説明

抗IGF−IR癌療法のためのバイオマーカー

【課題】患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測する方法、療法の有効性をモニタリングする方法および患者における癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法についてのバイオマーカーとしての血液中の遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP比率の使用、ならびにこのようなバイオマーカーに基づいて選択された患者においてIGF−1R療法を用いて癌を治療するための方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
インスリン様成長因子(IGF)系は、2つのタイプの関連しない受容体、すなわちインスリン様成長因子受容体1(IGF−IR、CD221)およびインスリン様成長因子受容体2(IGF−2R、CD222)、2つのリガンド、すなわちインスリン様成長因子1(IGF−1)およびインスリン様成長因子2(IGF−2)、6つのIGF結合タンパク質(IGFBP)、すなわちIGFBP−1からIGFBP−6を含む。さらに、大きなIGFBPプロテアーゼ群(例えば、カスパーゼ、メタロプロテイナーゼ、前立腺特異的抗原)は、IGF結合型IGFBPを加水分解して、遊離IGFを放出させる。ソマトメジンCとしても知られているIGF−1は、分子構造がインスリンに類似しているポリペプチドホルモンである。IGF−1は一本鎖状の70個のアミノ酸からなり、7649ダルトンの分子量を有する。IGF−1は、内分泌ホルモンとして肝臓により主に生産され、また同様に、標的組織において傍分泌(paracrine)/自己分泌(autocrine)の様式で生産される。IGFBPは24から45kDaのタンパク質である。6つのIGFBP全てが互いに50%の相同性を有し、リガンドがIGF−IRに対して有している結合親和性と桁が等しい、IGF−IおよびIGF−IIに対する結合親和性を有する。およそ98%のIGF−1が、6つの結合タンパク質の1つに結合する(IGF−BP)。最も多いタンパク質であるIGFBP−3は、IGFの全結合の約80%を占める。IGF−1は1:1のモル濃度比率でIGFBP−3に結合する。
【0003】
IGFは細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの調節において極めて重要な役割を有する。IGF−IR介在性シグナル伝達の阻害により腫瘍の成長速度が低減すること、アポトーシスが増大すること、化学療法および他の分子標的療法による腫瘍の死滅が増大することが示されている(Pollakら、Nature Reviews Cancer.2004.4:505〜516;Zhangら、Breast Cancer Res.2000.2:170〜75;Chakravartiら、Cancer Res.2002.62:200〜07において概説されている)。フィギツムマブ(figitumumab)などの抗IGF−1R抗体および低分子阻害剤を含めた、様々な癌に対する多くのIGF−1Rアンタゴニスト療法が臨床的に調べられてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO02/053596
【特許文献2】US7,572,897
【特許文献3】WO05005635
【特許文献4】US7,378,503
【特許文献5】WO040087756
【特許文献6】US7,241,444
【特許文献7】WO03059951
【特許文献8】US2008025990
【特許文献9】WO05016970
【特許文献10】US7217796
【特許文献11】WO03100008
【特許文献12】US7,612,178
【特許文献13】WO07126876
【特許文献14】WO2002092599
【特許文献15】WO2004/043962
【特許文献16】WO2004/054996
【特許文献17】WO2005097800
【特許文献18】WO2006074057
【特許文献19】WO2008005956
【特許文献20】WO2006/088639
【特許文献21】WO2006/129163
【特許文献22】US20060153808
【特許文献23】WO2002055106
【特許文献24】WO2003/040170
【特許文献25】US20070117809
【特許文献26】米国特許第7,303,888号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pollakら、Nature Reviews Cancer.2004.4:505〜516
【非特許文献2】Zhangら、Breast Cancer Res.2000.2:170〜75
【非特許文献3】Chakravartiら、Cancer Res.2002.62:200〜07
【非特許文献4】Immunoassays:A Practical Approach.James P.Gosling編、Oxford:Oxford University Press、2000、304 pp.、ISBN 0−19−963710−5
【非特許文献5】Immunoassay.Eleftherios P.DiamandisおよびTheodore K.Christopoulos編、San Diego:Academic Press、1996、579 pp、Paperback.ISBN 0−12−214730−8
【非特許文献6】Frystyk Jら、Growth Horm IGF Res.2001、11:117〜27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は、患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者の血液中の遊離IGF−1の濃度を決定することを含み、ここで、血液中の遊離IGF−1の濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きいと、遊離IGF−1濃度がより低い患者と比較して、患者における療法の効力がより良いものであることが予測されるかまたは予想される。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率を決定することを含み、ここで、インスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きいと、比率がより低い患者と比較して、患者における療法の効力がより良いものであることが予測されるかまたは予想される。
【0008】
別の態様において、本発明は、IGF−IRアンタゴニストを用いる療法に癌患者を選択する方法(「患者選択法」)を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者の血液中の遊離IGF−1濃度を決定すること、および遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率を決定すること、およびインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の有効性をモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者におけるIGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者の血液中の遊離IGF−1濃度の変化をモニタリングすることを含み、ここで、療法を開始した後の遊離IGF−1濃度の増大が、療法の有効性の指標である。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者におけるIGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率の変化をモニタリングすることを含み、ここで、療法を開始した後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が、療法の有効性の指標である。特定のIGF−1Rアンタゴニスト療法には、IGF−1によるIGF−1Rへの結合を阻害する分子、例えば、フィギツムマブおよびWO02/053596において開示されている抗体などの抗IGF−1R抗体、ならびに低分子阻害剤が含まれる。
【0010】
別の態様において、本発明は、IGF−1Rアンタゴニスト療法を用いて患者における癌を治療する方法(「治療的方法」)を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、(1)血液中の遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、および(2)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む。いくつかの他の実施形態において、本方法は、(1)血液中のインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、および(2)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む。
【0011】
表1は、パクリタキセルにカルボプラチンを加えたもの(PC)およびフィギツムマブ(F10−10mg/kg用量またはF20−20mg/kg用量)で治療した患者における3ヶ月および6ヶ月でのPFS率についての、各マーカーについてのROC曲線下面積(AUC)および有意レベル(P)を示す。
【0012】
表2は、PCF20で治療した患者における3ヶ月および6ヶ月でのPFS率についての、各マーカー比率についてのROC曲線下面積(AUC)および有意レベル(P)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7ng/mLを下回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。
【図2】ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7ng/mLに等しいかまたはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。
【図3】PCF20を与えられ、ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7を下回るかまたは0.7ng/mLに等しいかもしくはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。
【図4】ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。これらの患者のPFSの中央値は、4.30ヶ月(PC)、2.83ヶ月(PCF10)、および5.03ヶ月(PCF20)であった。
【図5】ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8に等しいかまたはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。
【図6】PCF20を与えられ、インスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回るかまたは0.8に等しいかもしくはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者における、PFSのカプラン・マイヤー分析を示す図である。
【図7】ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回る患者と、ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8に等しい患者およびそれよりも高い患者とにおける、遊離IGF−1血漿レベルのベースラインの中央値を表す図である。
【図8】フィギツムマブを0.1mg/kgに等しいかまたはそれを上回る用量で初回投与した1週間目からのベースラインと比較した、遊離IGF−1レベルの増大を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.用語の定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して用いられる科学的用語および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。
【0015】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書において、1つのまたは2つ以上の(すなわち少なくとも1つの)その冠詞の文法上の対象を言う。例えば、「1つの(an)要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0016】
「遊離IGF−1」という用語は、IGF結合タンパク質に結合していないIGF−1を言い、特定のアッセイ条件下でIGFBPから容易に解離し得るIGF−1画分を含む。
【0017】
「生物学的試料」という用語は、対象から単離される組織または流体の試料を言い、これには、限定はしないが、例えば血漿、血清、髄液、リンパ液、皮膚、気道、腸管、および尿生殖路の外部切片、涙、唾液、痰、乳、全血またはあらゆる血液画分、血液誘導体、血球、腫瘍、神経組織、器官またはあらゆるタイプの組織、洗浄により得られるあらゆる試料(例えば気管支系のもの)、ならびにインビボでの細胞培養物の構成成分の試料が含まれる。
【0018】
遊離IGF−1濃度は、患者から得られる生物学的試料において測定することができる。例えば、遊離IGF−1濃度は、全血試料において、または血清もしくは血漿などの血液の液体構成要素の試料において測定することができる。患者の血液中の遊離IGF−1濃度は、好ましくは、ACTIVE Free IGF−I ELISAキット(DSL−10−9400、Diagnostic Systems Laboratories,Inc、Fullerton、CA 92834−3100 USAにより販売されている)を用いて、EDTA血漿試料において測定される。いくつかのケースにおいて、このような濃度はベースライン濃度である。「ベースライン濃度」という用語は、患者に療法の初回投与を行う前の、患者の血液中の遊離IGF−1濃度を言う。
【0019】
「インスリン/IGFBP−1比率」という用語は、mU/Lで表されるインスリン濃度をng/mLで表されるIGFBP−1濃度で割ることにより計算される、IGFBP−1濃度に対するインスリンの濃度の比率を言う。例えば、インスリン濃度が100mU/Lであり、IGFBP−1濃度が100ng/mLである場合、インスリン/IGFBP−1比率は1.0である。血液中のインスリンおよびIGFBP−1の濃度は、全血試料において、または血清もしくは血漿などの血液の液体構成要素の試料において測定することができる。いくつかのケースにおいて、このような比率は、インスリンおよびIGFBP−1の両方のパラメータのベースライン濃度から得られる。「ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率」という用語は、患者に抗IGF−IR療法の初回投与を行う前の、患者の血液中のインスリン濃度とIGFBP−1濃度との比率を言う。
【0020】
「IGF−1Rアンタゴニスト」という用語は、IGF−1Rシグナル伝達により仲介される下流経路を含めた、IGF−1Rの生物学的活性を遮断するか、抑制するか、阻害するか、または低減させる、あらゆる分子を言う。「アンタゴニスト」という用語は、生物学的作用のどのような特定のメカニズムも示唆するものではなく、明示的に、IGF−1Rとの全ての可能性のある薬理学的、生理学的、および生化学的相互作用を含み、含むものである。IGF−1Rアンタゴニストの例には、(1)IGF−1Rによるそのリガンドへの結合の拮抗阻害剤または非拮抗阻害剤であり、したがってIGF−1Rとそのリガンドとの結合に干渉する作用物質、(2)IGF−1Rとその天然リガンドとの結合には干渉しないが、その代わりに、IGF−1Rによるそのリガンドへの結合により生じる活性を阻害するかまたは減少させる作用物質、(3)IGF−1Rの発現を減少させる作用物質が含まれる。このような作用物質の例には、抗体(その抗原結合部分を含める)、核酸分子(アンチセンスまたは干渉RNA分子など)、ペプチド、非ペプチド低分子有機物などが含まれる。
【0021】
「IGF−1Rアンタゴニスト療法」という用語は、医学的状態を管理するために、IGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを言う。
【0022】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互に連結した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてはVと省略される)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3という3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてはVと省略される)および軽鎖定常領域からなる。V領域およびV領域はさらに、より保存性の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に分けることができる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および従来の補体系の第1の成分(Clq)を含めた、宿主の組織または因子に対する、免疫グロブリンの結合を仲介し得る。
【0023】
「癌を治療すること」または「癌の治療」という用語は、癌であると診断された患者において所望のまたは有益な効果を生じさせることを言う。所望のまたは有益な効果には、(1)癌細胞のさらなる成長または拡散の阻害、(2)癌細胞の死滅、(3)癌の再発の阻害、(4)癌に関連する症候(痛みなど)の緩和、低減、軽減、阻害、もしくは前記症候の頻度の低減、または(5)患者の生存率の改善が含まれ得る。癌の再発の阻害には、放射線、化学療法、外科手術、または他の技術によりこれまでに治療されている、癌の原発部位および周辺組織での癌の成長の阻害、ならびに新たな遠位部位での癌の成長の不存在が含まれる。所望のまたは有益な効果は、患者により知覚されるものまたは他覚的なもののいずれかであり得る。例えば、患者がヒトである場合、ヒトは、改善または療法に対する応答の、患者により知覚される兆候として、気力もしくは活力の改善または痛みの減少を認識し得る。あるいは、臨床医は、身体的検査、実験的パラメータ、腫瘍マーカー、またはX線撮影による所見に基づいて、腫瘍サイズまたは腫瘍組織量の減少に気付き得る。治療に対する応答について臨床医が観察し得るいくつかの実験的兆候には、白血球数、赤血球数、血小板数、赤血球沈降速度、および様々な酵素レベルなどの、試験結果の正常化が含まれる。さらに、臨床医は、検出可能な腫瘍マーカーの減少を観察し得る。あるいは、他覚的な改善を評価するために、超音波診断、核磁気共鳴試験、および陽電子放出試験などの他の試験を用いることができる。
【0024】
B.バイオマーカーとしての遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP−1比率
a)IGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測するための方法(「効力予測法」)
1つの態様において、本発明は、患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者の血液中の遊離IGF−1濃度を決定することを含み、ここで、血液中の遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも高いと、遊離IGF−1濃度がより低い患者と比較して、患者における療法の効力がより良いものであることが予測されるかまたは予想される。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率を決定することを含み、ここで、血液中のインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも高いと、比率がより低い患者と比較して、患者における療法の効力がより良いものであることが予測されるかまたは予想される。
【0025】
上記の効力予測法において、ならびに以下に記載する患者選択法および治療的方法において、遊離IGF−1、インスリン、およびIGFBP−1の濃度は典型的には血漿または血清の試料において測定されるが、好ましくは血漿において測定される。それらは、療法を開始する前または後のいずれかに採取された試料において測定され得るが、それらは療法を開始する前に採取された試料において測定されることが好ましい(「ベースライン濃度」)。さらに、それらは単一の試料で、または所定の時間間隔で採取された複数の試料で測定され得る。遊離IGF−1、インスリン、およびIGFBP−1の濃度が複数の試料で測定される場合、試料中の濃度の平均を用いることができる。遊離IGF−1またはインスリン/IGFBP−1比率の所定の値は、多くの因子、例えば、用いるアッセイ方法、遊離IGF−1を測定する試料のタイプ、試料の保存条件(温度および期間など)、患者の民族的アイデンティティーなどに依存して、わずかに変化し得る。
【0026】
上記の効力予測法において、ならびに以下に記載する患者選択法および治療的方法において、遊離IGF−1の所定の値は、通常、約0.45ng/Lから0.9ng/Lの範囲の、例えば0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、および0.9ng/mLの、血漿における遊離IGF−1のベースライン濃度である。1つの実施形態において、遊離IGF−1の所定の値は、0.5ng/mLの、遊離IGF−1のベースラインの血漿濃度である。別の実施形態において、遊離IGF−1の所定の値は、0.7ng/mLの、ベースラインの血漿濃度である。さらに別の実施形態において、遊離IGF−1の所定の値は、0.8ng/mLの、ベースラインの血漿濃度である。
【0027】
上記の効力予測法において、ならびに以下に記載する患者選択法および治療的方法において、インスリン/IGFBP−1比率の所定の値は、通常、約0.5か1.5の範囲の、例えば0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、および1.5の、血漿におけるベースラインのインスリン/IGFBP−1比率である。1つの実施形態において、インスリン/IGFBP−1の所定の値は、0.5の、血漿におけるベースラインのインスリン/IGFBP−1比率である。別の実施形態において、インスリン/IGFBP−1の所定の値は、0.8の、血漿におけるベースラインのインスリン/IGFBP−1比率である。さらに別の実施形態において、インスリン/IGFBP−1の所定の値は、1の、血漿におけるベースラインのインスリン/IGFBP−1比率である。
【0028】
b)IGF−1Rアンタゴニスト療法のために患者を選択するための方法(「患者選択法」)
別の態様において、本発明は、IGF−IRアンタゴニストを用いる療法のために癌患者を選択する方法(「患者選択法」)を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者の血液中の遊離IGF−1濃度を決定すること、および遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率を決定すること、およびインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む。遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP比率の所定の値、ならびにそれらの測定および選択は、上記にこれまでに記載した通りである。
【0029】
c)IGF−1Rアンタゴニスト療法の有効性をモニタリングするための方法
別の態様において、本発明は、患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の有効性をモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、患者におけるIGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者の血液中の遊離IGF−1濃度の変化をモニタリングすることを含み、ここで、療法を開始した後の遊離IGF−1濃度の増大が、療法の有効性の指標である。いくつかの他の実施形態において、本方法は、患者におけるIGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者の血液中のインスリン/IGFBP−1比率の変化をモニタリングすることを含み、ここで、療法を開始した後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が、療法の有効性の指標である。特定のIGR−1Rアンタゴニスト療法には、IGF−1によるIGF−1Rへの結合を阻害する分子、例えば、フィギツムマブおよびWO02/053596において開示されている抗体などの抗IGF−1R抗体、ならびに低分子阻害剤が含まれる。
【0030】
血液中の遊離IGF−1濃度およびインスリン/IGFBP−1比率の変化は、異なる時点で採取された2つ以上の試料において決定され、そのうち少なくとも1つの試料は、療法を開始した後に採取される。試料の全ては療法を開始した後に採取され得るが、少なくとも1つの試料は、遊離IGF−1のベースライン濃度またはベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が決定され得るように、療法を開始する前に採取されることが好ましい(「ベースライン試料」)。ベースライン試料以外の試料は、療法の初回投与の1週間後、または1回、2回、3回、4回、もしくはそれ以上の治療サイクル後などの、療法の開始と終結との間のあらゆる時点で採取され得る。それぞれのベースライン値と比較して、療法を開始した後の遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率の変化をモニタリングすることが好ましい。1つの実施形態において、本方法は、ベースラインの遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率と比較して、IGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した3週間後の、患者の血液中の遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率の変化をモニタリングすることを含み、ここで、少なくとも200%の増大(すなわち、遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率がそれぞれのベースライン値の少なくとも3倍である)は、療法の有効性の指標である。別の実施形態において、IGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した4サイクル後の、患者の血液中の遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率の増大は、ベースラインの遊離IGF−1濃度の少なくとも200%である。
【0031】
C.IGF−1Rアンタゴニスト療法を用いる癌の治療のための方法(「治療的方法」)
別の態様において、本発明は、IGF−1Rアンタゴニスト療法を用いて患者における癌を治療する方法(「治療的方法」)を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、(1)血液中の遊離IGF−1濃度またはインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、および(2)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む。いくつかの他の実施形態において、本方法は、(1)インスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、および(2)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む。遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP比率の所定の値、ならびにそれらの測定および選択は、上記にこれまでに記載した通りである。
【0032】
IGF−IRの活性を低減させることにより治療可能なあらゆる癌は、本発明の治療的方法によって治療することができる。特異的な癌の例には、扁平上皮細胞癌、黒色腫、白血病、骨髄腫、胃癌、脳癌、肺癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、および頭頸部癌が含まれる。
【0033】
あらゆる適切なIGF−1Rアンタゴニストは、癌であると同定された癌患者を治療するために用いることができる。適切なIGF−1Rアンタゴニストの例には、抗体およびその抗原結合部分、核酸分子、ペプチド、ならびに非ペプチド低分子有機物が含まれる。
【0034】
1つの特定の態様において、IGF−1Rアンタゴニストは、IGF−1Rに結合し、IGF−1Rの活性を阻害する抗体である(IGF−1Rアンタゴニスト抗体)。本発明の実施において有用な特定の抗体には、WO02/053596(国際出願番号PCT/US01/51113)に記載されているものが含まれ、前記文献はさらに、抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、3.1.1、4.9.2、および4.17.3を記載している。その公開された出願において開示されているように、これらの抗体を生産するハイブリドーマは、2000年12月12日に、以下の寄託番号で、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209に寄託された。
【0035】
【表1】

【0036】
上述の各抗体のアミノ酸配列は本願において提供される。配列番号の索引を表3において提供する。
【0037】
【表2】

【0038】
いくつかの実施形態において、IGF−1アンタゴニスト抗体は、
a)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体の重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む抗体と、
b)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体の重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列を含む抗体と、
c)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体と、IGF−1Rへの結合について競合する抗体と、
d)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体と
からなる群から選択される。
【0039】
いくつかの他の実施形態において、IGF−1アンタゴニスト抗体は、
a)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
b)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
c)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
d)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
e)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、ならびに
f)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体
からなる群から選択される。
【0040】
本発明の治療的方法において用いることができる他のIGF−1Rアンタゴニスト抗体の例には、
a)US7,572,897およびWO05005635において開示されているIGF−1R抗体であって、とりわけ、受託番号がDSM ACC 2587であるハイブリドーマ細胞系<IGF−1R>HUMABクローン18により生産される抗体、または受託番号がDSM ACC 2594であるハイブリドーマ細胞系<IGF−1R>HUMABクローン22により生産される抗体、
b)US7,378,503およびWO040087756において開示されているIGF−1R抗体またはその抗原結合部分であって、とりわけ、ハイブリドーマ細胞系<IGF−1R>HuMabクローン1a、<IGF−1R>HuMabクローン23、または<IGF−1R>HuMabクローン8から得ることができる抗体、
c)US7,241,444およびWO03059951において開示されているIGF−1R抗体またはその抗原結合部分、
d)US2008025990およびWO05016970において開示されているIGF−1R抗体またはその抗原結合部分、
e)US7217796およびWO03100008において開示されているIGF−1R抗体またはその抗原結合部分であって、とりわけ、(1)PTA−5214という番号でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されているプラスミド15H12/19D12HCA(ガンマ4)におけるポリヌクレオチドによってコードされている重鎖、およびPTA−5220という番号でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されているプラスミド15H12/19D12LCF(カッパ)におけるポリヌクレオチドによってコードされている軽鎖を含む抗体、ならびに(2)PTA−5216という番号でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されているプラスミド15H12/19D12HCA(ガンマ1)におけるポリヌクレオチドによってコードされている重鎖、およびPTA−5220という番号でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託されているプラスミド15H12/19D12LCF(カッパ)におけるポリヌクレオチドによってコードされている軽鎖を含む抗体、
f)US7,612,178およびWO07126876において開示されているIGF−1R抗体またはその抗原結合部分であって、とりわけ、(1)PTA−7444というアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)寄託番号で寄託されているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって生産されるIGF−1Rに特異的に結合するM13−C06.G4.P.aglyである抗体、または(2)PTA−7444というアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)寄託番号で寄託されているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって生産されるM13−C06.G4.P.aglyのモノクローナルFab抗体断片の抗原結合ドメインと同一の抗原結合ドメインを含む抗体
が含まれる。
【0041】
特異的抗IGF−1R抗体の例には、F−50035およびMK−0646(Pierre Fabre/Merck)、ロバツムマブ(Robatumumab)(Schering−Plough)、R1507(Roche/Genmab)、シクスツムマブ(Cixutumumab)(ImClone)、AMG−479(Amgen)、BIIB022(Biogen Idec)、およびフィギツムマブ(Pfizer)が含まれる。
【0042】
本発明と共に用いるために適した他のクラスの分子には、IGF−1Rに特異的に結合するペプチドアプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチドIGF−1R調節因子、および低分子IGF−1R阻害剤が含まれる。好ましい低分子IGF−1R阻害剤には、OSI−906(OSI Pharmaceuticals)、AEW−541(Novartis)、BMS−754807、BMS−536924、およびBMS−554417(Bristol−Myers Squibb)、INSM−18(Insmed)、XL228(Exelixis)、ならびに国際特許出願WO2002092599、WO2004/043962、WO2004/054996、WO2005097800、およびWO2006074057、WO2008005956において開示されているものが含まれる。
【0043】
治療的方法の実施において、IGF−1Rアンタゴニストは、単独療法として単独で投与され得るか、または1つもしくは複数のさらなる治療用作用物質と組み合わせて投与され得る。癌を治療するための組み合わせ療法において用いることができるさらなる治療用作用物質のカテゴリーの例には、(1)化学療法作用物質、(2)免疫療法作用物質、および(3)ホルモン療法作用物質が含まれる。
【0044】
「化学療法作用物質」という用語は、癌細胞の死滅を生じさせ得るか、または癌細胞の成長、分裂、修復、および/もしくは機能に干渉し得る、化学的または生物学的物質を言う。化学療法作用物質の例には、WO2006/088639、WO2006/129163、およびUS20060153808において開示されているものが含まれ、前記文献の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれるものである。特定の化学療法作用物質の例には、(1)クロラムブシル(Leukeran)、シクロホスファミド(CYTOXAN)、イフォスファミド(IFEX)、塩酸メクロレタミン(MUSTARGEN)、チオテパ(THIOPLEX)、ストレプトゾトシン(ZANOSAR)、カルムスチン(BICNU、GLIADEL WAFER)、ロムスチン(CEENU)、およびダカルバジン(DTIC−DOME)などのアルキル化作用物質、(2)ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン(ELLENCE、PHARMORUBICIN)、ダウノルビシン(CERUBIDINE、DAUNOXOME)、ネモルビシン、イダルビシン(IDAMYCIN PFS、ZAVEDOS)、ミトキサントロン(DHAD、NOVANTRONE)、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、COSMEGEN)、プリカマイシン(MITHRACIN)、マイトマイシン(MUTAMYCIN)、およびブレオマイシン(BLENOXANE)、酒石酸ビノレルビン(NAVELBINE)、ビンブラスチン(VELBAN)、ビンクリスチン(ONCOVIN)、およびビンデシン(ELDISINE)などの細胞傷害性抗生物質を含むアルカロイドまたは植物ビンカアルカロイド、(3)カペシタビン(XELODA)、シタラビン(CYTOSAR−U)、フルダラビン(FLUDARA)、ゲムシタビン(GEMZAR)、ヒドロキシウレア(HYDRA)、メトトレキサート(FOLEX、MEXATE、TREXALL)、ネララビン(ARRANON)、トリメトレキサート(NEUTREXIN)、およびペメトレキセド(ALIMTA)などの代謝拮抗物質、(4)5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(XELODA)、ラルチトレキセド(TOMUDEX)、テガフールウラシル(UFTORAL)、およびゲムシタビン(GEMZAR)などのピリミジンアンタゴニスト、(5)ドセタキセル(タキソテール)、パクリタキセル(タキソール)などのタキサン、(6)シスプラチン(PLATINOL)およびカルボプラチン(PARAPLATIN)、およびオキサリプラチン(エロキサチン)などのプラチナ製剤、(7)イリノテカン(CAMPTOSAR)、トポテカン(HYCAMTIN)、エトポシド(ETOPOPHOS、VEPESSID、TOPOSAR)、およびテニポシド(VUMON)などのトポイソメラーゼ阻害剤、(8)エトポシド(ETOPOPHOS、VEPESSID、TOPOSAR)などのエピポドフィロトキシン(ポドフィロトキシン誘導体)、(9)ロイコボリン(WELLCOVORIN)などの葉酸誘導体、(10)カルムスチン(BiCNU)、ロムスチン(CeeNU)などのニトロソウレア、(11)上皮成長因子受容体(EGFR)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGFR)、肝細胞成長因子受容体(HGFR)、および血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、例えばゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、ボルテゾミブ(ベルケイド)、メシル酸イマチニブ(グリベック)、ゲネフィチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、サリドマイド、スニチニブ(スーテント)、アキシチニブ、リツキシマブ、トラスツズマブ(ハーセプチン)、セツキシマブ(アービタックス)、ベバシズマブ(アバスチン)、およびラニビズマブ(ルセンティス)、lym−1(オンコリム)、WO2002/053596において開示されているインスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)に対する抗体を含む、受容体チロシンキナーゼの阻害剤、(12)ベバシズマブ(AVASTIN)、スラミン(ゲルマニン)、アンジオスタチン、SU5416、サリドマイド、およびマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤(バチマスタットおよびマリマスタットなど)、およびWO2002055106において開示されているものなどの血管新生阻害剤、ならびに(13)ボルテゾミブ(ベルケード)などのプロテアーゼ阻害剤が含まれる。
【0045】
「免疫療法作用物質」という用語は、哺乳動物の免疫応答を増強し得る化学的または生物学的物質を言う。免疫療法作用物質の例には、カルメット・ゲラン菌(BCG)、インターフェロンなどのサイトカイン、MyVax個別免疫療法、Onyvax−P、オンコファージ、GRNVAC1、Favld、プロベンジ、GVAX、ロバキシンC、BiovaxID、GMXX、およびNeuVaxなどのワクチン、ならびにアレムツズマブ(CAMPATH)、ベバシズマブ(AVASTIN)、セツキシマブ(ERBITUX)、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN)、パニツムマブ(VECTIBIX)、リツキシマブ(RITUXAN、MABTHERA)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、トシツモマブ(BEXXAR)、トレメリムマブ、CAT−3888、およびWO2003/040170において開示されているCD40受容体に対するアゴニスト抗体などの抗体が含まれる。
【0046】
「ホルモン療法作用物質」という用語は、ホルモンの生産を阻害もしくは排除するかまたは癌性細胞の成長および/もしくは生存に対するホルモンの効果を阻害するかもしくは妨げる、化学的または生物学的物質を言う。本明細書における方法に適したこのような作用物質の例には、US20070117809において開示されているものが含まれる。特定のホルモン療法作用物質の例には、タモキシフェン(NOLVADEX)、トレミフェン(フェアストン)、フルベストラント(ファスロデックス)、アナストロゾール(アリミデックス)、エキセメスタン(アロマシン)、レトロゾール(フェマラ)、酢酸メゲストロール(メゲース)、ゴセレリン(ゾラデックス)、およびロイプロリド(ルプロン)が含まれる。
【0047】
癌を治療するための組み合わせ療法はまた、腫瘍を除去するための外科手術と、またはイオン化(電磁気)放射線療法(例えば、X線またはガンマ線)および粒子ビーム放射線療法(例えば、高線形エネルギー放射)などの放射線療法を組み合わせたIGF−1Rアンタゴニストを含む。
【0048】
「治療上効果的な量」のIGF−1Rアンタゴニストという用語は、治療される患者におけるあらゆる所望のまたは有益な効果、例えば、癌細胞のさらなる成長または拡散の阻害、癌細胞の死滅、癌の再発の阻害、癌に関連する痛みの低減、または患者の生存率の改善を生じさせるために十分な、あらゆる量を言う。投与される正確な用量レベルは、当業者により容易に決定され得、多くの因子、例えば、治療される障害のタイプおよび重症度、採用される特定のIGF−1Rアンタゴニスト、投与経路、投与時間、治療期間、採用される特定のさらなる療法、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康、およびこれまでの病歴、ならびに医療分野で周知の類似の因子に依存する。
【0049】
D.遊離IGF−1、インスリン、およびIGFBP−1の測定
患者の全血、血漿、または血清中の遊離IGF−1、インスリン、およびIGFBP−1の濃度は、当技術分野において知られている様々な分析アッセイ法、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射定量アッセイ、質量分析免疫アッセイ(米国特許第7,303,888号において開示されているものなど)、限外濾過、電気化学発光免疫アッセイ、および生物学的アッセイを用いて測定することができる。用いられ得る免疫アッセイについてのさらなる情報は、Immunoassays:A Practical Approach.James P.Gosling編、Oxford:Oxford University Press、2000、304 pp.、ISBN 0−19−963710−5;Immunoassay.Eleftherios P.DiamandisおよびTheodore K.Christopoulos編、San Diego:Academic Press、1996、579 pp、Paperback.ISBN 0−12−214730−8において見ることができる。
【0050】
1つの周知の方法は、遊離IGF−1のためのDSL−10−9400(ACTIVE Free IGF−I ELISA)、インスリンのためのDSL−10−1610、およびIGFBP−1のためのDSL−10−7810などの、Diagnostic Systems Laboratories,Inc、Fullerton、CA 92834−3100 USAにより販売されている市販のキットを用いた、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。ELISAアッセイは、酵素的に増幅される2段階の「サンドウィッチ」免疫アッセイである。このアッセイにおいて、標準、対照、および試料は、目的のタンパク質、すなわちIGF−1、インスリン、またはIGFBP−1に対する抗体で被覆されているマイクロ滴定ウェルにおいてインキュベートされる。インキュベーションおよび洗浄の後、酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識された検出抗体を各ウェルに添加する。第2のインキュベーションおよび洗浄の段階の後、基質テトラメチルベンジジン(TMB)をウェルに添加する。最後に、酸性停止溶液を添加する。基質の酵素的代謝回転の程度は、450nmおよび600と630nmとの間で二波長吸光度測定により決定される。測定された吸光度は、試料中の目的のタンパク質の濃度に正比例する。既知の濃度の目的のタンパク質を有する標準のセットを用いて、遊離IGF−I、インスリン、またはIGFBP−1の濃度に対する吸光度の標準曲線をプロットする。次に、試料中の目的のタンパク質の濃度を、この標準曲線から計算することができる。血清または血漿の試料を用いることができ、血漿が好ましい。DSL遊離IGF−1キット(DSL−10−9400)などの免疫放射定量(IRMA)アッセイは、測定される被分析物が2つの抗体の間に「サンドウィッチ」されているアッセイである。第1の抗体は、試験管の内壁上に固定される。他の抗体は、検出のために放射性標識される。未知物、標準、および対照中に存在する被分析物は、両方の抗体により結合され、「サンドウィッチ」複合体を形成する。直接的なアッセイのために、改変されていない試料をアッセイ用試験管に直接添加する。次に、目的のタンパク質は抗体被覆により捕捉され、残った試料は洗い流され、次に、試験管に結合した目的のタンパク質は、第2のエピトープに対する放射性標識された抗体を用いて検出される。
【0051】
IGF−1の遊離濃度を決定するために、限外濾過もまた用いることができる(Frystyk Jら、Growth Horm IGF Res.2001、11:117〜27)。この方法には、支持装置内に置かれた限外濾過膜を含む限外濾過装置に試料を添加することが必要である(Amicon Division、Beverly、MA、USA)。限外濾過の前に、試料は緩衝液で平衡化され、次に遠心分離(300×g)に供される。次に、限外濾過物中の目的のタンパク質の存在を、ELISA、IRMA、または他の方法を用いて分析することができる。
【0052】
E.実施例
【実施例1】
【0053】
臨床研究A4021002(NCT00147537)は、進行した非小細胞肺癌(NSCLC)を有する化学療法を受けていない患者の第一線治療としてフィギツムマブと化学療法(パクリタキセルおよびカルボプラチン)との組み合わせを調べる、多施設的な、非盲検の、ランダム化された研究であった。患者は、治療群A(PCF)でパクリタキセル、カルボプラチン、およびフィギツムマブを、または治療群B(PC)においてパクリタキセルおよびカルボプラチンのみを与えるために、2:1にランダム化した。パクリタキセルは200mg/mで3時間にわたり静脈内投与(IV)し、カルボプラチンは15〜60分間にわたり血漿濃度時間曲線下面積(AUC)で静脈内投与し、フィギツムマブは10mg/kg(PCF10)または20mg/kg(PCF20)で3週間ごとに最大6サイクルにわたり静脈内投与した。フィギツムマブは、インスリン様成長因子受容体(IGF−IR)に対する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体である。フィギツムマブの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3(アミノ酸20〜470)および配列番号4(アミノ酸23〜236)で示される。
【0054】
患者は、組織学的または細胞学的に確認された、外科手術/放射線での治癒的治療に適していない、ステージIVまたはIIIBのNSCLCを有していた。適格患者は少なくとも18歳であり、固形腫瘍の治療効果基準(RECIST)および米国東海岸癌臨床試験グループの0/1のパフォーマンスステータスに従った、少なくとも1つの一次元的に測定可能な病変を有していた。他の基準には、それまでの治療毒性から、国立癌研究所の有害事象共通用語基準バージョン3.0により定義されるグレード≦1への回復、適切な造血機能(絶対好中球数≧1500μl、血小板≧100000μl)、肝機能(総ビリルビン≦正常の1.5倍、アスパルギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ<正常の5倍)、ならびに腎機能(血清クレアチニン≦正常の1.5倍、または計算されたクレアチニンクリアランス≧60ml/分)、血清アルブミン≧2.7g/dL、正常な波形を有する12誘導心電図、または医学的介入を必要としない、臨床的に顕著でない変化が含まれる。登録の除外には、避妊薬の使用を断った、妊娠の可能性がある女性;活動性胃腸異常;症候性脳転移(無症候性および安定性の場合、脳転移を有する患者は登録され得る);これまでの6ヶ月間の、活動性心疾患を含む、合併している制御されていない医学的状態、感染、過去3年間の他の活動性悪性腫瘍、または認知症;神経障害グレード>1;Cremophor(登録商標)に対する既知の過敏性;および研究薬剤投与の前、それぞれ4週間または1週間以内の主要な外科手術または放射線療法が含まれる。プロトコルは、医薬品の臨床試験の実施の基準のガイドラインに従って実施され、それぞれの参加する治験倫理審査委員会により認可されたものであった。全ての患者は、登録の前に、書面のインフォームドコンセントに署名した。患者は、疾患の進行または許容不可能な毒性が発現しない限り、最大で全部で6サイクルの化学療法を受けるために適格であった。腫瘍の評価はベースラインで実施し、疾患が進行するまで6週間ごとに反復した。疾患の状態は治験責任医師によって評価された。
【0055】
臨床データは、研究においてランダム化された151人の患者、すなわちPCを与えた53人の患者、PC10を与えた48人の患者、およびPC20を与えた53人の患者から入手可能である。無進行生存(PFS)の分析は、パクリタキセルおよびカルボプラチンのみ(PC)を与えた患者について3.5ヶ月というPFSの中央値を示した。PCおよびフィギツムマブ(20mg/Kg)(PCF20)での治療は、検定に従って(進行が放射線学的画像化により確認されたかどうかに関わらず)、およそ4から6週間のPFS利益につながり、一方、PCおよび10mg/Kgのフィギツムマブ(PCF10)を与えた患者では顕著なPFS利益は明らかではなかった。
【0056】
化学療法にフィギツムマブを添加することにより得られる臨床的利益に対する、IR/IGF−IR経路の活性化に潜在的に関係する一連の被分析物の関連を調べた。ベースライン(サイクル1の投与前1日目)ならびにその後の各治療サイクルの1日目および8日目に血液試料を採取した。血液試料は、研究に登録された156人の患者から得た。被分析物を研究患者の血漿において測定し、それらの血漿濃度と研究治療でのPFS率との間の関連を、受信者動作特性分析(ROC)を用いて調べた。調べた被分析物は、IGF−1(全体)、IGF−2、遊離IGF−1、インスリン、IGFBP−1、IGFBP−2、およびIGFBP−3であった。これらの被分析物は、Diagnostic Systems Laboratories,Inc.(Fullerton、CA 92834−3100 USA)により販売されているキットを、添付文書において特定されている製造者の推奨に従って用いて、ELISA法によって測定した(遊離IGF−1のための、ACTIVE Free IGF−1 ELISAキット、DSL−10−9400など)。表1は、PCF20で治療した患者における3ヶ月および6ヶ月でのPFS率についてのROC曲線下面積(AUC)および有意レベル(P)を示す。遊離IGF−1のベースラインレベルは、PCF20研究治療での3ヶ月(P=0.047)および6ヶ月(P=0.006)の両方でのPFSを有意に予測するものであった。インスリン(P=0.046)およびIGFBP−3(P=0.047)のベースラインレベルは、6ヶ月でのPFS率を予測するものであると考えられたが、3ヶ月でのPFS率を予測するものであるとは考えられなかった。
【0057】
ROC分析は、フィギツムマブ治療の間の患者のPFSと、IGF−1、IGF−2のキャリアータンパク質であるIGFBP−1から3に対する、IGF−1、IGF−2、およびインスリンの濃度の、ベースラインでの比率との間の関連を調べるために実施した。これらの分析の結果を表2に示す。IGFBP−1に対するインスリンのベースライン比率は、3ヶ月(P=0.024)および6ヶ月(P=0.034)の両方で、PCF20を与えた患者のPFSを有意に予測するものであった。IGFBP−1に対するIGF−1のベースライン比率は、3ヶ月(P=0.043)でのPFS率を予測するものであると考えられたが、6ヶ月でのPFS率を予測するものであるとは考えられなかった。
【0058】
遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP−1比率の特異性を、PCのみを与えた患者におけるROC AUCを評価することにより調べた。遊離IGF−1およびインスリン/IGFBP−1比率は、PC患者の3ヶ月でのPFSを予測するものではなかった。PC患者の進行速度が速いため、6ヶ月でのPFSを分析するための十分なデータはなかった。
【0059】
治療−バイオマーカーの相互作用を、Cox比例ハザードモデルを用いてさらに調べた。この分析は、バイオマーカー基準を上回る患者および下回る患者のハザード比率(治療をするかまたはしない場合の進行のリスク)に関連する。0.1から0.9ng/mLの遊離IGF−1のカットオフ基準を検査した。有用な基準は0.5〜0.9の範囲であり、PCF20治療群では、基準を上回る患者はPFSの十分な改善が観察された。Cox比例ハザードモデルから得られる推定される治療−バイオマーカーの相互作用項は、カット0.5〜0.9では2.5から3.5であり、多重試験に調製された片側P値は、0.11(0.5ng/mLの基準)、0.09(0.6ng/mLの基準)、0.030(0.7ng/mLの基準)、0.033(0.8ng/mLの基準)、0.026(0.9ng/mLの基準)であった。
【0060】
研究中の患者のPFSの中央値を、カプランおよびマイヤー法を用いて推定した。図1は、ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7ng/mLを下回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者のPFSの中央値は、4.30ヶ月(PC)、2.83ヶ月(PCF10)、および5.03ヶ月(PCF20)であった。これらの差は有意ではなかった。図2は、ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7ng/mLに等しいかまたはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者のPFSの中央値は、2.63ヶ月(PC)、3.97ヶ月(PCF10)、および6.53ヶ月(PCF20)であった。治療効果におけるこれらの差は有意であった(PC対PCF20ではP=0.0007)。図3は、PCF20を与えられ、ベースラインの遊離IGF−1レベルが0.7を下回るかまたは0.7ng/mLに等しいかもしくはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者のPFSの中央値は、5.03ヶ月(<0.7ng/mL)および6.53ヶ月(≧0.7ng/mL)であった。0.7ng/mLを下回る/上回る遊離IGF−1についてのハザード比率の推定値は2.15(95%信頼区間:1.04〜6.57、P=0.039)であり、このことは、0.7ng/mLを下回る群において進行率が高いことを示す。これらのデータは、ベースラインの遊離IGF−1が、フィギツムマブ治療から臨床的利益を受ける患者を同定するための有用なパラメータであり得ることを示す。
【0061】
0.5から1.1のインスリン/IGFBP1比率のカットオフ基準もまた、治療−バイオマーカーの相互作用について試験するために、Cox比例ハザードモデルを用いて検査した。全てのカットオフ基準は潜在的に有用であると考えられ、多重試験に調製された、治療−バイオマーカーの相互作用についての片側P値はそれぞれ、0.07(0.5のインスリン/IGFBP−1比率)、0.06(0.6の比率)、0.02(0.7の比率)、0.02(0.8の比率)、0.03(0.9の比率)、0.01(1の比率)、および0.08(1.1の比率)であった。図4は、ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者ついてのPFSの中央値は、4.30ヶ月(PC)、2.83ヶ月(PC10)、および5.03ヶ月(PC20)であった。これらの差は有意ではなかった(P=0.89)。図5は、ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8に等しいかまたはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者のPFSの中央値は、2.83ヶ月(PC)、3.86ヶ月(PC10)、および6.70ヶ月(PC20)であった。治療効果におけるこれらの差は有意であった(PC対PCF20ではP=0.0097)。
【0062】
図6は、PCF20を与えられ、インスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回るかまたは0.8に等しいかもしくはそれを上回る、研究A4021002に登録された患者におけるPFSのカプランおよびマイヤー推定値を示す。これらの患者のPFSの中央値は、5.03(<0.8)および6.7(≧0.8)であった。0.8を下回る/上回るインスリン/IGFBP−1についてのハザード比率の推定値は2.83(95%信頼区間:1.43〜12.9、P=0.009)であり、このことは、0.8を下回る群において事象率が高いことを示す。これらのデータは、ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が、フィギツムマブ治療から臨床的利益を受ける患者を同定するための有用なパラメータであり得ることを示す。
【0063】
遊離IGF−1とインスリン/IGFBP−1比率との間の関連を、独立試料のt検定を用いて調べた。ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8を下回る患者と、ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.8に等しい患者およびそれを上回る患者とにおける、遊離IGF−1血漿レベルのベースラインの中央値は、それぞれ0.41および0.65ng/mLであった(P=0.034)(図7)。ピアソンのパラメータ相関試験を用いて、有意な逆相関もまた、遊離IGF−1とIGFBP−1との間で見られた(Rho=−0.295、P=0.005)が、IGFBP−2(P=0.37)またはIGFBP−3(P=0.9)では見られなかった。
【0064】
フィギツムマブで治療すると、遊離IGF−1の用量依存的な蓄積が生じた。ベースラインと比較して少なくとも2倍の遊離IGF−1レベルの増大が、0.1mg/kgに等しいかまたはそれを上回る用量でのフィギツムマブの初回投与から1週間で検出された(図8)。血清遊離IGF−1レベルの同様の2倍以上の増大が、療法の初回投与の1回、2回、3回、4回、またはそれ以上の、3週間の治療サイクルの後に見られた。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法を受けるための癌患者を選択する方法であって、a)患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度を決定すること、およびb)患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む方法。
【請求項2】
患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測するための方法であって、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度を決定することを含み、生物学的試料の遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きいと、患者における効力が予測される方法。
【請求項3】
癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法に対する癌患者の応答を予測するための方法であって、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度を決定することを含み、所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい遊離IGF−1の濃度が、遊離IGF−1濃度が所定の値よりも低い癌患者から得られる生物学的試料と比較して、療法の効力を達成する可能性が高いことの指標である方法。
【請求項4】
患者における癌を治療する方法であって、a)生物学的試料の遊離IGF−1濃度が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、およびb)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む方法。
【請求項5】
患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の有効性をモニタリングする方法であって、IGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度の変化をモニタリングすることを含み、療法を開始した後の遊離IGF−1濃度の増大が療法の有効性の指標である方法。
【請求項6】
患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度がベースライン濃度である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
遊離IGF−1のベースライン濃度の所定の値が0.5ng/mLから1.0ng/mLの範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ベースラインの生物学的試料中の遊離IGF−1の所定の値が0.5ng/mLである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ベースラインの生物学的試料中の遊離IGF−1の所定の値が0.7ng/mLである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
遊離IGF−1濃度が、患者の全血、血漿、または血清において測定される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度が、血漿試料において測定される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度が、ELISAアッセイを用いて測定される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ベースラインの遊離IGF−1濃度と比較した、療法を開始した後の、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度の増大が、少なくとも100%である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
ベースラインの遊離IGF−1濃度と比較した、療法を開始した後の、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度の増大が、少なくとも200%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ベースラインの遊離IGF−1濃度と比較した、療法を開始した1週間後の、患者から得られる生物学的試料中の遊離IGF−1濃度の増大が、少なくとも200%である、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法を受けるための癌患者を選択する方法であって、a)患者の生物学的試料中のインスリン/IGFBP−1比率を決定すること、およびb)患者から得られる生物学的試料中のインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を選択することを含む方法。
【請求項17】
患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の効力を予測するための方法であって、患者の生物学的試料中のインスリン/IGFBP−1比率を決定することを含み、生物学的試料のインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きいと、患者における効力が予測される方法。
【請求項18】
癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法に対する癌患者の応答を予測するための方法であって、患者から得られる生物学的試料中のインスリン/IGFBP−1比率を決定することを含み、所定の値に等しいかまたはそれよりも大きいインスリン/IGFBP−1比率が、インスリン/IGFBP−1比率が所定の値よりも低い癌患者と比較して、療法の効力を達成する可能性が高いことの指標である方法。
【請求項19】
患者における癌を治療する方法であって、a)生物学的試料のインスリン/IGFBP−1比率が所定の値に等しいかまたはそれよりも大きい患者を同定すること、およびb)治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
患者における癌に対するIGF−1Rアンタゴニスト療法の有効性をモニタリングする方法であって、IGF−1Rアンタゴニスト療法を開始した後の、患者における生物学的試料のインスリン/IGFBP−1比率の変化をモニタリングすることを含み、療法を開始した後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が療法の有効性の指標である方法。
【請求項21】
インスリン/IGFBP−1比率がベースラインのインスリン/IGFBP−1比率である、請求項16から19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
所定の値が0.5から1.5の範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
所定の値が0.5である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
所定の値が1.0である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
インスリン/IGFBP−1比率が、患者の全血、血漿、または血清の試料において測定される、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
インスリン/IGFBP−1比率が血漿試料において測定される、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率と比較した、療法を開始した後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が、少なくとも100%である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率と比較した、療法を開始した後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が、少なくとも200%である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ベースラインのインスリン/IGFBP−1比率と比較した、療法を開始した1週間後のインスリン/IGFBP−1比率の増大が、少なくとも200%である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記癌が肺癌である、請求項1から5および16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
IGF−1Rアンタゴニストが抗体である、請求項1から5および16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
抗体が、
a)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体の重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む抗体と、
b)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体の重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列を含む抗体と、
c)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体と、IGF−1Rへの結合について競合する抗体と、
d)抗体2.12.1、2.13.2、2.14.3、4.9.2、4.17.3、および6.1からなる群から選択される抗体と
からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗体が、
a)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
b)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
c)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
d)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、
e)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体、ならびに
f)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体
からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
抗体が、IGF−1Rへの結合についてIGF−1と競合する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
抗体がフィギツムマブ(figitumumab)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
IGF−1RがIGF−1R低分子阻害剤と拮抗する、請求項1から5および16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
遊離IGF−1のベースラインの血漿濃度が0.70ng/mLに等しいかまたはそれよりも大きい患者に、治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを投与することを含む、患者における癌を治療する方法。
【請求項38】
患者の全血、血漿、または血清中のベースラインのインスリン/IGFBP−1比率が0.5に等しいかまたはそれよりも大きい患者に、治療上効果的な量のIGF−1Rアンタゴニストを投与することを含む、患者における癌を治療する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−141279(P2011−141279A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−377(P2011−377)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】