抗血管新生融合タンパク質
VEGF受容体のIg様ドメインフラグメントとIgGのFcドメインなどの多量体成分とを含み、VEGFとPLGFSとに結合する優れた能力を有し、抗血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防及び治療、腫瘍の抑制に使用可能な抗血管新生融合タンパク質が提供される。前記融合タンパク質は、良好な安定性、長い半減期を有し、VEGF分子に多価結合可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の分野、より具体的には、抗血管新生融合タンパク質及びその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、成人の血管系は主に休眠状態にある、新しい血管の形成(血管新生)は、少数の生理学的及び病理学的状況においてのみ生じる。生理学的状況において、血管新生は、創傷治癒中、組織の再生中、および女性の生理中に生じる。病理学的状況において、血管新生は、腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬、および加齢黄斑変性症(AMD)で生じる。腫瘍血管新性は、腫瘍の成長と転移の生命線である(非特許文献1)。近年、血管新生療法は、腫瘍などの疾患の治療にとってのホットスポットであり最も期待される分野となっている。
【0003】
血管新生は、複数の血管新生促進及び抗血管新生因子から成る複雑な制御システムによる調節を受ける。成人では、血管新生は、バランスを達成するためにこれらの血管新生促進及び抗血管新生因子によって高度に調節される。血管内皮増殖因子(VEGF)は、今日までに発見されている主要な特異的血管新生促進因子であり、これは血管の内皮細胞の基底膜の加水分解と遊走のみならず血管の構築を高い効率と特異性で調節する(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。したがって、VEGFとそのシグナル経路は、腫瘍や関節リウマチなどの疾患に対する抗血管新生療法の重要な治療標的になっている。
【0004】
3種類のVEGF受容体が存在する。即ち、VEGFR-1(fms様チロシンキナーゼ、flt-1)、VEGFR-2(胎児腎臓キナーゼ1−マウスホモログ/キナーゼ挿入ドメイン含有受容体−ヒトホモログ、Flk-1/KDR)及びVEGFR-3(flt-4)、が存在する。VEGFR-1と2とは主として内皮細胞の表面上に分布しているのに対して、VEGFR-3はリンパ管内皮に分布している。それらは、7つの免疫グロブリン様構造、一つの膜貫通領域、及びチロシンキナーゼドメインを含む細胞外ドメインから成る。チロシンキナーゼの活性は、前記受容体のそれらのリガンドに対する結合によって活性化され、これら受容体のリン酸化は、細胞内における一連の酵素反応及びその他の反応を誘導する。Flk-1(KDR)は、とりわけ、内皮細胞の増殖と血管新生とにおいて中枢的な役割を果たす。
【0005】
VEGFと可溶性VEGF受容体フラグメントとに対する抗体によって、血管内皮細胞上でのVEGFとVEGF受容体(flt-1, KDRなど)の相互作用を阻止することができ、それによって、VEGF媒介シグナル伝達が阻害され、高いVEGF発現から生じる病理学的血管新生を阻害することができる。そのようなVEGF阻害物質としてアバスチン(Avastin)(ベバシズマブ(bevacizumab))、ルセンティス(Lucentis)、VEGF-Trap、などがあり、これらは血管新生関連疾患の治療に有用である。アバスチン、血管新生に対する抗癌剤、2004年にFDAによって認可、はVEGFに特異的に結合するモノクローナル抗体である。それはVEGFに対する結合によってVEGFのその受容体への結合を阻止する(非特許文献5)。しかしながら、アバスチンには二つの大きな欠点がある。即ち、1)2.3×10-9という比較的低い結合親和性によって抗体の用量が大きくなること、そして、2)PLGF(胎盤成長因子)に結合する能力が無いこと、である。PLGFは、血管内皮成長因子ファミリーのメンバーであって、1991年にMaglione他によってヒト胎盤cDNAライブラリーから単離された。PLGFは、VEGFR-1(Flt1)に特異的に結合することによってその生物活性を示す。アテローム性動脈硬化症、糖尿病による末端微小循環と眼底における病理学的変化などのいくつかの慢性虚血性疾患が血管新生に関連している。PLGFとVEGFR-1とによって虚血性組織の血管再建が促進される。PLGFは、腫瘍微小環境における重要な血管新生促進成長因子である。
【0006】
特許文献1と特許文献2とは、flt-1部分フラグメントとKDR部分フラグメントとから融合されたいくつかのタンパク質を記載している。しかしながら、これらのタンパク質は、安定性が低く重大な副作用があるため、それ以上開発を進められることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6100071号
【特許文献2】米国特許第5952199号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ハナハン(Hanahan)およびフォークマン(Folkman)、Cell、1996、86:353-364
【非特許文献2】フォークマン ジェイ(Folkman J)他、Science 1987、235:442
【非特許文献3】ジャンピエトロ ジー(Giampietro G)他、Cancer Metastasis Rev 1994
【非特許文献4】フェラーラ(Ferrara)、Endocrine Reviews, 2004、25(4):581-611
【非特許文献5】フェラーラ(Ferrara)他、 Nature Reviews Drug Discovery, 2004, 3:391-400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、臨床的に有効な抗血管新生薬を開発するために、血管新生の分野において更なる研究が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、抗血管新生融合タンパク質とその利用法及び組成物とを提供することにある。
【0011】
本発明の更に別の態様において、そのアミノ酸配列が、
(a)血管内皮成長因子(VEGF)受容体成分をコードするアミノ酸配列、そして
(b)多量体化成分(multimerizing component)をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質が提供される。
【0012】
一好適実施例において、前記VEGF受容体成分はそのような融合ポリペプチドの唯一のVEGF受容体である。この受容体成分は、イン・ヴィヴォでの活性の半減期が前記二つのFc一本鎖の二量体化によって高められるように各Fc鎖に共役される。
【0013】
別の好適実施例において、前記VEGF受容体成分は、
(1)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン (fms-様チロシンキナーゼ、VEGFR-1)(Flt1D2、配列識別番号1に記載の配列を有する)、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体−ヒトホモログ)(KDRD2)、KDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD3)、より好ましくは、KDRD2-KDRD3配列は配列識別番号2に記載される、を含む、
(2)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD4、配列識別番号3に記載の配列を有する)、を含む、又は
(3)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D4、配列識別番号4に記載の配列を有する)、を含む、から選択される1つである。
【0014】
別の好適実施例において、前記多量体化成分は、ヒトIgG、IgM又はIgAのFc領域から選択される。
【0015】
別の好適実施例において、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4から選択され、より好ましくは、前記IgGはIgG1であり、最も好ましくは前記IgG1 Fc配列は配列識別番号5に記載される。
【0016】
別の好適実施例において、上記(1)において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号6に記載され、上記(2) において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号7に記載され、或いは上記(3)において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号8に記載される。
【0017】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質をコードする核酸分子が提供される。
【0018】
本発明の別態様において、前記核酸分子を含むベクターが提供される。
【0019】
本発明の別態様において、前記ベクターを含む、またはそのゲノムに組み込まれた前記核酸分子を有する遺伝子的に操作された細胞が提供される。
【0020】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質を製造するための方法が提供され、当該方法は、前記細胞を培養する工程と、前記融合タンパク質を発現し分離する工程とを含む。
【0021】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質をVEGF又はPLGFの結合での利用、血管新生(病理的血管新生など)を阻害するための組成物の作成における利用、VEGF関連疾患(VEGFの過剰発現に関連する疾患など)の予防又は治療における利用、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制における利用法、が提供される。
【0022】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための組成物が提供され、当該組成物は、
(i) 有効量の前記融合タンパク質、そして
(ii) 薬学的に許容可能な担体、を含む。
【0023】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための組成物の製造方法が提供され、当該方法は、安全で有効な量の前記融合タンパク質を薬学的に許容される担体と組み合わせる工程を有する。
【0024】
本発明の別の好適実施例において、前記融合タンパク質又は前記組成物を含むキットが提供される。
【0025】
本発明の別の好適実施例において、前記キットは、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、に有用である。
【0026】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための方法が提供され、当該方法は有効量の前記融合タンパク質を対象体に投与する工程を有する。
【0027】
本発明のその他の態様は本開示に鑑みて当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】Flt1の細胞外ドメインのアミノ酸配列とそのドメイン構造とを図示している。
【図1B】KDRの細胞外ドメインのアミノ酸配列とそのドメイン構造とを図示している。
【図2】融合タンパク質SR1-3の模式的なプロファイルを示す。
【図3】PCRアセンブリを使用して得られた約1800bpのSR1標的フラグメントのアガロース電気泳動検証を図示している。
【図4】SDS-PAGE還元(左側)及び非還元(右側)電気泳動によるSR1およびTrapタンパク質の一時的発現に関する分析の結果を図示している。
【図5】精製SR1とTrapタンパク質のウェスタンブロッティングによる検出の結果を図示している。
【図6】安定的にSR1を発現するモノクローナル細胞株の電気泳動分析の結果を図示し、5#は前記モノクローナル細胞株の番号を表している。
【図7】SR1及びTrapタンパク質のVEGFに対する結合能力の分析結果を図示している。
【図8】前記SR1融合タンパク質分子のVEGFタンパク質分子への結合の比率の計算結果を図示している。
【図9】VEGFタンパク質の阻害、HUVECの増殖の促進におけるSR1およびTrapタンパク質の活性に関する分析結果を図示し、ここで、陽性はVEGFは含有するがSR1又はTrapは含有しないことを示し、陰性はVEGFもSR1もTrapも含有しないサンプル希釈物を示している。
【図10】PLGFタンパク質の阻害、HUVECの増殖の促進におけるSR1およびTrapタンパク質の活性に関する結果を図示し、ここで、陽性はPLGFを含有するがSR1又はTrapは含有しないことを示し、陰性はPLGFもSR1もTrapも含有しないサンプル希釈物を示している。
【図11】トリ胚絨毛尿膜の血管新生に対する様々な用量のSR1融合タンパク質及びTrap対照の作用を示す図であり、PBS処理群は陰性対照としての役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者らは広範囲の研究を行いVEGF受容体の細胞外ドメインフラグメントを多量体化成分(IgG Fcなど)をコードする物質と融合することによって形成される融合タンパク質は、VEGFとPLGFとに結合する極めて優れた能力を有し、血管新生の抑制、VEGF関連疾患の予防、又は腫瘍の抑制に使用することが可能であることを見出した。この融合タンパク質は、良好な安定性と長い半減期を有し、VEGF分子に多価結合可能である。
【0030】
ここでの記載において、Flt1, flt-1及びVEGFR-1は、特に銘記されない限り、共にVEGF受容体1を指すものとして相互交換可能に使用することができる。
【0031】
ここでの記載において、Flk-1, KDR及びVEGFR-2は、特に銘記されない限り、共にVEGF受容体2を指すものとして相互交換可能に使用することができる。
【0032】
ここでの記載において、用語「含む(comprises)」、「持つ(have)」、又は、「有する(include)」、及びそれらの文法的変化形は、「含有する(contain)」、「主として・・・から成る(mainly composed of...)」、「実質的に・・・から成る(essentially comprised of・・・)」を包含する。「主として・・・から成る(mainly composed of...)」、「実質的に・・・から成る(essentially comprised of・・・)は、「含む(comprises)」、「持つ(have)」又は「有する(include)」の従属的概念である。
【0033】
ここでの使用において、特に銘記されない限り、前記融合タンパク質は、組み換え宿主細胞を培養することによって得られる精製産生物である、又は、他のタンパク質、ポリペプチド又は分子との会合のない精製抽出物である、単離タンパク質である。
【0034】
ここでの使用において、「対象体」、「個人」、又は「患者」は、診断又は治療を必要とする任意の対象体であって、特に、哺乳動物対象体、より具体的にはヒトであり、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ラビット、ラット、マウス、ウマ等を含むその他の対象体を指す。特に対象となるのはVEGFを過剰発現するそれらの対象体である。
【0035】
本発明は、そのアミノ酸配列が、(a)VEGF受容体成分をコードするアミノ酸配列、及び(b) 多量体化成分をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質を提供する。
【0036】
好ましくは、前記VEGF受容体成分は、(1)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD2)、及びKDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメインドメイン(KDRD3)を含む、(2)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン (Flt1D2)及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD4)を含む、又は、(3)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D4)を含む、から選択される1つである。
【0037】
Flt1とKDRの個々の免疫グロブリン様ドメインは、公共データベースから入手することができる。Flt1とKDRの個々の免疫グロブリン様ドメインのアミノ酸配列間に明確な分岐線は存在しないので、従って、これら個々の免疫グロブリン様ドメインのアミノ酸配列の長さは、ある程度異なるものとすることができる。したがって、本発明による融合タンパク質のアミノ酸配列もある程度異なるものとすることができる。それらは全ての本発明の保護範囲に属する。
【0038】
一実施例において、本発明は、flt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとKDRの細胞外ドメインの第2及び第3免疫グロブリン様ドメインとから融合され、それによってその融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を備えるとともに、二価結合のための十分な空間的距離を有するように構成される、VEGF受容体成分の構造を提供する。
【0039】
別実施例において、本発明は、flt-1の細胞外ドメインの第4免疫グロブリン様ドメインとflt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとの、その融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を有するような融合から形成されるVEGF受容体成分の構造を提供する。
【0040】
別実施例において、本発明は、KDRの細胞外ドメインの第4免疫グロブリン様ドメインとflt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとの、その融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を有するような融合から形成されるVEGF受容体成分の構造を提供する。
【0041】
上記融合タンパク質を構築するための技術は分子クローニング法に基づくものである。具体的な実験手順は、「分子クローニング」第2及び第3版、などの実験マニュアルに見出すことができる。上述の融合タンパク質をコードするDNAは、全遺伝子合成などのなどの従来技術によって、或いは、flt-1またはKDRのそれぞれのフラグメントのアセンブリから得ることができる。使用するベクターは、分子生物学において一般的に使用されるプラスミドベクターとすることができる。タンパク質の細胞からの分泌を確実にするために、前記それぞれの融合タンパク質のアミノ酸末端の前にタンパク質分泌シグナル配列を追加する。前記ベクター配列は、遺伝子発現を駆動するプロモーター、タンパク質翻訳のための開始及び停止シグナルとポリアデニル酸(PolyA)配列とを含む。前記ベクターは、バクテリア内でのプラスミドの増殖を促進するための抗生物質耐性遺伝子を含む。更に、前記ベクターは、安定的にトランスフェクトされる細胞系のスクリーニングのための真核細胞の選択遺伝子も含む。
【0042】
前記多量体化成分をコードするアミノ酸配列は、一般に、但しそれに限定されるものではないが、ヒト免疫グロブリンのFc配列であり、それらは全て本発明の保護範囲に属する。ヒト免疫グロブリンは、例えば、IgG, IgM及びIgA、又は、IgGのサブタイプ、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。前記免疫グロブリンFcフラグメントは、Fc全長又は部分配列であり、CH2フラグメント、CH3フラグメント、及びヒンジ領域フラグメントから選択される。
【0043】
前記VEGF受容体成分は、イン・ヴィヴォ活性の半減期が二つのFc一本鎖の二量化によって促進されるように、各Fc鎖に共役される。
【0044】
本発明においては、前記VEGF受容体成分又は多量体化成分の任意の生物活性フラグメントを使用することができる。ここでの使用において、「VEGF受容体成分又は多量体化成分の任意の生物活性フラグメント」とは、タンパク質フラグメントとしてのそのフラグメントが、上で定義したVEGF受容体成分又は多量体化成分の機能の全部又は一部をまだ保持(その生物活性の少なくとも50%、好ましくは、その生物活性の70%、より好ましくは、その生物活性の少なくとも90%など)していることを意味する。上で定義したVEGF受容体成分又は多量体化成分をベースにした単数又は複数(1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアミノ酸残基の置換、欠失、又は付加から形成されるタンパク質も本発明に含まれる。これらの単数又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、又は付加から形成されるタンパク質も、それらが融合タンパク質に形成される時にVEGFに結合する機能を有する。本発明は、更に、修飾又は改変タンパク質も使用することが可能であり、例えば、それらの半減期を延長しそれらの安定性を改善する目的で修飾されたタンパク質を使用することが可能である。
【0045】
前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分、又は、前記個々の免疫グロブリン様ドメインは、互いに直接に、又は、ポリペプチドリンカー(リンカーペプチド)を介して連結することができる。前記リンカーは、0〜20のアミノ酸、好ましくは、0〜15のアミノ酸、より好ましくは0〜10のアミノ酸、最も好ましくは、1〜4のアミノ酸、例えば、2〜3のアミノ酸、を含む。本発明の一好適実施例として、前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分、又は、前記個々の免疫グロブリン様ドメインは直接に互いに連結される。
【0046】
一好適実施例として、前記VEGF受容体成分は、前記融合タンパク質のアミノ末端(N末端)に位置するのに対して、前記多量体化成分は、前記融合タンパク質のカルボキシ末端(C末端)に位置する。オプションとして、これら二つの成分の位置は相互交換可能である。
【0047】
更に、オプションとして、前記融合タンパク質の前記アミノ末端(又はカルボキシ末端)は、更に、タンパク質タグとしての単数又は複数のポリペプチドフラグメントを含むことができる。本発明においては任意の適当なタグを使用可能である。例えば、これらのタグは、FLAG、 HA、HA1、c-Mye、6-His、などとすることができる。これらのタグは、前記融合タンパク質の精製のために使用可能である。一具体例として、前記融合タンパク質の前記C末端は、6-His構造と連結される。当業者は、前記タンパク質タグのアミノ酸配列と本発明の融合タンパク質のアミノ酸との間に、前記タグが融合タンパク質から開裂可能となるように制限酵素部位を配置させることが可能であることを理解するであろう。
【0048】
別の態様において、本発明は、更に、前記融合タンパク質をコードする単離核酸又はこの核酸の相補鎖を提供する。
【0049】
本発明の前記融合タンパク質をコードするDNA配列を、全配列として人工的に合成することが可能であり、或いは、それぞれPCR増幅によって得られる、前記VEGF成分をコードするDNA配列と、前記多量体化成分をコードするDNA配列とを互いに連結することによって形成することが可能である。
【0050】
本発明の前記融合タンパク質をコードするDNA配列を得た後、それを適当なベクターに導入し、次に、このベクターを適当な宿主細胞に形質転換することができる。そして、これらの形質転換された宿主細胞を培養して、本発明の融合タンパク質を単離と精製とによって得る。
【0051】
従って、本発明は、更に、前記融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。このベクターは、更に、前記融合タンパク質の発現を促進する前記核酸分子の配列に作動連結された発現調節配列を含むことができる。
【0052】
ここでの使用において、「作動連結される」とは、直鎖DNA配列のいくつかの部分がこの同じ直鎖DNA配列の他の部分の活性に影響を与えることができるような状況を指す。例えば、もしもプロモーターが配列の転写を調節するのであれば、それはその配列に作動連結されていることになる。
【0053】
本発明において、Pouwels他、Cloning Vectors, A Laboratory Manual (Elsevier, 更新版)に記載されているように、 バクテリア、菌類、酵母、哺乳動物細胞のクローニング及び発現に使用されるベクターのいくつかなどの、任意の適当なベクターを使用することが可能である。市販のベクターなどの、当該技術において知られている種々のベクターを使用することができる。例えば、ある市販のベクターを選択し、本発明の新規な融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現調節配列に作動連結してタンパク質発現ベクターを形成する。本発明の一実施例において、前記ベクターは、真核細胞ベクターであり、これは、たとえば以下のプロモーターを含むことができる。SV40、 LTR、CMVプロモーター、ペプチド鎖伸長因子遺伝子のプロモーター(EF-Ia)、トリ細胞質β-アクチンのプロモーター。そのような真核細胞ベクターは例えばpcDNAベクターである。
【0054】
更に、前記融合タンパク質をコードする核酸配列を含む組み換え細胞も本発明に含まれる。
【0055】
本発明において、前記「宿主細胞」という用語は、原核細胞と真核細胞との両方を含む。一般的に使用される原核細胞には、E. coli,Bacillus subtillis細胞などが含まれ、たとえば、それらは、E. coli HMS174(DE3)やBL21(DE3)等のE. coli細胞とできる。一般的に使用される真核宿主細胞には、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が含まれる。本発明の好適実施例において、真核細胞が宿主細胞として使用される。好ましくは、293細胞、CHO細胞、SP20細胞、NS0細胞、COS細胞、BHK細胞、PerC6細胞などの哺乳動物細胞が使用される。本発明においてその他多くの細胞もこれらのタンパク質の発現と生産とに使用可能であり、それらも本発明において使用可能な細胞のリストに含まれる。
【0056】
前記融合タンパク質を製造する方法も本発明に含まれる。前記方法は、前記融合タンパク質をコードする核酸を含む組み換え細胞を培養する工程を含む。前記融合タンパク質は、前記VEGF受容体成分と、前記多量体化成分又はその活性フラグメントとを含む。一実施例において、前記方法は、更に、前記融合タンパク質の単離および/又は精製を含む。
【0057】
上記製造手順から得られた融合タンパク質はそれらを精製して、SDS-PAGE電気泳動上でのシグナルバンドなど、実質的に均質な特性を示すものとすることができる。たとえば、前記組み換えタンパク質が発現し、上清中に分泌される時に、Millipore, Amicon, Pelliconやその他の会社から入手可能な膜製品などの、市販の限外ろ過膜を使用して前記タンパク質を単離することができる。まず、発現されたタンパク質を含む上清を濃縮する。この濃縮物をゲルクロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィー、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE等)や陽イオン交換クロマトグラフィー、を使用して更に精製する。前記ゲルマトリクスは、タンパク質精製用のマトリクスとして一般に使用されている、アガロース、デキストラン、ポリアミドなど、とすることができる。SP基が望ましいイオン交換基である。最後に、上述したようにして精製された製品は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)等を使用して更に精製することができる。最終的に実質的に均一な純度のタンパク質を達成するために、上述した精製工程のすべての様々な組み合わせを採用することができる。本発明の一好適実施例として、前記融合タンパク質が発現された後、前記サンプル培養溶液中の融合タンパク質の濃度を、酵素免疫測定法(ELISA)法やその他の方法を使用して測定することができる。前記融合タンパク質は免疫グロブリンFcフラグメントを含むので、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して前記発現した融合タンパク質を抽出することができる。
【0058】
発現した融合タンパク質は、前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分とに対する、特異的抗体、受容体又はリガンドを含むアフィニティークロマトグラフィカラムを使用して精製することができる。使用される前記アフィニティークロマトグラフィーカラムの特性に応じて、高塩濃度緩衝液、pH変化などの従来の方法を使用して前記アフィニティークロマトグラフィーカラムに結合した融合タンパク質を溶離することができる。
【0059】
本発明の前記種々の融合タンパク質の基本的機能は、VEGFシグナリング経路を阻止することであるので、これらの融合タンパク質は、血管新生又はVEGFに関連する疾患のために有用であるかもしれない。そのような疾患としては、非限定的に、種々の固形腫瘍、異常血管過形成などが含まれる。前記融合タンパク質は、抽出された組み換えタンパク質として患者の体内に注入することができる。或いは、前記融合タンパク質のDNA配列を適当なベクターに挿入して、遺伝子療法又は細胞療法の方法を使用して患者の体内で発現させることができる。従って、本発明の前記融合タンパク質は、これらタンパク質自身のみならず、これら融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする対応のDNA配列を含む、様々な方法で使用可能である。
【0060】
本発明の前記融合タンパク質は、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防と治療、又は腫瘍の抑制のための組成物を調製するために使用することができる。本発明における「腫瘍」は、それらの形成と発達とが異常血管過形成に関連するものである限り、任意のタイプのものであってよい。
【0061】
従って、本発明は、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防と治療、又は腫瘍(腫瘍細胞)の抑制のための組成物も提供し、この組成物は(1)有効量の前記融合タンパク質と、(2)薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0062】
ここでの使用において、「薬学的に許容可能」な成分とは、不都合な副作用(毒性、痒み、アレルギー反応など)なく、合理的な利益/リスク比率に相応してヒトおよび/又は哺乳動物における使用に適した物質をいう。「薬学的に許容可能な担体」という用語は、種々の賦形剤と希釈剤を含む、治療剤の投与に使用される担体をいう。この用語は、それ自身で必要な活性成分ではなく、投与後に不適切な毒性を持たない、薬用担体をさす。適当な担体は当業者に周知である。薬学的許容可能な担体に関する十分な記述は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)に、見い出すことができる。前記組成物中の薬学的に許容可能な担体は、水、鹹水、グリセロール、ソルビトールなどの液体とすることができる。更に、前記担体中に、潤滑剤、滑剤、保湿剤、又は乳化剤、pH緩衝物質及び安定剤、例えば、アルブミンなどの補助物質を含ませることができる。
【0063】
ここでの使用において、「有効量」又は「安全有効量」とは、単一用量又は連続用量の一部として、前記治療又は予防のために有効である量をさす。そのような量は、治療対象の健康及び生理学的状態、治療対象個人のタイプ(非ヒト霊長類等)、担当医師による医学的状態の評価、その他関連要素を含む様々な要因に依存する。前記量は、比較的広い範囲にあり、従来の実験によって決定可能であると予想される。
【0064】
上述した組成物は、哺乳動物への投与に適した様々な投与形態に調製することができる。この投与形態は、非限定的に、注射剤、カプセル剤、錠剤、乳剤、座剤が含まれ、好ましくは、注射剤である。
【0065】
使用時において、安全有効量の本発明の融合タンパク質が、哺乳動物(例えばヒト)に投与され、ここで、前記安全有効量は、一般に、少なくとも約0.1μg/kg体重であり、大半の場合は、約50mg/kg体重を超えず、好ましくは、前記量は、約1μg/kg体重〜約10mg/kg体重の範囲である。勿論、前記特定の用量は、投与経路、患者の健康、その他の、熟練した医師の能力の範囲内において周知の要因、に応じて変更するであろう。
【0066】
血管過形成に抵抗する、又は哺乳動物腫瘍を阻害するためでの使用時において、前記融合タンパク質は、前記タイプ、腫瘍の成長部位及び進行に応じて、全身投与又は局所投与することができる。
【0067】
本発明の前記組成物は、血管過形成に抵抗する、又は腫瘍細胞を殺すために直接に使用することが可能である。更に、それは、他の治療剤又は補助剤との併用で同時に使用することも可能である。
【0068】
本発明は、更に、血管過形成に対抗する、又は哺乳動物腫瘍を阻害するためのキットも提供し、それは本発明の前記融合タンパク質又は前記融合タンパク質含有組成物を含む。さらに、投与を容易にするために、前記キットは、更に、注射用の注射器および/又は薬学的に許容可能な担体および/又はインストラクションシート等も含む。
【0069】
本発明の主たる利点は以下の通りである。
【0070】
従来技術と比較して、本発明の融合タンパク質は(好ましくは、この融合タンパク質はSR1である)は、多価結合、低い副作用の特性を有し、それによって明らかな利点を示す。
【0071】
本発明は、ヒトVEGF受容体Flt1(VEGFRI)とKDR(VEGFRII)のVEGFに対する結合特性を保持しつつ、更に、Flt1のPLGFに対する結合活性も備えているのみならず、VEGFに結合する前記二つの免疫グロブリン様ドメイン間の長い距離による二価結合能力も提供する。
【0072】
次に、下記の例を参照して本発明について更に説明する。これらの例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を例示するものに過ぎないことが理解されるであろう。Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているもののような特定の条件、従来条件を特定することなく以下の例における実験処理において、製造業者によって推奨されている条件に一般的に従う。
【0073】
特に銘記されない限り、ここに使用される技術的及び科学的用語の全ては、当業者に知られているものと同じ意味を有する。更に、ここに記載のものに類似又は等価の方法又は材料を、本発明において使用可能である。ここに記載される好適な方法と材料は例示的なものに過ぎない。
【実施例】
【0074】
実施例1:前記融合タンパク質のコード配列を含むプラスミドの構築
Flt1とその細胞外ドメイン(D1-D7)との配列が図1Aに図示されている。KDRとその細胞外ドメイン(D1-D7)との配列が図1Bに図示されている。
【0075】
本発明のSR1-3融合タンパク質を構築するためのアミノ酸配列は、Flt1(GenBank Accession No. NP_ 002010.2)とKDR(GenBank Accession No.NP_002244)cDNAコード領域に対応する細胞外ドメインの前記免疫グロブリンドメインのアミノ酸配列に由来し、これらをヒト免疫グロブリンIgG1Fc(GenBank Accession No. P01857、位置104-330)のアミノ酸配列に融合した。シグナルペプチドは、Flt-1(GenBank Accession No. NP_ 002010.2、位置1-26)のシグナルペプチド配列に由来し、前記融合タンパク質のN末端配列の前に構築された。
【0076】
SR1-3の構造が図2に図示されている。SR1-3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列識別番号6、7及び8に示されている。
【0077】
SR1-3タンパク質のDNA配列は、両末端にXbaI/HindIII制限酵素部位を付加した状態で、遺伝子合成と構築によって、それぞれ得た。前記DNA配列を、pcDNA3.1(Invitrogen 社から購入)にクローニングし、各融合タンパク質のコード配列を含む前記プラスミドを得た。
【0078】
SR1コード配列を含む前記プラスミドを、前記制限酵素によって消化し、電気泳動によって確認したところ、予想サイズと一致する約1800bpの標的フラグメントが確認された。この電気泳動の結果を図3に図示している。
【0079】
その後の例においては、Trapタンパク質を対照として使用した。Trapコード配列を含むプラスミドは、以下のように構築された。前記Trap配列は、N末端からC末端にかけて、VEGFR-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)、KDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD3)及びヒトIgG1Fcを順に含んでいた。DNAを、GenBankに開示されている関連配列に従って合成し、これをpcDNA4ベクターに挿入した。
【0080】
Trapタンパク質は293F細胞において一過的に発現され、プロテインA−セファロースアフィニティークロマトグラフィーを使用して得られた。
【0081】
実施例2:細胞における融合タンパク質の発現とその精製
前記種々のプラスミドが構築された後、プラスミドDNAが高純度で抽出され、構築された融合タンパク質がトランスフェクション細胞において一過的に発現された。全てのタンパク質が精製された後、それらの生物活性を確認するために、それらを特定の動物モデルに投与した。その後、前記プラスミドを生産用に安定CHO細胞にトランスフェクトした。
【0082】
2.1.一過的トラスフェクションによる発現
トランスフェクションの一日前、よく増殖したFreestyle 293F細胞(Invitrogen社から購入)を、1×106細胞/mlの密度でプレーティングした。SR1コード配列又はTrapコード配列を含む実施例1で構築されたプラスミドDNAを、Feestyle MAX試薬(Invitrogen社から購入)と1:12の比率で混合し、その混合物を室温で10〜15分間放置した。その後、この混合物を、前記細胞培養溶液に滴下によってゆっくりと添加し、細胞を135rpmで回転する振動台上で37℃、8%CO2の条件下で3日間連続的に培養した。上清を収集し、プロテインAカラムを使用して、少量の発現した融合タンパク質を精製した。還元及び非還元SDS-PAGEの分析の結果を図4に示す。
【0083】
還元電気泳動(図4の左側パネル)の結果から、SR1が精製標的融合タンパク質のバンドであること、そして、これが約80Kdの分子量を有する拡散したハンドであることが判る。Trapが陽性対照であった。SR1の理論上分子量はTrapよりも10Kd大きく、これは予想された分子量と実質的に一致するものであった。
【0084】
非還元電気泳動(図4の右側パネル)の結果から、SR1タンパク質とTrapタンパク質との両方が還元電気泳動における対応物のそれの二倍の分子量を有し、自然条件下においてこれらタンパク質が二量体を形成したことを示したことが判る。
【0085】
前記精製タンパク質のウェスタンブロッティング。前記精製タンパク質を、それぞれ、非還元SDS-PAGE電気泳動にかけた。バンドを膜に移し、5%無脂肪ミルク中で1時間ブロッキングした。次に、ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPを1:1000の希釈率で添加し、37℃で1時間結合させた。十分な洗浄後、DAB可視化を使用して免疫染色を行い、画像を採取し保存した。図5を参照。ここで、1がTrap対照、2がSR1融合タンパク質である。
【0086】
2.2.安定的トランスフェクションによる発現
トランスフェクションにはBiorad電気穿孔装置を使用した。SR1コード配列又はTrapコード配列を含む実施例1において構築したプラスミドDNA約30μgを、酵素PvuIを使用して線状化し、1 ×107の DG44細胞(Invitrogen社から購入)と均質状態まで混合した。この混合物を、10〜15分間氷上に載置し、次に、300V、900uFで電気穿孔を行った。その後、前記細胞を96-ウェルプレートに5 ×104/mlで、各ウェルに100μl分注した。3日目にMTXを添加した。5日後、培養培地を交換し、約14日後、前記細胞の増幅培養のために耐性モノクローンを取り出した。最後に、前記細胞を発酵槽で培養して前記融合タンパク質を産生した。
【0087】
高発現(5シャープ印)のモノクローンを選択し、これを非還元電気泳動にかけた。その結果を図6に示す。このモノクローンは、振動フラスコ内において約100mg/Lの最も高い発現を有していた。
【0088】
実施例3:前記融合タンパク質のVEGFに対する結合能力の分析
最初に、組み換えVEGFタンパク質(SionBiological 社から購入のVEGF165)を96-ウェルELISAプレート上でコーティングした。5%無脂肪ミルクパウダー溶液を使用して非特異的結合部位をブロッキングした。次に、前記ウェルにそれぞれ、Trapタンパク質を対照として、異なる濃度の前記融合タンパク質を添加した。前記プレートを37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ヒツジ抗ヒトIgG Fc-HRPを添加し、プレートをTMBの使用により可視化した。個々のウェルにおけるOD値をELISA装置の使用により測定した。ここで高い値はVEGFへの結合能力が高いことを表している。点と点を連結して滑らかな曲線を形成し、融合タンパク質とTrapとのEC50をそれぞれ計算した。その結果を図7に示す。
【0089】
図7において、曲線(黒塗り三角印)はTrap対照を示し、曲線(黒塗り四角印)は融合タンパク質SR1を示している。これらの結果から、前記融合タンパク質は、Trapが持つものよりも高いVEGFに対する結合活性を有していることがわかる。前記融合タンパク質のEC50濃度(半有効濃度)を計算したところ0.092μg/mlであり、Trap対照タンパク質のEC50濃度は0.136μg/mlであった。
【0090】
実施例4:BIAcoreを使用した融合タンパク質SR1のVEGFに対する分子結合率の分析
前記SR1融合タンパク質を、アミンカップリング化学法を使用してBIAcoreチップ(BIACORE)上に予め固定しておいた特異的抗-Fc抗体によって捕捉した。陰性対照としての抗体を有する表面を使用して、VEGF-165(SionBiological株式会社から購入)を融合タンパク質の表面に1nM、10nM及び50nMで10μl/分の速度で、1時間にわたって注入した。各注入の最後に飽和結合が達成される状態で、リアルタイム結合シグナルを記録した。VEGF 165に対するSR1融合タンパク質の分子結合率を計算した。
【0091】
溶液において、1nMの濃度のSR1融合タンパク質を、様々な濃度のVEGF 165と混合した。1時間のインキュベーション後、溶液中の遊離SR1の濃度を、SR1のVEGF165固定表面に対する結合のシグナルを測定することによって測定した。前記BIAcore結合シグナルを、検量線を使用して分子濃度に変換した。VEGF165に対するSR1融合タンパク質の分子結合率を算出した。
【0092】
その結果を図8に示す。この図における傾きは-2に近く、このことはVEGFに対するSR1の結合比が約1:2であることを示唆している。
【0093】
実施例5:HUVECの阻害における前記融合タンパク質の活性の分析
良好に増殖したヒト臍静脈血管内皮細胞(Cambrex Bio Science Walkersville社)の懸濁物を選択し、4〜8×104細胞/mlの細胞濃度に調整した。0.4%ゼラチンによって予めコーティングされた96-ウェル細胞培養プレートに、前記細胞懸濁物を100μl/ウェルでプレーティングした。その後、このプレートを37℃、5%CO2インキュベーターで24時間インキュベートした。VEGFサンプルを、2% FBSを含有する基礎培地で400ng/mlに希釈した。テストサンプルと陽性対照サンプル(Trap)とを、それぞれ2%FBS含有の基礎培地で140μg/mlにまで希釈し、その後、これを二倍に希釈して8勾配を得た。前記96ウェル培養プレート中の全培地を吸引し、前記サンプルを100μl/ウェルの割合で添加した。前記プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターで72時間更にインキュベートした。その後、各ウェルに、10μlのCCK-8試薬を添加し、そして、そのプレートを37℃、5%CO2のインキュベーターで2.5時間インキュベートし、続いて、450/650nmでの吸収率を測定した。その結果を図9に示す。
【0094】
PLGFII(以下のようにして得た。cDNAをGenBank Accession No. AAD30179によって提供されている配列情報に従って合成し、pcDNA4ベクター(Invitrogen)に挿入する前に、その3´末端に6× his配列を付加した。この構築物を293F細胞中で発現させ、PLGFIIを、NI-セファロース金属イオンキレートクロマトグラフィーを使用して精製した)を、2% FBSを含有する基礎培地で4000ng/mlに希釈した。テストサンプルと陽性対照サンプル(Trap)とを、それぞれ2%FBS含有の基礎培地で300μg/mlにまで希釈し、その後、これを連続的に二倍に希釈して8勾配を得た。前記96ウェル培養プレート中の全培地を吸引し、前記サンプルを100μl/ウェルの割合で添加した。前記プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターで72時間更にインキュベートした。その後、各ウェルに、10μlのCCK-8試薬を添加し、37℃、5% CO2インキュベーターで2.5時間更にインキュベートし、続いて、450/650nmでの吸収率を測定した。その結果を図10に示す。
【0095】
これらの実験結果から、融合タンパク質SR1とTrapとがそれぞれ20pMと28pMとの濃度である時、それらはHUVEC細胞を完全に阻害する活性を有し、前記融合タンパク質SR1が10pMの濃度である時、HUVEC細胞の増殖はほぼ完全に抑制されたのに対し、Trapが14pMの濃度である時は、それはHUVEC細胞に対する半分の阻害を有するものであることが判る。従って、前記融合タンパク質は、Trapと比較して、HUVEC細胞の増殖を阻害する類似の又はより良好な作用を有していたことが認められた。
【0096】
実施例6:トリ胎児絨毛尿膜の血管新生に対する融合タンパク質の作用の検出
外科手術に使用する装置とろ紙とを殺菌した。新鮮な受精卵を、37℃、50%湿度で6日間、連続して孵化させた。第6日において、前記卵のトリ胚の生存率について調べた。生存している卵を選択してそれに「窓」を開口した。最初に、絨毛尿膜の位置を、照射によって特定しこれを標識化した。次に、気室を有する卵の端部に穴を開け、その卵を絨毛尿膜が上向きになるように置いた。気室をゴム製ピペットバルブの使用よりゆっくり吸引し、絨毛尿膜が沈下し卵殻から分離させた。その後、ブレードを使用して1cm2の「窓」を絨毛尿膜の上方に開けた。10μlの前記サンプルを、前記ろ紙上に落とし、空気乾燥させた。前記ろ紙を、大きな血管から離し絨毛尿膜上にゆっくりと置いた。前記「窓」を透明テープで封止し、卵を更に48時間孵化させた。その後、前記透明テープを除去し、前記「窓」を拡大した。画像を解剖顕微鏡下で撮った。新生した血管の数を、各画像の分岐点で計数した。前記融合タンパク質SR1は3用量群に分けられる。即ち、0.4μg、2μgそして10μgであり、Trap対照は10μg用量であった(表1)。
【0097】
阻害率は以下の式によって計算された。
阻害率=(1−薬剤群の新生血管数/陰性対照群の血管数)×100%
【0098】
【表1】
【0099】
種々の用量の融合タンパク質SR1とTrap対照に関するトリ絨毛尿膜の画像が図11に示されている。
【0100】
これらのデータ及び画像の結果から、10μlの同じ濃度の融合タンパク質SR1とTrapは、トリ胎児絨毛尿膜の血管新生に対して実質的に類似の作用を有するものであることが判る。
【0101】
実施例7:融合タンパク質によるマウス腫瘍の成長の阻害
培養されたヒトA673横紋筋芽細胞(ATCC:CRL 1598)を、生理食塩水中に懸濁させた。この懸濁液100μl(1×106腫瘍細胞)を、6〜10週齢雌BLAB/cヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍細胞の接種開始の24時間後、それらの動物に、前記融合タンパク質SR1又は同じ用量のアバスチン(Avastin)を注射した。前記PBS対照群には、陰性対照と同じ容量でPBS緩衝液を注射した。アバスチンはRoche社(ロット番号:3615286 HK 0508.1070)から購入した。各時において、注射用量は、週に2回、各時、各マウスに対して400μgであった。各群は4匹のマウスから構成された。各週に腫瘍サイズを検出した。前記腫瘍細胞の接種の4週間後、動物を安楽死させ、腫瘍を取り出し計量した。その結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、28日間後においてSR1群の移植腫瘍の平均重量はアバスチン群のそれよりも約700mg、遥かに低いものであり、融合タンパク質SR1が腫瘍阻害に対して非常に良好な作用を有していたことがわかる。
【0104】
この開示に引用された参考文献は、あたかも各参考文献が個々に参考文献として合体させられるのと同じ程度にここに参考文献として合体される。更に、本発明の上記教示内容を読むことによって当業者は様々な改変及び改造を本発明に対して行うことができ、これらの均等物の全て本発明の添付の請求項の範囲に含まれることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の分野、より具体的には、抗血管新生融合タンパク質及びその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、成人の血管系は主に休眠状態にある、新しい血管の形成(血管新生)は、少数の生理学的及び病理学的状況においてのみ生じる。生理学的状況において、血管新生は、創傷治癒中、組織の再生中、および女性の生理中に生じる。病理学的状況において、血管新生は、腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬、および加齢黄斑変性症(AMD)で生じる。腫瘍血管新性は、腫瘍の成長と転移の生命線である(非特許文献1)。近年、血管新生療法は、腫瘍などの疾患の治療にとってのホットスポットであり最も期待される分野となっている。
【0003】
血管新生は、複数の血管新生促進及び抗血管新生因子から成る複雑な制御システムによる調節を受ける。成人では、血管新生は、バランスを達成するためにこれらの血管新生促進及び抗血管新生因子によって高度に調節される。血管内皮増殖因子(VEGF)は、今日までに発見されている主要な特異的血管新生促進因子であり、これは血管の内皮細胞の基底膜の加水分解と遊走のみならず血管の構築を高い効率と特異性で調節する(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。したがって、VEGFとそのシグナル経路は、腫瘍や関節リウマチなどの疾患に対する抗血管新生療法の重要な治療標的になっている。
【0004】
3種類のVEGF受容体が存在する。即ち、VEGFR-1(fms様チロシンキナーゼ、flt-1)、VEGFR-2(胎児腎臓キナーゼ1−マウスホモログ/キナーゼ挿入ドメイン含有受容体−ヒトホモログ、Flk-1/KDR)及びVEGFR-3(flt-4)、が存在する。VEGFR-1と2とは主として内皮細胞の表面上に分布しているのに対して、VEGFR-3はリンパ管内皮に分布している。それらは、7つの免疫グロブリン様構造、一つの膜貫通領域、及びチロシンキナーゼドメインを含む細胞外ドメインから成る。チロシンキナーゼの活性は、前記受容体のそれらのリガンドに対する結合によって活性化され、これら受容体のリン酸化は、細胞内における一連の酵素反応及びその他の反応を誘導する。Flk-1(KDR)は、とりわけ、内皮細胞の増殖と血管新生とにおいて中枢的な役割を果たす。
【0005】
VEGFと可溶性VEGF受容体フラグメントとに対する抗体によって、血管内皮細胞上でのVEGFとVEGF受容体(flt-1, KDRなど)の相互作用を阻止することができ、それによって、VEGF媒介シグナル伝達が阻害され、高いVEGF発現から生じる病理学的血管新生を阻害することができる。そのようなVEGF阻害物質としてアバスチン(Avastin)(ベバシズマブ(bevacizumab))、ルセンティス(Lucentis)、VEGF-Trap、などがあり、これらは血管新生関連疾患の治療に有用である。アバスチン、血管新生に対する抗癌剤、2004年にFDAによって認可、はVEGFに特異的に結合するモノクローナル抗体である。それはVEGFに対する結合によってVEGFのその受容体への結合を阻止する(非特許文献5)。しかしながら、アバスチンには二つの大きな欠点がある。即ち、1)2.3×10-9という比較的低い結合親和性によって抗体の用量が大きくなること、そして、2)PLGF(胎盤成長因子)に結合する能力が無いこと、である。PLGFは、血管内皮成長因子ファミリーのメンバーであって、1991年にMaglione他によってヒト胎盤cDNAライブラリーから単離された。PLGFは、VEGFR-1(Flt1)に特異的に結合することによってその生物活性を示す。アテローム性動脈硬化症、糖尿病による末端微小循環と眼底における病理学的変化などのいくつかの慢性虚血性疾患が血管新生に関連している。PLGFとVEGFR-1とによって虚血性組織の血管再建が促進される。PLGFは、腫瘍微小環境における重要な血管新生促進成長因子である。
【0006】
特許文献1と特許文献2とは、flt-1部分フラグメントとKDR部分フラグメントとから融合されたいくつかのタンパク質を記載している。しかしながら、これらのタンパク質は、安定性が低く重大な副作用があるため、それ以上開発を進められることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6100071号
【特許文献2】米国特許第5952199号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ハナハン(Hanahan)およびフォークマン(Folkman)、Cell、1996、86:353-364
【非特許文献2】フォークマン ジェイ(Folkman J)他、Science 1987、235:442
【非特許文献3】ジャンピエトロ ジー(Giampietro G)他、Cancer Metastasis Rev 1994
【非特許文献4】フェラーラ(Ferrara)、Endocrine Reviews, 2004、25(4):581-611
【非特許文献5】フェラーラ(Ferrara)他、 Nature Reviews Drug Discovery, 2004, 3:391-400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、臨床的に有効な抗血管新生薬を開発するために、血管新生の分野において更なる研究が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、抗血管新生融合タンパク質とその利用法及び組成物とを提供することにある。
【0011】
本発明の更に別の態様において、そのアミノ酸配列が、
(a)血管内皮成長因子(VEGF)受容体成分をコードするアミノ酸配列、そして
(b)多量体化成分(multimerizing component)をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質が提供される。
【0012】
一好適実施例において、前記VEGF受容体成分はそのような融合ポリペプチドの唯一のVEGF受容体である。この受容体成分は、イン・ヴィヴォでの活性の半減期が前記二つのFc一本鎖の二量体化によって高められるように各Fc鎖に共役される。
【0013】
別の好適実施例において、前記VEGF受容体成分は、
(1)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン (fms-様チロシンキナーゼ、VEGFR-1)(Flt1D2、配列識別番号1に記載の配列を有する)、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体−ヒトホモログ)(KDRD2)、KDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD3)、より好ましくは、KDRD2-KDRD3配列は配列識別番号2に記載される、を含む、
(2)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD4、配列識別番号3に記載の配列を有する)、を含む、又は
(3)(好ましくは、N末端からC末端までを連続的に含む)、flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D4、配列識別番号4に記載の配列を有する)、を含む、から選択される1つである。
【0014】
別の好適実施例において、前記多量体化成分は、ヒトIgG、IgM又はIgAのFc領域から選択される。
【0015】
別の好適実施例において、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4から選択され、より好ましくは、前記IgGはIgG1であり、最も好ましくは前記IgG1 Fc配列は配列識別番号5に記載される。
【0016】
別の好適実施例において、上記(1)において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号6に記載され、上記(2) において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号7に記載され、或いは上記(3)において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は配列識別番号8に記載される。
【0017】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質をコードする核酸分子が提供される。
【0018】
本発明の別態様において、前記核酸分子を含むベクターが提供される。
【0019】
本発明の別態様において、前記ベクターを含む、またはそのゲノムに組み込まれた前記核酸分子を有する遺伝子的に操作された細胞が提供される。
【0020】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質を製造するための方法が提供され、当該方法は、前記細胞を培養する工程と、前記融合タンパク質を発現し分離する工程とを含む。
【0021】
本発明の別態様において、前記融合タンパク質をVEGF又はPLGFの結合での利用、血管新生(病理的血管新生など)を阻害するための組成物の作成における利用、VEGF関連疾患(VEGFの過剰発現に関連する疾患など)の予防又は治療における利用、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制における利用法、が提供される。
【0022】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための組成物が提供され、当該組成物は、
(i) 有効量の前記融合タンパク質、そして
(ii) 薬学的に許容可能な担体、を含む。
【0023】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための組成物の製造方法が提供され、当該方法は、安全で有効な量の前記融合タンパク質を薬学的に許容される担体と組み合わせる工程を有する。
【0024】
本発明の別の好適実施例において、前記融合タンパク質又は前記組成物を含むキットが提供される。
【0025】
本発明の別の好適実施例において、前記キットは、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、に有用である。
【0026】
本発明の別態様において、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防又は治療、又は、腫瘍(腫瘍細胞)の抑制、のための方法が提供され、当該方法は有効量の前記融合タンパク質を対象体に投与する工程を有する。
【0027】
本発明のその他の態様は本開示に鑑みて当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】Flt1の細胞外ドメインのアミノ酸配列とそのドメイン構造とを図示している。
【図1B】KDRの細胞外ドメインのアミノ酸配列とそのドメイン構造とを図示している。
【図2】融合タンパク質SR1-3の模式的なプロファイルを示す。
【図3】PCRアセンブリを使用して得られた約1800bpのSR1標的フラグメントのアガロース電気泳動検証を図示している。
【図4】SDS-PAGE還元(左側)及び非還元(右側)電気泳動によるSR1およびTrapタンパク質の一時的発現に関する分析の結果を図示している。
【図5】精製SR1とTrapタンパク質のウェスタンブロッティングによる検出の結果を図示している。
【図6】安定的にSR1を発現するモノクローナル細胞株の電気泳動分析の結果を図示し、5#は前記モノクローナル細胞株の番号を表している。
【図7】SR1及びTrapタンパク質のVEGFに対する結合能力の分析結果を図示している。
【図8】前記SR1融合タンパク質分子のVEGFタンパク質分子への結合の比率の計算結果を図示している。
【図9】VEGFタンパク質の阻害、HUVECの増殖の促進におけるSR1およびTrapタンパク質の活性に関する分析結果を図示し、ここで、陽性はVEGFは含有するがSR1又はTrapは含有しないことを示し、陰性はVEGFもSR1もTrapも含有しないサンプル希釈物を示している。
【図10】PLGFタンパク質の阻害、HUVECの増殖の促進におけるSR1およびTrapタンパク質の活性に関する結果を図示し、ここで、陽性はPLGFを含有するがSR1又はTrapは含有しないことを示し、陰性はPLGFもSR1もTrapも含有しないサンプル希釈物を示している。
【図11】トリ胚絨毛尿膜の血管新生に対する様々な用量のSR1融合タンパク質及びTrap対照の作用を示す図であり、PBS処理群は陰性対照としての役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者らは広範囲の研究を行いVEGF受容体の細胞外ドメインフラグメントを多量体化成分(IgG Fcなど)をコードする物質と融合することによって形成される融合タンパク質は、VEGFとPLGFとに結合する極めて優れた能力を有し、血管新生の抑制、VEGF関連疾患の予防、又は腫瘍の抑制に使用することが可能であることを見出した。この融合タンパク質は、良好な安定性と長い半減期を有し、VEGF分子に多価結合可能である。
【0030】
ここでの記載において、Flt1, flt-1及びVEGFR-1は、特に銘記されない限り、共にVEGF受容体1を指すものとして相互交換可能に使用することができる。
【0031】
ここでの記載において、Flk-1, KDR及びVEGFR-2は、特に銘記されない限り、共にVEGF受容体2を指すものとして相互交換可能に使用することができる。
【0032】
ここでの記載において、用語「含む(comprises)」、「持つ(have)」、又は、「有する(include)」、及びそれらの文法的変化形は、「含有する(contain)」、「主として・・・から成る(mainly composed of...)」、「実質的に・・・から成る(essentially comprised of・・・)」を包含する。「主として・・・から成る(mainly composed of...)」、「実質的に・・・から成る(essentially comprised of・・・)は、「含む(comprises)」、「持つ(have)」又は「有する(include)」の従属的概念である。
【0033】
ここでの使用において、特に銘記されない限り、前記融合タンパク質は、組み換え宿主細胞を培養することによって得られる精製産生物である、又は、他のタンパク質、ポリペプチド又は分子との会合のない精製抽出物である、単離タンパク質である。
【0034】
ここでの使用において、「対象体」、「個人」、又は「患者」は、診断又は治療を必要とする任意の対象体であって、特に、哺乳動物対象体、より具体的にはヒトであり、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ラビット、ラット、マウス、ウマ等を含むその他の対象体を指す。特に対象となるのはVEGFを過剰発現するそれらの対象体である。
【0035】
本発明は、そのアミノ酸配列が、(a)VEGF受容体成分をコードするアミノ酸配列、及び(b) 多量体化成分をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質を提供する。
【0036】
好ましくは、前記VEGF受容体成分は、(1)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD2)、及びKDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメインドメイン(KDRD3)を含む、(2)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン (Flt1D2)及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD4)を含む、又は、(3)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D4)を含む、から選択される1つである。
【0037】
Flt1とKDRの個々の免疫グロブリン様ドメインは、公共データベースから入手することができる。Flt1とKDRの個々の免疫グロブリン様ドメインのアミノ酸配列間に明確な分岐線は存在しないので、従って、これら個々の免疫グロブリン様ドメインのアミノ酸配列の長さは、ある程度異なるものとすることができる。したがって、本発明による融合タンパク質のアミノ酸配列もある程度異なるものとすることができる。それらは全ての本発明の保護範囲に属する。
【0038】
一実施例において、本発明は、flt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとKDRの細胞外ドメインの第2及び第3免疫グロブリン様ドメインとから融合され、それによってその融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を備えるとともに、二価結合のための十分な空間的距離を有するように構成される、VEGF受容体成分の構造を提供する。
【0039】
別実施例において、本発明は、flt-1の細胞外ドメインの第4免疫グロブリン様ドメインとflt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとの、その融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を有するような融合から形成されるVEGF受容体成分の構造を提供する。
【0040】
別実施例において、本発明は、KDRの細胞外ドメインの第4免疫グロブリン様ドメインとflt-1の細胞外ドメインの第2免疫グロブリン様ドメインとの、その融合タンパク質がflt1のVEGFとPLGFとに対する結合親和性を有するような融合から形成されるVEGF受容体成分の構造を提供する。
【0041】
上記融合タンパク質を構築するための技術は分子クローニング法に基づくものである。具体的な実験手順は、「分子クローニング」第2及び第3版、などの実験マニュアルに見出すことができる。上述の融合タンパク質をコードするDNAは、全遺伝子合成などのなどの従来技術によって、或いは、flt-1またはKDRのそれぞれのフラグメントのアセンブリから得ることができる。使用するベクターは、分子生物学において一般的に使用されるプラスミドベクターとすることができる。タンパク質の細胞からの分泌を確実にするために、前記それぞれの融合タンパク質のアミノ酸末端の前にタンパク質分泌シグナル配列を追加する。前記ベクター配列は、遺伝子発現を駆動するプロモーター、タンパク質翻訳のための開始及び停止シグナルとポリアデニル酸(PolyA)配列とを含む。前記ベクターは、バクテリア内でのプラスミドの増殖を促進するための抗生物質耐性遺伝子を含む。更に、前記ベクターは、安定的にトランスフェクトされる細胞系のスクリーニングのための真核細胞の選択遺伝子も含む。
【0042】
前記多量体化成分をコードするアミノ酸配列は、一般に、但しそれに限定されるものではないが、ヒト免疫グロブリンのFc配列であり、それらは全て本発明の保護範囲に属する。ヒト免疫グロブリンは、例えば、IgG, IgM及びIgA、又は、IgGのサブタイプ、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。前記免疫グロブリンFcフラグメントは、Fc全長又は部分配列であり、CH2フラグメント、CH3フラグメント、及びヒンジ領域フラグメントから選択される。
【0043】
前記VEGF受容体成分は、イン・ヴィヴォ活性の半減期が二つのFc一本鎖の二量化によって促進されるように、各Fc鎖に共役される。
【0044】
本発明においては、前記VEGF受容体成分又は多量体化成分の任意の生物活性フラグメントを使用することができる。ここでの使用において、「VEGF受容体成分又は多量体化成分の任意の生物活性フラグメント」とは、タンパク質フラグメントとしてのそのフラグメントが、上で定義したVEGF受容体成分又は多量体化成分の機能の全部又は一部をまだ保持(その生物活性の少なくとも50%、好ましくは、その生物活性の70%、より好ましくは、その生物活性の少なくとも90%など)していることを意味する。上で定義したVEGF受容体成分又は多量体化成分をベースにした単数又は複数(1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアミノ酸残基の置換、欠失、又は付加から形成されるタンパク質も本発明に含まれる。これらの単数又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、又は付加から形成されるタンパク質も、それらが融合タンパク質に形成される時にVEGFに結合する機能を有する。本発明は、更に、修飾又は改変タンパク質も使用することが可能であり、例えば、それらの半減期を延長しそれらの安定性を改善する目的で修飾されたタンパク質を使用することが可能である。
【0045】
前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分、又は、前記個々の免疫グロブリン様ドメインは、互いに直接に、又は、ポリペプチドリンカー(リンカーペプチド)を介して連結することができる。前記リンカーは、0〜20のアミノ酸、好ましくは、0〜15のアミノ酸、より好ましくは0〜10のアミノ酸、最も好ましくは、1〜4のアミノ酸、例えば、2〜3のアミノ酸、を含む。本発明の一好適実施例として、前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分、又は、前記個々の免疫グロブリン様ドメインは直接に互いに連結される。
【0046】
一好適実施例として、前記VEGF受容体成分は、前記融合タンパク質のアミノ末端(N末端)に位置するのに対して、前記多量体化成分は、前記融合タンパク質のカルボキシ末端(C末端)に位置する。オプションとして、これら二つの成分の位置は相互交換可能である。
【0047】
更に、オプションとして、前記融合タンパク質の前記アミノ末端(又はカルボキシ末端)は、更に、タンパク質タグとしての単数又は複数のポリペプチドフラグメントを含むことができる。本発明においては任意の適当なタグを使用可能である。例えば、これらのタグは、FLAG、 HA、HA1、c-Mye、6-His、などとすることができる。これらのタグは、前記融合タンパク質の精製のために使用可能である。一具体例として、前記融合タンパク質の前記C末端は、6-His構造と連結される。当業者は、前記タンパク質タグのアミノ酸配列と本発明の融合タンパク質のアミノ酸との間に、前記タグが融合タンパク質から開裂可能となるように制限酵素部位を配置させることが可能であることを理解するであろう。
【0048】
別の態様において、本発明は、更に、前記融合タンパク質をコードする単離核酸又はこの核酸の相補鎖を提供する。
【0049】
本発明の前記融合タンパク質をコードするDNA配列を、全配列として人工的に合成することが可能であり、或いは、それぞれPCR増幅によって得られる、前記VEGF成分をコードするDNA配列と、前記多量体化成分をコードするDNA配列とを互いに連結することによって形成することが可能である。
【0050】
本発明の前記融合タンパク質をコードするDNA配列を得た後、それを適当なベクターに導入し、次に、このベクターを適当な宿主細胞に形質転換することができる。そして、これらの形質転換された宿主細胞を培養して、本発明の融合タンパク質を単離と精製とによって得る。
【0051】
従って、本発明は、更に、前記融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。このベクターは、更に、前記融合タンパク質の発現を促進する前記核酸分子の配列に作動連結された発現調節配列を含むことができる。
【0052】
ここでの使用において、「作動連結される」とは、直鎖DNA配列のいくつかの部分がこの同じ直鎖DNA配列の他の部分の活性に影響を与えることができるような状況を指す。例えば、もしもプロモーターが配列の転写を調節するのであれば、それはその配列に作動連結されていることになる。
【0053】
本発明において、Pouwels他、Cloning Vectors, A Laboratory Manual (Elsevier, 更新版)に記載されているように、 バクテリア、菌類、酵母、哺乳動物細胞のクローニング及び発現に使用されるベクターのいくつかなどの、任意の適当なベクターを使用することが可能である。市販のベクターなどの、当該技術において知られている種々のベクターを使用することができる。例えば、ある市販のベクターを選択し、本発明の新規な融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現調節配列に作動連結してタンパク質発現ベクターを形成する。本発明の一実施例において、前記ベクターは、真核細胞ベクターであり、これは、たとえば以下のプロモーターを含むことができる。SV40、 LTR、CMVプロモーター、ペプチド鎖伸長因子遺伝子のプロモーター(EF-Ia)、トリ細胞質β-アクチンのプロモーター。そのような真核細胞ベクターは例えばpcDNAベクターである。
【0054】
更に、前記融合タンパク質をコードする核酸配列を含む組み換え細胞も本発明に含まれる。
【0055】
本発明において、前記「宿主細胞」という用語は、原核細胞と真核細胞との両方を含む。一般的に使用される原核細胞には、E. coli,Bacillus subtillis細胞などが含まれ、たとえば、それらは、E. coli HMS174(DE3)やBL21(DE3)等のE. coli細胞とできる。一般的に使用される真核宿主細胞には、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が含まれる。本発明の好適実施例において、真核細胞が宿主細胞として使用される。好ましくは、293細胞、CHO細胞、SP20細胞、NS0細胞、COS細胞、BHK細胞、PerC6細胞などの哺乳動物細胞が使用される。本発明においてその他多くの細胞もこれらのタンパク質の発現と生産とに使用可能であり、それらも本発明において使用可能な細胞のリストに含まれる。
【0056】
前記融合タンパク質を製造する方法も本発明に含まれる。前記方法は、前記融合タンパク質をコードする核酸を含む組み換え細胞を培養する工程を含む。前記融合タンパク質は、前記VEGF受容体成分と、前記多量体化成分又はその活性フラグメントとを含む。一実施例において、前記方法は、更に、前記融合タンパク質の単離および/又は精製を含む。
【0057】
上記製造手順から得られた融合タンパク質はそれらを精製して、SDS-PAGE電気泳動上でのシグナルバンドなど、実質的に均質な特性を示すものとすることができる。たとえば、前記組み換えタンパク質が発現し、上清中に分泌される時に、Millipore, Amicon, Pelliconやその他の会社から入手可能な膜製品などの、市販の限外ろ過膜を使用して前記タンパク質を単離することができる。まず、発現されたタンパク質を含む上清を濃縮する。この濃縮物をゲルクロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィー、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE等)や陽イオン交換クロマトグラフィー、を使用して更に精製する。前記ゲルマトリクスは、タンパク質精製用のマトリクスとして一般に使用されている、アガロース、デキストラン、ポリアミドなど、とすることができる。SP基が望ましいイオン交換基である。最後に、上述したようにして精製された製品は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)等を使用して更に精製することができる。最終的に実質的に均一な純度のタンパク質を達成するために、上述した精製工程のすべての様々な組み合わせを採用することができる。本発明の一好適実施例として、前記融合タンパク質が発現された後、前記サンプル培養溶液中の融合タンパク質の濃度を、酵素免疫測定法(ELISA)法やその他の方法を使用して測定することができる。前記融合タンパク質は免疫グロブリンFcフラグメントを含むので、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して前記発現した融合タンパク質を抽出することができる。
【0058】
発現した融合タンパク質は、前記VEGF受容体成分と前記多量体化成分とに対する、特異的抗体、受容体又はリガンドを含むアフィニティークロマトグラフィカラムを使用して精製することができる。使用される前記アフィニティークロマトグラフィーカラムの特性に応じて、高塩濃度緩衝液、pH変化などの従来の方法を使用して前記アフィニティークロマトグラフィーカラムに結合した融合タンパク質を溶離することができる。
【0059】
本発明の前記種々の融合タンパク質の基本的機能は、VEGFシグナリング経路を阻止することであるので、これらの融合タンパク質は、血管新生又はVEGFに関連する疾患のために有用であるかもしれない。そのような疾患としては、非限定的に、種々の固形腫瘍、異常血管過形成などが含まれる。前記融合タンパク質は、抽出された組み換えタンパク質として患者の体内に注入することができる。或いは、前記融合タンパク質のDNA配列を適当なベクターに挿入して、遺伝子療法又は細胞療法の方法を使用して患者の体内で発現させることができる。従って、本発明の前記融合タンパク質は、これらタンパク質自身のみならず、これら融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする対応のDNA配列を含む、様々な方法で使用可能である。
【0060】
本発明の前記融合タンパク質は、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防と治療、又は腫瘍の抑制のための組成物を調製するために使用することができる。本発明における「腫瘍」は、それらの形成と発達とが異常血管過形成に関連するものである限り、任意のタイプのものであってよい。
【0061】
従って、本発明は、血管新生の阻害、VEGF関連疾患の予防と治療、又は腫瘍(腫瘍細胞)の抑制のための組成物も提供し、この組成物は(1)有効量の前記融合タンパク質と、(2)薬学的に許容可能な担体とを含む。
【0062】
ここでの使用において、「薬学的に許容可能」な成分とは、不都合な副作用(毒性、痒み、アレルギー反応など)なく、合理的な利益/リスク比率に相応してヒトおよび/又は哺乳動物における使用に適した物質をいう。「薬学的に許容可能な担体」という用語は、種々の賦形剤と希釈剤を含む、治療剤の投与に使用される担体をいう。この用語は、それ自身で必要な活性成分ではなく、投与後に不適切な毒性を持たない、薬用担体をさす。適当な担体は当業者に周知である。薬学的許容可能な担体に関する十分な記述は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)に、見い出すことができる。前記組成物中の薬学的に許容可能な担体は、水、鹹水、グリセロール、ソルビトールなどの液体とすることができる。更に、前記担体中に、潤滑剤、滑剤、保湿剤、又は乳化剤、pH緩衝物質及び安定剤、例えば、アルブミンなどの補助物質を含ませることができる。
【0063】
ここでの使用において、「有効量」又は「安全有効量」とは、単一用量又は連続用量の一部として、前記治療又は予防のために有効である量をさす。そのような量は、治療対象の健康及び生理学的状態、治療対象個人のタイプ(非ヒト霊長類等)、担当医師による医学的状態の評価、その他関連要素を含む様々な要因に依存する。前記量は、比較的広い範囲にあり、従来の実験によって決定可能であると予想される。
【0064】
上述した組成物は、哺乳動物への投与に適した様々な投与形態に調製することができる。この投与形態は、非限定的に、注射剤、カプセル剤、錠剤、乳剤、座剤が含まれ、好ましくは、注射剤である。
【0065】
使用時において、安全有効量の本発明の融合タンパク質が、哺乳動物(例えばヒト)に投与され、ここで、前記安全有効量は、一般に、少なくとも約0.1μg/kg体重であり、大半の場合は、約50mg/kg体重を超えず、好ましくは、前記量は、約1μg/kg体重〜約10mg/kg体重の範囲である。勿論、前記特定の用量は、投与経路、患者の健康、その他の、熟練した医師の能力の範囲内において周知の要因、に応じて変更するであろう。
【0066】
血管過形成に抵抗する、又は哺乳動物腫瘍を阻害するためでの使用時において、前記融合タンパク質は、前記タイプ、腫瘍の成長部位及び進行に応じて、全身投与又は局所投与することができる。
【0067】
本発明の前記組成物は、血管過形成に抵抗する、又は腫瘍細胞を殺すために直接に使用することが可能である。更に、それは、他の治療剤又は補助剤との併用で同時に使用することも可能である。
【0068】
本発明は、更に、血管過形成に対抗する、又は哺乳動物腫瘍を阻害するためのキットも提供し、それは本発明の前記融合タンパク質又は前記融合タンパク質含有組成物を含む。さらに、投与を容易にするために、前記キットは、更に、注射用の注射器および/又は薬学的に許容可能な担体および/又はインストラクションシート等も含む。
【0069】
本発明の主たる利点は以下の通りである。
【0070】
従来技術と比較して、本発明の融合タンパク質は(好ましくは、この融合タンパク質はSR1である)は、多価結合、低い副作用の特性を有し、それによって明らかな利点を示す。
【0071】
本発明は、ヒトVEGF受容体Flt1(VEGFRI)とKDR(VEGFRII)のVEGFに対する結合特性を保持しつつ、更に、Flt1のPLGFに対する結合活性も備えているのみならず、VEGFに結合する前記二つの免疫グロブリン様ドメイン間の長い距離による二価結合能力も提供する。
【0072】
次に、下記の例を参照して本発明について更に説明する。これらの例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を例示するものに過ぎないことが理解されるであろう。Sambrook等、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているもののような特定の条件、従来条件を特定することなく以下の例における実験処理において、製造業者によって推奨されている条件に一般的に従う。
【0073】
特に銘記されない限り、ここに使用される技術的及び科学的用語の全ては、当業者に知られているものと同じ意味を有する。更に、ここに記載のものに類似又は等価の方法又は材料を、本発明において使用可能である。ここに記載される好適な方法と材料は例示的なものに過ぎない。
【実施例】
【0074】
実施例1:前記融合タンパク質のコード配列を含むプラスミドの構築
Flt1とその細胞外ドメイン(D1-D7)との配列が図1Aに図示されている。KDRとその細胞外ドメイン(D1-D7)との配列が図1Bに図示されている。
【0075】
本発明のSR1-3融合タンパク質を構築するためのアミノ酸配列は、Flt1(GenBank Accession No. NP_ 002010.2)とKDR(GenBank Accession No.NP_002244)cDNAコード領域に対応する細胞外ドメインの前記免疫グロブリンドメインのアミノ酸配列に由来し、これらをヒト免疫グロブリンIgG1Fc(GenBank Accession No. P01857、位置104-330)のアミノ酸配列に融合した。シグナルペプチドは、Flt-1(GenBank Accession No. NP_ 002010.2、位置1-26)のシグナルペプチド配列に由来し、前記融合タンパク質のN末端配列の前に構築された。
【0076】
SR1-3の構造が図2に図示されている。SR1-3のアミノ酸配列は、それぞれ、配列識別番号6、7及び8に示されている。
【0077】
SR1-3タンパク質のDNA配列は、両末端にXbaI/HindIII制限酵素部位を付加した状態で、遺伝子合成と構築によって、それぞれ得た。前記DNA配列を、pcDNA3.1(Invitrogen 社から購入)にクローニングし、各融合タンパク質のコード配列を含む前記プラスミドを得た。
【0078】
SR1コード配列を含む前記プラスミドを、前記制限酵素によって消化し、電気泳動によって確認したところ、予想サイズと一致する約1800bpの標的フラグメントが確認された。この電気泳動の結果を図3に図示している。
【0079】
その後の例においては、Trapタンパク質を対照として使用した。Trapコード配列を含むプラスミドは、以下のように構築された。前記Trap配列は、N末端からC末端にかけて、VEGFR-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン(Flt1D2)、KDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメイン(KDRD3)及びヒトIgG1Fcを順に含んでいた。DNAを、GenBankに開示されている関連配列に従って合成し、これをpcDNA4ベクターに挿入した。
【0080】
Trapタンパク質は293F細胞において一過的に発現され、プロテインA−セファロースアフィニティークロマトグラフィーを使用して得られた。
【0081】
実施例2:細胞における融合タンパク質の発現とその精製
前記種々のプラスミドが構築された後、プラスミドDNAが高純度で抽出され、構築された融合タンパク質がトランスフェクション細胞において一過的に発現された。全てのタンパク質が精製された後、それらの生物活性を確認するために、それらを特定の動物モデルに投与した。その後、前記プラスミドを生産用に安定CHO細胞にトランスフェクトした。
【0082】
2.1.一過的トラスフェクションによる発現
トランスフェクションの一日前、よく増殖したFreestyle 293F細胞(Invitrogen社から購入)を、1×106細胞/mlの密度でプレーティングした。SR1コード配列又はTrapコード配列を含む実施例1で構築されたプラスミドDNAを、Feestyle MAX試薬(Invitrogen社から購入)と1:12の比率で混合し、その混合物を室温で10〜15分間放置した。その後、この混合物を、前記細胞培養溶液に滴下によってゆっくりと添加し、細胞を135rpmで回転する振動台上で37℃、8%CO2の条件下で3日間連続的に培養した。上清を収集し、プロテインAカラムを使用して、少量の発現した融合タンパク質を精製した。還元及び非還元SDS-PAGEの分析の結果を図4に示す。
【0083】
還元電気泳動(図4の左側パネル)の結果から、SR1が精製標的融合タンパク質のバンドであること、そして、これが約80Kdの分子量を有する拡散したハンドであることが判る。Trapが陽性対照であった。SR1の理論上分子量はTrapよりも10Kd大きく、これは予想された分子量と実質的に一致するものであった。
【0084】
非還元電気泳動(図4の右側パネル)の結果から、SR1タンパク質とTrapタンパク質との両方が還元電気泳動における対応物のそれの二倍の分子量を有し、自然条件下においてこれらタンパク質が二量体を形成したことを示したことが判る。
【0085】
前記精製タンパク質のウェスタンブロッティング。前記精製タンパク質を、それぞれ、非還元SDS-PAGE電気泳動にかけた。バンドを膜に移し、5%無脂肪ミルク中で1時間ブロッキングした。次に、ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPを1:1000の希釈率で添加し、37℃で1時間結合させた。十分な洗浄後、DAB可視化を使用して免疫染色を行い、画像を採取し保存した。図5を参照。ここで、1がTrap対照、2がSR1融合タンパク質である。
【0086】
2.2.安定的トランスフェクションによる発現
トランスフェクションにはBiorad電気穿孔装置を使用した。SR1コード配列又はTrapコード配列を含む実施例1において構築したプラスミドDNA約30μgを、酵素PvuIを使用して線状化し、1 ×107の DG44細胞(Invitrogen社から購入)と均質状態まで混合した。この混合物を、10〜15分間氷上に載置し、次に、300V、900uFで電気穿孔を行った。その後、前記細胞を96-ウェルプレートに5 ×104/mlで、各ウェルに100μl分注した。3日目にMTXを添加した。5日後、培養培地を交換し、約14日後、前記細胞の増幅培養のために耐性モノクローンを取り出した。最後に、前記細胞を発酵槽で培養して前記融合タンパク質を産生した。
【0087】
高発現(5シャープ印)のモノクローンを選択し、これを非還元電気泳動にかけた。その結果を図6に示す。このモノクローンは、振動フラスコ内において約100mg/Lの最も高い発現を有していた。
【0088】
実施例3:前記融合タンパク質のVEGFに対する結合能力の分析
最初に、組み換えVEGFタンパク質(SionBiological 社から購入のVEGF165)を96-ウェルELISAプレート上でコーティングした。5%無脂肪ミルクパウダー溶液を使用して非特異的結合部位をブロッキングした。次に、前記ウェルにそれぞれ、Trapタンパク質を対照として、異なる濃度の前記融合タンパク質を添加した。前記プレートを37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ヒツジ抗ヒトIgG Fc-HRPを添加し、プレートをTMBの使用により可視化した。個々のウェルにおけるOD値をELISA装置の使用により測定した。ここで高い値はVEGFへの結合能力が高いことを表している。点と点を連結して滑らかな曲線を形成し、融合タンパク質とTrapとのEC50をそれぞれ計算した。その結果を図7に示す。
【0089】
図7において、曲線(黒塗り三角印)はTrap対照を示し、曲線(黒塗り四角印)は融合タンパク質SR1を示している。これらの結果から、前記融合タンパク質は、Trapが持つものよりも高いVEGFに対する結合活性を有していることがわかる。前記融合タンパク質のEC50濃度(半有効濃度)を計算したところ0.092μg/mlであり、Trap対照タンパク質のEC50濃度は0.136μg/mlであった。
【0090】
実施例4:BIAcoreを使用した融合タンパク質SR1のVEGFに対する分子結合率の分析
前記SR1融合タンパク質を、アミンカップリング化学法を使用してBIAcoreチップ(BIACORE)上に予め固定しておいた特異的抗-Fc抗体によって捕捉した。陰性対照としての抗体を有する表面を使用して、VEGF-165(SionBiological株式会社から購入)を融合タンパク質の表面に1nM、10nM及び50nMで10μl/分の速度で、1時間にわたって注入した。各注入の最後に飽和結合が達成される状態で、リアルタイム結合シグナルを記録した。VEGF 165に対するSR1融合タンパク質の分子結合率を計算した。
【0091】
溶液において、1nMの濃度のSR1融合タンパク質を、様々な濃度のVEGF 165と混合した。1時間のインキュベーション後、溶液中の遊離SR1の濃度を、SR1のVEGF165固定表面に対する結合のシグナルを測定することによって測定した。前記BIAcore結合シグナルを、検量線を使用して分子濃度に変換した。VEGF165に対するSR1融合タンパク質の分子結合率を算出した。
【0092】
その結果を図8に示す。この図における傾きは-2に近く、このことはVEGFに対するSR1の結合比が約1:2であることを示唆している。
【0093】
実施例5:HUVECの阻害における前記融合タンパク質の活性の分析
良好に増殖したヒト臍静脈血管内皮細胞(Cambrex Bio Science Walkersville社)の懸濁物を選択し、4〜8×104細胞/mlの細胞濃度に調整した。0.4%ゼラチンによって予めコーティングされた96-ウェル細胞培養プレートに、前記細胞懸濁物を100μl/ウェルでプレーティングした。その後、このプレートを37℃、5%CO2インキュベーターで24時間インキュベートした。VEGFサンプルを、2% FBSを含有する基礎培地で400ng/mlに希釈した。テストサンプルと陽性対照サンプル(Trap)とを、それぞれ2%FBS含有の基礎培地で140μg/mlにまで希釈し、その後、これを二倍に希釈して8勾配を得た。前記96ウェル培養プレート中の全培地を吸引し、前記サンプルを100μl/ウェルの割合で添加した。前記プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターで72時間更にインキュベートした。その後、各ウェルに、10μlのCCK-8試薬を添加し、そして、そのプレートを37℃、5%CO2のインキュベーターで2.5時間インキュベートし、続いて、450/650nmでの吸収率を測定した。その結果を図9に示す。
【0094】
PLGFII(以下のようにして得た。cDNAをGenBank Accession No. AAD30179によって提供されている配列情報に従って合成し、pcDNA4ベクター(Invitrogen)に挿入する前に、その3´末端に6× his配列を付加した。この構築物を293F細胞中で発現させ、PLGFIIを、NI-セファロース金属イオンキレートクロマトグラフィーを使用して精製した)を、2% FBSを含有する基礎培地で4000ng/mlに希釈した。テストサンプルと陽性対照サンプル(Trap)とを、それぞれ2%FBS含有の基礎培地で300μg/mlにまで希釈し、その後、これを連続的に二倍に希釈して8勾配を得た。前記96ウェル培養プレート中の全培地を吸引し、前記サンプルを100μl/ウェルの割合で添加した。前記プレートを、37℃、5%CO2のインキュベーターで72時間更にインキュベートした。その後、各ウェルに、10μlのCCK-8試薬を添加し、37℃、5% CO2インキュベーターで2.5時間更にインキュベートし、続いて、450/650nmでの吸収率を測定した。その結果を図10に示す。
【0095】
これらの実験結果から、融合タンパク質SR1とTrapとがそれぞれ20pMと28pMとの濃度である時、それらはHUVEC細胞を完全に阻害する活性を有し、前記融合タンパク質SR1が10pMの濃度である時、HUVEC細胞の増殖はほぼ完全に抑制されたのに対し、Trapが14pMの濃度である時は、それはHUVEC細胞に対する半分の阻害を有するものであることが判る。従って、前記融合タンパク質は、Trapと比較して、HUVEC細胞の増殖を阻害する類似の又はより良好な作用を有していたことが認められた。
【0096】
実施例6:トリ胎児絨毛尿膜の血管新生に対する融合タンパク質の作用の検出
外科手術に使用する装置とろ紙とを殺菌した。新鮮な受精卵を、37℃、50%湿度で6日間、連続して孵化させた。第6日において、前記卵のトリ胚の生存率について調べた。生存している卵を選択してそれに「窓」を開口した。最初に、絨毛尿膜の位置を、照射によって特定しこれを標識化した。次に、気室を有する卵の端部に穴を開け、その卵を絨毛尿膜が上向きになるように置いた。気室をゴム製ピペットバルブの使用よりゆっくり吸引し、絨毛尿膜が沈下し卵殻から分離させた。その後、ブレードを使用して1cm2の「窓」を絨毛尿膜の上方に開けた。10μlの前記サンプルを、前記ろ紙上に落とし、空気乾燥させた。前記ろ紙を、大きな血管から離し絨毛尿膜上にゆっくりと置いた。前記「窓」を透明テープで封止し、卵を更に48時間孵化させた。その後、前記透明テープを除去し、前記「窓」を拡大した。画像を解剖顕微鏡下で撮った。新生した血管の数を、各画像の分岐点で計数した。前記融合タンパク質SR1は3用量群に分けられる。即ち、0.4μg、2μgそして10μgであり、Trap対照は10μg用量であった(表1)。
【0097】
阻害率は以下の式によって計算された。
阻害率=(1−薬剤群の新生血管数/陰性対照群の血管数)×100%
【0098】
【表1】
【0099】
種々の用量の融合タンパク質SR1とTrap対照に関するトリ絨毛尿膜の画像が図11に示されている。
【0100】
これらのデータ及び画像の結果から、10μlの同じ濃度の融合タンパク質SR1とTrapは、トリ胎児絨毛尿膜の血管新生に対して実質的に類似の作用を有するものであることが判る。
【0101】
実施例7:融合タンパク質によるマウス腫瘍の成長の阻害
培養されたヒトA673横紋筋芽細胞(ATCC:CRL 1598)を、生理食塩水中に懸濁させた。この懸濁液100μl(1×106腫瘍細胞)を、6〜10週齢雌BLAB/cヌードマウスの背部に皮下注射した。腫瘍細胞の接種開始の24時間後、それらの動物に、前記融合タンパク質SR1又は同じ用量のアバスチン(Avastin)を注射した。前記PBS対照群には、陰性対照と同じ容量でPBS緩衝液を注射した。アバスチンはRoche社(ロット番号:3615286 HK 0508.1070)から購入した。各時において、注射用量は、週に2回、各時、各マウスに対して400μgであった。各群は4匹のマウスから構成された。各週に腫瘍サイズを検出した。前記腫瘍細胞の接種の4週間後、動物を安楽死させ、腫瘍を取り出し計量した。その結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、28日間後においてSR1群の移植腫瘍の平均重量はアバスチン群のそれよりも約700mg、遥かに低いものであり、融合タンパク質SR1が腫瘍阻害に対して非常に良好な作用を有していたことがわかる。
【0104】
この開示に引用された参考文献は、あたかも各参考文献が個々に参考文献として合体させられるのと同じ程度にここに参考文献として合体される。更に、本発明の上記教示内容を読むことによって当業者は様々な改変及び改造を本発明に対して行うことができ、これらの均等物の全て本発明の添付の請求項の範囲に含まれることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は、
(a)血管内皮成長因子受容体成分をコードするアミノ酸配列、そして、
(b)多量体化成分をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記血管内皮成長因子受容体成分は、
(1)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びKDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、
(2)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、又は
(3)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、から選択される1つである請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記多量体化成分は、ヒトIgG、IgM、又はIgAのFc領域から選択される請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記(1)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号6に示される、
前記(2)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号7に示される、又は
前記(3)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号8に示される、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含むか、もしくは、ゲノムに組み込まれた請求項5の核酸分子を有する、遺伝子工学的に操作された細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の細胞を培養する工程と、前記融合タンパク質を発現し単離する工程とを含む請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を製造する方法。
【請求項9】
血管内皮成長因子又は胎盤成長因子への結合、又は、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制における、請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質の利用方法。
【請求項10】
(i)有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質、そして、
(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制のための組成物。
【請求項11】
安全有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を薬学的に許容可能な担体と混合する工程を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制のための組成物を調製する方法。
【請求項12】
請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項10に記載の組成物を含むキット。
【請求項13】
有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を対象体に投与する工程を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍を抑制する方法。
【請求項1】
融合タンパク質であって、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は、
(a)血管内皮成長因子受容体成分をコードするアミノ酸配列、そして、
(b)多量体化成分をコードするアミノ酸配列、を含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記血管内皮成長因子受容体成分は、
(1)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン、KDRの第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びKDRの第3細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、
(2)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びKDRの第4細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、又は
(3)flt-1の第2細胞外免疫グロブリン様ドメイン及びflt-1の第4細胞外免疫グロブリン様ドメインを含む、から選択される1つである請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記多量体化成分は、ヒトIgG、IgM、又はIgAのFc領域から選択される請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記(1)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号6に示される、
前記(2)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号7に示される、又は
前記(3)において、前記融合タンパク質の前記アミノ酸配列は配列識別番号8に示される、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含むか、もしくは、ゲノムに組み込まれた請求項5の核酸分子を有する、遺伝子工学的に操作された細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の細胞を培養する工程と、前記融合タンパク質を発現し単離する工程とを含む請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を製造する方法。
【請求項9】
血管内皮成長因子又は胎盤成長因子への結合、又は、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制における、請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質の利用方法。
【請求項10】
(i)有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質、そして、
(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制のための組成物。
【請求項11】
安全有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を薬学的に許容可能な担体と混合する工程を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍の抑制のための組成物を調製する方法。
【請求項12】
請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項10に記載の組成物を含むキット。
【請求項13】
有効量の請求項1〜4の何れか一項に記載の融合タンパク質を対象体に投与する工程を含む、血管新生の阻害、血管内皮成長因子関連疾患の予防又は治療、又は腫瘍を抑制する方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−520661(P2012−520661A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500054(P2012−500054)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071125
【国際公開番号】WO2010/105573
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511227196)嘉和生物▲薬▼▲業▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071125
【国際公開番号】WO2010/105573
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511227196)嘉和生物▲薬▼▲業▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]