説明

押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法

【課題】曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造すること。
【解決手段】本発明に係る押出成形装置は、ペースト状の原料組成物を移送する流路と、流路の上流側に設けられ、原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、流路の下流側に設けられ、原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、スクリューとダイの間に設けられ、厚さ方向に貫通する複数の開口を有する整流板と、整流板の下流側とダイを連通する抵抗管と、抵抗管の管壁を貫通するように設けられ、抵抗管の内側に突出する長さがそれぞれ変更自在の複数の抵抗ピンとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造技術に関するものであり、より詳細にはセラミックス成形体を製造するための押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。特許文献1,2には、ハニカム構造体の製造に使用されるダイス及び押出成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−5915号公報
【特許文献2】特許第4099896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DPF用のハニカムフィルタ構造体は一般に剛性を有するケースに収容された状態で使用される。ハニカムフィルタ構造体の寸法精度が低いと熱応力等によってハニカムフィルタ構造体に亀裂が入るなどの不具合が生じやすくなる。そのため、焼成前のグリーン成形体に対して高い寸法精度が要求される。また、ハニカム構造体は、狭いセルピッチ(例えば1.1〜2.8mm程度)を有するものもあり、多数の貫通孔を画成する隔壁の厚さについても高い寸法精度が要求される。
【0005】
押出成形装置でグリーン成形体を製造する際、ダイの上流側の面に到達する原料組成物の流速が不均一で特定領域の原料組成物の流速が他の領域と比較して高いと、湾曲した成形体がダイから押し出される。これを後から真っ直ぐに矯正しようとすると、成形体の隔壁が湾曲したり外面にクラックが入ったりするといった不具合が生じる。また、成形体の製造を開始した初期の段階では真っ直ぐなものが得られていても、ダイの摩耗などによって成形体の曲がりが徐々に顕著となる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造できる押出成形装置及びこれを用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る押出成形装置は、ペースト状の原料組成物を移送する流路と、流路の上流側に設けられ、原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、流路の下流側に設けられ、原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、スクリューとダイの間に設けられ、厚さ方向に貫通する複数の開口を有する整流板と、整流板の下流側とダイを連通する抵抗管と、抵抗管の管壁を貫通するように設けられ、抵抗管の内側に突出する長さがそれぞれ変更自在の複数の抵抗ピンとを備える。
【0008】
本発明の押出成形装置が備える複数の抵抗ピンは、ダイに導入される原料組成物の流速分布の均一化を図るためのものである。押し出されてくる成形体の曲がりの程度及び方向をチェックし、要求精度を超える曲がりが認められる場合、複数の抵抗ピンの突出長さをそれぞれ調節することによって曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造できる。
【0009】
複数の抵抗ピンの組み合わせは、1組であっても2組以上であってもよい。例えば、抵抗管が上流から下流に向けて流路断面が小さくなるテーパ部と、テーパ部の下流側に接続された直管部とを有する構成である場合、複数の抵抗ピンがテーパ部及び直管部の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。なお、スクリューの径よりも径が大きい成形体を製造する場合などには、抵抗管は上流から下流に向けて流路断面が大きくなる拡大部を有してもよい。
【0010】
複数の抵抗ピンのそれぞれの突出長さは、手動で調節してもよく、あるいは、自動制御としてもよい。自動制御とする場合、本発明に係る押出成形装置は、ダイから押し出される成形体の曲がりの程度及び方向を検知するセンサと、センサからのデータに基づいて複数の抵抗ピンの突出させるべき長さを算出するコンピュータと、コンピュータからの出力に基づいて複数の抵抗ピンのそれぞれの突出長さを変更するピン駆動機構とを更に備えることが好ましい。
【0011】
本発明は、上記押出成形装置を用いた成形体の製造方法であり、抵抗ピンの突出長さを変更する工程を備えた方法を提供する。本発明の方法によれば、抵抗ピンの突出長さを適宜調節することで、曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造できる。複数の抵抗ピンの突出長さを自動制御する機構を備えた押出成形装置を用いる場合は、本発明に係る方法は、抵抗ピンの突出長さを自動的に変更する工程を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)はハニカム構造体用グリーン成形体の一例を示す斜視図、(b)はグリーン成形体の部分拡大図である。
【図2】本発明に係る押出成形装置の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】図1に示す抵抗管及びその管壁を貫通するように設けられた抵抗ピンの構成を示す部分断面図である。
【図4】整流板の構成を示す図である。
【図5】抵抗管の内側に複数の抵抗ピンの先端側が突出している様子を示す断面図である。
【図6】抵抗管の内側に複数の抵抗ピンの先端側が突出している様子を示す断面図である。
【図7】本発明に係る押出成形装置の他の実施形態であって抵抗管の下流側に延長管(直管部)を備えた形態を示す部分断面図である。
【図8】本発明に係る押出成形装置の他の実施形態であって抵抗ピンの突出長さを自動制御する機構を備えた形態を示す構成図である。
【図9】非接触式変位センサによって成形体の曲がりを検出する機構の一例を示す模式図である。
【図10】非接触式寸法測定器によって成形体の曲がりを検出する機構の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係る押出成形装置の説明に先立ち、ハニカム構造体用のグリーン成形体について説明する。
【0015】
<グリーン成形体>
図1に示すグリーン成形体70は、原料組成物を押出成形することによって得られたものである。図1の(a)に示すように、グリーン成形体70は多数の貫通孔70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、グリーン成形体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。なお、グリーン成形体70を所定の温度で焼成することによってハニカム構造体が製造される。
【0016】
グリーン成形体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーン成形体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0017】
グリーン成形体70をなす原料組成物は特に限定されないが、DPF用のハニカム構造体を製造する場合にあっては、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。ハニカム構造体の高温耐性の観点から、好適なセラミクス材料として、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、更に、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0018】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体を製造する場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、更に、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0019】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0020】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤及び可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0021】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0022】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)などが挙げられる。
【0023】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0024】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。
【0025】
<押出成形装置>
図2〜5を参照しながら、本発明に係る押出成形装置の好適な実施形態について説明する。図2に示す押出成形装置10は、粉末状又はペースト状の原料組成物からグリーン成形体70を製造するためのものである。
【0026】
押出成形装置10は、ハウジング1内の上段に設けられたスクリュー2A及び下段に設けられたスクリュー2Bを備える。スクリュー2A,2Bは、入口1aから供給された原料組成物を混錬すると共に流路1bを通じて下流側へと移送するためのものである。スクリュー2A,2Bの間には、真空室3が設けられており、真空室3内を減圧することによって原料組成物を脱気処理できるようになっている。真空室3内の原料組成物はローラ3aによって下段のスクリュー2Bに導入される。
【0027】
押出成形装置10は、スクリュー2Bの下流側に設けられた整流板5と、原料組成物からなる成形体70Aが押し出されるダイ8と、流路1bとダイ8を連通する抵抗管9と、抵抗管9の管壁を貫通するように設けられ、抵抗管9の内側に突出する長さがそれぞれ変更自在の16本の抵抗ピンPとを更に備える(図3,5参照)。抵抗管9は、内部の流路がテーパ状(テーパ部)になっており、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に小さくなっている。なお、ダイ8から押し出された成形体70Aが変形しないように、押出成形装置10の隣には成形体70Aを支持するための支持台15が設置されている。整流板5及び複数の抵抗ピンPは、ダイ8に原料組成物を導入するに先立ち、その流速分布の均一化を図るためのものである。
【0028】
整流板5は、ハウジング1に対して着脱自在に設けられており、スクリュー2Bとダイ8の間に配置されている。図4の(a)は整流板5の正面図であり、図4の(b)は整流板5の断面図である。整流板5は厚さ方向に貫通する複数の開口5aを有する。整流板5は、流量調整の効果を高めるために網状の抵抗体(図示せず)を有していてもよい。網状の抵抗体として、例えば、網目数が5〜200メッシュ(より好ましくは50〜150メッシュ)の金網を使用できる。一枚又は複数枚の金網を整流板5の上流側の表面に配置することで、より高い整流効果が得られるとともに、原料組成物に含まれる異物を除去できる。ここでいう金網の網目数(メッシュ)は、1インチ(25.4mm)の間にある目数を意味する。使用するメッシュを選定するに際しては、ダイの開口(スリット幅)に対してメッシュの目開きWが小さいことを第一条件とし、更に、強度的に十分な線径dを有するものを選定すればよい。メッシュ数Nは以下の式によって算出できる。
N=25.4/(W+d)
式中、Wはメッシュの目開き(mm)を示し、dはメッシュの線径(mm)を示す。
【0029】
整流板5は、上流側から圧力を受けてもほとんど歪みを起こさない構造体であることが好ましい。かかる観点から、整流板5の材質としては、例えば、炭素鋼等が好ましい。炭素鋼以外の好適な材質として、ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼を例示できる。整流板5の厚さは、十分の強度を確保する観点から、10〜100mmであることが好ましい。
【0030】
整流板5は、厚さ方向に貫通する直径1〜10mmの開口5aを複数有する。整流板5の開口率は30〜80%であることが好ましい。開口率が30%未満の整流板5を使用した場合、上流側の圧力を過度に高くしないと、単位時間当たり十分な量の原料組成物を通過させることができず、圧力が装置の許容圧力以上となりやすい。他方、開口率が80%を超える整流板5は強度が不十分となりやすい。整流板5の開口率は40〜80%であることが好ましく、50〜80%であることがより好ましい。
【0031】
ここでいう「開口率」とは、整流板5の一方面における開口の面積の合計を当該一方面の面積(ハウジングによって覆われる周縁部を除く)で除すことによって算出される値を意味する。なお、開口の流路断面積が一定ではない整流板の場合、整流板の厚さ方向(原料組成物の移送方向)の位置によって開口の面積の合計は変化し得るが、「開口率」はこの合計の最小値を用いて算出される値を意味する。
【0032】
16本の抵抗ピンPは、図3,5に示す通り、抵抗管9の管壁を貫通するように設けられており、抵抗管9の周方向にほぼ均等の間隔で配置されている。抵抗ピンPは、抵抗管9の内側に突出する長さを自在に変更することが可能となっている。より具体的には、抵抗ピンPは、抵抗管9の管壁との間から原料組成物がリークしないシール機構を有しており、抵抗管9の管壁に対してスライド自在である。なお、突出する長さを変更自在とする構成として、スライド式の機構の代わりに、抵抗ピンPに設けたネジ及び抵抗管9に設けたネジ穴によるネジ回転式の機構であってもよい。また、抵抗ピンPの本数は、16本に限定されるものではないが、十分な流速調整効果を得るには、1組につき、6〜36本であることが好ましい。
【0033】
十分な流量調整効果を得る観点から、複数の抵抗ピンPはダイ8の上流側の所定の位置に配置されていることが好ましい。すなわち、複数の抵抗ピンPの中心軸がダイ8の上流側の面から10〜100mm(より好ましくは10〜50mm)の範囲に設置されていることが好ましい。
【0034】
抵抗ピンPの突出長さは変更自在であり、突出長さを長くすることによってその領域を流れる原料組成物の流速を低減してグリーン成形体70の曲がりを小さくすることができる。突出長さは、抵抗管9の抵抗ピンPが設けられている位置の半径を基準として、0〜120%とすることができ(図6参照)、好ましくは0〜100%である(図5参照)。
【0035】
例えば、押し出されているグリーン成形体70が上方に湾曲している場合、抵抗管9の下方領域を流れる原料組成物の流速が他の領域と比較して高いことが原因と考えられる。この場合、図5に示すように、当該領域に位置する複数の抵抗ピンPを突出させればよい。図5において、突出長さの比率(抵抗管9の半径基準)は、下端に位置する抵抗ピンP1が100%であり、その隣の抵抗ピンP2が70%であり、更にその隣の抵抗ピンP3が30%に設定されている。押し出されてくる成形体の曲がりの程度及び方向をチェックし、抵抗ピンPのそれぞれの突出長さを変更することによって寸法精度が十分に高いグリーン成形体70を継続的に製造できる。
【0036】
抵抗ピンPは、先端がテーパ状になっていることが好ましい。かかる構成を採用することにより、各抵抗ピンPを抵抗管9の中心部にまで突出させた場合でも、隣接する抵抗ピンP同士が干渉することを十分に抑制できる。全ての抵抗ピンPを中心部まで突出させた場合、すなわち、全ての抵抗ピンPの突出長さの比率を100%とした場合、抵抗管9の抵抗ピンPが設けられている位置の流路断面積を100とすると、抵抗ピンPによって遮られた部分を除く流路断面積は10〜50程度であることが好ましい。この流路断面積の割合を10未満とすることは装置の機構が複雑化する傾向にあり、50を超えると抵抗ピンPによる流速調整効果が不十分となりやすい。
【0037】
図3に示すように、抵抗ピンPは抵抗管9の中心軸とのなす角度が90°となるように配置してもよく、上流側もしくは下流側に傾斜するように配置してもよい。抵抗ピンPを上流側又は下流側に傾斜させる場合、抵抗ピンPの傾斜角は、抵抗管9の中心軸を法線とする面に対して30°以内であることが好ましい。
【0038】
ダイ8は、原料組成物から図1に示す形状の成形体を製造するためのものであり、これに対応する格子状の流路(図示せず)を有する。グリーン成形体70のようなセル構造の成形体の製造に用いられるダイは、流路の設定を緻密に行う必要があり、また一般的に高価である。このため、ダイの交換作業の頻度はなるべく低くすることが望ましい。本実施形態においては、抵抗管9における抵抗ピンPの突出長さを変更することでダイ8の設定を変更する頻度を低減できると共に、原料組成物の流量の均一化によりダイ8の長寿命化が図られ、その交換頻度を低くできる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、抵抗管9の管壁に複数の抵抗ピンPを設ける場合を例示したが、複数の抵抗ピンを設ける位置は整流板5とダイ8の間であれば、これに限定されない。例えば、抵抗管(テーパ部)9の下流側に延長管(直管部)9aを接続した場合、抵抗管9又は延長管9aに複数の抵抗ピンPを設けてもよいし(図7参照)、抵抗管9及び延長管9aの両方に複数の抵抗ピンPを設けてもよい。
【0040】
<グリーン成形体の製造方法>
次に、押出成形装置10を用いてグリーン成形体70を製造する方法について説明する。まず、原料組成物を入口1aから流路1b内に導入する。スクリュー2A,2B及びローラ3aを作動させることによって原料組成物を混練すると共に下流側に移送する。混練物を整流板5の開口5aを通過させて流速分布を均一化させた後、抵抗管9を通じてダイ8に導入する。ダイ8の下流側における原料組成物の線速度は10〜150cm/分程度とすることができる。
【0041】
流速分布の均一化が図られた原料組成物をダイ8から押し出し、支持台15上に成形体70Aを回収する。成形体70Aを所定の長さに切断することによってグリーン成形体70を得る。
【0042】
整流板5の整流作用のみでは流速分布の均一化が不十分でグリーン成形体70の曲がりの程度が顕著となったとき、抵抗ピンPの突出長さを変更する工程を実施する。この工程は、押出成形装置10への原料組成物の供給を停止することなく実施でき、これにより、ダイ8の設定の変更や交換を実施しなくても寸法精度が十分に高いグリーン成形体70を十分に長期にわたって効率的に製造することが可能となる。特に、複数の抵抗ピンPの突出長さを自動制御する機構を備えた押出成形装置を用いれば、抵抗ピンPの突出長さを自動的に変更することができる。
【0043】
図8に示す押出成形装置20は、複数の抵抗ピンPのそれぞれの突出長さを自動で制御する機構を更に具備する他は、上述の押出成形装置10と同様の構成を有する。押出成形装置20は、ダイ8から押し出される成形体70Aの曲がりの程度及び方向を検知するセンサ12と、センサ12からのデータに基づいて複数の抵抗ピンPの突出させるべき長さを算出するコンピュータ13と、コンピュータ13からの出力に基づいて複数の抵抗ピンPのそれぞれの突出長さを変更するピン駆動機構14とを更に備える。センサ12としては、レーザー光又はLED光Lを利用した非接触式変位センサや非接触式寸法測定器などを使用することができる。ピン駆動機構14としては、抵抗ピンPがスライド式又はネジ回転式のものである場合、歯車等によって抵抗ピンPを往復運動又は回転運動させるものを採用することができる。
【0044】
図9は、センサ12として非接触式変位センサLK−G(商品名、株式会社キーエンス製)を使用した場合の曲がり検出機構の構成を示す図である。レーザー光又はLED光Lを発する発光素子12aと、受光素子12bとからなるセンサを4組(非接触式変位センサ12A〜12D)使用することによって、成形体70Aの曲がりを検出する。図9中の破線からなる円Yは真っ直ぐな成形体70Aが得られている場合の成形体断面位置を示し、実線からなる円Nは曲がりが発生した状態の成形体断面位置をそれぞれ示すものである。なお、非接触式変位センサ12A,12Bの2組であってもよい。
【0045】
図10は、センサ12として非接触式寸法測定器LS−7000(商品名、株式会社キーエンス製)を使用した場合の曲がり検出機構の構成を示す図である。成形体70Aの周りを取り囲むように16台の非接触式寸法測定器12a〜12pが配置されている。図10中の破線からなる円Yは真っ直ぐな成形体70Aが得られている場合の成形体断面位置を示し、実線からなる円Nは曲がりが発生した状態の成形体断面位置をそれぞれ示すものである。なお、図10のように非接触式寸法測定器を配置する場合、その台数は抵抗ピンPの本数と特に相関があるわけではないが、抵抗ピンPの本数よりも多いことが好ましい。また、対向する一対の測定器のどちらか一方のみでもよく、例えば、図10に示す測定器12a〜12hのみでもよい。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、円柱体のグリーン成形体70を例示したが、成形体の形状や構造はこれに限定されない。グリーン成形体70の外形形状は、例えば、四角柱等の角柱や楕円柱でもよい。また、貫通孔70aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、略三角配置、略六角配置等でも構わない。更に、貫通孔70aの形状も、正方形でなくてもよく、例えば、略三角形、略六角形、略八角形、略円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、曲がりが十分に小さく、寸法精度が高い成形体を効率的に製造できる。
【符号の説明】
【0048】
1…ハウジング、1b…流路、2B…スクリュー、5…整流板、5a…開口、8…ダイ、9…抵抗管(テーパ部)、9a…延長管(直管部)、10,20…押出成形装置、12…センサ、12A,12B…非接触式変位センサ(センサ)、12a〜12p…非接触式寸法測定器(センサ)、13…コンピュータ、14…ピン駆動機構、70…グリーン成形体、70A…成形体、P(P1,P2,P3)…抵抗ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状の原料組成物を移送する流路と、
前記流路の上流側に設けられ、前記原料組成物を混練すると共に下流側へと移送するスクリューと、
前記流路の下流側に設けられ、前記原料組成物からなる成形体が押し出されるダイと、
前記スクリューと前記ダイの間に設けられ、厚さ方向に貫通する複数の開口を有する整流板と、
前記整流板の下流側と前記ダイを連通する抵抗管と、
前記抵抗管の管壁を貫通するように設けられ、前記抵抗管の内側に突出する長さがそれぞれ変更自在の複数の抵抗ピンと、
を備える押出成形装置。
【請求項2】
前記抵抗管は上流から下流に向けて流路断面が小さくなるテーパ部と、前記テーパ部の下流側に接続された直管部とを有し、前記複数の抵抗ピンが前記テーパ部及び前記直管部の少なくとも一方に設けられている、請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記ダイから押し出される成形体の曲がりの程度及び方向を検知するセンサと、
前記センサからのデータに基づいて前記複数の抵抗ピンの突出させるべき長さを算出するコンピュータと、
前記コンピュータからの出力に基づいて前記複数の抵抗ピンのそれぞれの突出長さを変更するピン駆動機構と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の押出成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の押出成形装置を用いた成形体の製造方法であり、前記抵抗ピンの突出長さを変更する工程を備える方法。
【請求項5】
請求項3に記載の押出成形装置を用いた成形体の製造方法であり、前記抵抗ピンの突出長さを自動的に変更する工程を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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