説明

抵抗加熱機器

【課題】高温・高圧で集中した熱風を発生させることができ、かつ固定性を要求されず、小型化・製造・取り扱いが容易で、ロウ付けや金属加工などにも適用可能で、さらに熱交換効率を従来以上に高めた抵抗加熱機器を提供すること。
【解決手段】抵抗加熱機器が、抵抗加熱により発熱する材料で構成される、内部壁により複数の層に分けられた筒状の熱交換容器と、2つの抵抗加熱用の電極と、電源装置からなり、熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられており、各層は中央に柱状部材があり環状の空洞を有する層部材から構成され、内部壁には各々複数の孔が設けられ流体の流入口及び流出口となり、各層の流入口と流出口の位置が周方向にずれるように配置されており、2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱機器に関する。具体的には、高温・高圧で集中した熱風を発生させることが出来る、抵抗加熱を利用した機器に関する。
【背景技術】
【0002】
銀ロウ付け、はんだ付、金属の熱処理・加工処理、プラスチックの処理(研磨・塗装前処理やR処理・バリの除去)、ガラス加工、焼き入れなどの加工処理においては、一般的に集中した(例えば直線上に集中した)、高温で高圧の熱風が必要とされる。そして、一般的には業務用のバーナー等が、高温集中炎を発生させるために使用されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらバーナーは燃焼炎を使用するために使用できる場所や環境が限られており、800度以上、さらには1500度以上ともなると構造も複雑になり、取り扱いも難しく高価になってしまう。また、必要なのは集中した高温の熱風であり、必ずしも燃焼炎ではないが、加工処理用としてはこれらの他に適当な機器がないのが実情である。
【0003】
一方、空調機などに利用される、空気を加温する熱風発生機としては、ボイラー式のものが知られている。また電気ヒーターの熱を利用してブロアーにて熱風を発生させる方法も知られている。しかし、これら技術では高圧力(1kg/cm2以上)で利用するには流速が早すぎて空気を十分に加熱することができず、必要量の高温ガスを得ることができなかった。
そこで、このような欠点を解決すべく、熱交換率が極めて高く、大量で一定圧力・一定温度の熱交換流体を得ることができる熱交換器が開示されている(特許文献2)。これら技術は、「熱交換容器を伝熱媒体で満たし、供給管から熱交換するための流体を熱交換流路へ供給すると、熱交換流路では、供給された流体が複数並列状態で配置された環状管と、これらを連通する連通管とを流れるが、環状管における流入口と流出口の位置が周方向にずらされているので、流体は熱交換流路の壁面に繰り返して衝突しながら乱流となって流れ、この間、伝熱媒体の熱を奪うことができ、熱交換後の流体は排出管により熱交換容器外へ排出することができる。このように、流体を熱交換流路の壁面に繰り返して衝突させながら、乱流状態で流すことにより、流体が壁面の温度の影響を多く受け、しかも、各環状管路で各連通管路から送られてきた流体を同一条件にして分散するようにしているので、流体を絞り込むことなく、大量の流体を効率良く熱交換することができる。また、熱交換流路は流路の接続により構成することができるので、構成の簡素化を図ることができる。」ものである(特許文献2,段落0009)。また、この技術を利用したガス反応装置も開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、この技術は、主として空気調和装置や反応装置など、固定した大型装置に適用される技術として発明されたものである。また、特許文献2は、周囲から熱交換容器を冷却した上で、流体の冷却を主たる目的としている。さらに、特許文献3では熱交換容器を熱するのに周囲から加熱ヒーターやバーナーなど間接的な熱源を当てて利用するものである。そのため、いずれにしても利用分野が異なり、固定性が要求され、装置が大型となりスペース上の制約が大きく、適用できる技術的用途が限られてしまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−77315号公報
【特許文献2】特許第3218451号公報
【特許文献3】特開2005−230587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、燃焼炎や電気ヒーターを使用することなく高温・高圧で集中した熱風を発生させることができ、かつ固定性を要求されず、小型化・製造・取り扱いが容易で、ロウ付けや金属加工などにも適用可能で、さらに熱交換効率を従来以上に高めた抵抗加熱機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の抵抗加熱機器は、
抵抗加熱により発熱する材料で構成される、内部壁により複数の層に分けられた筒状の熱交換容器と、2つの抵抗加熱用の電極と、電源装置からなり、熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられており、各層は中央に柱状部材があり環状の空洞を有する層部材から構成され、内部壁には各々複数の孔が設けられ流体の流入口及び流出口となり、各層の流入口と流出口の位置が周方向にずれるように配置されており、2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されていることからなる。
【0008】
また、前記目的を達成するため、本発明の抵抗加熱機器は、
抵抗加熱により発熱する材料で構成される、中央に柱状部材があり各層に環状の空洞を有するよう構成された層部材が並列状態で配置された筒状の熱交換容器と、2つの抵抗加熱用の電極と、電源装置からなり、熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられており、各層における流体の流入口又は流出口の位置が周方向にずれるように構成されており、かつ2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されていることからなる。
【0009】
また、各層の流入口及び流出口は周方向に各々等間隔に配置され、各層の流入口と流出口の位置が等間隔にずれるように配置されていることが好適である。
また、各層の流入口及び流出口の数が6つずつであることが好適である。
【0010】
すなわち、本発明は、流体を熱交換流路の壁面に繰り返して衝突させながら、乱流状態で流すことにより、流体が壁面の温度の影響を多く受けるよう構成された熱交換比率の高い熱交換装置を使用しつつ、その全体の構成を筒状にした上で、これに抵抗溶接に用いられる直接抵抗加熱(被加熱物に直接電流を流すことによるジュール熱での加熱)の発想を用いることにより、本発明を完成するに至り、上述の課題を解決することができることとなったものである。
【0011】
本発明では、抵抗加熱用の電源装置及び電極を使用して、熱交換容器自体を抵抗加熱により発熱させてしまう。電極を接して通電させるだけなので、電気ヒーターやバーナーを別途設けて間接的に熱交換容器を熱する必要がなくなる。なお、説明上、本発明の抵抗加熱機器から電極と電源装置を除いたものが熱交換容器である。これにより、構成を一気に簡素化・小型化でき、使用用途を飛躍的に広げる事ができる。そして、抵抗溶接で利用される温度、例えば800℃以上の高温を容易に調整することができる。また間接的に熱交換容器を熱する場合に比べ、エネルギーロスがない。さらに、熱交換容器は筒状となっているため、環状パイプ及び連結パイプを複雑に組み合わせて構成する場合に比べ、加熱効率が格段に高い。また、燃焼炎を全く必要としないので、取り扱いも容易である。
【0012】
さらに、バーナーと異なり、熱交換容器に供給して熱することができる流体は、空気・窒素ガス・酸素・アルゴンガスなど気体の種類を問わない。さらに、水その他の液体も使用することができる。これにより、様々な種類の高圧の高温集中流体を発生させることが出来るため、応用範囲も非常に高いものである。
【0013】
さらに具体的に述べると、熱交換容器は、抵抗加熱により発熱する材料で構成される。例えば、ステンレス(SUS)・カーボン・タングステン・耐熱鋼(SUH)など、各種公知の材料を使用可能であり、必要とされる耐久温度や強度に応じて適宜選択可能である。800℃程度までであれば、比較的安価なステンレスを使用できる。
【0014】
熱交換容器は、全体として筒状の構成、すなわち凹凸があっても全体的な外観が筒のようになっていれば良いものであり、複数のパイプを組み合わせた骨組のような構成ではないものである。抵抗加熱電極を使用して抵抗加熱することから、環状パイプと連結パイプを組み合わせて加熱する場合に比べ、加熱効率が高く温度のムラも少ないからである。なお、筒状とはかならずしも円筒に限られるものではないが、製造及び構成上の容易さから、円筒状とすることが好ましい。
【0015】
そして、熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられている。これは流体を導入して加熱し、排出して利用することから当然に設けられるものであるが、供給口及び排出口は筒体の直径より細い管状部材として設けることで、より容易に高圧で流体を導入して高圧集中流体を排出することができる。また、前述の通り、流体は気体・液体を問わない。
【0016】
熱交換容器は内部壁により複数の層に分けられており、各層は中央に柱状部材があり環状の空洞を有する層部材から構成される。言い換えれば、中央に柱状部材があり各層に環状の空洞を有するよう構成された層部材が並列状態で配置されて構成される。すなわち、各層にはドーナツ状の環状流路が設けられている。そして、内部壁には各々複数の孔が設けられ流体の流入口及び流出口となる。流体が流れる関係上、ある層から見て、流体が流入してくる流入口は、前の層の流出口となる。そして、各層の流入口と流出口の位置が周方向にずれるように配置されている。これにより、流体は熱交換流路の壁面に繰り返して衝突しながら乱流となって流れ、この間、伝熱媒体の熱を交換することができ、熱交換後の流体は排出管により熱交換容器外へ排出することができる。そのため、孔は深さが2mm以上の管状であることが望ましく、内部壁の孔から管をのばして延長しても良い。すなわち、このような熱交換ができるような構成となっていれば良く、必要に応じて熱交換容器の大きさ、層の数等は適宜選択できる。
【0017】
流体が均等かつ効率的に拡散し加熱できるという観点から、各層の流入口及び流出口は周方向に各々等間隔に配置され、各層の流入口と流出口の位置が等間隔にずれるように配置されていることが望ましい。例えば、各層の流入口を6つ設けた場合、周方向に60度ずつの間隔で配置されることになる。流出口も同様である。そして、流入口と流出口は、30度ずつずれて配置されることになる。このようにした場合、製造の際に、ドーナツ状の環状空間を有し、底に6つの孔を備えた部材を、30度ずつ周方向にずらして連続して連結させるという最も簡易かつコストをかけない方法で、各層部分を製造することができる。
【0018】
そして、2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されている。これにより、熱交換容器自体に通電させて直接抵抗加熱させることが出来る。溶接に適用するものではないので、非消耗性の電極となる。電極の素材・形状は、クロム銅・タングステンなど、目的とする温度や耐久性、熱交換容器の形状などに応じて適宜選択すれば良い。電極の位置は、熱交換容器全体が発熱するように配置すれば良く、熱交換容器の両端に配置することが、全体を均等に加熱する上で好適である。
【0019】
電極とコード等で接続される電源装置は、例えば市販の抵抗溶接に使用されるインバータ式電源装置が使用可能であり、特にART−HIKARI株式会社が販売している、実際の温度や電流値に応じて周波数を可変としたインバータ式の電源装置などが好適である。なお、温度センサー等制御に必要な部材は、公知の技術に基づき適宜採用可能である。このような構成によれば、燃焼炎や電気ヒーターを使用して間接的に熱することなく、熱交換容器を直接発熱させることが出来る。そのため、熱効率もさらに向上する。そのため、熱交換容器の温度と排出される流体の温度はほぼ同じとなり、熱交換容器を一定の温度に保つことも容易である。したがって、流す流体の種類や量、必要とされる温度により、熱交換容器の大きさや、電流値や流体を流す圧力は適宜設定すればよい。
【0020】
さらに、本発明の構成に耐熱カバーや手持ち部分など各種公知の部材を設けてガンとしたり、ロボットに組み込むことで、ロウ付けや金属加工などにも適用可能な高温で高圧の熱風を発生させることが出来る機器を提供することが出来る。このように、装置の固定性からの解放・用途の多様化・小型化・取り扱いの容易性を全て満足させることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の以上の構成により、燃焼炎や電気ヒーターを使用することなく高温で高圧の熱風を発生させることができ、かつ固定性を要求されず、小型化・製造・取り扱いが容易で、ロウ付けや金属加工などにも適用可能で、さらに熱交換効率を従来以上に高めた抵抗加熱機器を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の抵抗加熱機器を示す断面図である。
【図2】本発明の抵抗加熱機器の1つの層を示す断面図である。
【図3】本発明の抵抗加熱機器の1つの層を示す概念図である。
【図4】本発明の抵抗加熱機器の流入口と流出口の位置のずれを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態の例を図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本発明の抵抗加熱機器を示す断面図である。図2は、本発明の抵抗加熱機器の1つの層を示す断面図である。図3は、本発明の抵抗加熱機器の1つの層を示す概念図である。また、図4は、本発明の抵抗加熱機器の流入口と流出口の位置のずれを示す概念図である。
【0025】
図1に示すように、熱交換容器1は、全体として筒状をしており、電極2が熱交換容器1に接し、電源装置10に接続されている。そして、熱交換容器1の両端部6の一端に流体の供給口3が、反対側の一端に流体の排出口4が設けられている。
熱交換容器1は内部壁5により3つの層を有し、各層は中央に柱状部材7があり環状の空洞8を有する層部材9から構成される。すなわち、各層にはドーナツ状の環状流路が設けられることとなる。そして、内部壁5には各々6つの孔11が設けられ流体の流入口及び流出口となる。流体が流れる関係上、ある層から見て、流体が流入してくる流入口(孔11)は、前の層の流出口(孔11)となる。そして、各層の流入口と流出口の位置が周方向にずれるように配置されている。これにより、流体は熱交換流路の壁面に繰り返して衝突しながら乱流となって流れ、この間、伝熱媒体の熱を交換することができ、熱交換後の流体は排出口4により熱交換容器1外へ排出することができる。
【0026】
各層の流入口は6つ設けられているので、それらは周方向に60度ずつの等間隔で配置されている(図4参照)。そして、流入口と流出口は、30度ずつずれて配置されている(図4参照)。これにより、流体は熱交換流路の壁面に繰り返して衝突しながら乱流となって流れることになる。
【0027】
製造の際に、図3に示すような、6つの孔11を有する内部壁5と、柱状部材7を有した環状の空洞を持つ筒状の層部材9を、30度ずつ周方向にずらして連続して連結させ、両端部も含め溶接などで固着すれば、最も簡易かつコストをかけない方法で、熱交換容器1を製造することができる。
【0028】
そして、2つの抵抗加熱用の電極2が熱交換容器1の両端に、すなわち熱交換容器1を囲うように配置され、電源装置10と接続されている。これにより、熱交換容器1自体に通電させて抵抗加熱させることが出来る。
【0029】
本実施例における各部材のサイズは、図2に示される(単位:mm)。具体的には、熱交換容器1の直径50mm,内部壁5の厚さは4mm,孔11の直径は3mmであり、柱状部材7の直径は15mm・高さは11mm、環状の空洞の直径は40mmである。なお、供給口3及び排出口4の直径は13mmである。このように、非常に小型であるため、各種公知の部材を設けてガンとしたり、ロボットに組み込むことで、ロウ付けや金属加工などにも適用できるものである。
【0030】
この本実施例において、抵抗加熱(3000A)により熱交換容器1の容器を600度まで上げ、窒素ガスを5L/minで供給した結果、600度の窒素ガスを同様の圧力で放出することが出来た。
通常の抵抗溶接と同様に、設定温度に耐えうる素材で熱交換容器を製造し、電源装置で各種設定を行い制御すれば良い。また、流体の種類・導入速度・量も使用目的に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 熱交換容器
2 電極
3 供給口
4 排出口
5 内部壁
6 両端部
7 柱状部材
8 環状の空洞
9 層部材
10 電源装置
11 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗加熱により発熱する材料で構成される、内部壁により複数の層に分けられた筒状の熱交換容器と、2つの抵抗加熱用の電極と、電源装置からなり、
熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられており、
各層は中央に柱状部材があり環状の空洞を有する層部材から構成され、
内部壁には各々複数の孔が設けられ流体の流入口及び流出口となり、
各層の流入口と流出口の位置が周方向にずれるように配置されており、
2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されていることを特徴とする抵抗加熱機器。
【請求項2】
抵抗加熱により発熱する材料で構成される、中央に柱状部材があり各層に環状の空洞を有するよう構成された層部材が並列状態で配置された筒状の熱交換容器と、2つの抵抗加熱用の電極と、電源装置からなり、
熱交換容器の一端に流体の供給口が、反対側の一端に流体の排出口が設けられており、
各層における流体の流入口又は流出口の位置が周方向にずれるように構成されており、かつ2つの抵抗加熱用の電極が熱交換容器に接し、電源装置と接続されていることを特徴とする抵抗加熱機器。
【請求項3】
各層の流入口及び流出口は周方向に各々等間隔に配置され、
各層の流入口と流出口の位置が等間隔にずれるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗加熱機器。
【請求項4】
各層の流入口及び流出口の数が6つずつであることを特徴とする請求項3に記載の抵抗加熱機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−258386(P2011−258386A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131339(P2010−131339)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(509290809)ART−HIKARI株式会社 (7)
【Fターム(参考)】