説明

抗生剤耐性微生物の検出

核酸共増幅アッセイでメチシリン耐性S.aureus(MRSA)およびメチシリン感受性S.aureus(MSSA)を検出する方法。本発明は、MRSA判定から特定の重感染を除外する閾値基準の充足を要請することにより、リアルタイムアッセイにおける偽陽性MRSA判定の発生率を低減する点で有利である。本発明は、高レベルまたは低レベルにおけるメチシリン耐性コアグラーゼ陰性(MR−CoNS)細菌との組合せでMSSAが存在する場合であっても、MSSAの判定をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2007年12月21日に出願された米国仮特許出願第61/015,954号;および2008年3月31に出願された米国仮特許出願第61/041,146号の利益を主張する。これらの、より早い出願の全体の開示は、参照により本明細書により援用される
本発明は、核酸診断に関連するバイオテクノロジーの亜分野に関する。より具体的に述べると、本発明は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)などの抗生剤耐性菌の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)は、それ以外のメチシリン感受性S.aureus(MSSA)に対しては有効な特定の抗生剤に対して耐性な細菌性病原体である。より具体的に述べると、オキサシリンおよびメチシリンに対して耐性な、従来MRSAと呼ばれてきたS.aureus菌株は、セファロスポリンおよびカルバペネムを含むすべてのβ−ラクタム剤に対して耐性である。病院関連のMRSA分離株が、エリトロマイシン、クリンダマイシン、およびテトラサイクリンを含む他の一般に用いられる抗微生物剤に対して多剤耐性であることが多いのに対し、地域関連のMRSA分離株は、β−ラクタム剤およびエリトロマイシンのみに対して耐性であることが多い(非特許文献1を参照されたい)。2005年において重度のMRSA感染(すなわち、侵襲性の感染)を発生させた人々の推定人数は、約94,360人であった(非特許文献2)。
【0003】
MRSA問題はますます大きくなりつつあり、人的および経済的な被害が増大しつつある。実際、米国人口の約32%には既にS.aureusがコロニー形成しており、同約0.8%には既にMRSAがコロニー形成している(非特許文献3)。MRSAに起因する医療関連のブドウ球菌感染(staphylococcal infections)の比率もまた上昇している:1974年には米国の集中治療室内におけるS.aureus感染の2%がMRSAであり、1995年には同22%であり、2004年には同64%であった(非特許文献4)。証拠が示すように、MRSAおよびMSSAによる感染は、同等の直接的な医療費と関連するが、MRSA感染は、MSSAによる感染と比較した場合、2倍を超える死亡率と関連する(すなわち、8%に対して21%)(非特許文献5)。早期の介入を支持するために、MRSAを検出する各種の診断アッセイおよびスクリーニングアッセイが開発されている。
【0004】
MRSAのコロニー形成に対するスクリーニングは従来、例えば、選択培養液または寒天培地を用いる検体培養物に依拠してきたが、診断までの時間を短縮する分子法が開発されている。例えば、非特許文献6は、Staphylococciの混合物を含有する検体内においてMRSAを検出するリアルタイムPCRアッセイについて説明した。アッセイは、「orfX」と称する未知の機能のオープンリーディングフレームの3’端に組み込まれる、SCCmec(Staphylococcal Cassette Chromosome mec)と呼ばれる可動性遺伝因子の検出に依拠した。MRSA細菌に薬剤耐性を賦与するmecA遺伝子を保有するSCCmecは、増幅反応において検出される組込み接合部から少なくとも9kb離れて位置する。Huletskyらにより説明される技法では、SCCmec右端配列の片側にハイブリダイズする5種のプライマー、ならびにS.aureus染色体のorfX遺伝子に対して特異的な1種のプライマーおよび3種の分子ビーコンによるハイブリダイゼーションプローブのコレクションが必要である。多数種のorfXプライマーに対する必要は、異なるMRSA分離株間における公知の配列多様性を反映する。代替的な分子アッセイでは、S.aureusに特異的な第1の遺伝子配列と、mecA遺伝子に特異的な第2の遺伝子配列とが個別に検出されるが、2つの配列間における物理的な連結を確立することはできない。
【0005】
公表された報告は、MRSA検出のための既存の分子法の各々における特定の欠点を強調している。例えば、非特許文献7は、接合部ベースの増幅手順を用いて鼻腔検体を試験するための市販のMRSAアッセイを用いて実施される手順に由来する結果について説明した。略述すると、同著者らは、リアルタイムアッセイにおいてMRSA陽性として同定された試料に由来するMSSA分離株の回収に注目した。この偽陽性結果の発生は、例えば、抗生剤選択圧の不在下における遺伝子不安定性の結果としてmecA遺伝子を喪失した細菌内における接合部の存在により説明されうる。さらに、本発明者らは、おそらく、接合部の配列が高度に多様であり、増幅プライマーに効率的にハイブリダイズしなかったために、同じ市販のアッセイが、少なくとも1種の高度に薬剤耐性のMRSA分離株を検出できなかったことを観察している。該スクリーニング戦略の有用性は、SCC接合部がメチシリン耐性と固有な形では関連していない事実によってさらに危ういものとなっている(非特許文献8(231頁)を参照されたい)。したがって、接合部ベースのMRSA検出法は、偽陽性結果および偽陰性結果の両方により脅かされている。
【0006】
MRSAスクリーニングのために他の分子法も考案されているが、これもまた、欠点を克服できていない。例えば、非特許文献8は、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性Staphylococcci(MR−CoNS)株およびMSSA菌株の両方による鼻腔コロニー形成が、分子法による偽陽性MRSA判定の危険性を表わすのに十分な頻度で生じるのではないかという問題を提起した。病院での医療処置を受けた患者試料集団の3〜4%が、MSSAおよびMR−CoNSによる鼻腔コロニー形成の証拠を示すことを、同著者らは示した。したがって、コロニー形成した個体に由来する試料は、mecAのDNA配列およびS.aureus特異的DNA配列の両方を含んでいた。同研究は、mecA遺伝子およびS.aureus特異的遺伝子を個別に標的とする分子的なMRSAスクリーニング検査が、低度のMRSA状況下にある臨床検体へと直接に適用されると、40%という許容不可能な陽性推定値と関連すると結論した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】米国CDC刊行物、「Laboratory Detection of: Oxacillin/Methicillin−Resistant Staphylococcus aureus」(2005年)
【非特許文献2】JAMA、第298巻、1763〜1771頁(2007年)
【非特許文献3】Kuehnertら、J. Infect. Diseases、第193巻、172頁(2006年)
【非特許文献4】Klevensら、Clin. Infect. Diseases、第42巻、389頁(2006年)
【非特許文献5】Rubinら、Emerg. Infect. Diseases、第5巻、9頁(1999年)
【非特許文献6】Huletskyら、J. Clin. Microbiol.、第42巻、1875頁(2004年)
【非特許文献7】Desjardinsら、J Clin. Microbiol.、第44巻、1219頁(2006年)
【非特許文献8】Beckerら、J. Clin, Microbiol.、第44巻、229頁(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鼻腔スワブ試料などの複合試料に対するMRSAスクリーニングの既存の手法は、あるレベルの誤判定をもたらす傾向がある。したがって、特に、S.aureusおよびS.aureus以外のメチシリン耐性細菌(例えば、MR−CoNS)による重感染の場合には、偽陽性MRSA判定を低減する迅速な分子法が必要である。本発明は、この必要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、S.aureus特異的標的配列をコードする核酸配列を増幅するための組成物に関する。本発明の組成物は、配列番号1からなる標的相補的塩基配列を有する第1のオリゴヌクレオチドと、S.aureus特異的標的配列に対して相補的でない5’配列を場合によって含む、配列番号4からなる標的相補的塩基配列を有する最長60塩基までの長さの第2のオリゴヌクレオチドとを含む。好ましい実施形態では、第1および第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方のみが、鋳型依存性DNAポリメラーゼにより伸長しうる3’端を有する。該組成物は、検出可能に標識されているハイブリダイゼーションプローブをさらに含むことがより好ましい。
【0010】
本発明の別の態様は、メチシリン耐性をコードする核酸配列を増幅するための組成物に関する。本発明の組成物は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群から選択される標的相補的塩基配列を有する第1のオリゴヌクレオチドを含む。該組成物はまた、メチシリン耐性をコードする核酸配列に対して相補的でない5’配列を場合によって含む、配列番号13からなる標的相補的塩基配列を有する第2のオリゴヌクレオチドも含む。好ましい実施形態では、第1および第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方のみが、鋳型依存性DNAポリメラーゼにより伸長しうる3’端を有する。該組成物は、検出可能に標識されているハイブリダイゼーションプローブをさらに含むことがより好ましい。
【0011】
本発明の別の態様は、2つの増幅配列の存在によりMRSAを同定する核酸共増幅アッセイにおける偽陽性MRSA判定の発生率を低減する方法に関する。まず、MRSAの存在について試験することになっている臨床試料からゲノムDNAを取得するステップが実施される。本発明の方法によれば、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされる。次に、取得されたゲノムDNAを鋳型として用いて実施されるin vitroの核酸増幅反応において、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップが実施される。これに、共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップが後続する。次に、決定された時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップが実施される。次に、計算された数値を、MRSAを同定する閾値基準と比較するステップであり、MSSA菌およびMR−CoNS細菌の混合物は含むがMRSA細菌は含まない臨床試料を示す数値の部分集合を、該閾値基準により除外するステップが実施される。最後に、該閾値基準が満たされる場合に限り臨床試料中にMRSAが存在することを判定するステップが実施され、これにより、偽陽性MRSA判定の発生率が低下する。好ましい実施形態では、計算される数値が、上限閾値カットオフ値から下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、閾値基準が要請する。異なる好ましい実施形態において、計算される数値は、決定された時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である。より好ましくは、ΔCtの数値が、経験的に決定された上限閾値カットオフ値から経験的に決定された下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、閾値基準が要請する。さらにより好ましくは、メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含み、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることによりΔCtの数値が計算され、ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことを、閾値基準が要請する。本発明のより一般的な実施形態によれば、臨床試料は鼻腔スワブ試料である。本発明の異なる一般的な実施形態によれば、メチシリン耐性マーカーはmecA標的配列を含む。臨床試料が鼻腔スワブ試料である場合、メチシリン耐性マーカーは、mecA標的配列を含むことが好ましい。極めて好ましい実施形態において、S.aureus特異的標的配列は、S.aureus特異的リボソーム核酸配列を含む。
【0012】
本発明の別の態様は、臨床試料がメチシリン感受性S.aureus(MSSA)細菌を含有することを確立する方法に関する。一般に、該方法は、臨床試料から核酸を取得するステップを含む。これは、洗浄剤およびアルカリによる試料の処理など、従来の手順を伴いうる。次に、in vitroの核酸増幅反応において、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性特異的標的配列を共増幅するステップが実施される。この反応は、該手順の先行するステップにおいて取得された核酸を鋳型として用いて実施される。本発明の方法は、最初の取得するステップにおいて取得された核酸の中に、示した2つの標的配列の各々が含まれる試料を伴う操作に特に用いられる。実際、標的配列の両方についての増幅産物は、in vitroの核酸増幅反応において生成および検出される。これに、共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性特異的標的配列についての時間依存的な増幅指標を決定するステップが後続する。次に、該決定するステップに由来する、該時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップが実施される。次に、計算された数値が閾値基準を満たす場合に、該生物学的試料がメチシリン感受性S.aureus細菌を含有することを確立するステップが実施される。メチシリン耐性S.aureus細菌から取得される核酸の共増幅反応速度と、メチシリン感受性S.aureus細菌およびメチシリン耐性コアグラーゼ陰性細菌の混合物から取得される核酸の共増幅反応速度とを、該閾値基準により区別する。好ましい一実施形態において、臨床試料は鼻腔スワブ試料である。別の好ましい実施形態において、メチシリン耐性特異的標的配列は、mecA標的配列を含む。さらに別の好ましい実施形態において、閾値基準は、計算された数値の、経験的に決定された下限閾値カットオフ値との比較、および経験的に決定された上限閾値カットオフ値との比較を伴う。さらに別の好ましい実施形態において、計算される数値は、決定された時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である。より好ましくは、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さいか、またはΔCtの数値が経験的に決定された上限閾値カットオフ値よりも大きいことを、閾値基準が要請する。代替的に、ΔCtの数値は、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることにより計算することもできる。さらに、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも小さいことも、閾値基準が要請する。異なる代替法によれば、ΔCtの数値は、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることにより計算することもできる。さらに、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことも、閾値基準が要請する。さらに別の好ましい実施形態において、該取得するステップは、ゲノムDNAを取得することを伴う。さらにまた別の好ましい実施形態において、in vitroの核酸増幅反応は、逆転写酵素を含む。さらにまた別の実施形態において、S.aureus特異的標的配列は、S.aureusリボソーム核酸配列である。さらにまた別の好ましい実施形態において、該決定するステップは、単位複製配列の生成を示す検出可能なシグナルの所定レベルに到達する時間を決定することを伴う。本発明のより一般的な実施形態によれば、臨床試料が鼻腔スワブ試料である場合、メチシリン耐性特異的標的配列は、mecA標的配列を含む。これに該当する場合、計算される数値は、該決定するステップにおける時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値であることが好ましい。好ましい一代替法によれば、閾値基準は、ΔCtの数値を経験的に決定された下限閾値カットオフ値との比較、および経験的に決定された上限閾値カットオフ値の比較を伴う。好ましい別の代替法によれば、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さいか、またはΔCtの数値が経験的に決定された上限閾値カットオフ値よりも大きいことを、閾値基準が要請する。さらに別の好ましい代替法によれば、ΔCtの数値は、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることにより計算することもでき、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも小さいことを、閾値基準が要請する。さらにまた別の好ましい代替法によれば、ΔCtの数値は、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることにより計算することもでき、メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するのに、ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことを、閾値基準が要請する。
【0013】
本発明の別の態様は、臨床試料がメチシリン耐性S.aureus(MRSA)細菌を含有することを、制御可能な偽陽性判定発生率で指摘する方法に関する。該方法は、臨床試料からゲノムDNAを取得するステップで始まり、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされる。これに、取得されたゲノムDNAを鋳型として用いるin vitroの核酸増幅反応において、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップが後続する。次に、共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップが実施される。次に、決定された時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップが実施される。最後に、MRSAから取得された核酸の増幅を、MSSA菌およびMR−CoNS細菌の混合物から取得された核酸の増幅と区別する閾値基準を、計算された数値が満たす場合に、臨床試料がMRSAを含有することを指摘するステップが実施される。この手順により、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーの両方を定性的に検出することによりMRSAの存在を判定する方法と比較して、臨床試料中におけるMSSAおよびMR−CoNSの混合物から結果としてもたらされる偽陽性MRSA判定が減少する。好ましい一実施形態では、計算される数値が、経験的に決定された上限閾値カットオフ値から経験的に決定された下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、閾値基準が要請する。異なる好ましい実施形態において、計算される数値は、決定された時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である。より好ましくは、ΔCtの数値が、経験的に決定された上限閾値カットオフ値から経験的に決定された下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、閾値基準が要請する。本発明のより一般的な実施形態によれば、臨床試料は鼻腔スワブ試料である。異なる一般的な実施形態によれば、メチシリン耐性マーカーは、mecA標的配列を含む。臨床試料が鼻腔スワブ試料である実施形態によれば、メチシリン耐性マーカーは、mecA標的配列を含む。極めて好ましい実施形態において、S.aureus特異的標的配列は、リボソーム核酸配列を含む。
【0014】
本発明の別の態様は、臨床試料が、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)細菌を含有するか、メチシリン感受性S.aureus(MSSA)細菌およびメチシリン耐性コアグラーゼ陰性Staphylococcus(MR−CoNS)細菌の混合物を含有するか確立する方法に関する。該方法は、臨床試料からゲノムDNAを取得するステップで始まり、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされる。次に、取得されたゲノムDNAを鋳型として用いて実施されるin vitroの核酸増幅反応において、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップが実施される。これに、共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップが後続する。次に、時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップが実施される。最後に、以下の2つの相互に排他的な条件のいずれが存在するかを確立するステップが実施される。第1の場合において、MRSA細菌から取得される核酸の共増幅反応速度と、MSSA菌およびMR−CoNS細菌の混合物から取得される核酸の共増幅反応速度とを区別する閾値基準を、計算された数値が満たす場合、臨床試料はMRSAを含有する。第2の場合において、計算された数値が該閾値基準を満たさない場合、臨床試料は、MR−CoNSと混合されたMSSAを含有し、MRSAを含有しない。好ましい一実施形態では、該数値が、経験的に決定された上限閾値カットオフ値から経験的に決定された下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、閾値基準が要請する。異なる好ましい実施形態において、ステップ(d)において計算された数値は、ステップ(c)において決定された時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である。より好ましくは、ΔCtの数値が、経験的に決定された上限閾値カットオフ値から経験的に決定された下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、閾値基準が要請する。さらにより好ましくは、ΔCtの数値が経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さく、これにより、MR−CoNS細菌を超える量でMSSA菌が存在するMSSA菌およびMR−CoNS細菌の混合物を、臨床試料が含有することを示す。本発明のより一般的な実施形態によれば、臨床試料は鼻腔スワブ試料である。本発明の異なる一般的な実施形態によれば、メチシリン耐性マーカーは、mecA標的配列を含む。臨床試料が鼻腔スワブ試料である場合において、メチシリン耐性マーカーは、mecA標的配列を含むことが好ましい。これに該当する場合、S.aureus特異的標的配列は、リボソーム核酸配列でありうる。
【0015】
本発明の別の態様は、臨床検査試料中におけるMRSA細菌の存在と符合する反応速度プロファイルを同定するリアルタイム核酸共増幅アッセイにおいて、感度および特異性のパラメータを設定する方法に関する。該方法は、MRSA細菌を含むことが既知である臨床試料コレクションと、MSSA菌およびMR−CoNS細菌は含むがMRSA細菌は含まないことが既知である臨床試料コレクションとを取得するステップで始まる。これに、該臨床試料コレクションの中における各試料からゲノムDNAを単離するステップが後続し、この結果、MRSAを含む細菌から単離されたゲノムDNA試料のコレクションと、MSSAおよびMR−CoNは含むがMRSAは含まない細菌から単離されたゲノムDNA試料のコレクションとがもたらされる。次に、該単離されたゲノムDNA試料の各々についての個別の核酸増幅反応において、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップが実施される。次に、核酸増幅反応において共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップが実施される。次に、核酸増幅反応の各々について、先行するステップにおいて決定された時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップが実施される。この結果、MRSAを含む試料についての数値コレクションと、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての数値コレクションとがもたらされる。最後に、臨床検査試料中におけるMRSA細菌の存在と符合する反応速度プロファイルを同定するのに必要とされる、計算された数値に対する閾値基準を選択するステップが実施される。MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての数値コレクションの中における値の部分集合を、該閾値基準により除外する。これは、リアルタイム核酸共増幅アッセイにおいて、感度および特異性のパラメータを設定することに帰着する。好ましい実施形態において、閾値基準により除外される値の部分集合は、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての数値コレクションの中における最高値および最低値を含む。異なる好ましい実施形態では、選択された閾値基準を変更し、これにより、リアルタイム核酸共増幅アッセイの感度および特異性のパラメータを改変するさらなるステップが実施される。
【0016】
定義
以下の用語は、異なる意味を有することが明示的に示されない限り、本明細書において示される意味を有する。
【0017】
「試料」または「検査試料」とは、標的生物または該標的生物に由来する核酸を含有することが疑われる任意の物質を意味する。該物質は、例えば、鼻腔スワブ検体など、未処理の臨床検体、該検体を含有する緩衝培地、該検体および該標的生物に属する核酸を放出させる溶解作用物質を含有する培地、あるいは反応容器内または反応材料上もしくは反応デバイス上で単離および/または精製された、該標的生物に由来する核酸を含有する培地でありうる。
【0018】
「由来する」とは、言及された核酸が、生物から直接取得されるか、または核酸増幅の産物であることを意味する。したがって、生物に由来する核酸は、例えば、該生物内に天然では存在しないアンチセンスのRNA分子でありうる。
【0019】
「試料調製」とは、その後、試料中に存在する核酸を増幅および検出するために、該試料を調製する任意のステップまたは方法を指す。試料調製は、より大きな試料容量または実質的に水性の混合物から成分を分離するかまたは濃縮する任意の公知の方法を含みうる。試料調製は、細胞成分の溶解および残骸の除去を含むことがあり、二本鎖核酸の変性を含むことがあり、他の試料成分から標的核酸を選択的に捕捉する核酸オリゴマーの使用を含むことがある。
【0020】
細胞に関する場合の「溶解させる」または「溶解」とは、該細胞から核酸を放出させる状態への変化を引き起こすことを意味する。
【0021】
「単離する」または「単離」とは、反応容器または反応デバイスまたは固体担体(例えば、試験管、キュベット、マイクロ滴定プレートウェル、ニトロセルロースフィルター、スライド、またはピペットチップ)から無視できない量の標的核酸が失われることなく該標的核酸を精製しうるように、該容器、デバイス、または担体内において、検査試料中に存在する該標的核酸の少なくとも一部を、固定した形であるかまたは放出可能な形で濃縮することを意味する。
【0022】
「分離」または「精製」とは、生物学的試料の1つまたは複数の成分を、該試料の1つまたは複数の他の成分から取り出すこと意味する。試料成分には、タンパク質、炭水化物、脂質、および標識プローブなどの物質も含みうる、通常は水性の溶液相中の核酸も含まれる。好ましくは、分離または精製するステップにより、試料中に存在する他の成分の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、またさらにより好ましくは少なくとも約95%が除去される。
【0023】
「核酸」とは、ホスホジエステル結合または他の結合により連結されてポリヌクレオチドを形成する含窒素ヘテロ環塩基または同塩基類似体を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む多量体化合物を指す。核酸は、RNAポリマー、DNAポリマー、またはキメラDNA−RNAポリマー、およびこれらの類似体を含む。核酸の「骨格」は、1つまたは複数の糖ホスホジエステル結合、ペプチド核酸(PNA)結合(PCT第WO95/32305号)、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、またはこれらの組み合わせを含む各種の結合からなる可能性がある。核酸の糖部分は、リボースもしくはデオキシリボース、または2’メトキシ置換および2’ハロゲン化物置換(例えば、2’−F)など、公知の置換を有する類似の化合物でありうる。含窒素塩基は、従来の塩基(A、G、C、T、U)、これらの類似体(例えば、イノシン)、N−メチルデオキシグアノシン、デアザプリンまたはアザプリン、デアザピリミジンまたはアザピリミジンなど、プリン塩基またはピリミジン塩基の誘導体、5または6の位置において置換基を有するピリミジン塩基、2−アミノ−6−メチルアミノプリンなど、2、6、および/または8の位置において変更または置換された置換基を有するプリン塩基、O−メチルグアニン、4−チオ−ピリミジン、4−アミノ−ピリミジン、4−ジメチルヒドラジン−ピリミジン、およびO−アルキル−ピリミジン、ならびに非置換または3−置換ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(米国特許第5,378,825号、同第6,949,367号、およびPCT第WO93/13121号)などのピラゾロ化合物でありうる。核酸は、骨格が1つまたは複数の残基に含窒素塩基を含まない「脱塩基」位置を含みうる(米国特許第5,585,481号を参照されたい)。核酸はまた、「ロック核酸」(LNA)、糖の立体構造を模倣するRNA内にロックされる二環式フラノース単位を伴う、1種または複数種のLNAヌクレオチド単量体を含有する類似体(Vesterら、2004年、Biochemistry、第43巻、第42号、13233〜41頁)も含む。核酸は、従来の糖、塩基、ならびにRNAおよびDNAにおいて見出される結合のみを含む場合もあり、従来の成分および置換(例えば、2’メトキシ骨格により連結される従来の塩基、または従来の塩基および1種もしくは複数種の塩基類似体の混合物を含む核酸)を含む場合もある。in vitroにおいて核酸を合成する方法は、当技術分野において周知である。
【0024】
「オリゴヌクレオチド」または「オリゴマー」とは、ともに結合した2つ以上のヌクレオシドサブユニットまたは核酸塩基サブユニットからなるポリマーを意味する。オリゴヌクレオチドは、好ましくは10〜100ヌクレオチド、より好ましくは10〜80ヌクレオチド、またさらにより好ましくは15〜60ヌクレオチドの範囲の長さを有する。オリゴヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNAならびにこれらの類似体でありうる。ヌクレオシドサブユニットの糖基は、リボース、デオキシリボース、また例えば、リボフラノシル部分への2’−O−メチル置換を有するリボヌクレオシドを含むこれらの類似体でありうる。2’置換を有するヌクレオシドサブユニットを含み、検出プローブ、捕捉オリゴ、および/または増幅オリゴヌクレオチドとして有用なオリゴヌクレオチドは、Beckerらにより、米国特許第6,130,038号において開示されている。該ヌクレオシドサブユニットは、ホスホジエステル結合、修飾結合などの結合によるか、またはその相補的な標的核酸配列に対する該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを妨げない非ヌクレオチド部分により接合されうる。修飾結合は、標準的なホスホジエステル結合が、ホスホロチオエート結合またはメチルホスホネート結合などの異なる結合により置き換えられる結合を含む。核酸塩基サブユニットは、例えば、中央の二級アミンに対するカルボキシメチル結合により核酸塩基サブユニットを連結する2−アミノエチルグリシン骨格などの擬似ペプチド骨格により、DNAの天然リン酸デオキシリボース骨格を置き換えることにより接合することができる(擬似ペプチド骨格を有するDNA類似体は一般に、「ペプチド核酸」または「PNA」と称し、Nielsenら、「Peptide Nucleic Acids」、米国特許第5,539,082号により開示されている)。本発明により意図されるオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの他の非限定的な例は、二環式および三環式のヌクレオシドを含有する核酸類似体、および「ロック核酸」、「ロックヌクレオシド類似体」、または「LNA」と称するヌクレオチド類似体(ロック核酸は、Wang、「Conformationally Locked Nucleosides and Oligonucleotides」、米国特許第6,083,482号;Imanishiら、「Bicyclonucleoside and Oligonucleotide Analogues」、米国特許第6,268,490号;およびWengelら、「Oligonucleotide Analogues」、米国特許第6,670,461号により開示されている)を含む。改変オリゴヌクレオチドが厳密なハイブリダイゼーション条件または増幅反応条件の下で標的核酸にハイブリダイズしうる場合、任意の核酸類似体が本発明により意図される。
【0025】
「増幅オリゴヌクレオチド」またはその同等物である「増幅オリゴマー」は、標的核酸またはその相補体にハイブリダイズし、核酸増幅反応に関与するオリゴヌクレオチドである。増幅オリゴヌクレオチドの例は、鋳型核酸にハイブリダイズし、増幅工程においてポリメラーゼにより伸長する3’ヒドロキシル端を含有する「プライマー」である。別の例は、例えば、3’端が遮断されているため、増幅に関与しこれを促進するが、ポリメラーゼにより伸長しないオリゴヌクレオチドである。増幅オリゴヌクレオチドに好ましいサイズ範囲は、約10〜約60ヌクレオチド長であり、標的核酸配列(またはその相補的配列)の領域に相補的な少なくとも約10の連続塩基、また、より好ましくは少なくとも12の連続塩基を含有するサイズ範囲を含む。連続塩基は、増幅オリゴヌクレオチドが結合する標的配列に、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、また最も好ましくは約100%相補的である。増幅オリゴヌクレオチドは、場合によって、改変ヌクレオチドまたは類似体を含むこともあり、場合によって、増幅反応に関与するが標的配列もしくは鋳型配列に相補的ではないか、またはこれに含有されるかもしくはこれに相補的であるさらなる配列を含むこともある。例えば、「プロモータープライマー」とは、標的核酸に相補的ではないが、プライマーの相補的配列に隣接するかまたはこれに近接する、5’側プロモーター配列を含む増幅オリゴヌクレオチドである。当業者は、プライマーとして機能する増幅オリゴヌクレオチドを、5’側プロモーター配列を含み、したがって、プロモーター−プライマーとして機能するように改変することができ、プロモーター−プライマーは、そのプロモーター配列から独立したプライマーとして機能しうる(すなわち、該オリゴヌクレオチドを、そのプロモーター配列を除去することによって改変することもでき、これなしで合成することにより改変することもできる)ことを理解するであろう。同じ意味で「プロモーター供給体」または「プロモーターオリゴヌクレオチド」とも称する増幅オリゴヌクレオチドは、重合化のための鋳型として用いられるプロモーター配列を含むが、該オリゴヌクレオチドは、遮断されたその3’端から伸長することがなく、したがって、DNAポリメラーゼ活性による伸長には用いられない。
【0026】
「実質的に相同な」、「実質的に対応すること(substantially corresponding)」、または「実質的に対応する(substantially corresponds)」とは、対象のオリゴヌクレオチドが、基準塩基配列(RNA同等物およびDNA同等物を除く)内に存在する少なくとも10の連続塩基領域に少なくとも80%相同であり、好ましくは少なくとも90%相同であり、最も好ましくは100%相同な、少なくとも10の連続塩基領域を含有する塩基配列を有することを意味する。当業者は、ハイブリダイゼーションのアッセイ条件に対して、多様な相同性百分率での改変を行うことで、許容不可能なレベルの非特異的ハイブリダイゼーションを阻止しながら、標的配列に対してオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせうることを容易に理解するであろう。類似性の程度は、2つの配列を構成する核酸塩基の順序を比較することにより決定され、それらが相補的塩基との水素結合を阻止しない限り、2つの配列間に存在しうる他の構造的な差異は考慮されない。2つの配列間における相同性の程度はまた、比較される少なくとも10の連続塩基の各セット内に存在する塩基ミスマッチの数との関連でも表わすことができ、これは、0〜2塩基の差の範囲でありうる。
【0027】
「実質的に相補的な」とは、対象のオリゴヌクレオチドが、標的核酸配列(RNA同等物およびDNA同等物を除く)内に存在する少なくとも10の連続塩基領域に少なくとも70%相補的であり、好ましくは少なくとも80%相補的であり、より好ましくは少なくとも90%相補的であり、最も好ましくは100%相補的な、少なくとも10の連続塩基領域を含有する塩基配列を有することを意味する。相補性の程度は、2つの配列を構成する核酸塩基の順序を比較することにより決定され、それらが相補的塩基との水素結合を阻止しない限り、2つの配列間に存在しうる他の構造的な差異は考慮されない。2つの配列間における相同性の程度はまた、比較される少なくとも10の連続塩基の各セット内に存在する塩基ミスマッチの数との関連でも表わすことができ、これは、0〜3塩基のミスマッチの範囲でありうる。
【0028】
本明細書で用いられる「増幅」または「増幅すること」とは、多数コピーの標的核酸配列、その相補体、またはこれらのフラグメントを取得するin vitroにおける手順を指す。例えば、in vitroにおける増幅反応とは、多数コピーの標的核酸配列、その相補体、またはこれらのフラグメントの合成を結果としてもたらす酵素触媒反応である。in vitroにおける増幅反応を準備するのに用いうる増幅法の例を以下に示す。in vitroにおける「等温の」増幅反応とは、一定の温度で(すなわち、熱サイクリングなしに)多数コピーの標的核酸配列、その相補体、またはこれらのフラグメントを合成するin vitroにおける増幅反応である。in vitroにおける好ましい増幅反応では、指数関数的な形で単位複製配列が合成され、これは、1つの単位複製配列が、新たな単位複製配列の鋳型として用いられることを意味する。
【0029】
本明細書で用いられる通り、「時間の関数としての」単位複製配列生成のモニタリングとは、in vitroの増幅反応において存在する単位複製配列量を周期的に測定し、その測定量を経過した反応時間と関連付ける過程を指す。例えば、周期的な測定は、増幅反応の異なるサイクルの同じ時点において行うこともでき、反応工程の物理的なサイクリングを伴わない反応中における周期的な時間間隔(20秒間ごとなど)で行うこともできる。
【0030】
本明細書で用いられる「増幅指標」という表現は、核酸増幅反応における所定レベルの進行を示す、リアルタイムの反応曲線の形状特徴を指す。このような指標は一般に、その強度が、時間、サイクル数などの関数としての、反応混合物中に存在する単位複製配列量と関連する測定可能なシグナル(蛍光リーディングなど)を示す、「増殖曲線」と呼ばれることもある反応曲線の数学的解析により決定される。
【0031】
「標的核酸」または「標的」とは、標的核酸配列を含有する核酸分子を意味する。
【0032】
「標的核酸配列」または「標的配列」または「標的領域」とは、一本鎖核酸分子のヌクレオチド配列の全部または一部を含む特異的なデオキシリボヌクレオチド配列またはリボヌクレオチド配列を意味し、(指摘される場合、)これに相補的なデオキシリボヌクレオチド配列またはリボヌクレオチド配列を含む可能性がある。一般に、増幅される標的核酸配列は、2つの反対方向に配置された増幅オリゴヌクレオチドの間に位置し、増幅オリゴヌクレオチドの各々に対して部分的または完全に相補的な標的核酸分子の一部を含む。本発明との関連において、標的核酸分子は、例えば、リボソーム核酸分子またはmecA核酸分子でありうる。in vitroの核酸増幅反応において増幅される標的核酸分子の部分を、増幅される「標的核酸配列」と称する。
【0033】
本明細書で用いられる「メチシリン耐性マーカー」、「メチシリン耐性特異的標的配列」、または「メチシリン耐性標的」とは、メチシリン耐性菌には存在するが、メチシリンによる増殖阻害に対して感受性の細菌には存在しない核酸配列を意味する。メチシリン耐性マーカーの例は、本明細書で説明される核酸増幅反応において検出されるmecA核酸配列である。
【0034】
本明細書で用いられる「S.aureus特異的」標的配列とは、S.aureusには存在するがCoNS細菌には存在しない核酸配列である。S.aureus特異的標的配列はまた、Enterococcus属内の細菌にも存在しないことが好ましい。S.aureus特異的標的配列は、他のグラム(+)細菌内において見出される配列と比較した場合に、S.aureusに固有であることがさらにより好ましい。S.aureus特異的標的配列の例は、本明細書で説明される核酸増幅反応において検出される23SrDNA配列である。他のS.aureus特異的標的配列は、当業者に公知である。
【0035】
本明細書で用いられる、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅オリゴヌクレオチドの「標的にハイブリダイズする配列」とは、適切な標的核酸にハイブリダイズしたときに二重鎖構造に関与するプローブまたは増幅オリゴヌクレオチドの塩基配列を指す。標的核酸に対して相補的な下流配列および標的核酸に対して相補的でない上流のT7プロモーター配列を含むプロモーター供給体の場合、増幅オリゴヌクレオチドの非相補的なプロモーター配列は、標的にハイブリダイズする配列とは考えられない。逆に、標的核酸にハイブリダイズしたときに二重鎖構造を形成しうる、標的核酸に対して十分に相補的な下流のプライマー配列は、標的にハイブリダイズする配列である。該プライマーの標的にハイブリダイズする配列が標的核酸配列に対する偶発的なミスマッチを含有する場合、それは、標的核酸分子内における標的核酸配列に対して完全に相補的とはならない。
【0036】
「完全に相補的な」とは、標的にハイブリダイズする配列の全長にわたる、2つの核酸分子間における100%の塩基相補性を意味する。
【0037】
「単位複製配列」または「増幅産物」とは、核酸増幅反応において生成される核酸分子を意味する。単位複製配列または増幅産物は、標的核酸と同じ方向であるかまたは反対方向でありうる標的核酸配列を含有する。
【0038】
「増幅条件」とは、核酸を増幅させる条件を意味する。許容される増幅条件は、用いられる特定の増幅法に応じて、日常的な実験を超えない範囲で、当業者により容易に確認されうる。例示的な増幅条件は、本明細書で与えられる。
【0039】
「転写を伴う増幅」とは、RNAポリメラーゼを用いて核酸鋳型から多数のRNA転写物を生成する任意の種類の核酸増幅を意味する。従来、これらの増幅反応では、DNAポリメラーゼの活性により伸長しうる3’端を有する少なくとも1つのプライマーを用いる。「転写媒介増幅(TMA)」と呼ばれる、転写を伴う増幅法の一例では一般に、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸、および標的核酸に対して相補的な、プロモーターを含有するオリゴヌクレオチドを用いる。Burgら、米国特許第5,437,990号;Kacianら、米国特許第5,399,491号および同第5,554,516号;Kacianら、PCT第WO93/22461号;Gingerasら、PCT第WO88/01302号;Gingerasら、PCT第WO88/10315号;Malekら、米国特許第5,130,238号;Urdeaら、米国特許第4,868,105号および同第5,124,246号;McDonoughら、PCT第WO94/03472号;ならびにRyderら、PCT第WO95/03430号において詳細に開示されている通り、TMAの変化形は、当技術分野において周知である。米国特許出願第11/213,519号において開示されている通り、DNAポリメラーゼにより伸長しうるただ1つのプライマーを用いる、他の転写を伴う増幅法が本定義では特に受け入れられ、本明細書で開示される方法と関連する使用に極めて好ましい。
【0040】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」とは、完全にまたは部分的に相補的な2本の核酸鎖が、指摘されたハイブリダイゼーションアッセイ条件下において対合し、二本鎖領域を有する安定的な構造を形成する能力を意味する。「ハイブリッド体」と呼ばれることもあるこの二本鎖構造の2本の構成鎖は、水素結合により結び付けられる。これらの水素結合は、単一の核酸鎖上における塩基であるアデニンおよびチミンもしくはウラシル(AおよびTまたはU)またはシトシンおよびグアニン(CおよびG)を含有するヌクレオチド間において形成されることが最も一般的であるが、塩基対合はまた、これらの「標準的な」対のメンバーではない塩基間においても形成されうる。標準以外の塩基対合は、当技術分野において周知である。
【0041】
本明細書で用いられる「ハイブリダイゼーションプローブ」とは、ハイブリダイゼーションを促進して検出可能なハイブリッド体を形成する条件下において、核酸内、好ましくは増幅核酸内における標的配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。プローブは場合によって、該プローブの(1つまたは複数の)端部に結合する場合もあり、その内部の場合もある、検出可能部分を含有しうる。標的ポリヌクレオチドと結合するプローブのヌクレオチドは、該プローブの配列に対して内部にある検出可能部分の場合がそうであるように、厳密に連続する必要はない。検出は、直接(すなわち、標的配列または増幅核酸に直接にハイブリダイズするプローブから結果としてもたらされる)の場合もあり、間接(すなわち、標的配列または増幅核酸にプローブを連結する介在的な分子構造にハイブリダイズするプローブから結果としてもたらされる)の場合もある。プローブの「標的」とは一般に、標準的な水素結合(すなわち、塩基対合)を用いるプローブオリゴヌクレオチドの少なくとも一部に特異的にハイブリダイズする、増幅核酸配列内に含有される配列を指す。プローブは、標的特異的配列、また場合によって、検出される標的配列に対して非相補的な他の配列を含みうる。これらの非相補的な配列は、プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、またはプローブの3次元的構造に寄与する配列(例えば、米国特許第5,118,801号、同第5,312,728号、米国特許第6,849,412号、同第6,835,542号、同第6,534,274号、および同第6,361,945号、ならびにUS2006−0068417A1において説明されている)を含みうる。「十分に相補的な」配列は、プローブオリゴヌクレオチドが、該プローブの標的特異的配列に対して完全に相補的でない標的配列に対する安定的なハイブリダイゼーションを可能とする。
【0042】
「十分に相補的な」とは、標準的な塩基対合(例えば、G:C、A:T、またはA:Uの対合)により配列内の各位置において相補的な場合もあり、標準的な水素結合による相補的な塩基でない脱塩基位置を含む1つまたは複数の位置を含有する場合もある別の配列に対して、一連の相補的な塩基間における水素結合によりハイブリダイズすることが可能な連続配列を意味する。連続塩基は、オリゴマーが特異的にハイブリダイズすることを意図する配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、またより好ましくは約100%相補的である。「十分に相補的な」配列は、該配列が完全に相補的ではない場合であっても、選択されたハイブリダイゼーション条件下において、核酸オリゴマーが、その標的配列に対して安定的にハイブリダイズすることを可能とする。適切なハイブリダイゼーション条件は当技術分野において周知であり、塩基配列の組成に基づいて容易に予測することもでき、日常的な試験を用いて決定することもできる(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、第2版、(ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、1989年)、第1.90〜1.91節、第7.37〜7.57節、第9.47〜9.51節、および第11.47〜11.57節、特に、第9.50〜9.51節、第11.12〜11.13節、第11.45〜11.47節、および第11.55〜11.57節)。
【0043】
「アンチセンス」、「反対方向」、または「負の方向」とは、基準核酸分子またはセンス核酸分子に対して完全に相補的な核酸分子を意味する。
【0044】
「センス」、「同じ方向」、または「正の方向」とは、基準の核酸分子に対して完全に相同な核酸分子を意味する。
【0045】
「RNA同等物およびDNA同等物」とは、同じ相補的塩基対ハイブリダイゼーション特性を有するRNA分子およびDNA分子を意味する。RNA同等物およびDNA同等物は、異なる糖部分(すなわち、デオキシリボースに対するリボース)を有し、RNAにおけるウラシルおよびDNAにおけるチミンの存在により異なりうる。RNA同等物およびDNA同等物は特定の配列に対して同程度の相補性を有するので、両者間の違いは、相同性の違いに寄与しない。
【0046】
「核酸二重鎖」、「二重鎖」、「核酸ハイブリッド体」、または「ハイブリッド体」とは、二本鎖の水素結合領域を含む安定的な核酸構造を意味する。このようなハイブリッド体は、RNA:RNA、RNA:DNA、およびDNA:DNAの二重鎖分子ならびにこれらの類似体を含む。該構造は、プローブを伴う標識が不要な手段を含む、任意の公知の手段により検出可能な程度に十分に安定的である。
【0047】
「捕捉オリゴヌクレオチド」とは、標的核酸(検出プローブにより標的とされる領域以外の領域であることが好ましい)および直接的または間接的な形での固体支持体に対する結合が可能であり、これにより、検査試料中における標的核酸を固定化および単離する手段を提供するオリゴヌクレオチドを意味する。捕捉オリゴは、標的核酸にハイブリダイズする標的結合領域と、固体支持体に結合した固定化プローブにハイブリダイズする固定化プローブ結合領域とを含む。標的結合領域および固定化プローブ結合領域は、直接に隣接し合うかまたは場合によって改変される1つもしくは複数のヌクレオチドを介して隔てられて同じオリゴヌクレオチド内に含有される場合もあり、これらの領域は、ヌクレオチド以外のリンカーにより接合し合う場合もある。標的核酸にハイブリダイズする標的結合領域は、配列特異的な機構によりハイブリダイズする場合もあり、非特異的な機構によりハイブリダイズする場合もある。
【0048】
「固定化プローブ」または「固定化核酸」とは、捕捉オリゴヌクレオチドを固定化支持体に接合するオリゴヌクレオチドを意味する。固定化プローブは、これらの条件が同じ場合であれ異なる場合であれ、捕捉プローブを標的核酸にハイブリダイズさせるのに用いられる条件下において安定を維持する結合または相互作用により固体支持体へと直接的または間接的に接合される。固定化プローブは、試料中における未結合物質からの、結合標的核酸の分離を容易とする。
【0049】
本明細書で用いられる「検出可能標識」とは、検出が可能であるか、または検出可能な応答をもたらしうる化学種である。本発明による検出可能標識は、直接的または間接的にポリヌクレオチドプローブに連結することができ、放射性同位元素、酵素、ハプテン、色素または検出可能な色を付与する粒子(例えば、ラテックスビーズまたは金属粒子)、発光化合物(例えば、生物発光部分、リン光部分、または化学発光部分)、および蛍光化合物などの発色団を含む。
【0050】
「ホモジニアスな検出可能標識」とは、標的配列にハイブリダイズしたプローブ上に標識が存在するかどうかを決定することにより、ホモジニアスな形で検出されうる標識を指す。すなわち、ホモジニアスな検出可能標識は、標識または標識プローブのハイブリダイズした形態をハイブリダイズしなかった形態から物理的に取り去ることなしに検出することができる。ホモジニアスな検出可能標識は、核酸の検出に標識プローブを用いる場合に好ましい。ホモジニアスな標識の例は、Arnoldら、米国特許第5,283,174号;Woodheadら、米国特許第5,656,207号;およびNelsonら、米国特許第5,658,737号により詳細に説明されている。ホモジニアスアッセイにおいて用いるのに好ましい標識は、化学発光化合物を含む(例えば、Woodheadら、米国特許第5,656,207号;Nelsonら、米国特許第5,658,737号;およびArnold, Jr.ら、米国特許第5,639,604号を参照されたい)。好ましい化学発光標識は、標準的なアクリジニウムエステル(「AE」)またはこれらの誘導体などのAE化合物(例えば、ナフチル−AE、オルト−AE、1−メチル−AEまたは3−メチル−AE、2,7−ジメチル−AE、4,5−ジメチル−AE、オルト−ジブロモ−AE、オルト−ジメチル−AE、メタ−ジメチル−AE、オルト−メトキシ−AE、オルト−メトキシ(シンナミル)−AE、オルト−メチル−AE、オルト−フルオロ−AE、1−メチル−オルト−フルオロ−AEまたは3−メチル−オルト−フルオロ−AE、1−メチル−メタ−ジフルオロ−AEまたは3−メチル−メタ−ジフルオロ−AE、および2−メチル−AE)である。
【0051】
「ホモジニアスアッセイ」とは、特異的プローブのハイブリダイゼーションの程度を決定する前に、ハイブリダイズしたプローブをハイブリダイズしなかったプローブから物理的に分離する必要がない検出手順を指す。本明細書で説明されるアッセイなどの例示的なホモジニアスアッセイでは、分子トーチ、分子ビーコン、またはステムループ構造を有し、適切な標的にハイブリダイズしたときに蛍光シグナルを発する自己報告プローブ、ハイブリッドの二重鎖で存在しない場合は化学的手段により選択的に破壊されうるアクリジニウムエステルによる化学発光標識、および当業者には周知の他のホモジニアスな検出可能標識を用いることができる。
【0052】
「厳密なハイブリダイゼーション条件」または「厳密な条件」とは、検出プローブを標的核酸には優先的にハイブリダイズさせるが非標的核酸にはハイブリダイズさせない条件を意味する。厳密なハイブリダイゼーション条件は、プローブのGC含量および長さ、プローブ配列および検査試料中に存在しうる非標的配列と標的配列との間における類似性の程度を含む因子に応じて変化しうる。ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション試薬またはハイブリダイゼーション溶液の温度および組成を含む。本発明のプローブにより標的核酸を検出するのに好ましいハイブリダイゼーションアッセイの条件は、塩濃度が0.6〜0.9Mの範囲にある場合、約60℃の温度に対応する。ハイブリダイゼーションアッセイの具体的な条件は、実施例の節において記載される。許容される他の厳密なハイブリダイゼーション条件は、当業者により容易に確認されうる。
【0053】
「アッセイ条件」とは、標的核酸に対してオリゴヌクレオチドを安定的にハイブリダイズさせる条件を意味する。例えば、リアルタイム形式の増幅は、プローブのハイブリダイゼーションおよび検出が、核酸増幅反応を実施するのに用いられる同じアッセイ条件下で生じうることを可能とする。本明細書では、標的の増幅および単位複製配列に対するプローブのハイブリダイゼーションの両方を許容する増幅アッセイ条件の例が与えられる。
【0054】
本明細書で用いられる「許容基準」は、特定の標的核酸が増幅されたことを示すものと判定されるために、リアルタイムの核酸増幅反応が満たさなければならないことがらを、測定可能な項目により定義する。例えば、単位複製配列の存在を示す蛍光シグナルは、時間の関数としてモニタリングすることができ、リアルタイムの反応曲線の解析に基づいて増幅指標を確立するのに用いることができる。陽性であると考えるには、蛍光シグナルが、所定の時間枠内において閾値の値を超えることを、許容基準が要請することができる。代替的に、予め設定したある要請(例えば、測定された指標が特定の時間枠内に位置しなければならないこと)を満たす増幅指標と組み合わせて、最小限の蛍光シグナルの生成を許容基準が要請することもできる。
【0055】
本明細書で用いられる「偽陽性」の結果とは、真の陰性試料が陽性であると誤って同定される結果である。例えば、真のMRSA陰性試料がMRSA陽性であると同定されるなら、偽陽性結果となる。
【0056】
本明細書で用いられる「偽陰性」の結果とは、真の陽性試料が陰性であると誤って同定される結果である。例えば、真のMRSA陽性試料がMRSA陰性であると同定されるなら、偽陰性結果となる。
【0057】
本明細書で用いられる「参照表」とは、閾値の値との関係で(例えば、<または≧)表わされるΔCt値と関連する陽性および陰性の増幅結果の可能な組み合わせを表わすデータのコレクションを指す。該コレクション中における各組合せは、生物の種類に対して陽性または陰性の状態を判定する解釈と関連する。参照表は、コンピュータにより読み取り可能な媒体上に保存することができ、従来、実験結果を解読して生物を同定するのに用いられている。
【0058】
本発明との関係では、特定の方法を用いて、診断的決定を行うかまたは下すことができる。例えば、データセットに基づき、特定の生物が存在する可能性が極めて高いという結論が下される。本方法により下される結果は、特定の生物が存在するか、またはおそらく存在しないことを「判定する(determining)」か、または「指定する(assigning)」か、または「確立する」か、または「定める(calling)」ステップとして示すことができる。すべての診断アッセイは、偽陽性結果および偽陰性結果のレベルと関連することを理解されたい。本発明の方法の1つの特徴は、アッセイの感度および特異性により反映されうるこれらの間のバランスを制御する手法に関する。
【0059】
本明細書においてオリゴヌクレオチドを指して用いられる場合の「から本質的になる(consists essentially of)」または「から本質的になること(consisting essentially of)」とは、該オリゴヌクレオチドが指摘された塩基配列と実質的に相同な塩基配列を有し、最大4つの付加的塩基を有し、かつ/またはそこから最大2つの塩基を欠失しうることを意味する。したがって、これらの表現は、配列の長さの限定および配列の変異の限定の両方を含意する。任意の付加または欠失は、厳密なハイブリダイゼーション条件下において、その非標的核酸よりもその標的核酸に対して優先的にハイブリダイズすることが可能であるなどの、その主張される特性を該オリゴヌクレオチドが有することを阻止しない、指摘された塩基配列の重要でない変異である。オリゴヌクレオチドは、付加または欠失なしに、指摘された核酸配列と実質的に同様な塩基配列を含有しうる。しかし、基本的に指摘された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含有するプローブまたはプライマーは、標的核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションに関与せず、このようなハイブリダイゼーションを損なわない、他の核酸分子を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】160CFUのMRSAと、100,000CFUずつのS.epidermidisおよびS.haemolyticusとを用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、52例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図1B】160CFUのMRSAと、100,000CFUずつのS.epidermidisおよびS.haemolyticusとを用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、52例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図2A】160CFUのMRSA細菌および100,000CFUのMSSA菌を用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、50例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図2B】160CFUのMRSA細菌および100,000CFUのMSSA菌を用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、50例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図3A】160CFUのMSSA菌と、100,000CFUずつのS.epidermidisおよびS.haemolyticusとを用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、52例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図3B】160CFUのMSSA菌と、100,000CFUずつのS.epidermidisおよびS.haemolyticusとを用いて実施された反応におけるS.aureusマーカー(パネルA)およびmecAマーカー(パネルB)の増幅に対するリアルタイムの反応曲線のグラフ表示である。垂直軸は、52例の増幅反応について、RFU単位で測定された蛍光シグナルを示す。垂直軸上の5,000RFU(パネルA)および2,500RFU(パネルB)において引かれた水平線は、陽性増幅結果を決定するのに用いられる部分的な基準を表わす。
【図4】図4A〜4Bは、真の陽性MRSA試料(「X」)および真の陰性MRSA試料(「x」)を用いる、異なる多重増幅試験に対するΔCt値の図式的プロットを示す図である。パネルAは、15例の純粋なMRSA培養物(すなわちMSSAまたはMR−CoNSを含有しないMRSA陽性試料)についての結果を示し、これらの多重増幅反応から決定されるΔCt値が実質的に一定であることを裏付ける。該結果により、プロット上における水平線または閾値の値が指摘される。パネルBは、真の陽性MRSA試料8例と、偽陽性として記録された真の陰性MRSA試験8例とに対して決定されたΔCt値を示す。
【図5A】陰性対照および陽性対照のほか、微生物学的試験によりMRSA陰性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、陰性対照についての結果を示す。パネルBは、MSSAまたはMR−CoNSを含まないMRSA陽性対照についての結果を示す。パネルCは、試料3136についての結果を示す。パネルDは、試料1253についての結果を示す。パネルEは、試料1238についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、対照グラフのy軸は、シグナル対ノイズ値を示す。臨床試料を用いて得られたグラフのy軸は、生の蛍光データを示す。
【図5B】陰性対照および陽性対照のほか、微生物学的試験によりMRSA陰性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、陰性対照についての結果を示す。パネルBは、MSSAまたはMR−CoNSを含まないMRSA陽性対照についての結果を示す。パネルCは、試料3136についての結果を示す。パネルDは、試料1253についての結果を示す。パネルEは、試料1238についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、対照グラフのy軸は、シグナル対ノイズ値を示す。臨床試料を用いて得られたグラフのy軸は、生の蛍光データを示す。
【図5C】陰性対照および陽性対照のほか、微生物学的試験によりMRSA陰性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、陰性対照についての結果を示す。パネルBは、MSSAまたはMR−CoNSを含まないMRSA陽性対照についての結果を示す。パネルCは、試料3136についての結果を示す。パネルDは、試料1253についての結果を示す。パネルEは、試料1238についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、対照グラフのy軸は、シグナル対ノイズ値を示す。臨床試料を用いて得られたグラフのy軸は、生の蛍光データを示す。
【図5D】陰性対照および陽性対照のほか、微生物学的試験によりMRSA陰性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、陰性対照についての結果を示す。パネルBは、MSSAまたはMR−CoNSを含まないMRSA陽性対照についての結果を示す。パネルCは、試料3136についての結果を示す。パネルDは、試料1253についての結果を示す。パネルEは、試料1238についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、対照グラフのy軸は、シグナル対ノイズ値を示す。臨床試料を用いて得られたグラフのy軸は、生の蛍光データを示す。
【図5E】陰性対照および陽性対照のほか、微生物学的試験によりMRSA陰性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、陰性対照についての結果を示す。パネルBは、MSSAまたはMR−CoNSを含まないMRSA陽性対照についての結果を示す。パネルCは、試料3136についての結果を示す。パネルDは、試料1253についての結果を示す。パネルEは、試料1238についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、対照グラフのy軸は、シグナル対ノイズ値を示す。臨床試料を用いて得られたグラフのy軸は、生の蛍光データを示す。
【図6A】微生物学的試験によりMRSA陽性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、試料1630についての結果を示す。パネルBは、試料2115についての結果を示す。パネルCは、試料1301についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、すべてのグラフにおけるy軸が、シグナル対ノイズ値を示す。
【図6B】微生物学的試験によりMRSA陽性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、試料1630についての結果を示す。パネルBは、試料2115についての結果を示す。パネルCは、試料1301についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、すべてのグラフにおけるy軸が、シグナル対ノイズ値を示す。
【図6C】微生物学的試験によりMRSA陽性であると確立された3例の異なる臨床試料を用いて実施された多重増幅反応に対するリアルタイムの反応曲線を示すグラフである。各グラフは、S.aureus 23S rDNA(□)、mecA(○)、および内部対照(△)の核酸標的に対して時間の関数として測定された蛍光シグナルを示す。パネルAは、試料1630についての結果を示す。パネルBは、試料2115についての結果を示す。パネルCは、試料1301についての結果を示す。増幅反応は、2連または3連で実施された。特に、すべてのグラフにおけるy軸が、シグナル対ノイズ値を示す。
【図7A】微生物学的試験により当初MRSA陽性(白色ダイアモンド)およびMRSA陰性(黒色四角)として同定された臨床試料を表わすデータ点に対するΔCt値を示すグラフのプロットである。パネルAは、S.aureus特異的標的配列(すなわち、23S rDNA配列)およびメチシリン耐性マーカー(すなわち、mecA配列)の両方に対して陽性の増幅結果を与えたすべてのデータ点に対するΔCt値の分布を示す。パネルBは、パネルAに示したのと同じデータ点を示すが、ΔCt=−2分間で引いた任意の閾値カットオフをさらに含む。
【図7B】微生物学的試験により当初MRSA陽性(白色ダイアモンド)およびMRSA陰性(黒色四角)として同定された臨床試料を表わすデータ点に対するΔCt値を示すグラフのプロットである。パネルAは、S.aureus特異的標的配列(すなわち、23S rDNA配列)およびメチシリン耐性マーカー(すなわち、mecA配列)の両方に対して陽性の増幅結果を与えたすべてのデータ点に対するΔCt値の分布を示す。パネルBは、パネルAに示したのと同じデータ点を示すが、ΔCt=−2分間で引いた任意の閾値カットオフをさらに含む。
【図8】反応速度解析を用いてMRSAまたはMSSAおよびMR−CoNSの混合集団をどのような形で同定しうるかについて図式的に示す図である。上限および下限のカットオフ値は水平線により示され、これらにより、MRSAに特徴的であるか、または実質的に等しい数で存在する場合はおそらくMR−CoNSおよびMSSAの混合物に特徴的なΔCt範囲が画定される。指摘されたΔCt範囲の外の領域は、「+」の符号により表わされるレベル(より多数の「+」符号により、より多くの相対量が表わされる)のMSSA、MR−CoNS、およびMRSAの混合物に特徴的である。
【図9】臨床試料の解析に由来する実際のデータを示す図である。下方の水平軸上に示される判定は、臨床試料の標準的な微生物学的検査によりなされた。プロット上においてデータ点として現れるために、共増幅アッセイは、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性特異的標的配列の両方を含有していなければならないが、臨床試料の細菌によりもたらされるこれらの核酸のレベルは大きく異なる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0061】
一般的に述べると、本発明は、検査試料中における生物の遺伝子署名を検出する方法に関する。好ましい実施形態において、検査試料は、単一の個体から取得される臨床試料である(すなわち、複数の個体から取得される、プールされた臨床試料から区別される)。臨床試料は、個体が2種以上の生物に重感染している場合に取得されうる生物の混合集団を含みうる。異なる好ましい実施形態によれば、検査を受ける試料は、複数の個体から取得される臨床試料を最初に組み合わせることにより調製される、プールされた試料でありうる。当然ながら、本発明の方法はまた、単一種の生物のみを表わす培養試料の解析にも適用することができる。
【0062】
本発明の方法は、生物または生理学的条件に特徴的な特定の比率で存在する2つの遺伝子マーカー(すなわち、核酸配列「A」および「B」)の存在を検出することにより実施することが好ましい。該特定の比率は、一定の比率でありうる。例えば、該マーカーのコピー数、またこれにより、一方の他方に対する比率が一定であるように、該2つのマーカーは、細菌細胞の単一の染色体上に存在しうる。代替的に、該2つのマーカーは、生物の単一の細胞内における異なる染色体上に存在する場合もあるが、やはり、その生物の細胞内において一定の比率を示す。遺伝子マーカーは、臨床試料から取得されたDNA(例えば、細菌DNA試料)内に存在する場合もあり、臨床試料から取得されたRNA内に存在する場合もある。
【0063】
リアルタイムの反応曲線の解析用に開示される閾値ベースの手法により、先行するシステムおよび手法を上回るある利点がもたらされる。実際、該手法では、両方の遺伝子マーカーを有する生物を含有する試料(すなわち、A/B)を、各種類がただ1つのマーカーに個別に寄与する2種の異なる生物の混合物(すなわち、A+B)から区別することができる。さらに、該手法ではまた、2つのマーカーのうちのただ1つのみ(例えば、Bのみ)を有する別の生物と混合される場合であっても、両方の遺伝子マーカーを有する生物(すなわち、A/B)の存在を検出することもできる。例えば、該技法を用いて、生物種特異的マーカー(例えば、リボソーム核酸配列)および抗生剤耐性菌の特定の種を検出する抗生剤耐性マーカーの存在を検出することができる。開示される方法により検出されうる抗生剤耐性菌の具体例はMRSAである。該方法を実施すると、MRSA細菌の試料を、MSSA菌およびMR−CoNS細菌の両方を含有する試料から区別することができる。さらに、S.aureus以外のメチシリン耐性菌(例えば、MR−CoNS細菌)の存在下において、MRSA細菌を検出することができる。
【0064】
本発明の増幅反応を実施する方式には、柔軟性もまた存在する。一実施形態において、生物を同定するのに用いられる2つの核酸標的は、個別に増幅される(すなわち、互いに流体連絡されない増幅反応)。異なる標的の各々に対して増幅指標を決定することができ、これらの指標を用いて生物の存在または不在を評価することができる。異なる実施形態では、2つの核酸標的が単一の増幅反応において共増幅される多重増幅反応が実施される。多重増幅形式の1つの利点は、個別の増幅反応を用いて決定されるΔCtに対して、測定されるΔCt差が増強される可能性である。2つの核酸標的を増幅する反応が共通の供給源(例えば、リボヌクレオチド三リン酸、プライマーなど)について競合する場合に、この増強が結果としてもたらされうる。特に、本明細書で開示される技法により行われる生物の同定は、各標的核酸のコピー数を定量化する必要を回避する閾値カットオフに基づく。
【0065】
MRSA細菌およびMSSA菌を検出する核酸ベースの方法、組成物、アルゴリズム、システム、およびキットが特に開示される。本発明は、反応が生じる時間の関数として(すなわち、リアルタイム形式で)単位複製配列の合成がモニタリングされた、等温の多重増幅反応を用いて例示される。メチシリン耐性の核酸マーカーは、mecA核酸配列であった。S.aureusの核酸マーカーは、この生物に固有の23SリボソームDNA配列であった。
【0066】
本分野において許容される実践と対照的に、本発明は、2つの異なる核酸標的配列を検出することによりMRSA細菌およびMSSA菌の両方を検出し、2つの標的の検出に基づく他のスクリーニングシステムを特徴づける誤解釈に対して、閾値ベースのアルゴリズムを用いる。さらに、開示される手法は、SCCmec挿入接合部の検出に基づく市販のMRSAスクリーニングキットにより看過されていた、高度に薬剤耐性のMRSA単離物を検出する点で有利であった。したがって、本発明は、S.aureusに特異的なマーカーを保有する1種の生物と、メチシリン耐性に特異的な第2のマーカーを保有する1種の生物とによる、重感染を表わす混合生物集団により交絡することなく、多種多様なMRSA単離物を検出する能力という問題に対する解答を与える。
【0067】
序説および概要
以下では、MRSA細菌およびMSSA菌の核酸を調製、増幅、および検出する方法の例が説明される。より具体的に述べると、mecA核酸配列およびS.aureusリボソーム核酸配列の組合せを検出することにより、環境試料または生物学的試料中におけるMRSA細菌の存在を判定する方法が開示される。該技法は、メチシリン感受性CoNS細菌(すなわち、Staphylococcus epidermidisおよびStaphylococcus haemolyticus)の高バックグラウンド中、およびMSSAの高バックグラウンド中においてMRSAを検出する点で有利であった。加えて、該技法は、メチシリン感受性CoNS細菌(すなわち、表皮ブドウ球菌およびS.haemolyticus)の高バックグラウンド中においてMSSAを検出する点でも有利であった。mecA核酸配列およびS.aureusリボソーム核酸配列に対する個別の増幅反応が意図され、これらは本発明の範囲内にあるが、単一の多重核酸増幅反応(すなわち、単一の反応試験管または反応容器内における)においてこの核酸配列の組合せを増幅および検出することが好ましい。リアルタイムの増幅結果に対する反応速度解析を用いて、MRSA感染を、MSSA(すなわち、S.aureus配列の供給源をもたらす)およびMR−CoNS(すなわち、mecA配列の供給源をもたらす)の重感染から区別し、臨床試料を用いて、MSSAを、MR−CoNSまたはMRSAから区別することが可能であった。
【0068】
好ましい方法は、核酸増幅反応を実施するステップと、典型的には、増幅産物に特異的にハイブリダイズする核酸プローブを用いて、検査試料中におけるmecA核酸およびS.aureusのリボソーム核酸の存在を示す検出可能なシグナルをもたらすことにより、増幅産物を検出するステップとを含む。該増幅ステップは、試料を、23S rDNA内の標的配列に特異的な1種または複数種の増幅オリゴヌクレオチドと接触させ、試料中にS.aureusのrDNAが存在する場合に増幅産物を生成するステップを含むことが好ましい。リボソームの標的核酸およびmecA標的核酸に対して個別の反応を引き起こしうるが、該増幅ステップが、試料を、mecAの標的DNAに特異的な1種または複数種の増幅オリゴヌクレオチドに接触させて、試料がメチシリン耐性生物を含有する場合に増幅産物を生成するステップをさらに含むことが好ましい。mecA標的配列およびS.aureusリボソーム核酸配列の両方が検出される場合、時間の関数としてモニタリングされる増幅反応の反応速度解析により、MRSAの存在を推定することができる。
【0069】
相補的配列を含む23S rDNAおよびmecA DNAの標的配列を認識する、選択されたオリゴヌクレオチド配列が特に開示される。このようなオリゴヌクレオチドは、増幅オリゴヌクレオチドとして(例えば、プライミングオリゴヌクレオチド、プロモーターオリゴヌクレオチド、ターミネーティングオリゴヌクレオチド、およびプロモータープライマーオリゴヌクレオチドとして)機能しうる。本明細書で開示される配列を有するオリゴヌクレオチドは、解析対象の核酸を検出するアッセイにおいて、代替的な機能を果たしうる。例えば、代替的な検出アッセイにおいて、本明細書で開示される捕捉オリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーションプローブとして用いることもでき、本明細書で開示されるハイブリダイゼーションプローブは増幅オリゴヌクレオチドとして用いることもでき、本明細書で開示される増幅オリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーションプローブとして用いることもできる。
【0070】
好ましい増幅反応では、少なくとも1つの核酸ポリメラーゼを用いて鋳型依存的な形で増幅オリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)を伸長させることにより、標的配列またはその相補体の多数のコピーが合成される。増幅産物を検出するのに好ましい実施形態は、増幅産物を、増幅された配列に特異的な少なくとも1つのプローブと接触させるステップを伴う(例えば、増幅オリゴヌクレオチドの対に挟まれる標的配列またはその相補体に含有される配列)。該検出するステップは、増幅反応が完了した後で実施することもでき(すなわち、「終了点」検出と称する場合もある)、「リアルタイム」増幅と称する形式における増幅反応と同時に実施する場合もある。好ましい実施形態では、ホモジニアスな反応において検出可能なプローブを用いて、増幅産物が検出される。核酸のホモジニアスな検出の例は、米国特許第5,639,604号および同第5,283,174号で与えられている。該増幅ステップに近接するかまたはその終了時において増幅産物を検出する好ましい実施形態では、増幅産物にプローブがハイブリダイズして、増幅された配列に対する該プローブのハイブリダイゼーションを示すシグナルをもたらす。リアルタイムの検出を用いる他の好ましい実施形態では、増幅産物にプローブが結合するときに検出されるシグナルをもたらすレポーター部分を含むことが好ましい。例えば、プローブは、プローブの一方の端部に結合したフルオロフォアなどの検出可能な部分または標識と、ステム構造が「閉じた」立体構造にあり、増幅産物とハイブリダイズしない場合にはシグナルの生成を阻害するステムループ構造の反対側の端部に結合した消光剤などの相互反応部分とを含みうる。相補的配列にハイブリダイズすると、プローブは、検出可能なシグナルを生成しうる「開かれた」立体構造へと転換される。好ましいプローブの具体例は、分子トーチ、分子ビーコン、およびハイブリダイゼーションスイッチプローブを含む(例えば、米国特許第5,118,801号および同第5,312,728号、Lizardiら;米国特許第5,925,517号および同第6,150,097号、Tyagiら;米国特許第6,849,412号、同第6,835,542号、同第6,534,274号、および同第6,361,945号、Beckerら;米国第11/173,915号、Beckerら;および米国公開第2006−0194240 A1号、Arnold Jr.ら)。
【0071】
有用な試料調製法
一般的に述べると、開示される増幅手順で用いるのに好ましい試料の調製法は、細菌試料を回収するステップと、次いで、これを溶解させてゲノムDNAを放出させるステップと、次いで、少なくとも部分的にゲノムDNAを変性させるステップとを含む。該方法は、該溶解ステップの前に、試料中に含有される生物を他の試料成分から分離および/または濃縮する手順(例えば、試料からの粒子物質の濾過)を含みうる。試料調製は、化学的、機械的、および/または酵素的な細胞の破壊による、23S rRNAをコードするDNAおよびmecA遺伝子を含む細胞内内容物の放出を含みうる。細菌を溶解させ、ゲノムDNAを放出させ、放出されたゲノムDNA固体支持体上に捕捉するのに好ましい特定の方法は、任意選択の加熱するステップを含む。任意選択の加熱するステップを省き、細菌溶解、ゲノムDNAの放出、および固体支持体上へのゲノムDNAの捕捉を含む全試料調製手順を室温において実行することがより好ましい。試料調製にリソスタフィンなどの酵素を用いることもできるが、極めて好ましい手順では酵素を用いない。核酸増幅前の標的捕捉ステップでは、標的の核酸配列に基づいて他の試料成分から標的核酸を特異的または非特異的に分離することができる。非特異的な標的調製法では、実質的に水性の混合物から核酸を選択的に沈殿させるか、核酸を支持体に結合させ、これを洗浄して他の試料成分を除去するか、または他の手段を用いて、他の成分を含有する混合物から核酸を物理的に分離することができる。ある実施形態において、捕捉された核酸は、増幅前に固体支持体から放出される。他の実施形態において、捕捉された核酸は、最初に固体支持体から放出されることなく増幅される。
【0072】
異なる各種の手法により、検査試料から核酸を単離することができる。場合によって、溶解において補助となる酵素を含む、アルカリ溶解プロトコールを用いることが好ましい。アルカリ溶解手順の1つの変化形は、Sambrookら、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、第2版、(ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、1989年)、第1.25〜1.28節において詳述されている。好ましいアルカリ溶液は、NaOH、LiOHなどの強塩基を含みうる。アルカリ溶解手順において有用な洗浄剤は、陰イオン洗浄剤、非イオン洗浄剤、両性イオン洗浄剤、または陽イオン洗浄剤でありうる。これらのうちでは、陰イオン洗浄剤が最も好ましい。アルキルアルコールおよびN−アシルアミノ酸の硫酸塩を含む強陰イオン洗浄剤が、極めて好ましい。試料調製手順に用いられる洗浄剤の正確な性質が極めて重要であるとは考えられないが、特に好ましい洗浄剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびラウリル硫酸リチウム(LLS)を含む。周囲室温で試料調製手順を実行することが極めて好ましい。本明細書で説明される手順において用いられる、核酸を単離する具体的な方法が、極めて重要であるとは考えられない。
【0073】
核酸は、スワブ試料などの臨床試料から単離されることが好ましい。これは一般に、回収スワブの先端をディスポーザブルのプラスチック製反応試験管へと移すステップと、該試験管にある容量の緩衝EDTA溶液を添加するステップと、次いで、ボルテックスして、任意の細胞物質を懸濁させるステップとを伴った。懸濁液のアリコートを、ラウリル硫酸リチウムおよびLiOHを含むある容量の溶解緩衝液と混合し、次いで、該混合物を短時間にわたりボルテックスすることが典型的であった。室温における短時間にわたるインキュベーションの後、捕捉プローブおよびオリゴ(dT)を提示する磁気ビーズを含有するある容量のHEPES緩衝液を添加することにより、該混合物を中和した。核酸増幅反応において鋳型として用いる前に、中和された混合物に由来する核酸を捕捉し、KINGFISHER96プラットフォーム(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて洗浄した。
【0074】
有用な増幅法
本発明との関連で有用な増幅法は、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、ならびに自己複製ポリヌクレオチド分子と、MDV−1 RNA酵素およびQ−ベータ酵素などの複製酵素とを用いる増幅法を含む。これらの各種増幅法を実施する方法は、それぞれ、米国特許第5,399,491号、米国特許第5,554,517号、米国特許第4,965,188号、米国特許第5,455,166号、米国特許第5,472,840 号、およびLizardiら、BioTechnology、第6巻、1197頁(1988年)において見出すことができる。増幅される配列を含有する標的核酸は、一本鎖核酸、または少なくとも部分的な一本鎖核酸として増幅反応混合物に供給されることが好ましい。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態において、核酸配列は、TMAプロトコールを用いて増幅される。このプロトコールによれば、DNAポリメラーゼ活性をもたらす逆転写酵素はまた、内因性RNアーゼH活性も保有する。この手順において用いられるプライマーの1つは、増幅される標的核酸の1本の鎖に対して相補的な配列の上流に位置するプロモーター配列を含有する。増幅の第1段階において、プロモーター−プライマーは、既定の部位において標的DNAにハイブリダイズする。逆転写酵素は、プロモーター−プライマーの3’端からの伸長により、標的DNAの第1の相補的なDNAコピーをもたらす。次いで、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドが標的DNA鎖にハイブリダイズし、これもまた、逆転写酵素により伸長し、これにより、標的DNA鋳型から標的DNAの第1の相補的なDNAコピーが分離する。反対方向鎖のプライマーが第1の相補的DNA鎖と相互作用した後で、該プライマーの逆転写酵素を介する伸長により第2のDNA鎖(すなわち、元の標的DNA鋳型と同じ極性を有する)が合成され、これにより、二本鎖DNA分子がもたらされる。RNAポリメラーゼが二本鎖プロモーター配列を認識し、転写を開始する。新たに合成されたRNAの単位複製配列の各々がTMA工程へと再び導入され、新たな複製ラウンドのための鋳型として用いられ、これにより、RNA単位複製配列の指数関数的な増殖がもたらされる。全工程は自己触媒性であり、一定温度で実施される。
【0076】
本発明の別の好ましい実施形態において、転写を伴う異なる増幅法では、1つのプライマーと、1つまたは複数のさらなる増幅オリゴヌクレオチドとを用いて、試料中における標的核酸の存在を示す転写物を作製することによりin vitroで核酸を増幅する。この方法は、Beckerら、U.S.2006−0046265A1により詳述されている。略述すると、この方法では、プライマーまたは「プライミングオリゴマー」、その3’端からの合成による伸長を阻止するように改変された(例えば、3’遮断部分を含むことにより)「プロモーターオリゴヌクレオチド」、また場合によって、指摘の3’端における標的鎖からのcDNAの伸長を終結させる3’遮断「ターミネーティングオリゴ」を用いる。この方法は、標的配列を含有する標的DNAを、プライミングオリゴおよびターミネーティングオリゴヌクレオチドと結合させるステップを含む。プライミングオリゴが標的鎖の3’端にハイブリダイズし、酵素RT活性がプライミングオリゴの3’端からのプライマーの伸長を誘発してcDNAを生成し、これにより、新たなcDNA鎖と標的DNA鎖との二重鎖(すなわち、cDNA:DNA二重鎖)がもたらされる。ターミネーティングオリゴマーは、増幅される標的配列の5’端に隣接する標的鎖にハイブリダイズする。RTのDNAポリメラーゼ活性によりプライミングオリゴヌクレオチドが伸長してcDNA鎖が生成される場合、標的鎖にハイブリダイズしたターミネーティングオリゴヌクレオチドにプライマーの伸長産物が到達し、したがって、標的配列上におけるターミネーティングオリゴヌクレオチドの位置によりcDNAの3’端が決定され、該cDNAの3’端が標的配列の5’端に対して相補的となるときに重合化が停止する。二重鎖のcDNA鎖は、例えば、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドの伸長による変性または置換により鋳型鎖から分離する。次に、プロモーターオリゴヌクレオチドが、cDNA鎖の3’端付近でこれにハイブリダイズする。プロモーターオリゴヌクレオチドは、5’側プロモーター配列と、cDNAの3’側領域内の配列に相補的な3’側領域と、その3’端からのDNA合成の開始を阻害する遮断部分を含む改変3’端とを含む。プロモーターオリゴヌクレオチドおよびcDNA鎖を含む二重鎖では、機能的な二本鎖プロモーターをもたらす鋳型としてプロモーターオリゴヌクレオチドを用いるRT酵素のDNAポリメラーゼ活性により、cDNAの3’端が伸長する。次いで、機能的なプロモーター配列に特異的なRNAポリメラーゼがプロモーターに結合し、最初の標的鎖から増幅された標的領域配列と実質的に同一なcDNAに相補的なRNA転写物を転写する。次いで、プライミングオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、さらなるcDNA生成のための鋳型として用いられることにより、増幅されたRNA転写物が増幅工程内における基質として用いられる。
【0077】
増幅オリゴヌクレオチドの構造的特徴
プロモーターオリゴヌクレオチド
当技術分野で周知の通り、プロモーターとは、核酸に結合し、特異的な部位におけるRNA転写を開始するためのシグナルとしてDNA依存性RNAポリメラーゼにより認識される、特異的な核酸配列である。鋳型核酸(転写される配列)は、二本鎖である必要はない。個々のDNA依存性RNAポリメラーゼは、転写の促進におけるそれらの有効性において顕著に異なりうる各種の異なるプロモーター配列を認識する。RNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合して転写を開始する場合、そのプロモーター配列は、転写される配列の一部ではない。したがって、これにより生成されるRNA転写物は、その配列を含まない。
【0078】
本発明によれば、「プロモーターオリゴヌクレオチド」とは、第1および第2の領域を含み、その3’末端からのDNA合成の開始を阻止するように改変されることが好ましいオリゴヌクレオチドを指す。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドの「第1の領域」は、DNA鋳型にハイブリダイズする塩基配列を含み、ここで、ハイブリダイズする配列は、プロモーター領域の3’側に位置するが、必ずしもこれに隣接しない。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドのハイブリダイズする部分は、少なくとも10ヌクレオチドの長さであることが典型的であり、15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド以上の長さまで伸長しうる。「第2の領域」は、RNAポリメラーゼに対するプロモーターを含む。本発明のプロモーターオリゴヌクレオチドは、DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)による伸長が不可能であるように改変され、その3’末端において遮断部分を含むことが好ましい。本明細書では、適切で好ましいプロモーターオリゴヌクレオチドが説明されている。
【0079】
プライミングオリゴヌクレオチド
プライミングオリゴヌクレオチドは、その少なくとも3’端が核酸鋳型に相補的であり、該鋳型にハイブリダイズして、DNAポリメラーゼによる合成の開始に適するプライマー:鋳型複合体を与えるオリゴヌクレオチドである。プライミングオリゴヌクレオチドは、鋳型依存的な形における、その3’末端に対するヌクレオチドの付加により伸長する。結果は、プライマー伸長産物である。本発明のプライミングオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチドの長さであることが典型的であり、15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド以上の長さまで伸長しうる。本明細書では、適切で好ましいプライミングオリゴヌクレオチドが説明される。公知のほとんどすべてのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素を含む)は、一本鎖鋳型に対するオリゴヌクレオチドの複合体化(「プライミング」)によるDNA合成の開始を必要とすることが知られるが、RNAの転写(DNAからのRNAのコピー生成)は一般に、プライマーを必要としない。DNAポリメラーゼにより伸長するまさにその性質により、プライミングオリゴヌクレオチドは、3’遮断部分を含まない。
【0080】
ディスプレイサーオリゴヌクレオチド
「ディスプレイサーオリゴヌクレオチド」とは、標的配列の3’端にハイブリダイズした近接するプライミングオリゴヌクレオチド(本明細書では、「順方向プライミングオリゴヌクレオチド」とも称する)よりも上流の鋳型核酸にハイブリダイズするプライミングオリゴヌクレオチドである。「上流」とは、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドの3’端が、順方向プライミングオリゴヌクレオチドの3’端に対して5’側の鋳型核酸と複合体化することを意味する。鋳型核酸にハイブリダイズすると、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドの3’末端塩基は、順方向プライミングオリゴヌクレオチドの5末端塩基に隣接するかまたはこれとは隔てられることが好ましい。ディスプレイサーオリゴヌクレオチドの3’末端塩基は、順方向プライミングオリゴヌクレオチドの5’末端塩基から5〜35塩基隔てられていることがより好ましい。ディスプレイサーオリゴヌクレオチドは、順方向プライミングオリゴヌクレオチドと同時であるか、または順方向プライミングオリゴヌクレオチドが鋳型核酸とハイブリダイズするのに十分な時間を経た後に、反応混合物に供給することができる。順方向プライミングオリゴヌクレオチドの伸長は、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドが反応混合物に供給される前に開始させることもでき、該供給の後に開始させることもできる。増幅条件下において、ディスプレイサーオリゴヌクレオチドは、鋳型依存的な形で伸長し、これにより、鋳型核酸と複合体化した順方向プライミングオリゴヌクレオチドを含むプライマー伸長産物を置換する。鋳型核酸から置換されると、順方向プライミングオリゴヌクレオチドを含むプライマー伸長産物は、プロモーターオリゴヌクレオチドとの複合体化に用いられる。順方向プライミングオリゴヌクレオチドおよびディスプレイサーオリゴヌクレオチドは共に、標的核酸に対して優先的にハイブリダイズする。ディスプレイサーオリゴヌクレオチドおよびそれらの使用の例は、Beckerら、米国特許出願第11/681,104号により開示されている。
【0081】
遮断部分
核酸ポリメラーゼにより伸長しないオリゴマーは、増幅反応におけるオリゴマーの酵素を介する伸長を阻止するように3’OHを置換する「遮断部分」を含むことが好ましい。本明細書で用いられる遮断部分は、核酸ポリメラーゼによる効果的な伸長が不可能であるように、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸の3’末端を「遮断する」のに用いられる物質である。遮断部分は、小型分子(例えば、リン酸基またはアンモニウム基)の場合もあり、改変ヌクレオチド(例えば、3’2’−ジデオキシヌクレオチドまたは3’デオキシアデノシン5’−三リン酸(コルジセピン))または他の改変ヌクレオチドの場合もある。さらなる遮断部分は、例えば、3’末端における遊離ヒドロキシル基、3’側アルキル基、3’側非ヌクレオチド部分(Arnoldら、「Non−Nucleotide Linking Reagents for Nucleotide Probes」、米国特許第6,031,091号を参照されたい)、ホスホロチオエート、アルカンジオール残基、ペプチド核酸(PNA)、3’末端において3’側ヒドロキシル基を欠くヌクレオチド残基、または核酸結合タンパク質を存在させないような、3’から5’への方向性を有するヌクレオチドまたは短いヌクレオチド配列を含む。3’遮断部分は、3’から5’への方向性を有するヌクレオチドもしくはヌクレオチド配列または3’側非ヌクレオチド部分を含むが、3’2’−ジデオキシヌクレオチドまたは遊離ヒドロキシル基を有する3’末端は含まないことが好ましい。3’遮断オリゴヌクレオチドを調製するさらなる方法は、当業者に周知である。
【0082】
ターミネーティングオリゴヌクレオチド
「ターミネーティングオリゴヌクレオチド」とは、プライミングオリゴヌクレオチドを含む新生核酸のプライマー伸長を「終結させ」、これにより、新生核酸鎖に指摘の3’端をもたらすように、標的配列の5’端の近傍における標的核酸の領域に対して相補的である塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。ターミネーティングオリゴヌクレオチドは、新生核酸鎖に望ましい3’端を達成するのに十分な位置において標的酢酸にハイブリダイズするように設計される。ターミネーティングオリゴヌクレオチドの位置取りは、その設計に応じて柔軟である。ターミネーティングオリゴヌクレオチドは、改変の場合もあり、非改変の場合もある。ある実施形態において、ターミネーティングオリゴヌクレオチドは、少なくとも1種または複数種のLNAヌクレオチド類似体により合成される。これらの改変ヌクレオチドは、DNAを含む相補的二重鎖のより高度な熱安定性を示している。2’−O−MEリボヌクレオチドなど、他の改変もまた、一部の実施形態において用いることができる。本発明のターミネーティングオリゴヌクレオチドは、その3’末端において伸長を阻止する遮断部分を含むことが典型的である。本発明のターミネーティングオリゴヌクレオチドは、少なくとも10塩基の長さであることが典型的であり、15、20、25、30、35、40、50ヌクレオチド以上の長さまで伸長させることができる。本明細書では、適切で好ましいターミネーティングオリゴヌクレオチドが説明されている。ターミネーティングオリゴヌクレオチドが3’遮断部分を含むことは典型的であるかまたは必要であるが、「3’遮断された」オリゴヌクレオチドは、必ずしもターミネーティングオリゴヌクレオチドではない。
【0083】
有用なプローブおよび標識システム
本明細書で開示される種類の核酸増幅産物は、従来の任意の手段により検出することができる。例えば、増幅産物は、検出可能な標識プローブとのハイブリダイゼーションおよび結果としてもたらされるハイブリッド体の測定により検出することができる。具体的な標的配列を検出するプローブの選択における設計基準は当技術分野において周知であり、例えば、Hoganら、「Methods for Making Oligonucleotide Probes for the Detection and/or Quantitation of Non−Viral Organisms」、米国特許第6,150,517号において説明されている。Hoganは、(1つまたは複数の)標的配列に対する相同性を最大化し、可能な非標的配列に対する相同性を最小化するようにプローブを設計すべきであることを教示している。非標的配列との安定性を最小化するため、Hoganは、グアニンおよびシトシンに富む領域を回避し、プローブとの不安定化ミスマッチが可能な限り多数にわたり、非標的配列に対する完全な相補性の長さを最小化するべきであることを示唆している。(1つまたは複数の)標的配列とのプローブの安定性を最大化すべきであり、アデニンおよびチミンに富む領域を回避すべきであり、プローブ:標的ハイブリッド体がグアニンおよびシトシンの塩基対により終結することが好ましく、広範にわたる自己相補性は一般に回避すべきであり、プローブ:標的ハイブリッド体の融解温度をアッセイ温度よりも2〜10℃高温とすべきである。
【0084】
本明細書で開示される解析対象の核酸配列を検出するのに好ましい特定のプローブは、10〜100ヌクレオチドの範囲の長さにおいて、検出される核酸に対して相補的でない任意の塩基配列と共に、標的相補的塩基配列を含むプローブ配列を有する。増幅された解析対象である核酸配列を検出するのに好ましいある特定のプローブは、10〜50ヌクレオチド、10〜20ヌクレオチド、または10〜15ヌクレオチドの範囲の長さの標的相補的配列を有する。当然ながら、これらの標的相補的配列は直鎖配列の場合もあり、検出される解析対象の標的核酸に対して非相補的な1つまたは複数の任意選択の核酸配列を有する分子トーチ、分子ビーコン、または他の構築物の構造内に含有される場合もある。プローブは、DNA、RNA、DNAおよびRNAの組合せ、核酸類似体からなる場合もあり、1つまたは複数の改変ヌクレオシド(例えば、リボフラノシル部分に対する2’−O−メチル置換を有するリボヌクレオシド)を含有する場合もある。
【0085】
具体的な実施形態において、増幅産物は、化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識(「AE」)プローブ)を標的配列にハイブリダイズさせるステップと、ハイブリダイズしなかったプローブ上に存在する該化学発光標識を選択的に加水分解するステップと、発光測定器内に残存するプローブから生成される化学発光を測定するステップとを含む、ホモジニアス防護アッセイ(「HPA」)によりアッセイすることができる。HPAアッセイ法は、Arnoldら、米国特許第5,283,174号により詳述されている。
【0086】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書で説明される方法によるリアルタイムにおける増幅工程の評価を提供する。「リアルタイム」における増幅工程の評価は、増幅反応時において、連続的または周期的に反応混合物中における単位複製配列の量を決定するステップを伴う。決定された値を用いて、試料中において当初に存在する標的配列の量を計算することができる。リアルタイムの増幅に基づき試料中に存在する当初の標的配列の量を決定する、各種の方法が用いられる。これらは、Wittwerら、「Method for Quantification of an Analyte」、米国特許第6,303,305号およびYokoyamaら、「Method for Assaying Nucleic Acid」、米国特許第6,541,205号により開示された方法を含む。試料中において当初に存在する標的配列の量を決定するが、リアルタイムの増幅には基づかない別の方法は、Ryderら、「Method for Determining Pre−Amplification Levels of a Nucleic Acid Target Sequence from Post−Amplification Levels of Product」、米国特許第5,710,029号により開示されている。増幅産物は、その大半がステムループ構造を有する各種の自己ハイブリダイジングプローブの使用によりリアルタイムで検出することができる。このような自己ハイブリダイジングプローブは、プローブが自己ハイブリダイズ状態にあるか、または標的配列にハイブリダイズしているかに応じて、異なる形で検出可能なシグナルを発するように標識されている。
【0087】
例として述べると、「分子トーチ」は、接合領域(例えば、非ヌクレオチドリンカー)により連結され、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下において互いにハイブリダイズする、異なる自己相補性領域(「標的結合ドメイン」および「標的閉鎖ドメイン」)を含む自己ハイブリダイジングプローブの種類である。好ましい実施形態において、分子トーチは、1〜約20塩基の長さの標的結合ドメイン内において一本鎖塩基領域を含有し、鎖置換条件下における増幅産物中に存在する標的配列に対するハイブリダイゼーションにアクセス可能である。鎖置換条件下では、標的結合ドメイン内に存在する一本鎖領域に結合し、標的閉鎖ドメインの全部または一部を置換する標的配列の存在下にある場合を除き、分子トーチの2つの相補性領域(完全にまたは部分的に相補的でありうる)のハイブリダイゼーションが優先される。分子トーチの標的結合ドメインおよび標的閉鎖ドメインは、分子トーチが自己ハイブリダイズする場合において、分子トーチが標的配列にハイブリダイズする場合とは異なるシグナルが生成され、これにより、ハイブリダイズしていない分子トーチの存在下にある検査試料中においてプローブ:標的二重鎖が検出されるように配置される、検出可能標識または相互作用型標識対(例えば、発光標識/消光剤の対)を含む。分子トーチおよび各種の相互作用型標識対は、Beckerら、「Molecular Torches」、米国特許第6,534,274号により開示されている。
【0088】
自己相補性を有する検出プローブの別の例は、「分子ビーコン」である。分子ビーコンは、標的相補体配列を有する核酸分子、増幅産物中に存在する標的配列の不在下ではプローブを閉じた立体構造に保持する親和性対(または核酸アーム)、およびプローブが閉じた立体構造にある場合に相互作用する標識対を含む。標的配列と標的相補的配列とのハイブリダイゼーションにより親和性対のメンバーが分離し、これにより、プローブが開いた立体構造へと移行する。開いた立体構造への移行は、例えば、フルオロフォアと消光剤(例えば、DABCYLおよびEDANS)でありうる標識対の相互作用の低下により検出可能である。分子ビーコンは、Tyagiら、「Detectably Labeled Dual Confirmation Oligonucleotide Probes, Assays and Kits」、米国特許第5,925,517号;およびTyagiら、「Nucleic Acid Detection Probes Having Non−FRET Fluorescence Quenching and Kits and Assays Including Such Probes」、米国特許第6,150,097号により開示されている。
【0089】
本発明で用いられる他の自己ハイブリダイジングプローブは、当業者に周知である。例えば、PCR反応用にMorrison、「Competitive Homogenous Assay」、米国特許第5,928,862号;およびGelfandら、米国特許第5,804,375号により開示される標識などの相互作用型標識を有するプローブ結合対もまた、本発明における使用に適応させることができる。さらなる検出システムは、Arnoldら、「Oligonucleotides Comprising a Molecular Switch」、米国特許出願公開第US2005−0042638A1号により開示される「分子スイッチ」を含む。挿入色素および/または蛍光色素を含むプローブなど、他のプローブも、本発明における増幅産物の検出に有用でありうる。例えば、Ishiguroら、「Method of Detecting Specific Nucleic Acid Sequences」、米国特許第5,814,447号を参照されたい。
【0090】
最初の標的配列とRNA転写産物とが同じ方向を共有する本発明の方法では、リアルタイムの検出のためにプローブを添加する前に増幅を開始することが望ましい場合がある。増幅反応を開始する前にプローブを添加すると、標的配列の相補体を有するプライマー伸長産物を完成させるプライマー伸長ステップ中において、最初の標的配列に結合するプローブを置換するか、または別の形でこれを除去することになるので、増幅速度が遅くなる場合がある。増幅の開始は、増幅酵素(例えば、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼ)の添加により判断される。
【0091】
有用な相互作用標識
分子トーチおよび分子ビーコンは、検出可能標識の相互作用対により標識することが好ましい。標識の相互作用対のメンバーとして好ましい検出可能標識の例は、FRETまたは非FRETによるエネルギー移動機構により互いに相互作用する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、熱エネルギーへの転換がなく、またドナーおよびアクセプターが運動論的衝突を来すこともない、原子間距離よりもはるかに大きな距離にわたる発色団間の共鳴相互作用を介する、分子または分子システム内における吸収部位からその使用部位へのエネルギー量子の非放射性移動を伴う。「ドナー」とは、エネルギーを最初に吸収する部分であり、「アクセプター」とは、エネルギーがその後そこへ移動する部分である。FRETに加え、励起エネルギーをドナー分子からアクセプター分子へと移動させうる、少なくとも3つの他の「非FRET」エネルギー移動過程が存在する。
【0092】
FRET機構による場合であれ、非FRET機構による場合であれ、1つの標識により放出されるエネルギーが第2の標識により受容または吸収されうる程度に十分に近接して2つの標識が保持される場合、該2つの標識を互いに「エネルギー移動関係」にあるという。これは、例えば、分子ビーコンがステム二重鎖の形成により閉鎖状態に維持され、該プローブの1つのアームに結合したフルオロフォアからの蛍光の発光が、反対側のアーム上にある消光剤部分により消光される場合である。
【0093】
FRET対を非FRET対から区別しようとは試みない本発明との関連で用いうるドナー/アクセプター標識対の例は、フルオレセイン/テトラメチルロダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/DABCYL、クマリン/DABCYL、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/DABCYL、ルシファーイエロー/DABCYL、BODIPY/DABCYL、エオシン/DABCYL、エリトロシン/DABCYL、テトラメチルロダミン/DABCYL、テキサスレッド/DABCYL、CY5/BH1、CY5/BH2、CY3/BH1、CY3/BH2、およびフルオレセイン/QSY7色素を含む。ドナー色素とアクセプター色素とが異なる場合、アクセプターの感光による蛍光の出現、またはドナーの蛍光に対する消光によりエネルギー移動を検出しうることを当業者は理解するであろう。ドナー分子種とアクセプター分子種とが同じである場合、結果としてもたらされる蛍光偏光解消によりエネルギーを検出することができる。DABCYL色素およびQSY7色素などの非蛍光アクセプターは、直接の(すなわち、非感光の)アクセプター励起から生じるバックグラウンド蛍光の潜在的な問題を解消する点で有利である。ドナー−アクセプター対の1つのメンバーとして用いうる好ましいフルオロフォア部分は、フルオレセイン色素、ROX色素、およびCY色素(CY5色素など)を含む。ドナー−アクセプター対の別のメンバーとして用いうる極めて好ましい消光剤部分は、DABCYL部分、TAMRA部分、およびBiosearch Technologies社(カリフォルニア州、ノバート)製のBLACK HOLE QUENCHER部分を含む。
【0094】
有用な増幅指標の例
本明細書で開示される方法により、核酸増幅反応における所定レベルの進行を示す数値(本明細書では、「増幅指標」と称する)を比較することで、試料中におけるMRSA細菌の存在についての情報を得た。この目的では多くの異なる増幅指標を用いうるが、閾値ベースの増幅指標(「Ct」値の決定を結果としてもたらす)を用いて本発明を例示した。等温条件下において実行された多重核酸増幅反応を用いて本発明をさらに例示した。増幅サイクルの関数としての反応進行をモニタリングするのではなく、反応時間の関数としての反応進行をモニタリングした。したがって、本明細書で報告されるCt値は、閾値の値に達した蛍光シグナルを結果としてもたらすのに十分な量の単位複製配列を生成する特定の増幅反応に必要とされる時間を表わした。当然ながら、多数の変化形は同等であることが示唆されるであろう。例えば、満たされるかまたは超えられる閾値の値が生の蛍光リーディング以外のものでありうるような標準化ステップおよび/またはバックグラウンド減算ステップが存在しうる。多重増幅反応における2つの核酸標的に対する増幅指標を比較するのに好ましい方法は、減算、加算、除算、および乗算を含む。比較は、増幅指標間の差に基づくことが好ましい。
【0095】
上記の通り、開示される方法との関連で、各種の増幅指標を用いることができる。例えば、当業者が熟知する数学的技法および計算法を用いて、リアルタイムの反応曲線の一次導関数の最大値の発生時または同二次導関数の最大値の発生時を同定することができる。増殖曲線のこれらの形状特徴を決定する手法は、Wittwerら、米国特許第6,503,720号により詳述されている。他の有用な手法は、増殖曲線の導関数を計算するステップと、増殖曲線の特性を同定するステップと、次いで、該導関数の特性に対応する閾値時間または閾値サイクル数を決定するステップとを伴う。このような技法は、米国特許第6,783,934号において開示されている。他の有用な増幅指標は、公開された欧州特許出願第EP0640828A1号においてHiguchiらにより説明される指標、または米国特許出願第60/659,874号(これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)において開示される方法により決定される「T時間」値などの閾値ベースの指標を含む。簡単に述べると、閾値ベースの増幅指標により、リアルタイムの増幅反応において単位複製配列の生成を示す特定の閾値を超える時点が推定される。さらに他の有用な指標は「TArc」および「OTArc」を含み、これらの各々は、リアルタイムの反応曲線に対するベクトルベースの解析を用いて決定される。これらの増幅指標により、増殖曲線が上方へと曲がるかまたは「屈曲」し始める時点が同定される。TArc値およびOTArc値の決定および使用に関する詳細な記載は米国特許出願第11/474,698号において見られ、この出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
増幅指標の比較
本発明によれば、共増幅されたS.aureus特異的標的核酸およびmecA標的核酸について決定される増幅指標の関数である数値が計算される。簡単に述べると、2つの共増幅された核酸標的の増幅反応速度から標的のレベル差を推定することができる。単一の共増幅反応に由来する2つの増幅指標(すなわち、S.aureus特異的標的核酸およびmecA標的核酸の各々に対する指標)を変数として用いて、ある種の方程式を解くことが好ましい。この目的で用いられて有用であることが意図される数学的関係の例は、乗算、除算、加算、および減算である。減算による2つの増幅指標の数学的な関連付け(すなわち、該指標間の差の確立)が極めて好ましく、これにより閾値カットオフ値の確立が簡略化される。2つの増幅指標間の差は、項「ΔCt」により表わすことができる。これらのΔCt値を閾値ベースの基準と比較して、診断法の出力結果についての判定を行うことができる。
【0097】
閾値カットオフ値の確立および使用
本発明によれば、閾値カットオフ値は、検査試料がMRSAまたはMSSAおよびMR−CoNSの混合物のいずれを含むのかを判定するのに用いられる。例えば、MRSA陽性試料に対して、S.aureus特異的標的核酸およびmecA標的核酸について決定される増幅指標(例えば、ΔCt値)を変数として用いる数学的方程式の解として計算された数値が−1であり、MSSAおよびMR−CoNSの混合物を含むがMRSAは含まない試料に対する増幅指標を用いて同様に計算された値が−3である場合、閾値カットオフ値を−2に設定すれば、1つの試料が他の試料から区別される。別の形で述べれば、この場合、MRSA試料に対するΔCt値(すなわち、−1)は、−2に設定された閾値カットオフ値により、MSSA試料に対するΔCt値(すなわち、−3)から「分離」される。特に、閾値カットオフ値の調整または変更により、アッセイの感度および特異性が改変される。これは、図7Bにおける水平線として示される閾値カットオフ値を−2から−4へと変化させると、さらに1〜2例のMRSA陽性試料を正当に含むことにはなるが、また、さらなるMRSA陰性試料を含むことにもなる(すなわち、偽陰性判定を増大させる)ことを理解することにより認めうる。したがって、互いに排除的なMRSA判定またはMSSA判定を行うのに用いられる閾値カットオフ値を調整するのみで、アッセイの感度および特異性が改変される。
【0098】
アルゴリズムを実装するための装置
本明細書で開示される方法は、コンピュータまたは類似の処理デバイス(以下では「コンピュータ」)を用いて部分的に実装することができる点で簡便である。異なる好ましい実施形態では、フリースタンディングコンピュータのメモリー構成要素内、または解析を受ける産物の量を、好ましくは時間の関数としてモニタリングするのに用いられるデバイスに連結されたコンピュータのメモリー構成要素内に、アルゴリズムを実行するソフトウェアまたはマシンで実行可能な命令をロードするかまたは他の形で保持することができる。極めて好ましい実施形態において、アルゴリズムを実行するソフトウェアは、反応混合物中に存在する単位複製配列の量を時間の関数としてモニタリングすることが可能なデバイスに連結されるか、またはこの統合部分であるコンピュータのメモリー構成要素内に保持される。
【0099】
実際、リアルタイムの増幅デバイスを制御するコントローラーシステムおよび/またはリアルタイムの増幅デバイスの検出システムの一方または両方を、予めプログラムされるかまたは使用者が入力する命令に従ってこれらの機器の動作を命令するように機能する、適切にプログラムされたコンピュータに連結することができる。該コンピュータはまた、これらの機器からデータまたは情報を受け取り、この情報を解釈し、操作し、使用者へと報告することも可能であることが好ましい。アルゴリズムの出力は、用紙へのプリントアウト、またはコンピュータのモニター、ディスプレイデバイス、もしくは他のインターフェースへの出力を含む各種の形態をとりうる。結果はまた、電子媒体または磁気媒体に保存することもできる。
【0100】
一般に、コンピュータは、一連のパラメータフィールドへの使用者による入力の形態、または予めプログラムされた命令の形態(例えば、各種の異なる特定の動作について予めプログラムされた)における使用者の命令を受け取るのに適切なソフトウェアを含むことが典型的である。次いで、ソフトウェアにより、これらの命令が、所望の動作を実行するリアルタイムの増幅コントローラーの作動を命令するのに適切な言語に変換される。コンピュータはまた、システム内に含まれる1つまたは複数のセンサー/検出器からデータを受け取ることも可能であり、プログラム設定に従い該データを解釈する。システムは、検出器により検出される、時間の関数としての対象核酸の増幅コピー量を表わす増殖曲線の形状特徴を、検査試料中に存在する対象核酸のコピー数と相関させるソフトウェアを含むことが好ましい。
【0101】
開示される方法を実施するのに用いられるコンピュータが、リアルタイムの核酸増幅反応を実施および解析する装置の統合的構成要素である場合、該装置は、温度制御型インキュベータ、シグナルを収集する検出デバイス、シグナルを解析する解析デバイス(例えば、コンピュータまたはプロセッサー)、および解析デバイスにより得られるかまたは生成されるデータを表示する出力デバイスを含むことが好ましい。解析デバイスは、当技術分野で公知の入力デバイスを介して温度制御型インキュベータに接続することもでき、かつ/またはデータディスプレイのための当技術分野で公知の出力デバイスに接続することもできる。一実施形態において、温度制御型インキュベータは、温度サイクリングが可能である。
【0102】
一般的に述べると、開示される方法との関連で有用な、リアルタイムの核酸増幅を実施する装置の各種の構成要素は、当業者が熟知する従来の構成要素である。リアルタイムの核酸増幅を実施および解析するのに用いられる温度制御型インキュベータは、複数の反応試験管を保持しうるか、または標準的な増幅反応試験管内もしくはマルチウェルプレートウェル内の温度制御型ブロックに反応試料を保持しうる従来の設計でありうる。一態様において、検出システムは、1種または複数種の蛍光標識に由来する光学シグナルを検出するのに適する。検出システムの出力(例えば、増幅反応中に発生するシグナルに対応するシグナル)をコンピュータにフィードし、データの保存および操作を行うことができる。一実施形態において、システムは、複数の異なる種類の蛍光標識など、複数の異なる種類の光学シグナルを検出し、マイクロプレート蛍光リーダーの能力を有する。検出システムは、可視光レーザーの場合もあり紫外線灯の場合もありハロゲン灯の場合もある励起光源、個々の反応試験管に励起光を分配し、反応試験管から蛍光を受容するマルチプレクサーデバイス、それらの波長により励起光から蛍光を分離する濾過手段、および蛍光強度を測定する検出手段を含有するマルチプレックス型蛍光光度計であることが好ましい。温度制御型インキュベータの検出システムは、フルオロフォア選択の柔軟性、高感度、および優れたシグナル対ノイズ比を可能とする広範な検出範囲をもたらすことが好ましい。検出システムにより受信される光学シグナルは一般に、プロセッサーにより引き続き操作されて、該プロセッサーと接続された使用者用デバイスのディスプレイ上における使用者による参照が可能なデータをもたらしうるシグナルに変換される。使用者用デバイスは、使用者用インターフェースを含む場合もあり、キーボードおよびビデオモニターを伴う従来の市販のコンピュータシステムの場合もある。使用者用デバイスにより表示しうるデータの例は、アセンブリー内におけるすべての試験管または反応容器および用いられるすべての標識についての増幅図、散布図、試料値スクリーン、光学シグナル強度スクリーン(例えば、蛍光シグナル強度スクリーン)、最終判定結果、文章による報告書などを含む。
【0103】
好ましい増幅オリゴヌクレオチド
増幅反応を実施するのに有用な増幅オリゴヌクレオチドは、標的結合に関与せず、増幅手順または検出手順に実質的に影響を及ぼさないこともある外来配列の存在を受け入れる、異なる長さを有しうる。例えば、本発明による増幅反応を実施するのに有用なプロモーターオリゴヌクレオチドは、標的核酸にハイブリダイズする少なくとも最小限の配列と、その最小限の配列の上流に位置するプロモーター配列とを有する。しかし、標的結合配列とプロモーター配列との間における配列の挿入により、増幅反応におけるその有用性を損なわずにプライマーの長さを変化させることができる。加えて、増幅プライマーおよび検出プローブの長さは、これらのオリゴヌクレオチドの配列が、所望の相補的配列にハイブリダイズする最小限の不可欠な要件を満たす限りにおいて、選択の問題である。
【0104】
表1〜3は、本発明を例示するのに用いられたオリゴヌクレオチド配列の具体例を示す。表1は、S.aureus 23S rDNA配列を増幅するのに用いられる増幅オリゴヌクレオチドの配列を示す。表2は、mecA DNA配列を増幅するのに用いられる増幅オリゴヌクレオチドの配列を示す。表3は、内部対照DNAを増幅するのに用いられる増幅オリゴヌクレオチドの配列を示す。本発明を例示するのに用いられるすべてのプロモーターオリゴヌクレオチドは、その3’端において標的配列の1つに相補的な配列を含み、その5’端においてT7プロモーター配列(小文字で示す)を含む。加えて、すべてのプロモーターオリゴヌクレオチドの3’末端は、DNAポリメラーゼによる伸長が不可能な逆極性のCヌクレオチドを用いて遮断した。配列番号3のターミネーティングオリゴヌクレオチドにおいて、位置1〜3、6、9〜10、17〜18、21、および25はLNAヌクレオチド類似体であり、3’末端はDNAポリメラーゼによる伸長が不可能な逆極性Cヌクレオチドを用いて遮断した。配列番号12のターミネーティングオリゴヌクレオチドにおいて、位置3〜5、11〜13、17〜19はLNAヌクレオチド類似体であり、3’ 末端はDNAポリメラーゼによる伸長が不可能な逆極性Cを用いて遮断した。配列番号16のターミネーティングオリゴヌクレオチドにおいて、位置5〜7、11〜13、および17〜19はLNA類似体により占められ、3’端はDNAポリメラーゼによる伸長が不可能な逆極性Cを用いて遮断した。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

好ましい検出プローブ
解析対象の核酸配列を検出するのに有用なハイブリダイゼーションプローブは、S.aureusrDNA標的核酸配列、mecA標的核酸配列、または内部対照標的核酸に対して実質的に相補的な塩基配列を含む。したがって、本発明のプローブは、増幅された標的核酸配列の1本の鎖またはその相補体にハイブリダイズすることが好ましい。これらのプローブは、場合によって、検出される標的核酸に対して相補的な場合もありそうでない場合もある標的核酸領域の外側において、さらなる塩基を有することがある。
【0108】
極めて好ましいプローブは、本明細書で説明される条件など、核酸増幅反応を実施するのに適する条件下において、増幅されたS.aureus 23Sリボソーム核酸、mecA核酸、または内部対照核酸にハイブリダイズすることが可能である。表4〜6は、それぞれ、S.aureus 23Sリボソーム単位複製配列、mecA単位複製配列、および内部対照単位複製配列を検出するのに用いられた一部のハイブリダイゼーションプローブの全配列を示す。表4に示される分子トーチは、その5’端においてヘキサクロロ−フルオレセイン部分により標識され、その3’端においてDABCYL消光剤部分により標識された。表5に示される分子トーチは、その5’端においてフルオレセイン部分により標識され、その3’端においてDABCYL消光剤部分により標識された。表6に示される分子トーチは、その3’端においてROX部分により標識され、その3’端においてTAMRA消光剤部分により標識された。表4〜5に示される分子トーチでは塩基位置5〜6、表6に示される分子トーチでは塩基位置17〜18が、非ヌクレオチドの9炭素(C9)スペーサーにより隔てられた。すべてのプローブは、2’メトキシヌクレオチド類似体を用いて合成された。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

上記に示した通り、任意の数の異なる骨格構造を、本発明のハイブリダイゼーションプローブの核酸塩基配列のための足場として用いることができる。特定の極めて好ましい実施形態において、RNA単位複製配列を検出するのに用いられるプローブ配列は、メトキシ骨格、または核酸骨格内における少なくとも1つのメトキシ結合を含む。
【0112】
捕捉オリゴヌクレオチドの選択および使用
簡単に述べると、好ましい標的捕捉法では、標的核酸に非特異的にハイブリダイズし、次いで、それを試料調製物の他の成分から分離するのに、1種または複数種の核酸オリゴマーを用いる。増幅前に核酸を精製するのに極めて好ましい非特異的な標的捕捉法に関する詳細は、第11/832,367号の番号により同定される米国特許出願において、Beckerらにより与えられる。
【0113】
増幅前に標的核酸を単離する方法は、標的核酸を含有する試料を、非特異的捕捉プローブと混合するステップ伴うことが好ましい。捕捉プローブは、標的核酸と非特異的にハイブリダイズする第1の塩基配列を含むことが好ましい。第1のオリゴヌクレオチド配列は、GヌクレオチドおよびTヌクレオチドまたはGヌクレオチドおよびUヌクレオチドを含む、無作為的なポリ(K)配列であることが好ましい。好ましい捕捉オリゴヌクレオチドは、固体支持体上への固定化のための標的として用いられる第2の配列(すなわち、「テール」配列)に共有結合している。捕捉オリゴヌクレオチドの3’端にあることが好ましいテール配列を用いて、固体支持体上において固定化された相補的な塩基配列にハイブリダイズすることで、ハイブリダイズした解析対象の核酸を、生物学的試料中における他の成分に優先して捕捉する手段がもたらされる。捕捉プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションにより、該支持体に固定化されるハイブリダイゼーション複合体を形成させるハイブリダイゼーション条件下において、固体支持体、標的核酸、および非特異的捕捉プローブを含有する反応混合物をインキュベートすることができる。その後、反応混合物の溶液相から固体支持体を分離して、それに結合したハイブリダイゼーション複合体を他の試料成分から分離し、これにより標的核酸を他の試料成分から単離するステップが実施される。好ましい実施形態において、該捕捉するステップは、捕捉オリゴヌクレオチドを標的核酸と逐次的にハイブリダイズさせ、次いで、捕捉オリゴヌクレオチドのテール部分を固定化された相補的配列とハイブリダイズさせるハイブリダイゼーション条件を調整することにより実施される(例えば、PCT第WO98/50583号において説明される)。
【0114】
標的核酸:捕捉オリゴヌクレオチド:固定化プローブ複合体を回収することにより、生物学的試料中におけるその濃度に対して標的核酸が効果的に濃縮され、生物学的試料中に存在しうる増幅阻害剤から標的核酸が精製される。捕捉された標的核酸を1回または複数回にわたり洗浄することができ、例えば、結合した標的核酸:捕捉オリゴヌクレオチド:固定化プローブ複合体を伴う粒子を洗浄液中において再懸濁させ、次いで、上記で説明した通りに、洗浄液から結合複合体を伴う粒子を回収することにより、標的をさらに精製する。次いで、該捕捉するステップおよび任意選択の洗浄するステップが完了した後において、標的核酸を増幅することができる。操作するステップの数を制限するために、標的核酸は、場合によって、それを捕捉オリゴヌクレオチドから放出させることなく増幅することもできる。
【0115】
本発明を例示するのに用いられる捕捉オリゴヌクレオチドを表7に示す。捕捉オリゴヌクレオチドの位置1〜18は、G塩基およびT塩基による無作為のポリ(K)配列であった。ポリ(dA)テール配列は、該オリゴヌクレオチドの3’端に配置した。捕捉オリゴヌクレオチドはまた、標的にハイブリダイズする非特異的配列とポリ(dA)テールとの間に挿入される3つの任意選択のチミジンヌクレオチドからなるスペーサーも含んだ。これらのチミジンヌクレオチドの存在は、捕捉手順の成功に不可欠であるとは考えられない。DNA前駆体およびLNAヌクレオチド類似体の組合せを用いて、該オリゴヌクレオチドの標的にハイブリダイズする非特異的部分が合成される一方、DNA前駆体を用いて、3つのチミジンヌクレオチドおよびポリ(dA)テールが合成された。より具体的に述べると、位置1〜3、7〜9、および13〜15におけるLNA類似体を除き、捕捉オリゴヌクレオチドはDNAであった。該オリゴヌクレオチドの3’末端は、DNAポリメラーゼによる伸長が不可能な逆極性Cヌクレオチドを用いて遮断した。
【0116】
【表7】

内部対照
増幅核酸を検出するアッセイは、場合によって、同じ増幅反応混合物中において増幅および検出される内部対照(IC)核酸を含む。ICは、IC配列に特異的な増幅オリゴヌクレオチドおよび検出プローブを用いることにより増幅することができる。意図される解析対象の核酸に対するシグナルが得られない場合(例えば、S.aureusおよびmecAによる解析対象の核酸に対して陰性結果をもたらす試料の場合)、増幅されたIC配列からのシグナルの検出により、アッセイ試薬、アッセイ条件、およびアッセイ手順のステップがアッセイにおいて適正に用いられて実施されたことが示される。ICの好ましい実施形態は、天然の供給源に由来している無作為的配列(無作為的な形で再配列されたHIV配列)である。好ましいICは、天然の供給源から単離されるか、または化学合成されるか、またはin vitroの技法によるRNA転写物またはDNA分子でありうる。プライマーおよびプローブが、解析対象の標的配列を増幅および検出するのに用いられるのと実質的に同じアッセイ条件を用いるIC配列の増幅および検出に機能する場合、IC標的配列のプライマーおよびプローブは、任意の周知の方法を用いて設計および合成される。標的捕捉ベースの精製ステップを含む好ましい実施形態において、IC標的に特異的な標的捕捉プローブは、該ICが、すべてのアッセイステップにおいて意図される解析対象に用いられるのと同じ条件において処理されるように、標的捕捉ステップ内に組み入れられる。
【0117】
代替的なS.aureus特異的標的配列
S.aureusに特異的なリボソーム核酸配列に加えて、他のS.aureus特異的核酸配列も、本明細書で開示される該リボソーム核酸配列に代用することができる。例えば、上記で言及されたorfX遺伝子配列はS.aureus内で高度に保存されることが公知であり、SCCmecの組込み部位であることが公知である。したがって、本発明は、S.aureus特異的核酸配列の代わりにS.aureus特異的なorfX核酸配列を増幅および検出するステップを含む方法を包含することを意図する。当然ながら、これらの手順は、メチシリンに対して耐性を付与する組込み配列に近接するかまたはこれを含むorfXの一部の増幅など、orfX配列の一部のみの増幅を伴いうる。組込み接合部を超えた増幅に依拠する本発明の実施形態は、mecA配列との共増幅反応において特に好ましい。このような増幅反応において得られる反応速度結果に対する閾値基準の適用により、MRSAの同定に関する特異性を増強することができる。より具体的に述べれば、このような適用により、それがなければ(1)臨床試料中におけるMRSAの存在についての直接の指標としての挿入接合部の検出、または(2)臨床試料(例えば、鼻腔スワブ試料)中におけるMRSAの存在についての直接の指標としての挿入接合部およびmecA核酸配列の定性的検出から生じる偽陽性MRSA同定の発生率を低下させることができる。MRSA細菌内に含有されるorfX配列の一部に対する増幅、またはorfX接合部を超える増幅のための組成物および方法は、当業者に容易に使用可能である(例えば、米国特許第6,156,507号および同第7,449,289号を参照されたい)。
【0118】
臨床試料中における細菌の複合混合物を分解する方法
本明細書で説明されるリアルタイムの増幅システムを用いて得られる結果から進んで、本発明者らは、ゴールドスタンダードの微生物学法を用いてMRSA陽性またはMRSA陰性として類別された臨床検体(すなわち、鼻腔スワブ)を検討した。
【0119】
図1〜3に示された結果により、重感染試料の検出法が裏付けられた。図1は、多数の非標的細菌の存在下において少数のMRSA細菌に由来する鋳型を用いる多重反応におけるS.aureus標的配列およびmecA標的配列の増幅についての結果を示す。図2は、多数のMSSA菌の存在下において少数のMRSA細菌に由来する鋳型を用いる多重反応におけるS.aureus標的配列およびmecA標的配列の増幅についての結果を示す。S.aureus標的配列のコピー数は、図1Aにおいて示される結果と比較した場合、図2Aにおいて示される結果をもたらす反応において実質的により多数であったので、これに比例してより多数のS.aureus 23S rDNA標的を有する試験の場合、S.aureus標的に対する反応曲線は一般に、反応時のより早期においてバックグラウンドの蛍光レベルから立ち上がった。同時に、mecA標的配列に対する反応曲線は一般に、反応時のより後期においてバックグラウンドレベルから立ち上がった(例えば、図2Bおよび2Aにおける反応曲線を比較されたい)。別の形で述べると、MRSA細菌が寄与する鋳型のみを用いて実施された試験と比べて、S.aureus標的に対するCt値(すなわち、「Ct(Sau)」)は低下し、mecA標的に対するCt値(すなわち、「Ct(mec)」)は上昇した。したがって、S.aureus標的核酸およびmecA標的核酸に対して決定されるCt値間の差(すなわち、ΔCt=Ct(Sau)−Ct(mecA)として計算される)は、多重増幅反応における2つの標的配列の寄与を反映した。特に、1つの標的のコピー数の相対的な増大は、その標的に対する反応曲線のより急速な立ち上がり(すなわち、より小さなCt値)、および同じ多重増幅反応において第2の標的を表わす反応曲線の立ち上がり時間における対応する遅延と関連する。
【0120】
特に、ΔCt値を用いて細菌(例えば、MRSA細菌およびMSSA菌)の複合混合物を評価する方法は、例えば、多重反応における増幅供給源についての競合により、S.aureus特異的増幅反応とmecA特異的増幅反応とが互いに影響し合うことを要請しない。MSSAおよびMRSAの両方が検査を受ける試料中に存在する場合、MSSAに由来するS.aureus標的の増幅が増幅供給源について競合し、多重反応におけるmecA標的配列の増幅は遅くなる(すなわち、両方の標的が単一の反応において増幅される)。この競合の程度は増幅システムの性質により異なり、例えば、PCRにおける場合のように、実質的に存在しない可能性もある。にもかかわらず、ΔCtはやはり存在する。したがって、ΔCtは競合に依存しない。
【0121】
このことの帰結は、複数の理由で重大であった。まず、これにより、MRSA細菌およびMSSA菌の混合物を含有する検査試料について予測される傾向が明示された。より具体的に述べると、これらの標的生物の混合物は、S.aureus特異的増幅反応に対する反応曲線のCtと、mecA特異的増幅反応に対する反応曲線のCtとの間の隔たりの増大(すなわち、ΔCtの大きさが増大すること)により認識することができる。ΔCtが上記で与えられた方程式により計算される場合、ΔCt値は、MRSAのみを含有する試料について予測されるΔCt値よりもいっそう負となる。これに対し、MRSAおよびMR−CoNSの混合物は、純粋なMRSA試料を用いて得られる反応曲線と比較した場合、間隔がより近接して一体となった反応曲線をもたらすことが予測される。これは、多重増幅反応におけるmecA鋳型数の増大により、MRSA対照と比べてより早期においてバックグラウンドからmecAの反応曲線が立ち上がり、S.aureus特異的反応曲線が、MRSA対照と比べてその立ち上がり時間において遅延するからである。この場合において、上記で与えられた方程式により計算されるΔCt値は、MRSAのみを含有する試料について予測される値と比較して増大する(すなわち、いっそう正となる)。最後に、MSSAおよびMRSAの混合物は、ごくまれに(例えば、S.aureus特異的鋳型とmecA特異的鋳型との相対数が、真正のMRSA細菌において見出される相対数にちょうど符合する場合に)、純粋のMRSA培養物対照に特徴的な量のみ間隔を置いたS.aureus特異的反応曲線およびmecA特異的反応曲線をもたらすことが予測される。このような混合物について計算されるΔCt値が、純粋なMRSA試料から単離される鋳型を用いて実施される反応に特徴的なΔCt値よりも大きいかまたは小さいかは予測できなかった。
【0122】
反応速度解析手順の目的には、(1)MRSAによる感染の同定、(2)MSSAによる感染の同定、(3)MSSAおよびMR−CoNSによる重感染から生じる偽陽性MRSA同定の最小化、および(4)偽陰性結果の最小化を組み入れた。好ましい手法は、試料がMRSA陽性であることを指摘する、少なくとも1つの経験的に決定された閾値の使用に依拠する。
【0123】
上記の説明に基づき、MRSAを含んだがMSSAまたはMR−CoNSを含まなかった試料は、経験的に決定された値に実質的に等しいΔCt値をもたらすことが予測された。これを、図4Aにおいて引かれた水平線によって示す。本発明者らの実験において、ΔCtは約−2分間に等しかった。臨床試料が、(1)MSSAおよびMR−CoNSの混合物、(2)MRSAおよびMSSAの混合物、(3)MRSAおよびMR−CoNSの混合物を含む細菌の複合混合物を表わすことは、合理的な仮定であった。これらの異なる細菌の相対数が、異なる試料を通じてある程度無作為に分布することを踏まえると、図4Bに示される結果が予測された。該図において示される通り、真のMRSA陽性試料(X)は、線上にあるΔCt値(すなわち、MRSAによる単独感染を示す)、線の上方にあるΔCt値(すなわち、MRSAおよびMR−CoNSによる重感染を示す)、および線の下方にあるΔCt値(すなわち、MRSAおよびMSSAによる重感染を示す)をもたらす。同様に、MSSAおよびMR−CoNSによる重感染から生じる偽陽性試験(x)は、線上にあるΔCt値(すなわち、2つの標的核酸の相対比率が、MRSA細菌内において天然で見出される比率に符合する場合)、線の上方にあるΔCt値(すなわち、MRSA細菌内において天然で見出される量と比較して相対的に過剰なmecA鋳型から生じる)、および線の下方にあるΔCt値(すなわち、MRSA細菌内において天然で見出される量と比較して相対的に過剰なS.aureus鋳型から生じる)を有することが予測される。
【0124】
図4Bに示したモデルに基づく予測に反して、また、以下の実施例に示す経験的な観察によって裏付けられる通り、真の陽性結果および偽陽性結果の分布は、ΔCtの閾値の値に関して劇的に異なる区分を示した。より具体的に述べると、MRSAとMSSAとの重感染ではなく、MRSAとMR−CoNSとの重感染を同定する驚くべき傾向が見られた。これらの試験は、図4A〜4Bにおいて引かれた水平線の上方にクラスター化した。MSSAおよびMR−CoNSによる重感染から生じる偽陽性は、何らかの形でクラスター化するのではなく、ΔCtの閾値の上方および下方において実質的に均等に分布したが、偽陽性試験は、該図に示される線の下方にやや優先的に区分されると思われた。これらの観察に基づき、MRSA陽性試料を指摘または判定するのに用いうる閾値の値を確立することが可能であった。したがって、本発明により、閾値の値に実質的に等しいかまたはこれを実質的に超えるΔCt値をもたらす試料としてMRSA陽性試料を同定した。
【0125】
MRSA核酸およびMSSA核酸を検出するためのキット
本明細書で説明される方法に加えて、本発明は、本明細書で説明される方法を実施するのに必要とされる1種または複数種の試薬を含むキットにも関する。本発明を実施するのに用いられる各種の成分を含むキットは、核酸標的分子の増幅を必要とする任意の手順において用いられるように構成することができ、このようなキットは、各種の異なる末端使用者向けにカスタマイズすることができる。本発明のキットは、本発明による核酸増幅を実行するのに必要な1つまたは複数の成分を提供する。キットは、1つの特定の標的から核酸を増幅するのに適する試薬を含む場合もあり、複数の標的を増幅するのに適する試薬を含む場合もある。本発明のキットは、単一の試料中における1つまたは複数の核酸標的のリアルタイムでの検出のための試薬、例えば、上記で説明したステムループ構造を有する1種または複数種の自己ハイブリダイジングプローブをさらに提供しうる。キットは、バイアル、試験管、ウェルなど、1つまたは複数の容器を厳重な密封下で封入するように区分されうる携帯袋を含みうる。少なくとも1つのこのような容器は、本発明の増幅法を実施するのに必要な1種もしくは複数種の成分または成分の混合物を含有する。
【0126】
本発明の一実施形態によるキットは、例えば、1つまたは複数の容器内に、プライミングオリゴヌクレオチド、プライマーの伸長反応を終結させるターミネーティングオリゴヌクレオチド、また場合によって、伸長オリゴヌクレオチドおよび/またはキャッピングオリゴヌクレオチドを含みうる。リアルタイムの検出が用いられる場合、1つまたは複数の容器は、単一の試料中における少なくとも1つの核酸標的配列をリアルタイムで検出するための1種または複数種の試薬、例えば、上記で説明した、ステムループ構造を有する1種または複数種の自己ハイブリダイジングプローブを含みうる。別の容器は、PCR反応もしくはRT−PCR反応を実施するための熱安定性DNAポリメラーゼ、または逆転写酵素の混合物(RNアーゼH活性を伴うものであれ伴わないものであれ)、RNAポリメラーゼ、また場合によって、転写ベースの増幅反応のためのさらなる選択的なRNAアーゼ酵素などの酵素試薬を含有しうる。これらの酵素は、濃縮形態または作業濃度において、通常、酵素の安定性を促進する形態において供給することができる。酵素試薬はまた、例えば、米国特許第5,834,254号においてShenらにより教示される凍結乾燥形態においても供給することができる。別の1つまたは複数の容器は、濃縮形態、または作業濃度における増幅試薬を含有しうる。増幅試薬は、増幅反応を実施するのに必要な1つまたは複数の成分(例えば、緩衝液、MgCl、KCl、dNTP、rNTP、EDTA)、安定化剤などを含有する。該成分の一部(MgClおよびrNTP)は、残りの成分とは別に供給することができ、これにより、末端使用者は、これらの試薬を漸増して、より最適化された増幅反応を達成することができる。別の1つまたは複数の容器は、1種または複数種の標識オリゴヌクレオチドプローブを含む、増幅産物の検出のための試薬を含みうる。プローブは、多数の代替的な方法でも標識することができる(例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、核タグ、生物発光標識、挿入色素、または酵素標識による)。一部の実施形態において、本発明のキットはまた、末端使用者により実施される検査増幅を検証するための増幅実験において用いうる、1つまたは複数の陽性および陰性の対照標的核酸を有する1つまたは複数の容器も含む。場合によって、上記で列挙された1種または複数種の試薬は、内部対照と組み合わせることもできる。当然ながら、単一の試験管または他の容器内において、1種または複数種のこれらの試薬を組み合わせることも可能である。本発明による使用に適する支持体(例えば、試験管、多試験管ユニット、マルチウェルプレート、マイクロ流体カートリッジなど)もまた、本発明のキットと共に供給することができる。最後に、本発明のキットは、1種または複数種の指示マニュアルを含みうる。
【0127】
本発明のキットは、上記の成分または本明細書の他の個所で説明される成分の事実上任意の成分を含有しうる。当業者が認める通り、本発明のキットにより供給される成分は、キットの意図される使用、および意図される末端使用者により変化する。したがって、キットは、本出願で記載される各種の機能を実施するように特に設計することができ、このようなキットの成分はこれに従って変化する。
【実施例】
【0128】
本発明の一般的な原理は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、より完全に理解することができる。
【0129】
実施例1は、多重リアルタイム増幅アッセイを用いる、MRSA細菌およびMSSA菌の検出について例示する。単一の試験管内におけるS.aureus 23S rDNA、mecA DNA、および非類縁の人工内部対照DNAの増幅および検出に、3つの個別の単一プライマー転写を伴う増幅アッセイを用いた。該手順における3つの核酸標的の各々は、固有の増幅オリゴヌクレオチドを用いて増幅され、固有の分子トーチを用いて検出された。以下で説明される通り、(a)2種の異なるメチシリン感受性コアグラーゼ陰性Staphylococcus細菌(すなわち、S.haemolyticusおよび表皮ブドウ球菌)、または(b)MSSAを極めて過剰に含有する試料中における少量のMRSA細菌の検出を評価する手順を実施した。同様にまた、2種のメチシリン感受性コアグラーゼ陰性Staphylococcus細菌を極めて過剰に含有する試料中における少量のMSSA菌の検出も評価した。
【0130】
(実施例1)
密接な類縁生物の存在下におけるMRSAおよびMSSAの検出
検査に用いられる細菌標的を含有する試料は、以下の通りに調製した。Stuart培地を含有する付属の試験管内に無菌のBBL CULTURE SWABS(Becton,Dickinson および Company社製)を挿入し、室温で少なくとも6時間にわたり静置し、バッチ回収条件をシミュレートした。10mMトリス(pH8.0)および1mM EDTAからなる250μlの試料緩衝液を含有する1.7ml Eppendorf社製反応試験管内に、個々のスワブを移した。スワブアプリケーターハンドルの過剰長部分を除去して、反応試験管内にスワブを収めた。その後、試験管に施栓し、30秒間にわたりボルテックスした。ボルテックスの直後にスワブを取り出した。次に、2本の1.7ml Eppendorf社製反応試験管各々に残りの試料緩衝液80μlを移した。次に、3つの異なる負荷条件の1つに応じて、公知量の細菌を含有する20μlのアリコートを多連試験管に受け入れた。これらの条件は、(a)160コロニー形成単位(CFU)のMRSA細菌、ならびに各々100,000CFUずつの表皮ブドウ球菌およびS.haemolyticus、(b)160CFUのMRSA細菌および100,000CFUのS.aureus(MSSA菌)、ならびに(c)160CFUのMSSA菌、ならびに各々100,000CFUずつの表皮ブドウ球菌およびS.haemolyticusであった。次いで、5,000コピーの内部対照DNAを含有する100μlの溶解緩衝液アリコートを各試験管に受け入れた。試験管を1〜2秒間にわたりボルテックスし、10分間にわたり室温で静置した。次いで、1M HEPES(pH6.5)により作製された40μlの標的捕捉試薬(TCR)アリコートと、500μg/mlのオリゴ(dT)磁気ビーズ(インディアナ州、インディアナポリス、Seradyn社製)と、配列番号21の3’遮断非特異的標的捕捉オリゴヌクレオチド200pmol/mlとを各試験管に受け入れた。短時間にわたるボルテキシングの後、200μlの混合物アリコートを96ウェルKF200プレート(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo Fisher Scientific社製)のウェル内に移し、その後の処理を行った。これをプレート1と名付けた。
【0131】
KINGFISHER96(マサチューセッツ州、ウォルサム、Thermo Fisher Scientific社製)磁気粒子プロセッサーを用いて、磁気ビーズ上に非特異的に捕捉された核酸の自動洗浄を行った。まず、各々が200μlずつの洗浄試薬を含有する2枚のマイクロプレート(プレート2および3)を準備した。洗浄試薬は、150mM NaClおよび0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウムを含むHEPES緩衝液であった。増幅反応を実施するための別のマイクロ滴定プレート(MJ Research社製の96ウェルプレート)(プレート4)もまた準備し、各ウェルを30μlずつの増幅試薬を含有する反応に用いた。当業者が熟知する通り(例えば、米国特許出願第11/681,104号を参照されたい)、増幅試薬は、リボヌクレオチド三リン酸、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、塩、および補因子のpH緩衝混合物を含んだ。増幅試薬は、プライミングオリゴヌクレオチド(配列番号1、配列番号5、および配列番号14)、ターミネーティングオリゴヌクレオチド(配列番号3、配列番号12、および配列番号16)、およびプロモーターオリゴヌクレオチド(配列番号4、配列番号13、および配列番号17)をさらに含んだ。特に、ある手順では、配列番号6〜9の1つにより配列番号5のオリゴヌクレオチドを置換してmecA配列を増幅し、すぐれた結果を得た。したがって、配列番号6〜9は、単独または他の増幅オリゴヌクレオチドおよび検出オリゴヌクレオチドとの組合せにおいて、本発明による好ましいオリゴヌクレオチドを表わす。4枚のプレート(プレート1〜4)すべてを、磁気粒子プロセッサーユニット内に投入した。プレート1から核酸複合体を保持する磁気ビーズを単離し、まずプレート2内において洗浄し、プレート3へと移して再度の洗浄サイクルにかけ、最後にプレート4のウェル内に移して増幅を準備したが、これらすべてにおいて、当業者が熟知する標準的な手順を用いた。
【0132】
温度制御型MX3005p測定器(カリフォルニア州、ラホーヤ、Stratagene社製)を用いて、等温核酸増幅反応のリアルタイムでのモニタリングを実施した。まず、KINGFISHER96磁気粒子プロセッサーユニットからプレート4を取り出し、次いで、これを温度制御型測定器内に入れた。まず、プレートを60℃で3分間にわたりインキュベートし、次いで、42℃で5分間にわたりインキュベートした。次に、マイクロ滴定プレートを、44℃に設定されたEPPENDORF THERMOMIXER R(ニューヨーク州、ウェストベリー、Eppendorf North America社製)上に移した。ディスプレイサーオリゴヌクレオチド(配列番号2、配列番号10、配列番号11、および配列番号15)および分子トーチ(配列番号18、配列番号19、および配列番号:20)を含有する10μlの酵素試薬アリコートを各反応ウェルに受け入れた。酵素試薬は、当業者が熟知する通り(例えば、米国特許出願第11/681,104号を参照されたい)、モロニーマウス白血病ウイルス(「MMLV」)逆転写酵素、T7 RNAポリメラーゼのpH緩衝混合物を含んだ。接着式カバーによりプレートをシールし、1分間にわたり静かに振とうし、次いで、42℃でインキュベートし、16秒間ごとに3種の分子トーチからの蛍光シグナルを読み取るように設定されたリアルタイム式測定器内に移した。蛍光シグナルは、相対蛍光単位(RFU)で測定した。単位複製配列合成量の指標として用いられる閾値ベースのT時間値は、基本的に、米国特許公開第2006−0276972A1号においてLightらにより開示される方法によりモニタリングされた蛍光シグナルから決定された。
【0133】
正当な結果に対する許容基準は、多重反応における3つの反応の少なくとも1つが、すぐ下に記載される基準を用いる陽性増幅結果をもたらすことを要請した。より具体的に述べると、S.aureusおよびmecAの増幅反応に対する陰性の増幅結果は、内部対照核酸の陽性増幅が正当であると報告されることを要請した。内部対照増幅反応の成功は、他の2つの解析対象が陰性結果をもたらした場合にのみ重要であった。3つの反応すべてに対する陰性結果は、例えば、反応成分が含まれないか、または反応が強力に阻害される場合に生じうるように、増幅反応の失敗を示す。
【0134】
一般的に述べると、2つの条件が満たされた場合に、多重反応における解析対象の1つの存在を示す陽性の増幅結果が判定された。第1に、該解析対象の増幅反応時において測定される最小の蛍光シグナルと最大の蛍光シグナルとの間の差の大きさは、所定の閾値の値を超えていなければならない。第2に、多重反応における該解析対象について決定されるT時間値は、所定の範囲内において生じていなければならない。多重増幅反応における解析対象の1つについて両方の基準が満たされた場合、その解析対象の存在が判定された。
【0135】
陽性シグナルの基準は、多重増幅反応における3つの解析対象の各々に対して異なるように選択した。反応時間内における蛍光シグナルの範囲が5,000を超えた場合、またT時間値が20.65分以下の場合には、S.aureus 23S DNA標的が存在するものとして記録された。反応時間内における蛍光シグナルの範囲が2,500を超えた場合、またT時間値が32.8分以下の場合には、mecA DNA標的が存在するものとして記録された。最後に、反応時間内における蛍光シグナルの範囲が5,000を超えた場合には、内部対照が陽性であると考えられた。この解析対象に対する増幅ではばらつきが大きかったため、T時間の閾値は得られなかった。
【0136】
図1〜3は、リアルタイムの核酸増幅反応に由来する代表的な結果を示す。図1A〜1Bは、高レベルのメチシリン感受性コアグラーゼ陰性Staphylococcus細菌により負荷された、低レベルのMRSA細菌を含有する試料中におけるS.aureus 23S rDNA(パネルA)およびmecA DNA(パネルB)の単位複製配列の合成に対する時間依存的なモニタリングに由来する生の蛍光結果を示す。図2A〜2Bは、高レベルのMSSA菌により負荷された、低レベルのMRSA細菌を含有する試料中におけるS.aureus 23S rDNA(パネルA)およびmecA DNA(パネルB)の単位複製配列の合成に対する時間依存的なモニタリングに由来する生の蛍光結果を示す。図3A〜3Bは、高レベルのメチシリン感受性コアグラーゼ陰性Staphylococcus細菌により負荷された、低レベルのMSSA菌を含有する試料中におけるS.aureus 23S rDNA(パネルA)およびmecA DNA(パネルB)の単位複製配列の合成に対する時間依存的なモニタリングに由来する生の蛍光結果を示す。ここでもまた予測される通り、この最後のグラフセットに現れるすべての試験において、S.aureus標的は検出されたが、mecA標的は検出されなかった。どの場合においても、図1〜3において表わされる増幅反応時において測定された最小の蛍光シグナルと最大の蛍光シグナルとの間の差は、許容基準を満たした。したがって、各反応により、内部対照に対する正当な陽性の増幅結果が与えられたが、内部対照結果を参照して該手順を検証する必要はなかった。表8では、試験を受けたすべての試料について得られた結果が定量化される。
【0137】
【表8】

基本的に上記で説明した通り、多重増幅システムは、ゴールドスタンダードの微生物学法を用いてMRSAに対して陰性であることが示された臨床試料(鼻腔スワブ)のコレクションを検査するのに用いた。臨床試料は細菌の複合混合物(例えば、MRSA、MSSA、MR−CoNSなど)を含有していたので、異なる生物に由来する2つの核酸標的(すなわち、S.aureus 23S rDNA標的およびmecA標的)を検出することが可能であった。結果として、試料中に存在するMSSAに由来するS.aureus 23S rDNA標的配列を検出すること、および同じ試料中に存在するMR−CoNS細菌に由来するmecA標的配列を検出することが可能であった。試料中における両方の標的の存在がMRSAの存在を示すと結論づけるならば、この場合誤りとなるであろう。したがって、重感染は、個別の標的核酸を用いる臨床試料の解析に対して難題を提示する。したがって、臨床試料を解析する場合には、偽陽性MRSA判定の数を抑制または無化する必要があった。
【0138】
以下の実施例では、別個の解析によりMRSA陰性であることが確立された臨床試料(すなわち、鼻腔スワブ試料)を用いて得られる結果について説明する。個々の被験者から3例ずつのスワブ試料を取得した。第1のスワブをゴールドスタンダードの微生物学的検査にかけて、MRSA細菌の存在または不在を確立した。第2のスワブは凍結アーカイブに保存した。第3のスワブは、基本的に実施例1の下で説明した通り、試料処理にかけてDNAを単離し、単離されたDNAをS.aureus 23S rDNA標的およびmecA標的の多重増幅のための鋳型供給源として用いた。
【0139】
(実施例2)
MRSA陰性臨床試料に対するリアルタイム解析
基本的に実施例1の下で説明した通りに、MRSAに対して陰性の鼻腔スワブ試料55例を多重リアルタイム増幅システムにおいて検査し、S.aureus標的核酸およびmecA標的核酸の存在または不在について判定を行った。MXPRO QPCRリアルタイム解析ソフトウェア(カリフォルニア州、ラホーヤ、Stratagene社製)を用いて、リアルタイムの反応曲線を解析し、閾値蛍光値の達成に基づき増幅指標を決定した。Ct値を決定したら、該値を平均し、ΔCt値の計算に用いた。
【0140】
リアルタイムの増幅手順に由来する代表的な反応曲線を図5A〜5Eに示す。すべてのパネルは、内部対照配列、S.aureus 23S rDNA配列、およびmecA標的配列の増幅結果をグラフで示す。基本的に実施例1の下で説明した許容基準を用いて、個別の増幅反応を陽性として記録した。図5Aは、S.aureus核酸またはmecA核酸を含まなかった陰性対照試験についての結果を示す。予測される通り、内部対照シグナルのみが増幅の証拠を示した。図5Bは、陽性のMRSA対照反応(すなわち、約500cfuのMRSA細菌を用いる)についての結果を示す。この場合、S.aureusシグナル、mecAシグナル、および内部対照シグナルのすべてが増幅の証拠を示した。特に、図5A〜5Bにおいて示される対照はまた、以下の実施例3の下に示される結果を解釈するのにも有用であった。図5Cは、S.aureusシグナルおよび内部対照シグナルは増幅の証拠を示したが、mecAシグナルは実質的に遅延し、陽性結果を記録するのに必要とされる基準が満たされなかった結果を示す。このパネルに示されるプロファイルは、MRSA感染に特徴的ではないであろうが、その代わり、MSSAによる感染に特徴的であり、おそらく、S.aureus以外のmecA含有細菌を少量伴う。図5Dは、mecAシグナルおよび内部対照シグナルは増幅の証拠を示したが、S.aureusは該証拠を示さなかった結果を示す。このプロファイルは、MR−CoNS細菌による感染に特徴的であろう。図5Eは、S.aureusシグナルおよびmecAシグナルの両方が増幅の証拠を示した結果を示し、内部対照も、ある程度遅延した(例えば、多重反応における他の2つの標的配列の頑健な増幅の結果として)が陽性であった。このプロファイルは、MSSA菌およびMR−CoNS細菌による重感染に特徴的であろう。公知のMRSA陰性臨床試料を用いて実施されたすべての試験に由来する結果を表9に示す。
【0141】
【表9−1】

【0142】
【表9−2】

【0143】
【表9−3】

表9に見られる結果により、これはまたMRSA細菌についても予測されるプロファイルである、S.aureusおよびmecA両方の標的核酸に対して陽性な7例のMRSA陰性臨床試料(すなわち、1424、1238、1314、3118、1427、1418、および3276)が同定された。しかし、表9にまとめられた、S.aureusおよびmecAの核酸の存在のみに基づいてMRSA陽性として同定された臨床試料は、「偽陽性」であろう。これは、表9にまとめられた結果を得るのに用いられたすべての臨床試料が、微生物学的特徴づけに基づき、MRSA陰性であることが確立されていたからである。
【0144】
7例の偽陽性試料のCt値を表10にまとめる。ΔCt値が−2分間の任意の閾値カットオフを超えることを任意に要請すると、7例の偽陽性のうち4例が除去され、これにより結果が改善される。任意の閾値の選択基準を、実施例4の下に示す。
【0145】
【表10】

以下の実施例では、ゴールドスタンダードの微生物学的検査を用いて当初にMRSA陽性と同定された臨床試料を用いる手順について説明する。以下において説明される手順では、鼻腔スワブ試料から核酸を単離し、次いで、単離された核酸を、上記で説明したリアルタイムの多重増幅手順において用いた。
【0146】
(実施例3)
MRSA陽性臨床試料に対するリアルタイム解析
基本的に実施例1の下で説明した通りに、MRSAに対して陽性の鼻腔スワブ試料50例を多重リアルタイム増幅システムにおいて検査し、S.aureus標的核酸およびmecA標的核酸の存在または不在について判定を行った。反応は、2連または3連で実施した。前出の実施例下で説明した通りに、増幅指標(すなわち、Ct値)を決定した。Ct値を決定したら、該値を平均し、ΔCt値の計算に用いた。
【0147】
これらの手順に由来する代表的な反応曲線を図6A〜6Cに示す。図6Aは、S.aureusシグナル、mecAシグナル、および内部対照シグナルのすべてが増幅の証拠を示した結果を示す。この試験について計算された平均のΔCt値は、−7.7分間であった。以下で論じる通り、この大きさのΔCt値は、MRSAおよびMSSAによる重感染を表わす試料と符合した。図6Bもまた、S.aureusシグナル、mecAシグナル、および内部対照シグナルのすべてが増幅の証拠を示した結果を示す。しかし、図5Bにおいて示したMRSA陽性対照試験に反して、バックグラウンドレベルからはまずmecAシグナルが立ち上がった。結果として、この試験について計算されたΔCt値は、0.8分間(すなわち、正の数)であった。この結果は、MRSAおよびMR−CoNSによる重感染を表わす試料と符合した。図6Cは、mecAシグナルおよび内部対照シグナルは頑健な増幅の証拠を示したが、S.aureusシグナルは陽性スコアの基準が満たされない時点まで遅延した。この結果を得るのに用いられた試料がゴールドスタンダードの微生物学的検査によりMRSA陽性と同定されていた事実に対して、リアルタイムの増幅結果に対する反応速度解析に基づく結論は一致しなかった。より具体的に述べると、リアルタイムの反応曲線からCt(Sau)値を計算することができなかったので、該試料はMRSA陰性と分類された。
【0148】
予備的な微生物学的検査によりMRSA陽性として同定された臨床試料を用いて実施されたすべての試験に由来する結果を表11にまとめる。表中で示される通り、微生物学的検査により当初MRSA陽性として同定された3例の試料(すなわち、試料3076、1301、および3028)では、S.aureus 23S rDNA標的核酸の増幅に対する陰性結果がもたらされた。これらの試料の1つ(すなわち、3028)はまた、mecA標的核酸の増幅に対する証拠も示さなかった。3例の不一致試料の各々を、微生物学法と分子(例えば、DNA配列決定)法との組合せを用いる厳密な追跡解析にかけた。これらの解析に由来する結果により、元のMRSA判定が偽陽性判定であることが確認された。これは、リアルタイムのアッセイが臨床試料中のMRSAをどの程度正確に同定し、他の検査システムにおいて発生した偽陽性結果をどの程度減少させるかを示す。該表の第5列では、残る真のMRSA陽性試料が、リアルタイムアッセイを用いて正確に同定されたことが確認される。したがって、MRSA含有試料が、偽陰性として誤同定されることもなかった。3例の異なる臨床試料(すなわち試料1630、1237、および3387)では、決定されたCt値間における隔たりが、表中に列挙された他の試験に対する場合よりも実質的に大きいリアルタイムの反応曲線がもたらされた。これらの結果は、MRSAとMSSAとの重感染により説明することができたであろう。内部対照シグナルは、表11において表わされるすべての試験に対して一様に陽性であり、したがって、該アッセイパラメータは示さない。上記の通り、ΔCt値は、Ct(S.aureus)値からCt(mecA)値を減じることにより計算された。
【0149】
【表11−1】

【0150】
【表11−2】

前出により、(1)S.aureusには特異的であるがCoNS細菌には特異的でない第1の標的(例えば、S.aureusに特異的な23S rDNA配列)、および(2)多重増幅反応においてメチシリン耐性に特異的であった第2の標的(例えば、mecA標的配列)に対するリアルタイムの増幅により、どの程度MRSA細菌が検出されうるかについて説明した。この手法により、真のMRSA陽性であった臨床試料(表11を参照されたい)が100%正確に検出され、MRSAについて真の陰性であった一部の偽陽性試料(表10を参照されたい)もまた検出された。これらの偽陽性は、MSSA菌とMR−CoNS細菌との重感染から生じた可能性が高い。上記ではまた、リアルタイム結果の反応速度解析により、MRSAおよびMSSAの混合物、MRSAおよびMR−CoNSの混合物、ならびにMSSAおよびMR−CoNSの混合物をどの程度分解しうるかを示す証拠も提示されている。以下では、偽陽性の発生率を最小化する一般的な手法が説明される。
【0151】
反応曲線から決定される増幅指標(例えば、Ct値)を含むリアルタイム増幅反応の正確な性質は、多くの変数に依存することが明らかである。例えば、温度および試薬濃度などの反応条件は、反応曲線のプロファイルに劇的に影響しうる。所定の反応パラメータが達成される時点を決定する曲線解析アルゴリズムが異なる場合もまた、同じ反応曲線を解析にかけたときに得られる数値は異なる。にもかかわらず、S.aureus特異的標的(例えば、S.aureus 23S rDNA)に対する増幅指標と、メチシリン耐性マーカー(例えば、mecA DNA)に特異的な標的に対する増幅指標とを関係づけ、この関係から閾値の値を確立しうることを本発明者らは発見した。この閾値の値は、偽陰性MRSA同定数が若干増加することを代償として、偽陽性MRSA同定の発生率を低減する点で有利であった。
【0152】
以下の実施例では、MRSA陽性臨床試料を指摘し、MSSAおよびMR−CoNSの混合物を含む試料から生じる偽陽性同定数を減少させるための任意閾値の選択について説明する。経験的に決定された閾値カットオフを実施例2〜3の下で得られた実験結果に適用したところ、偽陽性同定が実質的に減少した。
【0153】
(実施例4)
偽陽性結果を最小化する任意閾値の選択
実施例2〜3から集めた結果を図7にプロットして、S.aureus標的核酸とmecA標的核酸とを含有する臨床試料を用いて得られる結果の分布に対するΔCt値を視覚化した。一般的に述べると、プロットされたデータには、微生物学的検査によりMRSA陽性と確認された複数例の臨床試料に由来する結果のほか、複数の偽陽性結果も含まれた。偽陽性結果は、MSSAとMR−CoNSとの重感染を表わす臨床試料に起因する可能性が高かった。図7中の2枚のパネルにより示される場合、プロットには実施例3において解析された47例の陽性試料に由来するΔCt値が含まれた。特に、該実施例において検査された50例の鼻腔スワブ試料のうち、3例は真の陰性であることが分かり、このため図7から除外された。また、プロットには、表10にまとめた、実施例2に由来する7例の偽陽性結果も含まれる。これらの結果は、55例のMRSA陰性臨床試料の解析後に得られた。図7Aは、MRSA陽性試料を100%適正な形で検出した結果のプロットコレクションを示す。当然ながら、この結果のコレクションには、S.aureus以外のメチシリン耐性菌と組み合わせたMSSAを含む重感染から生じる7例の偽陽性結果が含まれたであろう。図7Bは同一の結果についてのプロットを示すが、試料をMRSA陽性として指摘する任意閾値を表わす水平線をさらに含む。この場合、該閾値の上方にあるデータ点は、MRSA陽性として分類することができる。当然ながら、該閾値の値は、閾値ベースの判定により組み入れられる真のMRSA陽性数と偽陽性数との間の望ましい均衡を達成するように選択することができる。図7Bに示される通り、−2分間に任意閾値を確立し、この値を超えるΔCt値がMRSA陽性試料と関連することを指摘することにより、7例の偽陽性から4例が除外される一方で、47例の真の陽性のうち44例が捕捉された。
【0154】
検査試料がMRSA核酸を含有するかどうかを評価する上述の方法に加えて、本発明は、検査試料がMSSA菌を含有するかどうかを評価する方法にもさらに関する。より具体的に述べると、S.aureus特異的(例えば、23S rDMA)標的核酸およびメチシリン耐性特異的(例えば、mecA)標的核酸の両方が検出されるある状況下であっても、単回の多重リアルタイム核酸増幅反応に由来する結果を解析して、該検査試料が、(1)MRSA、または(2)MSSAのいずれを含有するかを評価することができる。該解析に基づき、判定が行われる。MSSAおよびMRSAの各々が「陽性」または「陰性」の状態として判定され、結果は、相互排除的である(すなわち、試料は両方の生物に対して陰性であるか、または2種の生物の一方のみに対して陽性である)。簡単に述べると、S.aureus特異的標的配列に対して陽性結果が得られ、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的配列についてのリアルタイムの反応曲線に対する増幅指標から決定されるΔCt値が閾値の値を満たすかまたはこれを超える場合に、試料はMRSA陽性として判定される。S.aureus特異的標的配列に対して陽性結果が得られ、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的配列についてのリアルタイムの反応曲線に対する増幅指標から決定されるΔCt値が閾値の値を満たさないかまたはこれを超えない場合に、試料はMSSA陽性として判定される。この後者の場合は、メチシリン耐性マーカーが増幅されなかったためにΔCt値が計算できない(すなわち、標的が不在である)か、またはΔCt値が指摘された閾値の値未満の場合に当てはまりうる。
【0155】
(実施例5)
単回の多重増幅反応に由来する結果を用いるMRSAおよびMSSAの存在についての評価
閾値ベースの基準を用いると偽陽性MRSA判定の数をどの程度減少させうるかについて示したので、本発明者らは、検査試料がMSSA核酸を含有するかどうかを決定する方法を包含するように、該手法を拡張した。表12には、S.aureus特異的標的核酸配列(例えば、23S rDNA配列)およびメチシリン耐性マーカー(例えば、mecA配列)を増幅および検出するリアルタイムのプロトコールを用いて検査しうる各種の個別の細菌標的核酸(第1〜4行)および2種の細菌核酸の組合せ(第5〜10行)が記載される。該表の第2列および第3列は、任意の許容基準を用いて決定されるS.aureus標的およびmecA標的の存在(すなわち、「(+)」)または不在(すなわち「(−)」)を示す予測の定性的結果を示す。この目的に有用な例示的許容基準は、実施例1の下に上記で与えられている。第4列は、S.aureus標的配列およびmecA標的配列に対する増幅指標を用いてΔCt値を計算する任意閾値ベースの基準に対する結果を示す。この列において、「NA」は、ΔCt関係を計算するのに用いられる必要な2つの増幅指標を欠いているために該基準が適用できないことを示す。「<」および「≧」の符号はそれぞれ、ΔCt値が任意の閾値カットオフ「未満」およびこれ「以上」であることを示す。この例示において、任意の閾値カットオフは、図7Bに示される通り、−2分間に設定された。第5列および第6列はそれぞれ、先行する3列において見られる情報に基づくMSSA判定およびMRSA判定を示す。これらのカラムにおいて、「陽性」とは生物が存在すると判定されることを示し、「陰性」とは生物が不在であると判定されることを示す。表12中の項目についての詳細な説明を以下で行う。特に、表12はまた、リアルタイムの結果を解読または解釈するための「参照表」としても用いることができる。
【0156】
【表12】

表12には、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性標的配列に対するリアルタイムの増幅に由来する結果の解釈がまとめられている。一覧された情報を用いて、S.aureus特異的標的、メチシリン耐性標的、また好ましくは内部対照が単の増幅反応において共増幅される多重アッセイと別個に(例えば、異なる反応容器において実施された)またはこれと代替的に実施された増幅反応に由来する結果を解釈することができる。一覧された結果は、3つの標的配列(すなわち、内部対照、S.aureus特異的標的、およびメチシリン耐性標的)の少なくとも1つがリアルタイムの増幅反応において増幅されることを仮定する。
【0157】
表12の第1行に示す通り、S.aureus(すなわち、MSSA)核酸のみを用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的に対する陽性の増幅結果と、メチシリン耐性標的に対する陰性結果とがもたらされる。メチシリン耐性標的核酸が増幅されないため、ΔCt値は計算することができない。結果をこのようなパターンに統合することにより、陽性MSSA判定および陰性MRSA判定がもたらされる。
【0158】
表12の第2行に示す通り、MR−CoNS核酸のみを用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的に対する陰性の増幅結果と、メチシリン耐性標的に対する陽性結果とがもたらされる。S.aureus特異的標的核酸が増幅されないため、ΔCt値は計算することができない。結果をこのようなパターンに統合することにより、MSSAおよびMRSAの両方に対する陰性判定がもたらされる。S.aureus特異的標的に対する陽性結果の不在下では、MSSAおよびMRSAに対する陰性判定のみが可能となる。
【0159】
表12の第3行に示す通り、CoNS核酸のみを用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陰性の増幅結果がもたらされる。S.aureus特異的標的核酸もメチシリン耐性標的核酸も増幅されないため、ΔCt値は計算することができない。結果をこのようなパターンに統合することにより、MSSAおよびMRSAの両方に対する陰性判定がもたらされる。
【0160】
表12の第4行に示す通り、MRSA核酸のみを用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陽性の増幅結果がもたらされる。この結果の組合せは、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的によるリアルタイムの反応曲線を用いて決定される増幅指標間の関係が閾値の値(例えば、所定の閾値の値)を満たすかまたはこれを超える場合に、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定される。例えば、図7B中に引かれた任意の閾値線上にあるかまたはこの上方にあるΔCt値をもたらした試験であれば、MRSA陽性判定をMRSA陰性判定から区別する閾値を満たすかまたはこれを超えるため、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると適正に判定されるであろう。代わって、該試験が、任意の閾値線の下方にある予測外のΔCt値をもたらした場合であれば、MRSAに対して陽性であるとは判定されず(すなわち、偽陰性判定)、またこのため、MSSAに対して陽性であると判定される(すなわち、偽陽性判定)であろう。
【0161】
表12の第5行に示す通り、S.aureus(すなわち、MSSA)核酸およびMR−CoNS核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陽性の増幅結果がもたらされる。MRSA核酸のみを用いて実施される試験の場合と同様、この結果の組合せは、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的によるリアルタイムの反応曲線を用いて決定される増幅指標間の関係が閾値の値(例えば、所定の閾値の値)を満たすかまたはこれを超える場合に、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定される。例えば、図7B中に引かれた任意の閾値線上にあるかまたはこの上方にあるΔCt値をもたらした試験であれば、MRSA陽性判定をMRSA陰性判定から区別する閾値を満たすかまたはこれを超えるため、MRSAに対して陽性(すなわち、偽陽性判定)であり、MSSAに対して陰性(すなわち、偽陰性判定)であると判定されるであろう。代わって、該試験が、任意の閾値線の下方にあるΔCt値をもたらした場合であれば、MRSAに対して陽性であるとは判定されず、またこのため、MSSAに対して陽性であると適正に判定されるであろう。
【0162】
表12の第6行に示す通り、S.aureus(すなわち、MSSA)核酸およびCoNS核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的に対する陽性結果と、メチシリン耐性標的に対する陰性結果とがもたらされる。これにより、MSSAに対する陽性判定およびMRSAに対する陰性判定がもたらされる。CoNS細菌が寄与する核酸の存在は、リアルタイムの増幅結果に影響を及ぼさない。
【0163】
表12の第7行に示す通り、S.aureus(すなわち、MSSA)核酸およびMRSA核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陽性結果がもたらされる。MRSA核酸のみを用いて実施される試験の場合と同様、この結果の組合せは、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的によるリアルタイムの反応曲線を用いて決定される増幅指標間の関係が閾値の値(例えば、所定の閾値の値)を満たすかまたはこれを超える場合に、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定される。例えば、図7B中に引かれた任意の閾値線上にあるかまたはこの上方にあるΔCt値をもたらした試験であれば、MRSA陽性判定をMRSA陰性判定から区別する閾値を満たすかまたはこれを超えるため、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性(すなわち、偽陰性判定)であると判定されるであろう。代わって、該試験が、任意の閾値線の下方にあるΔCt値をもたらした場合であれば、MRSAに対して陰性であると判定され(すなわち、偽陰性判定)、MSSAに対して陽性であると判定されるであろう。
【0164】
表12の第8行に示す通り、CoNS核酸およびMR−CoNS核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的に対する陰性結果と、メチシリン耐性標的に対する陽性結果とがもたらされる。S.aureus特異的標的に対する陽性結果の不在下では、MSSAおよびMRSAの両方に対する陰性判定のみが可能となる。
【0165】
表12の第9行に示す通り、CoNS核酸およびMRSA核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陽性結果がもたらされる。MRSA核酸のみを用いて実施される試験の場合と同様、この結果の組合せは、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的によるリアルタイムの反応曲線を用いて決定される増幅指標間の関係が閾値の値(例えば、所定の閾値の値)を満たすかまたはこれを超える場合に、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定される。例えば、図7B中に引かれた任意の閾値線上にあるかまたはこの上方にあるΔCt値をもたらした試験であれば、MRSA陽性判定をMRSA陰性判定から区別する閾値を満たすかまたはこれを超えるため、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定されるであろう。代わって、該試験が、任意の閾値線の下方にある予測外のΔCt値をもたらした場合であれば、MRSAに対して陰性であると判定され(すなわち、偽陰性判定)、MSSAに対して陽性であると判定される(すなわち、偽陽性判定)であろう。CoNS細菌が寄与する核酸の存在は、リアルタイムの増幅結果に影響を及ぼさない。
【0166】
表12の最終行に示す通り、MR−CoNS核酸およびMRSA核酸の混合物を用いて実施される試験では、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的の両方に対する陽性結果がもたらされる。MRSA核酸のみを用いて実施される試験の場合と同様、この結果の組合せは、S.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的によるリアルタイムの反応曲線を用いて決定される増幅指標間の関係が閾値の値(例えば、所定の閾値の値)を満たすかまたはこれを超える場合に、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定される。例えば、図7B中に引かれた任意の閾値線上にあるかまたはこの上方にあるΔCt値をもたらした試験であれば、MRSA陽性判定をMRSA陰性判定から区別する閾値を満たすかまたはこれを超えるため、MRSAに対して陽性であり、MSSAに対して陰性であると判定されるであろう。代わって、該試験が、任意の閾値線の下方にある予測外のΔCt値をもたらした場合であれば、MRSAに対して陰性であると判定され(すなわち、偽陰性判定)、MSSAに対して陽性と判定される(すなわち、偽陽性判定)であろう。
【0167】
前出の議論により、単一の細菌種、またはアッセイ中で増幅されうる核酸を含有する細菌種の混合物に由来する核酸の増幅から生じる陽性判定、陰性判定、ならびに偽陽性判定および偽陰性判定の由来が明らかとなる。細菌種の混合物は、鼻腔スワブ試料などの臨床試料中に潜在的に存在する生物集団を代表した。特に、単回のみの多重増幅反応に由来する結果を解析することにより、MSSAまたはMRSAに対する断定的判定を行いうる。アッセイによって、S.aureus(すなわち、MSSA)のみに存在し、MRSAには存在しない核酸標的配列が増幅されない場合であっても、これは当てはまる。表12に見られる情報はまた、リアルタイムの増幅反応に由来する結果を解釈するための「参照」表の創出にとっても重要である。
【0168】
例示的な参照表を表13に示す。表中の第1列では、S.aureus特異的標的配列の検出結果が与えられる。該第2列では、メチシリン耐性特異的標的配列の検出結果が与えられる。該第3列では、増幅されたS.aureus特異的標的およびメチシリン耐性標的に対するリアルタイムの反応曲線間の関係についての選択肢が示される。これらの選択肢は、任意に決定された閾値の値未満(すなわち、「(<)」)およびこれ以上(すなわち、「(≧)」)のΔCt値により示される。最初の2列における両方の標的配列が検査を受ける試料中に存在する場合、MSSA状態およびMRSA状態の判定はΔCt値、また、それが該閾値とどのような形で関係するかに依存する。参照表で示される通り、閾値の値未満のΔCt値は、MSSAに対しては陽性であり、MRSAに対しては陰性であると判定される。閾値の値を超えるΔCt値は、MSSAに対しては陰性であり、MRSAに対しては陽性であると判定される。
【0169】
適切な許容基準を用いる定性形式アッセイにおいて、S.aureus特異的標的核酸およびメチシリン耐性標的核酸の両方を陽性の状態で検出し、次いで、MRSA陰性であり、MSSA陽性であると判定する(すなわち、MSSAが2つの標的核酸配列の一方のみを保有する場合)のは、直観に反すると考えられる可能性がある。しかし、該解析手法は、臨床試料の解析との関連で上記に示した結果により裏付けられている。さらに、この手法により、MSSAおよびMR−CoNSによる重感染に起因するMRSA偽陽性結果の数が最小化されたことは有利である。
【0170】
【表13】

特に、任意に選択されたΔCtの閾値カットオフの数値(すなわち、図7Bにおいて−2分間に引かれた水平線により示される)は、MSSA判定およびMRSA判定の両方に対する%感受性および%特異性に影響を及ぼす。したがって、(1つまたは複数の)ΔCt閾値カットオフに用いられる値を調整して、これらのパラメータに望ましいレベルを与えることができる。例えば、−2分間、−4分間、−6分間のいずれかまたはこれらの間の任意の値にΔCt閾値カットオフを設定し、%感受性および%特異性のアッセイパラメータを調整することができる。表13に見られる通り、これにより、閾値カットオフを用いて実験結果を解釈する手法の柔軟性が示される。
【0171】
前出の実施例において用いられた臨床試料コレクションは、極めて低レベルのMSSA菌が極めて高レベルのMR−CoNS細菌と混合される場合を含まなかった。上記で示した通り(図7A〜7Bもまた参照されたい)、前出の実施例で用いられた臨床試料は、比較的高レベルのMSSAおよび比較的低レベルのMR−CoNSを有するMSSAおよびMR−CoNSの混合物を優先する形で幾分偏っていると考えられた。にもかかわらず、前出の証拠および推論は、MRSAに対して陰性であるがMSSA(低レベルにおける)およびMR−CoNS(高レベルにおける)の混合物に対しては陽性である試料を同定することが可能であり、これらの試料が、MRSAを含む臨床試料を、MSSAおよびMR−CoNSの混合物を含む臨床試料から区別する上限を指摘するのに有用であることを示唆した。図8は、臨床試料中におけるMRSA細菌およびMSSA菌を同定するΔCt範囲が、どのような形で上限および下限のカットオフにより定められるのかを図式的に示している。より具体的に述べると、2つの閾値間にあるΔCt値は、MRSA判定を示すかまたはこれと符合する。これに対し、2つの閾値により画定される範囲の外にあるΔCt値ならば、MRSAを含まなかったかまたはMRSAを極めて小さな比率で含んだ感染を示すかまたはこれと関連するであろう。これらの場合をMRSA陰性として指摘した。本明細書に示す証拠に基づくなら、示されたΔCt範囲内にあるΔCt値は、MR−CoNSおよびMSSAの混合物による感染ではなく、臨床的なMRSA感染と関連する可能性が実質的により高かった。したがって、診断法または診断アッセイとの関連において、上限閾値カットオフ値と下限閾値カットオフ値との間の範囲内にあるΔCt値を、MRSA陽性結果として指摘または「判定」した。該ΔCt範囲の外にある任意のΔCt値を、MRSA陰性として指摘または「判定」した。下限のカットオフより下方にある任意のΔCt値を、MSSA陽性として指摘または「判定」した。このアルゴリズムにより、すぐれた結果が達成された。
【0172】
実施例6は、臨床試料の広範なコレクションに対する検査に由来する結果を示し、上限および下限のカットオフ値を確立する値が、MRSAおよびMSSAの同定のための範囲を指摘することを裏付ける。
【0173】
(実施例6)
臨床試料の広範な検査によりΔCt範囲の有用性が裏付けられる
387例の臨床鼻腔スワブ試料を処理して、核酸検査および標準的な微生物学的検査のためのアリコートを供給した。より具体的に述べると、まず試料スワブを10mMトリス(pH8.0)および1mM EDTAからなる試料緩衝液のアリコートと組み合わせ、次いで、ボルテックスして付着物質を放出させた。後続の核酸検査のために液相を単離した後、スワブにより寒天プレートのコレクション上に画線を引いて、これにより、S.aureus、MRSA、およびコアグラーゼ陰性Staphylococcusを同定した。この微生物学的検査に由来する結果を用いて、該臨床試料を、(1)MR−CoNSのみ、(2)MRSAおよびMR−CoNSの混合物、(3)MRSAのみ、(4)MSSA、(5)MSSAおよびMR−CoNSによる重感染、ならびに(6)陰性試料の6つの類型の1つであると判定した。
【0174】
核酸の増幅およびモニタリングの手順は、基本的に上記の通りに実行した。S.aureus特異的標的配列、メチシリン耐性マーカー、および内部対照の捕捉、増幅、および検出に用いられるオリゴヌクレオチドは、配列番号5のmecAプライマーに対する配列番号9のプライマーによる置換を除き、実施例1の下で説明した通りであった。前段で説明した液相のアリコートを用いてゲノムDNAを単離し、in vitroにおける核酸増幅反応のための鋳型供給源として用いた。基本的に前記で説明した通り、多重増幅反応で共増幅された3つの解析対象の各々に対する許容基準もまた、良好な増幅結果を確認するのに用いた。
【0175】
図9は、類別された臨床試料に対する核酸検査に由来する結果を示す。水平軸は、微生物学的検査により同定される臨床試料の異なる群を示す。垂直軸は、+5〜−5に広がるΔCt値を示す。図中におけるデータ点として現れるには、S.aureus標的配列およびメチシリン耐性マーカーのいずれもが、共増幅反応において増幅されていなければならない。下限閾値カットオフ値は、約−1.4分間に引かれた水平線として示される。この線の位置は、核酸検査結果と、微生物学的判定に由来する結果との間における一致を最大化するように選択した。上限閾値カットオフ値は、約+0.4分間に引かれた水平線として示される。下限閾値カットオフ値から上限閾値カットオフ値へと広がる範囲により、臨床試料がMRSAを含有することを確立、指摘、または「判定」するのに有用なΔCt範囲が指摘された。より具体的に述べると、上限閾値カットオフ値と下限閾値カットオフ値との間にあるΔCt値を与える形で、S.aureus標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するための鋳型として用いられうるゲノムDNAをもたらす臨床試料ならば、MRSAを含有するものとして同定、指摘、または「判定」されるであろう。上限閾値カットオフ値と下限閾値カットオフ値との間の範囲の外にあるΔCt値を与える形で、S.aureus標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するための鋳型として用いられうるゲノムDNAをもたらす臨床試料ならば、MRSAを含有するものとしては同定されないであろう。代わって、特に、ΔCt値が、下限閾値カットオフ値の下方の、MSSAの相対レベルが高いと予測されるプロット領域(図8を参照されたい)にあった場合、これらの試験は、MSSAを含有するものとして同定されるであろう。図9を検討すると、MSSAおよびMR−CoNSの混合物を表わす臨床試料により、MRSAを同定するΔCt範囲内にある一部のデータ点が与えられたことが明らかとなるが、共増幅反応におけるS.aureus標的配列およびメチシリン耐性マーカー両方の存在を定性的に検出することのみによりMRSAの存在を判定した代替的な手順と比べて、偽陽性MRSA判定の数を減少させる点で、ΔCt範囲の使用は有利であったことを理解されたい。この前者の方法が用いられたとすると、図7A〜7Bおよび9に示されるすべてのデータ点はMRSAであると判定されるであろうし、これは明らかに不正確である。
【0176】
最後に、図9におけるデータ点の分布により、臨床試料の一部が、予測外の反応速度(すなわち、ΔCt)プロファイルをもたらすことが示される。例えば、「MR−CoNSのみ」であるものとして分類された63例の臨床試料のうち、それらの試料の少数が、MRSA判定のためのΔCt範囲の外に位置し、また、上限閾値カットオフ値の上方に位置するΔCt値を最終的にもたらした。図8に図式的に示した通り、該プロットの上方部分は、極めて低レベルのMSSA(すなわち、S.aureus標的配列の供給源)と組み合わされた、極めて高レベルのMR−CoNS(すなわち、メチシリン耐性マーカー配列の供給源)に対する共増幅が予測される。図9の「MR−CoNSのみ」の類型内のデータ点を最終的にもたらす試料中におけるMSSAレベルは極めて低かったため、微生物学的検査によって検出されなかった可能性がある。同様に、微生物学的検査により「MSSA」として同定された試料は、実際に含有するMR−CoNSが極めて低レベルであったためこれらは看過されたが、核酸増幅アッセイでは検出された可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S.aureus特異的標的配列をコードする核酸配列を増幅するための組成物であって、
配列番号1からなる標的相補的塩基配列を有する第1のオリゴヌクレオチドと、
前記S.aureus特異的標的配列に対して相補的でない5’配列を場合によって含む、配列番号4からなる標的相補的塩基配列を有する最長60塩基までの長さの第2のオリゴヌクレオチドと
を含む組成物。
【請求項2】
前記第1および第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方のみが、鋳型依存性DNAポリメラーゼにより伸長しうる3’端を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
検出可能に標識されているハイブリダイゼーションプローブをさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
メチシリン耐性をコードする核酸配列を増幅するための組成物であって、
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群から選択される標的相補的塩基配列を有する第1のオリゴヌクレオチドと、
メチシリン耐性をコードする前記核酸配列に対して相補的でない5’配列を場合によって含む、配列番号13からなる標的相補的塩基配列を有する第2のオリゴヌクレオチドと
を含む組成物。
【請求項5】
前記第1および第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方のみが、鋳型依存性DNAポリメラーゼにより伸長しうる3’端を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
検出可能に標識されているハイブリダイゼーションプローブをさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
2つの増幅配列の存在によりMRSAを同定する核酸共増幅アッセイにおける偽陽性MRSA判定の発生率を低減する方法であって、
(a)MRSAの存在について試験される臨床試料からゲノムDNAを取得するステップであり、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされるステップと、
(b)ステップ(a)で取得された前記ゲノムDNAを鋳型として用いて実施されるin vitroの核酸増幅反応で、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップと、
(c)ステップ(b)で共増幅された前記S.aureus特異的標的配列および前記メチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップと、
(d)ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップと、
(e)ステップ(d)で計算された前記数値を、MRSAを同定する閾値基準と比較するステップであり、MSSA菌およびMR−CoNS細菌の混合物は含むがMRSA細菌は含まない臨床試料を示す数値の部分集合を、前記閾値基準により除外するステップと、
(f)前記閾値基準が満たされる場合に限り前記臨床試料中にMRSAが存在することを判定するステップであり、これにより、偽陽性MRSA判定の発生率が低下するステップと
を含む方法。
【請求項8】
ステップ(d)で計算される前記数値が、上限閾値カットオフ値から下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)で計算される前記数値が、ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ΔCtの数値が、経験的に決定される上限閾値カットオフ値から経験的に決定される下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含み、
ステップ(d)の前記ΔCtの数値が、S.aureus特異的標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標から、mecA標的配列に対して決定された時間依存的な増幅指標を減じることにより計算され、
前記ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記臨床試料が鼻腔スワブ試料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記S.aureus特異的標的配列が、S.aureus特異的リボソーム核酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
臨床試料がメチシリン感受性S.aureus細菌を含有することを確立する方法であって、
(a)前記臨床試料から核酸を取得するステップと、
(b)ステップ(a)で取得された核酸を鋳型として用いて実施される、in vitroの核酸増幅反応で、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性特異的標的配列を共増幅するステップであり、
前記標的配列の各々がステップ(a)で取得された核酸の中に含まれ、
前記標的配列の両方についての増幅産物が、前記in vitroの核酸増幅反応で生成および検出されるステップと、
(c)ステップ(b)で共増幅された前記S.aureus特異的標的配列および前記メチシリン耐性特異的標的配列についての時間依存的な増幅指標を決定するステップと、
(d)ステップ(c)で決定された、前記時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップと、
(e)ステップ(d)で計算された前記数値が、
(i)メチシリン耐性S.aureus細菌から取得される核酸の共増幅反応速度と、
(ii)メチシリン感受性S.aureus細菌およびメチシリン耐性コアグラーゼ陰性細菌の混合物から取得される核酸の共増幅反応速度と
を区別する閾値基準を満たす場合に、前記生物学的試料がメチシリン感受性S.aureus細菌を含有することを確立するステップと
を含む方法。
【請求項17】
前記臨床試料が鼻腔スワブ試料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記メチシリン耐性特異的標的配列がmecA標的配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(e)の前記閾値基準が、ステップ(d)で計算された前記数値の、経験的に決定された下限閾値カットオフ値との比較、および経験的に決定された上限閾値カットオフ値との比較を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(d)で計算される前記数値が、ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さいこと、または前記ΔCtの数値が経験的に決定された上限閾値カットオフ値よりも大きいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記S.aureus特異的標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標から、前記mecA標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標を減じることによりステップ(d)の前記ΔCtの数値が計算され、
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が経験的に決定された閾値カットオフ値よりも小さいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記S.aureus特異的標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標から、前記mecA標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標を減じることによりステップ(d)の前記ΔCtの数値が計算され、
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、
請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記取得するステップが、ゲノムDNAを取得することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)における前記in vitroの核酸増幅反応が逆転写酵素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記S.aureus特異的標的配列が、S.aureusリボソーム核酸配列である、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記決定するステップが、単位複製配列の生成を示す検出可能なシグナルの所定レベルに到達する時間を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記メチシリン耐性特異的標的配列が、mecA標的配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(d)で計算される前記数値が、ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(e)の前記閾値基準が、ステップ(d)の前記ΔCtの数値の、経験的に決定された下限閾値カットオフ値との比較、および経験的に決定された上限閾値カットオフ値との比較を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さいこと、または前記ΔCtの数値が経験的に決定された上限閾値カットオフ値よりも大きいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記S.aureus特異的標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標から、前記mecA標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標を減じることによりステップ(d)の前記ΔCtの数値が計算され、
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が経験的に決定された閾値カットオフ値よりも小さいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、
請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記S.aureus特異的標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標から、前記mecA標的配列に対して決定された前記時間依存的な増幅指標を減じることによりステップ(d)の前記ΔCtの数値が計算され、
メチシリン感受性S.aureus細菌の存在を確立するために、前記ΔCtの数値が、経験的に決定された閾値カットオフ値よりも大きいことを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、
請求項29に記載の方法。
【請求項34】
臨床試料がメチシリン耐性S.aureus(MRSA)細菌を含有することを、制御可能な偽陽性判定発生率で示す方法であって、
(a)前記臨床試料からゲノムDNAを取得するステップであり、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされるステップと、
(b)ステップ(a)で取得された前記ゲノムDNAを鋳型として用いて実施されるin vitroの核酸増幅反応で、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップと、
(c)ステップ(b)で共増幅された前記S.aureus特異的標的配列および前記メチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップと、
(d)ステップ(c)で決定された、前記時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップと、
(e)MRSAから取得された核酸の増幅を、MSSA細菌およびMR−CoNS細菌の混合物から取得された核酸の増幅から区別する閾値基準を、ステップ(d)で計算された前記数値が満たす場合に、前記臨床試料がMRSAを含有することを示すステップであり、これにより、前記S.aureus特異的標的配列および前記メチシリン耐性マーカーの両方の存在を定性的に検出することによりMRSAの存在を判定する方法と比較して、臨床試料中におけるMSSAおよびMR−CoNSの混合物からもたらされる偽陽性MRSA判定が低減されるステップと
を含む方法。
【請求項35】
ステップ(d)で計算される前記数値が、経験的に決定される上限閾値カットオフ値から、経験的に決定される下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(d)で計算される前記数値が、ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記前記ΔCtの数値が、経験的に決定される上限閾値カットオフ値から、経験的に決定される下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記臨床試料が鼻腔スワブ試料を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記S.aureus特異的標的配列が、リボソーム核酸配列を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
臨床試料が、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)細菌を含有するか、メチシリン感受性S.aureus(MSSA)細菌およびメチシリン耐性コアグラーゼ陰性Staphylococcus(MR−CoNS)細菌の混合物を含有するか確立する方法であって、
(a)前記臨床試料からゲノムDNAを取得するステップであり、この結果、S.aureus核酸およびメチシリン耐性をコードする核酸の混合物がもたらされるステップと、
(b)ステップ(a)で取得された前記ゲノムDNAを鋳型として用いて実施されるin vitroの核酸増幅反応で、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップと、
(c)ステップ(b)で共増幅された前記S.aureus特異的標的配列および前記メチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップと、
(d)ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップと、
(e)以下の相互に排他的な条件、
(i)MRSA細菌から取得される核酸の共増幅反応速度と、MSSA細菌およびMR−CoNS細菌の混合物から取得される核酸の共増幅反応速度とを区別する閾値基準を、ステップ(d)で計算された前記数値が満たす場合に、前記臨床試料はMRSAを含有すること、または
(ii)ステップ(d)で計算された前記数値が前記閾値基準を満たさない場合、前記臨床試料は、MR−CoNSと混合されたMSSAを含有し、MRSAを含有しないこと
のいずれが存在するかを確立するステップと
を含む方法。
【請求項43】
前記数値が、経験的に決定される上限閾値カットオフ値から、経験的に決定される下限閾値カットオフ値にわたる範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(d)で計算される前記数値が、ステップ(c)で決定された前記時間依存的な増幅指標の間の差として計算されるΔCtの数値である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ΔCtの数値が、経験的に決定される上限閾値カットオフ値から、経験的に決定される下限閾値カットオフ値にわたるΔCt範囲内にあることを、ステップ(e)の前記閾値基準が必要とする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(d)で計算される前記ΔCtの数値が前記経験的に決定された下限閾値カットオフ値よりも小さく、これにより、MR−CoNS細菌を超える量でMSSA細菌が存在するMSSA細菌およびMR−CoNS細菌の混合物を前記臨床試料が含有することを示す、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記臨床試料が鼻腔スワブ試料を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記メチシリン耐性マーカーがmecA標的配列を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記S.aureus特異的標的配列が、リボソーム核酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
臨床検査試料中におけるMRSA細菌の存在と符合する反応速度プロファイルを同定するリアルタイム核酸共増幅アッセイで、感度および特異性のパラメータを設定する方法であって、
(a)MRSA細菌を含むことが既知である臨床試料コレクションと、MSSA細菌およびMR−CoNS細菌は含むがMRSA細菌は含まないことが既知である臨床試料コレクションとを取得するステップと、
(b)ステップ(a)における前記臨床試料コレクションの中における各試料からゲノムDNAを単離するステップであり、この結果、MRSAを含む細菌から単離されたゲノムDNA試料のコレクションと、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない細菌から単離されたゲノムDNA試料のコレクションとがもたらされるステップと、
(c)ステップ(b)からの前記単離されたゲノムDNA試料の各々についての個別の核酸増幅反応で、S.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーを共増幅するステップと、
(d)ステップ(c)の前記核酸増幅反応で共増幅されたS.aureus特異的標的配列およびメチシリン耐性マーカーに対して、時間依存的な増幅指標を決定するステップと、
(e)ステップ(c)の前記核酸増幅反応の各々について、ステップ(d)で決定された前記時間依存的な増幅指標両方の関数である数値を計算するステップであり、この結果、MRSAを含む試料についての数値コレクションと、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての数値コレクションとがもたらされるステップと、
(f)前記臨床検査試料中におけるMRSA細菌の存在と符合する反応速度プロファイルを同定するのに必要とされる、ステップ(e)で計算された前記数値に対する閾値基準を選択するステップであり、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての前記数値コレクションの中における値の部分集合を前記閾値基準により除外し、これにより、前記リアルタイム核酸共増幅アッセイで、感度および特異性のパラメータを設定するステップと
を含む方法。
【請求項52】
前記閾値基準により除外される前記値の部分集合が、MSSAおよびMR−CoNSは含むがMRSAは含まない試料についての前記数値コレクションの中における最高値および最低値を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(f)で選択された前記閾値基準を変更し、これにより、前記リアルタイム核酸共増幅アッセイの感度および特異性のパラメータを改変するステップ(g)をさらに含む、請求項51に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−507531(P2011−507531A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539916(P2010−539916)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087859
【国際公開番号】WO2009/086218
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500506530)ジェン−プロウブ インコーポレイテッド (58)
【Fターム(参考)】