説明

抗菌性ポリウレタン分散体、その製造方法、適用方法および抗菌性コーティングを備えた物品

水性ポリウレタン分散体であって、a.ポリイソシアネート、ポリオール、有機カルボン酸基(COOH)を有するC1-C5ジオールおよびジアミンの反応生成物であり、少なくとも1つの第3級アミンを含む構成要素で中和された、中和されたポリウレタンポリマーと、b.分子式nR-X+Yの抗菌性化合物(ここでnは4または5、R-基は同じか異なっていてよいC1-C100ヒドロカルビル基、X+は価数nを有する正電荷イオン、Yは負電荷イオンである)とを含む水性ポリウレタン分散体が記載される。また、当該分散体を調製する方法、物品の表面にコーティングとして当該分散体を適用する方法およびこのようにしてコーティングされた物品についても開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性化合物を含む水性ポリウレタン分散体およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、このようなポリウレタン分散体を物品の表面にコーティングとして適用する方法および当該コーティングを備えた物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カビや藻類などの細菌および/またはその他の微生物が表面に蓄積することは、特に細菌の場合、人間の健康への脅威となる。この問題は、多くの人々が集まる状況においておよび/または抵抗力が低下した人々が居る状況において特に多く発生する。このような状況は、例えば、病院、養護施設および高齢者介護施設において発生する。
【0003】
表面に微生物が蓄積する問題に取り組む幾つかの方法が当該技術分野において良く知られており、これは例えば、抗菌性効果を有する材料の物品を製造すること、または、存在する物品の表面を抗菌性物質で処理することである。
【0004】
抗菌性効果を有する材料の物品を製造する例は、調理場の作業面および食品用包装材料の製造である。これらのアプリケーションにおいては、これら物品は、抗菌性効果を有する特殊な材料で生産される。
【0005】
既に存在する物品を処理する方法は、例えば、抗菌性物質が大気中に分布される空気処理であってよい。しかし、このようなアプローチは、一般的に環境に悪く、かつ、人間に対して有害である。
【0006】
存在する物品を処理するもう一つの既知の方法は、異なるタイプの溶液即ち、製造後に既存の物品に適用されることができる抗菌特性を有する塗料のようなコーティングを提供し、例えば、適切なコーティング組成物は、抗菌性化合物を含有する水性ポリウレタン分散体を含んでよい。
【0007】
ポリウレタンは、多官能性イソシアネートと多官能性アルコールとの反応によりウレタン結合を形成することにより調製されるポリマーを表すのに使用される一般的な用語である。
【0008】
「ポリウレタン」という用語はまた、多官能性アルコール、アミンおよびメルカプタンを含む多活性な(polyactive)水素化合物とポリイソシアネートとの反応生成物を指すために、より一般的に使用されている。ポリウレタンは、エラストマー、接着剤、コーティングおよび含浸剤などを含む様々な用途で使われている。
【0009】
国際特許公開公報WO-2006/047746は、ポリウレタンポリマーの水性分散体を製造するための方法を説明している。説明された方法はかなりの程度に実行することができるが、この文書は、本発明の抗菌性化合物について記述もあるいは示唆もしていない。
【0010】
参照により本明細書に組み込まれるWO02/10242は、ポリウレタン分散体およびその製造方法を開示している。開示された分散体は、アルコール−水の混合物中で安定であり、そして、(a)i)少なくとも1つのオリゴマーの多活性な水素化合物であって、前記化合物はN、O、Sおよびそれらの組み合わせによって鎖中および/または鎖上で随意に置換されるアルキル、アリールまたはアラルキル構造であり、かつ同化合物は50:50重量パーセントの前記アルコール−水の混合物には不溶性である、水素化合物と;ii)少なくとも1つのポリイソシアネートと;iii)前記アルコール−水混合物に可溶である少なくとも一種の多活性水素化合物であって、イオン基を含む化合物、イオン基を形成することが可能な部分を含む化合物、各酸素原子あたり5個以下の比率の炭素原子を有する、ポリエステル基、ポリエーテル基またはポリカーボネート基を含む化合物およびそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも一種の多活性水素化合物との反応生成物を含むイソシアネート官能性プレポリマー;および(b)少なくとも1つの多官能性鎖延長剤の反応生成物である。
【0011】
WO02/10242から知られる抗菌性化合物を含むポリウレタン分散体の欠点は、コーティングが物品の表面に一度適用されると、抗菌性化合物が、コーティング中で(特にコーティングの表面において)貧弱に固定されることである。このことは、抗菌性化合物がコーティングされた表面から簡単に切り離されてしまう結果を生じうる。特に、かかる表面が、任意に界面活性剤を含む有機溶剤または水で頻繁に洗浄されるときにそうである。
【0012】
先行技術から知られるポリウレタン分散体のもう一つの欠点は、安定分散が、分散体の製造中に大量の有機溶剤の使用を必要とし、その溶剤が最終生成物中で相当量の構成要素として残存することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、改良された抗菌性効果を備えた抗菌性化合物を含み、かつ上述の欠点の少なくとも一部が削除もしくは少なくとも軽減された、ポリウレタン分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水性ポリウレタン分散体であって、
a. ポリイソシアネート、ポリオール、有機カルボン酸基(COOH)を有するC1-C5ジオールおよびジアミンの反応生成物であり、少なくとも1つの第3級アミンを含む構成要素で中和された、中和されたポリウレタンポリマーと、
b. 分子式nR-X+Yの抗菌性化合物(ここでnは4または5、R-基は同じか異なっていてよいC1-C100ヒドロカルビル基、X+は価数nを有する正電荷イオン、Yは負電荷イオンである)とを含む、水性ポリウレタン分散体に関する。
【0015】
R-基は、好ましくはC5-C50ヒドロカルビル基であってよく、より好ましくはC10-C20ヒドロカルビル基であり、随意に、バックボーンに例えばN,O,P,Sなどのヘテロ原子を含む。
【0016】
R基は、同一かまたは異なっていてよく、分岐および非分岐脂肪ヒドロカルビル鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNなどのヘテロ原子を含む基を有する置換鎖、バックボーンにまたは置換基として脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基を含む鎖、飽和および不飽和鎖などを含むがこれらに限定されない。
【0017】
X+は、価数nの正電荷イオン(例えばN+、P+(n=4)またはS+(n=5))であり、Yは、アニオンで、例えば硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、あるいはハロゲンイオンである。好ましくは、アニオンは、ハロゲンイオン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素である。
【0018】
本発明の実施形態において、分子式nR-X+Yの抗菌性化合物は、1,000グラム/モルより大きい、好ましくは1,000グラム/モルと15,000グラム/モルとの間、より好ましくは5,000グラム/モルと10,000グラム/モルとの間の分子量を有している。従って、分子式nR-X+Y-の活性分子(AM)は、ポリマーであることが望ましい。望ましい活性分子の例は、ポリ(ジエチルテトラデカンアンモニウムエチル)メタクリレートである。ポリウレタン分散体において高分子量の活性分子(AM)を使用する利点は、適用されたコーティング層の乾燥中に、活性分子の蒸発が禁じられるか、あるいは少なくとも軽減されることである。もう1つの利点は、高分子の活性分子がコーティングの親水性をより小さくすることである。
【0019】
本発明の実施形態において、抗菌性化合物は、図2に示されたポリマーである。その中でRiおよびRjはC1-C20基を、好ましくはC1-C10、例えばエチル基を表わし、そして、Rkは3と100との間、好ましくは5と50との間の炭素原子を有するより長い鎖を表わしており、この中でC14がもっとも好ましいものである。なぜなら、このような鎖は最適の細菌試験効果を有するためである。
【0020】
本発明の実施形態において、抗菌性化合物は、第3級アミンの中和機能と抗菌性機能とが組み合わせられうる重合体、特に共重合体である。かかる共重合体は、例えば、少なくとも2つのタイプの構成要素、それぞれ[BB1]および[BB2]を有するアクリルエステル共重合体であってよい。[BB1]は、第3級アミンを有するアクリレートエステルを含み、[BB2]は、分子式nR-X+Yの抗菌性化合物を有するアクリレートエステル基を含む。かかる化合物は、コーティングの適用および乾燥後に抗菌性基がコーティング中で良好に固定されるという利点を有する。もう1つの利点は、そのような共重合体がコーティング組成物中のプレポリマーと強い相互作用を示すことである。コーティングされた物品の表面における抗菌性基の存在は、表面が添加剤(特に界面活性剤)を随意に含む有機溶剤または水で頻繁に洗浄されるときでさえ、経時的に実質的に一定である。
【0021】
本発明は更に、当該水性ポリウレタン分散体の製造方法であって、
1.ウレタンプレポリマー組成物(UPP)を調製するステップと;
2.前記UPPを少なくとも1つの第3級アミンを含む構成要素で中和して、中和されたウレタンプレポリマー(NUPP)を得るステップと;
3.溶媒化合物中の抗菌性化合物の溶液を前記NUPPに加えるステップであって、前記抗菌性化合物は分子式nR-X+Yで表され、ここでn,R,XおよびYが前述の意味を有する、ステップと;
4.このように得た組成物を10℃〜60℃の範囲の温度で水と混合するステップと;
5.ジアミンを加えることにより前記NUPPを重合させるステップとを含む方法に関する。
【0022】
抗菌性化合物が共重合体であり、第3級アミンの中和官能性と抗菌性官能性とが上述のように組み合わされる本発明の一実施形態では、上述の方法のステップ2および3は単一のステップに組み合わせられることができる。
【0023】
本発明はまた、存在する物品へのコーティングとしての、前述の水性ポリウレタン分散体または前述の製造方法により得られた水性ポリウレタン分散体の適用の方法に関するものである。当該方法は、
− 処理されるべき物品の表面にポリウレタン分散体を適用するステップと;
− 水を蒸発させるステップであって、これによりnR-X+Yが前記第3級アミンの位置を占める、ステップとを有する。物品への適用および溶媒の蒸発後、問題の物品への抗菌性効果のあるコーティングの適切な付着がもたらされる。
【0024】
本発明は更に、上記の方法に従って処理される物品に関するものである。かかる物品には、例えば病院、高齢者介護施設、養護施設またはその他の公共空間(例えば、空港、鉄道駅など)における作業面;医療機器;手術器具;食品産業;例えば、食品包装;スイミングプール;船舶業界(防汚);キーボード、携帯電話(gsm方式);ドアノブなどがある。
【0025】
[詳細な説明]
要約すると、本発明の分散体は、イソシアネート官能性のプレポリマーを形成し(ステップ1)、少なくとも1つの第3級アミン基を含む化合物でプレポリマーを中和させ(ステップ2)、抗菌性化合物の溶液を添加し(ステップ3)、得られた組成物を水と混合し(ステップ4)、続いてジアミンを添加してプレポリマーの鎖延長をして(ステップ5)、そして随意にプレポリマーの鎖停止をしてポリウレタン分散体を生じることにより、作られる。これらのステップを順に行うことは好ましいけれども、これは必要でない。ステップの順番は変更されることができ、幾つかのステップは組み合わせることができる。例えば、鎖延長および鎖停止あるいはプレポリマーの形成および鎖停止である。これらステップおよびステップを行うために必要な構成要素は下記に説明され、ここで、詳細については前記文書が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般分子式nR-X+Yの抗菌性化合物の構造式である。
【図2】本発明によるポリマーの抗菌性化合物の構造式である。
【図3】本発明による、抗菌特性を有する共重合体のそれぞれ構成要素1および2の構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、添付図面を参照して、より詳細に説明される。
【0028】
ステップ1.プレポリマーの形成
最初のステップにおいて、3つの構成要素が、溶媒の中に溶解される。最初の構成要素はポリイソシアネート、第2の構成要素は少なくとも1つの多活性な水素化合物(便宜的に
「構成要素A」という)、例えばポリオール、そして第3の構成要素は、少なくとも1つの活性水素化合物(便宜的に構成要素Bという)であり、これは、イオン基を含む化合物、アニオン基を形成することができる部分を含む化合物、各酸素原子あたり5個以下の比率の炭素原子を有する、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネート基を含む化合物およびそれらの混合物(例えば2−20の炭素原子、好ましくは2−10の炭素原子、より好ましくは2−5の炭素原子を有する有機カルボン酸基(COOH)を有する短ジオール)からなる群から選択される。イソシアネート基対ヒドロキシル基の好ましいモル比は、例えば、0.2:1と5:1との間、好ましくは1.5:1と3:1との間、より好ましくは1.8:1と2.2.1との間、例えばモル比1.9:1である。これらの構成要素は、互いに反応し、最終的にポリウレタンプレリマーを形成し、これは後の段階で鎖延長される。
【0029】
ポリイソシアネート
イソシアネート官能性ポリウレタンを形成するために使用される代表的なポリイソシアネートには、脂肪族および芳香族ポリイソシアネートが含まれる。適切なポリイソシアネートは、好ましくは脂肪族またはシクロ脂肪族イソシアネートである。芳香族イソシアネートは、紫外線光で変色する傾向があり屋外でのアプリケーションには望ましくないので、余り望まれない。有用なポリイソシアネートには、US-A3,700,643(Smith他)およびUS-A3,600,359(Miranda)に記載されているポリイソシアネートが含まれる。ポリイソシアネートの混合物(例えばISONATE2143L(米国ミシガン州ミッドランド、ダウケミカル社より))も使用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、ポリイソシアネートは、以下の一般分子式によるジイソシアネートである:
【化1】

ここで、R1が、分岐および非分岐鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNのようなヘテロ原子を含む基を有する置換鎖、バックボーンにおいてまたは置換基として脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基を含む鎖、1-100、好ましくは1-50、より好ましくは2-25、最も好ましくは2-15の炭素原子を有する飽和および不飽和鎖を表している。
【0031】
特に好ましいジイソシアネートには、ジシクロヘキシルメタン4,4’ジイソシアネート(一般的に「H12MDI」と呼ばれる)および3,5,5-トリメチル-1-イソシアネート-3-イソシアネートメチルシクロヘキサン(一般的に「イソホロンジイソシアネート」と呼ばれ、IPDIと省略される)が含まれ、これら双方は、それぞれ商品番号DESMODUR WおよびDESMODUR 1として米合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグのバイエル社から入手可能である。その他の好ましいジイソシアネートおよびポリイソシアネートには、(i)テトラメチレンジイソシアネート、(ii)1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、(iii)1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、(iv)ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(一般的に「MDI」と呼ばれる)、(v)4,4,4’’-トリイソシアネートトリフェニルメタン、(vi)ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(一般的に「ポリマーMDI」と呼ばれる)、(vii)トルエンジイソシアネート(一般的に「TDI」と呼ばれる)、(viii)ヘキサメチレンジイソシアネート(一般的に「HDI」と呼ばれる)、(ix)ドデカンメチレンジイソシアネート、および(x)m-およびp-キシレンジイソシアネートが含まれる。
【0032】
好ましい実施形態において、ジイソシアネートは、イソホロン-ジ-イソシアネート(IPDI)である。
この構造式は、下記の通り:
【化2】

【0033】
構成要素A
構成要素Aは、低級アルコール対水の比率が重量で少なくとも50:50の低級アルコール−水の溶媒混合液に不溶性である。本文において、「不溶性」の用語は、一般的に、アルコール対水の比率が重量で少なくとも50:50のとき、少なくとも1グラムの化合物が凡そ25℃で約4グラムのアルコール−水に溶解しないことを意味する。幾つかのポリオールは、この特性評価方法を使ってポリオールが不溶性であるか否かを決定するには、融解のため加熱を必要とする場合がある。この特性評価方法で使用されるアルコールは、分散体を調製するために使用されるのと同じアルコールとするべきである。
【0034】
構成要素Aとして有用な化合物は、好ましくは300グラム/モルと10,000グラム/モルとの間、より好ましくは400グラム/モルと5,000グラム/モルとの間、最も好ましくは500グラム/モルと3,000グラム/モルとの間の数平均分子量を有している。幾つかの異なるタイプのポリオールが、構成要素Aとして使用するのに適している。一実施形態において、ポリオールは、以下の一般分子式のジオールである。
【化3】

適切な例は、以下の分子式のポリ-エーテル-ジオールである。
【化4】

【0035】
上記では、R2、R3およびRxは、分岐および非分岐鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNのようなヘテロ分子を含む基を有する置換鎖、バックボーンにおいてあるいは置換基として脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基を含む鎖、飽和および不飽和鎖を示し、1-100、好ましくは1-50、より好ましくは2-25、最も好ましくは2-15の炭素原子を有する。すべてのR基は、独立して、同一か異なっていてよい。インデックスXは、ポリエーテルジオール内における異なったヒドロカルビル基を区別する役目を果たす。
【0036】
米合衆国イリノイ州シカゴのUnichema North AmericaからPRIPOL 2033として入手可能なC36二量体脂肪アルコールのような単量体のポリオールが使用可能である。平均して約1.6から約4のヒドロキシル基を有するオリゴマーポリオールが好ましい。好ましいオリゴマーポリオールの1つのタイプは、10より多い炭素原子、好ましくは20より多い炭素原子を有する二酸および/またはジオールに基づく脂肪族ポリエステル系ポリオールである。
【0037】
市販の好ましいポリエステルポリオールは、36個の炭素原子二塩基酸および/またはジオールに基づくと考えられる、米合衆国イリノイ州シカゴ、Unichema North Americaから入手可能なPRIPLAST 3191,3192,3196,3197,1906および1907である。これらのジオールの調製に使用されている具体的な構成物質は、次のものと考えられる:即ち、PRIPLAST 3192に関して−ダイマー酸、アジピン酸、1.6ヘキサンジオール;PRIPLAST 3193に関して−ダイマー酸とエチレングリコール;PRIPLAST 3194に関して−ダイマー酸、アジピン酸、とエチレングリコール;PRIPLAST 3196に関して−ダイマー酸と1.6-ヘキサンジオール;PRIPLAST 3197に関して−ダイマー酸とダイマージオール;PRIPLAST 1906に関して−イソフタル酸とダイマージオール;およびPRIPLAST 1907に関して−テレフタル酸とダイマージオールである。「ダイマー酸」という用語は、不飽和C18脂肪酸の二量化により形成されるC36二酸であると理解され、そして「ダイマージオール」はC36ダイマー酸の水素化により形成されるC36二官能性ポリオールである。
【0038】
もう一つの好ましいオリゴマーポリオールは、ポリブタジエンやポリイソプレンを含むヒドロキシ末端ポリアルカジエンである。市販の好ましいヒドロキシ末端ポリブタジエンは、米合衆国ペンシルベニア州Elf Atochem North Americaから入手できるポリbd樹脂である。
【0039】
さらに別の好ましいオリゴマーポリオールは、凡そ19重量%より少なくない1,2-ブタジエン添加物を有する水素化されたポリイソプレンと水素化されたポリブタジエンを含む水素化されたポリアルカジエンポリオールである。市販の好ましい水素化されたポリブタジエンジオールには、米合衆国テキサス州ヒューストンのシェル化学社からのKRATON L2203と日本国東京都の三菱化学社からのPOLYTAIL樹脂が含まれる。好ましいオリゴマーポリアミンは、アミン末端ブタジエン重合体およびブタジエン-アクリロニトリル共重合体である。市販の好ましいアミン末端ブタジエン-アクリロニトリル共重合体は、米合衆国オハイオ州クリーブランドのB.F. Goodrich社からのHYCAR ATBNである。
【0040】
シリコーンポリオールまたはポリアミンおよびパーフルオロアルキル官能性ポリオールを使用することもできる。それは良好な自己接着性膜を形成することが望まれる場合である。これらのポリオールは、ポリウレタンの約5重量%より多くは存在すべきではない。なぜなら、US‐A5,679,754(Larson他)の教示に基づいて、その低表面エネルギー特性が、望まれる接着特性を損なうことが予想されるからである。
【0041】
少なくとも50:50(重量)の低級アルコール対水を含むアルコール−水の混合物に不溶なポリオールに加えて、低分子量の「モノマー性」ポリオールが、プレポリマー形成の際に使用できる。モノマー性ポリオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アミノエタノールなどが含まれる。使用するとき、モノマー性ポリオールの量は、プレポリマーの粘度を最小限に抑えるために好ましくは低く(例えば重量で約10%未満に)保たれるべきである。
【0042】
プレポリマーを形成するために使用されるポリオールおよびイソシアネートの量は、最終的な分散体の物理的および化学的特性に影響を及ぼす。変化しうる特性には、延性、水の吸収力、引っ張り強度、弾性率、耐摩耗性、最低成膜温度、ガラス転移温度、耐紫外線性、耐加水分解性および色彩安定性などが含まれるがこれらに限定されない。一般的には、より長い鎖のポリオールは、より延性がありかつより低いTg、より高い延性、より低い引っ張り強度を有する分散体およびこれから作られる膜を提供する傾向がある。それとは対照的に、より短い鎖のポリオールは、高い弾性率、より大きな引っ張り強度、およびより高いTgを有する分散体およびこれから作られる膜を提供する傾向がある。脂肪族ポリオールは、減少した水の吸収力を有する物質を提供する傾向がある一方、バックボーンにヘテロ原子を含むジオール(即ち、芳香族)は増加された水の吸収力を有する傾向がある。膜内に残った水の量は、その引っ張り特性および延伸特性に影響を与える。加水分解への耐性を提供するために、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール類など)およびポリシロキサンポリオール、およびポリオレフィンバックボーンに基づくポリオールのように加水分解的に安定したポリオールを選択する必要がある。疎水性のサブユニットに基づくもの(UnichemaからのPRIPLASTポリオール)、イソフタル酸に基づくもの、さらにはポリカプロラクトンポリオール等、加水分解に耐性があるポリエステルポリオールが使用されることができる。その他のポリオールは、水素化されたポリブタジエンポリオール、フッ素化されたポリエーテルポリオール、シリコーンポリオール、および所謂「シリコーン・コポリオール」であり、これらは、末端基にアルコールまたはアルキル基を有するペンダントポリエーテル鎖を有するポリシロキサンである。
【0043】
構成要素B
ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1つの水またはアルコール−水溶解性の活性水素化合物を有する構成要素Bを使用して、水またはアルコール−水に分散性にされる。構成要素Bはまた、乾燥後にコーティングの親水性を低下させ、そして抗菌作用を向上させうる。
【0044】
好ましくは、これは多活性な水素化合物である。構成要素Bは、水またはアルコール−水の溶剤系においてポリウレタン分散体を安定させる作用を主に持つ。「アルコール−水に可溶」の語句は、前述のように、少なくとも1グラムの化合物が約4グラムのアルコール−水の混合物の中で凡そ25℃で溶解されることを一般的に意味する。特定の化合物は、それが水溶性であるか否かを特性評価方法を使って決定するために、融解のための加熱を必要とする場合がある。一般的には、均質な単相の可溶性のポリオールは、視覚的に透明に見える。この特性評価方法で使用されるアルコール−水の混合物は、分散体を調製するために使用されるのと同じアルコール−水混合物であるべきである。水またはアルコール−水への溶解性は、イオン基、イオン基を形成することができる部分、ポリ(C2〜C4)アルキルエーテルの形の非イオン安定剤およびこれらの混合物の存在により、構成要素Bに与えられる。一般的に、構成要素Aの濃度が増加するに伴い、安定した分散体を維持するために安定剤の量を増やす必要がある。
【0045】
適切な構成要素Bは、例えば、カルボン酸およびカルボン酸塩官能性ポリオールであり、これは、ジメチロールプロピン酸およびそのポリエトキシレート化された誘導体を含み、さらに、コネチカット州ダンバリーのUnion Carbide Specialty Chemicals Div.から入手できるUCARMODポリオールのような酸グラフトポリエーテルを含む。これらは、プレポリオールの調製の前後のいずれかに、有機または無機塩基で中和される。
【0046】
アルコール−水または水への分散性を得るために、プレポリマーのイオン当量(イオン官能性当量あたりのグラムプレポリマー)は、1000から15000、好ましくは1500から12500、より好ましくは2000から10000、最も好ましくは2500から7500の範囲であるべきである。
【0047】
ポリ(即ち、C2〜C4)アルキルエーテルは、非イオン安定剤として機能することができることが分かった。例えば、エチレンオキシド付加物部分が、唯一の安定剤としてまたはポリウレタンのポリマー鎖中のイオン基に加えて加えられることができる。エチレンオキシド化合物は、少なくとも1個の活性水素基を有するエチレンオキシドの反応から派生されるいかなる化合物であってもよく、これに、ランダムまたはブロック方式で他のアルキレンオキシドコモノマーが任意に追加される。好ましいエチレンオキシド化合物は、少なくとも2個の活性水素基を有する。適切なエチレンオキシド安定化化合物の例には、ポリエチレンオキシドのホモポリマー(例えば、CARBOWAX)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体(例えば、ニュージャージー州マウントオリーブのBASF社からのPLURONIC)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダム共重合体(例えば、コネティカット州ダンベリーのユニオンカーバイド社からのUCON FLUIDS)、シリコーンコポリオール、およびUS-A4,661,667(Schoiz氏他)に記載のポリエチレンオキシドに基づく界面活性剤が含まれる。驚いたことに、その他の高級なアルキルポリエーテルが、アルコール−水の溶媒系の非イオン性安定剤として機能することが分かった。例えば、ポリプロピレングリコールが、更にはポリ(テトラメチレンエーテル)でさえ、アルコール対水の比が約65:35を超えるハイドロ−アルコールの系で分散体を安定化させることができる。このおよび他の安定剤の有効性は、当然、分散されるポリウレタンおよび溶媒系の化学的性質により左右される。
【0048】
アルコール−水への溶解性を与えるエーテルまたはエステル官能性などの十分な極性非イオン基を有するオリゴマーポリオールの例には、(i)ポリオキシアルキレンジオール、トリオール、およびテトロール、(ii)ポリオキシアルキレンジアミンおよびトリアミン、(iii)有機ポリカルボン酸および多価アルコールのポリエステルジオール、トリオールおよびテトロール、ならびに(iv)106から約2000の分子量を有するポリラクトンジオール、トリオールおよびテトロールが含まれる。
【0049】
好ましいオリゴマーポリオールおよびポリアミンには、(i)ポリエチレンオキシドホモポリマー(例えば、コネティカット州ダンベリー、ユニオンカーバイド社からのCARBOWAXシリーズ)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体(例えば、ニュージャージー州マウントオリーブのBASF社からのPLURONIC界面活性剤)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダム共重合体(例えば、コネティカット州ダンベリーのユニオンカーバイド社からのUCON FLUIDS)、シリコーン・コポリオール、US-A4,661,667(Scholz他)に記載されたポリエチレンオキシドに基づく界面活性剤、(ii)ペンシルベニア州ニュータウンスクエアのAcro Chemical社からのACCLAIMシリーズのポリオールのようなポリオキシプロピレンジオールおよびトリオール、(iii)ユタ州ソルトレイク市のHuntsman社から入手できるJEFFAMINEシリーズのようなポリエーテルジアミンおよびトリアミン、(iv)デラウエア州ウィルミントンのE.l.du Pont社から入手できるTERATHANEシリーズのようなポリエーテルポリオール(これはポリオキシテトラメチレンジオールである)、およびイリノイ州シカゴのQuaker Oats社から入手できるPOLYMEGシリーズ、(v)ペンシベニア州ピッツバーグBayer社から入手できるMUL TRONのようなポリエステルポリオール(これはポリ(アジピン酸エチレン)ポリオールである)、(vi)マサチューセッツ州ピーボディのStahl USA社から入手できるポリカーボネートジオール、および(vii)コネティカット州ダンベリーのUnion Carbide社から入手できるTONEシリーズのようなポリカプロラクトンポリオールなどが含まれる。ポリチオエーテルポリオールも有用である。
【0050】
ハイドロ−アルコール系において安定的な分散体を得るためには、非イオン安定剤が、ポリウレタン・プレポリマーの中に、重量で3%〜30%、好ましくは4%〜20%、および最も好ましくは5%〜10%一般的に存在する。非イオン安定剤の量は、プレポリマーの疎水性および低級アルコール対水の比により左右される。一般的に、より疎水性であるプレポリマーは、より多くの量の安定剤を必要とする。好ましい構成要素Bの一般分子式は、以下の通り:
【化5】

ここで、R4は、好ましくはCおよびH原子からなるC1-C5のヒドロカルビル基である。
【0051】
第1のステップで使用される溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メトキシプロパノールアセテート(PMアセテート)、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、N-メチル・ピロリジノンおよびそれらの混合物である。アクリル酸またはメタク
リル酸モノマー、例えば、ブチルメタクリレートも、溶媒として使用可能であり、この場合、形成される最終製品はポリウレタンアクリレートである。その他の疎水性溶媒も可能である。
【0052】
ポリプレマーを形成するための上述の構成要素(即ち、「A」構成要素、ポリイソシアネート、および「B」構成要素)の反応は、それらの選択によって左右される。芳香族イソシアネートは、一般的に、脂肪族イソシアネートよりかなり反応が早く、かつ発熱反応のため、加熱する必要なしにポリオールと反応されることができる。プレポリマー形成反応は、100%固形物(即ち、溶媒がないかまたはほとんどない)として行われるか、または、イソシアネートとは反応しない随意の有機溶媒中で実行されてよい(上述の通り)。好ましくは、使用される溶媒は、最終分散体において除去する必要はない。最終的な分散体の一部となるプレポリマーに残される溶媒および/または可塑剤を組み込むことも可能である。
【0053】
好ましい脂肪族イソシアネートを多官能性アルコールと共に使用するとき、高固形分濃度および約50℃から80℃までの上昇された反応温度が望ましい。その結果、モノマーのポリマーヘの高変換が、合理的な時間、例えば、8時間以内、望ましくは3時間以内で起こりうる。イソホロンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートおよび脂肪族第1級アルコールまたは第2級アルコールを組み込む好ましい実施形態は、少量の触媒の存在下で、約2時間約80℃まで、通常加熱される。
【0054】
有用な触媒には、約0.01から1.0モル%(イソシアネート試薬に対して)までの有用な濃度の、ジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジアセテートのような金属配位子、およびトリエチルアミンのようなアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、およびDABCO(1.4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)が、含まれる。好ましい触媒は、皮膚に対して刺激性がなくかつ敏感でもない。最も好ましい触媒は、ポリマーバックボーンに結合されることが可能であり、従って非浸出性であるもの、例えばElf Atochem North AmericaからのFASTCAT 4224、および、メチルジエタノールアミンおよびテトラメチルグアニジンのような特定のアルコールおよびアミン官能性の第3級アミン触媒である。約100から1000グラムのバッチ調製においては、総樹脂100グラム当たり約0.1グラムのFASTCAT4224が使用される。適切な触媒の具体例としては、ジ-ブチル錫ラウレート(DBTL)が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネート対ポリオールの比は、プレポリマーが約1,000グラム/モルから25,000グラム/モルの分子量を有するように調整される。ポリイソシアネートの当量は、好ましくは、ポリオールの総当量(即ち、活性水素の総当量)を超過し、その当量超過は、好ましくは0.1から5、より好ましくは0.5から2、そして最も好ましくは0.8から1.2である。
【0056】
プレポリマーの粘度は、水性アルコール溶媒系における分散を容易にするために比較的低く抑える必要がある。一般的に、プレポリマーの粘度は、23から25℃で、ブルックフィールドRVTロトビスコ毛細管式粘度計(ブルックフィールド工学研究所、ストートン、マサチューセッツ州)を使用して測定した場合、約250,000センチポアズ(cps)、好ましくは150,000cps、より好ましくは約100,000cps、そして最も好ましくは約75,000cpsであるべきである。代わりにまたはこれに加えて、プレポリマーは、加熱されるかまたは溶媒が追加されることにより粘度を下げられる。
【0057】
好ましい実施形態において、ポリイソシアネート、構成要素Aおよび構成要素B(それぞれ分子式1,3,5に従う)を含む溶液が加熱される。好ましくは、45℃と85℃の間、好ましくは50℃と75℃の間、より好ましくは55℃と65℃の間、例えば、ほぼ60℃の温度に達したら、選択的保護剤が加えられ、この保護剤は、選択的触媒としても作用する(例えばジ-ブチル-錫ラウレート(DBTL))。この選択的保護剤は、最初の構成要素のイソシアネート基の1つを保護し、そして最初の構成要素の他のイソシアネート基の反応を進める。ジイソシアネートとしてのIPDIの例では、分子式(2)の右上のジイソシアネート基が保護される。反応は、20℃から95℃の温度範囲、好ましくは40℃と90℃の間、より好ましくは60℃と85℃の間、例えば約80℃で起こる。溶液は、別の方法を使って連続的に撹拌しまたはかき混ぜられる。反応は、凡そ3時間後に80℃の温度で完了する。反応の完了は、より低い温度ではより長い時間がかかる可能性がある。遊離カルボン酸基を有するウレタン・プレポリマーが形成し、このプレポリマーは、UPP(ウレタン・プレポリマー組成物)として表記され、そして下記の分子式を有してよい(その分子式は、ポリイソシアネート、構成要素Aおよび構成要素Bのモル比により決まる)。
【化6】

ここで、kおよびlは、0から20、好ましくは1-15の整数であり;kとlとの合計は少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり;mは1から100までの整数であり;そしてR1,R2,R4は以前に論じたのと同じ意味を持つ。
【0058】
UPP鎖は、好ましくは、少なくとも1つのR2と少なくとも1つのR4-COOH基を含む。UPP鎖内の両基間の比率は、反応混合物中の構成要素AおよびBのモル比によって決まる。好ましくは、mは、1〜50、より好ましくは1〜25の整数である。ウレタンプレポリマーの末端基は、ポリイソシアネート、構成要素Aおよび構成要素Bのモル比に応じて、‐NCO(分子式6に示されるとおり)または‐OHとなる。OH-基に対して超過のNCO-基が反応混合物内に存在する場合、前者であってよい。NCO-基に対して超過のOH-基が反応混合物内に存在する場合後者であってよい。得られたウレタン・プレポリマーUPPは、依然溶液中である。
【0059】
ステップ2:UPPの遊離カルボン酸基の中和
第2のステップにおいて、第4の構成要素が、少なくとも1つの第3級アミンを含む(好ましくはまだ温かい)溶剤に加えられる。
【0060】
一般的には、第3級アミンは、下記の分子式による:
【化7】

ここで、Ra,RbおよびRcは脂肪族、シクロ脂肪族および芳香族基を含むヒドロカルビル基であり、それは、独立して相互に同じか異なっていてよい。好ましい実施形態において、Ra, RbおよびRcは、エチル-および/またはメチル基である。少なくとも1つの第3級アミンを有する適切な化合物として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、ジメチルアミノエチルメタ-アクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタ-アクリレート(DEAEMA)が挙げられる。
【0061】
第3級アミンは、絶えず撹拌しながら約20‐30分間、ウレタンプレポリマーUPPのカルボン酸基と反応させられる:第3級アミンは、水素原子を引きつけそして正電荷を帯びる一方、COOH基はその水素原子を放出してそして負電荷を帯びる。正の基および負の基は、互いに引き付け合い、そして錯イオンが形成され、これが、本発明の文脈において、中和されたウレタン-プレポリマーNUPPとして示される。これは、下記の分子式で表示される(分子式8に従う):
【化8】

ここで、k,l,m,R1,R2,R4,Ra,RbおよびRcは、以前に論じたのと同じ意味を持つ。
【0062】
ステップ3:抗菌性化合物の溶媒の添加
第3ステップにおいて、溶媒(例えばアセトン)中のnR-X+Yの溶液が前記溶液に加えられる。これは、最終的なコーティングにおいて抗菌効果を有する分子であり、したがって、活性分子AMとして表示される。一般分子式は図1に示されている。ここではX+は、価数nを有する正電荷イオンであり、そしてYは、陰イオンで、例えば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩またはハロゲンイオンである。好ましくは、陰イオンは、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素などのハロゲンイオンであってよい。陽イオンは、n個のヒドロカルビル基Rに結合される。図1の例では、X+は、4の価数を有し、4つのヒドロカルビル基Re,Rf,Rg,Rhが示されており、これらのヒドロカルビル基は独立して相互に同じであってよく、そして分岐および非分岐鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNのようなヘテロ原子を含む基を有する置換鎖、バックボーンにおいてまたは置換基として脂肪族および/またはシクロ脂肪族およびまたは芳香族基を含む鎖、飽和および不飽和鎖を含むがこれらに限定されない。好ましくは、C1−C100のヒドロカルビル鎖、より好ましくはC1-C50ヒドロカルビル鎖、最も好ましくはC1-C25炭素鎖が使用される。
【0063】
窒素(N)およびリン(P)は、4の価数を有するX+の例である。しかしながら、例えば硫黄の場合のように、X+は5の価数を持つことが可能である。その場合には、5つのヒドロカルビル基が存在することになる(図示されていない)。
【0064】
適切な抗菌用化合物は、例えば以下の通り:N-アルキル化ポリエチレンイミン(N-アルキル化-PEI)、ポリ(4-ビニル-N-アルキルピリジニウム臭化物)、N-ヘキシル化ポリ(ビニルピリジン(ヘキシル-PVP)、ポリスチレンブロック-ポリ(4-ビニル-N-メチルピリジニウムヨウ化物)(P4VMP)[(PS-b-P4VMP)、ポリ[トリブチル(4-ビニルベンジル)ホスホニウム塩化物(PTBVBP)、ポリ(アリーレンスルホニウム)塩。
【0065】
nR-X+Yを製造する工程は既に知られている:従って、更に説明する必要はない。
【0066】
ステップ4:分散体の調製
分散媒体として使用される溶媒は、低級アルコール(C1〜C4の分岐または直鎖脂肪族アルコール)、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい低級アルコールは、エタノール、n-プロパノール、および2-プロパノール(IPA)である。最も好ましい溶媒は、水、IPA、エタノールおよびそれらの混合物である。アルコール対水の比は、一般的に重量で50:50より大きい。好ましくは、アルコール対水の比率は、60:40〜90:10w/wであり、より好ましくはこの比率は70:30〜85:15である。一般的には、より大量のアルコールは、より速い乾燥時間を示す分散体を生じる。
【0067】
特定の分散体に関して、驚いたことに、より高いアルコール−水の比がより低い粘度の分散体をもたらすことが分かった。この結果について驚くべき理由は、より高いアルコール−水の比では、より多くのポリウレタンポリマーが可溶化し、粘度を高めることになることが期待されることである。このように、高いアルコール−水の比(即ち、75:25より大きい比)で低粘度の分散体を達成するためには、エタノールに溶解しないポリオール(即ち、200プルーフエタノールにおいて重量で10%未満の溶解限度)が、総プレポリマー重量に基づいて、重量で少なくとも5%で、好ましくは少なくとも10%で、そして最も好ましくは少なくとも15%のプレポリマー濃度で、使用される。約90:10より大きいアルコール−水の比率において、ポリウレタン分散体およびこれから生成される膜はより低い引張強度を有する傾向があることが分かった。2-プロパノールのような第二級アルコール溶媒は、エタノールのような第一級アルコール溶媒で調製された分散体から作られた膜と比較すると、より高い引張強度を有する膜を生成することが分かった。
【0068】
溶媒系はまた、追加の溶媒を含むことができる。例えば、他の急速に蒸発する皮膚相溶性の(skin compatible)溶媒を使用することができる。それには、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS);環状シリコーン(D4およびD5);PERMETHYL97AおよびISOPAR Cのようなイソパラフィンを含むC4〜C10アルカン;アセトン;ヘドロフルオロエーテル(HFEs)などが挙げられる。
【0069】
急速な蒸発を達成するためには、「低い蒸発熱の溶媒」、即ち、約150カロリー毎グラム(cal/g)未満、好ましくは約125cal/g未満、より好ましくは約100cal/g未満、そして最も好ましくは約90cal/g未満の蒸発熱を持つ溶媒を使用することが望ましい。比較の目的で、水は540cal/gの蒸発熱を持ち、エタノールは204cal/gの蒸発熱、イソプロピルアルコールは159cal/gの蒸発熱を持っている。低い蒸発熱の溶媒は、溶媒相の重量で、約0〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜30%のレベルで溶媒相に加えられてよい。ただし、低い蒸発熱の溶媒がその濃度で溶剤相と混和することが条件である。HMDS(44.3cal/gの蒸発熱)およびISOPAR C(予測される蒸発熱は約87cal/gである)が重量で10%〜30%のレベルで、低級アルコール対水の比率が少なくとも70:30のハイドロ−アルコール溶媒混合物に加えられるとき、非常に急速な乾燥時間で安定した分散体が生じることが分かった。
【0070】
本発明の分散体は、種々の方法で調製することができる。第1の方法では、プレポリマーが、100%固形物としてアルコール−水の溶媒混合物に加えられ、または第2の溶媒で先ず希釈化され、これは、後に除去されてもされなくてもよい。第2の溶媒が除去される場合、これは、好ましくは水または低級アルコールのいずれよりも揮発性が高い。もう一つの方法では、プレポリマーは、アルコール−水の溶媒混合物の一部または全てに分散されることができ、引き続きこれに追加の溶媒(同じでも異なっていてもよい)を追加することができる。分散後に加えられる追加の溶媒は、望ましくは、分散体が安定性を維持することを確実にするためにゆっくりと加えられる。また別の方法では、プレポリマーおよび/または分散溶剤は、加熱されても冷却されてもよい。更に別の方法では、プレポリマーは、鎖延長剤および鎖停止剤が溶媒に加えられる前、加えられると同時に、または加えられた後に、アルコール−水の溶剤に分散されてよい。
【0071】
好ましい分散方法は、凡そ45℃〜80℃の温度までプレポリマーを加熱することによりその粘度を減少させることを伴う。加熱されたプレポリマーは、アルコール−水溶媒を含むホモジナイザーのような急速に撹拌する高せん断混合装置に加えられる。その後、ポリアミン鎖延長剤が、所定の速度、即ち、制御された速度で加えられる。代わりに、幾つかの組成においては、ポリアミンが、先ず溶剤混合物に加えられ、そして加熱されたプレポリマーが急速に混合される溶媒混合液に加えられる。
【0072】
アルコール−水系に関して、低級アルコールのレベルは、一般的に、重量で少なくとも20%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは60%、更により好ましくは少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも75%である。低級アルコールのレベルは、重量で、好ましくは95%以下、およびより好ましくは90%以下である。本書で使用されているように、「固形物パーセント」は、室温で分散体中に存在する非揮発性構成要素の割合として定義されている。固形物パーセントは、一般的に、「A」構成要素、イソシアネート、および「B」構成要素、並びに加えられた鎖延長剤、鎖停止剤、およびその他の加えられた不揮発性物質(可塑剤、連続相可溶性ポリマーなど)の合計重量として解釈される。分散体の固形物パーセントは、約15%より大きく、好ましくは25%より大きく、そしてより好ましくは約30%より大きく、最も好ましくは約35%より大きいべきである。
【0073】
本発明の一態様では、分散体から、皮膚、髪およびガラス等の殆んどの表面にほとんど接着または粘着しないがそれ自体に対しては比較的非常に高い接着性のある膜が作製されることができる。本書に説明されたテスト方法に従ってテストすると、それ自体の接着性のガラスに対する接着性の割合は、約2:1より大きく、好ましくは約3:1より大きく、より好ましくは約5:1より大きく、そして最も好ましくは約10:1より大きい。このような高比率はすべてのアプリケーションに関して必要なわけではないが、特定の実施形態では、当該比率は、20:1を超え、更に30:1さえ超える。
【0074】
高い自己接着コーティングを生成する1つの要件は、最終分散体のポリウレタンの分子量を制御することであることが分かった。好ましい重量平均分子量は、約10000〜50000、より好ましくは約15000〜35000、最も好ましくは約20000〜30000ダルトンである。分子量が高すぎる場合、結果として得られる接着剤は、非常に小さい自己接着性を持っている。分子量が低すぎる場合は、接着剤は、他の基材に対してより高い粘着性あるいは接着性を持つ傾向がある。
【0075】
最終分散体におけるポリマーの分子量は、幾つかの方法で制御できる。最初の方法は、分散媒体として使用されるアルコール対水の比に関係する。ある種のポリマーに関して、アルコール対水の比率が約75:25wt/wtより高いとき、好ましくは80:20より高いとき、より好ましくは約85:15以上で、自己接着性が達成されることが判明している。理論に縛られることを望まないが、より高いアルコール対水の比において、より多くのイソシアネートが単官能性アルコール溶剤と反応し、これにより分子量を制限すると考えられる。また、より高いアルコール比率がより良い溶媒化およびプレポリマーの溶解をもたらし、それにより単官能性の低級アルコール溶媒とイソシアネート基との反応の可能性を高めると考えられる。
【0076】
プレポリマーの分子量は、溶媒として使用されるアルコールの種類により制御される。エタノールなどの一級アルコールは、イソプロパノールなどの二級アルコール溶媒よりも高い自己接着性をもたらしうる。
【0077】
プレポリマーの分子量は、分散の方法および鎖延長剤を加える方法により更に制御できる。現時点では、溶剤の中に先ずプレポリマーを分散させ、続いてアミン添加(鎖延長剤として)をより遅い速度で行うことにより、自己接着性のレベルを高めることができると考えられる。しかし、ゆっくりとしたアミン添加速度は、粘着レベルを高めうる。
【0078】
自己接着性のレベルを制御することについて現在好ましい方法は、鎖延長のステップの前またはその最中に追加される単官能性アミンを使用することである。この方法は、幾つかのイソシアネート基のエンド・キャッピングを生じ、これにより分子量を制限する。単官能アミンは、一般的に次のような構造を持っている:R5R6NH、ここでR5とR6は独立してHまたはC1〜C22アルキル;C6〜C28アリール、またはC6〜C28アラルキルであり、これらはN、O、Sにより可能な位置で任意に置換され、アルコール第3級アミン、第4級アミン、ケトン、およびカルボン酸置換を含む。好ましい単官能性アミンは、組成中に未反応で残存した場合に低い皮膚刺激性をもたらすものであり、例えば、2-アミン-2-メチルプロパノールまたはより高級なアルキル第一級・第二級アミン、さらに、第1級および第2級アルカノールアミンである。単官能性アルコールあるいはメルカプタンも分子量を制御するために使用されることができるが、これらは一般的に分散および鎖延長の前にプレポリマーに対して追加される。
【0079】
イオン安定剤のレベルも自己接着性に影響を及ぼしうる。現時点では、より高いレベルの安定剤は、より低い自己接着性をもたらしうると考えられる。
【0080】
好ましい実施形態において、中和されたウレタンプレポリマーNUPPのnR-XYとの混合物は、分散体を得るために第4ステップで水と混合され、その時の温度は、10℃〜60℃、好ましくは15℃〜50℃、最も好ましくは20℃〜40℃である。
【0081】
分散体の調製には2つの可能なバリエーションがある。1つ目では、水が、溶液に対して一滴ずつ、絶えず撹拌しながら加えられる。2つ目では、溶液が、水に対して一滴ずつ、絶えず撹拌しながら加えられる。疎水性有機溶媒は、水と混合せず、分散体が作られる。中和されたウレタンプレポリマーNUPPの中和されたカルボル酸基は極性である一方で、ポリマー分子の残りの部分は無極性である。
【0082】
ステップ5.プレポリマーの鎖延長
望ましい特性を有する分散体を得るためには、プレポリマーの分子量を増加する必要がある。この措置は、プレポリマーを「鎖延長剤」と反応させることにより達成される。本書で使用されている「鎖延長」という用語は、約2〜4、より好ましくは2〜3、最も好ましくは2の官能性を有し、更に一般的には約30〜2000、好ましくは30〜1000の分子量を有する、多活性な水素化合物を意味する。好ましい鎖延長剤は、多官能性アルコール、多官能性アミン、またはカルボン酸ヒドラジドである。最も好ましい鎖延長剤は、多官能性アミンおよびカルボン酸ヒドラジドである。
【0083】
有用な多官能性アミンには次のものが含まれる:エチレンジアミン;1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン;トリス(2-アミノエチル)アミノ;およびユタ州ソルトシティのHuntsman社からのJEFFAMINE D230およびJEFFAMINE D400のようなアミン末端ポリエールである。
【0084】
有用なカルボン酸ヒドラジドには、アジピン酸ジヒドラジドおよびシュウ酸ジヒドラジドが含まれる。特に有用な多官能性アルコールには、2〜24の炭素原子を有するアルキレンジオール(例えばエチレングリコール);1,4ブタンジオール;および1,8オクタンジオールが含まれる。有用なポリチオールには、1,2エタンジチオール;1,4-ブタンジチオール;2,2’-オキシトリス(エタンチオール)およびポリ(オキシエチレン)ジオールおよびトリオールのジ-およびトリ-メルカプトプロピオン酸エステルなどが含まれる。水は、イソシアネートと反応して不安定なカルバミン酸を形成し、これは二酸化炭素を失ってアミンを遊離させるので、鎖延長剤として有用である。このアミンは、他のイソシアネートと反応するのに利用できる。水を鎖延長剤として使用する際、ビス(ジアルキルアミノエチル)エーテルのような触媒が、イソシアネートと低級アルコールとの間の潜在的な反応よりもイソシアネート/水反応を優先的に加速させるように使用するべきである。
【0085】
プレポリマーが2以下の官能性を有しかつ鎖延長剤が二官能の場合、鎖延長のステップにおける活性水素に対するイソシアネートの比率は、好ましくは約0.6-1.2対1、より好ましくは0.75-1.0対1および最も好ましくは0.80-1.0対1である(但し、唯一の鎖延長剤として使用される場合を除く。この場合、水は大きなモル過剰に存在する)。プレポリマーが2より大きい官能性を有する場合、2より大きい官能性を持ったポリオールまたはポリイソシアネートの使用のため、鎖延長剤に存在する活性水素に対するイソシアネートの比率は、ゲル化を防止するために比例して下方修正する必要がある。
【0086】
本発明の分散体は、水または低級アルコールの比較的高い濃度(通常、20:80w/wより多いアルコール対水)を有するアルコール−水の中に存在する。この環境において、イソシアネートが単官能基のアルコール溶剤に反応して、イソシアネートの官能性プレポリマーのエンドキャッピングが起こる。従って、多官能性アミンの鎖延長剤としての使用が望ましい。その理由は、アミンが、低アルコールよりもイソシアネートに対してずっと反応性が高く、分子量がより良く制御されるからである。刺激性および/または感作が関心事である皮膚において使用する場合、残存遊離アミンが最終分散体中でほとんどまたは全く残らないようにするために、イソシアネート当量対アミン当量の最も好ましい比率は、約1:0.6−0.99である。
【0087】
ポリウレタンポリマーを形成する反応は、鎖停止種を使用して停止することができる。鎖停止ステップは任意である。鎖停止は、成長するポリマー鎖を停止し、これにより、分子量およびポリマーの物理的特性を制御する。1つの実施形態において、ジアミン鎖延長剤が、過剰に使用されている。
【0088】
過剰なジアミンは、鎖停止剤として機能する。もう1つの有用な鎖停止剤は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)である。鎖停止剤が、エチレンジアミンなどの二官能性鎖延長剤と組み合わせられて使用される場合は、プレポリマーについて一般的に約15%未満のイソシアネート基を停止させるために使用する際に役立つことが判明した。好ましくは、鎖停止剤は、プレポリマーに関して総イソシアネート当量の約5%〜10%のレベルで使用し、残余の部分は二官能性鎖延長剤で鎖延長される。単官能性アミンまたはアルコールは、鎖停止剤として有用である。好ましい単官能性アルコールの例は、分散媒体の一部として更に機能することができるエタノールである。
【0089】
好ましい実施形態において、ポリマーは、分散体に対してポリアミンを、好ましくは以下の分子式に従うジアミンを、加えることにより、中和されたウレタンプレポリマーNUPP(分子式8)から第5ステップで形成される。
【化9】

ここでR*は、原則として、ランダムな長さのヒドロカルビル鎖であり、好ましくはC1-C100のヒドロカルビル鎖、より好ましくはC1-C50のヒドロカルビル鎖、そして最も好ましくはC1-C25炭素鎖が使用される。R*基には、分岐および非分岐鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNのようなヘテロ分子を含む基を有する置換鎖、バックボーンにおいてあるいは置換基として脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基を含む鎖、飽和および不飽和鎖が含まれるがこれらに限定されない。
【0090】
適切なジアミンの例は、以下の通り:トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヒドラジン、エチレンジアミン;1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン;トリス(2-アミノエチル)アミン;およびユタ州ソルトレーク市のHuntsman社からのJEFFAMINE D230およびJEFFAMINE D400のようなアミン末端ポリエーテルなどが挙げられる。
【0091】
変更態様において、このヒドロカルビル鎖の1または複数のCH2基の1または複数のH原子は、架橋作用を容易にするため、NH2基によって置換される。
【0092】
中和されたウレタンプレポリマーNUPPの最外部のイソシアネート基は、ジアミンのNH2-基に反応してNUPPポリマー鎖を長くし、これにより、ポリウレタンPUとして表示されるポリマーを作り、そしてこれは次のように記述される:
【化10】

【0093】
NUPPのR1-基とジアミンに由来するR*基を結ぶ基は、−NH−(C=O)−NH‐基である。
【0094】
分散体におけるポリウレタンPUの収率は、使用するまで保存できる。本発明の使用は、例えばペンキ用ブラシを使用して、処理される表面に分散体を適用することを含む。表面に適用すると、水が蒸発し、また、第3級アミンの非重合分子を含む残余の疎水性溶媒も蒸発する。この蒸発プロセスを支援するために、好ましい第3級アミンは、上記に提示の通り、比較的小さい分子である。
【0095】
本発明の重要な態様によれば、活性分子AMが蒸発する第3級アミンの位置を占め、このため、活性分子AMを含むポリウレタンコーティングが処理表面に残る。形成された複合体は、下記の分子式形式で表示される:
【化11】

ここで、k,l,m,R1,R2,R4,Re,Rf,Rg,Rhは、以前に論じたのと同じ意味を持つ。ジアミン(分子式10を参照)による鎖延長は、事項を簡素化するためにここでは論じられない。
【0096】
望ましい場合、架橋剤が、例えば、市販のDenacol EX810のようなエポキシなどが、使用直前に追加されることができる;この効果は、コーティングがより硬くなるということである。コーティングが塗料として考えられることができるように、必要に応じて色素も追加されてよい。
【0097】
活性分子AM(即ち、nR-X+Y)による第3級アミンの置換を簡素化するため、特に、活性分子AMの蒸発を減らすため、平均分子量1000グラム/モルを有する大きな活性分子が望まれる。従って、活性分子AMとしてのポリマーが、望まれる。好ましいポリマーは、ポリ(2-ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)テトラデカン臭化第4級塩(PDETAEMA)であり、これは、図2に示された一般的な分子式に基づく構成要素で作られた鎖であり、ここでX+はN+、RjはエチルおよびRkはテトラデシルである。
【0098】
一般的に、RiおよびRjは、C1-C20基を、好ましくはC1-C10を、例えばエチル基を表わし、そしてRkは3と100との間、好ましくは5と50との間の炭素原子を有するより長い鎖を表わし、ここで、C14が、かかる鎖が最適な細菌駆除効果を持つので最も好ましい。
【0099】
代替の実施形態において、第2ステップ中に追加される第4の構成要素は、少なくとも1個の第三級アミンおよび少なくとも1個の活性基[-X+Y]を含む分子である。溶媒(例えば、アセトンまたは酢酸エチル)に溶解される共重合体が好ましい。共重合体は、2つの異なる構成要素の鎖として形成される。ここで、第1の構成要素は[BB1]で表記され、そして第2の構成要素は[BB2]で表記される;これらの構成要素の一般式は、図3に示されている(図2と比較)。1つの例では、Xは窒素原子である。この共重合体は、以下ではCP[BB1,BB2]と表記するものとする。構成要素[BB1]および[BB2]の数の正確な比率は、さまざまに異なり、好ましくはモル比は1:1と50:1との間、より好ましくは1:1と10:1との間、最も好ましくは1:1と5:1との間である。同じことが、鎖におけるこれらの構成要素の正確な配列に適用される。
【0100】
図3において、X+,Y,Ra,Rb,Rc,RjおよびRkは、以前に論じたのと同じ意味を持つ。
【0101】
分子式(8)に記述されている内容を参照すると、中和されたウレタンプレポリマーNUPPとして表記される複合体が得られる。そしてこれは下記の分子式で記述される:
【化12】

ここで、k,l,m,R1,R2,およびR4は、以前に論じたのと同じ意味を持つ。
【0102】
第3ステップにおけるnR-X+Yの溶液の追加は、もはや必要ない:この官能性は、既にCP[BB1,BB2]に存在している、または言い換えれば、第2のステップおよび第3のステップは単一のステップに組み合わせられる。代替の実施形態の方法における次のステップは、以前に記述したプロセスのステップを参照して、第4および第5ステップとして言及する。
【0103】
第4ステップとして、中和されたウレタンプレポリマーNUPPとCP[BB1,BB2]との混合物が、水に溶解性にされる。これについては、以前に記述した第4ステップに関して記述したのと同じことが当てはまる。第1の構成要素[BB1]は、上記で説明した第3級アミンの機能を占め、これにより、UPPのカルボン酸基を中和する。
【0104】
第5のステップとして、ポリマーは、前述のように、分散体にジアミンを加えることにより、中和されたプレポリマーから形成される。分子式(10)が、分散体中の得られたポリウレタンPUについて適用される。
【0105】
分散体が処理されるべき表面に適用されると、水が蒸発し、第2の構成要素[BB2]が第2の構成要素[BB1]の位置を占め、PUにおけるUPPのカルボン酸基と結合する。その結果、活性分子AMを含むポリウレタンコーティングが処理された表面に残される。形成された複合体は、下記の分子式の形式で表記される:
【化13】

ここで、k,l,m,R1,R2,およびR4は、以前に論じたのと同じ意味を持つ。
【0106】
鎖延長は、ここではジアミンにより(分子式10参照)、事項を簡素化するため説明されない。
【0107】
添加物
本発明の組成物は、プレポリマーに直接添加されるかまたは溶媒混合物に添加されることができる可塑剤を含むことができる。可塑剤の使用は、溶剤の使用を少なくしえ、したがって、より迅速に乾燥する膜を生成する。可塑剤が使用される場合、プレポリマーは、可塑化された膜が十分な引張強度を確保できるように形成する必要がある。これには、低分子量ポリオール(低NCO当量プレポリマー)の使用を必要としうる。好ましい可塑剤は、US-A5,951,993コラム17行35からコラム21行6で開示されているような美容上許容される皮膚軟化剤である。
【0108】
他の化合物は、コーティングおよび膜形成特性を妨げないことを条件に、特別な特性を高めるためあるいはそれを得るために追加することができる。
【0109】
分散体は、消泡剤を含むことができる。特に有用な消泡剤には、次のものが含まれる。例えば、Surfynol DF 110L(Air Products&Chemicalas社から入手可能な高分子量アセチレングリコール非イオン性界面活性剤)、SWS-211(Wacker Silicone社から入手できるシリコーン添加剤)、Dehydran TM 1620(Henkel社から入手できる修正ポリオール/ポリシロキサン付加物)、添加材65(Dow Corning社から入手できるシリコン添加剤)などが挙げられる。
【0110】
分散体には、次のようなフロー剤やレベリング剤が含まれる。例えば、Igepal TM CO630(Rhone-Poulenc Surfactant&Specialty Divから入手できるエトキシ化ノニルフェノール非イオン性界面活性剤)、FLUORAD FC-171(3M社から入手できる非イオン性界面活性剤)、 FLUORAD FC-430(3M社から入手できる非イオン性界面活性剤)およびRexolT 25/9(Hart Chemical社から入手できるアルキルフェノールエトキシレート非イオン性界面活性剤)が挙げられる。任意に、分散体にはRhom and Haas株式会社から入手できる会合性増粘剤Acrysol RM-825,Acrysol TT-935などのレオロジー修飾剤が含まれる。
【0111】
特に屋外用途において、これらの分散体から生成されたコーティングの耐用年数を向上させるために、光安定剤を追加することができる。有用な光安定剤には、Ciba-Geigy社から双方とも市販されているTinuvin Tm 400(ヒンダードアミン系光安定剤)、Tinuvin Tm 292(ヒンダードアミン系光安定剤)が含まれる。また、Chiba-Geigy社から入手できるIRGANOX 245、およびUniroyal Chemicals社から入手できるNaugard-445, 4,4’-bis (ococ ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを加えることができる。紫外線(UV)劣化を受けるアプリケーションに関しては、ポリウレタン分散体100重量部当り紫外線安定剤少なくとも約0.1重量部が、黄変や光劣化を抑制しかつ遅らせるために使用できる。通常、約0.1〜10部、好ましくは、約1〜10部が、ポリウレタン分散体100部当りに使用される。
【0112】
望ましければ、架橋剤が、例えば、市販されているDenacol EX810などのエポキシが、使用する直前に追加されることができる:この効果は、コーティングがより硬くなるということである。コーティングが塗料として考えられることができるように、必要に応じて色素も追加されてよい。
【0113】
発明が前述の実行方法に限定されず、発明についての種々の変更や修正が添付した請求項に定義した発明の保護範囲内で可能であることは、当業者にとっては自明であろう。具体的な実行形態のためのみについて説明された特性は、他の記述された実行形態にも適用可能である。異なる実行形態からの特性は、代替の実行形態を達成する場合にのみ組み合わせが可能である。必須のものとしてはっきりと記述されない特性は、省略できる。
【0114】
本発明について、以下の例により詳細に説明する。
【0115】
材料
次の分散体の抗菌性特性について下記の通りテストを行った:
− WO02/10242の例7Hで開示された分散体(比較例B);
− 抗菌性化合物無しのポリウレタン/アクリレート分散体(比較例C);
− 本発明による、抗菌性化合物を有する4つのポリウレタン/アクリレートを有する分散
体(例1-4);および
− 本発明による、抗菌性化合物を有する2つのポリウレタン分散体(例5および6)。
【0116】
標準ポリウレタンが基板として使用され、この上に、上述の分散体の60μm膜がBaker塗布器(TQC Baker塗布器、タイプVF2146)により適用された。適用された膜は、周囲環境条件下で48時間乾燥された。対照実験として、コーティングされていないポリエチレン膜上の細菌の成長についてテストを行った(比較例A)。
【0117】
本発明による抗菌性化合物の調製
ジエチルアミノエーチルメタ・アクリレート(DEAEMA)の重合
pDEAEMAの調製:120グラム(0.648モル)のDEAEMAおよび240グラム(3,328モルのTHFが、3首丸底フラスコ反応容器で混合された。反応混合物は、少なくとも15分間、5 RPMの速度でマグネット式撹拌バーでガス抜きされた。0.01グラム(6.09x10-5モル)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))が、5ml トルエンに、および約2ml THFに、溶解された。理由は、AIBNはTHFにしか溶解せず、トルエンの量は内部基準として使用されるためである。THFの総量は、240グラムにするべきである。反応混合物は、70℃の温度まで加熱された。反応混合物の温度が凡そ65℃になったとき、窒素入口が取り除かれ、THFに溶解した開始剤AIBNが、注射器で反応混合物に加えられた。反応は、260分継続した。得られた生成物には、大量のTHFが含まれていた。ロータリーエバポレーターで、THFの超過分は減らされた。得られた生成物は、H2O中に沈殿された。得られた生成物は、24時間、80℃で、真空オーブンの中で乾燥された。
【0118】
pDEAEMAの4級化:抗菌性化合物1
合成されたポリマー(pDEAEMA)は、3倍重量のアセトンに溶解され、2倍過剰量の1-ブロモテトラデカンが追加された。反応は約70℃の環流温度で少なくとも1週間続行し、その後4級化が完結した。即ち、すべての第3級のアミノ基は4級化され、そして図2による化合物が得られた。得られた生成物は、n-ヘキサン中に沈殿された。得られた生成物は、24時間、80℃で真空オーブンの中で乾燥された。GCで反応速度論を調べるためサンプルが反応中に取られた。
【0119】
pDEAEMAの部分的4級化:抗菌性化合物2
合成されたポリマー(pDEAEMA)は、3倍重量のアセトンに溶解され、2倍過剰量の1-ブロモテトラデカンが追加された。反応は約70℃の環流温度で130時間続行し、その後pDEAEMAが部分的に4級化がされ、そして図3による共重合体が凡そ1:10のBB1:BB2の比率を持って得られた。得られた生成物は、n-ヘキサン中に沈殿された。得られた生成物は、24時間、80℃で真空オーブンの中で乾燥された。GCで反応速度論を調べるためサンプルが反応中に取られた。
【0120】
pDEAEMAの部分的4級化:抗菌性化合物3
合成されたポリマー(pDEAEMA)は、3倍重量のアセトンに溶解され、2倍過剰量の1-ブロモテトラデカンが追加された。反応は約70℃の環流温度で78時間続行し、その後pDEAEMAが部分的に4級化され、そして図3による共重合体が凡そ1:5のBB1:BB2の比率を持って得られた。得られた生成物は、n-ヘキサン中に沈殿された。得られた生成物は、24時間、80℃で真空オーブンの中で乾燥された。GCで反応速度論を調べるためサンプルが反応中に取られた。
【0121】
pDEAEMAの部分的4級化:抗菌性化合物4
合成されたポリマー(pDEAEMA)は、3倍重量のアセトンで溶解され、2倍過剰量の1-ブロモテトラデカンが追加された。反応は約70℃の環流温度で48時間続行し、その後pDEAEMAが部分的に4級化され、そして図3による共重合体が凡そ10:1のBB1:BB2の比率を持って得られた。得られた生成物は、n-ヘキサン中に沈殿された。得られた生成物は、24時間、80℃で真空オーブンの中で乾燥された。GCで反応速度論を調べるためサンプルが反応中に取られた。
【0122】
WO02/10242の試料7Hで開示された分散体の調製
比較例B
約2のNCO/OHの比率を有する以下のプレポリマーが以下のように調製された。反応槽の中で、窒素を取り除き、よく撹拌し、132gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が40gジメチロールプロピオン酸(DMPA,67.1当量)と混合わせられ、そして約60℃まで加熱された。この混合物に対して、172gPPG1025(490.4当量重量)および456g ACCLAIM3201(1484.1当量)が追加された。それから、332g DEDMODUR W イソシアネート(132.2当量重量)が、ジブチル錫ジラウレート9滴と共に追加された。この混合物は、80分間、約80℃で加熱された。温度は、追加の40分間、72℃まで下げられた。プレポリマーは、比較的粘度が低かった。
【0123】
分散体は、45.3 mlの1N NaOHをの212.2gの 85:15(wt/wt)イソプロピルアルコール(IPA)-水混合物に加え、続いて高せん断混合の下で172.2gの暖かい(60℃)プレポリマーを加えて調製された。約5.8g EDA(エチレンジアミン)が、徐々に、即ち、一滴づつ追加された。IPA/水分散体に対して、11wt% のPVP-ヨウ素-USPが加えられた。
【0124】
本発明による、抗菌性化合物を有するポリウレタン/アクリレート分散体の調製
例1
ステップ1:ポリウレタンプレポリマーは、次のように調製された:反応漕において、窒素を取り除き、よく撹拌し、7.5 gブチルメタクリレート(BMA)が、2.5 g ジメチロールプロピオン酸 (DMPA)、17.6 gイソホロンジイソシアネート (IPDI)、22.4 g ポリテトラヒドロフラン(pTHF)と混合され、そして約60℃まで加熱された。反応混合物は、約2のNCO/OHの比率を有していた。この混合物に対して、ジブチル錫ジラウレート2滴を加えた。この混合物は、120分間、約80℃で加熱された。温度は、追加の40分間、約70℃まで下げられた。プレポリマーは、比較的粘度が低かった。BMAが、ポリウレタン/アクリル化分散体を得るために、ステップ6で溶剤として使用され、そして重合された。
【0125】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物に対して、2.12g トリエチルアミン(TEA)が加えられ、20分間混合された。
【0126】
ステップ3:アセトン20% w/w(5.0g)に溶解された調製された抗菌性化合物1は、ステップ2で得られた混合物に追加され、そして約20分間混合された。
【0127】
ステップ4:分散体は、4滴のTEGO Foamex 805を水250 mlに加え、続いてステップ3で得られた暖かい(60℃)プレポリマー混合物172.2 gを高せん断混合の下で1滴づつ加えて調製された。
【0128】
ステップ5:約5.8 g エチレンジアミン(EDA)は、ウレタンプレポリマーの鎖延長を達成するため、ステップ4で得た混合物に徐々に、即ち、1滴ずつ追加された。
【0129】
ステップ6:ブチルメタクリレート(BMA)(ステップ1参照)が、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHPO)を開始剤として、Fe2+を触媒として、i-アスコルビン酸とのレドックス反応により重合された。
【0130】
例2
ステップ1:例1と同じ。
【0131】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物に対して、トリエチルアミン(TEA)2.02 g が加えられ、そして20分間混合された。
【0132】
ステップ3:アセトン20%w/w (5.0 g)に溶解された調製された抗菌性化合物2が、ステップ2で得た混合物に追加され、約60分間混合された。
【0133】
ステップ4‐6:例1と同じ。
【0134】
例3
ステップ1:例1と同じ。
【0135】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物に対して、トリエチルアミン(TEA)1.72 gが加えられ、そして20分間混合された。
【0136】
ステップ3:アセトン20%w/w (5.0 g)に溶解された調製された抗菌性化合物3が、ステップ2で得た混合物に追加され、約60分間混合された。
【0137】
ステップ4‐6:例1と同じ。
【0138】
例4
ステップ1:例1と同じ。
【0139】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物に対して、トリエチルアミン(TEA)1.52 g が加えられ、そして20分間混合された。
【0140】
ステップ3:アセトン20%w/w (5.0 g)で溶解された調製された抗菌性化合物4が、ステップ2で得た混合物に追加され、約60分間混合された。
【0141】
ステップ4−6:例1と同じ。
【0142】
本発明による抗菌性化合物無しのポリウレタン/アクリレート分散体の調製
比較例C
抗菌性化合物無しの分散体は、ステップ3を実行せずに、例1に従い調製されている。
【0143】
本発明による抗菌性化合物を有するポリウレタン分散体の調製
例5
ステップ1:ポリウレタンプレポリマーは、次のように調製された:反応漕の中で、窒素パージの下で、よく撹拌しながら、7.5 g N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が溶媒として、2.5 gジメチロールプロピオン酸(DMPA)、17.6 g イソホロン・ジイソシアネート(IPDl)、および22.4 g ポリテトラハイドロフラン(pTHF) と混ぜ合わせられ、約60℃まで加熱された。反応混合物は、約2のNCO/OH比率を有していた。この混合物に対して、ジブチル錫ジラウレートを2滴加えた。この混合物は、120分間、約80℃で加熱された。温度は、追加の40分間、約70℃まで下げられた。プレポリマーは、粘度が比較的低かった。
【0144】
ステップ2-5:例1と同じ。
得られた生成物は、本発明に基づく抗菌性化合物を含むポリウレタン分散体である。
【0145】
例6
ステップ1:例5と同じ。
【0146】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物に対して、1.52 g トリエチルアミン(TEA)が加えられ、20分間混合された。
【0147】
ステップ3:アセトン20% w/w(5.0g) に溶解された調製された抗菌性化合物4が、ステップ2で得られた混合物に追加され、そして約20分間混合された。
【0148】
ステップ4-5:例1と同じ。
【0149】
テスト方法
上述のテスト材料の抗菌性特性は、日本工業規格JIS Z 2801:2000に従いテストされた。
【0150】
各テスト材料の試料は、テスト細菌(例えばMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、Escherichia Coli (大腸菌)、Salmonella (サルモネラ菌)およびシュードモナス菌)並びにNaCl またはKCLのような生理食塩水を含む懸濁液で処理された。
【0151】
テスト細菌とテスト材料との良い接触を維持するために、テスト細菌を含むサスペンションで処理されたテスト材料の表面は、滅菌ポリエチレンフィルムで覆われた。
【0152】
全試料の細菌数は、細菌集団の最適な成長に理想的な条件である、飽和湿度で35℃で24時間、当該試料の培養前(t=0)と培養後において測定(カウント)された。表面における細菌の量は、コロニー形成単位(CFU)で表される。
【0153】
参照用に、対照実験は、コーティングされていないポリエチレンフィルム(比較例A)上で実行された。すべてのテストは、2度繰り返された。
【0154】
テスト結果
比較例A(対照実験)
対照実験の平均結果が表1に示される。
【表1】

【0155】
表1は、テスト細菌を含む分散体で処理されたコーティングされていないフィルムが35℃で24時間培養されると、コロニー形成単位(CFU)数が増加することを示す。
【0156】
比較例B(WO02/10242における例7Hの分散体)
比較例Bの平均結果が表2に示される。
【表2】

減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
【0157】
比較例C(抗菌性化合物無しのポリウレタン/アクリレート)
比較例Cの平均結果が表3に示される。
【0158】
表3は、コロニー形成単位(CFU)数が、培養後、対照実験に対して減少していることを示している。表3はまた、抗菌性化合物無しのポリウレタン/アクリレート分散体が、MRSAおよびPseudomonasコロニーに対し、それぞれ90.2%および46.8%の本質的な減少効果を有していることを示している。
【表3】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
2マイナス減少は、細菌の成長を示す。
【0159】
例1(抗菌性化合物1を有するポリエチレン/アクリレート分散体)
例1の平均結果が表4に示される。
【0160】
表4は、コロニー形成単位(CFU)の数が、抗菌性化合物1を有するポリウレタン/アクリレート分散体で処理された表面上でほぼ完全に減少していることを示す。これはまた、減少は、WO02/10242における例7Hの分散体で処理された表面についてよりも、少なくとも10倍高いことを示す(表4と2とを比較)。更に、表4は、抗菌剤の使用は、抗菌剤無しの同じ分散体に対し、細菌の減少について大きな効果があることを示す(表4と3とを比較)。
【表4】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
310 CFUは、検出下限である。
【0161】
例2(抗菌性化合物2を有するポリウレタン/アクリレート分散体)
例2の平均結果が表5に示される。
【表5】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
310 CFUは、検出下限である。
【0162】
例3(抗菌性化合物3を有するポリウレタン/アクリレート分散体)
例3の平均結果が表6に示される。
【表6】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
310 CFUは、検出下限である。
【0163】
例4(抗菌性化合物4を有するポリウレタン/アクリレート分散体)
例4の平均結果が表7に示される。
【表7】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]
310 CFUは、検出下限である。
【0164】
例5 (抗菌性化合物1を有するポリウレタン/アクリレート分散体)
例5の平均結果が表8に示される。
【表8】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]。
【0165】
例6 (抗菌性化合物4を有するポリウレタン/アクリレート分散体)
例6の平均結果が表9に示される。
【表9】

1減少は次のように計算された:100%*(1-[CFU at t=24hrs]/[CFU at t=0]。
【0166】
本発明による抗菌性化合物を含むポリウレタン/アクリレートまたはポリウレタン分散体は、良好な抗菌特性を示すと結論づけられることができる(例1-6を参照)。また、ポリウレタン/アクリレート分散体中で少なくとも1:5の比率BB1:BB2を有する抗菌性化合物は、先行技術から知られる分散体に対して改良された抗菌特性を示していると結論づけられることができる(例1-4と比較した比較例B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン分散体であって、
a. ポリイソシアネート、ポリオール、有機カルボン酸基(COOH)を有するC1-C5ジオールおよびジアミンの反応生成物であり、少なくとも1つの第3級アミンを含む構成要素で中和された、中和されたポリウレタンポリマーと、
b. 分子式nR-X+Yの抗菌性化合物(ここでnは4または5、R-基は同じか異なっていてよいC1-C100ヒドロカルビル基、X+は価数nを有する正電荷イオン、Yは負電荷イオンである)と
を含む、水性ポリウレタン分散体。
【請求項2】
分子式nR-X+Yの前記抗菌性化合物が、窒素、リンおよび硫黄からなる群から選択された正電荷イオン(X+)、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素からなる群から選択されたハロゲンイオン(Y)およびnのC1−C100ヒドロカルビル基(R)を有し、X+が窒素またはリンのときnが4であり、X+が硫黄のときnが5である、請求項1に記載のポリウレタン分散体。
【請求項3】
分子式nR-X+Yの前記抗菌性化合物が1,000g/molと15,000g/molとの間の分子量を有する、請求項1乃至2のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項4】
前記抗菌性化合物が図2に示した分子式のポリマーであり、ここでRiおよびRjがC1-C20基を表わし、Rkが3と100との間の炭素原子を持つ長鎖を表わす、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項5】
前記抗菌性化合物が図3に示した構成要素[BB1]および[BB2]を含む共重合体であり、前記ポリウレタンポリマーが前記共重合体の[BB1]で中和され、[BB2]が分子式nR-X+Yの抗菌性基を含み、ここでRa,Rb及びRc は相互に独立して同じかまたは異なっていてよい、脂肪族、シクロ脂肪族および芳香族基を含むヒドロカルビル基であり、RiおよびRjがC1-C20基を表わし、Rkが3と100との間の炭素原子を有する長鎖を表わす、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項6】
比率BB1:BB2が少なくとも1:5である、請求項5に記載のポリウレタン分散体。
【請求項7】
Rjがエチル基でありRkがC14-基である、請求項5乃至6のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン 4,4’ ジイソシアネート(H12MDI)、ジフェニルメタン 4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびトルエンジイソシアネート(TDI)からなる群から選択される、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項9】
前記ポリオールが、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールおよびポリエステルジオールからなる群から選択される、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項10】
前記ジアミンが分子式H2N-R*-NH2で表され、R*が、分岐および非分岐鎖、S, O及びNから選択されたヘテロ原子を含む基を有する置換鎖、脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基をバックボーンにおいてまたは置換基として含む鎖、飽和および不飽和鎖を含む、C1-C100のヒドロカルビル鎖である、請求項1乃至9のいずれかに記載のポリウレタン分散体。
【請求項11】
前記ヒドロカルビル鎖(R*)の1又は複数の-CH2-の1又は複数のH-原子がNH2-基により置換される、請求項10に記載のポリウレタン分散体。
【請求項12】
ポリウレタン分散体の調製方法であって、
1.ウレタンプレポリマー組成物(UPP)を調製するステップと;
2.前記UPPを少なくとも1つの第3級アミンを含む構成要素で中和して、中和されたウレタンプレポリマー(NUPP)を得るステップと;
3.溶媒化合物中の抗菌性化合物の溶液を前記NUPPに加えるステップであって、前記抗菌性化合物は分子式nR-X+Yで表され、ここでn, R, X およびYが請求項1と同じ意味を有する、ステップと;
4.このように得た組成物を10℃〜60℃の範囲の温度で水と混合するステップと;
5.ジアミンを加えることにより前記NUPPを重合させるステップと
を含むことを特徴とするポリウレタン分散体の調製方法。
【請求項13】
前記ポリイソシアネートが分子式OCN-R1-NCOで表され;前記ポリオールが分子式
HO-R2-OHで表され、有機酸基(COOH)を有するC1-C5ジオールが分子式:

で表され;ここでR1およびR2が、1-100の炭素原子を有する、分岐および非分岐鎖、Sおよび/またはOおよび/またはNなどのヘテロ原子を含む基を有する置換鎖、脂肪族および/またはシクロ脂肪族および/または芳香族基をバックボーンにおいてまたは置換基として含む鎖、飽和および不飽和鎖を示し、R4がC1-C5ヒドロカルビル基である、請求項12に記載のポリウレタン分散体の調製方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれかに従うまたは請求項11乃至13のいずれかに従う方法により得られたポリウレタン分散体を、表面にコーティングとして適用する方法であって、
‐処理されるべき物品の表面に前記ポリウレタン分散体を適用するステップと、
‐水を蒸発させるステップであって、これによりnR-X+Yが前記第3級アミンの位置を占める、ステップと
を有する方法。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれかに従うポリウレタン分散体で処理された、請求項12乃至13のいずれかに従う方法で得られた、または請求項14の方法に従って処理された物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521030(P2011−521030A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508834(P2011−508834)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003402
【国際公開番号】WO2009/138221
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510302124)
【氏名又は名称原語表記】AM Coatings B.V.
【住所又は居所原語表記】Bizetstraat 9 NL−5144VV Waalwijk NL.
【Fターム(参考)】