説明

抵抗膜方式タッチパネル

【課題】コントロール基板につなぐためのFPCケーブルの接合箇所に生じる、厚み段差を緩和できるようにした、抵抗膜方式タッチパネルを提供する。
【解決手段】下部、上部電極基板11a、11bを空隙を介して互いに対向させ、下部、上部透明電極基板11a、11b上の薄膜透明電極と電気的に接続されるように薄膜透明電極を介して挟持され、下部、上部透明電極基板11a、11bと共にFPCケーブルをACF5(異方性導電接着フィルム)を用いて、熱圧着により接合する。
上部透明電極基板11bにはカバーフィルム2が貼り合わされ、FPCケーブル3の厚さに起因する段差を緩和するための段差緩和手段(スリット7)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルに関し、特に、コントロール基板につなぐためのFPCケーブルの接合箇所に生じる、厚み段差を緩和できるようにした、抵抗膜方式タッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話機など、様々な電子機器、情報端末機器の入力装置としてタッチパネルが広く用いられるようになっている。
タッチパネルは、パネル表面の所望位置を操作者がペンや指で触れることにより、表示装置に要求される二次元座標データを入力指示するものであり、特に、それ自体透明な構造を有するタッチパネルが、広く利用されている。
このようなタッチパネルのうち、抵抗膜方式タッチパネルは、ITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜をもつ透明電極基板を上下に対向させ、さらに、外部に信号を取り出すための配線部を挟持した状態で、空隙を介して外枠部分を固定して構成されるものである。
上下透明電極基板の一方には電圧が印加され、もう一方の透明電極基板が電位検出の役割をなす。
このような上下透明電極基板のうちの上の透明電極基板を押下げることで、上下透明電極基板が接触した箇所の電位を検出することで押下げ位置を導く。上下の透明電極基板のそれぞれ電極面の外枠部分には導電インクによる印刷配線が施され、上下透明電極基板間に挟持された配線部を通じ、印刷配線を介して透明電極基板に電位分布を印加し、あるいは電位を検出するのである。
【0003】
ところで、タッチパネルを用いた電子機器においては、近年はデザイン性も重要視されており、様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1では、機器外観、表面の段差のない、いわゆるフラットサーフェス化の流れからくる、デザインコンセプトが損なわれることに対処している。すなわち特許文献1では、タッチパネルを筺体の表面に露出する際、筺体とタッチパネルとの段差が出てしまうことから、フィルム部材を、入力パネルの主面とカバー部材との境界部の段差に倣うように接着することで、段差を緩和させて、段差に起因するデザイン性の低下を防止するとしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1による手法では、段差が完全に解消されるわけではなく、また必要構成部品点数が多くなり、フィルム部材を、操作面である入力パネルの主面上に熱溶着により接着する工程を行うなど、工程数が多く複雑であり、製造コストの上昇は避けられない。
【0005】
そこで、上述のように、タッチパネルを電子機器筐体に組み込む際の組み付け構造ばかりでなく、タッチパネル自体の構造からフラットサーフェス化に向けて、鋭意検討、試みがなされている。
この場合、抵抗膜方式タッチパネルでは、外部に信号を取り出すための配線部には、厚さを抑えることができるFPCケーブルを採用し、挟持した状態で、空隙を介して下部および上部電極基板の外枠部分をACF(異方性導電接着フィルム)を用いて、熱圧着により接合するようにして、タッチパネル表面にFPCケーブルの厚さの影響が出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−257494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上のような構造の抵抗膜方式タッチパネルにおいても、ACF(異方性導電接着フィルム)を用いたFPCケーブルの圧着部分は、FPCケーブル自体の厚みと、熱圧着時のFPC部周辺の上部電極フィルムの変形により、他の部分より厚くなって段差が生じてしまう。
従って、このような構造のタッチパネル表面に、装飾を施したカバーフィルムを貼り合わせると、FPC部分の平坦性が損なわれることとなる。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、コントロール基板につなぐためのFPCケーブルの接合箇所に生じる、厚み段差を緩和できるようにした構造の、抵抗膜方式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1にかかる発明では、それぞれの一つの面に導電膜を積層した第1電極基板および第2電極基板を、互いに導電膜形成面を対向させると共に、これら第1および第2電極基板を空隙を隔てた状態で、第1電極基板および第2電極基板におけるそれぞれの導電膜間に外部に信号を取り出すための配線部を挟持して、互いに貼り合わせてなる、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、第1または第2電極基板の外面に貼り合わされたカバーフィルムと、配線部の厚さに起因する段差を緩和するための段差緩和手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
これにより、カバーフィルム表面全体において、配線部の挟持部位のカバーフィルム表面には、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差の影響が及ぶのを抑制することができ、フラットサーフェス化に向けたタッチパネルを提供することができる。
【0010】
また、請求項2にかかる発明では、段差緩和手段は、配線部を覆う第1電極基板または第2電極基板に形成された、段差緩和用スリットである、ことを特徴とする。
【0011】
これにより、配線部の挟持部位のカバーフィルム表面には、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差の影響が及ぶのを抑制することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明では、段差緩和手段は、カバーフィルムの裏面において、配線部の挟持部位と、配線部の挟持部位以外の部位との段差を緩和するように介装された段差緩和層である、ことを特徴とする。
【0013】
これにより、段差緩和層が、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差を補うことができ、配線部の挟持部位のカバーフィルム表面には、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差の影響が及ぶのを抑制することができる。
【0014】
また、請求項4にかかる発明では、段差緩和層は、第1電極基板および第2電極基板における配線部の挟持部位以外の貼り合わせ部位に介装されている、ことを特徴とする。
【0015】
これにより、カバーフィルム表面全体には、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差の影響が及ぶのを抑制することができる。
【0016】
さらに請求項5にかかる発明では、段差緩和手段は、第1または第2電極基板の外面に、カバーフィルムを貼り合わせるために、配線部の挟持部位以外の部位に用いられている粘着剤である、ことを特徴とする。
【0017】
これにより、粘着剤が、配線部の挟持部位以外の部位において、カバーフィルムの厚さに倍加され、配線部の厚さに起因する段差による影響がカバーフィルム表面に及ぶのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カバーフィルム表面全体には、配線部の挟持部位の配線部の厚さに起因する段差による影響が及ぶのを抑制することができ、フラットサーフェス化に向けたタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる抵抗膜方式タッチパネルの一実施形態を示す模式的な分解斜視説明図である。
【図2】図1に示す抵抗膜方式タッチパネルの模式的な平面説明図である。
【図3】図1に示す抵抗膜方式タッチパネルのA−A線に沿う、切断断面説明図である。
【図4】本発明の抵抗膜方式タッチパネルで用いられる段差緩和手段の一実施形態を説明するための模式的な説明図である。
【図5】本発明の抵抗膜方式タッチパネルで用いられる段差緩和手段の別実施形態を説明するための模式的な説明図である。
【図6】本発明の抵抗膜方式タッチパネルで用いられる段差緩和手段の別実施形態を説明するための模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる抵抗膜方式タッチパネルについて、一実施形態を挙げ、添付図に基づいて、詳細に説明する。
図1、図2に抵抗膜方式タッチパネル1を示す。
この抵抗膜方式タッチパネル1は、外観表面がフラット化、すなわちフラットサーフェス化を目指し、図中、タッチパネル本体11上面に適宜な装飾部D(模様、文字などの意匠印刷)を施したカバーフィルム2を貼り合わせて構成されたものである。
タッチパネル本体11は、それぞれの一面に導電膜(例えばITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜)を積層した第1電極基板11aおよび第2電極基板11bを具備する。これら第1、第2電極基板11a、11bは、互いに導電膜形成面を対向させると共に、第1、第2電極基板11a、11bを空隙を隔てた状態で互いに外枠部11Eを介して粘着剤(後述)により貼り合わせて構成している。
また、第1、第2電極基板11a、11bの導電膜形成面側には電極部(図示省略)が配設され、第1、第2電極基板11a、11bにおけるそれぞれの導電膜間に電極部を介して外部に信号を取り出すための配線部3(以下、FPCケーブル3)が挟持され、第1、第2電極基板11a、11bの外枠部11Eに沿って粘着剤4を用いて貼り合わせると共に、第1、第2電極基板11a、11bの電極部とFPCケーブル3とを、異方性導電接着フィルム5を用いて熱圧着して接続されている(図3参照)。
【0021】
第1、第2電極基板11a、11bは、本実施形態では、それぞれ下部、上部透明電極基板11a、11bによって構成し、以降、下部、上部透明電極基板11a、11bとして説明していく。
【0022】
下部透明電極基板11aは、例えば方形状のガラス基板にITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜6を成膜して構成されている(図3参照)。
また、透明導電膜上には、図示は省略するが、銀含有の導電性インク材料や、カーボン含有の導電性インク材料を用いて印刷によって帯パターン状に形成された薄膜透明電極が設けられている。
なお、下部透明電極基板11aは、ガラス基板の他に、光透過率が高く、成形精度に優れ、硬質である樹脂材料が好適である。樹脂材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)他、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
【0023】
上部透明電極基板11bは、下部透明電極基板11aと同等の面積の樹脂材料(例えばポリエチレンテレフタレートPET)で構成され、ITO(インジウムと錫の酸化物との合金)等の透明導電膜6を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、印刷法等で成膜したもので構成される。
また、上部透明電極基板11bには、下部透明電極基板11aの薄膜透明電極が形成された上面に対向する下面側に、印刷によって帯パターン状に形成された薄膜透明電極が設けられている。
【0024】
下部、上部透明電極基板11a、11bの外枠部11E間に挟持されるFPCケーブル3は、例えば厚み12μmから50μmのフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)上に、厚み12μmから50μm程度の導電パターンを形成したもので、全体の厚さが略100μmのものを用いている。
かかるFPCケーブル3を、下部、上部透明電極基板11a、11b上の薄膜透明電極と電気的に接続されるように薄膜透明電極を介して挟持して、下部、上部透明電極基板11a、11bと共に、FPCケーブル3をACF5(異方性導電接着フィルム)を用いて、熱圧着により接合されている。
【0025】
そして、下部、上部透明電極基板11a、11bと共にFPCケーブル3をACF5(異方性導電接着フィルム)を用いて、熱圧着により接合する際、FPCケーブル3の挟持部位をカバーするカバーフィルム2の表面には、FPCケーブル3の厚さの影響を受けて段差が生じるため、かかる段差を緩和するための段差緩和手段として、FPCケーブル3を挟持する上部透明電極基板11bにはスリット7が設けられている(図4参照)。スリット7は、FPCケーブル3の幅方向両側部に沿って形成されている。これにより、スリット7により切り離された、FPCケーブル3上の上部透明電極基板11bの両端部側がFPCケーブル3両側面に沿うように、すなわち折れ曲がるように入り込み、FPCケーブル3外側の上部透明電極基板11bとの段差が緩和され、かかるスリット7上にカバーフィルム2により、緩斜面をもってFPCケーブル3がカバーされるようになっている。
【0026】
以上のように、本実施形態の抵抗膜方式タッチパネル1によれば、カバーフィルム2表面全体において、FPCケーブル3の挟持部位のカバーフィルム2表面には、FPCケーブル3の挟持部位のFPCケーブル3の厚さに起因する段差の影響が及ぶのを抑制することができ、フラットサーフェス化に向けたタッチパネル1を提供することができる。
【0027】
抵抗膜方式タッチパネル1は、以下のように構成することもできる。
すなわち、抵抗膜方式タッチパネル1における段差緩和手段としては、図5に示すように、カバーフィルム2裏面に、カバーフィルム2表面におけるFPCケーブル3の挟持部位と、カバーフィルム2表面におけるFPCケーブル3の挟持部位以外の全体面との段差を緩和するように介装された段差緩和層8によって実現することができる。
この場合、FPCケーブル3、FPCケーブル3の挟持部位は、FPCケーブル3によって、厚さが厚くなり、段差が生じてしまうので、カバーフィルム2表面におけるFPCケーブル3の挟持部位以外の部位、例えば外枠部11Eに段差緩和層8を介装することで、全体が段差のない略平坦なフラットサーフェス化に向けた抵抗膜方式タッチパネル1を提供することができる。
なお、段差緩和層8は、FPCケーブル3の挟持部位以外の貼り合わせ箇所である外枠部11Eに介装することも可能である。
【0028】
また、抵抗膜方式タッチパネル1における段差緩和手段としては、以下のように構成することもできる。
すなわち段差緩和手段は、上部透明電極基板11bの上面に、カバーフィルム2を貼り合わせるために、FPCケーブル3の挟持部位他、段差の要因となる部位、すなわち貼り合わせ箇所である外枠部11Eを除いて用いられている粘着剤4で実現することができる(図6参照)。粘着剤4によって段差が補われば、全体が段差のない略平坦なフラットサーフェス化に向けた抵抗膜方式タッチパネル1を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 抵抗膜方式タッチパネル
11 タッチパネル本体
11a 下部透明電極基板
11b 上部透明電極基板
11E 外枠部
2 カバーフィルム
3 配線部(FPCケーブル)
4 粘着剤
5 ACF(異方性導電接着フィルム)
6 透明導電膜
7 スリット
8 段差緩和層
D 装飾部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの一つの面に導電膜を積層した第1電極基板および第2電極基板を、互いに導電膜形成面を対向させると共に、これら第1および第2電極基板を空隙を隔てた状態で、前記第1電極基板および第2電極基板におけるそれぞれの導電膜間に外部に信号を取り出すための配線部を挟持して、互いに貼り合わせてなる、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、
前記第1または第2電極基板の外面に貼り合わされたカバーフィルムと、
前記配線部の厚さに起因する段差を緩和するための段差緩和手段と、を具備することを特徴とする抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項2】
前記段差緩和手段は、前記配線部を覆う前記第1電極基板または前記第2電極基板に形成された、段差緩和用スリットである、ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項3】
前記段差緩和手段は、前記カバーフィルムの裏面において、前記配線部の挟持部位と、前記配線部の挟持部位以外の部位との段差を緩和するように介装された段差緩和層である、ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項4】
前記段差緩和層は、前記第1電極基板および第2電極基板における前記配線部の挟持部位以外の貼り合わせ部位に介装されている、ことを特徴とする請求項3に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項5】
前記段差緩和手段は、前記第1または第2電極基板の外面に、前記カバーフィルムを貼り合わせるために、前記配線部の挟持部位以外の部位に用いられている粘着剤である、ことを特徴とする請求項1−4に記載のうち、いずれか1項に記載の抵抗膜方式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194610(P2012−194610A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55985(P2011−55985)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】