説明

抗原コンジュゲート及びその使用

本発明は、医学の分野、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学におけるものである。本発明は、本発明の少なくとも1の抗原に連結されるウイルス様粒子(VLP)を含んでなる組成物であり、本発明の該抗原は本発明のCCR5、本発明のガストリン、本発明のCXCR4、本発明のCETP又は本発明のC5aである組成物を提供する。また、本発明は組成物の生産方法を提供する。本発明の組成物は、特に、本発明の抗原が症状を媒介するか又は症状に関与する疾患の治療のため、特にAIDS、胃腸癌、冠状動脈性心臓病又は炎症性疾患の治療のための、ワクチンの産生に有用である。さらに、本発明の組成物は、免疫応答、特に抗体応答を効率的に誘導する。さらに、本発明の組成物は、示された前後関係の範囲内で自己特異的な免疫応答を効率的に誘導するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、医学、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野おけるものである。本発明は、本発明の少なくとも1の抗原に結合されるウイルス様粒子(VLP)を含んでなる組成物であり、本発明の該抗原が本発明のCCR5、本発明のガストリン、本発明のCXCR4、本発明のCETP又は本発明のC5aである組成物を提供する。
また、本発明は、組成物の生産方法を提供する。本発明の組成物は、特に、本発明の抗原が症状を媒介するか又は症状に関与する疾患の治療のため、特にエイズ、胃腸癌、冠状動脈性心臓病又は炎症性疾患の治療のための、ワクチンの産生に有用である。さらに、本発明の組成物は、免疫応答、特に抗体応答を効率的に誘導する。さらに、本発明の組成物は、示された前後関係の範囲内で自己特異的な免疫応答を効率的に誘導するために特に有用である。
【0002】
関連技術
背景
HIV R5株は、マクロファージ及びCD4+T細胞への接着及び侵入のために細胞表面分子CD4及びCCR5を使用する。CCR5は、それぞれ、順にPNt、ECL-1、ECL-2及びECL-3と称される、細胞外間隙に露出したN末端配列と3つのループを有する7膜貫通レセプターである。天然のCCR5リガンド、RANTES、MIP-1α、MIP-1β及びその類似体はウイルス-コレセプター相互作用をブロックすることができ、さらに、CCR5の内部移行を引き起こす(Lederman等, 2004, Science 306, p485)。CCR5特異的自己抗体は、HIVに繰り返し曝されたが感染してない12.5%の女性において発見された(Lopalco等, 2000, J. Immunology 164, 3426)。これらの抗体は、CCR5の第一細胞外ループ(ECL-1)を結合することが示され、末梢血単核細胞(PBMC)のR5親和性HIV感染を阻害することができた。女性の同種異系免疫化により、R5-HIV感染をインビトロで阻害することができるCCR5特異的抗体が生じた(Wang等, 2002, Clin. Exp. Immunol. 129, 493)。
【0003】
モノクローナルα-CCR5抗体はインビトロでHIV感染を予防することが可能である(Olson等, 1999, J. Virol. 73, 4145;Wu and LaRosa等, 1997, J. Exp. Med. 186, 1373)。小細胞外ループECL-2Aに対応する環状ペプチド(Arg168-Cys178)に対する抗体結合は、HIV−1 R5の感染を抑制した(Misumi等, 2001, J. Virol. 75, 11614)。線形CCR5ペプチド(N末端、ECL-1又はECL-2配列から)によりサルを免疫化をすることによって生産される抗体は、インビトロでのウイルス阻害作用を有する(Lehner等, 2001, J. Immunology 166, 7446)。CCR5のN末端ドメインは、パピローマウイルス様粒子上に提示され、サルを免疫化した(Chackerian等, 2004, J. Virol. 78, 4037)。
LESTR又はフーシンとも称されるケモカインレセプターCXCR4は、7-膜貫通ドメインG-タンパク質カップリングレセプターのファミリーに属する(Federsppiel等 (1993), Genomics 16:707)。CXCR4は、すべてのB細胞及び単球、大多数のTリンパ球サブセット、内皮細胞及び上皮細胞を含むほとんどの白血球群の細胞表面上に発現される(Murdoch, (2000) Immunol. Rev. 177: 175)。CXCR4の唯一公知のリガンドはSDF-1である(Pelchen-Mattews,等 (1999) Immunol. Rev. 168: 33)。
【0004】
後にCXCR4はHIVのコレセプターとして同定された (Feng等 (1996) Science 272:872)。したがって、細胞内に侵入するために必要なCXCR4がX4株として分類され、この侵入がSDF-1によってブロックされうるHIV株は、HIV−1侵入をブロックすることが示されている(Oberlin等 (1996), Nature 382:833;Bleul,等 (1996) Nature 382:829。
いくつかのCXCR4ペプチドアンタゴニストが同定されており、X4 HIV−1株の侵入及び感染を阻害することが示されている(Murakami等 (1997) J Exp Med 186:1389;Arakaki等 (1999). J Virol 73:1719;Doranz等 (2001) AIDS Res Hum Retroviruses 17:475;Doranz,等 (1997) J Exp Med 186:1395;Schols, D. (2004), Curr Top Med Chem 4:883。加えて、HIV-1及びHIV-2複製の強力かつ選択的な阻害剤である小化学化合物AMD3100は、CXCR4に特異的であることが示されている(De Clercq (2003) Nat Rev Drug Discov 2:581)。さらに、CXCR4の異なる細胞外ドメインを標的とする抗CXCR4モノクローナル抗体は、HIV-1感染を阻害することが示された(Endres等 (1996) Cell 87:745;Brelot等 (1997), J Virol 71:4744;Misumi等 (2003), J Biol Chem 278:32335;Xiao等 (2000), Exp Mol Pathol 68:139)。
【0005】
ガストリン(G17)は、大腸及び膵臓の微量な典型的な腸ペプチドホルモンの一群である(Koh, Regulatory Peptides. 93, 37-44 (2000))。ガストリンはその前駆体プロガストリン(G34)からプロセシングされる。ガストリン及びプロガストリンは、C末端グリシン伸長形態及びC末端フェニルアラニンアミド化形態で存在する。(Steel. IDrugs. 5, 689-695 (2002))。
ガストリンは、胃酸分泌を刺激する能力がよく知られている(Pharmacol Ther. 98, 109-127 (2003))。ガストリンとしてC末端テトラペプチドアミドを有する、関連したホルモンコレシストキニン(CCK)は、十二指腸において合成され、膵酵素分泌を担う。アミド化G17がCCK-2レセプターと結合するのに対して、CCKはCCK-1レセプター及びCCK-2レセプターの両方に結合する(Steel. IDrugs. 5, 689-695 (2002))。グリシン伸長ガストリンのレセプターは不明なままである。近年のデータから、ガストリンが胃腸管の癌の発達を促進しうることが示唆される(Watson. Aliment Pharmacol Ther. 14, 1231-1247 (2000);Watson. Aliment Pharmacol Ther. 14, 1231-1247 (2000))。
【0006】
補体系の活性化は多くの強力な生体学的な影響を誘導し、その多くはアナフィラトキシンC5aに媒介される。補体の第5の構成成分(C5)は、C5転換酵素によってC5a及びC5bの2つの断片に切断する。
74-アミノ酸、4-ヘリックス束糖タンパク質であるC5a(Fernandez及びHugli, J. Biol. Chem. 253, 6955-6964, 1978)は、細胞系、特に好中球、内皮細胞及びマクロファージに対する多くの多様な作用の生成を担い、局所的な炎症を誘導し、感染性の微生物と戦う(Ward P., Nat.Rev. Immunol. 4:133, 2004)。しかしながら、そのうえ、敗血症におけるC5aの過剰な生成は好中球の深刻な機能的欠損につながる(Czermak等, Nat. Med. 5: 788, 1999;Huber-Lang等, J. Immunol. 166:1193, 2001)。
【0007】
また、C5aの高い活性化は、多くの原発性及び/又は慢性炎症性疾患、例えば関節リウマチ(Jose P. Ann Rheum. Dis. 49: 747, 1990)、乾癬(Takematsu H., Arch. Dermatol. 129:74, 1993)、成人呼吸窮迫症候群(Langlois P., Heart Lung 18:71, 1989)、再灌流障害(Homeister, J. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 34:17, 1994)、ループス腎炎及び類天疱瘡に関係していた。
C5に結合してその切断を遮断してC5aとC5bの生成を減少させる抗体は、例えば、糸球体腎炎(国際公開第9529697号)、喘息(国際公開第04022096号)、コラーゲン誘導性関節炎(Wang等, Proc. Natl. Acad. Sci., 92:8955, 1995)及び血清転移関節炎(Ji等, Immunity, 16:157, 2002)などの症状の治療への使用が提案されている。C5aに特異的に結合する抗体は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)(国際公開第8605692号)及び有害な血管内補体活性化(欧州特許第245993号)の治療への使用が提案されている。また、C5aRの細胞外ループに反応性があり、これによっておそらくC5aRによるC5aの結合を低減するか又は阻害するモノクローナル抗体の、免疫病理学的な疾患(国際公開第2003062278号)の治療への使用が提案されている。
【0008】
コレステロールエステル転移タンパク質(CETP)は、高密度リポタンパク質(HDL)粒子とアポB豊富な粒子、例えば超低密度リポタンパク質(VLDL)粒子又は低密度リポタンパク質(LDL)粒子間のコレステロールエステル(CE)及びトリグリセライド(TG)の転移を媒介する血漿糖タンパク質である。CETPもリン脂質(PL)を転移する。ヒトCETPcDNAは、476のアミノ酸のタンパク質をコードする。
HDLコレステロールレベルと冠状動脈性心臓病(CHD)との負の相互関係が観察されているので(Barter P.J.及びRye K.-A. (1996) Atherosclerosis 121: 1-12)、HDLは抗アテローム生成性であると考えられる。
国際公開第96/39168号は、CETPの活性を阻害する免疫応答を刺激することによるHDL-cの増加方法を開示している。また、CETP抗原に対する免疫化は、米国公開特許第2003/0026808号に記述されている。CETPポリペプチドは「MAP」に融合させて、ウサギの免疫化のためにフロイント完全アジュバント(CFA)に乳化した。また、B型肝炎コア抗原(HBcAg)へのCETPペプチドの融合は、米国公開特許第2003/0026808号に開示されているが、コンストラクトの免疫原性は報告されなかった。
【0009】
(発明の概要)
現在のところ我々は、驚くべきことに、少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン又は少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、免疫応答、特に抗体応答を誘導することが可能であり、CCR5に対して高い抗体価が生じたことを発見した。さらに、我々は驚くべきことに、少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン又は少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、免疫応答、特に抗体応答を誘導することが可能であり、HIV感染に対して防護的及び/又は治療的効果を有することを発見した。したがって、これは、発明の組成物及びワクチンそれぞれによって生成される免疫応答、特に抗体が、インビボでCCR5を特異的に認識して、HIVコレセプターとしてその機能を干渉することができることを示す。
ゆえに、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原がCCR5細胞外ドメインないしはCCR5細胞外ドメイン断片又はその何れかの組合せであり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0010】
好適な実施態様では、本発明は、(a) 少なくとも2の第一付着部位を有するRNA-バクテリオファージのウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも2の第二付着部位を有する少なくとも1のCCR5細胞外ドメインPNt;とを含んでなり、このとき該CCR5細胞外ドメインPNtが、(i) Ntaドメイン又はNtaドメイン断片、と、(ii) 配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン(配列番号:56)又は配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン断片を含んでなり、このとき該Ntaドメインないしは該Ntaドメイン断片のC末端が該Ntbドメインないしは該Ntbドメイン断片のN末端に好ましくは直接融合しており、少なくとも2の第二付着部位の一つ目又は二つ目がスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含んでなるかスルフヒドリル基そのものであり、そして、該少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27の該アミノ酸23〜27のN末端の上流位置し;そして、該少なくとも2の第二付着部位の二つ目は、該配列番号:27のアミノ酸23〜27のC末端の下流、好ましくは該CCR5細胞外ドメインPNtのC末端の下流に位置し;そして、該RNA-バクテリオファージの該VLPと該CCR5細胞外ドメインPNtが少なくとも1の非ペプチド共有結合によって連結されるものである組成物を提供する。
【0011】
他の態様では、本発明は、HIV感染を予防及び/又は治療する方法であって、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれがヒトに投与されることを含んでなり、このとき本発明の抗原が本発明のCCR5である方法を提供する。
現在のところ我々は、驚くべきことに、少なくとも1のCXCR4細胞外ドメイン又は少なくとも1のCXCR4細胞外ドメイン断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することが可能であり、CXCR4に対して高い抗体価が生じたことを発見した。
ゆえに、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原がCXCR4細胞外ドメインないしはCXCR4細胞外ドメイン断片又はその何れかの組合せであり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0012】
現在のところ我々は、驚くべきことに、少なくとも1のCETPタンパク質又は少なくとも1のCETPタンパク質断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することが可能であり、CETPに対して高い抗体価が生じたことを発見した。
ゆえに、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原がCETPタンパク質ないしはCETP断片であり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0013】
現在のところ我々は、驚くべきことに、少なくとも1のC5aタンパク質又は少なくとも1のC5a断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することが可能であり、C5aに対して高い抗体価が生じたことを発見した。さらに、我々は驚くべきことに、少なくとも1のC5aタンパク質又は少なくとも1のC5a断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することが可能であり、C5aが重要な役割を担う関節炎などの原発性及び/又は慢性の炎症性疾患に対して防護的及び/又は治療的効果を有することを発見した。したがって、これは、発明の組成物及びワクチンそれぞれによって生成される免疫応答、特に抗体が、インビボでC5aを特異的に認識して、その機能を干渉することができることを示す。
ゆえに、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原がC5aタンパク質ないしはC5a断片であり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0014】
本発明は、疾患を治療するためにC5aに対するモノクローナル抗体を用いる従来技術よりも有益である。モノクローナル抗体療法の欠点には、大量の抗体を繰り返し注入する必要性があることなどである(Kaplan, Curr Opin Invest. Drugs. 2002; 3:1017-23)。高用量の抗体は注入疾患などの副作用を引き起こしうる。ヒト又はヒト化抗体が用いられる場合であっても、抗抗体はまた、アロタイプ応答の患者において生成され得、治療効果の減退又は潜在的な副作用を引き起こす。さらに、ヒト化モノクローナル抗体の産生費用の高さと度重なる受診の必要性にかかわる出費によって、この抗体治療が困っている多くの患者に利用できなくなる。
一態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性炎症性疾患を予防及び/又は治療する方法であって、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物それぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、このとき本発明の抗原は本発明のC5aである方法を提供する。C5aが症状を媒介又は関与する原発性及び/又は慢性炎症性疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息及び類天疱瘡を含むが、これに限定されるものではない。
【0015】
一態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原が本発明のブラジキニンであり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
一態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原が本発明のdes-Arg-ブラジキニンであり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0016】
現在のところ我々は、驚くべきことに、少なくとも1のガストリンG17、ガストリンG17の少なくとも1の断片、プロガストリンG34、又はプロガストリンG34の少なくとも1の断片を含んでなる本発明の組成物及びワクチンそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することが可能であり、ガストリン又はプロガストリンに対して高い抗体価が生じたことを発見した。
ゆえに、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原がガストリンG17、ガストリンG17の断片、プロガストリンG34、又はプロガストリンG34の断片であり、そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結され、好ましくは規則的で反復性の抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な一実施態様では、本発明の使用のために好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなる。
【0017】
他の態様では、本発明はワクチンの組成物であり、該ワクチンの組成物は本発明の少なくとも1の抗原を含んでなる組成物を提供する。さらに、本発明は、ヒト又は動物、好ましくは哺乳動物にワクチン組成物が投与される方法を提供する。本発明のワクチン組成物は、少なくとも1のアジュバントなしで、強力な免疫応答、特に抗体応答を誘導することが可能である。ゆえに、好適な一実施態様では、ワクチン組成物はアジュバントを欠いている。アジュバントの使用の回避により、望ましくない炎症性T細胞応答の発生可能性を低減しうる。
更なる態様では、本発明は、本発明の組成物と受容可能な製薬的担体を含んでなる医薬組成物を提供する。
より更なる態様では、本発明は、本発明の組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを供給すること;(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原を供給すること;そして、(c) 前記組成物を生産するために該VLPと該少なくとも1の抗原を連結することを含んでなり、ここで該少なくとも1の抗原と該VLPが該少なくとも1の第一付着部位と該少なくとも1の第二付着部位により連結される、方法を提供する。
【0018】
(発明の詳細な説明)
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと、同じ意味を有する。
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示された場合に、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するようにT細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、Bリンパ球及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(B及びTエピトープ)を有しうる。上記の特異的な反応とは、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な様式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発されうる多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。
抗原性部位:本明細書中において相互に交換可能に用いられる「抗原性部位」なる用語及び「抗原性エピトープ」なる用語は、MHC分子の関係においてT細胞レセプター又は抗体によって免疫特異的に結合されうるポリペプチドの連続的な又は非連続的な部位を意味する。免疫特異的な結合は、非特異的な結合が除外されるが必ずしも交差反応を除外するものではない。典型的に、抗原性部位は、抗原性部位に特有の空間的な立体構造内に5〜10のアミノ酸を含有する。
【0019】
本発明の抗原:本明細書中で用いられる「本発明の抗原」なる用語は、a) 本発明のCCR5;b) 本発明のCXCR4;c) 本発明のCETP;d) 本発明のC5a;e) 本発明のガストリン;f) 本発明のブラジキニン;及び、g) 本発明のdes-Arg-ブラジキニンからなる群から選択される抗原を指す。
本発明のCCR5:本明細書中で用いられる「本発明のCCR5」なる用語は、本明細書で定義される少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン、少なくとも1のCCR5細胞外ドメイン断片又はその任意の組合せに関する。
CCR5細胞外ドメイン:本明細書中で用いられる「CCR5細胞外ドメイン」なる用語は、配列番号:24のヒトCCR5の4つの細胞外ドメインの何れか一つ又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「CCR5細胞外ドメイン」なる用語は、上記のCCR5細胞外ドメインと70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意の天然ないしは人工的に操作した変異体を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「CCR5細胞外ドメイン」なる用語は、限定するものではないが、上記のCCR5細胞外ドメインのグリコシル化、アセチル化、リン酸化を含む翻訳後修飾を包含する。本明細書中で定義するように、CCR5細胞外ドメインは、好ましくは最大200、さらにより好ましくは最大100アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CCR5細胞外ドメインは、CCR5に特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0020】
CCR5細胞外ドメイン断片:本明細書中で用いる「CCR5細胞外ドメイン断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCCR5細胞外ドメインの少なくとも4、5、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25又は30の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「CCR5細胞外ドメイン断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCCR5細胞外ドメインの少なくとも6の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で定義するように、CCR5細胞外ドメイン断片は、好ましくは最大50、さらにより好ましくは最大30アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CCR5細胞外ドメイン断片は、CCR5に特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
CCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片の組合せ:「CCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片の組合せ」なる用語は、上記のCCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片の任意の組合せを含んでなるかあるいはこれらからなる任意の実体を包含する。好ましくは、CCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片は、1つのポリペプチドへの融合によって結合される。ゆえに、「CCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片の組合せ」なる用語は、付加的なアミノ酸をスペーサーとして更に含んでなり、該スペーサーが通常10、好ましくは6未満のアミノ酸であり、該スペーサーは2つのCCR5細胞外ドメイン及び/又はCCR5細胞外ドメイン断片の間にあるものである。
【0021】
本発明のCXCR4:本明細書中で用いる「本発明のCXCR4」なる用語は、本明細書で定義される少なくとも1のCXCR4細胞外ドメイン、少なくとも1のCXCR4細胞外ドメイン断片又はその任意の組合せを指す。
CXCR4細胞外ドメイン:本明細書中で用いる「CXCR4細胞外ドメイン」なる用語は、配列番号:28のヒトCXCR4の4つの細胞外ドメインの何れか一つ又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらにまた、本明細書中で用いる「CXCR4細胞外ドメイン」なる用語は、上記のCXCR4細胞外ドメインと70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意の天然ないしは人工的に操作した変異体を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「CXCR4細胞外ドメイン」なる用語は、限定するものではないが、上記のCXCR4細胞外ドメインのグリコシル化、アセチル化、リン酸化を含む翻訳後修飾を包含する。本明細書中で定義するように、CXCR4細胞外ドメインは、好ましくは最大200、さらにより好ましくは最大100アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CXCR4細胞外ドメインは、CXCR4に特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0022】
CXCR4細胞外ドメイン断片:本明細書中で用いる「CXCR4細胞外ドメイン断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCXCR4細胞外ドメインの少なくとも4、5、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25又は30の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「CXCR4細胞外ドメイン断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCXCR4細胞外ドメインの少なくとも6の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で定義するように、CXCR4細胞外ドメイン断片は、好ましくは最大50、さらにより好ましくは最大30アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CXCR4細胞外ドメイン断片は、CXCR4に特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
CXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片の組合せ:「CXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片の組合せ」なる用語は、上記のCXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片の任意の組合せを含んでなるかあるいはこれらからなる任意の実体を包含する。好ましくは、CXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片は、1つのポリペプチドへの融合によって結合される。ゆえに、「CXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片の組合せ」なる用語は、付加的なアミノ酸をスペーサーとして更に含んでなり、該スペーサーが通常10、好ましくは6未満のアミノ酸であり、該スペーサーは2つのCXCR4細胞外ドメイン及び/又はCXCR4細胞外ドメイン断片の間にあるものである。
【0023】
本発明のC5a:本明細書中で用いる「本発明のC5a」なる用語は、本明細書で定義される少なくとも1のC5aタンパク質ないしは少なくとも1のC5a断片又はその任意の組合せに関する。
C5aタンパク質:本明細書中で用いる「C5aタンパク質」なる用語は、配列番号:45のヒトC5a又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「C5aタンパク質」なる用語は、配列番号:45のヒトC5a又は任意の他の動物由来の対応するオルソログと70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意の天然ないしは人工的に操作した変異体を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「C5aタンパク質」なる用語は、限定するものではないが、上記のC5aタンパク質のグリコシル化、アセチル化、リン酸化を含む翻訳後修飾を包含する。本明細書中で定義するように、C5aタンパク質は、好ましくは最大200、さらにより好ましくは最大100アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、C5aタンパク質は、C5aに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0024】
C5a断片:本明細書中で用いる「C5a断片」なる用語は、本明細書中で定義されるC5aタンパク質の少なくとも4、5、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25又は30の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「C5a断片」なる用語は、本明細書中で定義されるC5aタンパク質の少なくとも6の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で定義するように、C5a断片は、好ましくは最大50、さらにより好ましくは最大30アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、C5a断片は、C5aに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0025】
本発明のCETP:本明細書中で用いる「本発明のCETP」なる用語は、本明細書で定義される少なくとも1のCETPタンパク質ないしは少なくとも1のCETP断片又はその任意の組合せに関する。
CETPタンパク質:本明細書中で用いる「CETPタンパク質」なる用語は、配列番号:31のヒトCETP又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「CETPタンパク質」なる用語は、配列番号:31のヒトCETP又は任意の他の動物由来の対応するオルソログと70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意の天然ないしは人工的に操作した変異体を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、本明細書中で用いる「CETPタンパク質」なる用語は、限定するものではないが、上記のCETPタンパク質のグリコシル化、アセチル化、リン酸化を含む翻訳後修飾を包含する。本明細書中で定義するように、CETPタンパク質は、好ましくは最大500アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CETPタンパク質は、CETPに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0026】
CETP断片:本明細書中で用いる「CETP断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCETPタンパク質の少なくとも4、5、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25又は30の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「CETP断片」なる用語は、本明細書中で定義されるCETPタンパク質の少なくとも6の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにこれらに80%以上、好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で定義するように、CETP断片は、好ましくは最大50、さらにより好ましくは最大30アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、CETP断片は、CETPに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0027】
本発明のガストリン:本明細書中で用いる「本発明のガストリン」なる用語は、本明細書で定義される少なくとも1のガストリンG17、少なくとも1のガストリンG17の断片、少なくとも1のプロガストリンG34ないしは少なくとも1のプロガストリンG34の断片又はその任意の組合せに関する。
ガストリンG17:本明細書中で用いる「ガストリンG17」なる用語は、C末端のフェニルアラニンがアミド化された配列番号:34のガストリン1-17、配列番号:34、配列番号:36のヒトガストリン1-17又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、「ガストリンG17」なる用語は、C末端のフェニルアラニンがアミド化された配列番号:34のガストリン1-17、配列番号:34、配列番号:36のヒトガストリン1-17又は任意の他の動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、最大3つ、好ましくは最大2つ、より好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。ガストリンG17の長さは、50未満、より好ましくは30未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、ガストリンG17は、ガストリンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0028】
ガストリンG17の断片:本明細書中で用いる「ガストリンG17の断片」なる用語は、ガストリンG17の少なくとも4、5、好ましくは少なくとも6、7、8、9又は10の近接するアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、「ガストリンG17の断片」なる用語は、上記のガストリンG17の断片を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは最大3つ、更により好ましくは最大2つ、更により好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は他のアミノ酸に置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。ガストリンG17の断片の長さは、30未満、より好ましくは20未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、ガストリンG17の断片は、ガストリンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0029】
プロガストリンG34:本明細書中で用いる「プロガストリンG34」なる用語は、C末端のフェニルアラニンがアミド化されたガストリン1-34、配列番号:35、配列番号:37のヒトガストリン1-34又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。「プロガストリンG34」なる用語は、C末端のフェニルアラニンがアミド化されたガストリン1-34、配列番号:35、配列番号:37のヒトガストリン1-34又は任意の他の動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、最大5つ、好ましくは最大4つ、より好ましくは最大3つ、好ましくは最大2つ、より好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。プロガストリンG34の長さは、60未満、より好ましくは40未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、プロガストリンG34は、プロガストリンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0030】
プロガストリンG34の断片:本明細書中で用いる「プロガストリンG34の断片」なる用語は、プロガストリンG34の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13又は14のアミノ酸を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、「ガストリンG34の断片」なる用語は、上記のプロガストリンG34の断片を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは最大3つ、更により好ましくは最大2つ、更により好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は他のアミノ酸に置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。プロガストリンG34の断片の長さは、40未満、より好ましくは20未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、プロガストリンG34の断片は、プロガストリンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0031】
本発明のブラジキニン:本明細書中で用いる「本発明のブラジキニン」なる用語は、配列番号:22のヒトブラジキニン又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、「本発明のブラジキニン」なる用語は、配列番号:22のヒトブラジキニン又は任意の他の動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、最大2つ、好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は他のアミノ酸に置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。本発明のブラジキニンの長さは、好ましくは30未満、より好ましくは20未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、本発明のブラジキニンは、ブラジキニンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
本発明のDes-Arg-ブラジキニン:本明細書中で用いる「本発明のdes-Arg-ブラジキニン」なる用語は、配列番号:23のヒトdes-Arg-ブラジキニン又は任意の他の動物、好ましくは哺乳動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを包含する。さらに、「本発明のdes-Arg-ブラジキニン」なる用語は、配列番号:23のヒトdes-Arg-ブラジキニン又は任意の他の動物由来の対応するオルソログを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、最大2つ、好ましくは1つのアミノ酸が欠失、付加又は他のアミノ酸に置換されている任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、置換は保存的なアミノ酸置換である。本発明のdes-Arg-ブラジキニンの長さは、好ましくは30未満、より好ましくは20未満のアミノ酸である。典型的かつ好ましくは、本発明のブラジキニンは、des-Arg-ブラジキニンに特異的に結合する抗体のインビボでの産生を誘導することが可能である。
【0032】
結合(以下、会合ともいう) (associated):本明細書中で用いられる「結合(会合) (associated)」なる用語は、2つの分子がともに結合するすべての可能な方法、好ましくは化学的な相互作用を指す。化学的な相互作用には共有的相互作用及び非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、又は水素結合であり、一方、共有的相互作用は、例として共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、炭素−イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースである。
【0033】
第一付着部位:ここで用いる「第一付着部位」なる用語は、VLPに天然に生じる又はVLPに人工的に付加される成分であり、第二付着部位が結合する部位を指す。第一付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、ペプチド、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第一付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、リジンなどのアミノ酸のアミノ基である。第一付着部位は、典型的にはVLPの表面上、好ましくはVLPの外表面上に位置する。多数の第一付着部位が、典型的には反復形状で、ウイルス様粒子の表面上、好ましくは外表面上に存在する。好適な実施態様では、第一付着部位は、少なくとも1の共有結合を介して、好ましくは少なくとも1のペプチド結合を介してVLPと会合(以下、結合ともいう)する。さらに好適な実施態様では、第一付着部位はVLPに天然に生じる。あるいは、他の実施態様では、第一付着部位はVLPに人工的に付加されている。
【0034】
第二付着部位:ここで用いる「第二付着部位」なる用語は、本発明の抗原に天然に生じる又は本発明の抗原に人工的に付加される成分であり、第一付着部位が結合する部位を指す。本発明の抗原の第二付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第二付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、好ましくはシステインなどのアミノ酸のスルフヒドリル基である。本発明中で用いる「少なくとも1の第二付着部位を有する本発明の抗原」は、本発明の抗原と少なくとも1の第二付着部位とを含んでなるコンストラクトを指す。好適な一実施態様では、第二付着部位は本発明の抗原内で天然に生じる。他の好適な実施態様では、第二付着部位は本発明の抗原に人工的に付加される。好適な一実施態様では、第二付着部位は、少なくとも1つの共有結合により、好ましくは少なくとも1つのペプチド結合により本発明の抗原と結合している。好適な一実施態様では、少なくとも1の第二付着部位を有する本発明の抗原はリンカーをさらに含んでなり、好ましくは該リンカーは少なくとも1の第二付着部位を含んでなり、好ましくは該リンカーはペプチド結合によって本発明の抗原に融合する。
【0035】
コートタンパク質:本出願において、「コートタンパク質」なる用語と交換可能に用いられる「キャプシドタンパク質」なる用語は、ウイルスキャプシド又はVLP内に内包されうるウイルスタンパク質を指す。典型的かつ好ましくは、「コートタンパク質」なる用語は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージのゲノム、又はウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの変異体のゲノムによってコードされるコートタンパク質を指す。より好ましくは、例として、「AP205のコートタンパク質」なる用語は、配列番号14又は、第一メチオニンが配列番号14から切断されているアミノ酸配列を指す。より好ましくは、例として、「Qβのコートタンパク質」はN末端のメチオニンの有無にかかわらず、配列番号1(「Qβ CP」)と配列番号2(A1)を指す。バクテリオファージQβのキャプシドは主にQβ CPと少量のA1タンパク質からなる。
【0036】
結合(linked):ここで用いられる「結合された(以下、連結されたともいう)(その名詞:結合)」なる用語は、可能であれば、好ましくは少なくとも第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位がともに連結する化学的な相互作用を意味する。化学的な相互作用には共有的相互作用や非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用又は水素結合であるのに対して、共有的相互作用は、共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素-リン結合、炭素-イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースのものである。ある好適な実施態様では、第一付着部位と第二付着部位は、少なくとも1の共有結合、好ましくは少なくとも1の非ペプチド結合、よりさらに好ましくは、非ペプチド結合のみを介して結合される。しかしながら、ここで用いられる「結合」なる用語は、少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位の直接結合を包含するだけでなく、選択的に好ましくは、中間分子、及びこれによって典型的かつ好ましくは、少なくとも1の、好ましくは一のヘテロ二官能性架橋剤を介して、少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位との間接的な結合も包含する。
【0037】
リンカー:本明細書で使用する「リンカー」は、第二付着部位と本発明の抗原を結合させるか、あるいは第二付着部位を既に含むか、実質的に第二付着部位からなるか、第二付着部位からなる。好ましくは、本明細書中で用いる「リンカー」は第二付着部位を、典型的かつ好ましくは、限定するものではないが、一アミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として既に含む。また、本明細書中で用いる「リンカー」は、特に本発明のリンカーが少なくとも1のアミノ酸残基を含有する場合、「アミノ酸リンカー」と称する。したがって、「リンカー」と「アミノ酸リンカー」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。しかしながら、この用語は、アミノ酸残基からなるアミノ酸リンカーが本発明の好適な実施態様である場合でも、このようなアミノ酸リンカーがアミノ酸残基のみからなることを示すことを意味するものではない。リンカーのアミノ酸残基は、当分野で知られている天然に存在するアミノ酸又は非天然アミノ酸、すべてのL型又はすべてのD型、あるいはこれらの混合物から構成されることが好ましい。したがって、スルフヒドリル基又はシステイン残基を含有する分子は本発明のリンカーの好適な実施態様であり、このような分子も本発明内に含まれる。さらに、本発明に有用なリンカーは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、シクロアルケニル、アリール又はヘテロアリール分子を含有する分子である。さらに好ましくは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル(C5、C6)、アリール、又はヘテロアリール部分と付加的なアミノ酸を含んでなるリンカーも本発明のためのリンカーとして使用可能であり、本発明の範囲内である。本発明の抗原とリンカーの間の会合(結合)は、少なくとも1つの共有結合によるものであることが好ましく、少なくとも1つのペプチド結合によるものであることがより好ましい。本発明の抗原によって天然に第二付着部位が生じない場合には、リンカーは、好ましくは少なくとも1の共有結合により、より好ましくは少なくとも1のペプチド結合により、少なくとも1の第二付着部位、例えばシステインに結合される。
【0038】
規則的で反復性の抗原アレイ:本明細書で用いる「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は、一般的に、それぞれウイルス様粒子との関係で抗原中に、典型的に好ましくは非常に規則的に均一に空間的に配置していることに特徴がある、抗原の反復パターンを指す。本発明の一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。RNAファージのVLPなどの本発明の特定の実施態様では、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは2から8ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する、抗原の準結晶性の、厳密に反復的な順序配列を持つ、好適に規則的で反復性の抗原の典型的かつ好ましい例である。
パッケージ化(packaged)(以下、封入ともいう):本明細書で使用するように、「パッケージ化」という用語は、VLPとの関係でのポリ陰イオン性高分子の状態を指す。本明細書中で用いる「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。また、この用語にはポリ陰イオン性高分子の封入ないしは部分的な封入が含まれる。したがって、ポリ陰イオン性高分子を、実際に結合、特に共有結合しなくても、VLPによって封入することができる。好適な実施態様では、少なくとも1のポリ陰イオン性高分子はVLP内に、最も好ましくは非共有的様式にてパッケージ化される。
【0039】
ポリペプチド:本明細書中で用いる「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合ともいう)によって、線形に連結される単量体(アミノ酸)からなる分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの産物を指すわけではない。ゆえに、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義の中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
組み換えVLP:本明細書中で用いる「組み換えVLP」は、組み換えDNA技術の少なくとも1工程を含んでなる方法によって得られるVLPを指す。本明細書中で用いる「組み換えて生産されるVLP」なる用語は、組み換えDNA技術の少なくとも1工程を含んでなる方法によって得られるVLPを指す。ゆえに、「組み換えVLP」及び「組み換えて生産されるVLP」なる用語は交換可能に用いられ、同一の意味を有するものである。
【0040】
ウイルス粒子:本明細書中で用いられる「ウイルス粒子」なる用語は、ウイルスの形態学的形状を意味する。いくつかのウイルス型には、タンパク質キャプシドに囲まれるゲノムを含むものがあり、他のものは付加的な構造(例えばエンベロープ、テイルなど)を有する。
ここで用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書中で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は化学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の相等物のすべて又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好適な実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指す。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有の反復して組織化される、ウイルスキャプシド又はウイルスキャプシド様構造が形成される。前記構造は典型的には球状又は管状である。
【0041】
ウイルス粒子とウイルス様粒子の一つの共通した特徴は、高度に規則的かつ反復性をもって配列したサブユニットである。
RNAバクテリオファージのウイルス様粒子:本明細書中で用いる「RNAバクテリオファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしは断片を含んでなる、好ましくは基本的にこれからなる、あるいはこれからなるウイルス様粒子を指す。さらに、RNAバクテリオファージの構造に類似するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性であり、RNAバクテリオファージの複製機構をコードする少なくとも1の遺伝子、好ましくは複数の遺伝子を欠損しており、及び典型的には、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子を欠損する。しかしながらまた、この定義には、前述の遺伝子又は遺伝子群が存在するが不活性であるため、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子が非複製性及び/又は非感染性となる、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子が包含される。本開示の範囲内で、「サブユニット」及び「単量体」なる用語は、この文脈において相互に交換可能に同等に用いられる。
【0042】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも1」、又は「一又は複数」を意味する。
この出願において、抗体は、10−1又はそれ以上、好ましくは10−1又はそれ以上、より好ましくは10−1又はそれ以上、最も好ましくは10−1又はそれ以上の結合親和性(Ka)で抗原と結合するならば、特異的に結合するものと定義される。抗体の親和性は、(例えばスキャッチャード分析により)通常の当業者によって容易に測定され得る。
ポリペプチドのアミノ酸同一性は、ベストフィット(Bestfit)プログラムなどの公知のコンピュータプログラムを用いて常套的に測定することができる。ベストフィットないしは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、好ましくはベストフィットを用いて、特定の配列が例えば参照するアミノ酸配列に対して95%の同一性があるかどうかを決定するために、参照アミノ酸配列の完全長に対する同一性の割合が算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%以下の相同性にギャップが挿入されるようにパラメータを設定する。ポリペプチド間の同一性の割合を測定する前述の方法は、本発明に開示するすべてのタンパク質、ポリペプチドないしはその断片に適するものである。
当業者に理解されるように、保存的アミノ酸置換には等配性の置換、アミノ酸の荷電、極性、芳香族、脂肪族又は疎水性性質が維持される置換が含まれる。代表的な保存的アミノ酸置換は、以下のグループのうちの1グループ内のアミノ酸間の置換である:Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Cys;Lys、Arg;及び、PheとTyr。
【0043】
本発明は、動物又はヒトにおける本発明の抗原に対する免疫応答を亢進するための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子;と(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原であり、このとき該少なくとも1の抗原が本発明の抗原であり、(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と該少なくとも1の第二付着部位を介して連結しているものである。好ましくは、本発明の抗原はVLPに連結しており、規則的で反復性の抗原-VLPアレイを形成する。本発明の好適な実施態様では、少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、さらにより好ましくは少なくとも120及びさらにより好ましくは少なくとも180の本発明の抗原がVLPに結合する。
規則的で反復性の構造を有する当分野で公知の任意のウイルスは、本発明のVLPとして選択してもよい。VLPの調整のために使用されうる具体的なDNAないしRNAウイルスのコート又はキャプシドタンパク質は、国際公開第2004/009124号の25頁の10−21行目、26頁の11−28行目及び28頁の4行目から31頁の4行目に開示されている。これらの開示内容は出典明記により本明細書中に援用される。
【0044】
ウイルス又はウイルス様粒子は、ウイルス感染した細胞培養物から生産され、精製することができる。ワクチンの目的のために結果として生じるウイルス又はウイルス様粒子は病原性を欠いていることを必要とする。遺伝子工学の他に、物理的方法又は化学的方法、例えばUV照射、ホルムアルデヒド処理を用いて、ウイルスゲノム機能を不活性化することができる。
好適な一実施態様では、VLPは組み換えVLPである。ほとんどすべての一般的に公知のウイルスは配列決定されており、公的に容易に入手可能である。コートタンパク質をコードする遺伝子は当業者に容易に同定されうる。宿主内でコートタンパク質を組み換え発現させることによるVLPの調製は、当業者の共通の知識の範囲内である。
【0045】
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、a) RNAファージ;b) バクテリオファージ;c) B型肝炎ウイルス、好ましくはそのキャプシドタンパク質(Ulrich, 等, Virus Res. 50: 141-182 (1998))又はその表面タンパク質(国際公開公報92/11291);d) はしかウイルス(Warnes, 等, Gene 160:173-178 (1995));e) シンドビスウイルス;f) ロタウイルス(米国特許第5,071,651号及び米国特許第5,374,426号);g) 口蹄疫ウイルス(Twomey, 等, Vaccine 13:1603 1610, (1995));h) ノーウォークウイルス(Jiang, X., 等, Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., 等, J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i) アルファウイルス属;j) レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(国際公開公報96/30523);k) レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l) ヒトパピローマウイルス(国際公開公報98/15631);m) ポリオーマウイルス;n) タバコモザイク病ウイルス;及びo) Flockハウスウイルスからなる群から選択されるウイルスの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、あるいはこれからなる。
好適な一実施態様では、VLPは、その組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、これらからなる。一以上のアミノ酸配列を含むかそれらからなるVLPを、本出願ではモザイクVLPと称する。
【0046】
ここで使用される「組み換えタンパク質の断片」なる用語又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%であり、好ましくはVLPを形成する能力を保持するポリペプチドとして定義される。好ましくは、該断片は、少なくとも1の内部欠失、少なくとも1の切断、又はそれらの少なくとも1の組合せから得られる。「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、上で定義した「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」のそれぞれと、少なくとも80%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはウイルス様粒子内に集合体化(以下「アセンブリ」ともいう)することができるポリペプチドをさらに包含する。
本発明で交換可能に使用される「変異組み換えタンパク質」なる用語又は「組み換えタンパク質の変異体」なる用語、本発明で交換可能に使用される「変異コートタンパク質」なる用語又は「コートタンパク質の変異体」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれに由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、該アミノ酸配列は野生型配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であり、好ましくはVLP内に集合化する能力を保持している。
【0047】
好適な一実施態様では、本発明のウイルス様粒子はB型肝炎ウイルスである。B型肝炎ウイルス様粒子の調整は、特に国際公開公報00/32227、同01/85208及び同01/056905に開示されている。これら3つすべての文書は出典明記によって本明細書中に特別に援用される。本発明の実施における使用に好適なHBcAgの他の変異体は国際公開公報01/056905の34−39頁に開示されている。
本発明の更なる好適な一実施態様では、リジン残基はHBcAgポリペプチドに導入され、本発明の抗原のHBcAgのVLPへの結合を媒介する。好適な実施態様では、本発明の組成物及びVLPは、配列番号20のアミノ酸1−144又は1−149、1−185を含むか、あるいはこれからなる、HBcAgを用いて調製される。このHBcAgは修飾されており、79番目と80番目のアミノ酸がGly-Gly-Lys-Gly-Glyのアミノ酸配列を有するペプチドに置き換わっている。この修飾により配列番号20から配列番号21に変化する。更なる好適な実施態様では、配列番号21又はその対応する断片、好ましくは1−144又は1−149の48番目と110番目のシステイン残基がセリンに変異される。さらに、本発明は、上記の対応するアミノ酸変異を有するB型肝炎コアタンパク質変異を含有する組成物を包含する。さらに、本発明は、配列番号21に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなるHBcAgポリペプチドを含有する組成物及びワクチンのそれぞれを包含する。
【0048】
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、ササゲクロロティックモットルウイルス、ササゲモザイクウイルス又はアルファルファ‐モザイクウイルスのものである。これらのウイルスのVLPの生産方法は、米国公開特許第2005/0260758号及び国際公開第05067478号に記載されている。
本発明の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージのものである。好ましくは、RNAバクテリオファージは、a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7、及びm)バクテリオファージAP205からなる群から選択される。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有し、該コートタンパク質は、(a) 配列番号:1(Qβ CPを指す);(b) 配列番号:1と配列番号:2の混合物(Qβ A1タンパク質を指す);(c) 配列番号:3;(d) 配列番号:4;(e) 配列番号:5;(f) 配列番号:6、(g) 配列番号:6と配列番号:7の混合物;(h) 配列番号:8;(i) 配列番号:9;(j) 配列番号:10;(k) 配列番号:11;(l) 配列番号:12;(m) 配列番号:13;及び(n) 配列番号:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。一般的に、上記のコートタンパク質はN末端メチオニンの存在の有無にかかわらずVLP内に集合体化することができる。
【0049】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるモザイクVLPである。
非常に好適な一実施態様では、VLPはRNAファージの2つの異なるコートタンパク質を含むか、あるいはそれらからなるものであり、該2つのコートタンパク質は配列番号:1と配列番号:2、又は配列番号:6と配列番号:7のアミノ酸配列を有する。
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-バクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
好適な一実施態様では、本発明のVLPはRNAファージQβである。さらに好適な本発明のRNAファージ、特にQβ及びfrのウイルス様粒子は国際公開公報02/056905に開示されており、この開示内容は出典明記により本明細書中に援用される。特に、国際公開公報02/056905の実施例18にQβのVLP粒子の調製について詳しく記載されている。
【0050】
他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、RNAファージAP205のVLPである。また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに、アミノ酸14のアスパラギンがアスパラギン酸に置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPのコンピテントアセンブリ変異体型を本発明の実施に使用してもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2には、AP205コートタンパク質を含有するVLPの入手方法、とりわけその発現と精製について記載されている。国際公開公報2004/007538は出典明記によって本明細書中に援用される。
好適な一実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異コートタンパク質は置換及び/又は欠失によって少なくとも1のリジン残基が除去されて修飾されている。他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異コートタンパク質は置換及び/又は挿入によって少なくとも1のリジン残基が付加されて修飾されている。非常に好適な一実施態様では、変異コートタンパク質はRNAファージQβのものであり、このとき少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのリジン残基が置換又は欠失によって取り除かれている。代替的な実施態様では、変異コートタンパク質はRNAファージQβのものであり、このとき少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つのリジン残基が置換又は挿入によって付加されている。更なる好適な一実施態様では、RNAファージQβの変異コートタンパク質は、配列番号:15〜19のいずれか一から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0051】
好適な実施態様では、本発明の組成物及びワクチンは、0.5、好ましくは1.0、好ましくは1.2、好ましくは1.6、好ましくは1.9、好ましくは2.2から4.0の抗原密度を有する。ここで使用される「抗原密度」なる用語は、サブユニット当たり、好ましくはVLPのコートタンパク質当たり、好ましくはRNAファージのVLPのコートタンパク質当たりに結合する本発明の抗原の平均数を意味するものである。よって、この値は、本発明の組成物又はワクチン中での、VLP、好ましくはRNAファージのVLPの単量体又はサブユニット全体の平均として算出される。
さらにまた、RNAファージコートタンパク質は、細菌宿主内で発現すると自己集合体化することが示されている(Kastelein, RA. 等, Gene 23:245-254 (1983)、Kozlovskaya, TM. 等, Dokl. Akad. Nauk SSSR 287:452-455 (1986)、Adhin, MR. 等, Virology 170:238-242 (1989)、Priano, C. 等, J. Mol. Biol. 249:283-297 (1995))。特に、GA (Ni, CZ., 等, Protein Sci. 5: 2485-2493 (1996)、Tars, K 等, J. Mol.Biol. 271:759-773(1997))及び、fr (Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993)、Liljas, L 等 J Mol. Biol. 244:279-290, (1994))の生物学的及び生化学的性質は開示されている。いくつかのRNAバクテリオファージの結晶構造が決定されている(Golmohammadi, R. 等, Structure 4:543-554 (1996))。そのような情報を用いて、表面に曝された残基を同定して、RNAファージコートタンパク質を修飾して、一又は複数の反応性のアミノ酸残基を挿入又は置換によって挿入することができる。RNAファージ由来のVLPの他の利点は、安価で大量の物質を産生することが可能となる細菌での発現回収率が高いことである。
【0052】
好適な実施態様では、本発明の抗原は、CCR5細胞外ドメイン、CCR5細胞外ドメイン断片又は任意の組合せである。本発明の一実施態様では、少なくとも1の抗原はCCR5細胞外ドメイン断片である。好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメイン断片は、CCR5細胞外ドメインECL2断片、好ましくはECL2Aを含んでなるか、基本的にこれからなるかあるいはこれからなる。当分野で一般的に理解されるように、ECL2Aは、好ましくはECL2のN末端の第一アミノ酸から始まり、好ましくはスレオニンで止まり、ヒトECL2配列のシステインの直前にあるものである。更に好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメイン断片は配列番号:25を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。好適な実施態様では、CCR5細胞外ドメイン断片は、環状化されたCL2Aを含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。更に好適な実施態様では、CCR5細胞外ドメイン断片は環状化された配列番号:25を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。更に好適な実施態様では、CCR5細胞外ドメイン断片は、環状化された配列番号:26又は配列番号:52を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなり、このペプチドが両端のC及びG残基によって環状化されるものである。本明細書中で用いるように、環状化された配列番号:25は配列番号.25を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなり、該アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基が少なくとも1の化学結合によって、好ましくは少なくとも1の共有結合によって相互作用するものである。好ましくは、前記アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基は、すべての共有結合によって各々の他のアミノ酸残基と相互作用する。好ましくは、前記アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基は1つのペプチド結合によって各々の他のアミノ酸残基と相互作用して、円形のペプチドとなる。
【0053】
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも1の抗原はCCR5細胞外ドメインPNtである。更なる好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは配列番号:27を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。更なる好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは、配列番号:27のC末端ないしはN末端のいずれかに、好ましくは配列番号:27のC末端に付加的なリンカー、好ましくはシステインが融合している配列番号:27を含んでなるか、これからなる。なお更なる好適な実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは、配列番号:27のC末端ないしはN末端のいずれかに、好ましくは配列番号:27のC末端に付加的なリンカー、好ましくはシステインが融合している配列番号:27を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなり、配列番号:27の天然に生じるシステインが他のアミノ酸、好ましくはセリンに置換しているものである。これは、均一なかつ明確な抗原提示を確認するためである。
【0054】
好適な実施態様では、本発明は、(a) 少なくとも2の第一付着部位を有するRNA-バクテリオファージのウイルス様粒子;と、(b) 少なくとも2の第二付着部位を有する少なくとも1のCCR5細胞外ドメインPNt;とを含んでなり、このとき該CCR5細胞外ドメインPNtが、(i) Ntaドメイン又はNtaドメイン断片、と(ii) 配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン(配列番号:56)又は配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン断片を含んでなり、このとき該Ntaドメインないしは該Ntaドメイン断片のC末端が該Ntbドメインないしは該Ntbドメイン断片のN末端に好ましくは直接融合しており、少なくとも2の第二付着部位の一つ目又は二つ目がスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含んでなるかスルフヒドリル基そのものであり、そして、該少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27の該アミノ酸23〜27のN末端の上流位置し;そして、該少なくとも2の第二付着部位の二つ目は、該配列番号:27のアミノ酸23〜27のC末端の下流、好ましくは該CCR5細胞外ドメインPNtのC末端の下流に位置し;そして、該RNA-バクテリオファージの該VLPと該CCR5細胞外ドメインPNtが少なくとも1の非ペプチド共有結合によって連結されるものである組成物を提供する。
【0055】
Ntaドメイン:本明細書中で用いる「Ntaドメイン」なる用語は、配列番号:57のアミノ酸配列を有する天然のNtaドメイン又は任意の他の動物、好ましくは霊長類(真猿亜目及び原猿亜目を含む)、より好ましくは真猿亜目由来のCCR5オルソログの対応する配列を指す。さらに、本明細書中で用いる「Ntaドメイン」なる用語は修飾Ntaドメインを指し、このとき本明細書中で定義するように、天然のNtaドメインの3つ、好ましくは2つ、より好ましくは1つのアミノ酸が、該修飾Ntaドメインを含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。
Ntaドメイン断片:本明細書中で用いる「Ntaドメイン断片」なる用語は、該Ntaドメイン断片を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、本明細書中で定義するNtaドメインの少なくとも8、好ましくは少なくとも9、10、11、12、13、14、15又は、16の連続したアミノ酸配列を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを指す。
【0056】
Ntbドメイン:本明細書中で用いる「Ntbドメイン」なる用語は、配列番号:58のアミノ酸配列を有する天然のNtbドメイン又は任意の他の動物、好ましくは霊長類(真猿亜目及び原猿亜目を含む)、より好ましくは真猿亜目由来のCCR5オルソログの対応する配列を指す。さらに、本明細書中で用いる「Ntbドメイン」なる用語は修飾Ntbドメインを指し、このとき本明細書中で定義するように、天然のNtbドメインの2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、該修飾Ntaドメインを含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。
Ntbドメイン断片:本明細書中で用いる「Ntbドメイン断片」なる用語は、該Ntbドメイン断片を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、本明細書中で定義するNtbドメインの少なくとも6、好ましくは少なくとも7、8、9、10の連続したアミノ酸配列を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる任意のポリペプチドを指す。好ましくは、前記Ntbドメイン断片は、アミノ酸配列CQKINVK(配列番号:59)、より好ましくはCQKINVKQ(配列番号:60)を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる。さらに、前記Ntbドメイン断片は、アミノ酸配列CQKINVK、より好ましくはCQKINVKQを含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、該Ntbドメイン断片を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、CQKINVK又はCQKINVKQの1つのアミノ酸が欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保守的な置換によって修飾されている。
【0057】
好適な実施態様では、少なくとも2の第二付着部位を有するCCR5細胞外ドメインPNtは、該少なくとも2の第二付着部位の一つ目及び二つ目に含まれる、一つ目及び二つ目そのものである2つのスルフヒドリル基、好ましくは前記システイン残基の2つのスルフヒドリル基に加えて、更なるシステインのスルフヒドリル基、好ましくは更なるスルフヒドリル基を含んでいない。
好適な一実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、Ntaドメイン又はNtaドメイン断片のN末端の上流に位置しない。これは、CCR5の天然の配位が自由に可動するN末端を有するので、宿主免疫系へのNtaドメイン又はNtaドメイン断片のN末端の自由なアクセスを確認するためである。好ましくは、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、Ntaドメイン又はNtaドメイン断片のC末端の下流に位置する。
好適な一実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、前記CCR5細胞外ドメインPNt内の天然に生じるシステイン残基である。好適な実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27のシステイン残基のスルフヒドリル基に対応する。
【0058】
代替的な一実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は前記の天然に生じるシステインの上流の1、2又は3のアミノ酸位、又は下流の1又は2のアミノ酸位に位置し、好ましくは該少なくとも2の第二付着部位の一つ目はシステイン内に位置する天然に生じるアミノ酸残基の挿入又は置換によって生成されており、そして、好ましくはPNtドメイン内の天然に生じるシステイン残基が欠失されているか又は、好ましくはセリンないしはアラニン置換によって置換されている。
好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは、配列番号:27を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなる。好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは、配列番号:27由来のアミノ酸配列を含んでなる、基本的にこれらからなる、あるいはこれらからなり、この配列番号:27由来のアミノ酸配列を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、配列番号:27の3つ、好ましくは2つ、好ましくは1つのアミノ酸が欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保守的な置換によって修飾されている。
【0059】
好適な一実施態様では、組成物はリンカーを更に含み、該リンカーは前記CCR5細胞外ドメインPNtのC末端に融合し、該リンカーは前記少なくとも2の第二付着部位の二つ目を含むか、二つ目そのものである。Ntbドメイン又はNtbドメイン断片のフレキシビリティが異なるVLPにより効率的にカップリングするため、又は、天然のNtbドメインの天然の配位をよりよく模倣するために調整されうるように、リンカーの長さを変えることができる。
好適な実施態様では、リンカーは、(a) GGC;(b) GGC-CONH2;(c) GC;(d) GC-CONH2;(e) C;及び(f) C-CONH2からなる群から選択される。更なる好適な一実施態様では、リンカーはシステインないしはアミド化されたシステインである。好適な一実施態様では、少なくとも2の第二付着部位を有するCCR5細胞外ドメインPNtは、配列番号:44のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、好ましくはこれからなる。
好適な一実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目と二つ目は、少なくとも2の非ペプチド共有結合によって少なくとも2の第一付着部位と結合する。更なる好適な一実施態様では、前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目と二つ目は、少なくとも2の非ペプチド共有結合によって少なくとも2の第一付着部位と結合して、典型的かつ好ましくはNtbドメイン又はNtbドメイン断片の「架橋様」構造が生じる。提唱された理論に結びつくものではないが、この架橋様構造が天然のNtbドメインの天然の配位を模倣すると思われており、そのN末端はECL3ループの他のシステインとジスルフィド結合で結合し、そのC末端は細胞膜に繋留されている。
【0060】
好適な一実施態様では、少なくとも2の第一付着部位は同一の反応性官能基を含んでなる。好ましくは、少なくとも2の第一付着部位の各々はアミノ基を含んでなる。より好ましくは、少なくとも2の第一付着部位の各々はリジン残基のアミノ基を含んでなる。
好適な一実施態様では、組成物は少なくとも2のヘテロ-二官能分子を更に含み、該少なくとも2のヘテロ-二官能分子は前記少なくとも2の第一付着部位と前記少なくとも2の第二付着部位を連結し、好ましくは該少なくとも2のヘテロ-二官能分子の各々はSMPHである。
好適な一実施態様では、RNA-バクテリオファージのウイルス様粒子は、Qβ、AP205、fr又はGAである。好適な実施態様では、RNA-バクテリオファージのウイルス様粒子はQβである。少なくとも4つのリジン残基はQβコートタンパク質のVLPの表面に露出する。このリジン密度により、少なくとも2の第二付着部位の一方が少なくとも1の非ペプチド共有結合によって1つの第一付着部位を連結した後、少なくとも2の第二付着部位の他方が迅速に第一付着部位を見つけて確実に連結する。同様に、他のRNA-バクテリオファージのVLPもまた本発明に適する。
【0061】
一態様では、本発明は、(a) 少なくとも2の第一付着部位を有するRNA-バクテリオファージのウイルス様粒子を提供する;このときRNA-バクテリオファージの該ウイルス様粒子(VLP)は、該RNA-バクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含んでなるか、これからなり;好ましくは該少なくとも2の第一付着部位の各々は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含んでなるか、又はそのものであり;(b) 少なくとも2の第二付着部位を有する少なくとも1のCCR5細胞外ドメインPNtを提供する;このとき該CCR5細胞外ドメインPNtは、(i) Ntaドメイン又はNtaドメイン断片、と、(ii) 配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン(配列番号:56)又は配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン断片を含んでなり、このとき該Ntaドメインないしは該Ntaドメイン断片のC末端が該Ntbドメインないしは該Ntbドメイン断片のN末端に好ましくは直接融合しており、少なくとも2の第二付着部位の一つ目又は二つ目がスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含んでなるかスルフヒドリル基そのものであり、そして、該少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27の該アミノ酸23〜27のN末端の上流に位置し;そして、該少なくとも2の第二付着部位の二つ目は、配列番号:27のアミノ酸23〜27のC末端の下流、好ましくは該CCR5細胞外ドメインPNtのC末端の下流に位置し;(c) 該RNA-バクテリオファージのVLPと該CCR5細胞外ドメインPNtとを少なくとも1の非ペプチド共有結合によって連結させる、という工程を含んでなる、組成物の生産方法を提供する。
【0062】
好適な実施態様では、RNAバクテリオファージのVLPのコートタンパク質に対するCCR5細胞外ドメインPNtの分子比率は、8:1から0.5:1、好ましくは4:1から1:1、より好ましくは4:1から2:1、更により好ましくは2:1である。
好適な一実施態様では、工程(a)はヘテロ二官能リンカーをRNA-バクテリオファージの前記ウイルス様粒子(VLP)に付加することを更に含んでなり、好ましくは前記ヘテロ二官能リンカーがSMPHである。好ましくは、RNAバクテリオファージのVLPのコートタンパク質に対するSMPHの分子比率は、40:1から2:1、好ましくは20:1から4:1、より好ましくは10:1である。
好適な一実施態様では、RNAバクテリオファージ及び前記CCR5細胞外ドメインPNt部位の前記VLPの連結は、150mM以下、好ましくは100mM以下、好ましくは75mM以下、より好ましくは50mM以下のイオン強度を有する溶液において実施される。
好適な一実施態様では、RNA-バクテリオファージのウイルス様粒子は、Qβ、AP205、fr又はGA、好ましくはQβである。
【0063】
好適な実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは配列番号:27のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、好ましくはこれからなる。好適な一実施態様では、CCR5細胞外ドメインPNtは配列番号:27由来のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、好ましくはこれからなり、配列番号:27の3つ、好ましくは2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、配列番号:27由来の該アミノ酸配列を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCCR5に特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。
好適な実施態様では、少なくとも2の第二付着部位を有するCCR5細胞外ドメインPNtは配列番号:44のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、好ましくはこれからなる。
【0064】
一態様では、本発明は、本発明の方法に従って入手できるか、好ましくは入手した組成物を提供する。
好適な一実施態様では、本発明の抗原はCXCR4細胞外ドメイン、CXCR4細胞外ドメイン断片又は任意の組合せである。好適な一実施態様では、CXCR4細胞外ドメインがCXCR4 N末端の細胞外ドメインである。好適な一実施態様では、CXCR4 N末端の細胞外ドメインはそのC末端を介してウイルス様粒子にカップリングされる。
好適な一実施態様では、CXCR4 N末端の細胞外ドメインは配列番号:30ないしは配列番号:30由来のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなり、配列番号:30の3つ、好ましくは2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、配列番号:30由来の該アミノ酸配列を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCXCR4に特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。更なる好適な一実施態様では、配列番号:30を含んでなるか、基本的にこれを含むか、これからなるCXCR4 N末端の細胞外ドメインはそのC末端を介してウイルス様粒子にカップリングされる。
【0065】
好適な一実施態様では、CXCR4細胞外ドメイン断片はCXCR4細胞外ドメインECL2断片である。更に好適な一実施態様では、CXCR4細胞外ドメインECL2ドメイン断片は、配列番号:29ないしは配列番号:29由来のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなり、配列番号:29の2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、配列番号:29由来の該アミノ酸配列を含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がヒトCXCR4に特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。好適な一実施態様では、CXCR4細胞外ECL2ドメイン断片は、線状、すなわち環状でないアミノ酸配列:29又は配列番号:29由来のアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれを含むか、これからなる。更なる好適な一実施態様では、前記線状の配列番号:29は、そのN末端又はそのC末端、好ましくはそのC末端を介して、ウイルス様粒子にカップリングされる。
【0066】
好適な実施態様では、CXCR4細胞外ドメイン断片は、環状化したCXCR4細胞外ECL2ドメイン断片を含んでなるか、これからなる。更なる好適な実施態様では、CXCR4細胞外ドメイン断片は、環状化した配列番号:29又はアミノ酸配列:29由来の環状化したアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。本明細書中で用いるように、環状化した配列番号:29は配列番号.29を含んでなるか配列番号.29からなるアミノ酸配列を指し、該アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基が少なくとも1の化学結合によって、好ましくは少なくとも1の共有結合によって各々の他のアミノ酸残基と相互作用する。好ましくは、前記アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基は、すべての共有結合によって各々の他のアミノ酸残基と相互作用する。好ましくは、前記アミノ酸配列の最初のアミノ酸残基と最後のアミノ酸残基は1つのペプチド結合によって各々の他のアミノ酸残基と相互作用して、円形のペプチドとなる。更に好適な実施態様では、CXCR4細胞外ECL2ドメイン断片は、環状化された配列番号:49又は配列番号:53を含んでなるか、あるいはこれからなり、このペプチドが両端のC及びG残基によって環状化されるものである。
【0067】
好適な一実施態様では、少なくとも1の抗原は本発明のガストリンである。一実施態様では、少なくとも1の抗原はガストリンG17である。好適な一実施態様では、ガストリンG17は、配列番号:34を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。更なる好適な一実施態様では、ガストリンG17は、配列番号:36を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。代替的な好適な一実施態様では、ガストリンG17は、最後のアミノ酸Fがアミド化されている配列番号:34を含んでなるか、基本的にこれからなるか、好ましくはこれからなる。
好適な一実施態様では、少なくとも1の抗原はプロガストリンG34である。好適な実施態様では、プロガストリンG34は、配列番号:35を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。更なる好適な一実施態様では、プロガストリンG34は、配列番号:37を含んでなるか、これからなる。代替的な更なる好適な一実施態様では、プロガストリンG34は、最後のアミノ酸Fがアミド化されている配列番号:35を含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなる。
好適な一実施態様では、少なくとも1の抗原は、ガストリンG17 1-9断片(配列番号:33)、好ましくはそのC末端にリンカー配列が融合したもの、より好ましくはC末端(配列番号:39)にリンカー配列SSPPPPCが融合したものを含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなる。
【0068】
非常に好適な一実施態様では、リンカーと融合した本発明のガストリンは、配列番号:38を含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなる。
好適な一実施態様では、少なくとも1の第二付着部位を有する本発明のガストリンは、配列番号:38;配列番号:39;配列番号:40;配列番号:41;配列番号:42;及び配列番号:43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、基本的にこれからなるか、あるいはこれからなる。
ガストリン配列の一部としての配列EGPWLEEEEのうちの一つの位置のEがE、ピロE又はQであることを注記する。付加的なアミノ酸がEGPWLEEEEのN末端に融合する場合、配列EGPWLEEEEのうちの一つの位置一つのEがE又は好ましくはQでもよい。
好適な一実施態様では、本発明の少なくとも1の抗原はCETP断片である。更なる好適な一実施態様では、CETP断片は、配列番号:32のアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:32由来のポリペプチドを含んでなる、基本的にこれらからなるか、あるいはこれらからなり、配列番号:32の2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、該配列番号:32由来のポリペプチドを含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がCETP、好ましくはヒトのCETPに特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。
【0069】
好適な実施態様では、少なくとも1の抗原はC5aタンパク質である。好適な一実施態様では、C5aタンパク質は、配列番号:45のアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:45由来のポリペプチドを含んでなる、基本的にこれらからなるか、あるいはこれらからなり、配列番号:45の5つ、4つ、好ましくは3つ、好ましくは2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、該配列番号:45由来のポリペプチドを含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がC5a、好ましくはヒトのC5aに特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。好適な一実施態様では、少なくとも1の抗原はC5a断片である。更なる好適な一実施態様では、C5a断片は、配列番号:46のアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:46由来のポリペプチドを含んでなる、基本的にこれらからなるか、あるいはこれらからなり、配列番号:46の2つ、好ましくは1つのアミノ酸が、該配列番号:46由来のポリペプチドを含んでなる本発明の組成物によって誘発される抗体がC5a、好ましくはヒトのC5aに特異的に結合するという条件の下に、欠失、挿入及び/又は置換、好ましくは保存的置換によって修飾されている。
【0070】
好適な一実施態様では、本発明の抗原は本発明のブラジキニンである。ブラジキニン(BK、KRPPGFSPFR、配列番号:50)は、主要な血管拡張因子ペプチドであって、血圧、血流及び血管透過性の局所的調節機能に重要な役割がある(Margolius H.S,等, Hypertension, 1995)。ブラジキニンはB2-レセプターを介してその効果を発揮する。
des-Arg9-BK(KRPPGFSPF、配列番号:51)はオーバーラップしている、ブラジキニンと異なった機能を有する。所見から、des-Arg9-BKが組織損傷の後に急速に生成され、血管拡張作用、血管透過性の増大、血漿管外遊出、細胞移動、疼痛及び痛覚過敏(Calixto J.B.等, Pain 2000)を含む炎症過程の間に観察される多くの現象を調整することが示唆される。des-Arg9-BKはB1-レセプターを介してその効果を発揮する。
BK及びdes-Arg9-BKはいくつかの炎症性疾患で役割を果たすことが報告されている(Cruwys S.C.等, Br J Pharmacol, 1994;Cassim B.等, Immunopharmacology 1997)。実験的所見から、BK及びdes-Arg9-BKはともに喘息の発症の間に役割を果たすことが示唆される(Christiansen S.C.等, Am. Rev. Dis. 1992;Barnes P.J.等, Thorax, 1992);Fuller R.W.et al., Am. Rev. Respir. Dis., 1987)。
【0071】
更なる好適な一実施態様では、本発明のブラジキニンは本発明のブラジキニンのN末端に融合したリンカーをさらに含んでなり、好ましくは該リンカー配列はシステインである。更なる好適な一実施態様では、本発明のブラジキニンは、本発明のブラジキニンのC末端に融合したリンカーをさらに含んでなり、好ましくは該リンカー配列はシステインである。更なる好適な一実施態様では、本発明のブラジキニンは配列番号:50を含んでなるか、これからなる。
好適な実施態様では、本発明の抗原は本発明のdes-Arg-ブラジキニンである。更なる好適な一実施態様では、本発明の組成物は、本発明のdes-Arg-ブラジキニンのN末端に融合したリンカーをさらに含んでなり、好ましくはリンカー配列はシステインである。更なる好適な一実施態様では、本発明の組成物は、本発明のdes-Arg-ブラジキニンのC末端に融合したリンカーをさらに含んでなり、好ましくはリンカー配列はシステインである。更なる好適な一実施態様では、本発明のdes-Arg-ブラジキニンは配列番号:51からなるか、あるいはこれからなる。
【0072】
さらに他の好適な実施態様では、少なくとも1の抗原は本発明の抗原の少なくとも1の抗原性部位を含んでなるか、あるいはこれからなる。
免疫原性を有することは、通常タンパク質の完全長を必要とするものではなく、通常、タンパク質は複数の抗原エピトープ、すなわち抗原性部位を含有することが知られている。断片又は短いペプチドは、抗体によって、又はMHC分子との関係でT細胞レセプターによって免疫特異的に結合されうる少なくとも1の抗原性部位を含有するために十分でありうる。抗原性部位(一又は複数)は、当業者に一般に公知の多くの技術で測定することができる。タンパク質の抗原性部位(一又は複数)の決定方法は当業者に公知である。国際公開第2005/108425号は、段落[0099]から[0103]にこれらのいくつかの方法を詳述しており、これらの開示内容は出典明記によって本明細書中に援用される。これらの方法が通常、他のポリペプチド抗原に適用でき、したがって、国際公開第2005/108425号にて開示したようにIL-23 p19に限定するものでないことを注記する。
【0073】
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも1の第一付着部位を有するVLPは、少なくとも1のペプチド結合により少なくとも1の第二付着部位を有する本発明の抗原に連結される。本発明の抗原、好ましくは75アミノ酸以下、好ましくは50アミノ酸以下、更により好ましくは30アミノ酸以下の本発明の抗原をコードする遺伝子は、VLPのコートタンパク質をコードする遺伝子の内部又は好ましくはN末端ないしはC末端のいずれかにインフレームに連結される。また、融合は、本発明の抗原の配列を、コートタンパク質配列の一部が欠失しているコートタンパク質の変異体に挿入することによって生じてもよく、これをトランケーション変異体とさらに称する。トランケーション変異体は、コートタンパク質の配列の一部のN末端ないしはC末端又は内部に欠失を有してもよい。例えば特定のVLP HBcAgのために、アミノ酸79-80を外来性エピトープと置換する。好ましくは、融合タンパク質は発現の際のVLPへの集合体化能を保持するであろう。これは電子顕微鏡法によって調べることができる。
側方アミノ酸残基は、コートタンパク質と外来性エピトープの間の距離を増やすために加えられてもよい。グリシン及びセリン残基は、隣接配列に使用するために特に好ましいアミノ酸である。このような隣接配列は更なるフレキシビリティを与え、これによって、VLPサブユニットの配列への外来性配列の融合の潜在的な不安定作用を低減し、外来性エピトープの存在による集合体化の干渉を低減しうる。
【0074】
好適な一実施態様では、修飾VLPはモザイクVLPであり、好ましくは該モザイクVLPは少なくとも1の融合タンパク質と少なくとも1のウイルスコートタンパク質を含んでなるか、あるいはこれらからなる。
他の実施態様では、本発明の少なくとも1の抗原、好ましくは50未満のアミノ酸からなる本発明の抗原は、多くの他のウイルスコートタンパク質、例えばQβのA1タンパク質のトランケート型のC末端(Kozlovska, T. M.,等, Intervirology 39:9-15 (1996))に融合されうるか、又は、CP伸展の位置72と73の間で挿入される。例えば、Kozlovska等, (Intervirology, 39: 9-15 (1996))は、エピトープが位置19でトランケートされているQβ CP伸展のC末端に融合しているQβ A1タンパク質融合を記載する。
別の例では、本発明の抗原は、fr CPのアミノ酸2と3の間で挿入されうる(Pushko P.等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993))。さらに、本発明の抗原は、RNAファージMS-2のコートタンパク質のN末端の突出したβ-ヘアピンに融合されうる(国際公開第92/13081号)。これに対して、本発明の抗原はパピローマウイルスのキャプシドタンパク質、好ましくはウシパピローマウイルス1型(BPV-1)の主要なキャプシドタンパク質L1に融合されうる(Chackerian, B.等, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 96:2373-2378 (1999)、国際公開第00/23955号)。また、本発明の抗原とBPV-1 L1のアミノ酸130−136の置換も本発明の実施態様である。さらに、ウイルスのコートタンパク質、その変異体ないしその断片に本発明の抗原を融合させる実施態様は、国際公開第2004/009124号の62頁の20行目から68頁の17行目に開示されており、出典明記によって本明細書中に援用される。
【0075】
好適な他の実施態様では、本発明の少なくとも1の抗原、好ましくは70未満のアミノ酸、好ましくは50未満のアミノ酸からなる本発明の抗原を、RNAファージAP205のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片のN末端又はC末端に融合する。更なる好適な一実施態様では、融合タンパク質はスペーサーをさらに含有するものであり、該スペーサーはAP205及び本発明の抗原のコートタンパク質、その断片ないしはその変異体に融合されるものである。好ましくは前記スペーサーは、30未満、好ましくは20未満、さらにより好ましくは10未満、更により好ましくは5未満のアミノ酸からなる。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、少なくとも1の共有結合を介して少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の本発明の抗原に結合した少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子を含有するか、あるいは本質的にこれらからなるものであり、好ましくは該共有結合は非ペプチド結合である。好ましくは、第一付着部位はシステインのスルフヒドリル基を含まないか、あるいはそのものでない。さらに好ましくは、第一付着部位はスルフヒドリル基を含まないか、あるいはそのものでない。本発明の好適な実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
【0076】
本発明の非常に好適な実施態様では、少なくとも1の第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含んでなるか、好ましくはそのものであり、少なくとも1の第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含んでなるか、好ましくはそのものである。
本発明の好適な一実施態様では、本発明の抗原は、典型的にかつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を使用して、化学的架橋によりVLPに結合している。好適な実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基(一又は複数)のアミノ基を有する好適な第一付着部位と反応可能な官能基と、好適な第二付着部位、すなわち本発明の抗原に元もとあるかないしは人工的に付加され、場合によっては還元による反応に利用される、好ましくはシステイン(一又は複数)残基のスルフヒドリル基と反応可能なさらなる官能基を含む。いくつかのヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で知られている。これらには、好ましい架橋剤であるSMPH(Pierce)、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤が含まれ、アミノ基に対して反応可能な一官能基とスルフヒドリル基に対して反応可能な一官能基を有する。上述した全ての架橋剤により、アミノ基との反応後にアミド結合が、またスルフヒドリル基とチオエーテル結合が形成される。本発明の実施に適した他のクラスの架橋剤は、カップリング時に本発明の抗原とVLPとの間にジスルフィド結合を導入することにより特徴付けられる。このクラスに属する好ましい架橋剤には、例えばSPDP及びスルホ-LC-SPDP(Pierce)が含まれる。
【0077】
好適な実施態様では、本発明の組成物はリンカーをさらに含有している。本発明の抗原における第二の付着部位の操作は、この発明の開示に従い、好ましくは第二の付着部位として適切な少なくとも1のアミノ酸を含むリンカーとの結合により達成される。よって、本発明の好適な実施態様では、リンカーは少なくとも1の共有結合、好ましくは典型的には少なくとも1のペプチド結合により、本発明の抗原に結合している。好ましくは、リンカーは、第二の付着部位を含むかあるいはそれからなる。さらに好適な実施態様では、リンカーは好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好適な実施態様では、リンカーはシステイン残基である。
リンカーの選別は、国際公開第2005/108425号A1の32〜33に開示されており、これは出典明記によって本明細書中に援用される。
【0078】
上記の好適な方法によるヘテロ二官能性架橋剤を用いることによるVLPへの本発明の抗原の結合により、正方向の様式でVLPに本発明の抗原をカップリングさせることができる。VLPに本発明の抗原を連結させるための他の方法には、カルボジイミドEDC、及びNHSを使用し、本発明の抗原をVLPに架橋させる方法が含まれる。本発明の抗原は、例えばSATA、SATP又はイミノチオランを用いた反応を介して、まずチオラート化されてもよい。次いで、必要であれば脱保護化した後に本発明の抗原を以下のようにVLPにカップリングしてもよい。過剰なチオラート化剤を分離した後、本発明の抗原を、システイン反応基を含有し、システイン残基に対して反応可能な少なくとも1又はいくつかの官能基を表出するヘテロ二官能性架橋剤にて予め活性化させた、VLPと反応させる。このとき本発明のチオラート化抗原は上記に記載のようにそのシステイン残基と反応させることができる。場合によっては、少量の還元剤が反応混合物中に含まれる。さらなる方法では、ホモ二官能性架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、DSG、BM[PEO]4、BS3、(Pierce)、又はVLPのアミノ基又はカルボキシル基に対して反応する官能基を有する他の既知のホモ二官能性架橋剤を使用して、本発明の抗原をVLPに付着させる。
本発明の他の実施態様では、組成物は、化学的な相互作用を介して本発明の抗原に結合したウイルス様粒子を含むか、ないしは本質的にそれからなるものであり、このときこの相互作用の少なくとも1は共有結合ではないものである。このような相互作用には、抗原-抗体相互作用、レセプター-リガンド相互作用が含まれるが、これらに限定するものではない。 VLPをビオチン化してストレプトアビジン-融合タンパク質として本発明の抗原を発現することによって本発明の抗原へのVLPの結合が起こる。
【0079】
本発明の好適な一実施態様では、本発明のVLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。更なる好適な一実施態様では、組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも1のポリ陰イオン性高分子を更に含有する。より更なる好適な実施態様では、ポリ陰イオン性高分子はポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸である。
本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く:本明細書中で用いられる「本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く」なる用語は、VLPに含有される宿主RNA、好ましくは宿主の核酸の量を意味し、その量は典型的かつ好ましくは、VLPmg当たり30μgより少ない、好ましくは20μgより少ない、より好ましくは10μgより少ない、さらにより好ましくは8μgより少ない、さらにより好ましくは6μgより少ない、さらにより好ましくは4μgより少ない、最も好ましくは2μgより少ない。上記の範囲内で用いられる宿主は、VLPが組み換えて産生される宿主を意味する。RNA、好ましくは核酸の量を測定する従来の方法は当業者に周知である。本発明によって、RNA、好ましくは核酸の量を測定する典型的かつ好適な方法は、同出願人により2005年10月5日に出願した国際公開第2006/037787号A2の実施例17に記載される。典型的かつ好ましくは、Qβ以外のVLPを含んでなる本発明の組成物についてRNA、好ましくは核酸の量を測定するためには、同一、同種又は類似の条件を用いる。最終的に必要とされる条件の変更は当業者の知識の範囲内である。典型的かつ好ましくは、決定した量の数値は、示した数値の±10%の偏差、好ましくは±5%の偏差を有する値と比較して理解されるであろう。
【0080】
ポリ陰イオン性高分子:本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、陰性電荷の反復性基を含んでなる相対的に高い質量の分子を指すものであり、その構造は、実際のところ又は概念的には、相対的に低い質量の分子から得られるユニットの複数の繰り返しを基本的に含んでなる。ポリ陰イオン性高分子は、少なくとも2000のダルトン、好ましくは少なくとも3000のダルトン、そしてさらにより好ましくは少なくとも5000のダルトンの分子量を有するものである。本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくは、toll様レセプターを活性化することができない分子を指す。ゆえに、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくはToll様レセプターリガンドを除く、さらにより好ましくはさらに、免疫賦活性物質、例えばToll様レセプターリガンド、免疫賦活性核酸およびリポポリサッカリド(LPS)を除くものである。より好ましくは、本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、サイトカイン産生を誘導することができない分子を指す。さらにより好ましくは、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は免疫賦活性物質を除くものである。本明細書中で用いる「免疫賦活性物質」なる用語は、本発明中に含有される抗原に対して特異的な免疫応答を誘導及び/又は亢進することができる分子を指す。
【0081】
宿主RNA、好ましくは宿主の核酸:本明細書中で用いる「宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語、又は「二次構造を有する宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語は、宿主が本来合成するRNA又は好ましくは核酸を指す。しかしながら、RNA、好ましくは核酸は、典型的かつ好ましくは、本発明の方法による、RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去する工程の間に、化学的及び/又は物理的な変化が起こりうる。例えばRNA、好ましくは核酸の大きさが短くなったり、その二次構造が変化しうる。しかしながら、この結果として生じるRNA又は核酸でも、宿主RNA又は宿主核酸とみなす。
RNAの量を決定するための方法及びVLPによって包含されるRNAの量を減少する方法は、同出願人により2005年10月5日に出願した国際公開第2006/037787号A2に開示されており、その出願全体、特に実施例4、5及び17は出典明記によって本明細書中に援用される。RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去することにより、抗原に特異的な抗体応答が強いままで、炎症性T細胞応答及び障害性T細胞応答などの望ましくないT細胞応答や、発熱などの他の望ましくない副作用を最小限にするか、又は低減する。
【0082】
一態様では、本発明は、本発明の組成物を含んでなるか、基本的にこれからなるか、これからなるワクチン組成物を提供する。好適な一実施態様では、ワクチン組成物中のVLPに連結される本発明の抗原は、動物、好ましくは哺乳動物又はヒトのものでありうる。好適な実施態様では、本発明の抗原は、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ又はウマ起源のものである。
好適な一実施態様では、ワクチン組成物はさらに少なくとも1のアジュバントを含有する。少なくとも1のアジュバントの投与は、本発明の組成物の投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後であってもよい。本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、免疫応答の非特異的刺激因子、もしくは、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせるとより亢進した免疫応答を供給しうる、貯蔵物の宿主内での生成を可能にする物質を意味する。
【0083】
他の好適な実施態様では、ワクチン組成物はアジュバントを欠く。本発明の有利な特性は、アジュバントを含まない場合でさえ、組成物の免疫原性が高いことである。アジュバントを使用しないので、アジュバントの使用に関連する副作用の発生の頻度を減少しうる。よって、本発明のワクチンの患者への投与は、好ましくはワクチンの投与前、投与と同時、又は投与後に同じ患者に少なくとも1のアジュバントを投与することなく、なされるであろう。VLPは通常アジュバントとして記載されている。しかしながら、本出願の関係で用いられるように、「アジュバント」なる用語は本発明の組成物に用いられるVLPではなく、該VLP以外のアジュバントを指す。
さらに、本発明は、本発明のワクチンが動物又はヒトに投与されることを含む免疫化方法を開示する。動物は、好ましくは哺乳動物、例えばネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ラット、マウス及び特にヒトである。ワクチンは、当分野で公知の様々な方法によって投与されてもよいが、通常、注射、注入、吸入、経口投与又は他の適切な理学的方法によって投与されうる。コンジュゲートは、選択的に、筋肉内、静脈内、粘膜経由、経皮、鼻腔内、腹膜内又は皮下投与されてもよい。投与のためのコンジュゲート成分は、滅菌水(例えば、生理食塩液)又は非水溶液及び懸濁液などである。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。担体又は密封包帯を、皮膚透過性を増やして、抗原吸収を上げるために用いてもよい。
【0084】
レシピエントの個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「薬剤的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。以下のメカニズムの説明によって本発明が限定されるものではなく、発明のワクチンは、CCR5、CXCR4、ガストリン、プロガストリン、CETP、C5a、ブラジキニン又はdes-Arg-ブラジキニンに結合し、それによってその濃度を低減する及び/又はその生理学的機能ないしは病理学的機能を干渉する抗体を誘導しうる。
一態様では、本発明は、本発明で述べられる組成物と受容可能な製薬的担体を含有する薬剤組成物を提供する。本発明のワクチンが個体に投与される場合、コンジュゲートの有効性を改善するために望ましい他の物質、アジュバント、バッファ又は塩類を含有する形態でありうる。薬剤組成物の調整における使用に好適な材料の例は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Osol, A, 編集, Mack Publishing Co., (1990))を含む多くの情報源に示される。
【0085】
本発明は、本発明の組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを供給する;(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する本発明の抗原を供給する;そして(c) 該VLPと該本発明の抗原を結合させて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して該本発明の抗原と該VLPが結合している組成物を産生する、工程を含む産生方法を教示する。好適な実施態様では、少なくとも1の第二付着部位を有する本発明の少なくとも1の抗原は、発現による、好ましくは細菌系、好ましくは大腸菌内での発現によるものである。通常、Hisタグ、Mycタグなどのタグを付加して、精製工程を促す。他の方法では、特に、50未満のアミノ酸を有する本発明の少なくとも1の抗原は化学的に合成することができる。
更なる好適な実施態様では、少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを提供する工程は、(a) 該ウイルス様粒子を該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に分解して;(b) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製して;(c) 該精製された該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片をウイルス様粒子に再集合体化させる工程をさらに含むものであり、このときの該ウイルス様粒子は宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである。より更なる好適な実施態様では、前記の精製したコートタンパク質の再集合体化は、少なくとも1のポリ陰イオン性高分子の存在下にて影響を受ける。
【0086】
好適な一実施態様では、本発明はHIV感染を予防及び/又は治療する方法であって、該方法が、発明の組成物又は発明のワクチン組成物のそれぞれがヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のCCR5である方法を提供する。
好適な一実施態様では、本発明はHIV感染を予防及び/又は治療する方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれがヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のCXCR4である方法を提供する。
好適な一実施態様では、本発明はアテローム性動脈硬化症を予防及び/又は治療する方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のCETPである方法を提供する。アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈性心臓病、冠状動脈疾患、頸動脈疾患及び脳血管疾患を含むが、これに限定されるものではない動脈の疾患である。
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防方法及び/又は治療方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のC5aである方法を提供する。C5aが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息及び類天疱瘡が含まれるがこれらに限定するものではない。
【0087】
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防方法及び/又は治療方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のブラジキニンである方法を提供する。ブラジキニンが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節炎及び喘息が含まれるがこれらに限定するものではない。
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防方法及び/又は治療方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のdes-Arg-ブラジキニンである方法を提供する。des-Arg-ブラジキニンが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節炎及び喘息が含まれるがこれらに限定するものではない。
好適な一実施態様では、本発明は、癌、特に消化管癌の予防方法及び/又は治療方法であって、該方法が、本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含んでなり、本発明の抗原が本発明のガストリンである方法を提供する。消化管の癌には、胃上皮癌、大腸癌、直腸癌及び膵癌が含まれるがこれらに限定するものではない。
【0088】
他の態様では、本発明は、医薬として使用するための本発明の組成物であって、本発明の抗原がそれぞれ本発明のCCR5、本発明のCXCR4、本発明のガストリン、本発明のCETP、本発明のC5a、本発明のブラジキニン又は本発明のdes-Arg-ブラジキニンである組成物を提供する。
好適な一実施態様では、本発明は、ヒトのHIV感染の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のCCR5を含んでなる使用を提供する。
好適な一実施態様では、本発明は、ヒトのHIV感染の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のCXCR4を含んでなる使用を提供する。
好適な一実施態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のCETPを含んでなる使用を提供する。アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈性心臓病、冠状動脈疾患、頸動脈疾患及び脳血管疾患を含むが、これに限定されるものではない動脈の疾患である。
【0089】
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のC5aを含んでなる使用を提供する。C5aが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息及び類天疱瘡が含まれるがこれらに限定するものではない。
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のブラジキニンを含んでなる使用を提供する。ブラジキニンが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節炎及び喘息が含まれるがこれらに限定するものではない。
好適な一実施態様では、本発明は、原発性及び/又は慢性の炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のdes-Arg-ブラジキニンを含んでなる使用を提供する。des-Arg-ブラジキニンが症状を媒介する又は症状に関与する原発性及び/又は慢性の炎症性疾患には、関節炎及び喘息が含まれるがこれらに限定するものではない。
好適な一実施態様では、本発明は、癌、特に消化管癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用であって、該組成物が本発明の少なくとも1のガストリンを含んでなる使用を提供する。消化管の癌には、胃上皮癌、大腸癌、直腸癌及び膵癌が含まれるがこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0090】
実施例1
Qβ VLPへのCCR5 PNtペプチド又はECL2Aのカップリング
2g/lのQβ VLP(143μM Qβコートタンパク質)を、1.43mMのSMPH(Pierce)にて25℃で30分間かけて誘導体化し、次いで20mM Hepes pH8、150mM NaClに対して透析した。0.286mMのアミド化したC末端システインを有するペプチドPNt-CC(配列番号:44、DMSO中3mMの貯蔵液)と1g/lの誘導体化したQβ粒子を25℃で2時間インキュベートした。
第二の方法として、2g/lのQβ VLPを、1.43mMのSMPHにて25℃で30分間かけて誘導体化し、次いで20mM リン酸塩 pH7.4に対して透析した。0.143mMのアミド化したC末端システインを有するペプチドPNt-CC(配列番号:44、DMSO中50mMの貯蔵液)と1g/lの誘導体化したQβ粒子を25℃で2時間インキュベートした。カップリング産物は20mM リン酸塩 pH7.4に対して透析した。
【0091】
2g/lのQβを、1.43mMのSMPHにて25℃で30分間かけて誘導体化し、次いで20mM Hepes pH7.4、150mM NaClに対して透析した。0.286mMのアミド化したC末端システインを有するペプチドPNt-CC(配列番号:54、DMSO中5mMの貯蔵液)と1g/lの誘導体化したQβ粒子を25℃で2時間インキュベートした。カップリング産物は20mM Hepes pH7.4、150mM NaClに対して透析した。
2g/lのQβを、1.43mMのSMPHにて25℃で30分間かけて誘導体化し、次いで20mM Hepes pH7.4、150mM NaClに対して透析した。0.143mMのアミド化したC末端システインを有するペプチドPNt-CC(配列番号:55、DMSO中5mMの貯蔵液)と1g/lの誘導体化したQβ粒子を25℃で2時間インキュベートした。カップリング産物は20mM Hepes pH7.4、150mM NaClに対して透析した。
2g/lのQβを、1.43mMのSMPHにて25℃で30分間かけて誘導体化し、次いで20mM リン酸塩 pH7.5に対して透析した。1g/lの誘導体化したQβ粒子を20%アセトニトリルに溶解し、0.286mMの環状ECL2A(配列番号:26、DMSO中5mMの貯蔵液)を加えて、20mM リン酸塩 pH7.5、150mM NaCl中、25℃で2時間インキュベートした。カップリング産物は20mM リン酸塩 pH7.5に対して透析した。
【0092】
実施例2
免疫化
C57BL/6マウスを、0日目に50μgのQβ-PNtCC、Qβ-PNtCN、Qβ-PNtSC又はQβ-ECL2A(実施例1から入手)にて抗原刺激し(皮下、0.2mlの20mM リン酸塩 pH7.5中)、50μgのQβのみにて抗原刺激したBalb/Cマウスと比較した。14日目に同じワクチンにて追加刺激し、14日目及び21日目にELISAによってα-Qβ及びα-CCR5ペプチド抗体価を調べた(表1)。
表1

これに対して、ニュージランドホワイト種ウサギを、0日目に、完全フロインドアジュバントにて等量(v/v)にした100μgのQβ-PNtCC(実施例1の第二の方法から入手)にて抗原刺激した(ウサギの背部の皮下、10箇所)。以下の3回の追加刺激(14、28、56日目に100μg Qβ-PNtCC)を等量(v/v)の不完全フロイントアジュバントにて行った。37日目及び56日目にELISAによってα-Qβ及びα-CCR5ペプチド抗体価を調べ、常に12000であることを確認した。
【0093】
実施例3
ポリクローナルマウス又はウサギIgGの精製
5つのQβ-PNtCC、Qβ-PNtCN、Qβ-PNtSC又はQβ-ECL2Aにて免疫化したマウス(又は2匹のウサギ)(実施例4から入手)のそれぞれからプールした血清を、14000回転数/分で5分間遠心分離した。上清を3.3mlの予洗したプロテインGセファロース(Amersham)のカラムに流した。次いでカラムをPBSにて洗浄し、100mM グリシン pH2.8にて溶出した。1mlの分画を、112μlの1M トリスpH8を予め入れたチューブに集めた。280nmで吸光度がピークになる分画をプールした。
【0094】
実施例4
ポリクローナルウサギIgGの親和性精製
製造業者(GE Healthcare Europe)の指示に従って、1mgのQβ又はQβ-PNtCCを、N-ヒドロキシサクシンイミド活性化セファロースカラムに固定した。5mgのウサギIgG(実施例3から)を含むPBSを、0.5ml/分の流速にてQβ親和性カラムに流した。流出分画を、更なるPNtCC特異的な精製のために集めた。Qβ特異的IgGを、100mM グリシン pH2.6にてQβカラムから溶出させ、120mM トリス pH8にて中和した。流出分画中のPNtCC特異的IgGをQβ-PNtCCカラムにてさらに精製した。溶出して中和したIgGを、遠心フィルタ装置(Amicon Ultra-4, 10'000 MWCO)を用いてPBSにて4回洗浄した。
【0095】
実施例5
マウスポリクローナルIgGによる細胞性CCR5のFACS染色
CEM.NKR-CCR5は、CD4を自然に発現するヒトの系統であるCEM.NKR細胞株(Trkola等, J. Virol., 1999, page 8966)のCCR5発現変異体である。CEM.NKR-CCR5細胞を、RPMI1640培養液(10%FCS、グルタミン及び抗生物質を含む)中で生育させた。細胞をペレット化し、1%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するリン酸塩緩衝食塩水(PBS)中に再懸濁して、2.3×10/mlを得た。ヒトIgG (Miltenyi Biotec)の[1:250]希釈物をブロック剤として加えて、20分間インキュベートした。細胞を1%のFCS/PBSで1回洗浄し、0.1ml(2.3×10細胞/ウェル)をプレートに播き、実施例3(60mg/l;プロテインGカラムから溶出;1%のFCS/PBSにて希釈)から精製したCCR5ポリクローナル抗体とともにインキュベートした。4℃で30分間後に、細胞を1%FCS/PBSで1回洗浄して、15mg/lのFITC-ヤギ-α-マウス-IgG(Jackson)を有する1%FCS/PBSにて4℃で20分間染色した。1%FCS/PBSにて2回洗浄した後、5000〜10000の染色した細胞をフローサイトメトリーによって分析した。各々の染色の相乗平均は、「細胞クエスト」フローサイトメトリーソフトウェアを用いて決定した。
【0096】
表2は、PNtCC又はECL2A特異的抗体がCEM.NKRの細胞表面上に発現したCCR5分子に特異的に結合するのに対して、PNtSC及びPNtCN特異的抗体並びにQβ特異的抗体が細胞表面上に発現されたCCR5分子に結合しないことを示す。
表2

【0097】
実施例6
HIV中和アッセイ
簡単に言えば、3体の健康な血液ドナーから入手したバフィーコート中のCD8+T細胞をRosette Sep反応混液(StemCell Technologies Inc)を用いて枯渇させ、PBMCをFicoll-Hypaque遠心(Amersham-Pharmacia Biotech)によって単離した。細胞を、培養液(RPMI1640、10%FCS、100U/ml IL-2、グルタミン及び抗生物質)中に4×10/mlに調整し、3つに分け、5μg/ml フィトヘマグルチニン(PHA)、0.5μg/ml PHA又は1mg/l 抗CD3 MAb OKT3にて刺激した。72時間後、3つすべての刺激細胞を組み合わせて、感染及びウイルス中和実験のために刺激したCD4+T細胞の供与源として用いた。
基本的に既に記載のあるように(Trkola等, J. Virol., 1999, page 8966)、HIV中和アッセイを行った。R5ウイルス(CCR5コレセプター特異的細胞株)、JR-FL及びSF162は既に記載されている(O'Brien等, Nature 1990, 348, page 69;及びShioda等, Nature 1991, 349, page 167)。簡単に言えば、細胞を、精製したポリクローナルウサギIgG(25μg/ml−25ng/ml、実施例5又は実施例6から入手)の階段希釈液又はポジティブコントロールHIVインヒビターRantesとともに、96ウェル培養プレート中で37℃で1時間インキュベートした。
【0098】
HIV-1種菌を、アッセイ培地(TCID50:50%組織培養感染用量、Trkola等, J. Virol., 1999, page 8966)中におよそ1000〜4000のTCID50/mlを含むように調整した。ウイルス種菌(100TCID50;50%組織培養感染用量)を添加し、7日間プレートを培養した。総感染容量は200mlであった。次いで、既に記載のあるように(Moore等, 1990. Science 250, page 1139)、上清培養物をイムノアッセイを用いてHIV−1 p24抗原産生についてアッセイした。
表3は、精製された抗体が低抗体濃度(例えば0.56μg/ml)で70%まで効率的にHIVを中和することを示す。
表3
HIVを阻害する抗体濃度

【0099】
CEM5.25細胞によるHIV中和アッセイ
ウイルス単離JR-FLに対する精製したマウス血清免疫グロブリン試料の中和活性を、記載のように(Montefiori, D.C. (2004)、JR-FLエンベロープ偽型ルシフェラーゼリポーターウイルスを用いてCEM 5.25.EGFP.luc.M7細胞(Nathaniel Landau)にて評価した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイのHIV、SIV及びSHIVに対する中和抗体の評価。Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, 12.11.1-12.11.15.、及びWei, X.,等, Nature 422:307-12)。CEM 5.25.EGFP.luc.M7細胞を段階希釈したマウス抗体(実施例3から入手)とともに37℃で1時間インキュベートした。次いで、ウイルス種菌(150TCID50)及びポリブレン(終濃度10μg/ml)を加えた。総感染容量は200mlであった。72時間後のルシフェラーゼレポーター遺伝子産生において50%減少(NT50)を引き起すIg濃度を回帰分析によって測定した。
表4は、PNtCC特異的総IgGが低濃度でHIV感染を阻害したのに対して、PNtCN特異的IgGが測定したいずれの濃度でもHIV感染を阻害しなかったことを示す。
表4
HIVを阻害する抗体濃度

【0100】
実施例7
Qβ-PNtCCのゲル中消化及びLC/MS分析
Qβ-PNtCC、Qβ-PNtSC及び誘導体化したQβ( 実施例1から入手)の試料を、還元SDS-PAGEゲルに流した。1ペプチド当たりQβ単量体及び1ペプチド当たりQβ二量体(又は、誘導体化したQβの場合Qβ単量体及びQβ二量体)に対応するゲルバンドは小さく分かれており、100μlの100mM NHHCO、50%アセトニトリルにて2回洗浄し、50μlのアセトニトリルにて1回洗浄した。3つすべての上清は廃棄した。次いで、10μl プロテアーゼGlu-C(10mM トリス pH8.2中に0.01ng/μl)及び10μlのバッファ(10mM トリス、pH8.2)を加えて、37℃で終夜インキュベートした。上清を貯蔵し、ゲル部分を100μlの0.1%トリフルオロ酢酸、50%アセトニトリルにて2回抽出した。3つすべての上清を組み合わせて乾燥させた。試料は、15μlの0.1%ギ酸に溶解した。6μlをHPLCカラムに注入して、ペプチドの質量をLC/MSによって測定した。
【0101】
実施例8
CXCR4断片(aa1-39)及び(aa176-185)の化学合と、Qβ VLPへのカップリング
CXCR4断片1-39のN末端ないしC末端のいずれかにCGGリンカー配列ないしGGCリンカー配列が融合しているCXCR4断片1-39(配列番号:30)、N末端ないしC末端のいずれかにCGGリンカー配列ないしGGCリンカー配列が融合しているCXCR4断片176-185(配列番号:29)、又はC末端に付加したGとN末端に付加したCが結合することによって環状になったCXCR4断片176-185(配列番号:29)を、標準的な方法(Peter Henklein, Charite)に従って化学的に合成した。
20mM Hepes、pH7.2による3ml(1.0mg/ml)のQβ VLPの溶液を、85μlのSMPH(DMSO中に50mM、Pierce)にて25℃で30分間反応させた。透析して、誘導体化したQβ VLPを順に用いて、ペプチド類CXCR4-CGG-1-39、CXCR4-1-39-GGC、CXCR4-CGG-176-185、CXCR4-176-185-GGC又はCXCR4-C-176-185-Gをカップリングした。簡単に言うと、1mg/mlの濃度の1mlの誘導体化したQβ VLPを、20mM Hepes、pH7.2中で、70μlの5mM ペプチド溶液と反応させた。
カップリング効率は、1Qβ単量体当たり0.24〜0.5のCXCR4断片であることが推測された。
【0102】
実施例9
CXCR4断片によるマウスの免疫化
成体雌C57BL/6マウス(1グループ当たり3匹)にQβ-CXCR4-断片(実施例8にて入手)をワクチン接種し、Qβ VLPをコントロールとして用いた。各試料から透析したワクチン 100μgをPBSにて200μlの容量に希釈し、0日目及び14日目に皮下注射した(腹部側の2箇所に100μl)。アジュバントのある場合又はない場合のワクチンを投与した(アルハイドロゲル、1mg/注射)。14、21、28日目にマウスの後眼窩から採血し、ペプチド-特異的抗体応答を、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中10μg/mlの濃度のRNアーゼにカップリングさせたCXCR4-ペプチドをコートすることによってELISAにて測定した。CXCR4はRNアーゼにカップリングした。簡単に言えば、以下の通りである:5mg/ml RNアーゼを、0.2mM SPDP(SIGMA)中で室温で1時間かけて誘導体化した。次いで、誘導体化したRNアーゼ溶液をPD10カラム(Amersham)にて精製した。10mM EDTA及び1mM ペプチドを誘導体化したRNアーゼ溶液に加えて、1時間インキュベートして反応させた。
表5

1グループ当たり3匹のマウスの血清の平均ペプチド特異的ELISA力価を示す。
【0103】
実施例10
ヒトT細胞株ジャーカット及びCEM.NKR-CCR5の表面染色によるCXCR4-特異的抗体の検出
ジャーカット細胞又はCEM.NKR-CCR5細胞は、10%FCS、グルタミン及び抗生物質を添加したRPMI1640培養液中で生育させた。細胞を回収して、洗浄し、1%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するリン酸塩緩衝食塩水(PBS)に再懸濁した。Fc-レセプター媒介結合を予防するために、初めに細胞を、PBS/1%FCS中でラット-α-マウス-CD16/CD32(BD Pharmingen)にて4℃で30分間インキュベートした。洗浄の後、細胞(1×10)を、段階希釈したマウス血清(実施例10から入手)とともに4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBS/1%FCSにて洗浄し、FITC-α-マウス-IgG(BD Pharmingen)とともに4℃で30分間インキュベートし、次いで細胞をFACS Caliburにて分析し、抗体の特異的結合をCellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いて定量化した。結果を以下の表にまとめる。
表6

* 1:200の希釈の第一免疫化の21日後の血清を細胞の染色に用いた。
【0104】
実施例11
R4 HIV−1株中和アッセイ
簡単に言えば、3体の健康な血液ドナーから入手したバフィーコート中のCD8+T細胞をRosette Sep反応混液(StemCell Technologies Inc)を用いて枯渇させ、末梢血単核細胞をFicoll-Hypaque遠心(Amersham-Pharmacia Biotech)によって回収した。精製した細胞を、培養液(RPMI1640、10%FCS、100U/ml IL-2、グルタミン及び抗生物質)中に4×10/mlに調整し、3つの試料に分け、5μg/ml フィトヘマグルチニン(PHA)、0.5μg/ml PHA又は1mg/l 抗CD3 MAb OKT3にて刺激した。72時間後、細胞を組み合わせて、感染及びウイルス中和実験のために刺激したCD4+T細胞として用いた。
中和の可能性を試験するために、細胞を、精製したポリクローナルマウスIgG(上記のもの)の階段希釈液又はコントロール抗体12G5(25μg/ml−25ng/ml:Pharmingen)とともに、96ウェル培養プレート中で37℃で1時間インキュベートした。
X4株NL4-3及び2044は既に記載されている(Trkola等 (1998), J. Virol. 72:396;Trkoly等 (1998), J. Virol 72-1876)。そして、ウイルス種菌(100TCID50;50%組織培養感染用量;Trkola等, J. Virol., 1999, page 8966)を加えて、細胞を更に4〜14日間培養した。総感染容量は200μlである。感染の6日後、既に記載のあるように(Moore等, 1990. Science 250, page 1139)、イムノアッセイを用いて上清をHIV−1 p24抗原産生の量についてアッセイした。
【0105】
実施例12
Qβ VLPへのCETP断片のカップリング
ヒトCETPのアミノ酸461-476(配列番号:32)の範囲の、VLPにカップリングするためのトリペプチドCGGによってそのN末端で融合したカルボキシ末端配列を有するCETPペプチドCETP1を、EMC microcollections GmbHの固相化学によって合成した。ペプチドはそのC末端でアミド化されていた。
Qβ VLPを含む20mM Hepes、150mM NaCl pH7.4 750μl(4.0mg/ml)の溶液を、10倍量のSMPH(DMSO中に100mM貯蔵液 21.4μl、Pierce)と25℃で30分間反応させた。2mg/mlの濃度の誘導体化したQβ VLP 1.5mlを、20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4中で、21μlの50mM CETPペプチド溶液と反応させた。
【0106】
実施例13
Qβ-CETP1及びELISAによるマウスの免疫化
雌Balb/cマウス(n=3)に、Qβ VLPにカップリングさせたCETP1をワクチン接種した。50μgの透析したワクチンをPBSにて200μlの容量にまで希釈し、0、14、50及び73日目に皮下に注射した(腹部側の2箇所に100μl)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。抗体価は、0、70及び80日目にマウスの後眼窩血液の血清にて決定した。
CETP1は、ELISAプレートにコートするためにAP205 VLP(20mM Hepes、150mM NaCl pH7.4)にカップリングさせた。簡単に言うと、1mlの1mg/ml AP205 VLPを、7.1μlの50mM SMPH(Pierce)貯蔵液(DMSO中)にて室温で30分かけて誘導体化した。誘導体化したAP205溶液(1ml)を、7.1μlの50mM貯蔵液のCETP1(DMSO中)と反応させて、15℃で2時間インキュベートした。また、CETP1を、ELISAプレートにコートするためにBSAにカップリングした。
ELISAプレートは、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中5μg/mlの濃度の、AP205 VLP又はBSAにカップリングさせたCETPペプチドにて、4℃で終夜をかけてコートした。
【0107】
表7 Qβ-CETP1にて0、14、50及び73日目に免疫化したマウスにおける、平均抗CETP1特異的IgG抗体力価(ELISAアッセイ中で最大半量の結合を示す血清希釈物の逆数として表す)。

【0108】
実施例14
AP205 VLPのC末端に融合するCETP1のクローニング、発現及び精製
クローニング
CETP1ペプチド(配列番号:32)をコードするDNA断片を、CETP1のペプチド配列をコードし、Kpn2I及びMph1103I制限部位をそれぞれ含有している2つの相補的オリゴヌクレオチドをアニールすることによって作製した。得られた断片を、Kpn2I及びMph1103Iにて消化し、大腸菌トリプトファンオペロンプロモーターの制御下にあるベクターpAP405-61(国際公開第2006/032674号の実施例1に記載)の同じ制限部位にクローニングした。
結果として生じるプラスミドによってコードされるタンパク質AP205-ll-CETP1は以下の通りである。AP205コートタンパク質−GTAGGGSG - FGFPEHLLVDFLQSLS。
基本的に国際公開第04/007538号に記載のようにAP205-ll-CETP1は発現され、精製される。
【0109】
実施例15
コレステロール肥育のアテローム性動脈硬化のウサギモデルにおけるCETPワクチンの試験
ニュージランドホワイト種ウサギ(1グループ当たりn=12)に、0日目に200μgのVLP-CETPワクチン又はVLPを皮下注射してワクチン接種し、3、6、9、12、15、19、23及び27週目に追加免役した。ウサギは、19週目に高コレステロール食餌(0.25%)下におき、さらに16週間この食餌を与えた。断食させたウサギの血漿試料を、抗体価、リポタンパク質、コレステロール及びCETP活性測定のために一定間隔で採取した。動物は32週目に屠殺して、アテローム性動脈硬化病変分析のために大動脈を取り出した。大動脈の「en face」調整の後、大動脈をオイルレッドOにて染色し、各動物について病変に覆われる大動脈の割合を算出した。
【0110】
実施例16
Qβ VLPへのブラジキニン及びdes-Arg9-ブラジキニンのカップリングとマウスの免疫化
C末端に融合したCysにて両配列又はブラジキニン(BK)のN末端に融合したCysを有するブラジキニン(BK)(配列番号:22)及びdes-Arg9-ブラジキニン(配列番号:23)を、標準的方法に従って化学的に合成した。ペプチドはQβ VLPにカップリングした。
成体雌C57BL/6マウス(1グループ当たり10匹)に、0、14及び28日目に、50μgの、QβにカップリングしたQβ-des-Arg9-BK又はQβ-BKの何れかを皮下注射にてワクチン接種した(腹部側の2箇所に100μl)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。0、14、21及び30日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、BK又はdes-BKに特異的な抗体を標準的なプロトコールに従ったELISAによって測定した。
初めに、BK又はdes-Arg9-BKをRNアーゼ(SIGMA)にカップリングした。ELISAプレートを、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中10μg/mlの濃度のRNアーゼにカップリングしたブラジキニンペプチドにてコートした。
【0111】
表8 Qβ-BK又はQβ-des-Arg9-BKそれぞれにて0及び14日目に免疫化したマウスにおける、平均抗BK及び抗des-Arg9-BK特異的IgG抗体力価(希釈因子として表す)。

【0112】
実施例17
コラーゲン誘導性関節炎の治療のためのQβ-BK、Qβ-des-Arg9-BKに対するワクチン接種の有効性
1グループ当たり10匹の雄DBA/1マウスに、50μgのQβ-BK、Qβ-des-Arg9-BK又はQβ単独にて3回皮下に免疫化した(0、14及び28日目)。次いで、マウスに、完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシコラーゲンII型を2回皮下注射した(34及び55日目)。
2回目のコラーゲン/CFA注射マウスを定期的に調べ、赤色化及び腫脹の観察の程度によって0から3の範囲の臨床スコアを各肢に割り当てた。2回目のコラーゲン/CFA注射の3週後に、肢ごとの平均臨床スコアは3通りの実験群において決定した。
【0113】
実施例18
アレルギー性気道炎症(AAI)の治療のためのQβ-BK及びQβ-des-Arg9-BKに対するワクチン接種の有効性
アレルギー性気道炎症の実験的喘息モデルを用いて、肺への好酸球流入、サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)産生、IgE抗体及び粘液産生と気管支過敏症(BHR)に特徴があるTh媒介性免疫応答に対する、ブラジキニン(BK)及びdes-Arg9-ブラジキニン(des-Arg9-Bk)に対するワクチン接種の効果を評価する。Balb/cマウス(1グループ当たり5匹)を、実施例16に記載のQβ-BK又はQβ-des-Arg9-BKのいずれかにて免疫化するか、又はQβ単独を注射する。第一免疫化の35日後に、マウスに、アジュバント(Alhydrogel)を含む又は含まない50μgの卵白アルブミン(OVA)を腹腔内投与する。10日後(すなわち45日目)に、すべてのマウスに、50μgのOVAを含むPBSを連続する4日間、鼻腔内投与して、毎日抗原刺激する。最後の抗原投与の24時間後に、全身phlegtismographによってBHRを決定する。次いで、マウスを特定の時点で屠殺し、肺炎症及びTh2媒介性免疫応答を分析する。PBS/1%BSAにて肺洗浄を行う。気管支肺胞洗浄(BAL)に含まれる細胞をCoulter計算機(Instrumenten Gesellschaft AG)にて計数し、既に記載のあるように(Trifilieff A,等 Clin Exp Allergy. 2001 Jun; 31(6): 934-42)、Maigrunwald-Giemsa染色にて区別した。
【0114】
実施例19
Qβ VLPへのガストリン又はガストリン断片のカップリング
以下のガストリンペプチド類は標準的方法に従って合成した。

【0115】
透析して、誘導体化したQβ VLPを続いて用いてc1G17をカップリングした。簡単に言うと、1mlの誘導体化したQβ VLP(2mg/mlの濃度)を、167μlの10mM ペプチドDMSO溶液及び100μlのアセトニトリルと、15℃で2時間反応させた。カップリング産物をQβ-c1G17と称した。カップリング効率[すなわちモルQβ-ガストリン/モルQβ単量体(総)]を、クーマシーブルー染色したSDS-PAGEの濃度測定分析によって推定すると、1Qβ単量体当たり2.4のc1G17断片であった。
透析して、誘導体化したQβVLPを続けて用いて、nG17アミド、nG17-G、nG34アミド又はnG34-Gをカップリングした。簡単に言うと、84μlの誘導体化したQβ VLP(2mg/mlの濃度)を、12μlの10mM ペプチド溶液及び4μlのHOと15℃で2時間反応させた。カップリング産物はそれぞれ、Qβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド及びQβ-nG34-Gと称した。
【0116】
実施例20
ジフテリアトキソイド(DT)及びQβへのG17(1-9)C2(配列番号:39)のカップリング
DTへのG17(1-9)C2のカップリングのために用いるプロトコールは、米国特許第5866128号の実施例1と同じであった。簡単に言うと、DT(List Biological Laboratories)を、100μlの0.2M リン酸ナトリウムバッファ、pH6.6に1mgのDTを溶解することによって活性化した。別に、2mgのSMPHを80μlのDMSOに溶解した。12μlのSMPHを100μlのDTに加えた。室温で2時間インキュベーションした後、混合物を、2Lの0.1M クエン酸ナトリウムバッファ、pH6.0に対して、2時間、2回透析した。カップリング産物はDT-G17(1-9)C2と称した。
透析して、誘導体化したQβ VLPを続いて用いてG17(1-9)C2をカップリングした。簡単に言うと、84μlの誘導体化したQβ VLPを、6μlの10mM ペプチドDMSO溶液及び6μlのHOと18℃で2時間反応させた。カップリング産物はQβ-G17(1-9)C2と称した。
【0117】
実施例21
Qβ-c1G17、Qβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド、Qβ-nG34-G、Qβ-G17(1-9)C2及びDT-G17(1-9)C2によるマウスの免疫化
成体雌C57BL/6マウスに、Qβ-c1G17(1グループ当たり5匹のマウス)、Qβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド及びQβ-nG34-G(1グループ当たり3匹のマウス)をワクチン接種した。50μgのQβ-c1G17又は25μgのQβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド及びQβ-nG34-G(実施例24にて入手)を、PBSにて200μlの容量に希釈し、0日目及び14日目に皮下注射した(腹部側の2箇所に100μl)。ワクチンはアジュバントなしで投与した。コントロールとして、1グループのマウスに50μgのQβを注射した。Qβ-C1G17にて免疫化したマウスは0、14、21、28、42、69及び101日目に後眼窩から採血し、Qβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド及びQβ-nG34-Gにて免疫化したマウスは0、14、21、28、42、56及び77日目に後眼窩から採血した。
成体雌C57/BL6を、1マウスにつき1mgのミョウバンを有するQβ-G17(1-9)C2、又は1マウスにつき1mgのミョウバンを有さないQβ-G17(1-9)C2、及び1マウスにつき1mgのミョウバンを有するDT-G17(1-9)C2(1グループ当たり5匹のマウス)にて免疫化した。50μgのQβ-G17(1-9)C2及びDT-G17(1-9)C2をPBSにて200μlの容量に希釈し、0日目及び14日目に皮下注射した(腹部側の2箇所に100μl)。0日目と14日目にマウスの後眼窩から採血した。これらガストリン断片に特異的な抗体の力価は、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中10μg/mlの濃度のRNアーゼにカップリングしたc1G17又はnG17アミド、nG17-G、nG34アミド、nG34-Gにて、ELISAプレート(96ウェルMAXIsorp、NUNCイムノプレート)をコートすることによってELISAにて測定した。
【0118】
表9 0日目及び14日目にQβ-c1G17、Qβ-nG17アミド、Qβ-nG17-G、Qβ-nG34アミド及びQβ-nG34-Gそれぞれにて免疫化したマウスにおける、平均抗-c1G17-、nG17アミド、nG17-G、nG34アミド又はnG34-G特異的IgG抗体力価(希釈因子として表す)。これは、ガストリン-VLPコンジュゲートがガストリン断片に対して高い抗体価を誘導することできることを明らかに示唆する。
表9

【0119】
表10は、G17(1-9)C2-特異的抗体の平均力価を示す。ELISA力価は、ELISAアッセイにおいて最大半量のODとなる血清希釈物として表す。ミョウバン又はDT-G17(1-9)C2のある場合又はない場合のQβ-G17(1-9)C2によって免疫化したマウスにおいて、14日目までにそれぞれおよそ1:4242、1:5838及び1:788の平均的な力価に達した。最大半量のOD力価は100未満であり、それはアッセイのカットオフより下であると考えられた。これは、Qβ-G17(1-9)C2がDT-G17(1-9)C2より早くてより高い抗体応答を誘導することが可能なことを明らかに示唆する。
表10

【0120】
実施例22
c1G17に対して生じた血清のCCK8への交差反応性の調査
ELISAプレートは、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中0.2mg/mlの濃度のc1G17又はCCK8(SIGMA)にて4℃で終夜をかけてコートした。c1G17コートプレートからのELISA力価が1250であったのに対して、CCKに対する明らかな反応性は観察されなかった(図1A)。
また、阻害ELISAにおいて交差活性を調べた。ELISAプレートは、コーティングバッファ(0.1M NaHCO3、pH9.6)中0.2mg/mlの濃度のc1G17又はCCK8(SIGMA)にて4℃で終夜をかけてコートした。Qβ-c1G17(実施例21から入手)に対して生じたマウス血清(免疫処置の14日後)を、段階的に希釈したnG17アミド又はCCK8のいずれかとともに、600回転数/分で振とうしながら保温ブロック上で37℃で2時間インキュベートした。次いで、これらの血清をELISAプレートに加え、室温で2時間インキュベートした。nG17アミドのプレインキュベーションによりコートしたnG17アミドへの血清の認識を阻害したのに対して、CCKの阻害活性は観察されなかった。これら2つの実験は、Qβ-c1G17によって生じた抗体がCCK8と交差反応しなかったことを示した(図1B)。
【0121】
実施例23
QβへのC5a及びC5a断片のカップリング
N末端CGSGGリンカーを含有するマウスのC5aアミノ酸配列(配列番号:47、以降mC5acysと称する)をDictagene SAによって化学的に合成した。マウスのC5a配列のC末端の19アミノ酸は、N末端の付加的なCGGリンカーにより化学的に合成した(EMC Microcollections)(配列番号:48、以降mC5acys59-77と称する)。
20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.2中の143μM Qβ VLP溶液を、2倍モル過剰(286μM)のSMPH(Pierce)と、振とうしながら25℃で30分間反応させた。透析の後、等モル量のmC5acysを、SMPH誘導体化Qβ VLPの36μM溶液に加えた。反応容量は100μlであり、反応は振とうしながら15℃で2時間インキュベートした。
20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.2中の200μM Qβ VLP溶液を、5倍モル過剰(1mM)のSMPH(Pierce)と、振とうしながら25℃で30分間反応させた。透析の後、5倍モル過剰のmC5acys59-77を、SMPH誘導体化Qβ VLPの107μM溶液に加えた。反応は振とうしながら15℃で2時間インキュベートした。
【0122】
実施例24
Qβ-mC5acysワクチンによるマウスの免疫化とmC5acys-特異的抗体の検出
必要であれば0及び14日目に実施例23に記載のように調製した50μgのQβ-mC5acysワクチンをマウスの皮下に投与して免疫化した。14日目及び21日目及び続くタイムポイントでマウスの後眼窩又は尾静脈から採血した。これらの血液から血清を確保し、C5a特異的ELISAによって分析した。ネガティブコントロールとして、マウスに50μgのQβ-VLP又はPBSのみを投与した。抗mC5acys IgG抗体力価は、0.1M 炭酸塩バッファ(pH9.6)中の1μg/mlのmC5acysにて終夜コートすることによってELISAにて測定した。
表11は、予めQβ-mC5acys、Qβ VLP単独又は無処理のいずれかにて免疫化して24日目のマウスの血清を用いたアッセイの代表的な結果を示す。Qβ-mC5acysワクチンを投与したマウスは、プレートコートmC5acysに対するIgG抗体応答を確実に示した。
表11

実質的に上記と同じように、マウスに50μgのQβ-mC5acys59-77を皮下投与して免疫化する。
【0123】
実施例25
全身mC5acysのインビボ効果を中和するQβ-mC5acysワクチン免疫化
mC5acysの生物活性は、少量のmC5acysの静脈内投与の後の血液顆粒球数の見かけの低下を測定することによって、好中球減少症アッセイにおいてインビボで決定した。
雌C57BL/6マウス(6〜8週齢)を麻酔して、側方尾静脈から100μl溶液を注射した。マウスに、PBS、mC5acysを含むPBS又はQβキャプシドを含むPBSのいずれかを投与した。3分後に、マウスの後眼窩から採血し、抗凝血物質ヘパリン(Roche)を含有する2mlのPBSへ100μlの全血液を移した。細胞を、室温で、10分間、450×gで遠心してペレット状にした。上清を吸引した後に、細胞ペレットを、室温で、5分間かけて2mlのトリスアンモニウムクロライド(TAC)溶液(17mM トリス、126mM NHCl、pH7.2)に再懸濁して、赤血球を溶解した。残りの細胞を遠心によってペレット状にし、TAC処理を繰り返した。残りの細胞を遠心によって再びペレット状にし、50μlのフローサイトメトリー洗浄バッファ(2%(v/v)ウシ胎児血清及び0.1%NaNを含有するダルベッコPBS)に再懸濁した。細胞をフローサイトメーター(FACSCalibur, Becton Dickenson)に通し、前方及び側方の光散乱ゲーティングによって顆粒球の分画を測定した。
【0124】
mCa5cysが好中球減少症を誘導することを示す代表的な実験を表6に示す。この場合、1nmolのmC5acysが、PBS処理マウス及びμgのQβキャプシドタンパク質を投与したマウスと比較して、統計学的に有意な好中球減少症を誘導したことは、合成されたmC5acyが生物学的活性を有することを示唆する。
C57BL/6マウスを、ダルベッコPBSにて希釈した50μgのQβ-mC5acysを横腹の皮下に投与して免疫化した。コントロールマウスはQβ単独を投与するか、無処理とした。実験の0日目及び14日目に免疫処置を行った。初めの免疫処置の22日後に、50pmolのmC5acysを側方尾静脈から静注して、全身性好中球減少症を誘導した。Qβ VLP単独にて免疫化したマウス又は無処置のマウスにおいて、50pmolのmC5acys投与の3分後に血中の顆粒球の割合が低下した。Qβ-mC5acysにてワクチン接種したマウスにおいて、血中顆粒球の割合の低下は予防された。したがって、Qβ-mC5acysによる免疫化によりマウスに生じた抗mC5a抗体は、静脈内mC5acysの投与によって誘導される全身好中球減少症応答を中和することが可能である(表12)。
【0125】
表12

【0126】
実施例26
Qβ-mC5acys VLPによる免疫化によるコラーゲン誘導性関節炎モデルマウスの疾患の軽減
雄6週齢のDBA/1JCrlマウス(Charles River, Deutschland)を、ともにダルベッコPBSにて希釈した50μgのQβ-mC5acys(n=8)又は50μgのQβ VLP(n=8)を横腹の皮下に投与して免疫化した。初めの免疫処置の15及び24日後に、30μgのQβ-mC5a又は30μgのQβ VLPの皮下投与により、更に2回追加免疫処置した。初めの免疫処置の35及び57日後に、完全フロイントアジュバント(CFA)にて1:1の比でガラスシリンジを用いて乳化した100μgのウシII型コラーゲン(MD Biosciences)を、マウスの尾基部の皮下に2回投与して免疫化した。CFAは、5mg/mlの熱処理した結核菌株H37RA (Difco Laboratories)を含有する不完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories)から調製した。次いで、マウスは、前肢及び後肢の関節厚を毎日測定して、関節臨床スコアを毎日評価することによってコラーゲン誘導性関節炎の誘導及び重症度をモニターした。関節厚は、一定張力測径器(constant-tension calipers)を用いて測定した。臨床スコアは、以下のスケールに基づいて割り当てた:スコア0− 腫脹なし、関節正常;スコア1− 指/足の軽度の赤み及び/又は腫脹;スコア2− 全ての足/関節に赤み及び腫脹を伴う;スコア3−重度腫脹、強直を有する足/関節の変形。実験の診察は、最終コラーゲン/CFA投与の15日後(初めの免疫処置から72日目)まで続けた。
表13は、最終コラーゲン/CFA投与後の四肢全体の関節厚の平均増加を示す。関節厚の平均増加は、Qβコントロールと比較してQβ-mC5acysワクチン接種グループについてほとんどの日において低く、最終コラーゲン/CFA投与の5、7及び10日後にp値<0.1(両側t検定による)を有する相違であった。
【0127】
表13

図2aは、最終コラーゲン/CFA投与後の四肢全体の平均臨床スコア合計を示す。平均臨床スコア合計は、Qβ VLPコントロールと比較してQβ-mC5acysワクチン接種グループにおいて一貫して低く、最終コラーゲン/CFA投与の6、8、12及び14日後にp値<0.1(両側t検定による)であり、7、9及び10日後にp値<0.05(両側t検定による)を有する相違であった。この結果は、Qβ保因ワクチン接種動物と比較した場合に、Qβ-mC5acysによるワクチン接種によりマウスのコラーゲン誘導性関節炎の重症度が軽減されることを意味する。
【0128】
実施例27
Qβ-mC5acys VLPによる免疫化による抗コラーゲン-モノクローナル抗体-反応混液誘導性関節炎モデルマウスの疾患の軽減
雌6〜8週齢のbalb/cマウス(Charles River)を、すべてダルベッコPBSにて希釈した50μgのQβ-mC5acys(n=5)又は50μgのQβ VLP(n=5)を横腹の皮下に投与して免疫化した。初めの免疫処置の21及び35日後に、50μgのQβ-mC5a又は50μgのQβ VLPのいずれかの皮下投与により、更に2回追加免疫処置した。初めの免疫処置の41日後に、200μlの抗コラーゲンモノクローナル抗体反応混液(MDBiosciences)を静注し、その1日後に100μlのLPS溶液(MDBiosciences)を腹膜内投与してマウスを免疫化した。実質的には実施例26に記載されるのと同様に、マウスの抗コラーゲンモノクローナル抗体誘導性関節炎の誘導と重症度についてモニターした。実験の診察は、抗コラーゲンモノクローナル抗体反応混液投与の14日後(初めの免疫処置の55日後)まで続けた。
図2bは、抗コラーゲンモノクローナル抗体反応混液投与後の四肢全体の平均臨床スコア合計を示す。平均臨床スコア合計は、Qβ VLPコントロールと比較してQβ-mC5acysワクチン接種グループにおいて一貫して低く、最終コラーゲン/CFA投与の3、4、7、8、9、10、11及び13日後にp値<0.1(両側t検定による)であり、12及び14日後にp値<0.05(両側t検定による)を有する相違であった。この結果は、Qβ保因ワクチン接種動物と比較した場合に、Qβ-mC5acysによるワクチン接種によりマウスの抗コラーゲン-モノクローナル抗体誘導性関節炎の重症度が軽減されることを意味する。
【0129】
実施例28
Qβ-mC5acys VLPによる免疫化と、全身性エリテマトーデスのニュージーランドブラック/ニュージランドホワイト種F1交雑モデル
NZB/NZW F1マウスは、自然発生的に、ヒトの全身性エリテマトーデスに著しく似た自己免疫性疾患を発症する(Andrews等 J. Exp. Med., 148: 1198, 1978)。雌16週齢のNZB/NZW F1マウス(Charles River)を、すべてダルベッコPBSにて希釈した50μgのQβ-mC5acys(n=20)又は50μgのQβ VLP(n=20)を横腹の皮下に投与して免疫化した。初めの免疫処置の14及び28日後に、50μgのQβ-mC5a又は50μgのQβ VLPのいずれかの皮下投与により、更に2回追加免疫処置した。58日目に、50μgのQβ-mC5a又は50μgのQβ VLPいずれかとミョウバンにより更に追加免疫した。尿(タンパク尿症)に排出されるタンパク質の量を、尿試験紙(Roche)による色彩計量的分析により、16週齢(0日目)から29週齢(91日目)まで週ごとに測定した。タンパク尿症は更に52週齢まで毎週測定して、必要に応じて更なる追加免疫により抗体価を高く保った。
図3は、タンパク尿症値が300mg/dLに達するマウスの割合を示す。これらのデータは、Qβ処置グループの30%のマウスが29週齢までに300μg/ml以上のタンパク尿症値を有したことを示す。QβC5acys処置グループの1匹のマウスだけは、この週齢で300μg/mlを超える値を有した。この特定のマウスは、ELISAにて測定するところの低C5acys抗体価を有した。この結果は、Qβ保因ワクチン接種動物と比較して、Qβ-mC5acysを有するワクチン接種により、全身性エリテマトーデスのニュージーランドブラック/ニュージーランドホワイトF1モデルにおけるタンパク尿症の発症率が下がるか、ないしは発症が遅延することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】Aは、nG17アミド又はCCK8の何れかによりコートして、段階希釈したマウス血清とインキュベート(免疫化後14日間)したプレートのELISAの結果を示す。Bは、阻害性ELISAの結果を示す。このとき、血清は、段階的に希釈したnG17アミド又はCCK8とともに予めインキュベートして、コートしたプレートに添加した。
【図2】Qβ-mC5acys又はQβ VLPによって免疫化されたマウスの最終コラーゲン/CFA投与の後(A)、又は、最終抗コラーゲン-モノクローナル抗体混合液投与の後(B)の、四肢すべての平均臨床スコア合計を示す。x軸はコラーゲン投与後の日数、y軸はすべての肢の臨床スコアの平均合計を表す。
【図3】300μg/mlを超えるタンパク尿症を示した、Qβ-mC5acys又はQβ VLPの何れかによって免疫化したマウスの割合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、
(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなる組成物であり、このとき該少なくとも1の抗原が:
a) 本発明のCCR5;
b) 本発明のC5a;
c) 本発明のCXCR4;
d) 本発明のガストリン;及び、
e) 本発明のCETP;からなる群から選択されるものであり、
そして(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位で連結される、組成物。
【請求項2】
(a) 少なくとも2の第一付着部位を有するRNA-バクテリオファージのウイルス様粒子;と、
(b) 少なくとも2の第二付着部位を有する少なくとも1のCCR5細胞外ドメインPNt;とを含んでなり、
このとき該CCR5細胞外ドメインPNtが、
(i) Ntaドメイン又はNtaドメイン断片、と、
(ii) 配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン(配列番号:56)又は配列番号:27のアミノ酸23〜27を含んでなるNtbドメイン断片を含んでなり、
このとき少なくとも2の第二付着部位の一つ目又は二つ目がスルフヒドリル基を含んでなり、
該少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27の該アミノ酸23〜27のN末端の上流位置し;そして、
該少なくとも2の第二付着部位の二つ目は、該CCR5細胞外ドメインPNtのC末端の下流に位置し;そして、
該RNA-バクテリオファージの該VLPと該CCR5細胞外ドメインPNtが少なくとも1の非ペプチド共有結合によって連結されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも2の第二付着部位を有する前記CCR5細胞外ドメインPNtは、少なくとも2の第二付着部位の一つ目と二つ目が含有する該2つのスルフヒドリル基の他に、更なるスルフヒドリル基を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目は、配列番号:27のシステイン残基のスルフヒドリル基に対応する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記CCR5細胞外ドメインPNtが配列番号:27のアミノ酸配列を含んでなる、請求項2から4の何れか一に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、リンカーを含んでなり、該リンカーが前記CCR5細胞外ドメインPNtのC末端に融合し、該リンカーが前記少なくとも2の第二付着部位の二つ目を含んでなり、好ましくは該リンカーがシステイン又はアミド化されたシステインである、請求項2から5の何れか一に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも2の第二付着部位の一つ目及び二つ目が、少なくとも2の非ペプチド共有結合により前記少なくとも2の第一付着部位と結合する、請求項2から6の何れか一に記載の組成物。
【請求項8】
前記RNA-バクテリオファージがQβ又はAP205である、請求項2から7の何れか一に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2の第一付着部位の各々がアミノ基を含んでなる、請求項2から8の何れか一に記載の組成物。
【請求項10】
前記CCR5がCCR5細胞外ドメインであり、好ましくは該CCR5細胞外ドメインがCCR5細胞外ドメインPNtであり、さらに好ましくは該PNtドメインが配列番号:27のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記CCR5がCCR5細胞外ドメイン断片であり、好ましくは該CCR5細胞外ドメイン断片がCCR5細胞外ドメインECL2A断片であり、さらに好ましくは該CCR5細胞外ドメインECL2断片が
(a) 配列番号:25;及び、
(b) 配列番号:26
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ガストリンが、
a) 配列番号:33
b) 配列番号:34;
c) 配列番号:35;
d) 配列番号:36;
e) 配列番号:37;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、これから基本的になるか、あるいはこれからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記C5aがC5aタンパク質であり、好ましくは該C5aタンパク質が、
(a) 配列番号:45;及び、
(b) 配列番号:45から得られるポリペプチドであって配列番号:45の3、好ましくは2、好ましくは1のアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換により修飾されているポリペプチド
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、これから基本的になるか、あるいはこれからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記VLPがRNA-バクテリオファージのものである、請求項1又は請求項10から13の何れか一に記載の組成物。
【請求項15】
前記RNA-バクテリオファージがQβ、fr、GA又はAP205である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
第一付着部位を有する前記VLPが、少なくとも1の共有結合によって第二付着部位を有する前記抗原に連結され、このとき好ましくは該共有結合がペプチド結合であり、該VLPがRNAバクテリオファージAP205のものである、請求項1又は請求項10から15の何れか一に記載の組成物。
【請求項17】
前記第一付着部位が少なくとも1の共有結合により前記第二付着部位に連結され、このとき好ましくは前記共有結合が非ペプチド結合である、請求項1又は請求項10から15の何れか一に記載の組成物。
【請求項18】
前記第一付着部位が、好ましくはリジンのアミノ基を含んでなる、請求項1から17の何れか一に記載の組成物。
【請求項19】
前記第二付着部位がスルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含んでなる、請求項1から18の何れか一に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1から19の何れか一に記載の組成物を含んでなるワクチンであって、好ましくは該ワクチンがアジュバントのないものである、ワクチン。
【請求項21】
(a) 請求項1から19の何れか一に記載の組成物又は請求項20のワクチン;と、
(b) 受容可能な製薬的担体
を含んでなる医薬組成物。
【請求項22】
請求項1又は請求項10から19の何れか一に記載の組成物、又は請求項20に記載のワクチンの生産方法であって、
(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを供給すること;
(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原を供給すること;そして、
(c) 前記組成物を生産するために該VLPと該少なくとも1の抗原を連結すること
を含んでなり、該少なくとも1の抗原と該VLPが該少なくとも1の第一付着部位と該少なくとも1の第二付着部位により連結される、方法。
【請求項23】
AIDSの治療のための医薬の製造のための請求項2から11の何れか一に記載の組成物の使用。
【請求項24】
胃腸癌の治療のための医薬の製造のための請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項25】
関節炎の治療のための医薬の製造のための請求項13に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−543810(P2008−543810A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516309(P2008−516309)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063198
【国際公開番号】WO2006/134125
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】