説明

折版屋根等の谷用雪止め具

【課題】折版屋根等の谷部分の積雪落下を防止する谷用雪止め具は、落葉の滞留を防止するために、谷部表面aとの間に空隙bを設けているが、この空隙bの存在によって、屋根表面に張った薄氷Cが滑り落ちて危険である。
【解決手段】折版屋根等の頂部に架設された雪止めアングルに装着して屋根谷部空間のための雪止め具で、アングルに装着する装着部と雪止め部14を備え、アングル装着時に雪止め部の下縁が屋根谷部表面との間に空隙bを生ずるように形成した本体1と、アングル装着時に屋根谷部表面と当接する横杆部22、及び前記横杆部22と連結し、先端を前記本体に枢止して回動自在とした縦杆部21とを備えた氷止め体2とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折版屋根や瓦棒屋根等の頂部に横架した雪止めアングルに吊下げ装着する谷用雪止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
折版屋根等の雪止めには、折版屋根の頂部にアングルを横架する他、更に屋根の谷部分の雪の滑り落ちを防止するために、前記雪止めアングルに吊下げ装着する谷用雪止め具が採用されている。
【0003】
前記の谷用雪止め具は、基本的にアングルに装着する装着部と、屋根の谷部分に垂下して雪止めを実現する雪止め部とを備えているものである。
【0004】
装着部は、アングルの水平板部上に載置する載置部と、アングルの鉛直板部に添わせて雪止め部と連結する縦板部と、前記載置部と縦板部をアングルに密着状態で保持する固定機構部で構成され、固定機構部の構造は、従前より種々提案されている。
【0005】
例えば特許文献1(特開2000−6453号公報)には、アングル水平板部の下面とアングル鉛直板部の内側面に添うL状板で、前記載置部と縦板部とでアングルを挟持するように装着して固定する構造が開示されている。
【0006】
また特許文献2(特開2006−291481号公報)に、載置部と縦板部におけるアングル外方箇所に差込孔を形成し、前記差込孔に差込板(止着部材)を挿通し、突出部分を載置部又は縦板部に係止する構造が開示されている。
【0007】
更に特許文献3(特開2008−231828号公報)には、縦板部におけるアングル鉛直板部の下端縁に対応する位置に、アングル鉛直板部の下端縁を上方に押圧して係止する止着バネ体を設けて固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−6453号公報。
【特許文献2】特開2006−291481号公報。
【特許文献3】特開2008−231828号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の谷用雪止め具において、屋根の谷部分に垂下して雪止めを実現する雪止め部の下端縁は、屋根の谷表面との間に適宜な高さの空隙を設けている。この空隙によって、落ち葉が屋根表面に落ちても、そのまま雨等で流れ落ちるようにしているもので、前記の間隙が狭いと、落ち葉は雪止め部に引っ掛って屋根面上に堆積してしまう。
【0010】
しかし前記の空隙が存在するために、低温時に屋根表面で凍結した薄氷が、屋根面上を滑って一気に落下し、危険な状態が生ずる虞がある。
【0011】
そこで本発明は、落ち葉の堆積防止と共に、落氷防止も実現する新規な折版屋根等の谷用雪止め具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る折版屋根等の谷用雪止め具は、折版屋根等の頂部に架設された雪止めアングルに装着し、折版屋根の谷部空間に垂設して雪止め機能を果たす雪止め具であって、アングルに装着する装着部、及び屋根の谷部分に垂下して雪止めを実現する雪止め板部を備え、アングル装着時に雪止め板部の下縁が屋根谷部表面との間に空隙を生ずるように形成した本体と、アングル装着時に屋根谷部表面と当接する横杆部、及び前記横杆部と連結し、先端を前記本体に枢止して回動自在とした縦杆部とを備えた氷止め体とからなることを特徴とするものである。
【0013】
而して前記雪止め具の本体を、折版屋根等の頂部に架設された雪止めアングルに装着すると、屋根の谷部分に垂下した雪止め板部は、アングルと共に屋根上積雪の落下を防止する。氷止め体は、回動するのでアングル設置高さに多少の相違があったとしても、横杆部が屋根の谷部表面と当接し、谷部表面に薄氷が張った場合には、前記の横杆部と一体に凍りつくことになり、前記の横杆部によって薄氷の滑り落ちが防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成は上記の通りで、氷止め体を備えることで屋根上に張った薄氷の落下を防止し、危険をなくすものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の全体斜視図。
【図2】同使用状態の説明図(斜視図)。
【図3】同使用状態の説明図(一部切断した側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した雪止め具は、折版屋根Aの頂部に架設された雪止めアングルBに装着するもので、前記雪止めアングルBは、水平板部と鉛直板部とを備え、一般に鉛直板部は、屋根山側に配置されてなるものである。
【0017】
雪止め具は、本体1と氷止め体2で構成され、本体1は、アングル装着部を構成する載置部11、及び縦板部12、及び止着部(止着バネ体)13と、前記縦板部12の下方に雪止め部14を備えたものである。
【0018】
また前記の雪止め部14は、後述するようにアングルBに装着した際に、下縁が屋根Aの谷部表面aに接することなく、充分な空隙b(落ち葉が引っ掛らない程度で、雨水と共に流下され得る高さを備える)を有するように形成する。尚図示例は特に縦板部12の延長として雪止め部14を設けているが、例えば縦板部12よりも幅広の別部材を連結して雪止め部としても良い。
【0019】
そして本体1をアングルBに装着する構造として、載置部11の先部を下方に折り返してアングルの水平板部の先端に係止する係止部111を設け、縦板部12におけるアングルの鉛直板部の下端縁に対応する位置に、止着バネ体13の先部の上下動を許容する大きさの透孔121を形成し、前記透孔121を挿通するように止着バネ体13を縦板部12に付設したものである。
【0020】
止着バネ体13は、透孔121の上方位置の縦板部12に、その基部を鋲体で固着し、その先部(突出先部)131が、上下方向の弾性移動可能な形状として、透孔121を挿通して縦板部12の前面側に突出させてなり、前記突出先部131を、アングルの鉛直板部の下端縁を回り込み、前記下端縁の前面に立ち上がるように設けたものである。
【0021】
従って図示するようにアングルBに本体1の上部を被せ、係止部111をアングル水平板部の先端に引っ掛け、本体1全体を回動して止着バネ体13の突出先部131を、アングルの鉛直板部の下端縁を越えて前面側に位置させると、本体1は、アングルBに簡単に装着される。尚本発明においては、アングル装着構造は任意に定められるものである。
【0022】
氷止め体2は、金属線材を折曲して、上方開口コの字状に形成して、左右の縦杆部21と底辺となる横杆部22を備えるもので、前記雪止め部14の側縁を折曲してリブ状部141に形成すると共に、前記リブ状部141の適宜位置に透孔142を穿設すると共に、縦杆部21の先端を折曲して前記透孔142に挿着して、氷止め体2を回動自在としているものである。
【0023】
また氷止め体2は、本体1をアングルBに装着した際に、横杆部22が回動して屋根Aの谷部表面aに当接するように、透孔142の位置に対応して縦杆部21の長さを定めるものである。
【0024】
而して前記雪止め具を、前述したようにアングルBに装着すると、氷止め体2は回動自在に設けているので、アングル設置高さに多少の相違があったとしても、その自重で横杆部22が屋根Aの谷部表面aと当接することになる。
【0025】
従って雪止め部14で従前と同様に屋根Aの谷部空間の積雪が落下するのを防止し、また雪止め部14の下方空隙bから、屋根Aの谷部表面a上の落葉が、雨水と共に流れ落ちて、屋根上に貯まることが無く、更に谷部表面aに薄氷Cが張った場合には、横杆部22によってその滑り落ちが防止されることになる。
【符号の説明】
【0026】
1 本体
11 載置部
111 係止部
12 縦板部
121 透孔
122 リブ状部
13 止着部(止着バネ体)
131 突出先部
14 雪止め部
141 リブ状部
142 透孔
2 氷止め体
21 縦杆部
22 横杆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折版屋根等の頂部に架設された雪止めアングルに装着し、折版屋根の谷部空間に垂設して雪止め機能を果たす雪止め具であって、アングルに装着する装着部、及び屋根の谷部分に垂下して雪止めを実現する雪止め板部を備え、アングル装着時に雪止め板部の下縁が屋根谷部表面との間に空隙を生ずるように形成した本体と、アングル装着時に屋根谷部表面と当接する横杆部、及び前記横杆部と連結し、先端を前記本体に枢止して回動自在とした縦杆部とを備えた氷止め体とからなることを特徴とする折版屋根等の谷用雪止め具。
【請求項2】
氷止め体が金属線材を折曲して、下方開口コの字状に形成してなる請求項1記載の折版屋根等の谷用雪止め具。
【請求項3】
雪止め板部の側縁を折曲してリブ状部に形成すると共に、前記リブ状部の適宜位置に透孔を穿設すると共に、縦杆部先端を前記透孔に装着してなる請求項1又は2記載の折版屋根等の谷用雪止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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