説明

折り畳み式運搬用容器

【課題】容器本体を積み重ねて使用するに際して、破損や変形等といった蓋板回動手段における不具合が生じ難い折り畳み式運搬用容器を提供する。
【解決手段】折り畳み式運搬用容器を構成する容器本体11は、底壁12、長側壁13及び短側壁14から有底四角箱状に形成されている。容器本体11の内方に配向して容器本体11の開口における長側壁13側の周縁を被覆する蓋板50が薄肉ヒンジ53を介して長側壁13に対して回動可能に設けられている。蓋板50を容器本体11の内方へ配向させたとき、蓋板50及び薄肉ヒンジ53は、長側壁13の上端よりも下方、かつ短側壁14の上端よりも下方に位置している。また、蓋板50を容器本体11の内方へ配向させた状態で容器本体11を積み重ねたときには、下側の容器本体11の薄肉ヒンジ53と上側の容器本体11の底壁12との間に隙間が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不使用時には小さくコンパクトに折り畳んで収納及び運搬することができるように構成された折り畳み式運搬用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の折り畳み式運搬用容器としては、有底四角箱状に形成された容器本体からなる折り畳み式運搬用容器が知られている。この折り畳み式運搬用容器の容器本体は、長四角板状に形成された底壁と、底壁の周縁に立設された対向する各一対の短側壁及び長側壁とを備えている。各短側壁及び長側壁と底壁との間には回動軸及びこの回動軸が軸着される軸受部よりなる側壁回動手段が設けられている。この側壁回動手段により各短側壁及び長側壁は底壁の周縁部において回動可能となっており、各側壁を容器本体の内方に回動させることで容器本体は折り畳まれ、折り畳んだ状態では小さくコンパクトなものになる。
【0003】
このような折り畳み式運搬用容器には、容器本体の開口を被覆するための蓋板が設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の折り畳み式運搬用容器は、短側壁の上端部に蓋板回動手段としてのヒンジ部材を介して蓋板を連結しており、この蓋板は短側壁の上端部において回動可能となっている。そして、蓋板を容器本体の内方へ配向させることによって、容器本体の開口を被覆するように構成している。
【特許文献1】特開2002−240867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒンジ部材等の蓋板回動手段は、容器本体における他の部位と比較して構造が複雑で強度が低くなりやすい部位である。ところが、特許文献1の折り畳み式運搬用容器では、ヒンジ部材を短側壁の上端部に位置させるとともに容器本体の外面側に突出させるように構成している。そのため、箱状に組み立てられた容器本体を積み重ねて使用するに際して、積み重ねる側の容器本体の角部が下側に位置する容器本体のヒンジ部材に接触しやすく、その接触によってヒンジ部材に破損や変形等の不具合が生じるといった問題があった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器本体を積み重ねて使用するに際して、破損や変形等といった蓋板回動手段における不具合が生じ難い折り畳み式運搬用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の折り畳み式運搬用容器は、四角板状に形成された底壁と、その底壁の周縁に沿って立設された各一対の第一側壁及び第二側壁とを備えた有底四角箱状の容器本体から構成され、前記各側壁の下端部に各側壁を容器本体の内方に折り畳むための側壁回動手段を設けて前記各側壁を折り畳み可能に構成した折り畳み式運搬用容器であって、前記第一側壁に対して、蓋板回動手段を介して回動可能に設けられるとともに、前記容器本体の内方に配向して前記容器本体の開口における前記第一側壁側の周縁を被覆する蓋板を備え、前記蓋板を容器本体の内方へ配向させたとき、前記蓋板及び前記蓋板回動手段は、前記第一側壁の上端よりも下方、かつ前記第二側壁の上端よりも下方に位置し、前記蓋板を容器本体の内方へ配向させた状態で容器本体を積み重ねたとき、下側の容器本体の蓋板回動手段と、上側の容器本体の底壁との間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、蓋板及び蓋板回動手段が第一及び第二側壁の上縁よりも下方に位置している。そのため、容器本体を積み重ねて使用する際においても、第一及び第二側壁の存在によって、積み重ねる側の容器本体の角部等が下側に位置する容器本体の蓋板回動手段に接触し難くなっている。
【0008】
また、蓋板を容器本体の内方へ配向させた状態で容器本体を多段に積み重ねたときに、上側の容器本体は、下側の容器本体の蓋板回動手段に接触することなく、第一及び第二側壁の上縁に載置される。そのため、上側の容器本体の荷重が直接的に下側の容器本体の蓋板回動手段に作用することが抑制される。このように、上記構成によれば、容器本体を積み重ねて使用するに際して、蓋板回動手段に対して負荷が作用し難くなっており、破損や変形等といった蓋板回動手段における不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の折り畳み式運搬用容器は、請求項1に記載の発明において、前記第一側壁の側面に水平方向に延びる水平リブを突設するとともに、前記水平リブ上に前記蓋板回動手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
折り畳み式運搬用容器の軽量化を実現するために側壁を薄肉化することがあるが、側壁に水平リブを形成することで側壁の強度を補うことができる。上記構成によれば、蓋板回動手段がその水平リブ上に設けられているため、仮に側壁が薄肉化されたとしても、蓋板の支持機能及び回動機能を安定させることができる。
【0011】
請求項3に記載の折り畳み式運搬用容器は、請求項1又は2に記載の発明において、前記蓋板の内側面に係止突部を形成し、該係止突部を、前記蓋板を容器本体の内方へ配向させた際に前記第一側壁の内側面に当接可能に形成したことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、蓋板を容器本体の内方へ配向させた状態では、係止突部が第一側壁の内側面に当接し得る。そのため、蓋板に対して大きな負荷が作用したとしても、その負荷を、係止突部を介して第一側壁に分散させることができ、蓋板回動手段に作用する負荷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の折り畳み式運搬用容器によれば、容器本体を積み重ねて使用するに際して、破損や変形等といった蓋板回動手段における不具合の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の折り畳み式運搬用容器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、組み立てられた状態の折り畳み式運搬用容器を基準として高さ方向及び水平方向を規定している。
【0015】
図1に示すように、折り畳み式運搬用容器を構成する容器本体11は、合成樹脂により成形されるとともに有底長四角箱状に形成されている。この容器本体11は、長四角板状に形成された底壁12と、底壁12の対向する一側縁に沿って立設された一対の長側壁13と、底壁12の対向する他側縁に沿って立設された一対の短側壁14とを備えている。なお、本実施形態においては、長側壁13が第一側壁をなすとともに短側壁14が第二側壁をなしている。
【0016】
図1に示すように、底壁12の対向する一側縁には、略四角柱状に形成された対向する一対の支持突条21aが容器本体11のコーナ部間を繋ぐように立設され、その上端面で長側壁13が立設支持されている。また、底壁12の対向する他側縁には、略四角柱状に形成された対向する一対の支持突条21bが容器本体11のコーナ部間を繋ぐように立設され、その上端面で短側壁14が立設支持されている。
【0017】
支持突条21bの高さは、短側壁14の厚みと略同じ値となるように設定されているとともに、支持突条21aの高さは、短側壁14の厚みと長側壁13の厚みとを加えた厚みと略同じ値となるように設定されている。また、支持突条21a、21bの上端部には、略示される側壁回動手段22が設けられており、長側壁13及び短側壁14の下端部を容器本体11の内方に回動可能に軸着している。
【0018】
図1及び図2に示すように、短側壁14の外側面には、その上縁及び下縁に沿って上縁リブ31及び下縁リブ32がそれぞれ突設されている。また、短側壁14の外側面の両側部には、正面視S字状(或いは、逆S字状)の側縁リブ33が突設されている。この側縁リブ33は、その下側部分が短側壁14の側縁に沿って形成されるとともに、その上側部分が短側壁14の中央側へ湾曲するように形成されている。そして、側縁リブ33によって、短側壁14の外側面における側縁側上部に略長四角状の係合凹部41が区画形成されている(図2参照)。この係合凹部41内には規制突起42が突設されている。
【0019】
図1に示すように、長側壁13は、その上端を切り欠いて形成した凹状の切欠部13aが所定の間隔をおいて複数設けられている。また、長側壁13の外側面には、その上縁及び下縁に沿ってそれぞれ上縁リブ34及び下縁リブ35が突設されるとともに、その両側縁に沿ってそれぞれ側縁リブ37が突設されている。さらに、長側壁13の外側面には、その上面が切欠部13aの底面と同一平面上に位置する水平リブ36が突設されるとともに、上縁リブ34と水平リブ36とが、切欠部13aの側縁に沿って突設される縦リブによって連結されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、長側壁13の両側端部には、略長四角板状の規制板43が容器本体11の内方に延びるように突設されるとともに、規制板43の内側面には、容器本体11の内方に延びるコ字状の規制突部44が突設されている。容器本体11を組み立てたとき、この規制板43が短側壁14の係合凹部41内に収容される。そして、規制突部44が、係合凹部41内に挿入されるとともに係合凹部41内に設けられた規制突起42を取り囲むように配置される。このとき、規制突起42と規制突部44とが互いに係合することにより、短側壁14の容器本体11外方への回動が規制されるようになっている。
【0021】
図1及び図4に示すように、長側壁13の上端には、容器本体11の開口における長側壁13側の周縁部分を被覆するための蓋板50が長側壁13に対して回動可能に設けられている。蓋板50は、長四角板状をなす蓋板本体51と、蓋板本体51の長手方向に延びる一方の端面に突設される複数の突出部52とを備え、蓋板回動手段としての薄肉ヒンジ53を介して長側壁13と一体に形成されている。
【0022】
蓋板本体51の長手方向の長さは、容器本体11の一対の短側壁14における内側面間の距離と外側面間の距離との中間の長さとなるように設定されている。そして、蓋板本体51の短手方向の長さは、容器本体11の一対の長側壁13における内側面間の距離の半分よりも短い長さとなるように設定されている(図4参照)。また、蓋板本体51の長手方向に延びる端面のうち、突出部52が設けられる側とは反対側の端面には、指掛部としての半円状の切欠54が設けられている。
【0023】
突出部52は、蓋板本体51に対して、切欠部13aと略同じ間隔をおいて設けられている。突出部52における蓋板本体51の長手方向と同方向の長さは、切欠部13aにおける長側壁13の長手方向と同方向の長さよりも短くなるように設定されている。また、突出部52における蓋板本体51の短手方向と同方向の長さは、切欠部13aにおける長側壁13の短手方向(高さ方向)と同方向の長さよりも長くなるように設定されている。
【0024】
図4に示すように、突出部52の端部と長側壁13に形成される水平リブ36の上面とが薄肉ヒンジ53によって一体に連結されている。そして、図5(a)、(b)に示すように、薄肉ヒンジ53が屈曲して突出部52が切欠部13a内を変位することによって、蓋板50は長側壁13に対して回動する。
【0025】
図1及び図4に示すように、短側壁14の上縁の内側には水平支持部としての係合溝14aが設けられている。係合溝14aは各短側壁14の両端部に一対設けられているとともにその高さ方向の長さが、長側壁13に設けられる切欠部13aの高さ方向の長さと等しくなるように設定されている。そして、組み立てられた容器本体11の開口における長側壁13側の周縁部分を被覆するように蓋板50を容器本体11の内方に配向させたとき、係合溝14aは蓋板50の両側部を係合状態で収容して蓋板50の容器本体11内方へのさらなる回動を規制する。このとき、蓋板50の外側面及び薄肉ヒンジ53の最上部位が、長側壁13の上端よりも下方かつ、短側壁14の上端よりも下方に位置するようになっている。すなわち、蓋板50を容器本体11の内方に配向させたとき、蓋板50及び薄肉ヒンジ53は、底壁12と長側壁13と短側壁14とにより囲まれる空間の内部に位置している。
【0026】
また、図1及び図4に示すように、係合溝14aの外面方に位置する短側壁14の壁面には、短側壁14を貫通孔14bが形成されている。この貫通孔14bは、蓋板本体51の端縁に設けられる係合突部55とともに、蓋板50を容器本体11の内方に配向させた状態を維持するロック手段を構成している。具体的には、蓋板50を容器本体11の内方に配向させたときに貫通孔14bと係合突部55とが係合することにより、蓋板50の位置が固定される。
【0027】
また、図1及び図5に示すように、突出部52のうち、蓋板本体51の中央側に位置する突出部52の内側面には、側面視扇形状の係止突部56が突設されている。係止突部56は、蓋板50を容器本体11の内方に配向させたときに、切欠部13aの底面に凹設される係止凹部13b内に収容されて係止凹部13bと係合状態となる。具体的には、蓋板50に対して下方向又は水平方向の力が作用した際に、係止突部56が係止凹部13bの内側面及び底面に当接する状態となっている。
【0028】
なお、図5(b)に示すように、蓋板50及び薄肉ヒンジ53は、蓋板50を長側壁13に対して平行に位置させたときに、その厚み方向において、長側壁13の内側面よりも外側かつ水平リブ36の側縁よりも内側に位置するように構成されている。
【0029】
次に、本実施形態の折り畳み式運搬用容器の作用について説明する。本実施形態の折り畳み式運搬用容器を組み立てて使用する際には、図2及び図3に示すように、まず、対向する一対の長側壁13を90度回動させて支持突条21aの上端面上に立設させ、次いで、対向する一対の短側壁を同様に回動させて支持突条21bの上端面上に立設させる。このとき、図1に示すように、長側壁13の規制板43が短側壁14に設けられる係合凹部41内に収容される。最後に、対向する一対の蓋板50を容器本体11の内方に回動させて、それら蓋板50の両側部を係合溝14a内に収容するとともに貫通孔14bと係合突部55と係合させる。
【0030】
組み立て状態の容器本体11において、対向する一対の長側壁13は、短側壁14の両側縁と当接された状態で配置されている。これにより、長側壁13の容器本体11内方への回動が規制されている。また、長側壁13の規制板43に設けられた規制突部44が、短側壁14の両側部に設けられた規制突起42と当接可能な状態で配置されている。これにより、長側壁13の容器本体11外方への回動が規制されている。したがって、この組み立て状態の容器本体11の長側壁13は、容器本体11の内方及び外方のいずれの方向にも回動規制され、支持突条21aの上で垂直方向に立設固定されている。
【0031】
一方、対向する一対の短側壁14は、規制突起42の先端縁が規制板43の内側面と当接可能な状態で配置されているうえ、係合凹部41の内面が長側壁13の規制突部44と当接可能な状態で配置されている。これにより、短側壁14の容器本体11外方への回動が規制されている。また、蓋板本体51の両側縁が係合溝14aの外側方に位置する短側壁14の壁面と当接可能な状態で配置されている。これにより、短側壁14の容器本体11の内方への回動が規制されている。したがって、組み立て状態(蓋板50を配向させた状態)の容器本体11の短側壁14は、容器本体11の内方及び外方のいずれの方向にも回動規制され、支持突条21bの上で垂直方向に立設固定されている。
【0032】
また、図6に示すように、組み立て状態の容器本体11を多段に積み上げて使用する際には、上側に位置する容器本体11は、下側に位置する容器本体11の長側壁13の上縁及び短側壁14の上縁の上に載置される。このとき、上側に位置する容器本体11の底壁12の下面と下側に位置する容器本体11の薄肉ヒンジ53との間には隙間S1が形成される。同様に、上側に位置する容器本体11の底壁12の下面と下側に位置する容器本体11の蓋板50との間には隙間S2が形成される。したがって、容器本体11を多段に積み重ねた状態においては、下側に位置する容器本体11の薄肉ヒンジ53及び蓋板50は、上側の容器本体11に対して非接触の状態となっている。
【0033】
なお、組み立て状態の容器本体11を折り畳む際には、まず、貫通孔14bと係合突部55との係合を解除しつつ、一対の蓋板50を容器本体11の外方へ回動させる。次いで、一対の短側壁14を容器本体11の内方に90度回動させた後(図2参照)、一対の長側壁13を容器本体11の内方へ90度回動させることにより折り畳まれる(図3参照)。また、折り畳まれた状態の容器本体11を多段に積み重ねることも可能である。
【0034】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態では、蓋板50を容器本体11の内方へ配向させたとき、蓋板50及び薄肉ヒンジ53が長側壁13の上縁よりも下方、かつ短側壁14よりも下方に位置するように構成している。これにより、容器本体11を積み重ねる際において、薄肉ヒンジ53よりも上方に位置する、長側壁13及び短側壁14の上端部の存在によって、積み重ねる側の容器本体11の角部等が下側に位置する容器本体11の薄肉ヒンジ53に接触し難くなっている。
【0035】
さらに、本実施形態では、組み立てられた状態の容器本体11を積み重ねた際に、下側に位置する容器本体11の薄肉ヒンジ53と上側に位置する容器本体11との間に隙間S1が形成されるように構成している。これにより、組み立てられた状態の容器本体11を多段に積み重ねた際に、上側の容器本体11は、下側の容器本体11の薄肉ヒンジ53に接触することなく、長側壁13及び短側壁14の上縁に載置される。そのため、上側の容器本体11の荷重が直接的に下側の容器本体11の薄肉ヒンジ53に作用することが抑制される。そのため、容器本体11を積み重ねて使用するに際して、薄肉ヒンジ53に対して負荷が作用し難くなり、破損や変形等といった薄肉ヒンジ53における不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、組み立てられた状態の容器本体11を積み重ねた際に、下側に位置する容器本体11の蓋板50と上側に位置する容器本体11との間においても、隙間S2が形成されるように構成している。これにより、組み立てられた状態の容器本体11を多段に積み重ねたときに、上側の容器本体11の荷重が蓋板50を介して薄肉ヒンジ53に作用することも抑制される。また、このように隙間S1、S2が形成されるように構成したとしても、その容器本体11を積み重ねたときの積層高さは、蓋板50及び薄肉ヒンジ53を設けていない従来の容器本体を積み重ねたときの積層高さとほとんど変わることはない。
【0037】
(2)本実施形態では、長側壁13の外側面に設けた水平リブ36の上面に薄肉ヒンジ53を設けている。これにより、容器本体11の軽量化を実現するために長側壁13を薄肉化した場合にも、蓋板50に対する安定した支持機能及び回動機能を維持することができる。
【0038】
(3)本実施形態では、蓋板50における突出部52の内側面に係止突部56を設けるとともに、長側壁13の内側面に係止凹部13bを設け、蓋板50を容器本体11の内方へ配向させた際に、係止凹部13b内に係止突部56が収容されるように構成されている。そして、蓋板50に対して負荷が作用したとき、係止突部56が係止凹部13bの内側面及び底面に当接する。これにより、蓋板50に対して下方向又は水平方向に向かう力が作用したとしても、その負荷を、係止突部56を介して長側壁13に分散させることができ、薄肉ヒンジ53に作用する負荷を抑えることができる。
【0039】
(4)長四角箱状に形成された容器本体11の長側壁13は、その側面に直交する方向の力に弱くなりがちであり、容器本体11の内部に多量の物品を収納して使用する場合などに、長側壁13の中央部分が外方へ膨らむといった変形が容器本体11に起こりやすくなる。しかしながら、本実施形態においては、容器本体11の長側壁13の上部に蓋板50を連結するように構成しているため、長側壁13(とくに上端部側)が変形し難くなって、長側壁13の中央部分が外方へ膨らむといった容器本体11の変形が抑制される。
【0040】
また、上記変形の生じた容器本体11は、その開口が通常よりも広がるため、積み重ねて使用する際に、積み重ねた容器本体11が変形した容器本体11内に落ち込んで、その内部に収容された物品を破損させることがある。しかしながら、本実施形態では、長側壁13側の周縁部分を被覆するように蓋板50を配置している。仮に、上記変形が容器本体11に生じて積み重ねた容器本体11が落ち込んだとしても、その落ち込んだ容器本体11は蓋板50によって支持されることから、下方の容器本体11に収容された物品の破損を抑制することができる。
【0041】
(5)本実施形態では、蓋板本体51の端部に指掛部として切欠54を設けている。これにより、切欠54に指を掛けて蓋板50及び長側壁13を起こすことができ、蓋板50及び長側壁13を起こす作業をより容易に行なうことができる。
【0042】
(6)本実施形態では、蓋板50を長側壁13に対して平行に位置させたときに、蓋板50及び薄肉ヒンジ53がその厚み方向において、長側壁13の内側面よりも外側かつ水平リブ36の側縁よりも内側に位置するように構成されている。そのため、図3に示すように容器本体11を折り畳んだ際に、蓋板50及び薄肉ヒンジ53が長側壁13の水平リブ36よりも上方に突出することがない。よって、容器本体11をコンパクトに折り畳むことができる。
【0043】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 本実施形態では、組み立てられた状態の容器本体11を積み重ねた際に、下側に位置する容器本体11の蓋板50と上側に位置する容器本体11との間においても隙間S2が形成されるように構成したが、この隙間S2を形成しない構成であってもよい。つまり、容器本体11を積み重ねた際に、下側に位置する容器本体11の蓋板50に対して、上側に位置する容器本体11の底壁12の下面が当接するような構成であってもよい。この場合には、蓋板本体51の外側面を平坦面状に形成するが好ましい。これにより、蓋板本体51上をスライドさせつつ容器本体11を積み重ねることができるようになる。また、平坦面状に形成された蓋板本体51の外側面に突条などのスライドレールを設ける構成としてもよい。
【0044】
・ 本実施形態では、蓋板回動手段として薄肉ヒンジ53を採用したが、蓋板回動手段の構成はこれに限られるものではない。例えば、図7(a)、(b)に示すような構成としてもよい。この場合、水平リブ36を厚肉に形成するとともに、切欠部13aを水平リブ36に達する深さまで設けている。そして、突出部52の端部に設けた回転軸57と、水平リブ36の端面に設けた軸受(図示略)とを係合させることにより、蓋板50を回動可能としている。また、突出部52の端部に軸受を設けるとともに水平リブ36の端面に回転軸を設ける構成としてもよい。このように、蓋板回動手段を回転軸と軸受けとにより構成した場合は、薄肉ヒンジ53により構成した場合と比較して、蓋板50の回動範囲を広く確保することが容易となる。また、蓋板回動手段の強度が向上する。
【0045】
・ 本実施形態の容器本体11に、容器本体11外方への蓋板50の回動を規制する規制手段を設けてもよい。例えば、水平リブ36の上面に、その側縁に沿って立設するとともに上記縦リブ間を連結するような連結壁を設けた場合には、この連結壁と蓋板50の突出部52とが当接することで、長側壁13と平行となる位置よりも外方への蓋板50の回動が規制される。また、このような連結壁を設けた場合には、薄肉ヒンジ53に対する接触抑制作用がより向上するとともに、容器本体11を積み重ねる際に、下側に位置する容器本体11の切欠部13aに対して上側の容器本体11が引っ掛かり難くなる。
【0046】
また、凹凸の係合関係により上記規制手段を構成してもよい。例えば、回転軸と軸受とによって蓋板回動手段を構成した場合において、回転軸にその周方向に延びる溝を設けるとともに、軸受に同溝内に挿入可能な凸部を設け、蓋板50を所定位置まで回動させたときに同凸部と回転軸の溝側面とが当接して蓋板50の回動を規制する構成としてもよい。
【0047】
なお、規制手段による蓋板50の規制位置は適宜設定されるものであるが、蓋板50と長側壁13とが平行となる位置を規制位置とすることが好ましい。
・ 蓋板50を容器本体11の内方へ配向させた際に、長側壁13及び薄肉ヒンジ53の上方全体を覆うような被覆部を設けてもよい。このように構成した場合、組み立て状態にある容器本体11の上端部に生じる隙間や段差部分を少なくすることができる。そのため、容器本体11を積み重ねる際に、蓋板50上をスライドさせつつ容器本体11を積み重ねることが可能となる。また、薄肉ヒンジ53に対する接触抑制作用がより向上する。
【0048】
・ 本実施形態では、蓋板回動手段としての薄肉ヒンジ53を水平リブ36上に設けていたが、水平リブ36上ではなく、切欠部13aの底面に設ける構成としてもよい。この場合、蓋板50に対する支持機能及び回動機能を安定させるために、長側壁13が一定の厚み以上であることが好ましい。
【0049】
・ 長側壁13の上縁リブ34の形状を適宜変更してもよい。例えば、上縁リブ34の断面形状を上側ほど幅の狭くなる台形状、或いは上側に円弧面を有する半円状に形成すると、容器本体11を積み重ねる際などに上縁リブ34に対する引っ掛かりが抑制される。
【0050】
・ 長側壁13の中央部分における高さ方向の長さが、両端部分における高さ方向の長さよりも低くなるように、つまり、長側壁13を側面視凹状に形成してもよい。このように構成すると、容器本体11を積み重ねた際に、長側壁13においては比較的強度の高い両端部分のみで上側の容器本体11を支持することになり、比較的強度の低い中央部分に対しては負荷が作用しなくなる。
【0051】
・ 本実施形態では、水平リブ36を長側壁13の外側面に突設していたが、長側壁13の内側面に突設してもよく、この水平リブ36上に蓋板回動手段を設けてもよい。
・ 本実施形態では、蓋板50における突出部52の内側面に係止突部56を設けるとともに、長側壁13の内側面に係止凹部13bを設けていたが、係止突部56のみ設ける構成としてもよい。すなわち、蓋板50を容器本体11の内方へ配向させた際に、係止突部56を長側壁13の内側面に当接させるようにしてもよい。このように構成した場合にも、蓋板50に作用する負荷を長側壁13に分散させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、蓋板本体51の中央側に位置する突出部52に対して係止突部56を設けていたが、係止突部56を設ける位置はこれに限られるものではない。例えば、全ての突出部52に係止突部56を設けてもよい。なお、係止突部56及び係止凹部13bをともに設けない構成としてもよい。
【0053】
・ 本実施形態では、蓋板本体51の端部に指掛部として切欠54を設けていたが、指掛部の構成はこれに限られるものではない。例えば、蓋板本体51を貫通する孔であってもよいし、蓋板本体51の外側面に設けられた突起であってもよい。また、指掛部を設けなくてもよい。
【0054】
・ 蓋板本体51の内側面に、補強用のリブを形成してもよい。
・ 本実施形態では、蓋板50は、容器本体11の開口における長側壁13側の周縁部分のみを被覆するような大きさに構成されていたが、蓋板50の大きさはこれに限られるものではない。例えば、容器本体11の開口全体を被覆するような大きさであってもよい。
【0055】
・ 本実施形態では、係合溝14aの高さ方向の長さを、長側壁13に設けられる切欠部13aの高さ方向の長さと等しくなるように設定していたが、蓋板本体51の形状に応じて、係合溝14aの高さ方向の長さを変更してもよい。例えば、蓋板本体51が突出部52よりもその内側面側に厚みを有するような形状であった場合には、係合溝14aの高さ方向の長さが切欠部13aの高さ方向の長さよりも大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、短側壁14の上縁の内側に係合溝14aを設けたが、これを短側壁14の上縁の全体から切り欠くようにして形成された構成に変更してもよい。この場合、蓋板50を容器本体11の内方へ配向させた際に、上記切欠内に蓋板本体51の両側部分が嵌まり込むようになる。さらに、係合溝14aを設けることなく、係止突部56及び係止凹部13bの構成のみにより、蓋板50の容器本体11内方への回動を規制する構成としてもよい。
【0057】
・ 本実施形態では、蓋板50を容器本体11の内方に配向させた状態を維持するためのロック手段として係合突部55及び係合溝14aを設けていたが、ロック手段の構成はこれに限られるものではない。例えば、特開2002−347760号公報に開示されるようなロック位置及びロック解除位置を取り得るロック機構を採用してもよい。
【0058】
・ 本実施形態では、図3に示すように、底壁12上に短側壁14を折り畳むとともに、短側壁14上に長側壁13及び蓋板50を折り畳むように構成したが、容器本体11の折り畳み状態は容器本体11の寸法に応じて異なるものであって、上記構成に限られるものではない。例えば、長側壁13の高さ方向の長さが短側壁14の長手方向の長さの半分よりも長い場合には、一方の長側壁13上に他方の長側壁13が折り畳まれる。また、長側壁13の高さ方向の長さと蓋板50の短手方向の長さの和が、短側壁14の長手方向の長さに等しい値である場合や、その半分の値である場合には、よりコンパクトな折り畳み状態を実現することができる。
【0059】
・ 本実施形態では、長側壁13が第一側壁をなすとともに短側壁14が第二側壁をなすように構成していたが、短側壁14が第一側壁をなすとともに長側壁13が第二側壁をなすように構成してもよい。すなわち、短側壁14に蓋板50を設けてもよい。また、有底四角箱状の容器本体11であれば、容器本体11の寸法や形状はとくに限定されるものではない。
【0060】
・ 長側壁13の上部内側面側を削って長側壁13の上部を薄肉に形成したり、長側壁13の上部に外面側に膨出する断面L字状の膨出部を形成したりすることによって、容器本体11の開口をより広く確保する構成としてもよい。
【0061】
本実施形態では、図6に示すように、底壁12の側縁に凹条12aを設けることにより、下側に位置する容器本体11の開口に上側に位置する容器本体11の底壁12を挿入させつつ容器本体11を積み重ね可能としていた。しかし、長側壁13の上部を上記のように構成した場合には、凹条12aを設ける必要はなく、底壁12の強度低下を抑制することができる。なお、長側壁13の上部を上記のように構成した場合には、蓋板50及び薄肉ヒンジ53は薄肉部分や膨出部よりも下方に形成されることになる。これにより、薄肉部分の厚みや膨出部の膨出度合をどのように設定したとしても、例えば、蓋板回動手段としての回転軸及び軸受の径よりも幅狭に形成したとしても蓋板の支持機能及び回動機能に対して大きな影響を与えることはない。
【0062】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
○ 前記底壁は長四角状をなし、前記第一側壁が長側壁を形成するとともに、前記第2側壁が短側壁を形成していることを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【0063】
○ 前記第一側壁の内側面に係止凹部を形成し、前記蓋板を容器本体の内方へ配向させた際には該係止凹部に前記蓋板の係止突部が収容されることを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態の折り畳み式運搬用容器を示す斜視図。
【図2】折り畳み途中の本実施形態の折り畳み式運搬用容器を示す斜視図。
【図3】折り畳まれた後の本実施形態の折り畳み式運搬用容器を示す斜視図。
【図4】本実施形態の折り畳み式運搬用容器の部分上面図。
【図5】(a)、(b)は、蓋板の回動状態を示す蓋板の断面図。
【図6】図1におけるA−A線断面図。
【図7】(a)、(b)は、本実施形態の変更例を示す蓋板の断面図。
【符号の説明】
【0065】
S1,S2…隙間、11…容器本体、12…底壁、13…第一側壁としての長側壁、14…第二側壁としての短側壁、22…側壁回動手段、36…水平リブ、50…蓋板、53…薄肉ヒンジ、56…係止突部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角板状に形成された底壁と、その底壁の周縁に沿って立設された各一対の第一側壁及び第二側壁とを備えた有底四角箱状の容器本体から構成され、
前記各側壁の下端部に各側壁を容器本体の内方に折り畳むための側壁回動手段を設けて前記各側壁を折り畳み可能に構成した折り畳み式運搬用容器であって、
前記第一側壁に対して、蓋板回動手段を介して回動可能に設けられるとともに、前記容器本体の内方に配向して前記容器本体の開口における前記第一側壁側の周縁を被覆する蓋板を備え、
前記蓋板を容器本体の内方へ配向させたとき、前記蓋板及び前記蓋板回動手段は、前記第一側壁の上端よりも下方、かつ前記第二側壁の上端よりも下方に位置し、
前記蓋板を容器本体の内方へ配向させた状態で容器本体を積み重ねたとき、下側の容器本体の蓋板回動手段と、上側の容器本体の底壁との間に隙間が形成されることを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【請求項2】
前記第一側壁の側面に水平方向に延びる水平リブを突設するとともに、前記水平リブ上に前記蓋板回動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式運搬用容器。
【請求項3】
前記蓋板の内側面に係止突部を形成し、該係止突部を、前記蓋板を容器本体の内方へ配向させた際に前記第一側壁の内側面に当接可能に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の折り畳み式運搬用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120227(P2009−120227A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295891(P2007−295891)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000010054)岐阜プラスチック工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】