説明

抗炎症特性が増強され、細胞毒性特性が減少したポリペプチドおよび関連する方法

本発明は、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチド、該ポリペプチドは、未精製抗体と比較して、より高い抗炎症活性およびより低い細胞毒性を有し、ならびにそのようなポリペプチドの作製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年4月5日に出願された米国仮特許出願第60/789,384号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府の資金による研究に関する言及
本発明に至る研究は、一部、国立衛生研究所認可番号AI034662によって支援された。したがって、米国政府が、本発明についてある程度権利を有しうる。
【0003】
技術分野
本発明は、炎症性疾患の治療を目的とした、治療用ポリペプチドを設計する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫グロブリンに対する細胞受容体は、40年近く前に最初に同定されたけれども、免疫反応におけるそれらの中心的役割は、ここ10年ほどで見出されたに過ぎない。免疫反応の末梢から中枢に向かう時期(afferent phase)および中枢から末梢に向かう時期(efferent phase)の双方においてそれらは中心的存在であり、B細胞活性化の閾値および抗体産生を設定し、樹状細胞の成熟を制御し、そして抗体反応の高い特異性を食作用、抗体依存性細胞障害ならびに炎症性細胞の動員および活性化のようなエフェクター経路へと導く。液性免疫システムを固有のエフェクター細胞に導く際のそれらの中心的役割により、それらは、インビボにおける抗体活性を増強させる、または抑制するための魅力的な免疫治療用ターゲットとなる。
【0005】
抗体および抗体−抗原複合体と、免疫システムの細胞との相互作用は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)、食作用、炎症性メディエータの放出、抗原クリアランス、ならびに抗体半減期などの種々の反応を引き起こす(Daron,Annu Rev Immunol,15,203−234(1997);Ward and Ghetie, Therapeutic Immunol,2,77−94(1995);Ravetch and Kinet,Annu JRev Immunol,9,457−492(1991)中で概説され,各々は、本明細書で参照として引用される)。
【0006】
抗体定常領域は、直接的には抗原への抗体の結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、抗体または免疫グロブリンを、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちさらにサブクラス(イソタイプ)、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4;IgAlおよびIgA2、に分けられるものもある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。種々のヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgGlおよびIgG3がIgG2およびIgG4よりもより効果的にADCCを媒介する。
【0007】
抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合フラグメントが生成するが、このフラグメントは、各々が単一の抗原結合部位を有するFabフラグメント、および、すぐに結晶化できることを示す名前である「Fc」フラグメントと呼ばれる。Fc領域は、抗体のエフェクター機能の中心となる。ヒトIgG Fc領域の結晶構造が決定されてきた(本明細書に参照として引用される、Deisenhofer、Biochemistry、20、2361−2370(1981))。ヒトIgG分子において、Fc領域は、パパイン消化Cys、226までのN末端によって生成する。
【0008】
IgGは、Fcフラグメントによって媒介される相互作用を通じて、炎症性、および抗炎症性双方の活性を媒介すると長い間考えられてきている。したがって、Fc−FcyR相互作用は、免疫複合体および細胞障害抗体の炎症性特性に関与する一方、静脈注射用ガンマグロブリン(IVIG)およびそのFcフラグメントは、抗炎症性であり、炎症性疾患を抑制するために広く用いられる。そのような逆説的な特性の正確なメカニズムは不明であるが、IgGのグリコシル化がIgGの細胞毒性および炎症性可能性の制御に重要であることが提案されてきている。
【0009】
IgGは、その2つの重鎖の各々のCH2ドメイン中のAsn297で単一の、N−結合型グリカンを含む。共有結合した複合糖質は、N−アセチルグルコサミン(GIcNAc)およびマンノース(man)を含む、コア、二分岐ペンタ−ポリサッカロイドから構成される。コア糖質構造のさらなる修飾が、可変的に見出されるフコース、分岐GicNAc、ガラクトース(gal)および末端シアル酸(sa)分子の存在によって血清抗体中に見られる。それ故、40を超える異なる糖型が、この一つのグリコシル化部位に共有結合していることが見出されている。Fujii et al.、J.Biol.Chem 265、6009(1990)。IgGのグリコシル化は、2つの重鎖の活性構造(open conformation)を維持することによって、全てのFcyRへの結合に不可欠であることが示されてきている。Jefferis and Lund、Immune.1 Lett.82、57 (2002)、Sondermann et al 、J.MoI.Biol.309、737(2001)。このようにFcyR結合にIgGグリコシル化が絶対不可欠であることは、脱グリコシル化IgG抗体がADCC、食作用および炎症性メディエーターの放出のような、インビボで誘発される炎症反応を媒介することができないことの説明となる。Nimmerjahn and Ravetch、Immunity24、19(2006)。さらに、フコースを含むまたは欠くIgG抗体に対して報告された各々のFcyRに対して親和性が変化し、その結果として細胞毒性に影響を与えることにより、個々のIgGの糖型が炎症反応の調節に寄与しうるという知見が提案されてきている。Shields et al .、J.Biol.Chem. 277、26733(2002)、Nimmerjahn and Ravetch、Science 310、1510(2005)。自己免疫状態とIgG抗体の特定のグリコシル化パターンとの関連が、IgG抗体のガラクトシル化およびシアル化の減少が報告されている関節リウマチ、および自己免疫血管炎患者において見出されている。Parekh et al.、Nature 316、452(1985)、Rademacher et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、6123(1994)、Matsumoto et al.、128、621(2000)、Holland et al.、Biochim.Biophys.Acta Dec 27;[印刷に先立つ電子出版]2005。IgG糖型の変化もまた老化および免疫性に関連することが報告されているが、これらの変化のインビボにおける重要性は究明されていない。Shikata et al.、Glycoconj.J.15、683(1998)、Lastra、et al.、Autoimmunity 28、25(1998)。
【0010】
したがって、インビボにおけるIgG特性の種々の知見を説明しうるポリペプチドの作製方法の開発が必要とされている。
【0011】
発明の要約
本発明は、そのような方法および分子を提供することによって前述の要求を満たすものである。一実施態様において、本発明は、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドを提供するものであり、前記ポリペプチドは、未精製の抗体と比較してより高い抗炎症活性およびより低い細胞毒性を有する。本発明の他の実施形態において、ポリペプチドは、ヒトIgGl、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域を含み、前記ポリペプチドは、未精製抗体と比較してより高いシアル酸含有量を有する。
【0012】
他の実施態様において、本発明は、適切なキャリアーまたは希釈剤と組み合わせた、より高い炎症活性およびより低い細胞毒性活性をもつ、少なくとも一つのFc領域を有するポリペプチドを含む製剤を提供する。
【0013】
さらに他の実施態様において、本発明は、少なくとも一つのFc領域を有するポリペプチドの製造方法を提供するものであり、前記ポリペプチドは、未精製の抗体よりも高い抗炎症活性および低い細胞毒性を有し、該方法は:少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源を提供し、ここで少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源は、シアル酸を含む少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドを複数およびシアル酸を欠く少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの複数を含み;そして、シアル酸を欠く少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの複数に対する、シアル酸を含む少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの複数の比率を増加させる:ことを含む。本発明の異なる実施形態において、シアル酸を欠く少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの複数に対する、シアル酸を含む少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの複数の比率は、シアル酸を欠く少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの除去、または、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドの未精製源のシアル化のいずれかによって、達成される。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、6A6−IgG抗体イソタイプの糖質スペクトルを示す。6A6−IgGl、IgG2aおよびIgG2b由来のN−グリカンは、MALDI−TOP MSによって分析した。シアル酸残基を含むピークは、角括弧で示す。293T細胞の一過性トランスフェクションによって製造される組み換え6A6抗体スイッチ変異体(switch variant)は、Asn−297の位置で付加された糖質中、シアル酸残基の最小限のレベルを含んでいた。
【0015】
図2は、シアル化がIgG細胞毒性を抑制することを示す。(A)抗体Fc−フラグメント中のアスパラギン297(N297)に付加した、十分に進行した(fully processed)糖質部分の構造。コア糖構造は、ボールド体で示されている。末端および分岐糖類のような可変残基に下線が付され、特異的結合が示されている。PNGaseおよびノイラミニダーゼに対する切断部位も示されている。この十分に進行した構造は、トータル血清IgGプール(1)の約5%に存在している。略記:GIcNAc=N−アセチルグルコサミン、man=マンノース、gal=ガラクトース、sa=シアル酸。(B)セイヨウニワトコレクチン(Sambucus nigra agglutinin(SNA))アフィニティークロマトグラフィーによる、シアル酸含有量が高い6A6−IgGlおよびIgG2b抗体の濃縮。(C)シアル酸(SA)を豊富に含む、またはノイラミニダーゼ(NA)処理によってシアル酸が欠失した6A6−IgGlおよび−IgG2b抗体のインビボ活性。各抗体4μgをマウス群に注射した(N=4、mean +/− SEM);*はp<0.0001、**はp<0.01を示す。(D)高いレベルでシアル化されている、または低いレベルでシアル化されている抗体への結合におけるFcγRIIB、FcγRIIIおよびFcγRlVに対する結合定数(K);n.b.は、結合なし(no binding)を示す。太字の数字は、インビボでの抗体活性の媒介に関与するイソタイプ特異的Fc−レセプターを示す。全ての測定において標準誤差は5%未満であった。
【0016】
図3は、インビボでの抗体活性がシアル酸により調整されることを示す。6A6−IgGlは、SNA−アガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによってシアル酸リッチとなった。このSNAリッチな処理物のフラクションは、ノイラミニダーゼで処理された(SNA−enriched+ノイラミニダーゼ)。(A)抗体処理物中のシアル酸含有量は、SNAを用いたレクチンブロットによって算出した。(B)インビボの抗体活性は、各抗体処理物(グループあたりn=4〜5マウス)4μgを注入することによって誘発される血小板減少をモニタリングすることによって試験した。
【0017】
図4は、IVIGの抗炎症活性がシアル酸を必要とすることを示す。(A)PBS、IVIG、およびPNGaseF−処理IVIG(PNGaseF IVIG)で処理したマウス中でのK/BxN血清誘発性関節炎の臨床スコア。(B)図4(A)で示した処理に加えて、マウスをノイラミニダーゼ−処理IVIG(NA IVIG)またはSNA−リッチIVIG(SNA IVIG)で処理した。(C)IVIGのFc−フラグメント、ノイラミニダーゼ−処理Fc(NA Fc)、またはSNA−リッチFc(SNA Fc)で処理したマウスの臨床スコア(N=4、mean +/− SEM)。(D)IVIG調製物の糖質分析結果。未処理またはノイラミニダーゼ処理IVIG由来のN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析結果を示す。シアル酸残基を含むピークは、角括弧で示し、ピークの糖質組成を図5に示す。(E)SNA−リッチIVIG(0.1g/kg)で処理または未処理の、コントロールマウスまたはK/N誘発性関節炎マウスの足関節の代表的なヘマトキシリン/エオシン染色。K/N処理マウスで観察される広範な好中球浸潤が、IVIG−SNA(0.1g/kg)処理マウスでは見られない。(F)IVIGのコントロールFcフラグメント、ノイラミニダーゼ−処理Fc(NA Fc)およびセイヨウニワトコレクチン(Sambucus nigra agglutinin)(SNA)アフィニティークロマトグラフィーを経たシアル酸含有量が高いFc(SNA Fc)のレクチンブロット。(G)IVIG中の2、3および2、6結合シアル酸残基の分析。IVIGは、未処理のまま(レーン2)または2、3結合シアル酸残基に特異的なノイラミニダーゼで処理した(レーン3)または2、3および2、6結合シアル酸残基に特異的なノイラミニダーゼで処理した(レーン4)。シアル酸の除去は、SNA(2、6結合シアル酸残基を認識する)およびMAL−I(2、3結合シアル酸残基を認識する)を用いたレクチンブロットによって分析した。2、3結合シアル酸残基中の糖タンパク質リッチに対するコントロールとして、fetuinを用いた(レーン1)。クマシー染色ゲルがローディングコントロールとしての役割を果たした(クマシー)。(H)2、3または2、3および2、6結合シアル酸残基を欠失したIVIGの抗炎症活性。関節炎を誘発するために、マウスにKRN血清を注入し、未処理のまま(KRN)、あるいは、IVIG(KRN+IVIG)、2、3結合シアル酸残基を欠失したIVIG(α2−3 シアリダーゼtx IVIG+KRN)、または2、3および2、6結合シアル酸残基を欠失したIVIG(α2−3、6 シアリダーゼtx IVIG+KRN)で処理した。ネガティブコントロールとして、PBSをマウスに注入した(未処理)。
【0018】
図5は、N297 IgG Fcから放出される糖質部分の構成を示す。抗体重鎖中のアスパラギン残基297に連結している核となる糖構造は、N−アセチルグルコサミン(GIcNAc)およびマンノース(Man)から構成される。各々の糖型は、1または2の末端ガラクトース(Gal)残基の付加、末端シアル酸−(ヒトに対するN−アセチルノイラミン酸またはNeu5Acおよびマウスに対するN−グリコリルノイラミン酸またはNeu5Gc)残基の付加、および/または分岐GlcNAcまたはフコース(Fuc)の付加に関して変化する。数字は、異なる糖組成のMALDI−TOF MSによって決定される分子量を示す。グリカン構造類の質量は、ヒトまたはマウスに対して示されている(下線)。
【0019】
図6は、脱シアル化IVIGの血清半減期およびタンパク質完全性を示す。(A)IVIG処理マウスの血清中のヒトIgGのレベルを、示した日数でELISAによって測定した(N=4、mean +/− SEM)。IVIGと脱シアル化IVIGの半減期には何ら顕著な違いはなかった。有意性は、ANOVA−テストで繰り返し測定することによって算出した。(B)IVIGまたは脱シアル化IVIGの10μgを8%ポリアクリルアミドゲルを用いて非還元下、SDS−PAGEによって分離し、クマシーブリリアントブルー染色で可視化した。IVIGの単量体組成および構造完全性は、ノイラミニダーゼ処理によって影響されなかった。
【0020】
図7は、SNA−リッチIVIGの血清半減期およびサブクラス組成を示す。(A)IVIG処理マウスの血清中のヒトIgGのレベルを、示した日数でELISAによって測定した(N=4、mean +/− SEM)。IVIGおよびSNA−リッチIVIGフラクションの半減期には何ら顕著な違いはなかった。有意性は、ANOVA−テストで繰り返し測定することによって算出した。(B)未処理およびSNA−リッチIVIG中のIgGサブクラスをELISAによって決定した。何ら相違は観察されなかった。
【0021】
図8は、同様の糖質構造を有するシアル化タンパク質はK/BxN血清誘発性関節炎からマウスを防御しないことを示す。IVIGまたはシアロタンパク質フェチュイン(fetuin)およびトランスフェリンの同モル量(キログラムあたり6.7μmol)または同量(キログラムあたり1g)をK/BxN血清注入の1時間前に投与し、臨床スコアを4日目に調べた(N=4、mean +/− SEM)。PBSを追加のコントロールとして用いた。IgGと比べて、フェチュインまたはトランスフェリンは、等モル濃度で統計的に有意な抗炎症活性は有しなかった。有意性は、Mann−Whitney’sUテストで算出した。
【0022】
図9は、SNAリッチIVIGの抗炎症活性がFcγRIIBを必要とすることを示す。(A)非分画IVIG(1g/kgマウス重量)、SNA−リッチIVIG(0.1g/kgマウス重量)、またはコントロールとしてPBSを、K/BxN 血清注入の1時間前にFcγRIIB−欠失マウスに注入し、4日目に臨床スコアを調べた(N=4、mean +/− SEM)。関節炎の臨床スコアに有意な差はなかった。有意性は、Mann−Whitney’sUテストで算出した。(B)SNA−リッチIVIGによるインビボFcγRIIB単球蓄積。野生型マウスに1g/kg、0.1g/kg IVIGあるいは0.1g/kg SNA−リッチまたはコントロールとしてのPBSを注入した。骨髄(左パネル)および脾臓細胞(右パネル)を回収し、注入後1日目にフローサイトメトリーで分析した(N=4)。IVIG 1g/kgまたはSNA−リッチIVIG 0.1g/kgで処理後、F4/80+FcγRIIB+細胞が顕著に蓄積した。有意性は、スチューデントテスト(Student’s t test)で算出した。
【0023】
図10は、免疫活性がIgGシアル化の減少を引き起こすことを示す。(A)Sambucus nigra agglutinin(SNA)を用いたブロットにより、シアル酸含有量について、未処理(免疫前)またはヒツジIgGおよび腎毒性血清(NTS)を用いた免疫付与によって誘発される腎毒性腎炎(NTN)のマウスからの血清IgGの特性を明らかにした(方法参照)。(B)濃度測定法(densitometry)によって決定される、未処理およびNTNマウス中のトータル血清IgGおよびIgM抗体ならびにヒツジIgG−特異的IgG抗体のシアル化のレベルの定量(mean +/− SEM)。マウス抗体調製物には何らヒツジIgGは検出されなかった(データは示さず)。(C)未処理またはNTNマウスからのIgG抗体に付加される糖残基のMALDI−TOF分析。シアル酸含有部分は、角括弧によって示される。個々のピークの詳細な糖質組成は、図5に示す。(D)完全フロイントアジュバント(complete Freund’s adjuvant(CFA))中のヒツジIgGを用いた前免疫あり(NTS+CFA)、または前免疫なし(NTSのみ)の腎毒性血清を注入されたマウスの糸球体中に蓄積される抗体中のシアル酸含有量の検出。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明者らは、驚くべきことに、IgG Fcドメインの細胞毒性および抗炎症反応が、Fcに結合したコア多糖のシアル化が異なることに起因することを見出した。IgG抗体の細胞毒性は、シアル化によって減ぜられる;逆に、IVIGの抗炎症活性は増強される。IgG シアル化は、抗原特異的免疫反応の誘導によって制御されることが示され、したがって、抗原投与によって、定常状態の固有の抗炎症分子から、適応的、炎症性種にIgGを転換する新規な方法を提供する。
【0025】
したがって、本明細書では、所望の細胞毒性および抗炎症性ポテンシャルを有するIgGの製造および選択の有利な戦略を提供する。
【0026】
定義
本明細書および請求項を通じて、免疫グロブリン重鎖における残基のナンバリングは、本明細書に参照として明示的に引用される、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、 5th Ed. Public Health Service、 National Institutes of Health、 Bethesda、 Md. (1991)中のようなEUindexのものである。「Kabat中のようなEUindex」は、ヒトIgGl EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0027】
「ネイティブ」または「親(parent)」という用語は、Fcアミノ酸配列を含む改変されていないポリペプチドを指す。親ポリペプチドは、ネイティブ配列Fc領域または(付加、欠失および/または置換のような)予め存在するアミノ酸配列の改変を持つFc領域を含みうる。
【0028】
「ポリペプチド」という用語は、少なくとも一つのIgG Fc領域を含む種々のタンパク質断片を指し、限定されるものではないが、例えば、抗体、例えばIgG抗体のような完全に機能的なタンパク質が挙げられる。
【0029】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC−末端領域を規定するために用いられる。「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域であっても、または変異Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、変化しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常Cys226位、またはPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸びると規定される。
【0030】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとしても言及される)は、通常、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで拡がる。CH2ドメインは、他のドメインと厳密に対をなさない点でまれである。正確には、2つのN−結合分岐糖質鎖が、正常ネイティブIgG分子の2つのCH2ドメイン間に入っている。糖質は、ドメイン−ドメイン対の代わりとなり、CH2ドメインの安定化を助けると考えられている(本明細書に参照として引用される、Burton、MoI Immunol、22、161−206(1985))。
【0031】
「CH3ドメイン」は、Fc領域中のCH2ドメインまでのC−末端残基の拡がりを含む(すなわち、IgGの約アミノ酸残基341から約アミノ酸残基447まで)。
【0032】
「ヒンジ領域」という用語は、一般的には、ヒトIgGlのGlu216からPro230までの拡がりとして定義される(Burton(1985)。他のIgGイソタイプのヒンジ領域は、最初および最後にシステイン残基が配置され、同じ位置で重鎖S-S結合間を形成することによって、IgGl配列に揃えられる。
【0033】
「結合ドメイン」は、他の分子に結合するポリペプチドの領域を指す。FcRの場合、結合ドメインは、Fc領域との結合に関与する、そのポリペプチド鎖の部分を含みうる(例えば、そのα鎖)。結合ドメインの一例は、FcR鎖の細胞外ドメインである。
【0034】
「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の部分的「エファクター機能」を少なくとも有する。「エフェクター機能」の例としては、Ciq結合;補体依存性細胞傷害;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター(B cell receptor);BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。かようなエフェクター機能は、通常、結合ドメイン(例えば、抗体可変領域)に結合されるために、Fc領域を必要とし、例えば本明細書で開示されているような種々のアッセイを用いて分析することができる。
【0035】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列に一致したアミノ酸配列を含む。当業者によって認識されているように、「変異Fc領域」は、少なくとも一つの「アミノ酸修飾」のためにネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と較べて少なくとも一つのアミノ酸置換、例えば、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域において約1から約10アミノ酸置換、好ましくは約1から約5アミノ酸置換を有する。本明細書における変異Fc領域は、好ましくは、ネイティブ配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、より好ましくはこれらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくはこれらと少なくとも約95%の相同性、より好ましくは少なくとも約99%の相同性を有するであろう。
【0036】
「変化した(altered)グリコシル化」という用語は、上記で定義したような、ネイティブであろうと、修飾されていようと、特定の糖成分を増加させるか、減少させるために重鎖定常領域への糖質付加がコントロールされているポリペプチドを指す。例えば、Lec2またはLec3のような特定の細胞株中で準備された抗体のようなポリペプチドは、フコースやシアル酸のような糖部分の付加に欠けている可能性がある。
【0037】
「Fcレセプター」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表すために用いられる。本発明の一実施形態において、FcRはネイティブ配列ヒトFcRである。他の実施形態において、ヒトFcRを含むFcRは、IgG抗体に結合し(γレセプター)、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これにはこれらのレセプターの対立遺伝子多型および選択的スプライス型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)およびFcγRIIB(「抑制レセプター」)を含むが、これらのレセプターは主としてこれらの細胞質ドメインにおいて異なる、同様のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターであるFcγRIIAは、細胞質ドメインにおいて、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immuno receptor tyrosine−based activation motif(ITAM))を含む。抑制レセプターであるFcγRIlBは、細胞質ドメインにおいて、免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(immuno receptor tyrosine−based inhibition motif(ITIM))を含む(レビュー参照、各々は本明細書に参照として引用される:Daron、 Annu Rev Immunol、 15、 203−234 (1997);FcRsは以下で概説される。Ravetch and Kinet、Annu Rev Immunol、9、457−92(1991);Capel et al.、Immunomethods、4、25−34(1994);およびde Haas et al.、J Lab Clin Med、126、330−41(1995)、Nimmerjahn and Ravetch 2006、Ravetch Fc receptors in Fundemental Immunology、ed William Paul 5th Ed.)。
【0038】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」は、FcRを発現する細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージのような単球細胞)が標的細胞上に結合している抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、インビトロまたはインビボ細胞媒介反応を指す。原則として、活性化FcγRを有するいかなるエフェクター細胞もADCCを媒介する誘因となりうる。そのような細胞の一つである、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単球は活性化、局在、または分化に依存して、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現することができる。造血細胞上のFcR発現は、本明細書に参照として引用される、Ravetch and Bolland、Annu Rev Immunol、(2001)において要約される。
【0039】
「ヒトエフェクター細胞」は、一以上のFcRを発現している白血球であり、エフェクター機能を行う。好ましくは、細胞は、例えばFcγRlIIのような活性化Fcレセプターの少なくとも一つの型を発現し、ADCCエファクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells(PBMC))、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、本明細書で開示されているように、例えば血液またはPBMCなどのこれらの天然源から分離しうる。
【0040】
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特にモノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクロール抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を示す限り抗体断片にまでわたる。
【0041】
抗体の「シアル酸含有量」という語は、語が文脈上他の意味を意図していることを明確に示していない場合には、抗体重鎖のFc領域上のシアル酸残基の総数および未精製抗体調製物中の非シアル化(asialylated)抗体に対するシアル化抗体の比率の双方を指す。
【0042】
本発明の目的のために定義されるとき、「抗体断片」は、インタクト(intact)抗体の抗原結合または可変領域、あるいはFcR結合能力を保持している抗体のFc領域を広く含む、インタクト抗体の部分を含む。抗体断片の例としては、線状(linear)抗体;一本鎖抗体分子;および抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられる。抗体断片は、好ましくはIgG重鎖の少なくともヒンジの部分、場合によってはCHl領域を保持する。より好ましくは、抗体断片は、IgG重鎖の全定常領域を保持し、IgG軽鎖を含む。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に同質の抗体のポピュレーション(population)から得られる抗体、すなわち、ポピュレーションを含む個々の抗体が、少量で存在しうる、自然に起こりうる変異を除いて一致しているものを指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的で、単一の抗原部位をターゲットにしている。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向している異なる抗体を通常含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられている。修飾語の「モノクローナル」は、抗体の実質的に同質なポピュレーションから得られるような抗体の特徴を示し、特定の方法が抗体の製造に必要とされるように解釈されるものではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、本明細書に参照として引用される、Kohler and Milstein、Nature、256、495−497 (1975)によって最初に開示されたハイブリドーマ法によって製造されてもよいし、組み換えDNA法によって製造されてもよい(例えば、本明細書に参照として引用される、米国特許第4、816、567号参照)。モノクローナル抗体は、例えば、各々が本明細書に参照として引用される、Clackson et al.、Nature、352、624−628(1991)およびMarks et al.、J MoI Biol、222、581−597(1991)において開示されている技術を用いたファージ抗体ライブラリーから分離してもよい。
【0044】
本発明の他の実施形態において、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドは、限定されるものではないが、タンパク質全体などの他のタンパク質断片に融合されてもよい。当業者は、限定されるものではないが他の免疫グロブリン、特に、それぞれのFc領域を欠く免疫グロブリンなどの種々のタンパク質を、本発明のポリペプチドに融合しうることを確かに理解するであろう。あるいは、例えば、本明細書に参照として引用される米国第6、660、843号において開示されているように、他の生物学的に活性なタンパク質またはその断片を、本発明のポリペプチドに融合しうる。この実施形態は、そのような生物学的に活性なタンパク質またはその断片をFcレセプターを発現する細胞へ運搬することにとりわけ有利である。さらに、例えば、GSTタグまたは緑色蛍光タンパク質、もしくはGFPのような異なるマーカーを用いてもよい。
【0045】
重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種由来の抗体または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属している抗体中の対応する配列に一致しており、または相同しており、一方、鎖の残余が他の種由来の抗体または他の抗体クラスまたはサブクラスに属している抗体中の対応する配列に一致しており、または相同している、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)および所望の生物学的活性である限り、これらの抗体の断片を、本明細書のモノクローナル抗体は明確に含む(各々が本明細書に参照として引用される、米国特許第4、816、567号;Morrison et al.、Proc Natl Acad Sci USA、81、6851−6855(1984);Neuberger et al.、Nature、312、604−608 (1984);Takeda et al.、Nature、314、452−454(1985);国際特許出願PCT/GB85/00392参照)。
【0046】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。大部分、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたはヒト以外の霊長類のような非ヒト種の超可変領域(ドナー抗体)由来の残基で置換されている。例えば、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中に、またはドナー抗体中に存在しない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに向上させるためになされる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、通常は2つの可変ドメインの実質的に全てを含むが、そのヒト化抗体において、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR残基の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR残基である。ヒト化抗体は、また、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリンの一部を含むであろう。さらに詳細には、各々が本明細書に参照として引用される、Jones et al.、Nature、321、522−525(1986);Riechmann et al.、Nature、332、323−329(1988);Presta、Curr Op Struct Biol、2、593−596(1992);米国特許第5、225、539号参照。
【0047】
少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドは、重鎖定常領域をコードする遺伝子を改変するために組み換えDNA技術を用いることによって特定のアミノ酸置換、付加または欠失が親配列に導入されているポリペプチドを含む。これらの改変の導入は、Molecular Cloning(Sambrook and Russel、(2001))のようなマニュアルにおいて開示されているように、分子生物学の確立された技術に従う。さらに、少なくとも一つのFc領域を有するポリペプチドは、グリコシル化特異性のために知られているセルラインにおける発現(Stanley P.、et al.、GIycobIoIogy、6、695−9(1996);Weikert S.、et al.、Nature Biotechnology、17、1116−1121(1999);Andresen DC and Krummen L.、Current Opinion in Biotechnology、13、117−123(2002))または特異的レクチン上の濃縮または除去または酵素処理(Hirabayashi et al.、J Chromatogr B Analyt TechnolBiomed Life Sci、771、67−87(2002);Robertson and Kennedy、Bioseparation、6、1−15(1996))のいずれかによって得られる、特定の糖質改変を含むために選択されるポリペプチドを含むであろう。抗体グリコシル化の質および程度は、用いられた細胞種および培養環境に依存して異なることが本分野において知られている。(例えば、Patel et al.、Biochem J、285、839−845(1992))は、糖側鎖に結合している抗体中のシアル酸含有量は、抗体が腹水症のとき、または血清フリーもしくは血清を含む培地中で製造された場合、顕著に異なることを報告している。さらに、Kunkel et al.、Biotechnol Prog、16、462−470(2000)は、細胞成長に対して異なるバイオリアクターの使用および培地中に溶解している酸素の量が糖部分に結合した抗体中のガラクトースおよびシアル酸量に影響を与えることを示した。しかしながら、これらの研究は、シアル酸残基の変化するレベルがどのようにインビボにおいて抗体活性に影響を与えるかについては取り上げていなかった。
【0048】
ホスト発現系
本発明のポリペプチドは、N−結合型グリコシル化ができるホスト発現系、すなわち、ホスト細胞において発現させることができる。通常、そのようなホスト発現系としては、菌の、植物の、脊椎動物または無脊椎動物発現系が挙げられる。一実施形態において、ホスト細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、CHO−Kl;ATCC CCL−61)、Green Monkey細胞株(COS)(例えばCOS1(ATCC CRL−1650)、COS 7(ATCC CRL−1651))のような哺乳類細胞;マウス細胞(例えばNS/0)、Baby Hamster Kidney(BHK)細胞株(例えば、ATCC CRL−1632またはATCC CCL−10)、またはヒト細胞(例えば、HEK 293(ATCC CRL−1573))、または例えば、American Type Culture Collection、Rockville、Md.Furtherのような公的なバンクから入手可能な他の適切な細胞株である。さらに、鱗翅目細胞株のような昆虫細胞株、例えばSf9、植物細胞株、菌細胞株、例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、Hansenula sppのような酵母。当業者には、ヒトIgGのFc領域上で通常見られるように複雑な、二分岐の糖となるためには、ホスト細胞への修飾がN−結合型グリコシル化およびグリカン成熟が確実に起こるために必要とされる場合もあることが理解されるであろう(例えばHamilton、SR、 et al.Science、313、1441(2006);Li、H、et al.、Nature Biotechnology 24、210(2006);Wildt、S and Grengross、TU Nature Reviews Microbiology 3、119(2005)参照)。
【0049】
治療製剤
少なくとも一つのIgG Fc領域を有するポリペプチドを含む治療製剤は、所望の精製度を有する本発明のポリペプチドと、任意に生理学的に許容されるキャリアー、賦形剤または安定剤とを混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保管のために製造されうる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.Ed.(1980)参照)。許容されるキャリアー、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度で患者に毒性がなく、そして、キャリアー、賦形剤または安定剤としては、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェニル、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールのような)防腐剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンのようなアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の糖質;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)のようなノニオン活性剤が挙げられる。
【0050】
本明細書における製剤は、治療される特定の適応症に対する一以上の活性化合物、好適には互いに影響を与えない相補的活性を有する化合物を必要に応じて含んでいてもよい。そのような分子は、所望の目的に効果的な量で、適切に共存する。活性成分は、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マクロカプセルのようなコアセルベーション技術によって、または界面重合によって製造されたマイクロカプセル中、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルション中に取り込まれていてもよい。かような技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.Ed.(1980)中に開示されている。
【0051】
好適な実施形態において、インビボ投与用に用いられる製剤は殺菌されている。本発明の製剤は、例えば、殺菌した濾過膜を通した濾過によって、容易に殺菌することができる。
【0052】
徐法性製剤もまた準備されうる。徐法性製剤の適切な例としては、修飾抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、該マトリクスは、例えばフィルム、またはマイクロカプセルなどの造形物の形態である。徐法性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(例えば、米国特許第3、773、919号参照)、L−グルタミン酸およびy エチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは、100日を越える分子の放出が可能であるが、ヒドロゲルの中にはより短い期間タンパク質を放出するものもある。カプセル化された抗体は長時間体内に残存すると、37℃で湿度に晒される結果、変性する、または凝集し、その結果、生物学的活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。安定化に対する合理的戦略が、関連するメカニズムによって考え出されうる。例えば、凝集メカニズムがチオール−ジスルフィド交換を通じた分子間S−S結合形成であることが見出されたならば、安定化はスルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、湿度量を制御し、添加物を用い、そして特定のポリマーマトリクスを開発することによって達成されうる。
【0053】
少なくとも一つのIgG Fc領域を含むシアル化されたポリペプチドの製造
本発明のポリペプチドは、未修飾、および/または未精製の抗体と比較してシアル酸の量が増加するように、さらに精製または改変(修飾)することができる。この目的に到達するために多数の方法が存在する。ある一つの方法では、例えば、IVIGが通常精製されるIgGを含む血漿フラクションのような未精製のポリペプチド源を、シアル酸に結合することが知られているレクチンを有するカラムに通過させる。ある実施形態では、レクチンはセウヨウニワトコ(Sambuccus nigra)から分離される。したがって、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドのシアル化フラクションは、カラム中に保持されるが、一方、非シアル化(asialylated)フラクションは、通過するであろう。少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドのシアル化フラクションは、異なるストリンジェンシーな条件のさらなる洗浄によって溶出されうる。このようにして、通常の含有量と比較してシアル酸含有量が増加している本発明のポリペプチドの調製物を得ることができる。さらに、シアル酸転移酵素および例えば米国特許第20060030521号で開示されているようなシアル酸の供与体を用いた酵素反応を用いてもよい。
【0054】
限定されるものではないが、請求されている方法において有用なシアル酸転移酵素の適切な例はα−(2、3)シアリルトランスフェラーゼ(sialyltransferase)(EC 2.4.99.6)、およびα−(2、6)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.1)とも称されるST3Gal IIIである。α−(2、3)シアリルトランスフェラーゼは、Gal−β−1、3GicNAcまたはGal−β−1、4GIcNAc配糖体のGalへのシアル酸転移を触媒し(例えば、Wen et al. 、J.Biol.Chem.267:21011(1992);Van den Eijnden et al.、J.Biol.Chem.256:3159(1991)参照)、糖ペプチド中のアスパラギン結合オリゴ糖のシアル化に関与する。2つの単糖間のα連関(α−linkage)の形成とともにシアル酸はGalへと連結される。単糖間の結合(連関)は、NeuAcの2位およびGalの3位間である。この特有の酵素は、ラット肝から単離することができ(Weinstein et al.、J.Biol.Chem.257:13845 (1982));ヒトcDNA(Sasaki et al.(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787;Kitagawa&Paulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401)およびゲノム(Kitagawa et al.(1996)J.Biol.Chem.271:931−938)DNA配列が知られ、組み換え発現によるこの酵素の製造を促進する。
【0055】
α−(2、6)シアリルトランスフェラーゼの活性により、6−シアル化ガラクトースを含む6−シアル化オリゴ糖が得られる。「α−(2、6)シアリルトランスフェラーゼ」の名は、アクセプターの多糖の6番目の原子にシアル酸を付加するシアル酸転移酵素のファミリーを指す。a−(2、6)シアリルトランスフェラーゼの異なる型は、異なる組織から単離されうる。例えば、この酵素のある特定の型であるST6Gal IIは、脳および胎生組織から単離することができる。Krzewinski−Recchi et al.、Eur.J.Biochem.270、950(2003)。
【0056】
さらに、平均的な当業者であれば、シアル化率を変化させるために細胞培養条件をコントロールすることができることを理解するであろう。例えば、シアル酸含有量を増加させるために、生成率を減少させ、培養される特定のホスト細胞に適切なより低い範囲内で浸透圧がおおよそ維持される。シアル酸含有量を増加させるためには、約250mOsmから約450mOsmの範囲内の浸透圧が適切である。この、および他の適切な細胞培養条件は、例えば米国特許第6、656、466号に開示されている。Patel et al.、Biochem J、285、839−845(1992)において、もし抗体が腹水症から、あるいは血清フリーまたは血清含有培養培地中で製造される場合、抗体に結合した糖側鎖中のシアル酸含有量は顕著に異なることが報告されている。さらに、Kunkel et al.、Biotechnol.Prog.、16、462−470 (2000)において、細胞成長に対して異なるバイオリアクターの使用および培地中の溶解酸素量が抗体に結合した糖部分中のガラクトースおよびシアル酸の量に影響を与えることが示されている。
【0057】
別の実施形態において、例えば、不死化ヒト胎生期網膜細胞のようなホスト細胞を、CMVプロモーターようなプロモーターに操作して結合されている、例えば、α−2、3−シアリルトランスフェラーゼまたはα−2、6−シアリルトランスフェラーゼのようなシアル酸転移酵素をコードする核酸を導入することによって改変してもよい。α−2、3−シアリルトランスフェラーゼは、SIAT4CまたはSTZ(GenBank accession number L23767)として知られ、例えば、米国特許第20050181359号において開示されているヒトα−2、3−シアリルトランスフェラーゼであってもよい。
【0058】
シアリルトランスフェラーゼをコードする核酸は、当業者に公知の方法によってホスト細胞に導入されうる。外来の核酸配列を導入する適切な方法は、Sambrook and Russel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition)、Cold Spring Harbor Press、NY、2000中にも開示されている。これらの方法としては、限定されるものではないが、例えば、マイクロインジェクションまたはエレクトロポーションのような物理的導入技術;例えば、リン酸カルシウムトランスフェクションのようなトランスフェクション;例えば、リポソームを用いた膜融合転写(membrane fusion transfer);および例えば、DNAまたはレトロウイルスベクターを用いた導入のようなウイルス導入が挙げられる。
【0059】
少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドは、細胞上清から回収してもよく、所望であれば、例えば、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィーのような一以上の精製段階に付してもよい。適切な精製方法は、当業者にとって明白であろう。
【0060】
当業者であれば、上述したシアル化方法の異なる組合わせによって、シアル化が非常に高いレベルであるIgG Fc領域を少なくとも一つ含むポリペプチドを製造することができることを理解するであろう。例えば、上述したようにシアル酸転移酵素を過剰発現したホスト細胞中で、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチドを発現することができ、次いで、例えば酵素反応中でこれらのポリペプチドをシアル化し、続いてレクチンを含むカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うことによって、これらのポリペプチドのシアル化フラクションをさらに濃縮することができる。同様に、アフィニティークロマトグラフィーが続く酵素反応を、少なくとも一つのIgG Fc領域を含むIVIG源に用いてもよい。
【0061】
少なくとも一つのIgG Fc領域を含むポリペプチド上のグリコシル化の程度を調べるために、これらのポリペプチドを精製し、還元条件下SDS−PAGEにおいて分析することができる。グリコシル化は、特定のレクチンを用いて単離されたポリペプチドを反応させることによって決定することができ、または、当業者によって認識されているように、糖型を同定するためにHPLC次いで質量分析を用いることができる(Wormald、MR et al.、Biochem 36:1370(1997)。
【0062】
本発明をより詳細に説明するために、非制限的な実施例を下記に記載する。
【実施例】
【0063】
実施例1.シアル酸含有量が増加したIVIGは、細胞毒性の減少を示す
IgGの特定の糖型が抗体のエフェクター機能を調節することに関与するかどうかを究明するために、あるIgGモノクローナル抗体の細胞毒性の媒介における特定のAsn297に結合した糖質の役割を調べた。Nitnmerjahn et al.、Immunity 23、41(2005)中で以前開示されているように、293細胞中でIgGl、2aまたは2bスイッチ変異体のいずれかとして発現している6A6ハイブリドーマ由来の抗血小板抗体を、これらの具体的な糖質組成および構造を決定するために質量分析によって分析した(図1)。これらの抗体は、最小限のシアル酸残基を含む。セイヨウニワトコレクチンアフィニティークロマトグラフィーによるシアル酸含有種の濃縮は、シアル酸含有量で60〜80倍濃度が高い抗体を産生した(図2Bおよび図3)。シアル化された、および非シアル化6A6−IgGlおよび2b抗体の血小板クリアランスを媒介する能力を比較すると、シアル化とインビボ活性との間で逆相関を示した。6A6 IgG抗体のシアル化により、生物学的活性が40〜80%低下した(図2Cおよび図3)。
【0064】
活性におけるこの減少のメカニズムを究明するため、マウスFcYRの各々に対するこれらの抗体について関連した抗原に対する表面プラズモン共鳴結合を行った。
【0065】
表面プラズモン共鳴分析は、Nimmerjahn and Ravetch、Science 310、1510(2005)中に記載されているように行った。簡潔に述べると、糖側鎖中のシアル酸残基の高い、または低いレベルを有する6A6抗体変異体を、CM5センサーチップの表面上に固定した。水溶性Fcy−レセプターを、30μI/分の流量でHBS−EPランニングバッファー(1OmM Hepes、pH 7.4、150mM NaCl、3.4mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20)中、室温にてフローセルを通じて異なる濃度で注入した。水溶性Fc−レセプターを3分間注入し、7分間結合分子の解離を観察した。コントロールフローセルに対するバックグラウンド結合を自動的に引いた。物質移動の制限を排除するためにコントロール実験を行った。結合および解離段階に対する同時フィッティングならびに一連の全てのカーブに対するグローバルフィッティングを用いて、親和定数をセンサーグラムデータから導いた。1:1ラングミュア結合モデルが観察されたセンサーグラムデータに最も適合し、全ての実験においてこれを用いた。
【0066】
各々の活性化FcyRに対するこれらの抗体のシアル化型で、非シアル化の対応物と比較して結合親和性が5〜10倍減少することが観察された一方、抗原に対する結合親和性においては何ら相違がなかった(図2D)。したがって、IgGのAsn297結合グリカン構造のシアル化は、サブクラス−限定的活性FcyRに対する結合親和性の減少をもたらし、したがってインビボ細胞毒性の減少をもたらした。
【0067】
IgGのN−結合型グリカンのシアル化がインビボ免疫活性を調節することに関与しているという知見の一般性を明らかにするため、我々は次にIVIGの抗炎症活性におけるN−結合型グリカンの役割を調べた。5〜10、000ドナーのプールされた血清から得られるこの精製IgGフラクションは、高投与量(1〜2g/kg)で静脈内投与されるとき、広く炎症疾患の処置に対する治療に用いられている。Dwyer、N.Engl.J.Med.326、107(1992)。この抗炎症活性は、Fc−フラグメントの特性であり、ITP、RAおよび腎毒性腎炎のネズミモデルにおいて守られる。Imbach et a1.、Lancet 1、1228(1981)、Samuelsson et al.、Science 291、484(2001)、Bruhns et al.、Immunity 18、573(2003)、Kaneko et al.、J.Exp.Med.203、789(2006)。
【0068】
エフェクターマクロファージ上の阻害性FcyRIIB分子の表面発現の誘導、それによる細胞毒IgG抗体、または活性FcyRトリガーによるエフェクター細胞反応を誘導する免疫複合体に必要とされる閾値を高めることを含む、この抗炎症活性の共通のメカニズムが提案された。Niramerjahn and Ravetch、Immunity24、19(2006)。
【0069】
実施例2 IVIGの脱シアル化がマウス関節炎モデルにおけるIVIGの抗炎症効果を減少させる
マウス
C57BL/6およびNODマウスは、Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン州)から購入した。FcyRIIB−/−マウスは、発明者の研究室で作製され、C57BL/バックグラウンドへ12世代戻し交配された。C57BL/6バックグラウンド(K/B)のKRN TCRトランスジェニックマウスは、D.MathisおよびC.Benoist(ハーバードメディカルスクール、ボストン、マサチューセッツ州)から贈与され、K/BxNマウスを作製するためにNODマウスに対して交配させた。8〜10週齢のメスマウスを全ての実験に用い、ロックフェラーユニバーシティ動物施設で飼育した。全ての実験は連邦法および機関ガイドラインにしたがって行われ、ロックフェラーユニバーシティ(ニューヨーク、ニューヨーク州)によって認証された。
【0070】
抗体および水溶性Fcレセプター
6A6抗体スイッチ変異体は、293T細胞の一過性トランスフェクション、次いでNimmerjahn et al.、 Immunity 23、 41 (2005) and Nimmerjahn and Ravetch、 Science 310、1510(2005)に開示されているようにプロテインGを用いて精製することによって作製した。シアル酸リッチ抗体変異体を、Sambucus nigra agglutinin(SNA)アガロース(Vector Laboratories、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を用いたレクチンアフィニティークロマトグラフィーによってこれらの抗体調製物から分離した。シアル酸含有量が高いことは、レクチンブロットによって確認した(下記参照)。静脈注射用ヒト免疫グロブリン(IVIG、10%マルトース中5%、クロマトグラフィー精製)は、Octapharma(Hemdon、バージニア州)から購入した。Kaneko Y.et al.、Exp.Med.203、789(2006)に開示されているように、ヒトIVIGの消化を行った。簡単に述べると、IVIGを37℃で1時間0.5mg/mlパパインによって消化し、2.5mg/mlヨードアセトアミドを添加することによって止めた。FabおよびFc結果物フラグメントは、HiPrep 26/60 S−200HRカラム(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)上で、非消化IVIGから分離し、次いでプロテインGカラム(GE Healthcare)およびプロテインLカラム(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)を用いてFcおよびFabフラグメントの精製を行った。フラグメント精製は、抗−ヒトIgG FabまたはFc−特異的抗体(Jackson ImmunoResearch、West Grove、ペンシルバニア州)を用いて免疫ブロット法によって確認した。精製は99%より高いと判別された。F4/80抗体はSerotec(オックスフォード、イギリス)社製である。Ly 17.2抗体は、Caltag(バーリンゲーム、カリフォルニア州)社製である。ヒツジ抗−糸球体基底膜(GBM)抗血清(腎毒性血清(nephrotoxic serum)、NTS)は、M.P.Madaio(ペンシルバニア大学、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)から贈与された。C−末端ヘキサヒスチジンタグを含む水溶性Fc レセプターは、293T細胞の一過性トランスフェクションによって作製し、製造元(Qiagen社)によって示されているようにNi−NTAアガロースを用いて細胞培養上清から精製した。
【0071】
IVIGをノイラミニダーゼで処理し、得られた調製物の組成および構造を質量分析によって解析した。ノイラミニダーゼ処理後には、グリカンを含むシアル酸は何ら検出されなかった(図4D、Fおよび5)。次いで、これらのIgG調製物に対し、IgGl免疫複合体が介する炎症性疾患モデルである、KxN血清の受動伝達によって誘発される関節炎からマウスを保護できるかについて試験した。ノイラミニダーゼによる脱シアル化は、KxN血清誘発性関節炎モデルにおいてIVIG調製物の保護効果を消滅させた(図4B、C、E)。この活性の消失は、非シアル化IgG(図6A)調製物の血清半減期の減少の結果またはIgG(図6B)の単量体組成もしくは構造的完全性に対する変化の結果ではなかった。PNGaseを用いた全てのグリカンの除去は同様の効果を有し、インビボでのIVIGの保護効果を消滅させた(図4A)。2、6シアル酸結合の選択的除去はIVIG活性を消滅させた一方、2、3結合の除去は何ら明白な効果を持たなかった(図4G、H)。
【0072】
実施例3.シアル酸含有量が濃縮されたIVIGフラクションはマウス関節炎モデルにおいて炎症を減少させる
シアル酸含有量が増加したIVIGの調製物
シアル酸はIVIGの抗炎症活性に必要とされるようであるから、この抗炎症活性に対して高投与量要件基準(1g/kg)は、全IgG調製物中のシアル化IgGの限定濃度でありうる。シアル酸修飾グリカン構造が濃縮されたIgG分子を得るために、IVIGをSNA−レクチンアフィニティカラム上で分画した。
【0073】
KxN血清転移関節炎モデルにおける保護的効果について、分画されていないIVIGと比較してこれらのシアル酸濃縮フラクションを試験した。分画されていないIVIG 1g/kgに対し、SNA濃縮IVIGでは0.1g/kgで同等の保護が得られたように、10倍の保護増強がSNA−結合フラクションについて観察された(図4B、C)。SNA濃縮フラクションの血清半減期およびIgGサブクラス分布は、分画されていないIVIGのものと同等であった(図7A、B)。シアル化の効果は、IgGに特異的であった;同じような2つのアンテナ(bi−antennary)、複合糖質構造を有するフェチュインまたはトランスフェリンのようなシアル化N−結合型グリコプロテインはIgGの同等のモル濃度で統計的に有意な抗炎症活性を何ら有さなかった(図8)。最終的に、シアル化IVIG調製物の保護機構は、FcyRIIB発現に依存しており、エフェクターマクロファージ上にこの阻害性レセプターの発現の増大をもたらすという点で分画されていないIVIGと同様である(図9)。
【0074】
実施例4.シアル酸含有量が増加したIVIGの抗炎症反応の増強は、FCドメイン上のN−結合型グリカンのシアル化によって介される
シアル化されうる、軽鎖または重鎖可変領域上のOおよびN結合型グリカンをIVIG中のポリクローナルIgGも含むので、SNA−リッチIgG調製物の抗炎症活性の増加がFc上のN−結合型グリコシル化部位のシアル化が増加した結果であることを我々は確認した。Fc−フラグメントは、分画化されていない、およびSNA分画されたIVIGから作製し、それらのインビボ活性を試験した。インタクトIgGで観察されたように、分画化されていないIVIGから作製したFc−フラグメントと比較した場合、SNA−精製Fc−フラグメントはインビボにおける保護効果を増強した(図4C)。その一方、Fabフラグメントはインビボアッセイにおいて何ら抗炎症活性を示さなかった。したがって、IVIGの抗炎症活性には高投与量が必要であることは、全調製物中に存在するシアル化IgGの寄与がより小さいことに起因している可能性がある。シアル酸結合レクチンクロマトグラフによってこれらのフラクションを濃縮することは、その結果として抗炎症活性を増加した。
【0075】
IgG抗体の受動免疫法を用いたこれらの結果は、炎症性から抗炎症種へと切り替えるIgGの能力がFcドメイン上のN−結合型グリカンのシアル化の程度によって影響されることを示した。
【0076】
実施例5.IgGのシアル化によって媒介される抗炎症活性の増加は、活性免疫反応の間に起こる
グッドパスチャー症候群のマウスモデル
このモデルにおいて、マウスを最初にアジュバントを併用したヒツジIgGで感作し、4日後にヒツジ抗マウス糸球体基底膜調製物を注入した(腎毒性血清、NTS)。簡単に述べると、CFA中ヒツジIgG(Serotec)200μgをマウスに腹腔内に予め免疫し、次いで4日後に体重グラムあたりNTS血清2.5μlを静脈注射した。血液を抗GBM抗血清注入4日後に未処理コントロールマウスから回収し、血清IgGをプロテインG(GE Healthcare、プリンストン、ニュージャージー州)、およびNHS−活性化セファロースカラム(GE Healthcare、プリンストン、ニュージャージー州)上にヒツジIgGを共有カップリングすることによって作製される、セファロース結合ヒツジIgGカラム、アフィニティークロマトグラフィーで精製した。
【0077】
予備感作、続いてのNTS処理は、マウスIgG2b抗−ヒツジIgG抗体を誘発する(NTN免疫付与)。Kaneko Y.et al.、Exp.Med.、203:789(2006)。マウスIgG2b抗体は、NTS抗体とともに糸球体中に蓄積され、浸潤性マクロファージ上のFcyRIVのIgG2b媒介活性による急性および劇症炎症反応をもたらす。予備感作がない場合、炎症は観察されず、これは、マウスIgG2b抗−ヒツジIgG抗体は炎症性反応のメディエーターであることを示す。
【0078】
炎症をもたらす炎症活性がシアル化の変化と関連するかどうかを明らかにするために、予備免疫からの血清IgGおよびIgMならびにNTS免疫マウスについて、SNAレクチン結合によってシアル酸含有量を特性化した(図1OA、B、C)。全IgGシアル化は、免疫されていないコントロールと比較して免疫されたマウスにおいて平均で40%減少した。効果はIgGに特異的であり;IgMのシアル化は前免疫および後免疫で同等であった。マウス血清からのヒツジ特異的IgGフラクションを分析すると、前免疫IgGと比較してシアル化が50〜60%減少したことを示し、このシアル化の相違がより顕著となった(図10B)。
【0079】
これらの結果は、MALDI−TOF−MS分析によって裏付けられた。単糖組成分析は、UCSD Glycotechnology Core Resource(サンディエゴ、カリフォルニア州)によって行った。糖タンパク質サンプルを、SDSおよび2−メルカプトエタノールで変性し、PNGase Fで消化した。放出された混合N−グリカンは逆相HPLCおよび固相抽出によって精製し、次いでN−グリカンの露出した水酸基をメチル化した。得られた誘導体化単糖類は逆相HPLCで再度精製し、MALDI−TOF−MSを行った。
【0080】
IgG前免疫および後免疫の分析によって、N−グリカン構造における変化が末端シアル酸部分に特異的であることが確認された(図10C)。FcyRIV産生、浸潤性マクロファージの関与に関連することが以前示された、糸球体中に沈降したマウスIgG2b抗−ヒツジ抗体は、前免疫されたコントロールと比較してシアル酸含有量が減少することが示された(図10D)。
【0081】
本明細書で引用される全ての特許および非特許文献は、これらの特許および非特許文献の各々が全体で参照によって本明細書に組み込まれる範囲で本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書の発明が例え特定の例や実施形態を参照して説明されているとしても、これらの実施例や実施形態は、本発明の原理および適用を単に説明するにすぎないと理解されるべきである。したがって、次の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲から離れることなく実例の実施形態に対する多数の改変がなされ、また、他の改変が考え出されうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、6A6−IgG抗体イソタイプの糖質スペクトルを示す。6A6−IgGl、IgG2aおよびIgG2b由来のN−グリカンは、MALDI−TOP MSによって分析した。シアル酸残基を含むピークは、角括弧で示す。293T細胞の一過性トランスフェクションによって製造される組み換え6A6抗体スイッチ変異体(switch variant)は、Asn−297の位置で付加された糖質中、シアル酸残基の最小限のレベルを含んでいた。
【図2】図2は、シアル化がIgG細胞毒性を抑制することを示す。(A)抗体Fc−フラグメント中のアスパラギン297(N297)に付加した、十分に進行した(fully processed)糖質部分の構造。コア糖構造は、ボールド体で示されている。末端および分岐糖類のような可変残基に下線が付され、特異的結合が示されている。PNGaseおよびノイラミニダーゼに対する切断部位も示されている。この十分に進行した構造は、トータル血清IgGプール(1)の約5%に存在している。略記:GIcNAc=N−アセチルグルコサミン、man=マンノース、gal=ガラクトース、sa=シアル酸。(B)セイヨウニワトコレクチン(Sambucus nigra agglutinin(SNA))アフィニティークロマトグラフィーによる、シアル酸含有量が高い6A6−IgGlおよびIgG2b抗体の濃縮。(C)シアル酸(SA)を豊富に含む、またはノイラミニダーゼ(NA)処理によってシアル酸が欠失した6A6−IgGlおよび−IgG2b抗体のインビボ活性。各抗体4μgをマウス群に注射した(N=4、mean +/− SEM);*はp<0.0001、**はp<0.01を示す。(D)高いレベルでシアル化されている、または低いレベルでシアル化されている抗体への結合におけるFcγRIIB、FcγRIIIおよびFcγRlVに対する結合定数(K);n.b.は、結合なし(no binding)を示す。太字の数字は、インビボでの抗体活性の媒介に関与するイソタイプ特異的Fc−レセプターを示す。全ての測定において標準誤差は5%未満であった。
【図3】図3は、インビボでの抗体活性がシアル酸により調整されることを示す。6A6−IgGlは、SNA−アガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによってシアル酸リッチとなった。このSNAリッチな処理物のフラクションは、ノイラミニダーゼで処理された(SNA−enriched+ノイラミニダーゼ)。(A)抗体処理物中のシアル酸含有量は、SNAを用いたレクチンブロットによって算出した。(B)インビボの抗体活性は、各抗体処理物(グループあたりn=4〜5マウス)4μgを注入することによって誘発される血小板減少をモニタリングすることによって試験した。
【図4−1】図4は、IVIGの抗炎症活性がシアル酸を必要とすることを示す。(A)PBS、IVIG、およびPNGaseF−処理IVIG(PNGaseF IVIG)で処理したマウス中でのK/BxN血清誘発性関節炎の臨床スコア。(B)図4(A)で示した処理に加えて、マウスをノイラミニダーゼ−処理IVIG(NA IVIG)またはSNA−リッチIVIG(SNA IVIG)で処理した。(C)IVIGのFc−フラグメント、ノイラミニダーゼ−処理Fc(NA Fc)、またはSNA−リッチFc(SNA Fc)で処理したマウスの臨床スコア(N=4、mean +/− SEM)。(D)IVIG調製物の糖質分析結果。未処理またはノイラミニダーゼ処理IVIG由来のN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析結果を示す。シアル酸残基を含むピークは、角括弧で示し、ピークの糖質組成を図5に示す。
【図4−2】(E)SNA−リッチIVIG(0.1g/kg)で処理または未処理の、コントロールマウスまたはK/N誘発性関節炎マウスの足関節の代表的なヘマトキシリン/エオシン染色。K/N処理マウスで観察される広範な好中球浸潤が、IVIG−SNA(0.1g/kg)処理マウスでは見られない。(F)IVIGのコントロールFcフラグメント、ノイラミニダーゼ−処理Fc(NA Fc)およびセイヨウニワトコレクチン(Sambucus nigra agglutinin)(SNA)アフィニティークロマトグラフィーを経たシアル酸含有量が高いFc(SNA Fc)のレクチンブロット。(G)IVIG中の2、3および2、6結合シアル酸残基の分析。IVIGは、未処理のまま(レーン2)または2、3結合シアル酸残基に特異的なノイラミニダーゼで処理した(レーン3)または2、3および2、6結合シアル酸残基に特異的なノイラミニダーゼで処理した(レーン4)。シアル酸の除去は、SNA(2、6結合シアル酸残基を認識する)およびMAL−I(2、3結合シアル酸残基を認識する)を用いたレクチンブロットによって分析した。2、3結合シアル酸残基中の糖タンパク質リッチに対するコントロールとして、fetuinを用いた(レーン1)。クマシー染色ゲルがローディングコントロールとしての役割を果たした(クマシー)。(H)2、3または2、3および2、6結合シアル酸残基を欠失したIVIGの抗炎症活性。関節炎を誘発するために、マウスにKRN血清を注入し、未処理のまま(KRN)、あるいは、IVIG(KRN+IVIG)、2、3結合シアル酸残基を欠失したIVIG(α2−3 シアリダーゼtx IVIG+KRN)、または2、3および2、6結合シアル酸残基を欠失したIVIG(α2−3、6 シアリダーゼtx IVIG+KRN)で処理した。ネガティブコントロールとして、PBSをマウスに注入した(未処理)。
【図5】図5は、N297 IgG Fcから放出される糖質部分の構成を示す。抗体重鎖中のアスパラギン残基297に連結している核となる糖構造は、N−アセチルグルコサミン(GIcNAc)およびマンノース(Man)から構成される。各々の糖型は、1または2の末端ガラクトース(Gal)残基の付加、末端シアル酸−(ヒトに対するN− アセチルノイラミン酸またはNeu5Acおよびマウスに対するN−グリコリルノイラミン酸またはNeu5Gc)残基の付加、および/または分岐GlcNAcまたはフコース(Fuc)の付加に関して変化する。数字は、異なる糖組成のMALDI−TOF MSによって決定される分子量を示す。グリカン構造類の質量は、ヒトまたはマウスに対して示されている(下線)。
【図6】図6は、脱シアル化IVIGの血清半減期およびタンパク質完全性を示す。(A)IVIG処理マウスの血清中のヒトIgGのレベルを、示した日数でELISAによって測定した(N=4、mean +/− SEM)。IVIGと脱シアル化IVIGの半減期には何ら顕著な違いはなかった。有意性は、ANOVA−テストで繰り返し測定することによって算出した。(B)IVIGまたは脱シアル化IVIGの10μgを8%ポリアクリルアミドゲルを用いて非還元下、SDS−PAGEによって分離し、クマシーブリリアントブルー染色で可視化した。IVIGの単量体組成および構造完全性は、ノイラミニダーゼ処理によって影響されなかった。
【図7】図7は、SNA−リッチIVIGの血清半減期およびサブクラス組成を示す。(A)IVIG処理マウスの血清中のヒトIgGのレベルを、示した日数でELISAによって測定した(N=4、mean +/− SEM)。IVIGおよびSNA−リッチIVIGフラクションの半減期には何ら顕著な違いはなかった。有意性は、ANOVA−テストで繰り返し測定することによって算出した。(B)未処理およびSNA−リッチIVIG中のIgGサブクラスをELISAによって決定した。何ら相違は観察されなかった。
【図8】図8は、同様の糖質構造を有するシアル化タンパク質はK/BxN血清誘発性関節炎からマウスを防御しないことを示す。IVIGまたはシアロタンパク質フェチュイン(fetuin)およびトランスフェリンの同モル量(キログラムあたり6.7μmol)または同量(キログラムあたり1g)をK/BxN血清注入の1時間前に投与し、臨床スコアを4日目に調べた(N=4、mean +/− SEM)。PBSを追加のコントロールとして用いた。IgGと比べて、フェチュインまたはトランスフェリンは、等モル濃度で統計的に有意な抗炎症活性は有しなかった。有意性は、Mann−Whitney’sUテストで算出した。
【図9】図9は、SNAリッチIVIGの抗炎症活性がFcγRIIBを必要とすることを示す。(A)非分画IVIG(1g/kgマウス重量)、SNA−リッチIVIG(0.1g/kgマウス重量)、またはコントロールとしてPBSを、K/BxN 血清注入の1時間前にFcγRIIB−欠失マウスに注入し、4日目に臨床スコアを調べた(N=4、mean +/− SEM)。関節炎の臨床スコアに有意な差はなかった。有意性は、Mann−Whitney’sUテストで算出した。(B)SNA−リッチIVIGによるインビボFcγRIIB単球蓄積。野生型マウスに1g/kg、0.1g/kg IVIGあるいは0.1g/kg SNA−リッチまたはコントロールとしてのPBSを注入した。骨髄(左パネル)および脾臓細胞(右パネル)を回収し、注入後1日目にフローサイトメトリーで分析した(N=4)。IVIG 1g/kgまたはSNA−リッチIVIG 0.1g/kgで処理後、F4/80+FcγRIIB+細胞が顕著に蓄積した。有意性は、スチューデントテスト(Student’s t test)で算出した。
【図10】図10は、免疫活性がIgGシアル化の減少を引き起こすことを示す。(A)Sambucus nigra agglutinin(SNA)を用いたブロットにより、シアル酸含有量について、未処理(免疫前)またはヒツジIgGおよび腎毒性血清(NTS)を用いた免疫付与によって誘発される腎毒性腎炎(NTN)のマウスからの血清IgGの特性を明らかにした(方法参照)。(B)濃度測定法(densitometry)によって決定される、未処理およびNTNマウス中のトータル血清IgGおよびIgM抗体ならびにヒツジIgG−特異的IgG抗体のシアル化のレベルの定量(mean +/− SEM)。マウス抗体調製物には何らヒツジIgGは検出されなかった(データは示さず)。(C)未処理またはNTNマウスからのIgG抗体に付加される糖残基のMALDI−TOF分析。シアル酸含有部分は、角括弧によって示される。個々のピークの詳細な糖質組成は、図5に示す。(D)完全フロイントアジュバント(complete Freund’s adjuvant(CFA))中のヒツジIgGを用いた前免疫あり(NTS+CFA)、または前免疫なし(NTSのみ)の腎毒性血清を注入されたマウスの糸球体中に蓄積される抗体中のシアル酸含有量の検出。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのIgGFc領域を含むポリペプチドであり、未精製抗体と比較して、より高い抗炎症活性およびより低い細胞毒性を有する、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが未精製抗体と比較してシアル酸含有量がより高い、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
インビトロでの抗炎症性活性が増加している、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
インビボでの抗炎症性活性が増加している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
天然に存在する抗体源由来である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
組み換え抗体源由来である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
未修飾抗体と比較してシアル酸含有割合が高く、前記未修飾抗体がIVIGを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
タンパク質シアル化活性が高い細胞株由来である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
シアル酸転移酵素を用いた処理により修飾された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
精製されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
適切なキャリアーまたは希釈剤と組み合わせて請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体を含む製剤。
【請求項12】
少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの製造方法であって、前記ポリペプチドが未精製抗体より高い抗炎症活性および低い細胞毒性を有し、
少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源を提供し、ここで、前記少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源は、シアル酸を有する少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数およびシアル酸を欠く少なくとも一つのFc領域を有するポリペプチドの複数を含み;そして
シアル酸を欠く少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数に対する、シアル酸を含む少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数の比率を増加させる、
ことを含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源がヒト未精製IgG抗体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源が、発現系で核酸配列を含むベクターを発現させることにより提供され、ここで前記核酸配列がIgG抗体に翻訳される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記発現系が、菌の、植物の、脊椎動物のおよび無脊椎動物の発現系、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるN−結合グリコシル化ができる修飾されたホスト発現系を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
シアル酸を欠く少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数に対する、シアル酸を含む少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数の比率を増加させる段階が、シアル酸を欠く少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの除去を通じて達成される、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記除去が物理的または化学的方法により達成される、請求項16の方法。
【請求項18】
前記除去が、HPLC、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、高pHアニオン交換クロマトグラフィー、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる方法によって達成される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
シアル酸を欠く少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数に対する、シアル酸を含む少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの複数の比率を増加させる段階が、前記少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドの未精製源の濃縮を通じて達成される、請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記濃縮が、HPLC、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、高pHアニオン交換クロマトグラフィー、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる方法によって達成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記シアル化が、少なくとも一つのFc領域を含むポリペプチドに付加された糖質に対して、シアル酸を付加する酵素を用いた化学反応によって達成される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記酵素がα−(2,6)シアリルトランスフェラーゼである、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−532477(P2009−532477A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504279(P2009−504279)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/008396
【国際公開番号】WO2007/117505
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508233135)ザ ロックフェラー ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】