説明

抗菌性布地および抗菌性布地の製造方法

ガス浸透性布地の製造に有用な抗菌性繊維を、ポリマー性および抗菌性の素材を共押し出しすることによって製造する。繊維は抗菌性布地材料への提供のために、様々な組合せで混合しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「抗菌性布地および抗菌性布地の製造方法」という名称の2004年10月15日出願の米国仮出願第60/619,519号および「抗菌性布地および抗菌性布地の製造方法」という名称の2005年10月12日出願の米国特許出願を参照により本明細書に組み込み、これらの優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は要するに、抗菌性の特徴を有する不織布、およびそうした布地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
汚染および/または感染性物質からの個人の保護は、人々にとって生活のすべての面で益々重要な関心事となってきている。汚染は様々な供給源、すなわち、大気中、流体による持ち込み、固体および/または微粒子から生じる可能性がある。しかし、個人の保護と同時に重要なのは個人の快適性である。
【0004】
これらに限定されないが、様々な方法による不織布、フィルム、およびその組合せおよび/または積層物を含む単一用途の布地にバリア特性を提供するために、従来から様々な材料や製品が用いられてきた。これらの材料は、衣料品、保護用衣服、ヘルスケア関連材料(ガウン、外科用ドレープ、滅菌ラップ、おむつ、トレーニングパンツ、失禁用製品、女性用ケア用製品、ふき取り繊維、寝具類、パッド等)の物品を含む多くの用途で有効であることが分かっている。
【0005】
単一用途の製品においてフィルムは従来からバリア特性を提供するために用いられてきたが、これらはある種の欠点を示すことが分かっている。これらのフィルムは、着用者と患者との間の微生物の交換およびその逆を阻止するのに優れている。これらは通常1〜2ミルの厚さであり、平方ヤード当たり約0.7〜1.5オンスの基礎重量を有しており、最も一般的にはポリオレフィンから、通常ポリプロピレンまたはポリエチレンから製造される。優れたバリアを提供するが、他方ではそうしたフィルムは最小限の快適性しかもたらさない。汗の形で着用者によってもたらされる水蒸気を通過させないので、フィルムから作製されるかそれを含む衣類または個人用の製品では暑くなりがちである。結果として、水蒸気は衣類内に保持され、衣類内に湿気が多く、べたべたして、粘つく環境を生み出し、急速に快適性の欠如を招く。
【0006】
この状況に対応して、科学者等は、バリアとしての特徴をある程度保持しながらある程度の通気性能を提供する布地を開発した。これらの布地は、特に不織布として製造される布地、とりわけスパンボンド法およびメルトブロー法により製造される布地として、その積層物として、多くの構造物に用いられる。快適性に相当な改善はもたらされるが、特により小さい微生物や汚染物質に対して、バリア特性という形で十分な保護を提供する能力に限界があることも確認されている。
【0007】
最近では、気体を通す、すなわち水蒸気の通過が可能なフィルムを利用する布地の製造に進歩が見られている。これが可能なことによって、これらの「通気性」フィルムを用いる衣類や個人使用の布地は、フィルムを含まない材料に優るバリア特性の増大を着用者に供する能力の向上を提供している。低いレベルではあるが、これらの材料は通気性能を示す。
【0008】
しかし、微孔性フィルムを用いる不織布および/または積層物のバリア特性には依然限度があることも認識されている。主な関心は、細孔の大きさがどれほど小さくても、細孔の大きさより小さく、したがって、ウイルスであれ細菌であれ、通過可能な微生物の潜在性があるという事実からくるものである。それでも、ある種の用途では、着用者に快適性を提供しつつ、微生物に対する完全なバリアを必要とする。このため、これらの材料の不織布地、微孔フィルムおよび/または積層物はこれらの用途に適していない。
【0009】
ポスト製造処理を用いることによってバリア特性を改善した布地も開示されている。これらのポスト製造処理は、いくつかの手段によって、製造後に布地の表面に直接化学薬品を施用する。これらのポスト製造システムのいくつかは、布地製造プロセスのインラインであってよく、またオフラインであってもよい。インラインの場合、化学薬品の施用プロセスは、布地の製造後であってかつ巻取りプロセスの前の時点で行われる。オフラインの場合、布地を製造して巻取り、次いで巻き戻し、処理して再度巻取る。
【0010】
各プロセスは、他のものに対して潜在的な利点を有しており、その多くは特定の製造業者の考え方に基づいている。しかし、両方のプロセスは同じ欠点を有している。どちらも、化学薬品の添加システムの追加の工程を必要とし、そのほとんどは液体の施用システムを用いる。液体施用システムは、本質的に、システム自体においてもまた周辺区域の保守においても、その保守や日常業務に多くの課題をもたらす。化学薬品が漏洩する恐れが常にあるため、化学薬品の調製や混合には通常、製造区域とは分離された区域を必要とする。施用区域自体では、処理された布地から下流の装置へ移動し汚染をもたらす結果となる溢流の処理、過剰処理の可能性が常にある。処理装置や付近のその他の装置をきれいに保つために定期的な清浄化が必要なので、日常業務が常に重要である。
【0011】
さらに、液体処理システムは一般に、処理後でかつ乾燥前の処理布地からもたらされる空中微粒子の生成を引き起こす。これらの空中微粒子は時間とともに製造施設の空気系に侵入し、モーター、ファン、電気キャビネット等の関連のない部品を汚染する恐れがある。
【0012】
ほとんどの液施用システムは、化学薬品を施用するためのキャリヤーとして水を用いる。この点では、これらの水中での分散が可能なので化学薬品は、水または他の液体から容易に除去することもできる。これらの布地が用いられる多くの用途において様々な液体が存在する。使用の際に布地が液体と接触する場合、施用された化学薬品は可溶化し除去されて、布地を効果的でないものにする可能性があることは明らかである。
【0013】
また、液体をベースとした施用システムを組み込むことに伴って、乾燥する必要がさらに加わることになる。資本の支出の増大に加えて、乾燥機はいくつかのレベルで悪影響を及ぼす。第一に、乾燥機に曝された布地は一般に、引っ張り強さ、伸び、引き裂き抵抗の物理的特性、ならびにドレープ性、感触、および柔らかさの触感特性の喪失を被る。第二に、布地上の液体が除去されることによって発生するフュームがある量の化学薬品を運ぶことになる。これらのフュームが製造施設内部に残留することは一般に望ましくなく、したがって環境へ排出されるが、これは有害な結果をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、低コストで簡単な、衛生的で環境に優しい布地と、ウイルスや細菌などの大小両方の微生物に対するバリアを提供し、同時に水蒸気を通過させ、それにより着用者にあるレベルの快適性を提供する、衣類または個人用途の製品にすることができる布地の製造方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
本発明は、押出し、延伸、クエンチングを含むプロセスの一部で形成される連続した長繊維および/または超極細繊維を形成させる前に、ポリマーの溶融物中に抗菌剤を混ぜ込む工程と、フォーミフェラス(formiferous)ベルト上へ前記連続した長繊維および/または超極細繊維を被着させる工程とを含む。前記ベルトは、前記連続した長繊維および/または超極細繊維を、その繊維が元の布地を形成する接合プロセスへ送るのに用いられる。続いてこの元の布地を巻取り、抗菌特性を有する不織布地を形成させるのに用いることができる。抗菌剤は、フィルムの製造前に溶融した状態でポリマー中に混ぜ込むことも可能であり、得られるフィルムは抗菌特性を有することになる。これらの材料から製造した布地は、連続した長繊維、超極細繊維、フィルム、またはその任意の組合せから完全になる布地の単一層、多層化物、複合材および/または積層物であってよい。前記元の布地の様々な組合せおよび/または積層物は、最終的な布地において1つまたは複数の層を形成することになる。様々な布地の組合せは、インライン製造、オンライン製造、またはオフライン製造を含むいくつかの手法で実施することができる。前記布地は様々な方法で連結された層を形成する。
【発明の効果】
【0016】
この抗菌性布地の用途には、乳幼児用おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁製品、ヘルスケア関連衣類、ドレープおよびラップ、ならびにカバーオールやフェイスマスクなどの保護用衣服、ふき取り繊維およびフィルターが含まれる。
【0017】
押し出して繊維にする前にポリマー中に抗菌剤を混ぜ込むと、抗菌剤が、得られる長繊維、繊維および/またはフィルムの内部に保持される結果となる。抗菌剤は一般に、個々の押し出した繊維構造またはフィルム構造を通って動く、すなわち移動し、結果的に個々の構造の表面に至ることが可能である。このため、とりわけ得られる布地は抗菌特性の持続性と長期寿命を示す。
【0018】
多くの製造プロセスおよび製造方法による多くの様々な種類の不織布があるが、特に興味のあるものは、スパンボンド法およびメルトブロー法で作製された不織布である。さらに、特に興味のあるものは、微孔フィルムで積層化されたスパンボンド布地、微孔フィルムで積層化されたスパンボンドおよびメルトブロー積層物、ならびにその任意の変形物から作製された布地を含む、スパンボンドおよびメルトブロー布地の積層物から作製するか得られる布地である。
【0019】
したがって、本発明の目的は、大小両方のウイルスおよび細菌に対するバリアを提供し、同時に水蒸気の通過を可能にする布地を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、大小両方のウイルスおよび細菌に対するバリアを提供し、同時に水蒸気の通過を可能にする布地であって、その布地が、表面処理およびそれに続く乾燥を施すための第2のプロセスを用いることなく製造される布地を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、大小両方のウイルスおよび細菌に対するバリアを提供し、同時に水蒸気の通過を可能にする布地であって、最終製品の1つまたは複数の層の材料の内部に混ぜ込まれている抗菌剤を用いて製造される布地を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、用いられる布地が持続的または恒久的な抗菌特性を示し、抗菌剤が機械的摩擦によっても、液体との接触によっても、また蒸気との接触によっても除去されないことである。
【0023】
本発明の他の目的は、用いられる布地がスパンボンド不織布材料から製造されるものである。
【0024】
本発明の他の目的は、用いられる布地がメルトブロー不織布材料から製造されるものである。
【0025】
本発明の他の目的は、用いられる布地が微孔フィルムから製造されるものである。
【0026】
本発明の他の目的は、用いられる布地が、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布および/または微孔フィルムのいずれかの積層物であり、そのいずれかまたはすべての層が内部添加された抗菌剤を有する材料から製造されるものである。
【0027】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁製品、生理用ナプキン、ベッドパッド等の衛生用品に加工することである。
【0028】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、外科用ガウン、患者用ドレープ、滅菌ラップ等の医療用布地に加工することである。
【0029】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、ジャケット、コート類、カバーオール、フェイスマスク等の保護用衣服に加工することである。
【0030】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、乳幼児ふき取り繊維、工業用ふき取り繊維、家庭用ふき取り繊維等に加工することである。
【0031】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、液体ろ過、空気ろ過等のフィルターに加工することである。
【0032】
本発明の他の目的は、持続性の抗菌剤を含む布地を、家具および寝具類布地、枕カバー、頭部レストカバー等の工業用布地に加工することである。
【0033】
本発明のこれらの他の目的を以下に示すこととする。本発明の実施例は説明のためだけのものであって前記発明を限定するものと考えるべきではない。これらの実施例に対する様々な変更および修正は、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0034】
以下の詳細な説明において、以下の図および/または写真からなる図面を参照することとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(好ましい実施形態の説明)
本発明の製品は通常、通気性と抗病原性の利益を特徴とする複数の布地タイプの材料のうちのいずれかに加工できる、抗菌性および/または抗病原性繊維または繊維複合材を含む。さらに、この繊維または繊維性材料は、抗病原性材料を、繊維性材料の内部とその繊維性材料上に取り込む結果をもたらす方法によって製造することができる。そうした繊維性材料を布地や積層物に混ぜ込む方法も開示する。
【0036】
本発明の繊維性材料を製造するための熱可塑性組成物またはポリマー組成物は、どの方法によっても調製することができる。例えば、チップまたはペレットの形態のポリマーと、粉末状または液状の抗菌性添加材料などの添加剤を、機械的に混合して、ポリマー粒子を添加剤でコーティングすることができる。添加剤は、適当な溶媒に溶解させてコーティング工程の助けとすることができるが、溶媒の使用は望ましくないかまたは必要でない。次いでコーティングしたポリマーをダイと連結された押出機の供給ホッパーに仕込む。そのダイから、押し出された繊維が取り出される。あるいは、ポリマーブレンドまたはマトリックスの全体にわたって添加剤をほぼ均一に分散させるために、コーティングしたポリマーを、加熱された一軸スクリュー型押出機、ニ軸スクリュー型コンパウンディング装置、または他の熱的混合装置などのコンパウンディング装置または混合装置に供給することができる。得られる熱可塑性組成物は通常、プラスチックの細い円筒状物として押し出され、これは冷却され、次いで裁断装置またはチップ化装置へ供給される。次いで、チップは溶融処理押出機のための供給原料としての働きをする。他の方法では、粉末状、ペレット状または液状の添加剤を、制御した形で押出機のホッパーの供給口に供給し、それによって、その添加剤を、押出機の供給ゾーンに入ってくる微粒子状の一次ポリマー材料とブレンドすることができる。そこで2つの材料は一緒にブレンドされる。さらに別の方法では、添加剤を押出機のバレル中に直接量り込み、すでに溶融状態にあるポリマーとそこでブレンドすることができる。得られた混合物がダイの方へ進行するにしたがって、繊維がそのダイから出てくる。抗菌性添加剤は粉末状、ペレット状または液状であってよいが、ペレット状が好ましい形態であると考えられる。
【0037】
抗菌性または抗病原性特性を有する得られた繊維は、複数のオリフィスを通して溶融押出し可能な熱可塑性組成物を溶融押出しして、溶融組成物のストリームを形成させ、これを冷却して繊維を形成させることによって容易に調製することができる。溶融押出し可能な熱可塑性組成物は、少なくとも1種の熱可塑性材料と、抗菌性または抗病原性材料を含む少なくとも1種の添加剤を含む。好ましい実施形態では、その添加剤は、溶融組成物の内部ならびにその表面にわたってほぼ均一に分散されている。続いてその溶融組成物は固化して繊維の表面に抗菌特性を付与する。得られる繊維は、平均値が17.6ミクロンである16.7〜18.0ミクロンの範囲の平均径を有することができる。
【0038】
抗菌特性を有する不織ウェブを調製するための本発明の方法は、溶融押出し可能な熱可塑性組成物を溶融させる工程と、その溶融組成物を複数のオリフィスを通して押し出して、溶融組成物のストリームを形成させ、これを冷却して繊維を形成させ、次いでこれを、一般に空気の流れに対してある程度の透過性を有する、移動する搬送表面上に無作為に置いてウェブを形成させる工程とを含む。ここでその溶融押出し可能な熱可塑性組成物は、少なくとも1種の熱可塑性材料と、抗菌性材料を含む少なくとも1種の添加剤とを含む。その添加剤は、溶融押出し可能な熱可塑性組成物が、例えば繊維として押し出された場合に抗菌特性を付与するように、溶融組成物の内部ならびにその表面上に分散されている。
【0039】
「溶融押出し可能な材料」という用語は、溶融かまたは溶融押出しによってその形状を生産物に変えるように変化させることができる任意の材料を含むのに用いる。したがって、この用語は熱硬化性材料と熱可塑性材料の両方を含むが、特に用いられるのは熱可塑性材料であり、より具体的には熱可塑性ポリオレフィン材料である。
【0040】
一般に、「熱可塑性ポリオレフィン材料」という用語は、溶融するかまたは溶融押出しすることによって物品、例えば繊維や不織ウェブを調製するかまたは形成させるために使用できる任意の熱可塑性ポリオレフィンをいうのに用いられる。熱可塑性ポリオレフィンの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリスチレン等が含まれる。さらに、「熱可塑性ポリオレフィン材料」という用語は、2種以上のポリオレフィンと、異なる2種以上の不飽和モノマーから調製されたランダムコポリマーとブロックコポリマーとのブレンドも意味するものとする。最も重要なポリオレフィンはポリエチレンとポリプロピレンである。
【0041】
「抗菌性」という用語は広い意味で解釈され、微生物、ウイルス、細菌および健康または快適な暮らしに望ましくないかまたは有害であると考えられる他の物質の生存能力を停止させるかまたは阻害するように、指定されるかまたは作られた抗病原性材料および他の材料を含むことができる。抗菌性の例は、Ciba Specialty Chemicalsから供給されているジファニルエーテル(diphanyl ether)の誘導体であるトリクロサンである。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は繊維状ウェブの製造であり、前記繊維状ウェブは、ポリプロピレンポリマー材料を用いた、スパンボンドウェブ、メルトブローウェブ、またはその組合せに分類され、そのスパンボンドおよびメルトブローウェブは、単一のウェブとして用いて単層化材料を作製するか、あるいは組み合せて多層化積層物を作製することができる。スパンボンドウェブを単層化材料かまたは多層化材料で用いる方法では、布地基材の製造において、繊維に一緒に結合するための熱的接合技術を用いることが好ましい。スパンボンド繊維なしでメルトブローウェブを用いる方法では、熱的接合は必要ではないが、パターンを付与するか追加の物理的特性を提供するために用いることができる。
【0043】
最終の布地の製造において多層の繊維状ウェブを用いる製造方法では、個々の繊維状層のすべてか、またはいくつか、またはその1つだけに抗菌性材料を用いることができ、抗菌性布地としての組み合わされた効果をさらに提供することができる。しかし、多重の繊維状層の場合、抗菌性材料は、布地の外層を形成させることを目的とした層に混ぜ込むことが好ましい。この点では、微生物または微生物担持基材とそれが直接接触するので、抗菌性材料が多分最も大きな効果を有するようである。しかし、中間の抗菌性層はさらに、微生物を捉える望ましくない材料を捕捉して、それがまん延するのを阻止するようである。
【0044】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。しかし、こうした実施例は、本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきでない。
【実施例】
【0045】
実施例1
好ましい実施形態を示す図1の概略図では、典型的にはペレット状であるポリマー材料10を、ブレンディング装置(mechanism)14中で、抗菌性保有添加剤12と一緒にブレンドし、それによって、抗菌性保有材料でポリマー材料をコーティングする。抗菌性保有材料は粉末状でも液状でもよい。ブレンディングプロセスはどんなプロセスでもよく、一般に本発明を限定するものとは考えられない。重要なことは、ポリマー材料と抗菌性保有添加剤を混合してブレンド15を得、次いでこれをダイ18と連結されている押出機16に導入することである。このダイから繊維20が取り出される。繊維20は一般に固体状であり、続いて以下のようにして処理することができる。
【0046】
実施例2
図2の概略図では、典型的にはペレット状であるポリマー材料22を、抗菌性保有添加剤と一緒にブレンドし、それによって、抗菌性保有材料でポリマー材料をコーティングする。抗菌性保有材料は粉末状でも液状でもよい。ブレンディングプロセスは知られているいずれのプロセスでもよく、一般に本発明を限定するものではない。ポリマー材料と抗菌性保有添加剤を混合してブレンドを得、次いでこれをコンパウンディングプロセス、すなわち装置24に導入する。このプロセスは抗菌性保有材料の分散の高い均一性が望まれる場合に用いられる。これは、多くの量を用いるか、または大量生産が望まれる場合にも有用であり、それによって非連続的な生産ラン間のばらつきが小さくなることが見込まれる。次いで得られたチップまたはペレット26をダイ30と連結されている押出機28に供給する。このダイから繊維32が取り出される。
【0047】
実施例3
図3の概略図では、粉末状、ペレット状または液状の抗菌性保有添加剤40を、制御下で押出機のホッパー44の供給口42に供給し、それによって微粒子状の一次ポリマー材料46とブレンドすることができる。このポリマー材料は押出機50の供給ゾーン48に導入され、そこで2つの材料が一緒にブレンドされる。押出機50の供給部でブレンドされると、次いで材料は押出機50を通過し、(ほとんどの押出機におけるプロセスでそうであるように)そこで混合されて溶融ブレンドとなる。次いでブレンドはダイ52へ送られ、このダイから繊維54が取り出される。
【0048】
実施例4
図4の概略図では、粉末状、ペレット状または液状の抗菌性保有添加剤60を、制御下で押出機64の溶融移行部62に供給し、それによって溶融した形態で一次ポリマー材料66とブレンドすることができる。このポリマー材料は押出機64の溶融移行部62に導入され、そこで2つの材料が一緒にブレンドされる。抗菌性保有添加剤が液状である場合に最も適用することができる。押出機の溶融移行部62でブレンドされると、次いで材料は押出機を通過し、(ほとんどの押出機におけるプロセスでそうであるように)そこで混合されて溶融ブレンドとなる。次いでブレンドはダイ68へ送られ、このダイから繊維70が取り出される。
【0049】
抗菌性材料の割合は、多層の繊維性材料から作製された布地の場合、単層でも多層でも、0.01%から最大で25重量%のいずれでもよい。その割合はすべての層で等しくてよく、あるいは個々の層で異なっていてもよい。その割合は約0.01%〜約10.0重量%が最適であり、その割合は約0.01%〜約1.00重量%が特に最適である。
【0050】
抗菌性保有添加剤は、上記したように様々な方式で、ポリマー材料と一緒にブレンドすることができる。繊維状マットの繊維を生産するために、抗菌性添加剤とブレンドされたばかりのポリマー材料は、溶融移行段階を経て、そのブレンドされた材料が溶融する。このプロセスは、ダイを通した繊維の生産を可能にするような粘度の溶融材料を開発するのに必要である。処理、押出しおよび紡糸の温度はどれも、押出しおよび繊維紡糸の技術分野で知られているように、1つまたは複数のポリマー(複数のポリマーブレンドの場合)の種類および溶融物の流速に依存する。このためには、異常な処理温度、あるいは異常かまたは例外的と思われる処理状況は存在しない。以下の実施例は例証的な目的だけを意味するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
図5〜図14に示したこれらの実施例は様々な布地構造の例である。ここで、上記した押出プロセスから得られるポリプロピレンの繊維状ウェブの層は、単層化または多層化された構造で配置されて様々な特性の布地を生み出している。多層の繊維状マットから作製された布地の場合、抗菌性材料は、ファイル(file)および/または布地のいずれか1つの層またはすべての層に混ぜ込むことができる。
【0052】
図5は、スパンボンドポリプロピレンから作製された繊維70が単層化布地として配列されている第1の実施形態を示す。この繊維は上述した方法で加工した抗菌性材料を含む。繊維は接合されて単層化布地を形成している。
【0053】
図6は、繊維が抗菌性材料を含むスパンボンドポリプロピレンのニ層化複合材を示す。したがって、第1の層74と第2の層76は一緒に接合されて多層化布地を形成している。それぞれの層または両方の層のいくらかまたはすべての繊維は、上述した方法でもたらされる抗菌性の特徴を備えている。この2層複合材を「S−S」型とする。図7は、第1の層78、第2の層80および第3の層82(S−S−S)からなるスパンボンドポリプロピレンを示す。この層はそれぞれ抗菌性材料を含むことができる。各層の繊維は抗菌性材料を含むことができる。例えば、中間層80には抗菌性材料を含めないが、外層78および82はそれを含ませることができる。層は一緒に接合されて多層化布地を形成する。
【0054】
図8は、抗菌性の特徴を有するメルトブローポリプロピレン単層化布地を開示する。繊維は接合されていても接合されていなくてもよい。
【0055】
図9は、メルトブローポリプロピレンの(M−M)2層化複合材を示しており、その各層は抗菌性であり、布地はやはり接合されていても接合されていなくてもよい。したがって層84および86は空気透過性またはガス透過性の布地材料を含む。
【0056】
図10は、メルトブローポリプロピレン88の第1の層が、第2の層90および第3の層92と一緒になっている3層化複合材(M−M−M)を開示または示している。これらの層のうちのいずれか1つまたは複数は抗菌性材料を有していてもいなくてもよく、布地は接合されていても接合されていなくてもよい。
【0057】
図11は、スパンボンド層およびメルトブロー層の混合体からなる。3層複合材(S−M−S)は、スパンボンドである第1の層94と、メルトブローである中間層と、スパンボンドである第3の外層98とを含む。その層は一緒に接合されて多層化布地を形成しており、その1つまたは複数の層は、抗菌性材料から得られそれを含む繊維を含むことができる。
【0058】
図12は(S−M−M−S)で特定される4層複合材を開示している。第1の層すなわち外層100はスパンボンドであり、2つの内層102および104はメルトブローであり、第3または第4の外層106はスパンボンドされている。これらの層のうちのいずれか1つまたは複数は抗菌性材料を含むことができ、これらの層は一緒に接合されて多層布地を形成している。
【0059】
図13は、スパンボンドの外層108、次の隣接するスパンボンド材料の層110、その次または隣接するメルトブロー層112および113、続いてもう1つの外側のスパンボンド層114を含む5層複合材(S−S−M−M−S)を示している。これらの層は一緒に接合されて多層布地を形成している。
【0060】
図14は、5層(S−M−M−M−S)からなる別の複合材料を示している。この外層120および122はスパンボンドであり、内層124、126および128はメルトブローである。これらの層は一般に一緒に接合されて多層化布地を形成している。これらの層の1つまたは複数は抗菌性繊維を含むことができる。
【0061】
上記した様々な組合せはすべてを網羅するものではない。これらの組合せのすべておよびその他を、実施されるものとして包含するものとする。
【0062】
繊維状構造および複合材によって作製される布地に加えて、繊維状構造とフィルムの組合せを用いる布地が可能である。そのフィルムは、得られる材料の用件に応じて、抗菌特性を取り込んでいてもいなくてもよい。フィルムは液体や蒸気を通さなくてもよく、あるいは特定の物質の通過を制限するが、その他の物質を通過させる細孔を有することができる。フィルムは、不織材料上に押し出して一段で接合するか、あるいはフィルムをまずキャスティングして成形し、続いて不織布上に接合するか、あるいは接着剤を用いてフィルムを接合させるか、あるいは、フィルムを、すでに布地に接合されている不織布に結合させることができる。この後者のプロセスでは、結合を強くするために、フィルムをコロナ型の電荷で処理してもしなくてもよい。本発明の趣旨は、不織布地をフィルムと結合して、抗菌特性を有する単一の統合された材料を形成する用途を包含しようとするものであるため、様々な結合方法を詳細に説明する必要はない。
【0063】
図14も、ガスまたは空気透過性である布地と組み合せたフィルム130の組合せを示す。したがって、5層複合材S−M−M−M−S(図14)は透過性、半透過性または非透過性のフィルム材料の層130と一緒になっている。フィルム材料はポリプロピレンまたはポリエチレン材料から作製することができる。さらに、この材料は抗菌性添加剤と一緒に押し出すことができる。
【0064】
図15は、これまで述べてきた本発明によって作製した布地の断面写真である。この布地は、例えば図1〜4で述べた方法で混ぜ込まれた抗菌剤を有するポリプロピレン繊維から製造される。
【0065】
以下の具体的な実施例において、布地構造図9と類似した組成物を有する布地を、Troisdorf,ドイツ、のReifenhauser GmbH社製のReicofil3不織布装置で処理した。スパンボンド層は3つとも、Saudi ArabiaのSABIC Industries社製の25MRFポリプロピレンホモポリマーから製造した。処理温度は、押出機の供給ゾーンの190℃から、口金(spinneret)内またはその周りの最大で250℃の範囲であった。クエンチング条件は18℃〜22℃であった。長繊維を引き出すのに使用された典型的な圧力は2500kPa〜3500kPaの範囲である。製造ラインの速度は様々な布地重量が提供されるように変化させる。
【0066】
メルトブロー層はBasellからの供給による2000MFR樹脂から作製した。メルトブロー層は、メルトブロー材料の製造分野の技術者によって用いられる標準的なメルトブローの構成を用いて作製した。処理温度は、押出機の供給ゾーンの180℃から、メルトブローの口金内またはその周りの最大で275℃の範囲であった。メルトブロー法での空気は260〜300℃の温度で2000〜3000m/hrの流速で供給した。メルトブロー形成高さは口金から形成表面まで、150〜250mmの距離であった。接合は熱油カレンダーを用いて実施した。例えば、Krefeld,ドイツのEdward Kuesters Machinenfabrik GmbH社製のものを用いて、上下のカレンダーロールの両方で、150〜160℃の温度、80〜100ニュートン/mmのニップ力で実施する。
【0067】
抗菌性濃縮物は、Irgaguard B1315であり、Ciba Specialty Chemicals社から供給された。これは、PETGキャリヤー中、Irgaguard 131000(トリクロサン)の15重量%濃縮物である。250℃を超える処理温度での揮発を少なくするためにPETGキャリヤーを用いる。以下の実施例においては、外側のスパンボンド層についてだけ、ポリマー溶融物中、したがって得られる長繊維中に抗菌性材料を混ぜ込んだ。
【0068】
分析はNelson Laboratories, 6280 South Redwood Road, Salt Lake City, ユタ州、84123, 米国、で実施した。
【0069】
抗菌性の実施例1
5層化S−S2−M−M−S構造材料は全重量ベースで38g/mであった。個々のスパンボンド層の重量はそれぞれ10.4g/mであり、メルトブローの個別の層の重量はそれぞれ3.4g/mであった。抗菌性材料を、トリクロサン15重量%濃縮物のうち1重量%の割合で層SおよびSの中に混ぜ込んだ。これによって、2つの外側のスパンボンド層のそれぞれに0.15%のトリクロサンが最終的に添加された。これは全部で38g/m布地の各平方メートル当たり0.03gのトリクロサンを加えたことになり、0.0821%の最終トリクロサン添加割合となった。
【0070】
次いで布地のサンプルについて、抗生物質感受性試験のために、黄色ブドウ球菌ATCC#6538を用いて、Kirby-Bauerディスク拡散法で抗菌活性を試験した。供試生物は、0.5 McFarland標準と同等の細胞密度、すなわち、分光光度計で625ナノメートルで測定して0.08〜0.10の吸収度を達成するように標準化した。次いで、供試生物を、2つの別個のMueller-Hinton寒天(MHAG)試験プレート上に筋状に置いた。布地を裁断してそれぞれが約6.35mm径の6つの円形サンプルにした。これらのサンプルのうちの3つを、S側を下にし、黄色ブドウ球菌と接触させて試験プレートの1つの上に置いた。残りの3つの円形サンプルを、S3側を下にし、供試生物と直接接触させて第2の試験プレート上に置いた。
【0071】
プレートを30〜35℃で24±2時間インキュベートし、次いで抗菌特性を評価した。布地の円形サンプルの周りに供試生物の増殖が見られない領域があれば、この抗菌特性があることは明らかである。この領域を阻害ゾーンと称する。そうしたゾーンが存在すれば、布地は抗菌特性を示していると言えることになる。ゾーン全体の直径を、較正した0.01mmの感度のカリパスを用いて測定した。24時間評価の後、サンプルをさらに24±2時間インキュベートして阻害ゾーンを再度評価した。
【0072】
第1の24時間評価では、供試生物に対してS側を下にしたプレートは30.32mmの阻害ゾーン(直径)を示した。これは722mmの面積を占める。供試生物に対してS3側を下にしたプレートは、28.77mmの阻害ゾーン、すなわち650mmの合計面積を示した。
【0073】
第2の24時間時点では非常に類似した結果が得られ、S側とS3側の阻害ゾーンは30.39mmと28.29mmの阻害ゾーンをそれぞれ示した。この布地は抗菌性材料として効果的であり、両方の側部が抗菌特性を示していることは明らかである。曝露時間を24時間超に延長しても、さらなる抗菌性の阻害は示さないことも明らかである。
【0074】
抗菌性の実施例2
抗菌性の実施例1と同様に、S層およびS層への抗菌性材料の添加割合だけが異なっていること以外は、実施例2を全く同じ方法で調製した。この実施例では、濃縮物を3%のレベルで両方の層に加えた。これは、38g/m布地の平方メートル当たり0.09gのトリクロサンの抗菌性材料の添加割合をもたらし、0.2463%のトリクロサン添加割合となった。
【0075】
布地を、実施例1のサンプルと同じ方法で試験した。24時間時点では、S1側を下にしたプレートは30.00mmの直径、すなわち707mmを有する阻害ゾーンを示した。供試生物に対してS3側を下にしたプレートは29.50mmの直径、すなわち683mmを有する阻害ゾーンを示した。
【0076】
第2の24時間時点ではやはり実施例1サンプルに類似していた。黄色ブドウ球菌に対してS1側を下にしたプレートについては、サンプルは30.54mmの直径、すなわち732mmを有する阻害ゾーンを示した。供試生物に対してS3側を下にしたプレートは29.74mmの直径、すなわち694mmを有する阻害ゾーンを示した。ここでも、この布地は抗菌性材料として効果的であり、両方の側部が抗菌特性を示していることは明らかである。曝露時間を24時間超に延長しても、さらなる抗菌性の阻害は示さないこともやはり明らかである。
【0077】
抗菌性の実施例3
38g/m布地の未処理サンプルを実施例1および2と同じ構造で作製した。この布地のサンプルを、実施例1および2と同じ方法で裁断し、調製した。供試生物に対してS側およびS側を下にした両方の試験プレートについて、第1の24時間時点でも第2の24時間時点でもゾーンは示されなかった。これは、未処理の38g/mサンプルは抗菌性特性を示しておらず、抗菌性材料として効果的でないことをはっきり示している。
【0078】
抗菌性の実施例4
次の2つの実施例では、50g/mの合計ベースの重量を有する5層化S−S−M−M−S構造材料を用いた。個々のスパンボンド層の重量はそれぞれ13.67g/mであり、メルトブローの個々の層の重量はそれぞれ4.50g/mであった。抗菌性材料を、1重量%の15%トリクロサン濃縮物の割合で層SおよびSの中に混ぜ込んだ。これによって、2つの外側のスパンボンド層のそれぞれに0.15%のトリクロサンが最終的に添加された。これは全部で50g/m布地の各平方メートル当たり0.041gのトリクロサンを加えたことになり、0.0820%の最終トリクロサン添加割合となった。
【0079】
ここでも、布地のサンプルについて、抗生物質感受性試験のためのKirby-Bauerディスク拡散法を用いて、黄色ブドウ球菌ATCC#6538を用いて、抗菌活性を試験した。供試生物はやはり、0.5 McFarland標準と同等の細胞密度、すなわち、分光光度計で625ナノメートルで測定して0.08〜0.10の吸収度を達成するように標準化した。供試生物を、2つの別個のMueller-Hinton寒天(MHAG)試験プレートに筋状に置いて同じ方法で調製した。布地を裁断してそれぞれが約6.35mm径の6つの円形サンプルにした。これらのサンプルのうちの3つを、S側を下にし、黄色ブドウ球菌と接触させて試験プレートの1つの上に置いた。残りの3つの円形サンプルを、S3側を下にし、供試生物と直接接触させて第2の試験プレート上に置いた。
【0080】
そのプレートを、30〜35℃で24±2時間インキュベートし、次いで抗菌特性を評価した。
【0081】
第1の24時間評価では、供試生物に対してS側を下にしたプレートは24.59mmの阻害ゾーン(直径)、すなわち475mmの面積を示した。供試生物に対してS側を下にしたプレートは24.16mmの阻害ゾーン、すなわち458mmの合計面積を示した。
【0082】
第2の24時間時点では非常に類似した結果が得られ、S側とS側の阻害ゾーンは23.98mm(452mm)と23.32mm(427mm)の阻害ゾーンをそれぞれ示した。ここでも、この布地は抗菌性材料として効果的であり、両方の側部が抗菌特性を示していることは明らかである。曝露時間を24時間超に延長しても、さらなる抗菌性の阻害は示さないこともやはり明らかである。
【0083】
抗菌性の実施例5
抗菌性の実施例4と同様に、SおよびS層への抗菌性材料の添加割合だけが異なっていること以外は、実施例5を全く同じ方法で調製した。この実施例では、濃縮物を両方の層に3%のレベルで加えた。これは、50g/m布地の平方メートル当たり0.123gのトリクロサンの抗菌性材料の添加割合をもたらし、0.2463%のトリクロサン添加割合となった。
【0084】
布地を、実施例4のサンプルと同じ方法で試験した。24時間時点評価では、S側を下にしたプレートは29.71mmの直径、すなわち693mmを有する阻害ゾーンを示した。供試生物に対してS3側を下にしたプレートは29.69mmの直径、すなわち692mmを有する阻害ゾーンを示した。
【0085】
第2の24時間時点ではやはり実施例3サンプルに類似していた。黄色ブドウ球菌に対してS側を下にしたプレートについては、サンプルは29.06mmの直径、すなわち663mmを有する阻害ゾーンを示した。供試生物に対してS3側を下にしたプレートは29.00mmの直径、すなわち661mmを有する阻害ゾーンを示した。ここでも、この布地は抗菌性材料として効果的であり、両方の側部が抗菌特性を示していることは明らかである。曝露時間を24時間超に延長しても、さらなる抗菌性の阻害は示さないこともやはり明らかである。
【0086】
抗菌性の実施例6
50g/m布地の未処理サンプルを実施例4および5と同じ構造で作製した。この布地のサンプルを、実施例4および5と同じ方法で裁断し、調製した。供試生物に対してS側およびS側を下にした両方の試験プレートについて、第1の24時間時点でも第2の24時間時点でもゾーンは示されなかった。これは、未処理の50g/mサンプルは抗菌性特性を示しておらず、抗菌性材料として効果的でないことをはっきり示している。
【0087】
試験手順の一部としてNelson Labsより2つの対照サンプルを提供された。これらは実施例7および8として確認する。実施例7は「正の対照」として確認し、実施例8は「負の対照」として確認した。
【0088】
抗菌性の実施例7
正の対照材料は既知の抗菌剤であり、他の布地サンプルと同じ方法で調製し、試験した。正の対照サンプルを2つの別個のMHAG試験プレートに置き、抗菌性阻害の評価を、2つの24時間時点で実施した。第1の24時間時点では、2つの正の対照サンプルはそれぞれ24.56および25.79mmの阻害ゾーンを示した。これらはそれぞれ474mmおよび522mmの面積を示した。第2の24時間時点では、2つの正の対照サンプルはそれぞれ25.68および26.10の阻害ゾーンを示した。これらはそれぞれ518mmおよび535mmの面積を示した。Nelson Labsより供給された正の対照サンプルは確かに抗菌特性を示しており、抗菌性材料として効果的であることは明らかである。
【0089】
抗菌性の実施例8
負の対照材料が抗菌特性を有していないことは既知であった。この材料のサンプルは、本研究の他のすべてと同じ方法で調製した。円形状の試料を裁断し、2つの別個のMHAG試験プレートに置き、2つの連続する24時間時点で抗菌活性の評価を実施した。負の対照サンプルは、いずれの24時間時点でも抗菌特性を示さなかった。これにより、この材料は抗菌用途に有効ではないことが確認された。
【0090】
単一の用途にしたがった布地の皮膚刺激可能性を測定するために、本明細書で特定した布地の追加の分析をClinical Research Laboratories, Inc., 371 Hoes Lane, Piscataway,ニュージャージー州、08854, 米国、で実施した。試験布地を、パッチのウェブリル(webril)部分に適合するように四角に裁断した。次いでパッチを、各対象の肩甲骨と腰の間の背中の上部に貼り、直接皮膚に接触させて48時間保持した。48時間たった時点でパッチを取り外し、その部位を皮膚刺激性についてランク付けした。研究の条件下では、試験布地は皮膚刺激を誘発した可能性を示さなかった。
【0091】
布地の他の分析には、oyto毒性(oytotoxicity)についてのインビトロでの溶出試験を含めた。この試験は、Department of Experimental Biology, Huntingdon Life Sciences Limited, Woolley Road, Alconbury, Huntingdon, Cambridgeshire PE28 4HS,英国、で実施した。試験には、試験サンプルおよび対照サンプルの溶出液に24±0.5時間曝した、96ウェルプレート中で成長させたMRC−5細胞(ヒトの胎児肺線維芽細胞)のサブコンフルエントな単層を用いた。溶出液は、抗生物質および10%(容積/容積)ウシ胎仔血清を含むイーグル基本培地(BME)中で、24±0.5時間、軌道型振とう機で、サンプルおよび対照を37±1℃でインキュベーションして調製した。試験サンプルを殺菌せずに供給し、0.2g/mlの割合で溶出させた。負の対照は0.2g/mlの割合で溶出させ、正の対照は0.08g/mlの培地で溶出させた。試験サンプル溶出液を、希釈し試験する前に、0.45pmフィルターに通した。サンプルおよび正の対照溶出液を2段階で逐次希釈した。負の対照は希釈しないで試験した。4つの細胞培地を、サンプルまたは対照溶出液の各希釈液に曝露した。染色した培地の細胞毒性を顕微鏡で評価し、細胞毒性滴定では非毒性であると判断された。
【0092】
本明細書で述べた布地について実施したさらに別の試験は、固定化抗菌剤の抗菌活性を測定するために、ASTM E2149−01にしたがって、NAMSA, 9 Morgan, Irvine カリフォルニア州、92618によって実施した。サンプル布地は1.40×10(CFU/ml)の出発生物数を有するとして試験した。対照は1.32×10(CFU/ml)の出発生物数を有していた。0.5時間後、サンプル布地は1.59×10(CFU/ml)の生物数を有し、対照は1.83×10(CFU/ml)の生物数を有していた。1時間後、サンプル布地は2.00×10(CFU/ml)の生物数を有し、対照は2.11×10(CFU/ml)の生物数を有していた。1.5時間後、サンプル布地は1.60×10(CFU/ml)の生物数を有し、対照は2.12×10(CFU/ml)の生物数を有していた。2時間後、布地サンプルは1.58×10(CFU/ml)の生物数を有し、対照は1.83×10(CFU/ml)の生物数を有していた。4時間後、布地サンプルは1.68×10(CFU/ml)の生物数を有し、対照は1.95×10(CFU/ml)の生物数を有していた。
【0093】
上記したように、抗菌性材料は多層化布地のいずれにもまたすべてにも混ぜ込むことができる。上記の好ましい実施例は、様々な布地の外層に抗菌性材料を含む材料を示している。上記説明は本発明の好ましい実施形態に関しているだけであって、添付の特許請求の範囲に特定されかつ示されている本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正形態または変更形態を含めることができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の布地、より具体的には本発明の布地の製造で使用する繊維の製造のためのプロセスの概略図である。
【図2】本発明で考慮する布地を作製するのに用いる繊維の製造に有用な第2の実施形態の概略図である。
【図3】本発明による繊維を製造するための他の実施形態の概略図である。
【図4】本発明による繊維を製造するためのさらに他の方法を示す概略図である。
【図5】スパンボンドポリプロピレン単層化布地の概略または概要図である。
【図6】スパンボンドポリプロピレン2層化布地の概略または概要図である。
【図7】スパンボンドポリプロピレンの3層(プラス)化布地の概略または概要図である。
【図8】メルトブローポリプロピレン単層布地の概略または概要図である。
【図9】メルトブローポリプロピレン2層化布地の概略図である。
【図10】多層メルトブローポリプロピレン布地の概略図である。
【図11】スパンボンドとメルトブローを組み合せた複合布地の概略図である。
【図12】混合したスパンボンドおよびメルトブロー複合布地の他の実施形態の概略図である。
【図13】スパンボンドおよびメルトブロー複合布地の他の実施形態の概略図である。
【図14】スパンボンド、メルトブローおよびフィルム材料の他の複合布地の概略図である。
【図15】ポリマー溶融材料に添加した抗菌剤が混ぜ込まれているスパンボンド布地の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性のガス透過性布地であって、繊維中にほぼ均一に分散した抗菌剤と混合された少なくとも1種の溶融押出し可能なポリマーからなる不織配列の押出ポリマー繊維を、組み合せて含む布地。
【請求項2】
前記繊維が少なくとも一部分スパンボンドである、請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記繊維が少なくとも一部分メルトブローである、請求項1に記載の布地。
【請求項4】
前記布地が不織スパンボンド材料およびメルトブロー材料の層の混合体からなる、請求項1に記載の布地。
【請求項5】
前記布地が不織スパンボンド繊維およびメルトブロー繊維の層の配列からなり、前記配列がS−S、S−S−S、M−M、M−M−M、S−M−S、S−M−M−S、S−M−M−M−S、およびS−S−M−M−S(Sはスパンボンド層であり、Mはメルトブロー層である)からなる群から選択される、請求項1に記載の布地。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンクロリド)およびポリスチレンからなる群から選択される1種または複数の熱可塑性ポリオレフィンである、請求項1に記載の布地。
【請求項7】
前記抗菌性材料が前記布地の約0.1〜25重量%を占める、請求項1に記載の布地。
【請求項8】
前記繊維が16.7〜18.0ミクロンの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の布地。
【請求項9】
前記布地がさらにフィルム層を含む、請求項1に記載の布地。
【請求項10】
前記繊維を、ポリマーおよび抗菌剤の予備混合と、続いての繊維の溶融処理および押出しによって形成させる、請求項1に記載の布地。
【請求項11】
前記溶融処理を押出機中で実施する、請求項10に記載の布地。
【請求項12】
前記ポリマーが、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、およびその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の布地。
【請求項13】
前記繊維が、少なくとも一部分不織状であり、少なくとも一部分は熱的に結合されている、請求項1に記載の布地。
【請求項14】
前記抗菌性材料が約0.1〜10重量%を占める、請求項1に記載の布地。
【請求項15】
前記抗菌性材料が約0.1〜1.0重量%を占める、請求項1に記載の布地。
【請求項16】
ガス透過性の抗菌性不織布地の製造方法であって、下記の工程からなる:
(a)溶融押出し可能な材料からポリマー溶融物を形成する工程と、
(b)抗菌剤を前記溶融物中に混合する工程と、
(e)得られた混合物を押し出して固相繊維を形成する工程と、
(d)多数の繊維を集約させて不織布地層を形成する工程。
【請求項17】
押し出された繊維がスパンボンドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記押し出された繊維がメルトブローである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
集約させる工程が、スパンボンド繊維の層をメルトブロー繊維に組み込む工程を含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−517171(P2008−517171A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536265(P2007−536265)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003989
【国際公開番号】WO2006/040589
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507125538)アドヴァンスト ファブリックス (エスエイエイエフ) (1)
【Fターム(参考)】