抗原提示細胞上に発現されたDCIRへの抗原のターゲティングに基づくワクチン
本発明は、抗体−抗原複合体を形成する抗原が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を用いた、抗原提示の有効性を増大させるための組成物及び方法であって、上記抗原が、上記抗体−抗原複合体と接触していた樹状細胞によってプロセシング及び提示される組成物及び方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ワクチン接種の分野に関し、より詳細には、抗原提示細胞上に発現されたDCIRへの抗原のターゲティングに基づくワクチンに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれている、2007年2月2日出願の米国仮出願第60/888032号に基づく優先権を主張する。
【0003】
米国連邦政府によって資金助成された研究に関する記載
本発明は、NIHによって授与された契約番号1U19AI057234−0100003下の米国政府助成を用いて行われた。米国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定せずに、その背景を抗原提示との関連において説明する。
【0005】
樹状細胞(DC,dendritic cell)ターゲッティングに基づくヒトワクチンは、マウスモデルでの説得力のある研究を基にする新概念である。この場合、特定のDC受容体に対する抗体によってDCにもたらされる少量の比較的弱い抗原が、強力かつ広範な免疫応答を誘発しうる。ヒト用のそのようなワクチンを開発するには、この抗原ターゲティングの適用に正確にどのDC受容体を用いるべきかに関する、より詳細な理解を必要とする。これは、マウスの免疫系とヒトの免疫系との間で、常に正確な対応があるわけではないからであり、また、このワクチン適用に関して、すべての潜在的DC受容体が慎重に検査されているわけではないからでもある。
【0006】
したがって、様々な抗ヒトDC受容体標的をインビトロで試験する研究が開始されており、例えば、HLAクラスI分子及びクラスII分子との関連で、マンノース受容体で活性化されたT細胞に対するヒトmAbに融合している黒色腫抗原pmel17を用いて、DCターゲッティングが行われた(Ramakrishna, V., J. F. Treml, et al. (2004). "Mannose receptor targeting of tumor antigen pmel17 to human dendritic cells directs anti-melanoma T cell responses via multiple HLA molecules." J Immunol 172(5): 2845-52.)。また、ヒト化抗DC−SIGN mAbを介して、モデル抗原であるKLHをDCにターゲティングすることによって、抗原特異的なナイーブT細胞応答に加えて、用量抑制的なリコールT細胞応答も効果的に誘導された(Tacken, P. J., I. J. de Vries, et al. (2005). "Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody." Blood 106(4): 1278-85.)。マンノース受容体及びDC−SIGNに加えて、ヒトDCは、抗原捕捉に関与していることが知られている他の受容体も発現する。これらの多くは、LOX−1、DEC205、DC−ASGPR、ランゲリン、DCIR、BDCA−2、DECTIN−1及びCLEC−6を含めたC型レクチン受容体(CLR,C-type lectin receptor)である。これらのCLRは、DCの異なったサブセットにより異なって発現され、それらの発現は、DC成熟の状態に従って相違しうる(Figdor, C. G., Y. van Kooyk, et al. (2002). "C-type lectin receptors on dendritic cells and Langerhans cells." Nat Rev Immunol 2(2): 77-84.、Geijtenbeek, T. B., S. J. van Vliet, et al. (2004). "Self- and nonself-recognition by C-type lectins on dendritic cells." Annu Rev Immunol 22: 33-54.)。
【0007】
DCのサブセットは、異なった免疫応答を刺激する。したがって、異なって発現される受容体を介して、抗原をこれらのサブセットにターゲティングすることによって、異なった免疫応答が誘発されるはずである(Shortman, K. and Y. J. Liu (2002). "Mouse and human dendritic cell subtypes." Nat Rev Immunol 2(3): 151-61.)。さらに、同じDCサブセット上の異なった受容体が、抗原を別々のプロセシング経路に方向付ける可能性もある(Trombetta, E. S. and I. Mellman (2005). "Cell biology of antigen processing in vitro and in vivo." Annu Rev Immunol 23: 975-1028.)。最後に、これらの受容体の一部は内因的に活性化しないものであり(例えば、DEC205(Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.))、一方、他のものは、活性化するものであるか(例えば、LOX−1(Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.))、まだ完全には研究されていないものである。抗原の取り込みと同時に起こるDC活性化の重要性は知られていない。しかし、これが有益であるならば、ターゲッティングmAbを介したDCの活性化によって、ターゲッティングワクチンの製剤が単純化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ramakrishna, V., J. F. Treml, et al. (2004). "Mannose receptor targeting of tumor antigen pmel17 to human dendritic cells directs anti-melanoma T cell responses via multiple HLA molecules." J Immunol 172(5): 2845-52.
【非特許文献2】Tacken, P. J., I. J. de Vries, et al. (2005). "Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody." Blood 106(4): 1278-85.
【非特許文献3】Figdor, C. G., Y. van Kooyk, et al. (2002). "C-type lectin receptors on dendritic cells and Langerhans cells." Nat Rev Immunol 2(2): 77-84.
【非特許文献4】Geijtenbeek, T. B., S. J. van Vliet, et al. (2004). "Self- and nonself-recognition by C-type lectins on dendritic cells." Annu Rev Immunol 22: 33-54.
【非特許文献5】Shortman, K. and Y. J. Liu (2002). "Mouse and human dendritic cell subtypes." Nat Rev Immunol 2(3): 151-61.
【非特許文献6】Trombetta, E. S. and I. Mellman (2005). "Cell biology of antigen processing in vitro and in vivo." Annu Rev Immunol 23: 975-1028.
【非特許文献7】Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.
【非特許文献8】Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの考慮を背景として、本発明者らは、望ましい免疫結果を得るために最も適したヒトDCターゲッティング受容体を特定するための、CD4+及びCD8+T細胞ナイーブ応答及びリコール応答をインビトロで詳細に探索することによる系統的な比較の緊急な必要性を認識している。本出願は、特定のDC受容体、すなわち、樹状細胞抑制型受容体(DCIR,Dendritic Cell Inhibitory Receptor)が、予防用及び治療用ワクチン接種のために抗原をヒトDCにターゲティングする目的に理想的な受容体であることを示す、その特殊かつ予想外な特徴を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、抗原に対する強力かつ広範な免疫応答を誘発する目的で、抗原を抗原提示細胞に特異的にターゲティングする(送達する)ワクチンを作製及び使用するための組成物及び方法を含む。目的は、主として、抗原が由来する作用物質(病原体又は癌)に対する防御的又は治療的免疫応答を誘起することである。
【0011】
より詳細には、本発明は、制御されたモジュール構造で1又は複数の抗原を保持する、標的特異的な単一の組換え抗体(mAb)、活性化タンパク質又は他の抗体を設計及び作製するための組成物、方法及び方法を提供する。本発明のモジュールrAb担体は、例えば、複数の抗原、並びに/又は抗原及び活性化サイトカインを(内部移行するヒト樹状細胞受容体に対する1つの一次組換え抗体を介して)樹状細胞(DC)にターゲティングするのに用いることができる。また、本発明は、制御され、かつ特定されたやり方で、2つの異なった組換えmAbを端と端とで連結する方法を提供する。
【0012】
本発明は、抗体−抗原複合体を形成する標的作用物質が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を単離及び精製することによって、DCIR発現抗原提示細胞による抗原提示の有効性を増大させる組成物及び方法であって、その作用物質が、抗体−作用物質複合体と接触した、例えば樹状細胞によってプロセシング及び提示される方法を含む。一実施形態では、抗原提示細胞が樹状細胞であり、DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合する。DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合し、かつ抗原がコヘリン/ドックリン対の他方の半分に結合して複合体を形成してもよい。作用物質の非限定的な例には、ペプチド、タンパク質、脂質、糖質、核酸及びこれらの組合せのうちの1又は複数が含まれる。
【0013】
作用物質は、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF,transforming growth factor)、線維芽細胞成長因子(FGF,fibroblast growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF,platelet derived growth factor)、上皮成長因子(EGF,epidermal growth factor)、結合組織活性化ペプチド(CTAP,connective tissue activated peptide)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理活性類似体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、分裂促進サイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18など、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、並びにβトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来性成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF,insulin-like growth factor))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えばGDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めたトランスフォーミング成長因子(TGF)遺伝子スーパーファミリーから選択される1又は複数のサイトカインでありうる。別の実施形態では、作用物質は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性及び癌性のタンパク質である抗原を含む。
【0014】
本発明は、樹状細胞による抗原提示の有効性を増大させる組成物及び方法であって、抗体−抗原複合体を形成する抗原が結合するDCIR特異的抗体又はその断片を結合させるステップを含み、その抗原が、抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示される組成物及び方法も含む。別の実施形態は、防御的又は治療的免疫応答を誘発する目的で、抗原を抗原提示細胞に送達するための、DCIRに対する抗体又は他の特異的結合分子の使用である。皮膚を介したワクチン接種のための、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用;同時投与又は連結されたワクチン接種用のアジュバントと併用した、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用、又は組換えの抗原−抗体融合タンパク質として発現することができる特異的抗原の、抗原ターゲッティング(ワクチン接種)目的での使用。
【0015】
別の実施形態は、患者の樹状細胞を単離するステップ;上記樹状細胞を活性化量の抗DCIR抗体又はその断片及び抗原に曝露して、抗原が負荷されて活性化された樹状細胞を形成するステップ;並びに抗原が負荷されて活性化された上記樹状細胞を上記患者に再導入するステップによって、樹状細胞の有効性を増大させる方法を含む。抗原は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含みうる。本発明は、哺乳動物細胞から分泌された抗DCIR免疫グロブリン又はその部分、及び免疫グロブリンに結合した抗原も含む。免疫グロブリンは、コヒーシン/ドックリンドメインの半分に結合しており、又はそれは、モジュールrAb担体と複合体を形成する抗原に結合した、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分、若しくは抗原との融合タンパク質である、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分を含んでもよい。抗原特異的なドメインは、完全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びにFabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片でありうる。抗DCIR免疫グロブリンは、放射性同位元素、金属、酵素、ボツリヌス毒素、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、ウェルシュ菌毒素、マイコトキシン、志賀毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン(seguitoxin)、サキシトキシン、アブリン、シアノジノシン、α毒素、テトロドトキシン、アコノトキシン(aconotoxin)、ヘビ毒及びクモ毒から選択される毒素に結合していてもよい。抗原は、免疫グロブリンとの融合タンパク質であるか、又は免疫グロブリンに共有結合若しくは非共有結合によって化学的に結合したものでありうる。
【0016】
別の実施形態は、抗体−抗原複合体を形成する抗原が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を含むワクチンであって、その抗原が、抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示されるワクチンである。
【0017】
本発明の新規抗体は、新規な組織分布情報を示すこともできた。それらの特異的親和性により、本発明の抗DCIR抗体は、サルDCIRに結合することが見出された。本発明の抗DCIR抗体は、インビボ[hu−マウス]における、抗DCIR−Flu m1を用いた、増殖中のFlu m1特異的CD8細胞へのターゲッティング、及びエキソビボヒト皮膚細胞のインビトロターゲッティングに有効である。さらに、DCIRの炭水化物リガンドの複合体は、抗原送達のための抗DCIR薬の代用薬として使用できることが見出された。したがって、本発明の別の実施形態は、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12を含有する、グリカンの少なくとも一部に結合した、DCIRに特異的に結合する抗原性T細胞エピトープペプチドである。上記グリカン(及びその誘導体)は、単独又は併用で、DCIR結合を阻止するのに使用できる。
【0018】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、これより、添付された図と共に、本発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1A〜1Fは、対照と比較した場合、すべてではないが、多くのハイブリドーマ上清が、MCP−1の特異的な産生を誘発し、すなわち、mAb 4C7、9E8、19E3、1G3、10A5、29G10、3C2、3G2、24A5、30F3、12E2、5F9、2F11、24E7、31A6、6A11、2 9E9、2H8、30D9、6C8、35F1、3F12が以降の特徴付けに選択されたことを示す図である。
【図2】プレートに結合したDCIRとの、mAbの高親和性相互作用をELISAによって示す図である。
【図3】FACSで使用するための高親和性抗体の結合を示す図である。
【図4】ヒト皮膚から直接単離された3種のヒトDCサブタイプでもDCIRが発現されていることを示す図である。
【図5】ヒト扁桃腺内の胚中心を囲む細胞集団のDCIR特異的染色を示す図である。
【図6】架橋Flu M1タンパク質及びDCIRに対するmAbの例を示す図である。
【図7】抗DCIR_2C9 mAbへのCoh.Flu M1の架橋結合を示す図である。
【図8】抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、mAbに架橋結合されていないFlu M1タンパク質より効率的に、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す図である。
【図9】抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を、Int−DCより、LCを介して、より効率的に誘導することを示す図である。
【図10】293細胞内に同時形質移入され、培養上清中へのrAbの分泌に関して抗ヒトFC ELISAによってアッセイされた多数の異なった抗DCIR mAbに対応するマウス−ヒトキメラrAbをコードするH+L鎖ベクターを示す図である。
【図11】抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM/IL−15ヒトDCに特異的に結合することを示す図である。
【図12】抗DC−SIGN/L.Doc又は抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM−CSF/IL−4ヒトDCに結合し、その中に内部移行されることを示す図である。
【図13】抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖に効率的であることを示す図である。
【図14】1日間投与された抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖に効率的であることを示す図である。
【図15】rAb H鎖のC末端との融合体として発現された様々な抗原が、rAb.抗原の分泌に内因的な影響を有することを示す図である。
【図16】抗DCIR.Flu HA5 rAbが可変領域の性質に応じて様々な効率で分泌されることを示す図である。
【図17】抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す図である。
【図18】抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す図である。
【図19】ヒト上皮シート内におけるDCIR分布の免疫組織化学分析を示す図である。
【図20A−20B】図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体、とりわけDCIRへの親和性を示す図である。
【図20C−20D】図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体、とりわけDCIRへの親和性を示す図である。
【図21】抗DCIR mAbの、アカゲザルDCIRに対する交差反応性を示す図である。
【図22】特定のグリカン構造への、DCIR外部ドメインの結合を示すグラフである。
【図23A】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図23B】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図23C】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図24】DCIR−FluM1でのワクチン接種によって、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生が可能となることを実証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について以下に詳細に論じるが、本発明は、様々な特定の概念に具体化できる多数の適用可能な発明概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じる特定の実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するに過ぎず、本発明の範囲の境界を定めるものではない。
【0021】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義する用語は、本発明に関連する領域の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」や「その(the)」などの用語は、単数の存在物のみを指すのではなく、それには、その特定の例を例示目的に用いることのできる一般クラスが含まれる。本明細書の用語は、本発明の特定の実施形態を記載するのに使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲で大要を記載しているのを除いて、本発明の境界を定めるものではない。
【0022】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的免疫を調節するのに重要な役割を果たしている抗原提示細胞である(Mellman, I. and R. M. Steinman (2001). "Dendritic cells: specialized and regulated antigen processing machines." Cell 106(3): 255-8.、Banchereau, J., F. Briere, et al. (2000). “Immunobiology of dendritic cells.” Annu Rev Immunol 18: 767-811.、Cella, M., F. Sallusto, et al. (1997). "Origin, maturation and antigen presenting function of dendritic cells." Curr Opin Immunol 9(1): 10-6.)。DCは、抗原を捕捉して、それらをペプチドにプロセシングして、これらをT細胞に提示する。したがって、抗原をDCに直接送達することは、ワクチンを改善するための重点領域である。そのような例の1つは、後で患者に再投与される自己DCへのエキソビボ抗原負荷を用いたDCベースのワクチンの開発である(Banchereau, J., B. Schuler-Thurner, et al. (2001). "Dendritic cells as vectors for therapy." Cell 106(3): 271-4.、Steinman, R. M. and M. Dhodapkar (2001). "Active immunization against cancer with dendritic cells: the near future." Int J Cancer 94(4): 459-73.)。ワクチンの効力を改善するための別の戦略は、内部移行するDC特異的な受容体に対する抗体に結合した抗原をDCに特異的にターゲッティングすることである。ワクチン接種のためにDCをターゲッティングすることの可能性は、主要なマウス研究によって注目を浴びた。オボアルブミン(OVA)に結合した抗LOX−1 mAbを用いたインビボでのターゲッティングは、MHCクラスI経路に向けた外因性抗原のクロスプレゼンテーションを介して、防御的CD8+T細胞反応を誘発した(Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.)。また、CD40L成熟刺激と併用すると、抗DEC205 mAbに結合したOVAも、インビボで、DCによるMHCクラスI拘束性の提示を増強し、エフェクターメモリーCD8+T細胞の持続的な形成をもたらす(Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.)。これらの研究は両方とも劇的な用量の節約(すなわち非常に少ない抗原量で強い免疫応答)を示し、他のタイプのOVA免疫処置で通常見られるより広範な応答を示唆した。DEC205を介したDCへのHIV gag抗原のターゲッティングを用いた最近の研究は、これらの概念を臨床的に重要な抗原にまで拡張し、DCへの抗原のターゲティングの基本特性、すなわち、劇的な用量の節約、単一ワクチン接種に由来する防御応答、並びにCD8及びCD4コンパートメントの両方における抗原特異的なT細胞の増殖を確認した(Trumpfheller, C., J. S. Finke, et al. (2006). "Intensified and protective CD4+ T cell immunity in mice with anti-dendritic cell HIV gag fusion antibody vaccine." J Exp Med 203(3): 607-17.)。
【0023】
本発明は、制御された多変量様式における、単一の組換え一次mAbへの、(一次mAbから独立して工学的に作製、発現及び精製された)複数の抗原又はタンパク質の複合体形成を提供する。現在、1つの一次mAbに(それぞれストレプトアビジンに別々に連結するように工学的に作製された)様々なタンパク質の付加を可能にする部位特異的ビオチン化部位を工学的に作製する方法が存在する。しかし、本発明は、所定のモル比及び位置における、複数の組合せの一次mAbへの、別々に工学的に作製されたタンパク質の付加を提供する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「モジュールrAb担体」という用語は、単一の組換えモノクローナル抗体(mAb)への、様々な抗原、活性化タンパク質又は他の抗体の、制御されたモジュール付加をもたらすように工学的に作製された組換え抗体系を示すのに使用される。このrAbは、標準的なハイブリドーマ技法、組換え抗体ディスプレイ及びヒト化モノクローナル抗体などを用いて作製されたモノクローナル抗体でありうる。モジュールrAb担体は、例えば、複数の抗原、並びに/又は抗原及び活性化サイトカインを(内部移行する受容体、例えばヒト樹状細胞受容体に対する1つの組換え一次抗体を介して)、樹状細胞(DC)にターゲティングするのに使用できる。モジュールrAb担体は、制御された特定の方法で、2つの異なった組換えmAbを端と端とで連結するのに使用できる。
【0025】
「モジュールrAb担体」の抗原結合部分は、認識されるモジュール結合部分が、そのアミノ酸配列に付加及び/又は結合される、1又は複数の可変ドメイン、1又は複数の可変ドメイン及び最初の定常ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びに、Fabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片でありうる。モジュールrAb担体で使用するための抗体は、いずれのアイソタイプ又はクラスのものでも、サブクラスでも、又はどんな供給源(動物性及び/又は組換え)由来の抗体でもよい。
【0026】
非限定的な一例において、モジュールrAb担体は、工学的に作製された組換えmAbとの関連で、特異的かつ特定のタンパク質複合体を作製するための1又は複数のモジュールコヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインを有するように工学的に作製される。mAbは、mAbの抗原結合ドメインのカルボキシ側に、1又は複数のモジュールコヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインを含有する融合タンパク質の一部分である。コヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインは、例えば化学架橋結合物質及び/又はジスルフィド結合形成を用いることによって、翻訳後に付加されたものでも可能である。
【0027】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、その抗原の受容者体内で液性及び/又は細胞性免疫応答を開始できる分子を指す。抗原は、本発明では、2つの異なった場面で、すなわち抗体又はrAbの他の抗原認識ドメインの標的として、又はモジュールrAb担体に相補的なドックリン/コヒーシン分子の一部として細胞若しくは細胞内にもたらされるか、rAbによってターゲッティングされる分子として使用されうる。抗原は、通常、ワクチン接種が有利な治療法となる疾患を引き起こす病原体である。抗原がMHCに提示される場合、そのペプチドは、しばしば約8アミノ酸から約25アミノ酸である。抗原には、例えば、単純な中間代謝物質、糖、脂質及びホルモン、並びに複合糖質、リン脂質、核酸及びタンパク質などの高分子を含めたどんなタイプの生物学的分子も含まれる。抗原の一般的な範疇には、ウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原、原子動物及び他の寄生虫の抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶に関与している抗原並びに他の種々雑多な抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
モジュールrAb担体は、任意の数の活性物質、例えば、抗生物質、抗感染症薬、抗ウイルス剤、抗腫瘍薬、解熱薬、鎮痛剤、抗炎症薬、骨粗鬆症の治療薬、酵素、サイトカイン、抗凝血物質、多糖、コラーゲン、細胞及び上記の活性物質の2種以上の組合せを保持できる。本発明を用いて送達する抗生物質の例には、テトラサイクリン、アミノグルコシド、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド薬物、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、エリスロマイシン、バンコマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ナイスタチン、アムホテリシンB、アマンタジン、イドクスウリジン、p−アミノサリチル酸、イソニアジド、リファンピン、アンティノマイシンD、ミトラマイシン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン及びイミダゾールカルボキシアミドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明を用いて送達する抗腫瘍薬の例には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール及びメトトレキセートが含まれるが、これらに限定されない。解熱薬及び鎮痛剤の例には、アスピリン、Motrin(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、ナプロキセン及びアセトアミノフェンなどが含まれる。
【0030】
本発明を用いて送達する抗炎症薬の例には、NSAIDS、アスピリン、ステロイド、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン及びジクロフェナクナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明を用いて送達する骨粗鬆症治療薬並びに骨及び骨格に作用する他の因子の例には、カルシウム、アレンドロネート、骨GLaペプチド、副甲状腺ホルモン及びその活性断片、ヒストンH4関連骨形成増殖ペプチド(histone H4-related bone formation and proliferation peptide )、並びにこれらの変異体、誘導体及び類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明を用いて送達する酵素及び酵素補因子の例には、Pancrease(登録商標)、L−アスパラギナーゼ、ヒアルロニダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、tPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、パンクレアチン、コラゲナーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノゲン、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、アデニルシクラーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明を用いて送達するサイトカインの例には、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理活性類似体、断片及び誘導体が含まれるが、これらに限定されない。サイトカインは、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、マイトジェニックサイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18など;レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、又はこれらの任意の断片若しくは組合せでありうる。他のサイトカインには、βトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めたトランスフォーミング成長因子(TGF)スーパーファミリーのメンバーが含まれる。
【0034】
本発明を用いて送達する成長因子の例には、哺乳動物細胞からなど、天然又は自然の供給源から単離することのできる成長因子も、組換えDNA技法によって、又は様々な化学的方法によって、合成によって調製することのできる成長因子も含まれるが、これらに限定されない。加えて、これらの因子の類似体、断片又は誘導体も、それらが天然分子の生物活性の少なくとも一部を示すという条件で、用いることができる。例えば、類似体は、部位特異的変異導入又は他の遺伝子工学的手法によって改変された遺伝子を発現することによって調製することができる。
【0035】
本発明を用いて送達する抗凝血物質の例には、ワルファリン、ヘパリン及びヒルジンなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明を用いて送達する、免疫系に作用する因子の例には、走化性ペプチド及びブラジキニンなど、炎症及び悪性新生物を制御する因子、並びに伝染性微生物を攻撃する因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
ウイルス抗原の例には、例えば、レトロウイルス(retroviral)抗原、すなわち、gag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素及び他のHIV成分などのヒト免疫不全症ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)抗原に由来するレトロウイルス抗原など;肝炎ウイルス(hepatitis viral)抗原、すなわち、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)のS、M及びLタンパク質、B型肝炎ウイルス並びに他の肝炎、例えば、A型、B型及びC型肝炎のプレS抗原、C型肝炎のウイルスRNAなどのウイルス成分など;インフルエンザウイルス(influenza viral)抗原、すなわち、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ及び他のインフルエンザウイルス成分など;麻疹ウイルス(measles viral)抗原、すなわち、麻疹ウイルス融合タンパク質及び他の麻疹ウイルス成分など;風疹(rubella)ウイルス抗原、すなわち、タンパク質E1及びE2並びに他の風疹ウイルス成分など;ロタウイルス(rotaviral)抗原、すなわち、VP7sc及び他のロタウイルス成分など;サイトメガロウイルス(cytomegaloviral)抗原、すなわち、エンベロープ糖タンパク質B及び他のサイトメガロウイルス抗原成分など;呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial viral)抗原、すなわち、RSV融合タンパク質、M2タンパク質及び他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分など;単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral)抗原、すなわち、前初期タンパク質、糖タンパク質D及び他の単純ヘルペスウイルス抗原成分など;水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster viral)抗原、すなわち、gpI、gpII及び他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分など;日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis viral)抗原、タンパク質E、M−E、M−E−NS1、NS1、NS1−NS2A、80%E及び他の日本脳炎ウイルス抗原成分など;並びに狂犬病ウイルス抗原(rabies viral)、すなわち、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質及び他の狂犬病ウイルス抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。ウイルス抗原の追加の例については、Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991)を参照されたい。
【0037】
本発明のrAb−DC/DC抗原ワクチンを用いて送達できる抗原性の標的には、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原又は寄生虫抗原などの抗原をコードする遺伝子が含まれる。ウイルスには、ピコルナウイルス(picornavirus)、コロナウイルス(coronavirus)、トガウイルス(togavirus)、フラビウイルス(flavirvirus)、ラブドウイルス(rhabdovirus)、パラミクソウイルス(paramyxovirus)、オルソミクソウイルス(orthomyxovirus)、ブニアウイルス(bunyavirus)、アレナウイルス(arenavirus)、レオウイルス(reovirus)、レトロウイルス(retrovirus)、パピローマウイルス(papilomavirus)、パルボウイルス(parvovirus)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、ポックスウイルス(poxvirus)、ヘパドナウイルス(hepadnavirus)及び海綿状ウイルス(spongiform virus)が含まれる。他のウイルス性の標的には、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス1及び2、麻疹、デング熱(dengue)、痘瘡(smallpox)、小児マヒ(polio)又はHIVが含まれる。病原体には、トリパノソーマ(trypanosome)、条虫(tapeworm)、回虫(roundworm)、蠕虫(helminthes)及びマラリア原虫(malaria)が含まれる。この方法で、胎児性抗原又は前立腺特異抗原などの癌マーカーをターゲティングできる。他の例には、HIV envタンパク質及びB型肝炎表面抗原が含まれる。ワクチン接種を目的とした、本発明によるベクターの投与は、強い免疫応答が望まれる導入遺伝子の長期的発現を可能にするために、ベクター随伴抗原が十分に非免疫原性であることが必要となる。場合によっては、個体のワクチン接種を、年に1回又は2年に1回など、まれに行うのみでよく、かつ感染性病原体に対して長期の免疫学的防御を提供しうる。本発明と共に、ベクターで、そして最終的には抗原として使用するための生物、アレルゲン、核酸配列及びアミノ酸配列の特定の例は、参照により関連部分が本明細書に組み込まれている、米国特許第6541011号明細書、とりわけ、本発明と共に用いることができる生物と特定の配列とを照らし合わせる表に見出すことができる。
【0038】
本明細書で開示するrAbワクチンと共に使用するための細菌抗原には、例えば、百日咳(pertussis)細菌抗原、すなわち、百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、ペルタクチン、FIM2、FIM3、アデニル酸シクラーゼ及び他の百日咳細菌抗原成分など;ジフテリア(diptheria)細菌抗原、すなわち、ジフテリア毒素又はトキソイド、及び他のジフテリア細菌抗原成分など;破傷風(tetanus)細菌抗原、破傷風毒素又はトキソイド、及び他の破傷風細菌抗原成分など;レンサ球菌(streptococcal)細菌抗原、すなわち、Mタンパク質及び他のレンサ球菌細菌性抗原成分など;グラム陰性桿菌(gram-negative bacilli)細菌抗原、すなわち、リポ多糖及び他のグラム陰性細菌抗原成分など;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)細菌抗原、すなわち、ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A及び他のミコバクテリア(mycobacterial)抗原成分など;ピロリ菌(Helicobacter pylori)細菌抗原成分;肺炎球菌(pneumococcal)細菌抗原、すなわち、ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖及び他の肺炎球菌細菌抗原成分など;インフルエンザ菌(haemophilus influenza)細菌抗原、すなわち、莢膜多糖及び他のインフルエンザ菌細菌抗原成分など;炭疸(anthrax)細菌抗原、すなわち、炭疸菌防御抗原及び他の炭疸細菌抗原成分など;並びにリケッチア(rickettsiae)細菌抗原、すなわち、rompA及び他のリケッチア細菌抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。他のどんな細菌抗原、ミコバクテリア抗原、マイコプラズマ抗原、リッケチア抗原又はクラミジア抗原も、本明細書に記載の細菌抗原に含まれる。インフルエンザ菌、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、髄膜炎菌(neisseria meningitidis)、肺炎レンサ球菌(streptococcus pneumoniae)、淋菌(neisseria gonorrhoeae)、サルモネラ血清型チフス菌(salmonella serotype typhi)、赤痢菌(shigella)、コレラ菌(vibrio cholerae)、デング熱、脳炎(Encephalitides)、日本脳炎、ライム病(lyme disease)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ウエストナイルウイルス(west nile virus)、黄熱(yellow fever)、野兎病(tularemia)、肝炎(ウイルス性、細菌性)、RSV(呼吸器合胞体ウイルス、respiratory syncytial virus)、HPIV1及びHPIV3、アデノウイルス(adenovirus)、天然痘(small pox)、アレルギー並びに癌も、部分的又は全体的な病原体となりうる。
【0039】
本発明の組成物及び方法と共に使用するための真菌抗原には、例えば、カンジダ菌(candida)真菌抗原成分;ヒストプラスマ(histoplasma)真菌抗原、すなわち、熱ショックタンパク質60(HSP60)及び他のヒストプラスマ真菌抗原成分など;クリプトコッカス(cryptococcal)真菌抗原、すなわち、莢膜多糖及び他のクリプトコッカス真菌抗原成分など;コクシジオイデス(coccidiodes)真菌抗原、すなわち、球状体抗原及び他のコクシジオイデス菌抗原成分など;並びに白癬(tinea)真菌抗原、すなわち、白癬菌ワクチン及び他の白癬真菌抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
原生動物抗原及び他の寄生虫抗原の例には、例えば、熱帯熱マラリア原虫抗原、すなわち、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液段階抗原pf155/RESA及び他のマラリア原虫抗原成分など;トキソプラズマ(toxoplasma)抗原、すなわち、SAG−1、p30及び他のトキソプラズマ抗原成分など;住血吸虫(schistosomae)抗原、すなわち、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシン及び他の住血吸虫抗原成分など;森林型熱帯リーシュマニア(leishmania major)及び他のリーシュマニア抗原、すなわち、gp63、リポホスホグリカン及びその関連タンパク質、並びに他のリーシュマニア抗原成分など;並びにクルーズトリパノソーマ(trypanosoma cruzi)抗原、すなわち、75〜77kDa抗原、56kDa抗原及び他のトリパノソーマ抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のrAbを用いてターゲティングすることができる抗原は、通常、内部移行の可能性、免疫細胞特異性のレベル、標的免疫細胞、免疫細胞の成熟及び/又は活性化のレベルなどを含めた多くの因子に基づいて選択される。限定されるものではないが、樹状細胞の細胞表面マーカーの例には、MHCクラスI、MHCクラスII、B7−2、CD18、CD29、CD31、CD43、CD44、CD45、CD54、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR及び/又はASPGRなどが含まれ、場合によっては、CD2、CD3、CD4、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD56及び/又はCD57の不在も有する。抗原提示細胞の細胞表面マーカーの例には、MHCクラスI、MHCクラスII、CD40、CD45、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1並びに/又はFcγ受容体が含まれるが、これらに限定されない。T細胞の細胞表面マーカーの例には、CD3、CD4、CD8、CD14、CD20、CD11b、CD16、CD45及びHLA−DRが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
送達用の、細胞表面にある標的抗原には、典型的には腫瘍組織の細胞の細胞表面、細胞質、核及び細胞小器官などに由来する腫瘍抗原に特徴的なものが含まれる。本発明の抗体部分への腫瘍標的の例には、血液癌、すなわち、白血病及びリンパ腫など、神経腫瘍、すなわち、星状細胞腫又はグリア芽腫など、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、消化管腫瘍、すなわち、胃癌又は大腸癌など、肝臓癌、膵臓癌、泌尿生殖器腫瘍、すなわち、頚部癌、子宮癌、卵巣癌、腟癌、精巣癌、前立腺癌又は陰茎癌、骨腫瘍、血管腫瘍、又は口唇、鼻咽頭、咽頭部及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆管、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び神経系の他の部分並びに甲状腺の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫並びに白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明を用いた抗原提示のために、単独で、又は組合せて、免疫細胞に送達できる抗原の例には、腫瘍タンパク質、例えば、変異導入された発癌遺伝子、腫瘍関連のウイルスタンパク質並びに腫瘍ムチン及び糖脂質が含まれる。腫瘍関連のウイルスタンパク質でありうる抗原は、上述のウイルスのクラスに由来するものとなる。特定の抗原は、腫瘍に特徴的なものでありえ(サブセットの1つは、通常は腫瘍前駆細胞によって発現されないタンパク質である)、又は、通常は腫瘍前駆細胞で発現されるが、腫瘍の変異特性を有するタンパク質でありうる。他の抗原には、活性又は細胞内分布が改変されている正常タンパク質の変異変種、例えば、腫瘍抗原を生み出す遺伝子変異が含まれる。
【0044】
腫瘍抗原の非限定的な特定の例には、CEA、前立腺特異的抗原(PSA,prostate specific antigen)、HER−2/neu、BAGE、GAGE、MAGE1〜4、6及び12、MUC(ムチン、Mucin)(例えば、MUC−1、MUC−2など)、GM2及びGD2ガングリオシド、ras、myc、チロシナーゼ、MART(黒色腫抗原)、Pmel17(gp100)、GnT−VイントロンV配列(N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺Ca psm、PRAME(黒色腫抗原)、β−カテニン、MUM−1−B(黒色腫偏在性変異遺伝子産物、melanoma ubiquitous mutated gene product)、GAGE(黒色腫抗原)1、BAGE(黒色腫抗原)2〜10、c−ERB2(Her2/neu)、EBNA(エプスタイン−バーウイルス核抗原、Epstein-Barr Virus nuclear antigen)1〜6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV,human papilloma virus)E6及びE7、p53、肺耐性タンパク質(LRP,lung resistance protein)、Bcl−2並びにKi−67が含まれる。加えて、上記免疫原性分子は、自己免疫疾患の開始及び/又は伝搬に関与する自己抗原でありえ、この自己免疫疾患の病態は、例えばSLE又はMGのように、大部分、関連する標的器管、組織又は細胞によって発現された分子に特異的な抗体の活性に起因する。そのような疾患では、関連した自己抗原に対する、進行中の抗体媒介性(すなわち、Th2型)免疫応答を、細胞性(すなわち、Th1型)の免疫応答へと誘導することが望ましい場合がある。別法では、関連する自己免疫疾患を有してはいないが、罹患しやすいことが疑われている対象体内の自己抗原に対するTh2応答の開始を、適切な自己抗原に対するTh1応答を予防的に誘導することによって、防止するか、又はそのレベルを低減することが望ましい場合がある。所望の自己抗原には、(a)SLEに関しては、Smith抗原、RNP(リボ核タンパク質、ribonucleoprotein)、SS−A及びSS−Bタンパク質が含まれ、(b)MGに関しては、アセチルコリン受容体が含まれるが、これらに限定されない。1又は複数のタイプの自己免疫応答に関与するその他の種々な抗原の例には、例えば、内因性ホルモン、すなわち、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、テストステロン、成長ホルモン、プロラクチン及び他のホルモンなどが含まれる。
【0045】
自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶に関与する抗原を、本発明の組成物及び方法で用いることができる。例えば、以下の自己免疫疾患又は障害、すなわち、糖尿病、真性糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎が含まれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎が含まれる)、乾癬、シェーグレン症候群によって続発する乾性角結膜炎を含めたシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷反応によるアレルギー反応、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、腟炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病境界反応、結節性紅斑癩、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スチーブンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎及び間質性肺線維症のうちのいずれか1又は複数に関与する抗原を、本発明で用いることができる。自己免疫疾患に関与する抗原の例には、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65,glutamic acid decarboxylase 65)、天然DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、チログロブリン及び甲状腺刺激ホルモン(TSH,thyroid stimulating hormone)受容体が含まれる。アレルギーに関与する抗原の例には、花粉抗原、すなわち、スギ花粉抗原、ブタ草花粉抗原及びライ麦花粉抗原など、動物由来の抗原、すなわち、塵ダニ抗原及びネコ抗原など、組織適合性抗原、並びにペニシリン及び他の治療薬が含まれる。移植拒絶に関与する抗原の例には、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓及び神経移植片成分など、移植受容動物体内に移植される移植片の抗原成分が含まれる。抗原は、自己免疫疾患を治療するのに有用な改変ペプチドリガンドでもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、病原体DNA又はRNAによってコードされている多くの病原体ポリペプチドのいずれかの中に位置するエピトープに類似した一次構造、二次構造又は三次構造を含有するペプチド又はタンパク質抗原を指す。類似性のレベルは、通常、そのようなポリペプチドに対するモノクローナル又はポリクロナール抗体が、そのペプチド抗原又はタンパク質抗原にも結合若しくは反応するか、又はそれ以外の方法でそれも認識する程度となる。そのような抗体と併用して、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA及びRIAなど、様々な免疫検定法が利用でき、それらの方法はすべて当業者には公知である。ワクチンでの使用に適した病原体エピトープ及び/又はそれらの機能的等価物の同定は、本発明の一部である。単離及び同定された後、容易に機能的等価物を得ることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4554101号明細書に教示されているHoppの方法を利用することができる。米国特許第4554101号明細書は、親水性に基づいた、アミノ酸配列からのエピトープの同定及び調製を教示する。他のいくつかの文書にも記載されている方法、及びそれらに基づいたソフトウェアプログラムも、エピトープコア配列を同定するのに使用できる(例えば、Jameson and Wolf, 1988、Wolf et al., 1988、米国特許第4554101号明細書を参照)。これらの「エピトープコア配列」のアミノ酸配列は、その後、ペプチド合成又は組換え技法のいずれかの適用を介して、容易にペプチドに組み入れることができる。
【0047】
活性成分として、本発明の抗原をコードする核酸を含有しているワクチン組成物の調製物は、液体溶液又は懸濁液として、注射剤として調製することができ、また、感染の前に液体に入れて溶液又は懸濁液にするのに適した固体形態も調製することができる。この調製物は、乳化されて、リポソーム内に封入されたものでよい。活性免疫原性成分は、しばしば担体と混合され、この担体は、薬学的に許容され、活性成分との適合性を有するものである。
【0048】
「薬学的に許容される担体」という用語は、それが投与される対象の体内でアレルギー反応又は他の有害反応を引き起こさない担体を指す。適した、薬学的に許容される担体には、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、及びこれらの組合せのうちの1又は複数が含まれる。加えて、望ましい場合には、ワクチンは、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの有効性を増強するアジュバントなど、微量の佐剤を含有しうる。有効でありうるアジュバントの例には、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP,N-acetyl-muramyl-L-threonyl-D-isoglutamine)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、MTP−PE及びRIBIが含まれるが、これらに限定されない。RIBIは、細菌から抽出された3つの成分、すなわち、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコール酸及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween 80エマルジョン中に含有している。アジュバントの他の例には、DDA(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、dimethyl dioctadecyl ammonium bromide)、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント、並びにQuilAが含まれる。加えて、リンフォカイン(例えば、IFN−γ、IL−2及びIL−12)又はポリI:Cなどの合成IFN−γ誘導因子などの免疫調節物質も、本明細書に記載のアジュバントと併用できる。
【0049】
本発明に記載の医薬製品は、血清リポタンパク質表面に存在するアポリポタンパク質の特異的DNA結合部位に結合する単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を有する裸のポリヌクレオチドを含有しうる。このポリヌクレオチドは、生理活性ペプチド、アンチセンスRNA又はリボザイムをコードするものでよく、生理的に許容される投与可能な形態で用意されるであろう。本発明から生じうる別の医薬製品は、本明細書に記載の方法によって患者血液又は他の取得源から単離された高度に精製された血漿リポタンパク質画分と、血清リポタンパク質表面に存在するアポリポタンパク質の特異的DNA結合部位に結合する単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有する、上記精製リポタンパク質画分に予め結合された生理的に許容される投与可能形態のポリヌクレオチドとを含有しうる。
【0050】
さらに別の医薬製品は、生理的に許容される投与可能形態の、単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドに予め結合された、単コピー又は多コピーの特異的DNA結合モチーフを含有する組換えアポリポタンパク質断片を含有する高度に精製された血漿リポタンパク質画分を含有しうる。さらに別の医薬製品は、生理的に許容される投与可能形態の、単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドに予め結合された、単コピー又は多コピーの特異的DNA結合モチーフを含有する組換えアポリポタンパク質断片を含有する高度に精製された血漿リポタンパク質画分を含有しうる。
【0051】
投与するべき用量は、治療される対象の体重及び身体状態、並びに治療の投与経路及び頻度に大きく依存している。高度に精製されたリポタンパク質画分に予め結合された裸のポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、ポリヌクレオチド1μg〜1mg及びタンパク質1μg〜100mgの範囲にある量で投与できる。
【0052】
rAb及びrAb複合体の投与では、患者は、もしあればベクターの毒性を考慮に入れて、化学療法剤を投与するための一般的プロトコールに従う。治療サイクルは、必要に応じて繰り返されることが予測される。記載の遺伝子療法と組合せて、様々な標準的治療及び外科的介入を適用できることも企図されている。
【0053】
遺伝子療法の臨床適用が企図されている場合、複合体を、意図されている適用に適した医薬組成物として調製することが必要となる。通常これは、発熱因子、及びヒト又は動物に有害でありうるどんな他の不純物も本質的に含まない医薬組成物を調製することが必要となる。通常、複合体に安定性を与え、かつ標的細胞による複合体の摂取を可能にするために、適切な塩及び緩衝剤を用いることも望まれる。
【0054】
本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体又は水溶媒中に溶解又は分散された、有効量の化合物を含有しうる。そのような組成物は、接種材料と呼ぶこともできる。医薬活性物質用のそのような媒体及び作用物質の使用は、当技術分野でよく知られている。どんな従来の媒体又は作用物質も、それが活性成分と不適合でない限り、治療組成物中でのその使用が企図されている。栄養補助活性成分も組成物に組み込むことができる。本発明の組成物は、古典的な製剤も含有しうる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中、並びに油中にデイスパージョンを調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。
【0055】
疾患状態。最大(又は場合によっては最小)の免疫応答を得るための部位への抗原の送達を最大にするために、治療するべき特定の疾患に応じて、本発明による治療組成物の投与は、その経路を介して標的組織に到達可能である限り、任意の一般的な経路を介したものとなる。投与は、通常、正所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射となる。送達するための他の領域には、経口、鼻腔、頬側、直腸、腟又は局所が含まれる。局所投与は、皮膚癌の治療にとりわけ有利となる。そのような組成物は、通常、生理的に許容される担体、緩衝剤又は他の賦形剤を含有する薬学的に許容される組成物として投与される。
【0056】
本発明のワクチン又は治療組成物は、注射によって、非経口的に、例えば皮下又は筋肉内に投与できる。投与の他の方法に適した別の製剤には、坐剤が含まれ、場合によっては、経口製剤又はエアゾールとして供与するのに適した製剤が含まれる。経口製剤の場合、アジュバントを利用したT細胞サブセットの操作、抗原パッケージング、又は様々な製剤への個々のサイトカインの添加によって、最適化された免疫応答を伴った、経口ワクチンの改善がもたらされる。坐剤用には、伝統的な結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含有しうる。そのような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含有する混合物から生成することができる。経口製剤は、通常使用される賦形剤、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムなどを含有する。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤又は粉末薬の形態を取って、10%〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有しうる。
【0057】
本発明の抗原をコードする核酸は、中性形態又は塩形態で、ワクチン又は治療組成物中に処方することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(そのペプチドの遊離アミノ基で形成される)が含まれ、それらは、無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸など、又は有機酸、すなわち酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマレイン酸などで形成される。遊離カルボキシル基で形成された塩も、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は鉄(III)など、並びに有機塩基、すなわちイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン及びプロカインなどから得ることができる。
【0058】
ワクチン又は治療組成物は、投与剤形と適合した方法並びに予防上及び/又は治療上有効となる量で投与する。投与するべき量は、治療される対象に依存し、これには、例えば、対象の免疫系が抗体を合成する能力、及び望ましい防御又は治療の程度が含まれる。適した用量範囲は、約1mg〜300mgの範囲及び好ましくは約10mg〜50mgの範囲など、約0.1mg〜1000mgの範囲のワクチン接種1回あたり、活性成分数百マイクログラムの桁のものである。初期投与及び追加免疫注射に適した投与計画も可変的であるが、典型的には、初期投与の後に後続の接種を行うもの、又は他の投与を行うものである。投与するのに必要な活性成分の正確な量は、開業医の判断により、対象それぞれに特有でありうる。本発明の核酸分子又は融合ポリペプチドの治療有効量が、とりわけ、投与スケジュール、投与される抗原の最小投薬単位、核酸分子又は融合ポリペプチドが他の治療薬と併用投与されるかどうか、受容者の免疫状態及び健康、並びに特定の核酸分子又は融合ポリペプチドの治療活性によって決まることは、当業者には明らかであろう。
【0059】
組成物は、単回投与スケジュールで投与することも、反復投与スケジュールで投与することもできる。反復投与スケジュールは、ワクチン接種の初期コースが、例えば1〜10回の別々の投与を含みうる投与スケジュールであって、その後、その免疫応答を維持及び/又は補強するのに必要な後続の時間間隔で、例えば次の投与まで1〜4カ月で、他の投与が行われ、そして、必要ならば、それに続く投与が数カ月後に行われる投与スケジュールである。防御免疫の望ましいレベルを維持するためには、1〜5年、通常3年間隔の周期的な追加免疫が望ましい。免疫処置コースの後に、ESAT6又はST−CFと共培養された末梢血液リンパ球(PBL、peripheral blood lymphocyte)のインビトロ増殖アッセイ、及び初プライミングされたリンパ球から放出されたIFN−γのレベルの測定を行うことができる。これらのアッセイは、放射性ヌクレオチド、酵素及び蛍光標識など、従来の標識を用いて実施できる。これらの技法は当業者に知られており、参照により関連の部分が本明細書に組み込まれている米国特許第3791932号、第4174384号及び第3949064号明細書に見出すことができる。
【0060】
モジュールrAb担体及び/又は結合rAb担体−(コヒーシン/ドックリン及び/又はドックリン−コヒーシン)−抗原複合体(rAb−DC/DC−抗原ワクチン)は、核酸ベクターが使用されるかどうか、又は最終精製タンパク質若しくは最終ワクチン形態が使用されるかどうかに応じて、1又は複数の「最小投薬単位」で与えることができる。最小投薬単位は、その投与、すなわち適切な経路及び治療実施計画に伴って望ましい応答を産生すると計算された所定の量の治療組成物を含有するものとして定義されている。投与するべき量、並びに特定の経路及び剤形は、臨床分野の当業者の技術に包含される。治療するべき対象、とりわけ対象の免疫系の状態及び望ましい防御についても評価することができる。最小投薬単位は、単回の注射で投与する必要はなく、それには、一定の時間にわたる持続注入も含まれうる。本発明の最小投薬単位は、DNA/kg(又はタンパク質/kg)体重によって、好都合に表記されうるものであり、約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.5、1、10、50、100、1000mg又は1000mg超DNA又はタンパク質/kg体重の間の範囲が投与される。同様に、送達されるrAb−DC/DC−抗原ワクチンの量は約0.2〜約8.0mg/kg体重の範囲で変動しうる。したがって、特定の実施形態では、0.4mg、0.5mg、0.8mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg及び7.5mgのワクチンをインビボで個体に送達できる。投与するべきrAb−DC/DC−抗原ワクチンの用量は、治療される対象の体重及び身体状態、並びに投与経路及び治療の頻度に大きく依存している。リポソーム送達ベクター又はウイルス性送達ベクターに予め結合された裸のポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、1μg〜1mgポリヌクレオチド又は1μg〜100mgタンパク質の範囲の量で投与できる。したがって、特定の組成物は、1μg、5μg、10μg、20μg、3.0μg、40μg50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgのベクターに独立に結合した、約1μg、5μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μgの間のポリヌクレオチド又はタンパク質を含みうる。
【0061】
Flu抗原をターゲティングされた樹状細胞による、ヒトFlu特異的T細胞の免疫刺激を測定するインビトロ細胞系で本発明を試験した。ここに示す結果は、単独ではこの系で効力がない抗原用量における、そのような抗原特異的細胞の特異的な増殖を実証する。
【0062】
本発明は、モジュールrAb担体、すなわち、例えば、ヒマ毒、炭疽菌(Anthrax)毒素、及びスタフィロコッカスエンテロトキシンB由来の防御抗原と複合体形成した組換えヒト化mAb(特異的なヒト樹状細胞受容体に対するもの)を作製するのにも使用できる。この存在の潜在的市場は、すべての軍関係者のワクチン接種、及びこれらの物質に関連したどんな生体脅威(biothreat)にも反応して大規模人口密集地に投与するための予備に保存されるワクチンである。本発明は、ヒト使用及び動物使用の両方のためのワクチン一般の設計に広範な適用を有する。所望の産業には、製薬産業及びバイオテクノロジー産業が含まれる。
【0063】
一般的方法−制限酵素及びDNA修飾酵素はNEB社から入手した。プラスミド及びDNA断片の精製には、Qiagen社製の製品を用いた。SDS−PAGEは、Simply Blue(Invitrogen社製)で染色された4〜12%のBis-Trisゲルで行った。クロマトグラフィー用のカラム及び樹脂は、GE Healthcare社から入手した。プラスミドコンストラクトは、DNA配列決定(MCLAB社)によって確認した。DNAプライマーは、Operon社又はMidland Certified Reagent Company社から入手した。配列分析は、Sequencher(Gene Codes社製)で行った。ProtParamツール(2005年)によって予測された計算上の吸光係数に基づいたタンパク質濃度は、UV吸収(NanoDrop社製ND-1000)によって測定した。配列は、参照により本明細書に組み込まれている配列表の配列番号1〜39に示す。それらは、抗DCIR mAb重鎖(配列番号1〜17)及び軽鎖のシグナルペプチド及び可変領域配列(配列番号18〜39)のアラインメントである。予測されるN末端シグナルペプチド領域、変種間又は近縁配列間における配列の相違は、Sequencherを用いて決定した。
【0064】
コヒーシン−屈曲部−hMART−1−ペプチドA−6×Hisタンパク質のコヒーシンドメインへのC末端伸長部の配列。免疫優性ペプチド配列ペプチドには下線が引かれており、このペプチドの境界にある太字の残基は、抗原の天然配列である。C末端のHisタグは、Ni++アフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にする。C186 コヒーシン−屈曲部−hMART−1−ペプチドA−6×His:
ASDTTEARHPPVTTPTTDRRKGTTAEELAGIGILTVILGGKRTNNSTPTKGEFCRYPSHWRPLEHHHHHH(配列番号40)。
【0065】
抗原発現コンストラクト−PCRを用いて、インフルエンザA/Puerto Rico/8/34/Mount Sinai (H1N1)のM1タンパク質のORFを増幅し、その間に、開始コドンの遠位に位置するNhe I部位と、終止コドンの遠位に位置するNot I部位とを組み込んだ。消化断片をpET-28b(+)(Novagen社製)にクローニングし、M1 ORFをHis6タグとインフレームになるように挿入して、それによって、His.Flu M1タンパク質をコードするようにした。N末端のプロテインG前駆体B2ドメイン残基298〜352(gi|124267|)をNco I部位の遠位にコードし、その後に、GGSGGSGGSLD(配列番号41)をコードするリンカー残基を有する類似のベクターにFlu M1 ORFを挿入した。このベクターは、Q246E変化を有するProG.Flu M1タンパク質を発現した。Nco I部位とNhe I部位との間に挿入された、クロストリジウム・サーモセラム(C. thermocellum)由来のN末端169残基コヒーシンドメインをコードするpET28b(+)誘導体は、Coh.Hisを発現した。Coh.Flu M1.Hisの発現には、上記誘導体のNhe I部位とXho I部位との間にFlu M1 ORFを挿入した。Coh.PEP.His発現コンストラクトも、必要な配列をコードする合成DNAをそれらが利用していることを除いて、同様に作製した。タンパク質は、カナマイシン耐性(40μg/ml)の選択を用い、200回転/分で振盪しながら37℃で対数増殖期中期まで培養した大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)(Novagen社製)又はT7 Express(NEB社製)で、120mg/LのIPTGを添加して発現させた。3時間後に、遠心法によって細胞を採取し、−80℃で保存した。開始コドンの代わりにSal I部位を組み込み、ベクターのXho I部位に挿入するために、遠位のXho I部位を付加することによって、上述のAP融合体分泌ベクター内の外部ドメインセグメントを、ProGセグメント及びコヒーシンセグメントで置換した。「空」のAPベクターは、外部ドメインセグメントを除去することによって作製した。これらのコンストラクトは、それぞれ、ProG.AP、Coh.AP及びAPの分泌を指示した。
【0066】
組換えタンパク質の発現及び精製−プロテアーゼ阻害剤カクテルII(Calbiochem社製)0.1mlを含有する、氷冷の0.1M NaPO4 pH7.4(緩衝液A、ProG.Flu M1用)又は50mM Tris、1mM EDTA pH8.0(緩衝液B、他のすべてのタンパク質用)30mlに、各1Lの発酵物から得られた大腸菌細胞を再懸濁した。これらの細胞を、5分間の休止時間を挟んだ2×5分間、設定18で(Fisher社製Sonic Dismembrator 60)、氷上で超音波処理し、その後、17000r.p.m.(Sorvall社製SA-600)、4℃で20分間、遠心処理を行った。ProG.Flu M1を得るために、緩衝液Aで平衡化したQセファロース5ml中に上清を通し、その後、QのフロースルーにhIgGビーズ5mlを添加し、混合しながら4℃で1時間インキュベートした。ビーズに結合したタンパク質を、冷PBS 50mlで洗浄し、0.1MグリシンpH2.7 2×10mlで溶出した。プールした溶出液を、0.1M MES pH5.0緩衝液を用いてpH5にし、50mM MES pH5.0(緩衝液C)で平衡化した1ml HiTrap Sカラム内を流した。カラムに結合したタンパク質を緩衝液Cで繰り返し洗浄し、0〜1MのNaCl勾配を有する緩衝液Cで溶出した。ピーク画分をプールした。His.Flu M1を精製するために、Qセファロースビーズ5mlの中に、細胞溶解液上清画分50mlを通し、160mM Tris、40mMイミダゾール、4M NaCl pH7.9 6.25mlをQセファロースのフロースルーに添加した。これを、Ni++充填した5ml HiTrapキレート化HPカラムに4ml/分で添加した。カラムに結合したタンパク質を20mM NaPO4、300mM NaCl pH7.6(緩衝液D)で洗浄し、その後、100mM H3COONa pH4.0でもう1回洗浄した。結合したタンパク質を100mM〜1MのH3COONa勾配pH4.0で溶出した。ピーク画分をプールし、100mM H3COONa pH4.0で平衡化した5ml HiTrap Sカラムに4ml/分で添加し、平衡化緩衝液で洗浄し、その後、50mM NaPO4 pH7.5でもう1回洗浄した。結合したタンパク質を、0〜1MのNaCl勾配を有する50mM NaPO4 pH7.5で溶出した。約500mM NaClで溶出したピーク画分をプールした。His.Flu M1の調製物は、変動的な量の非完全長産物、おそらくC末端部分を欠失した産物を含有していた。Coh.Flu M1.Hisを精製するために、2Lの培養物から得られた細胞を、上述の通り、但し緩衝液B中で超音波処理した。遠心処理の後、上清にTriton X114 2.5mlを添加し、氷上で5分間インキュベートした。25℃でさらに5分間インキュベートした後、25℃で遠心処理して、上清をTriton X114から分離した。この抽出を繰り返し、Qセファロースビーズ5mlの中に上清を通し、160mM Tris、40mMイミダゾール、4M NaCl pH7.9 6.25mlをQセファロースのフロースルーに添加した。その後、Ni++キレート化クロマトグラフィーによって上述の通りタンパク質を精製し、0〜500mMイミダゾールを有する緩衝液Dで溶出した。
【0067】
マウス/ヒトキメラmAbのcDNAクローニング及び発現−全RNAをハイブリドーマ細胞から調製し(RNeasyキット、Qiagen社製)、供給された5’プライマー及び遺伝子特異的な3’プライマー、すなわち、
mIgGκ、5’ggatggtgggaagatggatacagttggtgcagcatc3’;(配列番号42)
mIgGλ、5’ctaggaacagtcagcacgggacaaactcttctccacagtgtgaccttc3’;(配列番号43)
mIgG1、5’gtcactggctcagggaaatagcccttgaccaggcatc3’;(配列番号44)
mIgG2a、5’ccaggcatcctagagtcaccgaggagccagt3’;(配列番号45)
及びmIgG2b、5’ggtgctggaggggacagtcactgagctgctcatagtgt3’(配列番号46)
を用いたcDNA合成及びPCR(SMART RACEキット、BD Biosciences社製)に用いた。PCR産物をクローニングし(pCR2.1 TAキット、Invitrogen社製)、DNA配列決定によって特徴付けした。得られた、マウスH鎖及びL鎖のV領域cDNAの配列を用い、特異的プライマーを使用して、シグナルペプチド及びV領域をPCR増幅し、その間、下流のヒトIgGκ領域又はIgG4H領域をコードする発現ベクター内にクローニング用の隣接制限部位を組み込んだ。Xho I部位及びNot I部位によって挟まれた残基401〜731(gi|63101937|)を増幅し、これをpIRES2-DsRed2(BD Biosciences社製)のXho I〜Not Iの間に挿入することによって、キメラmvκ−hIgκを発現するためのベクターを構築した。PCRを用いて、Nhe I部位又はSpe I部位、その後CACCを追加した開始コドンから、Xho I部位を追加したコード領域(例えばgi|76779294|の残基126)までmAb Vk領域を増幅した。その後、このPCR断片を上記ベクターのNhe I〜Not Iの間にクローニングした。κmSLAMリーダーを用いたキメラmvκ−hIg用のベクターは、5’ctagttgctggctaatggaccccaaaggctccctttcctggagaatacttctgtttctctccctggcttttgagttgtcgtacggattaattaagggcccactcgag3’(配列番号47)という配列を、上記ベクターのNhe I〜Xho I間に挿入することによって構築した。PCRを用いて、予測されていた成熟型のN末端コドン(SignalP 3.0 Serverサーバを用いて定義された)(Bendtsen, J. D., H. Nielsen, et al. (2004). "Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0." J Mol Biol 340(4): 783-95.)と、mVκ領域の終端(上記の定義の通り)との間を、5’tcgtacgga3’を追加しながら増幅した。Bsi WI及びXho Iで消化した断片を、上記ベクターの対応する部位に挿入した。対照hIgκ配列は、gi|49257887|の残基26〜85及びgi|21669402|の残基67〜709に対応している。対照hIgG4Hベクターは、S229P及びL236E置換を有する、gi|19684072|の残基12〜1473がpIRES2-DsRed2ベクターのBgl II部位〜Not I部位間に挿入され、終止コドンの代わりに配列5’gctagctgattaattaa3’が追加されたものに対応する。これらの置換は、ジスルフィド結合を安定させ、残留FcR結合を消失させる(Reddy, M. P., C. A. Kinney, et al. (2000). "Elimination of Fc receptor-dependent effector functions of a modified IgG4 monoclonal antibody to human CD4." J Immunol 164(4): 1925-33.)。PCRを用いて、CACCと、その後Bgl II部位とを追加した開始コドンから、gi|19684072|の残基473をコードする領域まで、mAb VH領域を増幅した。その後、このPCR断片を上記ベクターのBgl II〜Apa I間にクローニングした。mSLAMリーダーを用いたキメラmVH−hIgG4配列用のベクターは、5’ctagttgctggctaatggaccccaaaggctccctttcctggagaatacttctgtttctctccctggcttttgagttgtcgtacggattaattaagggccc3’(配列番号48)という配列を、上記ベクターのBgl II〜Apa I間に挿入することによって構築した。PCRを用いて、予測されていた成熟型N末端コドンとmVκ領域の終端との間を、5’tcgtacgga3’を追加して増幅した。Bsi WI及びApa Iで消化された断片を上記ベクターの対応する部位に挿入した。
【0068】
近位のNhe I部位と、終止コドンに続く遠位のNot I部位とによって挟まれた様々な抗原コード配列を、H鎖ベクターのNhe I〜Pac I〜Not I間に挿入した。Flu HA1−1は、近位の5’gctagcgatacaacagaacctgcaacacctacaacacctgtaacaa3’(配列番号49)配列(Nhe I部位と、それに続くcipAコヒーシン−コヒーシンリンカー残基とコードする配列)と、遠位の5’caccatcaccatcaccattgagcggccgc3’(配列番号50)配列(His6、終止コドン及びNot I部位をコードしている)とを伴った、インフルエンザA型ウイルス(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))の赤血球凝集素gi|21693168|残基82〜1025(C982T変化を有する)によってコードされていた。Flu HA5−1は、Flu HA1−1と同じ配列が結合した、gi|50296052|インフルエンザAウイルス(A/Viet Nam/1203/2004(H5N1))赤血球凝集素残基49〜990によってコードされていた。Docは、近位のNhe I及び遠位のNot I部位を伴ったgi|40671|celD残基1923〜2150によってコードされていた。PSAは、5’gctagcgatacaacagaacctgcaacacctacaacacctgtaacaacaccgacaacaacacttctagcgc3’(配列番号51)(Nhe I部位及びcipAスペーサー)という近位配列と、遠位のNot I部位とを伴った、gi|34784812|前立腺特異抗原残基101〜832によってコードされていた。Flu M1−PEPは、5’gctagccccattctgagccccctgaccaaaggcattctgggctttgtgtttaccctgaccgtgcccagcgaacgcaagggtatacttggattcgttttcacacttacttaagcggccgc3’(配列番号52)によってコードされていた。これも、他のすべてのペプチドをコードする配列も、Nhe I及びNot I制限H鎖ベクター又はNhe I - Xho I制限Coh.Hisベクターへのクローニングに適合した末端を有する相補的な合成DNA断片の混合物を介して生成された。制限部位を組み込む必要がある場合、又はCipAスペーサー配列中を除いて、好ましいヒトコドンを常に使用した。
【0069】
rAb発現コンストラクトの産生レベルは、それぞれ約2.5μgのL鎖コンストラクト及びH鎖コンストラクトと、上述のプロトコールとを用いた5ml一時的形質移入で試験した。上清は、抗hIgG ELISA(AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)、Jackson ImmunoResearch社製)によって分析した。このプロトコールの試験では、分泌されたrAbの産生は、各DNA濃度の約2倍の範囲にわたって、H鎖ベクター及びL鎖ベクター濃度に非依存的であった(すなわち、この系はDNA飽和していた)。
【0070】
CD34−DCの生成−CD34+HPCを動員し、10U/kg/日の組換えG−CSF(Neupogen(登録商標))を5日間皮下投与された正常な健常ドナーの末梢血を採取した。CD34+−HPCは、CEPRATE SC幹細胞濃縮システム(ISOLEX)を用いて取得した。CD34−DCは、5%自己血清、50μM 2−βメルカプトエタノール、1%L−グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、並びにサイトカイン、すなわちGM−CSF(50ng/ml;Immunex Corp.社製)、FLT3−L(100ng/ml;R&D社製)及びTNF−α(10ng/ml;R&D社製)を補充したYssel培地(米国カリフォルニア州所在Irvine Scientific社製)中で0.5×106/mlの密度で培養することによって生成した。培養5日目に、サイトカインを補充した新鮮な培地に細胞を移し、9日目に採取した。
【0071】
CD34−DCの選別−培養9日目に、CD34由来のDCを採取し、抗CD1a FITC(Biosource International社製)及び抗CD14PE(BD Biosciences社製)で染色した。FACS Vantage(商標)(BD Biosciences社製)で、CD1a+CD14−−LC及びCD1a−CD14+−intDCを選別した。純度は、常に95〜99%であった。
【0072】
自己CD8+T細胞の精製−自己CD8+T細胞は、CD14、CD19、CD16、CD56及びCD4ビーズを用いて枯渇させた後に、CD8磁性ビーズ(Miltenyi社製)を用いて同一ドナーから得られたPBMCからの正の選択によって得た。一部の実験では、メモリーCD8+T細胞をCD8+CCR7−CD45RA−として選別した。
【0073】
CD34−DCサブセットによる、CD8+T細胞への、Flu M1タンパク質のクロスプレゼンテーション−HLA−A2ドナーから得た未選別又は選別済のCD34+DCサブセット、CD1a+LC又はCD14+IntDC(5×104細胞/ml)を、10%の熱不活性化ヒトAB型プール血清と、10U/ml IL−7(R&D社製)と、漸減用量の、抗DC抗体に架橋結合されたFlu M1とを補充したYssel培地中で、精製された自己CD8+T細胞(1×106細胞/ml)と共に培養した。CD40Lは24時間後に培養物に添加し、IL−2は3日後に添加した。クロスプレゼンテーション効率は、特異的なFlu M1、HLA−A201/pMI、フィコエリトリン結合iTAg MHC四量体(Beckman Coulter社製)を用いて、抗原特異的CD8+T細胞の増殖のレベルを分析することによって、8日後又は10日後に評価した。
【0074】
抗ヒトDCIRモノクローナル抗体の開発−それぞれマウスの免疫化及びmAbのスクリーニングのために、受容体外部ドメイン.hIgG(ヒトIgG1Fc)融合タンパク質及びHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ、horse radish peroxidase)融合タンパク質を産生した。hDCIR外部ドメイン.IgG用の発現コンストラクトは、以前に記載されており(Bates, E. E., N. Fournier, et al. (1999). "APCs express DCIR, a novel C-type lectin surface receptor containing an immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif." J Immunol 163(4): 1973-83.)、分泌を指示するために、マウスSLAM(mSLAM)シグナルペプチドを使用する(Bendtsen, J. D., H. Nielsen, et al. (2004). "Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0." J Mol Biol 340(4): 783-95.)。近位のインフレームXho I部位と、遠位のTGA終止コドン及びNot I部位とを付加しながら、AP残基133〜1581(gb|BC009647|)を増幅するPCRを用いて、hDCIR外部ドメイン.AP用の発現ベクターを作製した。上記hDCIR外部ドメイン.IgGベクター内のIgGコード配列をこのXho I〜Not I断片で置換した。上記に定義したDCIR外部ドメインコード領域の遠位に、gi|208493|残基14〜940をクローニングすることによって、DCIR.HRP融合タンパク質ベクターを作製した。
【0075】
哺乳動物細胞から分泌された組換えタンパク質の発現及び精製−融合タンパク質は、製造業者によるプロトコール(形質移入1Lあたり総プラスミドDNA1mg及び293 Fectin試薬1.3ml)に従って、FreeStyle(商標)293発現システム(Invitrogen社製)を用いて産生した。組換え抗体(rAb)を産生するには、H鎖及びL鎖をコードする等量のベクターを同時形質移入した。形質移入細胞を3日間培養し、培養上清を採取し、新たな培地を添加して、2日間インキュベーションを続けた。プールした上清を濾過によって清澄化した。受容体外部ドメイン.hIgGを、0.1MグリシンpH2.7による溶離を用いたHiTrapプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、その後、PBSに対して透析した。rAbは、HiTrap MabSelect(商標)カラムを用いて、同様に精製した。
【0076】
モノクローナル抗体の産生−マウスmAbは従来の細胞融合技術によって産生した。簡潔には、Ribiアジュバントと共に受容体外部ドメイン.hIgGFc融合タンパク質20μgを、6週齢のBALB/cマウスに腹腔内投与して免疫処置を行い、その後、10日後及び15日後に、20μgの抗原で追加免疫を行った。3カ月後、マウスを再度追加免疫し、その3日後に脾臓を摘出した。別法として、3〜4日ごとに30〜40日間の期間にわたって、1〜10μgの抗原を含有するRibiアジュバントを足蹠でマウスに注射した。最終追加免疫の3〜4日後に、流入領域リンパ節を採取した。従来の技法(Shulman, M., C. D. Wilde, et al. (1978). "A better cell line for making hybridomas secreting specific antibodies." Nature 276(5685): 269-70.)を用いて、脾臓から得たB細胞又はリンパ節細胞をSP2/O-Ag14細胞に融合させた。ELISAを用いて、融合パートナー単独と比較して、又はAPに融合した受容体外部ドメイン(Bates, E. E., N. Fournier, et al. (1999). "APCs express DCIR, a novel C-type lectin surface receptor containing an immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif." J Immunol 163(4): 1973-83.)に対して、受容体外部ドメイン融合タンパク質に対するハイブリドーマ上清をスクリーニングした。その後、完全長受容体cDNAをコードする発現プラスミドで一時的に形質移入された293 F細胞を用いて、陽性ウェルをFACSでスクリーニングした。
【0077】
抗DCIR mAbを開発するために、1000のハイブリドーマクローンから得た上清をスクリーニングした。そのうち、
90クローンは、DCIR.Ig対Ig ELISAに関して+であった。
64クローンは、FACSによるDCIR−293細胞に関して+であった。
62のFACS+クローンは、ELISA+であった。
2クローンは293+であった(したがって、DCIRに特異的でなかった)。
【0078】
ヒトDCによるサイトカイン産生を刺激する抗DCIR mAbを得るための生物学的スクリーニング−DCターゲッティングの目的には、抗原をDCに送達し、同時にDCを活性化して、送達された抗原に対する生産的な免疫応答を刺激する抗体を有することが潜在的に望ましい。したがって、本発明者らは、62クローンのFACS陽性抗DCIRハイブリドーマ上清のパネルを、DC刺激活性に関して直接的にスクリーニングした。CD34+由来のヒトDCをハイブリドーマ上清と共に24時間培養し、24時間後に、DC培養上清をケモカインMCP−1の存在に関してアッセイした。下の図は、すべてではないが、多くのハイブリドーマ上清が、対照と比較して、MCP−1の特異的産生を誘発したことを示す。
【0079】
上の図において星印で標識されている、選択されたハイブリドーマ(すべてではないが、大部分MCP−1産生を刺激する)は、クローン化され、CELLineフラスコ(Intergra社製)内で増殖された単一細胞であった。ハイブリドーマ上清を等容積の1.5Mグリシン、3M NaCl、1×PBS、pH7.8と混合し、MabSelect樹脂と共に回転させた。樹脂を結合緩衝液で洗浄し、0.1Mグリシン、pH2.7で溶出した。2M Trisで中和させた後、mAbをPBSに対して透析した。
【0080】
純粋な抗DCIR mAbの特徴付け−純粋なmAbは、最初に、ELISA(DCIR.Igがプレートに結合しており、HRP結合抗ヒトFc試薬で発色させた)によって、そしてDCIR.HRP捕捉アッセイ(mAbがプレートに結合しており、DCIR.HRP融合タンパク質で発色させた)によって試験した。図2は、プレートに結合したDCIRとmAbの高親和性の相互作用を示す代表的なアッセイ結果を示す(結合の特異性を示す対照は示されていない)。DCIR.HRP捕捉アッセイでは、(すべてでないが)いくつかのmAbが、可溶性のDCIR.HRPをプレートの表面に捕捉することができた。これらのデータは、このパネルにおける、選択された抗DCIR mAbが様々なDCIR結合親和性及び特性を有していたことを示す。
【0081】
FACS反応性に関しても、これらの純粋なmAbを試験した。最初に、完全長DCIRをコードする発現プラスミドで一時的に形質移入された293細胞に対して試験し、その後、様々なタイプの培養ヒトDC及びエキソビボヒトDCに対して試験した。下の図は、DCIR293細胞に対するFACS分析で力価決定されたmAbの代表的なセットを示す(対照細胞は陰性であった)。
【0082】
図3は、CD14+サブタイプ及びCD1a+サブタイプ両方のCD34由来ヒトDCが細胞表面DCIRを発現することを示している。これらの2つのDCサブタイプは、液性免疫応答対、細胞溶解性免疫応答の方向付けにおいて顕著に異なった役割を有し、したがって、両方のサブタイプのDCIRが存在することは、DCIRを介してヒトDCにターゲティングされた抗原が両方のタイプの免疫を誘発することを示唆しており、これは、例えばウイルス感染に対するワクチンにおける重要な特徴となる。
【0083】
図4は、ヒト皮膚から直接単離された3種のヒトDCサブタイプでもDCIRが発現されていることを示している。これらのサブタイプのDCはすべてこの受容体を発現するので、この観察は、DCIR抗原をターゲッティングするワクチンには、皮膚内への投与が有利であるはずであることを示している。これらのサブタイプのDCは、免疫を方向付けるそれらの特性に関して、上記培養ヒトDCに類似していることが知られており、したがって、望ましい複合免疫応答を誘発するには、DCIRを有する皮膚DCを介した抗原のターゲティングが有利であるはずである。
【0084】
真皮のDC及びLCは正常ヒト皮膚標本から精製した。細菌性プロテアーゼであるジスパーゼ2型の存在下で標本を4℃で18時間インキュベートし、その後、37℃で2時間インキュベートした。その後、表皮シート及び真皮シートを分離し、切断して小片(約1〜10mm)にし、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI 1640中に入れた。2日後に、培地中に移動した細胞を収集し、1.077g/dlのフィコール−ジアトリゾ酸勾配を用いてさらに濃縮した。DCは、抗CD1a FITC及び抗CD14 APC mAbで染色した後に、細胞選別によって精製した。
【0085】
他のヒト組織におけるDCIRの存在。図5は、ヒト扁桃腺内の胚中心を囲む細胞集団のDCIR特異的染色を示す。これらの細胞は、常在DCであるか、又は最近、例えば外来抗原で負荷されて、活性化された後に、この部位に移動してきたDCのいずれかである。この染色は、免疫が引き起こされる臓器への接近を可能にする、皮膚以外の経路による、DCIRにターゲッティングされたワクチンの投与も、免疫応答を誘発するのに有利であるはずであることを示している。
【0086】
抗原をヒトDCにターゲッティングする抗DCIR mAbを使用し、製造業者によるプロトコールに従って、6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(sulfo−LC−SPDP、sulfosuccinimidyl 6-[3' (2-pyridyldithio)-propionamido] hexanoate;Pierce社製)を用いて、Flu M1タンパク質をmAbに化学的に架橋結合した。この多ステッププロトコールは、SPDPのNHSエステル基を介して、室温で30分間、mAbのアミンを修飾することによってmAbの活性化を行い、その後、PBSに対して透析を行うものである。その後、Flu M1タンパク質を添加して、室温で終夜インキュベートする。Flu M1タンパク質は、2つの遊離スルフヒドリル基を含有している。架橋結合反応の効率は、mAbと反応させる前のFlu M1タンパク質の量を、架橋結合後のmAb/Flu M1比と比較することによって見積もられた。本発明者らは、平均して50%のmAbが1分子のFlu M1と反応したと計算した。図6及び7は、架橋Flu M1タンパク質及びDCIRに対するmAbの例を示す。還元SDS−PAGEによる分析は、Flu M1/H鎖の染色の比率に基づいて、mAb 1に対して、1〜2のFlu M1を有する産物を同定した。これらの調製をインビトロ研究に用いた。非還元SDS−PAGE分析(下の2番目の図は、非常に大きな複合体の比率が低いことによって証明されるように、複合体が主としてFlu M1と単一のmAbとの間のものであったことを示している。
【0087】
図6は、抗DCIR_2C9 mAbへのCoh.Flu M1の架橋結合を示す。プロテインGセファロースアフィニティーによって精製された架橋結合産物の還元SDS−PAGE分析である。左から右へ、2.5μg、1μg Coh.Flu M1、1:1、2:1、4:1の比率でCoh.Flu M1をmAbと反応させて得られた産物10μgである。
【0088】
図7は、mAbへのHis.Flu M1の架橋結合を示す。プロテインGセファロースアフィニティーによって精製された架橋結合産物の非還元SDS−PAGE分析である。左から右へと、5μg His.Flu M1、それに続いて、5μg mAb(抗CD1a_OKT6、抗LANG_2G3、抗DCIR_2C9)と、5μg His.Flu M1と反応させた5μg mAbとの対である。
【0089】
Flu M1タンパク質に架橋結合された抗DC受容体mAbは抗原を効果的にヒトDCにターゲッティングする−抗DC受容体mAbをFlu M1タンパク質に化学的に架橋結合させ、様々な用量を、自己CD8+T細胞とのヒトCD34由来CD1a+DCの共培養物に添加した。24時間後に、DC活性化のために、CD40Lを培養物に添加し、続いて、3日目に、T細胞増殖のために、IL−2を添加した。8〜10日後に、Flu M1ペプチドであるGILGFVFTL(配列番号53)に特異的なT細胞をMHC四量体分析によって評価した。図8は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1がFlu M1特異的な細胞の増殖を誘発したが、同様な用量の非架橋Flu M1及びmAbでは、有意に少ないFlu M1特異的細胞増殖が観察されたことを示す。用量範囲は、架橋結合されたmAbが、遊離Flu M1より少なくとも50倍効果的に反応を誘発したことを示す。このデータは抗原ターゲッティング、すなわち、免疫応答の増強、この場合は特異的なFlu M1エピトープの記憶によるT細胞の復活を実証している。CD34−DCは、CD1a+LCサブセット又はCD14+IntDCサブセットに選別した。図9は、両方の細胞型でDCIR発現が同様なレベルであったのにもかかわらず、抗DCIRターゲッティングされたCD1a+LCが、Flu M1特異的CD8+細胞の増殖を方向付けるのにはるかに有効であったことを示す。
【0090】
図8は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、mAbに連結されていないFlu M1タンパク質より効率的に、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す。CD34由来のCD1a+DCを、CD8+T細胞、及び示されている濃度の、His.Flu M1に架橋結合された抗DCIR_2C9 mAb又は非連結のmAbと共にインキュベートした。その後、Flu M1特異的な増殖に関してCD8+T細胞を分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0091】
図9は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、Int−DCよりLCを介して、より効率的にFlu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す。示されている濃度の、His.Flu M1に架橋結合した抗DCIR_2C9 mAbと共に、HLA−A2ドナーから得たLC又はInt−DCと自己CD8+T細胞とを共培養した。クロスプレゼンテーション効率をFlu M1特異的CD8+T細胞の頻度によって評価し、HLA−A201/pMI四量体を用いて分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0092】
プロトタイプ抗原ターゲッティングワクチンとしての組換え抗DCIR mAb(rAb)の開発。マウスハイブリドーマでコードされているH鎖及びL鎖可変(V)領域と、ヒト免疫グロブリンκ又はヒトIgG4H定常(C)領域とのキメラである分泌性抗DC受容体rAbを、一時的に形質移入された哺乳動物細胞で発現するためのベクターを開発した。異なった特異性を有する(すなわち異なった抗DCIRハイブリドーマから得た)抗DC受容体mAbのL鎖及びH鎖からのV領域を、cDNAクローニングし、DNA配列分析によって特徴付け、これらのベクター中に工学的に作製した。図10は、293細胞に同時形質移入され、培養上清中へのrAbの分泌に関して抗ヒトFC ELISAでアッセイされた多くの異なった抗DCIR mAbに対応するマウス−ヒトキメラrAbをコードするそのようなH+L鎖ベクターを示す。
【0093】
これらの抗DCIR rAbは、rAb H鎖とインフレームになっている約9.5kDAのドックリンドメインをコードしていた。これらのドックリンドメイン(rAb.Docと呼ばれる)の目的は、特異的な[rAb.Doc:Coh.抗原]複合体の構築を可能にすることである。この場合、Coh.抗原は、約17.5kDaのコヒーシンドメインと抗原との間の融合タンパク質を指す。コヒーシンとドックリンとの間の高親和性相互作用は、受容体特異性を有するDCの表面に抗原を送達することが本発明者らによって示されている特定の複合体を組み立てるのに使用される。例えば、下の図は、ヒトDCの表面に結合した[抗DCIR.Doc:Coh.Flu M1]複合体を示す(ここでは、Coh.Flu M1がビオチン化されており、洗浄ステップの後に細胞表面で検出される)。対照rAb.Doc:Coh.Flu M1複合体(下の図では赤で示されている)は、検出用ストレプトアビジンPE試薬単独より多くは結合しなかった。
【0094】
DCIRは、抗原の内部移行の動態が遅く、これによって他のDC受容体から区別される。DC−SIGNなどのDC受容体は、内部移行の動態が迅速であることを特徴としている。例えば、図11は、抗DC−SIGN/L.Docが、アレクシア標識されたCoh.Flu M1を、GM−CSF/IFN培養されたヒトDCの中に迅速に内部移行させることを示しており、標識の大部分は、15分以内に細胞の内部に入っている。対照的に、抗DCIR.Docは、Coh.Flu M1を極めて緩徐に内部移行させ、3時間目には、内部抗原及び細胞表面抗原の両方がかなりの量存在している。この結果は、DCIRを、内部移行の遅いDC受容体として識別するものであり、Bates et. alの結論と対照的となっている。Bates et. alは、「架橋結合の後、DCIRは、MMRで観察された迅速な動態(データは示されていない)とは対照的に、単球由来DC及びCD34由来DCの中に緩徐かつ微弱に移行したのみであった。この知見は、受容体介在性エンドサイトーシスによる銀捕捉がDCIRの主要な機能ではないことを示唆している」ことを示唆している。
【0095】
図11は、抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM/IL−15ヒトDCに特異的に結合することを示す。4倍のモル過剰であるビオチン化Coh.Flu M1と予め1時間混合されていた、示されている濃度の抗DCIR.Doc rAbと共に、単球由来の、GM−CSF/IL−15培養されたヒトDCをインキュベートした。1時間後に、細胞を洗浄し、ストレプトアビジン−PEと共にインキュベートした。もう1回洗浄した後に、細胞をFACSによって分析して、細胞に結合したPEを検出した。緑色のプロットが抗DCIR.Doc rAbであり、赤色の曲線が対照IgG4.Doc複合体である。
【0096】
図12は、抗DC−SIGN/L.Doc又は抗DCIR.Doc rAに連結されたCoh.Flu M1が、GM−CSF/IL−4ヒトDCに結合し、その中に内部移行することを示す。単球由来の、GM−CSF/IL−4培養されたヒトDCを、抗DCIR.Doc、又は4倍のモル過剰であるアレクシア標識Coh.Flu M1と予め1時間混合されていた抗DC−SIGN/L.Doc rAbと共にインキュベートした。氷上に1時間おいた後、細胞を洗浄し、37℃に移した。共焦点顕微鏡法を用いて、細胞結合抗原(赤色で示されている)の細胞内局在を分析した。緑色は、細胞膜結合アクチンを標識している。
【0097】
DCIR.Docを介した、ヒトDCへのCoh.Flu M1のターゲッティングは、DCIRを、ワクチン開発目的のための優れた受容体として同定する。内部移行の遅いDCIR受容体を介した、ヒトDCへのFlu M1抗原のターゲッティングを、内部移行が迅速なASGPR及びLOX−1受容体を介したターゲッティングと比較した。モニターされた免疫応答は、Flu M1特異的なCD8+T細胞の増殖であった。結果は、DCIRを介したターゲッティングが、LOX−1又はASGPRを介したものより有意に効果的であったことを示している。同様な実験では、CD8+T細胞と共に培養する前に、残留の[rAb.Doc:Coh.抗原]がないように洗浄した場合、DCIRを介したターゲッティングの優越性が、なお一層明らかであった。この状況は、インビボの状況に、より近いものである可能性が高い。インビボでは、ターゲッティングされたDCが、流入領域リンパ節内のT細胞に遭遇するために、投与された抗原の残留物から遠ざかるように移動する。
【0098】
図13は、抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体は、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞を増殖させるのが効率的であることを示す。CD34由来のCD1a+DCを、CD8+T細胞、及び8nM(上のパネル)又は0.8nM(下のパネル)の、それぞれCoh.Flu M1と複合体形成した[抗DCIR_2C9.Doc:Coh.Flu M1]、抗LOX1_15C4.Doc、抗ASGPR_49C11.Doc又はIgG4.Doc対照rAbと共に共培養した。その後、CD8+T細胞をFlu M1特異的な増殖に関して分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0099】
図14は、1日間にわたって投与された抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞を増殖させるのに効率的であることを示す。試験条件は、自己CD8+T細胞を添加する1日前にDCを洗浄したことを除いて、上の図と同様であった。一部の抗DCIR V領域は、rAb H鎖のC末端に融合された重要な抗原を分泌させるのにとりわけ好ましい。
【0100】
図15は、rAb H鎖のC末端への融合体として発現される様々な抗原がrAb.抗原の分泌に内因的な影響を有することを示す。ここでは、複数の同じ抗原コード領域を、2通りの異なったマウスV領域特異性を有するキメラhIgG4 rAb上に工学的に作製した。これらの発現コンストラクトを、適切なL鎖マウスV領域−hIgkコンストラクトと共に、293F細胞に同時形質移入し、3日後に、rAbの分泌を評価した。一部のrAb抗原は良好に発現されたが、他のもの(Flu HA5−1を含める)は極めて貧弱であった。各抗原は、rAbとの関連で分泌に影響を与える内因的な生化学的特性を有すると予測するべきである。実際、試験された2通りのV領域特異性との関連で、発現への著しく類似した影響がある。
【0101】
Flu HA5は、トリインフルエンザに対するワクチンを開発する際に考慮することが重要な抗原である。図16は、様々な抗DCIR V領域(様々な抗DCIR mAbに由来する)が、望ましい抗DCIR.Flu HA5ワクチンの分泌に大きな影響を与えるという思いがけない発見を示す。下記の例では、他のDCIR V領域と比較した場合、DCIR_25A4が、このタイプのワクチンの分泌にとりわけ好ましい。
【0102】
図16は、抗DCIR.Flu HA5 rAbが、可変領域の性質に応じて様々な効率で分泌されることを示す。H鎖C末端を介してDoc(青色円)又はHA5−1(赤色三角)のいずれかに融合した、マウスV領域及びヒトC領域のキメラをコードするH鎖発現プラスミド及びL鎖発現プラスミドを、293細胞に同時形質移入し、3日後に、ELISAによって、上清の希釈液にIgGFcが存在するかどうかアッセイした。DCIR_2C9を除いて、rAb.Docは概ね良好に発現された。しかし、rAb.HA5−1の発現にはばらつきが大きかった。
【0103】
rAb.HA5−1の分泌を促進するという抗DCIR 25A4 V領域の独特な特性が、請求項5の適用を説明する。前者は、特定のV領域がrAb.抗原の分泌に影響を与えうるという本発明者らの発明に基づいている。これは、望ましい結合特異性を有する様々なV領域をスクリーニングして、分泌に好ましいものを得ることによって、rAb融合タンパク質と関連における、特定の抗原の内因的に貧弱な分泌を克服できることを意味する。どんな分泌性rAb.融合タンパク質にもあてはまる新規な一般原理として、これを主張する。
【0104】
抗DCIRは、HIV特異的CD8+T細胞のプライミングを増強する。図17は、プライミングを増強するという、樹状細胞への特定の作用を抗DCIR mAbが有することを示す。プライミングは、ペプチドを取り込み、それを、表面MHC上で、そのペプチド抗原に特異的なT細胞に提示することである。この例は、同族のT細胞によって通常送達される既知のDC活性化シグナルであるCD40Lと共に、抗DCIR mAbでDCを刺激することによって、そのDC培養物に添加された免疫優性なHIV gagペプチドに特異的なCD8+T細胞の数の大幅な増加がもたらされることを示している。この特性は、抗DC受容体rAbワクチンを介した成功した抗原ターゲッティングでは、高い確度で予測されることであり、抗DCIR.抗原ワクチンが優れていることを示している。
【0105】
図17は、抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示している。精製された全CD8+T細胞(2×106細胞/ウェル)を、自己IFN−DC(1×105細胞/ウェル)、並びにHLA−A201拘束性HIVペプチドであるpol(pol476〜484 ILKEPVHGV(配列番号54)、pol293〜302 KYTAFTIPSI(配列番号55))及びgag(gag77〜85、SLYNTVATL(配列番号56)、gag151〜159、TLNAWVKVV(配列番号57))(5μM)で刺激した。4℃で終夜、PBS(pH9.6)中に希釈された5μg/ウェルの抗DCIR mAb又は対照モノクローナル抗体でプレコーティングされた24ウェルプレート内で細胞を9日間培養し、繰り返し洗浄した。細胞は、10%ヒトAB型血清、10U/ml IL−7(R&D社製)及び100ng/ml CD40L(R&D社製)を補充したYssel培地中で培養した。3日目にIL−2を10U/mlで添加した。ペプチド特異的CD8+T細胞の増殖は、インキュベーション期間の終わりに、ペプチド/HLA−A201四量体(Beckman Coulter社製)に結合している細胞の数を数えることによって測定した。
【0106】
抗DCIR mAbはクロスプライミングを増強する。図18は、クロスプライミングを増強するという、樹状細胞への特定の作用を抗DCIR mAbが有することを示す。クロスプライミングは、タンパク質を取り込み、それを正しくプロセッシングして、表面MHCで提示することであり、抗原由来のペプチドに特異的なT細胞の増殖によって測定にされる。この例は、同族のT細胞によって通常送達される既知なDC活性化シグナルであるCD40Lと共に、抗DCIR mAbでDCを刺激することによって、DC培養物に添加されたコヒーシン−MART−1融合タンパク質に由来する免疫優性なMART−1エピトープに特異的なCD8+T細胞の数の大幅な増加がもたらされることを示している。この特性は、抗DC受容体rAbワクチンを介した抗原ターゲッティングに極めて望ましく、抗DCIR.抗原ワクチンが優れていることを示している。
【0107】
図18は、抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す。上図の方法は、ペプチドがcoh.MART−1ペプチド融合タンパク質で置換されていることを除いて、前の図の方法と同じである。
【0108】
本明細書で論じたどんな実施形態も、本発明の任意の方法、キット、試薬又は組成物に関して実施することができ、かつその逆も同様であることが企図されている。さらに、本発明の方法を実現するのに、本発明の組成物を用いることができる。
【0109】
図19は、ヒト上皮シートにおけるDCIR分布の免疫組織化学分析を示す。DR−FITC染色は緑色で示されており、PAB269(DCIR)−568は赤色で示されている。右上のパネルは、それらの画像を重ね合わせたものを示す。青色の染色は、細胞核のDAPI染色である。倍率40倍のデジタル画像。細胞の形態及びDR染色は、表皮ランゲルハンス細胞に特徴的なものであり、したがって、この分析は、ランゲルハンス細胞におけるDCIR発現を明らかにし、例えば、乱切りされた皮膚に適用された抗DCIR.抗原結合体を取り込む効用をDCIRが有することを指摘するものである。したがって、これらのデータは、アジュバントを介したDC活性化に伴った、ランゲルハンス細胞による抗原の取り込みが、ターゲッティングされた抗原に対する強力な細胞応答をもたらすことを示している。
【0110】
図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体を示し、詳細にはDCIRへの親和性を示す。
【0111】
DCIR抗原の固定:一級アミン(10mM酢酸ナトリウム、pH5.5中に50μg・mL−1)を介して、AKT_ivコバレントセンサー(covalent sensor)の表面にDCIR抗原を固定した。EDCとNHSとの混合物を用いて、カルボン酸表面を活性化し、4チャネルすべてにDCIRを結合させた。最後に、専用のブロッキング剤を用いて、どんな残留カルボン酸基も不活性化した。
【0112】
HBS中における4種の抗DCIR抗体の親和性の測定:4種の抗DCIR抗体の親和性を測定するために、10〜0.3125μg mL−1の各抗体の希釈系列を調製し、平行して、固定されたDCIR抗原の上に180秒間注入した。試料注入の間に、60秒間2回の100mM塩酸の注入を用いて、表面を再生させた。バイオセンサー測定は、Akubio社製アコースティックバイオセンサーで行った。
【0113】
【表1】
【0114】
表1は、2種の好ましい抗DCIRモノクローナル抗体24A5及び9E8の高親和性DCIR外部ドメイン結合特性を示し、それらに由来するマウス可変領域は、ヒトIgG4本体に移植した場合、高親和性の結合特性を大部分保持していることを実証する。このデータは、ヒトDCIRに結合するという効用に関する、これらの可変領域の配列[及びそれらの「ヒト化」誘導体]に対する明確な主張を支持する。
【0115】
アカゲザルDCIRに対する抗DCIR mAbの交差反応性。アカゲザル(Rhesus macaque)DCIRへの、抗ヒトDCIR mAbの交差反応性を試験するために、哺乳動物発現ベクター内に構成したアカゲザルDCIR cDNAで233F細胞に形質移入した。形質移入されていない293F細胞及びヒトDCIRの発現を指示する同一のベクターで形質移入された293F細胞と比較して、そのパネルの抗ヒトDCIR抗体がサルDCIRに結合するかどうか、FACSによって検査した。ヒトDCIR配列とサルDCIR配列との間の比較を下記に示す。ヒトDCIRとサルDCIRとの間の交差反応性を示す抗体は、例えば、組換えヒト化抗DCIR.抗原ワクチンとして構成した場合、治療薬としてのNHP毒性研究によって、作用機序ベースの問題にも取り組むことができる[すなわち、これらの試験は、毒性と比較した効力に関しても取り組むことができる]ので、とりわけ好ましい。
【0116】
ヒトDCIR対、サルDCIR。最初の配列はヒト配列であり、サルDCIRで見られた変化はヒト配列の下に示されている。推定上の膜通過領域は下線で強調されている。非保存性の変化は太字で強調されている。
MTSEITYAEVRFKNEFKSSGINTASSAASKERTAPHKSNTGFPKLLCASLLIFFLLLAISFFIAFVIFFQKYSQLLEKKT(配列番号58)
MTSEITYAEVRQNESKSSGIDSASSAASKKRTAPHKSNTGFSKLLCASLMIFFLLLAISFFFAFFIFFQKYSQLLEKMT(配列番号59)
TKELVHTTLECVKKNMPVEETAWSCCPKNWKSFSSNCYFISTESASWQDSEKDCARMEAHLLVINTQEEQDFIFQNLQEE(配列番号60)
TKDLVHTTLECVKKNMTTEETAWSCCPKNWKPFSSNCYFISTESASWQKSEKDCARMEAHLLVINTREEQDFIFQNLQEE(配列番号61)
SAYFVGLSDPEGQRHWQWVDQTPYNESSTFWHPREPSDPNERCVVLNFRKSPKRWGWNDVNCLGPQRSVCEMMKIHL(配列番号62)
SAYFVGLSDPEGQRHWQWVDQTPYNESSTFWHPHEPSDPDERCVVLNFRKTPKRWGWNDVHCIVPQRSVCEMMKIHL(配列番号63)
【0117】
図21は、アカゲザルDCIRへの、抗DCIR mAbの交差反応性を示す。試料のFACS分析が下に提示されている。緑色のプロットは、対照でIgG4.gag組換えタンパク質によるバックグランド結合を示す。赤色のプロットは、抗DCIR.gagタンパク質を介した結合である[2次抗体はPE標識された抗ヒトIgGFcであった]。結果は、ヒトDCIR発現プラスミドで形質移入された293F細胞には、9E8 mAbと24A5 mAbとで匹敵した結合を示しており、サルDCIR発現プラスミドによって形質移入された293のF細胞には、9E8は結合したが、24A5は結合しなかった。同様な分析で、9E8、29G10、31A6、及び3C2 mAbはサルDCIRによく結合したが、24A5、6C8、24E7、5F9及び29E9 mAbは結合しなかった。
【0118】
図22は、特定のグリカン構造への、DCIR外部ドメインの結合を示すグラフである。DCIR外部ドメインは、293F細胞から分泌されるhIgGFc融合タンパク質として発現させ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。米国糖鎖コンソーシアム(the Consortium for Functional Glycomics)から得たプリントアレイのバージョン3.0を用いて、このタンパク質を特定のグリカンの結合に関して試験した。このアレイは、6通りに複製された320種のグリカン(又はグリコフォーム)からなる。
【0119】
下記に示すExcelスプレッドシートは、それぞれ、グリカン番号、構造又は名称、6通りの複製の平均RFU値、標準偏差、平均値の標準誤差(全データセットを提示している上記グラフのエラーバーに使用した)及び%CVを列A〜Fに示している。列C〜Yは、グリカン数対、平均RFUのグラフを含有し、列Z〜AEは、最高の強度で結合したグリカンのリストを提供するために、RFUによって並べ替えられた(高い値から低い値)A〜Fのデータである。6通りの複製からなる各セットから、最高値及び最低値が除外されているので、これらの平均は、6つの値ではなく、4つの値の平均である。これは、単一の非常に高いポイントを含有した誤ヒットの一部を排除する。したがって、高い%CVを有するポイントは、疑わしいものと考えるべきである。これらの分析は、フィコエリトリンで標識された抗ヒトIgG−Fcを使用した検出を用いて行った。2mM Ca及びMg、1%BSA並びに0.05%Tween 20を含有するTris−食塩水結合緩衝液を用いて、DCIR.IgFcをPBS中に200μg/mlに希釈した。
【0120】
このデータは、米国糖鎖コンソーシアムと協力して作成した。DCIR外部ドメインに最も強固に結合したグリカンは、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12であった。このグリカンは、いくつかのヒト血漿タンパク質で見出される極めて複雑な糖質であるが、試験した他のhIgGFc融合タンパク質は、このグリカンへの選好を示さなかった。
【0121】
したがって、グリカン143又は関連構造のパネルからスクリーニングされた親和性がより高い誘導体で装飾された抗原は、DCIRに対する抗原に磨きをかけるはずであり、DCターゲッティングワクチン又は他のDCIRターゲッティング作用物質の抗DCIR成分の代用物として働く。これはワクチン製造及び貯蔵における費用便益を有しうるであろう。
【0122】
【表2】
【0123】
図23A〜23Cは、DCIRがすべての血液DCサブセットの包括的な標的であることを示す。血液中では、CD11c+mDC及びBDCA2+pDCという、DCの2つのサブセットが同定される。DCIRは、両方のDCサブセットで見出される稀少なレクチン型受容体の1つである。mDC及びpDCを血球アフェレーシスから精製し、各DCサブセットを、精製された自己CD8+T細胞並びに漸減濃度のFlu−MPの4種の組換え型、すなわちFlu−MP、IgG4に融合したFlu−MP及び2種の異なった組換え抗DCIR抗体24A5及び9E8に融合したFlu−MPと共に培養した。
【0124】
下記図23Aに示す結果は、両方の組換えDCIR−Flu−MP融合タンパク質が、80pMという低い濃度で、1.78%〜2.18%の四量体陽性細胞を誘導できるので、これら2種のタンパク質は、Flu−MPをmDCに強力にターゲッティングできることを示している。この濃度は、Flu−MP自体及びIgG4−Flu−MPが抗原特異的T細胞の増殖を誘導できない濃度である。pDCは、8nMで、4種の形態の組換えFlu−MPのクロスプレゼンテーションを行うこともできた。0.8nM及び80pMでは、2種のDCIR−Flu−MPコンストラクトがクロスプレゼンテーションされたが、他の2種のFlu−MPコンストラクトはクロスプレゼンテーションされなかった(下側の図B)。
【0125】
まとめると、これらのデータは、DCIRは、血液mDC及びpDCの両方によって、タンパク質をクロスプレゼンテーション用に強力にターゲッティングすることを示す。ヒトでは、LC及びIntDCが、それぞれ細胞性免疫及び液性免疫を選択的にプライミングする能力を有する。抗原を、DCIRのような、汎DC分子にターゲッティングすることによって、様々なDCサブセットをターゲッティングすることによる広範な液性免疫応答及び細胞性免疫応答が潜在的に誘導される。これは、抗ランゲリンなどの、サブセット特異的抗原送達媒体とは対照的である。
【0126】
図23Aは、CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た血液由来のmDCが、各8nM、0.8nM又は80pMのaDCIR−Flu−MP(a#24A5及びb#9E8)、IgG4−Flu−MP又はFlu−MPでターゲッティングされることを示す。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0127】
図23Bは、CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た血液由来のpDCが、各8nM、0.8nM又は80pMのaDCIR−Flu−MP(a#24A5及びb#9E8)、IgG4−Flu−MP又はFlu−MPでターゲッティングされることを示す。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0128】
図23Cは、LC及び真皮CD14+DCによるタンパク質のクロスプレゼンテーションを、DCIRが可能にすることを示す。CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た皮膚由来のDCが、各8nMの抗DCIR:Flu−MP、抗ランゲリン:Flu−MP又はIgG4:Flu−MPでターゲッティングされる。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0129】
図24は、DCIR−FluM1でのワクチン接種が、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生を可能にすることを示す。亜致死条件で照射されたNOD/SCID β2m−/−免疫不全マウスにHLA−A*0201+健常ドナーから得た3×106 CD34+HPCを移植した結果を、移植の4〜8週後に、20×106の自己T細胞を養子移入することによって再構成した。DCを動員するために、5回用量のヒト組換えFLT3リガンド(FLT3−L)でマウスを10日間前処置した。アジュバントとして、50mcg/マウスのポリICと共に、全量30mcgのDCIR−FluM1ワクチンを、2通りの時点、すなわち1日目及び7日目に、2つの部位、すなわちi.p.及びi.v.に送達した。インフルエンザ特異的免疫応答の誘導は、マトリックスタンパク質1:FluM1 58〜66(GILGFVFTL)(配列番号64)ペプチドを負荷した四量体で、血液及び組織を染色することによって評価した。図1に示す通り、DCIR−FluM1でワクチン接種されたマウスの5匹中4匹は、ワクチン接種後の11日目に、FluM1四量体に結合する循環ヒトCD8+T細胞が、0.63%、0.34%、0.21%及び0.62%であることを示した。HIVgagペプチドが負荷された対照四量体による染色はほぼ陰性であった。これらの予備的な結果は、独立したマウスコホートで確認され、FluM1四量体に高親和性で結合するCD8+T細胞の増殖は、合計で12匹中9匹のワクチン接種マウスで観察された。これらの結果は、DCIR−FluM1でのワクチン接種が、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生を可能にすることを実証する。
【0130】
本明細書に記載した特定の実施形態は、本発明の制限としてではなく、例として示したものであることが理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な実施形態で利用することができる。当業者ならば、本明細書に記載した本発明の特定の方法に対する多数の均等物を認識するか、常例的実験を用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲に包含されている。
【0131】
本明細書で参照したすべての出版物及び特許出願は、本発明が属する当業者の技術レベルを示すものである。すべての刊行物及び特許出願を、あたかも個々の刊行物又は特許出願を具体的かつ個別的に参照により組み込むと示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込む。
【0132】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は本明細書中で「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合、「1つ」であることを意味しうるが、それは、「1又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1又は1超」という意味とも一貫性を有する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、一選択肢のみの選択を指すことが明示的に示されているか、選択肢が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するのに用いられる。但し、本開示は、一選択肢のみの選択並びに「及び/又は」を指すという定義を支持する。本出願全体にわたって、「約」という用語は、ある値に、その値を決定するのに用いられた装置若しくは方法に固有な誤差の変異又は研究対象間に存在する変異が含まれていることを示すのに使用される。
【0133】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など、含む(comprising)のどんな形態も)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」など、有する(having)のどんな形態も)、「含む(including)」(並びに「含む(include)」及び「含む(includes)」など、含む(including)のどんな形態も)、又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contain)」及び「含有する(contains)」など、含有する(containing)のどんな形態も)という語は、包括的又は非制限的であって、追加の、記載されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0134】
「又はこれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、その用語に先行して列挙されている項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はこれらの組合せ」には、A、B、C、AB、AC、BC又はABCのうちの少なくとも1つが含まれ、特定の文脈で順序が重要である場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含まれると意図されている。この例示を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1又は複数の項目又は用語の繰り返しを含有する組合せも、明示的に含まれる。当業者ならば、通常は、どんな組合せも、文脈から別段のことが明らかでない限り、それに含まれる項目又は用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0135】
本明細書で開示及び特許請求されている組成物及び/又は方法はすべて、本明細書の開示に照らして、過度の実験をすることなく作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態に関して記述したが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱せずに、上記の組成物及び/又は方法、並びに本明細書に記載の方法のステップ又はステップの順序に変異を適用しうることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなそのようなすべての類似した置換及び改変は、添付されている特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲、及び概念に包含されるものとする。
【0136】
(参考文献)
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【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ワクチン接種の分野に関し、より詳細には、抗原提示細胞上に発現されたDCIRへの抗原のターゲティングに基づくワクチンに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれている、2007年2月2日出願の米国仮出願第60/888032号に基づく優先権を主張する。
【0003】
米国連邦政府によって資金助成された研究に関する記載
本発明は、NIHによって授与された契約番号1U19AI057234−0100003下の米国政府助成を用いて行われた。米国政府は、本発明における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定せずに、その背景を抗原提示との関連において説明する。
【0005】
樹状細胞(DC,dendritic cell)ターゲッティングに基づくヒトワクチンは、マウスモデルでの説得力のある研究を基にする新概念である。この場合、特定のDC受容体に対する抗体によってDCにもたらされる少量の比較的弱い抗原が、強力かつ広範な免疫応答を誘発しうる。ヒト用のそのようなワクチンを開発するには、この抗原ターゲティングの適用に正確にどのDC受容体を用いるべきかに関する、より詳細な理解を必要とする。これは、マウスの免疫系とヒトの免疫系との間で、常に正確な対応があるわけではないからであり、また、このワクチン適用に関して、すべての潜在的DC受容体が慎重に検査されているわけではないからでもある。
【0006】
したがって、様々な抗ヒトDC受容体標的をインビトロで試験する研究が開始されており、例えば、HLAクラスI分子及びクラスII分子との関連で、マンノース受容体で活性化されたT細胞に対するヒトmAbに融合している黒色腫抗原pmel17を用いて、DCターゲッティングが行われた(Ramakrishna, V., J. F. Treml, et al. (2004). "Mannose receptor targeting of tumor antigen pmel17 to human dendritic cells directs anti-melanoma T cell responses via multiple HLA molecules." J Immunol 172(5): 2845-52.)。また、ヒト化抗DC−SIGN mAbを介して、モデル抗原であるKLHをDCにターゲティングすることによって、抗原特異的なナイーブT細胞応答に加えて、用量抑制的なリコールT細胞応答も効果的に誘導された(Tacken, P. J., I. J. de Vries, et al. (2005). "Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody." Blood 106(4): 1278-85.)。マンノース受容体及びDC−SIGNに加えて、ヒトDCは、抗原捕捉に関与していることが知られている他の受容体も発現する。これらの多くは、LOX−1、DEC205、DC−ASGPR、ランゲリン、DCIR、BDCA−2、DECTIN−1及びCLEC−6を含めたC型レクチン受容体(CLR,C-type lectin receptor)である。これらのCLRは、DCの異なったサブセットにより異なって発現され、それらの発現は、DC成熟の状態に従って相違しうる(Figdor, C. G., Y. van Kooyk, et al. (2002). "C-type lectin receptors on dendritic cells and Langerhans cells." Nat Rev Immunol 2(2): 77-84.、Geijtenbeek, T. B., S. J. van Vliet, et al. (2004). "Self- and nonself-recognition by C-type lectins on dendritic cells." Annu Rev Immunol 22: 33-54.)。
【0007】
DCのサブセットは、異なった免疫応答を刺激する。したがって、異なって発現される受容体を介して、抗原をこれらのサブセットにターゲティングすることによって、異なった免疫応答が誘発されるはずである(Shortman, K. and Y. J. Liu (2002). "Mouse and human dendritic cell subtypes." Nat Rev Immunol 2(3): 151-61.)。さらに、同じDCサブセット上の異なった受容体が、抗原を別々のプロセシング経路に方向付ける可能性もある(Trombetta, E. S. and I. Mellman (2005). "Cell biology of antigen processing in vitro and in vivo." Annu Rev Immunol 23: 975-1028.)。最後に、これらの受容体の一部は内因的に活性化しないものであり(例えば、DEC205(Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.))、一方、他のものは、活性化するものであるか(例えば、LOX−1(Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.))、まだ完全には研究されていないものである。抗原の取り込みと同時に起こるDC活性化の重要性は知られていない。しかし、これが有益であるならば、ターゲッティングmAbを介したDCの活性化によって、ターゲッティングワクチンの製剤が単純化される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ramakrishna, V., J. F. Treml, et al. (2004). "Mannose receptor targeting of tumor antigen pmel17 to human dendritic cells directs anti-melanoma T cell responses via multiple HLA molecules." J Immunol 172(5): 2845-52.
【非特許文献2】Tacken, P. J., I. J. de Vries, et al. (2005). "Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody." Blood 106(4): 1278-85.
【非特許文献3】Figdor, C. G., Y. van Kooyk, et al. (2002). "C-type lectin receptors on dendritic cells and Langerhans cells." Nat Rev Immunol 2(2): 77-84.
【非特許文献4】Geijtenbeek, T. B., S. J. van Vliet, et al. (2004). "Self- and nonself-recognition by C-type lectins on dendritic cells." Annu Rev Immunol 22: 33-54.
【非特許文献5】Shortman, K. and Y. J. Liu (2002). "Mouse and human dendritic cell subtypes." Nat Rev Immunol 2(3): 151-61.
【非特許文献6】Trombetta, E. S. and I. Mellman (2005). "Cell biology of antigen processing in vitro and in vivo." Annu Rev Immunol 23: 975-1028.
【非特許文献7】Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.
【非特許文献8】Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの考慮を背景として、本発明者らは、望ましい免疫結果を得るために最も適したヒトDCターゲッティング受容体を特定するための、CD4+及びCD8+T細胞ナイーブ応答及びリコール応答をインビトロで詳細に探索することによる系統的な比較の緊急な必要性を認識している。本出願は、特定のDC受容体、すなわち、樹状細胞抑制型受容体(DCIR,Dendritic Cell Inhibitory Receptor)が、予防用及び治療用ワクチン接種のために抗原をヒトDCにターゲティングする目的に理想的な受容体であることを示す、その特殊かつ予想外な特徴を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、抗原に対する強力かつ広範な免疫応答を誘発する目的で、抗原を抗原提示細胞に特異的にターゲティングする(送達する)ワクチンを作製及び使用するための組成物及び方法を含む。目的は、主として、抗原が由来する作用物質(病原体又は癌)に対する防御的又は治療的免疫応答を誘起することである。
【0011】
より詳細には、本発明は、制御されたモジュール構造で1又は複数の抗原を保持する、標的特異的な単一の組換え抗体(mAb)、活性化タンパク質又は他の抗体を設計及び作製するための組成物、方法及び方法を提供する。本発明のモジュールrAb担体は、例えば、複数の抗原、並びに/又は抗原及び活性化サイトカインを(内部移行するヒト樹状細胞受容体に対する1つの一次組換え抗体を介して)樹状細胞(DC)にターゲティングするのに用いることができる。また、本発明は、制御され、かつ特定されたやり方で、2つの異なった組換えmAbを端と端とで連結する方法を提供する。
【0012】
本発明は、抗体−抗原複合体を形成する標的作用物質が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を単離及び精製することによって、DCIR発現抗原提示細胞による抗原提示の有効性を増大させる組成物及び方法であって、その作用物質が、抗体−作用物質複合体と接触した、例えば樹状細胞によってプロセシング及び提示される方法を含む。一実施形態では、抗原提示細胞が樹状細胞であり、DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合する。DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合し、かつ抗原がコヘリン/ドックリン対の他方の半分に結合して複合体を形成してもよい。作用物質の非限定的な例には、ペプチド、タンパク質、脂質、糖質、核酸及びこれらの組合せのうちの1又は複数が含まれる。
【0013】
作用物質は、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF,transforming growth factor)、線維芽細胞成長因子(FGF,fibroblast growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF,platelet derived growth factor)、上皮成長因子(EGF,epidermal growth factor)、結合組織活性化ペプチド(CTAP,connective tissue activated peptide)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理活性類似体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、分裂促進サイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18など、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、並びにβトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来性成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF,insulin-like growth factor))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えばGDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めたトランスフォーミング成長因子(TGF)遺伝子スーパーファミリーから選択される1又は複数のサイトカインでありうる。別の実施形態では、作用物質は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性及び癌性のタンパク質である抗原を含む。
【0014】
本発明は、樹状細胞による抗原提示の有効性を増大させる組成物及び方法であって、抗体−抗原複合体を形成する抗原が結合するDCIR特異的抗体又はその断片を結合させるステップを含み、その抗原が、抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示される組成物及び方法も含む。別の実施形態は、防御的又は治療的免疫応答を誘発する目的で、抗原を抗原提示細胞に送達するための、DCIRに対する抗体又は他の特異的結合分子の使用である。皮膚を介したワクチン接種のための、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用;同時投与又は連結されたワクチン接種用のアジュバントと併用した、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用、又は組換えの抗原−抗体融合タンパク質として発現することができる特異的抗原の、抗原ターゲッティング(ワクチン接種)目的での使用。
【0015】
別の実施形態は、患者の樹状細胞を単離するステップ;上記樹状細胞を活性化量の抗DCIR抗体又はその断片及び抗原に曝露して、抗原が負荷されて活性化された樹状細胞を形成するステップ;並びに抗原が負荷されて活性化された上記樹状細胞を上記患者に再導入するステップによって、樹状細胞の有効性を増大させる方法を含む。抗原は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含みうる。本発明は、哺乳動物細胞から分泌された抗DCIR免疫グロブリン又はその部分、及び免疫グロブリンに結合した抗原も含む。免疫グロブリンは、コヒーシン/ドックリンドメインの半分に結合しており、又はそれは、モジュールrAb担体と複合体を形成する抗原に結合した、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分、若しくは抗原との融合タンパク質である、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分を含んでもよい。抗原特異的なドメインは、完全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びにFabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片でありうる。抗DCIR免疫グロブリンは、放射性同位元素、金属、酵素、ボツリヌス毒素、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、ウェルシュ菌毒素、マイコトキシン、志賀毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン(seguitoxin)、サキシトキシン、アブリン、シアノジノシン、α毒素、テトロドトキシン、アコノトキシン(aconotoxin)、ヘビ毒及びクモ毒から選択される毒素に結合していてもよい。抗原は、免疫グロブリンとの融合タンパク質であるか、又は免疫グロブリンに共有結合若しくは非共有結合によって化学的に結合したものでありうる。
【0016】
別の実施形態は、抗体−抗原複合体を形成する抗原が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を含むワクチンであって、その抗原が、抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示されるワクチンである。
【0017】
本発明の新規抗体は、新規な組織分布情報を示すこともできた。それらの特異的親和性により、本発明の抗DCIR抗体は、サルDCIRに結合することが見出された。本発明の抗DCIR抗体は、インビボ[hu−マウス]における、抗DCIR−Flu m1を用いた、増殖中のFlu m1特異的CD8細胞へのターゲッティング、及びエキソビボヒト皮膚細胞のインビトロターゲッティングに有効である。さらに、DCIRの炭水化物リガンドの複合体は、抗原送達のための抗DCIR薬の代用薬として使用できることが見出された。したがって、本発明の別の実施形態は、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12を含有する、グリカンの少なくとも一部に結合した、DCIRに特異的に結合する抗原性T細胞エピトープペプチドである。上記グリカン(及びその誘導体)は、単独又は併用で、DCIR結合を阻止するのに使用できる。
【0018】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、これより、添付された図と共に、本発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1A〜1Fは、対照と比較した場合、すべてではないが、多くのハイブリドーマ上清が、MCP−1の特異的な産生を誘発し、すなわち、mAb 4C7、9E8、19E3、1G3、10A5、29G10、3C2、3G2、24A5、30F3、12E2、5F9、2F11、24E7、31A6、6A11、2 9E9、2H8、30D9、6C8、35F1、3F12が以降の特徴付けに選択されたことを示す図である。
【図2】プレートに結合したDCIRとの、mAbの高親和性相互作用をELISAによって示す図である。
【図3】FACSで使用するための高親和性抗体の結合を示す図である。
【図4】ヒト皮膚から直接単離された3種のヒトDCサブタイプでもDCIRが発現されていることを示す図である。
【図5】ヒト扁桃腺内の胚中心を囲む細胞集団のDCIR特異的染色を示す図である。
【図6】架橋Flu M1タンパク質及びDCIRに対するmAbの例を示す図である。
【図7】抗DCIR_2C9 mAbへのCoh.Flu M1の架橋結合を示す図である。
【図8】抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、mAbに架橋結合されていないFlu M1タンパク質より効率的に、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す図である。
【図9】抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を、Int−DCより、LCを介して、より効率的に誘導することを示す図である。
【図10】293細胞内に同時形質移入され、培養上清中へのrAbの分泌に関して抗ヒトFC ELISAによってアッセイされた多数の異なった抗DCIR mAbに対応するマウス−ヒトキメラrAbをコードするH+L鎖ベクターを示す図である。
【図11】抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM/IL−15ヒトDCに特異的に結合することを示す図である。
【図12】抗DC−SIGN/L.Doc又は抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM−CSF/IL−4ヒトDCに結合し、その中に内部移行されることを示す図である。
【図13】抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖に効率的であることを示す図である。
【図14】1日間投与された抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖に効率的であることを示す図である。
【図15】rAb H鎖のC末端との融合体として発現された様々な抗原が、rAb.抗原の分泌に内因的な影響を有することを示す図である。
【図16】抗DCIR.Flu HA5 rAbが可変領域の性質に応じて様々な効率で分泌されることを示す図である。
【図17】抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す図である。
【図18】抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す図である。
【図19】ヒト上皮シート内におけるDCIR分布の免疫組織化学分析を示す図である。
【図20A−20B】図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体、とりわけDCIRへの親和性を示す図である。
【図20C−20D】図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体、とりわけDCIRへの親和性を示す図である。
【図21】抗DCIR mAbの、アカゲザルDCIRに対する交差反応性を示す図である。
【図22】特定のグリカン構造への、DCIR外部ドメインの結合を示すグラフである。
【図23A】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図23B】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図23C】図23A〜23Cは、DCIRが、すべての血液DCサブセットのための包括的な標的であることを示す図である。
【図24】DCIR−FluM1でのワクチン接種によって、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生が可能となることを実証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について以下に詳細に論じるが、本発明は、様々な特定の概念に具体化できる多数の適用可能な発明概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じる特定の実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するに過ぎず、本発明の範囲の境界を定めるものではない。
【0021】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義する用語は、本発明に関連する領域の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」や「その(the)」などの用語は、単数の存在物のみを指すのではなく、それには、その特定の例を例示目的に用いることのできる一般クラスが含まれる。本明細書の用語は、本発明の特定の実施形態を記載するのに使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲で大要を記載しているのを除いて、本発明の境界を定めるものではない。
【0022】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的免疫を調節するのに重要な役割を果たしている抗原提示細胞である(Mellman, I. and R. M. Steinman (2001). "Dendritic cells: specialized and regulated antigen processing machines." Cell 106(3): 255-8.、Banchereau, J., F. Briere, et al. (2000). “Immunobiology of dendritic cells.” Annu Rev Immunol 18: 767-811.、Cella, M., F. Sallusto, et al. (1997). "Origin, maturation and antigen presenting function of dendritic cells." Curr Opin Immunol 9(1): 10-6.)。DCは、抗原を捕捉して、それらをペプチドにプロセシングして、これらをT細胞に提示する。したがって、抗原をDCに直接送達することは、ワクチンを改善するための重点領域である。そのような例の1つは、後で患者に再投与される自己DCへのエキソビボ抗原負荷を用いたDCベースのワクチンの開発である(Banchereau, J., B. Schuler-Thurner, et al. (2001). "Dendritic cells as vectors for therapy." Cell 106(3): 271-4.、Steinman, R. M. and M. Dhodapkar (2001). "Active immunization against cancer with dendritic cells: the near future." Int J Cancer 94(4): 459-73.)。ワクチンの効力を改善するための別の戦略は、内部移行するDC特異的な受容体に対する抗体に結合した抗原をDCに特異的にターゲッティングすることである。ワクチン接種のためにDCをターゲッティングすることの可能性は、主要なマウス研究によって注目を浴びた。オボアルブミン(OVA)に結合した抗LOX−1 mAbを用いたインビボでのターゲッティングは、MHCクラスI経路に向けた外因性抗原のクロスプレゼンテーションを介して、防御的CD8+T細胞反応を誘発した(Delneste, Y., G. Magistrelli, et al. (2002). "Involvement of LOX-1 in dendritic cell-mediated antigen cross-presentation." Immunity 17(3): 353-62.)。また、CD40L成熟刺激と併用すると、抗DEC205 mAbに結合したOVAも、インビボで、DCによるMHCクラスI拘束性の提示を増強し、エフェクターメモリーCD8+T細胞の持続的な形成をもたらす(Bonifaz, L. C., D. P. Bonnyay, et al. (2004). "In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination." J Exp Med 199(6): 815-24.)。これらの研究は両方とも劇的な用量の節約(すなわち非常に少ない抗原量で強い免疫応答)を示し、他のタイプのOVA免疫処置で通常見られるより広範な応答を示唆した。DEC205を介したDCへのHIV gag抗原のターゲッティングを用いた最近の研究は、これらの概念を臨床的に重要な抗原にまで拡張し、DCへの抗原のターゲティングの基本特性、すなわち、劇的な用量の節約、単一ワクチン接種に由来する防御応答、並びにCD8及びCD4コンパートメントの両方における抗原特異的なT細胞の増殖を確認した(Trumpfheller, C., J. S. Finke, et al. (2006). "Intensified and protective CD4+ T cell immunity in mice with anti-dendritic cell HIV gag fusion antibody vaccine." J Exp Med 203(3): 607-17.)。
【0023】
本発明は、制御された多変量様式における、単一の組換え一次mAbへの、(一次mAbから独立して工学的に作製、発現及び精製された)複数の抗原又はタンパク質の複合体形成を提供する。現在、1つの一次mAbに(それぞれストレプトアビジンに別々に連結するように工学的に作製された)様々なタンパク質の付加を可能にする部位特異的ビオチン化部位を工学的に作製する方法が存在する。しかし、本発明は、所定のモル比及び位置における、複数の組合せの一次mAbへの、別々に工学的に作製されたタンパク質の付加を提供する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「モジュールrAb担体」という用語は、単一の組換えモノクローナル抗体(mAb)への、様々な抗原、活性化タンパク質又は他の抗体の、制御されたモジュール付加をもたらすように工学的に作製された組換え抗体系を示すのに使用される。このrAbは、標準的なハイブリドーマ技法、組換え抗体ディスプレイ及びヒト化モノクローナル抗体などを用いて作製されたモノクローナル抗体でありうる。モジュールrAb担体は、例えば、複数の抗原、並びに/又は抗原及び活性化サイトカインを(内部移行する受容体、例えばヒト樹状細胞受容体に対する1つの組換え一次抗体を介して)、樹状細胞(DC)にターゲティングするのに使用できる。モジュールrAb担体は、制御された特定の方法で、2つの異なった組換えmAbを端と端とで連結するのに使用できる。
【0025】
「モジュールrAb担体」の抗原結合部分は、認識されるモジュール結合部分が、そのアミノ酸配列に付加及び/又は結合される、1又は複数の可変ドメイン、1又は複数の可変ドメイン及び最初の定常ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びに、Fabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片でありうる。モジュールrAb担体で使用するための抗体は、いずれのアイソタイプ又はクラスのものでも、サブクラスでも、又はどんな供給源(動物性及び/又は組換え)由来の抗体でもよい。
【0026】
非限定的な一例において、モジュールrAb担体は、工学的に作製された組換えmAbとの関連で、特異的かつ特定のタンパク質複合体を作製するための1又は複数のモジュールコヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインを有するように工学的に作製される。mAbは、mAbの抗原結合ドメインのカルボキシ側に、1又は複数のモジュールコヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインを含有する融合タンパク質の一部分である。コヒーシン−ドックリンタンパク質ドメインは、例えば化学架橋結合物質及び/又はジスルフィド結合形成を用いることによって、翻訳後に付加されたものでも可能である。
【0027】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、その抗原の受容者体内で液性及び/又は細胞性免疫応答を開始できる分子を指す。抗原は、本発明では、2つの異なった場面で、すなわち抗体又はrAbの他の抗原認識ドメインの標的として、又はモジュールrAb担体に相補的なドックリン/コヒーシン分子の一部として細胞若しくは細胞内にもたらされるか、rAbによってターゲッティングされる分子として使用されうる。抗原は、通常、ワクチン接種が有利な治療法となる疾患を引き起こす病原体である。抗原がMHCに提示される場合、そのペプチドは、しばしば約8アミノ酸から約25アミノ酸である。抗原には、例えば、単純な中間代謝物質、糖、脂質及びホルモン、並びに複合糖質、リン脂質、核酸及びタンパク質などの高分子を含めたどんなタイプの生物学的分子も含まれる。抗原の一般的な範疇には、ウイルス抗原、細菌性抗原、真菌抗原、原子動物及び他の寄生虫の抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶に関与している抗原並びに他の種々雑多な抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
モジュールrAb担体は、任意の数の活性物質、例えば、抗生物質、抗感染症薬、抗ウイルス剤、抗腫瘍薬、解熱薬、鎮痛剤、抗炎症薬、骨粗鬆症の治療薬、酵素、サイトカイン、抗凝血物質、多糖、コラーゲン、細胞及び上記の活性物質の2種以上の組合せを保持できる。本発明を用いて送達する抗生物質の例には、テトラサイクリン、アミノグルコシド、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド薬物、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、エリスロマイシン、バンコマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ナイスタチン、アムホテリシンB、アマンタジン、イドクスウリジン、p−アミノサリチル酸、イソニアジド、リファンピン、アンティノマイシンD、ミトラマイシン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン及びイミダゾールカルボキシアミドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明を用いて送達する抗腫瘍薬の例には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール及びメトトレキセートが含まれるが、これらに限定されない。解熱薬及び鎮痛剤の例には、アスピリン、Motrin(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、ナプロキセン及びアセトアミノフェンなどが含まれる。
【0030】
本発明を用いて送達する抗炎症薬の例には、NSAIDS、アスピリン、ステロイド、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン及びジクロフェナクナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明を用いて送達する骨粗鬆症治療薬並びに骨及び骨格に作用する他の因子の例には、カルシウム、アレンドロネート、骨GLaペプチド、副甲状腺ホルモン及びその活性断片、ヒストンH4関連骨形成増殖ペプチド(histone H4-related bone formation and proliferation peptide )、並びにこれらの変異体、誘導体及び類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明を用いて送達する酵素及び酵素補因子の例には、Pancrease(登録商標)、L−アスパラギナーゼ、ヒアルロニダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、tPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、パンクレアチン、コラゲナーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノゲン、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、アデニルシクラーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明を用いて送達するサイトカインの例には、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理活性類似体、断片及び誘導体が含まれるが、これらに限定されない。サイトカインは、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、マイトジェニックサイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18など;レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、又はこれらの任意の断片若しくは組合せでありうる。他のサイトカインには、βトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めたトランスフォーミング成長因子(TGF)スーパーファミリーのメンバーが含まれる。
【0034】
本発明を用いて送達する成長因子の例には、哺乳動物細胞からなど、天然又は自然の供給源から単離することのできる成長因子も、組換えDNA技法によって、又は様々な化学的方法によって、合成によって調製することのできる成長因子も含まれるが、これらに限定されない。加えて、これらの因子の類似体、断片又は誘導体も、それらが天然分子の生物活性の少なくとも一部を示すという条件で、用いることができる。例えば、類似体は、部位特異的変異導入又は他の遺伝子工学的手法によって改変された遺伝子を発現することによって調製することができる。
【0035】
本発明を用いて送達する抗凝血物質の例には、ワルファリン、ヘパリン及びヒルジンなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明を用いて送達する、免疫系に作用する因子の例には、走化性ペプチド及びブラジキニンなど、炎症及び悪性新生物を制御する因子、並びに伝染性微生物を攻撃する因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
ウイルス抗原の例には、例えば、レトロウイルス(retroviral)抗原、すなわち、gag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素及び他のHIV成分などのヒト免疫不全症ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)抗原に由来するレトロウイルス抗原など;肝炎ウイルス(hepatitis viral)抗原、すなわち、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)のS、M及びLタンパク質、B型肝炎ウイルス並びに他の肝炎、例えば、A型、B型及びC型肝炎のプレS抗原、C型肝炎のウイルスRNAなどのウイルス成分など;インフルエンザウイルス(influenza viral)抗原、すなわち、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ及び他のインフルエンザウイルス成分など;麻疹ウイルス(measles viral)抗原、すなわち、麻疹ウイルス融合タンパク質及び他の麻疹ウイルス成分など;風疹(rubella)ウイルス抗原、すなわち、タンパク質E1及びE2並びに他の風疹ウイルス成分など;ロタウイルス(rotaviral)抗原、すなわち、VP7sc及び他のロタウイルス成分など;サイトメガロウイルス(cytomegaloviral)抗原、すなわち、エンベロープ糖タンパク質B及び他のサイトメガロウイルス抗原成分など;呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial viral)抗原、すなわち、RSV融合タンパク質、M2タンパク質及び他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分など;単純ヘルペスウイルス(herpes simplex viral)抗原、すなわち、前初期タンパク質、糖タンパク質D及び他の単純ヘルペスウイルス抗原成分など;水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster viral)抗原、すなわち、gpI、gpII及び他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分など;日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis viral)抗原、タンパク質E、M−E、M−E−NS1、NS1、NS1−NS2A、80%E及び他の日本脳炎ウイルス抗原成分など;並びに狂犬病ウイルス抗原(rabies viral)、すなわち、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質及び他の狂犬病ウイルス抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。ウイルス抗原の追加の例については、Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991)を参照されたい。
【0037】
本発明のrAb−DC/DC抗原ワクチンを用いて送達できる抗原性の標的には、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原又は寄生虫抗原などの抗原をコードする遺伝子が含まれる。ウイルスには、ピコルナウイルス(picornavirus)、コロナウイルス(coronavirus)、トガウイルス(togavirus)、フラビウイルス(flavirvirus)、ラブドウイルス(rhabdovirus)、パラミクソウイルス(paramyxovirus)、オルソミクソウイルス(orthomyxovirus)、ブニアウイルス(bunyavirus)、アレナウイルス(arenavirus)、レオウイルス(reovirus)、レトロウイルス(retrovirus)、パピローマウイルス(papilomavirus)、パルボウイルス(parvovirus)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、ポックスウイルス(poxvirus)、ヘパドナウイルス(hepadnavirus)及び海綿状ウイルス(spongiform virus)が含まれる。他のウイルス性の標的には、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス1及び2、麻疹、デング熱(dengue)、痘瘡(smallpox)、小児マヒ(polio)又はHIVが含まれる。病原体には、トリパノソーマ(trypanosome)、条虫(tapeworm)、回虫(roundworm)、蠕虫(helminthes)及びマラリア原虫(malaria)が含まれる。この方法で、胎児性抗原又は前立腺特異抗原などの癌マーカーをターゲティングできる。他の例には、HIV envタンパク質及びB型肝炎表面抗原が含まれる。ワクチン接種を目的とした、本発明によるベクターの投与は、強い免疫応答が望まれる導入遺伝子の長期的発現を可能にするために、ベクター随伴抗原が十分に非免疫原性であることが必要となる。場合によっては、個体のワクチン接種を、年に1回又は2年に1回など、まれに行うのみでよく、かつ感染性病原体に対して長期の免疫学的防御を提供しうる。本発明と共に、ベクターで、そして最終的には抗原として使用するための生物、アレルゲン、核酸配列及びアミノ酸配列の特定の例は、参照により関連部分が本明細書に組み込まれている、米国特許第6541011号明細書、とりわけ、本発明と共に用いることができる生物と特定の配列とを照らし合わせる表に見出すことができる。
【0038】
本明細書で開示するrAbワクチンと共に使用するための細菌抗原には、例えば、百日咳(pertussis)細菌抗原、すなわち、百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、ペルタクチン、FIM2、FIM3、アデニル酸シクラーゼ及び他の百日咳細菌抗原成分など;ジフテリア(diptheria)細菌抗原、すなわち、ジフテリア毒素又はトキソイド、及び他のジフテリア細菌抗原成分など;破傷風(tetanus)細菌抗原、破傷風毒素又はトキソイド、及び他の破傷風細菌抗原成分など;レンサ球菌(streptococcal)細菌抗原、すなわち、Mタンパク質及び他のレンサ球菌細菌性抗原成分など;グラム陰性桿菌(gram-negative bacilli)細菌抗原、すなわち、リポ多糖及び他のグラム陰性細菌抗原成分など;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)細菌抗原、すなわち、ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A及び他のミコバクテリア(mycobacterial)抗原成分など;ピロリ菌(Helicobacter pylori)細菌抗原成分;肺炎球菌(pneumococcal)細菌抗原、すなわち、ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖及び他の肺炎球菌細菌抗原成分など;インフルエンザ菌(haemophilus influenza)細菌抗原、すなわち、莢膜多糖及び他のインフルエンザ菌細菌抗原成分など;炭疸(anthrax)細菌抗原、すなわち、炭疸菌防御抗原及び他の炭疸細菌抗原成分など;並びにリケッチア(rickettsiae)細菌抗原、すなわち、rompA及び他のリケッチア細菌抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。他のどんな細菌抗原、ミコバクテリア抗原、マイコプラズマ抗原、リッケチア抗原又はクラミジア抗原も、本明細書に記載の細菌抗原に含まれる。インフルエンザ菌、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、髄膜炎菌(neisseria meningitidis)、肺炎レンサ球菌(streptococcus pneumoniae)、淋菌(neisseria gonorrhoeae)、サルモネラ血清型チフス菌(salmonella serotype typhi)、赤痢菌(shigella)、コレラ菌(vibrio cholerae)、デング熱、脳炎(Encephalitides)、日本脳炎、ライム病(lyme disease)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ウエストナイルウイルス(west nile virus)、黄熱(yellow fever)、野兎病(tularemia)、肝炎(ウイルス性、細菌性)、RSV(呼吸器合胞体ウイルス、respiratory syncytial virus)、HPIV1及びHPIV3、アデノウイルス(adenovirus)、天然痘(small pox)、アレルギー並びに癌も、部分的又は全体的な病原体となりうる。
【0039】
本発明の組成物及び方法と共に使用するための真菌抗原には、例えば、カンジダ菌(candida)真菌抗原成分;ヒストプラスマ(histoplasma)真菌抗原、すなわち、熱ショックタンパク質60(HSP60)及び他のヒストプラスマ真菌抗原成分など;クリプトコッカス(cryptococcal)真菌抗原、すなわち、莢膜多糖及び他のクリプトコッカス真菌抗原成分など;コクシジオイデス(coccidiodes)真菌抗原、すなわち、球状体抗原及び他のコクシジオイデス菌抗原成分など;並びに白癬(tinea)真菌抗原、すなわち、白癬菌ワクチン及び他の白癬真菌抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
原生動物抗原及び他の寄生虫抗原の例には、例えば、熱帯熱マラリア原虫抗原、すなわち、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液段階抗原pf155/RESA及び他のマラリア原虫抗原成分など;トキソプラズマ(toxoplasma)抗原、すなわち、SAG−1、p30及び他のトキソプラズマ抗原成分など;住血吸虫(schistosomae)抗原、すなわち、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシン及び他の住血吸虫抗原成分など;森林型熱帯リーシュマニア(leishmania major)及び他のリーシュマニア抗原、すなわち、gp63、リポホスホグリカン及びその関連タンパク質、並びに他のリーシュマニア抗原成分など;並びにクルーズトリパノソーマ(trypanosoma cruzi)抗原、すなわち、75〜77kDa抗原、56kDa抗原及び他のトリパノソーマ抗原成分などが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のrAbを用いてターゲティングすることができる抗原は、通常、内部移行の可能性、免疫細胞特異性のレベル、標的免疫細胞、免疫細胞の成熟及び/又は活性化のレベルなどを含めた多くの因子に基づいて選択される。限定されるものではないが、樹状細胞の細胞表面マーカーの例には、MHCクラスI、MHCクラスII、B7−2、CD18、CD29、CD31、CD43、CD44、CD45、CD54、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR及び/又はASPGRなどが含まれ、場合によっては、CD2、CD3、CD4、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD56及び/又はCD57の不在も有する。抗原提示細胞の細胞表面マーカーの例には、MHCクラスI、MHCクラスII、CD40、CD45、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1並びに/又はFcγ受容体が含まれるが、これらに限定されない。T細胞の細胞表面マーカーの例には、CD3、CD4、CD8、CD14、CD20、CD11b、CD16、CD45及びHLA−DRが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
送達用の、細胞表面にある標的抗原には、典型的には腫瘍組織の細胞の細胞表面、細胞質、核及び細胞小器官などに由来する腫瘍抗原に特徴的なものが含まれる。本発明の抗体部分への腫瘍標的の例には、血液癌、すなわち、白血病及びリンパ腫など、神経腫瘍、すなわち、星状細胞腫又はグリア芽腫など、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、消化管腫瘍、すなわち、胃癌又は大腸癌など、肝臓癌、膵臓癌、泌尿生殖器腫瘍、すなわち、頚部癌、子宮癌、卵巣癌、腟癌、精巣癌、前立腺癌又は陰茎癌、骨腫瘍、血管腫瘍、又は口唇、鼻咽頭、咽頭部及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆管、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び神経系の他の部分並びに甲状腺の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫並びに白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明を用いた抗原提示のために、単独で、又は組合せて、免疫細胞に送達できる抗原の例には、腫瘍タンパク質、例えば、変異導入された発癌遺伝子、腫瘍関連のウイルスタンパク質並びに腫瘍ムチン及び糖脂質が含まれる。腫瘍関連のウイルスタンパク質でありうる抗原は、上述のウイルスのクラスに由来するものとなる。特定の抗原は、腫瘍に特徴的なものでありえ(サブセットの1つは、通常は腫瘍前駆細胞によって発現されないタンパク質である)、又は、通常は腫瘍前駆細胞で発現されるが、腫瘍の変異特性を有するタンパク質でありうる。他の抗原には、活性又は細胞内分布が改変されている正常タンパク質の変異変種、例えば、腫瘍抗原を生み出す遺伝子変異が含まれる。
【0044】
腫瘍抗原の非限定的な特定の例には、CEA、前立腺特異的抗原(PSA,prostate specific antigen)、HER−2/neu、BAGE、GAGE、MAGE1〜4、6及び12、MUC(ムチン、Mucin)(例えば、MUC−1、MUC−2など)、GM2及びGD2ガングリオシド、ras、myc、チロシナーゼ、MART(黒色腫抗原)、Pmel17(gp100)、GnT−VイントロンV配列(N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺Ca psm、PRAME(黒色腫抗原)、β−カテニン、MUM−1−B(黒色腫偏在性変異遺伝子産物、melanoma ubiquitous mutated gene product)、GAGE(黒色腫抗原)1、BAGE(黒色腫抗原)2〜10、c−ERB2(Her2/neu)、EBNA(エプスタイン−バーウイルス核抗原、Epstein-Barr Virus nuclear antigen)1〜6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV,human papilloma virus)E6及びE7、p53、肺耐性タンパク質(LRP,lung resistance protein)、Bcl−2並びにKi−67が含まれる。加えて、上記免疫原性分子は、自己免疫疾患の開始及び/又は伝搬に関与する自己抗原でありえ、この自己免疫疾患の病態は、例えばSLE又はMGのように、大部分、関連する標的器管、組織又は細胞によって発現された分子に特異的な抗体の活性に起因する。そのような疾患では、関連した自己抗原に対する、進行中の抗体媒介性(すなわち、Th2型)免疫応答を、細胞性(すなわち、Th1型)の免疫応答へと誘導することが望ましい場合がある。別法では、関連する自己免疫疾患を有してはいないが、罹患しやすいことが疑われている対象体内の自己抗原に対するTh2応答の開始を、適切な自己抗原に対するTh1応答を予防的に誘導することによって、防止するか、又はそのレベルを低減することが望ましい場合がある。所望の自己抗原には、(a)SLEに関しては、Smith抗原、RNP(リボ核タンパク質、ribonucleoprotein)、SS−A及びSS−Bタンパク質が含まれ、(b)MGに関しては、アセチルコリン受容体が含まれるが、これらに限定されない。1又は複数のタイプの自己免疫応答に関与するその他の種々な抗原の例には、例えば、内因性ホルモン、すなわち、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、テストステロン、成長ホルモン、プロラクチン及び他のホルモンなどが含まれる。
【0045】
自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶に関与する抗原を、本発明の組成物及び方法で用いることができる。例えば、以下の自己免疫疾患又は障害、すなわち、糖尿病、真性糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎が含まれる)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎が含まれる)、乾癬、シェーグレン症候群によって続発する乾性角結膜炎を含めたシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷反応によるアレルギー反応、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、腟炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病境界反応、結節性紅斑癩、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スチーブンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎及び間質性肺線維症のうちのいずれか1又は複数に関与する抗原を、本発明で用いることができる。自己免疫疾患に関与する抗原の例には、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65,glutamic acid decarboxylase 65)、天然DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、チログロブリン及び甲状腺刺激ホルモン(TSH,thyroid stimulating hormone)受容体が含まれる。アレルギーに関与する抗原の例には、花粉抗原、すなわち、スギ花粉抗原、ブタ草花粉抗原及びライ麦花粉抗原など、動物由来の抗原、すなわち、塵ダニ抗原及びネコ抗原など、組織適合性抗原、並びにペニシリン及び他の治療薬が含まれる。移植拒絶に関与する抗原の例には、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓及び神経移植片成分など、移植受容動物体内に移植される移植片の抗原成分が含まれる。抗原は、自己免疫疾患を治療するのに有用な改変ペプチドリガンドでもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、病原体DNA又はRNAによってコードされている多くの病原体ポリペプチドのいずれかの中に位置するエピトープに類似した一次構造、二次構造又は三次構造を含有するペプチド又はタンパク質抗原を指す。類似性のレベルは、通常、そのようなポリペプチドに対するモノクローナル又はポリクロナール抗体が、そのペプチド抗原又はタンパク質抗原にも結合若しくは反応するか、又はそれ以外の方法でそれも認識する程度となる。そのような抗体と併用して、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA及びRIAなど、様々な免疫検定法が利用でき、それらの方法はすべて当業者には公知である。ワクチンでの使用に適した病原体エピトープ及び/又はそれらの機能的等価物の同定は、本発明の一部である。単離及び同定された後、容易に機能的等価物を得ることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4554101号明細書に教示されているHoppの方法を利用することができる。米国特許第4554101号明細書は、親水性に基づいた、アミノ酸配列からのエピトープの同定及び調製を教示する。他のいくつかの文書にも記載されている方法、及びそれらに基づいたソフトウェアプログラムも、エピトープコア配列を同定するのに使用できる(例えば、Jameson and Wolf, 1988、Wolf et al., 1988、米国特許第4554101号明細書を参照)。これらの「エピトープコア配列」のアミノ酸配列は、その後、ペプチド合成又は組換え技法のいずれかの適用を介して、容易にペプチドに組み入れることができる。
【0047】
活性成分として、本発明の抗原をコードする核酸を含有しているワクチン組成物の調製物は、液体溶液又は懸濁液として、注射剤として調製することができ、また、感染の前に液体に入れて溶液又は懸濁液にするのに適した固体形態も調製することができる。この調製物は、乳化されて、リポソーム内に封入されたものでよい。活性免疫原性成分は、しばしば担体と混合され、この担体は、薬学的に許容され、活性成分との適合性を有するものである。
【0048】
「薬学的に許容される担体」という用語は、それが投与される対象の体内でアレルギー反応又は他の有害反応を引き起こさない担体を指す。適した、薬学的に許容される担体には、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、及びこれらの組合せのうちの1又は複数が含まれる。加えて、望ましい場合には、ワクチンは、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの有効性を増強するアジュバントなど、微量の佐剤を含有しうる。有効でありうるアジュバントの例には、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP,N-acetyl-muramyl-L-threonyl-D-isoglutamine)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、MTP−PE及びRIBIが含まれるが、これらに限定されない。RIBIは、細菌から抽出された3つの成分、すなわち、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコール酸及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween 80エマルジョン中に含有している。アジュバントの他の例には、DDA(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、dimethyl dioctadecyl ammonium bromide)、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント、並びにQuilAが含まれる。加えて、リンフォカイン(例えば、IFN−γ、IL−2及びIL−12)又はポリI:Cなどの合成IFN−γ誘導因子などの免疫調節物質も、本明細書に記載のアジュバントと併用できる。
【0049】
本発明に記載の医薬製品は、血清リポタンパク質表面に存在するアポリポタンパク質の特異的DNA結合部位に結合する単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を有する裸のポリヌクレオチドを含有しうる。このポリヌクレオチドは、生理活性ペプチド、アンチセンスRNA又はリボザイムをコードするものでよく、生理的に許容される投与可能な形態で用意されるであろう。本発明から生じうる別の医薬製品は、本明細書に記載の方法によって患者血液又は他の取得源から単離された高度に精製された血漿リポタンパク質画分と、血清リポタンパク質表面に存在するアポリポタンパク質の特異的DNA結合部位に結合する単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有する、上記精製リポタンパク質画分に予め結合された生理的に許容される投与可能形態のポリヌクレオチドとを含有しうる。
【0050】
さらに別の医薬製品は、生理的に許容される投与可能形態の、単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドに予め結合された、単コピー又は多コピーの特異的DNA結合モチーフを含有する組換えアポリポタンパク質断片を含有する高度に精製された血漿リポタンパク質画分を含有しうる。さらに別の医薬製品は、生理的に許容される投与可能形態の、単コピー又は多コピーの特定ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドに予め結合された、単コピー又は多コピーの特異的DNA結合モチーフを含有する組換えアポリポタンパク質断片を含有する高度に精製された血漿リポタンパク質画分を含有しうる。
【0051】
投与するべき用量は、治療される対象の体重及び身体状態、並びに治療の投与経路及び頻度に大きく依存している。高度に精製されたリポタンパク質画分に予め結合された裸のポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、ポリヌクレオチド1μg〜1mg及びタンパク質1μg〜100mgの範囲にある量で投与できる。
【0052】
rAb及びrAb複合体の投与では、患者は、もしあればベクターの毒性を考慮に入れて、化学療法剤を投与するための一般的プロトコールに従う。治療サイクルは、必要に応じて繰り返されることが予測される。記載の遺伝子療法と組合せて、様々な標準的治療及び外科的介入を適用できることも企図されている。
【0053】
遺伝子療法の臨床適用が企図されている場合、複合体を、意図されている適用に適した医薬組成物として調製することが必要となる。通常これは、発熱因子、及びヒト又は動物に有害でありうるどんな他の不純物も本質的に含まない医薬組成物を調製することが必要となる。通常、複合体に安定性を与え、かつ標的細胞による複合体の摂取を可能にするために、適切な塩及び緩衝剤を用いることも望まれる。
【0054】
本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体又は水溶媒中に溶解又は分散された、有効量の化合物を含有しうる。そのような組成物は、接種材料と呼ぶこともできる。医薬活性物質用のそのような媒体及び作用物質の使用は、当技術分野でよく知られている。どんな従来の媒体又は作用物質も、それが活性成分と不適合でない限り、治療組成物中でのその使用が企図されている。栄養補助活性成分も組成物に組み込むことができる。本発明の組成物は、古典的な製剤も含有しうる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中、並びに油中にデイスパージョンを調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。
【0055】
疾患状態。最大(又は場合によっては最小)の免疫応答を得るための部位への抗原の送達を最大にするために、治療するべき特定の疾患に応じて、本発明による治療組成物の投与は、その経路を介して標的組織に到達可能である限り、任意の一般的な経路を介したものとなる。投与は、通常、正所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射となる。送達するための他の領域には、経口、鼻腔、頬側、直腸、腟又は局所が含まれる。局所投与は、皮膚癌の治療にとりわけ有利となる。そのような組成物は、通常、生理的に許容される担体、緩衝剤又は他の賦形剤を含有する薬学的に許容される組成物として投与される。
【0056】
本発明のワクチン又は治療組成物は、注射によって、非経口的に、例えば皮下又は筋肉内に投与できる。投与の他の方法に適した別の製剤には、坐剤が含まれ、場合によっては、経口製剤又はエアゾールとして供与するのに適した製剤が含まれる。経口製剤の場合、アジュバントを利用したT細胞サブセットの操作、抗原パッケージング、又は様々な製剤への個々のサイトカインの添加によって、最適化された免疫応答を伴った、経口ワクチンの改善がもたらされる。坐剤用には、伝統的な結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含有しうる。そのような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含有する混合物から生成することができる。経口製剤は、通常使用される賦形剤、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムなどを含有する。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤又は粉末薬の形態を取って、10%〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有しうる。
【0057】
本発明の抗原をコードする核酸は、中性形態又は塩形態で、ワクチン又は治療組成物中に処方することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(そのペプチドの遊離アミノ基で形成される)が含まれ、それらは、無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸など、又は有機酸、すなわち酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマレイン酸などで形成される。遊離カルボキシル基で形成された塩も、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は鉄(III)など、並びに有機塩基、すなわちイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン及びプロカインなどから得ることができる。
【0058】
ワクチン又は治療組成物は、投与剤形と適合した方法並びに予防上及び/又は治療上有効となる量で投与する。投与するべき量は、治療される対象に依存し、これには、例えば、対象の免疫系が抗体を合成する能力、及び望ましい防御又は治療の程度が含まれる。適した用量範囲は、約1mg〜300mgの範囲及び好ましくは約10mg〜50mgの範囲など、約0.1mg〜1000mgの範囲のワクチン接種1回あたり、活性成分数百マイクログラムの桁のものである。初期投与及び追加免疫注射に適した投与計画も可変的であるが、典型的には、初期投与の後に後続の接種を行うもの、又は他の投与を行うものである。投与するのに必要な活性成分の正確な量は、開業医の判断により、対象それぞれに特有でありうる。本発明の核酸分子又は融合ポリペプチドの治療有効量が、とりわけ、投与スケジュール、投与される抗原の最小投薬単位、核酸分子又は融合ポリペプチドが他の治療薬と併用投与されるかどうか、受容者の免疫状態及び健康、並びに特定の核酸分子又は融合ポリペプチドの治療活性によって決まることは、当業者には明らかであろう。
【0059】
組成物は、単回投与スケジュールで投与することも、反復投与スケジュールで投与することもできる。反復投与スケジュールは、ワクチン接種の初期コースが、例えば1〜10回の別々の投与を含みうる投与スケジュールであって、その後、その免疫応答を維持及び/又は補強するのに必要な後続の時間間隔で、例えば次の投与まで1〜4カ月で、他の投与が行われ、そして、必要ならば、それに続く投与が数カ月後に行われる投与スケジュールである。防御免疫の望ましいレベルを維持するためには、1〜5年、通常3年間隔の周期的な追加免疫が望ましい。免疫処置コースの後に、ESAT6又はST−CFと共培養された末梢血液リンパ球(PBL、peripheral blood lymphocyte)のインビトロ増殖アッセイ、及び初プライミングされたリンパ球から放出されたIFN−γのレベルの測定を行うことができる。これらのアッセイは、放射性ヌクレオチド、酵素及び蛍光標識など、従来の標識を用いて実施できる。これらの技法は当業者に知られており、参照により関連の部分が本明細書に組み込まれている米国特許第3791932号、第4174384号及び第3949064号明細書に見出すことができる。
【0060】
モジュールrAb担体及び/又は結合rAb担体−(コヒーシン/ドックリン及び/又はドックリン−コヒーシン)−抗原複合体(rAb−DC/DC−抗原ワクチン)は、核酸ベクターが使用されるかどうか、又は最終精製タンパク質若しくは最終ワクチン形態が使用されるかどうかに応じて、1又は複数の「最小投薬単位」で与えることができる。最小投薬単位は、その投与、すなわち適切な経路及び治療実施計画に伴って望ましい応答を産生すると計算された所定の量の治療組成物を含有するものとして定義されている。投与するべき量、並びに特定の経路及び剤形は、臨床分野の当業者の技術に包含される。治療するべき対象、とりわけ対象の免疫系の状態及び望ましい防御についても評価することができる。最小投薬単位は、単回の注射で投与する必要はなく、それには、一定の時間にわたる持続注入も含まれうる。本発明の最小投薬単位は、DNA/kg(又はタンパク質/kg)体重によって、好都合に表記されうるものであり、約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.5、1、10、50、100、1000mg又は1000mg超DNA又はタンパク質/kg体重の間の範囲が投与される。同様に、送達されるrAb−DC/DC−抗原ワクチンの量は約0.2〜約8.0mg/kg体重の範囲で変動しうる。したがって、特定の実施形態では、0.4mg、0.5mg、0.8mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg及び7.5mgのワクチンをインビボで個体に送達できる。投与するべきrAb−DC/DC−抗原ワクチンの用量は、治療される対象の体重及び身体状態、並びに投与経路及び治療の頻度に大きく依存している。リポソーム送達ベクター又はウイルス性送達ベクターに予め結合された裸のポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、1μg〜1mgポリヌクレオチド又は1μg〜100mgタンパク質の範囲の量で投与できる。したがって、特定の組成物は、1μg、5μg、10μg、20μg、3.0μg、40μg50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgのベクターに独立に結合した、約1μg、5μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1000μgの間のポリヌクレオチド又はタンパク質を含みうる。
【0061】
Flu抗原をターゲティングされた樹状細胞による、ヒトFlu特異的T細胞の免疫刺激を測定するインビトロ細胞系で本発明を試験した。ここに示す結果は、単独ではこの系で効力がない抗原用量における、そのような抗原特異的細胞の特異的な増殖を実証する。
【0062】
本発明は、モジュールrAb担体、すなわち、例えば、ヒマ毒、炭疽菌(Anthrax)毒素、及びスタフィロコッカスエンテロトキシンB由来の防御抗原と複合体形成した組換えヒト化mAb(特異的なヒト樹状細胞受容体に対するもの)を作製するのにも使用できる。この存在の潜在的市場は、すべての軍関係者のワクチン接種、及びこれらの物質に関連したどんな生体脅威(biothreat)にも反応して大規模人口密集地に投与するための予備に保存されるワクチンである。本発明は、ヒト使用及び動物使用の両方のためのワクチン一般の設計に広範な適用を有する。所望の産業には、製薬産業及びバイオテクノロジー産業が含まれる。
【0063】
一般的方法−制限酵素及びDNA修飾酵素はNEB社から入手した。プラスミド及びDNA断片の精製には、Qiagen社製の製品を用いた。SDS−PAGEは、Simply Blue(Invitrogen社製)で染色された4〜12%のBis-Trisゲルで行った。クロマトグラフィー用のカラム及び樹脂は、GE Healthcare社から入手した。プラスミドコンストラクトは、DNA配列決定(MCLAB社)によって確認した。DNAプライマーは、Operon社又はMidland Certified Reagent Company社から入手した。配列分析は、Sequencher(Gene Codes社製)で行った。ProtParamツール(2005年)によって予測された計算上の吸光係数に基づいたタンパク質濃度は、UV吸収(NanoDrop社製ND-1000)によって測定した。配列は、参照により本明細書に組み込まれている配列表の配列番号1〜39に示す。それらは、抗DCIR mAb重鎖(配列番号1〜17)及び軽鎖のシグナルペプチド及び可変領域配列(配列番号18〜39)のアラインメントである。予測されるN末端シグナルペプチド領域、変種間又は近縁配列間における配列の相違は、Sequencherを用いて決定した。
【0064】
コヒーシン−屈曲部−hMART−1−ペプチドA−6×Hisタンパク質のコヒーシンドメインへのC末端伸長部の配列。免疫優性ペプチド配列ペプチドには下線が引かれており、このペプチドの境界にある太字の残基は、抗原の天然配列である。C末端のHisタグは、Ni++アフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にする。C186 コヒーシン−屈曲部−hMART−1−ペプチドA−6×His:
ASDTTEARHPPVTTPTTDRRKGTTAEELAGIGILTVILGGKRTNNSTPTKGEFCRYPSHWRPLEHHHHHH(配列番号40)。
【0065】
抗原発現コンストラクト−PCRを用いて、インフルエンザA/Puerto Rico/8/34/Mount Sinai (H1N1)のM1タンパク質のORFを増幅し、その間に、開始コドンの遠位に位置するNhe I部位と、終止コドンの遠位に位置するNot I部位とを組み込んだ。消化断片をpET-28b(+)(Novagen社製)にクローニングし、M1 ORFをHis6タグとインフレームになるように挿入して、それによって、His.Flu M1タンパク質をコードするようにした。N末端のプロテインG前駆体B2ドメイン残基298〜352(gi|124267|)をNco I部位の遠位にコードし、その後に、GGSGGSGGSLD(配列番号41)をコードするリンカー残基を有する類似のベクターにFlu M1 ORFを挿入した。このベクターは、Q246E変化を有するProG.Flu M1タンパク質を発現した。Nco I部位とNhe I部位との間に挿入された、クロストリジウム・サーモセラム(C. thermocellum)由来のN末端169残基コヒーシンドメインをコードするpET28b(+)誘導体は、Coh.Hisを発現した。Coh.Flu M1.Hisの発現には、上記誘導体のNhe I部位とXho I部位との間にFlu M1 ORFを挿入した。Coh.PEP.His発現コンストラクトも、必要な配列をコードする合成DNAをそれらが利用していることを除いて、同様に作製した。タンパク質は、カナマイシン耐性(40μg/ml)の選択を用い、200回転/分で振盪しながら37℃で対数増殖期中期まで培養した大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)(Novagen社製)又はT7 Express(NEB社製)で、120mg/LのIPTGを添加して発現させた。3時間後に、遠心法によって細胞を採取し、−80℃で保存した。開始コドンの代わりにSal I部位を組み込み、ベクターのXho I部位に挿入するために、遠位のXho I部位を付加することによって、上述のAP融合体分泌ベクター内の外部ドメインセグメントを、ProGセグメント及びコヒーシンセグメントで置換した。「空」のAPベクターは、外部ドメインセグメントを除去することによって作製した。これらのコンストラクトは、それぞれ、ProG.AP、Coh.AP及びAPの分泌を指示した。
【0066】
組換えタンパク質の発現及び精製−プロテアーゼ阻害剤カクテルII(Calbiochem社製)0.1mlを含有する、氷冷の0.1M NaPO4 pH7.4(緩衝液A、ProG.Flu M1用)又は50mM Tris、1mM EDTA pH8.0(緩衝液B、他のすべてのタンパク質用)30mlに、各1Lの発酵物から得られた大腸菌細胞を再懸濁した。これらの細胞を、5分間の休止時間を挟んだ2×5分間、設定18で(Fisher社製Sonic Dismembrator 60)、氷上で超音波処理し、その後、17000r.p.m.(Sorvall社製SA-600)、4℃で20分間、遠心処理を行った。ProG.Flu M1を得るために、緩衝液Aで平衡化したQセファロース5ml中に上清を通し、その後、QのフロースルーにhIgGビーズ5mlを添加し、混合しながら4℃で1時間インキュベートした。ビーズに結合したタンパク質を、冷PBS 50mlで洗浄し、0.1MグリシンpH2.7 2×10mlで溶出した。プールした溶出液を、0.1M MES pH5.0緩衝液を用いてpH5にし、50mM MES pH5.0(緩衝液C)で平衡化した1ml HiTrap Sカラム内を流した。カラムに結合したタンパク質を緩衝液Cで繰り返し洗浄し、0〜1MのNaCl勾配を有する緩衝液Cで溶出した。ピーク画分をプールした。His.Flu M1を精製するために、Qセファロースビーズ5mlの中に、細胞溶解液上清画分50mlを通し、160mM Tris、40mMイミダゾール、4M NaCl pH7.9 6.25mlをQセファロースのフロースルーに添加した。これを、Ni++充填した5ml HiTrapキレート化HPカラムに4ml/分で添加した。カラムに結合したタンパク質を20mM NaPO4、300mM NaCl pH7.6(緩衝液D)で洗浄し、その後、100mM H3COONa pH4.0でもう1回洗浄した。結合したタンパク質を100mM〜1MのH3COONa勾配pH4.0で溶出した。ピーク画分をプールし、100mM H3COONa pH4.0で平衡化した5ml HiTrap Sカラムに4ml/分で添加し、平衡化緩衝液で洗浄し、その後、50mM NaPO4 pH7.5でもう1回洗浄した。結合したタンパク質を、0〜1MのNaCl勾配を有する50mM NaPO4 pH7.5で溶出した。約500mM NaClで溶出したピーク画分をプールした。His.Flu M1の調製物は、変動的な量の非完全長産物、おそらくC末端部分を欠失した産物を含有していた。Coh.Flu M1.Hisを精製するために、2Lの培養物から得られた細胞を、上述の通り、但し緩衝液B中で超音波処理した。遠心処理の後、上清にTriton X114 2.5mlを添加し、氷上で5分間インキュベートした。25℃でさらに5分間インキュベートした後、25℃で遠心処理して、上清をTriton X114から分離した。この抽出を繰り返し、Qセファロースビーズ5mlの中に上清を通し、160mM Tris、40mMイミダゾール、4M NaCl pH7.9 6.25mlをQセファロースのフロースルーに添加した。その後、Ni++キレート化クロマトグラフィーによって上述の通りタンパク質を精製し、0〜500mMイミダゾールを有する緩衝液Dで溶出した。
【0067】
マウス/ヒトキメラmAbのcDNAクローニング及び発現−全RNAをハイブリドーマ細胞から調製し(RNeasyキット、Qiagen社製)、供給された5’プライマー及び遺伝子特異的な3’プライマー、すなわち、
mIgGκ、5’ggatggtgggaagatggatacagttggtgcagcatc3’;(配列番号42)
mIgGλ、5’ctaggaacagtcagcacgggacaaactcttctccacagtgtgaccttc3’;(配列番号43)
mIgG1、5’gtcactggctcagggaaatagcccttgaccaggcatc3’;(配列番号44)
mIgG2a、5’ccaggcatcctagagtcaccgaggagccagt3’;(配列番号45)
及びmIgG2b、5’ggtgctggaggggacagtcactgagctgctcatagtgt3’(配列番号46)
を用いたcDNA合成及びPCR(SMART RACEキット、BD Biosciences社製)に用いた。PCR産物をクローニングし(pCR2.1 TAキット、Invitrogen社製)、DNA配列決定によって特徴付けした。得られた、マウスH鎖及びL鎖のV領域cDNAの配列を用い、特異的プライマーを使用して、シグナルペプチド及びV領域をPCR増幅し、その間、下流のヒトIgGκ領域又はIgG4H領域をコードする発現ベクター内にクローニング用の隣接制限部位を組み込んだ。Xho I部位及びNot I部位によって挟まれた残基401〜731(gi|63101937|)を増幅し、これをpIRES2-DsRed2(BD Biosciences社製)のXho I〜Not Iの間に挿入することによって、キメラmvκ−hIgκを発現するためのベクターを構築した。PCRを用いて、Nhe I部位又はSpe I部位、その後CACCを追加した開始コドンから、Xho I部位を追加したコード領域(例えばgi|76779294|の残基126)までmAb Vk領域を増幅した。その後、このPCR断片を上記ベクターのNhe I〜Not Iの間にクローニングした。κmSLAMリーダーを用いたキメラmvκ−hIg用のベクターは、5’ctagttgctggctaatggaccccaaaggctccctttcctggagaatacttctgtttctctccctggcttttgagttgtcgtacggattaattaagggcccactcgag3’(配列番号47)という配列を、上記ベクターのNhe I〜Xho I間に挿入することによって構築した。PCRを用いて、予測されていた成熟型のN末端コドン(SignalP 3.0 Serverサーバを用いて定義された)(Bendtsen, J. D., H. Nielsen, et al. (2004). "Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0." J Mol Biol 340(4): 783-95.)と、mVκ領域の終端(上記の定義の通り)との間を、5’tcgtacgga3’を追加しながら増幅した。Bsi WI及びXho Iで消化した断片を、上記ベクターの対応する部位に挿入した。対照hIgκ配列は、gi|49257887|の残基26〜85及びgi|21669402|の残基67〜709に対応している。対照hIgG4Hベクターは、S229P及びL236E置換を有する、gi|19684072|の残基12〜1473がpIRES2-DsRed2ベクターのBgl II部位〜Not I部位間に挿入され、終止コドンの代わりに配列5’gctagctgattaattaa3’が追加されたものに対応する。これらの置換は、ジスルフィド結合を安定させ、残留FcR結合を消失させる(Reddy, M. P., C. A. Kinney, et al. (2000). "Elimination of Fc receptor-dependent effector functions of a modified IgG4 monoclonal antibody to human CD4." J Immunol 164(4): 1925-33.)。PCRを用いて、CACCと、その後Bgl II部位とを追加した開始コドンから、gi|19684072|の残基473をコードする領域まで、mAb VH領域を増幅した。その後、このPCR断片を上記ベクターのBgl II〜Apa I間にクローニングした。mSLAMリーダーを用いたキメラmVH−hIgG4配列用のベクターは、5’ctagttgctggctaatggaccccaaaggctccctttcctggagaatacttctgtttctctccctggcttttgagttgtcgtacggattaattaagggccc3’(配列番号48)という配列を、上記ベクターのBgl II〜Apa I間に挿入することによって構築した。PCRを用いて、予測されていた成熟型N末端コドンとmVκ領域の終端との間を、5’tcgtacgga3’を追加して増幅した。Bsi WI及びApa Iで消化された断片を上記ベクターの対応する部位に挿入した。
【0068】
近位のNhe I部位と、終止コドンに続く遠位のNot I部位とによって挟まれた様々な抗原コード配列を、H鎖ベクターのNhe I〜Pac I〜Not I間に挿入した。Flu HA1−1は、近位の5’gctagcgatacaacagaacctgcaacacctacaacacctgtaacaa3’(配列番号49)配列(Nhe I部位と、それに続くcipAコヒーシン−コヒーシンリンカー残基とコードする配列)と、遠位の5’caccatcaccatcaccattgagcggccgc3’(配列番号50)配列(His6、終止コドン及びNot I部位をコードしている)とを伴った、インフルエンザA型ウイルス(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))の赤血球凝集素gi|21693168|残基82〜1025(C982T変化を有する)によってコードされていた。Flu HA5−1は、Flu HA1−1と同じ配列が結合した、gi|50296052|インフルエンザAウイルス(A/Viet Nam/1203/2004(H5N1))赤血球凝集素残基49〜990によってコードされていた。Docは、近位のNhe I及び遠位のNot I部位を伴ったgi|40671|celD残基1923〜2150によってコードされていた。PSAは、5’gctagcgatacaacagaacctgcaacacctacaacacctgtaacaacaccgacaacaacacttctagcgc3’(配列番号51)(Nhe I部位及びcipAスペーサー)という近位配列と、遠位のNot I部位とを伴った、gi|34784812|前立腺特異抗原残基101〜832によってコードされていた。Flu M1−PEPは、5’gctagccccattctgagccccctgaccaaaggcattctgggctttgtgtttaccctgaccgtgcccagcgaacgcaagggtatacttggattcgttttcacacttacttaagcggccgc3’(配列番号52)によってコードされていた。これも、他のすべてのペプチドをコードする配列も、Nhe I及びNot I制限H鎖ベクター又はNhe I - Xho I制限Coh.Hisベクターへのクローニングに適合した末端を有する相補的な合成DNA断片の混合物を介して生成された。制限部位を組み込む必要がある場合、又はCipAスペーサー配列中を除いて、好ましいヒトコドンを常に使用した。
【0069】
rAb発現コンストラクトの産生レベルは、それぞれ約2.5μgのL鎖コンストラクト及びH鎖コンストラクトと、上述のプロトコールとを用いた5ml一時的形質移入で試験した。上清は、抗hIgG ELISA(AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)、Jackson ImmunoResearch社製)によって分析した。このプロトコールの試験では、分泌されたrAbの産生は、各DNA濃度の約2倍の範囲にわたって、H鎖ベクター及びL鎖ベクター濃度に非依存的であった(すなわち、この系はDNA飽和していた)。
【0070】
CD34−DCの生成−CD34+HPCを動員し、10U/kg/日の組換えG−CSF(Neupogen(登録商標))を5日間皮下投与された正常な健常ドナーの末梢血を採取した。CD34+−HPCは、CEPRATE SC幹細胞濃縮システム(ISOLEX)を用いて取得した。CD34−DCは、5%自己血清、50μM 2−βメルカプトエタノール、1%L−グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、並びにサイトカイン、すなわちGM−CSF(50ng/ml;Immunex Corp.社製)、FLT3−L(100ng/ml;R&D社製)及びTNF−α(10ng/ml;R&D社製)を補充したYssel培地(米国カリフォルニア州所在Irvine Scientific社製)中で0.5×106/mlの密度で培養することによって生成した。培養5日目に、サイトカインを補充した新鮮な培地に細胞を移し、9日目に採取した。
【0071】
CD34−DCの選別−培養9日目に、CD34由来のDCを採取し、抗CD1a FITC(Biosource International社製)及び抗CD14PE(BD Biosciences社製)で染色した。FACS Vantage(商標)(BD Biosciences社製)で、CD1a+CD14−−LC及びCD1a−CD14+−intDCを選別した。純度は、常に95〜99%であった。
【0072】
自己CD8+T細胞の精製−自己CD8+T細胞は、CD14、CD19、CD16、CD56及びCD4ビーズを用いて枯渇させた後に、CD8磁性ビーズ(Miltenyi社製)を用いて同一ドナーから得られたPBMCからの正の選択によって得た。一部の実験では、メモリーCD8+T細胞をCD8+CCR7−CD45RA−として選別した。
【0073】
CD34−DCサブセットによる、CD8+T細胞への、Flu M1タンパク質のクロスプレゼンテーション−HLA−A2ドナーから得た未選別又は選別済のCD34+DCサブセット、CD1a+LC又はCD14+IntDC(5×104細胞/ml)を、10%の熱不活性化ヒトAB型プール血清と、10U/ml IL−7(R&D社製)と、漸減用量の、抗DC抗体に架橋結合されたFlu M1とを補充したYssel培地中で、精製された自己CD8+T細胞(1×106細胞/ml)と共に培養した。CD40Lは24時間後に培養物に添加し、IL−2は3日後に添加した。クロスプレゼンテーション効率は、特異的なFlu M1、HLA−A201/pMI、フィコエリトリン結合iTAg MHC四量体(Beckman Coulter社製)を用いて、抗原特異的CD8+T細胞の増殖のレベルを分析することによって、8日後又は10日後に評価した。
【0074】
抗ヒトDCIRモノクローナル抗体の開発−それぞれマウスの免疫化及びmAbのスクリーニングのために、受容体外部ドメイン.hIgG(ヒトIgG1Fc)融合タンパク質及びHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ、horse radish peroxidase)融合タンパク質を産生した。hDCIR外部ドメイン.IgG用の発現コンストラクトは、以前に記載されており(Bates, E. E., N. Fournier, et al. (1999). "APCs express DCIR, a novel C-type lectin surface receptor containing an immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif." J Immunol 163(4): 1973-83.)、分泌を指示するために、マウスSLAM(mSLAM)シグナルペプチドを使用する(Bendtsen, J. D., H. Nielsen, et al. (2004). "Improved prediction of signal peptides: SignalP 3.0." J Mol Biol 340(4): 783-95.)。近位のインフレームXho I部位と、遠位のTGA終止コドン及びNot I部位とを付加しながら、AP残基133〜1581(gb|BC009647|)を増幅するPCRを用いて、hDCIR外部ドメイン.AP用の発現ベクターを作製した。上記hDCIR外部ドメイン.IgGベクター内のIgGコード配列をこのXho I〜Not I断片で置換した。上記に定義したDCIR外部ドメインコード領域の遠位に、gi|208493|残基14〜940をクローニングすることによって、DCIR.HRP融合タンパク質ベクターを作製した。
【0075】
哺乳動物細胞から分泌された組換えタンパク質の発現及び精製−融合タンパク質は、製造業者によるプロトコール(形質移入1Lあたり総プラスミドDNA1mg及び293 Fectin試薬1.3ml)に従って、FreeStyle(商標)293発現システム(Invitrogen社製)を用いて産生した。組換え抗体(rAb)を産生するには、H鎖及びL鎖をコードする等量のベクターを同時形質移入した。形質移入細胞を3日間培養し、培養上清を採取し、新たな培地を添加して、2日間インキュベーションを続けた。プールした上清を濾過によって清澄化した。受容体外部ドメイン.hIgGを、0.1MグリシンpH2.7による溶離を用いたHiTrapプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、その後、PBSに対して透析した。rAbは、HiTrap MabSelect(商標)カラムを用いて、同様に精製した。
【0076】
モノクローナル抗体の産生−マウスmAbは従来の細胞融合技術によって産生した。簡潔には、Ribiアジュバントと共に受容体外部ドメイン.hIgGFc融合タンパク質20μgを、6週齢のBALB/cマウスに腹腔内投与して免疫処置を行い、その後、10日後及び15日後に、20μgの抗原で追加免疫を行った。3カ月後、マウスを再度追加免疫し、その3日後に脾臓を摘出した。別法として、3〜4日ごとに30〜40日間の期間にわたって、1〜10μgの抗原を含有するRibiアジュバントを足蹠でマウスに注射した。最終追加免疫の3〜4日後に、流入領域リンパ節を採取した。従来の技法(Shulman, M., C. D. Wilde, et al. (1978). "A better cell line for making hybridomas secreting specific antibodies." Nature 276(5685): 269-70.)を用いて、脾臓から得たB細胞又はリンパ節細胞をSP2/O-Ag14細胞に融合させた。ELISAを用いて、融合パートナー単独と比較して、又はAPに融合した受容体外部ドメイン(Bates, E. E., N. Fournier, et al. (1999). "APCs express DCIR, a novel C-type lectin surface receptor containing an immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif." J Immunol 163(4): 1973-83.)に対して、受容体外部ドメイン融合タンパク質に対するハイブリドーマ上清をスクリーニングした。その後、完全長受容体cDNAをコードする発現プラスミドで一時的に形質移入された293 F細胞を用いて、陽性ウェルをFACSでスクリーニングした。
【0077】
抗DCIR mAbを開発するために、1000のハイブリドーマクローンから得た上清をスクリーニングした。そのうち、
90クローンは、DCIR.Ig対Ig ELISAに関して+であった。
64クローンは、FACSによるDCIR−293細胞に関して+であった。
62のFACS+クローンは、ELISA+であった。
2クローンは293+であった(したがって、DCIRに特異的でなかった)。
【0078】
ヒトDCによるサイトカイン産生を刺激する抗DCIR mAbを得るための生物学的スクリーニング−DCターゲッティングの目的には、抗原をDCに送達し、同時にDCを活性化して、送達された抗原に対する生産的な免疫応答を刺激する抗体を有することが潜在的に望ましい。したがって、本発明者らは、62クローンのFACS陽性抗DCIRハイブリドーマ上清のパネルを、DC刺激活性に関して直接的にスクリーニングした。CD34+由来のヒトDCをハイブリドーマ上清と共に24時間培養し、24時間後に、DC培養上清をケモカインMCP−1の存在に関してアッセイした。下の図は、すべてではないが、多くのハイブリドーマ上清が、対照と比較して、MCP−1の特異的産生を誘発したことを示す。
【0079】
上の図において星印で標識されている、選択されたハイブリドーマ(すべてではないが、大部分MCP−1産生を刺激する)は、クローン化され、CELLineフラスコ(Intergra社製)内で増殖された単一細胞であった。ハイブリドーマ上清を等容積の1.5Mグリシン、3M NaCl、1×PBS、pH7.8と混合し、MabSelect樹脂と共に回転させた。樹脂を結合緩衝液で洗浄し、0.1Mグリシン、pH2.7で溶出した。2M Trisで中和させた後、mAbをPBSに対して透析した。
【0080】
純粋な抗DCIR mAbの特徴付け−純粋なmAbは、最初に、ELISA(DCIR.Igがプレートに結合しており、HRP結合抗ヒトFc試薬で発色させた)によって、そしてDCIR.HRP捕捉アッセイ(mAbがプレートに結合しており、DCIR.HRP融合タンパク質で発色させた)によって試験した。図2は、プレートに結合したDCIRとmAbの高親和性の相互作用を示す代表的なアッセイ結果を示す(結合の特異性を示す対照は示されていない)。DCIR.HRP捕捉アッセイでは、(すべてでないが)いくつかのmAbが、可溶性のDCIR.HRPをプレートの表面に捕捉することができた。これらのデータは、このパネルにおける、選択された抗DCIR mAbが様々なDCIR結合親和性及び特性を有していたことを示す。
【0081】
FACS反応性に関しても、これらの純粋なmAbを試験した。最初に、完全長DCIRをコードする発現プラスミドで一時的に形質移入された293細胞に対して試験し、その後、様々なタイプの培養ヒトDC及びエキソビボヒトDCに対して試験した。下の図は、DCIR293細胞に対するFACS分析で力価決定されたmAbの代表的なセットを示す(対照細胞は陰性であった)。
【0082】
図3は、CD14+サブタイプ及びCD1a+サブタイプ両方のCD34由来ヒトDCが細胞表面DCIRを発現することを示している。これらの2つのDCサブタイプは、液性免疫応答対、細胞溶解性免疫応答の方向付けにおいて顕著に異なった役割を有し、したがって、両方のサブタイプのDCIRが存在することは、DCIRを介してヒトDCにターゲティングされた抗原が両方のタイプの免疫を誘発することを示唆しており、これは、例えばウイルス感染に対するワクチンにおける重要な特徴となる。
【0083】
図4は、ヒト皮膚から直接単離された3種のヒトDCサブタイプでもDCIRが発現されていることを示している。これらのサブタイプのDCはすべてこの受容体を発現するので、この観察は、DCIR抗原をターゲッティングするワクチンには、皮膚内への投与が有利であるはずであることを示している。これらのサブタイプのDCは、免疫を方向付けるそれらの特性に関して、上記培養ヒトDCに類似していることが知られており、したがって、望ましい複合免疫応答を誘発するには、DCIRを有する皮膚DCを介した抗原のターゲティングが有利であるはずである。
【0084】
真皮のDC及びLCは正常ヒト皮膚標本から精製した。細菌性プロテアーゼであるジスパーゼ2型の存在下で標本を4℃で18時間インキュベートし、その後、37℃で2時間インキュベートした。その後、表皮シート及び真皮シートを分離し、切断して小片(約1〜10mm)にし、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI 1640中に入れた。2日後に、培地中に移動した細胞を収集し、1.077g/dlのフィコール−ジアトリゾ酸勾配を用いてさらに濃縮した。DCは、抗CD1a FITC及び抗CD14 APC mAbで染色した後に、細胞選別によって精製した。
【0085】
他のヒト組織におけるDCIRの存在。図5は、ヒト扁桃腺内の胚中心を囲む細胞集団のDCIR特異的染色を示す。これらの細胞は、常在DCであるか、又は最近、例えば外来抗原で負荷されて、活性化された後に、この部位に移動してきたDCのいずれかである。この染色は、免疫が引き起こされる臓器への接近を可能にする、皮膚以外の経路による、DCIRにターゲッティングされたワクチンの投与も、免疫応答を誘発するのに有利であるはずであることを示している。
【0086】
抗原をヒトDCにターゲッティングする抗DCIR mAbを使用し、製造業者によるプロトコールに従って、6−[3’(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(sulfo−LC−SPDP、sulfosuccinimidyl 6-[3' (2-pyridyldithio)-propionamido] hexanoate;Pierce社製)を用いて、Flu M1タンパク質をmAbに化学的に架橋結合した。この多ステッププロトコールは、SPDPのNHSエステル基を介して、室温で30分間、mAbのアミンを修飾することによってmAbの活性化を行い、その後、PBSに対して透析を行うものである。その後、Flu M1タンパク質を添加して、室温で終夜インキュベートする。Flu M1タンパク質は、2つの遊離スルフヒドリル基を含有している。架橋結合反応の効率は、mAbと反応させる前のFlu M1タンパク質の量を、架橋結合後のmAb/Flu M1比と比較することによって見積もられた。本発明者らは、平均して50%のmAbが1分子のFlu M1と反応したと計算した。図6及び7は、架橋Flu M1タンパク質及びDCIRに対するmAbの例を示す。還元SDS−PAGEによる分析は、Flu M1/H鎖の染色の比率に基づいて、mAb 1に対して、1〜2のFlu M1を有する産物を同定した。これらの調製をインビトロ研究に用いた。非還元SDS−PAGE分析(下の2番目の図は、非常に大きな複合体の比率が低いことによって証明されるように、複合体が主としてFlu M1と単一のmAbとの間のものであったことを示している。
【0087】
図6は、抗DCIR_2C9 mAbへのCoh.Flu M1の架橋結合を示す。プロテインGセファロースアフィニティーによって精製された架橋結合産物の還元SDS−PAGE分析である。左から右へ、2.5μg、1μg Coh.Flu M1、1:1、2:1、4:1の比率でCoh.Flu M1をmAbと反応させて得られた産物10μgである。
【0088】
図7は、mAbへのHis.Flu M1の架橋結合を示す。プロテインGセファロースアフィニティーによって精製された架橋結合産物の非還元SDS−PAGE分析である。左から右へと、5μg His.Flu M1、それに続いて、5μg mAb(抗CD1a_OKT6、抗LANG_2G3、抗DCIR_2C9)と、5μg His.Flu M1と反応させた5μg mAbとの対である。
【0089】
Flu M1タンパク質に架橋結合された抗DC受容体mAbは抗原を効果的にヒトDCにターゲッティングする−抗DC受容体mAbをFlu M1タンパク質に化学的に架橋結合させ、様々な用量を、自己CD8+T細胞とのヒトCD34由来CD1a+DCの共培養物に添加した。24時間後に、DC活性化のために、CD40Lを培養物に添加し、続いて、3日目に、T細胞増殖のために、IL−2を添加した。8〜10日後に、Flu M1ペプチドであるGILGFVFTL(配列番号53)に特異的なT細胞をMHC四量体分析によって評価した。図8は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1がFlu M1特異的な細胞の増殖を誘発したが、同様な用量の非架橋Flu M1及びmAbでは、有意に少ないFlu M1特異的細胞増殖が観察されたことを示す。用量範囲は、架橋結合されたmAbが、遊離Flu M1より少なくとも50倍効果的に反応を誘発したことを示す。このデータは抗原ターゲッティング、すなわち、免疫応答の増強、この場合は特異的なFlu M1エピトープの記憶によるT細胞の復活を実証している。CD34−DCは、CD1a+LCサブセット又はCD14+IntDCサブセットに選別した。図9は、両方の細胞型でDCIR発現が同様なレベルであったのにもかかわらず、抗DCIRターゲッティングされたCD1a+LCが、Flu M1特異的CD8+細胞の増殖を方向付けるのにはるかに有効であったことを示す。
【0090】
図8は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、mAbに連結されていないFlu M1タンパク質より効率的に、Flu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す。CD34由来のCD1a+DCを、CD8+T細胞、及び示されている濃度の、His.Flu M1に架橋結合された抗DCIR_2C9 mAb又は非連結のmAbと共にインキュベートした。その後、Flu M1特異的な増殖に関してCD8+T細胞を分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0091】
図9は、抗DCIR mAbに架橋結合されたFlu M1が、Int−DCよりLCを介して、より効率的にFlu M1特異的CD8+T細胞の増殖を誘導することを示す。示されている濃度の、His.Flu M1に架橋結合した抗DCIR_2C9 mAbと共に、HLA−A2ドナーから得たLC又はInt−DCと自己CD8+T細胞とを共培養した。クロスプレゼンテーション効率をFlu M1特異的CD8+T細胞の頻度によって評価し、HLA−A201/pMI四量体を用いて分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0092】
プロトタイプ抗原ターゲッティングワクチンとしての組換え抗DCIR mAb(rAb)の開発。マウスハイブリドーマでコードされているH鎖及びL鎖可変(V)領域と、ヒト免疫グロブリンκ又はヒトIgG4H定常(C)領域とのキメラである分泌性抗DC受容体rAbを、一時的に形質移入された哺乳動物細胞で発現するためのベクターを開発した。異なった特異性を有する(すなわち異なった抗DCIRハイブリドーマから得た)抗DC受容体mAbのL鎖及びH鎖からのV領域を、cDNAクローニングし、DNA配列分析によって特徴付け、これらのベクター中に工学的に作製した。図10は、293細胞に同時形質移入され、培養上清中へのrAbの分泌に関して抗ヒトFC ELISAでアッセイされた多くの異なった抗DCIR mAbに対応するマウス−ヒトキメラrAbをコードするそのようなH+L鎖ベクターを示す。
【0093】
これらの抗DCIR rAbは、rAb H鎖とインフレームになっている約9.5kDAのドックリンドメインをコードしていた。これらのドックリンドメイン(rAb.Docと呼ばれる)の目的は、特異的な[rAb.Doc:Coh.抗原]複合体の構築を可能にすることである。この場合、Coh.抗原は、約17.5kDaのコヒーシンドメインと抗原との間の融合タンパク質を指す。コヒーシンとドックリンとの間の高親和性相互作用は、受容体特異性を有するDCの表面に抗原を送達することが本発明者らによって示されている特定の複合体を組み立てるのに使用される。例えば、下の図は、ヒトDCの表面に結合した[抗DCIR.Doc:Coh.Flu M1]複合体を示す(ここでは、Coh.Flu M1がビオチン化されており、洗浄ステップの後に細胞表面で検出される)。対照rAb.Doc:Coh.Flu M1複合体(下の図では赤で示されている)は、検出用ストレプトアビジンPE試薬単独より多くは結合しなかった。
【0094】
DCIRは、抗原の内部移行の動態が遅く、これによって他のDC受容体から区別される。DC−SIGNなどのDC受容体は、内部移行の動態が迅速であることを特徴としている。例えば、図11は、抗DC−SIGN/L.Docが、アレクシア標識されたCoh.Flu M1を、GM−CSF/IFN培養されたヒトDCの中に迅速に内部移行させることを示しており、標識の大部分は、15分以内に細胞の内部に入っている。対照的に、抗DCIR.Docは、Coh.Flu M1を極めて緩徐に内部移行させ、3時間目には、内部抗原及び細胞表面抗原の両方がかなりの量存在している。この結果は、DCIRを、内部移行の遅いDC受容体として識別するものであり、Bates et. alの結論と対照的となっている。Bates et. alは、「架橋結合の後、DCIRは、MMRで観察された迅速な動態(データは示されていない)とは対照的に、単球由来DC及びCD34由来DCの中に緩徐かつ微弱に移行したのみであった。この知見は、受容体介在性エンドサイトーシスによる銀捕捉がDCIRの主要な機能ではないことを示唆している」ことを示唆している。
【0095】
図11は、抗DCIR.Doc rAbに連結されたCoh.Flu M1がGM/IL−15ヒトDCに特異的に結合することを示す。4倍のモル過剰であるビオチン化Coh.Flu M1と予め1時間混合されていた、示されている濃度の抗DCIR.Doc rAbと共に、単球由来の、GM−CSF/IL−15培養されたヒトDCをインキュベートした。1時間後に、細胞を洗浄し、ストレプトアビジン−PEと共にインキュベートした。もう1回洗浄した後に、細胞をFACSによって分析して、細胞に結合したPEを検出した。緑色のプロットが抗DCIR.Doc rAbであり、赤色の曲線が対照IgG4.Doc複合体である。
【0096】
図12は、抗DC−SIGN/L.Doc又は抗DCIR.Doc rAに連結されたCoh.Flu M1が、GM−CSF/IL−4ヒトDCに結合し、その中に内部移行することを示す。単球由来の、GM−CSF/IL−4培養されたヒトDCを、抗DCIR.Doc、又は4倍のモル過剰であるアレクシア標識Coh.Flu M1と予め1時間混合されていた抗DC−SIGN/L.Doc rAbと共にインキュベートした。氷上に1時間おいた後、細胞を洗浄し、37℃に移した。共焦点顕微鏡法を用いて、細胞結合抗原(赤色で示されている)の細胞内局在を分析した。緑色は、細胞膜結合アクチンを標識している。
【0097】
DCIR.Docを介した、ヒトDCへのCoh.Flu M1のターゲッティングは、DCIRを、ワクチン開発目的のための優れた受容体として同定する。内部移行の遅いDCIR受容体を介した、ヒトDCへのFlu M1抗原のターゲッティングを、内部移行が迅速なASGPR及びLOX−1受容体を介したターゲッティングと比較した。モニターされた免疫応答は、Flu M1特異的なCD8+T細胞の増殖であった。結果は、DCIRを介したターゲッティングが、LOX−1又はASGPRを介したものより有意に効果的であったことを示している。同様な実験では、CD8+T細胞と共に培養する前に、残留の[rAb.Doc:Coh.抗原]がないように洗浄した場合、DCIRを介したターゲッティングの優越性が、なお一層明らかであった。この状況は、インビボの状況に、より近いものである可能性が高い。インビボでは、ターゲッティングされたDCが、流入領域リンパ節内のT細胞に遭遇するために、投与された抗原の残留物から遠ざかるように移動する。
【0098】
図13は、抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体は、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞を増殖させるのが効率的であることを示す。CD34由来のCD1a+DCを、CD8+T細胞、及び8nM(上のパネル)又は0.8nM(下のパネル)の、それぞれCoh.Flu M1と複合体形成した[抗DCIR_2C9.Doc:Coh.Flu M1]、抗LOX1_15C4.Doc、抗ASGPR_49C11.Doc又はIgG4.Doc対照rAbと共に共培養した。その後、CD8+T細胞をFlu M1特異的な増殖に関して分析した。内側の四角は、四量体特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。
【0099】
図14は、1日間にわたって投与された抗DCIR.Doc:Coh.Flu複合体が、他の[抗DC受容体rAb.Doc:Coh.Flu M1]複合体より、Flu M1特異的CD8+T細胞を増殖させるのに効率的であることを示す。試験条件は、自己CD8+T細胞を添加する1日前にDCを洗浄したことを除いて、上の図と同様であった。一部の抗DCIR V領域は、rAb H鎖のC末端に融合された重要な抗原を分泌させるのにとりわけ好ましい。
【0100】
図15は、rAb H鎖のC末端への融合体として発現される様々な抗原がrAb.抗原の分泌に内因的な影響を有することを示す。ここでは、複数の同じ抗原コード領域を、2通りの異なったマウスV領域特異性を有するキメラhIgG4 rAb上に工学的に作製した。これらの発現コンストラクトを、適切なL鎖マウスV領域−hIgkコンストラクトと共に、293F細胞に同時形質移入し、3日後に、rAbの分泌を評価した。一部のrAb抗原は良好に発現されたが、他のもの(Flu HA5−1を含める)は極めて貧弱であった。各抗原は、rAbとの関連で分泌に影響を与える内因的な生化学的特性を有すると予測するべきである。実際、試験された2通りのV領域特異性との関連で、発現への著しく類似した影響がある。
【0101】
Flu HA5は、トリインフルエンザに対するワクチンを開発する際に考慮することが重要な抗原である。図16は、様々な抗DCIR V領域(様々な抗DCIR mAbに由来する)が、望ましい抗DCIR.Flu HA5ワクチンの分泌に大きな影響を与えるという思いがけない発見を示す。下記の例では、他のDCIR V領域と比較した場合、DCIR_25A4が、このタイプのワクチンの分泌にとりわけ好ましい。
【0102】
図16は、抗DCIR.Flu HA5 rAbが、可変領域の性質に応じて様々な効率で分泌されることを示す。H鎖C末端を介してDoc(青色円)又はHA5−1(赤色三角)のいずれかに融合した、マウスV領域及びヒトC領域のキメラをコードするH鎖発現プラスミド及びL鎖発現プラスミドを、293細胞に同時形質移入し、3日後に、ELISAによって、上清の希釈液にIgGFcが存在するかどうかアッセイした。DCIR_2C9を除いて、rAb.Docは概ね良好に発現された。しかし、rAb.HA5−1の発現にはばらつきが大きかった。
【0103】
rAb.HA5−1の分泌を促進するという抗DCIR 25A4 V領域の独特な特性が、請求項5の適用を説明する。前者は、特定のV領域がrAb.抗原の分泌に影響を与えうるという本発明者らの発明に基づいている。これは、望ましい結合特異性を有する様々なV領域をスクリーニングして、分泌に好ましいものを得ることによって、rAb融合タンパク質と関連における、特定の抗原の内因的に貧弱な分泌を克服できることを意味する。どんな分泌性rAb.融合タンパク質にもあてはまる新規な一般原理として、これを主張する。
【0104】
抗DCIRは、HIV特異的CD8+T細胞のプライミングを増強する。図17は、プライミングを増強するという、樹状細胞への特定の作用を抗DCIR mAbが有することを示す。プライミングは、ペプチドを取り込み、それを、表面MHC上で、そのペプチド抗原に特異的なT細胞に提示することである。この例は、同族のT細胞によって通常送達される既知のDC活性化シグナルであるCD40Lと共に、抗DCIR mAbでDCを刺激することによって、そのDC培養物に添加された免疫優性なHIV gagペプチドに特異的なCD8+T細胞の数の大幅な増加がもたらされることを示している。この特性は、抗DC受容体rAbワクチンを介した成功した抗原ターゲッティングでは、高い確度で予測されることであり、抗DCIR.抗原ワクチンが優れていることを示している。
【0105】
図17は、抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示している。精製された全CD8+T細胞(2×106細胞/ウェル)を、自己IFN−DC(1×105細胞/ウェル)、並びにHLA−A201拘束性HIVペプチドであるpol(pol476〜484 ILKEPVHGV(配列番号54)、pol293〜302 KYTAFTIPSI(配列番号55))及びgag(gag77〜85、SLYNTVATL(配列番号56)、gag151〜159、TLNAWVKVV(配列番号57))(5μM)で刺激した。4℃で終夜、PBS(pH9.6)中に希釈された5μg/ウェルの抗DCIR mAb又は対照モノクローナル抗体でプレコーティングされた24ウェルプレート内で細胞を9日間培養し、繰り返し洗浄した。細胞は、10%ヒトAB型血清、10U/ml IL−7(R&D社製)及び100ng/ml CD40L(R&D社製)を補充したYssel培地中で培養した。3日目にIL−2を10U/mlで添加した。ペプチド特異的CD8+T細胞の増殖は、インキュベーション期間の終わりに、ペプチド/HLA−A201四量体(Beckman Coulter社製)に結合している細胞の数を数えることによって測定した。
【0106】
抗DCIR mAbはクロスプライミングを増強する。図18は、クロスプライミングを増強するという、樹状細胞への特定の作用を抗DCIR mAbが有することを示す。クロスプライミングは、タンパク質を取り込み、それを正しくプロセッシングして、表面MHCで提示することであり、抗原由来のペプチドに特異的なT細胞の増殖によって測定にされる。この例は、同族のT細胞によって通常送達される既知なDC活性化シグナルであるCD40Lと共に、抗DCIR mAbでDCを刺激することによって、DC培養物に添加されたコヒーシン−MART−1融合タンパク質に由来する免疫優性なMART−1エピトープに特異的なCD8+T細胞の数の大幅な増加がもたらされることを示している。この特性は、抗DC受容体rAbワクチンを介した抗原ターゲッティングに極めて望ましく、抗DCIR.抗原ワクチンが優れていることを示している。
【0107】
図18は、抗DCIR mAbが、HIV抗原特異的CD8+細胞のプライミングを増強することを示す。上図の方法は、ペプチドがcoh.MART−1ペプチド融合タンパク質で置換されていることを除いて、前の図の方法と同じである。
【0108】
本明細書で論じたどんな実施形態も、本発明の任意の方法、キット、試薬又は組成物に関して実施することができ、かつその逆も同様であることが企図されている。さらに、本発明の方法を実現するのに、本発明の組成物を用いることができる。
【0109】
図19は、ヒト上皮シートにおけるDCIR分布の免疫組織化学分析を示す。DR−FITC染色は緑色で示されており、PAB269(DCIR)−568は赤色で示されている。右上のパネルは、それらの画像を重ね合わせたものを示す。青色の染色は、細胞核のDAPI染色である。倍率40倍のデジタル画像。細胞の形態及びDR染色は、表皮ランゲルハンス細胞に特徴的なものであり、したがって、この分析は、ランゲルハンス細胞におけるDCIR発現を明らかにし、例えば、乱切りされた皮膚に適用された抗DCIR.抗原結合体を取り込む効用をDCIRが有することを指摘するものである。したがって、これらのデータは、アジュバントを介したDC活性化に伴った、ランゲルハンス細胞による抗原の取り込みが、ターゲッティングされた抗原に対する強力な細胞応答をもたらすことを示している。
【0110】
図20A〜20Dは、DCIR抗原に対するモノクローナル抗体を示し、詳細にはDCIRへの親和性を示す。
【0111】
DCIR抗原の固定:一級アミン(10mM酢酸ナトリウム、pH5.5中に50μg・mL−1)を介して、AKT_ivコバレントセンサー(covalent sensor)の表面にDCIR抗原を固定した。EDCとNHSとの混合物を用いて、カルボン酸表面を活性化し、4チャネルすべてにDCIRを結合させた。最後に、専用のブロッキング剤を用いて、どんな残留カルボン酸基も不活性化した。
【0112】
HBS中における4種の抗DCIR抗体の親和性の測定:4種の抗DCIR抗体の親和性を測定するために、10〜0.3125μg mL−1の各抗体の希釈系列を調製し、平行して、固定されたDCIR抗原の上に180秒間注入した。試料注入の間に、60秒間2回の100mM塩酸の注入を用いて、表面を再生させた。バイオセンサー測定は、Akubio社製アコースティックバイオセンサーで行った。
【0113】
【表1】
【0114】
表1は、2種の好ましい抗DCIRモノクローナル抗体24A5及び9E8の高親和性DCIR外部ドメイン結合特性を示し、それらに由来するマウス可変領域は、ヒトIgG4本体に移植した場合、高親和性の結合特性を大部分保持していることを実証する。このデータは、ヒトDCIRに結合するという効用に関する、これらの可変領域の配列[及びそれらの「ヒト化」誘導体]に対する明確な主張を支持する。
【0115】
アカゲザルDCIRに対する抗DCIR mAbの交差反応性。アカゲザル(Rhesus macaque)DCIRへの、抗ヒトDCIR mAbの交差反応性を試験するために、哺乳動物発現ベクター内に構成したアカゲザルDCIR cDNAで233F細胞に形質移入した。形質移入されていない293F細胞及びヒトDCIRの発現を指示する同一のベクターで形質移入された293F細胞と比較して、そのパネルの抗ヒトDCIR抗体がサルDCIRに結合するかどうか、FACSによって検査した。ヒトDCIR配列とサルDCIR配列との間の比較を下記に示す。ヒトDCIRとサルDCIRとの間の交差反応性を示す抗体は、例えば、組換えヒト化抗DCIR.抗原ワクチンとして構成した場合、治療薬としてのNHP毒性研究によって、作用機序ベースの問題にも取り組むことができる[すなわち、これらの試験は、毒性と比較した効力に関しても取り組むことができる]ので、とりわけ好ましい。
【0116】
ヒトDCIR対、サルDCIR。最初の配列はヒト配列であり、サルDCIRで見られた変化はヒト配列の下に示されている。推定上の膜通過領域は下線で強調されている。非保存性の変化は太字で強調されている。
MTSEITYAEVRFKNEFKSSGINTASSAASKERTAPHKSNTGFPKLLCASLLIFFLLLAISFFIAFVIFFQKYSQLLEKKT(配列番号58)
MTSEITYAEVRQNESKSSGIDSASSAASKKRTAPHKSNTGFSKLLCASLMIFFLLLAISFFFAFFIFFQKYSQLLEKMT(配列番号59)
TKELVHTTLECVKKNMPVEETAWSCCPKNWKSFSSNCYFISTESASWQDSEKDCARMEAHLLVINTQEEQDFIFQNLQEE(配列番号60)
TKDLVHTTLECVKKNMTTEETAWSCCPKNWKPFSSNCYFISTESASWQKSEKDCARMEAHLLVINTREEQDFIFQNLQEE(配列番号61)
SAYFVGLSDPEGQRHWQWVDQTPYNESSTFWHPREPSDPNERCVVLNFRKSPKRWGWNDVNCLGPQRSVCEMMKIHL(配列番号62)
SAYFVGLSDPEGQRHWQWVDQTPYNESSTFWHPHEPSDPDERCVVLNFRKTPKRWGWNDVHCIVPQRSVCEMMKIHL(配列番号63)
【0117】
図21は、アカゲザルDCIRへの、抗DCIR mAbの交差反応性を示す。試料のFACS分析が下に提示されている。緑色のプロットは、対照でIgG4.gag組換えタンパク質によるバックグランド結合を示す。赤色のプロットは、抗DCIR.gagタンパク質を介した結合である[2次抗体はPE標識された抗ヒトIgGFcであった]。結果は、ヒトDCIR発現プラスミドで形質移入された293F細胞には、9E8 mAbと24A5 mAbとで匹敵した結合を示しており、サルDCIR発現プラスミドによって形質移入された293のF細胞には、9E8は結合したが、24A5は結合しなかった。同様な分析で、9E8、29G10、31A6、及び3C2 mAbはサルDCIRによく結合したが、24A5、6C8、24E7、5F9及び29E9 mAbは結合しなかった。
【0118】
図22は、特定のグリカン構造への、DCIR外部ドメインの結合を示すグラフである。DCIR外部ドメインは、293F細胞から分泌されるhIgGFc融合タンパク質として発現させ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。米国糖鎖コンソーシアム(the Consortium for Functional Glycomics)から得たプリントアレイのバージョン3.0を用いて、このタンパク質を特定のグリカンの結合に関して試験した。このアレイは、6通りに複製された320種のグリカン(又はグリコフォーム)からなる。
【0119】
下記に示すExcelスプレッドシートは、それぞれ、グリカン番号、構造又は名称、6通りの複製の平均RFU値、標準偏差、平均値の標準誤差(全データセットを提示している上記グラフのエラーバーに使用した)及び%CVを列A〜Fに示している。列C〜Yは、グリカン数対、平均RFUのグラフを含有し、列Z〜AEは、最高の強度で結合したグリカンのリストを提供するために、RFUによって並べ替えられた(高い値から低い値)A〜Fのデータである。6通りの複製からなる各セットから、最高値及び最低値が除外されているので、これらの平均は、6つの値ではなく、4つの値の平均である。これは、単一の非常に高いポイントを含有した誤ヒットの一部を排除する。したがって、高い%CVを有するポイントは、疑わしいものと考えるべきである。これらの分析は、フィコエリトリンで標識された抗ヒトIgG−Fcを使用した検出を用いて行った。2mM Ca及びMg、1%BSA並びに0.05%Tween 20を含有するTris−食塩水結合緩衝液を用いて、DCIR.IgFcをPBS中に200μg/mlに希釈した。
【0120】
このデータは、米国糖鎖コンソーシアムと協力して作成した。DCIR外部ドメインに最も強固に結合したグリカンは、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12であった。このグリカンは、いくつかのヒト血漿タンパク質で見出される極めて複雑な糖質であるが、試験した他のhIgGFc融合タンパク質は、このグリカンへの選好を示さなかった。
【0121】
したがって、グリカン143又は関連構造のパネルからスクリーニングされた親和性がより高い誘導体で装飾された抗原は、DCIRに対する抗原に磨きをかけるはずであり、DCターゲッティングワクチン又は他のDCIRターゲッティング作用物質の抗DCIR成分の代用物として働く。これはワクチン製造及び貯蔵における費用便益を有しうるであろう。
【0122】
【表2】
【0123】
図23A〜23Cは、DCIRがすべての血液DCサブセットの包括的な標的であることを示す。血液中では、CD11c+mDC及びBDCA2+pDCという、DCの2つのサブセットが同定される。DCIRは、両方のDCサブセットで見出される稀少なレクチン型受容体の1つである。mDC及びpDCを血球アフェレーシスから精製し、各DCサブセットを、精製された自己CD8+T細胞並びに漸減濃度のFlu−MPの4種の組換え型、すなわちFlu−MP、IgG4に融合したFlu−MP及び2種の異なった組換え抗DCIR抗体24A5及び9E8に融合したFlu−MPと共に培養した。
【0124】
下記図23Aに示す結果は、両方の組換えDCIR−Flu−MP融合タンパク質が、80pMという低い濃度で、1.78%〜2.18%の四量体陽性細胞を誘導できるので、これら2種のタンパク質は、Flu−MPをmDCに強力にターゲッティングできることを示している。この濃度は、Flu−MP自体及びIgG4−Flu−MPが抗原特異的T細胞の増殖を誘導できない濃度である。pDCは、8nMで、4種の形態の組換えFlu−MPのクロスプレゼンテーションを行うこともできた。0.8nM及び80pMでは、2種のDCIR−Flu−MPコンストラクトがクロスプレゼンテーションされたが、他の2種のFlu−MPコンストラクトはクロスプレゼンテーションされなかった(下側の図B)。
【0125】
まとめると、これらのデータは、DCIRは、血液mDC及びpDCの両方によって、タンパク質をクロスプレゼンテーション用に強力にターゲッティングすることを示す。ヒトでは、LC及びIntDCが、それぞれ細胞性免疫及び液性免疫を選択的にプライミングする能力を有する。抗原を、DCIRのような、汎DC分子にターゲッティングすることによって、様々なDCサブセットをターゲッティングすることによる広範な液性免疫応答及び細胞性免疫応答が潜在的に誘導される。これは、抗ランゲリンなどの、サブセット特異的抗原送達媒体とは対照的である。
【0126】
図23Aは、CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た血液由来のmDCが、各8nM、0.8nM又は80pMのaDCIR−Flu−MP(a#24A5及びb#9E8)、IgG4−Flu−MP又はFlu−MPでターゲッティングされることを示す。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0127】
図23Bは、CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た血液由来のpDCが、各8nM、0.8nM又は80pMのaDCIR−Flu−MP(a#24A5及びb#9E8)、IgG4−Flu−MP又はFlu−MPでターゲッティングされることを示す。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0128】
図23Cは、LC及び真皮CD14+DCによるタンパク質のクロスプレゼンテーションを、DCIRが可能にすることを示す。CD40Lで成熟し、自己CD8+T細胞と共培養された、HLA−A2ドナーから得た皮膚由来のDCが、各8nMの抗DCIR:Flu−MP、抗ランゲリン:Flu−MP又はIgG4:Flu−MPでターゲッティングされる。10日後に、特異的なHLA−A2−M1四量体染色によってT細胞増殖を評価した[垂直軸]。
【0129】
図24は、DCIR−FluM1でのワクチン接種が、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生を可能にすることを示す。亜致死条件で照射されたNOD/SCID β2m−/−免疫不全マウスにHLA−A*0201+健常ドナーから得た3×106 CD34+HPCを移植した結果を、移植の4〜8週後に、20×106の自己T細胞を養子移入することによって再構成した。DCを動員するために、5回用量のヒト組換えFLT3リガンド(FLT3−L)でマウスを10日間前処置した。アジュバントとして、50mcg/マウスのポリICと共に、全量30mcgのDCIR−FluM1ワクチンを、2通りの時点、すなわち1日目及び7日目に、2つの部位、すなわちi.p.及びi.v.に送達した。インフルエンザ特異的免疫応答の誘導は、マトリックスタンパク質1:FluM1 58〜66(GILGFVFTL)(配列番号64)ペプチドを負荷した四量体で、血液及び組織を染色することによって評価した。図1に示す通り、DCIR−FluM1でワクチン接種されたマウスの5匹中4匹は、ワクチン接種後の11日目に、FluM1四量体に結合する循環ヒトCD8+T細胞が、0.63%、0.34%、0.21%及び0.62%であることを示した。HIVgagペプチドが負荷された対照四量体による染色はほぼ陰性であった。これらの予備的な結果は、独立したマウスコホートで確認され、FluM1四量体に高親和性で結合するCD8+T細胞の増殖は、合計で12匹中9匹のワクチン接種マウスで観察された。これらの結果は、DCIR−FluM1でのワクチン接種が、FluM1特異的なリコールCD8+T細胞免疫の産生を可能にすることを実証する。
【0130】
本明細書に記載した特定の実施形態は、本発明の制限としてではなく、例として示したものであることが理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な実施形態で利用することができる。当業者ならば、本明細書に記載した本発明の特定の方法に対する多数の均等物を認識するか、常例的実験を用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲に包含されている。
【0131】
本明細書で参照したすべての出版物及び特許出願は、本発明が属する当業者の技術レベルを示すものである。すべての刊行物及び特許出願を、あたかも個々の刊行物又は特許出願を具体的かつ個別的に参照により組み込むと示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込む。
【0132】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は本明細書中で「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合、「1つ」であることを意味しうるが、それは、「1又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1又は1超」という意味とも一貫性を有する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、一選択肢のみの選択を指すことが明示的に示されているか、選択肢が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するのに用いられる。但し、本開示は、一選択肢のみの選択並びに「及び/又は」を指すという定義を支持する。本出願全体にわたって、「約」という用語は、ある値に、その値を決定するのに用いられた装置若しくは方法に固有な誤差の変異又は研究対象間に存在する変異が含まれていることを示すのに使用される。
【0133】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など、含む(comprising)のどんな形態も)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」など、有する(having)のどんな形態も)、「含む(including)」(並びに「含む(include)」及び「含む(includes)」など、含む(including)のどんな形態も)、又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contain)」及び「含有する(contains)」など、含有する(containing)のどんな形態も)という語は、包括的又は非制限的であって、追加の、記載されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0134】
「又はこれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、その用語に先行して列挙されている項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はこれらの組合せ」には、A、B、C、AB、AC、BC又はABCのうちの少なくとも1つが含まれ、特定の文脈で順序が重要である場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含まれると意図されている。この例示を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1又は複数の項目又は用語の繰り返しを含有する組合せも、明示的に含まれる。当業者ならば、通常は、どんな組合せも、文脈から別段のことが明らかでない限り、それに含まれる項目又は用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0135】
本明細書で開示及び特許請求されている組成物及び/又は方法はすべて、本明細書の開示に照らして、過度の実験をすることなく作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態に関して記述したが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱せずに、上記の組成物及び/又は方法、並びに本明細書に記載の方法のステップ又はステップの順序に変異を適用しうることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなそのようなすべての類似した置換及び改変は、添付されている特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲、及び概念に包含されるものとする。
【0136】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCIR発現抗原提示細胞による抗原提示の有効性を増大させる方法であって、抗体−作用物質複合体を形成する標的作用物質が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を単離及び精製するステップを含み、前記抗体−作用物質複合体と接触した抗原提示細胞によって、この分子が内部移行される方法。
【請求項2】
抗原提示細胞が樹状細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合し、標的作用物質がコヘリン/ドックリン対の他方の半分に結合して複合体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標的作用物質が、ペプチド、タンパク質、脂質、糖質、核酸及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的作用物質が1又は複数のサイトカインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的作用物質が、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理学的に活性な類似体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、分裂促進サイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18等、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、並びにβトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来性成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えばGDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含むトランスフォーミング成長因子(TGF)遺伝子スーパーファミリーから選択される1又は複数のサイトカインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標的作用物質が、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
樹状細胞による抗原提示の有効性を増大させる方法であって、抗体−抗原複合体を、抗原が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を結合させるステップを含み、前記抗原が、前記抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示される方法。
【請求項10】
防御的又は治療的免疫応答を誘発する目的で抗原を抗原提示細胞に送達するための、DCIRに対する抗体又は他の特異的結合分子の使用。
【請求項11】
皮膚を介したワクチン接種のための、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用。
【請求項12】
同時投与又は連結されたワクチン接種用アジュバントと併用した、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用。
【請求項13】
組換え抗原−抗体融合タンパク質として発現することができる特異的抗原の、抗原ターゲッティング(ワクチン接種)目的での使用。
【請求項14】
樹状細胞の有効性を増大させる方法であって、
患者の樹状細胞を単離するステップと、
前記樹状細胞を活性化量の抗DCIR抗体又はその断片及び抗原に曝露して、抗原が負荷されて活性化された樹状細胞を形成するステップと、
抗原が負荷されて活性化された前記樹状細胞を前記患者に再導入するステップと
を含む方法。
【請求項15】
抗原が、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物細胞から分泌された抗DCIR免疫グロブリン又はその一部分、及び前記免疫グロブリンに結合した抗原。
【請求項17】
免疫グロブリンがコヒーシン/ドックリンドメインの一方の半分に結合している、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項18】
モジュールrAb担体と複合体を、抗原に結合した、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分をさらに含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項19】
抗原との融合タンパク質である、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分をさらに含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項20】
抗原特異的なドメインが、完全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びにFabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片を含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項21】
免疫グロブリンが、放射性同位元素、金属、酵素、ボツリヌス毒素、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、ウェルシュ菌毒素、マイコトキシン、志賀毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン、サキシトキシン、アブリン、シアノジノシン、α毒素、テトロドトキシン、アコノトキシン、ヘビ毒及びクモ毒からなる群から選択される毒素に結合している、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項22】
抗原が免疫グロブリンとの融合タンパク質である、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項23】
抗体−抗原複合体を、抗原が結合するDCIR特異的抗体又はその断片を含むワクチンであって、前記抗原が抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示されるワクチン。
【請求項24】
抗原がDCIRを含む、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12を含むグリカンの少なくとも一部に結合した、DCIRに特異的に結合する抗原性T細胞エピトープペプチド
を含むT細胞抗原。
【請求項1】
DCIR発現抗原提示細胞による抗原提示の有効性を増大させる方法であって、抗体−作用物質複合体を形成する標的作用物質が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を単離及び精製するステップを含み、前記抗体−作用物質複合体と接触した抗原提示細胞によって、この分子が内部移行される方法。
【請求項2】
抗原提示細胞が樹状細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DCIR特異的抗体又はその断片がコヘリン/ドックリン対の一方の半分に結合し、標的作用物質がコヘリン/ドックリン対の他方の半分に結合して複合体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標的作用物質が、ペプチド、タンパク質、脂質、糖質、核酸及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的作用物質が1又は複数のサイトカインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的作用物質が、インターロイキン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形成因子、並びにそのような成長因子の生理学的に活性な類似体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞成長因子、分裂促進サイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成誘導因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18等、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンフォトキシン−β、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、VEGF、並びにβトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合性成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来性成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えばGDF−1)及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含むトランスフォーミング成長因子(TGF)遺伝子スーパーファミリーから選択される1又は複数のサイトカインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標的作用物質が、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
樹状細胞による抗原提示の有効性を増大させる方法であって、抗体−抗原複合体を、抗原が結合しているDCIR特異的抗体又はその断片を結合させるステップを含み、前記抗原が、前記抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示される方法。
【請求項10】
防御的又は治療的免疫応答を誘発する目的で抗原を抗原提示細胞に送達するための、DCIRに対する抗体又は他の特異的結合分子の使用。
【請求項11】
皮膚を介したワクチン接種のための、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用。
【請求項12】
同時投与又は連結されたワクチン接種用アジュバントと併用した、DCIRに特異的な抗原標的試薬の使用。
【請求項13】
組換え抗原−抗体融合タンパク質として発現することができる特異的抗原の、抗原ターゲッティング(ワクチン接種)目的での使用。
【請求項14】
樹状細胞の有効性を増大させる方法であって、
患者の樹状細胞を単離するステップと、
前記樹状細胞を活性化量の抗DCIR抗体又はその断片及び抗原に曝露して、抗原が負荷されて活性化された樹状細胞を形成するステップと、
抗原が負荷されて活性化された前記樹状細胞を前記患者に再導入するステップと
を含む方法。
【請求項15】
抗原が、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性又は癌性のタンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物細胞から分泌された抗DCIR免疫グロブリン又はその一部分、及び前記免疫グロブリンに結合した抗原。
【請求項17】
免疫グロブリンがコヒーシン/ドックリンドメインの一方の半分に結合している、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項18】
モジュールrAb担体と複合体を、抗原に結合した、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分をさらに含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項19】
抗原との融合タンパク質である、コヒーシン−ドックリン結合対の他方の半分をさらに含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項20】
抗原特異的なドメインが、完全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片及びFv断片、並びにFabc断片、及び/又はFcドメインの部分を伴ったFab断片を含む、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項21】
免疫グロブリンが、放射性同位元素、金属、酵素、ボツリヌス毒素、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、ウェルシュ菌毒素、マイコトキシン、志賀毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン、サキシトキシン、アブリン、シアノジノシン、α毒素、テトロドトキシン、アコノトキシン、ヘビ毒及びクモ毒からなる群から選択される毒素に結合している、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項22】
抗原が免疫グロブリンとの融合タンパク質である、請求項16に記載の免疫グロブリン。
【請求項23】
抗体−抗原複合体を、抗原が結合するDCIR特異的抗体又はその断片を含むワクチンであって、前記抗原が抗体−抗原複合体と接触した樹状細胞によってプロセシング及び提示されるワクチン。
【請求項24】
抗原がDCIRを含む、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−3(Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−2Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ−Sp12を含むグリカンの少なくとも一部に結合した、DCIRに特異的に結合する抗原性T細胞エピトープペプチド
を含むT細胞抗原。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A−20B】
【図20C−20D】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A−20B】
【図20C−20D】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24】
【公表番号】特表2010−517538(P2010−517538A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548481(P2009−548481)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/052850
【国際公開番号】WO2008/097866
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/052850
【国際公開番号】WO2008/097866
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】
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