説明

押出し成形装置、押出し形材及び押出し成形方法

【課題】押出し形材の形状の自由度を向上すると共に押出し形材を精度良く成形できるようにする。
【解決手段】押出し成形装置は、第1案内面7bと、第1案内面7bの方向及び押出し形材の押出し方向に対して傾斜した方向に延びる第2案内面8aとを有するガイド部材5と、第1案内面7bに沿って移動する第1摺動面12aと、第1摺動面12aに対して傾斜した方向に延びる第2摺動面12bとを有し、第1案内面7bに沿って移動可能な駆動部材12と、駆動部材12の移動に応じて第2摺動面12bに沿って摺動する被スライド面10bと、駆動部材12の移動に応じて第2案内面8aに案内される被案内面10cと、押出し形材50の押出し方向に沿うように形成された押出し形材の成形面10aとを有する可動ダイス10と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し成形装置、押出し形材及び押出し成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び2に開示されているように、駆動部材によって可動ダイスを移動させることで押出し形材の厚み及び幅を変えることができる押出し成形装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された成形装置では、駆動部材が押出し方向に駆動される一方で、ダイスホルダに傾斜面が形成されている。そして、駆動部材が可動ダイスの下面を押し上げると、可動ダイスがダイスホルダの傾斜面に沿って移動し、可動ダイス間の間隔を狭めるようになっている。一方、特許文献2に開示された成形装置では、ダイガイドに傾斜面が形成されており、この傾斜面に沿って可動ダイスが移動するようになっている。可動ダイスは、ピボットレバーにピン結合された駆動部材と結合されており、ピボットレバーの揺動を受けてダイガイドの傾斜面の方向に移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−35822号公報
【特許文献1】特開2008−68268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の押出し成形装置では、駆動装置の駆動部材によって可動ダイスの下面を押し上げると、可動ダイスがダイスホルダの傾斜面に沿って移動するが、このとき可動ダイスは、駆動部材に対して側方に移動することになるため、可動ダイスが駆動部材に対して摺動する際に摩擦によるびびり振動が発生する場合があり、押出し形材を精度良く成形できないという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2の押出し成形装置では、可動ダイスが駆動部材とピン結合されているため、特許文献1のようなびびり振動を生じないが、ピボットレバーを駆動する駆動軸の移動速度に応じて駆動部材の移動速度が決定されてしまうので、可動ダイスの移動速度を調整するには、駆動軸(駆動源)の駆動速度を調整する以外に方策はない。このため、成形する押出し形材の形状に制約がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形する押出し形材の形状の自由度を向上すると共に押出し形材を精度良く成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、第1案内面と、前記第1案内面の方向及び押出し形材の押出し方向に対して傾斜した方向に延びる第2案内面とを有するガイド部材と、前記第1案内面に沿って移動する第1摺動面と、前記第1摺動面に対して傾斜した方向に延びる第2摺動面とを有し、駆動源に駆動されることにより前記第1案内面に沿って移動可能な駆動部材と、前記駆動部材の移動に応じて前記駆動部材の前記第2摺動面に沿って摺動する被スライド面と、前記駆動部材の移動に応じて前記ガイド部材の前記第2案内面に案内される被案内面と、前記押出し形材の押出し方向に沿うように形成された押出し形材の成形面とを有する可動ダイスと、を備えている押出し成形装置である。
【0008】
本発明では、駆動部材の第1摺動面がガイド部材の第1案内面に沿うように駆動部材が移動すると、可動ダイスは、被スライド面が駆動部材の第2摺動面に対して摺動するとともに、被案内面がガイド部材の第2案内面に沿うように移動する。ガイド部材の第2案内面は押出し方向に対して傾斜した方向となっているため、可動ダイスが移動する際にびびり振動が生ずることなく、そして、可動ダイスが第2案内面に沿って移動するのに伴い、成形面は押出し方向に傾斜した方向に位置を変える。これにより、押し出される形材の幅が順次変化する。このとき、駆動部材の第2摺動面とガイド部材の第2案内面とがなす角度に応じて、駆動部材の移動速度に対する可動ダイスの移動速度の比が決まる。したがって、駆動部材の第2摺動面の向きとガイド部材の第2案内面の向きとを設定することにより、可動ダイスの移動速度を調整することができる。このため、成形する押出し形材の形状に応じて第2摺動面及び第2案内面の向きを設定することにより、押出し成形する形材の形状の自由度を向上させることができる。また可動ダイスの摺動時に摩擦によるびびり振動が生じないので、押出し形材を精度良く成形することができる。
【0009】
ここで、前記駆動部材には、前記可動ダイスの相対移動方向に沿って延びるガイド溝が形成されていてもよい。
【0010】
この態様では、押出し形材の押出し時のように可動ダイスに大きな力が作用する場合にも、可動ダイスの動きを安定させることができる。
【0011】
また、前記第1案内面及び第2案内面はそれぞれ2つずつ設けられていてもよく、この場合には、前記駆動部材及び前記可動ダイスは、それぞれ2つずつ設けられているのが好ましく、各可動ダイスの成形面によって押出し形材の一対の対向面が形成されるのが好ましい。この態様では、押出し形材の対向面をそれぞれ変化させることができる。
【0012】
本発明は、前記押出し成形装置によって押出し成形された押出し形材であって、押出し方向に直交する方向のうちの一方向における幅が、押出し方向に沿って変わる傾斜部を有する押出し形材である。
【0013】
本発明は、可動ダイスの成形面を通して押出し形材を押出し成形する成形方法であって、駆動源を駆動して、駆動部材の第1摺動面がガイド部材の第1案内面に沿うように前記駆動部材を押出し方向に移動させ、前記駆動部材の移動に応じて、前記駆動部材の第2摺動面に対して前記可動ダイスの被案内面をスライドさせて、前記第1案内面の方向及び押出し形材の押出し方向に対して傾斜した前記ガイド部材の第2案内面に沿うように前記可動ダイスを案内し、前記可動ダイスの成形面の位置を変えながら押出し形材を押出し成形する押出し成形方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、成形する押出し形材の形状の自由度を向上すると共に押出し形材を精度良く成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る押出し成形装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】前記押出し成形装置に設けられた一方の駆動部材及び可動ダイスを示す斜視図である。
【図3】前記駆動部材が下位置にある場合の前記押出し成形装置の成形部を示す断面図である。
【図4】前記駆動部材が上位置にある場合の前記押出し成形装置の成形部を示す断面図である。
【図5】前記押出し成形装置によって成形された形材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態による押出し成形装置の全体構成を示している。本実施形態による押出し成形装置(以下、単に成形装置という)は、同図に示すように、ビレット(図示省略)を装填可能なコンテナ2と、コンテナ2内のビレットを押圧するためのステム4と、ガイド部材5と、固定ダイス6と、一対の可動ダイス10,10と、一対の駆動部材12,12と、一対の駆動機構14,14とを備えている。この成形装置では、コンテナ2にビレットを装填し、このコンテナ2内のビレットをステム4で押し出すようになっている。
【0018】
ガイド部材5は、可動ダイス10及び駆動部材12の移動時にそれらをガイドするための部位であり、ホルダ部7とダイガイド8とを備えている。固定ダイス6は、コンテナ2の押出し側端部に配置されるとともに、コンテナ2とダイガイド8及びホルダ部7との間に固定されている。
【0019】
固定ダイス6には、押出し方向(Z方向)に貫通する貫通孔6a(図3参照)が設けられている。コンテナ2内のビレットは、この貫通孔6aを通って可動ダイス10及びダイガイド8によって区画される成形空間S1内に押し出される。本実施形態では、この貫通孔6aは、矩形の内孔50aを形成可能に構成されている。
【0020】
ホルダ部7は、ダイガイド8と一体的に形成されており、固定ダイス6の押出し側に配置されている。ホルダ部7には、一対の駆動部材12,12が挿入可能なガイド孔7aが形成されている。ガイド孔7aは、押出し方向に延びるように形成されており、その方向に直交する方向の断面形状が押出し方向に一定となっている。ホルダ部7におけるガイド孔7aの内周面は、駆動部材12を案内する第1案内面7bとして機能する。
【0021】
ダイガイド8は、固定ダイス6の押出し側の端部に隣接している。ダイガイド8は、図3にも示すように、押出し方向に成形空間S1が貫通する筒状に形成されるとともに、一対の可動ダイス10を挿通させる一対の挿通空間S2が成形空間S1に連通するように形成されている。挿通空間S2は互いに対称となる形状の空間である。
【0022】
成形空間S1は、上流側の端部において固定ダイス6の貫通孔6aに連通しており、押出し方向に長い空間である。成形空間S1は、図3の手前側及び奥側の内面(ダイガイド8の内面)が押出し方向に平行な平面に形成されている。すなわち、図3の紙面垂直方向(Y方向)における成形空間S1の幅は、押出し方向に沿って一定となっている。
【0023】
各挿通空間S2は、可動ダイス10を挿通させる空間であり、挿通空間S2の内端部は、Y方向に直交するX方向に対向するダイガイド8の内面に開口している。そして、挿通空間S2は、押出し方向の下流側へ向かうに従って成形空間S1から遠ざかるように傾斜方向に延びている。ダイガイド8における挿通空間S2の内周面は、第1案内面7bの方向及び押出し形材50の押出し方向に対して傾斜した方向に延びる第2案内面8aとして機能する。
【0024】
両可動ダイス10,10は、互いに対称な形状に形成されており、断面矩形状で長手方向に沿って幅が一定となっている。可動ダイス10は、それぞれ成形面10aと被スライド面10bと被案内面10cとを有している。可動ダイス10は、成形面10aがX方向の内側に位置する姿勢で挿通空間S2に挿入されており、挿通空間S2の内周面(第2案内面)8aに沿ってスライド可能となっている。
【0025】
成形面10aは、成形空間S1内で形材を成形する部分であり、押出し方向にわずかな幅を有し、押出し方向に平行となっている。両可動ダイス10,10の成形面10a,10a間の間隙をビレットが通過することにより、押出し形材が成形されるようになっている。また、成形面10aは、可動ダイス10が上記のように移動するのに応じて押出し方向に対して傾斜した方向に移動するようになっている。したがって、押出し形材50の一方向の幅は、可動ダイス10の移動に応じて変わる。
【0026】
被スライド面10bは、駆動部材12の押出し方向の動きを押出し方向から傾斜した方向に変換するための面であり、駆動部材12の第2摺動面12b(後述)に沿って摺動可能となっている。被スライド面10bは、可動ダイス10の外端面によって形成されており、この被スライド面10bは、押出し方向に対して傾斜し、かつ形材50の移動方向とは反対方向に向かうにしたがって成形空間S1から遠ざかる方向に延びるように形成されている。被スライド面10bには、図2に示すように、Y方向に突出した状態で、形材の移動方向とは反対方向に向かうにしたがって成形空間S1から遠ざかる方向に沿って延びるように突条部10dが形成されている。
【0027】
被案内面10cは、ダイガイド8に形成された挿通空間S2の内周面(第2案内面)8aによって案内される部分である。この被案内面10cは、成形面10aと被スライド面10bとの間に形成されており、挿通空間S2の内周面8aに摺接している。
【0028】
一対の駆動部材12,12は、それぞれ駆動機構14の後述するピボットレバー20の揺動を受けて可動ダイス10を駆動する。両駆動部材12,12は互いに対称に形成されている。
【0029】
各駆動部材12は、第1摺動面12aと第2摺動面12bとを有する。第1摺動面12aは、押出し方向に平行な方向に延びており、ホルダ部7におけるガイド孔7aの内周面(第1案内面)7bに摺接している。第2摺動面12bは、第1摺動面12aに対して傾斜した方向に延びている。具体的には、第2摺動面12bは、押出し方向の下流側へ向かうに従って互いに成形空間S1に近づくように傾斜している。この第2摺動面12bには、可動ダイス10の被スライド面10bをスライドさせるための部位である。駆動部材12がホルダ部7のガイド孔7aに沿って移動すると、可動ダイス10は、駆動部材12の移動量に応じた移動量だけ挿通空間S2内を移動する。駆動部材12が上方に移動すると、可動ダイス10は成形空間S1に向かって移動し、駆動部材12が下方に移動すると、可動ダイス10は成形空間S1から離れる方向に向かって移動する。
【0030】
駆動部材12の第2摺動面12bの傾斜角度、および可動ダイス10の被スライド面10bと被案内面10cとのなす角度を調整することにより、駆動部材12の駆動速度に対する可動ダイス10の移動速度の比を調整することができる。したがって、駆動源16(後述 )の駆動速度を調整することなく、可動ダイス10の移動速度を調整することが可能となる。
【0031】
図2にも示すように、駆動部材12の第2摺動面12bには、ガイド溝12cが形成されている。ガイド溝12cは、可動ダイス10の突条部10dをガイドするためのガイド部であり、押出し方向の下流側へ向かうに従って互いに成形空間S1に近づくように傾斜している。
【0032】
図1に示すように、駆動機構14は、各駆動部材12にそれぞれ対応するように一対に設けられている。駆動機構14は、可動ダイス10を移動させるべく駆動部材12を駆動するためのものであり、サーボモータ16(駆動源)と、サーボモータ16によって駆動される駆動軸18と、駆動軸18の駆動に連動して揺動するピボットレバー20と、ピボットレバー20の一端部にピン結合された連結部材22とを有する。連結部材22は、下端部がピボットレバー20にピン結合される一方、上端部が駆動部材12にピン結合されている。
【0033】
駆動軸18は、駆動部材12の延長線に対して形材の流通領域と反対側に向かって一端部から他端部へ向かって直線的に延びている。サーボモータ16は、駆動軸18の他端部に結合されている。これにより、サーボモータ16は、成形装置の外側に離れた位置に配置されている。そして、駆動軸18は、サーボモータ16の駆動によりその長手方向に進退移動するようになっている。
【0034】
ピボットレバー20は、その中間部に支軸部20bが設けられており、この支軸部20b回りに揺動可能に構成されている。ピボットレバー20は、支軸部20bから下方に延びる第1部位と、支軸部20bから側方に延びる第2部位とを有する。第1部位の下端部である第1端部20aには、駆動軸18の一端部が回動可能に結合されている。第2部位の先端部である第2端部20cには、連結部材22の下端部が回動可能に結合されている。これにより、ピボットレバー20は、駆動軸18の進退移動により、支軸部20bを支点として揺動する。そして、駆動部材12は、ピボットレバー20の揺動に伴って上下方向に移動する。
【0035】
なお、図1では、右側及び左側の駆動軸18が突出した位置にある一方で、左側の駆動部材12が上位置にあり、かつ右側の駆動部材12が下方に下がった位置にあるように便宜的に示している。駆動部材12が下がっている場合には、実際には、駆動軸18は引き込まれた位置となる。
【0036】
本実施形態の押出し成形装置では、例えば図4及び図5に示すような平行部51、52と傾斜部55とが押出し方向に連続するように形成された形材50を押出し成形することが可能である。なお、この押出し成形は、熱間押出しによって行う。本実施形態の成形装置によって形材50を成形するには、まずコンテナ2内にビレットを装填し、このビレットをステム4によって押出す。
【0037】
押出し時において図3に示すように、両駆動部材12,12が下がった位置(下位置)にあり、各可動ダイス10が駆動部材12の上端位置に接触した状態のときには、可動ダイス10の成形面10aが互いに遠ざかった状態となる。この状態では、幅広の平行部51が押出されることになる。なお、このとき、駆動軸18は、引き込まれた状態となっている。
【0038】
そして、サーボモータ16の駆動により駆動軸18を徐々に突出させると、ピボットレバー20が揺動し、それを受けて駆動部材12は、ホルダ部7のガイド孔7aにガイドされながら上側へ徐々に移動する。これにより、可動ダイス10は、突条部10dがガイド溝12cに案内されて駆動部材12の第2摺動面12bに対して変位しつつ、挿通空間S2内を前進する。これにより、両可動ダイス10,10の成形面10a,10a間の間隙が次第に狭くなるため、それに伴って押出される形材50の幅が次第に狭くなる。このようにして傾斜部55が成形される。
【0039】
次に、図3の状態から図4の状態となり、駆動部材12が停止した状態で固定されると、可動ダイス10は、前進位置で静止し、この状態で形材50を押出すと、形材50は一定の幅で押出される。このときは幅の狭い平行部52が押出されることになる。なお、平行部51、傾斜部55、平行部52は、一方向の幅が異なるが、この方向と直交する方向の幅は一定である。また、形材50の内孔は、平行部51、傾斜部55および平行部52において一定の断面となっている。すなわち、この形材50は、内孔50aの断面積が長さ方向に亘って一定で、平行部51と平行部52とでは一方向の厚みが異なっている。
【0040】
なお、幅の狭い平行部52に引き続いて傾斜部55及び幅の広い平行部51を形成するには、上記とは逆に駆動部材12を駆動することにより行えばよい。すなわち、駆動軸18を突出位置に固定した状態で可動ダイス10を前進位置に静止させることにより形材50を押出した後、駆動軸18を徐々に引き込む。これにより、ピボットレバー20が揺動して、駆動部材12が上位置から下位置に徐々に移動するため、これに伴い、可動ダイス10は、前進位置から徐々に後退する。このとき、突条部10dが駆動部材12のガイド溝12cに係合していることにより、可動ダイス10は、駆動部材12の第2摺動面12bに対してスライドする。これにより、成形面10a,10a間の間隙が次第に広くなり、それに伴って押出される形材50の幅が次第に広くなる。このようにして傾斜部55が成形される。その後、可動ダイス10が後退位置に固定されると、再び平行部51が押出されることになる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の押出し成形装置では、駆動部材12の第1摺動面12aがガイド部材5(ホルダ部7)の第1案内面7bに沿うように駆動部材12が移動すると、可動ダイス10は、被スライド面10bが駆動部材12の第2摺動面12bに対して摺動するとともに、被案内面がガイド部材5の第2案内面8aに沿うように移動する。ガイド部材5(ダイガイド8)の第2案内面8aは押出し方向に対して傾斜した方向となっているため、可動ダイス10が移動する際にびびり振動が生ずることなく、そして、可動ダイス10が第2案内面8aに沿って移動するのに伴い、成形面10aは押出し方向に傾斜した方向に位置を変える。これにより、押し出される形材50の幅が順次変化する。このとき、駆動部材12の第2摺動面12bとガイド部材5の第2案内面8aとがなす角度に応じて、駆動部材12の移動速度に対する可動ダイス10の移動速度の比が決まる。したがって、駆動部材12の第2摺動面12bの向きとガイド部材5の第2案内面の向きとを設定することにより、可動ダイス10の移動速度を調整することができる。このため、成形する押出し形材50の形状に応じて第2摺動面12b及び第2案内面8aの向きを設定することにより、押出し成形する形材50の形状の自由度を向上させることができる。また可動ダイス10の摺動時に摩擦によるびびり振動が生じないので、押出し形材50を精度良く成形することができる。
【0042】
また本実施形態では、駆動部材12には、可動ダイス10の相対移動方向に沿って延びるガイド溝12cが形成されているので、押出し形材50の押出し時のように可動ダイス10に大きな力が作用する場合にも、可動ダイス10の動きを安定させることができる。
【0043】
また本実施形態では、駆動部材12及び可動ダイス10は、それぞれ2つずつ設けられているので、押出し形材50の対向面をそれぞれ変化させることができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、ピボットレバー20及び連結部材22を介して駆動源16の駆動力を駆動部材12に伝達する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、駆動軸18が上下方向に直線的に駆動される構成として、この駆動軸18に駆動部材12を連結するようにしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、矩形筒状の形材50を押し出す構成としたが、これに代え、中実状の形材を押出す構成としてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、左側の可動ダイス10と右側の可動ダイス10とを同じように動かして左右対称の形状の押出し形材50を形成するようにしたが、これに限られるものではない。左右の可動ダイス10,10の移動量を異ならせることにより、左右非対称の形材を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
S1 成形空間
S2 挿通空間
2 コンテナ
4 ステム
5 ガイド部材
6 固定ダイス
6a 貫通孔
7 ホルダ部
7a ガイド孔
7b 第1案内面
8 ダイガイド
8a 第2案内面
10 可動ダイス
10a 成形面
10b 被スライド面
10c 被案内面
10d 突条部
12 駆動部材
12a 第1摺動面
12b 第2摺動面
12c ガイド溝
14 駆動機構
16 サーボモータ(駆動源)
18 駆動軸
20 ピボットレバー
22 連結部材
50 形材
50a 内孔
51 平行部
52 平行部
55 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1案内面と、前記第1案内面の方向及び押出し形材の押出し方向に対して傾斜した方向に延びる第2案内面とを有するガイド部材と、
前記第1案内面に沿って移動する第1摺動面と、前記第1摺動面に対して傾斜した方向に延びる第2摺動面とを有し、駆動源に駆動されることにより前記第1案内面に沿って移動可能な駆動部材と、
前記駆動部材の移動に応じて前記駆動部材の前記第2摺動面に沿って摺動する被スライド面と、前記駆動部材の移動に応じて前記ガイド部材の前記第2案内面に案内される被案内面と、前記押出し形材の押出し方向に沿うように形成された押出し形材の成形面とを有する可動ダイスと、
を備えている押出し成形装置。
【請求項2】
前記駆動部材には、前記可動ダイスの相対移動方向に沿って延びるガイド溝が形成されている請求項1に記載の押出し成形装置。
【請求項3】
前記第1案内面及び第2案内面はそれぞれ2つずつ設けられ、
前記駆動部材及び前記可動ダイスは、それぞれ2つずつ設けられ、各可動ダイスの成形面によって押出し形材の一対の対向面が形成される請求項1又は2に記載の押出し成形装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載された押出し成形装置によって押出し成形された押出し形材であって、押出し方向に直交する方向のうちの一方向における幅が、押出し方向に沿って変わる傾斜部を有する押出し形材。
【請求項5】
可動ダイスの成形面を通して押出し形材を押出し成形する成形方法であって、
駆動源を駆動して、駆動部材の第1摺動面がガイド部材の第1案内面に沿うように前記駆動部材を押出し方向に移動させ、
前記駆動部材の移動に応じて、前記駆動部材の第2摺動面に対して前記可動ダイスの被案内面をスライドさせて、前記第1案内面の方向及び押出し形材の押出し方向に対して傾斜した前記ガイド部材の第2案内面に沿うように前記可動ダイスを案内し、
前記可動ダイスの成形面の位置を変えながら押出し形材を押出し成形する
押出し成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173145(P2011−173145A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38416(P2010−38416)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】