説明

抗EDbフィブロネクチン抗体−IL−2融合タンパク質と、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子との組合せ

本発明は、抗EDbフィブロネクチン抗体-IL-2融合タンパク質と、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子との組合せ物、ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗EDbフィブロネクチン抗体-IL-2融合タンパク質と、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子との組合せ、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞型の非ホジキンリンパ腫(B-NHL)は、組織病理学的、臨床的にはっきりと区別されるBリンパ球前駆細胞由来の悪性腫瘍のグループであって、血液の悪性腫瘍の中で最も普通に見られるグループである。それゆえ、B-NHL患者由来の悪性リンパ球はそれらの細胞表面にCD20、CD23などの特徴的なB細胞マーカーを発現している。B-NHLは、毎年米国では、新たに診断される症例が50000件を超えており、癌に関連した死亡の5%を占めている。
【0003】
リツキシマブ(Rituxan(登録商標); R)は、悪性および正常B細胞集団の細胞表面に構成的に発現されるCD20細胞表面エピトープと直接結合するキメラ型のモノクローナルIgG1抗体である。そのように結合することによって、リツキシマブは、(a) 抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を引き出し、(b) 補体依存性細胞溶解活性(CDC)および/または補体依存性細胞傷害活性を介してリンパ腫細胞死を誘発し、そして(c) CD20のリツキシマブによる結合(engagement)の後でアポトーシスを直接誘導する。さらに、(d)リツキシマブは、リツキシマブによって死滅した悪性B細胞からのリンパ腫抗原の抗原提示細胞による交差提示(cross-presentation)およびリンパ腫抗原特異的な細胞傷害性T細胞のプライミング(priming)を経て発揮されるワクチン効果を示す可能性がある(Selenko et al, 2001)。
【0004】
A) ADCC:この作用機序は、細胞傷害能力のある免疫細胞(単球、ナチュラルキラー細胞、顆粒球など)で発現されるFcγ受容体への抗体のFc部分の結合を必要とし、その後、食作用(ファゴサイトーシス)によって、または免疫エフェクター細胞内に含まれる細胞傷害性顆粒の放出によって、リツキシマブと結合したB細胞の破壊へと導くだろう。現在、ADCCはリツキシマブの主な作用機序であると考えられている。
【0005】
B) CDC:リツキシマブのFc部分は補体と結合するため、リンパ腫細胞死はCDCを介して達成され得る。しかし、リツキシマブ誘導B細胞枯渇が補体因子を遺伝的に欠損しているマウスでも依然起こるという最近の知見により、この作用機序に対する初期の強い関心は薄れてきた。
【0006】
C) アポトーシスの誘導:in vitro研究から、CD20のリツキシマブによる結合は、一連の細胞内シグナル伝達事象と抗アポトーシス因子の選択的ダウンレギュレーション(活性低下)を誘導することが明らかにされている。それはまた、CD20を脂質ラフトへ移行させ、かつ増大したカルシウム動員によりカスパーゼを活性化する(Janas et al, 2005)。CLL(慢性リンパ性白血病)患者では、ADCCのような他の潜在的作用機序がin vivoで誘発されるよりずっと前に、循環しているB細胞が、リツキシマブの注入直後に、数種のカスパーゼの活性化とポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の切断を示すことが見い出された(Byrd et al, 2002)。
【0007】
D) ワクチン効果/T細胞応答:リツキシマブによる再治療が初回治療よりも長い応答期間中央値(median response duration)と関連しており、また、再治療に応答した患者では抗体が循環系から消失した後でもリツキシマブの抗腫瘍効果が長く持続したという臨床所見(Davis et al, 2000)は、特別の免疫機構が関与していることを強く示唆する。
【0008】
リツキシマブを単剤として用いた治療は、B細胞リンパ腫のほとんどすべてのサブタイプの患者において、顕著とはいえ中程度で短期間の応答を引き出す。しかし、その最大の効果は、リツキシマブを導入化学療法レジメンと組み合わせたときに見られる(Coiffier, 2006)。標準化学療法、特にCHOP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、アドリアマイシンおよびプレドニゾロン)と組み合わせると、各化学療法サイクルの1日目に90分静脈内注入された375mg/m2の用量のリツキシマブは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者の治癒率を、化学療法単独の場合の38%から約52%(Coiffier 2002、GELA OSデータの更新、ASH 2007)へと増加させる。
【0009】
緩慢性リンパ腫(indolent lymphoma)においては、リツキシマブを多剤導入化学療法(FCM、CVP、CHOP、FND)に追加することで、結果的に、疾病の進行までの期間を遅らせることができただけでなく、全奏効率と完全寛解率を顕著に増加させることができた(Marcus, 2005; Hiddemann 2005)。しかしながら、リツキシマブを化学療法に追加しても、必ずしも改善された臨床転帰をもたらすとは限らない。マントル細胞リンパ腫の患者では、CHOP+リツキシマブによる治療が、CHOP療法単独で治療した患者と比較して、同程度の無増悪進行生存率(progression-free survival)および全生存率をもたらした(Lenz et al, 2005)。
【0010】
B-NHL患者において寛解を引き出す治療(導入療法)として確立されたその役割に加えて、リツキシマブ単剤療法は、応答を確固たるものとしたり、寛解を引き延ばしたりする維持療法としても評価されてきた。25mgリツキシマブ/mlが許容される最低血清濃度であると仮定すると、3ヶ月ごとに注入される375mg/m2用量のリツキシマブは、予測薬物動態研究でリツキシマブ維持療法にとって十分であることがわかった(Gordan, 2005)。いくつかの研究では、CVP (Hoechster, 2005)またはCHOP (Habermann, 2006)による初期標準化学療法の後でリツキシマブ維持療法を用いたとき顕著な臨床的有効性が示されているが、導入化学療法(例えば、R-CHOP)の一部としてリツキシマブを用いた患者にリツキシマブ維持療法がさらなる有効性をもたらすかは依然不明である。
【0011】
残念なことに、化学療法とリツキシマブとの併用(例えば、R-CHOP)の疑う余地のない臨床的有効性にもかかわらず、依然としてB-NHL患者の大多数は最終的に進行性の疾患で死亡している。その上、B-NHLの治療に効果的な薬剤であるにもかかわらず、再発性/難治性CD20+濾胞性リンパ腫の患者の約50%はリツキシマブによる初期治療に応答せず(先天的抵抗性;McLaughlin et al 1998)、また、以前にリツキシマブに応答した患者の約60%はリツキシマブによる再治療から恩恵を受けることがない(後天的抵抗性;Davis et al, 2000)。こうした形のリツキシマブ抵抗性が悪性B細胞の適応特性によるのか、または機能不全の宿主の免疫エフェクター機構によるのか、現在のところ不明である。いずれにせよ、リツキシマブ抵抗性は、臨床転帰のさらなる改善の点から、B-NHLの免疫療法および免疫化学療法に対する重大な障壁となっている。
【0012】
リツキシマブ/化学療法の併用は詳細に検討されているが、さらなる治療の改善への強いニーズが引き続き存在する。現在、2つの一般戦略が進行中である:a)新規な抗CD20抗体の遺伝子工学的作製、およびb) CD20以外のB細胞抗原を標的とするモノクローナル抗体の作製。目下、2種類の新しい抗CD20モノクローナル抗体が臨床評価を受けている:a) Fc受容体FcγRIIIa (CD16)に対してリツキシマブより高い親和性を示す抗CD20抗体、およびb)免疫原性のより低い抗CD20抗体(ヒト化;Tbl 1)。これらの抗体のうち、おそらく最強のGA-101(糖鎖改変Fc部分と修飾エルボーヒンジ部を有するヒト化抗CD20抗体)は、NHL細胞株に対して10〜100倍増加したADCCをもたらす。より低い免疫原性を示す抗CD20抗体を用いた小規模フェーズI/II試験は、再発性B-NHL患者においてほぼ50%程度の奏効率を示す(Coiffier, 2006; Hagenbeek, 2005; Morschhauser, 2005)。B-NHLのCD20以外の表面分子を標的とするモノクローナル抗体、例えば、ルミリキシマブ(lumilixumab) (抗CD23)、エプラツズマブ(epratuzumab) (抗CD22)、SGN-40およびHCD122 (両方とも抗CD40)、ガリキシマブ(galiximab) (抗CD80)、アポリズマブ(apolizumab) (Hu1D10)、KRN848、1D09C3 (すべて抗HLA-DR)などは早期臨床試験において有望であった。新規な抗CD20抗体およびCD20以外のB細胞エピトープに対する抗体が成功したとみなされるためには、リツキシマブよりもかなり優れた効果を示さなければならないだろう。ところが、これらの抗体を最大限に生かした早期臨床結果は増分利益を示すにとどまる。
【0013】
リツキシマブを非コンジュゲート化IL-2と併用するために、これまでさまざまな努力がなされてきた(Eisenbeis et al., 2004; Gluck et al., 2004)。しかし、最近のフェーズII試験の結果は、「リツキシマブとrIL-2の併用療法は安全で、一般に良好な耐容性を示したが、奏効率が低かった」ことを示した(Khan et al., 2006, Clin Cancer Res 2006;12(23): 7046-7053)。また、「rIL-2はFcRを持つ細胞サブセットをin vivoで増やし、かつリツキシマブのin vitroでのADCCを増強する」ことが見い出された。しかしながら、これらの知見は「リツキシマブ難治性NHLの患者への意味のある臨床的有益性に直接つながらなかった」ことが著者らによって結論づけられた。さらに、著者らは、「リツキシマブの抗腫瘍活性を有利に調節することをさらに推し進める前に、リツキシマブのin vivo作用機序についての理解を深めることが必要だろう」と結論づけた。
【0014】
癌の適応症に加えて、抗B細胞抗体、特にリツキシマブは、慢性関節リウマチ、クローン病、自己免疫性溶血性貧血を含めて、自己免疫疾患の治療のためにも開発されつつある(Assous et al, 2008)。
【0015】
標準治療法だけでなく目下臨床開発中の新治療法の選択肢をも考慮して、B細胞リンパ腫患者のためのより積極的な治療法(完全寛解を優先的にもたらす治療法および/またはリツキシマブ抵抗性リンパ腫の治療に有用な治療法)をデザインすることの強い医学的必要性が依然として存在する。さらに、自己免疫疾患(特に、慢性自己免疫疾患)を治療するための新薬を提供するという強い医学的必要性も存在する。
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
フィブロネクチンのエキストラドメインB(extra domain B: EDB)は、これまでに記載された血管新生のマーカーのうちで最もよく特性解析されたマーカーの1つである(Zardi et al., Embo J. 1987;6:2337-2342; Kaspar et al., Int J Cancer. 2006;118:1331-1339)。この91アミノ酸のIII型相同ドメインは、選択的スプライシング機構によって、活性組織の再構築中にフィブロネクチン分子に挿入される(Zardi et al., 同上)。EDBは健康な成体組織では本質的に検出不能であるが、多くの進行性固形腫瘍の血管系では非常に豊富である。EDBに特異的な、高親和性のヒト抗体L19の腫瘍ターゲッティング能力(Pini et al., J Biol Chem. 1998;273:21769-21776)は、癌の動物モデル(Tarli et al., Blood. 1999; 94:192-198; Borsi et al., Int J Cancer. 2002;102:75-85; Berndorff et al., J Nucl Med. 2006; 47:1707-1716; Berndorff et al., Clin Cancer Res. 2005; 11:7053s-7063s; Demartis et al., Eur J Nucl Med. 2001; 28:534-53)と、固形腫瘍の患者(Santimaria et al., Clin Cancer Res. 2003;9:571-579)の両方において十分に確立されている。最近になって、ED-B発現は、数人の非ホジキンリンパ腫患者から得られたリンパ腫浸潤組織サンプルの大部分においても見い出された(Sauer et al., 2006)。
【発明の概要】
【0018】
抗体を、特にrIL-2または同様のサイトカインと組み合わせて、用いる癌治療に関する現在の知識によれば、マウスでの併用療法実験において以下のことが判明したことは驚くべきことであった。すなわち、リツキシマブとL19-IL2融合体との併用によって、高用量L19-IL2グループのマウス5匹のうち4匹で、確立されたRamosリンパ腫の完全根絶がもたらされた(L19-IL2(高用量)対生理食塩水:P<0.00001)が、その際、4匹のうち3匹の完全寛解(complete remession:CR)がすでに3回の注入後に達成された。実際、この免疫系サイトカインは、リツキシマブと組み合わせた対応等モル量の非コンジュゲート化rIL-2よりはるかに強力であった(L19-IL2(高用量)対rIL-2(高用量):P<0.001)。注目すべき点は、リツキシマブと組み合わせた最低用量レベルのL19-IL2でさえも、4回の治療サイクル後に5匹のうち4匹の症例でCRが達成されたことを含めて、依然としてすぐれた治療活性を示したことである(L19-IL2(低用量)対生理食塩水:P<0.00001;L19-IL2(低用量)対rIL-2(低用量):P<0.00001)。これとは対照的に、リツキシマブと組み合わせた非標的化サイトカインは、用量を3倍に増量しても、腫瘍増殖を遅らせたにすぎなかった(L19-IL2(低用量)対rIL-2(高用量):P<0.001)。
【0019】
したがって、一実施形態において、本発明は、少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子と
を含む組合せ物に関する。
【0020】
好ましい実施形態において、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子は、CD20、CD23、CD22、CD40、CD80、HLA-DRまたはHu1D10と特異的に結合するものである。
【0021】
好ましい実施形態において、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子は、抗体、抗体フラグメントまたは抗体ミメティックから選択される。
【0022】
CD20、CD23、CD22、CD40またはCD80と特異的に結合する分子は、全長抗体もしくは抗体フラグメント、またはその融合タンパク質である分子が好適である。
【0023】
特に好ましい実施形態では、抗体もしくは抗体フラグメントまたはその融合タンパク質がCD20と特異的に結合するものである。
【0024】
一実施形態において、本発明は、少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) CD20と特異的に結合する分子と
を含む組合せ物に関する。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) CD20を発現している細胞と特異的に結合する分子と
を含む組合せ物に関する。
【0026】
特に好ましい実施形態では、CD20を発現している細胞と特異的に結合するおよび/またはCD20と特異的に結合する分子が、CD20と特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメントである。
【0027】
好ましい実施形態において、(i)の抗体部分はフィブロネクチン(FN)のEDbドメインと特異的に結合するものである。そのような抗体は従来技術で知られており、例えばWO 97/45544号に記載されている。
【0028】
別の実施形態において、EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体は隠蔽性エピトープ(cryptic epitope)と結合するものである。そうした抗体の例としてBC-1抗体がある。
【0029】
好ましくは、フィブロネクチン(FN)のEDbドメインと結合する抗体はFNのEDbドメインに対して高い親和性を示し、特に、その抗体はナノモルまたはナノモル以下の親和性でEDbフィブロネクチンドメインと結合する。そのような抗体は従来技術で知られており、例えばWO 99/58570号に記載されている。特に好ましいものはL19抗体である。
【0030】
EDbフィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分(特にL19抗体)はさまざまな抗体フォーマットで利用することができる。好ましい抗体フォーマットは、全IgG、Fab、(Fab')2、scFv、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)または小免疫タンパク質(small immunoprotein: SIP)フォーマットである。特に好ましいものはL19抗体の全IgG、scFvおよびSIPフォーマットである。最も好ましいものはscFvフォーマットでのL19抗体である。数種の免疫タンパク質フォーマットが従来技術で知られており、例えばIgEのCH3ドメインまたはεS2-CH4ドメインに基づくものである。IgEのεS2-CH4ドメインに基づいたL19の好ましいSIPフォーマットおよび全IgGフォーマットでのL19は、例えばWO 03/076469号に記載されている。
【0031】
さらなる好ましい実施形態では、抗体部分がL19抗体の少なくとも1つのCDR配列を含むものである。
【0032】
特に好ましい実施形態では、抗体部分がL19抗体のCDR配列を含み、とりわけ、その抗体部分が配列番号6〜11に示される配列を含む。
【0033】
さらなる好ましい実施形態では、抗体部分がL19抗体のVL鎖とVH鎖を含む。好ましい実施形態では、それが配列番号1に示される少なくとも1つのVH鎖または配列番号2に示される少なくとも1つのVL鎖を含む。特に好ましい実施形態では、それが配列番号1に示される少なくとも1つのVH鎖と配列番号2に示される少なくとも1つのVL鎖を含む。
【0034】
さらなる好ましい実施形態では、抗体部分が、配列番号1に示される1つのVH鎖と配列番号2に示される1つのVL鎖を含む。さらなる好ましい実施形態では、抗体部分が、配列番号1に示される2つのVH鎖と配列番号2に示される2つのVL鎖を含む。
【0035】
さらなる好ましい実施形態では、VH鎖とVL鎖が抗体リンカーによって連結されている。
【0036】
好ましい実施形態において、抗体リンカーは配列番号3に示される配列または配列番号3に示される配列に少なくとも90%の同一性を示す配列を有する。
【0037】
EDb-フィブロネクチンと特異的に結合する抗体部分はインターロイキン-2に融合される。両部分は直接融合されてもよいし、リンカーを介して、特にペプチド系の融合タンパク質リンカーによって、融合されてもよい。好ましくは、融合タンパク質リンカーは1〜30アミノ酸の長さを有する。特に好ましい実施形態では、融合タンパク質リンカーは配列番号5に示される配列を有する。
【0038】
別の特に好ましい実施形態において、インターロイキン-2はヒトインターロイキン-2(ヒトIL-2)である。
【0039】
インターロイキン-2は組換えにより産生されたものでも、ヒト組織から単離されたものでもよいが、組換えにより産生されたもの(rIL-2)が好ましい。特に好ましい実施形態では、インターロイキン-2部分は配列番号4に示される配列またはその機能的変異配列を有する。
【0040】
融合タンパク質は単量体または多量体(例えば二量体)でありうる。二量体や他の多量体は共有結合または非共有結合により形成することができる。例えば、L19(scFv)-IL2は非共有結合型のホモ二量体を形成する。
【0041】
融合タンパク質は当業者に知られた方法を用いて組換えにより作製することが好ましい。特に、原核または真核生物発現系、例えば酵母もしくは哺乳動物発現系が用いられる。
【0042】
本発明の組合せ物は、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子をさらに含む。
【0043】
本発明の一実施形態において、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子は標識され、特に放射性標識される。標識は共有結合による標識が好ましい。
【0044】
特に好ましい実施形態では、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する標識分子は放射性標識抗CD20抗体である。医学の分野では種々の放射性標識が用いられる。
【0045】
抗体およびタンパク質を標識するのに特に有用な放射性同位体は90Y、111Inおよび131Iである。特に好ましい実施形態では、抗CD20抗体が90Y、111Inまたは131Iで標識される。
【0046】
特に好ましい実施形態において、放射性標識抗CD20抗体は、Y-90-イブリツモマブ(Ibritumomab)-チウキセタン(Tiuxetan) (Y90-Zevalin(登録商標)または-Zevalin(登録商標))およびI-131トシツモマブ(tositumomab) (Bexxar(登録商標))から選択される。Y-90-イブリツモマブ-チウキセタンおよびその製造は、例えば、Y2B8 (イットリウム-[90]-標識2B8-MX-DTPA)としてEP 0 669 836に開示されている。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明の組合せ物はCD20と特異的に結合する分子をさらに含む。特に好ましい実施形態では、この分子が抗体もしくは抗体フラグメント、またはその融合タンパク質である。ADCC活性を示す抗CD20抗体が特に好ましいものである。
【0048】
さらなる好ましい実施形態において、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、PRO131921、ベルツズマブ(Veltuzumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、AME-133、およびGA-101から選択される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、CD20と特異的に結合する抗体は、全IgG、Fab、(Fab')2、scFv、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)または小免疫タンパク質(SIP)のフォーマットである。
【0050】
また、抗CD20抗体は単量体または多量体(例えば二量体)でありうる。多量体型抗体はホモマーでもへテロマーでもよい。例えば、二価抗体を用いることができるが、この二価抗体の一方の部分はCD20と特異的に結合するもので、他方の部分は別の標的と結合するものである。さらにまた、CD20と特異的に結合する分子はさらなるエフェクターを含んでもよく、特にそれは放射性標識される。本発明のこの実施形態では、先に記載したように、Zevalin(登録商標)またはBexxar(登録商標)を用いることができる。
【0051】
特に好ましい抗CD20抗体はリツキシマブ、とりわけRituxan(登録商標) (MabThera(登録商標)またはIDEC-C2B8とも呼ばれる)である。Rituxan(登録商標)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見い出されるCD20抗原に対する、遺伝子工学的に作製されたキメラ型のマウス/ヒトモノクローナル抗体である。この抗体はマウス軽鎖および重鎖可変領域配列とヒト定常領域配列を含むIgG1κ免疫グロブリンである。リツキシマブは例えば米国特許第5,843,439号、同第5,776,456号および同第5,736,137号に開示されている。
【0052】
より好ましい実施形態において、本発明の組合せ物はリツキシマブとL19-IL2を含む。
【0053】
より一層好ましい実施形態では、L19抗体がscFvフォーマットである。
【0054】
特に好ましいものは、Carnemolla et al., Blood. 2002;99:1659-1665に記載されるL19-IL2である。
【0055】
本発明の別の実施形態は、医薬として使用するための、先に記載した組合せ物に関する。
【0056】
本発明のさらなる実施形態は、癌治療用の医薬として使用するための、先に記載した組合せ物に関する。
【0057】
好ましい実施形態において、その癌はリンパ腫、好ましくはB細胞リンパ腫である。最も好ましくは、本発明の組合せ物をB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)の治療に使用する。
【0058】
さらなる好ましい実施形態では、B細胞リンパ腫が難治性もしくは再発性のB細胞リンパ腫またはリツキシマブ単剤療法に抵抗するリンパ腫である。
【0059】
本発明はさらに、本発明の組合せ物を治療に有効な量で癌患者に投与することを含む癌の治療方法に関する。好ましくは、その癌はリンパ腫、好ましくはB細胞リンパ腫、特にNHLである。
【0060】
本発明のさらなる実施形態は、自己免疫疾患(特に慢性自己免疫疾患)治療用の医薬として使用するための、先に記載した組合せ物に関する。
【0061】
好ましい実施形態において、その自己免疫疾患は慢性関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、または自己免疫性溶血性貧血である。
【0062】
患者はどのような哺乳類でもよいが、好ましくは患者はヒトである。
【0063】
さまざまな投与経路、例えば静脈内、皮下または腹腔内投与が可能であるが、静脈内投与が好適である。
【0064】
また、EDbフィブロネクチンを特異的に認識する融合タンパク質と、B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子は、同時に投与してもよいし、異なる時点に投与してもよい。さらに、上記の組合せ物を患者に1回または数回投与することが可能である。また、組合せ物の一方の成分を1回投与し、他方の成分を数回投与することも可能である。
【0065】
一般に、リツキシマブとL19-IL2を併用療法として投与する場合、それらを同じ時点で患者に投与することができ、これによって、より容易な投与計画が可能となる。例えば、リツキシマブとL19-IL2の両方を2〜3日から最長3ヶ月までの間隔で1日1回または2回、静脈内投与する。また、1回以上の治療ラウンドも可能である。
【0066】
さらに、投与する量はさまざまである。例えば、リツキシマブは1回の投与につき約20〜500mg/m2の量で、好ましくは約100〜400mg/m2の量で、特に約375mg/m2の量で投与することができる。一般に、リツキシマブは最大6〜8回の治療サイクル(寛解導入)で2週、3週または4週治療計画の1日目に投与されるが、他の投与計画も可能である。
【0067】
本発明に従って用いられる活性薬剤の治療製剤は、貯蔵のために、希望する純度の活性薬剤を製薬上許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 第l6版, Osol, A.編集 (1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液剤の剤形で、調製することができる。
【0068】
抗CD20抗体製剤の例はW0 98/56418号に記載されている。この公開公報には、40mg/mL リツキシマブ、25mM 酢酸塩、150mM トレハロース、0.9% ベンジルアルコール、0.02% ポリソルベート20を含むpH5.0の液体多用量(複数回使用)製剤が記載され、この製剤は2〜8℃で最低2年間の貯蔵寿命がある。興味がもてる別の抗CD20製剤は、9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート80、および注射用滅菌水pH6.5中に10mg/mLのリツキシマブを含有する。皮下投与に適した凍結乾燥製剤はW0 97/04801号に記載される。こうした凍結乾燥製剤は適当な希釈剤を用いて高タンパク質濃度に再調製され、その再調製製剤をその場で治療される患者に皮下投与することができる。
【0069】
また、融合タンパク質についても、投与する量はさまざまである。一般には、1回あたりに投与されるL19-IL2の量は約1〜10×106IU/m2、特に約5〜50×106IU/m2、とりわけ約10〜30×106IU/m2である。
【0070】
投与量を経時的に変えることも可能である。例えば、リツキシマブおよび/またはL19-IL2の量を1回以上の投与ラウンドにつき増量または減量することができる。
【0071】
また、維持療法、特にリツキシマブまたはL19-IL2単独を用いる維持療法が、併用療法期の後に続いてもよい。
【0072】
さらにまた、B-NHLに対する抗体含有併用療法による治療、特に化学免疫治療レジメン(例えば、R-CHOP)による治療を、L19-IL2で支援することが可能である。
【0073】
抗体リンカーは、VhドメインとVlドメインを連結するのに適したリンカーであれば、どのようなリンカーでもよいが、好ましくはペプチドリンカーである。適当なリンカーは例えばBird et al, Science, 242, 423-426, 1988; Huston et al, PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988; EP 0 573 551; EP 0 623679およびEP 0 318554に記載されており、これらの文献を参照により本明細書中に組み入れる。
【0074】
融合タンパク質リンカーは、抗体または抗体フラグメントと、第2の生物活性タンパク質とを連結するのに適したリンカーであり、好ましくはペプチド系のリンカーである。適当なリンカーはEP 0 573 551; EP 0 623679およびEP 0 318554に記載されており、これらの文献を参照により本明細書中に組み入れる。とりわけ、適当なリンカーはEP 0 623679に記載される。
【0075】
本明細書中で用いる「特異的に結合する」または「特異的に認識する」とは、対応する標的に結合することを意味する。一般に、結合分子、抗体、抗体フラグメントまたは抗体ミメティックは、少なくとも約1×10-7M、好ましくは少なくとも約1×10-9Mの親和性で結合し、また、所定の標的や密接に関連した標的以外の非特異的な標的(例えば、BSA、カゼイン)に対するその結合親和性より少なくとも2倍高い親和性で、所定の標的と結合する。
【0076】
本明細書中で用いる「抗体」は、天然の抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および全IgG抗体を含めて、全長抗体のほかに抗体フラグメントも包含する。
【0077】
「抗体フラグメント」という語は、可変領域または機能(すなわち、標的への特異的結合)が保持されている全長抗体の一部分をさす。抗体フラグメントの例としては、限定するものではないが、Fab、Fab'、(Fab')2、Fd、Fv、scFvおよびscFv-Fcフラグメント、ダイアボディ、線状抗体、小免疫タンパク質フォーマット、一本鎖抗体、ミニボディ、抗体フラグメントから形成されるダイアボディ、ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体フラグメントは通常全抗体よりも小さくなっている。その結果、薬物動態が異なり、また、一部の抗体フラグメントは1本のポリペプチド鎖のみから成り、比較的容易に作製することができる。しかし、抗体フラグメントを含む融合タンパク質は安定性の低下という問題を抱えていることが多い。好ましくは、抗体フラグメントはscFv、(scFv)2、または小免疫タンパク質のフォーマットである。小免疫タンパク質フォーマットは、ヒトIgEのCH3ドメイン(例えば、米国特許第5,837,821号に記載)またはεS2CH4ドメイン(例えば、WO 03/076469号に記載)に基づいたフォーマットでありうる。
【0078】
「モノクローナル抗体」(mAb)という語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体をさし、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、自然界に若干存在しうる突然変異を除けば、まったく同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原決定基(エピトープとも呼ばれる)に対して誘導されて、高度に特異的である。修飾語「モノクローナル」とは、同一のエピトープに対して誘導された抗体の実質的に均質な集団を示すもので、何らかの特別な方法による抗体作製を必要とすると解釈されるべきでない。モノクローナル抗体は当技術分野で公知のどのような技術または方法で作製してもよく、例えば、Koehler et al., 1975, Nature 256:495に初めて記載されたハイブリドーマ法、または当技術分野で公知の組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)により作製することができる。別の例として、Clackson et al., 1991, Nature 352: 624-628およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222: 581-597に記載される技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからモノクローナル抗体を単離することもできる。
【0079】
これとは対照的に、ポリクローナル抗体の調製物中の抗体は一般に免疫グロブリンアイソタイプおよび/またはクラスの異種集団であって、さまざまなエピトープ特異性を示す。
【0080】
本明細書中で用いる「キメラ」抗体とは、モノクローナル抗体の1タイプであって、重鎖および/または軽鎖の1以上の領域またはドメインのアミノ酸配列の一部または全アミノ酸配列が、別の生物種由来であるかまたは別の免疫グロブリンクラスもしくはアイソタイプに属するモノクローナル抗体の対応配列と同一であるか、相同であるか、その対応配列の変異体であるか、またはコンセンサス配列由来である。
【0081】
いくつかのタイプの抗体フラグメントは全長抗体の酵素的処理により作製することができる。パパインによる抗体の消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2本の同一の抗原結合フラグメント(それぞれ抗原結合部位が1ヶ所ある)と、残りの「Fc」フラグメント(そのように呼ばれる理由は、その結晶化(crystallize)しやすい能力にある)をもたらす。Fabフラグメントは軽鎖の定常ドメインと重鎖のCH1ドメインをも含む。ペプシンによる処理はF(ab')2フラグメントを生成するが、このフラグメントは抗原結合部位が2ヶ所あり、まだ抗原を架橋結合することができる。
【0082】
Fab'フラグメントは、CH1ドメインのC末端の2〜3個の追加の残基(抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む)が存在することで、Fabフラグメントと相違する。Fab-SHは、定常ドメインの1個以上のシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'の本明細書中での名称である。F(ab')2抗体フラグメントは、ヒンジ領域に存在するシステイン残基によって連結されたFab'フラグメントの対である。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0083】
「Fv」は、完全な抗原認識・結合部位を含む最小の抗体フラグメントであって、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが強固な非共有結合で会合している二量体から成る。この立体配置では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。これら6つのCDRが、集合して、抗原結合特異性を抗体に付与する。
【0084】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗原を認識してそれと結合することができる、抗体のVHおよびVLドメインを含む(ここで、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖として存在する)一本鎖Fv変異体である。scFvポリペプチドは、場合により、VHドメインとVLドメインの間に配置されたポリペプチドリンカーを含んでもよく、かかるリンカーは、scFvが抗原結合のための望ましい三次元構造を形成できるようにする(例えば、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies (モノクローナル抗体の薬理学), 第113巻, Rosenburg and Moore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315, Pluckthun, 1994を参照されたい)。
【0085】
「ダイアボディ」という語は、抗原結合部位が2ヶ所ある小さな抗体フラグメントをさす。各フラグメントは軽鎖可変ドメイン(VL)に鎖状に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の2つのドメイン同士を対合させるには短すぎるリンカーを用いることによって、連結されたVH-VLドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合して、抗原結合部位を2ヶ所形成するようになる。
【0086】
ダイアボディは、例えばEP 404,097、WO 93/11161号、およびHollinger et al., 1993, Proc. Nat. Acad. Sc. USA 90: 6444-6448に、より詳しく記載されている。
【0087】
ヒト化抗体またはヒト化抗体フラグメントは、所定の抗原に結合することができる免疫グロブリンアミノ酸配列変異体またはそのフラグメントであって、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有する1以上のフレームワーク領域(FR)と、非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有する1以上のCDRを含むものである。この非ヒトアミノ酸配列は、本明細書では「インポート」配列と呼ばれ、一般的には「インポート」抗体ドメイン、特に可変ドメインから得られる。一般に、ヒト化抗体は、ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインのFR間に挿入された、非ヒト抗体のCDRまたはHVLを少なくとも含むものである。
【0088】
「天然の抗体」は、本明細書では、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖から構成される、典型的には約150,000ダルトンの、ヘテロ四量体の糖タンパク質として定義される。各軽鎖は1つのジスルフィド結合によって重鎖と共有結合で連結されて、ヘテロ二量体を形成している。そのようなヘテロ二量体の2本の同一の重鎖間のジスルフィド共有結合によってヘテロ四量体が形成される。軽鎖と重鎖は1つのジスルフィド結合によって一緒に連結されるが、2本の重鎖間のジスルフィド結合の数は免疫グロブリンのアイソタイプにより変化する。それぞれの重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔をあけて配置された鎖内ジスルフィド橋を有する。各重鎖は、アミノ末端に、可変ドメイン(VH)と、これに続いて3または4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)を有し、CH1とCH2の間にヒンジ領域が存在する。各軽鎖は2つのドメイン、すなわちアミノ末端の可変ドメイン(VL)とカルボキシ末端の定常ドメイン(CL)を有する。VLドメインはVHドメインと非共有結合で会合しており、一方CLドメインは通常はジスルフィド結合を介してCH1ドメインと共有結合で連結している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている (Chothia et al., 1985, J Mol. Biol. 186:651-663)。「超可変」という語は、可変ドメイン内の特定の配列が抗体ごとに大きく異なっており、かつ個々の抗体の結合性と特異性に直接関与する残基をその特異的抗原決定基として含むことを意味する。軽鎖と重鎖の両方の可変ドメインにおける超可変性は、相補性決定領域(CDR)または超可変ループ(HVL)として知られる3つのセグメントに集中している。CDRはKabat et al., 1991(Sequences of Proteins of Immunological Interest (免疫学的に興味のあるタンパク質の配列), 第5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.)において配列比較により規定され、一方HVLは、Chothia and Lesk, 1987, J. MoI Biol. 196: 901-917に記載されるように、可変ドメインの三次元構造に従って構造的に規定される。
【0089】
これら2つの方法がCDRをやや異なって特定する場合には、構造的な規定のほうを優先する。Kabatによって規定されたように、CDR-Llは軽鎖可変ドメイン中の残基24-34付近に、CDR-L2は残基50-56付近に、そしてCDR-L3は残基89-97付近に位置する。CDR-Hlは重鎖可変ドメイン中の残基31-35付近に、CDR-H2は残基50-65付近に、そしてCDR-H3は残基95-102付近に位置する。
【0090】
「標識」とは、抗体と直接または間接的に結合される検出可能な化合物または組成物を意味する。標識は、それ自体検出可能であってもよいし(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合のように、検出し得る基質化合物もしくは組成物の化学的改変を触媒するものであってもよい。
【0091】
フィブロネクチン(FN)は単一のFN遺伝子の産物であるが、得られるタンパク質は複数の形態で存在することができ、こうした形態は、翻訳後修飾を別として、その一次RNA転写産物の選択的スプライシングから生じる。この多型性は、ヒトFNでは20種類もの異なるアイソフォームをもたらし、それによって溶解性、細胞接着およびリガンド結合特性の異なるFNが生成するが、そうした多型性は、細胞外マトリックス(ECM)の組成を組織特異的に改変する可能性を細胞にもたらす。選択的スプライシングは一次RNA転写産物の3つの領域で起こり、エキソンの利用またはスキッピングによって結果的に2つのIII型リピート、すなわちFN III型リピートIII7とIII8の間に挿入されるエキストラドメインB (EDBまたはED-B;EIIIBまたはEDIIIとも呼ばれる)、および/またはFN III型リピートIII11とIII12の間に挿入されるエキストラドメインA (EDA;EIIIAまたはEDIとも呼ばれる)、の包含または取除きが生じる。このタイプのスプライシングは、アフリカツメガエル、ニワトリ、ラット、イヌ、ヒトを含めて、多くの脊椎動物で起こる。
【0092】
「ED-Bドメイン」は、ヒトフィブロネクチンのエキストラドメインBとして理解すべきである。これはしばしばEDb、EIIIBまたはEDIIとも呼ばれる。
【0093】
「抗体ミメティック」は、標的と特異的に結合するが、抗体および抗体フラグメントとは明確に区別されるタンパク質骨格(「スカフォールド」)に基づいた結合分子として理解される。そのようなスカフォールドは、Binz et al., 2005, Nat. Biotechnol. 23, 1257-1268に記載されている。ED-Bフィブロネクチンと特異的に結合する抗体ミメティックは、Grabulovski et al., J. Biol. Chem., 2007, 282:3196-3204に記載されている。
【0094】
本発明において「インターロイキン-2」は、哺乳類インターロイキン-2、好ましくはヒトインターロイキン-2、およびその機能的変異体をさす。インターロイキン-2の機能的変異体は、天然のヒトインターロイキン-2の活性の少なくとも10%、しかしより好ましくは50%以上、より一層好ましくは90%以上を示す、ヒトインターロイキン-2の変異体である。インターロイキン-2活性は生化学的アッセイまたはin vivoでのインターロイキン-2の活性であり、特に、インターロイキン-2活性は、活性型TおよびBリンパ球とナチュラルキラー細胞の増殖および/または分化への影響によって、かつ/または、細胞傷害性T細胞活性および/またはNK/リンホカイン活性化キラー(LAK)抗腫瘍活性の誘導によって、測定することができる(Meazza R, Marciano S, Sforzini S, et al. Analysis of IL-2 receptor expression and of the biological effects of IL-2 gene transfection in small-cell lung cancer (IL-2受容体発現の解析および小細胞肺癌におけるIL-2遺伝子トランスフェクションの生物学的効果の解析). Br. J. Cancer. 1996; 74: 788-795)。特に、機能的変異体は、EP 0109748に記載されるインターロイキン-2のシステイン-125変異タンパク質とその他の変異タンパク質、例えばEP 136489に記載されるシステイン変異タンパク質、とりわけセリン125-インターロイキン-2である。また、hIL-2のN-末端を活性に著しい影響を及ぼすことなく改変することができ、特にN-末端の1〜5アミノ酸、特に好ましくはN-末端アラニンを欠失または改変することができ、好ましくは欠失する。さらに、インターロイキン-2は翻訳後修飾の改変または欠失を含んでいてもよく、特に、グリコシル化パターンの改変または欠失が可能である。異なったまたは存在しないグリコシル化は、例えば配列を変異させるかまたは適切な宿主に融合タンパク質を発現させることによって、得ることができる。例えば、アルデスロイキン(Aldesleukin)は、転移性RCCのために承認されたものである
が、大腸菌において産生された非グリコシル化デス-アラニル-1,セリン-125ヒトインターロイキン-2である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】L19抗体を用いた免疫組織化学は、B細胞リンパ腫異種移植片におけるEDB発現を明らかにする。EDBフィブロネクチンに特異的な抗体L19を用いた免疫組織化学によって、Ramosリンパ腫異種移植片(左のパネル)におけるこのフィブロネクチンアイソフォームの強い発現(顕著な血管染色パターンを示す)が明らかになった。この染色は、U87グリア芽腫異種移植片(右のパネル)により例示される、固形腫瘍におけるL19の染色パターンと類似していた。陰性対照については、一次抗体を省いた。スケールバー、100μm。
【図2】in vivo局在確認実験:ex vivo免疫蛍光(A)および定量的生体内分布試験(B)。L19抗体のin vivoターゲッティング能力を皮下SCID/Ramosリンパ腫モデルにおいて試験した。(A)リンパ腫担持マウスに、フルオロフォアCy3で化学的に標識したL19-SIPを注入した。図面は、注入してから24時間後のリンパ腫切片の2色蛍光顕微鏡画像を示し、腫瘍血管構造物への抗体局在(赤色)が確認される。内皮細胞を浮かび上がらせるために抗CD31抗体をex vivoで添加し、Alexa Fluor 488抗ラットIgG抗体(緑色)を用いて検出した。スケールバー、100μm。(B) 125I-放射性標識L19-SIPを注入してから24時間後と48時間後に、リンパ腫担持動物(各時点につきn3)における定量的生体内分布結果を得た。平均ターゲッティング結果は、組織1gあたりの注入線量(injected dose:ID)に対するパーセント(%ID/g±SD)として表される。注入の48時間後に、リンパ腫組織への抗体の選択的蓄積・残留が観察され、腫瘍対血液の比が4.8で、腫瘍対臓器の比が3.8〜17.3の範囲であった。
【図3】単剤L19-IL2、非コンジュゲート化IL-2およびリツキシマブがリンパ腫の増殖に及ぼす効果。確立された皮下Ramosリンパ腫異種移植片を担持するSCIDマウスに、腫瘍細胞の移植後8、11、14および17日目に、血管標的化L19-IL2融合タンパク質(■; 20μg)、対応する用量の非標的化rIL-2 (▲; 6.6μg)、リツキシマブ(●; 200μg)、または対照の生理食塩水(×)のいずれかを静脈内注入した。L19-IL2単剤とリツキシマブ単剤は両方とも腫瘍増殖を有意に遅らせた(それぞれP=0.024およびP=0.004)。これに対して、非コンジュゲート化rIL-2は有意な治療活性を示さず(P=0.383)、このことは、IL-2の標的化送達が治療効果に貢献したことを示している(L19-IL2対IL-2:P=0.044)。
【図4】リツキシマブと組み合わせたL19-IL2および非コンジュゲート化IL-2の治療効果。確立された皮下リンパ腫異種移植片を担持するSCIDマウスに、8、11、14および17日目に、生理食塩水(×)、200μgのリツキシマブ+低用量の非コンジュゲート化IL-2 (△; 2.2μg)、200μgのリツキシマブ+高用量の非コンジュゲート化IL-2 (▲; 6.6μg)、200μgのリツキシマブ+低用量のL19-IL2 (□; 6.6μg、2.2μgのIL-2に相当する)、または200μgのリツキシマブ+高用量のL19-IL2 (■; 20μg、6.6μgのIL-2に相当する)のいずれかを静脈内注入した。リツキシマブと組み合わせたL19-IL2は非常に有効で、高用量L19-IL2グループのみならず低用量グループでも5匹のうち4匹のマウスで完全寛解が得られた。これに対して、リツキシマブと組み合わせた非コンジュゲート化rIL-2では腫瘍の退縮が起こらず、すべての腫瘍が増殖し続けた。完全寛解(CR)を示したマウスはすべて、42日間以上にわたり腫瘍なしの状態であり続けた。
【図5】播種性リンパ腫モデルにおける単剤療法および併用療法でのL19-IL2、IL-2およびリツキシマブの治療効果。SCIDマウス(n6)に2×106個のRamosリンパ腫細胞を静脈内注入し、8日後に次のレジメンに従って処置した:非標的化IL-2 (6.6μg)、L19-IL2 (20μg)、リツキシマブ(200μg)、リツキシマブ(200μg)+IL-2 (6.6μg)、リツキシマブ(200μg)+L19-IL2 (20μg)、または対照の生理食塩水。(詳細には、全身性疾患のモデルとするために、SCIDマウスに、200μLのPBS中に再懸濁した2×106個のRamosリンパ腫細胞を静脈内注入した。治療を開始する前に、B細胞リンパ腫の播種と増殖を起こさせた。マウスを無作為に6グループ(6匹/グループ)に分けて、生理食塩水、20μgのL19-IL2、6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2、もしくは200μgのリツキシマブ(単剤療法グループ)、または20μgのL19-IL2と組み合わせた200μgのリツキシマブ、もしくは6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2と組み合わせた200μgのリツキシマブ(併用療法グループ)のいずれかを8、11、14および17日目に静脈内注入した(Q3D×4)。後肢麻痺の存在または悪化しつつある状態の兆候についてマウスを毎日観察し、そのときにはすぐにマウスを犠牲にして、死亡として評価した。治療効果の解析のために生存を記録した)。
【図6】ヒトリンパ腫サンプルにおける標的の検証。EDBはヒトB細胞リンパ腫(一般的なサブタイプのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む)の新血管構造物に発現されることが見い出された。スケールバー、100μm。
【図7】融合タンパク質L19-IL2は再現性よくリンパ腫増殖を抑制した(P=0.031)が、SIPまたはIgGフォーマットでの非融合(naked)のL19は、等モル量を単独でまたはフリーのrIL-2と組み合わせて投与したとき、治療的に不活性であった。
【実施例】
【0096】
材料および方法
動物および細胞株
6〜8週齢のCB17/lcr SCID雌マウスをCharles River Laboratories (Sulzfeld、ドイツ)から入手した。すべてのマウスをマイクロアイソレーターユニット(microisolator unit)に入れ、試験期間を通して無菌の食餌と水を自由に与えた。EBV陰性ヒトB細胞リンパ腫細胞株Ramos44はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、Manassas、バージニア州)から購入した。細胞をRPMI 1640培地(2mM L-グルタミン、10mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、4.5g/L グルコース、1.5g/L 重炭酸塩、10%熱不活化ウシ胎仔血清、100U/mL ペニシリン、および100μg/mL ストレプトマイシンを含むように調整した)中で対数増殖期にて維持した。ヒト濾胞性リンパ腫細胞株DoHH-2はドイツ生物材料資源センター(German Resource Centre for Biological Material) (DSMZ、Braunschweig、ドイツ)から入手した。
【0097】
抗体および試薬
L19は、フィブロネクチンのEDBドメインに対して誘導された血管ターゲッティング抗体である。SIP (small immunoprotein:小免疫タンパク質)フォーマットでのL19およびL19-IL2融合タンパク質の発現、精製、特性解析は、Borsiら(Int J Cancer. 2002;102:75-85)およびCarnemollaら(Blood. 2002;99:1659-1665)によってすでに記載されている。組換えヒトIL-2 (プロロイキン(Proleukin)、18×106IU)はProrero Pharma社(Liestal、スイス)から入手し、キメラ型ヒトIgG1抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(MabThera)はRoche社(Reinach、スイス)から入手した。
【0098】
免疫組織化学
Ramos異種移植腫瘍に対する免疫組織化学のために、凍結サンプルの10μmクリオスタット切片を氷冷アセトン中で固定し、TBS (50mmol/L Tris、100mmol/L NaCl pH7.4)中で再水和させて、20%FCS (Invitrogen社、Basel、スイス)を用いてブロッキングした。その切片にL19-SIPを加えて10μg/mLの最終濃度とした。結合した一次抗体は、ウサギ抗ヒトIgE抗体(Dako社、Glostrup、デンマーク)、続いてビオチン化ヤギ抗ウサギIgG抗体(Biospa社、Milan、イタリア)およびストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ複合体(Biospa社)を用いて検出した。ホスファターゼ基質としてFast Red TRSalt (Sigma社)を用いた。ヒトリンパ腫サンプルでのEDB発現の免疫組織化学的解析は、ビオチン化L19-SIPとストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(SAP)を用いておこなった。切片をヘマトキシリンで対比染色し、グリセルゲル封入剤(Glycergel mounting medium) (Dako社)により封入して、Axiovert S100 TV顕微鏡(Zeiss社、Feldbach、スイス)を用いて解析した。ヒトリンパ腫サンプルでの免疫組織化学はリンパ腫異種移植片の場合と同様におこなったが、ビオチン化L19-SIPを一次抗体として用いて、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ複合体(Biospa社)により検出した。
【0099】
ex vivo蛍光実験
L19-SIPを蛍光シアニン化合物のCy3-NHSエステルで、メーカー(Amersham Pharmacia社、Duebendorf、スイス)の推奨に従って、標識した。120μgのL19-Cy3コンジュゲートをリンパ腫担持マウスの外側尾静脈に静脈内(i.v.)注入した。注入の24時間後、マウスを犠牲にして腫瘍を切除し、凍結包埋コンパウンド(cryoembedding compound) (Microm社、Walldorf、ドイツ)中に包埋して、−80℃で貯蔵した。10μmの切片を切り出し、37℃で15分間乾かし、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で15分間固定した。ラット抗CD31抗体(BD Pharmingen社)を加え、二次抗体としてAlexa Fluor 488ウサギ抗ラットIgG (Invitrogen社)を用いて内皮細胞を浮かび上がらせた。AxioCam MRcカメラを装備したAxioskop 2 Mot plus顕微鏡(Zeiss社)で画像を取得した。
【0100】
定量的生体内分布
in vivoターゲッティング能力を定量的に評価するために、放射性標識抗体調製物を用いた生体内分布解析を以前に記載されたとおりに実施した(Carnemolla et al., 2002)。簡単に説明すると、精製したSIP(L19)を125Iで放射性ヨウ素化し、皮下移植Ramosリンパ腫異種移植片を担持するSCIDマウスまたは全身的同系A20リンパ腫を担持するBalb/cマウスに静脈内注入した(マウスあたり10μg、12.2μCi)。注入の24時間後または48時間後にマウスを犠牲にしたが、各時点につき少なくとも3匹の動物を用いた。臓器を秤量し、Cobra γカウンター(Packard社、Meriden、コネチカット州)を用いて放射能を計測した。代表的な臓器の放射能含有量を、組織1gあたりの注入線量(ID)に対する百分率(%ID/g±SE)として表した。
【0101】
限局性リンパ腫異種移植片モデル
1×107個のRamosリンパ腫細胞または1×107個のDoHH-2リンパ腫細胞を6〜8週齢のCB17/lcr SCID雌マウスの横腹に皮下注入した(0日目)。腫瘍が確立されて、明らかに触知可能になったとき(50〜100mm3、注入後8日目)、マウスを病期ごとに分類してグループ間の均一性を最大にし、外側尾静脈に20μgのL19-IL2 (6.6μgまたは118000IUのrIL-2に相当する)、6.6μgの非標的化rIL-2、200μgのリツキシマブ、または対照の生理食塩水のいずれかを100μLの容量で8、11、14および17日目に注入した(Q3D×4)。併用療法試験では、L19-IL2 (6.6および20μg、それぞれ「フリー」のrIL-2の2.2および6.6μgに相当する)、または非コンジュゲート化rIL-2 (2.2および6.6μg)をリツキシマブ(200μg)と組み合わせて、8、11、14および17日目に別々の静脈内注入により投与した。L19抗体単独が治療的に活性であるかを調べるため、SIP (x.xμg)またはIgG (x.xμg)フォーマットでのL19(等モル量)を単独でまたはフリーのrIL-2 (6.6μg)と組み合わせて用いて、マウスを処置した。すべての薬剤(単剤療法と併用療法で用いたもの)の治療スケジュールは、3日ごとに合計4回(Ramos)または3回(DoHH-2)の注入とした(それぞれQ3D×4またはQ3D×3)。
【0102】
マウスを毎日観察し、腫瘍増殖をデジタルキャリパーで週に少なくとも3回測定し、次の式に当てはめた:体積=長さ×幅2×0.5。応答を完全寛解(CR、目に見える腫瘍なし)または部分寛解(PR、腫瘍体積の少なくとも50%縮小)と既定した。腫瘍が2000mm3を超える体積になったとき、または動物が疾患の兆候を示したときには、動物を犠牲にした。すべての動物実験は、Kantonales Veterinaramt des Kantons Zurich (Bewilligung 198/2005)によりD.N.に発行されたプロジェクトライセンス「腫瘍ターゲッティング」のもとで実施した。
【0103】
播種性リンパ腫異種移植片モデル
全身性疾患のモデルにするため、SCIDマウスに、200μLのPBS中に再懸濁した2×106個のRamosリンパ腫細胞を静脈内注入した。治療を開始する前に、B細胞リンパ腫の播種と増殖を8日間を行った。マウスを無作為に6グループ(n6)に分けて、20μgのL19-IL2、6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2、もしくは200μgのリツキシマブ(単剤療法)、または20μgのL19-IL2と組み合わせた200μgのリツキシマブ、もしくは6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2と組み合わせた200μgのリツキシマブ(併用療法)、または生理食塩水のいずれかを8、11、14および17日目に静脈内注入した(Q3D×4)。後肢麻痺の存在または悪化しつつある状態の兆候についてマウスを毎日観察し、そのときにはすぐにマウスを犠牲にした。麻痺の発症または死亡をエンドポイントとして設定し、マウスの生存を治療効果の解析のために記録した。播種性リンパ腫モデルを用いた動物実験は、プロジェクトライセンス「腫瘍ターゲッティング」の補正1に従って実施した。
【0104】
統計的解析
データは平均±SEとして表される。異なるマウスグループ間の腫瘍体積の差異は、スチューデントの両側t検定を用いて比較した。播種性リンパ腫モデルにおける治療効果を示すためにKaplan-Meier生存曲線を実施し、log-rank検定を用いて比較した。両側P値<0.05を有意とみなした。
【0105】
結果
in vitro局在確認:異種移植腫瘍への免疫組織化学
Ramosリンパ腫異種移植片の切片への免疫組織化学的解析は、フィブロネクチンのEDBドメインに特異的なL19抗体を用いて実施した。図1(左のパネル)に示したように、リンパ腫組織中の血管構造物の特異的染色がL19について観察されたが、これはヒトU87グリア芽腫異種移植片(右のパネル)により例示される固形腫瘍でのL19の染色パターンによく似ていた。リンパ腫異種移植片におけるEDBの発現パターンは、このアイソフォームがin vivoでリンパ腫部位への生物活性化合物の選択的送達のための標的として役立ちうることを示している。
【0106】
in vivoターゲッティング能力:ex vivo蛍光および定量的生体内分布
次のステップでは、リンパ腫異種移植片に発現されたEDBフィブロネクチンがin vivoで血流からのL19抗体にとって接近可能であるか否かを検討した。そのために、皮下Ramosリンパ腫を担持するマウスに、フルオロフォアCy3で化学的に標識したL19-SIPを静脈内注入した。24時間後、動物を犠牲にして、腫瘍切片を「材料および方法」に記載したとおりに処理した。図2aは、リンパ腫切片の2色蛍光顕微鏡画像を示しており、腫瘍の血管構造物への抗体局在が確認される。
【0107】
抗体沈着を定量的に評価するために、皮下移植Ramosリンパ腫異種移植片を担持するマウスに放射性ヨウ素化L19-SIP調製物を静脈内注入した。図2bに示したように、L19は注入してから24時間後に4.7%ID/gの絶対腫瘍取込み値でリンパ腫組織への蓄積を示したが、この時点での腫瘍対血液の比は2.1で、ほどほどの高さにすぎなかった(腫瘍対臓器の比は2.7〜7.1の範囲)。しかし、48時間後には、抗体が正常な臓器から速やかに消失して、腫瘍対血液比(4.8)および腫瘍対臓器比(最大17.3)の増加という結果になった。このことは、腫瘍部位での抗体の特異的蓄積および残留を示すものである。
【0108】
限局性リンパ腫異種移植片に対する単剤L19-IL2および単剤リツキシマブの治療活性
抗体-サイトカイン融合タンパク質L19-IL2はさまざまな固形腫瘍モデルにおいて強力な抗癌活性を示すことが以前に明らかにされている (Menrad et al. (Expert Opin Ther Targets. 2005;9:491-500)、Carnemolla et al. (Blood. 2002;99:1659-1665))。B細胞リンパ腫におけるL19-IL2の単剤療法効果を評価するために、SCIDマウスに1×107個のRamos細胞を皮下注入した。腫瘍細胞を移植してから8日目に、腫瘍の大きさが50〜100mm3に達した時点で、マウス(n4)に20μgのL19-IL2 (6.6μgのrIL-2に相当する)、6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2、200μgのリツキシマブ、または生理食塩水のいずれかを静脈内投与した(Q3D×4)。図3は、単剤L19-IL2および単剤リツキシマブが、生理食塩水で処置した対照マウスと比較して、リンパ腫増殖を実質的に抑制した(それぞれP=0.024およびP=0.004)ことを示している。これとは対照的に、等モル量の非コンジュゲート化rIL-2は顕著な治療効果を示さず(P=0.383)、固形癌の動物モデルについて以前に報告されていた治療効果と同様であった。これらは、サイトカインの抗体介在血管ターゲッティングが治療効果に貢献する(L19-IL2対IL-2: P=0.044)ことを実証するものである。しかしながら、L19-IL2もリツキシマブも、単剤療法として用いた場合には、腫瘍増殖を遅らせただけであり、この実験ではすべての動物に進行性の疾患が認められた。融合タンパク質L19-IL2は再現性よくリンパ腫増殖を抑制した(P=0.031)が、SIPまたはIgGフォーマットでの裸のL19は、等モル量を単独でまたはフリーのrIL-2と組み合わせて投与したとき、治療的に不活性であった。このことは、L19-IL2の治療活性がリンパ腫部位へのサイトカインの標的化送達に依存する(図7)という概念をさらに強めるものである。
【0109】
治療に伴う毒性についての情報を得るために、動物の体重を週に少なくとも3回測定した。毒性の証拠は一切認められず、どの治療グループにおいても、試験期間を通して体重が3%以上減ったマウスはいなかった。
【0110】
限局性リンパ腫異種移植片に対するL19-IL2とリツキシマブの組合せの治療活性
リツキシマブの臨床上の有効性を高めるための方法がいろいろ報告されており、例えば、リンパ腫細胞のADCC介在死滅を増強するためのrIL-2の投与が報じられている(Cartron et al., Blood. 2004;104:2635-2642)。こうして、本発明者らは、血管標的化IL-2と抗CD20療法の組合せがいずれか一方の治療手法よりも治療上有効であるか、特に、リンパ腫組織へのIL-2の抗体介在蓄積が非コンジュゲート化サイトカインとリツキシマブの組合せの有効性を果たして超えるか、を検討した。そのために、次のスキームに従って併用療法実験をおこなった(5匹/グループ):200μgのリツキシマブ+2.2μgの非コンジュゲート化rIL-2 (「低用量」)、200μgのリツキシマブ+6.6μgの非コンジュゲート化rIL-2 (「高用量」)、200μgのリツキシマブ+6.6μgのL19-IL2 (「低用量」、2.2μgのrIL-2に相当する)、200μgのリツキシマブ+20μgのL19-IL2 (「高用量」、6.6μgのrIL-2に相当する)、または対照の生理食塩水。単剤療法実験と同様に、腫瘍細胞の接種後8日目(触知可能な皮下異種移植片が現われたとき)に注入を開始し、3日ごとに合計4回の注入を繰り返した。
【0111】
図4に示したように、非コンジュゲート化rIL-2と組み合わせたリツキシマブは、対照と比較して、顕著な腫瘍増殖の遅延を引き起こした(rIL-2(低および高用量)対生理食塩水:P<0.001)。高用量rIL-2は、リツキシマブの薬効を高める上で低用量rIL-2よりやや有効であった(P=0.038)が、腫瘍退縮はまったく認められず、すべての腫瘍が増殖し続けた。これとは対照的に、リツキシマブとL19-IL2融合タンパク質との組合せは、際立って高い抗リンパ腫活性を示し、高用量L19-IL2グループのマウス5匹のうち4匹で、確立されたRamosリンパ腫の完全根絶をもたらし(L19-IL2(高用量)対生理食塩水:P<0.00001)、その際、4匹のうち3匹のCR(完全寛解)がすでに3回の注入後に達成された。実際、この免疫系サイトカインは、リツキシマブと組み合わせた対応等モル量の非コンジュゲート化rIL-2よりはるかに強力であった (L19-IL2(高用量)対rIL-2(高用量):P<0.001)。注目すべき点は、リツキシマブと組み合わせた最低用量レベルのL19-IL2でさえも、4回の治療サイクル後に5匹のうち4匹の症例でCRが達成されたことを含めて、すぐれた治療活性をまだ示したことである(L19-IL2(低用量)対生理食塩水:P<0.00001;L19-IL2(低用量)対rIL-2(低用量):P<0.00001)。これに対して、リツキシマブと組み合わせた非標的化サイトカインは、3倍高い用量でさえも、腫瘍増殖を遅らせることができたにすぎない(L19-IL2(低用量)対rIL-2(高用量):P<0.001)。低用量L19-IL2グループでCRを達成した動物は最終的には、それぞれ21、48、50および81日間の寛解持続期間の後で再発したが、高用量L19-IL2グループのすべてのCRは長期間持続し、すべてのマウスが1年の観察期間を通して腫瘍なしの状態であり続けた。2匹のマウス(低用量L19-IL2グループの1匹と高用量L19-IL2グループの1匹)はCRを達成しなかったものの、腫瘍塊が20mm3以下に退縮した。
【0112】
L19-IL2(単独または併用)の治療効果が別のリンパ腫モデルにおいて再現されるかを検討するために、限局性DoHH-2濾胞性リンパ腫異種移植片を担持するSCIDマウスを上記と同様の条件で処置した。Ramosモデルと同様に、L19-IL2はリンパ腫増殖を抑制するのに単剤として有効であった(P<0.0001)が、腫瘍退縮を起こすことはなく、一方、等しい用量のその構成成分(裸のL19とrIL-2)の組合せは顕著な治療活性を示さなかった。リツキシマブと併用した場合には、L19-IL2はすべての症例(5/5)で完全な腫瘍根絶(41日目に再発の兆候なし)を再現可能にもたらし、単剤リツキシマブまたはリツキシマブと非標的化rIL-2(および非融合(naked)のL19)の組合せよりも(たとえ両グループにおいて2/5のCRが観察されたとしても)著しく効果的であった(P<0.01)。
【0113】
単剤療法と併用療法において限局性RamosおよびDoHH-2異種移植片に対して用いたすべての薬剤の治療活性を表1にまとめて示す。
【0114】
重要なこととして、併用療法の治療効果は付加的な毒性と関連していなかった。マウスは治療期間中のどの時点でも著しい体重減少を示さなかった(<3%)。このことは、併用療法レジメンが十分に耐えられることを示すものである。
【0115】

【0116】
播種性リンパ腫モデルにおける治療活性
播種性リンパ腫異種移植片に対する単剤およびリツキシマブとの組合せとしてのL19-IL2の治療活性
ヒトの進行NHL(非ホジキンリンパ腫)は一般に播種性疾患として発症する。全身性リンパ腫に対するL19-IL2の活性を検討するために、本発明者らは播種性SCID/Ramosリンパ腫モデルを選んだ。リンパ腫細胞を静脈内に接種されたSCIDマウスは通常、後肢の麻痺をおこすが、この麻痺は脊髄でのリンパ腫症状から生じ、この疾患の終末期を示している。公表された観察によれば、Ramos細胞の静脈内注入によって、パイロット実験のすべてのケースで26日までに後肢の麻痺が現われて、移植した細胞の100%の生着率を示した(データは示さず)。どのケースでも麻痺が死に先行したので、後肢麻痺の出現を生存率解析のためのエンドポイントとして設定した。リンパ腫細胞の生着と増殖を確実にするため、治療開始を8日間延期した。薬剤の投与およびスケジュールは限局性Ramosリンパ腫モデルで採用したものと同じであり、単剤療法(rIL-2、L19-IL2、リツキシマブ)と併用療法(リツキシマブ+rIL-2、リツキシマブ+L19-IL2)双方の活性をこの実験で同時に評価した。
【0117】
Kaplan-Meier生存曲線を図5に示す。25日までに、生理食塩水で治療した対照マウスはすべてが播種性疾患のため死亡し、生存期間中央値は24日であった。非コンジュゲート化rIL-2単独の投与は顕著な治療的有用性を示さなかった(生存中央値24日;P=0.518、log-rank検定)。これとは対照的に、対応する用量の単剤L19-IL2 (20μg)は生存期間中央値を29日まで引き延ばし(P<0.010、非標的化rIL-2と比較)、生理食塩水で治療した対照と比較して、疾患の出現を遅らせる上でリツキシマブと同様に有効であった(24日に対して、それぞれの生存中央値29および30日;両薬剤についてP<0.001)。併用療法では、リツキシマブへのrIL-2の添加は、リツキシマブ単独と比較して、疾患の出現をわずかに遅らせたにすぎず、統計的有意性に達しなかった(34日対30日;P=0.180)。注目すべきは、単剤療法で処置した全マウスならびにリツキシマブと非標的化rIL-2の組合せで治療した全マウスが最終的に末期的麻痺を発症したのに対して、L19-IL2とリツキシマブの組合せを受けた6匹すべてのマウスが、疾患の臨床兆候を示すことなく60日間以上生存したことである。62日目に、1匹のマウスを殺さねばならなかったが、その理由は感染による眼漏と体重減少のためであり、剖検で麻痺やリンパ腫の症状を示すものは何もなかった。さらに2匹のマウスをそれぞれ73日目と79日目に犠牲にしなければならなかったが、それは腋窩リンパ節にリンパ腫を発症したことによるが、後肢の麻痺は見られなかった。残り3匹のマウスは腫瘍細胞接種後310日が経過してもまだ無病のままであった。
【0118】
ヒトリンパ腫サンプルにおける標的発現の検証
最後に、免疫組織化学的解析によって、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含めて、ヒトB細胞悪性疾患におけるEDBフィブロネクチンの存在と血管発現パターンを確認した(図6)。
【0119】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子と
を含む組合せ物。
【請求項2】
B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子が、CD20、CD23、CD22、CD40、CD80、HLA-DRまたはHu1D10と特異的に結合する、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
CD20、CD23、CD22、CD40またはCD80と特異的に結合する分子が、抗体もしくは抗体フラグメント、またはその融合タンパク質である、請求項1または2に記載の組合せ物。
【請求項4】
少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) CD20と特異的に結合する分子と
を含む組合せ物。
【請求項5】
少なくとも
(i) EDb-フィブロネクチンを特異的に認識する抗体部分およびインターロイキン-2部分を含む融合タンパク質と、
(ii) CD20を発現している細胞と特異的に結合する分子と
を含む組合せ物。
【請求項6】
前記分子がCD20と特異的に結合する抗体または抗体フラグメントである、請求項4または5に記載の組合せ物。
【請求項7】
(i)の抗体部分がフィブロネクチンのEDbドメインを認識する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項8】
前記融合タンパク質が抗体部分とインターロイキン-2部分を連結する融合タンパク質リンカーを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項9】
前記抗体部分がナノモルまたはナノモル以下の親和性でEDb癌胎児性フィブロネクチンドメインと特異的に結合する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項10】
前記抗体部分がL19抗体の少なくとも1つのCDR配列を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項11】
前記抗体部分が配列番号6〜11に示される配列を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項12】
前記抗体部分が配列番号1に示される少なくとも1つのV重鎖または配列番号2に示される少なくとも1つのV軽鎖を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項13】
前記抗体部分が配列番号1に示される1つのV重鎖と配列番号2に示される1つのV軽鎖を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項14】
前記重鎖と前記軽鎖が抗体リンカーによって連結される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項15】
前記抗体リンカーが配列番号3に示される配列または配列番号3に示される配列に少なくとも90%の同一性を示す配列を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項16】
インターロイキン-2部分がヒトインターロイキン-2またはその機能的変異体である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項17】
インターロイキン-2部分が配列番号4に示される配列を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項18】
融合タンパク質リンカーが抗体部分とインターロイキン-2部分を連結している、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項19】
融合タンパク質リンカーの長さが1〜30アミノ酸である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項20】
融合タンパク質リンカーが配列番号5に示される配列を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項21】
前記抗体もしくは抗体フラグメントまたはその融合タンパク質がCD20と特異的に結合する、請求項3および7〜20のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項22】
抗CD20抗体がADCC活性を示す、請求項21に記載の組合せ物。
【請求項23】
抗CD20抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、PRO131921、ベルツズマブ、オファツムマブ、AME-133、およびGA-101から選択される、請求項6、21および22のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項24】
B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する分子が標識されている、特に放射性標識されている、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項25】
B細胞、前駆B細胞および/またはそれらの対応する癌性細胞に結合する標識分子が放射性標識抗CD20抗体である、請求項24に記載の組合せ物。
【請求項26】
放射性標識抗CD20抗体が、90Y、111Inおよび131I-標識抗CD20抗体から選択される、請求項25に記載の組合せ物。
【請求項27】
放射性標識抗CD20抗体がY-90-イブリツモマブ-チウキセタン(Y90-Zevalin(登録商標))およびI-131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))から選択される、請求項26に記載の組合せ物。
【請求項28】
医薬として使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項29】
癌治療用の医薬として使用するための、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組合せ物。
【請求項30】
前記癌がリンパ腫である、請求項29に記載の組合せ物。
【請求項31】
リンパ腫がB細胞リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫(NHL)である、請求項30に記載の組合せ物。
【請求項32】
自己免疫疾患の治療のための、請求項28に記載の組合せ物。
【請求項33】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および自己免疫性溶血性貧血から選択される、請求項32に記載の組合せ物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−509953(P2011−509953A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542524(P2010−542524)
【出願日】平成20年11月8日(2008.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009441
【国際公開番号】WO2009/089858
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(507147231)
【Fターム(参考)】