説明

押出プレスのシャー装置

【課題】ディスカード切断工程のサイクルタイムを短縮するとともに、エネルギー効率に優れた押出プレスのシャー装置を提供する。
【解決手段】シャー刃移動シリンダとディスカード切断シリンダとをそれぞれ分離独立して設け、シャー刃移動シリンダによりシャー刃をディスカード切断位置に移動させた後に、ディスカードの切断力をディスカード切断シリンダ、係合手段、シャースライド、シャー刃を介して伝達する構成とし、シャースライドの上端部にディスカード切断シリンダのピストンロッドとシャースライドを係合する係合手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等の金属押出用押出プレスにおいて、押出成形後にコンテナをダイスより離間させたのち、ビレットの押出残部であるディスカードをダイスの端面で切断して押出製品部より切り離すシャー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の押出プレスのシャー装置は図5に示すように、ダイス21を保持しているエンドプラテン20の上部のコンテナ側に設けたフレーム35に、ディスカード切断用としてのシャー装置30が下方に向けて取り付けられていて、シャーシリンダ31のピストンロッド32下端部にシャースライド33を介してシャー刃34が設けられた構成となっている。
【0003】
ビレットが限度量まで押出された段階で押出ステムの前進を停止する。その後、コンテナを若干後退させ、ビレットの押出残部であるディスカード22がコンテナから突き出された状態とし、押出ステムは更に後退させる。そして、この際、ディスカード22の前端面とダイス21の後端面とはシャー刃34の鉛直下方に位置するようになっている。しかる後、シャーシリンダ31を作動することによって、シャー刃34を下降させてディスカード22を切断し、ディスカード22と製品23とを分離する。(特許文献1参照)
【0004】
ところで、従来型の押出プレスのシャー装置では、シャー刃の無負荷動作、即ち、ディスカード切断前の下降移動とディスカード切断後の上昇移動、及びシャー刃の負荷動作、即ち、ディスカードの切断を、シャー切断力で設定された一本又は複数の油圧シリンダを用いて行なう構成となっている。このため、シャー刃の無負荷動作を高速化してサイクルタイムを短縮しようとすると、シャーシリンダには多量の圧油を供給することが要求され、それに伴い多量のエネルギーを消費するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−138235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ディスカード切断工程のサイクルタイムを短縮するとともに、エネルギー効率に優れた押出プレスのシャー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明の請求項1に記載の押出プレスのシャー装置は、押出プレスのシャー装置において、シャー刃移動シリンダとディスカード切断シリンダとをそれぞれ分離独立して設け、前記シャー刃移動シリンダによりシャー刃をディスカード切断位置に移動させた後に、ディスカードの切断力を前記ディスカード切断シリンダ、係合手段、シャースライド、シャー刃を介して伝達する構成とし、前記シャースライドの上端部に前記ディスカード切断シリンダのピストンロッドとシャースライドを係合する前記係合手段を備えた。
本発明の請求項2に記載の押出プレスのシャー装置は請求項1に記載の発明において、前記ディスカードを切断するときに、前記シャー刃移動シリンダ及びディスカード切断シリンダの両方に圧油を供給してディスカード切断力を得る。
【発明の効果】
【0008】
シャー刃の無負荷作動の出力に設定したシャー刃移動シリンダを独立して設ける構成としたので、シャー刃の無負荷移動にける移動速度を少量の圧油供給で高速化することができる。このため、シャー工程におけるサイクルタイムの短縮と、シャー刃の無負荷移動におけるエネルギー消費量を削減することができる。
シャー刃移動シリンダとディスカード切断シリンダとを分離独立して設け、ディスカードの切断を前記の両方のシリンダを用いて行う構成としたので、前記各シリンダの小径化が図れ、シャー装置全体を小型化することができる。特に、シャー装置の全高を低くすることができるので、低い建屋であっても押出プレスの設置が可能となる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の押出プレスのシャー装置を示す要部縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】シャー刃がディスカード切断位置に移動した状態を説明する図面である。
【図4】シャー刃がディスカード切断完了位置に移動した状態を説明する図面である。
【図5】従来の押出プレスのシャー装置を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図4は本発明の実施の形態を示し、20はエンドプラテン、21はダイスである。エンドプラテン20の中心部にはダイス21から押出される製品23が通る穴が設けられている。そして、符号22はビレットの押し残しで、製品23と切断して分離され回収されるディスカードである。
ダイス21を前面側に保持しているエンドプラテン20のコンテナ側上部には、シャー装置30が取り付けられている。
【0011】
シャー装置30において、35はエンドプラテン20のダイス21上面に取り付けられたフレーム、41はディスカード切断シリンダ、42はディスカード切断シリンダのピストンロッド、43はシャー刃移動シリンダ、44はシャー刃移動シリンダのピストンロッドである。33はフレーム35にガイドされて上下動自在に配されたシャースライドであり、その下端部ダイス側には、下方に向けてディスカード22と製品23とを切断して分離するシャー刃34が取り付けられている。図2に示すように、シャー刃移動シリンダ43はディスカード切断シリンダ42の両側に2本設けた構成としている。
【0012】
図に示すように、ディスカード切断シリンダ41及びシャー刃移動シリンダ43はフレーム35の上端部に取り付けられ、シャー刃移動シリンダのピストンロッド44が固定板46を介してシャースライド33に取り付けられる構成となっている。
47はシャー刃34がディスカード切断位置より上側にあるときにディスカード切断シリンダのピストンロッド42を通すための挿通孔で、シャースライド33及び固定板46に設けられている。
【0013】
50はシャースライド33の上端部に取り付けたディスカード切断シリンダのピストンロット42とシャースライド33を係合する係合手段である。
係合手段50は、固定板46に取り付けられた係合シリンダ51と、同じく固定板46上面を係合シリンダ51により摺動自在とした係合駒52により要部が構成され、後退位置にある係合駒52が前進移動したときに挿通孔47を塞ぐことによって、ディスカード切断シリンダのピストンロット42とシャースライド33との係合を可能としている。本発明において、係合シリンダ51は空圧シリンダが用いられることが好ましい。
本発明の実施の形態において、係合手段を固定板に取り付け係合駒を移動させる構成としたが、この構成に限るものではなく、例えば、シャーガイド上端に挿通孔と直交する方向に案内溝を設け、この案内溝内を係合駒がスライドする構成等でも良い。
【0014】
次に、本発明のシャー装置30の作用について説明する。
まず、ビレットの押出が完了した後、図示しないコンテナと同じく図示しないステムを後退させて、コンテナをダイス21より離間させる。この操作によりダイス21のコンテナ側端面にビレットの押し残しであるディスカード22が取り残される。この状態で、図1に示すように、シャー刃34は上昇限位置にある。次いで、図3に示すように、シャー刃移動シリンダ43の駆動により、シャー刃34がディスカード22の外径部に当たる手前の所定のディスカード切断位置まで下降し、シャー刃34の下降を一端停止する。そして、所定のディスカード切断位置で係合シリンダ51の作動により係合駒52を前進移動させ、ディスカード切断シリンダのピストンロット42とシャースライド33とを係合可能状態にする。これにより、ディスカード切断シリンダ41の出力を、係合手段50を介して、シャー刃34へ伝達することができるのである。
【0015】
ディスカード切断シリンダ41及びシャー刃移動シリンダ43両方のシリンダに圧油を供給して再びシャー刃34を下降させることにより、ディスカード22は切断される。図4は、シャー刃34が下降限位置にあり、ディスカード22が製品23より分離された状態を示している。
図4で示すシャー刃34の下降限位置で係合シリンダ51の作動により係合駒52を後退移動させ、ディスカード切断シリンダのピストンロット42とシャースライド33との係合状態を解除する。次いで、ディスカード切断シリンダ41及びシャー刃移動シリンダ43両方のシリンダのロッド側に圧油を供給、シャー刃34を上昇移動させ、上昇限位置にて停止させる。そして、図1の状態で待機し、次の押出サイクルの動作に備えるのである。なお、本発明のシャー装置に用いる油圧シリンダは、不燃性の作動油によって駆動される構成であっても良い。
【0016】
本発明の実施の形態において、係合手段を固定板に取り付け係合駒を移動させる構成としたが、この構成に限るものではなく、例えば、シャーガイド上端に挿通孔と直交する方向に案内溝を設け、この案内溝内を係合駒がスライドする構成等である。
【0017】
以上説明したように、本発明の押出プレスのシャー装置は、シャー刃の無負荷移動とディスカード切断を分離独立して設けたシリンダにより行なう構成としたので、シャー工程におけるサイクルタイムの短縮と、シャー刃の無負荷移動におけるエネルギー消費量を削減することができる。
また、ディスカードの切断を前記の両方のシリンダを用いて行なう構成としたので、前記各シリンダの小径化が図れ、シャー装置全体を小型化することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0018】
20 エンドプラテン
21 ダイス
22 ディスカード
23 製品
30 シャー装置
33 シャースライド
34 シャー刃
35 フレーム
41 ディスカード切断シリンダ
43 シャー刃移動シリンダ
46 固定板
47 挿通孔
50 係合手段
51 係合シリンダ
52 係合駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出プレスのシャー装置において、
シャー刃移動シリンダとディスカード切断シリンダとをそれぞれ分離独立して設け、前記シャー刃移動シリンダによりシャー刃をディスカード切断位置に移動させた後に、
ディスカードの切断力を前記ディスカード切断シリンダ、係合手段、シャースライド、シャー刃を介して伝達する構成とし、
前記シャースライドの上端部に前記ディスカード切断シリンダのピストンロッドと前記シャースライドを係合する前記係合手段を備えた押出プレスのシャー装置。
【請求項2】
前記ディスカードを切断するときに、前記シャー刃移動シリンダ及びディスカード切断シリンダの両方に圧油を供給してディスカード切断力を得る請求項1に記載の押出プレスのシャー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39585(P2013−39585A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176627(P2011−176627)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】