説明

抗酸化性の創傷用包帯材料

【課題】簡単で安価な抗酸化性の創傷用包帯材料を提供する。
【解決手段】本創傷用包帯材料は、抗酸化性の染料で染色した生体吸収性の固体基質を含んでなる。この基質は、コラーゲン、キトサンまたは酸化再生セルロースを含み得る。染料は、たとえば、アニリン染料またはアクリジン染料であり得る。この材料は、好ましくは、銀塩も含み、染料がこの銀塩を安定化する。このような材料を作製する方法およびこのような材料を含む創傷用包帯も提供される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、抗酸化性の創傷用包帯材料、この材料の作製に適したプロセスおよび、この創傷用包帯材料の使用方法に関するものである。
【0002】
損傷した組織では、ヒドロキシルラジカル(・OH)、一重項酸素(12)、ヒドロペルオキシルラジカル(・OOH)、スーパーオキシドラジカルアニオン(・O2-)および過酸化水素(H22)等の反応性酸素種の濃度が上昇し、酸化ストレスとして知られる状態が生じ得る。低レベルの反応性酸素種の存在は、バクテリアをのみ込んで殺し、サイトカインおよび生長因子を放出するマクロファージを引きつけて活性化させることによる創傷治癒の初期段階では有利であり得る。しかしながら、長期のより厳しい酸化ストレスは、慢性の炎症を生じ、抗酸化防衛に向けて組織の再構築を代償として利用できるエネルギーの供給を逸らし、組織の破壊の原因となるマトリックスメタロプロテイナーゼのレベルを上昇させるため、回復を遅らせ得る。より厳しいケースでは、高レベルの反応性酸素種が、過酸化水素によって誘発される老化またはアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)または組織壊死(すなわち、コントロール不良の細胞死、従って、恒久的な組織の損傷)を引き起こし得る。
【0003】
マイルドな酸化ストレス下では、酵素スーパーオキシド・ジスムターゼによりスーパーオキシドから急速に造られる過酸化水素(H22)が主要な種として存在すると考えられる。この酵素によって媒介される不均化反応には、スーパーオキシドがあまりに速く産生し、このため、酵素の援助なしに自然に不均化する機会があるときに生じ得る一重項酸素の産生を最小にする働きもある。酵素によって媒介されるスーパーオキシドの迅速な不均化も、ヒドロペルオキシルラジカル(スーパーオキシドのイオン化していない形態)のレベルを最小にする。次には、過酸化水素のレベルが、カタラーゼ(catalase)とグルタチオンペロキシダーゼ(glutathione peroxidase)との作用により低く保たれる。このようにして、過酸化水素のレベルがわずかに上昇する(約10-8〜10-4モル)マイルドな酸化ストレス条件下では、繊維芽細胞培養物中の細胞増殖の速度が促進されることが見出された。
【0004】
したがって、上記にリストしたような過剰な反応性酸素種と特異的に反応し、それ故酸化ストレスのレベルを低下させる抗酸化性の創傷用包帯を用いることが、慢性的創傷の治癒の助けとなり得る。
【0005】
US−A−5667501は、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)テストで測定される抗酸化活性を与え、創傷ベッドにある分子状酸素との反応により低レベルの過酸化水素も発生させてマクロファージの活性と繊維芽細胞の増殖とを促進する化学基とグラフトした、化学的に改質したポリマーを含んでなる組成物について開示している。この組成物は、慢性的創傷の治癒を促進するために使用し得る。このポリマーは、好ましくは、ヒドロキシル、カルボニルまたはアミド官能基を持つポリマー、またはヒドロキシ官能基を持つ多糖である。ここで、これらの官能基は、持続性のフリーラジカルまたは持続性のフリーラジカルの前駆体である誘導体に変換される。すなわち、これらの官能基は、フリーラジカルをスカベンジする抗酸化基である。
【0006】
US−A−5612321は、多糖の少なくとも1つのヒドロキシル基で抗酸化剤とグラフトした多糖を含む組成物について開示している。これらの組成物は、とりわけ、慢性的創傷の治癒を促進するため使用し得る。多糖がヒアルロン酸であり、抗酸化基がフェノール基を含むことが好ましい。
【0007】
上記の抗酸化性の創傷用包帯材料は、多段階の化学反応によって造られ、ポリマー基質材料に、抗酸化部分(たとえばヒドロキノン(hydroquinones)またはベンズイミダゾール(benzimidazole)誘導体)の共有結合を形成する。抗酸化性の創傷用包帯材料へのより簡単で安価なルートに対するニーズが残されている。
【0008】
創傷の感染の治療のための抗菌薬を含む創傷用包帯も知られている。創傷用包帯に用いられる抗菌薬で現在好まれているものには、クロルヘキシジン(chlorhexidine)およびトリクロサン(triclosan)および銀(薄膜の形態であれ、ナノパーティクルの形態であれ、コロイド状銀の形態であれ)等のある種の消毒剤がある。銀の化合物も、抗菌薬として有用である。たとえば、敏感で耐性を有する菌株に対しては、以下の銀の錯塩の使用が好ましい:スルファジアジン銀(silver sulfadiazine)、ノルフロキサシン酸銀(silver norfloxacinate)、ピペミド酸銀(silver pipemidate)、カオリン銀(kaolin silver)、EDTA銀(silver EDTAate)、チオサリチル酸銀(silver thiosalicylate)および銀イミダゾリウムクロライド(silver imidazolium chloride)。
【0009】
WO91/11206は、創傷用包帯におけるアルギン酸銀の使用方法について開示している。WO87/05517は、抗菌性の創傷用包帯として、または抗菌性の創傷用包帯中に使用し得るヒアルロン酸の銀塩について開示している。これらの材料は、光の存在下では安定しない傾向を有する。この銀は光化学還元を受けて金属銀になり、時間とともに材料に黒ずみをもたらす。
【0010】
WO02/43743には、アンモニウム塩、チオスルフェート、金属塩化物および過酸化物からなる群から選ばれた光安定剤の添加によって銀塩が安定させられた、光に対し安定な抗菌性の創傷用包帯材料が開示されている。WO97/02038には、ポリエーテルポリマーの添加によって銀塩が安定させられた、光に対し安定な抗菌性の創傷用包帯材料が開示されている。このような光安定剤の効果は限定的であり、創傷液によって包帯材料から抽出される傾向がある。
【0011】
したがって、光に対し安定化された銀化合物を含む、改良された抗菌性の包帯についてのニーズが残存している。
【0012】
GB−A−619165は、アルギン酸カルシウム繊維を創傷用包帯として使用することについて開示している。静菌性または殺菌性の化合物(たとえばアクリジン(acridine)誘導体またはユーソル(eusol))をフィラメントの形成後そのフィラメントに塗布したり、フィラメントを製糸する元の溶液に添加したりすることができる。アルギン酸カルシウムは、生体吸収性ではない。
【0013】
EP−A−0368253は、ある種のキトサン誘導体に抗菌薬を組み合わせた溶液または混合物から作製された、キトサンのフィルム、ロッド、シート、医薬用包帯、パッチ等について開示している。生体吸収性の創傷用包帯材料を抗酸化性の染料で染めることについては開示されていない。
【0014】
本発明の第一の態様では、抗酸化性の染料で染めた生体吸収性の固体基質を含んでなる創傷用包帯材料が提供される。
【0015】
用語「染めた(染色済み)」は、固体の材料が、染料をその表面に結合させるために、染料によって固体の状態で表面処理されたものであることを意味する。すなわち、固化の後、染料による後処理を受けた固体材料を意味する。酸化再生セルロースのような生体吸収性の基質材料が、アニリン染料、アクリジン染料等の抗酸化性の染料に対し、優れた親和力を有することが見出された。このため、簡単で安価な染色ステップで、基質材料上にコントロールされた量の染料を固定することができる。さらに、得られた染色済み材料が染料の抗酸化特性を保持しており、それによって、この染色済み材料が、酸素のフリーラジカルレベルが高いという特徴を有する慢性的創傷およびその他の創傷の治療に対し優れた候補となることが見出された。これらの材料は、有益な抗菌性(特にグラム陽性菌および時にはグラム陰性菌に対しての有益な抗菌性)も有している。創傷中で生体吸収性材料が徐々に分解することにより、有効量の抗菌薬の持続的放出が達成される。
【0016】
用語「生体吸収性の基質材料」は、固体材料が、哺乳動物の生体内で完全に分解し、吸収されることを意味する。それゆえ、この用語は、セルロースまたは従来の繊維材料を包含するものではない。この基質材料は通常水溶性ではないが、水で膨潤し得る。ある実施形態では、この基質が、コラーゲン、キトサン、酸化セルロース等の生体吸収性のセルロース誘導体、グアール/ボレート等のガラクトマンナン、架橋ヒアルロネート等のグリコサミノグリカン、ポリラクチド/ポリグリコリド(polylactide/polyglycolide)、ポリヒドロキシブチレート、および、これらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む(また、本質的にこれらのものからなり得る)。
【0017】
ある実施形態では、基質が、コラーゲン、キトサン、酸化再生セルロースおよびこれらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む(また、本質的にこれらのものからなり得る)。
【0018】
酸化セルロースは、たとえば四酸化二窒素を用いたセルロースの酸化によって製造される。このプロセスでは、糖残基上の第一級アルコール基がカルボン酸基に変わり、セルロース鎖内でウロン酸残基が形成される。酸化の選択性は完全ではなく、その結果、カーボン2および3のヒドロキシル基が時折ケト形に変わる。これらのケトン単位により、アルカリに対し不安定な結合が導入され、pH7以上で、ラクトンの形成および糖環の開裂を経由するポリマーの分解が開始されるようになる。この結果、酸化セルロースは、生理学的条件下、生体分解性可能でかつ生体吸収性になる。
【0019】
実用的上好ましい酸化セルロースは、再生セルロース(たとえばレーヨン)の酸化によって作製される酸化再生セルロース(ORC)である。ORCには、止血性特性があることおよび、腹部外科での術後の癒着の程度を減少させるためにORCファブリックを使用できることが、以前から知られていた。
【0020】
酸化再生セルロース(ORC)は、US−A−3122479(参照によりその全体が本明細書に包含される)に開示されたプロセスによって得ることができる。本材料は、生体適合性を有し、生体分解性を有し、非免疫原性で、商業的に容易に入手可能であるという特徴を含め、多くの利点を有する。ORCは、種々の酸化度のもの(それゆえ、種々の分解速度のもの)が利用できる。ORCは、織物、不織布および編み物を含む不溶性繊維の形態で使用することができる。
【0021】
ある実施形態では、酸化セルロースが、繊維状粒子または粉体粒子等の粒子の形状を有しており、好ましくは、適切な固形または半固形の局所的薬剤ビヒクル中に分散させられている。特に、本材料が、繊維の少なくとも80%の体積画分が20〜1,000μmの範囲の長さを有するORC繊維を含むことが好ましい。このようなサイズの分布は、たとえば、ORC布を粉砕し、粉砕した粉体を篩分分けし、範囲外の繊維を除去することによって達成することができる。ORC繊維の平均{体積による平均(mean)}長さは、250〜450μmの範囲にあることが好ましい。この範囲のORC繊維長の選択により、ORCとその他の成分との混合が容易になり、高度に均質な製品が得られる。ORCは、その他の成分でより完全に複合化され、その結果、スポンジの治療特性が高められる。
【0022】
酸化セルロースは、50,000を超える平均分子量を有することが好ましい。このような酸化セルロースは、創傷液に実質的に溶解しないが、生理的pHで、極めて緩慢に分解し、生体再吸収性の断片になる。酸化セルロースは、フリーの酸の形態であっても、中和されていてもよい。たとえば、本発明は、EP−A−0437095(参照によりその全体が本明細書に包含される)に開示されたような、部分的にまたは完全に中和された材料の使用を包含する。ORCは、たとえば、後に詳述する酢酸銀等の弱酸の銀塩によって部分的に中和し得る。
【0023】
本発明のある実施形態では、酸化セルロースが、コラーゲンおよび/またはキトサンと複合化し、WO98/00180、WO98/00446、EP−A−1153622またはWO2004/026200(参照によりその全体が本明細書に明示的に包含される)に開示された種類の構造を形成する。たとえば、酸化セルロースが、凍結乾燥コラーゲンスポンジ中に分散した粉砕ORC繊維の形態であり得る。これにより、コラーゲンとの複合化により生じる、ある種の治療上の効果であってかつ相乗的な効果が得られる。
【0024】
本発明の材料中で使用されるコラーゲンは、タイプI、タイプIIまたはタイプIIIコラーゲン、天然の線維状コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン等の部分的に加水分解されたコラーゲンおよびこれらの組合せ等の任意のコラーゲンであり得る。たとえばウシ由来の天然の線維状のコラーゲンが適切である。たとえば、ウシの皮から造られたコラーゲンは、タイプIのコラーゲン(85%)とタイプIIIのコラーゲン(15%)の組合せである。
【0025】
本発明の材料中に使用されるキトサンは通常キチンに由来する。キチンは、N−アセチル−D−グルコサミン単位から構成される天然のバイオポリマーである。キチンは、既知のやり方でエビおよびカニの甲殻から抽出され得る。ついで、キチンは、たとえば5〜15MのNaOHによる処理により、部分的に脱アセチル化され、キトサンが得られる。キチンの完全な脱アセチル化は、実際的には可能ではないが、キトサンが少なくとも50%脱アセチル化されていることが好ましく、少なくとも75%脱アセチル化されていることがより好ましい。キトサンは、種々の物理的形態、たとえば、溶液/ジェル;フィルム/膜;スポンジ;粉体または繊維として、創傷の治療に採用されてきた。遊離塩基の形態のキトサンは膨潤し得るが、中性近傍のpHの水には実質的に溶解せず、酸には、キトサン鎖のアンモニウム基の存在により溶解する。キトサンの溶解性は、たとえばエピクロロヒドリン(epichlorhydrin)による架橋により減少し得る。一般的に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決められたキトサンの平均分子量は、約105〜約106である。
【0026】
特定の実施形態では、基質が、(a)コラーゲンおよび/またはキトサンならびに、(b)たとえば、コラーゲン/キトサン:ORCの乾燥重量比の範囲が、約90:10〜約10:90、好ましくは約75:25〜約25:75、とりわけ約60:40〜約40:60の酸化再生セルロースの混合物を含む(また、本質的にこれらからなり得る)。
【0027】
本発明に係る創傷用包帯材料は銀塩も含み得る。この銀の幾分かは、金属銀として存在し得るが、この銀の大部分が銀塩(好ましくは実質的に無色の銀塩)として存在することが好ましい。材料中の銀が、本質的に銀塩からなることが好ましく、実質的に無色の銀塩であることがより好ましい。本発明に係る材料中の銀の(銀イオンおよび金属銀としての)量は、約0.01〜約5重量%が好ましく、約0.1〜約2重量%がより好ましく、約0.1〜約1重量%がさらに好ましく、約0.3重量%が最も好ましい。銀の量がこれより少ないと、不十分な抗菌効果を与え得る。銀の量がこれより多いと、創傷治癒細胞に対し増殖抑制効果を引き起こす場合があり得る。
【0028】
この銀は、生体吸収性の基質材料を、たとえばWO02/43743に開示されているように、水またはエタノール等の有機溶媒に溶解または分散させた銀塩または銀化合物で処理することで導入し得る。適切な化合物には、酸化銀、クロム酸銀、アラントイン酸銀(silver allantoinate)、ホウ酸銀、銀グリセロレート(silver glycerolate)、硝酸銀、酢酸銀、塩化銀、硫酸銀、乳酸銀、臭化銀、ヨウ化銀、炭酸銀、クエン酸銀、ラウリン酸銀(silver laurate)、デオキシコール酸銀(silver deoxycholate)、サリチル酸銀(silver salicylate)、p−アミノ安息香酸銀(silver p-aminobenzoate)、p−アミノサリチル酸銀(silver p-aminosalicylate)およびこれらの混合物が含まれる。この銀はスルファジアジン銀としては存在しないことが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態では、銀が基質材料と複合化し得る。用語「複合化」は、分子スケールでの、(好ましくは、銀とポリマー間のイオン結合または共有結合による)親和性の高い混合物(intimate mixture)を意味する。この複合体が、アニオン性ポリマーとAg+との間で形成された塩を含むことが好ましい。このアニオン性ポリマーが、ポリカルボン酸塩(polycarboxylate)または多硫酸化多糖(polysulfated polysaccharide)であることが適切である。このアニオン性ポリマーが、アニオン性多糖を含むことが適切である。適切なアニオン性多糖には、ヒアルロネート(hyaluronates)、ペクチン(pectins)、カラギーナン(carrageenans)、キサンタンガム(xanthan gums)、硫酸化多糖(たとえば硫酸デルマタン(dermatan sulfate)または硫酸化デキストラン(sulfate dextrans))および酸化セルロースが含まれる。
【0030】
アニオン性ポリマーと銀との複合体は、アニオン性ポリマーを銀塩の溶液で処理するステップを含む方法で作製することができる。この溶液は水溶液であることが好ましい。好ましくは、このアニオン性ポリマーが、pH7の水に実質的に不溶性であり、従って、この処理が固体状態のポリマーで行われる。たとえば、このポリマーは、固体の繊維、シート、スポンジまたは布帛の形態であり得る。ある実施形態では、アニオン性ポリマーが塩であり、それ故、この処理はイオン交換と見なし得る。他の実施形態では、アニオン性ポリマーが、少なくとも部分的に遊離の酸形態である。その場合、銀塩は、好ましくは、弱酸の塩、たとえば酢酸銀であり、アニオン性ポリマーが、この銀塩により少なくとも部分的に中和される。同様のプロセスはEP−A−0437095(参照によりその全体が本明細書に明示的に包含される)に開示されている。
【0031】
中和反応は水またはアルコール単独で実施できるが、水とアルコールの混合物で実施することが好ましい。水とアルコールの混合物を使用すると、水による弱酸の塩の良好な溶解性が得られ、アルコールが、中和中における、アニオン性ポリマーの過度の膨潤、歪みおよび弱化を防止する。このようにして、材料の物性が保持される。上記の塩の多くが、メタノールと水の組み合わせに対し良好な溶解性を有するので、アルコールとしてはメタノールが好ましい。アルコール対水の比率は、約4:1〜1:4の範囲が好ましい。溶液中のアルコールが多すぎると、塩によっては溶解しなくなる場合がある。特にアルコールがメタノール以外の場合にそうである。溶液中に水が多すぎると、中和の際にポリマーの若干の膨張が起こり、物性の損失(たとえばポリマーの引っ張り強さの低下)が生じる。他の有用なアルコールとしては、たとえば、エタノール、プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールがある。
【0032】
酢酸銀のようなマイルドな中和剤の使用は、中和の程度のコントロールを考慮したものである。アニオン性ポリマーに対し、化学量論的かつ化学的当量の中和剤とカルボン酸とを使用すると、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび水酸化アンモニウム等の塩基による強い不可逆反応の場合のような100%中和されたポリマーは得られない。
【0033】
アニオン性ポリマーはイオン交換体として挙動し、自分の周りを通り過ぎるいかなる銀塩からでもその銀カチオンを、溶液から取り出そうとする。この交換の副産物はその塩からの酸であり、弱い有機酸の塩を使用することにより、ポリマーを損傷しない、酢酸等の弱酸が生じる。塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムのような強酸の塩を使用すると、それぞれ塩酸または硫酸の副産物が得られ、これらの強酸がポリマーの解重合等の損傷の原因となり得る。
【0034】
弱酸の銀塩を使用すると、この銀イオンが、ポリマー上のプロトンと交換され、この塩の一部が弱酸に変わる。この溶液中の酸と塩の混合により、溶液は緩衝液になり、pHがかなり一定に維持され、中和の程度がコントロールされる。銀イオンがポリマーの酸部分に結合し、塩分子にも結合して、平衡反応が達成される。銀イオンのこの区分により、ポリマーの中和が完全に行われるのが防止される。
【0035】
たとえば、化学量論量の酢酸銀を使用すると、酸化セルロースポリマーのカルボン酸基の約65〜75%の中和度がもたらされる。自己発生的緩衝溶液を造ることによりこのpHがコントロールされることおよび材料の膨潤をコントロールするためにメタノールを使用することにより、材料を部分的に中和し、かつ、物性(たとえば多糖の引っ張り強さおよび形状)を保持するようにすることができる。
【0036】
使用される銀塩の量は、通常、ポリマーの酸濃度の化学量論量とほぼ同量から2倍までである。あるいは、最初の投入で一定のpHに達した後、新しい溶媒と塩とが反応のために再投入される場合には、2回目の投入に、化学量論量の銀塩を使用することができる。pHが高くなった材料は、その後洗浄し、その材料から過剰の銀塩とイオンとを除去する。
【0037】
実施形態によっては、少なくとも創傷用包帯材料の一部が、銀で複合化したコラーゲンを含む。これは、コラーゲンを銀塩の溶液で処理することによって達成できる。銀塩は、たとえば、約0.01〜約1モル濃度の酢酸銀または硝酸銀であり得る。この処理は、約5〜約9のpHで好ましく行われる。銀は、主として、コラーゲンアミノ酸(特に、リシン、ヒドロキシリシン、アスパラギン、グルタミンおよびアルギニン)の窒素を含む側の鎖に複合化するものと考えられる。銀は、(存在する場合には、)メチオニンおよびシステイン残基のスルフヒドリル基ならびに、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩のカルボキシル基にも結合し得る。
【0038】
コラーゲン複合体中の銀の量は、コラーゲンの重量に基づいて、約0.01〜約30重量%であることが好ましく、約0.1〜約20重量%がより好ましく、約2〜約10重量%がさらにより好ましい。創傷用包帯材料の銀−コラーゲン複合体の量は、約0.1〜約10重量%であることが好ましく、約0.1〜約2重量%がより好ましい。いずれにせよ、創傷用包帯材料中の銀の総量は、一般的に上述のようである。
【0039】
銀と上記の基質材料との複合体は、比較的高い銀濃度(たとえば5重量%を超える濃度)で作製でき、ついで、(同一または異なる)更なる基質材料で希釈し、所望の0.01〜5重量%(好ましくは約0.2〜約2重量%)の総銀濃度を達成できることが認識されよう。
【0040】
本発明に係る材料は、ビーズ、フレーク、粉体の形態、好ましくは、フィルム、繊維パッド、ウェブ(web)、織物あるいは不織布、凍結乾燥スポンジ、発泡体またはこれらの組み合わせの形態で提供し得る。ある実施形態では、生体吸収性の固体基質が、織物、編み物および不織布からなる群から選ばれたものであり、その全体が、従来法によって作製し得る。他の実施形態では、生体吸収性の固体基質が、たとえば上記のような凍結乾燥スポンジまたは溶媒乾燥スポンジを含み得る(または、本質的にこれらからなり得る)。
【0041】
生体吸収性の固体基質は、一般的に、シートの形態、たとえば、約1〜約400cm2、とりわけ約2〜約100cm2の面積の材料シートである。このシートの坪量は、一般的に、約100〜約5,000g/m2、たとえば約400〜約2,000g/m2である。
【0042】
生体吸収性の固体基質材料は、創傷用包帯材料の少なくとも50重量%(たとえば、少なくとも75重量%または少なくとも90重量%)を構成し得る。
【0043】
用語「染料」は、繊維材料用の着色剤として有用な材料(すなわち、可視領域400〜700nmで光を強く吸収する有機化合物)である。ある実施形態では、抗酸化性の染料が、アニリン染料、アクリジン染料、チオニン染料、ビス−ナフタレン染料、チアジン染料、アゾ染料、アントラキノン染料およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。たとえば、抗酸化性の染料を、ゲンチアナバイオレット、アニリンブルー、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、アクリフラビン、9−アミノアクリジン、アクリジンイエロー、アクリジンオレンジ、プロフラビン、キナクリン、ブリリアントグリーン、トリパンブルー、トリパンレッド、マラカイトグリーン、アザクリン、メチルバイオレット、メチルオレンジ、メチルイエロー、エチルバイオレット、アシッドオレンジ、アシッドイエロー、アシッドブルー、アシッドレッド、チオフラビン、アルファズリン、インディゴブルー、メチレングリーンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれ得る。
【0044】
染料は、材料の表面近傍の光を吸収することによって、光化学分解(特に、金属銀への光化学的還元)に対して、材料中に存在する銀塩も安定化させる。さらに、これらの染料は、さもなくばこの銀と反応し得る光化学的に発生したフリーラジカルを捕捉する。このようにして、染料は光化学的減感剤として作用し得る。上記にリストされた従来の染料以外には、写真撮影において使用される種類の医学的に許容できる有機減感剤が、本発明の材料中の染料としての使用に適切であり得る。
【0045】
これらの染料は、本発明に係る創傷用包帯材料中に、本材料の乾燥重量に基づいて、約0.05〜約5重量%の量、典型的には約0.2〜約2重量%の量で存在し得る。
【0046】
創傷用包帯材料には、20重量%まで(好ましくは10重量%未満)の水も含まれ得る。本材料には、0〜40重量%、好ましくは0〜25重量%の可塑剤(好ましくはグリセリン等の多価アルコール)も含まれ得る。本材料には、0〜10重量%(好ましくは0〜5重量%)の一以上の創傷治療薬{非ステロイド系抗炎症剤(たとえばアセトアミノフェン)、ステロイド、抗生物質(たとえば、ペニシリンまたはストレプトマイシン)、消毒剤(たとえば、スルファジアジン銀またはクロルヘキシジン)または生長因子(たとえば、繊維芽細胞生長因子または血小板由来生長因子)等}も含まれ得る。上記の%は全て乾燥重量ベースのものである。
【0047】
本発明に係る創傷用包帯材料は、殺菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものであることが好ましい。
【0048】
本発明に係る材料は、さらに以下の手順1に記述されたようにして、10-4Mのジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)中に多糖を分散した0.5%(w/v)の多糖分散体の4時間後の、524nmにおける吸光度の減少率として測定したDPPH検査で、少なくとも約15%のフリーラジカル活性(すなわち抗酸化活性)を有することが好ましい。DPPH検査における(染料による吸光度の修正後の)吸光度の減少率は、少なくとも約25%が好ましく、より好ましくは少なくとも約50%であり、最も好ましくは少なくとも約75%である。
【0049】
あるいは、または上記に加えて、本発明に係る材料は、ペルオキシダーゼ(peroxidase)によるABTS(2、2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンズチアゾリンスルホネート])(2,2'-azino-di- [3-ethylbenzthiazoline sulphonate])の酸化を妨げる能力により測定される抗酸化活性を示し得る。
【0050】
本発明に係る材料は、好ましくは、水または創傷液を吸収し、それ故、湿潤化し、膨潤しまたはゲル状の塊になるが、これらに自発的に溶解しまたは分散することはない。すなわち、この材料は、親水性ではあるが、25℃の水に好ましくは約1g/L未満の溶解性を示す。溶解性が低いことにより、創傷液から反応性酸素種を除去するための創傷用包帯としての使用にこれらの材料が特に適切になる。
【0051】
本発明に係る材料の抗酸化特性および抗菌特性は、急性の外科的創傷および外傷、火傷、瘻孔、静脈の潰瘍、動脈の潰瘍、床ずれ(別名褥瘡性潰瘍)、糖尿病性潰瘍、混合病因の潰瘍ならびに、その他の慢性的創傷または壊死性創傷および炎症性病変および障害の治療等の医療用途への適用を示唆するものである。本発明に係る材料は、感染性および非感染性の創傷(すなわち、感染の臨床的徴候を示さない創傷)の両方の治療を意図するものである。
【0052】
従って、本発明の第2の局面では、創傷の治療のための薬剤の作製のために本発明に係る材料を使用する方法を提供する。この創傷は慢性的創傷であることが好ましい。この慢性的創傷は、静脈の潰瘍、動脈の潰瘍、混合病因の潰瘍、褥瘡性潰瘍および糖尿病性潰瘍からなる群から選ばれたものであることがより好ましい。本材料が、創傷環境で酸化ストレスを減少させ、それによって創傷の治癒を促進するための抗酸化剤として使用されることが好ましい。
【0053】
本発明の関連態様では、治療に有効な量の本発明に係る材料を創傷に適用することを含む、哺乳類における創傷の治療方法が提供される。この創傷が慢性的創傷であることが好ましい。
【0054】
本発明の第3の態様では、本発明に係る抗酸化性の創傷用包帯材料を含んでなる創傷用包帯が提供される。
【0055】
本創傷用包帯は、好ましくはシートの形態を有し、本発明に係る材料の活性層を含む。この活性層は、通常、使用中に創傷と接触する層であるが、実施形態によっては、液体透過性の表面シートによって創傷から切り離され得る。活性層の面積は、約1〜約400cm2が好ましく、約4〜約100cm2がより好ましい。
【0056】
本創傷用包帯が、さらに、活性層について創傷対向面の反対側の上部に延在するバッキングシートを含んでなるものであることが好ましい。このバッキングシートは、活性層より大きく、その結果、1〜50mm、好ましくは5〜20mmの幅の端の領域が活性層の周りに延在し、いわゆるアイランド包帯を形成することが好ましい。このような場合には、バッキングシートが、少なくともその縁辺領域を感圧性の医療グレードの接着剤でコーティングされたものであることが好ましい。
【0057】
好ましくは、バッキングシートが実質的に液体不透過性である。バッキングシートは、半透性であることが好ましい。すなわち、バッキングシートは、水蒸気を透過させるが、液状の水または創傷滲出液は透過させないものが好ましい。バッキングシートは、微生物を透過させないものであることも好ましい。連続的に形状を変えられるバッキングシートとして適切なものには、37.5℃,100〜10%の相対湿度差において、バッキングシートだけで、300〜5,000g/m2/24時間(好ましくは500〜2,000g/m2/24時間)の水蒸気透過速度(MVTR)を有することが好ましい。バッキングシートの厚さは、10〜1,000μmの範囲が好ましく、100〜500μmの範囲がより好ましい。このような水蒸気透過速度があると、湿潤条件下、創傷周辺の皮膚をふやかすことなく、包帯の下の創傷を治癒することができることが判明した。
【0058】
バッキングシートを形成するための適切なポリマーには、GB−A−1280631に開示されているような、ポリウレタンならびにポリアルコキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートが含まれる。バッキングシートが、主に独立気泡体である高密度ブロックポリウレタンフォームの連続層を含むことが好ましい。登録商標ESTANE 5714Fのポリウレタンフィルム市販品が、適切なバックシート材料である。
【0059】
接着剤層が存在する場合には、その接着剤層は、水蒸気透過性を持つか、水蒸気の通過を許容するようにパターン化されているか、あるいはその両方であるべきである。接着剤層は、連続的に水蒸気透過性である、従来アイランドタイプの創傷用包帯に使用されてきたタイプの感圧性の接着剤層(たとえば、GB−A−1280631に開示されたようなアクリレートエステルコポリマー、ポリビニルエチルエーテルおよびポリウレタンに基づく感圧接着剤)であることが好ましい。接着剤層の坪量は、20〜250g/m2が好ましく、50〜150g/m2がより好ましい。ポリウレタンベースの感圧接着剤が好ましい。
【0060】
多層吸収性製品の更なる層を、活性層と保護シートの間に組み入れることができる。たとえば、これらの層は(特に、包帯が浸出性の創傷での使用のためのものである場合には)、活性層と保護シートの間にある吸収層を含み得る。このオプションの吸収層は、創傷の治癒方法で、創傷液、血清または血液を吸収するために従来から使用されてきた、ガーゼ、不織布、超吸収材、ヒドロゲルおよびこれらの混合物を含むどのような層であってもよい。吸収層には、EP−A−0541391(参照によりその全体が本明細書に明示的に包含される)に従って作製された開放気泡型の親水性ポリウレタンフォーム等の吸収剤フォームの層が含まれることが好ましい。他の実施形態では、吸収層が、不織繊維のウェブ(web)例えばビスコース短繊維のカードウェブであり得る。吸収層の坪量は、50〜500g/m2(たとえば100〜400g/m2)の範囲にあり得る。吸収層の圧縮されていない状態の厚さは、0.5〜10mm(たとえば1〜4mm)の範囲にあり得る。生理食塩液について測定された自由な(圧縮されていない状態の)液吸収性は、25℃で5〜30g/gの範囲にあり得る。吸収層は、実質的に活性層と同一の広がりを持っていることが好ましい。
【0061】
包帯の創傷対向面が、取り外し可能なカバーシートによって保護されていることが好ましい。カバーシートは、通常、柔軟な熱可塑性材料から形成される。適切な材料には、ポリエステルおよびポリオレフィンが含まれる。カバーシートの接着剤に対向する面は剥離面であることが好ましい。すなわち、カバーシートから接着剤層を剥離するのを助けるために、活性層とバッキングシート上の接着剤に弱く付着しているだけの表面である。カバーシートは、たとえば、フルオロポリマー等の非粘着性のプラスチックから形成し得る。あるいは、シリコーンまたはフルオロポリマー剥離被覆剤等の剥離被覆剤付きで得られる。
【0062】
一般的に、本発明に係る創傷用包帯は、殺菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものである。
【0063】
更なる態様では、本発明により、生体吸収性の基質材料を適切な染料で染めるステップを含む、抗酸化性の創傷用包帯材料の製造方法が提供される。本方法には、さらに、基質材料を水または有機溶媒に溶解または分散した銀塩で処理することが含まれることが好ましい。
【0064】
本発明に係る方法は、本発明に係る創傷用包帯の作製のために使用することができる。
【0065】
本発明の方法には、シート形態(たとえば、基質材料の織物、不織布、編み物またはスポンジシート)の基質材料を染浴に浸すことによって染色し、続いて、洗浄して結合していない染料を除去し、乾燥することを含めることができる。他の実施形態では、基質材料を、繊維形状または粒状で染色し、つづいて、この材料をシートに形成することができる。たとえば、基質材料の繊維または粒子のスラリーを染料で処理し、ついで、冷凍乾燥し、染色されたスポンジを形成することができる。銀による処理は、未結合の染料を除去するステップの後に実施することができる。
【0066】
本発明の任意の一態様との関係で本明細書に記載された任意の特徴または実施形態が、本発明の他の任意の態様にも等しく適用できることが認識されよう。
【0067】
本発明のある特定の実施形態について、以下の例でさらに説明する。
【0068】
〔実施例1〕
コラーゲン/ORC凍結乾燥スポンジ材料をベースとする抗酸化性の創傷用包帯材料を以下の通りに作製する。
【0069】
コラーゲン成分を、以下のようにして、ウシの真皮から作製する。ウシの真皮を牛の皮からはぎ取り、擦り、更なる処理まで微生物活性を抑制するために、次亜塩素酸ナトリウム溶液(0.03%w/v)に浸漬する。ついで、この真皮を水で洗浄し、水酸化ナトリウム(0.2%w/v)および過酸化水素(0.02%w/v)を含む溶液で処理し、環境温度で真皮を膨潤させ、殺菌する。ついで、このはぎ取り真皮について、環境温度下、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび重炭酸ナトリウム(それぞれ、0.4%w/v,0.6%w/vおよび0.05%w/v)を含む、pHが12.2を超える溶液中でのタンブリング付きアルカリ処理ステップを、アミド窒素のレベルが0.24mmol/g未満になるまで、10〜14日間掛けて行う。ついで、このはぎ取り真皮を、環境温度下、1%の塩酸(pHは0.8〜1.2)での酸処理ステップに掛ける。はぎ取り真皮が十分な酸を吸収し、2.5未満のpHになるまで、この処理をタンブリング付きで続行する。ついで、このはぎ取り真皮を、pH値が3.0〜3.4になるまで、水で洗浄する。ついで、このはぎ取り真皮を、ボウルチョッパー中、最初は粗粉砕、ついで、微粉砕のセッティングで、氷を用いて粉砕する。650gのはぎ取り真皮対100gの水(氷)の比率で造られたペーストを、凍結し、本プロセスの次の段階で使用するまで保存する。しかしながら、コラーゲンは、ORCと他の構成成分とを次の段階で混合する以前は冷凍乾燥されない。
【0070】
冷凍乾燥させたパッドのORC成分は、以下のように作製される。SURGICEL布(Johnson & Johnson Medical社,Arlington)を、温度を60℃未満に維持しつつ、ロータリーナイフカッターを使用して粉砕し、スクリーン・プレートを通す。
【0071】
適切な量のメチレンブルー(酸性染料)を0.05Mの酢酸に溶解し、粉砕ORC粉体の入ったコラーゲンペーストに加えて、1%の最終的な固形分濃度を得ることでメチレンブルーを取り入れた。染料を、スラリー中に以下の濃度で取り入れたサンプルを作製した:0%(参照例),1mg/mL,0.5mg/mLおよび0.1mg/mL。
【0072】
得られたスラリーをペトリ皿に3mmの深さに注ぎ、事前に温度を−40℃にセットしたフリーザー棚上に置いた。ついで、凍結乾燥機のプログラムを開始し、コラーゲンとORCとを乾燥し、脱水熱的に(dehydrothermally)架橋させ、スポンジパッドを形成した。このサイクルが完了したら、真空を解放し、ついで、スポンジサンプルを包装し、コバルト60γ線照射によって殺菌した。
【0073】
〔実施例2〕
メチレンブルー染料をクリスタルバイオレット(塩基性染料)に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。クリスタルバイオレットは、スラリー中に以下の濃度で取り入れられた:0%(参照例),1mg/mL,0.5mg/mLおよび0.1mg/mL。
【0074】
〔実施例3〕
メチレンブルー染料をフラビン3,6−ジアミノアクリジンヘミスルフェート(flavin 3,6-Diaminoacridine hemisulfate)(塩基性染料)に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。このフラビンは、スラリー中に以下の濃度で取り入れられた:0%(参照例),1mg/mL,0.5mg/mLおよび0.1mg/mL。
【0075】
〔実施例4〕
メチレンブルー染料をフラビン3,6−ジアミノアクリジンヘミスルフェート(塩基性染料)に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。このフラビンは、スラリー中に以下の濃度で取り入れられた:0%(参照例),1mg/mL,0.5mg/mLおよび0.1mg/mL。
【0076】
〔実施例5〕
メチレンブルー染料を、メチレンブルーとフラビン3,6−ジアミノアクリジンヘミスルフェートとの混合物に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。それぞれの染料は、スラリー中に0.5mg/mLの濃度で取り入れられた。
【0077】
〔実施例6〕
メチレンブルー染料を、クリスタルバイオレットとフラビン3,6−ジアミノアクリジンヘミスルフェートとの混合物に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。それぞれの染料は、スラリー中に0.5mg/mLの濃度で取り入れられた。
【0078】
〔実施例7〕
メチレンブルー染料を、クリスタルバイオレットとメチレンブルーとの混合物に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順を実施した。それぞれの染料は、スラリー中に0.5mg/mLの濃度で取り入れられた。
【0079】
〔実施例8〜14〕
酢酸銀を0.05Mの酢酸に溶解し、全固体をベースにして1重量%の銀を含む最終スラリーを造るのに十分な量のこの溶液をORC/コラーゲンスラリーに加えることにより、実施例1〜7に記載されたようにして作製された創傷用包帯材料に銀を取り入れた。
【0080】
実施例1〜14で得られた本発明に係るスポンジは、すべて、安定した染料の吸収を示した。スポンジを25℃の血清中にかなりの日数浸漬したが、いつでも着色したままであった。添加された染料の濃度に依存して、最初、過剰な染料が放出され、ついで、スポンジが分解し始めるに従い、徐々に放出された。
【0081】
〔手順1〕
酸素を含有するフリーラジカルと反応し、これを除去する創傷用包帯材料の能力は、WO94/13333(参照によりその全体が本明細書に明示的に包含される)に開示されたDPPHテストによって評価される。このテストは、Blois M.S., Nature,181:1199(1958年)および、Banda P.W.等,Analytical Letters,7:41(1974年)に記載された方法を本テストの状況に合わせ適用したものである。
【0082】
簡単に言えば、テスト下の創傷用包帯材料(2.5mg;5mg;および25mgのサンプルサイズ)を0.1M,pH7.0のリン酸緩衝液(2.5mL)中に懸濁した。メタノール中のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)が10-4Mの溶液を2.5mL加え、この混合物を振盪し、暗所に20℃で保存した。サンプルは、6時間にわたって、524nmで、これらの吸光度を、コントロールと比較して測定することによって評価した。4時間後の数字に特に注意を払った。コントロールに対する4時間後の吸光度の減少%は、一般的に±5%の再現性でDPPHテスト値を与える。この値は、コントロールに対する吸光度単位(AU)の単純な減少で、簡便に表現することができる。
【0083】
よく知られた抗酸化剤であるアスコルビン酸は、比較の目的で役に立つ陽性のコントロール物質である。キチン/キトサンおよびヒドロキシエチルセルロースの凍結乾燥スポンジが、陰性のコントロールとして使用された。
【0084】
実施例1〜7の本発明に係る材料へのこのテストの適用により、陽性コントロール(10-4M)の80〜90%のDPPH検査値が得られた。これとは対照的に、陰性のコントロールであるキチン/キトサンおよびヒドロキシエチルセルロースは、15%未満のずっと低いDPPH値を示した。染料を全く添加しないコラーゲン/ORCは、DPPHテストでいくらかの活性を持ち、ORC自体に若干の抗酸化特性があることを示した。本発明に係る染色済み材料は、その抗酸化活性と整合して、DPPHテストで、コラーゲン/ORCのみよりかなり高い活性を示した。
【0085】
〔手順2〕
実施例8〜14で作製したスポンジの殺菌作用を、緑膿菌および黄色ブドウ球菌について抑制域を観察することによってテストする。
【0086】
それぞれ2cm×2cm平方の6つのサンプルを無菌条件でカットする。実験の第一日に、緑膿菌(ATCC 27853および種々のPSI種)および黄色ブドウ球菌(Clinical Microbiology and Pathology社の1部門から提供される)の培養液を、有酸素的に37℃で24時間、Diagnostic Sensitivity Agar(DSA)上で培養する。24時間後、テストサンプルを、それぞれ、DSAプレート上に置き、ただちに0.5mLの緩衝液で湿潤させる。三つのサンプルを緑膿菌を接種したプレート上に置き、三つを黄色ブドウ球菌を接種したプレート上に置く。ついで、これらのプレートを37℃で24時間培養する。ついで、サンプルの周りの成長抑制域を、カリパスを用いて測定し、このテストサンプルを新しく接種したDSAプレート上に置く。サンプルの下の領域について、スワブをDSAプレート上に塗りつけ、24時間培養し、ついで成長を検査することによって、サンプルが静菌性であるか、殺菌作用がないかを決定するスワブテストを行う。サンプルを、新しく接種したプレート上に移し、サンプルが無傷である限り、72時間に渡り、24時間ごとに上記の手順を実施する。
【0087】
陰性のコントロールとして、45%のORC/55%のコラーゲンの凍結乾燥スポンジで銀も染料も含まないものをテストした。市販の抗菌性の銀含有包帯(ACTICOAT、Smith and Nephew社の登録商標)および硝酸銀溶液(0.5%)を、陽性のコントロールとして用い、テスト期間中、両者について、抑制域を観察した。
【0088】
本発明に係る材料については、緑膿菌と黄色ブドウ球菌に対し、著しい殺菌効果が観察されることが見出されている。1%以上の銀を含む材料の性能は、ACTICOAT包帯の性能に比肩できるものであることが期待される。
【0089】
上記の実施形態は、例証としてのみ記述されたものである。添付の請求項の範囲内に属する多くの他の実施形態は、当業者にとって明らかである。
【0090】
〔実施の態様〕
本発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
【0091】
(1) 創傷用包帯材料であって、
抗酸化性の染料で染めた生体吸収性の固体基質を含んでなる、創傷用包帯材料。
(2) 実施態様1に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質が、コラーゲン、酸化セルロース、キトサン、ガラクトマンナン、グリコサミノグリカン、ポリラクチド/ポリグリコリド、および、これらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む、創傷用包帯材料。
(3) 実施態様2に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質が、コラーゲン、酸化再生セルロース、キトサン、および、これらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む、創傷用包帯材料。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記生体吸収性の固体基質が、織物、編み物、不織布、凍結乾燥スポンジ、溶媒乾燥スポンジ、および、これらの組合せからなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
(5) 実施態様1〜4のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、アニリン染料(aniline dyes)、アクリジン染料(acridine dyes)、チオニン染料(thionine dyes)、ビス−ナフタレン染料(bis-naphthalene dyes)、チアジン染料(thiazine dyes)、アゾ染料(azo dyes)、アントラキノン(anthraquinones)、および、これらの混合物からなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
(6) 実施態様1〜5のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、ゲンチアナバイオレット(gentian violet)、アニリンブルー(aniline blue)、メチレンブルー(methylene blue)、クリスタルバイオレット(crystalviolet)、アクリフラビン(acriflavine)、9−アミノアクリジン(9-aminoacridine)、アクリジンイエロー(acridine yellow)、アクリジンオレンジ(acridine orange)、プロフラビン(proflavin)、キナクリン(quinacrine)、ブリリアントグリーン(brilliant green)、トリパンブルー(trypan blue,)、トリパンレッド(trypan red)、マラカイトグリーン(malachite green)、アザクリン(azacrine)、メチルバイオレット(methyl violet)、メチルオレンジ(methyl orange)、メチルイエロー(methyl yellow)、エチルバイオレット(ethyl violet)、アシッドオレンジ(acid orange)、アシッドイエロー(acid yellow)、アシッドブルー(acid blue)、アシッドレッド(acid red)、チオフラビン(thioflavin)、アルファズリン(alphazurine)、インディゴブルー(indigo blue)、メチレングリーン(methylene green)、および、これらの混合物からなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
(7) 実施態様1〜6のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、前記材料の乾燥重量に基づいて、0.2〜2重量%の量で存在する、創傷用包帯材料。
(8) 実施態様1〜7のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が銀塩をさらに含み、前記染料が当該銀塩を光安定化している、創傷用包帯材料。
(9) 実施態様8に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質がアニオン性ポリマーを含み、前記銀塩がAg+とアニオン性ポリマーとの塩を含む、創傷用包帯材料。
(10) 実施態様8または9に記載の創傷用包帯材料であって、
前記組成物が、当該組成物の乾燥重量に基づいて、0.01〜5重量%の銀を含む、創傷用包帯材料。
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料がシートの形態を有する、創傷用包帯材料。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が、殺菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものである、創傷用包帯材料。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が、本願明細書で定義した抗酸化活性についてのジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)検査で、少なくとも15%のフリーラジカル活性を有する、創傷用包帯材料。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載の材料の使用であって、
創傷治療用薬剤の作製のための使用。
(15) 実施態様14に記載の使用であって、
前記創傷が慢性の創傷であり、好ましくは、静脈の潰瘍、褥瘡性潰瘍および糖尿病性潰瘍の諸潰瘍からなる群から選ばれた創傷である、使用。
(16) 抗酸化性の創傷用包帯材料の製造方法であって、
生体吸収性の基質材料を抗酸化性の染料で染めるステップを含む、製造方法。
(17) 実施態様16に記載の方法であって、
実施態様1〜13のいずれかに記載の創傷用包帯材料の製造のための、製造方法。
(18) 創傷用包帯であって、
実施態様1〜13のいずれかに記載の抗酸化性の創傷用包帯材料を含んでなる、創傷用包帯。
(19) 実施態様18に記載の創傷用包帯であって、
前記材料は、滅菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものである、創傷用包帯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷用包帯材料であって、
抗酸化性の染料で染めた生体吸収性の固体基質を含んでなる、創傷用包帯材料。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質が、コラーゲン、酸化セルロース、キトサン、ガラクトマンナン、グリコサミノグリカン、ポリラクチド/ポリグリコリド(polylactide/polyglycolide)、および、これらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む、創傷用包帯材料。
【請求項3】
請求項2に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質が、コラーゲン、酸化再生セルロース、キトサン、および、これらの混合物からなる群から選ばれた生体吸収性の固体材料を含む、創傷用包帯材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記生体吸収性の固体基質が、織物、編み物、不織布、凍結乾燥スポンジ、溶媒乾燥スポンジ、および、これらの組合せからなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、アニリン染料(aniline dyes)、アクリジン染料(acridine dyes)、チオニン染料(thionine dyes)、ビス−ナフタレン染料(bis-naphthalene dyes)、チアジン染料(thiazine dyes)、アゾ染料(azo dyes)、アントラキノン(anthraquinones)、および、これらの混合物からなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、ゲンチアナバイオレット(gentian violet)、アニリンブルー(aniline blue)、メチレンブルー(methylene blue)、クリスタルバイオレット(crystalviolet)、アクリフラビン(acriflavine)、9−アミノアクリジン(9-aminoacridine)、アクリジンイエロー(acridine yellow)、アクリジンオレンジ(acridine orange)、プロフラビン(proflavin)、キナクリン(quinacrine)、ブリリアントグリーン(brilliant green)、トリパンブルー(trypan blue,)、トリパンレッド(trypan red)、マラカイトグリーン(malachite green)、アザクリン(azacrine)、メチルバイオレット(methyl violet)、メチルオレンジ(methyl orange)、メチルイエロー(methyl yellow)、エチルバイオレット(ethyl violet)、アシッドオレンジ(acid orange)、アシッドイエロー(acid yellow)、アシッドブルー(acid blue)、アシッドレッド(acid red)、チオフラビン(thioflavin)、アルファズリン(alphazurine)、インディゴブルー(indigo blue)、メチレングリーン(methylene green)、および、これらの混合物からなる群から選ばれたものである、創傷用包帯材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記抗酸化性の染料が、前記材料の乾燥重量に基づいて、0.2〜2重量%の量で存在する、創傷用包帯材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が銀塩をさらに含み、前記染料が当該銀塩を光安定化している、創傷用包帯材料。
【請求項9】
請求項8に記載の創傷用包帯材料であって、
前記基質がアニオン性ポリマーを含み、前記銀塩がAg+とアニオン性ポリマーとの塩を含む、創傷用包帯材料。
【請求項10】
請求項8または9に記載の創傷用包帯材料であって、
前記組成物が、当該組成物の乾燥重量に基づいて、0.01〜5重量%の銀を含む、創傷用包帯材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料がシートの形態を有する、創傷用包帯材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が、殺菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものである、創傷用包帯材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の創傷用包帯材料であって、
前記材料が、本願明細書で定義した抗酸化活性についてのジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)検査で、少なくとも15%のフリーラジカル活性を有する、創傷用包帯材料。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の材料の使用であって、
創傷治療用薬剤の作製のための使用。
【請求項15】
請求項14に記載の使用であって、
前記創傷が慢性の創傷であり、好ましくは、静脈の潰瘍、褥瘡性潰瘍および糖尿病性潰瘍の諸潰瘍からなる群から選ばれた創傷である、使用。
【請求項16】
抗酸化性の創傷用包帯材料の製造方法であって、
生体吸収性の基質材料を抗酸化性の染料で染めるステップを含む、製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の製造方法であって、
請求項1〜13のいずれかに記載の創傷用包帯材料の製造のための、製造方法。
【請求項18】
創傷用包帯であって、
請求項1〜13のいずれかに記載の抗酸化性の創傷用包帯材料を含んでなる、創傷用包帯。
【請求項19】
請求項18に記載の創傷用包帯であって、
前記材料は、滅菌され、微生物の侵入しない容器で包装されたものである、創傷用包帯。

【公表番号】特表2007−515979(P2007−515979A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516448(P2006−516448)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002636
【国際公開番号】WO2004/112850
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(597162835)ジョンソン・アンド・ジョンソン・メディカル・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Medical,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Airebank Mill,Gargrave,North Yorkshire,BD23 3RX,United Kingdom
【Fターム(参考)】