説明

抗CD8抗体は、細胞傷害性エフェクターのプライミングを遮断し、制御性CD8+T細胞の生成を導く

本発明は、対象に、同種抗原に対するCD8T細胞免疫寛容を誘導するのに十分な有効量の抗CD8抗体を提供するステップを含む、必要とする対象において寛容を誘導するための組成物及び方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、制御性T細胞の分野、より具体的には、抗CD8抗体を作製し用いるための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の背景を免疫細胞寛容との関連において記載する。Reichert, et al.に対して発行された米国特許第5593677号明細書は、移植片対宿主疾患の予防のための方法について教示している。この方法は、抗CD8モノクローナル抗体とCD4+細胞失活剤との組合せ使用によるヒトにおける移植片対宿主疾患の治療及び予防を含む。骨髄移植を受ける患者におけるGVHDに対する予防又は防御のための方法は、同種提供者の骨髄がHLA適合性について患者と適合している場合に、提供者の骨髄を、T細胞傷害性/サプレッサー細胞を1%未満まで枯渇させるのに十分な量の1又は複数の抗CD8モノクローナル抗体及び補体で処理するステップと、処理された骨髄を患者に移植するステップと、患者に、CD4+細胞を失活させるのに十分な有効量のシクロスポリンAを投与するステップとを含む。
【0003】
Tykocinski, et al.に対して発行された米国特許第5601828号明細書は、CD8誘導体と、細胞調節及び細胞生着の増進のための使用方法とに関する。特異的及び非特異的な免疫調節、細胞生着の増進並びに非免疫細胞の調節は、多様な膜結合性及び可溶性のCD8組成物を用いることにより達成される。この特許において、T細胞増殖又は同種抗原若しくはMHC関連抗原に対する細胞傷害性を特異的に低減するための方法は、その表面内又はその表面上でCD8の細胞外ドメイン部分と同種抗原若しくはMHC関連抗原を提示する天然に存在しない膜を提供するステップであって、少なくとも免疫グロブリンVホモログドメインを含むCD8の細胞外ドメイン部分が、細胞表面分子と共有若しくは非共有結合する分子と共有結合しているステップと、膜を、同種抗原又はMHC関連抗原に対して応答できるT細胞に、同種抗原又はMHC関連抗原に対するT細胞の特異的細胞免疫応答を低減するのに十分な時間及び条件下で曝露するステップとを含む。
【0004】
Sachsに対して発行された米国特許第5876708号明細書は、同種及び異種移植と、受容者に、短い経過の補助低減処置を施すステップ又は短い経過を投与するステップを含む、寛容を誘導するための方法と、短い経過の免疫抑制剤を投与することによる移植片の許容を延長する方法とに関する。この方法は、第1の種の霊長類受容者に、第2の種の哺乳類から得た移植片に対する寛容を、受容者に、第2の種の造血幹細胞を導入し、移植片を受容者に移植することにより誘導するステップと、受容者のT細胞を失活させるステップと、受容者に、短い経過の免疫抑制剤を投与するステップとを含み、この作用剤は抗T細胞抗体ではなく、短い経過は120日以下である。
【0005】
やはりSachsに対して発行された米国特許第6911220号明細書は、同種及び異種移植に関する。この発明は、提供者の胸腺組織を受容者に導入するステップを含む、免疫能を回復又は誘導するための方法を提供する。この発明も、提供者の胸腺組織を受容者に導入するステップを含む、受容者における寛容を誘導するための方法を提供する。この発明は、さらに、受容者に、短い経過の補助低減処置を施すステップ又は短い経過を投与するステップを含む寛容を誘導する方法と、短い経過の免疫抑制剤を投与することによる移植片の許容を延長する方法とを提供する。
【0006】
Bushell, et al.により出願された米国特許出願第20070166307号明細書は、移植片拒絶の抑制を対象とする。簡潔に、CD4、CD8、CD154、LFA−1、CD80、CD86及びICAM−1からなる群より選択される細胞表面抗原に対する抗体、好ましくは抗CD4抗体を、非細胞性タンパク質抗原とともに投与して、動物における制御性Tリンパ球の集団を生成し、制御性Tリンパ球の集団を、動物に非細胞性タンパク質抗原をさらに投与することにより再活性化させ、制御性Tリンパ球の集団が活性化されている間に器官又は組織を移植することにより抑制される動物における移植拒絶が教示されている。制御性T細胞は、T細胞を、CD4、CD8、CD154、LFA−1、CD80、CD86及びICAM−1からなる群より選択される細胞表面抗原に対する抗体と、同種抗原又は非細胞性タンパク質抗原のいずれかを提示する細胞の存在下で培養することにより、エクスビボで生成できる。エクスビボで生成されたTリンパ球は、移植拒絶を克服する代替法として、又はインビボ法と組み合わせて用いることができる。類似のアプローチを、自己免疫状態の治療のために採用できる。
【0007】
アロ拒絶の特異的阻害のための米国特許出願第20050042217号明細書は、Qi, et al.により出願された。この明細書は、同種抗原に対する細胞性免疫応答及び体液性免疫応答をともに特異的に阻害するための方法及び組成物を提供することにより、移植同種移植片の生存の延長及び移植受容者における移植片対宿主疾患の治療における使用を見出している。この方法は、標的細胞特異的抗原に対する宿主免疫応答を、抗原を発現する標的細胞をCD8ポリペプチドとCD8α鎖とともにコードする発現ベクターと接触させることにより阻害することを教示し、ここで、CD8ポリペプチドは、標的細胞により発現され、それにより標的細胞に対する宿主免疫応答が特異的に阻害される。つまり、標的細胞上でのCD8の増加が、免疫応答を特異的に阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5593677号明細書
【特許文献2】米国特許第5601828号明細書
【特許文献3】米国特許第5876708号明細書
【特許文献4】米国特許第6911220号明細書
【特許文献5】米国特許出願第20070166307号明細書
【特許文献6】米国特許出願第20050042217号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、必要とする対象において免疫寛容を誘導するための組成物及び方法を含む。ある実施形態において、組成物及び方法は、対象に、抗原に対するCD8+T細胞免疫寛容を誘導するのに十分な有効量の抗CD8抗体を提供することにより、対象における免疫寛容を誘導するために用いてよい。ある態様において、抗CD8抗体はヒト化されている。別の態様において、抗CD8抗体は、非枯渇性である。この方法は、1又は複数の以下の表現型:グランザイムAの減少、グランザイムBの減少、パーフォリンの減少、IL−2、IFN−γ若しくはこれら両方の分泌量の減少、IL−10の分泌又はそれらの組合せを測定又は決定することにより決定されるサプレッサーT細胞の生成も含んでよい。ある態様において、サプレッサーT細胞の生成は、IL−10を分泌するサプレッサーT細胞の増殖である。別の態様において、抗CD8抗体は、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される。ある例において、抗原は同種である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、単離CD8+T細胞を、1又は複数の以下の表現型:グランザイムAの減少、グランザイムBの減少、パーフォリンの減少、IL−2、IFN−γ若しくはこれら両方の分泌量の減少、IL−10の分泌又はそれらの組合せを特徴するサプレッサーCD8+T細胞の生成を引き起こすのに有効な量の抗CD8非枯渇性遮断抗体で処理してサプレッサーCD8+T細胞を移植患者に導入することにより、移植患者における移植拒絶を、その他の免疫応答を維持しながら低減する組成物及び方法を含む。ある態様において、CD8+T細胞は、GM−CSF及びIFN−α−2bと培養した単球から得られる単離樹状細胞(IFN−DC)とインキュベートされる。別の態様において、樹状細胞は、CD34+ヒト末梢細胞を、GM−CSF、Flt3−L及びTNFαと9〜10日間培養することによりインビトロで生成されたランゲルハンス細胞(LC,Langerhans cell)である。樹状細胞の別の例は、CD1a+CD14− LCである。別の態様において、抗CD8抗体は、ウイルスに対する免疫応答に影響することなく、生着された器官に対する免疫応答を下方制御する。別の態様において、抗CD8抗体で処理されたCD8+T細胞は、高結合活性の抗原特異的ナイーブT細胞である。ある非限定的な例において、抗CD8抗体は、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8、OKT8及び表1に列挙される抗CD8抗体から選択される。インビトロでのT細胞の処理のある態様において、抗CD8抗体は、0.5〜5,000ng/mlでCD8+T細胞培養物中に提供される。インビボでの使用のために、本発明は、個体の重量に依存して血液中の等価な濃度について同様のレベルを達成するために提供され得る。
【0011】
別の態様において、本発明は、末梢血単核細胞を単離するステップと、LC前駆体を末梢血単核細胞から単離するステップと、LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、LCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で共培養するステップと、T細胞、LC又はその両方を、移植の前、移植と同時又は移植の後に患者に再導入するステップも含んでよい。別の態様において、この方法は、移植患者から末梢血単核細胞を単離するステップと、LCを単離し、LC GM−CSF、Flt3−L及びTNFαを培養するステップと、T細胞を移植患者から単離し、LCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で共培養してサプレッサーT細胞を生成するステップと、T細胞、LCS又はその両方を、移植の前、移植と同時又は移植の後に患者に再導入するステップも含んでよい。ある態様において、サプレッサーCD8+T細胞は、2型サイトカイン(IL−4、IL−5及びIL−13)及びIL−10の増加した発現を有する。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、サプレッサーT細胞を作製する方法及びそれにより作製される細胞を含み、該方法は、末梢血単核細胞を単離するステップと、LC前駆体を末梢血単核細胞から単離するステップと、LC前駆体を、GM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、LCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で共培養するステップとを含む。ある態様において、抗CD8抗体は、ウイルスに対する免疫応答に影響することなく、生着された器官に対する免疫応答を下方制御する。ある態様において、CD8+T細胞は、高結合活性の抗原特異的ナイーブT細胞である。ある態様において、ランゲルハンス細胞は、CD1a+CD14− LCである。別の態様において、CD1a+CD14−ランゲルハンス細胞は、細胞選別により得られる。さらに別の態様において、ランゲルハンス細胞は、CD34+HPCをGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと9〜10日間培養することによりインビトロで生成される。ある態様において、抗CD8抗体は、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される。抗CD8抗体は、0.5〜5,000ng/mlで培養物中に提供されてもよい。
【0013】
さらに別の実施形態において、本発明は、末梢血単核細胞を単離し、単球を末梢血単核細胞から単離し、単球を、GM−CSF及びIFN−α−2bと培養して(IFN−DC)を作製し、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、IFN−DCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で共培養することにより、サプレッサーT細胞を作製する方法及びそれにより作製されるサプレッサーT細胞を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態は、末梢血単核細胞を単離し、LC前駆体を末梢血単核細胞から単離し、LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製し、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、LCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で共培養することにより作製されたサプレッサーT細胞を含む組成物を投与することにより、免疫応答に影響を及ぼすための方法である。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態は、末梢血単核細胞を単離するステップと、LC前駆体を末梢血単核細胞から単離するステップと、LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、LCとT細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で共培養するステップとを含む方法により作製されたサプレッサーT細胞を導入することにより、哺乳類における移植された組織の拒絶を阻害する方法である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、移植拒絶を低減する組成物であって、その他の免疫応答を消失させることなく移植拒絶を低減するのに十分な有効量のサプレッサーT細胞を含み、サプレッサーT細胞が、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞を生成する条件下で成熟LCと共培養された単離末梢血T細胞から生成される組成物である。ある態様において、抗CD8抗体は、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される。別の態様において、抗CD8抗体は、0.5〜5,000ng/mlで培養物中に提供される。ある態様において、細胞は凍結しており、使用前に注射用の媒体に再懸濁される。
【0017】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面に従って本発明の詳細な説明について言及する。添付の図面においては次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a−1c】CD8発現の増加が、LCでプライミングされたCD8+T細胞で誘導されるが、IntDCでプライミングされたCD8+T細胞では誘導されないことを示す図である。図1aは、CD34−DCサブセットによりプライミングされたナイーブCD8+T細胞上でのCD8発現レベルのフローサイトメトリー分析を示す。LCでプライミングされたCD8+T細胞上のCD8(黒色の線);IntDCでプライミングされたCD8+T細胞上のCD8(灰色の線)。図1bは、LCによりプライミングされたナイーブMart−1特異的CD8+T細胞であり、これらは、IntDCでプライミングされたMart−1特異的ナイーブCD8+T細胞と比較してより高いレベルのCD8を発現する。図1cは、両方のサブセット、すなわちLC又はIntDCにより活性化されたメモリーインフルエンザ−MP特異的CD8+T細胞が、等しいレベルの表面CD8を発現することを示す。
【図2a−2h】DC媒介自己ナイーブCD8+T細胞プライミングにおけるCD8の役割を示す図である。図2aは、自己Mart−1特異的CD8+T細胞プライミングが、CD8ライゲーションに依存することを示す。図2bは、第1〜9日に、LCでのプライミング中に測定されたMart−1特異的CD8+T細胞のパーセンテージを示す。図2cは、少なくとも3名の異なる提供者を用いた少なくとも3回の独立した実験における3つの異なるクローンが、LCにより誘導されるナイーブ同種増殖の著しい遮断を示したことを示す。T8 Beckmanは上のパネル、RPA−T8は真ん中のパネル、OKT8は下のパネル。図2dは、抗CD8が、自己ナイーブCD8+T細胞のプライミングを、用量依存的な様式で遮断することを示す。50ng/mlで決定したIC50。図2eは、Mart−1特異的CD8T細胞、抗CD8のパーセンテージが、共培養の開始から70時間後ほど遅く加えた場合であっても、抗原特異的CD8T細胞プライミングを効率的に遮断することを示す。図2fは、ペプチド負荷LCにより、低用量の抗CD8Mabの存在下でプライミングされたMART−1特異的CD8+T細胞が、アイソタイプ対照の存在下でプライミングされた抗原特異的CD8+T細胞と比較して、より低い強度で四量体を染色することを示す。図2gは、四量体強度と、用いた抗CD8Mabの用量との相関を示す。図2h。特異的MART−1プライミングは、高濃度のペプチド100uMをDCに負荷した場合、又はペプチドが培養の間中存在していた場合でさえ、抗CD8により遮断された(左のパネル);右のパネル:IFN−DCによりプライミングされ、記載されるペプチド濃度が負荷されたMART−1特異的CD8+T細胞の数。図2iは、抗CD8が、MART−1(上のパネル)又はgp100(下のパネル)特異的CD8+T細胞のIFN−DCによるプライミングを遮断することを示す。
【図3a−3g】CD8ライゲーションが、同種ナイーブCD8+T細胞プライミングにとって重要であることを示す図である。図3aは、抗CD8又はアイソタイプ対照の存在下での同種DCに応答するナイーブCD8+T細胞増殖が、細胞へのチミジンの取り込みにより決定されたことを示す。図3bは、抗CD8又はアイソタイプ対照の存在下での同種LCに応答するナイーブT細胞増殖が、CFSE希釈により決定されたことを示す。上のパネルにCD8+T細胞及び下のパネルにナイーブCD4+T細胞増殖。図3cは、30ng/ml〜3ug/mlの抗CD8の用量力価決定が、CD8T細胞増殖の最大阻害を30ng/mlにて示したことを示す(上のパネル)。CD4+T細胞増殖の阻害は、用いたいずれの濃度の抗CD8Mabでも検出されなかった(下のパネル)。図3d及び3eは、抗CD8Mabが、皮膚由来DCである表皮LC(3d)又は真皮DC(3e)により刺激されたナイーブCD8+T細胞のアロ増殖を妨げ、50%阻害が30ng/mlにて検出されたことを示す。図3f及び3gは、ペプチド負荷LC及びナイーブCD8+T細胞が、共培養の第9日に明確なクラスタを創出するが(3g)、抗CD8の存在下では、クラスタの形成が阻害されることを示す(3f)。倍率20×上のパネル、40×下のパネル。
【図4a−4f】抗CD8が、ウイルス又は同種抗原に対する2次CD8+T細胞応答を遮断しないことを示す図である。図4aは、3μg/mlの抗CD8Mab(左のパネル)又はアイソタイプ適合対照(右のパネル)の存在下でHLA−A201提供者からのインフルエンザMPペプチド負荷LCを用いる活性化の9日後に、インフルエンザMP−HLA−A201四量体を用いて分析したインフルエンザMP特異的CD8+T細胞の頻度を示す。図4bは、抗CD8Mabが、LCにより誘導された2次インフルエンザ−Mp特異的応答を、インフルエンザ−MP−HLA−A201四量体により分析されるように、用いたMabのいずれの濃度でも遮断しないことを示す。図4cは、3μg/mlの抗CD8Mab(左のパネル)又はアイソタイプ適合対照(右のパネル)の存在下でHLA−A201提供者からのインフルエンザMPペプチド負荷IntDCを用いる活性化の9日後に、インフルエンザMP−HLA−A201四量体を用いて分析したインフルエンザMP特異的CD8+T細胞の頻度を示す。図4dは、抗CD8Mabが、IntDCにより誘導された2次インフルエンザ−Mp特異的応答を、インフルエンザ−MP−HLA−A201四量体により分析されるように、用いたMabのいずれの濃度でも遮断しないことを示す。図4eは、抗CD8による阻害の欠如が、特定の抗CD8抗体クローンに限定されないことを示す。なぜなら、2つの異なるクローンであるT8 Beckman(左のパネル)及びRPA−T8(右のパネル)が、ペプチド負荷LCにより誘導されるインフルエンザ−MP特異的CD8+T細胞増殖を、3ug/mlの記載される抗CD8クローン又はアイソタイプ適合対照の存在下での培養の9日後に阻害しないことを示したからである。図5fは、同種抗原に対するメモリー応答が、抗CD8により遮断されないことを示す。2次的同種共培養物のチミジン取り込みは、同種LC(左のパネル)又はIntDC(右のパネル)が、培養物中に抗CD8Mab又はアイソタイプ適合対照のいずれが存在していても、アロ特異的2次応答を誘導するのに効果的であったことを示す。
【図5a−5b】抗CD8mAbの存在下でプライミングされたCD8+T細胞の機能分析を示す図である。図5aにおいて、抗CD8mAbの存在下でプライミングされた同種ナイーブCD8+T細胞を、6日後に、フローサイトメトリーにより、活性化及びエフェクター分子の発現について分析した。図5bにおいて、抗CD8Mabの存在下でプライミングされた同種ナイーブCD8+T細胞は、2型及び制御性のサイトカインを分泌する。ナイーブCD8+T細胞を、LC上で、抗CD8の存在下又は非存在下で培養した。6日後に、増殖した(CFSElow)細胞を選別し、抗CD3及び抗CD28ビーズを用いて24時間再刺激し、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びIL−13を、luminexマルチプレックスビーズアッセイにおいて測定した。提示するデータは、3回の独立する研究からである。
【図6a−6b】抗CD8の存在下でプライミングされたCD8+T細胞が、サプレッサーT細胞であることを示す図である。図6aは、1次T細胞応答を抑制するプライミングされたT細胞の能力が、ナイーブCD8+T細胞を、同種DCを用いて、抗CD8又はアイソタイプ対照の存在下でLCによりインビトロにてプライミングされた減少する数の同系T細胞の存在下で刺激することにより、試験されたことを示す。[H]チミジンの取り込みを、6日後に評価した。結果は、3回の独立する研究の代表である。図6bは、ナイーブCD8T細胞(提供者A)が、提供者Bからの同種LCを用いて、抗CD8又はアイソタイプ対照の存在下で提供者CからのLCに対してインビトロでプライミングされたCD8Tr細胞の存在下で刺激されたことを示す。結果は、3回の独立する研究の代表である。
【図7a−7b】抗CD8処置の効果が、インビボでヒト−マウスモデルにおける移植片対宿主を妨げることを示す図である。図7aは、同種CD8+T細胞と抗CD8MAb又はアイソタイプ対照とを注射されたヒト化マウスを用いた結果を示す。2つの研究のうちの1つにおいて、抗CD40を注射して、活性化を誘導した。アイソタイプ対照で処置したマウスは、目の周囲の紅斑(示される)、体重減少及び脱力の慢性移植片対宿主疾患の臨床症状を発症したが、抗CD8で処置したマウスは発症しなかった。図7bは、マウスからの結果を採集し、BM及び血液からのCD8T細胞を、活性化マーカーであるCD25及びCD103の発現について分析したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の種々の実施形態を作製して用いることについて以下に詳細に論じるが、本発明は、広い多様性の具体的な状況において具体化できる多くの応用可能な発明の概念を提供することが認識されるべきである。本明細書において論じる具体的な実施形態は、本発明を作製し、用いるための具体的な様式の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものでない。
【0020】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語を以下において定義する。本明細書において定義される用語は、本発明に関連する領域における当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」のような用語は、単数形の物体にのみ言及することを意図しないが、全般的なクラスを含むことを意図し、その具体例は、例示のために用いられ得る。本明細書における術語は、本発明の具体的な実施形態を記載するために用いられるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概説されることを除いて、本発明を限定しない。
【0021】
樹状細胞(DC,Dendritic cell)は、Ag特異的免疫の誘導を担う効力のあるAPCである(Banchereau, J. & Steinman, R. M. Dendritic cells and the control of immunity. Nature 392, 245-52 (1998))。異なる組織に存在するDCのいくつかの集団が存在し、異なる機能的属性を有する(Banchereau, J. & Steinman, R. M. Dendritic cells and the control of immunity. Nature 392, 245-52 (1998))。健康な皮膚は、少なくとも2つのDC集団、表皮においてランゲルハンス細胞(LC)及び真皮において間質DCを有する。これらのDCは、不活性化されたときに末梢寛容のために、そして活性化されたときに免疫のために流入領域リンパ器官に遊走する。その他のDCは、2次リンパ器官に存在し、血液中を循環することが見出されている。DC生物学の理解における多くの進歩が、インビトロで生成したDCを用いて行われた研究に由来した。特に、TNFa及びGM−CSFの存在下でのCD34+造血前駆細胞(HPC,hematopoietic progenitor cell)の培養物は、間質DC及びランゲルハンス細胞をともに生じさせる(Caux, C. et al. CD34+ hematopoietic progenitors from human cord blood differentiate along two independent dendritic cell pathways in response to GM-CSF+TNF alpha. J Exp Med 184, 695-706 (1996))。本発明者らは、IntDCではなくLCが、ナイーブCD8+T細胞のプライミングにおいて特に効果的であることを示した。また、これらのサブセットはともに、メモリー応答の誘導において等しく効果的であり、両方のサブセットにより活性化されるCD8+T細胞は、CD8分子の等しい発現を示す。
【0022】
CD8は、MHCクラスI分子と複合体を形成したペプチド抗原(pMHCI)のTCR認識のための補助受容体として機能する表面糖タンパク質である。これは、ααホモ二量体又はαβヘテロ二量体のいずれかとして発現され(Zamoyska, R. The CD8 coreceptor revisited: one chain good, two chains better. Immunity 1, 243-6 (1994))、両方の鎖は単一細胞外Igスーパーファミリー(IgSF)Vドメイン、膜近位ヒンジ領域、膜貫通ドメイン及び細胞質側末端を発現する(Zamoyska, R. The CD8 coreceptor revisited: one chain good, two chains better. Immunity 1, 243-6 (1994))。CD8は、MHCクラスI分子のβm並びにα2及びα3ドメインと、そのβ鎖及び細胞外IgSF Vドメイン内の相補性決定領域(CDR,complementary determining region)を用いて相互作用する。この会合は、そのクラスI標的とのT細胞受容体の接着/結合活性を増加させる。さらに、CD8α鎖会合チロシンプロテインキナーゼp56lckにより媒介される内部シグナル伝達カスケードは(Veillette, A., Bookman, M. A., Horak, E. M. & Bolen, J. B. The CD4 and CD8 T cell surface antigens are associated with the internal membrane tyrosine-protein kinase p56lck. Cell 55, 301-8 (1988)、Chalupny, N. J., Ledbetter, J. A. & Kavathas, P. Association of CD8 with p56lck is required for early T cell signalling events. Embo J 10, 1201-7 (1991))、T細胞活性化を導く。Lckは、ナイーブCD8+T細胞の活性化及び増殖のために必要である。しかし、その発現は、インビボ又はインビトロでの2次抗原刺激に対するメモリーCD8+T細胞の応答のために必須ではない(Bachmann, M. F. et al. Developmental regulation of Lck targeting to the CD8 coreceptor controls signaling in naive and memory T cells. J Exp Med 189, 1521-30 (1999)、Tewari, K., Walent, J., Svaren, J., Zamoyska, R. & Suresh, M. Differential requirement for Lck during primary and memory CD8+ T cell responses. Proc Natl Acad Sci U S A 103, 16388-93 (2006))。CD8α又はCD8β遺伝子標的マウスのいずれかにより示されるように、CD8は、MHCクラスI拘束性Tリンパ球の成熟及び機能において重要な役割を有する(Fung-Leung, W. P. et al. The lack of CD8 alpha cytoplasmic domain resulted in a dramatic decrease in efficiency in thymic maturation but only a moderate reduction in cytotoxic function of CD8+ T lymphocytes. Eur J Immunol 23, 2834-40 (1993)、Nakayama, K. et al. Requirement for CD8 beta chain in positive selection of CD8-lineage T cells. Science 263, 1131-3 (1994))。繰り返し細菌感染に罹患している1名の患者は、CD8α遺伝子における単一変異によるCD8欠損を示すことが見出された。CD8の欠如は、CD8T細胞分化系列決定又は末梢細胞溶解機能のいずれにとっても必須でないようであった(de la Calle-Martin, O. et al. Familial CD8 deficiency due to a mutation in the CD8 alpha gene. J Clin Invest 108, 117-23 (2001))。
【0023】
2D2;4D12.1;7B12 1G11;8E−1.7;8G5;14;21Thy;51.1;66.2;109−2D4;138−17;143−44;278F24;302F27;AICD8.1;抗T8;B9.1.1;B9.2.4;B9.3.1;B9.4.1;B9.7.6;B9.8.6;B9.11;B9.11.10;BE48;BL15;BL−TS8;BMAC8;BU88;BW135/80;C1−11G3;C10;C12/D3;CD8−4C9;CLB−T8/1;CTAG−CD8,3B5;F80−1D4D11;F101−87(S−T8a);G10−1;G10−1.1;HI208;HI209;HI212;HIT8a;HIT8b;HIT8d;ICO−31;ICO−122;IP48;ITI−5C2;ITM8−1;JML−H7;JML−H8;L2;L533;Leu−2a;LT8;LY17.2E7;LY19.3B2;M236;M−T122;M−T415;M−T805;M−T806;M−T807;M−T808;M−T809;M−T1014;MCD8;MEM−31;MEM−146;NU−Ts/c;OKT8;OKT8f;P218;RPA−T8;SM4;T8;T8/2T8−19;T8/2T8−2A1;T8/2T8−1B5;T8/2T8−1C1;T8/7Pt3F9;T8/21thy2D3;T8/21thy;T8/TPE3FP;T8b;T41D8;T811;Tu68;Tu102;UCHT4;VIT8;VIT8b;WuT8−1;X107;YTC141.1;及び/又はYTC182.20を含むヒト白血球分化抗原(Human Leucocyte Differentiation Antigens,HLDA)についての国際ワークショップの一部分のもののような、モノクローナル抗体を含むいくつかの公知の抗CD8抗体のいずれも、本発明に関連して用いてよい。
【0024】
【表1】



【0025】
ヒト化抗CD8抗体の限定しない例は、cM−T807(Centocor社、MA)及びTRX2(Oxford Therapeutic Antibody Centre、Oxford University、Oxford、United Kingdom)を含む。
【0026】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的免疫応答を開始して極性化する。ヒト骨髄細胞(mDC,myeloid DC)は、ランゲルハンス細胞及びヒトの皮膚に存在する間質(真皮)DCのような異なるサブセットを含む。我々は、間質DCと比較した場合に、ランゲルハンス細胞が、同種及び自己の抗原に対してナイーブCD8+T細胞をプライミングすることについて特に強力であるが、これらのmDCサブセットはともに、2次応答の誘導においては等しく有効であったことを報告した。本研究は、CD8+T細胞プライミングの誘導におけるLCの優れた機能を説明するであろうパラメータを分析するために行った。LCによりプライミングされたCD8+T細胞は、IntDCによりプライミングされたCD8+T細胞と比較して、より高いレベルのCD8を発現するが、両方のサブセットにより誘導される抗原特異的メモリーCD8+T細胞は、等しいレベルのCD8を提示する。
【0027】
本明細書において、抗CD8モノクローナル抗体が、自己及び同種抗原CTLのDCにより媒介されるインビトロプライミングを遮断することを示す。抗CD8の存在下でプライミングされるCD8+T細胞は、標的を死滅させることができず、2型(IL−4、IL−5、IL−13)及び制御性(IL−10)のサイトカインを産生した。さらに、抗CD8mAbの存在下でプライミングされたCD8T細胞は、アロ反応を阻害でき、よって、サプレッサーCD8+T細胞として作用した。しかし、インフルエンザ及びCMVに対するもののような2次CTL応答の誘導は、妨害されなかった。同様に、抗CD8mAbは、CD4+T細胞応答を変化させなかった。ヒト−マウスモデル細胞集団におけるアロ反応性CD8+T細胞のインビボでの活性化のための抗CD8mAbの投与は、同種CD8T細胞の注射により誘導される移植片対宿主疾患の発生を妨げた。つまり、抗CD8抗体療法は、CD8+T細胞により媒介される移植片拒絶を、抗ウイルス保護応答を混乱させることなく予防し、よって現在の免疫抑制治療を超える著しい進歩を示すかもしれない。本出願は、CD8ライゲーションが、T細胞プライミングの阻害及び制御性T細胞の生成をもたらすことを示した。
【0028】
本発明者らは、LCが、間質DCと比較してナイーブCD8T細胞のプライミングにおいて非常に効果があるが、これらのmDCサブセットはともに、2次応答の誘導において等しく有効であることを示した。本研究は、CD8+T細胞プライミングの誘導におけるLCの優れた機能を説明するであろうパラメータを分析するために行った。本明細書において、CD8ライゲーションが、T細胞プライミングの阻害をもたらすだけでなく、制御性T細胞の生成も引き起こすことを示す。
【0029】
DC精製及び培養。CD34由来DCは、G−CSF動員性CD34−HPCを0.5×10/mlにて25cmフラスコ中で、5%自己血清、50μM 2−β−メルカプトエタノール、1% L−グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン並びにサイトカイン;GM−CSF(50ng/ml;Immunex Corp.社製)、FLT3−L(100 ng/ml;R&D社製)及びTNF−α(10ng/ml;R&D社製)を含有するYssel培地(Irvine Scientific社製、CA又はGemini BioProducts社製)中で培養することにより生成した。培養物は、37℃にて5%COを用いて湿潤環境中でインキュベートした。細胞を、サイトカインを補った新鮮な培地に培養第5日に移し、第9又は10日に採集した。CD1aCD14−LC及びCD1aCD14−intDCを選別した。純度は、日常的に、95〜99%であった。
【0030】
CD14単球(純度90%を超える)(1×10細胞/ml)を、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補ったCellgenix培地(Cellgenix社製)並びに100ng/mlのGM−CSF(Berlex社製)及び500U/mlのIFN−α−2b(Schering Corp社製)の中で37℃及び5%COにて培養することにより、IFN由来DC(IFN−DC)を生成し、新鮮な培地及びサイトカインを第1日に加え、DCを第3日に採集した。
【0031】
LC及び真皮IntDCを、正常ヒト皮膚検体から精製した。検体を、細菌プロテアーゼ2型ジスパーゼ(Roche社製)、抗生物質/抗真菌物質(Gibco社製)中で4℃にて18時間、次いで37℃にて2時間インキュベートした。表皮及び真皮のシートを次いで分離し、小片(およそ1〜10mm)に切断し、10%胎児ウシ血清(FBS)を補ったRPMI 1640(Gibco社製)中に入れた。2日後に、培地中に遊走した細胞を回収し、Ficoll-ジアトリゾエート勾配、1.077g/dl(リンパ球分離用培地(LSM,Lymphocyte Separation Medium)、MP Biomedicals社製)を用いてさらに濃縮した。DCを、抗CD1a FITC(OKT6;DAKO社製)mAb及び抗CD14−APC(LeuM3;Invitrogen社製)mAbで染色した後に細胞選別により精製した。
【0032】
T細胞単離。細胞を、成人ボランティア提供者からの白血球除去により得られた凍結PBMCから単離した。ナイーブCD8T細胞を、CD4、CD56、CD16及びCD19磁気細胞除去(Miltenyi社製)の後にCD45RACCR7HLA−DRCD8細胞として選別した。CD8T細胞を除去し、得られる細胞をCD4CCR7CD45RACD4CD16CD19CD56として選別した以外は同様の方法で、ナイーブCD4T細胞を得た。再生応答のために、CD8T細胞を、濃縮集団からポジティブ選択した。
【0033】
DC/CD8T細胞共培養。自己CD8T細胞−DC共培養。1次応答評価のために、ナイーブCD8T細胞(1×10細胞/ウェル)を、HLA−A201拘束性MART−1(MART−1M26〜35、ELAGIGILTV)又はgp100(gp100M209〜217、IMDQVPFSV)ペプチド(3μM)と3時間予めインキュベートした自己mDC(5×10細胞/ウェル)で刺激した。細胞を9日間、24ウェルプレートにおいて、10U/mlのIL−7(R&D社製)及び100ng/mlのCD40L(R&D社製)を補ったYssel完全培地中で培養した。IL−2(R&D社製)を10U/mlにて第3日に加えた。抗CD8又はアイソタイプ適合対照は、そうでないと記載しない限り第0日に加えた。
【0034】
ペプチド特異的CD8T細胞の増殖は、培養期間の最後にてペプチド/HLA−A201四量体(Beckman Coulter社製)に結合する細胞の数を計数することにより決定した。再生応答の評価のために、全CD8T細胞(1×10細胞/ml)を、HLA−A201拘束性インフルエンザ−MPペプチド(GILGFVFTL)を負荷した自己(5×10細胞/ml)mDCサブセットで刺激した。抗CD8又はアイソタイプ適合対照の存在下で。インフルエンザ−MP特異的CD8T細胞の頻度を、インフルエンザ−MP/HLA−A201四量体を用いることにより決定した。
【0035】
同種CD8T細胞培養。ナイーブCD8T細胞の同種増殖を、[H]−チミジン取り込み又はCFSE希釈により評価した。ナイーブT細胞(1×10細胞/ウェル)を、丸底96ウェルプレートにおいて、2.5×10(そうでないと記載しない限り)の同種mDCサブセットを加えた10%熱失活プールABヒト血清を補ったYssel培地(Yssel完全培地)、IL−7及びIL−2(10IU/ml、R&D社製)中で培養した。CD40Lを用いて、DCを活性化した。5日後に、細胞を18時間、1μCi[H]−チミジンを用いてパルスし、トレーサーの取り込みを、継続中の増殖の指標として決定した。
【0036】
CFSE希釈による増殖の評価のために、細胞を、0.5μMのCFSEで、製造者の手順に従って標識した。7日後に、細胞を採集し、増殖のレベルをフローサイトメトリーにより分析した。さらに、プライミングされたCD8T細胞の質を、以下に記載するようにして評価した。
【0037】
記載する場合、CD8に対する遮断抗体(クローンRPA−T8、OKT6、BD又はT8 Beckman Coulter社製)又はアイソタイプ対照抗体を、共培養物に加えた。
【0038】
2次同種CD8+T細胞培養のために、5×10のナイーブCD8T細胞を、2.5×10のCD40リガンド活性化DCと、丸底96ウェルプレートにおいて、IL−7及びIL−2を加えて培養した。6日後に、細胞を、1次培養に用いたのと同じ提供者からのDCを用いて再刺激した。抗CD8抗体又はアイソタイプ適合対照を、培養物に3日間加え、その後、細胞増殖を、[H]チミジンの取り込みにより評価した。
【0039】
サイトカイン産生。CD8+T細胞サイトカイン産生評価のために、増殖したCD8T細胞(FSChighCD11c又はCFSElowCD11c)を第7日に、1次同種培養物からの細胞選別により単離し、抗CD3及び抗CD28被覆マイクロビーズを用いて1晩再刺激した。上清中のサイトカインを、マルチプレックスビーズベースのサイトカインアッセイにより評価した。
【0040】
CD8Tサプレッサーアッセイ。CD8Tサプレッサー機能アッセイのために、増殖したCD8T細胞(FSChighCD11c又はCFSElowCD11c)を第7日に、1次同種培養物からの細胞選別により単離し、段階的な数で、5×10ナイーブCD8T細胞とCD40L活性化2.5×10同種DC(LC)との共培養物に加えた。培養5日後に、1μ/Ciの[H]チミジンをそれぞれのウェルに加え、細胞への取り込みを18時間後に決定した。
【0041】
T細胞タンパク質及び遺伝子分析。エフェクター分子の染色のために、プライミングされたCD8T細胞を固定し、透過性にし、PE標識抗グランザイムA、グランザイムB及びパーフォリン(BD Biosciences社製)で染色した。
【0042】
CD8T細胞表現型分析のために、細胞を、全てBD biosciences社からのCD25(M−A251)、CD28(CD28.2)、CCR7、CD103(Ber−ACT8)の表面発現について染色した。
【0043】
マイクロアレイ遺伝子分析のために、1次同種培養物から増殖CD8T細胞(CFSE)を選別し、抗CD3及び抗CD28被覆マイクロビーズで再刺激した。
【0044】
インビボでの移植片対宿主疾患に対する抗CD8治療の評価。動員性末梢血(mobilized peripheral blood,MPB)CD34細胞(動物あたり3〜6×10のMPB CD34細胞)を、致死量以下で照射した(137Csγ照射による300センチグレイ)NOD/SCIDマウスの別々の実験的コホートに、以前に記載されたようにして、移植の10〜12週間後に静脈内注入し、マウスに、同種提供者からの10Mの選別したナイーブCD8T細胞を皮下注射した。マウスを、IgG1対照mAb又は抗CD8mAb(RPA−T8、BD biosciences社製、第0日に0.75mg及び第3日に0.25mg)を用いて皮下処置した。2回の実験のうちの一方において、抗CD40モノクローナル抗体(MAB89、Schering-Plough社製)を、同種移植の日に腹腔内注射して、DCを活性化した。
【0045】
マウスを、生存、並びに下痢、体重減少及びひだ状の皮膚により発現されるGVHDの臨床徴候について毎日観察した。症状が現れた場合に、マウスを採集した。ヒトCD8T細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0046】
インビトロ生成LCを用いるナイーブCD8T細胞のインビトロプライミング。HLA−A201LC及びIntDCを、CD34HPCを、GM−CSF、Flt3−L及びTNFαの存在下で9〜10日間培養することによりインビトロで生成した。細胞を、CD1aCD14LC(LC)とCD1aCD14IntDC(IntDC)とに選別した。1次応答のために、3μMのHLA−A201拘束性黒色腫ペプチドMART−1(26〜35)を負荷したDCサブセットを、自己ナイーブCD8T細胞と9〜10日間培養した。培養の最後での抗原特異的CD8T細胞の頻度を、特異的ペプチド−MHC四量体を用いて測定した。
【0047】
図1a及び図1bに示すように、LCによりプライミングされたナイーブCD8T細胞は、IntDCでプライミングされたCD8T細胞と比較して、表面CD8発現を上方制御する。メモリー応答のために、DCサブセットに、1μMのHLA−A201拘束性インフルエンザ基質ペプチドM1を負荷した。DCを、選別した自己メモリーCD8T細胞と培養した。対照的に、両方のサブセットは、ウイルス抗原に対する2次応答の誘導について等しく効果的であり、いずれのサブセットにより活性化されたCD8T細胞も、等しいレベルの表面CD8を発現する(図1c)。
【0048】
抗CD8抗体は、抗原特異的CD8T細胞のプライミングを妨げる。抗CD8mAb RPA−T8を加えることにより、MART−1によりパルスされたLCによるMART−1特異的CD8T細胞の増殖が効果的に遮断された(図2a)。動態分析は、抗CD8mAbを培養物に加えた場合に、第1日〜第9日に、ほとんど抗原特異的CD8T細胞増殖が観察されないことを示す(図2b)。CD8T細胞プライミングの阻害は、0.1μg/mlの抗体が抗原特異的CD8T細胞の増殖のほぼ完全な阻害をもたらし、50%阻害濃度(IC50,50% Inhibitory Concentration)が50〜500ng/mlの範囲であったので、非常に効果的であった(図2c)。3つの試験した抗CD8抗体(T8、RPA−T8及びOKT8)のうち3つが、T細胞プライミングを阻害した(図2d)。
【0049】
70時間目まで培養物への抗CD8mAbの添加を遅らせてもまだ、黒色腫特異的CD8T細胞プライミングの75%が阻害された(図2e)。MART−1ペプチド負荷LCとナイーブCD8T細胞を低濃度の抗CD8の存在下で培養すると、1次対照培養物と比較して、MART−1特異的CD8T細胞の数が減少した(図2f)。さらに、抗CD8mAbに曝露したCD8T細胞は、対照抗体に曝露したものと比較して、より低いMART−1 MHC−四量体強度染色を示した。培養物に加える抗CD8mAbが多いほど、抗原特異的T細胞上で観察される四量体強度結合がより小さかった(図2g)。
【0050】
抗CD8mAbは、単球をGM−CSF及びIFNと培養することにより生成するDC(IFN−DC)により誘導されるMART−1及びgp100特異的CD8T細胞のプライミングを遮断できたが(図2h)、このことは、阻害効果が、DCの供給源にもプライミングのために選択された抗原にも依存しないことを示す。さらに、抗CD8mAbは、高濃度のペプチドをDCに負荷した場合又は抗原が培養の間中存在した場合でさえもプライミングを遮断できた(図2i)。これらのデータをまとめると、遮断CD8が、高結合活性抗原特異的ナイーブT細胞のDCにより誘導されるプライミングを妨げることを示す。
【0051】
抗CD8抗体は、DCにより媒介されるCD8T細胞のアロ増殖を阻害する。抗CD8mAb又はアイソタイプ対照を、ナイーブCD8T細胞の培養物に、段階的な数のインビトロ生成同種LCとともに加えた。[H]チミジン取り込みアッセイを用いる図3aに示すように、LCにより誘導される同種ナイーブCD8T細胞の増殖は、抗CD8mAbにより阻害された。LCと同種ナイーブCD4及びCD8T細胞との共培養物に対して行ったCFSE希釈アッセイにより、CD8T細胞増殖の阻害を確認した(図3b上のパネル)。これはさらに、同種CD4T細胞の増殖が、抗CD8抗体により影響されなかったことを明らかにした(図3b下のパネル)。実際に、CD8T細胞増殖が30ng/mlにて阻害されたが(図3c上のパネル)、CD4T細胞は、用いた抗CD8mAbのいずれの濃度についても(0〜3μg/ml)増殖の低下を示さなかった(図3c下のパネル)。ヒト皮膚から単離された真皮DC又はLCにより誘導される同種T細胞の活発な増殖も、抗CD8mAbにより遮断された(図3d及びe)。抗CD8mAbの存在下では、CD8T細胞とDCの間でわずかにまばらな小さいクラスタのみが形成された(図3f)。しかし、抗CD8mAbを含まない培養物では、活発な増殖が、DC及びCD8T細胞の多くの大きいクラスタを伴った(図3g)。つまり、抗CD8抗体は、同種CD8T細胞のDCにより媒介されるプライミングを阻害できる。
【0052】
抗CD8は、自己又は同種抗原に対する2次応答を遮断しない。メモリーCD8T細胞応答が抗CD8mAbによっても阻害されるかを調べるために、免疫優性HLA−A2結合インフルエンザ基質タンパク質M1ペプチド(57〜68)を負荷したHLA−A2LC又はIntDCを、CD8T細胞並びに抗CD8mAb及びその適切な対照とともに培養した。両方のDCサブセットについて、四量体染色により測定される抗原特異的CD8T細胞の数は、抗CD8mAb又はアイソタイプ対照と同等であった(図4a及びc)。抗CD8mAbの濃度が2.5μg/mlほど高くても、阻害は検出されなかった(図4b及びd)。試験した2つの他の抗CD8mAb(T8 Beckman、RPA−T8 BD)は、メモリー細胞のインフルエンザペプチドにより誘導される活性化を阻害しなかった(図4e)。
【0053】
メモリー同種CD8T細胞応答が抗CD8mAbにより影響されるかを証明するために、ナイーブCD8T細胞を、同種LC又はIntDCにより7日間プライミングし、T細胞を3日間再刺激した。図4fに示すように、抗CD8mAbは、LC又はIntDCのいずれを用いても、元来の同種抗原でのCD8T細胞再刺激を阻害できなかった。つまり、これらのデータは、メモリーCD8T細胞応答がCD8に依存しないことを証明する。
【0054】
CD8T細胞の抗CD8mAbでのプライミングは、低レベルの細胞溶解分子を有する2型T細胞を生じる。図5に示すように、同種DCを用いるプライミングの間に抗CD8mAbに曝露したCD8T細胞は、低レベルのCD25、ICOS、CD27、CD28と、グランザイムA及びB並びにパーフォリンのより低い細胞内発現とを発現する(図5a)。LC及びアイソタイプ対照で7日間プライミングされたCD8T細胞は、抗CD3と抗CD28とを用いる24時間の再刺激の後に、IFN−γ(2,000〜6,000pg/ml)及びIL−2(1,000〜6000pg/ml)、並びに低レベルのIL−4、IL−5、IL−13及びIL−10を産生した。LC及び抗CD8でプライミングされたCD8T細胞は、同量のIFN−γ及びIL−2を分泌したが、高い量のIL−4(100〜600pg/ml)、IL−5(500〜2500pg/ml)、IL−13(1000〜7000pg/ml)及びIL−10(70〜100pg/ml)を分泌した(図5b)。
【0055】
まとめると、データは、抗CD8mAbが、活性化されたCD8T細胞の表現型を変更して、2型サイトカインを分泌し、低レベルの細胞傷害性分子を発現する細胞を生じることを示す。
【0056】
抗CD8の存在下でプライミングされたアロ反応性CD8T細胞は、ナイーブCD8T細胞応答を強く抑制する。抗CD8mAbの存在下でプライミングされたCD8T細胞がサプレッサー機能を示すかを決定するために、CFSE標識ナイーブCD8T細胞(提供者A)を、同種LC(提供者B)と、抗CD8mAb又はアイソタイプ適合対照とともに7日間培養した。活性化されたCD8T細胞(CFSE−CD11c−)を選別し、段階的な数(3〜300)にて、50,000の提供者Aからの自己ナイーブCD8T細胞と2500の提供者Bからの同種LCとの共培養物に加えた。抗CD8mAbを用いてプライミングされたCD8T細胞は、ナイーブCD8T細胞の同種LCへの増殖を用量依存的な様式で強く阻害し、100ほどの少ない細胞が80%程度アロ反応を抑制し、10の細胞が50%遮断した。しかし、アイソタイプ対照でプライミングされたCD8T細胞は、阻害を示さなかった(図6a)。阻害は、抗CD8mAb処理CD8T細胞にそれらのアロ特異的DCを加えたときに特に著しく、抑制の強さは、提供者CからのDCを用いると、より低かった(図6b)。
【0057】
抗CD8mAbは、同種CD8T細胞活性化及び移植片対宿主疾患をインビボで阻害する。抗CD8抗体を用いてインビトロで観察されたCD8T細胞プライミングの強い阻害に導かれて、我々は、このことが、pDC、mDC及びB細胞に分化するがT細胞に分化しないヒトCD34HPCを移植された免疫不全NOD−SCIDマウスにおいてインビボでも発生するかを調べた。これらのヒト化マウスに、同種提供者からの20×10の精製CD8T細胞を、0.75mgの抗CD8mAb又はアイソタイプ適合対照抗体のいずれかとともに、皮下にて養子移入した。さらに0.25mgの抗体を第3日に注射した。2回の実験のうちの一方において、抗CD40抗体(MAB89、Schering Plough社製、100μg)を、DC活性化のために腹腔内注射した。マウスを、疾病の徴候について定期的に調べた。CD8T細胞の移入の10週間後に、アイソタイプ適合対照抗体を受容したマウスは、目の周囲の発疹、体重減少及び脱力の慢性移植片対宿主疾患の臨床症状を発生した(図7a)。しかし、抗CD8抗体での処置は、病原性T細胞の活性化及び増殖と臨床症状の発生とをともに完全に阻害した(図7)。アイソタイプ対照処置マウスの骨髄からのCD8T細胞はCD103を上方制御したが、抗CD8mAbで処置したマウスは上方制御しなかった(図7b)。
【0058】
まとめると、これらのデータは、抗CD8mAb療法が、ヒト免疫系を有する免疫不全マウスにおいて移植片対宿主疾患を媒介するCD8T細胞の同種1次活性化を妨げることにおいて効果的であることを示す。
【0059】
本研究は、なぜLCが間質DCよりも、これらのmDCサブセットがともに2次CD8T細胞応答の誘導において等しく効果的であるのに、ナイーブCD8T細胞のプライミングにおいて、より効力があるのかを理解するために行った。抗CD8mAbをナイーブCD8T細胞とDCとの共培養物に加えた結果から、いくつかの結論が導かれた。第1に、ナイーブCD8T細胞のプライミングは、非常に低い濃度の抗体で著しく阻害されることが見出されたが、メモリー細胞の活性化は、高濃度の抗体にさえ影響されなかった。第2に、残存増殖細胞は、エフェクター経路よりもむしろサプレッサー経路に沿って分化した。
【0060】
これらのデータは、試験した抗CD8モノクローナル抗体の全体が、非常に低い濃度にて、自己又は同種MHCの状況においてインビトロで提示される抗原に対するCD8T細胞のDCにより媒介される増殖を遮断することを証明した。しかし、ウイルス又は同種抗原に対する再生応答は、抗CD8mAbにより阻害されなかった。これらのデータは、抗CD8抗体がナイーブCD8T細胞の増殖を遮断できるが、エフェクター及びメモリー細胞のものは遮断できないことを示す、マウスリンパ球を用いたインビトロ研究についての以前の報告と一致する(Bachmann, M. F. et al. Developmental regulation of Lck targeting to the CD8 coreceptor controls signaling in naive and memory T cells. J Exp Med 189, 1521-30 (1999))。アロ反応性ナイーブCD8T細胞の活性化も遮断した抗CD8は、ヒト化マウスモデルにおいてインビボでも観察され、移植片対宿主応答の除去をもたらした。おそらく最も著しい観察は、抗CD8抗体を加えることが、応答の型をエフェクター応答からサプレッサー応答へ質的に改変したことである。生成されたサプレッサー細胞は、発現が低下したグランザイムA及びB並びにパーフォリンと、低いCD28との独特の表現型を発現する。さらに、これらの細胞は、発現が増加した2型サイトカイン(IL−4、IL−5及びIL−13)と、発現が増加したIL−10との変更された表現型パターンを発現する。さらに、これらの細胞は、100のこれらの細胞が80%のアロ反応を、特に同族APCにより活性化されたときに遮断できるという効力のある抑制能力を発現する。興味深いことに、この表現型は、我々が他の所で報告するようなCD14IntDC上で培養されたCD8T細胞の表現型と同等である。
【0061】
これらの観察は、臨床的に重要である。なぜなら、T細胞は、同種移植片拒絶の主なメディエーターであるからである(Hall, B. M. Cells mediating allograft rejection. Transplantation 51, 1141-51 (1991)、Rosenberg, A. S. & Singer, A. Cellular basis of skin allograft rejection: an in vivo model of immune-mediated tissue destruction. Annu Rev Immunol 10, 333-58 (1992))。同種移植片受容者におけるT細胞の最初の活性化を特異的に遮断する治療を設計することに対して、多くの努力が向けられてきた。CD4T細胞依存性経路及びCD8T細胞依存性経路はともに、同種移植片拒絶を開始することが示されている。ラパマイシン(Slavik, J. M., Lim, D. G., Burakoff, S. J. & Hafler, D. A. Rapamycin-resistant proliferation of CD8+ T cells correlates with p27kip1 down-regulation and bcl-xL induction, and is prevented by an inhibitor of phosphoinositide 3-kinase activity. J Biol Chem 279, 910-9 (2004))、シクロスポリン(Boleslawski, E. et al. Defective inhibition of peripheral CD8+ T cell IL-2 production by anti-calcineurin drugs during acute liver allograft rejection. Transplantation 77, 1815-20 (2004))、抗CD4mAb(Jones, N. D. et al. CD40-CD40 ligand-independent activation of CD8+ T cells can trigger allograft rejection. J Immunol 165, 1111-8 (2000))、抗CD154mAb(Guo, Z. et al. CD8 T cell-mediated rejection of intestinal allografts is resistant to inhibition of the CD40/CD154 costimulatory pathway. Transplantation 71, 1351-4 (2001))及びCTLA4−Ig(Newell, K. A. et al. Cutting edge: blockade of the CD28/B7 costimulatory pathway inhibits intestinal allograft rejection mediated by CD4+ but not CD8+ T cells. J Immunol 163, 2358-62 (1999))のような免疫調節ストラテジーは、CD4依存性免疫活性化の抑制に非常に効果的であるが、拒絶のCD8依存性経路は、研究において、耐性であることが示されている。カルシニューリン阻害剤による抑制に対するCD8T細胞の耐性は、臨床研究における急性同種移植片拒絶の発生率の増加とも関連している(Zhai, Y., Meng, L., Gao, F., Busuttil, R. W. & Kupiec-Weglinski, J. W. Allograft rejection by primed/memory CD8+ T cells is CD154 blockade resistant: therapeutic implications for sensitized transplant recipients. J Immunol 169, 4667-73 (2002))。このことは、インビボで観察されるCD4及びCD8T細胞の異なる共刺激要件と一致する。CD8依存性の同種移植片拒絶は、CD40/CD154共刺激に依存し、CD28/B7共刺激経路から独立している(Newell, K. A. et al. Cutting edge: blockade of the CD28/B7 costimulatory pathway inhibits intestinal allograft rejection mediated by CD4+ but not CD8+ T cells. J Immunol 163, 2358-62 (1999))。
【0062】
第1世代の抗CD3mAbは、その他のほとんどの免疫抑制治療と同様に、CMVのような重篤なウイルス感染を伴う免疫抑制をもたらす同種移植片受容者におけるT細胞の最初の活性化を遮断する。つまり、抗CD8抗体がウイルス特異的メモリー応答を損なわれないままにしながら、エフェクター細胞プライミングを遮断するとの観察は、抗ウイルス2次応答を損なわれないままにしながら、移植片を攻撃するアロ反応性CD8T細胞の生成を妨げるのだろう。
【0063】
移植部位でのCD8T細胞によるCD103の上方制御は、同種移植片損傷を媒介するCD8T細胞の能力と密接につながっている(Hadley, G. A., Bartlett, S. T., Via, C. S., Rostapshova, E. A. & Moainie, S. The epithelial cell-specific integrin, CD103 (alpha E integrin), defines a novel subset of alloreactive CD8+ CTL. J Immunol 159, 3748-56 (1997))。上皮細胞特異的インテグリンであるCD103(αインテグリン)は、アロ反応性CD8CTLの新規なサブセットを規定する(Feng, Y. et al. CD103 expression is required for destruction of pancreatic islet allografts by CD8(+) T cells. J Exp Med 196, 877-86 (2002))。同種移植片拒絶の(CD4非依存性)CD8依存性経路の活性化は、活発な免疫応答を惹起し、これは、免疫調節に対して非常に耐性が高い。腎臓拒絶中の主にCD8CTLA4Tリンパ球の強い局所的な浸潤が、患者において記載されている。このことは、CD8T細胞が、免疫抑制を逃れて、拒絶プロセスに参加できることを示唆する。CD4及びCD8応答の両方を制御することは、寛容及び長期の生存を促進するために必要であり得る(Cobbold, S. P., Martin, G. & Waldmann, H. The induction of skin graft tolerance in major histocompatibility complex-mismatched or primed recipients: primed T cells can be tolerized in the periphery with anti-CD4 and anti-CD8 antibodies. Eur J Immunol 20, 2747-55 (1990))。
【0064】
CD8療法は、ループス又は糖尿病のような自己免疫疾患における自己反応性CD8T細胞のプライミングの予防においても有益であり得る。
【0065】
本明細書で論じられるいずれの実施形態も、本発明のいずれの方法、キット、試薬又は組成物に関しても実行でき、またその逆も同じであると考えられる。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために用いることができる。
【0066】
本明細書に記載される具体的な実施形態は、例示のために示され、本発明の限定として示されるのでないことが理解される。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の実施形態において用いることができる。当業者は、日常的なものを超える実験を行うことなく、本明細書に記載される特定の手順の多数の等価物を認識するか、又は確認できる。このような等価物は、本発明の範囲内と考えられ、特許請求の範囲によりカバーされる。
【0067】
本明細書で言及する全ての出版物及び特許出願は、本発明が関する当該技術における当業者のレベルを示す。全ての出版物及び特許出願は、それぞれ個別の出版物又は特許出願が、参照により組み込まれると具体的にかつ個別に記載されているのと同程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含む」とともに用いる場合の語句「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1及び1より多い」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、それが選択肢のみ及び「及び/又は」に言及するという定義を開示が支持しても、選択肢のみに言及すると明記するか、又は選択肢が互いに排他的である場合を除いて、「及び/又は」を意味するために用いられる。本出願をとおして、用語「約」は、値が、値を決定するために用いた装置、方法についての固有の誤差の変動、又は研究対象のうちに存在する変動を含むことを示すために用いられる。本明細書及び特許請求の範囲において用いる場合、語句「含んでいる(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」のような含んでいる(comprising)の任意の形)、「有している(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」のような有している(having)の任意の形)、「含んでいる(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」のような含んでいる(including)の任意の形)、又は「含有している(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)のような含有している(containing)の任意の形)は、包括的又は拡張可能であり、追加の明記されていない要素又は方法ステップを排除しない。
【0069】
本明細書で用いる場合、用語「又はそれらの組合せ」とは、この用語に先行する列挙された項目の全ての順列及び組合せに言及する。例えば、「A、B、C又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCの少なくとも1つを含むことを意図し、もし特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABも含むことを意図する。この例の続きとして、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような1若しくは複数の項目又は用語の反復を含む組合せも明確に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、典型的には、任意の組合せの項目又は用語の数に制限がないことを理解する。
【0070】
本明細書に開示され、請求される組成物及び/又は方法の全ては、本発明の開示に照らして、過度の実験を行うことなく作製して実行できる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態の点で記載されているが、組成物及び/又は方法並びに本明細書に記載される方法のステップ又はステップの順序を、本発明の概念、精神及び範囲を逸脱することなく、変動し得ることが当業者に明らかである。当業者にとって明らかな全てのこのような類似の置換及び改変は、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の精神、範囲及び概念内であるとみなされる。
【0071】
(参考文献)
1. Banchereau, J. & Steinman, R. M. Dendritic cells and the control of immunity. Nature 392, 245-52 (1998)
2. Caux, C. et al. CD34+ hematopoietic progenitors from human cord blood differentiate along two independent dendritic cell pathways in response to GM-CSF+TNF alpha. J Exp Med 184, 695-706 (1996)
3. Zamoyska, R. The CD8 coreceptor revisited: one chain good, two chains better. Immunity 1, 243-6 (1994)
4. Veillette, A., Bookman, M. A., Horak, E. M. & Bolen, J. B. The CD4 and CD8 T cell surface antigens are associated with the internal membrane tyrosine-protein kinase p56lck. Cell 55, 301-8 (1988)
5. Chalupny, N. J., Ledbetter, J. A. & Kavathas, P. Association of CD8 with p56lck is required for early T cell signalling events. Embo J 10, 1201-7 (1991)
6. Bachmann, M. F. et al. Developmental regulation of Lck targeting to the CD8 coreceptor controls signaling in naive and memory T cells. J Exp Med 189, 1521-30 (1999)
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8. Fung-Leung, W. P. et al. The lack of CD8 alpha cytoplasmic domain resulted in a dramatic decrease in efficiency in thymic maturation but only a moderate reduction in cytotoxic function of CD8+ T lymphocytes. Eur J Immunol 23, 2834-40 (1993)
9. Nakayama, K. et al. Requirement for CD8 beta chain in positive selection of CD8-lineage T cells. Science 263, 1131-3 (1994)
10. de la Calle-Martin, O. et al. Familial CD8 deficiency due to a mutation in the CD8 alpha gene. J Clin Invest 108, 117-23 (2001)
11. Hall, B. M. Cells mediating allograft rejection. Transplantation 51, 1141-51 (1991)
12. Rosenberg, A. S. & Singer, A. Cellular basis of skin allograft rejection: an in vivo model of immune-mediated tissue destruction. Annu Rev Immunol 10, 333-58 (1992)
13. Slavik, J. M., Lim, D. G., Burakoff, S. J. & Hafler, D. A. Rapamycin-resistant proliferation of CD8+ T cells correlates with p27kip1 down-regulation and bcl-xL induction, and is prevented by an inhibitor of phosphoinositide 3-kinase activity. J Biol Chem 279, 910-9 (2004)
14. Boleslawski, E. et al. Defective inhibition of peripheral CD8+ T cell IL-2 production by anti-calcineurin drugs during acute liver allograft rejection. Transplantation 77, 1815-20 (2004)
15. Jones, N. D. et al. CD40-CD40 ligand-independent activation of CD8+ T cells can trigger allograft rejection. J Immunol 165, 1111-8 (2000)
16. Guo, Z. et al. CD8 T cell-mediated rejection of intestinal allografts is resistant to inhibition of the CD40/CD154 costimulatory pathway. Transplantation 71, 1351-4 (2001)
17. Newell, K. A. et al. Cutting edge: blockade of the CD28/B7 costimulatory pathway inhibits intestinal allograft rejection mediated by CD4+ but not CD8+ T cells. J Immunol 163, 2358-62 (1999)
18. Zhai, Y., Meng, L., Gao, F., Busuttil, R. W. & Kupiec-Weglinski, J. W. Allograft rejection by primed/memory CD8+ T cells is CD154 blockade resistant: therapeutic implications for sensitized transplant recipients. J Immunol 169, 4667-73 (2002)
19. Hadley, G. A., Bartlett, S. T., Via, C. S., Rostapshova, E. A. & Moainie, S. The epithelial cell-specific integrin, CD103 (alpha E integrin), defines a novel subset of alloreactive CD8+ CTL. J Immunol 159, 3748-56 (1997)
20. Feng, Y. et al. CD103 expression is required for destruction of pancreatic islet allografts by CD8(+) T cells. J Exp Med 196, 877-86 (2002)
21. Cobbold, S. P., Martin, G. & Waldmann, H. The induction of skin graft tolerance in major histocompatibility complex-mismatched or primed recipients: primed T cells can be tolerized in the periphery with anti-CD4 and anti-CD8 antibodies. Eur J Immunol 20, 2747-55 (1990)

【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図2f】

【図2g】

【図2h】

【図2i】

【図3】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図3d】

【図3e】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図4e】

【図4f】

【図5a】

【図5b】

【図6a】

【図6b】

【図7a】

【図7b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象において寛容を誘導する方法であって、
単離T細胞を、抗原を用いるT細胞プライミングの間に寛容原性T細胞を誘導するのに有効な量の非枯渇性抗CD8抗体と接触させるステップと、
必要とするか又は寛容にある対象に、前記寛容原性T細胞を提供するステップと
を含む方法。
【請求項2】
抗CD8抗体がヒト化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗CD8抗体が非枯渇性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サプレッサーT細胞の生成が、1又は複数の以下の表現型:グランザイムAの減少、グランザイムBの減少、パーフォリンの減少、IL−2、IFN−γ若しくはこれら両方の分泌量の減少、IL−10の分泌又はそれらの組合せを決定することにより決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
サプレッサーT細胞の生成が、IL−10を分泌するサプレッサーT細胞の増殖である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗CD8抗体が、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗原が同種である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
移植患者における移植拒絶を、その他の免疫応答を維持しながら低減する方法であって、
単離CD8T細胞を、抗原を用いるプライミングの間にサプレッサーCD8T細胞の生成を引き起こすのに有効な量の抗CD8非枯渇性遮断抗体で処理するステップであって、T細胞の抑制が、1又は複数の以下の表現型:グランザイムAの減少、グランザイムBの減少、パーフォリンの減少、IL−2、IFN−γ若しくはこれら両方の分泌量の減少、IL−10の分泌又はそれらの組合せを特徴とするステップと、
前記サプレッサーCD8T細胞を、移植患者に導入するステップと
を含む方法。
【請求項9】
CD8T細胞が、GM−CSF及びIFN−α−2bと培養した単球から得られる単離樹状細胞(IFN−DC)とインキュベートされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
樹状細胞が、CD34+ヒト末梢細胞を、GM−CSF、Flt3−L及びTNFαと9〜10日間培養することによりインビトロで生成されたランゲルハンス細胞(LC)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
樹状細胞が、CD1a+CD14−ランゲルハンス細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗CD8抗体が、ウイルスに対する免疫応答に影響することなく、生着された器官に対する免疫応答を下方制御する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
抗CD8抗体で処理されたCD8T細胞が、高結合活性の抗原特異的ナイーブT細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
抗CD8抗体が、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
抗CD8抗体が、0.5〜5,000ng/mlで培養物中に提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
末梢血単核細胞を単離するステップと、LC前駆体を前記末梢血単核細胞から単離するステップと、前記LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、前記LCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞が生成される条件下で共培養するステップと、前記T細胞、前記LC又はその両方を、移植の前、移植と同時又は移植の後に患者に再導入するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
移植患者から末梢血単核細胞を単離するステップと、LCを単離し、前記LCをGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養するステップと、T細胞を移植患者から単離し、前記LCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で共培養してサプレッサーT細胞を生成するステップと、前記T細胞、前記LCS又はその両方を、移植の前、移植と同時又は移植の後に患者に再導入するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
サプレッサーCD8T細胞が、2型サイトカイン(IL−4、IL−5及びIL−13)及びIL−10の増加した発現を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
サプレッサーT細胞を作製する方法であって、
末梢血単核細胞を単離するステップと、ランゲルハンス細胞(LC)前駆体を前記末梢血単核細胞から単離するステップと、前記LC前駆体を、GM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、前記LCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞が生成される条件下で共培養するステップとを含む方法。
【請求項20】
抗CD8抗体が、ウイルスに対する免疫応答に影響することなく、生着された器官に対する免疫応答を下方制御する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
CD8+T細胞が、高結合活性の抗原特異的ナイーブT細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ランゲルハンス細胞が、CD1a+CD14−ランゲルハンス細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
CD1a+CD14−ランゲルハンス細胞が、細胞選別により得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ランゲルハンス細胞が、CD34+HPCをGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと9〜10日間培養することによりインビトロで生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
抗CD8抗体が、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
抗CD8抗体が、0.5〜5,000ng/mlで培養物中に提供される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
サプレッサーT細胞を作製する方法であって、
末梢血単核細胞を単離するステップと、単球を前記末梢血単核細胞から単離するステップと、前記単球を、GM−CSF及びIFN−α−2bと培養して(IFN−DC)を作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、前記IFN−DCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、グランザイムAの減少、グランザイムBの減少、パーフォリンの減少、IL−2、IFN−γ若しくはこれら両方の分泌量の減少、IL−10の分泌又はそれらの組合せにより測定されるサプレッサーT細胞が生成される条件下で共培養するステップとを含む方法。
【請求項28】
免疫応答に影響を及ぼすための方法であって、末梢血単核細胞を単離し、LC前駆体を前記末梢血単核細胞から単離し、前記LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製し、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、前記LCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞が生成される条件下で共培養することにより作製されたサプレッサーT細胞を含む組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項29】
哺乳動物における移植された組織の拒絶を阻害する方法であって、末梢血単核細胞を単離するステップと、LC前駆体を前記末梢血単核細胞から単離するステップと、前記LC前駆体をGM−CSF、Flt3−L及びTNFαと培養してLCを作製するステップと、T細胞を末梢血単核細胞から単離し、前記LCと前記T細胞とを、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞が生成される条件下で共培養するステップとを含む方法により作製されたサプレッサーT細胞を導入するステップを含む方法。
【請求項30】
移植拒絶を低減する組成物であって、その他の免疫応答を消失させることなく移植拒絶を低減するのに十分な有効量のサプレッサーT細胞を含み、前記サプレッサーT細胞が、抗CD8抗体の存在下で、サプレッサーT細胞が生成される条件下で成熟LCと共培養された単離末梢血T細胞から生成される組成物。
【請求項31】
抗CD8抗体が、cM−T807、T8、RPA−T8、HIT8a、Leu2、T8及びOKT8から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
抗CD8抗体が、0.5〜5,000ng/mlで培養物中に提供される、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
細胞が、凍結しており、使用前に注射用の媒体に再懸濁される、請求項30に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−522835(P2011−522835A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512705(P2011−512705)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046464
【国際公開番号】WO2009/149382
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】