説明

折りたたみ式浴槽

【課題】未使用時には収縮させて容易に持ち運ぶことができ、また、ベッドから浴槽に被介護者を横滑りさせて確実に安全に移動させることができ、介護者が一人でも訪問入浴介護を行えるバルーンタイプの折りたたみ式浴槽を提供することを課題としている。
【解決手段】柔軟な非透水性シートで形成された浴槽本体2とエアーリフト10を有する。浴槽本体2は、周壁2bを立ち上がらせるバルーンの起伏壁2cを有しており、エアーリフト10は、バルーンのリフト本体11と各部の膨らみ状態を平均化する膨らみ規制具16を備える。そのエアーリフト10が底壁2aの下に形成される一端開口のリフト収納室に抜き取り可能に挿入され、そのエアーリフト10で底壁2aを浴槽本体2の上部開口まで上昇させてベッド上の被介護者を横に滑らせて乗り移らせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寝たきり老人などの入浴を、介護者の負担を軽減して行うことを可能にする、訪問入浴介護用として好適な折りたたみ式の浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの被介護者の入浴のために、種々の介護用浴槽が開発されている。その介護用浴槽のひとつに、下記特許文献1〜3などに記載された折りたたみ式の浴槽がある。また、下記特許文献4に示されるような浴槽もある。
【0003】
特許文献1が開示している浴槽は、底壁とバルーン(風船)の側壁とで浴槽を構成しており、側壁を、その壁の内部にエアーを充填して立ち上がらせる。
【0004】
特許文献2が開示している折りたたみ式浴槽は、内部にエアークッションを備えているが、浴槽の基本構造は、特許文献1が開示している浴槽と同じである。
【0005】
特許文献3の浴槽は、本出願人が提案したものであって、柔軟な2枚の非透水性シートを矩形の上部開口の箱状に成形し、これを2枚重ねて浴槽本体を形成している。2枚の非透水性シート間は密閉室となっており、そこにエアーを充填して浴槽本体の底の上側の非透水性シートを浮き上がらせ、浴槽本体の開口位置まで上昇した非透水性シートに被介護者を乗せ、その後、密閉室のエアーを抜くことで支持面を降下させて被介護者を浴槽内に入れるようにしている。
【0006】
特許文献4が開示している浴槽は、リフト機能のあるエアーマットを併用することで特許文献3と同様に浴槽の底を昇降させ、浴槽の開口部まで膨らんだマット上に被介護者を乗せ、その後、マット内のエアーを抜くことでマットを収縮させて被介護者を浴槽に入れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−18531号公報
【特許文献2】実用新案登録第3070459号公報
【特許文献3】特開2005−21412号公報
【特許文献4】特開2001−95888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
容易に持ち運びできる折りたたみ式の浴槽があると、被介護者の居宅に浴槽を持ち込んで被介護者が寝ているベッドのそばで浴槽を組立てて入浴させることができる。また、そのときに、ベッドと浴槽間での被介護者の移動を、横滑りさせる方法で行えると介護者が被介護者を抱き上げずに済み、介護者の負担が軽減される。また、一人で作業を行えるようになって介護人数も削減できるようになる。
【0009】
訪問入浴介護で重要な上記2つの要求を併せて満たす浴槽は、現時点では見当たらない。例えば、前記特許文献1、2のバルーンタイプの浴槽は、持ち運びは容易であるが、ベッドに寝かされた被介護者をベッドから浴槽に移すのが容易でない。収縮させた浴槽上に被介護者を移し、その後、浴槽を膨らませるので、膨らませる前の浴槽とベッドとの間に段差が生じ、そのために、介護者が被介護者を抱き上げて移さざるを得ない。
【0010】
また、特許文献3の浴槽は、本体を折りたたみ可能であり、さらに、浴槽の内底になる上層の非透水性シートが密閉室に対するエアーの出し入れによって昇降するので、単純に考えれば上記2つの要求を共に満たせるように思われる。
【0011】
ところが、実際には、エアーを密閉室に充填すると上層の非透水性シートが丸みを持つように膨らむため、平坦な支持面が形成されず、被介護者を安定して乗り移らせることができない。発明者は、試作品からその課題を見出した。
【0012】
特許文献4の浴槽は、多段構造の特殊なマットを用いており、浴槽の内面によるマット
の保持も安定している。従って、被介護者を乗せるマットの上面(支持面)を平板で形成して平坦な状態を維持することが可能と思われるが、この浴槽は、折りたたんで運ぶことができず、浴槽の高さをベッドの高さに合わせることもできない。
【0013】
ここで、特許文献2の浴槽は、内部に設けるエアークッションをエアーリフトに置き換えて被介護者を浴槽の開口部と底との間で上げ下げすることも考えられる。しかしながら、バルーンのエアーリフトでは、平坦な支持面を作り出すことが難しい。また、浴槽の内部にエアーリフトを入れると、浴槽に湯を入れたときに浮力が生じて支持安定性が損なわれる。
【0014】
また、浮力対策として、エアーリフトを面ファスナーなどの締結具で浴槽の底に固定することも考えられるが、この方法は、締結具が浴槽内に設置されることになるので、浴槽の清掃などを考えると好ましくない。
【0015】
さらに、従来提案されている介護用浴槽の中には、浴槽から抜いた水を、ポンプで強制的に排出するものがあるが、バルーンの浴槽を用いるときに、その方法を利用すると、浴槽を膨らませるエアーポンプと排水ポンプの2種類が必要になって経済負担が増す。また、ポンプによるエアー充填や排水では、エアーの充填時間や排水時間を著しく短縮するのも難しい。
【0016】
この発明は、未使用時には収縮させて容易に持ち運ぶことができ、また、ベッドから浴槽に被介護者を横滑りさせて確実に安全に移動させることができ、介護者が一人でも訪問入浴介護を行えるバルーンタイプの折りたたみ式浴槽を提供することを課題としている。
【0017】
同時に、バルーンの浴槽のエアー充填や浴槽などからの強制排水を、エアーポンプや排水ポンプ無しで迅速に行うことを可能ならしめる構造も併せて提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、この発明においては、折りたたみ式浴槽を以下の通りに構成した。即ち、各々が柔軟な非透水性シートで形成された浴槽本体とその浴槽本体の底壁を昇降させるエアーリフトを有し、
前記浴槽本体は、前記底壁と、その底壁の外周に連ねた周壁と、上部に前記周壁の上端を連結し、その周壁の外側に配置されて当該周壁を立ち上がらせるバルーンの起伏壁と、
前記底壁の下に配置して浴槽本体との間に一端が開口した袋状のリフト収納室を作り出す下層シートと、前記起伏壁の内部にエアーを導入するエアー導入口及び起伏壁のエアーを放出する排気口もしくは排気口兼用のエアー導入口と、前記周壁の下部に設ける開閉用のバルブを伴った浴槽の注排水口とで構成され、
前記エアーリフトは、バルーン構造のリフト本体と、そのリフト本体の内部に外部から流体を出し入れする流体出入口と、リフト本体の各部の膨らみ状態を平均化する膨らみ規制具とで構成され、
前記エアーリフトが前記リフト収納室に抜き取り可能に挿入され、そのエアーリフトを、流体を充填して膨らませることで被介護者を乗せる前記浴槽本体の底壁を浴槽本体の上部開口まで上昇させるようにした。
【0019】
この折りたたみ式浴槽は、浴槽本体のバルーンの起伏壁を、被介護者が寝かされているベッドと同じ高さになるまで膨らませた後、底壁を上記エアーリフトで浴槽本体の上部開口まで上昇させ、その底壁に被介護者を乗せる。そして、その後に、エアーリフト内の流体を排出することで底壁を降下させて被介護者を浴槽の内部に入れる。エアーリフトを膨らませる流体は、水や水とエアーの混合物が好ましい。
【0020】
浴槽本体の起伏壁に設ける前記エアー導入口と排気口は、互いに独立したもの、1つの口が兼用されたもののどちらであってもよい。エアーリフトに設ける流体出入口は専用の入口と専用の出口に分けることができる。
【0021】
この折りたたみ式浴槽は、流体導入口と流体排出口とエアー吹込み口を有する柔軟な非透水性シートで形成された四方が閉ざされた中継バッグと、この中継バッグの前記流体導入口を浴槽本体の前記注排水口とエアーリフトに設けられた前記流体出入口に選択的につなぐ管継手と、エアーバッグに圧送用のエアーを供給するエアー源を含ませると好ましい。
【0022】
また、前記エアー源として、前記起伏壁のエアー導入口、前記エアーリフトの流体出入口、前記中継バッグのエアー吹込み口に選択的に接続可能な圧縮空気を充填した空気ボンベを含ませるとより好ましい。
【0023】
このほか、前記膨らみ規制具は、必要箇所に膨らみ規制部を設けた収納袋で構成し、その収納袋に前記リフト本体を挿入し、そのリフト本体の局部的過大膨らみを前記収納袋で防止して底壁の持ち上げ高さを平均化するようにしたものが好ましい。
【0024】
また、バルーンの起伏壁に設けるエアー導入口と排気口は、排気口兼用のエアー導入口を2組設けると複数のエアー源から同時にエアーを供給して起伏壁の膨張速度を速めることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の折りたたみ式浴槽は、周壁を立ち上がらせる浴槽本体のバルーンの起伏壁と、バルーンのエアーリフトの双方を、エアーを排出して収縮させることができる。また、エアーリフトはリフト収納室から抜き出し可能であるので、エアーリフトと浴槽本体を別々にコンパクトに折りたたむことができ、取り扱いと持ち運びが極めて簡単になる。
【0026】
また、浴槽本体のバルーンの起伏壁を、被介護者を寝かせているベッドと同じ高さになるまで膨らませ、その後、浴槽本体の底壁をエアーリフトで浴槽本体の上部開口まで上昇させて被介護者をベッドからその底壁上に横に滑らせて乗り移らせることができる。
【0027】
このとき、浴槽本体の底壁は、膨らみ規制具を有するエアーリフトで持ち上げているため、各部の持ち上げ高さが平均化され、平坦に近い状態が維持される。従って、介護者が1人しかいなくても、被介護者を安定して乗り移らせることができる。
【0028】
特に、リフト本体を、水とエアーの混合物で膨らませる場合には、水がリフト本体の剛性を高め、重りにもなるため、エアーリフトの安定性が高まり、被介護者を浴槽に乗り移らせる作業がより安定する。
【0029】
また、浴槽本体の周壁の上端をバルーンの起伏壁の上部に、下層シートの周縁を起伏壁の下部にそれぞれ連結したことにより、底壁上に乗せた被介護者と浴槽に注入される湯水の重みで浴槽本体の周壁の上端と起伏壁の上部が内側に引き寄せられ、起伏壁の下部の外側への移動は下層シートによって引き留められる。そのために、剛性の高い保形枠がなくても浴槽の型崩れが防止され、型崩れによるお湯の溢れ出しが起こらない。
【0030】
さらに、前記中継バッグと管継手を含ませたものは、エアーリフトや浴槽本体から排出される水を一旦中継バッグに取り込み、その中継バッグにエアーを吹き込むことで、取り込んだ水を強制排出することができる。
【0031】
浴槽本体のバルーンの起伏壁、エアーバッグのリフト本体及び中継バッグに吹き込むエアーは、エアーポンプで生じさせることもできるが、空気ボンベから供給すると、起伏壁やリフト本体を急速に膨らませることができる。また、エアー源として空気ボンベを用いると中継バッグの内圧を急速に高めることができ、排水ポンプによる強制排水と比較した排水所要時間の短縮も可能になる。
【0032】
このほか、エアーリフトの膨らみ規制を、膨らみ規制部を設けた収納袋にバルーンのリフト本体を挿入して行うものは、膨らみ規制が簡単になる。
【0033】
リフト本体の内部に膨らみ規制用の連結壁を設ける構造では、防水面から連結の信頼性に優れる縫合の手法を採用し難いが、収納袋を用いれば、その袋には防水性が要求されないので、引き留め用の布地などを縫合して取り付けた膨らみ規制部を設けて連結の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の折りたたみ式浴槽の全体の一例を示す斜視図
【図2】図1の折りたたみ式浴槽を図1とは反対側から見た斜視図
【図3】図1の折りたたみ式浴槽の側面図
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図1のV−V線に沿った断面図
【図6】図1の折りたたみ式浴槽に設けたエアーリフトの斜視図
【図7】図6のエアーリフトのリフト本体を収納袋から引き出した状態の斜視図
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った断面図
【図9】中継バッグとエアー源(空気ボンベ)の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面の図1〜図9に基づいて、この発明の折りたたみ式浴槽の実施の形態を説明する。この折りたたみ式浴槽1は、浴槽本体2と、その浴槽本体の底壁2aを昇降させるエアーリフト10(図6参照)を組み合わせてなる。
【0036】
浴槽本体2は、図1〜図5に示すように、各々が柔軟な非透水性シートで形成された底壁2aと、その底壁の外周に連なる周壁2bと、その周壁の外側に取り付けられるバルーンの起伏壁2cと、底壁2aの下に配置されて底壁2aとの間に一端が開口した袋状のリフト収納室3を作り出す下層シート4を有しており、これ等と、起伏壁2cの内部にエアーを充填するための排気口兼用のエアー導入口5、6(図1参照)と、開閉用のバルブ7を伴った浴槽の注排水口8とからなる。
【0037】
排気口兼用のエアー導入口5,6は、同一構造であり、図示の浴槽では排気口兼用のエアー導入口が2組設けられた状態になっているが、その数が1つでもよい。また、逆止弁の内蔵されたエアー導入口と充填されたエアーを外部に放出するバルブ付きの排気口を独立させて設けても構わない。
【0038】
注排水口8は、注排水を早めるための好ましい形態として2つ設けられており、その2つの注排水口8が着脱自在の分岐管18(図1参照)によって1箇所に集合され、その集合部にバルブ7が組み込まれている。
【0039】
浴槽本体2は、舳先と艫のある槽として形成されており、図1、図2の通り、ゴムボートに似た形状を呈する。その浴槽本体2の周壁2bは、底壁の4辺に連なる4つの壁、即ち、左右の側壁2b−1,2b−2と、対向した2つの端壁2b−3,2b−4からなる。
【0040】
例示の浴槽本体2は、それらの壁のうち、左右の側壁2b−1、2b−2と舳先側の丸みを帯びた端壁2b−3の外側に、一連のバルーン(風船)の起伏壁2cを設けており、前記エアー導入口5、6がその起伏壁2cの艫側の端部に装着された蓋板9に設けられ、起伏壁2cに対するエアーの導入、排出がそれ等の口から行われるようになっている。
【0041】
起伏壁2cは、横に膨らみ過ぎないように、外シートと内シートが高さ方向途中(好ましくは中間部)で接着されており、空気を充填して膨張させると高さ方向途中にくびれ部2dが生じる。
【0042】
なお、くびれ部2dを境にして上下二段に分かれた起伏壁2cの内室は、適当な箇所で連通している。また、周壁2bのうち、側壁2b−1、2b−2と舳先側の端壁2b−3は、上端が起伏壁2cの上部に接着して連結されている。
【0043】
艫側の周壁(端壁2b−4)には、バルーンの起伏壁が併設されていない。その端壁2b−4の下部に注排水口8が設けられている。端壁2b−4も、他の壁と同様に、バルーンの起伏壁を伴う壁にしても差し支えないが、バルーンの起伏壁が併設されていない壁が注排水口8の設置がし易くて好ましい。2eは、起伏壁2cの艫側の左右の端部を連結する補強シートであり、必要に応じて設けられる。
【0044】
下層シート4は、図4、図5に示すように、底壁2aの下に配置され、3辺が起伏壁2cの下部に接着して連結されている。これにより、下層シート4と浴槽本体2との間に、一端が口を開けた袋状のリフト収納室3が作り出されている。例示の浴槽は、リフト収納室3の開口が艫側にあり、リフト収納室3に対するエアーリフト10の出し入れと、浴槽本体2とエアーリフト10に対するエアーや流体の出し入れと浴槽に対する注排水の各作業を全て艫側で行える。
【0045】
エアーリフト10は、図6〜図8に示すもの、即ち、バルーンのリフト本体11と、そのリフト本体11の内部に外部からエアーを導入する逆止弁12を伴ったエアー導入口13と、リフト本体11内に流体を出入りさせるバルブ14を伴った流体出入口15と、リフト本体11の各部の膨らみ状態を平均化する膨らみ規制具16とで構成されるものも示した。
【0046】
リフト本体11には、図6、図7に示すカップ状の端栓17が取り付けられており、その端栓17にエアー導入口13と流体出入口15が設けられている。なお、エアー導入口13は好ましい要素にすぎない。
【0047】
上記リフト本体11は、浴槽本体2と同様に柔軟な非透水性シートで形成されており、収納袋16aに挿入して使用される。収納袋16aは、ファスナーで開閉できる開口(図示せず)を側面に有しており、そこからリフト本体11が出し入れされる。また、側面の開口とは別に、収納したリフト本体の端栓17を外部に引き出す口部16bを備えている。
【0048】
膨らみ規制具16は、必要箇所に膨らみ規制部を設けた布製の前記収納袋16aで構成されている。膨らみ規制部は、収納袋の互いに対向した上下の壁16c、16dを互いに引き留める連結部16eを形成し、その連結部16eで収納袋16aの膨らみを規制するものが設けられている。連結部16eは、布地を縫合して取り付けたものが熱融着したものや接着したものに比べて強い力に耐えることができて好ましい。
【0049】
その膨らみ規制具16でリフト本体11の局部的な過大膨らみを規制することで、リフト本体11の各部の膨らみが平均化され、そのリフト本体11に持ち上げられる底壁2aが、図4に鎖線で示すような、中央が若干くぼみ気味の平坦に近い姿になって被介護者の安定支持が可能になる。
【0050】
なお、連結部16eは収納袋16aの幅方向中間点に配置されており、その連結部16eの布地によるリフト本体11の収納袋16aへの挿入規制を無くすために、リフト本体11は、平面視がU字状をなす形状に設計されている。
【0051】
浴槽本体2、リフト本体11及び後述する中継バッグ20の材料である柔軟な非透水性シートは、ゴムと補強布の複合材(所謂ゴム引き布)が好適である。中でも、ジャージ素材とクロロプレンゴムを貼り合せたウエットスーツ素材が丈夫で破れ難く、可撓性に富んで折りたたみもし易くて好ましい。
【0052】
このように構成された折りたたみ式浴槽1は、エアーリフト10をリフト収納室3に挿入し、その前後にバルーンの起伏壁2cをエアーで膨らませて周壁2bを立ち上がらせる。エアーの供給は、エアー源21(図1)をエアー導入口5に接続して行う。このとき、起伏壁2cは、エアーの充填量を調整することで、被介護者が寝かされているベッドと同じ高さにする。
【0053】
次いで、リフト本体11に流体(好ましくは水とエアー)を導入してエアーリフト10を膨らませ、浴槽本体の底壁2aを起伏壁2cと同じ高さになるところまで持ち上げる。そして、この状態で、浴槽本体2をベッドの横に置き、被介護者を横滑りさせて底壁2a上に移す。リフト本体11に水が注入されていると、浴槽本体2の定置安定性や剛性が高まって作業がし易い。
【0054】
以上の作業を終えたら、エアーリフト10を収縮させて底壁2aを降下させ、被介護者を浴槽本体2の中に入れる。このとき、好ましくは同時進行で浴槽本体2にお湯を張り、さらに、起伏壁2cが途中まで膨らんだ状態であれば、エアーを足してその起伏壁2cを周壁2bが十分に立ち上がるまで膨らませて被介護者を入浴させる。
【0055】
リフト本体11に最初に注入する水を温水とし、その温水を浴槽に移し替えながらエアーリフト10を収縮させることができる。その方法を採ると、浴槽本体2に対するお湯張りの時間を短縮することができる。
【0056】
また、入浴を終えたら浴槽内の残り湯を排出し、エアーリフト10を再度膨らませて底壁2aをベッドの高さまで持ち上げ、起伏壁2cの高さも揃えて被介護者をベッドに戻す。エアーリフト10を再度膨らませるための流体は、浴槽から排出される湯を使用することができる。
【0057】
なお、リフト本体11内の水の排出と、浴槽内の残り湯の排出は、図9に示す中継バッグ20を使用して行うと短時間での強制排出ができて好ましい。
【0058】
例示の中継バッグ20は、柔軟な非透水性シートで形成された流体導入口20aと、流体排出口20bと、エアー源との接続によってバルブが開かれ、接続を解除するとバルブがばねの力で自動的に閉じられるエアー吹込み口20cを有する四方の閉ざされたバッグになっている。流体導入口20aは2つ設けられている。
【0059】
この中継バッグ20の一方の流体導入口20aに浴槽本体の注排水口8を、他方の流体導入口20aにエアーリフトの流体出入口15をそれぞれホース19でつないでリフト本体11内の水や浴槽本体2内の残り湯を排出する。
【0060】
浴槽本体2内の残り湯の排出は、注排水口8を分岐管18経由で流体導入口20aに接続し、中継バッグ20内に浴槽本体2内の残り湯を流し込む。その後、バルブ7を閉じてエアー吹込み口20cから中継バッグ20内に圧送用のエアーを導入する。圧送用のエアーはエアー源21から直接供給してもよい。
また、起伏壁2cに設けた排気口兼用の流体導入口5や6をエアー吹込み口20cに接続することで、起伏壁2cから放出するエアーを圧送用に利用することもできる。
リフト本体11内の水を排出するときには、エアー源21から供給される圧送用のエアーをエアー導入口13からリフト本体11内に導入する。
【0061】
そのエアー導入により、排水が強制され、流体排出口20bに接続される排水ホースを流体排出口20bよりも高所に配置せざるを得ないときにも、確実な排水がなされる。なお、必要があれば上記の作業を数回繰り返して排水を完了させる。このときのエアー源21は、エアーポンプも考えられるが、図示した空気ボンベをエアー源にしてそこからエアーを供給すると、供給を早めて圧送時間を短縮することができる。
【0062】
起伏壁2cに排気口兼用のエアー導入口を2つ設けたものは、2本の空気ボンベから又は1本の空気ボンベとエアーコンプレッサから2つのエアー導入口に同時にエアーを供給して圧送の速度を速めることができる。
なお、流体導入口20aはその数が1つでもよく、その1つの流体導入口20aに注排水口8とエアーリフトの流体出入口15を選択的につないで排水を行うことも可能である。
【0063】
以上述べたように、この発明の折りたたみ式浴槽は、浴槽本体とエアーリフトの双方を別々に収縮させてコンパクトに折りたたむことができ、取り扱いと持ち運びが極めて簡単になる。
【0064】
また、浴槽本体の高さとリフトによる底壁の持ち上げ高さをベッドの高さに合うように調整することができ、介護者が1人でも、被介護者をベッドから浴槽の底壁上に容易に安全に乗り移らせることができる。
【0065】
さらに、浴槽本体の周壁の上端を起伏壁の上部に、下層シートの周縁を起伏壁の下部にそれぞれ連結したことで、保形枠を使わずに浴槽の保形性を高めることができる。
【0066】
また、前記中継バッグを含ませたものは、エアーリフトや浴槽本体から排出される水を一旦中継バッグに取り込で圧送により強制排出することができる。特に、圧送用のエアーを空気ボンベから供給するものは中継バッグの内圧を急速に高めることができるので、排水ポンプによる強制排水に比べて排水時間を短縮することも可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1 折りたたみ式浴槽
2 浴槽本体
2a 底壁
2b 周壁
2b−1,2b−2 側壁
2b−3,2b−4 端壁
2c 起伏壁
2d くびれ部
3 リフト収納室
4 下層シート
5,6 排気口兼用のエアー導入口
7 バルブ
8 注排水口
9 蓋板
10 エアーリフト
11 リフト本体
12 逆止弁
13 エアー導入口
14 バルブ
15 流体出入口
16 膨らみ規制具
16a 収納袋
16b 口部
16c,16d 上下の壁
16e 連結部
17 端栓
18 分岐管
19 ホース
20 中継バッグ
20a 流体導入口
20b 流体排出口
20c エアー吹込み口
21 エアー源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が柔軟な非透水性シートで形成された浴槽本体(2)とその浴槽本体の底壁(2a)を昇降させるエアーリフト(10)を有し、
前記浴槽本体(2)は、前記底壁(2a)と、その底壁の外周に連ねた周壁(2b)と、その周壁の外側に取り付けられて当該周壁を立ち上がらせるバルーンの起伏壁(2c)と、前記底壁(2a)の下に重ねて浴槽本体(2a)との間に一端が開口した袋状のリフト収納室(3)を作り出す下層シート(4)と、前記起伏壁(2c)の内部にエアーを導入するエアー導入口(5)と、起伏壁のエアーを放出する排気口と(6)、前記周壁(2b)の下部に設けるバルブ(7)を伴った浴槽の注排水口(8)とで構成され、
前記エアーリフト(10)は、バルーン構造のリフト本体(11)と、そのリフト本体の内部に外部から流体を出し入れする流体出入口(15)と、前記リフト本体(11)の各部の膨らみ状態を平均化する膨らみ規制具(16)とで構成され、
前記エアーリフト(10)が前記リフト収納室(3)に抜き取り可能に挿入され、そのエアーリフト(10)を、流体を充填して膨らませることで被介護者を乗せる前記浴槽本体の底壁(2a)を浴槽本体(2)の上部開口まで上昇させるようにした折りたたみ式浴槽。
【請求項2】
流体導入口(20a)と流体排出口(20b)とエアー吹込み口(20c)を有する柔軟な非透水性シートで形成された四方が閉ざされた中継バッグ(20)と、この中継バッグ(20)の前記流体導入口(20a)を前記浴槽本体の注排水口(8)と前記エアーリフトの流体出入口(15)に選択的につなぐ管継手(19)とエアーバッグに圧送用のエアーを供給するエアー源(21)を含ませた請求項1に記載の折りたたみ式浴槽。
【請求項3】
前記エアー源(21)が空気ボンベである請求項2に記載の折りたたみ式浴槽。
【請求項4】
前記膨らみ規制具(16)を、必要箇所に膨らみ規制部を設けた収納袋(16a)で構成し、前記リフト本体(11)をその収納袋(16a)に挿入してそのリフト本体(11)の局部的過大膨らみを前記収納袋(16a)で防止するようにした請求項1〜3のいずれかに記載の折りたたみ式浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115506(P2012−115506A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268283(P2010−268283)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(309036519)
【Fターム(参考)】