説明

抗TNFα抗体を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法

本発明は、抗TNFα療法、特に抗TNFα抗体を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法であって、(a)患者由来のT細胞のin vitroサンプルを提供するステップと、(b)前記T細胞を抗TNFα療法に曝すステップと、(c)制御性T細胞が前記T細胞のサンプルにおいて誘導されるかどうかを決定するステップとを含み、制御性T細胞の誘導が、患者が前記抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の抗TNFα療法に応答する患者の選択を可能にする方法に関する。この方法は、抗TNFα療法に応答する患者のみに対してこのような療法の使用を可能にし、このような療法に応答しない患者において被る可能性がある不必要なコスト及び潜在的な副作用を回避する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫病は、それ自体の構成成分を認識する生物の不全であり、これはその生物自体の細胞及び組織に対する免疫応答をもたらす。このような異常な免疫応答から生じる任意の疾患は自己免疫疾患と呼ばれる。
【0003】
自己免疫疾患に対する現在の治療は、大部分が対症的であり、一般には免疫抑制性、又は抗炎症性である。TNFαアンタゴニストのエタネルセプト及び抗体系薬剤のインフリキシマブ及びアダリムマブなどの特定の免疫調節療法は、関節リウマチなどの自己免疫疾患を治療する際に有用であることが示されている。
【0004】
関節リウマチ(RA)の病因において重要な炎症促進性メディエーターの理解の進展は、標的療法の新時代の到来を告げている。第一の最も成功した例は、TNFαと結合し、関節リウマチを有する患者の60〜70%において炎症を低下させ関節破壊を遅らせることにより実質的な治療有効性を示す、インフリキシマブの例である(Maini、Rら、1999 Lancet.354:1932〜1939ページ;Maini、R.Nら、2004 Arthritis Rheum.50:1051〜1065ページ)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、活動性関節リウマチを有する患者から単離した「天然の」制御性T細胞(Treg)が、抑制能の低減を示すことを発見している。抗TNFα治療後、Tregプールはそれらの抑制機能を取り戻すようである。しかしながら、これらのTregの欠損を回復させるのではなく、抗TNFα治療は、TGFβを介してレスポンダーT細胞(CD4CD25)由来のTregの異なる有力な集団の分化を(in vivo及びin vitroで)誘導することが発見されている。これらの発見は、インフリキシマブなどの抗TNFα作用物質の治療効果が、少なくとも部分的にはTregの誘導に基づく可能性があることを示し、インフリキシマブなどの抗TNFα療法は、関節リウマチを有する患者において耐性を回復させる潜在性があることを示唆する。
【0006】
したがって、Tregの分化は、関節リウマチなどの疾患における療法に対する患者の応答を予測するバイオマーカーとして使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、抗TNFα抗体を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法であって、
(a)患者由来のT細胞のin vitroサンプルを提供するステップと、
(b)前記T細胞を抗TNFα抗体に曝すステップと、
(c)制御性T細胞が前記T細胞のサンプルにおいて誘導されるかどうかを決定するステップと
を含み、制御性T細胞の誘導が、患者が前記抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す方法を提供する。
【0008】
これらの方法を使用して、どの患者を所与の抗TNFα抗体を用いて治療すべきか決定することができる。したがって、本発明は、炎症性又は自己免疫疾患を治療するための方法であって、
(a)本発明の方法を使用して、抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いとして患者を同定するステップと、
(b)前記抗TNFα抗体を用いて患者を治療するステップと
を含む方法も提供する。
【0009】
本発明は、患者における炎症性又は自己免疫疾患の治療において使用するための抗TNFα抗体であって、本発明の方法を使用して、前記患者が、抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いとして同定されている抗TNFα抗体も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】健常対照、活動性RAを有する患者、及び抗TNFα療法で治療したRA患者由来のPBMCにおける制御性T細胞(CD4Foxp3)の百分率を示す図である。3つの抗TNFα治療群のそれぞれに関して応答する患者のみを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、予備試験の結果に基づいて、患者が特定の治療レジメに応答する可能性が高いかどうか予測することができるという、本発明者らの発見に由来する。特に本発明は、患者が抗TNFα療法に応答し得るかどうかの予測に関する。
【0012】
幾つかのこのような抗TNFα療法が知られている。しかしながら、これらの療法は全ての患者において有効であるわけではない。例えば、以下でさらに論じるインフリキシマブは、幾つかの炎症性疾患及び自己免疫疾患の療法において使用されるが、全ての患者がインフリキシマブを用いた治療に応答するわけではない。例えば、関節リウマチの治療において、インフリキシマブは、炎症を低下させ患者の60〜70%において関節破壊を遅らせることにより実質的な治療有効性を示す。しかしながら、残りの30〜40%の患者では、この治療効果は見られない。特定の患者が、このような療法が有効であり得る60〜70%の個体、又はこのような療法が無効であり得る30〜40%の個体の範疇にあるかどうか確認することは明らかに有益であろう。
【0013】
このような予測試験は金銭的利益があり得るが、これは、おそらく高価な抗TNF薬剤を、それらに応答し得ない患者に使用することが不要となるからである。したがって、このことはこのような薬剤の成功率を有意に増大させる可能性があるが、これは、この薬剤を使用により効果を受けやすい患者を標的にすることができるからである。このような予測試験を使用して、疾患の初期段階での患者の治療の決定を手助けすることもできる。例えば、初期段階の関節リウマチを有する患者におけるインフリキシマブの使用は、寛解をもたらすことができる証拠が存在する。治療の決定前に本発明の予測試験を使用することによって得ることができる成功率が高くなるため、このような初期段階の患者に対する抗TNFα療法の使用はより実行可能でありより正当な選択肢となり、且つ有意な臨床的有益性をもたらすと予想することができる。予測試験は抗TNFα療法に応答しない患者にも特に有用である可能性があるが、これは、多くのこのような抗TNFα療法が、副作用に関連する可能性があるからである。本発明の予測試験を使用することによって、このような療法に応答し得ない患者を、不必要にこのような危険に曝さないことを確実にすることができる。
【0014】
したがって本発明は、患者が特定の抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性があるかどうか決定するために使用することができる予測試験について記載するものである。したがって、抗TNFα療法を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法は、(a)患者由来のT細胞のサンプルを提供するステップと、(b)前記T細胞を抗TNFα療法に曝すステップと、(c)制御性T細胞が前記T細胞のサンプルにおいて誘導されるかどうかを決定するステップとを含み得、制御性T細胞の誘導が、患者が前記抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0015】
特に本発明は、抗TNFα抗体を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法であって、(a)患者由来のT細胞のin vitroサンプルを提供するステップと、(b)前記T細胞を抗TNFα抗体に曝すステップと、(c)制御性T細胞が前記T細胞のサンプルにおいて誘導されるかどうかを決定するステップとを含み、制御性T細胞の誘導が、患者が前記抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す方法を提供する。
【0016】
抗TNFα療法
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、単球及びマクロファージによって産生されるサイトカインである。それは、炎症部位への白血球細胞の輸送の増大によって、及び炎症を開始及び増幅させる追加的分子機構によって免疫応答を媒介する。TNFαに起因する生物活性には、IL−1及びIL−6などの炎症促進性サイトカインの誘導、血管内皮層の透過性の増大による血管から組織への白血球の運動又は移動の増進、及び接着分子の放出の増大がある。
【0017】
炎症の制御におけるその重要な役割のために、TNFαは、幾つかの療法、特に炎症又は自己免疫障害の予防又は低減を対象とする療法の重要な標的である。
【0018】
本発明は、TNFα応答を対象とするこのような療法に関する。特に本発明は、抗TNFα療法に関する。抗TNFα療法とは、TNFαを対象とする療法又は治療を意味する。例えば、抗TNFα療法は、TNFαの産生又は放出を妨害又は低減することができる。抗TNFα療法は、TNFαの活性を妨害又は低減することができる。抗TNFα療法は、TNFαと特異的に結合する分子の使用を含むことができる。このような分子はTNFαの活性を妨げることができる。抗TNFα療法は、細胞外TNFα及び/又は膜貫通TNFα及び/又は受容体結合TNFαを中和又は除去することができる。抗TNFα療法は、(例えば、血中に浮遊している)可溶性TNFα及び/又は(T細胞及び他の免疫細胞の表面に存在する可能性がある)膜貫通TNFαと結合する分子を利用することができる。抗TNFα療法は、TNFαとその受容体の有効な結合を阻害又は妨害する分子を利用することができる。例えば、一実施形態では、抗TNFα療法は、膜結合TNFαを中和するか、それと結合するか、又はそれを除去する。
【0019】
抗TNFα療法はTNFαに特異的であることが好ましく、それはTNFαのみに作用する、又は他の分子に優先してTNFαに作用することが好ましい。例えば、2つの型のTNFが同じ受容体を利用することができるとしても、抗TNFα療法はTNFβではなくTNFαに作用することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、抗TNFα療法は、TNFαと結合、及び中和することができる分子を利用することが好ましい。好ましい分子は、全ての型のTNFα、例えば細胞外TNFα、膜貫通TNFα及び受容体結合TNFαを中和することができる。特に、本発明によって使用するのに好ましい抗TNF療法は、受容体結合TNFαを中和することができる。本発明によって使用するための抗TNFα療法は、炎症プロセスに関与する細胞を溶解する能力を有することが好ましい。
【0021】
したがって、本発明によって使用するのに好ましい群の抗TNFα療法は抗TNFα抗体である。このような抗体はモノクローナル又はポリクローナルであってよく、又はその抗原結合断片であってよい。例えば、抗原結合断片は、F(ab)2、Fab若しくはFv断片、即ち抗原結合断片を含む抗体の「可変」領域の断片であってよく、又はそれを含むことができる。抗体又はその断片は、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体又はヒト化抗体であってよい。
【0022】
抗体はTNFα分子を対象とすることができる、即ち抗体は、TNFα上に存在するエピトープと結合することができ、したがってTNFαと選択的及び/又は特異的に結合することができる。抗体は、TNFαの発現及び/又は活性に関与する他の分子を対象とすることができる。例えば、TNFα上の1つ又は複数のエピトープ及び/又はTNFαの発現及び/又は活性に関与する1つ又は複数の他の分子に対して広範囲の影響を有する、ポリクローナル抗体を産生することができる。
【0023】
抗体は任意の適切な方法によって産生することができる。抗体を調製及び特徴付けするための手段は当技術分野でよく知られており、例えば、Harlow and Lane(1988)「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照。例えば、完全ポリペプチド又はその断片、例えばその抗原性エピトープ、本明細書で以後「免疫原」に対する抗体を宿主動物中で産生することによって、抗体を産生することができる。
【0024】
ポリクローナル抗体を産生するための方法は、適切な宿主動物、例えば実験動物を免疫原で免疫処置するステップと、その動物の血清から免疫グロブリンを単離するステップとを含む。したがって動物に免疫原を接種することができ、その後血液を動物から除去し、且つIgG分画を精製することができる。
【0025】
モノクローナル抗体を産生するための方法は、所望の抗体を産生する細胞を不死化するステップを含む。ハイブリドーマ細胞は、接種した実験動物由来の脾細胞と腫瘍細胞を融合するによって産生することができる(Kohler and Milstein(1975)Nature 256、495〜497ページ)。
【0026】
所望の抗体を産生する不死化細胞は従来の手順によって選択することができる。ハイブリドーマは培養中に増殖させることが可能であり、或いは腹水形成のため、又は同種異系宿主若しくは免疫不全宿主の血流中に腹膜内注射することが可能である。ヒト抗体は、ヒトリンパ球のin vitro免疫処置、次にエプスタインバーウイルスによるリンパ球の形質転換によって調製することができる。
【0027】
モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を産生するために、実験動物はヤギ、ウサギ、ラット又はマウスであることが適切である。望む場合、免疫原は、その中で免疫原が例えばアミノ酸残基の1つの側鎖によって、適切な担体と結合しているコンジュゲートとして投与することができる。担体分子は典型的には生理的に許容される担体である。得られた抗体は単離することができ、且つ望む場合、精製することができる。
【0028】
タンパク質と「特異的に結合する」抗体、又は他の化合物は、それが特異的ではあるが実質的に結合するタンパク質と優先的又は高親和性で結合するとき、他のタンパク質とは結合しないか、又はごく低い親和性で結合する。抗体の特異的結合能力を決定するための競合結合又は免疫放射定量アッセイに関する様々なプロトコルは、当技術分野でよく知られている(例えば、Maddoxら、J.Exp.Med.158、1211〜1226ページ、1993参照)。このようなイムノアッセイは、特異的タンパク質とその抗体の間の複合体の形成、及び複合体形成の測定を典型的には含む。
【0029】
インフリキシマブ及びアダリムマブは、全ての型(細胞外、膜貫通、及び受容体結合)のTNFαを中和することができる抗体の例である。したがって、本発明の好ましい態様では、抗TNFα療法は、インフリキシマブ及び/若しくはアダリムマブの投与を含む、その投与から本質的になる、又はその投与からなる。エタネルセプトという別のTNFαアンタゴニストは、異なる型の分子(受容体−コンストラクト融合タンパク質)であり、且つその修飾型のために、受容体結合TNFαを中和することができない。インフリキシマブ及びアダリムマブなどの抗TNFα抗体は炎症プロセスに関与する細胞を溶解する能力も有するが、一方受容体融合タンパク質であるエタネルセプトは一見するとこの能力を欠いている。
【0030】
(商標名Remicade(登録商標)で販売された)インフリキシマブは、炎症及び自己免疫障害を治療するために使用される薬剤である。インフリキシマブは、ネズミ結合VK及びVHドメイン並びにヒト定常Fcドメインを含むキメラモノクローナル抗体である。
【0031】
インフリキシマブは、可溶性(血中に浮遊している)及び膜貫通(T細胞及び類似の免疫細胞の外膜に位置する)型のTNFαとの高い親和性での結合によってTNFαの生物活性を中和し、TNFαとその受容体の有効な結合を阻害又は妨害する。インフリキシマブはTNFαに対する高い特異性を有し、TNFβを中和しないが、TNFβはTNFαと同じ受容体を利用する。
【0032】
今日まで、インフリキシマブは乾癬、小児クローン病、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬性関節炎、関節リウマチ、及び潰瘍性大腸炎の治療用に米国食品医薬品局によって認可されてきている。
【0033】
(商標名Humira(登録商標)で販売された)アダリムマブもTNFαと結合し、それがTNF受容体を活性化するのを妨げる。アダリムマブは完全ヒトモノクローナル抗体から構築されたが、一方インフリキシマブはマウス−ヒトキメラ抗体である。今日まで、アダリムマブは関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎及びクローン病の治療用に米国食品医薬品局(FDA)によって認可されており、尋常性乾癬の治療における認可がFDAに申し込まれている。
【0034】
エタネルセプトは、組換えヒト可溶性TNFα受容体融合タンパク質である。エタネルセプトは、TNFαと結合し強直性脊椎炎、若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチなどの自己免疫疾患を含めたヒト及び他の動物中、及びおそらく過度のTNFαによって媒介される様々な他の障害中の、過度の炎症に関連する障害におけるその役割を低下させる、150kDaの分子量を有する大分子である。
【0035】
2つの型のTNF受容体:他のサイトカインを放出することによってTNFに応答する白血球細胞中に埋没した状態で見られる受容体、及びTNFを失活させ免疫応答を鈍らせるために使用される可溶性TNF受容体が存在する。さらに、TNF受容体はほぼ全ての有核細胞(赤血球細胞、これらは有核ではなく、その表面上にTNF受容体を含有しない)の表面上で見られる。エタネルセプトは天然に存在する可溶性TNF受容体の阻害効果を模倣し、その違いは、エタネルセプトは、それが簡潔なTNF受容体ではなく融合タンパク質であるために、大幅に増大した血流中での半減期、したがって天然に存在する可溶性TNF受容体より深く長時間持続する生物学的影響を有することである。
【0036】
エタネルセプトは、IgG1のFc部分と結合した2つの天然に存在する可溶性ヒト75キロダルトンTNF受容体の組合せから構成される。その影響は人為的に工学処理した二量体融合タンパク質である。実施例中に示したように、エタネルセプトを用いたサンプルの治療は、その療法に対する患者中の臨床応答にもかかわらずTreg数の変化をもたらさなかった。したがって、本明細書に記載するように使用する抗TNFα療法は、エタネルセプトのみを用いた治療を含むことは意図しないが、エタネルセプト療法は抗TNFα抗体などの別の抗TNFα療法と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、抗TNFα療法は、天然に存在するTNF受容体を模倣する分子ではない。
【0037】
治療する患者
本発明は特に、TNFαの存在に関連する疾患又は他の状態の治療又は予防に関する。例えば、本発明は、炎症性又は自己免疫疾患の治療又は予防に関する。治療する患者は、典型的にはこのような炎症性又は自己免疫疾患に罹患している。患者は典型的には、抗TNFα療法を使用する治療が考えられる個体である。例えば、抗TNFα療法は関節リウマチ、乾癬性関節炎、クローン病、乾癬、強直性脊椎炎及び潰瘍性大腸炎の治療において現在使用されている。本発明の方法を使用して、これらの疾患、又は抗TNFα療法を使用して治療可能である任意の他の疾患、状態若しくは症状のいずれか1つを有する患者の治療を支援することができる。
【0038】
これらの治療は、このような疾患の影響を受けやすい任意の動物に使用することができる。治療する対象は、ヒト、並びにチンパンジー及び他の猿人類及びサル種などの非ヒト霊長類を含めた他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜動物;イヌ及びネコなどの家畜哺乳類;マウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含めた実験動物;例えばニワトリ、七面鳥及び他の家禽鳥類、アヒル、ガチョウなどの家畜、野生型及び狩猟鳥を含めた鳥類を非制限的に含む脊索動物亜門の任意のメンバーであってよい。好ましい実施形態では、対象はヒトである。この用語は特定の年齢を示すわけではない。したがって、例えば、成人、若年及び新生児対象は、いずれも含まれるものとする。
【0039】
本明細書に記載する方法は前述の脊椎動物種のいずれかにおける使用を意図するが、これは、これらの脊椎動物の全ての免疫系が同様に作動するからである。哺乳動物の場合、対象はヒトであることが好ましいが、家畜動物、実験対象又は愛玩動物であってもよい。したがって本明細書に記載する方法は、任意のこのような種の診断又は治療において使用することができる。
【0040】
適切な療法は治療する種に基づいて選択することができる。例えば、特定の種を治療する際に使用するための抗TNFα抗体を修飾して、その種において活性又はより有効な状態にすることができる。ヒトの治療において使用するための抗TNFα抗体はヒトモノクローナル抗体であってよく、ヒト化抗体であってよく、ヒトドメインを含むキメラ抗体であってよく、又はCDR移植抗体であってよい。
【0041】
患者由来のサンプル
本発明は、対象とする患者由来のサンプルに実施する方法に関する。その方法は、患者から得られたサンプルにin vitroで実施することが好ましい。本明細書で論じるように、患者は典型的には炎症性又は自己免疫疾患に罹患している。患者は典型的には、抗TNFα療法を使用する治療が考えられる個体である。本発明の方法は、このような患者由来のサンプルに実施する。疾患又は状態の治療を開始する前に、患者からサンプルを入手することが好ましい。例えば、抗TNFα療法を用いた任意の治療を始める前に、患者からサンプルを入手することができる。
【0042】
サンプルは、T細胞を含む任意の組織又は体液由来であってよい。例えばサンプルは、血液サンプル又は炎症関節などに由来する滑液のサンプルであってよい。
【0043】
サンプルは本発明の方法で使用する前に処理して、方法に干渉する可能性がある構成要素を除去すること、又は方法の結果の評価をさらに容易にすることのいずれかが可能である。例えば、サンプルを処理して、T細胞以外の構成要素を除去すること、又はサンプルから特定の型の細胞を選択若しくは除外することが可能である。したがって、本発明の方法で使用するためのサンプルは、精製された、実質的に精製された、単離された又は実質的に単離されたT細胞集団を含むことができる。
【0044】
本発明の方法で使用するためのT細胞のサンプルは、レスポンダーT細胞の集団を含むことができる。例えば、本発明の方法で使用するためのT細胞のサンプルは、レスポンダーT細胞の集団からなっていてよく、又は実質的にレスポンダーT細胞の集団からなっていてよい。T細胞のサンプルは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又はそれより多くのレスポンダーT細胞などの、主にレスポンダーT細胞である集団であってよい。
【0045】
レスポンダーT細胞は、制御性T細胞によって制御され得る細胞である。レスポンダーT細胞はT細胞受容体による刺激によって増殖し、炎症促進性サイトカインを分泌することができる。例えばレスポンダーT細胞は、IL−2を分泌するT細胞として同定することができる。レスポンダーT細胞は、制御性T細胞中に存在する特徴を欠くT細胞として同定することができる。したがってレスポンダーT細胞の集団は、CD4及び/又はCD25及び/又はCD127及び/又はFoxp3であるサンプル内の細胞を選択することによって同定することができる。1、2、3又は4つ全てのこれらの特徴を評価することができる。レスポンダーT細胞の集団は、個々の特性を有する細胞に関するサンプル内の細胞を選別することによってサンプルから入手することができる。例えば、細胞中の1つ又は複数の同定分子の存在又は不在に基づく蛍光活性化細胞選別(FACS)によって細胞を選別することができる。レスポンダーT細胞の集団は、CD4及びCD25及びCD127である細胞に関するFACS選別によって同定することができる。
【0046】
本発明に従って、本明細書に記載するサンプルを、抗TNFα抗体などの抗TNFα療法に曝す。抗TNFα療法への曝露は、試験する個々の療法に基づいて、任意の適切な条件の組を使用して実施することができる。この曝露は、サンプルと抗TNFα作用物質を接触させることによってin vitroで実施することが好ましい。サンプルをこのような曝露の前又は最中に処理して、療法に対する任意の応答を高めることができる。例えば、レスポンダーT細胞を含む集団を処理して細胞を活性化することができる。例えば、レスポンダーT細胞は、抗TNFα療法剤の存在又は不在下で抗CD3/CD28を用いて、一晩などの一定時間活性化することができる。
【0047】
本発明の方法は、実験サンプルと同じ方法であるが、抗TNFα療法剤の不在下などの抗TNFα療法を行わない条件下でさらなるサンプルを処理する対照を含めることもできる。適切な対照は、使用する個々の抗TNFα療法に応じて容易に確認することができる。これは抗TNFα療法の製剤に使用するための希釈剤(単数又は複数)を用いた治療を含むことができる。例えば、抗TNFα療法が抗TNFα抗体である場合、2つの同一なサンプル、1つは対象とする抗体で処理したサンプル、及びもう1つは同じ方法であるが、抗体の不在下で処理したサンプルを使用することができる。このような対照は一般には実験サンプルと平行して処理されるはずであり、これを使用して、療法によって引き起こされるTreg中の任意の誘導が、実際は抗TNFα療法剤の結果であり、治療に関連する他の条件又は物質によって引き起こされないことを保証することができる。
【0048】
本発明に従って使用する抗TNFα療法の用量は、具体的な療法の性質に依存し得る。適切な用量は、当業者により、その共通の一般知識に基づいて、例えば、その療法を使用するin vivo治療に使用され得るレジメ及び用量を考慮して決定することができる。例えば、適切な用量を選択して、in vivo投与後に患者の血液循環系中に存在し得る療法剤のレベルを反映することができる。
【0049】
制御性T細胞
本発明に従って、本明細書に記載するサンプルを抗TNFα療法に曝す。次いでこのような曝露の影響を評価する。特に、このような曝露の後、サンプルを評価して、制御性T細胞(Treg)が誘導されたかどうか、数及び/又は活性を決定する。Tregの存在は本明細書に記載するように幾つかの方法で評価することができる。例えば、曝露前後のサンプル中のTregの数を比較することができ、又はTregに特徴的である、若しくはTregによって発現される分子の量を曝露前後に比較して、Tregの数若しくは活性の何らかの増大が誘導されたかどうか決定することができる。これらの方法の任意の1つ又は複数を本発明の方法に従って使用して、抗TNFα療法を用いた治療に対するT細胞のサンプルの応答を評価することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、本発明の方法はTregの存在を検出することを含み得る。例えば、患者由来のT細胞のサンプルが検出可能なTregを含有しない場合、本明細書に記載する型のTreg活性又はTregは検出不能であり、したがって抗TNFα療法を用いた治療によるこのようなTregの誘導は、このようなTreg又はTreg活性の存在又は不在を単に検出することによって決定することができる。他の実施形態では、本発明の方法は検出、及びTreg又はTreg活性の定量化も含むことができる。例えば、本発明の方法は、Tregの数の変化、本明細書に記載する特定の型のTregの数の変化、サンプル中のTregの特性の変化、又はTregの1つ又は複数の活性の変化を検出することができる。このような数、特性又は活性の増大は、その療法の結果としてTregが誘導されたことを示し得る。
【0051】
自己免疫において、CD4CD25Foxp3制御性T細胞は耐性の維持に必要不可欠である。マウスモデルにおけるTreg細胞の枯渇は、炎症性腸疾患及びコラーゲン誘導関節炎(CIA)を含めた広範囲の臓器特異的疾患の自然発生に関連する。ヒトでは、胸腺中で生成する天然Tregは末梢CD4T細胞の3〜5%を表し、CD25、CTLA−4、CD62L及び転写因子Foxp3を発現する。
【0052】
本発明の方法によって誘導されるTregは、Foxp3、CD4、CD25及びCTLA−4を発現する一方で、CD62L及び/又はCCR7であってよい。これらのマーカーのいずれかの存在を、単独又は組み合わせて使用して、Tregを同定することができる。例えば、Foxp3発現細胞、Foxp3及びCD4を発現する細胞、CD62L及び/又はCCR7を発現しないT細胞、又はFoxp3、CD62L及びCCR7である細胞の存在を評価することによって、ヒトTregの存在を決定することができる。CD25及び/又はFoxp3と併せたCD127の発現を使用してヒトTregをさらに定義する(及び単離)することができるが、これは、Foxp3TregがCD4T細胞のCD25CD127分画内に局在するように見えるからである。したがってTregの存在は、サンプル中のCD25CD127T細胞を検索すること、又はCD25CD127Foxp3細胞又はCD127Foxp3細胞を検索することによって同定することができる。
【0053】
本発明の方法は、以下のマーカー:Foxp3、CD4、CD25、CD127、CD62L、CCR7、CTLA−4、GITR、TGFβ及びLAPのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ以上によって特徴付けられる細胞の存在を検出することを含むことができる。例えば、本発明の方法は、Foxp3;Foxp3及びCD4;CD25及びCD127;及び/又はCD62L及びCCR7である細胞の検出を含むことができる。
【0054】
本発明の方法は、Foxp3CD127である細胞の検出を含むことができる。本発明の方法は、さらにCD62L及びCCR7であるような細胞の同定をさらに含むことができる。
【0055】
このようなT細胞マーカーの存在は、当技術分野で一般的な方法によって評価することができる。これらは発現又は機能系試験を含むことができる。例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して、1つ又は複数のこのような特性を示す細胞を単離及び同定することができる。したがってFACSを使用して、特定の発現プロフィールを示す細胞に関するサンプルをスクリーニングすることができる。
【0056】
インフリキシマブ療法後の関節リウマチ患者中のTreg数の増大の根底にある機構を検索することによって、この疾患を治療するための制御性T細胞の利用の仕方に関する識見を見出すことができる。同様に、このような分析は、療法に対する臨床応答を予測するために使用することができる様々なバイオマーカーの同定を可能にする。1つのこのような例は、一晩細胞培養物を使用して測定することができるFoxp3発現である。
【0057】
Tregがその効果を媒介する機構は依然として完全には理解されておらず、且つ試験中の系に応じて変わるようであるが、ただし一般に天然Tregは、直接的な細胞接触並びにおそらくIL−10及びTGFβなどのサイトカインの関与を必要とする。
【0058】
Tregの誘導はTGFβに依存することを本明細書で確定する。これは、レスポンダーT細胞からのTregの分化を誘導することができるTGFβの作用と一致している。このプロセスはさらに、IL−2とCTLA−4の両方の存在に頼る。理論によって縛られることは望まないが、インフリキシマブによるTregの誘導はTGFβの産生及び応答性によって制御されると仮定する。この仮説をさらに広げると、インフリキシマブに応答しなかった患者中のTreg数の増大がない理由は、TGFβの産生又は機能の不全に原因があると予測することができる。
【0059】
したがって本発明の方法は、本明細書で論じるTregの機能のいずれかなどの、Tregの機能特性を検索することによってTregの存在を評価することができる。例えば本発明の方法は、レスポンダーT細胞の集団による前炎症性サイトカインの産生を抑制するT細胞の能力を評価することができる。抑制することができるサイトカインには、TNFα、IFNγ、IL−6及びIL−1がある。本発明の方法は、レスポンダーT細胞の集団の増殖を抑制するT細胞の能力を評価することができる。
【0060】
本発明の方法は、Tregにより産生又は誘導される分子を検索することによって、Tregの存在を評価することができる。例えば本発明の方法では、TGFβ又はIL−10などの、Tregに特徴的である1つ又は複数の炎症促進性サイトカインの存在を評価することができる。
【0061】
診断法
したがって本発明は、患者が抗TNFα療法を用いた治療に応答するかどうか、及びその仕方の評価を可能にする診断法を提供する。以下でより詳細に説明するように、幾つかの実施形態中で、この情報は医師又は獣医師により使用されて、患者に適した治療過程を選択する際に彼らに手助けすることを可能にする。特にこの情報は、患者のin vivoで、試験する特定の抗TNFα療法、又は類似の療法を使用するかどうかを、彼らが決定するのを手助けする際に有用である可能性がある。
【0062】
本明細書に記載するTreg活性又は数の誘導の検出は、患者がその抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す。これは、同じ患者が他の抗TNFα療法に応答することも示す可能性がある。例えば、抗TNFα抗体療法に応答したTreg活性又は数の誘導は、患者がその抗体を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す可能性があるが、その患者が、TNFαと結合する他の抗体などの他の抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す可能性もある。したがって、本発明のin vitro試験中でインフリキシマブに対する陽性応答を示す患者は、他の抗TNFα抗体などの、インフリキシマブと同様の経路によって作用する他の療法にも応答する可能性が高い。
【0063】
患者は、彼又は彼女がその療法に応答する50%を超える確率を有する場合、療法に応答する可能性が高いとして分類することができる。患者は、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、又はそれより高い所与の療法に応答する確率を有することが好ましい。療法に応答する可能性が高いとして同定される患者は、試験しなかった患者より療法に応答する確率が高いことが好ましい。例えば、インフリキシマブは関節リウマチ(RA)を有する患者の60〜70%において有効である。本発明の方法によってインフリキシマブに応答する可能性があるとして同定されるRA患者は、70%を超える、75%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、又はそれより高い確率などの60〜70%を超える応答の確率を有し得ることが好ましい。
【0064】
本明細書に記載するTreg活性又は数の誘導の不在は、患者がその抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が低いことを示す。これは、同じ患者が他の抗TNFα療法に応答しないことも示す可能性がある。例えば、本発明に従って抗TNFα抗体がTreg活性又は数を誘導できないことは、患者がその抗体を用いた治療に応答する可能性が低いことを示す。それは、患者が他の抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が低いことを意味する可能性もある。したがって、本発明のin vitro試験中でインフリキシマブに対する陰性応答を示す患者は、他の抗TNFα抗体などの、インフリキシマブと同様の経路によって作用する他の療法に応答する可能性も低い。
【0065】
患者は、彼又は彼女がその療法に応答する50%未満の確率を有する場合、療法に応答する可能性が低いとして分類することができる。患者は、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又はそれより低い所与の療法に応答する確率を有することが好ましい。療法に応答する可能性が低いとして同定される患者は、試験しなかった患者より療法に応答する低い確率を有することが好ましい。例えば、インフリキシマブは関節リウマチ(RA)を有する患者の30〜40%において無効である。本発明の方法によってインフリキシマブに応答する可能性が低いとして同定されるRA患者は、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又はそれより低い確率などの30〜40%未満の応答の確率を有し得ることが好ましい。
【0066】
治療の方法
本発明は抗TNFα療法にも関する。治療するのに適した療法及び条件は前に論じる。本発明は特に、患者がどの程度特定の抗TNFα療法に応答する可能性が高いかを決定するための方法に関する。これらの方法は治療法の一部分として使用することができる。即ち、抗TNFα療法を用いた患者の治療法は、患者がその療法に応答する可能性が高いかどうかを決定するために、本明細書に記載する予測試験を実施する追加的ステップを含むことができる。
【0067】
したがって本発明は、TNFα活性に関連する疾患又は状態を治療するための方法を提供する。例えば本発明は、炎症性又は自己免疫疾患を治療するための方法であって、(a)本明細書に記載する予測法を使用して、抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が高いとして患者を同定するステップと、(b)前記抗TNFα療法を用いて患者を治療するステップとを含む方法を提供する。このような方法において使用するのに適した疾患、患者、及び療法は本明細書に記載する通りである。
【0068】
抗TNFα抗体などの本明細書に記載する抗TNFα療法は、本明細書に記載する予測法により抗TNFα療法を用いた治療に応答する可能性が高いとして同定した患者中の、炎症性又は自己免疫疾患などのTNFα活性に関連する疾患又は状態の治療における使用にも提供する。例えば、抗TNFα抗体などの本明細書に記載する抗TNFα療法剤は、このような患者中の炎症性又は自己免疫疾患などの、TNFα活性に関連する疾患又は状態を治療するための医薬品の製造において使用することができる。再度、適切な療法、患者及び疾患は本明細書に記載する通りである。
【0069】
療法の投与は「予防」又は「療法」目的のいずれかであってよい。本明細書で使用する用語「療法」又は「治療」は、以下の:疾患又は疾患に関連する症状(単数又は複数)の予防、疾患又は症状(単数又は複数)の発生又は進行の低減又は予防、既存の疾患又は症状(単数又は複数)の低減又は排除のいずれかを含む。
【0070】
予防又は療法は、有効な抗TNFα応答の誘導及び/又はTNFαから生じるか又はTNFαに関連する症状及び/又は合併症の軽減、低減、治癒又は少なくとも部分的な阻止を含むが、これらだけには限られない。予防的に与えるとき、療法は典型的には任意の症状に先立って与える。療法の予防的投与は、後の症状又は疾患を予防又は改善するためである。療法的に与えるとき、療法は典型的には疾患の症状の発症時又は直後に与える。このような療法的投与は、典型的には、疾患の症状の進行を予防若しくは改善するため、又はこのような症状若しくは疾患の重度を低減させるためである。
【0071】
抗TNFα療法の投与の特異的経路、用量及び方法は、医療従事者によって通常通り決定することができる。
【0072】
例えば、インフリキシマブは商標名Remicade(登録商標)で現在販売されている。典型的には2カ月間隔及びクリニック又は病院での、静脈内注入による投与用のRemicade(登録商標)が販売されている。関節リウマチを治療するためのRemicade(登録商標)の推奨用量は3mg/kg、次に初回注入後第2週及び第6週並びに次いでその後8週毎で追加的な類似の用量である。クローン病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、乾癬又は潰瘍性大腸炎に関して、Remicade(登録商標)の推奨用量は類似の投与スケジュールで5mg/kgである。
【0073】
アダリムマブは商標名Humira(登録商標)で現在販売されている。いずれも典型的には在宅患者による皮下注射用の、予め充填した0.8mlシリンジ中と予め充填したペンデバイス中の両方のHumira(登録商標)が販売されている。本発明に従って、抗TNFα療法は任意の適切な経路によって、任意の適切な用量で、及び任意の適切な投与レジメで投与することができる。関節リウマチ、乾癬性関節炎又は強直性脊椎炎を有する成人患者に関するHumira(登録商標)の推奨用量は、1週間おきに投与する40mgである。クローン病を有する成人患者に関する、推奨されるHumira(登録商標)の用量レジメンは、第0週において最初に160mg(用量は1日に4回の注射として、又は2日間連続で1日当たり2回の注射として投与することができる)、第2週に80mg、次に第4週で始めて1週間おきに40mgの維持用量である。
【0074】
抗TNFα療法剤は、医薬組成物又はワクチン組成物又は免疫療法組成物だけには限られないがこれらなどの、組成物の一部として単独で利用して、TNFα活性に関連する状態を予防及び/又は治療することができる。
【0075】
本明細書に記載する抗TNFα療法は、同じ患者を治療することを目的とする1つ又は複数の他の療法と組み合わせて使用することができる。組合せによって、療法を同時に、組合せ又は別の形で患者に投与することができることを意味する。療法は同じ療法レジメンの一部として別々又は連続的に患者に投与することができる。例えば、本明細書に記載する抗TNFα療法は、炎症性又は自己免疫疾患の治療を目的とする別の療法と組み合わせて使用することができる。他の療法は、炎症性又は自己免疫疾患を有する患者の状態の治療又は改善を目的とする一般的な療法であってよい。例えば、メトトレキセート、グルココルチコイド、サリチル酸塩、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、他のDMARD、アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、及び/又は免疫調節薬(例えば、6−メルカプトプリン及びアザチオプリン)を用いた治療を抗TNFα療法と組み合わせることができる。例えば、インフリキシマブは一般に、関節リウマチの治療においてメトトレキセートと組み合わせて使用される。
【0076】
他の療法は、患者が罹患する特定の疾患又は状態を対象とする、又はこのような疾患又は状態の特定の症状を対象とする、特異的治療であってよい。例えば、患者が関節リウマチを有する場合、本明細書に記載する治療は、抗TNFα療法を用いた治療、及び関節リウマチの症状の治療、予防又は低減を具体的に目的とするさらなる療法を用いた治療も含むことができる。
【0077】
キット
本発明は、容器中のキットの形にパッケージされた、本発明の予測法中で使用するのに適した、本明細書に記載する構成要素の組合せにも関する。このようなキットは一連の構成要素を含み、本発明の方法を可能にすることができる。例えばキットは、抗TNFα抗体などの抗TNFα療法剤、及びサンプル中の制御性T細胞の存在又は活性を検出する手段を含むことができる。キットは他の適切な試薬(単数又は複数)、対照(単数又は複数)、又は説明書などを場合によっては含有し、本発明の方法を実施するのを可能にすることができる。このようなキットは、患者からサンプルを得るための手段も含むことができる。
【実施例】
【0078】
(例1)
in vivo法
材料及び方法
調査対象集団。
RAに関するAmerican College of Rheumatologyの改訂分類基準を満たす、活動性関節リウマチ(RA)を有する27人の患者を、抗TNFα療法(インフリキシマブを第0週、第2週、第6週に3mg/kgの用量で静脈内に、次いで8週毎に安定用量のメトトレキセート7.5〜15mg/週と組み合わせて経口投与する)及び安定非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の前後で評価した。プレドニゾロンを与えた患者は調査対象から除外したが、これは、ステロイドが、リンパ球機能及びCD25発現に影響を与えることが知られているからである。5.1を超える疾患活動性スコア(DAS)を有する患者のみを、抗TNFα療法で治療した。応答は1.2を超えるDASの低下として定義した。従来用量のメトトレキセート(15〜25mg/週)に応答していた患者も、この調査対象に含めた。
【0079】
抗体。
以下の抗体を使用した:FITC結合抗CD4(RPAT4)、サイクローム結合抗CD25(M−A251);
【0080】
細胞の単離。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll−Paque Plus(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)の勾配遠心分離によって単離した。96ウエルU底プレート(Nunc、Corning)内の、2nMのL−グルタミン、5mMのHEPES、及び100U/μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、0.5mMのピルビン酸ナトリウム、0.05mMの非必須アミノ酸(いずれもLife Technologies、Rockville、MDから)、及び10%のFCS(いずれもBioWhittaker、Walkersville、MDから)を補充したRPMI1640培地中で細胞を培養した。非CD4T細胞はビオチン抗体カクテル(l0μl/10個の合計細胞)を使用して染色し、4℃で10分間インキュベートし、次いで抗ビオチンマイクロビーズ(20μl/10個の合計細胞)で磁気標識し、4℃で15分間インキュベートし、2回洗浄し、MACS LDカラムで枯渇させた。CD4CD25T細胞は抗CD25マイクロビーズ(l0μl/10個のCD4+細胞)で直接標識し、4℃で15分間インキュベートし、製造者の説明書(Miltenyi Biotec)に従ってMACS MSカラムを使用して陽性選択した。CD4CD25T細胞のT細胞亜集団は単離直後に使用した。全てのプレート結合抗CD3培養物に1×10個の照射PBMCを与えた。
【0081】
統計分析。
統計上有意な差異に関する全ての分析はスチューデントのt検定で実施した。0.05より小さいP値を有意であると考えた。
【0082】
結果
CD4CD25highT細胞の頻度は、治療前の同じ患者と比較して抗TNFα応答患者中で高い。
制御性T細胞の数を、治療の前後でRAを有する患者においてモニターした。CD4T細胞におけるCD25high/lowの発現を、FACS分析を使用して治療の最初の3カ月間の間に、4人の応答患者及び4人の非応答患者において最初に調べた。CD4CD25highT細胞の割合が抗TNFα療法に応答した患者中で経時的に増大した一方で、4人の非応答患者中ではCD4CD25highT細胞の割合は変化しなかった。この集団の割合はインフリキシマブの初回注入後6週間、4人の応答患者の3人において上昇し続け、治療の3カ月後安定状態であった。メトトレキセート療法に応答する患者を含めた、より大きな患者のコホートにおける後の分析は、CD4CD25high or lowT細胞両方の割合は、活動性RAを有する患者、メトトレキセート治療患者、及び健常対照中で測定したレベルと比較して抗TNFα応答患者中で有意に増大したことを明らかにした。活動性RA患者は、CD4CD25lowT細胞の増大した割合も示した。
【0083】
メトトレキセート治療した個体は、治療に対するそれらの応答に関して応答性抗TNFα治療患者と合致した。制御性T細胞の数の低減は、健常個体と比較して活動性RAを有する患者中では測定しなかった。健常対照と比較して抗TNFα療法に応答しなかったRAを有する患者中では、CD4CD25high/low発現の差異は検出しなかった。CRP、リウマチ性疾患活動性の指標とCD4CD25highT細胞(ただしCD4CD25lowではない)の割合の間の有意な相関関係によって、抗TNFα療法に対する応答とこの細胞集団中の増殖の間の関係を確認した。治療前と抗TNFα治療後3カ月で、PBMC中のCD4T細胞の絶対数の有意な変化はなかった。
【0084】
(例2)
RA患者中のTreg
材料及び方法
患者集団。
RAに関するAmerican College of Rheumatologyの改訂分類基準を満たす、活動性RAを有する31人の患者を、抗TNFα療法の前及びその4〜6カ月後に評価した。20人の健常個体を対照として使用した。この調査対象はUCLH Ethics Committeeによって承認された。
【0085】
抗体。
以下の抗体を使用した:FITC抗CD4(RPA−T4)、PE−Cy5抗CD25(M−A251)、PE抗CD62L(Dreg−56)、PE−CY7抗TNF−α(Mab11)、PE−Cy7抗IFN−γ(45.B3)、PE−FoxP3(PCH−101)、APC抗CCR7(3D12)、PE抗CD45RO(UCLH1)。T細胞は示したように可溶性抗CD3(HIT−3a)及び抗CD28(CD28.2)で活性化した。全ての抗体は(eBiosciencesからのFoxP3以外は)BD Bioscienceからであった。中和実験用に、抗TGF−β1(9016.2)及び抗ヒトIL−10(25209)を使用した(R&D systems)。インフリキシマブ、キメラIgGI抗TNFαモノクローナル抗体は、Schering Ploughによって寄贈された。
【0086】
細胞の単離。
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll−Paque(GE Healthcare)によって単離し、100U/μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)及び10%のFCS(Sera Laboratories International、Ltd)を含むRPMI1640中で培養した。磁気ビーズの分離は、Miltenyi Biotec GmbHから購入した全ての磁気カラム及び磁気標識ビーズを用いて実施した。FACS選別(Moflo)を使用して細胞を精製するために、前述の結合抗体(CD4、CD25及びCD62L)を用いて細胞を染色した。補足図1中に示すようにゲートに従って細胞を選別した。
【0087】
フローサイトメトリー分析及びサイトカイン検出。
前述の結合抗体(CD4、CD25及びCD62L)を使用して、前に記載したように(11)細胞を表面染色した。TNF−α及びIFN−γ産生の細胞内分析のために、細胞は2×10で48時間PMAと共に培養し、イオノマイシン及びゴルジプラグを培養の最後の5時間内に加えた。TGF−β1はELISAキット(R&D Systems)を使用して定量化した。幾つかの実験では、0.4μmの薄膜支持体を有する24ウエルのトランスウエルプレート(Costar)を使用した。
【0088】
増殖アッセイ。
全ての実験中で、制御性T細胞は2×10細胞/mlで培養し、CD4CD25T細胞の数は比に関する実験に応じて調節した。細胞は96ウエルU底プレート(Nunc)中で5日間培養し、培養の最後の18時間内にH−チミジンを加えた。増殖は液体シンチレーションカウンターを使用して測定した。
【0089】
統計分析。
統計的有意はスチューデントのt検定を使用して決定し、0.05より小さいP値は統計上有意であるとみなした。
【0090】
結果及び考察
インフリキシマブ治療患者由来のTregの増殖集団はFoxp3及びCD62Lである
健常、活動性RA及びインフリキシマブ後患者から単離した末梢CD4T細胞を、細胞内染色によって転写因子Foxp3の発現に関して分析した。活動性RA患者又は健常個体と比較して、CD4Foxp3細胞の割合の2〜3倍の増大をインフリキシマブ後患者のPBMCにおいて観察し、抗TNFα治療後患者中でのCD25発現の増大は、Treg数の増大を反映することを示唆した。健常対照と比較して、活動性RA患者由来のCD4T細胞中でのFoxP3発現の有意な差異はなかった。インフリキシマブ後のTregの表現型をさらによく特徴付けるために、本発明者らは、活性化、記憶及び調節の代表的な表面マーカーを測定した。CD4CD25CD62の割合の有意な増大を、インフリキシマブ前に活動性疾患を有していたRA患者及び健常個体と比較して、インフリキシマブ患者由来のPBMCにおいて観察した。
【0091】
本発明者らは、CD4Foxp3集団中のCD62Lの発現を次にアッセイした。健常個体及び活動性RAを有する患者由来の大部分のCD4Foxp3細胞がCD62Lを発現した一方で、発現のプロフィールはインフリキシマブ治療後に著しく異なり、この場合大部分のCD4Foxp3細胞が低レベルのCD62Lを発現した。メトトレキセートに応答していた患者中で、Foxp3細胞の割合の変化又はCD62L発現のシフトはなかった。健常個体及び活動性疾患、RAを有する患者中で見られたTregと比較して、インフリキシマブ後TregはCD45ROを発現したが、CCR7の発現が低減した。インフリキシマブ後のCD4Foxp3CD62LRATregのさらなる調査は、これらの細胞はCCR7の発現を欠いておりCD45RO状態であったことを明らかにした。
【0092】
インフリキシマブ治療RA患者由来のCD62LTregはTGFβ及びIL−10を介してそれらの抑制作用を媒介する。
CD4CD25highをCD62L及びCD62LTregとして同定したCD62Lのそれらの発現に従ってFACS選別し、且つそれらの制御能力を、自己CD4CD25T細胞による増殖の阻害、TNFα及びIFNγ産生に関して評価した。健常個体から単離したCD62LTregは、CD4CD25T細胞の増殖を抑制する際にCD62LTregより強力であった。逆に、インフリキシマブ後のRA患者から単離したCD62LTregは、それらのCD62LTreg対応物より、T細胞増殖のより強力な抑制を示した。同様に、本発明者らは、IFNγ及びTNFα産生の阻害に関する、サプレッサー集団中での健常個体のCD62LTregからインフリキシマブ後患者のCD62LTregへの「転換」を観察した。健常個体と比較して、活動性RAを有する患者から単離したCD62LTregのサプレッサー能力の有意な低減があり、CD4CD25highTregがRA患者中で欠損していることを確認した。重要なことに、抗TNFα療法後のCD62LTregの能力は、健常個体中で見られたレベルには戻らなかった。
【0093】
適応Tregの抑制機構に関連する制御性サイトカインとして以前に認識されたTGFβ及びIL−10に対する中和モノクローナル抗体の存在下で、自己CD4CD25T細胞とTregを同時培養した。健常個体中では、CD62LTregの抑制効果は、TGFβ又はIL−10の中和によって不変であった。対照的に、TGFβ、及びある程度のIL−10の中和は、インフリキシマブ治療後患者由来のCD62LTregの制御能力を著しく損ねた。TGFβとIL−10の両方の作用を遮断すると、これらのCD62LTregの抑制作用はほぼ無効であった。健常個体由来のCD62LTregの能力は、IL−10又はTGFβの遮断によって不変であった。
【0094】
本発明者らは、インフリキシマブ療法後のRA患者から単離した精製CD62LTregの機能性をアッセイして、それらの作用形態を細かく調べた。CD4CD25T細胞によるTNFα及びIFNγ産生の最大の抑制を実施するために細胞接触が必要とされたが、細胞接触が妨げられるとき、ある程度のサイトカイン抑制を依然として観察する。インフリキシマブ後患者から単離したTregが細胞接触とサイトカインの両方をそれらの抑制効果に必要とした事実は、優勢型のTGFβが膜と結合するとき、TGFβは細胞接触を介して抑制を媒介することができることを示す、データによって説明することができる可能性がある。さらに、幾つかの実験系では、IL−10産生はTregとCD4CD25T細胞の間の細胞接触にも依存する。集合的にこれらの結果は、インフリキシマブ療法は、健常個体中又は活動性RAを有する患者中に存在する天然Tregと、表現型及び機能が異なる末梢Treg集団をもたらす、又は動員することを示唆する。
【0095】
RA患者由来のCD4CD25T細胞のin vitroでのインフリキシマブ刺激は、CD62LTreg集団を誘導した。
活動性RA又は健常個体から単離したCD4CD25T細胞にインフリキシマブをin vitroで加え、且つFoxp3の発現は細胞内染色によって測定した。精製した活動性RACD4CD25T細胞へのインフリキシマブの添加は、CD4Foxp3細胞の割合の実質的増大をもたらしたが、一方健常個体からCD4CD25T細胞を単離したとき、このような影響は全く見られなかった。この培養系におけるTGFβの中和は、CD4CD25T細胞由来のCD4Foxp3T細胞集団の分化を完全に妨げた。さらにインフリキシマブは、健常個体ではなく、活動性RAを有する患者由来のCD4CD25T細胞からのTGFβ産生の有意な増大を誘導した。インフリキシマブが天然TregFoxp3の発現を調節するかどうかを決定するために、CD4CD25highT細胞を健常個体又は活動性RAを有する患者から単離し、インフリキシマブと共に培養した。これらの結果は、インフリキシマブがCD4CD25highTregにおけるFoxP3の発現に影響を与えなかったことを示し、この作用物質は既存のTregを調節するのではなく、CD4CD25T細胞を標的にする証拠を支持した。次に本発明者らは、CD4CD25T細胞とインフリキシマブの培養後のCD62L発現を測定した。健常個体由来ではなく、活動性RA患者由来のCD4CD25T細胞へのインフリキシマブの添加は、CD62L発現の低減をもたらした。したがって、これらのin vitroインフリキシマブ生成T細胞は、インフリキシマブ療法を施したRA患者のPBMC中に存在するTregとの共通の特徴として、低減したCD62L発現を共有する。
【0096】
本発明者らは、インフリキシマブ刺激によって分化したFoxp3+T細胞が、サプレッサー活性を有することを確認しようと試みた。大部分の精製CD4CD25T細胞は、抗CD3/CD28、インフリキシマブ有り又はなしで刺激するとCD25発現が得られたので、CD4CD25T細胞を精製し、新たに単離した自己CD4CD25T細胞と共に培養した。インフリキシマブと同時培養した、健常個体ではなく、活動性RA患者由来のCD4CD25T細胞のみが、新たに単離したCD4CD25T細胞からのIFNγ及びTNFαの産生を抑制することができた。
【0097】
これらのデータは、CD4CD25highCD62Lとして定義する天然由来のTregは、抗TNFα療法での治療後に依然として欠損しているように思われることを示唆する。インフリキシマブ療法後のCD4CD25high集団の機能の回復は、新たに分化したCD62LTregの抑制効果に原因がある可能性が最も高い。
【0098】
(例3)
in vitro予測法
患者の選択
Bloomsbury Rheumatology UnitのNew Therapies Clinicで(インフリキシマブ及びエタネルセプトを含む)抗TNFα療法を始めようとしている、関節リウマチ(RA)を有する50人の患者を試験に動員する。試験するRA患者は、生物学的療法の導入に関するBritish Society of Rheumatology(BSR)の適格基準、及び5.1を超える疾患活動性スコア(DAS)、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)及び/又はリウマチ因子(RF)に関して血清反応陽性を満たす。RA患者における療法に対する応答はEuropean League Against Rheumatismによって確立された基準を使用して定義し、3〜5カ月で2回測定した(DASも応答を評価するための連続型変数として使用する)。CRPの変化も記録する。療法前、次いで療法後第2、第8週及び第4カ月で血液サンプルを採取する(血液は個々の患者から4回を越えずに採取する)。
【0099】
乾癬性関節炎(末梢関節疾患のみ)を有する患者の群も試験する。療法に対するそれらの疾患活動性及び応答を、BSR(Kyleら(2005) Rheumatology 44:390〜397ページ)によって勧められたように評価する。
【0100】
対照は、メトトレキセート(MTX)治療前後のRAを有する30人の患者、及び30人の健常ボランティアを含む。患者は非ステロイド系抗炎症薬を継続して服用する。プレドニゾロンを与えた患者は調査対象から除外するが、これは、ステロイドが、リンパ球機能及びCD25発現に影響を与えることが知られているからである。患者及び健常個体は年齢及び性別を適合させる。
【0101】
静脈血(50〜80ml)を、療法を開始する前に患者から、抗凝固剤としてのEDTAに回収する。その後患者から、注入又は通常のフォローアップのいずれかのために、クリニックに出向いた際に血液を採取した。患者からは試験用に4回を超えて血液を採取しない。本発明者らは、細胞の1回の凍結/解凍サイクルが制御性又はレスポンダーT細胞の機能を害することはないことを、以前に決定している。承諾は全個人から得ている。倫理的承認はUCLH倫理委員会から得ている。療法に対する患者の応答を評価し血液サンプルを採取し、それによってプロジェクトを大幅に容易にする、New Therapies Clinicに所属する2人の専門看護師が存在する。
【0102】
1.in vitroでのインフリキシマブ又はアダリムマブによる制御性T細胞の誘導が臨床応答に関連するか、より重要なことにはRA患者中の応答を予測することができるかどうかの確定。
レスポンダーCD4T細胞を、インフリキシマブ又はアダリムマブ療法の開始前に活動性疾患を有するRA患者から、FACS選別(CD4CD25CD127)によって単離する。レスポンダーT細胞はin vitroにおいて10μg/mlのインフリキシマブ又はアダリムマブ有り又はなしで一晩活性化させ(2μg/mlの抗CD3/CD28)、且つFoxp3の誘導はFACSによってアッセイする(eBioscience)。Tregのin vitro誘導の程度は、第3カ月でのインフリキシマブ療法に対する同じ患者の臨床応答と相関関係がある。応答は次の注入前の8週後にも確認する。このin vitroアッセイにおけるTreg数の増大は、療法に対する臨床応答を予測するはずである。
【0103】
PBMC中のin vivoでのCD4Foxp3細胞の数をインフリキシマブ療法後に評価して、Tregのin vivo誘導とin vitroの誘導の間の相関関係を決定する。
【0104】
インフリキシマブ又はアダリムマブを用いた療法の前後(第6週、第3カ月及び第6カ月)に、RAを有する患者からPBMCを単離した。CD4Foxp3細胞の数はFACS染色によって測定した。治療に応答していた患者中のFoxp3CD4T細胞の数を、前治療、健常、及び非応答患者中で検出した数と比較した(図1参照)。図1中の結果は、インフリキシマブ又はアダリムマブの治療3カ月後の、関節リウマチを有する患者の末梢血中の(CD4Foxp3として同定した)制御性T細胞の数を示す。インフリキシマブとアダリムマブの両方が、療法に応答する患者中での制御性T細胞の数の増大をもたらした。療法に応答した患者のみを図1中に示す。これは、インフリキシマブ又はアダリムマブで治療したRA患者の血液中の制御性T細胞の刺激は、これらの患者が療法に応答するかしないかの予測指標であることを示す。
【0105】
本発明者らは、レスポンダーT細胞集団中のFoxp3の誘導は、機能アッセイにより評価して制御性細胞の数の増大と相関関係があることを示している。Foxp3に対する代替として、CD25及びCD127も使用してTregの数を数える。Foxp3CD4T細胞の制御性も、in vitro培養中に発生する結果として生じるCD4CD25CD127T細胞を精製すること、及び新たに単離したレスポンダー(CD4CD25CD127)T細胞によるTNFα及びIFNγの産生(細胞内サイトカイン産生によりアッセイ)及び増殖(CFSEによりアッセイ)を抑制するそれらの能力を試験することによって評価する。90%の強度、及び5%の有意性水準を使用して、この試験に必要とされる数を推定するために施した想定は、陽性試験(5%を超えるTregの増大)で細胞の90%が治療に対するレスポンダーとなり、陰性試験で30%が治療に対するレスポンダーとなるということである。
【0106】
2.RA患者中でのTregの誘導がin vivo及びin vitroでエタネルセプトを用いても起こるかどうかの決定。
RA患者中でのTregの機能を治療の前後に評価して、エタネルセプト治療後にT細胞機能を抑制するTregの能力が変わるかどうか決定する。具体的には、この実験は、RA患者中でのTreg機能の欠損、即ち炎症促進性サイトカイン産生の抑制の不能が、エタネルセプト療法後に回復するかどうかを扱う。
【0107】
エタネルセプトを用いた療法の前後(第6週、第3カ月及び第6カ月)に、RAを有する患者からPBMCを単離した。CD4Foxp3細胞の数はFACS染色によって測定した。治療に応答していた患者中のFoxp3CD4T細胞の数を、前治療、健常、及び非応答患者中で検出した数と比較した。
【0108】
エタネルセプトを用いた3カ月の治療後の、関節リウマチを有する患者の末梢血中の(CD4Foxp3として同定した)制御性T細胞の数を分析した。図1は、これらのサンプル由来のPBMC中のこのような制御性T細胞の割合を示す。エタネルセプト治療群に関する応答する患者のみを示す。図1は、患者がインフリキシマブ又はアダリムマブを用いた治療と臨床的に同程度応答したにもかかわらず、エタネルセプト治療は制御性T細胞の数の変化をもたらさなかったことを示す。これは、エタネルセプトが、インフリキシマブ及びアダリムマブと比較して異なる作用機構を有する可能性があることを暗示する。これは、制御性T細胞の数又は活性の評価は、エタネルセプトを用いた治療に対する患者の考えられる応答性に適したマーカーではない可能性があることも暗示する。
【0109】
乾癬性関節炎を有する患者由来のTregの数に対するエタネルセプトの影響も評価する。
【0110】
本発明者らは、インフリキシマブによって誘導したTregは、それらが天然Tregと比較してCD62L及びCCR7の低減した発現を有する点で表現型が異なることを示している。CTLA−4、GITR、CD62L、CCR7、CD25、CD127を含めた幾つかの関連マーカーを使用してエタネルセプト前後のRA患者中のTregをさらに特徴付ける。
【0111】
エタネルセプト療法前後の、炎症促進性サイトカイン産生及びレスポンダーT細胞による増殖を抑制するRA患者から単離したTregの能力を評価する。様々な細胞集団をFACSにより選別する(Aria、BD)。FACS選別によるTregの量及び純度を最大にするために、CD25及びCD127を対象とする抗体を使用する。したがって、CD4CD25CD127Treg、又はCD4CD25CD127レスポンダーT細胞、又は混合物(1:1;1:3同時培養物)を抗CD3/CD28で刺激し、チミジンの取り込み及びCFSEによって増殖をモニターする。サイトカイン産生(TNFα、IFNγ、TGFβ、IL−10)は、これらのTreg抑制アッセイにおいて細胞内サイトカイン産生及び/又はELISA/CBAによって測定する。
【0112】
この実験は、遮断抗体を使用して、エタネルセプト療法後に存在するTregの阻害効果が細胞接触(トランスウエル膜を使用)に依存するか、又はTGFβ若しくはIL−10などの阻害性サイトカインの影響によるかどうかを調べる。近年の関心が重要な炎症促進性サイトカインとしてのIL−17に集中しているので、Tregが存在する阻害アッセイにおいても、RA患者由来のレスポンダーT細胞によるこのサイトカインの産生をさらに測定する。適切な場合、これらの実験の結果は、健常個体及びインフリキシマブを用いて治療したRA患者で得た結果と比較する。
【0113】
これらの実験は、エタネルセプトがin vitroでレスポンダーT細胞からのTregの生成を誘導することができるかどうかも調べる。RAを有する患者及び健常対照由来のレスポンダー(CD4CD25CD127)T細胞はFACS選別によって精製し、インフリキシマブに関して前に記載したようにin vitroでTregを誘導するエタネルセプトの能力を評価する。
【0114】
エタネルセプトの様々な濃度及び異なる活性化条件(±IL−2、抗CD3)を使用する。Foxp3Tregを誘導する場合、それらを精製し、自己レスポンダーT細胞を用いた抑制アッセイにおいてそれらの表現型及び抑制能力を評価する。これらの結果は、in vivoでのエタネルセプト療法後のTregの試験から収集した情報と比較する。次のステップは、遮断抗体を使用すること、及びELISA及び表面染色によりTGFβの産生をアッセイすることによって、(インフリキシマブに関して示したように)TGFβがこの影響に重要であるかどうか決定することを含む。FACS選別によるそれらの単離後の、天然Tregに対するエタネルセプトの影響(Foxp3発現)も評価する。
【0115】
これらの実験は、エタネルセプトと比較してインフリキシマブの作用機構を差別化するのに光明を投じ、それらの分化効率に関する説明及びそれらの異なる治療的使用に関する理論的根拠を与えた。インフリキシマブ療法によるTregの誘導は、RAにおける耐性の回復を特異的にもたらすことができる。したがって本発明者らは、インフリキシマブは初期RAを有する患者に与えた場合、疾患の寛解をもたらすことができる一方で、エタネルセプトはこのような影響を有し得ないと予想することが可能である。
【0116】
3.インフリキシマブ療法後に、活動性乾癬性関節炎を有する患者が欠損Tregを有し、末梢血Tregの数が増大するかどうかの決定。
前に記載したように標準的なin vitroアッセイを使用して、乾癬性関節炎を有する患者におけるTregの機能を測定して、任意の機能障害を決定する。乾癬を有する患者由来のTregが欠損し、乾癬性関節炎を有する患者由来のTregもこの異常を示す可能性が高いことが報告されている。インフリキシマブ療法によるTregの誘導は、3カ月の治療後のCD4Foxp3T細胞の数を数えることによって試験する。平行して、RA患者由来のレスポンダーT細胞に関して確定したのと同様に、in vitroでのレスポンダーT細胞におけるインフリキシマブによるFoxp3発現の誘導、及び任意のこのような誘導Tregのサプレッサー活性も評価する。
【0117】
4.インフリキシマブによるTregの誘導の根底にある機構の検索。
実験の次のセットは前項中で得た結果によって導く。予備データは、Tregの誘導はインフリキシマブ療法に応答するRA患者に特異的であることを示す。本発明者らは、インフリキシマブによるTregの誘導に影響を与える重要な識別要因はTGFβの産生であることを提唱する。これはFoxp3誘導の代用指標として働くことができ、インフリキシマブに対する臨床応答を予測するためのより簡単な試験を示すことができる。
【0118】
本発明者らは、インフリキシマブによるTregの誘導は、TGFβ、Tregの誘導に関与することが知られている制御性サイトカインに依存することを既に示している。この実験は、FACSによって、健常対照、RA患者及び乾癬性関節炎を有する患者由来の(ex vivo又は抗CD3/CD28で一晩活性化した)レスポンダー、CD4CD25CD127、T細胞におけるTGFβ潜伏関連ペプチド(LAP)の発現を決定する。異なる患者群由来のレスポンダーT細胞からTregを誘導するインフリキシマブの能力を比較することによって、レスポンダーT細胞におけるTGFβ(LAP)の発現とTregの誘導の間の相関関係を関連付ける。TGFβの産生もELISAによって測定する。対立仮説として、その発現ではなくTGFβに対する分化応答性が、Foxp3の誘導に影響を与えると考えられる。したがって、異なる患者群中のレスポンダーT細胞におけるTGFβのシグナル伝達の結果を洞察するために、TGFβRの発現をFACSによりアッセイし、Smadシグナル伝達カスケードの活性化はウエスタンブロッティングによりアッセイする。後者はSmad2及び3のリン酸化に焦点を当てる。TGFαは、TGFβRII発現及び下流シグナル伝達に対する影響によって、TGFβ介在性シグナル伝達に干渉することも知られている。(異なる患者群由来の)レスポンダーT細胞単独における、これらのシグナル伝達タンパク質の誘導を、この経路を標的にするTGFβ遮断抗体を使用して、インフリキシマブの添加有り又はなしで評価する。さらに、TGFβをレスポンダーT細胞に加えて、異なる患者群由来のレスポンダーT細胞におけるFoxp3発現を誘導する、このサイトカインの能力を確定する。
【0119】
CTLA−4とIL−2はどちらも、レスポンダー(CD4+CD25−CD127+)T細胞からのTregのTGFβ依存性誘導に必要とされる(30〜32)。したがって、異なる患者群(RAレスポンダー、非レスポンダー、乾癬性関節炎レスポンダー)由来のレスポンダーT細胞の活性化中、FACSによりCTLA−4発現、及びFACS(細胞内染色)及び/又はELISAによりIL−2産生を、培養中に存在するインフリキシマブ有り又はなしで評価する。これらの発見は、インフリキシマブ療法前後のRA患者由来のTregにおけるCTLA−4発現と相関関係がある。TGFβはレスポンダーT細胞におけるCD80発現を上方制御することが示されているので(32)、活性化レスポンダーT細胞におけるCD80発現もこの実験中に評価する。
【0120】
インフリキシマブのTreg誘導とTGFβの間の関係を確定したので、本発明者らは次に、RAの状況で炎症促進性Th17細胞と対照的なTregの生成におけるTGFβ応答の柔軟性に対処する。IL−2、TGFβ、及びIL−6を含めた幾つかの因子がTh17の分化を制御するようである(33〜35)。本発明者らは、インフリキシマブは、TNFαとIL−6の両方を下方制御することによって、制御性の表現型に対する炎症性Th17応答を誘導すると仮定する。本発明者らは、RAを有する患者由来のTregとレスポンダーT細胞の同時培養においてIL−17が産生される予備的証拠を有する。これらの同時培養物は抗CD3/CD28で、ただし単球の不在下において刺激した。同時培養中のIL−17の生成に必要とされる条件の全体像を得るために、活動性RAを有する患者から単離したレスポンダーT細胞及びTreg(別々又はレスポンダーT細胞/Tregの組合せ)によるTGFβ、IL−6、IL−2、TNFα及びIL−17の産生を、健常個体及びインフリキシマブで治療したRAを有する患者と比較する。サイトカインの産生はELISA及び/又は細胞内染色によって測定する。IL−17産生に対するIL−6、TNFα、TGFβ、及びIL−2の個々の貢献を、適切な遮断抗体を使用して評価する。T細胞増殖の抑制及びTNFα/IFNγの産生も決定する。これらの培養物中のCD4Foxp3T細胞の数を測定する。したがって、レスポンダーT細胞を単独でインキュベートする場合、これらの実験はインフリキシマブによるTregのin vitro増殖を模倣し、例えばIL−6阻害も、インフリキシマブと同様の方法でFoxp3CD62LTregの生成を誘導するかどうか試験する。少なくともマウスでは、炎症性環境中でのTregとレスポンダーT細胞の同時培養は、Th17細胞の形成を促進することは明らかである。したがってこの実験は、健常個体と対照的な活動性RAを有する患者由来のTregの能力を試験して、同時培養実験中のIL−17の産生をサポートする。これらの結果は、Th17産生に対する、TGFβ及びIL−10を介してTh1応答を抑制するインフリキシマブ後患者由来のTregの影響と比較する。IL−10とTGFβの一緒の組合せはTh17の分化を抑制することができ、又は、近年明らかになったように、これらの影響はIL−2によって調節することが可能であった。実際、インフリキシマブは、刺激型レスポンダーT細胞によるIL−2産生を増大させることが知られている。
【0121】
5.抗TNFα治療後に制御性T細胞の数が二次リンパ器官中で変わるかどうかの確定。
本発明者らは、RAにおける本発明者らのデータと同様に、抗TNFαを用いた治療後のコラーゲン誘導関節炎(CIA)を有するマウス中でのCD4CD25Treg数の増大を示している。以前に記載されたような(Feldmannら、(1996)Ann Rev Immunol 14:397〜440ページ)完全フロイントアジュバンド(CFA)に溶かしたII型コラーゲン(CII)で免疫感作したDBA/1マウスを使用して、Treg数の増大が二次リンパ器官中でも観察されるかどうかを確定する。
【0122】
関節炎発症の日に、マウスを抗TNFα(ヤギ抗マウスTNF中和抗体、腹膜内、R&D Systems;又はモノクローナル抗TNFクローンTN3−19.12、eBiosciences)、アイソタイプ適合対照又はPBS対照を用いて、本来記載されたプロトコル(Williamsら、(1992)Proc Natl Acad Sci USA89:9784〜9788ページ)の後に2週間の間週に2回治療する。PBMC中のCD4CD25Foxp3+Tregのレベルは、疾患発症の日から始めて疾患消散(治療後第0、7、14及び21日)まで、FACS染色を使用して定期的間隔で測定する。実験の最後(疾患発症後第21日)に、胸腺、脾臓及びリンパ節をマウスから切除し、CD4CD25Foxp3T細胞のレベルを測定する。
【0123】
抗TNFα後の増大したTregは、表面マーカー(CTLA−4、CD62L、GITRなど)の発現及びそれらの免疫調節(TGFβ、IL−10)サイトカインのプロフィールを調べることによって特徴付ける。様々な区画(即ち、関節対LN又は脾臓)及びそれらの表現型(非投薬対記憶)の分析において決定したTregの絶対数の比較は、誘導したTregの起源を示す(即ち、de novo生成と対照的に炎症の部位から動員した)。この実験は、Treg数の有意な変化は疾患のいずれかの段階(早期関節炎、急性又は寛解期)に関連するかどうかも評価する。CII±IL−2、及び抗CD3/CD28刺激に対するTreg細胞の応答も評価し、且つCD4CD25T細胞の増殖及び炎症促進性サイトカインの産生を抑制する能力によってそれらの制御能力を試験する。
【0124】
6.抗TNFαを用いて治療したDBA/1マウス中の炎症性関節炎の消散に対するCD4CD25制御性T細胞のin vivoでの貢献の評価。
抗TNFα療法はTregの誘導によって部分的に働く可能性があるという仮説を試験するために、DBA/1マウスからCD4CD25T細胞を枯渇させ、抗TNFα療法に対するそれらの応答を非枯渇DBA/1マウスの応答と比較する。
【0125】
以前に記載されたのと同様に(Morganら、(2003)Arthritis Rheum.48:1452〜1460ページ)細胞系PC61由来の枯渇抗CD25モノクローナル抗体(mAb)の腹膜内注射を使用して、(抗TNFα療法の開始前に)マウスからCD25発現細胞を枯渇させる。CD25発現T細胞の完全な枯渇は抗CD25の単回注射後第3日で通常起こり、3週間後50%の細胞が回復し、完全な回復は典型的には4週間後である。
【0126】
このレジメは、抗TNFα治療に応答してレスポンダーT細胞から生成する可能性がある「誘導型」Tregを残しながら、内生Tregを除去することができる。実際、本発明者らのヒトにおける試験は、インフリキシマブはレスポンダーT細胞からのTreg分化を誘導することを示唆する。内生よりはむしろ誘導型Tregが、抗TNFαの保護効果の中心となるかどうかを処理するために、追加的な2つの用量の抗CD25枯渇抗体を、抗TNFαを用いた治療後約5日及び10日で投与する。疾患発症の日に、枯渇マウスと非枯渇マウスの両方を、抗TNFα、アイソタイプ適合対照又はPBS対照を用いて治療する。CD4CD25T細胞が枯渇したマウスにおける疾患の重度は、いずれも抗TNFαで治療した非枯渇マウスにおける疾患の重度と比較する。疾患の重度は以前に記載されたのと同様に評価する(Mauriら、(1996)Eur J Immunol 26:1511〜1518ページ)。
【0127】
抗CD25モノクローナル抗体の長い半減期(2〜3週間)のため、内生Tregの重要性と誘導型Tregの重要性の境界を区別することは困難である可能性がある。この問題点を回避するために、本発明者ら及び他が以前に実証した(Williamsら、(1992)Clin Exp Immunol88:455〜460ページ;Mauriら、(2000)Nat Med6:673〜679ページ)関節炎のSCIDモデルを使用して、移植実験を実施する。
【0128】
SCIDマウスは最初に、関節炎発症脾細胞、又は内生Tregが枯渇した関節炎発症脾細胞(Miltenyiキット)で再構成する。再構成の翌日、マウスは抗TNFαで治療する。関節炎の重度、及びTreg(CD4CD25Foxp3)の生成を評価し、対照マウスと比較する。Tregが生じる場合、CD4+CD25+Foxp3T細胞の増大により決定して、血液、LN、脾臓、及び関節中のTregの分布を次いで評価する。
【0129】
それらの抑制能力を確認するために、(異なる治療をしたSCIDマウスから単離した)CD4T細胞を、CII又は抗CD3/CD28の存在下で、新たに単離した野生型関節炎発症CD4CD25T細胞(Tレスポンダー)と同時培養する。抗TNFαが内生又は誘導型Tregを介して働くかどうかをさらに細かく調べるために、SCIDマウスは抗TNFα投与の開始後3〜5日間抗CD25枯渇抗体でさらに処理して、偶発的な「新しい」Tregを除去する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TNFα抗体を用いた治療に対する患者の応答を予測するための方法であって、
(a)患者由来のT細胞のin vitroサンプルを提供するステップと、
(b)前記T細胞を抗TNFα抗体に曝すステップと、
(c)制御性T細胞が前記T細胞のサンプルにおいて誘導されるかどうかを決定するステップと
を含み、制御性T細胞の誘導が、患者が前記抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す方法。
【請求項2】
前記患者が炎症性又は自己免疫疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が関節リウマチ、乾癬性関節炎、クローン病、乾癬、強直性脊椎炎又は潰瘍性大腸炎を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗TNFα抗体が抗TNFαモノクローナル抗体である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗TNFα抗体がインフリキシマブ又はアダリムマブである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞のサンプルがレスポンダーCD4T細胞を含むサンプルである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記T細胞のサンプルがCD4CD25CD127T細胞を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞のサンプルを患者由来のサンプルのFACS選別によって得る、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)が前記T細胞によるFoxp3、CTLA−4、GITR、CD62L、CCR7、CD25、TGFβ、LAP及びCD127から選択される1つ又は複数のマーカーの発現を評価するステップを含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(c)が、
(a)前記サンプル中のFoxp3T細胞の存在を評価するステップ、
(b)前記サンプル中のFoxp3CD4T細胞の存在を評価するステップ、
(c)前記サンプル中のFoxp3CD127T細胞の存在を評価するステップ、
(d)前記サンプル中のCD25CD127T細胞の存在を評価するステップ、及び
(e)前記サンプル中のCD62L及びCCR7T細胞の存在を評価するステップ
の1つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
制御性T細胞の存在をFACSによって決定する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)が、
(a)レスポンダーT細胞の集団による炎症促進性サイトカイン産生を抑制する前記サンプル中のT細胞の能力を評価するステップ、
(b)レスポンダーT細胞の集団の増殖を抑制する前記サンプル中のT細胞の能力を評価するステップ
の1つ又は複数を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記炎症促進性サイトカインがTNFα、INFγ、IL−6及びIL−1から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炎症性又は自己免疫疾患を治療するための方法であって、
(a)請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法により、抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いとして患者を同定するステップと、
(b)前記抗TNFα抗体を用いて患者を治療するステップと
を含む方法。
【請求項15】
患者における炎症性又は自己免疫疾患の治療において使用するための抗TNFα抗体であって、前記患者が、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法により、抗TNFα抗体を用いた治療に応答する可能性が高いとして同定されている抗TNFα抗体。

【図1】
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【公表番号】特表2010−527978(P2010−527978A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508900(P2010−508900)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001728
【国際公開番号】WO2008/142405
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507153999)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (6)
【Fターム(参考)】