が形成されるまで、チューブを前後に傾けた。タイマーを止めて、凝固時間を記録した。この操作を前記の時間ごとに繰り返した。
【0052】
自己のトロンビンによる濃縮血小板の凝固時間を表5に示した。
【表5】

【0053】
0時間と6時間では、2つの混合比で凝固時間に、有意差はなかった。2つの混合比での凝固時間の間には、2時間(p=0.004)及び4時間(p=0.013)で有意な差があった。
【0054】
より特筆すべき事実は、3:1の混合比で、2時間、4時間及び6時間の凝固時間は、0時間より有意に短かった。表6に示したように、3:1の混合比で、0時間では28.75%が凝固時間が20秒かそれより長く、50%が、10秒未満だった。その他の時間では、いずれの混合比でも20秒未満の凝固時間であり、3:1の混合比を用いると、64−85%の凝固時間が10秒又はそれ未満だった。この凝固時間は、これらの実験と同時に行ったウシで見られた4〜6秒の凝固時間と比較しても、勝るとも劣らないものであった。
【表6】

【0055】
自己トロンビンによる乏血小板血漿の凝固時間の結果は、若干長かったが、濃縮血小板で得られた結果とほぼ同等であった(表7)。0時間において、2つの混合比の間では、有意差(p=0.659)は無かった。3:1の混合比での、2時間と4時間の凝固時間は、0時間と比較して、有意に短かった(p=0.0013)。乏血小板血漿の凝固時間は、わずかに再分配(redistribution)があったが、凝固時間は、濃縮血小板のそれと同等であった(表8)。
【表7】

【表8】

《トロンビン当量(equibqlence)の測定》
[濃縮血小板の凝固時間の比較]
【0056】
牛トロンビンと比較した自己トロンビンの効力は、1つの濃縮血小板および3つの濃度のヒトフィブリノーゲンを評価材料として使用して測定した。牛トロンビン(BT)は以下のように調製した。5mLの10%CaCl溶液を、凍結乾燥の5,000unitのバイアルに注入した。そしてBTを、1,000、500、250、125、62.5unit/mLの濃度に段階希釈した。次に、BTを1:10の比率で濃縮血小板に加えた。
【0057】
凝固時間は、前記のように測定した。表9は、466x10μLから1428x10μLの範囲の値の濃縮血小板の凝固時間を比較している。自己トロンビンに対する濃縮血小板の混合比が3:1において、自己トロンビンで得られた前記凝固時間の平均は、9.17±1.7秒だった。250u/mLのウシトロンビン濃度で、対応する平均凝固時間(9.00x1.7秒)が得られた。ウシトロンビンの実験が、10:1(濃縮血漿:トロンビン)の混合比で行われていることを考慮すると、自己トロンビンは、25units/mLのウシトロンビンと同等であることを示している。表10に示すように、5:1の比率の自己トロンビンの凝固時間(10.83秒)は、同様な範囲にある。
【表9】


[精製ヒトフィブリノーゲンの異なる濃度での凝固時間]
【0058】
濃縮血小板(PC)及び乏血小板血漿(PPP)は、以下のようにSmartPRep(商標)2 systemを用いて、その使用説明書に従って、調製した。PPPを、スペーサーセット(spacer set)を有する30mLの注射筒で取り出し、プラスチックディスポーザブル[Plastic Disposable(PD)]に7mLの量を残し、そして50mLのチューブに移し、総量を測った。
【0059】
血小板は7mLの量に、再懸濁し、目盛りのある50mLのチューブに移し、総量を測った。0.5mLのPCの検体及びPPPをCBC解析のため、凍結バイアルに移した。
【0060】
ウシトロンビン(Jones PharmaInc.,Middleton WIより入手したBT)は、使用のために5000unitの乾燥トロンビンのバイアルに5mLの10%CaClを注入し調製した。5段階、1000、500、250、125、及び62.5units/mLにBTを希釈し調製した。BTを、フィブリノーゲンと同じ容量の0.5mLで、フィブリノーゲンに対して1:10の混合比で加えた。
【0061】
自己トロンビン(AT)は以下のように調製した。9mLの全血を、1mLのACD−マンニトールの凝固剤に、採血した。8mLの抗凝固処理した血液を1.7mLのエタノール−塩化カルシウム溶液と45分間インキュベートした。次に、混合物を、SmartPRep(商標)2 systemで遠心し、同時に濃縮血小板を調製した。トロンビンを含む上清を分離チューブで、沈殿したタンパク質及び赤血球から分離した。ATをフィブリノーゲンに1:3及び1:5の混合比で加えた。
【0062】
ヒトフィブリノーゲンは、Sigma Biologicals(St.Lous,MO)から、乾燥形態で入手し、91%凝固可能と解析されている。フィブリノーゲンは、蒸留水で600、300及び150mg/dLの3つの濃度に希釈し、試験した。
【0063】
凝固時間は、自己トロンビン及びウシトロンビンを凝固開始物質として、フィブリノーゲンで調べた。自己トロンビンは、9検体の全血から調製した。前記の他の凝固試験と同じように、個々の反応と個々の凝固時間の計時/記録は、独立して行った。
[フィブリノーゲン検査]
【0064】
0.5mLのフィブリノーゲンを、12x75mmのホウケイ酸ガラスの培養チュ−ブに検査済みのピペットを使用して分注した。ATを、検査済みのピペットを用いて1:3又は1:5の混合比で加えた。ATの総量を加えた時に、計時を始めた。固形の凝血塊が形成されるまで、ガラスチューブを前後に傾けた。それからタイマーを止めて、凝固時間を記録した。前記の試験を、自己トロンビンの代わりに、ウシトロンビン/CaCl活性化剤を用いて、繰り返した。
【0065】
Children‘s Hospital及びBrigham and Woman’s Hospital(Boston,MA)の一連の外科手術患者100人の平均フィブリノーゲン濃度は、268±27mg/dLであることがわかった。フィブリノーゲンは急性期の反応物質であり、600−800mg/dLの濃度は慢性病態(例えば、慢性静脈又は糖尿病性潰瘍、関節炎、椎間板ヘルニア)の患者では、珍しくない。それは、この研究で選択されたフィブリノーゲン濃度を根拠とした。
【0066】
表10に示したように、フィブリノーゲンの3段階の濃度の凝固時間は、自己トロンビンを3:1及び5:1の両方の混合比で使用した、濃縮血小板でみられたものより明らかに長かった。これは、予想外ではなかった、というのは、血小板は試験管内及び生体内両方の凝固塊の形成において、不可欠な役割を果たしているからである(7)。
【表10】

【0067】
何段階かに希釈したウシトロンビンによって、いくつかのフィブリノーゲン濃度の凝固時間を測定した時に、これと同じ傾向が見られた。ウシトロンビンが125u/mLで、フィブリノーゲンが600mg/dLのときの凝固時間は、13.75±0.9秒であり、300mg/dLのときは16.25±3.8秒だった。これらの値は、600及び300mg/dLの濃度のフィブリノーゲンを凝固させるために、自己トロンビンを3:1の混合比で使用した場合にみられた結果と同様である(表11)。
【表11】

【0068】
本発明の方法に従って製造した、自己トロンビン(AT)を用いた凝固時間(8−12秒)は、100u/mLのウシトロンビン及び500u/mLのヒトトロンビンを用いた、以前の我々の研究の結果と同等である。
《組織培養実験》
【0069】
Slaterによって、濃縮血小板がヒト胎児骨芽細胞様細胞に促進作用を示し、それらの分化機能を維持することが、報告されている(10)。また、高濃度の濃縮血小板分泌物(platelet concentrate releasate)が、ヒト間葉幹細胞(hMSCs)の増殖を促進することが証明されている(11)。この実験の目的は、濃縮血小板と混合した自己トロンビンの残存アルコールが、培養ヒト繊維芽細胞及びhMSCsの増殖を阻害するか否かを検証することであった。
【0070】
濃縮血小板を、自己トロンビン又はウシトロンビンで凝固させ、混合培養システムで、ヒト繊維芽細胞が平板培養されているウェルの上に、挿入した。細胞は3日及び5日培養した。
【0071】
平板培養されているhMSCsを、濃縮血小板分泌物と培養した。分泌物は、AT又はBTで活性化した凝血塊から作製し、3日及び5日培養した。分泌物は直接培養液に加え、細胞と共に培養した。
【0072】
濃縮血小板は、SMARTPREP(商標)2 systemを用い、使用説明書に従って調製した。血小板は7mLの容量に再懸濁し、目盛り付きの50mLチューブに移し総量を測った。
【0073】
凍結ヒト繊維芽細胞(Cambrex.,East Rutherford,NJ)を溶解し、〜3.3x10cell/ウェルの密度で、平板培養した。ヒト間葉幹細胞(Cambrex.,East Rutherford,NJ)、hMSCは、MSCGM bullet kit、グルタミン、及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加した基礎培地で、6ウェルプレートに〜3.3x10cell/ウェルで平板培養した。
【0074】
ウシトロンビン(BT)/CaCl及び自己トロンビン(AT)は、前記のように調製した。BT及びATを、PCにそれぞれ1:10及び1:3の混合比で加えた。
【0075】
繊維芽細胞とhMSCの増殖実験において、凝血塊は凝固活性化剤として自己トロンビンやウシトロンビンを用いて、濃縮血小板で形成させた。培養繊維芽細胞に供給された混合物は、3日、5日、及び7日間培養され、一方、hMSCsに供給された混合物は、2時間、及び3日及び5日間インキュベートした。対照としては、培養液の上部に、空の挿入物をおいた。
【0076】
繊維芽細胞には、血小板ゲルの挿入物を介して、凝血塊分泌物が供給された。hMSCsは、凝血塊を含む試験チューブを遠心し、そして分泌物をhMSCに直接添加することにより、凝血塊分泌物が供給された。
【0077】
6本の滅菌チューブがそれぞれの混合物のために準備された。
1.濃縮血小板及びウシトロンビン;
2.濃縮血小板及び自己トロンビン;及び
3.濃縮血小板及び自己凝固促進剤
【0078】
2mLの新鮮な培地を、プレートの各ウェルに添加した。自己トロンビン、ウシトロンビン、又は自己凝固促進剤を含んだ膜挿入物を調製し、凝固させ、そして繊維芽細胞を含むウェルの上部においた。対照としては、空の挿入物及び培地を上部に調製した。次に、1.5mLの予め暖めておいた培地を、それぞれの挿入物の上部に加えた。培養は、37度、5%COで48時間行った。
【0079】
培養の開始時に、それぞれの挿入物の1つを外して、細胞を撮影した。5日目に、すべての挿入物を外し、細胞を撮影した。すべての挿入物は3日、5日、又は7日の間インキュベートし、それぞれの時間に挿入物を外し、細胞の状態を検査、撮影し実験を繰り返した。

[ヒト間葉幹細胞の培養]
【0080】
プレートでの培養後、細胞はおよそ2.5時間で付着した。前記PC−活性化剤混合物は、2時間インキュベートした。古い培地を培養から吸引し、予め暖めておいた10%AT−PCの分泌物又は10%BT−PC分泌物を含む、新鮮な培地を細胞に直接加えた。48時間後、プレートは検査され、撮影された。実験は3日及び5日の分泌物について繰り返した。
【0081】
AT及びBTで調製した凝血塊と培養したヒト繊維芽細胞は、対照の細胞と比較して、すべて正常に見え、充分に増殖していた(データは示さず)。AT及びBTからの分泌物と培養したhMSCsは、外見は正常で、対照の細胞と比較しても充分に増殖していた。
【0082】
また組織培養実験を、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)を使用し、AT及びBT凝固剤を濃縮血小板と混合した凝血塊上清と、培養することによって行なった。
対照群と試験混合物に1時間暴露処理した群では、細胞の形態又は密度に変化はなかった。BTの上清との接触後24時間培養した群では、核の高密度化(dense)を伴った細胞の球形化が見られた。ATで処理した群の細胞の形態は、対照群と同様であった。

《成長因子分泌の動態》
【0083】
創傷治療において、血小板は2つの役割を持っている。血小板は、凝固の工程に関与し止血を達成し、そして創傷治癒のカスケードの開始時に血小板が放出した成長因子の貯蔵庫となる。成長因子は、様々な作用があるけれども、注射時や摂取時には、速やかに分解される。そのため、血小板ゲルからの成長因子の制御された持続的な放出は、創傷治癒に於ける本発明の重要な観点である。
【0084】
血小板のアルファ顆粒から、成長因子を放出させるために、活性化剤を使用することが必要である。以下の実験で使用されている方法は、血小板ゲルを産生するために、臨床的に使用されている方法と同一のものであり、そして生体で起こっている工程と非常に似ている。現在、成長因子の放出は、ウシトロンビン/塩化カルシウム混合物と濃縮血小板の混合によって、開始される。この実験はウシトロンビン及び自己トロンビンによる、放出動態を比較している。放出動態は、活性化剤であるウシトロンビン及び自己トロンビンに晒された、濃縮血小板が形成した凝血塊(血小板ゲル)から発現する上清を集め、測定した。血小板ゲルの調製後、1、2、及び4時間、そしてその後は6日まで毎日、遠心を行い上清を収集した。上清は検査まで−80度で保存した。成長因子(ヒト血小板由来成長因子AB(PDGF−AB))の濃度は、酵素免疫測定法(ELISA)により、測定した。
【0085】
濃縮血小板及び乏血小板血漿は、下記のように調製した。全血は60mLの注射筒で採血した。濃縮血小板(PC)及び乏血小板血漿(PPP)はSmartPRep(商標)2 systemを用いて、その使用説明書に従って、調製した。血小板は10mLの血漿に再懸濁し、その濃縮物は、目盛りのある50mLのバイアルに移した。0.5mLのPC及びPPPの検体は、CBC解析のため、凍結(cryogenic)バイアルに入れた。
【0086】
ウシトロンビンは、前記のように調製し、1,000units/mLの希釈で使用した。BTは1:10の割合でPCに添加する。自己トロンビン(AT)は、前記のように調製し、1:3の混合比でPCに添加した。
【0087】
凝血塊活性剤として自己トロンビン及びウシトロンビンを用いて、PCで凝血塊を形成した。1、2、及び4時間、そしてその後は、毎日6日の間培養されてきた凝血塊から分離された上清について、測定を行なった。すべての検体のPDGF−AB成長因子の濃度が測定された。すべての測定は、以下のように2重に測定した。
【0088】
1.0mLのPCは、ホウケイ酸ガラスの培養チューブに検査済みのピペットを用いて、分注した。次に検体は、BTを1:10の割合で添加すること、又はATを1:3の割合で添加すること、のいずれかにより凝固させた。活性化剤がPCに加えられるとすぐに、凝血塊は一定時間、室温で培養された。培養終了後、凝血塊はSorval RC3C遠心機(Sorvall Instruments,Newton,CT)で、H4000ローターを用い、2500rpmで10分間遠心した。上清を分離し、その容量を測定し、凍結チューブに移し、−80度で、測定まで保存した。
【0089】
前記の手順を、1、2、及び4時間、そしてその後は6日まで毎日行なった。すべてのポイントで、使用説明書に従ってELISAキット(R&D systems,Minneapolis,MN)を用いて測定し、得られた測定値を利用して成長因子の濃度を計算した。
【0090】
濃縮血小板、血小板収量と成長因子の放出は、すべての生物学的モデルと同様に、それぞれの個体のバラツキに影響される。以下のデータが示すように、活性化剤による血小板からの成長因子の放出は、或る程度のバラツキがある。このバラツキは、活性化剤がウシトロンビン、ADP又は自己トロンビンであろうと無かろうと存在する。図3ないし7は、ウシトロンビン及び自己トロンビンで活性化された5人の供血者濃縮血小板血液検体の、試験管内での成長因子(PDGF−AB及びTGF−β1)の放出動態を示している。
【0091】
この試験内測定モデルでは、凝血塊の形成後4時間内で、ウシトロンビンによる完全な成長因子の放出が起こり、7日までの期間に段階的に減少する。自己トロンビンでは、成長因子は次第に増加し、48から72時間後に最大濃度に達する。この成長因子の最大濃度は、ウシトロンビンを使用したときに見られた成長因子濃度に対し最小でも80%に達し、又はウシトロンビンを使用したときの最大成長因子濃度を越えるほどに達することもある。
【0092】
我々は以前、血小板数と成長因子濃度に直接的な関連があることを証明した(8)。本研究において、濃縮血小板は10mLに再懸濁した。臨床的には自己トロンビンは、7mLに懸濁された濃縮血小板に対して使用する。これは濃縮血小板から放出される成長因子濃度を30%まで増加させるだろう。
【0093】
注射で投与された成長因子の生体内での半減期は分単位であり、そしてそのため持続性の緩やかな増加が、より有益で好ましい(9)。自己トロンビンによる成長因子の放出動態は、緩やかな持続性の増加を支える。ウシトロンビンは、成長因子をすぐに放出し、さらに長期間にわたり増加することはない。
【0094】
従って、本発明の方法は、臨床的に適用できる成長因子の持続的な放出を可能にするシステムを提供する。放出動態を測定するため、同じ濃縮血小板をBT又はATによって形成させた凝血塊の上清を凝血後決められた時間に回収し、成長因子を測定した。BTの濃縮血小板に対する適用は、成長因子の中程度の放出をもたらし、5日間の観察期間中にさらなる増加は見られない。ATでの成長因子の放出動態は、適用の4時間で20−30%の分泌があり、日ごとに放出が増加し、適用後5日目までに最大に達する。
【0095】
効果が早くウシ由来でない凝固剤の調製のための、開示された方法の利用を容易にするため、いくつかの試薬及び医療器具をまとめて、自給式のキットとして提供できる。
【0096】
本発明の方法の実施のための実際上の使用のためのキットの1つの実施態様は、
・ ストッパー付のガラス又はプラスチックチューブ
・ 血清フィルターシステム、例えば、血清分離器具、沈殿から上清を吸引する ために最適な平滑なカニューレ、又はピペットシステム。
・ 平滑な針のついた3mLの注射筒
・ 平滑な針のついた10mLの注射筒
・ ACD又はACD/マンニトールを含んだバイアル
・ ETOH/CaClを含んだバイアル
・ TrayPak(商標)と説明書
【0097】
また、本発明は、下記の特徴を持った自己又は同種の凝固剤の調製方法を提供する。
1.それは、全血検体から調製することができる。
2.調製の工程の反応は室温で行うことができる
3.工程は、SMARTPREP(商標)systemを使用して、血小板濃縮と 同時に又は独立して調製することができる。
4.全血と沈殿剤の反応時間は45分か、又はそれ未満である
5.得られた自己凝固剤の調製物は、濃縮血小板又は乏血小板血漿を臨床的に許容 可能な時間内に凝固させる十分な濃度(strength)がある。
6.自己凝固剤は、濃縮血小板又は乏血小板血漿と伴に、様々な方法や器具で提供 されることができる。
7.本発明の自己凝固剤は、直接創傷部位(wound bed)に適用すること ができる。
【参照文献】
【0098】
1. Ortel TL, Charles LA, Keller FG et al. Topical thrombin and acquired coagulation factor inhibitors: clinical spectrum and laboratory diagnosis. Am. J.
Hematol. 1994 ; 45: 128.
2. Fastenau DR and McIntyre. Immunochemical analysis of polyspecific antibodies in patients exposed to bovine fibrin sealant. Ann. Thorac. Surg. 2000; 69: 1867.
3. Banninger H, Hardegger I, Tobler A et al. Fibrin glue in surgery: frequent development of inhibitors of bovine thrombin and human factor V. Br.
J. Haematol. 1993; 85: 528.
4. Streiff MB and Ness PM. Acquired factor V inhibitors: a needless iatrogenic complication of bovine thrombin exposure. Transfusion 2002 ; 42: 18.
5. Arnout J. The pathogenesis of the antiphospholipid syndrome: a hypothesis based on parallelism with heparin−induced thrombocytopenia.
Thrombosis and Haemostasis 1996; 75: 536.
6. Sands JJ, Nudo SA, Ashford RG, et al. Antibodies to topical bovine thrombin correlate with access thrombosis. Am. J. Kid. Dis. 2000; 45: 796.
7. Gottumukkala VNR, Sharma SK. and Philip J. Assessing platelet and fibrinogen contribution to clot strength using modified thromboelastography in pregnant women. Anesth. Analg. 1999; 89: 1453 8. Babbush CA, Kevy SV and Jacobson MS. An in vitro and in vivo evaluation of autologous platelet concentrate in oral reconstruction. Implant Dentistry 2003 ; 12: 24.
9. Lee SJ. Cytokine delivery and tissue engineering. Yonsei Medical Journal 2000; 41: 704 10. Slater M, Patava J, Kingham K, et al. Involvement of platelets in stimulating osteogenic activity. J. Orthop. Res. 1995; 13: 655 11. Haynesworth SE, Kadiyala S, Liang LN, et al. Chemotactic and mitogenic stimulation of human mesenchymal stem cells by platelet rich plasma suggests a mechanism for enhancement of bone repair. 48th Annual Meeting Orthopedic Research Society, Dallas, TX, 2002.
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝固処理した全血から凝固剤を製造する方法であって、
a)対象から1容量の抗凝固処理した全血を得ること
b)前記抗凝固処理した全血と沈殿剤とを混合すること
c)前記b)の混合物を細胞及び特異的血漿成分の沈殿物、並びに上清を産生するのに十分な時間インキュベートすること
d)上清から沈殿物を分離すること、及び
e)凝固剤として使用する前記上清を回収すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記抗凝固処理した全血の容量が、8〜10mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記全血をACD、ACD/マンニトール、CPD、及びEDTAからなる群から選択される抗凝固剤で抗凝固処理する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記全血を酸性キトレートデキストロースで抗凝固処理する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記全血をACD/マンニトールで抗凝固処理する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記マンニトールが7.5mg/mLACDの濃度で含まれている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記沈殿剤がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
使用する前記エタノールが、約10%〜100%の開始濃度である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
使用する前記エタノールが、約25%〜95%の開始濃度である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
使用する前記エタノールが、約50%から95%の開始濃度である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記沈殿剤がエタノールと塩化カルシウムとの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベート工程が45分未満を要する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記インキュベート工程が30分未満を要する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
調製される前記凝固剤が自己である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
調製される前記凝固剤が同種である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分離工程が混合物を遠心することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記分離工程が混合物を濾過することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記分離工程が混合物の遠心及び濾過の組み合わせによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
抗凝固処理した全血からの凝固剤の調製用のキットであって、
a)ストッパー付のチューブ;
b)血清濾過分離器;
c)平滑針付き3mLの注射筒;
d)平滑針付き10mLの注射筒;
e)ACD又はACD/マンニトールを含むバイアル;
f)EtOH/CaClを含むバイアル;及び
g)説明書
を含むキット。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって製造されるヒト血液画分であって、プロトロンビン−トロンビンタンパク質80−90%を含み、検出可能なフィブリノーゲンを含まず、及びATIII、プロテインC、及びプロテインSの基準値レベル20−30%を含むヒト血液画分。

【公表番号】特表2006−516630(P2006−516630A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503054(P2006−503054)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/002191
【国際公開番号】WO2004/068109
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505283164)ハーベスト テクノロジーズ インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HARVEST TECHNOLOGIES INC
【Fターム(参考)】