説明

押圧附勢クランプ装置

【課題】一つの押圧附勢クランプ装置でパネル部品を二点支持してクランプする場合で、その支持するパネル部品の形状が異なる場合でも、クランプ装置の共用化を可能とする。
【解決手段】パネル部品の搬送時の支持箇所に接して該支持箇所に対して押圧附勢によりパネル部材をクランプする受け部30と、製造ラインの機械的な搬送機構に取付けられ、受け部30をパネル部品の支持箇所方向に向けて進退可能に移動させる駆動シリンダ52を含む押圧附勢移動機構50とから成り、受け部30にはパネル部品の一箇所の支持箇所に対してパネル端縁方向に離間した二点で受ける受け面36を有し、この受け面36にはパネル部品の支持箇所のパネル端縁を受け入れる係合溝38が形成されていると共に、受け面36の二点はパネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な変動構成として、受け部30が押圧附勢移動機構50に対して回動可能にヒンジ結合78されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧附勢クランプ装置に関する。詳細には、複数種類の自動車のボディサイドパネル等のパネル部品を機械的に搬送する製造ラインに用いられるクランプ装置に係り、この複数種類のパネル部品に対してその支持個所を押圧附勢によりクランプするクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造ラインでは、一つの製造ラインで複数種類の車両を組立製造することが行われている。複数種類の車両を一つの製造ラインで組立製造する場合、車両によって異なるボディサイドパネル等のパネル部品を製造ラインに沿って搬送することになる。
通常、ボディサイドパネルはマテハンと称する設備に取付けられたクランプ装置によりクランプされて搬送される。この場合、マテハンの設備に取付けられるクランプ装置として、複数種類の車両のボディサイドパネル形状に対して共用できるクランプ装置が用いられる。共用化できるクランプ装置として下記特許文献1に開示されている押圧附勢クランプ装置がある。
特許文献1に開示されている押圧附勢クランプ装置は、クランプ支持箇所としての自動車のリアルーフレール部に対して昇降自在な当接部材を押圧附勢させてクランプするものである。そして、このクランプ支持箇所への当接部材には係合溝が波形形状に形成されており、これにより車種により異なるボディサイドパネルのクランプ支持箇所を係合可能として押圧附勢によりクランプしている。
【特許文献1】特開2005−297138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した押圧附勢クランプ装置は、いわゆる一つのクランプ装置によるボディサイドパネルの支持はいわゆる一点支持となっている。小型自動車のボディサイドパネルの様にパネル全体容積が比較的小容積の時には一点支持でも可能かも知れないが、パネル全体容積が比較的大容積の場合にはパネル部品の端縁方向に離間した二点で支持する二点支持として確実にクランプすることが望まれている。
この場合、一つの製造ラインで複数車種のボディサイドパネル等のパネル部品を組立製造する場合、車種によりボディサイドパネル等のパネル部品の形状が異なっているため、その二点支持位置の位置も車種によりそれぞれ異なっている。したがって、上述した押圧附勢クランプ装置では、いわゆる一点支持箇所が波形形状となっていることにより波形形状方向の車種によるボディサイドパネルの支持箇所変化は対応することが可能であるが、パネル部品の端縁方向に離間した二点で支持する二点支持とすることによる対応はできなかった。したがって、離間した二点支持とした場合でも複数車種に対応できる押圧附勢クランプ装置の提供が望まれている。
【0004】
本発明は上述した要望を満たす押圧附勢クランプ装置として創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、一つの押圧附勢クランプ装置によってパネル部品のパネル端縁方向に離間した二点を支持する二点支持の場合であっても、この二点のクランプ位置をその支持する二点の位置に対応させた位置に自在に変化させることにより、支持すべきパネル部品の形状が異なる場合でも、クランプ装置の共用化を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明に係る押圧附勢クランプ装置は次の手段をとる。
先ず、本発明の基本となる解決手段は次の通り。複数種類の自動車のボディサイドパネル等のパネル部品を機械的に搬送する製造ラインに用いられ、該複数種類のパネル部品に対してその支持箇所を押圧附勢によりクランプする押圧附勢クランプ装置であって、前記パネル部品の搬送時の支持箇所に接して該支持箇所に対して押圧附勢によりパネル部材をクランプする受け部と、前記製造ラインの機械的な搬送機構に取付けられ、前記受け部を前記パネル部品の支持箇所方向に向けて進退可能に移動させる駆動シリンダを含む押圧附勢移動機構とから成る。そして、前記受け部には、前記パネル部品の一ヶ所の支持箇所に対してそのパネル端縁方向に離間した二点で受ける受け面を有し、該受け面には前記パネル部品の支持箇所のパネル端縁を受け入れる係合溝が形成されていると共に、該受け面の二点はパネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な変動構成とされて装備されていることを特徴とする。
【0006】
上記手段によれば、パネル部品のパネル端縁を支持する受け面の二点は、パネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な変動構成とされており、異なる種類のパネル部品の形状変化に対してもその離間する二点の位置を自在に変化させてクランプすることができる。このため、異なるパネル部品について、一つのクランプ装置によってパネル部品の端縁方向に離間した二点を支持するいわゆる二点支持の場合であっても、一つのクランプ装置で共用化を図ることができる。
また、二点の受け面にはパネル端縁を受け入れる係合溝が形成されているため、パネル部品を該パネル部品の幅方向に対して確実にクランプすることができる。
【0007】
次に、上記基本となる解決手段において、受け面の二点の変動構成は、該受け面を有する受け部が該受け面の二点の位置間で前記押圧附勢移動機構に対して回動可能にヒンジ結合されて構成されており、該受け部と押圧附勢移動機構との間には該受け部の回動を規制するストッパ手段が設けられている手段とするのが好ましい。
【0008】
上記手段とすることにより、二点の受け面は受け部のヒンジ結合箇所を回動中心として回動変位する。このため、例えば、一方の受け面がパネル端縁に対して近接する回動変位する場合には、他方の受け面はパネル端縁に対して離間する回動変位をし、二点はパネル端縁に対しては反対方向の動きをする。ヒンジ結合箇所が二点の位置間の中央位置にあるときには、近接及び離間する変位量が同じとなる。このようにしてヒンジ結合と言う基本的な機械的結合構成で二点の受け面の所期の相対的動きを達成することができる。
また、二点の受け面の回動変位は、受け部と押圧附勢移動機構との間に設けられたストッパ手段により規制される。このストッパ手段による回動変位規制は異なる種類のパネル部品をクランプするために必要とされる回動変位範囲を確保して行われる。これにより不要な受け部の回動変位が規制され、速やかにクランプ作用を行うことができる。
【0009】
また、上記した各解決手段において、更に、前記受け面に形成される係合溝をV形状溝とし、複数条形成するのが好ましい。
上記手段とすることにより、パネル部品のパネル端縁はV形状溝の底部に位置決めされて確実にクランプすることができる。また、V形状溝が複数条形成されていることにより異なるパネル部品のクランプする幅方向の位置が異なる場合でも対応することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したように、一つの押圧附勢クランプ装置によってパネル部品のパネル端縁方向に離間した二点を支持するいわゆる二点支持の場合であっても、この二点を押圧附勢する二点の受け面をパネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な構成としてその受け面の二点の位置を自在に変化させることができるため、その支持すべきパネル部品の形状が異なる場合でも、クランプ装置の共用化を図ることができる。
【0011】
なお、二点の受け面のパネル端縁に対する相対的な反対方向への変動を可能とする構成を、受け部を押圧附勢移動機構に対して回動可能にヒンジ結合する構成とする場合には、比較的簡単な機械的連結構成により達成することができる。
また、クランプするためにパネル端縁を受ける係合溝をV形状溝とした場合には、パネル端縁をV形状溝の底部に位置決めして確実に位置決めすることができる。
更に、パネル端縁を受けるV形状溝の係合溝が複数条形成されている場合には、異なるパネル部品のパネル端縁の幅方向のクランプ位置が異なる場合にも対応でき、このような場合におけるクランプ装置の共用化も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の一実施例を、図面を用いて説明する。
この実施例の押圧附勢クランプ装置は図1及び図2に示されており、図1は側面図、図2は正面図を示している。図3は複数車種のボディサイドパネルを搬送するためにこの実施例の押圧附勢クランプ装置がマテハンに共用化して配置された取付状態を示す配置図である。なお、この実施例の押圧附勢クランプ装置は、自動車の一つの製造ラインで複数車種のボディサイドパネルが搬送される場合にマテハンに共用化して取付けることができるるものである。
【0013】
先ず、図3に示すように、この実施例の場合には、三種類の車種のボディサイドパネルが一つの製造ラインに流されて搬送されるようになっている。図3に実線で示す車種のボディサイドパネルAと、一点鎖線で示す車種のボディサイドパネルBと、2点鎖線で示す車種のボディサイドパネルCである。これらの三車種のボディサイドパネル形状はいわゆるハッチバック形式のワンボックス車であって基本的形状は類似しているが、細部の形状はそれぞれ異なっている。
三種類の車種のボディサイドパネルA、B、Cはマテハンと称される搬送設備10に保持されて搬送されるようになっている。この搬送設備10には三個の押圧附勢クランプ装置20が取付けられている。この三個の押圧附勢クランプ装置20が取付けられる位置は、ボディサイドパネルA、B、Cがクランプされる位置に対応して配置されている。クランプされる位置は三箇所ある。ボディサイドパネルの前部位置X、後部位置Y、及び上部位置Zの三箇所である。この三箇所の支持箇所X、Y、Zを押圧附勢クランプ装置20によりクランプしてマテハンにより搬送する。
ボディサイドパネルA、B、Cに対する三箇所の支持箇所X、Y、Zは、一箇所の支持箇所に対して二点で支持して、ボディサイドパネルA、B、Cを確実に保持して搬送するようになっている。前部位置Xの支持箇所ではX1とX2の二点、後部位置Yの支持箇所ではY1とY2の二点、上部位置Zの支持箇所ではZ1とZ2の二点でそれぞれ支持するようになっている。
なお、この実施例では、前部位置Xと、上部位置Zの2箇所に対しては三車種のボディサイドパネルA、B、Cとも各1個の押圧附勢クランプ装置20で共用化されている。しかし、後部位置Yについては二車種のボディサイドパネルA、Cに対しては共用化されているが、他の一車種は図示は省略したが、別のクランプ装置が独自に設定されている場合の例を示している。
【0014】
ボディサイドパネルA、B、Cの各支持箇所X、Y、Zに対応して搬送設備10に取付けられて配置される押圧附勢クランプ装置20が図1及び図2に詳細に示されている。押圧附勢クランプ装置20は大別して受け部30と押圧附勢移動機構50とからなっている。受け部30はボディサイドパネルの支持箇所に接してクランプする機能を果たすためのものである。押圧附勢移動機構50は受け部30にクランプ作用をさせるための押圧附勢力を生じさせるためのものである。
受け部30は、図2に良く示されるように、受け部本体32の両側に受け面部材34がボルト40等の締着手段により取付けられている。図1に良く示されるように、受け面部材34の上面は受け面36となっており、ボディサイドパネルの支持端縁を受け入れて支持する係合溝38が形成されている。この実施例の場合、係合溝38はV形状溝として形成されており、図1で見て左右位置に2個形成されている。
上面に受け面36を形成した受け面部材34の受け部本体32の両側に配置される間隔寸法は上述した各支持箇所X、Y、Zの二点間の設定寸法に合わせて設定されるものである。したがって、二点間の設定寸法が大きいときには図2で見て受け部本体32は左右長さが長い部材が用いられ、二点間の設定寸法が小さいときには受け部本体32は左右長さが短い部材が用いられる。
また、V形状溝とした係合溝38の数は、クランプすべきボディサイドパネルの幅方向の位置の数に応じて形成されるものである。例えば、異なる種類の車種でもすべて幅方向の位置が同じであれば一箇所のみ形成すればよい。この実施例の場合には、3車種のうち2車種のボディサイドパネルの幅方向の位置が同じであるため、二箇所形成されている。なお、この実施例においてボディサイドパネルの幅方向とは図1で見て左右方向を指している。
【0015】
図1に良く示されるように、図で見て受け面部材34は概略L字形状に形成されており、その左上部面が受け面36となっており係合溝38が形成されている。下右側部が受け部本体32に取付けられる部位となっている。その取付けはボルト40等の締着手段により行われるが、そのための取付孔42が図で見て上下に2個穿設されている。この取付孔42は図で見て左右に長孔に形成されており、この長孔の範囲内で受け面部材34の受け部本体32に対する幅方向位置の調整を可能としている。
なお、受け部本体32は、図2で見て受け面部材34を取付けるための左右両側位置の形状は、図1で見て受け面部材34の下右側部の大きさに対応したフランジ部形状となっているが、この両側のフランジ部は中央部位置に配置された板状部材で連結されている。したがって、この受け部本体32の断面形状は略コ字形となっている。
【0016】
次に、押圧附勢移動機構50は、受け部30を支持箇所に向けて進退可能に押圧附勢するために、駆動シリンダ52を有する。この実施例では駆動シリンダ52はエアシリンダで構成されており、エアの供給排出口53a、53bが図1で見てエアシリンダ52の上下位置に設けられている。駆動シリンダ52にはこの駆動シリンダ52の作動により作動ロッド54が図1で見て上下方向に移動するように設けられている。
駆動シリンダ52は中間取付部材56を介して支持アーム58に一体的に取付けられている。この取付けはボルト60等の締着手段により行われている。支持アーム58は図1に良く示されるように図で見て上方部がL字形に形成されており、その上方部材58aの下面部には作動ロッド54が伸長した状態でその上端部52aを支持する支持部62が設けられている。支持部62による上端部52aの支持はV字形状の嵌合によって行われている。支持部62が凸形状、上端部52aが凹形状に形成されて嵌合されるようになっている。
作動ロッド54の上部位置には、この作動ロッド54の進退動作を受け部30に伝達するための伝達機構部位70が連結されている。伝達機構部位70は、作動ロッド54と一体化された作動ロッド側部材72a、72b、72cと、受け部30とヒンジ結合するための結合部材74a、74b、74cとから構成されている。これら作動ロッド側部材72a、72b、72cと結合部材74a、74b、74cはボルト76等の締着手段により一体的とされており、駆動シリンダ52の作動により作動ロッド54と一緒に進退移動を行う。
【0017】
結合部材74a、74b、74cは、図1で見て、左右の両側の結合部材74a、74c間にある中間の結合部材74bは略下半分の下方位置にのみ配設されている。したがって、結合部材74a、74b、74cの全体配置形状としてはU字形状の配置構成となっている。そして、このU字形状の上部空間部に受け部本体32の中間部の板状部材が嵌挿配置されている。
全体配置形状がU字形状の結合部材74a、74b、74cの上部空間部に受け部本体32の中間部が嵌挿配置された状態で、両部材間にヒンジピン76が貫通結合されて、両者はいわゆるヒンジ結合されている。したがって、受け部本体32は結合部材74a、74b、74cに対して回動可能状態として取付けられている。このヒンジ結合は装置全体で見た場合には押圧附勢移動機構50に対して受け部30が回動可能状態に取付けられた構成となっている。これを受け部30の両側に配置された受け面部材34の受け面36で見た場合にはその支持箇所に対して相対的に反対方向に回動移動する構成となる。
この実施例の場合には、ヒンジピン76によるヒンジ結合点は受け部本体32の両側に配置される受け面部材34の丁度中間位置となっているので、両側の受け面部材34の受け面34における相対的な反対方向の回動変位は同じ回動変位量となっている。
【0018】
上記の押圧附勢移動機構50に対して回動可能と構成された受け部30には、受け部30の回動範囲を規制するストッパ手段80が押圧附勢移動機構50との間に設けられている。ストッパ手段80は図2で見て受け部本体32の左右両側の下方位置の二箇所に設けられている。ストッパ手段80は受け部本体32の下方位置に取付けられたボルト82と結合部材74bの上部に取付けられたボルト84により構成されており、両ボルト82、84の頭部が当接することによりストッパ機能を果たす。
ボルト84が取付けられる中間の結合部材74bは両側の結合部材74a、74cより図2に良く示されるように図で見て左右方向の両側に延在して形成されており、その両側の上部位置にボルト84が取付けられている。このボルト84の取付けはその取付け長さが調整可能にロック結合されている。したがって、ボルト84の取付け長さを調整することにより受け部本体32の回動規制位置を適宜設定することができる。その設定はクランプすべきボディサイドパネルの形状に応じて行われる。図2で見て、右側のストッパ手段80により受け部30の右廻り方向の回動が規制される。この規制状態が二点鎖線で示す受け部30の状態である。同様に左側のストッパ手段80により左廻り方向の回動が規制される。この規制状態が実線で示す受け部30の状態である。
なお、押圧附勢クランプ装置20の搬送設備10への取付けは、押圧附勢移動機構50の支持アーム58に一体的に取付けられた取付基盤18を介して行われる。その取付けは取付基盤18を搬送設備に平面接触配置等により安定配置させた状態で図1に示すボルト16等により行われる。
【0019】
次に、上記押圧附勢クランプ装置20をマテハンと称する搬送設備10に配置してボディサイドパネルA、B、Cをクランプして搬送するための作業内容について説明する。
先ず、押圧附勢クランプ装置20として、その受け部30が次のように設定されたものを用意する。すなわち、ボディサイドパネルA、B、Cの各支持箇所X、Y、Zの二点の各支持点間隔寸法に対応させた受け部30の受け面部材34の離間寸法として設定したものを用意する。
各支持箇所X、Y、Zの間隔寸法に合せて設定した受け部30を装備した押圧附勢クランプ装置20を、各支持箇所X、Y、Zの位置に対応したマテハンの搬送設備箇所に配置して取付ける。その取付けは前述もしたように取付基盤18を搬送設備10の平面部分に面接触させた安定した配置状態としてボルト16等により取付ける。
上記の配置取付け状態において、駆動シリンダ52が作動していない状態では、作動ロッド54及び受け部30は図1に二点鎖線で示す退避位置状態にある。この状態からエアシリンダの駆動シリンダ52に下方位置にある供給排出口53bからエアを供給して作動させることにより作動ロッド54は実線の位置状態まで移動する。この状態では作動ロッド54の上端部52aは支持アーム58の上方部材58aの下部に設けられた支持部62に凹凸嵌合して位置決めされる。なお、この場合、支持部62及び上端部52aのいずれか一方の部位が弾性部材で形成されていると、弾性的に支持することができると共に、嵌合時の衝撃音を緩和することができる。
【0020】
作動ロッド54の図1で見て上方への移動に伴い、作動ロッド54と一体的とされている伝達機構部位70及びこの伝達機構部位70とヒンジピン76によりヒンジ結合されている受け部30も上方へ一緒に移動する。この移動により図1に示すように受け部30の受け面部材34の受け面36によりボディサイドパネルA、B、Cの支持箇所X、Y、Zのパネル端縁を押圧附勢してクランプする。
受け面36によるクランプは、詳細にはこの受け面36に形成された係合溝38にパネル端縁が入り込んで行われる。更に、詳細には係合溝38はV字形状溝とされているため、パネル端縁はV字形状の底部に確実に位置決めされてクランプされる。なお、この実施例では、係合溝38は二箇所形成されており、3車種のボディサイドパネルA、B、Cのパネル端縁はいずれかの係合溝38に入り込んでクランプされる。図示の場合には、図1で見て右側位置の係合溝38にボディサイドパネルAのパネル端縁が入り込んでクランプされ、左側位置の係合溝38にボディサイドパネルB、Cのパネル端縁が入り込んでクランプされている。このようにこの実施例では、図1で見て車種の異なるボディサイドパネルA、B、Cによってクランプするパネル端縁の左右位置(幅方向位置)が異なる場合でも対応できる。すなわち、押圧附勢クランプ装置20の共用化を図ることができる。
【0021】
また、受け面36によるボディサイドパネルA、B、Cのパネル端縁のクランプに際しては、図2に良く示されるように、そのパネル端縁の形状に応じて受け部30が回動してパネル端縁に沿った位置状態でクランプ作用がなされる。受け面36を有する受け面部材34は左右の二箇所にあり、その受け面部材34はヒンジピン76のヒンジ結合を回動中心として図2で見て上下方向に相対的に回動変位移動する。そして、受け面部材34の上面の受け面36に形成された係合溝38にパネル端縁が入り込んで係合支持されるとき、そのパネル端縁形状にしたがって受け部30がヒンジ結合を回動中心として回動して支持する。図示の場合は、受け部30が実線で示される状態でボディサイドパネルAのパネル端縁を離間した二点で押圧附勢して支持する場合であり、2点鎖線で示される状態でボディサイドパネルB、Cのパネル端縁を離間した二点で押圧附勢して支持する場合である。
なお、受け部30の回動はストッパ手段80により規制されるようになっている。このストッパ手段80による回動規制は、図2で見て、受け部30の実線状態では左側のストッパ手段80により左廻り方向の回動が規制されている。同様に、受け部30の2点鎖線状態では右側のストッパ手段80により右廻り方向の回動が規制されている。
【0022】
このようにこの実施例の場合には、1つのクランプ装置で二点を支持する場合であって、その支持すべき二点の位置が複数車種のボディサイドパネルA、B、Cで異なる場合であっても、それを受ける二点の受け面36の位置は上下方向に相対的に自在に回動変位して確実に押圧附勢支持してクランプすることができる。そして、その回動範囲はストッパ手段80により必要以上の回動が規制されており、クランプ作業がスムースに行うことができるようになっている。
【0023】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はその他各種の実施形態が考えられるものである。
例えば、上記の実施例では、離間した二点の受け面36をパネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な構成を達成する手段として、受け面36を有する受け部30を押圧附勢移動機構50に対してヒンジ結合して受け部30を回動させる構成の場合について説明したが、押圧附勢クランプ装置20自体を搬送設備10に取付けるにあたって、その取付けをヒンジ結合として押圧附勢クランプ装置20全体を回動させて達成する構成としても良い。
また、上記の実施例のヒンジ結合位置は二点の受け面36の中央位置となっているが、ヒンジ結合位置は二点の受け面36の位置間であれば良い。なお、上記実施例のように中央位置とした場合には、装置全体の安定バランスが良いと言う利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る押圧附勢クランプ装置の実施例を示す側面図である。
【図2】同実施例の正面図である。
【図3】複数車種のボディサイドパネルを搬送するために押圧附勢クランプ装置をマテハンに共用化して配置した取付状態を示す配置図である。
【符号の説明】
【0025】
10 搬送設備(マテハン)
16 ボルト
18 取付基盤
20 押圧附勢クランプ装置
30 受け部
32 受け部本体
34 受け面部材
36 受け面
38 係合溝
40 ボルト
42 取付孔
50 押圧附勢移動機構
52 駆動シリンダ(エアシリンダ)
52a 上端部
53a 供給排出口
53b 供給排出口
54 作動ロッド
56 中間取付部材
58 支持アーム
58a 上方部材
60 ボルト
62 支持部
70 伝達機構部位
72a 作動ロッド側部材
72b 作動ロッド側部材
72c 作動ロッド側部材
74a 結合部材
74b 結合部材
74c 結合部材
76 ヒンジピン
80 ストッパ手段
82 ボルト
84 ボルト
X、Y、Z 支持箇所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の自動車のボディサイドパネル等のパネル部品を機械的に搬送する製造ラインに用いられ、該複数種類のパネル部品に対してその支持箇所を押圧附勢によりクランプする押圧附勢クランプ装置であって、
前記パネル部品の搬送時の支持箇所に接して該支持箇所に対して押圧附勢によりパネル部材をクランプする受け部と、
前記製造ラインの機械的な搬送機構に取付けられ、前記受け部を前記パネル部品の支持箇所方向に向けて進退可能に移動させる駆動シリンダを含む押圧附勢移動機構と、から成り、
前記受け部には、前記パネル部品の一箇所の支持箇所に対してパネル端縁方向に離間した二点で受ける受け面を有し、該受け面には前記パネル部品の支持箇所のパネル端縁を受け入れる係合溝が形成されていると共に、該受け面の二点はパネル端縁に対して相対的に反対方向に変動可能な変動構成とされて装備されていることを特徴とする押圧附勢クランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の押圧附勢クランプ装置であって、
前記受け面の二点の変動構成は、該受け面を有する受け部が該受け面の二点の位置間で前記押圧附勢移動機構に対して回動可能にヒンジ結合されることにより構成されており、該受け部と押圧附勢移動機構との間には該受け部の回動を規制するストッパ手段が設けられていることを特徴とする押圧附勢クランプ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の押圧附勢クランプ装置であって、
前記受け面に形成される係合溝はV形状溝であり、複数条形成されていることを特徴とする押圧附勢クランプ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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