説明

抗菌性の歯の印象材

この発明は自己殺菌性プラスチックに関する。本発明は特にポリエーテル又はシリコーンベースの歯科プラスチック及び殺菌性材料が組み込まれる印象材に関する。本発明の歯の印象材は少なくとも重合可能なベースペーストBP及び非水溶性のペーストCPを含み、ベースペーストBPは、約0.001〜約10重量%の水安定抗菌剤を含む。好適な抗菌剤は、ヘキチジン、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、クロルヘキシジン及びその派生物(CHX)ならびにトリクロサンからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己殺菌性を有する抗菌性の歯の印象材に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明は自己殺菌性を有するプラスチックに関する。本発明は、殺菌性材料が組み込まれたポリエーテル又はシリコーンベースの歯科用プラスチック及び印象材に特に関する。
【0003】
消毒は、歯科業及び歯科工学の実験室において恒久的に必要とされる。装置、工具又は材料を介して汚染された手袋又はさらに素手からヒトへの、ばい菌の感染リスクは、患者、歯科医又は歯科技工士及び助手に存在する。特に日常の処置では、患者は汚染された物品又は対象と接触し、そして、開いた傷口を通じて微生物が血流に入ることになる。処置中、例えば印象材を混合する際に、汚染された手袋を使用すること、及び放射硬化可能な充填材の光重合のための汚染された光導体を使用すること、の結果、感染リスクが増加する可能性がある。衛生規定が非常に厳しいにもかかわらず、汚染に対する絶対的に信頼性の高い保護は保証されることができない。
【0004】
歯の印象の主な機能は、レプリカを作製することにある。しかしながら、レプリカをとる間、歯の印象は、口腔環境に接触し、口内微生物、例えばバクテリア、酵母及びウイルスによって汚染される[ソフォウら(Sofou et al.)(2002)クラン・オーラル・インベスト(Clin Oral Invest)6:161−165、アルーオマリら(Al-Omari et al.)(1998)Eur J Prosthodont Rest Dent 6:97−101、サマラナヤカら(Samaranayake et al.)(1991)J Prosthet Dent 65:244−249、パウエルら(Powell et al.)(1990)J Prosthet Dent 64:235−237]。
【0005】
患者の健康のための義務ではあるが、患者との接触の前か後に歯科材料を消毒することも、単調な処置であり、歯科医の業務における人的資源のムダに結果としてなる。一般に、消毒のステップは、患者の口内の処置される部位と歯科材料とのあらゆる接触の前後で実行され、繰返しの工程にかなりの時間が費やされている。
【0006】
歯の印象の汚染除去は、多くの場合、流水によって印象を濯ぐことから始まる。その後、印象は、一般的に化学的に消毒される。残念なことに、レプリカの精度は、長期間に渡って化学薬品の消毒剤に曝すことによってしばしば損なわれる(comprised)[バーグマン(Bergman)(1989)Int J Prosthodont 2:537〜542、ウトジンガー(Utzinger)(1986)スイス デント7:17〜27、ローズら(Rhodes et al.)ADA、シカゴ・イリノイ]。正確な印象をとるときに、これは問題となり得る。
【0007】
したがって、化学的に消毒される必要のない印象材を提供することが試みられてきた。フラナガンら(Flanagan et al)(1998、デントメーター(Dent Mater)14:399〜404)は、バクテリア及び酵母に対して抗菌効果を示す抗菌性システムとして、四級アンモニウム化合物又はクロルヘキシジンのいずれかを有する抗菌性アルギナート印象材を記載する。しかし、この方法は、一般に水性のシステムに制限される。さらに、これらのシステムは、正確な印象採取に適していないことが多い。
【0008】
抗菌性物質を非水溶ベースの印象材に組み込むことも有利であり得る。印象採取直後に注入されなければならない水性の印象材とは対照的に、非水溶性の印象材は長期間貯蔵可能であり、それは有益である。
【0009】
複数の構成成分の印象材における抗菌剤の使用に起因し得るさらなる問題は、一般に抗菌剤は、しばしば保管の際に重合する傾向を示す反応性の物質と共に貯蔵されるという事実である。したがって、抗菌剤は、複数の構成成分の印象材の貯蔵安定性に、必要以上に悪影響を及ぼさないことが、重要である。
【0010】
印象採取において、トレー充填と同様に、準備の整った単数又は複数の歯に注入するための充分な時間があることは、時には重要である。この間、印象材は粘着性のままである。歯科医は頻繁に印象材を変えないので、抗菌剤を含む複数の構成成分の印象材が、作業時間を大幅に変更しないのであれば有利であり得る。
【0011】
米国特許第6,495,613号は、プラスチックへの微生物の付着を減らすためのアプローチを記載する。歯のプラスチック及び印象材に殺菌性の材料が組み込まれ、微生物に対する表面の粘着性が減少することが記載されている。しかしながら抗菌剤の量についての記載は無い。この文献は、また、抗菌剤の添加によって、及び貯蔵安定性に関して補正される凝固時間の問題に関しては記載されていない。
【0012】
米国特許第5,733,949号には、以下の重合可能なモノマーである、抗菌性モノマー、少なくとも1つの酸性基を含むモノマー、並びに水及び重合触媒との組合わせ、少なくとも1つのアルコールヒドロキシ基を含むモノマーから成る、歯への使用のための抗菌性接着剤組成物が記載されている。
【0013】
欧州特許公開第1 563 823 A2号には、触媒を有するアルコキシシラン官能ポリエーテルをベースとした歯科材料が記載されている。抗菌剤の一般的な使用については言及されているが、重合工程及び凝固時間に対する、抗菌剤の量と影響への指示は無い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、流水での簡単な濯ぎによりたやすく除染されることができる正確な印象をとることに適し、自己殺菌性の無い材料に比較して治癒性を有し、その治癒性を失うこと無く長期間にわたって貯蔵可能な無水印象材を有することが望ましい。
【0015】
さらに、歯の施術者から患者又は患者から歯の施術者への微生物の転移を防ぐために、抗菌性物質を含む印象材を有するのが好ましい。また、この材料は、歯の処置の間、患者の口腔から血流への微生物の転移を防ぐために適切である。総合すると、この材料は印象の取得に対して歯科医院及び歯科研究室の衛生性を高めるために非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の態様は、少なくとも重合可能なベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPを含む歯の印象材であって、前記ベースペーストBPは、約0.001重量%〜約10重量%の水安定抗菌剤を含み、前記触媒構成成分は前記ベース構成成分を重合させるための触媒を含み、前記抗菌剤は、構成成分BP及びCPを混合した後に、重合の開始まで測定される時間が約2倍より長くならない印象材に関する。
【0017】
このような組成物は、歯の専門家が材料の除染を確実にするために、流水の下で印象材を簡単に濯ぐことを可能にする。これは、歯の治療における消毒ステップの必要性をなくし、それにより、時間節約し、これまでの消毒についての情報を欠いている場合が多い、デンタルラボの不確実性を減らす。また、これはすぐさま注がれる必要がなく、長期間貯蔵可能な抗菌性の印象を、歯科医及びラボに提供する。
【0018】
さらに、このような抗菌性の印象は、基本的に患者の口腔にほとんど又は全く微生物汚染をもたらさず、それにより、有害な微生物がデンタルオフィスの患者にもたらされるリスクを最小にする効果がある。口腔の傷が生じる治療処置の間に、印象採取されることが多い。したがって、抗菌性の印象材は、口腔に存在している、又はデンタルスタッフによって患者に運ばれる微生物による、患者の血液の汚染を防ぎ得る。
【0019】
本発明の更なる態様では、歯の印象材において、ベースペーストBPが、ポリエーテル部分を含む少なくとも1つの化合物、又はシロキサン部分を含む少なくとも1つの化合物、又は両者を含む化合物、又はポリエーテル部分及びシロキサン部分を含む少なくとも1つの化合物を含む。
【0020】
本発明の歯の印象材において、ベースペーストBPは、少なくとも1つの重付加品又は、平均して2以上のアジリジノ基を有する少なくとも1つの重縮合品、及び、少なくとも約500の分子量又は1つの分子につき、少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する少なくとも1つの有機ポリシロキサンA1を含む場合、有利であり得る。
【0021】
本発明の歯の印象材が、以下のものを含むと有利であり得る:
(A)ベース又は触媒ペースト又はその両方内において1つの分子につき少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する、少なくとも1つの有機ポリシロキサン類A1、
(B)ベースペースト内において1つの分子につき少なくとも3つのSiH基を有する、有機水素ポリシロキサン類、
(C)任意選択的に、ベースペースト又は触媒ペースト上又は両方において反応基を有さない、有機ポリシロキサン類、
(D)触媒ペースト内においてAと、Bとの間の反応を促進するための触媒、
(E)任意選択的に、ベースペースト又は、触媒ペースト又は両方における親水化剤、
(F)ベースペースト又は、触媒ペースト又は両方における充填剤、
(G)任意選択的に、ベースペースト又は触媒ペースト、又は両方における従来の歯科用添加剤、アジュバント、可塑剤及び着色剤、
(H)任意選択的に、1つの分子につき少なくとも2つのアルケニル基を有する少なくとも1つのシラン、及び/又は1つの分子内の少なくとも1つの不飽和炭化水素を含むポリエーテル。
【0022】
本発明は、殺菌性及び/又は抗菌性を有する印象材の組成物を提供する。本発明の実施形態における抗菌剤は、特に、有機抗菌剤、該有機抗菌剤を含むハロゲン、カチオン界面活性剤、単価フェノール及び多価フェノール、抗菌ペプチド、バクテリオシン、抗生物質、アルデヒドp−ヒドロキシベンゾアート又はパラベン類、ラウリシジン、酵素、タンパク質、フッ化物、EDTA又は抗菌物質性質を有する天然油をから成るアミノ基を含む非水溶性のエラストマー歯科用材料と重合可能な全ての抗菌化合物剤であり得る。
【0023】
本発明は更に、少なくとも重合可能なベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPを有し、構成成分BP及びCPは、本発明の歯科材料を含む容器及び混合装置から互いに分離して存在する少なくとも1つの組成物を含む、歯の印象材を作製するためのキットに関する。
【0024】
本発明は動物又はヒトの口腔から印象を取るための歯の印象材の使用、及び歯の印象材の調製方法も提供し、ベースペーストBPは、約0.001重量%〜約10重量%の水安定抗菌剤と重合可能な化合物を混合して調製され、触媒ペーストCPは、一つ以上の補助の化合物と前記ベース構成成分を重合させるための触媒とを混合することによって調製され、抗菌剤は、構成成分BP及びCPを混合した後に、重合の開始まで測定される時間が約2倍より増えないことが開示されている。
【0025】
本発明の別の態様は、本発明の歯の印象材であるベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPが、硬化可能な混合物を形成するために混合され、その硬化可能な混合物は、形成されて撤去される印象が本質的に阻害されずに確実に硬化されるまで、口腔内で留置されることを特徴とする、動物又はヒトの口腔から印象を採取する方法である。
【0026】
本発明によれば、水は、構成成分が本発明の印象材による印象の製造において必要ではない。
【0027】
本発明の意味の範囲内で「非水溶」という用語は、硬化後にエラストマーを構築するためにベースペーストと混合される触媒ペーストのための基本的な構成成分として水を使用しないと理解される。したがって、触媒ペースト及び好ましくはベースペーストも、実質的に無水である。しかしながら、単数又は複数の非水溶性ペーストは、組成物のいくつかの構成成分が充填剤若しくは軟化剤のように含み得る微量の水のため、又は僅かな量で使用される構成成分の結晶水のため、不可避の微量の水を含み得る。これらの微量の水は、それぞれのペーストの組成物全体に対して、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、又は約0.1重量%以下、又はさらに0.05重量%以下の量まで添加され得る。
【0028】
抗菌剤は、抗菌剤が劣化又は分解する場合、水に溶解する又は他の活性抗菌剤、特に有効な酸素又は塩素のような低い分子反応の生成物を生じる水と接触される際、本発明の意味の範囲内で「水安定」として分類される。イオンを生じる又は結晶の無い水を凝固する、水中における塩の溶解は、水不安定性であるとは考えられない。
【0029】
現在使用されている市販の非水溶印象材は、例えば、ヒドロシリル化による硬化メカニズムを使用するVPS印象材、及び硬化メカニズムとしてアジリジンの開環重合を使用するポリエーテル印象材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、自己殺菌性を有する歯の印象材を特徴とする。一般に、該材料は、微生物との接触後、例えば印象材を扱った後、印象摂取前後、又は患者の口から印象材を除去した後に、消毒する必要がない。本発明に記載の材料は、基本的に微生物を含まない材料を得るために、水で濯がれるだけでよい場合が多い。特に印象材を扱う者にとって、印象材を患者の口に導入する前、又は患者の口から印象材を除去した後に消毒の必要がなく、水で濯ぐことで充分であることは、最も好都合である。開いた傷口を有する部位、例えば、インプラントの場合に使用されることの多い印象材は基本的に細菌が無く、従って感染の危険が減るため、患者も本発明の材料から利益を得ることができる。
【0031】
本発明の材料はまた、該材料により採取される印象の精度が増すという利益も得ることができることが予想される。通常、消毒ステップが必要ではないので、取り出された印象の部位の、空間的表象の変形の危険性が減る。
【0032】
一般に、全ての生理学的に許容可能な抗菌剤が、本発明によって使用されることができる。しかしながら、抗菌剤は、可能であるならば、必要以上に重合工程を変えてはならならない、特に印象材の硬化特性に関して、又は硬化した印象材の材料特性に関して、又は貯蔵安定性に関して、又はこれらの特徴のうちの2つ以上に関して、許容可能な以上に重合工程を変えてはならならない。
【0033】
したがって、本発明の1つの実施形態では、抗菌剤は、有機抗菌剤、有機抗菌剤を含むハロゲン、カチオン界面活性剤、モノフェノール及び多価フェノール、抗菌ペプチド、バクテリオシン、抗生物質、アルデヒドp−ヒドロキシベンゾアート又はパラベン類、ラウリシジン、酵素、タンパク質、フッ化物、EDTA又は前記ベースペーストBPの抗菌物質性質を有する天然油を含むアミノ基からなる群から選択される。
【0034】
特に、以下のような非酸性構成成分が有用である。
【0035】
【表1】

【0036】
さらに、添加剤又は相乗効果を発生させるために、抗菌性化合物の組合わせを使用することは、有利であり得る。クロルヘキシジン又はその誘導体の組合わせ及びアルデヒド(グルタラルダイド(glutaraldyde)、フタルデヒド)及びクロルヘキシジン又はその誘導体及びフェノール類又は酸の塩が特に好ましい。それは、また、クロルヘキシジンの酸性の付加物又はその誘導体、例えばアセテート、塩化物、硝酸塩、硫酸塩又は炭素塩を使用するのが好ましい。
【0037】
クロルヘキシジン及びその誘導体(以下、CHXと称する)は、水性の溶液(例えばCHXジグルコン酸塩の20%の水溶液、CAS 18472−51−0)、又は純粋な化合物として、又は塩として市販されている。非水ベースの印象材に対する添加剤として、純粋な化合物(CAS 55−56−1)及びCHXジアセテート一水和物(CAS 56−95−1)又はCHX二塩化水素化物(CAS 3697−42−5)のようなCHX塩が好ましい。
【0038】
試験される様々な組合わせの中で、ポリエーテル材料に対するCHXの添加は、特に効果的であり得る。CHXも、その周知の及び証明された、口の連鎖球菌及び乳酸桿菌を含むグラム陽性及びグラム陰性微生物に対する抗菌作用により、添加剤として特に適していると考えられる。CHXは、マイコバクテリウムのための静菌剤である。CHXも、カンジダアルビカンスを含む酵母類、及びHIV、HBV、HCV、インフルエンザ及びヘルペスウイルスを含むウイルスに対して活性である。CHXの更なるの利点は、その低い毒性にある。
【0039】
他の抗菌性化合物は、特にそれが微生物、例えばマイコバクテリアなどの、特定のクラスに対して活性を高めることが望ましい場合、印象材に添加されてもよい。ここで、特にアルデヒド又はフェニル含有化合物を添加することは有利であり得る。これらの化合物は、マイコバクテリアに対して特に活性であることは既知である。
【0040】
本発明の歯科材料は、少なくとも硬化可能なベースペーストBP及びベースペーストの材料の少なくとも一部を硬化させるための触媒を含む触媒ペーストを含んだ、複数の構成成分の材料である。それは、抗菌剤が時間によって構成成分BP及びCPを結合した後の重合反応の終わりまでの測定された時間を約2倍より多く増加しない場合、さらに有利であると判明した。抗菌剤が、構成成分BP及びCPを混合した後の、重合反応が始まるまでの測定された時間を約2倍より多く増加しないことが有利であると判明した。それは、構成成分BP及びCPを混合した後の重合の開始までの測定された時間が、抗菌剤によって約0.5〜約1.7倍、特に、約0.7〜約1.3倍、又は、約0.8〜約1.2倍に変化する場合、好ましい。
【0041】
それは、抗菌剤が、構成成分BP及びCPを混合した後の、重合反応の終わりまでの測定される時間が、約2倍以上増加しない場合に、さらに有利であると判明した。それは、構成成分BP及びCPを混合した後の、重合反応の終わりまでの測定された時間が、抗菌剤によって約0.5〜約1.7倍に、特に約0.7〜約1.3倍、または約0.8〜約1.5倍に変化する場合、好ましい。
【0042】
少なくとも多くの抗菌剤は、一般にベースペーストBPに存在する。触媒ペーストCPが基本的に抗菌剤を含まない場合、それは有利であり得る。本発明の印象材の抗菌剤の量は、約0.001〜約10重量%である。抗菌剤の量が、約0.05〜約10重量%、約0.05〜約6重量%、又は約0.05〜約5重量%の範囲である場合、それは有利であり得る。好ましくは、この全体量の少なくとも約80%がベースペーストBPに存在する。最も好ましいこの値は、約90%超、例えば約95%、約99%又はさらに約100%である。
【0043】
本発明によると、歯の印象材は、一般にあらゆる多くのタイプの化合物を含むことができ、印象をとる直前に混合される場合に、重合反応のためにゴム状の印象材の形成となる。一般に、重付加、開環重合及び重縮合は、好適なタイプの重合反応、重付加であり、開環重合は最も好適である。
【0044】
欧州特許公開第1 563 823 A2号にて説明されているように、縮合反応を経て橋架しているアルコキシ官能性ポリエーテルが、必ずしも含まれるというわけではない。
【0045】
本発明の材料は、好ましくは、少なくとも2つの構成成分BP及びCPを含み、構成成分BPはベースペーストと称され、構成成分CPは触媒ペーストと称される。本発明の材料は、通常、硬化した印象材を得るために異なる構成成分が混合されるが、別個に提供されて、適用直前に混合されるという意味の、複数の構成成分材料である。本発明の歯科材料は2つ以上、例えば3つ又は4つの構成成分を含んでもよいが、構成成分の数は通常2つ、すなわちBP及びCPである。
【0046】
歯科材料を準備する技術では化合物の多くの異なるタイプが知られており、典型的に、硬化メカニズムは、酸性触媒あるいは強酸の塩及び水が存在する場合に起こり得るアルコキシシリル基の重縮合反応、又は水のない触媒が存在するシラノール基によるアルコキシシリル基の重縮合反応、又は、開環重合、例えばアジリジン、又は、オレフィン不飽和二重結合を有するシランの重付加のいずれかに基づく。
【0047】
1つの実施形態において、ポリシロキサンは本発明の歯科材料の一部として使用される。硬化メカニズムは、シラン部分及びオレフィン不飽和二重結合の重付加反応である。
【0048】
したがって、本発明によれば、硬化可能な材料は、少なくとも1つの抗菌剤に加えて以下のものを含むことができる:
(A)1つの分子につき少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する、少なくとも1つの有機ポリシロキサン類A1、
(B)1つの分子につき少なくとも3つのSiH基を有する、有機水素ポリシロキサン類、
(C)任意に反応基を有さない、有機ポリシロキサン類、
(D)AとBとの間の反応を促進するための触媒、
(E)任意に親水化剤、
(F)充填剤、
(G)任意に従来の歯科用添加剤、アジュバント、可塑剤及び着色剤、
(H)任意に1つの分子につき少なくとも2つのアルケニル基を有する少なくとも1つのシラン。
【0049】
本発明の構成成分(A)は、一般に3つの有機基の少なくとも一つが、エチレン不飽和二重結合を有する基である少なくとも2つのペンダント又は末端トリオルガノシロキシ基を有する、有機ポリシロキサンを含む。一般に、エチレン性不飽和二重結合を有する基は、オルガノポリシロキサンの任意のモノマー単位に位置することが可能である。ただし、エチレン性不飽和二重結合を有する基は、オルガノポリシロキサンのポリマー鎖の末端のモノマー単位に又は少なくともその近くに位置していることが好ましい。別の好ましい実施形態では、エチレン性不飽和二重結合を有する基のうち少なくとも2つは、ポリマー鎖の末端のモノマー単位に位置している。
【0050】
本明細書を通して使用される「モノマー単位」という用語は、別段の明確な指定がない限り、ポリマー骨格を形成する、ポリマー中の反復構造要素に関する。
【0051】
この一般構造の好ましいオルガノポリシロキサン類は、次の式Iで表される:
【0052】
【化1】

【0053】
式中、ラジカルRは、互いに独立して、好ましくは脂肪族多重結合を含有しない、1〜6個のC原子を有する非置換の又は置換された一価の炭化水素基を表し、またnは、一般に、オルガノポリシロキサン類の粘度が約4〜約100,000mPas、又は約6〜約500,000mPasとなるように選択することができる。
【0054】
一般に、式中のラジカルRは、1〜6個の炭素原子を有するあらゆる非置換の又は置換された一価の炭化水素基をあらわすことができる。1〜6個の炭素原子を有する非置換の又は置換された一価の炭化水素基は、直鎖であるか、あるいは炭素原子数が2を超える場合は、分枝状又は環状であり得る。一般に、ラジカルRは、組成物の少なくともひとつの他の構成要素又は置換基を妨げず、また硬化反応を妨げない、あらゆる種類の置換基を有することができる。本明細書に関して使用するとき、「妨げる」という用語は、組成物の他の構成要素のうち少なくともひとつに存在するこのような置換基、又は硬化反応、あるいはこれら両方の、硬化した製品の特性にとって有害なあらゆる影響のことをいう。本明細書に関して使用するとき、「有害な」という用語は、それらの意図される用途における前駆体又は硬化した製品の実用性に悪影響を及ぼす、前駆体又は硬化した製品の特性の変化のことをいう。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態では、ラジカルRの少なくとも約50%がメチル基である。式(I)によるオルガノポリシロキサン類に存在し得る他のラジカルの例は、エチル、プ
ロピル、イソプロピル、n−ブチル、第3級ブチル、ペンチル異性体類、ヘキシル異性体類、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、2−及び3−n−ブテニル、ペンテニル異性体類、ヘキセニル異性体類、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのフッ素置換脂肪族ラジカル類、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基、シクロペンテニル基又はシクロヘキセニル基、あるいはフェニル基又は置換フェニル基などの芳香族基又はヘテロ芳香族基である。このような分子の例は、米国特許第4,035,453号に記載されており、その開示内容、特に前記分子、それらの化学構造、及びそれらの調製に関する後者の文書の開示内容は、明示的に、本明細書の開示内容の一部であるとみなされ、そして参照として本明細書に含まれる。
【0056】
上述した式Iの分子の調製は、当業者にとって一般的に既知である。対応する分子の調製は、例えば、「シリコン、化学及びテクノロジー(Silikone, Chemie und Technologie)」、Vulkan Verlag、エッセン、1989年、ページ23〜37のJ.バーグハート(J. Burghardt)「ポリシロキサンの化学とテクノロジー(Chemie und Technologie der Polysiloxane)」に記載されている標準的な手続きにより達成されることができる。
【0057】
その末端基がジメチルビニルシロキシ単位からなり、鎖における他のラジカルRがメチル基からなる、指定の粘度範囲を有する上記の構造の直鎖状ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0058】
上記の本発明による構成成分(A)は、少なくとも1つの成分A1を含む。それは、また、構成成分(A)は、2つの成分A1及びA2、又は、2つ以上、例えば3、4、5、6、7、8、9又は10の異なる成分、又は、n成分全体の第n番目の成分のためのAnまでA3、A4、A5、A6、A7、A8、A9及びA10と標識されるより多くの成分を含む本発明のコンテクストの範囲内である。
【0059】
構成成分(A)を構成する成分のうちの2つが存在する場合、それらの粘性は、例えば少なくとも2倍異なることができる。これは、構成成分(A)の成分として、異なるタイプの有機ポリシロキサンの本発明の材料において、少なくとも(A1)及び(A2)が異なる粘性を有し、(A2)の粘性の値が、好ましくは少なくとも同じタイプの粘性測定の粘性(A1)の値の二倍高いことを意味する。
【0060】
構成成分(A)の成分に関して本願明細書において使用する用語「成分」は、調製の後でそれらの多分散性に関する少なくともそれらの平均分子量が測定可能な程度に異なる有機ポリシロキサンに関する。したがって、本発明は、調製の方法がポリマー鎖長のモノモードの分散に結果としてなる条件で、異なる成分として選ばれた方法の達成された多分散性の範囲内で、ポリマーの1つのタイプの調製のための工程範囲内で得られる、異なる鎖長のポリマーを考慮に入れない。
【0061】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの成分(A)が約10〜約1000mPas、又は約50〜約500mPas、又は約100〜約300mPasの範囲の粘性を有する。本発明の別の実施形態において、成分(A)は、約500〜約45000mPas、例えば約1000〜約30000mPas又は約3000〜約15000mPasの粘性、好ましくは成分(A)は、約4000〜約10000mPas、例えば、約5000〜約9000mPas又は約6000〜約8000mPasの粘性を有する。
【0062】
粘性の測定の適切な方法は、ハーケ・ロトビスコ(Haake Rotovisco) RV20(スピンドルMV、計量カップNV)によって実行される。粘度は23℃で測定する。システムを稼動して調整した後、スピンドルMVを取り付ける。その後、測定される材料は、計量カップNVに充填される。遅滞なく、スピンドルを測定カップNVまで下げる。スピンドルは、最大で1mmの層によって覆われなければならない。この測定される材料は、23℃で20分間テンパリングされる。測定は機械を起動することによって始まり、粘度値(mPas)は測定の開始後、20秒記録される。計量カップNVのあらゆる回転又は動きを避けるために注意を払わなければならない。粘度値はmPasで得られる。上記測定法はDIN 53018−1に対応する。
【0063】
構成成分(B)は、好ましくは1つの分子につき少なくとも3つのSi結合した水素原子を有する、有機水素ポリシロキサンである。この有機水素ポリシロキサンは好ましくは、0.01〜1.7重量%のシリコン結合水素を含む。水素又は酸素原子で飽和しないシリコン原子価は、一価炭化水素ラジカルRで飽和されるが、エチレン不飽和結合が無い。
【0064】
炭化水素ラジカルは、エチレン不飽和結合を有するラジカルなしで、上記記載の通りラジカルRに相当する。本発明の好適な実施形態において、ケイ素原子に結合される構成成分Bにおける炭化水素ラジカルの少なくとも約50%、好ましくは約100%は、メチルラジカルである。このような構成成分も、構造及び調製に関して前述の文献に記載されている。
【0065】
適切な構成成分(C)は、例えばW.ノル(W. Noll)「シリコンの化学及びテクノロジー(Chemie and Technologie der Silikone)」Verlag Chemie Weinheim、1968年、212ffページに記載の反応性の置換基のない有機ポリシロキサンである。これらは、好ましくは、直鎖、分枝状、又は環状のオルガノポリシロキサン類であって、全てのケイ素原子は、酸素原子で包囲されているか、又は炭素原子数1〜18の、置換されているかもしくは非置換であり得る一価の炭化水素ラジカルで包囲されている。炭化水素ラジカルは、メチル、エチル、C2〜C10脂肪族化合物、トリフルオロプロピル基、ならびに芳香族C6〜C12ラジカルであり得る。構成成分(C)は薄型化、ゴムのネットワークを膨張することに貢献し、硬化した材料の可塑剤として作用することができる。
【0066】
トリメチルシロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサン類は、特に構成成分(C)として好ましい。本発明の材料において、構成成分(C)は好ましくは、約0〜40重量%、好ましくは約0〜20重量%、又は、約0.1〜10重量%の量が使用される。
【0067】
好ましくは構成成分(D)は、テトラメチルジビニルジシロキサンによる減少によってヘキサクロロプラチナ酸から調製され得るプラチナ複合体である。このような化合物類は、当業者に既知である。エチレン性不飽和二重結合を有するシラン類の更なる架橋を触媒作用又は促進する任意の他の白金化合物類も適している。例えば、米国特許第3,715,334号、米国特許第3,775,352号、及び米国特許第3,814,730号などに記載されているような白金−シロキサン錯体類が適している。白金錯体類及びこれらの調製に関するこれら特許の開示内容は、明白に記載されており、また本明細書の開示内容の一部と明示的にみなされる。
【0068】
このプラチナ触媒は好ましくは約0.00005〜約0.05重量%,特に約0.0002〜約0.04重量%の量で使用され、各々が成分のプラチナとして計算され、構成成分(A)〜(H)と共に存在する材料の全重量に関する。
【0069】
付加反応の反応性を制御するためと、早期の硬化を防止するために、特定の期間、付加反応を防止するか又は付加反応の速度を落とす阻害物質を添加することが有利である場合がある。このような阻害物質は既知であり、例えば米国特許第3,933,880号に記載されており、この開示は、このような阻害物質及びそれらの調製は、本発明の開示の一部であると明確にみなされる。このような阻害物質の例は、3−メチル−l−ブチン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサン−l−オール、3,5−ジメチル−l−ヘキシン−3−オール、及び3−メチル−l−ペンチン−3−オールなどのアセチレン性不飽和アルコール類である。ビニルシロキサンに基づく阻害物質の例は、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルシロキサン及びポリビニル基、オリゴビニル基、ジシロキサン含有ビニル基である。阻害物質は、構成成分(D)の一部と考えられる。
【0070】
構成成分(E)は、一般に組成物又は親水化剤に親水特性を付与できる剤であり、構成成分Eを含有しない元のシリコン組成物と比較して、1滴の水又は水含有組成物(例えば硬膏剤懸濁液等)のぬれ角を減らし、湿気のある口の領域における全組成物のより良い湿潤性、したがって、ペーストのより良いフローオン作用を促進する。
【0071】
印象材の親水性を測定するぬれ角の適切な測定は、例えばドイツ特許第43 06 997 A号の5ページに記載されており、この文献の内容は、参照として明示的に記述され、本発明の開示内容の一部とみなされる測定の方法に関する。
【0072】
好ましくは、構成成分の親水化剤は反応性基を含有しないことから、ポリシロキサン網状組織に組み込まれない。好適な親水化剤は、硬化した高分子網状組織に共有的に組み込むことができない親水性シリコーン油の基に由来する湿潤剤であり得る。適切な親水化剤は、国際特許公開WO87/03001号及び欧州特許公開第EP 0 231 420 A1号に記載されており、親水化薬剤に関する内容は参照として明示的に記述され、そして本発明の開示内容の一部とみなされる。
【0073】
さらに、例えば欧州特許第0 480 238 A1号に記載のエトキシ化脂肪アルコールは好ましい。さらに、好適な親水化剤は、国際特許公開第WO96/08230号で既知のポリエーテルカーボシランである。国際特許公開第WO87/03001号に記載の非イオン性ペルフルオロアルキル化表面活性物質も好ましい。また、欧州特許公開第0 268 347 A1号に記載の非イオン性表面活性物質、すなわち、そこに記載のポリエチレングリコール−モノ−及びジエーテルと同様に、ノニルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール−モノ−及びジエステル、ソルビタンエステルは好ましい。親水化剤類及びその調製に関する後者の文書の内容は、参照として明示的に記述され、そして本発明の開示内容の一部とみなされる。
【0074】
使用される親水化剤の量は、構成成分の全重量の約0〜約10重量%、好ましくは約0〜約2重量%、特に好ましくは約0.2〜約1重量%である。3分後に測定される本発明の硬化した材料の表面上の1滴の水のぬれ角は、好ましくは約60°未満、特に好ましくは<約50°、特に<約40°である。
【0075】
本発明の組成物はまた、構成成分(F)として充填剤、好ましくは疎水性充填剤の混合物を含むことができる。様々な無機の、疎水性充填剤は、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、無機塩類、金属酸化物及びガラス等が使用され得る。粉砕石英(4〜6μm)などの結晶性二酸化ケイ素;珪藻土(4〜7μm)などの非晶質二酸化ケイ素類;及びキャボット・コーポレーション(Cabot Corporation)製のカボシルTS−530(Cab-o-Sil TS-530)(160〜b240m2/g)などのシラン化ヒュームドシリカに由来するものを含む、二酸化ケイ素類の混合物を使用できることが分かった。
【0076】
前記材料の寸法及び表面積は、結果として得られる組成物の粘度及びチキソトロピー性(thixotropicity)を制御するように操作される。前記疎水性充填剤類のうち幾つか又はそれら全ては、当該技術分野における通常の知識を有する者に既知の通り、1つ以上のシラン化剤類で表面的に処理されてよい。このようなシラン化は、周知のハロゲン化されたシラン又はシラザイド(silazides)の使用により達成され得る。このような充填剤は、組成物の約5〜約65重量%,特に約10〜約60重量%又は約20〜約50重量%の量で存在し得る。
【0077】
充填剤の中で、構成成分(F)に使用可能なものは、非強化性充填剤、例えば石英、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸ジルコニウム、ベントナイトのようなモンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムナトリウムのようなモレキュラーシーブを含むゼオライト、アルミニウム又は亜鉛酸化物又はそれらの混合酸化物のような金属酸化物粉末、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硬膏剤、ガラス及びプラスチックの粉末である。
【0078】
適切な充填剤は、また、強化充填剤、例えば発熱性又は沈殿したケイ酸及びシリカアルミニウム混合酸化物である。上記充填剤類は、例えば、オルガノシラン類又はシロキサン類で処理することにより、又はヒドロキシル基をアルコキシ基にエーテル化することにより、疎水化することができる。1種の充填剤又は少なくとも2つの充填剤の混合物を使用することができる。粒子分布は、好ましくは、約50μm超の粒径を有する充填剤がないように選択される。
【0079】
充填剤(F)の全含有量は構成成分(A)〜(H)に関して約10〜約90%、好ましくは約30〜約80%である。
【0080】
補強充填剤と非補強充填剤の組み合わせが特に好ましい。この点において、補強充填剤類の量は、約1〜約10重量%まで、特に約2〜約5重量%までの範囲である。
【0081】
指定される範囲全体における差、つまり約9〜約70重量%、特に約28〜約55重量%が非強化充填剤によって占められる。
【0082】
好ましくは表面処理によって疎水化された、高温で調製された高分散性ケイ酸類が、補強充填剤類として好ましい。表面処理は、例えばジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、又はポリメチルシロキサンを用いて行うことができる。
【0083】
特に好ましい非補強充填剤類は、表面処理することが可能な、石英類、クリストバライト類、及びケイ酸アルミニウムナトリウムである。表面処理は、一般に、補強充填剤類(strengthening fillers)の場合の記載と同様の方法で行うことができる。
【0084】
さらに、本発明の歯科材料は、構成成分(G)として、任意に添加剤、例えばパラフィン油、顔料、抗酸化剤、はく離剤等の可塑剤を含むことができる。例えば、化学物質系を、ビニル重合の結果として典型的に発生され得る水素ガス放出の存在又はその程度を軽減するために用いてもよい。従って、組成物は、このような水素を補足して処理する超微粒子状の金属白金を含んでよい。プラチナメタルは、約0.1〜約40m2/gの表面領域を有する実質的に不溶性の塩に堆積され得る。適切な塩は、適切な粒径の、硫酸バリウム、炭酸バリウム及び炭酸カルシウムである。その他の基質類としては、珪藻土、活性アルミナ、活性炭などが挙げられる。無機塩類は、それらを組み込んで得られた材料に改善された安定性を与えるために特に好ましい。塩類には、触媒構成成分の重量に基づいて、約0.2〜約2ppmの金属白金が分散されている。無機塩粒子に分散された金属白金を使用することにより、歯科用シリコーン類の硬化中に生じる水素ガス放出が、実質的になくなるか又は軽減されることが分かった。
【0085】
本発明の材料は、約0〜約2重量%、好ましくは約0〜約1重量%の量で、このような添加剤を含む。
【0086】
本発明の構成成分(H)は、任意で少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する少なくとも1つのシラン化合物を含むことができる。好適なシラン化合物は、一般式IIによる
Si(R1n(R24-n (II)
式中、R1は、SiH基によって付加反応を生じることが可能な、炭素原子数2〜12の直鎖、分枝状、又は環状の、一価のエチレン性不飽和置換基であり、R2は、SiH基によって付加反応を生じることが可能な基又はかかる反応に悪影響を及ぼす基を有しない、炭素原子数1〜12の一価のラジカルであり、そしてnは2、3又は4である。特に好ましいラジカルR1は、ビニル、アリル、及びプロパルギルであり、特に好ましいラジカルR2は、直鎖又は分枝状のC1〜C12アルキル基である。
【0087】
さらに好適なシラン化合物は、一般式IIIによる:
(R1m(R23-mSi−A−Si−(R1n(R23-n (III)
ここでは、上記で定義されているように、R1及びR2及びnは互いに独立しており、aは、窒素又は酸素原子を含み得る1〜10000の炭素原子で、mが2又は3、好ましくは3である、二価の直線又は分岐又は脂環式、異頂環式、芳香性、又は、芳香族複素基である。二価のラジカル類Aについての例は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペニレン(penylene)、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、−H2C−Ar−CH2−、−C24−Ar−C24−であり、式中、Arは芳香族の二価のラジカル、好ましくはフェニル、又は一般形−CH2CH2CH2−O−[Ca2aO]b−CH2CH2CH2−の二価のポリエーテルラジカルであり、ただし、1≦a≦5及び0≦b≦2000である。
【0088】
シランデンドリマーは、構成成分(H)としても適切であり得る。一般に、三次元で、高秩序のオリゴマー及びポリマー化合物はデンドリマーと記載され、それは、反応の常に反復する連続によって、小さいコアから分子を開始して合成される。少なくとも1つの反応性部分を有するモノマー又はポリマー分子類が、コア分子として適している。これは、コア分子の反応性部分にたまる反応物質であって、その部分に2つの新しい反応性部分を有する反応物質との一段階又は多段階の反応で変換される。コア分子と反応物質との変換により、コアセルが得られる(ゼロ世代)。反応を繰り返すことによって、第1反応物層内の反応性部分が更なる反応物質によって変換されて、更に、少なくとも2つの新しい枝分かれ部分が分子に毎回組み込まれる(第1世代(lst generation))。
【0089】
進行性の枝分かれは、各世代において原子の数の幾何級数的成長をもたらす。全体の寸法は、反応物質によって特定される可能性のある共有結合の数のために線形に成長することしかできないが、分子は、何世代にもわたってより密に充填されることとなり、そしてそれらの形をヒトデ型から球形まで変化させる。ゼロ及び更なる世代のデンドリマーは、本発明の成分(H)として使用されるデンドリマーであり得る。第1世代のものが好ましいが、更に高次世代のものを利用することも可能である。
【0090】
第1世代又はより高次世代のデンドリマー類は、トリアルケニルシラン又はテトラアルケニルシランのハイドロジェンクロロ−シラン類による一工程での変換によってコア分子として生成される。これらの生成物類は、アルケニル−グリニャール化合物類を用いる更なる工程で変換される。
【0091】
シランデンドリマーのワニスとしての調製及び使用は欧州特許公開第0 743 313号と同様に、ドイツ特許第196 03 242 A1号及びドイツ特許第195 17 838 A1号から既知である。A1.これら特許に列挙されたデンドリマー類はまた、本発明による目的にも適している。多官能アルケニル化合物類は、コアとしても更に適している。
【0092】
トリメチロールプロパントリアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリト、サントリンクXI−100(Santolink XI-100)(モンサント(Monsanto))、テトラアリルオキシエタン、1,3,5−ベンゾールトリカルボン酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゾールトリカルボン酸トリアリルエステル、1,2,4,5−ベンゾールテトラカルボン酸テトラアリルエステル、リン酸トリアリル、クエン酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリアリルオキシトリアジン、ヘキサアリルイノシト、ならびに任意に置換可能な少なくとも2つのエチレン性不飽和基、例えばO−アリル、N−アリル、O−ビニル、N−ビニル、又はp−ビニルフェノールエーテル基を有する一般的な化合物類が特に適している。
【0093】
可能なポリエンは、米国特許第3,661,744号及び欧州特許公開第0 188 880 A1号にもまた記載されている。ポリエンは、例えば、次の構造:(Y)−(X)mを有することが可能であり、ただし、mは、2以上の整数、好ましくは2、3、又は4であり、そしてXは、−[RCR]f、−CR=CRR、−O−CR=CR−R、−S−CR=CR−R、−NR−CR=CR−R基から選択される(ここで、fは1〜9までの整数であり、またRラジカルは、H、F、Cl、フリル、チエニル、ピリジル、フェニル及び置換フェニル、ベンジル及び置換ベンジル、アルキル及び置換アルキル、アルコキシ及び置換アルコキシ、並びにシクロアルキル及び置換シクロアルキルの意味を表し、またそれぞれは、同一であっても異なっていてもよい)。(Y)は、C、O、N、Cl、Br、F、P、Si、及びH基から選択される原子から構築される、少なくとも二官能性の有機ラジカルである。
【0094】
少なくとも二価のカルボン酸のアリル−及び/又はビニルエステル類は、例えば、極めて好適なポリエン化合物類である。これに適したカルボン酸は、2〜20C原子の炭素鎖、好ましくは5〜15C原子の炭素鎖を有するものである。フタル酸又はトリメリット酸などの芳香族ジカルボン酸類のアリル又はビニルエステル類もまた極めて好適である。多官能アルコール類(好ましくは、少なくとも三官能性のアルコール類)のアリルエーテル類もまた適している。トリメチルプロパンのアリルエーテル類、ペンタエリスリトトリアリルエーテル、又は2,2−ビスオキシフェニルプロパン−ビス−(ジアリルホスフェート)を例として挙げることができる。シアヌル酸トリアリルエステル化合物類、トリアリルトリアジントリオン種、及び同様のものも適している。
【0095】
上述の種類のデンドリマー類及びそれらの調製については、米国特許第6,335,413B1号に記載されている。このようなデンドリマー及びそれらの調製に関するこの文書の内容は、参照として明示的に記述され、本発明の開示内容の一部とみなされる。
【0096】
1つの分子における少なくとも1つの不飽和炭化水素を含むポリエーテルは、構成成分(H)としても適切であり得て、好ましくは、例えば欧州特許第1 290 998 B1号に記載のように、約200〜約15000の数平均分子量を有する。
【0097】
構成成分(A)、(B)及び(H)の量比率は、好ましくは約0.5〜約10モルの構成成分(B)のSiHユニットが、構成成分(A)〜(H)の不飽和二重結合のモルに存在するよう選択される。構成成分(A)、(H)の量、及び歯科材料における(B)は、全構成成分の総重量と比べて約5〜約70重量%の範囲である。好ましくは、その量は約10〜60重量%、特に約15〜約50重量%の範囲である。
【0098】
本発明の材料は、構成成分(A)〜(H)を混合し、その後、プラチナ触媒(D)の影響を受け、構成成分(B)のSiH基は、構成成分(A)及び(H)それぞれの不飽和基に添加される、ヒドロシリル化と指定される付加反応において、それらを硬化させることにより調製可能である。
【0099】
好適な実施形態では、本発明の材料は、
− 約5〜70重量%の構成成分(A)+(B)+(H)、
− 約0〜40重量%の構成成分(C)、
− 基本的なプラチナとして計算され、前記化合物(A)〜(H)に存在する材料の総重量に関する、約0.0005〜0.05重量%の構成成分(D)、
− 約0〜10重量%の構成成分(E)、
− 約10〜90重量%の構成成分(F)、
− 約0〜5重量%の構成成分(G)、及び
− 約0〜50重量%の構成成分(H)、を含む。
【0100】
別の好適な実施形態では、本発明の材料は、
− 約10〜60重量%の構成成分(A)+(B)+(H)、
− 約0〜20重量%の構成成分(C)、
− 約0.0002〜0.04重量%の構成成分(D)が基本的なプラチナとして計算され、前記化合物(A)〜(H)に存在する前記材料の総重量に関して、
− 約0〜2重量%の構成成分(E)、
− 約30〜80重量%の構成成分(F)、
− 約0〜2重量%の構成成分(G)、
− 約0.1〜20重量%の構成成分(H)を含む。
【0101】
貯蔵安定性の理由から、材料は好ましくは、2−構成成分用量の形で配合され、そこでは、全構成成分(B)は、いわゆるベースペーストBPに存在する。全構成成分(D)は、いわゆる触媒ペーストCPにおけるベースペーストから物理的に分離されて存在する。構成成分(A)又は(H)、又はその両方は、触媒又はベースペーストのそれぞれに存在し得て、好ましくは、各構成成分(A)及び(H)の一部がそれぞれベースペースト及び触媒ペースト内の構成成分(A)又は(H)の一部に存在する。
【0102】
触媒及びベースペーストの容積比は、10:1〜1:10であり得る。ベースペースト:触媒ペーストの特に好ましい容積比は、約1:1及び約5:1(5部のベースペースト:1部の触媒ペースト)である。1:1の容積比の場合、構成成分(A)〜(H)がベース及び触媒ペーストとして以下のように分配される。
【0103】
【表2】

【0104】
ベースペースト5部対触媒ペースト1部の体積比の場合には、以下のように好ましい量の比を用いることができる。
【0105】
【表3】

【0106】
容積比5:1の場合には、両方のペーストを管状フィルムバッグに充填し、その後、使用直前に、ペンタミックス(PENTAMIX)(登録商標)(3Mエスペ(3M ESPE))などの混合装置及び計量装置を使用して混合することができる。
【0107】
それは、また、例えばポリエーテルにおいて、歯科材料の硬化が、アジリジノ基を有する化合物によって生じる場合、本発明において好ましい。このようなアジリジノ化合物を含む本発明の歯の印象材も、本明細書のコンテクストではアジリジノ材料と称される。
【0108】
したがって、本発明によると、歯科材料は、平均して少なくとも2つのアジリジノ基又はそれ以上、及び少なくとも約500の分子量を有する重付加物又は重縮合物である構成成分Zを少なくとも含む組成物であり得る。
【0109】
用語「分子量」は、標準の定義済み分子量に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリマーの個々のクラスに関して従来どおりに測定されるように、分子量の数平均に言及する。適切な測定法は、当業者にとって既知である。
【0110】
さらに、分子量の測定及び重合ポリオールの分子量の分配は、例えば末端基測定、例えば核磁気共鳴(NMR)法などの方法によって実施可能である。また、分子量の測定及び重合ポリオールの分子量の分配に適しているのは、例えばホーベン−ヴェイル(Houben-Weyl)の「有機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)」、14/2、17ページ、ゲオルグ・チーメ出版社(Georg Thieme Verlag)、シュツットガルト、1963年に記載されていているように、ヒドロキシル値の測定である。ASTM D2849−方法Cに記載されている処置もまた適している。
【0111】
分子量(Mw及びMn)を測定する適切な方法及び有機ジオールの分子量の分配は、例えば8×300mmのカラム寸法及び粒径5μmのカラム組合わせPSS SDV 10,000A+PSS SDV 500A+PSS SDV 100Aを使用したGPCによって実施される。プレカラムとして、8×50mmのカラム寸法及び粒径10μmを有するPSS SDV 100Aが使用される。1.0mL/分の流速で、200ppmのイオノール(Ionol)によって安定するTHFは、特に移動相として適切である。検出器として、屈折率(RI)検出器が使用され;試料のための噴射体積は100μlである。標準溶液として、ポリスチレン標準シリーズ(移動相中で0.1%w/wの重さ)が使用される。評価は、溶出されたポリスチレン標準シリーズの体積によって溶出させられる試料の体積の比較によって、自動の評価用モジュール(ターボSECソフトウェア)を使用した相対的なGPCの原理にしたがって実行される。Mn、Mw及び多分散性は評価される。
【0112】
原則として、重縮合方法によって調製可能な全てのポリマーは、それらが歯のアジリジノ材料として好ましい使用に関して組成物の必要性を満たすと仮定するならば、重縮合物として本発明のコンテクストにおいて適切である。適切な重縮合物は、例えば、ポリエステル、ポリアセタール又はポリシロキサンである。
【0113】
周知の様々に構成されるポリエステルの中で、ジオールを有するジカルボン酸の重縮合によって又はオキシカルボキシ酸の重縮合によって得られ、実質的に直線の構造を有するものが特に出発物質の調製に適している。重縮合の間の少量の三官能性又は四官能基性アルコールカルボン酸の付随する使用は可能であり、そして多くの場合、歯科材料としてその使用に関するポリエステルから得られる組成物の機械的特性のために有利でさえある。
【0114】
多数のポリオールは、上述のポリエステルの調製のためのポリオールとして使用可能である。それらは、例えば1つの分子につき2〜4つのOH基を有する、脂肪族アルコールである。OH基は、一次又は二次のどちらでもよい。適切な脂肪族アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール及び1つのCH2基のステップにおいて、又は炭素連鎖に分岐をもたらすことによって当業者が炭化水素鎖の段階的延長によって得る、より高い相同物又はその異性体を含む。高官能性アルコール例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、更には単独で又は前述のエーテルのうちの2つ以上の混合物からの、前述の物質のオリゴマーエーテルも適している。
【0115】
アルキレンオキシド、いわゆるポリエーテルを有する少なくとも2ヒドロキシル基を有する低分子量の多官能アルコールの反応生成物は、また、ポリオールとして使用されることができる。アルキレンオキシドは好ましくは、2〜4つの炭素原子を有する。適切なポリオールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール又は、酸化エチレン、酸化プロピレン又はテトラヒドロフランのようなブチレンオキシドのアルキレンオキシドの一つ以上を有するヘキサンジオール異性体の反応生成物である。さらに、多官能アルコールの反応生成物、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又は糖アルコール、又は、2つ以上のそれらとポリエーテルポリオールを形成する前述のアルキレンオキシドとの混合物も適切である。
【0116】
適当なポリエーテルは、アルキレンオキシド、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン又はエピクロロヒドリン、又はそれらの2つ以上の混合物を有する、反応性の水素原子を有する開始化合物の反応によって、当業者にとって公知の方法でもたらされる。
【0117】
適切な開始化合物は、例えば、水、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,4−又は1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール又はその2つ以上の混合物である。
【0118】
適当なポリエステルの調製のために、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ−フタル酸の無水物、無水テトラクロロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー脂肪酸又はトリマー脂肪酸、又はそれらの2つ以上の混合物がある。必要に応じて、軽微な量の単官能基脂肪酸が、反応混合物に存在してもよい。不飽和ジカルボン酸、例えば、マレイン酸又はフマル酸及び芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸異性体、例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸は同様に適切である。トリカルボン酸として、例えばクエン酸又はトリメリト酸が適切である。前述の酸は、単独で又は2つ以上の混合物の形で使用されることができる。
【0119】
ポリエステルは、必要に応じて、少ない割合のカルボキシル末端基を有することができる。ラクトン、例えばε−カプロラクトン又はヒドロキシカルボン酸、例えばω−ヒドロキシカプロン酸から得られるポリエステルも使用され得る。
【0120】
ポリアセタールも、ポリオール縮合物として適切である。ポリアセタールは、例えばホルムアルデヒドと共にグリコール、例えばジエチレングリコール又はヘキサンジオール又はそれらの混合物から得られる化合物であると理解される。本発明のコンテクストにおいて使用可能なポリアセタールも、環状アセタールの重合によって得られることができる。
【0121】
原則として、歯科材料として好適な使用に関する材料特性に関して必要条件を満たす全てのポリシロキサンがポリシロキサンとして適切である。特殊な選択は、本発明のコンテクストにおいてなされるが、例えば、ドイツ特許第100 26 852 A1号の2ページ、55行目から8ページ、20行目に記載のアジリジノ基を担持しているポリシロキサンのポリシロキサン基本構造に与えられる。この刊行物の開示は、本発明の開示内容の一部とみなされる。
【0122】
本発明のコンテクストにおいて、原則として、歯科材料としてその好適な使用に関する組成物の必要を満たされ得る重付加方法によって調製されることができる全てのポリマーは重付加品として適切である。適切な重付加品は、例えばポリウレタン又はポリエーテルである。
【0123】
原則として、ポリオール又は多カルボン酸及びイソシアネートの反応によって調製され得る全てのポリマーがポリウレタンとして適切である。適当な調製方法は、当業者にとって既知であり、適切なポリオールは、上述のポリエステルの調製のための出発原料として、すでに本明細書のコンテクストに記載されていた。
【0124】
本発明の好適な実施形態のコンテクストにおいて、本発明による組成物の成分として、重付加品、好ましくはポリエーテルが使用される。
【0125】
原則として、歯科材料として好適な使用に関する材料特性に関して必要条件を満たす全ポリエーテル化合物がポリエーテルとして適切である。適切なポリエーテル及びそれらの調製のための工程は、例えば本明細書の上記のコンテクストに記載されている。特に、酸化エチレン、1,2−酸化プロピレン、1,2−ブチレンオキシド又はテトラヒドロフランの重付加により得られるポリエーテル化合物、又は適切な開始化合物及び適切な触媒を用いた前述の化合物のうちの2つ以上の混合物は適切である。
【0126】
しかしながら、本発明のコンテクストにおいて、ポリエーテル鎖内の1,2−プロピレングリコールから得られる少なくとも1つの反復ユニットの成分を有するポリエーテル化合物が特に適切である。したがって、本発明の組成物に含まれるアジリジノ基を担持しているポリマーのための基本ポリエーテル・フレームワークとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラフラン又はそのエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー又はポリテトラフラン/プロピレングリコールコポリマー類又はポリテトラフラン/エチレングリコールコポリマー又はその2つ以上の混合物、特にポリプロピレングリコール又はエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー又はポリテトラフラン/エチレングリコールコポリマーの混合物が適切である。
【0127】
例えば、強酸、例えば三フッ化ホウ素エーテラートの存在下で、テトラヒドロフランの共重合によって調製されるポリエーテルポリオールと酸化エチレンのモル比は10:1〜1:1、好ましくは4:1であることが適切である。
【0128】
構成成分Zの調製のために使用可能なポリエーテルポリオールは、平均して,1つの分子につき少なくとも2つのヒドロキシル基を含むが、1つの分子につき20までのヒドロキシル基,例えば平均して約3、4、5、8、10又は15までのヒドロキシル基を有する。
【0129】
ポリエーテルポリオールの分子量(Mn)は、通常、約600〜約20,000グラム/モルの範囲、好ましくは約1,000〜約10,000グラム/モルの範囲である。
【0130】
異なるモノマーに基づくポリマーの構造ユニットの分配は、ランダムに又はブロック単位で組織され得る。
【0131】
さらに、適切なポリエーテルは、ドイツ特許第1 745 810号に記載されており、それに関する開示は本発明の開示内容の一部とみなされる。
【0132】
本発明のコンテクストにおいて、本発明による組成物における構成成分Zとして、ポリマーは平均して少なくとも2つのアジリジノ基を含む。
【0133】
用語「平均して」は、本明細書のコンテクストでは、構成成分Zの多数の化合物の混合物が、2つ未満のアジリジノ基を有する化合物と2つ以上のアジリジノ基を有する化合物との両方を含むが、構成成分Zの化合物の全部を見た場合、全ての分子の平均官能性は、アジリジノ基に関して2つ以上であると解釈される。
【0134】
全ての言及されたタイプ重付加又は重縮合品は、当業者にとって既知のあらゆる所望の後続反応によりアジリジノ基と共に提供されることができる。例えば、適当なポリマーに、適切なアジリジン誘導体と順番に反応する置換基を最初に導入することが可能である。鎖の上に環状エーテル、好ましくはエポキシドを重合させることはしばしば可能であり、それにより、物品が得られ、それは末端にアジリジンと反応可能な置換基を含む。例えば、ハロ置換エポキシド、例えばエピブロモヒドリンが重合するポリエーテルが考慮される。これらの物質は、短いハロ置換末端基、例えば、エピブロモヒドリンを使用する際に、CH2Br基を含む。
【0135】
例えばドイツ特許第PS1 745 810号又はドイツ特許第100 26 852A1号で、アジリジノ基を有するポリマーを提供するための適切な可能な方法が記載され、参照して前述の刊行物に明確に記載され、アジリジノ基を有するポリマーを官能化することに関する開示は、本明細書の開示の一部であると理解される。
【0136】
あるいは、構成成分Zとして適切なポリマーは、末端又は横に、又は末端かつ横に、しかし、好ましくは末端にアジリジノ基を担持することができる。
【0137】
構成成分Zとして使用可能なアジリジノポリマーは、好ましくは、10〜約500Pa.sの動的粘度η、特に約15〜約300Pa.s(23℃、フォルツハイムのボーリン・インストゥルメンツ社からのCVO120HRタイプの回転粘度計によって、23℃、板の直径が20mmの板−板形状、又は、板−円すい形状、せん断速度20s-1で測定された)を有する。
【0138】
好適な粘性範囲は、23℃で約20〜約180Pa.sである。
【0139】
本発明の文脈において構成成分Zとして使用される化合物に相当するアジリジノは、約250〜約25,000g/当量、特に約400〜約10,000g/当量である。
【0140】
本発明に使用可能な構成成分(Z)は、アジリジノポリマーの1つのタイプのみを含むことができる。しかしながら、2つ以上の異なるタイプ、例えば3、4又は5つの異なるタイプのアジリジノポリマーを含むことは、本発明に従って使用可能な構成成分(Z)にとって同様に可能である。
【0141】
本発明のコンテクストで、「ポリマーのタイプ」は、重付加又は選択された反応状態の下で選択されたモノマーの重縮合からの結果としてのポリマーであると理解される。したがって、選択した反応状態に応じて、ポリマーのタイプは、異なる化学構造及び異なる分子量のポリマー分子を含むことができる。しかしながら、同一の反応状態の下の同一のモノマー組成物を使用して実行される2つの反応は、本発明による同一のタイプのポリマーにおいて常に生じる。同一のモノマーを使用するが異なる反応状態の下で実行される2つの反応は、同一のタイプのポリマーとなるが、必須ではない。その中の重要な要因は、化学構造、材料特性に関連する分子量及び測定可能な更なるパラメータに関して定義可能な差があるかどうかである。異なるモノマー組成物を使用して実行される2つの反応は常に、本発明によると、異なるタイプのポリマーとなる。
【0142】
好適な実施形態の文脈において、使用可能な構成成分(Z)は、1つのタイプ又は2つの異なるタイプ、特に1つのタイプのみのアジリジノポリマーを含む。
【0143】
本発明の構成成分(Z)は、基本フレームワークとして、調製の方法にかかわりなく、ポリエーテル、好ましくはポリテトラヒドロフラン(ポリ−THF)をベースにしたポリエーテル、又は、プロピレングリコール/エチレングリコールコポリマー、又は、エチレングリコール/テトラヒドロフランコポリマーを有する少なくとも1つのアジリジノポリマーを含む。
【0144】
構成成分(Z)における使用に適した更なるアジリジノ化合物は、例えば、ドイツ出願公開第15 44 837号の3〜14ページに記載されている。
【0145】
構成成分(Z)に加えて、本発明のアジリジノ材料は1つの添加剤又は2つ以上の添加剤の混合物を含むこともできる。
【0146】
適切な添加剤は、例えば硬化した歯科材料組成物の可塑化をもたらす化合物である。このような化合物は、両方の典型的な可塑剤であり得、また、他のポリマー系及びポリカルボン酸、多芳香族化合物及びスルホン酸エステル類又は化合物のエステルのために設けられ、可塑化の他に、他の影響、例えば界面活性剤の働き、構造強さの増加及び流れ動きの改善をもたらす。
【0147】
典型的な可塑剤は、例えば、C12〜C15−アルキルラクタート、クエン酸又はアセチルクエン酸のエチル又はブチルエステル、比較的長いフタル酸エステル、分枝アルコール、例えばビス(2−エチルヘキシル)フタレート又はフタル酸ポリエステル、C2〜C6−ジカルボン酸、例えばビス(2−エチルヘキシル)アジパートのC2〜C22−ジアルキルエステル、ジオクチルマレアート、ジイソプロピルアジパート、芳香族及び脂肪族スルホン酸エステル、例えばフェノール又はC1〜C22−アルカノールのC2〜C20アルキルスルホン酸エステル、又は、典型的な芳香族可塑剤、例えば、エステルタイプ及び芳香族タイプの可塑剤の混合物の使用を優先する、例えばモンサント・カンパニーから入手可能なC20〜C40芳香族化合物のジベンジルトルエン異性体混合物のような蝋状のポリフェニルを含む広い粘性範囲のポリフェニル、等のエステル型の化合物である。
【0148】
好適な可塑剤混合物の例は、アセチルクエン酸トリブチル及びジベンジルトルエンの混合物である。
【0149】
非動物の起始のグリセリンのトリアシルエステルは、添加剤として同様に適切である。例えば、適切な添加剤は、植物性由来の改質脂肪、例えば水素化されたパーム油又は大豆油又は合成脂肪から成ることができる。
【0150】
適切な脂肪はドイツ特許第197 11 514 A1号(例えば2頁、65行目〜3頁、22行目)に記載されており、この内容は本願明細書において十分に参照される。問題の脂肪が使用の前に水素化されたと仮定するならば、アボガド油、綿実油、落花生油、カカオバター、カボチャシード油、亜麻仁油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、パーム油、米油、菜種油、紅花油、胡麻油、大豆油、ヒマワリ油、グレープシード油、小麦麦芽油、ボルネオ脂、フルワ(fulwa)バター、大麻油、イリペバター、ルピナス油、キャンドルナッツ油、カポック油、カチュ(katiau)脂肪、ケナフシード油、ケクナ(kekuna)油、ポピーシード油、モーラーバター、オクラ油、荏油、サルバター、シアバター及び桐油が特に適切である。適切な水素化された脂肪は、よう素価が20未満であると考えられる(DGF(脂肪化学ドイツ協会;German Society for Fat Science)の標準規格C−V11 Z2で測定した)。脂肪水素添加処置は例えば、「Ullmanns Enzyklopadie der industriellen Chemie」第4版、11巻、469ページ以降に記載されている。
【0151】
それらの自然に生じている脂肪、及び合成的に調製された脂肪、例えばソフティサン154(Softisan 154)又はダイナサン118(Dynasan 118)(ハルス(Huls)製)の混合物は、同様に使用されることができる。このような合成的トリアシルグリセリドの調製は、当業者には比較的容易であり、グリセリン及び適当な脂肪酸メチルエステルからの開始により実行可能である。特にこのようなエステル化反応は「Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie」E5巻/パート1、に記載されているVol.E5/パート1、659ページ以降に記載されている。
【0152】
好適なトリアシルグリセリドは、以下の式に相当する:
2−O−CH2−CH(OR1)−CH2−O−R3
式中、各々独立して他の中で、R1、R2及びR3は、各々独立したC1123CO、C1327CO、C1531CO又はC1735COを意味する。このようなトリアシルグリセリドの混合物も考慮に入れる。
【0153】
同様に適切な添加剤は、約2000グラム/モルより多い分子量を有する液体重合化合物、例えば末端基として適切なヒドロキシル基、エーテル基、アルキル基、アシル基を有するポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート又はポリオレフィンのようなタイプの化合物である。
【0154】
例えば、4:1〜3:1の割合でオキシテトラメチレン及びオキシジメチレンユニットを含み、分子量が約3000〜約8000グラム/モルの範囲のジヒドロキシ又はジアセチルポリエーテルが添加剤として適している。
【0155】
ポリプロピレンオキシドポリオール及び/又は共重合品及び/又は酸化エチレンのブロック共重合品及びヒドロキシル又はアセチル末端基を有する酸化プロピレンは、また、前述のポリエーテルとの混合物中に、又はそれら自体を添加剤として使用できる。
【0156】
約2000グラム/モルより大きい分子量を有するブロック共重合品の場合、それらの界面活性剤のような化合物の溶解促進作用はさらに利用可能である。
【0157】
さらに、前述のポリエーテル誘導体を選択及び混合した結果として、混合された調製の親水性及び疎水性のフロー動作及び必要な調整は、決定的に影響され得る。
【0158】
本発明による組成物はまた、上記のように補強作用を有する約10〜約20重量%の充填剤を添加剤として含み得る。
【0159】
本発明の調製は、更なる添加剤、例えば染料及び着色した顔料、芳香剤又は香味料もまた含み得る。
【0160】
出発原料に存在する酸、酸性基又は酸切断物質を十分に中和する酸捕獲剤も、添加剤として使用され得る。例えば、アミン、特に第三級アミンが、目的に適している。
【0161】
改質剤が添加剤として使用されてもよいが、これはドイツ特許第32 45 052号、4頁〜6頁に、その中で言及される改質剤を明確に参照して記載され、本明細書の開示の一部として理解されている。
【0162】
上記添加剤は、約0〜約60重量%、例えば約10〜約40重量%の量で本発明の組成物に通常は含有される。
【0163】
本発明の歯のアジリジノ材料は、少なくとも1つのベースペーストBP及び少なくとも1つの触媒ペーストCPに存在する。ベースペーストBPは少なくとも1つの化合物Zを含み、触媒ペーストCPはベースペーストBPの少なくとも一部の架橋のための少なくとも1つの触媒を含む。
【0164】
触媒ペーストCPは、ベースペーストBPのアジリジノ基担持成分の重合を誘発し、その結果、歯科材料全体を硬化する少なくとも1つの開始剤物質を含む。
【0165】
原則として、アジリジンの重合を誘発する全ての化合物は、それらが硬化した歯科材料のための適切な凝固率及び適切なエラストマー特性をもたらすと仮定するならば、開始剤物質として考慮される。
【0166】
したがって、先に記載されているポリエーテル誘導体に基づく2−構成成分印象材ために、弾力的な固体を形成するために約1〜約20分の期間に室温で混合された調製物を硬化することを可能にする適切な開始剤物質があり、その固体はドイツ工業標準規格/EN 2482による弾性印象材のための必要条件を満たし、24時間後に少なくとも20のショアA硬度(ドイツ工業標準規格53 505)を有する。
【0167】
本発明の好適な実施形態の文脈において、歯科材料は構成成分BP及びCPに関して調整され、約20分未満の期間内に室温で構成成分BP及び触媒ペーストCPを混合した後に、24時間後に達するショアA硬度の値の少なくとも約50%のショアA硬度を有する。
【0168】
本発明に適切な触媒ペーストCPの開始剤物質として、原則として、全ての既知の開始剤が使用され得る。硬化の進行の単純な調整を可能にするそれらの開始剤又は開始剤システムは有利に使用され、補助的な影響をもたらさず、再現的に、機械的性質の必要なレベルを達成することを可能にする。
【0169】
化合物が含まれるN−アルキルアジリジノの硬化のために使用される開始剤物質の要約した記載は、例えば、O.C.デーマー(O. C.DERMER)、G.E.ハム(G. E. HAM)の「エチレンイミン及び他のアジリジン類(Ethylenimine and other Aziridines)」アカデミック・プレス(Academic Press)(1969年)にある。
【0170】
トリアルキルスルホニウム塩は例えば、米国特許第4,167,618号(例えば2列36行〜4列32行及び実施例)は特に開始剤物質として適切である。前述のトリアルキルスルホニウム塩は、本願明細書の開示の一部と理解される。
【0171】
ドイツ特許第914 325号において、オキソニウム、アンモニウム及びスルホニウム塩の使用が開始剤物質として提案されており(例えば:2ページ77行〜3頁100行及び実施例)、そこに記載されている開始剤物質は、同様に本願明細書の開示の一部と考えられる。
【0172】
ドイツ特許第100 18 918 A1号において、ほんの低い酸価を触媒構成成分に付与する開始剤は記載されており、直ちに調整されるのを可能にし、基本構成成分及び触媒構成成分の混合の後の比較的長い処理時間が実行された。その中で言及される化合物は明確に参照され、その中で言及される開始剤物質は、同様に本明細書の開示の一部と考えられる。
【0173】
米国特許第4,176,618号に記載の開始剤化合物は、特に適切である。開始剤物質に関するその刊行物の開示は、本明細書の開示の一部と考えられる。
【0174】
さらに、欧州特許出願番号05016531.5に記載の開始剤は、特に適切である。開始剤物質に関するその刊行物の開示は、本明細書の開示の一部と考えられる。
【0175】
このタイプの開始剤システムは、本発明の基本構成成分を要求された割合で硬化するのに適している。それらの使用によって、弾性の固体の所望の性質が達成可能である。
【0176】
ドイツ特許第199 42 459号は、増加する延性によって特徴づけられる改良された触媒構成成分を有するエラストマー材料を記載する。その発明によると、ホウ酸複合体は開始剤として使用される。それらの開始剤が、同様にN−アルキルアジリジノポリマーの硬化に適していることが分かり、本発明のコンテクストにおいて使用可能である。
【0177】
本発明のコンテクストにおいて、以下の開始剤化合物が好ましくは使用される:p−トルエンスルホン酸の亜鉛塩−β(S−ラウリル−S−エチルスルホニウム)ブチロニトリルテトラフルオロホウ酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸亜鉛塩−β(S−ラウリルS−エチルスルホニウム)−β−フェニルアクリル酸ブチルエステルテトラフルオロホウ酸塩。
【0178】
上述の開始剤化合物のうちの1つ又はその2つ以上の混合物に加えて、触媒ペーストCPは、また、一つ以上の添加剤を含むことができる。前述の添加剤は、添加剤として適切である。
【0179】
構成成分CPの開始剤化合物は、例えば構成成分Bのおおよその粘着性の塊において、一様に組み込むのが困難であり得る低粘性液体、又は固体の形であり得る。その不都合を避けるために、開始剤化合物は、例えばコロイダルシリカのような大きい表面積の充填剤を組み込むことにより特定の意図された用途領域に相当する粘着性の形にされてもよい。
【0180】
また、構成成分CPとしての適切な可塑剤において開始剤化合物の溶液を使用することはしばしば有利であり、それにより、極度の混合比の防止を可能にするだけでなく、しかし、それはまた、室温で固体である橋架剤、例えばアセチルクエン酸トリブチルが都合よく構成成分CPに組み込まれることを可能にする。
【0181】
開始剤化合物は、0.5〜90重量%、例えば2〜80重量%又は約5〜約50重量%の量の構成成分CPに一般に含まれる。
【0182】
開始剤化合物のアニオンに対するアジリジノ基のモル比は、本発明の歯科材料の文脈において、約3:1〜約0.9:1、例えば約2:1〜約1:1、特に約1.8:1〜約1.1:1である。
【0183】
歯のアジリジノ材料は、例えば、全体で以下の調製物から得られる:
− 約30〜約80重量%,好ましくは約40〜約71重量%のアジリジノ基担持化合物;
− 約8〜約40重量%、好ましくは約10〜約25重量%の硬化した歯科材料の可塑化をもたらす化合物;
− 約4〜約25重量%、好ましくは約9〜約20重量%の充填剤;
− 約0.1〜約60重量%、好ましくは約10〜約40重量%のさらなる材料、例えば着色剤、芳香剤、開始剤,緩和剤、促進剤、流体力学的添加剤、コンシステンシー調節剤及び界面活性剤。
【0184】
特に適切な構成成分及び製剤は、例えば以下の特許及び特許出願に記載されている:ドイツ特許第1745810号、米国特許第3453242号、米国特許第1544837号、米国特許第4167618号、ドイツ特許第3245052号、ドイツ特許第3728216号、欧州特許第0421371号、ドイツ特許第4306997号、ドイツ特許第4321257号、ドイツ特許第19753461号、ドイツ特許第19740234号、ドイツ特許第10001747号、ドイツ特許第10018918号。
【0185】
本発明は、本発明の歯科材料を含む容器及び混合装置にも関する。一般に、容器及び混合装置として、カートリッジ、小袋、印象トレー、静的及び動的ミキサ及び他の混合装置が使用可能である。
【0186】
本発明は、動物又はヒトの口腔から、印象をとるための歯の印象材の使用にも関する。
【0187】
本発明は歯の印象材の調製方法であって、ベースペーストBPは、約0.001重量%〜約10重量%の水安定抗菌剤と重合可能な化合物を混合して調製され、触媒ペーストCPは、一つ以上の補助の化合物と前記ベース構成成分を重合させるための触媒とを混合することによって調製され、抗菌剤は、構成成分BP及びCPを混合した後に、重合の開始まで測定された時間が約2倍より増えない方法にも関する。
【0188】
本発明は、本発明の歯の印象材のベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPが、硬化可能な混合物を形成するために混合され、印象が除去され、硬化可能な混合物が取り出される場所に硬化可能な混合物が口腔に配置され、形成された印象を本質的に妨げずに口腔から撤去するまで、十分に硬化されることを特徴とする動物又はヒトの口腔から印象をとる方法にも関する。
【0189】
本発明は歯の印象材を消毒する方法であって、
― 凝固され、細菌で汚染された請求項1〜10のいずれか1項に記載の非水溶性の歯の印象材を提供するステップと、
― 前記凝固された歯の印象材を非消毒液で濯ぎ、
― 前記印象材を乾燥又は能動的に乾燥するために前記印象材を除去するステップとを含む方法に関する。
【0190】
一般に、全てのタイプの消毒していない液体は、歯の印象材を濯ぐために使用可能である。多くの場合、水は、一般に、歯の印象材を扱う場所、例えばデンタルオフィス又はデンタルラボに常に存在するため、非消毒液体として好ましい。
【0191】
本発明の印象材がほとんどの場合、上記のステップの後に基本的に無菌の材料を産出するために十分な自己殺菌活性を提供しているため、上記殺菌方法の間に消毒剤を使用するステップを省略することも好適な選択肢であり得る。
【0192】
本発明は、本発明にて説明したように、動物又はヒトの口から、印象をとるため―の歯の印象材を使用する方法にも関する。
【0193】
本発明は、本発明の歯の印象材のベースペーストBP及び触媒ペーストCPが、硬化可能な混合物を形成するために混合され、印象が除去され、硬化する混合物が取り出される場所に硬化する混合物が口腔に配置され、形成された印象を本質的に妨げずに口腔から撤去するまで、十分に硬化される、動物又はヒトの口腔から印象をとる方法にも関する。
【0194】
本発明は、実施例を挙げてさらに説明される。
【実施例】
【0195】
ラボラトリーシステムが考案され、それは材料に付随する汚染を有する印象取得の臨床処置、口腔からの材料の除去及びそれに続く水道水での短い濯ぎによる洗浄に倣って作られる。残留する汚染は、微生物学的な方法で測定された:
印象材は、殺菌したペトリ皿に適用された。フィルターは、ストレプトコッカスミュータンス(DSM 20523)又は刺激されたヒト唾液によって装てんされ、凝固中に材料と接触した。約5E9 CFU/mLのストレップミュータンス濃度が選択され、それは唾液中にある微生物の数と似ている。凝固の後、材料は汚染されたフィルタから撤去され、殺菌水で簡単に濯がれた。
【0196】
残留する微生物は寒天板へ移され、寒天板は存続する微生物の成長を可能にするために37°Cで嫌気的にインキュベートされた。微生物グロースは、集密的成長として記録された(+++);多くのコロニー(++);僅かなコロニー(+);成長が無い−。
【0197】
特に指示しない場合、%は重量%を意味する。
【0198】
凝固時間を測定するラボ試験法:
凝固の開始が以下の処置によって測定される:0.5gの触媒及び0.12gのベースペーストは、45秒以内で空隙及び気泡のないヘラを使用して混合される。約半分の量の混合されたペーストは、混合された詰め物上に伸ばされる。残留する量は、凝固の開始を測定するために使用される。鋭い転移点に達するまで、ペーストは繊維質かつ流動性を有したままであり、ここで、ペーストはもはや流れず成形されない。転移点が到達するまで、混合の開始からの時間は凝固の開始として定義される:
【0199】
【表4】

【0200】
1 アジリジノポリエーテルベースの印象材
2 シリコンベースの印象材
【0201】
【表5】

【0202】
実施例:貯蔵安定性:
CHXは、スピードミキサーを使用して以下のベースペースト(アジリジノポリエーテルベースの印象材)に添加された:
58.0%エチレンイミンα、ω−二官能性ポリエーテル(ポリエーテルバックボーンは、6000の分子量を有するコポリマーEO/THFである)
13.6%脂肪(グリセリンのトリスカシリック(triscacylic)エステル)
11.6%ジベンジルトルエン
0.88%界面活性剤コポリマーEO/PO
0.65%ラウリルイミダゾール
13.9%珪藻土
1.37%染料、顔料、香味料
得られたベースペーストは、以下の触媒ペーストと作用された:
19.3%スルホニウム塩テトラフルオロホウ酸塩
40.5%アセチルトリブチルクエン酸
3.5%界面活性剤コポリマーEO/PO
12.1%珪藻土
24.1%高分散シリカ、被処理表面
0.5%染料、顔料、香味料
ゲル化点は以下のように測定された:それぞれのベースペースト0.5gは、0.12gのインプレグナム(登録商標)ペンタ(Penta)(登録商標)触媒ペーストと共に混合された。凝固は、G’及びG’’を測定する一般の振動レオメータ(板−板形状、直径9mm)を使用して測定された。ゲル化点は、測定された(G’=G’’)。測定パラメータは、以下の通りである:23℃、スロット1000μm、周波数1,0 Hz、変形0.01触媒及びベースペーストがヘラを使用して30秒間混合されてから30秒後に、測定は開始された。
【0203】
ベースペーストの粘度は、同じ形状を使用して測定された。
【0204】
【表6】

【0205】
*同種のベースペーストではない
n.d.:測定されない
入口1〜7によって表されるベースペーストは同種だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合可能なベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPを含む歯の印象材であって、前記ベースペーストBPは、約0.001重量%〜約10重量%の水安定抗菌剤を含み、前記触媒構成成分は前記ベース構成成分を重合させるための触媒を含み、前記抗菌剤は、構成成分BP及びCPを混合した後に、重合の開始まで測定される時間が約2倍より長くならず、水安定は、水に溶解する又は他の活性抗菌剤を生成する水と接触する際に、前記抗菌剤が劣化又は分解しないことを意味する、歯の印象材。
【請求項2】
前記構成成分BP及びCPを混合した後の重合の開始まで測定される時間は、前記抗菌剤によって約0.5〜約1.7倍に促される請求項1に記載される歯の印象材。
【請求項3】
有機抗菌剤、該有機抗菌剤を含むハロゲン、カチオン界面活性剤、単価フェノール及び多価フェノール、抗菌ペプチド、バクテリオシン、抗生物質、アルデヒドp−ヒドロキシベンゾアート又はパラベン、ラウリシジン、酵素、タンパク質、フッ化物、EDTA又は前記ベースペーストBP内の抗菌性質を有する天然油を含むアミノ基からなる群から選択される抗菌剤を含む、請求項1又は2に記載の歯の印象材。
【請求項4】
前記抗菌剤は、ヘキチジン、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、クロルヘキシジン及びその派生物(CHX)ならびにトリクロサンからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項5】
前記ベースペーストBPが、ポリエーテル部分を含む少なくとも1つの化合物、又はシロキサン部分を含む少なくとも1つの化合物、又は両者を含む化合物、又はポリエーテル部分及びシロキサン部分を含む少なくとも1つの化合物を含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項6】
ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン及び前記ベースペースト内の少なくとも2つのアジリジノ基を含むポリジメチルシロキサン類からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1〜6に記載の歯の印象材。
【請求項7】
アジリジンの開環重合反応又は、ヒドロシリル化反応により硬化する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項8】
前記ベースペーストBPは、少なくとも1つの重付加品又は、平均して2以上のアジリジノ基を有する少なくとも1つの重縮合品、及び、少なくとも約500の分子量又は1つの分子につき少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する少なくとも1つの有機ポリシロキサンA1を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項9】
テトラヒドロフラン・ユニットの少なくとも一部を有するポリエーテルを含む、請求項1〜8いずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項10】
(A)前記ベースペースト又は前記触媒ペースト又はその両方内において1つの分子につき少なくとも2つのエチレン不飽和基を有する少なくとも1つの有機ポリシロキサン類A1、
(B)前記ベースペースト内において1つの分子につき少なくとも3つのSiH基を有する有機水素ポリシロキサン類、
(C)任意に、前記ベースペースト又は前記触媒ペースト又は両方において反応基を有さない有機ポリシロキサン類、
(D)前記触媒ペーストにおいてAとBとの間の反応を促進するための触媒、
(E)任意に、前記ベースペースト又は前記触媒ペースト又は両方における親水化剤、
(F)前記ベースペースト又は前記触媒ペースト又は両方における充填剤、
(G)任意に、前記ベースペースト又は前記触媒ペースト又は両方における従来の歯科用添加剤、アジュバント、可塑剤及び着色剤、
(H)任意に、1つの分子につき少なくとも2つのアルケニル基を有する少なくとも1つのシラン、及び/又は1つの分子内の少なくとも1つの不飽和炭化水素を含むポリエーテル、を含む、請求項1〜9いずれか1項に記載の歯の印象材。
【請求項11】
− 約5〜70重量%の構成成分(A)+(B)+(H)、
− 約0〜40重量%の構成成分(C)、
− 基本的なプラチナとして計算され、前記化合物(A)〜(H)に存在する前記材料の総重量に関連する、約0.0005〜0.05重量%の構成成分(D)、
− 約0〜10重量%の構成成分(E)、
− 約10〜90重量%の構成成分(F)、
− 約0〜5重量%の構成成分(G)、
− 約0〜50重量%の構成成分(H)、
及び約0.01〜10重量%の抗菌剤を含む、請求項10に記載の歯の印象材。
【請求項12】
少なくとも重合可能なベースペーストBP及び非水溶性触媒ペーストCPを有し、前記構成成分BP及びCPは互いに分離して存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組成物を含む、歯の印象材を作製するためのキット。
【請求項13】
容器、印象トレー又は混合装置の形を有する、請求項1〜11いずれか1項に記載の歯の印象材を含む装置。
【請求項14】
凝固され、細菌で汚染された請求項1〜11いずれか1項に記載の非水溶性の歯の印象材を提供するステップと、
前記凝固された歯の印象材を非消毒液で濯ぎ、
前記印象材を乾燥又は能動的に乾燥するために前記印象材を除去するステップとを含む、歯の印象材を消毒する方法。
【請求項15】
ベースペーストBPは、約0.001重量%〜約10重量%の水安定抗菌剤と重合可能な化合物を混合して調製され、触媒ペーストCPは、一つ以上の補助の化合物と前記ベース構成成分を重合するための触媒とを混合することによって調製され、前記抗菌剤は、構成成分BP及びCPを混合した後に、重合の開始まで測定される時間が約2倍より増えない、歯の印象材の調製方法。

【公表番号】特表2009−515966(P2009−515966A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541239(P2008−541239)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043770
【国際公開番号】WO2007/061647
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】