説明

抗8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシンモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ

【課題】 DNAの酸化分解物の1つである8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン8-OHdGに対する特異性が十分に高い抗8-OHdGモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマを提供すること。
【解決手段】 抗8-OHdGモノクローナル抗体は、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンにより免疫されたラット腸骨リンパ節細胞と、マウスミエローマ細胞とを融合させて得られるハイブリドーマにより産生され、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンによる50%阻害濃度が、2'-デオキシグアノシン、2'-デオキシアデノシン、2'-デオキシイノシン、8-ブロモグアノシン及びグアノシンから成る群より選ばれるあらゆるヌクレオシドのそれぞれによる50%阻害濃度の1/1000以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマに関する。本発明のモノクローナル抗体は、酸化的ストレスの指標として用いられている、DNAの酸化分解物の1つである8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(以下、「8-OHdG」ということがある)の免疫測定に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線被爆、薬物代謝等の各種ストレスや、成人病、老化による酸化的ストレス、さらには環境汚染物質や食品添加物が生体に与える影響について、2'-デオキシグアノシン(以下、「2dG」ということがある)の8-OHdGへの酸化を指標として評価することが行なわれている。
【0003】
従来、被検試料中の8-OHdGの定量は、標準となる標品を用いて、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析計による分離分析およびモノクローナル抗体を用いた免疫的分析が行われていた。
【0004】
前記薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析計による方法は、天然物試料の定性・定量においては、共存類似物質の妨害、目的物質がクロマトグラフィーの検出限界以下の微量の場合、又はカラムによる分離のために長時間要すること、その上比較的高価な機器を必要としたりカラムなどの汚染のための、その更新に多額の費用を要し、経済的でないことなどが指摘されている。
【0005】
上記した各種クロマトグラフィーの問題を回避できる方法として、抗8-OHdGモノクローナル抗体を用いた免疫測定により8-OHdGを測定することも知られている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特許第3091974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被検試料中には8-OHdGの供給源となる2dGをはじめ、8-OHdGに構造的に近似するヌクレオシドが種々存在するため、8-OHdGを正確に免疫測定するためには、免疫測定に用いられる抗体の8-OHdGに対する特異性が十分に高い必要がある。公知の抗8-OHdGモノクローナル抗体は、8-OHdGに対する特異性において必ずしも満足できるものではない。
【0008】
従って、本発明の目的は、8-OHdGに対する特異性が十分に高い抗8-OHdGモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、8-OHdGで免疫したラットの腸骨リンパ節細胞とマウスミエローマ細胞とを融合させて得られるハイブリドーマが産生する抗8-OHdGモノクローナル抗体には、8-OHdGに対する特異性が極めて高いものがあることを見出し、実際にそのような抗8-OHdGモノクローナル抗体を創製することに成功し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンにより免疫されたラット腸骨リンパ節細胞と、マウスミエローマ細胞とを融合させて得られるハイブリドーマにより産生され、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンによる50%阻害濃度が、2'-デオキシグアノシン、2'-デオキシアデノシン、2'-デオキシイノシン、8-ブロモグアノシン及びグアノシンから成る群より選ばれるあらゆるヌクレオシドのそれぞれによる50%阻害濃度の1/1000以下である抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を提供する。また、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。また、本発明は、上記本発明の抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンとの抗原抗体反応を利用した免疫測定方法により被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンを定量することを含む、被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンの免疫測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、8-OHdGに対する特異性が極めて高い抗8-OHdGモノクローナル抗体が提供された。本発明の抗8-OHdGモノクローナル抗体は、8-OHdGに対する特異性が極めて高いので、本発明の抗8-OHdGモノクローナル抗体を用いる免疫測定により被検試料中の8-OHdGを定量すると、被検試料中に存在する他の近似のヌクレオシドによる妨害をほとんど受けることなく、正確に8-OHdGを定量することができる。また、本発明の抗8-OHdGモノクローナル抗体を担体に結合したアフィニティカラムにより、8-OHdGを効率的に濃縮し、極微量レベルにおいても追跡することができ、環境汚染物質や食品添加物が生体に与える影響を高感度に検査することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記の通り、本発明のモノクローナル抗体は、8-OHdGにより免疫されたラット腸骨リンパ節細胞と、マウスミエローマ細胞とを融合させて得られるハイブリドーマにより産生されるものである。8-OHdGによるラットの免疫は、常法により行なうことができる。8-OHdG自体は低分子であるので、これを単独で投与したのでは免疫応答を十分に誘起できない場合があるので、KLH(keyhole limpet hemocyanin)やウシ血清アルブミン(BSA)のような担体タンパク質と結合させたものを免疫原として用いることが好ましい。免疫自体は、周知のアジュバントを用いた常法により行うことができ、具体的な方法が下記実施例に詳細に記載されている。
【0013】
免疫したラットから腸骨リンパ節細胞を採取し、これをマウスミエローマと融合させる。融合工程自体は、周知の電気細胞融合法等により行なうことができる。次に融合細胞の各クローンの培養上清中に抗8-OHdG抗体が含まれているか否かをELISA等により調べる。抗8-OHdG抗体陽性の培養上清中の抗体について、さらに、8-OHdGによる50%阻害濃度が、2dG、2'-デオキシアデノシン(以下、「2dA」)、2'-デオキシイノシン(以下、「2dI」)、8-ブロモグアノシン(以下、「8BrG」)及びグアノシン(以下、「G」)から成る群より選ばれるあらゆるヌクレオシドのそれぞれによる50%阻害濃度の1/1000以下であるという要件を満足するモノクローナル抗体をスクリーニングする。スクリーニングの結果、本発明の要件を満足するクローンを選択することにより、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを得ることができる。得られたハイブリドーマを、ヌードマウスの腹腔に移植し、腹水から大量のモノクローナル抗体を採取することができる。
【0014】
8-OHdGやこれに類似する上記各種ヌクレオシドによる50%阻害濃度は、次のようにして測定される。先ず、これらの競合物質を用いない状態でモノクローナル抗体をELISA等により定量し、その測定値(ELISAであれば吸光度でよい)を100%とする。次に、低減希釈した競合物質とモノクローナル抗体を混合し、混合後のモノクローナル抗体を同じ方法により定量する。なお、ELISAによる場合、競合物質を先にELISAプレート添加し、後からモノクローナル抗体を添加してもよい。モノクローナル抗体と競合物質が抗原抗体反応すれば、フリーのモノクローナル抗体が減少するので、それに応じて測定値も減少する。測定値が、競合物質を用いない場合の50%になる競合物質の濃度がその物質による50%阻害濃度である。本発明のモノクローナル抗体は、8-OHdGによる50%阻害濃度が、dGによる50%阻害濃度、2dAによる50%阻害濃度、2dIによる50%阻害濃度、8BrGによる50%阻害濃度及びGによる50%阻害濃度のいずれに対しても1/1000以下である。換言すれば、本発明のモノクローナル抗体は、2dG、2dA、2dI、8BrG及びGのいずれに対しても実質的に交差反応しないということである。
【0015】
本発明は、上記した本発明のモノクローナル抗体の抗原結合性断片をも提供する。ここで、「抗原結合性断片」とは、例えば免疫グロブリンのFab断片やF(ab')2断片のような、当該抗体の対応抗原に対する結合性(抗原抗体反応性)を維持している抗体断片を意味する。このような抗原結合性断片も免疫測定に利用可能であることは周知である。Fab断片やF(ab')2断片は、周知の通り、モノクローナル抗体をパパインやペプシンのようなタンパク分解酵素で処理することにより得ることができる。なお、抗原結合性断片は、Fab断片やF(ab')2断片に限定されるものではなく、対応抗原との結合性を維持しているいかなる断片であってもよく、遺伝子工学的手法により調製されたものであってもよい。また、例えば、遺伝子工学的手法により、一本鎖可変領域 (scFv : single chain fragment of variable region) を大腸菌内で発現させた抗体を用いることもできる。scFvの作製方法も周知であり、上記の通りに作製したハイブリドーマのmRNAを抽出し、一本鎖cDNAを調製し、免疫グロブリンH鎖及びL鎖に特異的なプライマーを用いてPCRを行なって免疫グロブリンH鎖遺伝子及びL鎖遺伝子を増幅し、これらをリンカーで連結し、適切な制限酵素部位を付与してプラスミドベクターに導入し、それで大腸菌を形質転換し、大腸菌からscFvを回収することによりscFvを作製することができる。このようなscFvも本発明で言う「抗原結合性断片」に包含される。
【0016】
本発明のモノクローナル抗体は、上記のように調製されるハイブリドーマにより産生されるものであるが、該ハイブリドーマにより産生されるものと同一のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、遺伝子工学的手法により調製されたものであっても本発明の範囲に含まれる。
【0017】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、8-OHdGの定量のための免疫測定に用いることができる。免疫測定方法自体はこの分野において周知であり、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、周知のいずれの免疫測定方法にも利用することができる。すなわち、反応形式に基づき分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法等があり、標識に基づき分類すると、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析等があるがこれらのいずれもが本発明で言う「免疫測定」に包含される。また、各免疫測定に必要な試薬類も周知であり、用いるモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片に特徴があること以外は、通常の免疫測定キットを用いて免疫測定を行うことができる。
【0018】
サンドイッチ法の第2抗体として本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いる場合、それらはしばしば標識される。標識としては、フルオレセイン、FITC、カルモジュリンのような蛍光標識、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリフォスファダーゼ、ペルオキシダーゼのような酵素標識、フェロセンまたはその誘導体、キノンまたはその誘導体、コバルト化合物等の標識を例示することができる。
【0019】
また、周知の方法により、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と8-OHdGとの抗原抗体反応を電気的に測定する8-OHdG測定用センサーを構築することも可能である。例えば、本発明の抗8-OHdGモノクローナル抗体にβ―ガラクトシダーゼを結合させ、コンジュゲートリリースパッドに保持させる。その上流側には検体パッドを構成し、下流側には競合反応層として8-OHdG/KLHコンジュゲートを固定化したメンブレンを構成する。さらにその下流側には電気化学センサーを形成する。測定では、先ず、検体パットに測定検体をアプライする。その時、検体パットの下流側に位置するコンジュゲートリリースパッドに検体が移行し、検体中の8-OHdGと抗体が抗原抗体反応を行う。さらにその下流に位置する競合反応層に検体が移行するが、コンジュゲートリリースパット内で抗原抗体反応した抗原抗体反応物は電気化学センサー部に移動する。一方、未反応の抗体は競合反応層の固定化抗原(8-OHdG)と抗原抗体反応を行い、電気化学センサー部には移行しない。したがって、電気化学センサー部には検体中の8-OHdGの濃度に比例した8-OHdG-抗8-OHdG抗体が到達するために、β―ガラクトシダーゼの基質であるパラアミノフェニルーβーD-ガラクトピラノシド(PAPG)を電気化学センサー上に保持しておくことでパラアミノフェノールが生成され、その物質が電気化学的に活性な物質であることからその酸化電流を測定することで、検体中の8-OHdG濃度に変換することができる。
【0020】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、8-OHdGの免疫測定に利用できるだけではなく、アフィニティクロマトグラフィー用担体に結合して8-OHdGのアフィニティクロマトグラフィーにも利用することができる。アフィニティクロマトグラフィー用担体は周知であり、種々市販されており、それらにモノクローナル抗体を結合させることも常法により行うことができる。例えば、市販のアミノ基結合アフィニティクロマトグラフィー用担体であるAmino Toyopearl 650M (商品名、東ソー社製)を担体とし、適当なスペーサーを介して、末端にリガンドをつけた抗8-OHdG抗体を固定化させたり、Biotinylation Kit(Sulfo-OSu)(商品名、同仁化学社製)を使用して、抗8-OHdG抗体の遊離のアミノ基をビオチンラベル化し、予めストレプトアビジンを結合させておいた目的のカラム用の担体に抗8-OHdG抗体を結合させる等で実施できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
1. 免疫原の調製
8-OHdGを無水ジメチル・スルフォニル・オキサイド(DMSO)に溶解させ、無水コハク酸1.5当量を加え、室温で5日間反応させた。反応後、HPLC測定を行い、複数の生成物を確認した。そして、サクシニル-8-ヒドロキシデオキシグアノシン(Suc-8-OHdG)を含むピークを単離精製し、Suc-8-OHdGを得た。このSuc-8-OHdGをジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解させ、これにN、N−カルボニル・ジ・イミダゾール(CDI)(東京化成工業製)10当量を加え、室温で2時間反応させた。この反応溶液をBSA(生化学工業製)水溶液又はKLH(Sigma)の水溶液に、夫々加え、室温で一晩反応させた。反応後、透析を行った。得られたBSAコンジュゲートは8-OHdGが6分子程度結合していると算出した。
【0023】
2. ラットの免疫
免疫用の抗原として8-OHdG/KLHコンジュゲート150μg/匹をフロインドコンプリートアジュバント (FCA)と共にラット(WKY/メス、8週令)後肢足蹠皮内に投与した。免疫したラットより免疫後9日目に尾静脈より部分採血を行い、抗血清を得た。得られた抗血清中の抗体価をELISAで確認した。
【0024】
3. ハイブリドーマの調製
免疫後21日目にラットの腸骨リンパ節細胞を採取し、これとマウスミエローマ細胞P3U1を電気細胞融合法で融合した。融合後、8-OHdG-BSAコンジュゲートをプレートに固相化し、ELISA法にてスクリーニングを行い、抗体産生細胞を含むwellを選択した。クローニングを2回行った後、最終株を得た。なお、上記電気細胞融合法は常法通り、ラットの腸骨リンパ節細胞とマウスミエローマ細胞を混合し、高周波電界を印加して誘電電気泳動により細胞同士を接触させた後に、高電圧パルスを印加し、細胞融合を行った。また、上記ELISA法は具体的には次のようにして行なった。すなわち、8-OHdG-BSAコンジュゲートを、5μg/mL、100μL/wellでマイクロプレートのウェルに入れ、4℃で一夜静置して固相化した。洗浄後、ブロッキング剤(大日本製薬社製Block Ace)を各ウェル当り200μL入れ、室温で2時間放置した。洗浄後、無希釈の培養上清100μLをウェルに入れ、室温で1時間反応させた。洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ラットIgG抗体を各ウェル当り100μL入れ、室温で1時間反応させた。洗浄後、HRPの基質溶液(ο-フェニレンジアミン(OPDA,シグマ社製P-8287)を各ウェル当り100μL加え、遮光状態で室温で25分間反応させた。次に2N硫酸を各ウェル当り100μLの濃度で添加し、反応を停止させた。次に、波長490nmにおける吸光度を測定した。
【0025】
4. 交差反応性
抗体産生株144株の内、8-OHdGに対する反応性を、競合阻害ELISA法で調べた結果、そのうち20ウェルが反応性を示した。ここで、競合阻害ELISA法は、上記したELISA法において、培養上清を添加する前に濃度10、1、0.1、0μg/mLの8-OHdG溶液50μLをウェルに加え、次いで無希釈の培養上清50μLを添加することにより行なった。さらにこの20ウェルについて、6種類の類縁化合物(dG、2dA、2dI、8BrG、G及び8-ヒドロキシグアノシン(以下、「8-OHG」)に対する交差反応性を上記した競合阻害ELISA法により調べ、8-OHdGに対する反応性と8-OHGに対する交差反応性より6ウェルを選択した。選択した6ウェル中のモノクローナル抗体の各種ヌクレオシドに対する反応性を図1に示す。図1に示す通り、これらのモノクローナル抗体は、2dA、2dG、2dI、8BrG及びGには実質的に交差反応性を示さなかった。すなわち、図1に示されるように、50%阻害濃度は、8-OHdGでは10ng/mLよりも低いが2dA、2dG、2dI、8BrG及びGでは10000ng/mLの濃度でも阻害は数%しかおきておらず、8-OHdGによる50%阻害濃度は、2dA、2dG、2dI、8BrG及びGのそれぞれによる50%阻害濃度の1/1000以下の範囲に悠々と入っていた。なお、図1ないし図3において、縦軸の「O.D.%」は、横軸の濃度が0の場合の吸光度を100とした、測定された吸光度の百分率を示す。6ウェルより、3A9株と6C1株の二つを選択し、クローン化を行った。さらに、その2種類の株についてさらにスクリーニングを実施し、5種類の類縁化合物に対する交差反応性を調べ、8-OHdGに対する反応性と8-OHGに対する交差反応性より2つのウェルを選択した。それにより、2H6株と2H2株の二つのハイブリドーマについてクローン化を行った。さらに同様の方法で2回目のクローニング後にスクリーニングを行い、最終的に1B1株を得た。1B1株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、その受領番号は、FERM P-20122である(寄託者が付した識別のための表示:80HdG 1B1)。
【0026】
5. マウス腹水由来の抗8−OHdG抗体の作製
得られたハイブリドーマ1B1細胞(1x107細胞/マウス)をヌードマウス(メス、6週齢)の腹腔に移植した。1週間後に追加接種(1×107細胞/マウス)を行い、その1週間後から2週後にかけて腹水を採取した。モノクローナル抗体1B1の精製は、Protein G-Sepharose 4 Fast Flowカラム(商品名)を用いて行った。精製後、1B1抗体は4℃にて冷蔵保存した。得られたモノクローナル抗体を用いて8-OHdG標準溶液による競合阻害ELISAを上記の通りに行った。その結果、8-OHdGの検出限界濃度は1ng/ml、50%競合阻害濃度は、15ng/mlであった。
【0027】
6. タンパク質との反応性
5で得られたモノクローナル抗体1B1の各種タンパク質に対する交差反応性を調べた。8-OHdG/BSA、BSA、オバルブミン(OVA)又はKLHをプレートに固定化し、8-OHdGの希釈系列を作製、添加した後、モノクローナル抗体1B1を用いて上記と同様に競合阻害ELISAを行った。その結果を図2に示す。一方、8-OHdG/BSA又はBSAをプレートに固定化、競合タンパクであるBSAまたはHASの希釈系列を作製、添加した後、抗8-OHdG/BSA抗体を用いて上記と同様に競合ELISAを行った。その結果を図3に示す。これらから明らかなように、本発明のモノクローナル抗体1B1は、これらのタンパク質と実質的に交差反応しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のモノクローナル抗体と、8-OHdGとの反応性及び他の各種ヌクレオシドとの交差反応性を示す図である。
【図2】本発明のモノクローナル抗体と、各種タンパク質との交差反応性を示す図である。
【図3】本発明のモノクローナル抗体と、各種タンパク質との交差反応性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンにより免疫されたラット腸骨リンパ節細胞と、マウスミエローマ細胞とを融合させて得られるハイブリッド細胞により産生され、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンによる50%阻害濃度が、2'-デオキシグアノシン、2'-デオキシアデノシン、2'-デオキシイノシン、8-ブロモグアノシン及びグアノシンから成る群より選ばれるあらゆるヌクレオシドのそれぞれによる50%阻害濃度の1/1000以下である抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、ハイブリッド細胞1B1(FERM AP-20122)により産生されるモノクローナル抗体である請求項1記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項1記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリッド細胞。
【請求項4】
ハイブリッド細胞1B1(FERM AP-20122)である請求項3記載のハイブリッド細胞。
【請求項5】
請求項1又は2記載の抗8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と、被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンとの抗原抗体反応を利用した免疫測定方法により被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンを定量することを含む、被検試料中の8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンの免疫測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56859(P2006−56859A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243147(P2004−243147)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(503259598)株式会社テクノメディカ (8)
【Fターム(参考)】