説明

押下ヘッド

【課題】装着した吐出器内の内容物を下方に吐出すること。
【解決手段】頂壁部2、周壁部3及びノズル部4を有するヘッド本体5を備え、吐出器に装着されるヘッドであって、ノズル部は、周壁部に前方に向けて延設された第1ノズル筒部15と、第1ノズル筒部と連通すると共に第1ノズル筒部に下方に向けて延設され、下方に向けて開口するノズル孔16が形成された第2ノズル筒部17と、を備え、第2ノズル筒部内には、ノズル孔を閉塞する栓体20が上方付勢状態で挿通され、第1ノズル筒部内には、栓体を上側から支持する移動部材23が挿通され、ヘッド本体の押下により移動部材を後方に移動させると共に、押下の解除により移動部材を前方に移動させる移動機構26を備え、栓体は、移動部材の後方に向けた移動に伴いその上方付勢力により上方に向けて移動させられると共に、移動部材の前方に向けた移動に伴い下方に向けて押し込まれる押下ヘッド1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立した吐出器に装着する押下ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押下ヘッドとして、例えば下記特許文献1に示されるように、ノズル管(ノズル部)を取着した噴出ヘッド(ヘッド本体)を押下げ操作して、一定量の粘性液をノズル管より吐出するようにした押下ヘッドであって、ノズル管先端のノズル孔の目詰まりを防ぐため、噴出ヘッド内に、ノズル孔を開閉する先端を備える通孔棒を内蔵した構成が知られている。
【特許文献1】実公昭63−376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の押下ヘッドでは、ノズル孔が、液体をほぼ水平方向に噴出するように形成されており、ノズル孔を開閉する通孔棒は、水平方向に移動するだけであるので、液体を下方に吐出することができなかった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装着した吐出器内の内容物を下方に吐出することができる押下ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る押下ヘッドは、頂壁部、この頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設された周壁部、及びノズル部を有するヘッド本体を備え、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立した吐出器に装着される押下ヘッドであって、前記ノズル部は、前記周壁部に前方に向けて延設された第1ノズル筒部と、前記第1ノズル筒部と連通すると共に前記第1ノズル筒部に下方に向けて延設され、下方に向けて開口するノズル孔が形成された第2ノズル筒部と、を備え、前記第2ノズル筒部内には、前記ノズル孔を閉塞する栓体が上方付勢状態で挿通され、前記第1ノズル筒部内には、前記栓体を上側から支持する移動部材が挿通され、前記ヘッド本体の押下により前記移動部材を後方に向けて移動させると共に、前記押下の解除により前記移動部材を前方に向けて移動させる移動機構を備え、前記栓体は、前記移動部材の後方に向けた移動に伴いその上方付勢力により上方に向けて移動させられると共に、前記移動部材の前方に向けた移動に伴い下方に向けて押し込まれることを特徴とするものである。
【0006】
上記押下ヘッドによれば、まず、ヘッド本体を押下することで移動機構によって移動部材が後方に向けて移動させられ、この移動に伴い栓体がその上方付勢力により上方に向けて移動させられる。これにより、栓体がノズル孔から離間し、ノズル孔が開口される。
そして、前述の押下を解除することで、移動機構によって移動部材が前方に向けて移動させられ、この移動に伴い栓体が下方に向けて押し込まれる。これにより、栓体がノズル孔に接近し、ノズル孔が閉塞される。
【0007】
以上により、下方に向けて開口するノズル孔を開閉することが可能となり、ステム内及びノズル部内を流通した吐出器内の内容物を下方に向けて吐出させることができる。これにより、吐出器を傾けることなく内容物を下方に向けて吐出させることができるので、操作時に例えば一方の手でヘッド本体を押下して、ノズル孔から吐出された内容物を他方の手で受け取ること等が可能となる。
また、この押下ヘッドでは、移動部材が前後方向へ移動し、更に栓体が上下方向へ移動しており、移動部材及び栓体いずれの移動も一定方向に沿った直線的な移動であるので、開閉動作における作動不良の発生を抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係る押下ヘッドでは、天壁部、及びこの天壁部の下面から下方に向けて延設され前記ステムに連結される装着筒を有する装着筒部材を備え、前記移動機構は、前記移動部材を前方に向けて付勢する弾性部材と、前記移動部材の後端部に連結された梃子部材と、を備え、前記梃子部材は、下方に向かうに従い前方に向けて屈曲させられてその下端部が前記天壁部上に配置され、且つ前記装着筒部材に対する前記ヘッド本体の押下時に前記移動部材を後方に向けて移動させるように揺動可能に支持されていても良い。
【0009】
この場合、まず、装着筒部材に対してヘッド本体を押下することで、梃子部材は、その下端部が天壁部上を前方に向けて摺動し且つ移動部材の後端部に連結された部分が後方に向けて移動するように揺動される。これにより、移動部材は、弾性部材による前方への付勢力に抗して後方に向けて移動される。
そして、前述の押下を解除することで、移動部材は、弾性部材の付勢力により前方に向けて移動される。
以上により、移動部材を確実に前後方向に移動させることが可能となり、ノズル孔の開閉動作における作動不良の発生を確実に抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る押下ヘッドでは、前記移動部材は、前後方向に延びる棒状に形成され、前記栓体の外面には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第1傾斜面が形成され、前記移動部材の前端部には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第2傾斜面が形成され、前記移動機構により前記移動部材が後方或いは前方に向けて移動させられるときに前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが当接しても良い。
【0011】
この場合、移動機構により移動部材が後方或いは前方に向けて移動させられるときに前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが当接するので、栓体と移動部材とを円滑に摺動させることができる。従って、移動部材の移動に伴い栓体を上方或いは下方に向けて円滑に移動させることができるので、ノズル孔の開閉動作における作動不良の発生を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る押下ヘッドによれば、装着した吐出器内の内容物を下方に吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る押下ヘッドの一実施形態を、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係る押下ヘッドの一実施形態を示す縦断面図である。図2は、図1に示す押下ヘッドのヘッド本体を押下した状態を示す図である。
押下ヘッド1は、頂壁部2、この頂壁部2の外周縁部から下方に向けて延設された周壁部3、及びノズル部4を有するヘッド本体5を備え、上方付勢状態で押込み可能にステム6を起立した吐出器に装着されるものである。更に、本実施形態では、押下ヘッド1は、天壁部7、及びこの天壁部7の下面から下方に向けて延設されステム6に連結される装着筒8を有する装着筒部材9を備えている。
なお、図示の例では、ステム6の上端部は筒状に形成され、ヘッド本体5の周壁部3、装着筒8及びステム6の上端部は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。以下、この共通軸を第1軸線L1と称し、第1軸線L1に沿って押下ヘッド1側を上側、ステム6側を下側と称する。
【0014】
ヘッド本体5の周壁部3における上部には、前方に向けて開口する貫通孔3aが形成され、この貫通孔3aの開口周縁部から後方に向けて延在すると共に後端壁10aが周壁部3の後部から径方向内側に離れて位置する横筒10が設けられている。これにより、横筒10の後端壁10aと周壁部3の後部における内面との間には、隙間Aが設けられている。なお以下では、横筒10の中心軸線を第2軸線L2と称する。
【0015】
横筒10の下壁部には、横筒10の内部に連通したシリンダ11が下側に向けて延設されている。図示の例では、シリンダ11は、前記第1軸線L1と同軸に配設されている。
また、横筒10の後端壁10aには、貫通孔10bが前記第2軸線L2と同軸になるように形成されている。また、前記後端壁10aには、前方に向けてガイド筒12が延設されている。ガイド筒12は、前記第2軸線L2と同軸に配設されると共に、その内径が前記貫通孔10bより大きくなっている。また、ガイド筒12の外周面と横筒10の内周面との間には隙間があいている。
【0016】
また、ヘッド本体5の周壁部3の内周面には、環状突部3bが突設されており、この環状突部3bは、前記装着筒部材9を下側から支持している。図示の例では、装着筒部材9には、装着筒8より大径で且つ天壁部7の外周縁部に上下方向に沿って延設された案内筒13が備えられ、装着筒部材9は、この案内筒13の下端縁が環状突部3bにより下側から支持され且つこの案内筒13がヘッド本体5に対して相対的に上昇摺動可能に嵌合されて配置されている。なお、図示の例では、環状突部3bは、周壁部3の下端部における内周面にその全周に亘って突設されている。また、図示の例では、天壁部7の外径は、周壁部3の内径と同等になっている。また、図示の例では、案内筒13は、天壁部7の外周縁部から下方に向けて延設され、案内筒13の長さは装着筒8の長さよりも短くなっている。
【0017】
また、図示の例では、装着筒部材9の装着筒8内には、ステム6の上端部が嵌合されている。また、天壁部7の上面には、装着筒8よりも小径で且つ前記第1軸線L1と同軸に配置された摺動筒14が立設されている。この摺動筒14の上端部は上方に向かうに従い漸次拡径しており、摺動筒14は、横筒10のシリンダ11内にこのシリンダ11に対して相対的に上昇摺動可能に嵌合されている。
また、装着筒8および摺動筒14はそれぞれ、天壁部7の径方向中央部に形成された貫通孔7aの開口周縁部に配置され、摺動筒14は貫通孔7aを介してステム6の内部と連通している。
【0018】
ノズル部4は、周壁部3に前方に向けて延設された第1ノズル筒部15と、第1ノズル筒部15と連通すると共に第1ノズル筒部15から下方に向けて延設され、下方に向けて開口するノズル孔16が形成された第2ノズル筒部17と、を備えている。図示の例では、ノズル部4は、頂壁部2及び周壁部3とは別部材により構成され、周壁部3に形成された前記貫通孔3aを通して横筒10内に嵌合されている。
【0019】
第1ノズル筒部15は、前記第2軸線L2と同軸に配設されており、第1ノズル筒部15の後端部は、前記貫通孔3aを通して横筒10内に嵌合されている。また、図示の例では、第1ノズル筒部15において周壁部3から前方に突出している部分の突出量は、周壁部3の前後方向に沿った大きさである周壁部3の外径よりも大きくなっており、例えば前記突出量は前記外径の約1.1倍となっている。また、図示の例では、第1ノズル筒部15において、前端部から前後方向の中間部までに位置する縮径部分15dの内径は、前記中間部より後側に位置する部分の内径より小さくなっており、後述する移動部材23の前後動をガイドすることが可能となっている。更に、前記縮径部分15dの内周面には、前記第2軸線L2方向に沿った流通溝15cが、前記第2軸線L2回りに間隔をあけて複数形成されている。
また、図示の例では、第1ノズル筒部15には、前記貫通孔3aの開口周縁部に当接する環状の鍔部15aが形成されている。
【0020】
図示の例では、第2ノズル筒部17は、第1ノズル筒部15の前端部の下面に連設される本体筒部18と、この本体筒部18内に装着された装着筒部19と、を備えている。
第1ノズル筒部15の前端部の下面には、連通孔15bが形成されており、本体筒部18は、この連通孔15bの中心軸線と同軸で、且つその内径が連通孔15bより大径に形成されている。また、図示の例では、本体筒部18の外周面の前側部分は、第1ノズル筒部15の前端面と面一に形成されている。つまり、第1ノズル筒部15と本体筒部18とは、全体として前端部が下方に屈曲されたL字状の筒状体に形成されている。なお、前記連通孔15b及び本体筒部18の共通軸を、以下では第3軸線L3と称する。
【0021】
装着筒部19は、本体筒部18内に嵌合されることでこの本体筒部18に装着されている。装着筒部19において本体筒部18内に嵌合されている嵌合部分19aの内径は、前記連通孔15bの大きさと同等とされており、第1ノズル筒部15において前記連通孔15bを画成する周壁面と、嵌合部分19aの内周面とは面一となっている。
また、装着筒部19において嵌合部分19aより下側の部分は、本体筒部18の下端から下方に突出した突出部分19bとなっており、この突出部分19bの下端に前記ノズル孔16が形成されている。突出部分19bは、下方に向かうに連れて漸次縮径しており、ノズル孔16の内径は、前記嵌合部分19aの内径より小さくなっている。
【0022】
また、突出部分19bの内周面には、第1段部19c及び第2段部19dが下方から上方に向けてこの順に形成されている。第1段部19cは、ノズル孔16の開口縁部に形成され、第1段部19cの外周縁部は、第2段部19dと傾斜面を介して連なっている。また、第2段部19dは、前記嵌合部分19aの内周面の下端と凹曲面を介して連なっている。
【0023】
また、第2ノズル筒部17内には、ノズル孔16を閉塞する栓体20が上方付勢状態で挿通されている。また、本実施形態では、栓体20の上端部における外面には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第1傾斜面20aが形成されている。
図示の例では、栓体20は、上下方向に延びる棒状に形成されていると共に、前記第3軸線L3と同軸に配設されている。また、栓体20の下端部は、下方に向かうに従い漸次縮径していると共に、ノズル孔16を閉塞している。
【0024】
また、栓体20の上端部は、上方に向かうに従い漸次縮径すると共に、上端面20bが前記第3軸線L3に直交する平坦面になるように形成されている。これにより、上端部における外面の後側部分が前記第1傾斜面20aとなっている。
また、栓体20の外径は、その上下方向の全域に亘って装着筒部19の嵌合部分19aの内径より小さくなっており、栓体20の外周面と装着筒部19の嵌合部分19aの内周面との間には、隙間があいている。
【0025】
また、図示の例では、栓体20には、その径方向の外側に向けて突出される支持片21が形成されている。支持片21は、栓体20の外面において上端部と連なる部分に形成されている。また、支持片21は、その先端が装着筒部19の嵌合部分19aの内周面に摺接するように形成されている。また、図示の例では、支持片21は、前記第3軸線L3回りに互いに等間隔をあけて複数(例えば4つ)設けられている。
そして、これら支持片21と、装着筒部19の第2段部19dとの間には、コイルスプリング22が介装されており、このコイルスプリング22によって栓体20が上方付勢状態とされている。
【0026】
また、第1ノズル筒部15内には、栓体20を上側から支持する移動部材23が挿通されている。本実施形態では、移動部材23は、前後方向に延びる棒状に形成されている。
移動部材23は、前記第2軸線L2と同軸に配設されている。また、図示の例では、第1ノズル筒部15内に挿通されている部分である挿通部分の外径は、前後方向の位置に寄らず一定であり、第1ノズル筒部15の前記縮径部分15dの内径と同等若しくは若干小さくなっている。
【0027】
また、本実施形態では、移動部材23の前端部には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第2傾斜面23aが形成されている。図示の例では、移動部材23の前端部は、第2ノズル筒部17の上方に位置し、前記前端部には、前記第2軸線L2より上側に位置する部分に前記第2軸線L2に直交する平坦面23bが形成され、前記第2軸線L2より下側に位置する部分に前記第2傾斜面23aが形成されている。更に、これら平坦面23bと第2傾斜面23aとは、前記第2軸線L2上に位置すると共に前記第3軸線L3と直交する平坦面23cによって連なっている。また、図示の例では、移動部材23において第2傾斜面23aに後側から連なる部分23eと、栓体20の上端面20bとが当接しており、これにより移動部材23は栓体20を上側から支持している。また、図示の例では、押下ヘッド1の縦断面視において、第2傾斜面23aと第1傾斜面20aとは互いに平行になっている。
【0028】
また、図示の例では、移動部材23の後端部は、横筒10の後端壁10aに形成された貫通孔10bから、前記後端壁10aと周壁部3の後部における内面との間に設けられた前記隙間Aに突出している。なお、前記後端部には、凹溝23dがその全周に亘って形成されている。
移動部材23における前記挿通部分の後端の外周面には、後方に向けて漸次拡径したスカート状部24が設けられ、更にこのスカート状部24の後端縁には、径方向外方に折り返されて前方に向けて延びる逆スカート状部25が連設されている。そして、この逆スカート状部25がガイド筒12の内周面に後退摺動可能に嵌合されている。
【0029】
また、押下ヘッド1は、ヘッド本体5の押下により移動部材23を後方に向けて移動させると共に、前記押下の解除により移動部材23を前方に向けて移動させる移動機構26を更に備えている。本実施形態では、移動機構26は、移動部材23を前方に向けて付勢するコイルスプリング(弾性部材)27と、移動部材23の前記後端部に連結された梃子部材28と、を備えている。
【0030】
コイルスプリング27は、移動部材23の外周面におけるスカート状部24の連結部分と、横筒10の後端壁10aとの間に介装されており、これにより移動部材23を前方に向けて付勢している。
梃子部材28は、下方に向かうに従い前方に向けて屈曲させられてその下端部が天壁部7上に配置され、且つ装着筒部材9に対するヘッド本体5の押下時に移動部材23を後方に向けて移動させるように揺動可能に支持されている。
【0031】
図示の例では、梃子部材28は、押下ヘッド1の縦断面視において、上下方向に長い長方形状に形成された第1平板部29と、上方から下方に向かうに従い漸次前方に向かう傾斜方向に長い長方形状に形成された第2平板部30と、を備え、第1平板部29の下端と第2平板部30の上端とが連結されてL字状をなしている。そして、これらの第1平板部29と第2平板部30との連結部分において、前後方向および上下方向の双方に直交する直交方向の両端部に、前記直交方向に向けてピン部材31が各別に突設されている。
【0032】
第1平板部29の上部において前記直交方向の中央部には、前後方向に貫通しかつ上方に向けて開口する第1切り欠き部32が形成されており、この第1切り欠き部32内に、移動部材23の前記凹溝23dが嵌合されている。
第2平板部30の下部において前記直交方向の中央部には、上下方向に貫通しかつ前方に向けて開口する第2切り欠き部33が形成されており、この第2切り欠き部33内に、装着筒部材9の摺動筒14およびヘッド本体5のシリンダ11が配置されている。
【0033】
ここで、ピン部材31は、ヘッド本体5内に設けられた一対の軸受34に回転自在に支持されている。これらの軸受34は、周壁部3の内周面において横筒10の直下に位置する部分に嵌着された取り付け板35と一体に形成されている。即ち、軸受34は、取り付け板35の下面において前記隙間Aの直下に位置する部分に前記直交方向に間隔をあけて垂設された一対の板状体とされ、各板状体において前記直交方向に貫通された軸受け孔34aが形成されて構成されている。
そして、一対の軸受34の各軸受け孔34aにピン部材31を各別に挿入することにより、梃子部材28がピン部材31回りに揺動するようになっている。
なお、取り付け板35には、梃子部材28の第1平板部29をピン部材31回りに前後方向に揺動可能に挿通させる窓孔35aが形成されている。
【0034】
また、移動部材23の後端縁と周壁部3の後部における内面との間の隙間の前後方向に沿った大きさW1は、移動部材23の第2傾斜面23aに後側から連なる部分23eと、栓体20の上端面20bとが当接する当接範囲の前後方向に沿った大きさW2よりも大きくなっている。更に、前記隙間の大きさW1は、移動部材23における前記当接範囲の後端から移動部材23の前端までの前後方向に沿った大きさW3よりも小さくなっている。
【0035】
また、本実施形態では、装着筒部材9に対するヘッド本体5の押下抗力が、ステム6の押下抗力よりも小さくなっている。この際、例えば、ステム6の上方付勢力を、移動部材23を前方付勢するコイルスプリング27の付勢力、栓体20を上方付勢するコイルスプリング22の付勢力等を適宜設定したり、或いは摺動筒14とシリンダ11との間の摩擦力や梃子部材28の揺動時に発生する摩擦力等を適宜設定したりする等して各押下抗力を調整する。
【0036】
次に、以上に示した押下ヘッド1の作用について説明する。以下では、押下ヘッド1が、図示しない内容物が充填された図示しない吐出器に装着された場合について説明する。
まず、ヘッド本体5の頂壁部2を指等で押圧し、ヘッド本体5を押下する。この際、装着筒部材9に対するヘッド本体5の押下抗力が、ステム6の押下抗力よりも小さくなっているので、装着筒部材9は動かずに、梃子部材28の第2平板部30の下端部が装着筒部材9の天壁部7の上面に当接した状態で梃子部材28のピン部材31が下降する。このため、梃子部材28は、その下端部が天壁部7上を前方に向けて摺動し且つ第1平板部29の上端部が後方に移動するようにピン部材31周りに揺動される。このとき、第1平板部29の第1切り欠き部32が移動部材23の凹溝23dに嵌合されているため、揺動する梃子部材28により移動部材23の後端部が後方に引っ張られ、移動部材23は、コイルスプリング22による前方への付勢力に抗して後方に向けて移動する。
【0037】
なおこの際、ヘッド本体5の周壁部3が装着筒部材9の案内筒13に沿って下方へ摺動すると共に、ヘッド本体5のシリンダ11が装着筒部材9の摺動筒14に沿って下方へ摺動する。このため、ヘッド本体5は、前記第1軸線L1方向に沿って下降する。
また、移動部材23が後方に引っ張られたとき、移動部材23の逆スカート状部25が横筒10のガイド筒12の内周面上を摺動すると共に、移動部材23の前記挿通部分が第1ノズル筒部15の前記縮径部分15dの内周面上を摺動する。このため、移動部材23は、前記第2軸線L2方向に沿って後方に向けて移動する。
【0038】
また、移動部材23は、移動部材23において第2傾斜面23aに後側から連なる部分23eと、栓体20の上端面20bとを摺接させながら、後方に向けて移動する。この段階では、栓体20は、移動部材23において第2傾斜面23aに後側から連なる部分23eに支持されているので上方に向けて移動することは無く、ノズル孔16は閉塞されたままとなっている。
【0039】
続いて、ヘッド本体5を更に押下して移動部材23の後方に向けた移動量が大きさW2を超えると、移動部材23において第2傾斜面23aに後側から連なる部分23eによる栓体20の支持が解除される。本実施形態では、栓体20の上端面20bには、後側から第1傾斜面20aが連なっているので、栓体20は、前述の支持が解除された直後に第1傾斜面20aの上端と第2傾斜面23aの下端とが当接するように、その上方付勢力により上方に向けて移動させられる。
【0040】
続いて、ヘッド本体5を更に押下していくと、梃子部材28により移動部材23が更に後方に向けて移動させられる。この際、第1傾斜面20aと第2傾斜面23aとが当接しているので、栓体20は、両傾斜面20a、23aを摺接させながら、第2傾斜面23aに沿って摺り上るように上方に向けて移動する。これにより、栓体20がノズル孔16から離間し、ノズル孔16が開口される。
【0041】
そして、図2に示すように、移動部材23の後方に向けた移動量が大きさW1となり、移動部材23の後端縁がヘッド本体5の周壁部3の内周面に当接するまでヘッド本体5を押下すると、梃子部材28の揺動が規制される。これにより、装着筒部材9が、梃子部材28により下向きに押圧されてヘッド本体5と共に下降し、押下ヘッド1全体が押下される。なおこの際、図2に示すように、本実施形態では、栓体20と移動部材23とは、互いに第1傾斜面20a及び第2傾斜面23aで当接している。
【0042】
また、上述したように装着筒部材9が下降すると、装着筒部材9の装着筒8に嵌合されたステム6が押下される。これにより、吐出器内に収容された内容物が、ステム6内、摺動筒14部内、横筒10内及びノズル部4内を流通し、ノズル孔16から吐出される。なおこの際、内容物は、例えば第1ノズル筒部15内においては移動部材23の外表面と流通溝15cとの間に画成された流路を流通し、第2ノズル筒部17内においては栓体20の外周面と装着筒部19の内周面との間に画成された流路を流通する等して、ノズル部4内をノズル孔16に向けて流通する。
【0043】
次に、ヘッド本体5の頂壁部2に対する前述の押下を解除すると、ステム6の上方付勢力によりヘッド本体5が装着筒部材9と共に上昇し、且つコイルスプリング27の弾性復元力により移動部材23が梃子部材28の上端部と共に前方へ移動する。
ここで、本実施形態では、前述の押下が解除された時点において第1傾斜面20aと第2傾斜面23aとが当接しているので、移動部材23の前方への移動に伴い、栓体20は、両傾斜面20a、23aを摺接させながら、コイルスプリング22による上方付勢力に抗して第2傾斜面23aに沿って摺り落ちるように下方に向けて押し下げられる。これにより、栓体20がノズル孔16に接近し、ノズル孔16が閉塞される。
【0044】
なお、移動部材23の前方への移動に伴い梃子部材28の第1平板部29の上端部が前方に向けて移動することで、梃子部材28は、その下端部が装着筒部材9の天壁部7を後方に向けて移動しつつ、この天壁部7を下方に押圧するようにピン部材31回りに揺動すし、ヘッド本体5を装着筒部材9に対して上方に押し上げる。そして、ヘッド本体5は、この梃子部材28による押し上げと、前述したステム6の上方付勢力とにより、第1軸線L1方向に沿って押下される前の位置まで上昇させられる。
【0045】
以上に示した押下ヘッド1によれば、下方に向けて開口するノズル孔16を開閉することが可能となり、ステム6内、摺動筒14部内、横筒10内及びノズル部4内を流通した吐出器内の内容物を下方に向けて吐出させることができる。これにより、吐出器を傾けることなく内容物を下方に向けて吐出させることができるので、操作時に例えば一方の手でヘッド本体5を押下して、ノズル孔16から吐出された内容物を他方の手で受け取ること等が可能となる。
【0046】
また、この押下ヘッド1では、移動部材23が前後方向へ移動し、更に栓体20が上下方向へ移動しており、移動部材23及び栓体20のいずれの移動も一定方向に沿った直線的な移動であるので、開閉動作における作動不良の発生を抑制することができる。
また、コイルスプリング27及び梃子部材28からなる移動機構26を備えているので、移動部材23を確実に前後方向に移動させることが可能となり、ノズル孔16の開閉動作における作動不良の発生を確実に抑制することができる。
【0047】
また、移動機構26により移動部材23が後方或いは前方に向けて移動させられるときに第1傾斜面20aと第2傾斜面23aとが当接するので、栓体20と移動部材23とを円滑に摺動させることができる。従って、移動部材23の移動に伴い栓体20を上方或いは下方に向けて円滑に移動させることができるので、ノズル孔16の開閉動作における作動不良の発生をより一層確実に抑制することができる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、この押下ヘッド1を装着する吐出器としては、例えばシリンダやピストンを有するポンプやエアゾール式の吐出器等、その形態は適宜選択しても良い。
【0049】
また、前記実施形態では、ヘッド本体5を押下する過程で、移動部材23の後端縁がヘッド本体5の周壁部3の内周面に当接するまでヘッド本体5を押下すると梃子部材28の揺動が規制されるものとしたが、梃子部材28の揺動の規制方法はこれに限られない。例えば、前記内周面と梃子部材28の第1平板部29の上端部とが当接することで規制しても良く、ヘッド本体5のシリンダ11の上下方向に沿った長さを調節してこのシリンダ11の下端が装着筒部材9の天壁部7の上面に当接することで規制しても良く、また、前述した各方法を組み合わせて規制しても良い。
【0050】
また、前記実施形態では、移動機構26は、コイルスプリング27と梃子部材28とを備えるものとしたが、これに限られるものではない。
また、前記実施形態では、移動部材23及び栓体20をいずれも棒状としたが、これらに限られるものではない。例えば、栓体20が球状であっても良い。
【0051】
また、前記実施形態では、栓体20及び移動部材23には第1傾斜面20a及び第2傾斜面23aがそれぞれ形成され、移動機構26により移動部材23が後方或いは前方に向けて移動させられるときに両傾斜面20a、23aが当接するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、栓体20及び移動部材23のいずれか一方にのみ傾斜面が形成され、移動機構26による移動部材23による移動時に前記傾斜面が栓体20及び移動部材23のいずれか他方に当接するものとしても良い。更に、当接する面は凸曲面や凹曲面等であっても良い。
【0052】
また、前記実施形態では、ノズル部4と、頂壁部2及び周壁部3とが別部材で構成されるものとしたが、同一部材で一体に構成されていても良い。
また、前記実施形態では、装着筒部材9に案内筒13が備えられているものとしたが、案内筒13は無くても良い。また、案内筒13の形態は前記実施形態に示したものに限られず、例えば天壁部7の外周縁部から上方に延設された案内筒としても良い。
【0053】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る押下ヘッドの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す押下ヘッドのヘッド本体を押下した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 押下ヘッド
2 頂壁部
3 周壁部
4 ノズル部
5 ヘッド本体
6 ステム
7 天壁部
8 装着筒
9 装着筒部材
15 第1ノズル筒部
17 第2ノズル筒部
20 栓体
20a 第1傾斜面
23 移動部材
23a 第2傾斜面
26 移動機構
27 コイルスプリング(弾性部材)
28 梃子部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂壁部、この頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設された周壁部、及びノズル部を有するヘッド本体を備え、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立した吐出器に装着される押下ヘッドであって、
前記ノズル部は、前記周壁部に前方に向けて延設された第1ノズル筒部と、前記第1ノズル筒部と連通すると共に前記第1ノズル筒部に下方に向けて延設され、下方に向けて開口するノズル孔が形成された第2ノズル筒部と、を備え、
前記第2ノズル筒部内には、前記ノズル孔を閉塞する栓体が上方付勢状態で挿通され、
前記第1ノズル筒部内には、前記栓体を上側から支持する移動部材が挿通され、
前記ヘッド本体の押下により前記移動部材を後方に向けて移動させると共に、前記押下の解除により前記移動部材を前方に向けて移動させる移動機構を備え、
前記栓体は、前記移動部材の後方に向けた移動に伴いその上方付勢力により上方に向けて移動させられると共に、前記移動部材の前方に向けた移動に伴い下方に向けて押し込まれることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の押下ヘッドであって、
天壁部、及びこの天壁部の下面から下方に向けて延設され前記ステムに連結される装着筒を有する装着筒部材を備え、
前記移動機構は、前記移動部材を前方に向けて付勢する弾性部材と、前記移動部材の後端部に連結された梃子部材と、を備え、
前記梃子部材は、下方に向かうに従い前方に向けて屈曲させられてその下端部が前記天壁部上に配置され、且つ前記装着筒部材に対する前記ヘッド本体の押下時に前記移動部材を後方に向けて移動させるように揺動可能に支持されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の押下ヘッドであって、
前記移動部材は、前後方向に延びる棒状に形成され、
前記栓体の外面には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第1傾斜面が形成され、
前記移動部材の前端部には、前側から後側に向かうに従い下方に向けて傾斜する第2傾斜面が形成され、
前記移動機構により前記移動部材が後方或いは前方に向けて移動させられるときに前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とが当接することを特徴とする押下ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−104890(P2010−104890A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278321(P2008−278321)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】