説明

押出し金型

【課題】チューブに設けられた各流路の口径や流路間の肉厚が其々異なる場合や、膨出部
分と直線部分が入り混じっている場合等、流路の構成や外面の形状が複雑となっても押出
し孔の形状に見合った樹脂成形部材を正確に押出し可能な押出し金型を提供することを目
的とする。
【解決手段】吐出孔より樹脂成形部材を押出すようにした押出し金型において、前記金型
は、吐出孔先端より後退した位置の内周面を凹状に成形し、吐出孔上流側に樹脂滞溜ゾー
ンを備え、この樹脂滞溜ゾーンに一旦留めた樹脂成形部材を吐出孔を介して押出す構成の
押出し金型とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に関し、より詳細には押出成形により成形される樹脂成形部材を製造す
る場合に用いられる押出し金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば樹脂成形部材としてのプリンタ装置に用いられる可撓性の平板状インクチ
ューブ100は、図7(a)に示す如く、長手方向に連続して形成される流路115を複
数備える。図8に示す如く所定長さに切断されたインクチューブ100(6連チューブ)
は、両端にコネクタ110a,110bを備え、一方のコネクタ110aがインクタンク
側の雌コネクタ111aに接続され、他方のコネクタ110bが雄コネクタ111bを介
してキャリッジ140側に接続されることによりJ字状乃至U字状に変形されながら用い
られる。
そして、インクタンク側のインクが流路115を通じてキャリッジ140により保持さ
れる図外の記録ヘッドに供給される。
前記インクチューブ100は、図7(b)に示す如く長手方向と直交する方向に並列的
に並ぶ同一口径の流路115を備え、互いに隣り合う流路115間の肉厚λを共通化する
ことにより、最外周の肉厚hよりも薄く形成して平板状のインクチューブ100の幅を可
能な限り幅狭に成形する。
このようなチューブ100は、押出し金型におけるチューブ100の断面形状に対応す
る押出し孔より溶融樹脂を押出すことにより、流路115を複数備えた長手状の多連チュ
ーブ100として形成される。また、各流路115の口径、肉厚λ、肉厚hの寸法は其々
等しくなるように形成されるのが一般的である。
しかし、例えば図1に示すように横配列の流路115a,115b,115c,115
dと、前記流路115a乃至115dから離隔して設けられる小径の流路115eとを備
えたチューブAのように、流路の口径や流路間の肉厚を其々異なるものに変更した形態の
チューブAを製造する場合には、押出時に薄肉部分120の方が膨出部分130よりも押
出し抵抗が大きくなることから十分な押出し量が得られず、この薄肉部分120に樹脂巣
が発生したり、表面が平坦にならないという欠点があった。さらに膨出部分130は断面
円形であり、薄肉部分120は、膨出部分130の一部から幅方向に直線状に延長する形
態であるので、薄肉部分120と膨出部分130との間の樹脂流動性が確保し難いという
問題もあった。また、小径の流路115eの薄肉部分150に溶融樹脂が十分に回り込ま
ないことから、押出し孔の外形に正確に見合う形状に成形されにくいという問題も生じて
いた。
【特許文献1】特開2006−007754
【特許文献2】特開2007−216580
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、チューブに設けられた各流路の口径や流路間の肉厚が其々異なる場合や、膨
出部分と直線部分が入り混じっている場合等、流路の構成や外面の形状が複雑となっても
押出し孔の形状に見合った樹脂成形部材を正確に押出し可能な押出し金型を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的を達成するためになされた本発明の第一の構成として、吐出孔より樹脂成形
部材を押出すようにした押出し金型において、前記金型は、吐出孔先端より後退した位置
の内周面を凹状に成形し、吐出孔上流側に樹脂滞溜ゾーンを備え、この樹脂滞溜ゾーンに
一旦留めた樹脂成形部材を吐出孔を介して押出す構成の押出し金型とした。
本構成からなる金型によれば、押出される樹脂成形部材が樹脂滞留ゾーンに留まった後
に吐出孔から押出されるため、吐出孔の形状を問わず、吐出孔の形状に見合った形状の樹
脂成形部材を得ることができる。
【0005】
また、第二の構成として、前記吐出孔は複数配列であり、前記樹脂滞留ゾーンは、前記
複数配列の吐出孔の全体を被う構成とした。
本構成からなる押出し金型によれば、複数配列された吐出孔から複数の独立した樹脂成
形部材を押出す場合であっても、押出される樹脂成形部材が樹脂滞留ゾーンに留まった後
に吐出孔から押出されるため、吐出孔の形状を問わず、吐出孔の形状に見合った形状の樹
脂成形部材を得ることができる。
【0006】
また、第三の構成として前記樹脂滞留ゾーンは、前記吐出孔を部分的に被う構成とした

本構成からなる押出し金型によれば、吐出孔全体のうち押出し孔の外形に正確に見合う
形状に成形されにくい吐出孔の部位に対応させて樹脂滞留ゾーンを設けることにより、効
率的に吐出孔の形状に見合った形状の樹脂成形部材を得ることができる。
また、第四の構成として、前記樹脂滞留ゾーンは、金型を構成する外型の内側に形成さ
れてなる構成とした。
本構成からなる押出し金型によれば、樹脂滞留ゾーンを容易に形成することが可能とな
る。
【0007】
また、第五の構成として前記吐出孔は、膨出部分と薄板部分とにより成る構成とした。
本構成からなる押出し金型によれば、膨出部分と薄板部分とを備えた所謂異形の樹脂成
形部材を押出すことが可能となる。
第六の構成として前記吐出孔の内側に、押出し方向に延長するコアピンを位置させて、
吐出孔と複数のコアピンとにより筒状の押出し成形空間を形成し、当該成形空間より流路
を備えた樹脂成形部材を押出す構成とした。
本構成からなる押出し金型によれば、吐出孔とコアピンにより成形空間が形成され、流
路を備えた樹脂成形部材を押出すことが可能となる。
第七の構成として、前記コアピンは複数本であって、当該複数本のコアピンの内、一部
のコアピンの内径が他のコアピンの内径と異なる構成とした。
本構成からなる押出し金型によれば、吐出孔とコアピンにより成形空間が形成され、径
の異なる流路を備えた樹脂成形部材を押出すことが可能となる。
なお、本発明において樹脂成形部材とは、インク流路を備えたインク供給チューブを始
めとして、医療用カテーテル等内部に流体を導入可能な部材だけでなく、流路を備えない
部材をも含む。また、本明細書において樹脂成形部材が押し出される方向を下流側と称し
、その反対方向を上流側と称する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2は、最良の形態に係る押出し金型1の分解斜視図である。
同図において、押出し金型1は、外型2と、外型2の内部に組み込まれる内型20と、
当該内型20と接続されるスパイダ25とが一体に組み付けられることにより構成される

外型2は、ヘッドダイ3とリップ10とから構成される。ヘッドダイ3は、全体として
両端開口の管状に形成される躯体を有する。下流側であるヘッドダイ3の端面4には、ロ
ックボルト7のネジ穴5が、開口6を中心とする周囲に等間隔に形成される。
【0009】
リップ10は、吐出口12が開口する先端面10aから後端面10bへ向かって延長す
る吐出孔11及び後述する滞留ゾーン16を備えた円柱形状の躯体を有する。
吐出口12は、上下の円弧12a,12bによって形成される一方の膨出部13と、円
弧12cによって形成される他方の膨出部14と、上下の円弧12a,12bの一方の端
点と円弧12cの端点とを互いに結ぶ直線により形成される薄板形成部15と、上下の円
弧12a,12bの他方の端点から延出する上下の直線及び当該直線を結ぶ円弧により形
成される小開口部18とからなる略亜鈴形状の開口である(図4参照)。
また、前記略亜鈴形状に縁取られた吐出口12の内側には、後述の内型20のコアピン
23a乃至23eが吐出孔11内部に挿通されることにより、コアピン23a乃至23e
の先端部が臨むように位置する。
【0010】
吐出口12を中心とする周囲には、ヘッドダイ3のネジ穴5と対応する所定の間隔毎に
ロックボルト挿入孔17が設けられる。
リップ10は、ヘッドダイ3の軸芯と同軸上で、後端面10bがヘッドダイ3の端面4
に対向する位置に位置決めされ、ロックボルト7がロックボルト挿入孔17及びネジ穴5
を介して螺入されることによりヘッドダイ3と締結される。リップ10とヘッドダイ3と
が締結されると、リップ10が端面4から下流側に突出した状態となり、外型2が構成さ
れる。なお、ヘッドダイ3及びリップ10の内部構造については後述する。
【0011】
内型20は、基部21と、基部21の先端から突出するコアピン23a乃至23eと、
基部21の後端から突出する雄ネジ24とを備える。基部21は、上流側に位置する後端
面21aから下流側の先端面21bに向かって漸次傾斜する上下のテーパ面21c及びテ
ーパ面21dが面取りにより形成され、当該テーパ面21c及びテーパ面21dとを結ぶ
両側面21eからなる断面略台形状の躯体を有する。また、両側面21eが切り欠かれる
ことにより位置決め片22が形成される。
【0012】
コアピン23a乃至23eは、基部21の内部空間と連通する空気孔26を備え、先端
面21bから枝分かれする如く下流側へ水平に延長する断面真円状の複数の管状体として
形成される。各コアピン23a乃至23eは、互いに一定間隔離間し、其々の延長方向と
直交する方向に並列的に配列される。コアピン23eのピン径は他のコアピン23a乃至
23dのピン径よりも小径である。また、コアピン23eとコアピン23dとの離間距離
は、コアピン23a乃至23d其々の離間距離よりも長く設定される。
なお、本例では、コアピン23a乃至23eとして計5本のピンとしたがピンの本数は
これに限定されるものではなく、ピンの数を増減することにより、単管の樹脂成形部材や
、さらに多くの流路を備えるチューブAを成形することも可能である。また、本例では、
コアピン23eを他のコアピン23a乃至23dよりも小径のピンとしたが、小径のピン
を複数設けることや、その配置を変更することも可能である。さらに、前記コアピン23
a乃至23eの形状は、チューブAの流路の断面形状を規定するものであるが、例えば断
面真円以外の長円形状等とすることも可能である。
【0013】
雄ネジ24は、基部21の内部空間と連通する空気孔28(図3参照)を備え、基部2
1の後端面21aの略中央部から上流側に突出する。雄ネジ24がスパイダ25の雌ネジ
部29に螺入されスパイダ25と内型20とが締結されると、図外のエアコンプレッサか
ら基部21の内部空間を経由してコアピン23a乃至23dの空気孔26先端に至る大気
開放の空気流路45(図3参照)が形成される。
【0014】
スパイダ25は、両端開口の管状に形成される躯体を有し、雌ネジ部29を中心として
隔壁25a乃至25dが半径方向外側に向かって延在し、複数の樹脂導出路30が形成さ
れる。
【0015】
図3は、外型2に対して内型20が締結されたスパイダ25を図外のボルトにより組み
付けて構成された押出し金型1の内部構造を示す断面図である。
同図において押出し金型1は、押出し成形装置40のホルダ41内部に収容され、図外
の固定ボルトにより周囲が固定される。押出し成形装置40は、図外の樹脂材料投入用の
ホッパー、ホッパーに投入された樹脂材料を溶融状態にしつつ下流側(押出し金型1側)
に送るスクリューを備えた加熱筒等から構成される。
【0016】
ヘッドダイ3は内部に水平面50と、該水平面50の下流側端部から下流側に下る傾斜
面51とを備える。水平面50には前記スパイダ25が図外の固定手段により締結される

傾斜面51と対向する側には、基部21のテーパ面21c及びテーパ面21dが位置し
、傾斜面51と、傾斜面51よりも緩やかな傾斜のテーパ面21c及びテーパ面21dの
間にヘッドダイ側内部空間が形成される。換言するとテーパ面21c及びテーパ面21d
の周囲をヘッドダイ3の傾斜面51が取り囲むことにより下流側に向かって漸次幅狭とな
るヘッドダイ側内部空間が形成される。
【0017】
また、リップ10は内部に前述の前,後方向(押出し方向)に延長する吐出孔11と、
同じく前,後方向に延長する滞留ゾーン16とを備える。吐出孔11は、下流側外部から
見ると前記のとおり断面略亜鈴形状であって、リップ10の先端面10aからリップ10
の長手方向略中間まで延長し、コアピン23a乃至23eの延長方向の中間位置から下流
側の周囲を包囲する。即ち、吐出孔11と、コアピン23a乃至23eの延長方向の中間
位置から下流側の周囲との間に、上流から押出される樹脂の外面形状及び、内面形状(流
路)を規定する樹脂成形空間を形成する。吐出孔11の下流側先端には、後述の吐出口1
2が形成される。
【0018】
滞留ゾーン16は、前記吐出孔11の上流側内面を切り欠いて凹状となるように切削す
ることで形成され吐出孔11と連通する。滞留ゾーン16は、リップ10の長手方向略中
間から、リップ10の後端面10bまで延長し、コアピン23a乃至23eの延長方向の
中間位置から上流側の周囲を包囲する。即ち、滞留ゾーンと、コアピン23a乃至23e
の延長方向の中間位置から上流側の周囲との間に、上流から押出される樹脂を溜め置く空
間が形成される。また、滞留ゾーン16の延長する長さは前記吐出孔11の延長長さと略
等しく、吐出孔11と滞留ゾーン16とは、リップ10の延長長さを略二分する長さに設
定されるが、本発明はこれに限定されず種々の長さの割合が考えられる。
【0019】
図4は、リップ10の先端面10aを下流側外部から見た部分拡大図である。
同図において滞留ゾーン16は、吐出孔11を上下から囲む平坦部16Aと、互いに対
向する半円部16Bとからなり、吐出孔11を全体として包囲する横長の楕円形状である
。即ち、一方の膨出部13と、他方の膨出部14と、薄板形成部15と、小開口部18と
からなる略亜鈴形状に縁取られた吐出口12の周囲全体を覆うような空間として形成され
る。滞留ゾーン16は中心からの内面径R2を吐出孔11の内面径R1より全周に渡って
大径とすることで形成されるが、後述する如く部分的に凹状となるように切り欠いて大径
として成形してもよい。また、本例では前述のとおり吐出孔11と滞留ゾーン16との長
さは略等しいので滞留ゾーンの容積は吐出孔11の容積よりも大きく設定される。
【0020】
図3において押出し金型1に上流側から矢印で示す方向へ樹脂が押出されると、押出さ
れた樹脂は、スパイダ25よりも上流側の水平面50を経由してスパイダ25の樹脂導出
路30へと流れ込む。樹脂導出路30へ流れ込んだ樹脂は、基部21のテーパ面21c及
びテーパ面21d及びヘッドダイ3の傾斜面51との間で形成され、かつ下流側へ向かう
に従って漸次幅狭となるヘッドダイ側内部空間の下流側へと導出される。
【0021】
ヘッドダイ側内部空間へ導出された樹脂が、リップ10の滞留ゾーン16まで到達する
と、吐出孔11よりも容積の大きな滞留ゾーン16の内部に樹脂が満たされる。
そして、滞留ゾーン16を満たした樹脂は、滞留ゾーン16よりも容積の小さな吐出孔
11に向かって導出され、吐出孔11と、コアピン23a乃至23dの外周面とにより形
成された内部空間の形状(断面略亜鈴形状)に応じた形状に成形されつつ、吐出口12の
方向へと押出される。
なお、本例では図1に示す如く押出された樹脂は、横配列の流路115a,115b,
115c,115dと、前記流路115a乃至115dから離隔して設けられる小径の流
路115eとを備えた樹脂成形部材としてのチューブAが吐出口12から連続して押出さ
れる。
【0022】
なお、前記吐出口12から樹脂が押出される際には、空気流路45の上流側から下流側
へ図外のエアコンプレッサ等により空気が供給され、コアピン23a乃至23eの空気孔
26の下流側先端から空気が排出することにより、各流路115a乃至115eの真円度
が向上する。
【0023】
前記構成からなる押出し金型1によれば、従来、上流側から下流側方向に内面径R1が
そのままストレートに延長していた吐出孔11を上流側の内周面を凹状に切り欠いて切削
することで、内面径R2を全周に渡って大きくして滞留ゾーン16を形成した。これによ
り、上流側から流れ込んだ樹脂は、吐出孔11をストレートに押出されることがなく、吐
出孔11よりも大径化して大きな容積の滞留ゾーン16に満たされた後に、滞留ゾーン1
6よりも小さな容積の吐出孔11に流れ込むことにより、吐出孔11の形状が複雑となっ
ても滞留ゾーン16に蓄積された十分な量の樹脂が吐出孔11内部に圧力を増加しながら
押出される。
【0024】
よって、吐出孔11の形状、特に小径の流路115e、薄肉部分120、膨出部分13
0に対して上流側に位置する滞留ゾーン16から樹脂が十分に供給されることとなり、樹
脂は、吐出孔11とコアピン23a乃至23eとにより構成される成形空間に正確に見合
う形状で押出され、高品質の樹脂成形部材としてのチューブAを得ることができる。
【0025】
図5は、最良の形態に係る押出し金型1の他の形態を示す部分拡大図である。
なお、同図において最良の実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、説明を省
略する。本実施形態に係る押出し金型70における滞留ゾーン60は、吐出口12の上下
の薄板形成部15に対応する内面径R2を内面径R1より部分的に大径化して薄板形成部
15を囲む空間として形成される。
【0026】
具体的には、滞留ゾーン60は、吐出孔11と連通し、リップ10の長手方向略中間か
ら、リップ10の後端面10bまで延長し、コアピン23b及び23cの延長方向の中間
位置から上流側の周囲を包囲する。即ち、滞留ゾーン60と、コアピン23b及び23c
の延長方向の中間位置から上流側の周囲との間に、上流から押出される樹脂を溜め置く空
間が形成される。なお、滞留ゾーン60の延長する長さは前記吐出孔11の延長長さと略
等しく、吐出孔11と滞留ゾーンとは、リップ10の延長長さを略二分する長さに設定さ
れる。なお、滞留ゾーン60の容積は、吐出孔11の容積と同等又は大きい方が望ましい

【0027】
本実施の形態に係る押出し金型70によれば、滞留ゾーン60の容積は最良の形態にお
ける滞留ゾーン16よりも若干減少するものの、上流側から押出された樹脂は、滞留ゾー
ン60に溜め置かれた後に、樹脂が薄板形成部15から左右の膨出部13、膨出部14及
び小開口部18に対して広がりながら回りこむように押出されるため、吐出孔11とコア
ピン23a乃至23eとにより構成される成形空間を経た樹脂は、高品質の樹脂成形部材
としてのチューブAとして成形される。
【0028】
図6は、最良の形態に係る押出し金型1の他の形態に係る押出し金型200を示す部分
拡大図である。なお、最良の実施形態と同一の構成については説明を省略する。
同図において、リップ10は、先端面10aから後端面10bへ向かって延長する複数
の独立した吐出孔81a乃至81eを備える。吐出孔81a乃至81eは、リップ10の
長さ方向と直交する方向に一定間隔を以って並列的に配列され、その中心は同一直線状に
位置する。当該吐出孔81a乃至81eは断面真円状に形成され、両端に位置する吐出孔
81a及び吐出孔81eは他の吐出孔81b乃至81dよりも小径に設定される。
【0029】
前記吐出孔81a乃至81eの内側には、断面真円状のコアピン83a乃至83eが吐
出孔81a乃至81e内部に挿通されることにより、コアピン83a乃至83eの先端部
が臨むように位置し、樹脂の成形空間が形成される。また、両端に位置するコアピン83
a及び吐出孔81eは他のコアピン83b乃至83dよりも小径に設定される。
即ち、前記吐出孔81a乃至81e及びコアピン83a乃至83eにより構成される成
形空間に樹脂が導出され、当該成形空間を経て互いに独立した所謂単管チューブB及び単
管チューブBよりも小径な小径単管チューブCが成形される。
【0030】
同図において滞留ゾーン85は、複数の吐出孔81a乃至81e全体を覆う空間として
形成される。具体的には、滞留ゾーン85は、吐出孔81a乃至81eと連通し、リップ
10の長手方向略中間から、リップ10の後端面10bまで延長し、コアピン83b及び
83cの延長方向の中間位置から上流側の周囲を包囲する。即ち、滞留ゾーン85と、コ
アピン83a乃至83eの延長方向の中間位置から上流側の周囲との間に、上流から押出
される樹脂を溜め置く空間が形成される。なお、滞留ゾーン85の延長する長さは前記吐
出孔81a乃至81eの延長長さと略等しく、吐出孔81a乃至81eと、滞留ゾーン8
5とは、リップ10の延長長さを略二分する長さに設定される。
【0031】
本実施の形態に係る押出し金型200によれば、互いに独立した複数の吐出孔81a乃
至81eを設けて其々径の異なる所謂単管チューブを成形する場合であっても、上流側か
ら押出された樹脂は、滞留ゾーン85に溜め置かれた後に複数の吐出孔81a乃至81e
へ導出され、複数の吐出孔81a乃至81eと、コアピン83a乃至83eとにより構成
される成形空間を経て押出されるため、互いに径の異なる複数の単管チューブB及び単管
チューブCを効率的に成形することができる。
【0032】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は実施の形態に限
定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更又は改良が可能である。
また、内型を外型に組み付けることなく金型を構成し、樹脂を押出すことにより吐出孔
からは、流路を備えない樹脂成形部材が製造可能なことは言うまでもない。押出される樹
脂としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、オレフィン系の可塑性エ
ラストマー(TPE)、スチレン系のTPE、ポリアミド系のTPE及びウレタン系のT
PE等固化後に可撓性を有する樹脂又はこれらの組み合わせを用いるのが好適である。
【0033】
また、上下の滞留ゾーン60は上部,下部のいずれか一方に設けてもよい。さらにその
形状は、四角形に限定されず、三角形、半円形、半楕円形等種々の形状が考えられる。
さらに、滞留ゾーン16は吐出孔11よりも容積を大きく設定することに限定されるも
のではなく、要は吐出孔11の上流側内周面を凹状として全周又は部分的に大径化して樹
脂を一旦滞留させるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る押出し金型により押出されたチューブAの正面図。
【図2】本発明に係る押出し金型1を示す分解斜視図。
【図3】本発明に係る押出し金型1をホルダ41に装着した状態を示す断面図。
【図4】リップ10の先端面10aを下流側から見た部分拡大図。
【図5】他の形態に係る押出し金型200を先端面10a側から見た部分拡大図。
【図6】他の形態に係る押出し金型200を先端面10a側から見た部分拡大図及び押出された単管チューブA及び単管チューブBを示す斜視図。
【図7】従来のチューブ100を示す斜視図及び部分拡大図。
【図8】従来のチューブ100をプリンタ装置に取り付けた状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1 押出し金型、2 外型、3 ヘッドダイ、10 リップ、11 吐出孔、
12 吐出口、16 滞留ゾーン、20 内型、23a乃至23d コアピン、
25 スパイダ、30 樹脂導出路、40 押出し成形装置、51 傾斜面、
100 チューブ、A チューブ、B 単管チューブ、C 小径単管チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出孔より樹脂成形部材を押出すようにした押出し金型において、前記金型は、吐出孔
先端より後退した位置の内周面を凹状に成形し、吐出孔上流側に樹脂滞溜ゾーンを備え、
この樹脂滞溜ゾーンに一旦留めた樹脂成形部材を吐出孔を介して押出すようにしたことを
特徴とする押出し金型。
【請求項2】
前記吐出孔は複数配列であり、前記樹脂滞留ゾーンは、前記複数配列の吐出孔の全体を
被うことを特徴とする請求項1に記載の押出し金型。
【請求項3】
前記樹脂滞留ゾーンは、前記吐出孔を部分的に被うことを特徴とする請求項1又は請求
項2に記載の押出し金型。
【請求項4】
前記樹脂滞留ゾーンは、金型を構成する外型の内側に形成されて成る請求項1乃至請求
項3いずれか1項に記載の押出し金型。
【請求項5】
前記吐出孔は、膨出部分と薄板部分とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4
いずれか1項に記載の押出し金型。
【請求項6】
前記吐出孔の内側に、押出し方向に延長するコアピンを位置させて、吐出孔と複数のコ
アピンとにより筒状の押出し成形空間を形成し、当該成形空間より流路を備えた樹脂成形
部材を押出すことを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の押出し金型。
【請求項7】
前記コアピンは複数本であって、該複数本のコアピンの内、一部のコアピンの内径が他
のコアピンの内径と異なることを特徴とする請求項5に記載の押出し金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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