説明

押し出しスタンディングチューブ

【課題】 ノズル部を設けた肩部を筒状部に対して突出させた形状への復元を弱い力でも容易におこなうことのできるスタンディングチューブを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する筒状部1の端部に、中央部にノズル部3が突設された肩部2が一体に設けられ、その肩部2が、前記筒状部1からその軸線方向に突出した状態と筒状部1の内部に陥没した状態とに、前記筒状部1との境界部分で反転屈曲するとともに、前記ノズル部3が、前記肩部2に対してその軸線方向に突出した状態を維持するように前記肩部2との境界部分で屈曲自在に形成された押し出しスタンディングチューブであって、前記肩部2のうち前記ノズル部3の中心軸線を中心としたノズル部3の外周側の所定半径の領域10でかつノズル部3に繋がる領域10に、該領域10における肩部2を部分的に薄肉にする複数の微小凹溝11が、千鳥状に配列して形成された弱化部12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の本体部分である筒状部を押しつぶすことにより内容物をノズル部から押し出すチューブに関し、特にノズル部が設けられている肩部が、筒状部に陥没した状態と突出した状態とに反転変形でき、陥没した状態では、その肩部側の端部を下向きにして起立状態に立たせることのできるスタンディングチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプーやリンスあるいは液体洗剤などの詰替用の内容物のための容器として、合成樹脂シートからなる筒状部の一端に肩部を一体に設けるとともに、その肩部の中央部にノズル部を設け、かつ筒状部の他方の端部を熱溶着(ヒートシール)して密封したいわゆる軟質容器(チューブ)が知られている。このようなチューブは、その形状から明らかなように、起立させておくことができないので、広い収容スペースが必要になったり、店頭での陳列に多様性を持たせることが困難であるなどの不都合があった。
【0003】
このような構成のチューブは、可撓性があるので、その特性を利用して、ノズル部を有する肩部を、筒状部に対して陥没した状態と、突出した状態とに反転変形できるように構成し、購買者が使用するまでの間、あるいは内容物を取り出さないいわゆる非使用時には、肩部をそのノズル部と共に筒状部に陥没させ、その肩部側の端部を円筒状とすることにより、該端部を下側にして起立させるように構成したチューブが開発されている。その一例が、特許文献1ないし4に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された軟質筒状容器は、前述した肩部に相当する円錐状の閉塞体を、筒体の一端部に接合し、その閉塞体の前記筒体に近い下端部が、筒体の内部に向けて折れ曲がった状態と軸線方向で外側に突出した状態とに屈曲するように構成されている。さらに、その閉塞体の途中には水平段差部が形成され、それより上部(中心部)側の部分が反転しないように構成されている。したがってこの特許文献1に記載された容器では、閉塞体を筒体の内部に押し込んだ状態に陥没させておけば、その閉塞体側の端部が、円形に開口した状態となるので、ここを底部として、容器を起立状態におくことができる。また、筒体を押しつぶして内部を加圧すれば、閉塞体が筒体の内部に陥没している状態から外側に突出し、閉塞体の中央部に突設されている摘み片を引きちぎって注出口を開くことにより、内容物を押し出すことができる。
【0005】
また、特許文献2には、口頸部を中央部に有する肩部を胴部に没入させることにより、胴部から肩部に移行するかど部を底部として起立させるように構成したチューブ容器が記載されており、この特許文献2に記載されたチューブ容器では、口頸部を引っ張って胴部から肩部を突出させるようになっている。
【0006】
さらに、特許文献3には、容器本体の内部に陥没させた状態に設けた肩部の下縁部に、ノズル筒部を設け、容器の胴部を押圧して内容液を加圧することにより、肩部を胴部から突出させるように構成した詰替用容器が記載されている。
【0007】
そして、特許文献4には、肩部の反転を簡単に行うための反転補助用凹溝を肩部に設けたチューブ容器が記載されている。
【特許文献1】特開平9−39991号公報
【特許文献2】登録実用新案第2573927号公報
【特許文献3】特許第3437987号公報
【特許文献4】特開2004−299694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献2の発明では、胴部の内部に陥没している肩部を、その肩部に形成されている口頸部を引っ張って突出させるように構成されているので、肩部を突出させるための操作性が悪い。また、特許文献4に記載されているチューブ容器は、反転補助用凹溝を備えているが、その反転補助用凹溝は、口頸部の先端に形成されている除去蓋を摘んで肩部を引き出す際の反転および肩部を胴部に押し込む反転の際の柔軟性を与えるためのものであり、したがって肩部や除去蓋を胴部から突出させるためには、その除去蓋を摘んで引き出す操作が必要となり、そのため特許文献4に記載されているチューブ容器であっても、操作性の点で改善する余地があった。
【0009】
これに対して特許文献1や特許文献3に記載されている容器もしくはチューブは、胴部もしくは筒体を押しつぶして加圧することにより、閉塞体もしくは肩部を突出させるが、その場合、閉塞体もしくは肩部の外周部側の部分から次第に盛り上がり、そのようないわゆる反転が閉塞体もしくは肩部に中心側の部分に及んで、全体が突出することになる。このような反転変形の当初は、変形領域が広いので、容器の内部の圧力が特には高くなくても、肩部の周辺部分を盛り上がらせることができる。
【0010】
しかしながら、最終的に突出することになるノズル部の周辺部分は、曲率半径が小さいために剛性が相対的に高く、あるいは突出方向に変形する部分での受圧面積が小さいなど、完全に突出した最終形状に変形させるために要する圧力が高くなる。そのため、特許文献1や特許文献3に記載されている容器もしくはチューブは、閉塞体もしくは肩部を正規の形状まで突出させるためには高い圧力が必要となり、高齢者や子供など握力の弱い使用者が片手で押して使用できるものとはならず、改善の余地があった。言い換えれば、片手で操作した場合には、ノズル部と肩部との境界部分の傾斜角度が最もきつい部分での形状の復元が不十分となり、さらに両手で加圧したり、ノズル部を引っ張るなどの操作を必要とし、操作性の点で改善の余地があった。
【0011】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、肩部に形成されたノズル部を、使用時の状態である突出状態に容易に復元させ、特にその復元の最終段階であるノズル部の突出状態への復元を容易かつ確実に生じさせることのできる押し出しスタンディングチューブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために、可撓性を有する筒状部の端部に、中央部にノズル部が突設された肩部が一体に設けられ、その肩部が、前記筒状部からその軸線方向に突出した状態と筒状部の内部に陥没した状態とに、前記筒状部との境界部分で反転屈曲するとともに、前記ノズル部が、前記肩部に対してその軸線方向に突出した状態を維持するように前記肩部との境界部分で屈曲自在に形成された押し出しスタンディングチューブにおいて、前記肩部のうち前記ノズル部の中心軸線を中心としたノズル部の外周側の所定半径の領域でかつノズル部に繋がる領域に、該領域における肩部を部分的に薄肉にする複数の微小凹溝が、千鳥状に配列して形成された弱化部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
その微小凹溝は、請求項2に記載してあるように、前記ノズル部の中心軸線を中心として円弧状もしくはその円弧方向を向く直線状の凹溝であり、その凹溝が、前記中心軸線を中心とした半径の異なる複数の円周上に、千鳥状に並んで配列された構成とすることができる。
【0014】
あるいはその微小凹溝は、請求項3に記載されているように、前記ノズル部の中心軸線を中心とした半径方向に沿う直線状の凹溝であり、その凹溝が、前記中心軸線を中心とした放射状に、かつ円周方向には千鳥状に配列された構成とすることができる。
【0015】
さらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記肩部における前記ノズル部と弱化部との間の部分に、肩部の外表面側を窪ませて薄肉化した屈曲用薄肉部が形成されていることを特徴とする押し出しスタンディングチューブである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内容物を取り出す前の状態では、ノズル部を形成した肩部が筒状部の内部に陥没した状態に押し込められており、したがってその状態では、筒状部における肩部側の端部が、円形などの単純な平坦形状になるので、ここを底部として起立させることができる。その状態から筒状部を押して内部を加圧すると、広い面積の肩部の内面全体に圧力が作用して、肩部を筒状部の外側に押圧し、肩部がその周辺部分から次第に筒状部の外側に盛り上がる。その過程で、ノズル部は、次第に盛り上がる肩部に対して窪んだ状態となっており、ノズル部は肩部がほぼ完全に突出した最終の段階では、肩部に対して突出するように変形が生じている。その最終的な変形は、ノズル部の小さい面積に作用する圧力によって生じるが、肩部に弱化部が形成されていてこの部分の変形に要する荷重が小さくてよく、したがって筒状部を特に強く押圧することなく、ノズル部を完全に突出させ、正規の形状に復元させることができる。特に、本発明では、ノズル部に隣接する所定の半径の領域に微小凹溝を千鳥状に配列して形成したので、内部の圧力を高くすることによる肩部の復元動作が途切れることなく最終の形状まで連続して生じ、しかもノズル部の周囲でその復元動作を促進させることができる。すなわち、本発明によれば、小さい力でチューブの形状を復元できるので、操作性が良好になる。
【0017】
特に、請求項4の発明によれば、ノズル部を筒状部の内部に押し込んで肩部とともに陥没させる場合、およびその陥没状態から復元させる場合に、ノズル部と肩部との境界部分で容易に屈曲するので、肩部の変形操作が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1に本発明に係るチューブを一部断面して示してあり、筒状部(胴部もしくは本体部)1の図での上端部に、突出状態と陥没状態とに反転変形可能な肩部2が設けられ、その肩部2の中央部にノズル部3が設けられている。その筒状部1は、合成樹脂シートからなる可撓性のある中空体として形成されている。その筒状部1の素材としては、LDPE(低密度ポリエチレン)やLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)あるいはHDPE(高密度ポリエチレン)を使用でき、さらにはバリア材としてEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)やナイロンなどを、中間層あるいは最内層に積層することが可能であり、さらには適宜接着剤層を設けることもできる。また、この筒状部1の図での下端部は、筒状のシートを扁平状に押しつぶした状態で熱溶着することにより密閉され、ヒートシール部4となっている。
【0019】
その肩部2は全体として円錐形状もしくはテーパー状をなしており、前記筒状部1と同様の素材により、筒状部1よりも幾分厚肉に形成されている。したがってこの肩部2は、筒状部1よりも幾分剛性が高いが、筒状部1に対して陥没した状態と突出した状態とに変形できる程度の可撓性を有している。
【0020】
このような形状の変化は、筒状部1と肩部2との境界部分で屈曲することにより生じ、特にこの発明では、後述するように、密閉した状態の筒状部1を押し潰すことによる内圧の増大によって、陥没した状態の肩部2を突出させる。そこで、この発明では、筒状部1の直径(同径)を40mm〜60mmにすることが好ましい。40mmより小さいと、筒状部1を押し潰して生じる内圧の増大に対して肩部2の剛性が相対的に大きくなってしまい、陥没状態からの反転を生じさせ難くなる。これとは反対に、60mmより大きいと、その剛性が低くなり、筒状部1を押し潰す際に筒状部1自体を膨張させるように内部の圧力が作用し、肩部2を陥没状態から反転させる作用が弱くなり、肩部2を筒状部1から突出させた状態に復帰させ難くなる。
【0021】
また、筒状部1の厚さBは、0.3〜0.8mm程度が好ましい。筒状部1の厚さが、例えば1.0mm程度に極端に厚い場合には、筒状部1が全体として硬くなってスクイズ性が悪くなり、筒状部1を押し潰しても内圧が高くなり難い。これに対して例えば0.2mm程度に極端に薄い場合には、筒状部1の直径に対する壁厚が薄すぎ、印刷工程や頭部成形工程で座屈などの成形不良が発生しやすくなる。
【0022】
さらに、図2には筒状部1と肩部2との境界部分の断面形状を示しており、肩部2の厚さAと、筒状部1の厚さBと、屈曲の生じる箇所の厚さCとは、A=1.0mm、B=0.5mm、C=1.0mm程度とすることが好ましい。特に、A=C>Bであって、B≒A(またはC)/2とすることが好ましい。このような寸法に設定されていれば、図3の(a)に示すように、筒状部1の上端部と肩部2の下端部との重ね合わせ部分で屈曲が生じ、肩部2に変形に伴う内部応力が十分に生じるので、陥没状態からの復帰が容易になる。また、肩部2あるいは屈曲が生じるべき部分の厚さA,Cが厚いと、図3の(b)に示すように、筒状部1が折れ曲がってしまい、肩部2に変形に伴う内部応力が十分には生じないので、陥没状態からの復帰が困難になる。
【0023】
その筒状部1と肩部2とは、ブロー成形などによって一体に製造してもよい。あるいは円筒状の部材を押し出し成形などによって製造するとともに、その円筒状の部材を所定の長さに切断して筒状部1を作成し、これとは別に成形した肩部2を、その筒状部1の端部に熱溶着などの方法で接合してもよい。後者の方法によれば、製品としてのチューブの長さあるいは容積の制約が緩和され、異なる大きさのチューブに対して金型や中間製品を共通化することができる。
【0024】
前記肩部2の中心部(突出した状態では頂部)にノズル部3が形成されている。このノズル部3は、口頸部5の先端に、キャップ部6を一体に形成してそのノズル部3を密閉しておき、そのキャップ部6を引きちぎってノズル部3を開口するとともに、引きちぎったキャップ部6によってノズル部3を再封止できるようになっている。すなわち、口頸部5は、円筒状の部分であって、剛性を付与するために厚肉に形成されている。
【0025】
ノズル部3に形成されたキャップ部6は、有底円筒状の周壁部7と、その中心部に突設されたプラグ部8とから構成され、そのプラグ部8は、口頸部5内に圧入できる径のテーパー状に形成されている。さらに、口頸部5とキャップ部6との境界部分にくびれ部9が形成され、そのくびれ部9でキャップ部6を引きちぎるようになっている。また、口頸部5の内部の中空部は、キャップ部6におけるプラグ部8の内部にまで及んでおり、したがってキャップ部6を引きちぎることにより、口頸部5(ノズル部3)が開口するようになっている。また、その引きちぎったキャップ部6を反転してそのプラグ部8を口頸部5内に圧入することにより、口頸部5(ノズル部3)を再封止できるようになっている。
【0026】
前記肩部2の中心側の部分であってノズル部3の外周側の所定の半径の領域10に、該領域10における肩部2の剛性を他の部分に対して低下させるための複数の微小凹溝11からなる弱化部12が形成されている。すなわち、その微小凹溝11の部分で、肩部2が薄肉化されている。なお、微小凹溝11は、図に示す例では、肩部2の内面に形成されているが、これとは異なり、肩部2の外面に形成してもよい。
【0027】
その弱化部12を構成する微小凹溝11の形状および配列について説明すると、図1および図4に示す例では、微小凹溝11は、ノズル部3の中心軸線を中心として短い円弧状あるいは円周方向を向いた直線状であり、その中心軸線を中心とした異なる半径の円周上に、それぞれ一定間隔に形成され、かつ隣り合う円周上の微小凹溝11とは、千鳥配列となっている。そして、隣り合う円周上の微小凹溝11とは、前記中心軸線を中心とした半径方向では、一部、オーバーラップしている。
【0028】
また、図5に示す例では、微小凹溝11は、ノズル部3の中心軸線を中心として放射状に一定間隔で配列された直線上であり、かつ円周方向で隣り合う微小凹溝11とは、千鳥配列となっている。そして、円周方向で隣り合う微小凹溝11とは、円周方向に一部、オーバーラップしている。なお、微小凹溝11は長さや幅が均一である必要はなく、幅が次第に変化する形状のものであってもよい。また、溝の深さは一定であってもよく、あるいは次第に変化していてもよい。
【0029】
上記の弱化部12の厚さ、すなわち微小凹溝11を形成することによる残厚は、肩部2の厚さの60%以下とすることが好ましく、より具体的には、0.3〜0.6mmが好ましい。0.6mmより厚いと、屈曲を容易にする効果が生じず、また0.3mmより薄いと、形成不良や破裂などの不都合が生じる。さらに、弱化部12の面積は、肩部2の面積の10〜50%が好ましい。
【0030】
上記のノズル部3と前記領域10との間、すなわちノズル部3の外周側に隣接するように屈曲用薄肉部13が設けられている。この屈曲用薄肉部13は、肩部2とノズル部3との間の屈曲を容易にするためのものであり、肩部2を筒状部1内に陥没させるように反転させた場合の肩部2とノズル部3との屈曲に伴って圧縮を受ける部分を削除して形成されている。具体的には、肩部2の表面(外面)のうちノズル部3の外周側に隣接する部分を窪ませた部分である。その屈曲用薄肉部13を図6に示してあり、その肉厚は、肩部の厚さの60%以下が好ましく、より具体的には、標準で0.6mm程度である。
【0031】
上記のノズル部3を筒状部1の内部に向けて押圧すると、肩部2の外周部分すなわち肩部2と筒状部1との境界部分が筒状部1の内部に向けて変形し、その結果、肩部2が筒状部1の内部に陥没した状態となる。その場合、ノズル部3の外周部すなわちノズル部3と肩部2との境界部分における前記屈曲用薄肉部13でも反対方向に折り曲げる変形が生じ、陥没した肩部2に対してノズル部3が図1での上方向に相対的に突出した状態となる。このようないわゆる陥没状態を図1に鎖線で示してある。
【0032】
このように肩部2を筒状部1に陥没させた状態では、図1の上端部が、平坦な円形の開口部となるので、この端部を底部としてチューブを立てた状態に置くことができる。すなわち、起立状態に配置し、収容し、もしくは陳列することができる。
【0033】
いわゆる陥没状態で筒状部1を押しつぶすように加圧すると、内部の圧力が高くなって肩部2には、これを筒状部1の軸線方向に押し出す力が作用する。肩部2の内面が広いことにより、肩部2を押し出す荷重が相対的に大きく、その結果、肩部2の外周部が盛り上がる変形が生じる。すなわち肩部2と筒状部1との境界部分での変形方向が反転する。このような変形が肩部2の中心部に向けて次第に進行し、最終的にはノズル部3を肩部2のいわゆる頂部に押し出す変形が生じ、肩部2の形状が復元する。
【0034】
その場合、ノズル部3の周囲での変形は、チューブの内部の圧力を高くしたことによる荷重とノズル部3の周囲に部分的な窪みなどの局部的な異形形状が生じていることによる歪みが原因となる応力とによって生じると考えられる。上述した本発明に係るチューブでは、ノズル部3の外周側に隣接する所定半径の領域10に、千鳥配列の微小凹溝11からなる弱化部12が形成されていてその部分の剛性が相対的に低いので、肩部2が復元する過程におけるノズル部3の周囲での局部的な歪みが原因となる応力によってもその領域10の復元方向の変形が進行する。特に、各微小凹溝11が、一部、オーバーラップした千鳥配列となっているので、復元方向の変形を途切れさせる要因がない。その結果、ノズル部3が完全に突出した状態となるまでの形状の復元に要する圧力が低くてよく、したがってこの発明では、握力の弱い高齢者や子供でも取り扱うことのできる操作性のよいチューブを得ることができる。
【0035】
なお、チューブの内容物を取り出すためには、先ず、上述したキャップ部6を引きちぎって口頸部5を開口させ、その状態で筒状部1を押しつぶす方向に加圧する。こうすることにより、内容物が口頸部5から押し出される。また、余剰の内容物をチューブの内部に残しておく場合には、引きちぎったキャップ部6を反転してそのプラグ部8を口頸部5内に圧入し、口頸部5を再封止する。
【0036】
なお、本発明は、上述した具体例に限定されないのであって、肩部やノズル部の形状もしくは構成は、必要に応じて適宜変更することができる。また、弱化部とそれに隣接する相対的に厚肉の部分との厚さの比率もしくは差は、材質や弱化部の形状に基づいて適宜に設定することができる。さらに、この発明は、キャップ部のない(いわゆるリシール機能のない)チューブにも適用することができ、この種のチューブの一例を図7に模式的に示してある。なお、図7において、図1に示す部分と同一の部分には、図1と同一の符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るスタンディングチューブの一例を一部断面し、また一部省略して示す正面図である。
【図2】その筒状部と肩部との境界部分を示す部分断面図である。
【図3】筒状部と肩部との境界部分での正常な屈曲状態と屈曲不良状態とを示す部分断面図である。
【図4】弱化部を構成する微小凹溝の配列の一例を示す図である。
【図5】弱化部を構成する微小凹溝の配列の他の例を示す図である。
【図6】その肩部とノズル部との境界部分を示す部分断面図である。
【図7】本発明をリシール機能のないチューブに適用した例を示す一部断面した正面図である。
【符号の説明】
【0038】
2…肩部、 3…ノズル部、 10…領域、 11…微小凹溝、 12…弱化部、 13…屈曲用薄肉部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する筒状部の端部に、中央部にノズル部が突設された肩部が一体に設けられ、その肩部が、前記筒状部からその軸線方向に突出した状態と筒状部の内部に陥没した状態とに、前記筒状部との境界部分で反転屈曲するとともに、前記ノズル部が、前記肩部に対してその軸線方向に突出した状態を維持するように前記肩部との境界部分で屈曲自在に形成された押し出しスタンディングチューブにおいて、
前記肩部のうち前記ノズル部の中心軸線を中心としたノズル部の外周側の所定半径の領域でかつノズル部に繋がる領域に、該領域における肩部を部分的に薄肉にする複数の微小凹溝が、千鳥状に配列して形成された弱化部が設けられていることを特徴とする押し出しスタンディングチューブ。
【請求項2】
前記微小凹溝が、前記ノズル部の中心軸線を中心として円弧状もしくはその円弧方向を向く直線状の凹溝であり、その凹溝が、前記中心軸線を中心とした半径の異なる複数の円周上に、千鳥状に並んで配列されていることを特徴とする請求項1に記載の押し出しスタンディングチューブ。
【請求項3】
前記微小凹溝が、前記ノズル部の中心軸線を中心とした半径方向に沿う直線状の凹溝であり、その凹溝が、前記中心軸線を中心とした放射状に、かつ円周方向には千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の押し出しスタンディングチューブ。
【請求項4】
前記肩部における前記ノズル部と弱化部との間の部分に、肩部の外表面側を窪ませて薄肉化した屈曲用薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の押し出しスタンディングチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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