説明

拘縮対策用ハンドグリップ

【課題】 患者等の手指に沿わせて握らせ易く、皮膚疾患を治癒または予防することができる拘縮対策用ハンドグリップを提供する。
【解決手段】
拘縮対策用ハンドグリップは、掌15と接触可能な握り部10と、握り部10から延びる少なくとも1本の帯12を有するハンドグリップであり、帯12が甲17および/または指16を巻き付け可能である布帛で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痴呆症、脳梗塞後遺症、麻痺などによって手指が拘縮して握り込んだままの状態となった患者等のための手指拘縮対策用ハンドグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、痴呆症、脳梗塞後遺症、麻痺などによって手指が拘縮して握り込んだままの状態となった患者等は、手指を固く握り込んでしまい、拘縮や変形を引き起こしたり、掌を爪で傷つけてしまったり、発汗による掌のむれや臭気の発生等がみられ、皮膚疾患を伴っていた。
【0003】
このような拘縮対策用具として、例えば、特許文献1には、掌で握れる大きさの本体と、本体の上部に指の間にはさめる複数個の突起を設け、その本体と突起は、柔らかく伸縮性のある布地を使用し、中に弾性体を入れた手指拘縮予防リハビリ用具が開示されている。特許文献2には、手の平の一部に当接する塊部と、塊部にそれぞれの基部が連結され、隣り合う手の指の付け根部分の間に嵌入する突出部とを有し、塊部及び突出部の表皮材が吸汗性を有する織布材からなり、突出部の内部の先と手の平一部に当接する塊部の内部には発泡材が内蔵されている手指介護用予防具が開示されている。これらの拘縮対策用具は、握り棒と称して上市されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66242号公報
【特許文献2】実用新案登録第3119481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献の拘縮対策用具では、患者等の手指に沿わせて握らせるのが困難であり、皮膚疾患を予防することができないという問題があった。本発明はかかる課題を鑑みてなされたものであり、患者等の手指に沿わせて握らせ易く、皮膚疾患を治癒または予防することができる拘縮対策用ハンドグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、掌と接触可能な握り部と、前記握り部から延びる少なくとも1本の帯を有するハンドグリップであり、前記帯が甲および/または指を巻き付け可能である布帛で形成されている、拘縮対策用ハンドグリップである。
【0007】
同じく請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の拘縮対策用ハンドグリップであって、前記帯は、隣り合う手の指の付け根の間に挿入するように握り部から延びている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明の拘縮対策用ハンドグリップであって、前記帯は、幅が20〜60mm、厚さが0.1〜2.0mmの布帛である。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に係る発明の拘縮対策用ハンドグリップであって、前記握り部と前記帯部は接合されて接合部を形成しており、前記接合部における帯の幅は帯部の幅よりも小さい。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明の拘縮対策用ハンドグリップであって、前記握り部は、クッション体と、クッション体を被覆する布帛からなり、前記クッション体は取り出し可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の拘縮対策用ハンドグリップは、掌と接触可能な握り部と、前記握り部から延びる手及び/又は指を巻き付け可能な帯を有することにより、拘縮の患者に握らせたときに、掌、指の間、および指の掌の痒み、表皮剥離、びらん、膿疱のような皮疹などの皮膚疾患を防止し又は治癒させたり、その症状を緩和させたりすることができる。また、発汗による掌のむれや臭気の発生を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用する拘縮対策用ハンドグリップの一実施例を示す平面図である。
【図2】上記実施例の拘縮対策用ハンドグリップの使用状態を示す図である。
【図3】本発明を適用する拘縮対策用ハンドグリップの別な実施例を示す平面図である。
【図4】上記実施例の拘縮対策用ハンドグリップの一使用状態を示す図である。
【図5】同じく上記実施例の拘縮対策用ハンドグリップの別な使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のハンドグリップは、例えば図1に示す棒状の塊からなる握り部10の棒先から、1本の布帛からなる帯12が延び出た形態である。握り部10はクッション体と、クッション体を被覆する布帛からなる棒状体である。
この例に示すハンドグリップは、図2のように帯を患者の手14の指16の間に挿入し、掌15、甲17に巻きつける。特に皮膚疾患部に巻き付けて使用することにより、掌15、指の皮膚疾患、臭い等を緩和することができる。
【0014】
本発明のハンドグリップの別な例は、図3に示す棒状の塊(以下、「棒状体」ともいう)からなる握り部10から、4本の布帛からなる帯121、122、123、12が延び出ている。帯は2〜5本とすることもできる。
【0015】
図3に示すハンドグリップは、図4のように帯121、122、123、12を隣り合う指の付け根間に挿入して握り部10を握らせ、指、特に皮膚疾患部に巻き付けて余剰帯をしばる。掌10、指16だけでなく指16の付け根にも布帛が接触するので、皮膚疾患、臭い等を緩和することができる。余剰帯をしばることで手から離れないように固定することができる。
【0016】
図3に示すハンドグリップは、図5のように、帯121、122、123、12を隣り合う指の付け根間に挿入して各指に巻き付け、余剰帯121、122、123、12を握り部10とともに患者に握らせて使用することもできる。
【0017】
帯12、121、122、123、12は、幅が20〜60mmの布帛であることが好ましい。より好ましい帯の幅は、30〜50mmである。また前記帯は、厚さが0.1〜2.0mmの布帛であることが好ましい。より好ましい帯の厚さは0.2〜1.0mmであり、さらにより好ましい厚さは0.3〜0.7mmである。なお、帯の幅は、長さ方向に不均一である場合は、最大となる幅の部分の長さをいう。また帯の厚さは、240gf/cm荷重で測定したときの平均厚さをいう。帯の幅及び/又は厚さが上記範囲を満たすと、拘縮の患者の手を広げて握らせるときに、帯を指の間に挿入しやすく、また手の指に巻き付け易い。
【0018】
帯12、121、122、123、12は、織物、編物、不織布等の布帛から形成される。特に、伸縮性を有する布帛であると、帯を指の間に挿入しやすい。また、手の指に巻き付けるときも、布帛を引き伸ばしながら指に巻き付けることができ、巻き付けた後からでも巻き付け位置を調整し易いという利点を有する。さらに、帯の端部同士を結び付け易い。前記伸縮性を有する布帛は、編物であることが好ましい。編物としては、よこ編み(平編み、ゴム編み、パール編み)等を用いることができる。
【0019】
前記布帛を構成する繊維素材としては、例えば、セルロース系繊維(木綿、麻、レーヨン、パルプなど)、蛋白質系繊維(羊毛、絹など)、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維などあらゆる天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維が使用される。なかでも、セルロース系繊維、特に木綿またはレーヨンは、吸水性が良いため、掌の汗を効率よく吸収することができる。
【0020】
本発明のハンドグリップは、掌、指の付け根、指に接触させることができるので、繊維素材として、抗菌、消臭、抗アレルゲン、抗痒み等の性能を有する素材を用いると、皮膚疾患を効果的に治癒、予防することができる。このような機能を有する素材としては、例えば、金属フタロシアニン誘導体が挙げられる。前記金属フタロシアニン誘導体は、
【0021】
【化1】

(I式中、MはFe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属、R、R、RおよびRは同一または異なる−COOH基または−SOH基であり、n1、n2、n3およびn4は0〜4で1≦n1+n2+n3+n4≦8を満たす正数)で示される。
例えば、有効成分となる金属フタロシアニン誘導体は、前記I式のとおりである。
I式中、MがCo、RおよびRが−COOH基である場合、下記II式
【0022】
【化2】

に示す構造となる。
【0023】
同じく金属フタロシアニン誘導体は、I式中、MがFe、R、R、RおよびRがすべて−COOH基、n1、n2、n3およびn4が各々1であると、下記III式
【0024】
【化3】

に示す構造となる。
【0025】
この鉄フタロシアニンテトラカルボン酸は、以下のようにして合成できる。ニトロベンゼンにトリメリット酸無水物と、尿素と、モリブデン酸アンモニウムと、塩化第二鉄無水物とを加えて撹拌し、加熱還流させて沈殿物を得る。得られた沈殿物にアルカリを加えて加水分解し、次いで酸を加えて酸性にすることで得られる。
【0026】
同じく金属フタロシアニン誘導体は、I式中、MがFe、R、R、R、およびRがすべて−COOH基、n1、n2、n3およびn4が各々2であると、下記IV式
【0027】
【化4】

に示す構造となる。
【0028】
同じくI式に示す金属フタロシアニン誘導体は、I式中、MがCo、RおよびRが−SOH基である場合、下記V式
【0029】
【化5】

に示す構造となる。
【0030】
同じく金属フタロシアニン誘導体は、I式中、MがFe、R、R、RおよびRが−SOH基であると、下記VI式
【0031】
【化6】

に示す構造となる。
【0032】
これらの金属フタロシアニン誘導体は、公知の方法により製造されるものであり、染料をはじめとし、酵素態様機能を有する機能性物質として上市もされている。鉄フタロシアニンテトラカルボン酸は、ニトロベンゼンにトリメリット酸無水物と、尿素と、モリブデン酸アンモニウムと、塩化第二鉄無水物とを加えて撹拌し、加熱還流させて沈殿物を得、得られた沈殿物にアルカリを加えて加水分解し、次いで酸を加えて酸性にすることで得られる。コバルトフタロシアニンオクタカルボン酸は、上記鉄フタロシアニンテトラカルボン酸の原料であるトリメリット酸無水物に代えてピロメリット酸無水物、塩化第二鉄無水物に代えて塩化第二コバルトを用いて同様の方法で製造可能である。
【0033】
前記金属フタロシアニン誘導体が抗菌性を有する理由は定かではないが、金属フタロシアニンは、還元性の悪臭物質や生体のタンパク質の一部が配位することにより、酸素を還元してスーパーオキシドイオンを生成し、これが抗菌作用を示し、フタロシアニン環の安定性、中心金属イオンの活性の両面において、高い抗菌性能を有していると考えられる。
【0034】
前記金属フタロシアニン誘導体の中心金属Mは、Fe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択されるが、抗菌活性の点ではFeまたはCoであることが好ましい。
【0035】
前記金属フタロシアニン誘導体の官能基は、−COOH基、−SOH基、またはそれらの塩から選択されるが、抗菌活性の点では−COOH基またはその塩であることが好ましい。
【0036】
前記金属フタロシアニン誘導体の塩としては、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩等が挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびに銅(II)塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン等との塩が挙げられる。
【0037】
前記金属フタロシアニン誘導体は、官能基の数、すなわちn1〜n4の合計が4以下であることが好ましい。官能基の数が4以下であると、抗菌効果が高い傾向にある。例えば、官能基が−COOH基では、官能基の数は1〜4であり、−SOH基では、官能基の数は1または2であることが好ましい。
【0038】
金属フタロシアニンの誘導体は、繊維に担持または混合して抗菌性を有することができる。繊維素材であると、嵩量があり大きな表面積を持つため、金属フタロシアニン或いはその誘導体が効率よく空気中の菌に接触する。
【0039】
金属フタロシアニン誘導体の繊維に対する含有量は、繊維に担持または混合でき、且つ抗菌効果を発揮し得る範囲であれば特に限定されないが、例えば繊維に対して金属フタロシアニン誘導体が0.1〜10質量%であることが好ましい。より好ましい金属フタロシアニン誘導体の含有量は、0.3〜5質量%であり、さらにより好ましくは0.5〜3質量%である。金属フタロシアニン誘導体の含有量が上記範囲を満たすと、十分な抗菌効果を発揮することができる。
【0040】
前記金属フタロシアニン誘導体を繊維させるとき、繊維を予めカチオン化処理していることが好ましい。カチオン化処理することにより、金属フタロシアニン誘導体の担持効果が大きくなるとともに、金属フタロシアニン誘導体が高い活性状態を保つこと、及び金属フタロシアニンが反応しなかった残基が抗菌活性を有するのでより一層の抗菌効果を高めることができる。
【0041】
前記カチオン化処理におけるカチオン化剤は、例えば、第4級アンモニウム塩型クロルヒドリン誘導体、第4級アンモニウム塩型高分子、カチオン系高分子、クロスリンク型ポリアルキルイミン、ポリアミン系カチオン樹脂、グリオキザール系繊維素反応型樹脂等が挙げられ、これら単独または2種以上組み合わせたものが用いられる。特に、第4級アンモニウム塩型クロルヒドリン誘導体が好ましい。
【0042】
金属フタロシアニンの誘導体が担持された繊維には、金属アンミン錯体を担持することが好ましい。銅、銀、亜鉛から選ばれる金属のアンミン錯体イオンを含む溶液などに浸漬、コーティング等の加工を施して、銅アンミン錯体イオン、銀アンミン錯体イオン、または亜鉛アンミン錯体イオンを担持することができる。金属アンミン錯体を担持することにより、拘縮の人の掌、指の間、および指の掌の痒み、表皮剥離、びらん、膿疱のような皮疹などの皮膚疾患を防止し又は治癒させたり、その症状を緩和させたりすることができる。また、アンモニア等の汗が分解して発生する汗由来の臭い成分、及び酢酸、酪酸、イソ吉草酸など低級脂肪酸等の身体から分泌される皮脂が分解して発生する皮脂由来の臭い成分を有効に消臭することができる。
【0043】
金属アンミン錯体としては、銅アンミン錯体イオンの抗菌消臭効果が高く、特に好ましい。繊維に、銅イオンを担持させる方法としては、例えば硫酸銅(CuSO)あるいは硝酸銅(Cu(NO)、具体的には硫酸銅五水和物をアンモニア水に溶解した溶液に浸漬して銅アンミン錯体イオンを吸着し、担持することができる。
【0044】
金属アンミン錯体の繊維に対する含有量は、繊維に担持または混合でき、且つ抗菌効果を発揮し得る範囲であれば特に限定されないが、繊維に対して金属塩量が0.1〜20.0g/Lであることが好ましい。より好ましい金属塩量は、1.0〜10.0g/Lであり、さらにより好ましくは2.0〜5.0g/Lである。金属アンミン錯体の含有量が上記範囲を満たすと、十分な抗菌効果を発揮することができる。
【0045】
金属フタロシアニン誘導体および金属アンミン錯体を担持させる繊維素材(以下、「抗菌消臭繊維」ともいう)は、例えばセルロース系繊維(木綿、麻、レーヨン、パルプなど)、蛋白質系繊維(羊毛、絹など)、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維などあらゆる天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維が使用される。なかでもセルロース系繊維、特に木綿またはレーヨンは、吸水性が良いため、吸水した担体として抗菌・消臭機能を発現するための好条件をそなえている。また、前記天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維を用いて糸、織編物、ウェブ、不織布、紙、ネット等の繊維構造物を構成した後に前記金属フタロシアニンの誘導体および金属アンミン錯体を担持させてもよい。
【0046】
前記繊維構造物を構成した後に前記金属フタロシアニンの誘導体を担持させる方法としては、バインダー成分を含む金属フタロシアニン誘導体溶液を繊維構造物へ印刷、噴霧またはコーターを用いて塗布する方法、繊維構造物を該溶液へ浸漬させる方法、あるいは直接染色、イオン染色などの染色法がある。イオン染色法とは、コットン、レーヨンなどの繊維にカチオン基を結合させ、そのカチオン基と染料の持つカルボキシル基やスルホン基のアニオン基をイオン的に結合させて行う染色法である。
【0047】
前記布帛における抗菌消臭繊維は、抗菌消臭繊維100質量%であってもよいが、他の抗菌消臭繊維との混合、あるいは抗菌効果が得られる範囲内で他の繊維と混合してもよい。他の繊維と混合する場合は、抗菌消臭繊維が少なくとも20質量%であることが好ましい。より好ましくは、少なくとも30質量%である。さらにより好ましくは、50質量%以上である。
【0048】
前記握り部は、人が握ることができる大きさであれば、形状、材料等は特に限定されない。握りやすさ、汗の吸収性等を考慮すると、クッション体と、クッション体を被覆する布帛からなる棒状体であることが好ましい。前記棒状体の大きさは、拘縮の程度、手の大きさに合わせて適宜設定すればよいが、クッション体を取り出し可能として、クッション体の量を調整できることが好ましい。例えば、クッション体を被覆する布帛を袋状に作製し、一部を開閉可能な開口部を設けることにより、クッション体の量を調整できる。また、クッション体を取り出せることにより、布帛の交換や布帛を洗濯することも可能となる。なお、クッション体の取り出し性を考慮して、棒状体の開口部から接合される帯までの間、例えば棒状体の側面においても接合されず開口していても良い。
【0049】
前記クッション体としては、例えば、ウレタンフォーム、不織布、詰め綿、そば殻等の詰め物が挙げられる。なかでも、低反発ウレタンフォーム、例えば反発弾性率が15%程度以下(JIS K 6400-3)のウレタンフォームであると、握った状態を保持し易い点で好ましい。
【0050】
前記握り部と前記帯は、縫製、融着、接着等の手段により接合されて接合部を形成していることが好ましい。特に、縫製により接合すると、布帛の柔軟性を損なうことがない点で好ましい。
【0051】
前記接合部において、接合部分の帯の幅は帯の幅よりも小さいことが好ましい。かかる構成を採ることにより、拘縮の患者の手を広げて帯を指の間に挿入させ易い。接合部分の帯の幅を帯の幅よりも小さくするには、帯の端部を折り畳みながら握り部と接合することにより、得ることができる。
【0052】
前記帯の接合位置は、特に限定されないが、握り部が棒状体である場合、棒状体の長さ方向(胴部分)の端部近傍に最初の帯を接合し、他の帯を順次接合すると良い。棒状体の他端部は、掌の握りに余裕を持たせるために、帯が1〜2本程度入る長さの帯の非接合部を設けることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により抗菌消臭材を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(比較例1)
木綿からなる編物(よこ編み、厚さ0.5mm、目付110g/m)を精練・漂白した後、カチオン化剤として50cc/LのカチオノンUK(一方社製の商品名)と、15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液との混合液10Lに、浴比1:10の条件で入れ、80℃で45分間反応させた。得られたカチオン化木綿編物を十分に水にて洗浄した後、濃度0.5%owfの鉄(III)フタロシアニンテトラカルボン酸の水酸化ナトリウム溶液(pH=12)10L中に浸し、80℃で30分間撹拌した後、酸で中和し、木綿編物を染色した。得られた染色木綿編物を十分に水にて洗浄して乾燥し、鉄(III)フタロシアニンテトラカルボン酸が担持された編物である比較例1の試料を得た。
【0055】
(実施例1)
上記比較例1の試料を、硫酸銅五水和物80gをアンモニア水溶液(15cc/L)の20Lに投入し、30℃で20分間撹拌しながら浸漬した。これを十分に水にて洗浄して乾燥し抗菌消臭編物である実施例1の試料を得た。
【0056】
(比較例2)
無加工の標準綿布を試料として使用した。
【0057】
(抗菌性試験)
試験対象菌株:黄色ぶどう球菌 Staphylococcus aureus ATCC 6538P
試験方法:JIS L 1902:2008定量試験(菌液吸収法)
生菌数の測定方法:混釈平板培養法
増殖値算出方法:log b -log a (試験成立条件は増殖値≧1.0であること)
各活性値の算出方法:殺菌活性値=log a -log c
静菌活性値=(log b -log a)-(log c -log o)
【0058】
(抗菌性試験結果)
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
比較例1の試料、実施例1の試料は、ともに抗菌防臭加工の評価基準である制菌活性値が2.2以上をクリアしていた。特に実施例1の試料は、静菌活性値が3.7であり、評価基準を大きくクリアしており、生菌数が、比較例1の試料の生菌数と比べ約1/10に減少したことから、高い抗菌性を有することが確認できた。
【0062】
(消臭性試験)
消臭性試験は、拘縮により発生するとされる身体から分泌される皮脂が分解して発生する皮脂由来の臭い成分として、低級脂肪酸のモデルガスとして酢酸を用いた。
試験方法:各試料1gを5リットルテドラーバッグに入れ、規定濃度の酢酸ガス3リットルを注入し、経時毎にガス検知管で濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0063】
(消臭性試験結果)
【0064】
【表3】

【0065】
比較例1の試料は、比較例2の試料に比べほぼ2倍の消臭効果を有していたが、さらに銅アンミン錯体を含む実施例1の試料は、比較例1の試料よりも消臭効果が高く、24時間でほぼ無臭化することが確認できた。
【0066】
(ハンドグリップの作製)
(実施例10)
握り部の袋状物及び帯を作製するため、実施例1の試料の編物を所定の大きさに裁断した。まず握り部形成用編物地は、編地の縦方向に13cm、横方向に26cmの長方形状に裁断した。一方、帯は、長さ21cm、幅4cmの短冊状に裁断し、4本準備した。次に、握り部形成用編物地を横方向に2つ折りした。帯の端部を3段折りにして握り部の胴部に相当する編物地の長辺側(編地の縦方向側)に重ね合わせ、さらに編物地を横方向に2つ折りして、編物地が筒状になるように縫製した。さらに、筒状に一端を縫製して、他端が開閉可能な開口部を有する、長辺が約13cm、短辺が5.5cmの長方形の袋状物に、長さ約20cm、幅約4cmの帯を、接合部の帯の幅2〜2.5cmで接合したハンドグリップのカバーを作製した。
【0067】
一方、握り部の袋状物に詰めるクッション体として、低反発ウレタンフォームを細かく裁断し、ネットに挿入したものを準備した。
【0068】
上記ハンドグリップのカバーの開口部からクッション体を挿入して、棒状のハンドグリップを得た。
【0069】
(実施例11)
実施例10と同じの抗菌消臭編物を準備し、実施例10と同様の握り部形成用編物地を用意した。一方、帯は、長さ30cm、幅8cmの短冊状に裁断し、長さ方向に2つ折りにして端部同士を縫製して、帯1本を作製した。前記帯の端部を握り部の一端と重ね合わせて縫製して、他端が開閉可能な開口部を有する、長辺が約13cm、短辺が5.5cmの長方形の袋状物に、長さ約30cm、幅約4cmの帯を接合したハンドグリップのカバーを作製した。上記ハンドグリップのカバーの開口部から実施例1と同じクッション体を挿入して、棒状のハンドグリップを得た。
【0070】
(比較例10)
掌サイズの塊部と、指の付け根部分の間に挿入可能な突出部4本を有し、塊部及び突出部にクッション体を詰めた手指介護用予防具を作製した。尚、形状は特許文献2に記載のものと同じである。
【0071】
病院スタッフが実施例10、実施例11のハンドグリップを拘縮の患者に握らせ、帯を手指に巻き付けて1週間使用させた。実施例10、実施例11のハンドグリップは、患者に握らせ易く、帯を手指に巻き付けるので、掌、手指だけでなく、指の付け根にも接触して、疾患および臭いを低減することができた。手指への巻き付け作業は、実施例10、の厚みが薄い帯の方が指への巻き付け性は良好であった。一方、比較例10の手指介護用予防具は、突出部が太いため、拘縮患者の指の間に入れにくく作業性に劣り、指や爪の疾患を低減させる効果も低いものであった。
【0072】
実施例のハンドグリップは、拘縮の患者に握らせ易く、帯を手指に巻き付けて使用すると、皮膚疾患を治癒または予防、臭い等の低減に効果があることから、手の拘縮対策用具として医療に役立つ。
【符号の説明】
【0073】
10は握り部、帯12は握り部、14は手、15は掌、16は指、17は甲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌と接触可能な握り部と、前記握り部から延びる少なくとも1本の帯を有するハンドグリップであり、前記帯が甲および/または指を巻き付け可能である布帛で形成されている、拘縮対策用ハンドグリップ。
【請求項2】
前記帯は、隣り合う手の指の付け根の間に挿入するように握り部から延びている、請求項1に記載の拘縮対策用ハンドグリップ。
【請求項3】
前記帯は、幅が20〜60mm、厚さが0.1〜2.0mmの布帛である、請求項1または2に記載の拘縮対策用ハンドグリップ。
【請求項4】
前記握り部と前記帯部は接合されて接合部を形成しており、前記接合部における帯の幅は帯部の幅よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の拘縮対策用ハンドグリップ。
【請求項5】
前記握り部は、クッション体と、クッション体を被覆する布帛からなり、前記クッション体は取り出し可能である、請求項1に記載の拘縮対策用ハンドグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95734(P2012−95734A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244252(P2010−244252)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(306024078)ダイワボウノイ株式会社 (11)
【出願人】(804000015)株式会社信州TLO (30)
【出願人】(508042869)学校法人 大妻学院 (2)
【Fターム(参考)】