説明

抗VEGF抗体

抗体が提供される。場合によって、抗体は、a)選択された抗体の重鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む重鎖可変ドメインと、b)選択された抗体の軽鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む軽鎖可変ドメインとを含んでなり、このとき該抗体は選択された標的を結合する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗体は特異的な抗原を結合するタンパク質である。一般に、抗体は、その標的に対して特異的であり、免疫エフェクターメカニズムを媒介する能力を有し、血清中で長い半減期を有する。このような性質により抗体は強力な治療手段となる。モノクローナル抗体は、癌、炎症及び心臓血管系疾患を含む様々な状態の治療のために治療上用いられている。現在市場には10以上の治療的抗体製品があり、何百もの抗体が開発中である。
新規の抗体は常に需要がある。
【発明の概要】
【0002】
抗体を提供する。場合によって、抗体は、a)図1に示される選択された抗体の重鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む重鎖可変ドメインと、b)選択された抗体の軽鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む軽鎖可変ドメインとを含んでなり、このとき該抗体は選択された標的を結合する。具体的な実施態様では、抗体のCDR領域は、選択された抗体のCDR領域と比較して、あわせて例えば1、2、3、4、5又は最大10のアミノ酸相違(例えばアミノ酸置換、欠失又は挿入)を含んでいてよい。場合によって、対象とする抗体のCDR領域は、いくつかの関連した抗体を分析して得られるコンセンサス配列によって定められるアミノ酸配列を有してよい。ある実施態様では、抗体のCDR領域は、選択された抗体のCDR領域と同一でもよい。
【0003】
具体的な実施態様では、抗体は、a)i.図1の選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む重鎖可変ドメインと、b)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む軽鎖可変ドメインとを含んでいてよく、このとき該抗体は選択された標的を特異的に結合する。
【0004】
ある実施態様では、抗体は、a)i.図1の選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む可変ドメインと、b)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む軽鎖可変ドメイン、又はb)CDR領域内の多く(例えば1、2、3、4、5、6、7又は8)のアミノ酸置換を除いて部分a)の可変ドメインと同一である部分a)の可変ドメインの変異体、とを含んでいてよく、このとき該抗体は選択された標的を結合するものであり、ある実施態様では、選択された標的の活性である。
【0005】
ある実施態様では、抗体は、表1から選択されるCDRコンセンサス群のCDRを含んでよい。具体的な実施態様では、抗体は、a)i.表1から選択されるCDRコンセンサス群のCDR1アミノ酸配列を含むCDR1領域と、ii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR2アミノ酸配列を含むCDR2領域と、iii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR3アミノ酸配列を含むCDR3領域とを含む重鎖可変ドメインと、b)i.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR1アミノ酸配列を含むCDR1領域と、ii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR2アミノ酸配列を含むCDR2領域と、iii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR3アミノ酸配列を含むCDR3領域とを含む軽鎖可変ドメインとを含んでよく、このとき該抗体は選択された標的を特異的に結合するものであり、ある実施態様では、選択された標的の活性である。
【0006】
また、対象の抗体と薬学的に許容可能な担体とを含有してなる薬学的組成物を提供する。
また方法も提供する。ある実施態様では、方法は、抗体が標的に結合して複合体を生成するために適切な条件下で対象の抗体を該抗体の標的と接触させることを含んでよい。
また、リガンドのそのレセプターへの結合を遮断する方法も提供する。ある実施態様では、この方法は、対象の抗体を被検体に投与することを含んでよく、このとき該抗体は該被検体においてそのレセプター又はそのリガンドに結合し、該リガンドとそのレセプターとの結合を遮断する。
選択された標的はVEGFであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】選択されたVEGF-遮断抗体のアミノ酸配列を示す。図1の1頁目は、重鎖のアミノ酸配列を示す。図1の2頁目は、対応する軽鎖のアミノ酸配列を示す。各抗体のCDRのアミノ酸配列は囲みで示す。図1に示されるアミノ酸配列は、VEGFに特異的に結合して、VEGF活性を中和する抗体のものである。上から下へ、図1(2頁中の1頁目)配列番号:1〜38及び図1(2頁中の2頁目)配列番号:39〜76。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(定義)
本発明についてさらに記載する前に、本発明が、記載された特定の態様には限定されず、これらは当然ながら変わりうることが理解されるべきである。また、本明細書で用いる専門用語は特定の態様のみを説明することが目的であり、本発明の範囲は添付された特許請求の範囲のみによって限定されるので、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0009】
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解しているものと同じ意味を持つ。本発明の実施又は試験に本明細書に記載したものと同様又は同等の方法及び材料を用いることができるが、好ましい方法及び材料は以下に説明するものである。本明細書で言及するすべての刊行物は、その刊行物の引用と関係のある方法及び/又は材料の開示及び記載のために出典明記によって本明細書中に援用される。
【0010】
本明細書及び添付された特許請求の範囲において用いる場合、単数形の「1つの(a)」「1つの(and)」及び「その(the)」は、その文脈で明らかに別の指示がなされない限り、複数のものに関する言及も含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの抗体」に対する言及は複数の該抗体を含み、「1つのフレームワーク領域」に対する言及は1つ又は複数のフレームワーク領域及び当業者に公知のその等価物に関する言及を含み、その他も同様である。
【0011】
本明細書で論じている刊行物は単に、本出願の出願日前の開示内容を提供する目的のみで提供される。本明細書中のいかなる記載も、本発明は先行発明に基づいて前記刊行物に先行しているという権利を与えられていないということを認めていると解されるものではない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日とは異なる可能性があり、それらは個別に確認する必要があるであろう。
【0012】
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は、本明細書において互換的に用いられる。これらの用語は当業者には十分に理解されており、抗原を特異的に結合する一又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。抗体の1つの形態は、抗体の基本的な構造単位を構成する。この形態は四量体であり、それぞれの対が1つの軽鎖と1つの重鎖を有する、抗体鎖の2つの同一な対からなる。それぞれの対において、軽鎖及び重鎖の可変領域は協働して抗原への結合を担い、定常領域は抗体のエフェクター機能を担う。
【0013】
一般に認められている免疫グロブリンポリペプチドには、κ及びλ軽鎖、ならびにα、γ(IgG、IgG、IgG、IgG)、δ、ε及びμ重鎖、又は他の種における等価物が含まれる。(約25kDa又は約214アミノ酸の)完全長免疫グロブリン「軽鎖」は、約110アミノ酸の可変領域をNH末端に含み、κ又はλ定常領域をCOOH-末端に含む。(約50kDa又は約446アミノ酸の)完全長免疫グロブリン「重鎖」も同様に、(約116アミノ酸の)可変領域、及び前記の重鎖定常領域のうち1つ、例えば(約330アミノ酸の)γを含む。
【0014】
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語には、任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン、抗原に対する特異的結合性を保っているFab、Fv、scFv及びFd断片を非限定的に含む抗体の断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体及び非抗体タンパク質の抗原結合部分を含む融合タンパク質が含まれる。抗体を、例えば、放射性同位体、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光性タンパク質などにより、検出可能なように標識してもよい。抗体をさらに、特異的結合対のメンバー、例えばビオチン(ビオチン−アビジン特異的結合対のメンバー)などの他の部分とコンジュゲートさせてもよい。また、抗体をポリスチレン製プレート又はビーズなどを非限定的に含む固体支持体と結合させてもよい。また、この用語に含まれるものには、Fab'、Fv、F(ab')、及び又は抗原に対する特異的結合を保っているその他の抗体断片、及びモノクローナル抗体がある。抗体は一価性でも二価性でもよい。
【0015】
抗体は、例えば、Fv、Fab及び(Fab')、並びに二機能性(すなわち、二重特異的)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))を含む種々の他の形態として、及び一本鎖(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85、5879-5883 (1988)及びBird et al., Science, 242, 423-426 (1988)、これらは出典明記により本明細書に援用される)として存在してもよい(全般的には、Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984)及びHunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照のこと)。
【0016】
免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる3つの高頻度可変領域によって分断された「フレームワーク」領域(FR)からなる。フレームワーク領域及びCDRの範囲は正確に定められている("Sequences of Proteins of Immunological Interest", E. Kabat et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1991)を参照)。本明細書中で論じるすべての抗体のアミノ酸配列の番号付けはKabatシステムに従う。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、単一種内では比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要素である軽鎖及び重鎖が組み合わされたフレームワーク領域は、CDRを配置させて整列させる働きをする。CDRは主として、抗原のエピトープへの結合を担う。
【0017】
キメラ抗体とは、その軽鎖及び重鎖の遺伝子が、異なる種に属する抗体可変領域遺伝子及び定常領域遺伝子から、典型的には遺伝子操作によって構築された抗体のことである。例えば、非ヒトモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントを、ヒトの定常セグメント、例えばγ1及びγ3などと連結してよい。治療用キメラ抗体の一例は、ウサギ抗体由来の可変ドメイン又は抗原結合ドメインと、ヒト抗体由来の定常ドメイン又はエフェクタードメインとから構成されるハイブリッドタンパク質であるが(例えば、ATCC寄託物受託番号CRL9688の細胞によって作製された抗Tacキメラ抗体)、他の哺乳動物種を用いてもよい。
【0018】
本明細書で用いる場合、「ヒト化抗体」又は「ヒト化免疫グロブリン」なる用語は、対応する位置にあるヒト抗体由来のアミノ酸によって置換された一又は複数のアミノ酸を含む、非ヒト(例えば、マウス又はウサギ)抗体のことを指す。場合によって、ヒト化抗体は、同じ抗体の非ヒト型と比べてヒト宿主における免疫応答が低い。
【0019】
本方法によって設計及び作製されたヒト化抗体が、抗原結合にもその他の抗体機能にも実質的に影響を及ぼさないアミノ酸置換を有しうることは理解されるであろう。
【0020】
「類似のアミノ酸」は以下のように定義する:gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;及びphe、tyr。言い換えれば、gly及びalaは類似のアミノ酸であり、val、ile及びleuは類似のアミノ酸であり、asp及びgluは類似のアミノ酸であり、asn及びglnは類似のアミノ酸であり、ser及びthrは類似のアミノ酸であり、lys及びargは類似のアミノ酸であり、そしてphe及びtyrは類似のアミノ酸である。アミノ酸の類似アミノ酸への置換は本明細書中では「保存的アミノ酸置換」と称する。上記の同じ群に存在しないアミノ酸は「異なる」アミノ酸である。
【0021】
「特異的結合」なる用語は、種々の分析物の均質な混合物中に存在する1つの特定の分析物と選好的に結合する、抗体の能力のことを指す。ある実施態様において、特異的な結合相互作用は、試料中の望ましい分析物と望ましくない分析物とを識別すると考えられ、いくつかの態様においては、約10〜100倍を上回る、又はそれ以上である(例えば、約1000倍又は10000倍を上回る)。
【0022】
ある実施態様では、抗体とその標的との間の親和性は、それらが捕捉物質/分析物複合体として特異的に結合する場合には、K(解離定数)が10−6M未満である、10−7M未満である、10−8M未満である、10−9M未満である、10−9M未満である、10−11M未満である、又は約10−12M未満もしくはそれ未満であることによって特徴づけられる。
【0023】
抗体の重鎖又は軽鎖の「可変領域」とは、鎖のN末端の成熟ドメインのことである。すべてのドメイン、CDR及び残基の番号は、配列アラインメント及び構造の知識に基づいて割り当てられる。フレームワーク及びCDR残基の同定及び番号付けは、Kabat、Chothia(Chothia Structural determinants in the sequences of immunogloblin variable domain. J Mol Biol 1998;278:457-79)及び他によって記載されている通りである。
【0024】
VHは抗体重鎖の可変ドメインである。VLは抗体軽鎖の可変ドメインであり、これはκ(K)又はλアイソタイプのものでありうる。K−1抗体はκ-1アイソタイプを有し、一方、K−2抗体はκ-2アイソタイプを有し、Vλは可変λ軽鎖である。
【0025】
本明細書で用いる場合、「決定すること」、「測定すること」及び「評価すること」及び「アッセイすること」という用語は互換的に用いられ、これには量的及び質的な決定の両方が含まれる。
【0026】
本明細書において互換的に用いられる「ポリペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸の多量体形態を指し、これにはコード化されているアミノ酸及びコード化されていないアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含みうる。この用語には、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する又は有しない異種及び同種リーダー配列を有する融合物;免疫学的なタグ付加がなされたタンパク質;検出可能な融合パートナーとの融合タンパク質、例えば、融合パートナーとして蛍光性タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質;などを非限定的に含む、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは任意のサイズであってよく、「ペプチド」という用語は、長さが8〜50残基(例えば、8〜20残基)であるポリペプチドのことを指す。
【0027】
本明細書で用いる場合、「単離された」なる用語は、単離された抗体の文脈において用いられる場合、精製の前にその抗体に付随している他の成分を少なくとも60%含まない、少なくとも75%含まない、少なくとも90%含まない、少なくとも95%含まない、少なくとも98%含まない、さらには少なくとも99%含まない、対象の抗体のことを指す。
【0028】
「治療」「治療すること」などの用語は、本明細書において、哺乳動物、例えば、特にヒト又はマウスにおける、任意の疾患又は病状の任意の治療のことを指すために用いられ、これには以下のものが含まれる:a)疾患、病状、又は疾患ないし病状の症状が、その疾患に対する素因があってもよいがまだそれを有するとは診断されていない被検体において起こるのを予防すること;b)疾患、病状、又は疾患ないし病状の症状を抑制すること、例えば、患者におけるその進行を停止させること、及び/又はその発症もしくは症状発現を遅延させること;ならびに/又はc)疾患、病状、又は疾患ないし病状の症状を緩和すること、例えば、病状又は疾患及び/又はその症状の退行を引き起こすこと。
【0029】
「被検体」、「宿主」、「患者」及び「個体」という用語は、本明細書において、診断又は治療法が望まれる任意の哺乳動物被検体、特にヒトを指すために互換的に用いられる。他の被検体には、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどが含まれうる。
【0030】
「対応するアミノ酸」とは、2つ又はそれ以上のアミノ酸配列のアラインメントを行った場合に、同一な位置にある(すなわち、それらが互いに真向かいにある)アミノ酸残基のことである。抗体配列のアラインメント及び番号付けのための方法は、前記のKabat及びその他において、さらに詳細に示されている。当技術分野で公知であるように(例えば、Kabat 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, DHHS, Washington, DCを参照のこと)、アラインメントを実施するために、一方又は両方の抗体のアミノ酸に対して、時には、(特にL3及びH3 CDRにおいて)1、2又は3のギャップ及び/又は最大で1、2、3もしくは4の残基、又は最大およそ15残基の挿入を加えてもよい。
【0031】
「天然」の抗体とは、例えばファージディスプレイによって作製された非天然的に対合した抗体やヒト化抗体とは異なり、抗体の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が多細胞生物の免疫系によって天然に選択されている抗体のことである。よって、ある抗体は、任意のウイルス(例えば、バクテリオファージM13)由来の配列を含まない。脾臓、リンパ節及び骨髄は、天然の抗体を産生する組織の例である。
【0032】
「親」抗体とは、アミノ酸置換の標的となる抗体のことである。ある態様においては、改変抗体を作製するために、アミノ酸が「ドナー」抗体によって親抗体に「供与」される。
【0033】
「関連抗体」とは、類似の配列を有し、共通のB細胞祖先を有する細胞によって産生される抗体である。前記のB細胞祖先は、再配列された軽鎖VJC領域及び再配列された重鎖VDJC領域を有するゲノムを含み、親和性成熟をまだ受けていない抗体を産生する。脾臓組織中に存在する「ナイーブ」又は「バージン」B細胞は、例示的な共通B細胞祖先である。関連抗体は抗原の同じエピトープと結合し、典型的には、配列、特にL3及びH3 CDRが非常に類似している。関連抗体のH3及びL3 CDRは長さが同一であり、ほぼ同一な配列を有する(例えば0〜4の残基が異なる)。関連抗体は、ナイーブB細胞祖先において産生される抗体である共通の抗体祖先によって関連づけられる。「関連抗体」なる用語は、B細胞によって産生される共通の抗体祖先を有しない一群の抗体を記載することを意図してはいない。場合によって、関連抗体は、i.同じ抗原に結合する;ii.それぞれ互いに比較して全体として少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変ドメインを含む;iii.それぞれ互いに比較して全体として少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む;iv.互いに比較して0、1又は2のアミノ酸置換を除き配列が同一であり長さが同一であるH3 CDRを有する;そして、v.互いに比較して0、1又は2のアミノ酸置換を除き配列が同一であり長さが同一であるL3 CDRを有する。
【0034】
「遮断抗体」、「中和抗体」又は「中和する抗体」又はこれらのいずれかの文法上の等価表現は、標的に対する結合により標的への結合又は標的の生物学的活性が例えば少なくともおよそ20%、30%、40%、50%、80%、95%又は99%阻害される抗体を指す。この標的の生物学的活性の阻害は、標的によって影響を受けるシグナル伝達経路の活性化、結合又は細胞性変化といった一又は複数の標的の生物活性の指標を測定することによって評価されうる。本明細書に記載される標的の生物学的活性は、当分野で公知である一又は複数の様々な標準的なインビトロ又はインビボのアッセイによって評価されうる。
【0035】
本明細書において使われる「VEGF」又はその省略されていない形式の「血管内皮性増殖因子」なる用語は、VEGF遺伝子によってコード化されるタンパク質生成物を指す。VEGFは、脈管形成(胎仔の循環系のデノボ形成)及び血管形成(既存の脈管からの血管の成長)に関与する。VEGFファミリのすべてのメンバーは、細胞表面上のチロシンキナーゼレセプター(VEGFR)に結合することによって細胞性応答を刺激し、これによりレセプターの二量体化が生じ、リン酸基転移反応により活性化される。VEGFレセプターは、7つの免疫グロブリン様ドメインを有する細胞外部分、単一の膜貫通領域及び分断チロシンキナーゼドメインを有する細胞内部分を有する。VEGF−Aは、VEGFR−1(FIt−1)及びVEGFR-2(KDR/Flk-1)に結合する。VEGFR-2は、VEGFに対する細胞性応答の知られているもののうちのほぼすべてを媒介するようである。VEGF、その生物学的活性及びそのレセプターは十分に研究されており、Matsumoto et al (VEGF receptor signal transduction Sci STKE. 2001 :RE21)及びMarti et al (Angiogenesis in ischemic disease. Thromb Haemost. 1999 Suppl 1 :44-52)に記載されている。VEGFなる用語は、標準的な組換え発現方法によって調製することも、市場で購入する(R & D Systems, Catalog No. 210-TA, Minneapolis, Minn.)こともできる組換えVEGF分子、並びにVEGF分子を含む融合タンパク質を包含することを意図する。本明細書において用いられうる例示的なVEGFのアミノ酸配列はNCBIのジェンバンクデータベースにおいて提供され、ヒトVEGF及び様々な疾患及び状態におけるその役割についての記載はすべてManデータベース中のNCBIのオンラインMendelian Inheritanceに提供されている。
【0036】
詳細な説明
抗体を提供する。場合によって、抗体は、a)図1に示される選択された抗体の重鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む重鎖可変ドメインと、b)選択された抗体の軽鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む軽鎖可変ドメインとを含んでなり、このとき該抗体は選択された標的を結合する。具体的な実施態様では、抗体のCDR領域は、選択された抗体のCDR領域と比較して、あわせて例えば1、2、3、4、5又は最大10のアミノ酸の相違(例えばアミノ酸置換、欠失又は挿入)を含んでいてよい。ある実施態様では、抗体のCDR領域は、選択された抗体のCDR領域と同一でもよい。容易にわかるように、前記の抗体はCDRを位置づけるフレームワーク配列を更に含む。
【0037】
具体的な実施態様では、対象の抗体は、a)図1に示される選択された抗体の重鎖可変ドメインと少なくとも80%同一(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%ないし99%同一)であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、b)選択された抗体の軽鎖可変ドメインと少なくとも80%同一(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%ないし99%同一)であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含んでなる。
【0038】
具体的な実施態様では、抗体は、a)i.図1の選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む重鎖可変ドメインと、b)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む軽鎖可変ドメインとを含んでいてよく、このとき該抗体は選択された標的を特異的に結合する。
【0039】
単一の抗原によるウサギの免疫化により、配列の相関性によって分類されうる複数の抗体が得られる。共通のナイーブB細胞祖先を有する細胞によって産生されるという点で、各群内の抗体は互いに関連がある。祖先B細胞によって産生される抗体は親和性成熟を経ていなかったのに対して、関連する抗体は親和性成熟とB細胞発達の最終ステージを経て、共通のB細胞祖先抗体から「進化した」。この点において、関連する抗体は体細胞の過剰変異、遺伝子転換及び親和性成熟の間に起こる他の細胞突然変異現象によって生じるアミノ酸置換を含有する。
【0040】
関連した抗体のアミノ酸配列を(例えば、それらの配列を整列配置することによって)比較し、抗体をその互いの類似性に従って分類し、抗体の関連群を同定することができる。一群の関連した抗体の抗体は一般に、ほぼ同一の配列を含み、同一の長さであるCDR領域を有し、フレームワーク及び/又はCDR領域にアミノ酸配列の相違がある。これらの相違は、関連した抗体のいずれかにおいて置換されうるアミノ酸を示す。場合によって、一位置のアミノ酸は異なるアミノ酸であってもよい。その場合には、例えば、その位置のアミノ酸は他のいずれかのアミノ酸によって置換されてよい。他の場合には、一位置のアミノ酸は類似のアミノ酸であってよい。その場合には、その位置のアミノ酸は類似のアミノ酸によって置換されていてよく、この類似のアミノ酸は上記に定義されるものである。場合によって、アミノ酸が異なる場合には、アミノ酸はある関連した抗体から他の関連した抗体に置換されてよい。
【0041】
特定のコンセンサス群の各々のCDRが最初に生成され、免疫化した動物の免疫系によって効率よく試験されたので、一のアミノ酸の他のコンセンサスアミノ酸への置換は抗体に十分に許容されるものでなければならない。図1の抗体は整列配置され、関連した抗体の群が識別され、コンセンサス配列が同定された。場合によって、抗体はCDRコンセンサス群のCDRを含んでもよく。このとき、CDRコンセンサス群は関連した抗体の配列配置から得られるものである。図1の抗体のコンセンサス配列は表1に示される。表1は対象の抗体の置換可能な位置を示す。この表において、置換は、例えば、他のいずれかのアミノ酸、類似のアミノ酸(すなわち保存的アミノ酸置換)、又は、一抗体から他の抗体へのものであってよい。このような方法は、これらの方法の開示について出典明記によって援用される米国特許出願10/984473(米国特許公開2006−0099204として公開)においてさらに記述される。
【0042】
ある実施態様では、抗体は、表1から選択されるCDRコンセンサス群のCDRを含んでよい。具体的な実施態様では、抗体は、a)i.図1から選択されたCDRコンセンサス群のCDR1アミノ酸配列を含むCDR1領域と、ii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR2アミノ酸配列を含むCDR2領域と、iii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR3アミノ酸配列を含むCDR3領域とを含む重鎖可変ドメインと、b)i.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR1アミノ酸配列を含むCDR1領域と、ii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR2アミノ酸配列を含むCDR2領域と、iii.選択されたCDRコンセンサス配列のCDR3アミノ酸配列を含むCDR3領域とを含む軽鎖可変ドメインとを含んでいてよく、このとき該抗体は選択された標的を特異的に結合する。
【0043】
例えば、このような抗体は、a)i.式:NNA/DVMC(配列番号:77)のCDR1、式:CIMTTDVVTE/AYANWAKS(配列番号:78)のCDR2及び式:DSVGSPLMSFDL(配列番号:79)のCDR3を持つ重鎖可変ドメインと、b)式:QASQN/SL/VYN/GNNELS(配列番号:80)のCDR1、式:W/RASTLAS(配列番号:81)のCDR2及び式:A/S/GGYKSYS/YND/GGN/SG(配列番号:82)のCDR3を持つ軽鎖可変ドメインとを含んでいてよく、このとき該抗体はVEGFを遮断する。
【0044】
【表1】

【0045】
具体的な実施態様では、抗体は、a)式:CDR1:(S/N)(N/S/−)YXM(C/N/S/I);CDR2:(C/F/Y/I)I(M/Y/D/S)(T/−)(G/−)XXXX(T/A)(Y/E/D/V)YA(N/S/T)WAK(G/S)(配列番号:131);CDR3:(G/D/S)(S/D/G/A)XXXX(L/W/Y/−)(X/−)(X/−)(X/−)(X/−)(Y/G/S/−)(F/A/Y/−)(A/N/D)(L/I)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変ドメインと、b)式:CDR1:Q(A/S)S(E/Q)(S/N)(L/V/I)X(S/N/G/−)(N/D/−)(N/T/S/D/G)XL(S/T/A);CRD2:XAS(T/K/Y)L(A/E)S(配列番号:132);CDR3:(A/Q)(G/N/S)X(Y/K)XXXX(X/−)(G/D/−)(X/−)(X/−)X(G/T/A/P/V)のアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変ドメインを含んでいてよく、このときXは任意のアミノ酸であり、−は残基がないことを示し、/は一位置に存在する代替アミノ酸を示し、( )は一アミノ酸位置を示す。この抗体はVEGFを遮断する。
【0046】
変更した抗体
上記の抗体は、少なくとも一のアミノ酸を置換、付加又は欠失させることによって変更されてよい。一実施態様では、上記の対象の抗体のアミノ酸配列が変更されて、ヒトの治療に使用するためのヒト化抗体又は他のタイプの変更抗体を提供する。通常は、これらの変更抗体は上記のウサギ抗体の一般的な特徴を有し、上記のウサギ抗体の少なくともCDRを含むか、又は、ある実施態様では、上記ウサギ抗体のCDRに非常に類似しているCDRを含む。
【0047】
ヒト化抗体
ゆえに、一実施態様では、本発明は、上記の抗体のヒト化バージョンを提供する。通常は、ヒト化抗体は、親の非ヒト抗体のフレームワーク領域のアミノ酸を置換することによって作製し、親の非ヒト抗体よりもヒトにおいて免疫原性が低い抗体を提供する。抗体は、例えば、CDR移植(欧州特許239400;PCT公報WO91/09967;米国特許第5225539号;同第5530101号;及び同第5585089号)、ベニヤリング又はリサーフェシング(欧州特許592106;欧州特許519596;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5): 489-498 (1991);Studnicka et al., Protein Engineering 7(6): 805-814 (1994);Roguska. et al., PNAS 91 : 969-973 (1994))、及び、鎖シャッフリング(米国特許第5565332号)を含む当分野で公知の様々な技術を用いてヒト化されうる。ある実施態様では、CDRとフレームワークの残基の相互作用をモデリングし、抗原結合及び配列比較に重要なフレームワーク残基を識別し、特定の位置の異常なフレームワーク残基を同定することによって、フレームワーク置換が同定される(例として米国特許第5585089号;Riechmann et al., Nature 332:323 (1988))。本発明に用いられるために考慮される抗体をヒト化する更なる方法は、米国特許第5750078号;同第5502167号;同第5705154号;同第5770403号;同第5698417号;同第5693493号;同第5558864号;同第4935496同第;及び同第4816567号、及びPCT公報WO98/45331及びWO98/45332に記述される。具体的な実施態様では、対象のウサギ抗体は、公開された米国特許公開20040086979及び同20050033031に記載される方法に従ってヒト化されてよい。したがって、上記の抗体は、当分野で周知である方法を用いてヒト化されてよい。
【0048】
特に興味がある一実施態様では、対象の抗体は、2004年11月8日に出願の「抗体の操作方法」と題する、米国特許出願10/984473に詳細に記載される方法に従ってヒト化されてよく。この出願は出典明記によってその全体が援用される。通常は、このヒト化方法は、同じ抗原に結合する抗体の配列を比較し、その位置のアミノ酸を類似のヒト抗体の同じ位置に存在する異なるアミノ酸に置換することによって抗体の置換可能な位置を識別することを伴う。これらの方法では、親のウサギ抗体のアミノ酸配列を他の関連するウサギ抗体のアミノ酸配列と比較し(すなわち整列配置し)、変異容認位置を同定する。通常、親のウサギ抗体の可変ドメインのアミノ酸配列をヒト抗体配列のデータベースと比較し、親抗体のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列を有するヒト抗体を選択する。親抗体及びヒト抗体のアミノ酸配列を比較し(例えば整列配置し)、親抗体の一又は複数の変異容認位置のアミノ酸を、ヒト抗体に対応して配置するアミノ酸によって置換する。このヒト化方法において、フレームワーク領域に加えて抗体のCDR領域もヒト化されてよい。
【0049】
先に論じた変異容認位置置換方法は、任意の公知のヒト化方法に容易に組み込まれ、容易に用いられて、親抗体のCDR領域について変更されているCDR領域を含むヒト化抗体が製造される。したがって、上記抗体のCDRの変更されたバージョンを含むヒト化抗体が提供される。
【0050】
上記したように、対象の抗体を変更して変更抗体を提供してよい。具体的な実施態様では、この方法には、一又は複数のアミノ酸置換(例えば、1、最高2、最高3、最高4又は最高5以上、通常最高10以上)を作ることを含む。アミノ酸置換はいずれの位置にあってもよく、その位置のアミノ酸はいくらか同一のアミノ酸によって置換されてよい。ある実施態様では、変更された抗体は、上記のウサギ抗体の同じ一般的な特徴を持ちうる。一実施態様では、置換可能な位置が米国特許出願10/984473の方法を用いて同定した後、その位置のアミノ酸が置換されうる。具体的な実施態様では、アミノ酸置換は、ヒト化する置換(すなわちアミノ酸配列をヒト抗体のアミノ酸配列に類似させる置換)、誘導された置換(例えば抗体のアミノ酸配列を同じ群の関連した抗体のアミノ酸配列に類似させる置換)、ランダムな置換(例えば20の天然に生じるアミノ酸のいずれかによる置換)又は保存的置換(例えば置換されているアミノ酸と類似の生化学的特性を有するアミノ酸による置換)であってもよい。
【0051】
ある実施態様では、本発明の変更抗体は、ウサギの重鎖又は軽鎖のコード核酸に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる重鎖又は軽鎖を含んでいてよい。高いストリンジェンシー条件は、0.1×SSC(15mM 生理食塩水/0.15mM クエン酸ナトリウム)中、50℃以上でのインキュベートを含む。
【0052】
ある実施態様では、本発明の変更抗体は、ウサギの重鎖又は軽鎖のコード核酸に対して少なくとも80%(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%)同一であるポリヌクレオチドによってコードされる重鎖又は軽鎖を含んでいてよい。パーセント同一性は、比較される配列の短さに基づく。既定値パラメータを用いるがフィルターを用いないBLASTN(2.0.8) (Altschul et al. (1997) Nucl. Acids. Res. 25: 3389-3402)のような周知のプログラムを用いて、配列比較してよい。
【0053】
使用方法
上記の抗体は様々な方法で使用されてよい。そのような方法の一つには、抗体がその標的に結合して複合体を生成するために適する条件下で対象の抗体を抗体の標的と接触させることを含む。このような方法は、例えばELISAないしはウェスタンブロッティングによって又は当分野で公知の多くの免疫学的検出方法のいずれか一によって実施されうる。他の実施態様では、レセプターに対するリガンドの結合の遮断方法が提供される。これらの実施態様では、前記方法は、対象の抗体を被検体に投与することを含み、この抗体は前記被検体においてそのレセプター又はそのリガンドに結合し、その結合を遮断する。
【0054】
対象の抗体は、その標的の少なくとも一の活性を、およそ20%〜100%、例えば少なくともおよそ10%、少なくともおよそ20%、少なくともおよそ30%、少なくともおよそ40%、少なくともおよそ50%、少なくともおよそ60%、通常最大およそ70%、最大およそ80%、最大およそ90%以上阻害する。あるアッセイにおいて、対象の抗体は、1×10−7M以下(例えば1×10−7M以下、1×10−8M以下、1×10−9M以下、通常1×10−12M又は1×10−13Mまで)のIC50でその標的を阻害しうる。マウスが使用されるアッセイにおいては、対象の抗体は、1μg/マウス未満(例えば10ng/マウスからおよそ1μg/マウス)のED50を有しうる。
【0055】
前記の方法で使用されうるプロトコールは非常に多く、限定するものではないが、無細胞アッセイ、例えば結合アッセイ;細胞の表現型が測定される細胞性アッセイ、例えば遺伝子発現アッセイ;及び、特定の動物を伴うインビボアッセイ(この動物は、ある実施態様では、標的に関連した状態についての動物モデルであってもよい)が含まれる。場合によって、アッセイは脈管化アッセイであってもよい。
ある実施態様では、対象の抗体はVEGFの存在下で細胞と接触されてよく、細胞のVEGF応答表現型がモニターされてよい。
【0056】
例示的なVEGFアッセイには、無細胞システム、培養細胞を用いたインビトロ又はインビボのアッセイでの単離されたタンパク質を用いたアッセイが含まれる。例示的なVEGFアッセイには、限定するものではないが、レセプターチロシンキナーゼ阻害アッセイ(例としてCancer Research June 15, 2006; 66:6025-6032を参照)、インビトロHUVEC増殖アッセイ(FASEB Journal 2006; 20: 2027-2035)、インビボ固形腫瘍疾患アッセイ(米国特許第6811779号)及びインビボ脈管形成アッセイ(FASEB Journal 2006; 20: 2027-2035)が含まれる。これらのアッセイは当分野で周知である。これらのアッセイの説明は、出典明記によって本明細書に援用される。
【0057】
例示的なTNF-αアッセイには、無細胞システムを使用するか又は培養細胞を使用するインビトロアッセイ又はインビボアッセイが含まれる。ゆえに、TNF-αアッセイには、インビトロヒト全血液アッセイと、細胞媒介性細胞障害性アッセイ(米国特許第6090382号)、インビトロ腫瘍ヒト殺傷アッセイ(例えば公開された米国公開特許20040185047参照)、インビボ腫瘍退縮アッセイ(米国公開特許20040002589)が含まれる。更なるTNF-αアッセイは、20040151722、20050037008、20040185047、20040138427、20030187231、20030199679及びBalazovich(Blood 1996 88: 690-696)を含む様々な刊行物に記述される。
【0058】
抗体を製造するための方法
多くの実施態様においては、対象のモノクローナル抗体をコードする核酸を宿主細胞に直接導入し、コードされる抗体の発現を誘導するために十分な条件下で細胞をインキュベートする。本方法の抗体は、当業者に周知の標準的な技術を本明細書中で提供するポリペプチド及び核酸配列と組み合わせて用いて調製される。ポリペプチド配列を用いて、開示される特定の抗体をコードする適切な核酸配列を決定してよい。当業者に周知の標準的な方法に従って様々な発現システムのための特定のコドン「選好」を表すために核酸配列を最適化してよい。
【0059】
発現カセットの発現のために適した任意の細胞を宿主細胞として用いることができる。例えば、酵母、昆虫、植物などの細胞。多くの実施態様においては、通常は抗体を産生しない哺乳動物宿主細胞系が用いられ、その例には以下のものがある:サル腎細胞(COS細胞)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVI細胞(COS−7、ATCC CRL 165 1);ヒト胎児腎細胞(HEK−293、Graham et al. J. Gen Virol. 36: 59 (1977));仔ハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaub and Chasm, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)77: 4216, (1980);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251 (1980));サル腎細胞(CVI ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(Wl38、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al., Annals N. Y. Acad. Sci 383: 44-68 (1982));NIH/3T3細胞(ATCC CRL1658);及びマウスL細胞(ATCC CCL−1)。そのほかの細胞株も当業者には明らかになると考えられる。非常にさまざまな細胞株が、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209から入手可能である。
【0060】
核酸を細胞に導入する方法は当技術分野で周知である。適した方法には、電気穿孔、微粒子銃技術、リン酸カルシウム沈降、直接微量注入などが含まれる。方法の選択は一般に、形質転換される細胞の種類、及び形質転換が起こる環境(すなわち、インビトロ、エクスビボ又はインビボ)に依存する。これらの方法についての一般的な考察は、Ausubel, et al, Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995に記載されている。いくつかの態様においては、リポフェクタミン及びカルシウムを介した遺伝子導入技術が用いられる。
【0061】
対象の核酸が細胞に導入された後に、典型的には細胞を、抗体の発現を可能にするために約1〜24時間の期間にわたり、37℃でインキュベートするが、これは時には選択下で行われる。多くの実施態様では、抗体は典型的には、細胞が増殖している培地の上清中に分泌される。
【0062】
哺乳動物宿主細胞では、対象の抗体を発現させるために、さまざまなウイルスベースの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、対象の抗体コード配列をアデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及び3つの部分からなるリーダー配列と連結させてよい。続いて、このキメラ遺伝子をインビトロ又はインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入してよい。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)における挿入は、生存可能であって、感染宿主において抗体分子を発現させることが可能な組換えウイルスを生じさせると考えられる(例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 355-359 (1984)を参照)。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって高めることができる(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153: 51-544 (1987)を参照)。
【0063】
組換え抗体の長期的な高収量産生のためには、安定的な発現を用いるとよい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株を人工的に操作してよい。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるのではなく、宿主細胞を免疫グロブリン発現カセット及び選択マーカーによって形質転換させることができる。外来性DNAの導入の後に、操作された細胞を濃縮した培地中で1〜2日間増殖させ、その後に選択培地に交換する。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、細胞が染色体中にプラスミドを安定的に組み込み、増殖して巣を形成することを可能にし、その後そのプラスミドはクローニングされ細胞株に広まる。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価において特に有用である。
【0064】
ひとたび本発明の抗体分子が産生されれば、それを、免疫グロブリン分子の精製のための当分野で公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインAの後の特異的抗原に対するアフィニティー、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解性の違い、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な手法によって精製することができる。多くの実施態様では、抗体は細胞から培養培地中に分泌され、培養培地から採取される。
【0065】
製剤と投薬
本発明の抗体は、医学的に許容範囲内である任意の方法で投与されてよい。これには、静脈内、血管内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹膜内、脳室内、硬膜内又は他の経路といった非経口経路による注射、並びに、経口、経鼻、眼、直腸、又は、局所的なものが含まれる。また、貯蔵物質注射又は浸食性移植物質のような手段による徐放性投与も本発明に特に包含される。局在化した腫瘍に栄養を与えている血管や腎動脈といった、一又は複数の動脈へのカテーテルによる運搬のような手段による局所運搬も特に考慮される。
【0066】
対象の抗体は、薬学的に許容可能な担体により調製されてよい。「薬学的に許容可能な担体」なる用語は一又は複数の有機又は無機の成分であり、天然又は合成のものを意味し、抗体が組み合わさるとその適用を促すものである。薬学的に許容可能であることが知られている他の水溶性及び非水溶性の等張無菌液及び無菌の懸濁液が当業者に知られているが、好適な担体には無菌の生理食塩水が含まれる。「有効量」は、罹患したか、変形性か又は障害性状態の進行を改善するか又は遅延させることが可能である量を指す。有効量は、個体を基本に決定され得、ある程度、治療される症状や求められる結果が考慮されるであろう。有効量は、このような因子を使用し、慣例的な試験だけを使用して当業者によって測定されうる。
【0067】
一実施態様では、対象の抗体は、静脈内か、筋肉内か又は皮下注射によって患者に投与される。抗体は、およそ0.1mg/kg〜およそ100mg/kg、およそ1mg/kg〜75mg/kg、又はおよそ10mg/kg〜50mg/kgの用量範囲内で投与されてよい。抗体は、例えば、ボーラス注射によってか又は緩徐注入によって投与されてよい。30分〜2時間にわたる緩徐注入が使われてよい。
【0068】
有効性
対象の抗体はその標的に関する疾患を治療するために有用である。
一実施態様では、本発明は、VEGF関連の状態のための被検体の治療方法を提供する。方法は、一般に、VEGF関連の疾患の少なくとも一の症状を治療するために有効な量で、VEGF関連の疾患を有する被検体に、対象の抗体を投与することを伴う。VEGF関連の状態は一般に、過剰な血管内皮細胞増殖、血管透過、浮腫又は炎症、例えば損傷、脳卒中又は腫瘍と関係する脳浮腫;関節リウマチを含む関節炎や乾癬のような炎症性疾患と関係する浮腫;喘息;熱傷と関係する全身性浮腫;腫瘍、炎症又は外傷と関係する腹水及び胸水;慢性気道炎症;毛細血管のリーク症候群;敗血症;タンパク質漏出の増加と関係する腎臓疾患;及び、加齢性黄斑変性及び糖尿病性網膜症などの眼疾患によって特徴付けられる。このような状態には、胸部、肺、結腸直腸及び腎臓の癌が含まれる。
【0069】
キット
また、対象の発明によって、上記のような対象の方法を実施するためのキットが提供される。対象のキットは、対象の抗体、それをコードする核酸、又はそれを含む細胞のうち一又は複数を少なくとも具備する。対象の抗体はヒト化されていてもよい。キットのその他の任意の構成要素には、抗体を投与するため又は活性アッセイを実施するためのバッファなどが含まれる。また、キットの核酸は、非ウサギ抗体核酸との連結を容易にするための制限酵素部位、マルチクローニング部位、プライマー部位などを含んでもよい。キットの種々の構成要素は別々の容器内に存在してもよく、又は適合性のある特定の構成要素を必要に応じて単一の容器内にあらかじめ合わせておいてもよい。
【0070】
上述した構成要素に加えて、対象のキットは典型的には、対象の方法を実施するためにキットの構成要素を用いるための説明書をさらに具備する。対象の方法を実施するための説明書は一般に、適した記録媒体上に記録される。例えば、説明書が紙又は合成樹脂などの基体上に印刷されていてもよい。よって、説明書は、添付文書として、キット又はその構成要素の容器(すなわち、パッケージ又はサブパッケージに添付される)のラベル中などに存在してもよい。別の実施態様では、説明書が、適したコンピュータ可読式保存媒体、例えば、CD−ROM、ディスケットなどに存在する電子保存データファイルとして存在する。さらに他の実施態様では、実際の説明書がキット中に存在せず、遠隔的な供給源から、例えばインターネットを介して説明書を得るための手段が提供される。この実施態様の一例は、説明書を閲覧すること、及び/又は説明書をダウンロードすることが可能なウェブアドレスを含むキットである。説明書の場合と同様に、説明書を入手するためのこの手段は、適した基体上に記録される。
【0071】
また、本発明によって、先に考察したプログラム及び説明書を含むコンピュータ可読式媒体を少なくとも具備するキットが提供される。説明書はインストール又はセットアップの指示を含んでもよい。説明書が、上記のような選択肢又は選択肢の組み合わせとともに本発明を用いるための指示を含んでもよい。ある実施態様では、説明書は両方のタイプの情報を含む。
【0072】
ソフトウエア及び説明書をキットとして提供することは、数多くの目的に役立つ。その組み合わせは、親抗体又はそのヌクレオチド配列よりも非ウサギ宿主において免疫原性が低いウサギ抗体を産生するための手段としてパッケージ化し、購入することもできる。
【0073】
説明書は一般に、適した記録媒体上に記録される。例えば、説明書が紙又は合成樹脂などの基体上に印刷されていてもよい。よって、説明書は、添付文書として、キット又はその構成要素の容器(すなわち、パッケージ又はサブパッケージに添付される)のラベル中などに存在してもよい。別の実施態様では、説明書は、プログラムが供給されるものと同じ媒体を含む、適したコンピュータ可読式保存媒体、例えば、CD−ROM、ディスケットなどに存在する電子保存データファイルとして存在する。
【0074】
本発明を、その具体的な実施態様を参照しながら説明してきたが、当業者には、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく、さまざまな変更を加えうること、及び等価物を代わりに用いうることが理解されるものと考えられる。さらに、特定の状況、材料、物質組成、工程、工程の一又は複数の段階を本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために、多くの変更を加えることも可能である。このような変更はすべて本明細書に添付される請求の範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0075】
抗体は、VEGFとそのレセプター(VEGF-R2)との相互作用を遮断する抗体を産生するウサギハイブリドーマから入手した。ハイブリドーマは、免疫化したウサギ脾細胞をウサギハイブリドーマ融合パートナー240E−W2と融合させることによって生成した。
【0076】
ウサギを、Fc融合タンパク質によって免疫化した。融合タンパク質を発現させるために、ヒトVEGF165コード配列を、そのN末端にウサギIgG重鎖のシグナルペプチド配列を含むウサギIgG FcのC末端にクローニングした。融合タンパク質は、HEK293細胞において生成され、培養培地に分泌された。免疫化のための純粋なタンパク質を得るために、上清を採取し、プロテインAカラムにて精製した。溶出されたタンパク質を、PBSバッファに対して透析した。
【0077】
ニュージーランドホワイトウサギを免疫原にて免疫化した。各ウサギに、完全フロイントアジュバント又はTiterMaxアジュバントとともに0.4mgの精製したタンパク質を皮下注射することによって、一次免疫を与えた。次いで、動物を、不完全フロイント又はTiterMaxとともに0.2mgのタンパク質を3週間に1回皮下注射することによって追加免疫した。最終的な免疫刺激(生理食塩水中の0.4mgのタンパク質)は、脾臓摘出の4日前に静脈内投与により行った。
【0078】
PEGを用いたSpieker-Poletの従来のプロトコールに続いて細胞融合を行った。融合パートナーに対する脾細胞の比率は2:1とした。融合細胞は96ウェルプレートに播き、48時間後にHATを加え、ハイブリドーマを選別した。
【0079】
直接ELISAを行って、マイクロタイタープレートにコートされたVEGF-R2融合タンパク質へのVEGFの結合を遮断する抗体を同定した。次いで、このアッセイにおいて同定した抗体は、リガンド−レセプターアッセイにおいてVEGFとそのレセプターとの相互作用の遮断について選別した。遮断抗体は、プレート上にコートされているFc-VEGF又はFc−VEGF-R2(細胞外ドメイン)への、溶液中のFc−VEGF-R2(細胞外ドメイン)又はVEGF−Fcの結合の阻害によって同定した。
抗体の重鎖及び軽鎖をコードするcDNAをクローニングして、配列決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)図1に示される選択された抗体の重鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む重鎖可変ドメインと、
b)選択された抗体の軽鎖CDR領域と実質的に同一であるCDR領域を含む軽鎖可変ドメイン
とを含んでなり、このとき選択される標的を結合する抗体。
【請求項2】
前記抗体が一価抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が二価抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が単鎖抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体がヒト化されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体がその標的に結合して複合体を生成するために適切な条件下で、請求項1に記載の抗体を該抗体の標的と接触させることを含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体を被検体に投与することを含むリガンドのそのレセプターへの結合を遮断する方法であって、該抗体が該被検体においてレセプターか又はリガンドに結合し、該レセプターの該リガンドへの結合を遮断するものである方法。
【請求項9】
請求項1に記載の抗体と薬学的に許容可能な担体を含有してなる薬学的組成物。

【図1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【公表番号】特表2011−517447(P2011−517447A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501758(P2011−501758)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/011620
【国際公開番号】WO2009/120178
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(506043158)エピトミクス インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】