説明

押釦スイッチ用カバー部材

【課題】 EL素子に形成された端子を、コネクタ等の別部材を用いることなく、外部電源と接続させる。
【解決手段】 押釦スイッチ用カバー部材1は、キートップ11、基材フィルム12および加飾層13で一体成形されたキーシート10と、基材フィルム21、透明電極22、発光層23、誘電体層24および対向電極25で一体成形されたELシート20とを備える。ELシート20の対向電極25側には、絶縁層33が形成され、透明電極22と対向電極25の一端部には、外部電源と接続するための端子部32がそれぞれ形成される。キーシート10とELシート20は、接着層31により接着される。接着層31は、キーシート10およびELシート20における接触面のうちの一部にのみ形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光機能を有する電子機器に用いられる押釦スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機等の入力部に用いられる押釦スイッチ用カバー部材には、暗所での視認性を確保するために、押釦を構成するキートップ部を照光する照光機能が備えられている。これにより、ユーザが暗所で携帯電話機を使用した場合であっても、各押釦の機能を容易に認識することができる。
【0003】
下記特許文献1には、上述した照光機能を実現するための部材としてEL(エレクトロルミネッセント)素子を用いた押釦スイッチ用カバー部材に関する技術が開示されている。この押釦スイッチ用カバー部材に用いられているEL素子には、外部電源と接続するための端子が形成されている。
【特許文献1】特開2004−193060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、上述したEL素子に形成される端子は、対向基板上に設けられた外部電源側の端子に接続される。ここで、特許文献1に記載されている押釦スイッチ用カバー部材では、EL素子と対向基板との間に、例えば、固定接点を接続させるための金属製皿バネ部材や、この金属製皿バネ部材を押下するための押圧部等が設けられる。すなわち、EL素子と対向基板は、ある程度離されて設けられる。したがって、EL素子に形成された端子と、対向基板上に設けられた端子とを接続させるためには、コネクタ等の別部材を用いなければならなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、EL素子に形成された端子を、コネクタ等の別部材を用いることなく、外部電源と接続させることができる押釦スイッチ用カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、キートップと第1の基材フィルムとで一体成形されたキーシートと、キートップを下方側から照光するためのEL素子と第2の基材フィルムとで一体成形されたELシートと、第1の基材フィルムと第2の基材フィルムとを接着させる接着層と、を備え、接着層は、第1の基材フィルムおよび第2の基材フィルムにおける接触面のうちの一部に形成され、接着層が形成されずに第1の基材フィルムから遊離している第2の基材フィルム部分に対応して形成されているEL素子には、外部電源と接続するための端子部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第1の基材フィルムおよび第2の基材フィルムにおける接触面のうちの一部にのみ接着層を形成させることができ、接着層が形成されずに第1の基材フィルムから遊離している第2の基材フィルム部分に対応するEL素子に、外部電源と接続するための端子部を形成させることができる。したがって、端子部を、キーシートから遊離したELシート部分に形成させることができるため、キーシートから遊離したELシート部分をコネクタとして用いることが可能となる。すなわち、EL素子に形成された端子を、コネクタ等の別部材を用いることなく、外部電源と接続させることができる。
【0008】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記接着層は、少なくともEL素子の発光域に対応する上記接触面において形成されていることが好ましい。このようにすれば、EL素子の発光域に影響を及ぼすことなく、EL素子に形成された端子を、外部電源と接続させることができる。
【0009】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記第1の基材フィルムの上記接触面側に、加飾層が形成されていることが好ましい。このようにすれば、加飾層を、フラットな第1の基材フィルムの表面上に形成させることができるため、加飾後の加飾層をフラットな状態で維持させることができ、美的効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材によれば、EL素子に形成された端子を、コネクタ等の別部材を用いることなく、外部電源と接続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材を真上から見た平面図であり、図2は、この押釦スイッチ用カバー部材の要部断面図である。図3は、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材を用いた押釦スイッチの要部断面図である。
【0013】
図2に示すように、押釦スイッチ用カバー部材1は、キーシート10と、ELシート20とに大別される。
【0014】
キーシート10は、キートップ11と、基材フィルム12と、加飾層13とを有する。キートップ11は、基材フィルム12の上面側に形成され、加飾層13は、基材フィルム12の下面側に形成される。加飾層13を、フラットな基材フィルム12の下面側に形成することによって、加飾層13をフラットな状態で維持させることができるため、装飾による美的効果が向上する。
【0015】
ELシート20は、基材フィルム21と、透明電極22と、発光層23と、誘電体層24と、対向電極25とを有する。透明電極22、発光層23、誘電体層24および対向電極25によりEL素子が形成される。また、ELシート20の対向電極25側の表面には、絶縁層33が形成され、透明電極22と対向電極25の一端部には、外部電源と接続するための端子部32がそれぞれ形成される。
【0016】
キーシート10とELシート20は、接着層31により接着される。この接着層31は、例えば、接着剤、粘着剤、両面テープにより形成される。
【0017】
図2に示すように、接着層31は、キーシート10およびELシート20における接触面のうちの一部にのみ形成される。すなわち、キーシート10およびELシート20における接触面の一部には、非接着部が形成される。これにより、ELシート20の一部が、キーシート10に接着されずに、キーシート10から遊離(離隔)した状態で形成される。端子部32は、上記非接着部に対応して形成されているEL素子に形成される。すなわち、キーシート10から遊離したELシート20の一端部に形成される。
【0018】
図3に示すように、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材を、押釦スイッチに採用した場合には、キーシート10から遊離したELシート20の一端部に形成された端子部32が、対向基板51上に設けられた外部電源側の端子部52に接触することになる。すなわち、キーシート10から遊離したELシート20部分を設けることによって、この部分がコネクタの役割を果たすことができるようになり、それゆえに、コネクタ等の別部材を用いることなく、ELシート20の端子部32を、対向基板51上に設けられた端子部52と接続させることができる。なお、押釦スイッチ用カバー部材を、押釦スイッチに採用した場合には、キーシート10から遊離したELシート20部分は、端子部32および端子部52によって、対向基板51と電気的に接続され支持される。
【0019】
ここで、接着層31は、少なくともEL素子の発光域に対応する部分において形成されていればよい。EL素子の発光域とは、EL素子を形成する各層のうち、透明電極22、発光層23および対向電極25がそれぞれ重なり合う領域のことをいう。したがって、例えば、EL素子の発光域が、各キートップ11の直下部分にのみ形成されている場合には、接着層31は、少なくとも各キートップ11の直下部分において形成されていればよい。このようにすれば、EL素子の発光域に影響を及ぼすことなく、ELシート20の端子部32を、対向基板51上に設けられた端子部52と接続させることができる。
【0020】
次に、キーシート10を構成する各構成要素について説明する。
【0021】
基材フィルム12は、樹脂フィルムにより形成される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、またはこれらのアロイや共重合体等の変性物からなるフィルムが該当する。
【0022】
キートップ11は、例えば、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、シリコーンアクリル系の紫外線硬化型樹脂により形成される。
【0023】
次に、ELシート20を構成する各構成要素について説明する。
【0024】
基材フィルム21は、樹脂フィルムにより形成される。樹脂フィルムの具体例は、上述した樹脂フィルム12と同様である。
【0025】
透明電極22は、導電性ポリマーにより形成されるが、より好ましくは、透明性を有し、かつ導電性が高いポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンの誘導体により形成するのがよい。なお、必要に応じて、透明電極22の発光層23側の面上に、不透明な補助電極を少なくとも部分的に積層させて配線することとしてもよい。これにより、給電性を向上させることができ、透明電極22の導電性が補償される。補助電極を形成する材料は、後述する対向電極25を形成する材料と同様のものを用いるこができる。
【0026】
発光層23は、例えば、防湿被膜をコーティングした硫化亜鉛等の無機蛍光体粉を、バインダーに分散することにより形成される。なお、バインダーとしては、例えば、フッ素樹脂、合成ゴム、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはこれらの共重合物が該当するが、誘導率の高いバインダーを選択することによって、発光層23をより高輝度に発光させることが可能となる。
【0027】
誘電体層24は、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体粉を、バインダーに分散することにより形成される。バインダーの具体例は、上述した発光層23のバインダーと同様である。
【0028】
対向電極25は、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金、またはカーボンブラック、グラファイト等の導電性フィラーを、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系の樹脂もしくはゴム、またはこれらの共重合物に分散したものからなる導電膜により形成される。また、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金からなる金属膜、またはこれらの複合膜により形成してもよい。なお、複合膜は、例えば、電着、転写、化学メッキ、蒸着により形成される。
【0029】
絶縁層33は、例えば、ポリエステル系、アクリル系樹脂、合成ゴム系、ポリカーボネート系、シリコーン系、フッ素系の樹脂、またはこれらの複合物により形成される。この絶縁層33は、絶縁性を有するとともに、防湿性に優れた材料により形成することが好ましい。
【0030】
端子部32は、対向電極25として選択可能な材料により形成される。これにより、対向電極25を形成する形成の工程において端子部32を形成させることができるため、作業効率が向上する。なお、端子部32は、上述した材料により形成されることに限定されない。例えば、導電性接着剤、異方性導電接着剤またはこれらのテープ等を用いて金属端子やプリント基板を接合することにより形成してもよいし、対向電極25を露出させることにより形成してもよい。
【0031】
以上のように構成された押釦スイッチ用カバー部材1は、キーシート10およびELシート20における接触面のうちの一部に接着層31が形成され、キーシート10から遊離したELシート20の一端部に端子部32が形成されている点に特徴がある。このように構成することにより、キーシート10から遊離したELシート20の一端部に形成された端子部32を、コネクタ等の別部材を用いることなく、対向基板51上に設けられた端子部52と接続させることができる。
【0032】
また、本実施形態におけるキーシート10とELシート20は、それぞれが基材フィルムを用いて別部材として成形されている。したがって、例えば、EL素子に不具合が生じた場合には、EL素子を含むELシートのみを交換すれば不具合を解消することができる。すなわち、押釦スイッチ用カバー部材全体を交換しなければならなかった従来製品に比べて、押釦スイッチ用カバー部材のリペア性が向上する。
【0033】
[実施例]
次に、図4〜図6を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0034】
まず、図4(a)に示すように、光硬化性樹脂(UV−162B:ノガワケミカル社製商品名)を成形型50の凹部内に流し込み、その上に、厚さが50[μm]のPETフィルム(ルミラー:東レ社製商品名)を重ねて、紫外線を照射した。これにより、樹脂製のキートップ11と基材フィルム12とが一体成形された。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、基材フィルム12のキートップ11側の面とは反対側の面上に加飾印刷を施した。これにより、加飾されたキーシート10が得られた。
【0036】
次に、図5(c)に示すように、厚さが100[μm]のPETフィルム21(ルミラー:東レ社製商品名)の表面上に、透明電極22(Orgacon P3040:アグファ社製商品名)を形成した。
【0037】
次に、図5(d)に示すように、透明電極22上に、発光層23(8155NELミディアム:デュポン社製商品名)、誘電体層24(8153NEL絶縁体ペースト:デュポン社製商品名)、対向電極25(7152ELカーボンペースト:デュポン社製商品名)の各層を順次形成した。
【0038】
次に、図6(e)に示すように、透明電極22および対向電極25の一端部に端子部32(7152 ELカーボンペースト:デュポン社製商品名)を形成し、対向電極25上に絶縁層33(IN-10C:十条ケミカル社製商品名)を形成した。これにより、絶縁層33により保護されたELシート20が得られた。
【0039】
次に、キーシート10とELシート20を両面テープ31(ハイボン:日立化成ポリマー社製商品名)で貼り合わせる。これにより、押釦スイッチ用カバー部材1が得られた。
【0040】
なお、上述した実施形態における端子部32は、キーシート10から遊離したELシート20の一端部に形成されているが、端子部32を形成する場所はこれに限定されない。端子部32は、EL素子の発光域以外に設ければよく、例えば、ELシート20の中央付近に設けることとしてもよい。具体的に説明すると、例えば、図7に示す押釦スイッチ用カバー部材1において、各キートップ11の直下部分にのみEL素子の発光域が設けられている場合には、図7に示すように、キートップ11が配置されていない部分に、端子部32を設けることとしてもよい。
また、端子部32は、キーシート10から遊離したELシート20部分に形成されていればよい。例えば、図8に示すように、押釦スイッチ用カバー部材1を真上から見たときに、遊離したELシート20の一部が、キーシート10領域からはみ出して形成されている場合に、このはみ出したELシート20部分に端子部32を設けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態における押釦スイッチ用カバー部材を真上から見た平面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用カバー部材の要部断面図である。
【図3】図1に示す押釦スイッチ用カバー部材を用いた押釦スイッチの要部断面図である。
【図4】実施例における押釦スイッチ用カバー部材の製造工程を説明するための各部材の断面図である。
【図5】実施例における押釦スイッチ用カバー部材の製造工程を説明するための各部材の断面図である。
【図6】実施例における押釦スイッチ用カバー部材の製造工程を説明するための各部材の断面図である。
【図7】変形例における押釦スイッチ用カバー部材を真上から見た平面図である。
【図8】変形例における押釦スイッチ用カバー部材を真上から見た平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・押釦スイッチ用カバー部材、10・・・キーシート、11・・・キートップ、12・・・基材フィルム、13・・・加飾層、20・・・ELシート、21・・・基材フィルム、21・・・フィルム、22・・・透明電極、23・・・発光層、24・・・誘電体層、25・・・対向電極、31・・・接着層、32・・・端子部、33・・・絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと第1の基材フィルムとで一体成形されたキーシートと、
前記キートップを下方側から照光するためのEL素子と第2の基材フィルムとで一体成形されたELシートと、
前記第1の基材フィルムと前記第2の基材フィルムとを接着させる接着層と、
を備え、
前記接着層は、前記第1の基材フィルムおよび前記第2の基材フィルムにおける接触面のうちの一部に形成され、
前記接着層が形成されずに前記第1の基材フィルムから遊離している前記第2の基材フィルム部分に対応して形成されている前記EL素子には、外部電源と接続するための端子部が形成されていることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記接着層は、少なくとも前記EL素子の発光域に対応する前記接触面において形成されていることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記第1の基材フィルムの前記接触面側に、加飾層が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−5223(P2007−5223A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186407(P2005−186407)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】