拡大シールド装置
【目的】地盤条件に限定されることなく円滑な掘進が可能で、且つ施工の自由度が高い、開放型の拡大シールド装置を提供する。
【構成】その前面に、除去すべき既設の覆工3aの径L3より大なる径L4をなす開放部5sを形成した外殻5の内周に沿って、覆工3aの周囲の地盤2を掘削する地盤掘削手段12を回転駆動自在な形で輪状に設け、地盤掘削手段12に、インペラープレート17Pに列状に装着された形の複数の刃17A(17B)を支持する刃支持面16aを、前側から後側に向けて縮径する形で設ける。地盤2の掘削ズリは開放部5sから、刃支持面16aと覆工3aの外周が形成するズリ出し空間33を介して外殻5内に搬送集積される。
【構成】その前面に、除去すべき既設の覆工3aの径L3より大なる径L4をなす開放部5sを形成した外殻5の内周に沿って、覆工3aの周囲の地盤2を掘削する地盤掘削手段12を回転駆動自在な形で輪状に設け、地盤掘削手段12に、インペラープレート17Pに列状に装着された形の複数の刃17A(17B)を支持する刃支持面16aを、前側から後側に向けて縮径する形で設ける。地盤2の掘削ズリは開放部5sから、刃支持面16aと覆工3aの外周が形成するズリ出し空間33を介して外殻5内に搬送集積される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、老朽化した既設管渠を新設管渠に拡大敷設替えするに用いるに好適な、拡大シールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管渠を改修、即ちこれを新設管渠に更新する際には、地上から土留め用杭を用いて撤去、新設作業を行う開削工法や、或いは既設管渠より一回り大きな断面のシールド機をその周囲を取り囲む形で推進させて、該シールド機内で既設管渠の解体撤去作業と、既設のものよりサイズアップした新設セグメントの建て込み作業を行うシールド工法等により、拡大敷設替えする方法がある。このうち、開削工法は公知のように道路事情、周辺環境を悪化させるために、こういった地上環境に影響を与えたくない地域においてはシールド工法の採用が多く望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、シールド工法には掘削すべき地盤の性状に応じて、密閉型、開放型等の各種の拡大シールド装置が用いられるが、密閉型シールドは、他の埋設物との離隔や土被りが小さい場合には切羽の圧力管理が難しく、またカッタビットの切削効率が全体作業の能率を左右するために、極めて緻密な施工計画及び管理が必要とされる、という施工上の問題点を抱えている。しかも、回転式の掘削機構を用いて、既設管渠周囲の地盤を拡大更新される新設管渠の径に合わせて環状に掘り抜く形で掘削するために、該既設管渠周囲の環状部分にここを密閉する形でシールド隔壁を設けなければならず、その装置構成が複雑になると共に、既設管渠の外径が大小していると密閉すべき環状部分の間隙幅が大小してしまうので、このような場合には、隔壁部分の密閉性の維持が難しくこれに対応することが出来ないために、施工の自由度が低い、という難点がある。一方、開放型シールドは施工の自由度が高く、任意の掘削機を選択的に用いることが出来る反面で、例えば既設管渠が開削工法で敷設されてその周りに埋め戻し土が用いられていたり或いは地下水が多い場合には地盤が軟弱になっているのでこれを緩ませて地盤沈下を引き起こす危険性が有り、これに反して、既設管渠周りに薬液注入が施されている場合には地盤が硬化してシールドスキンプレートの貫入抵抗があまりにも大になってしまうために、このような開放型シールドを適用可能な地盤条件は極めて限定されているという不都合がある。そこで本発明は、上記事情に鑑み、地盤条件に限定されることなく円滑な掘進が可能で、且つ施工の自由度が高い、開放型の拡大シールド装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、地盤(2)中を推進自在な殻体(5)を有し、前記殻体(5)の推進方向前面側に、除去すべき既設管(3a)の径L3より大なる径L4の開放部(5s)を形成し、前記殻体(5)の開放部(5s)に、前記既設管(3a)の周囲の地盤(2)を掘削する地盤掘削手段(12)を、該殻体(5)の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段(12)に複数の掘削ビット(17A)、(17B)が装着された掘削面(16a)を、前記殻体(5)の前側から後側に向けて縮径する形で形成して、構成される。なお、( )内の番号等は、図面における対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以下の作用の欄についても同様である。
【0005】
【作用】上記した構成により、本発明は、シールド掘進に際し掘削ビット(17A)、(17B)が地盤(2)を掘削することにより生じた掘削ズリは、地盤掘削手段(12)がその回転動作とシールド前進動作により、掘削面(16a)を介して開放部(5s)の前側から後側に搬送するように作用する。
【0006】
【実施例】図1は本発明による拡大シールド装置の一実施例を示す側面図、図2は図1に示す拡大シールド装置のII、II矢視図、図3は図1に示す拡大シールド装置のIII、III矢視図、図4は図1に示す拡大シールド装置のIV、IV矢視図、図5は本発明による拡大シールド装置における地盤掘削手段のカッタ刃の回転動作を示す正面図、図6乃至図8は図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図、図9は図5に示す地盤掘削手段のカッタ刃による地盤掘削状態を示す斜視図である。
【0007】拡大シールド装置であるシールド装置1は、図1に示すように、所定の外径L1をなす形で全体形状円筒形に形成されたスキンプレート、即ち外殻5を有しており、外殻5は、地盤2の地表面2aから所定の深さP1をなしその伸延方向を図1矢印A、B方向に向けた形で埋設供用されていて除去すべき既設管である下水本管等の横断面形状円形をなす既設管路3のうち、既に撤去更新された部分を除く図1矢印B方向端部において、該既設管路3を形成している鉄筋コンクリート等からなり外径L3をなす円筒状の覆工3aを、該外殻5の前端部であるフード部53が包囲する形で配設されている。一方、外殻5の後側である図1矢印B方向側には、新設管路3を拡大敷設替えした形の横断面形状円形をなす新設管路30が、例えば鉄筋コンクリート、或いはスチール等からなるセグメント31を、該セグメント31を構成している各々のセグメントピースを1リングの幅L2をなす形で円筒状にジョイントして、これを地盤2中に埋設させることにより、既に敷設更新されており、セグメント31の前端部31aは、シールド装置1の外殻5内に、1乃至2リング分(図1においては1リング分強)入り込み配置した形になっている。セグメント31の外周と外殻5の内周との間にはテールシール51が、該外殻5の後端部である矢印B方向側端部において、両者31、5間の間隙をシールする形で設けられており、また、外殻5内の後部には、セグメント31を組立て建て込みするためのリンク式のエレクタ10が設けられている。
【0008】エレクタ10は、図2に示すように、外殻5の内周との間に所定の間隙L6をなす形で板輪状に形成されたガイドリング10cを有しており、ガイドリング10cは、外殻5の内周に装着された複数のガイドローラ10dを介して、該外殻5に対してシールド内周方向である矢印G、H方向に回転自在な形でこれに支持されている。ガイドリング10cには、セグメントピースを把持し得る把持部10bが、該ガイドリング10cを介してシールド内周方向に回転自在で且つ放射方向である矢印I、J方向に突出後退自在な形で(即ち各セグメントピースを移動位置決め自在な形で)支持されており、また、ガイドリング10cの図1矢印B方向側に示す後方側には、矢印A、B方向に伸延する梁状部材である組立作業台10aが、図示されない新設管路30の矢印B方側から適宜な搬送手段を介して搬送される、セグメント31を構成しているセグメントピースを適宜に向き替えして把持部10bに受け渡し自在な形で、ガーダー部52を介して外殻5に支持装着されている。
【0009】エレクタ10の前方である図1左方には、シールド装置1の外殻5をその推進方向である矢印A方向側に向けて地盤2中に推進させ得る推進ジャッキ11が、図3に示すように、該外殻5の内周に沿ってここに複数装着固定されており、推進ジャッキ11の後側である図1矢印B方向側には、該ジャッキ11のラム11aが、セグメント31の前端部31aに推進反力を求めて、矢印A、B方向に突出後退駆動自在な形で、図2に示すように、外殻5の内周に沿って矢印G、H方向に並んで配設されている。エレクタ10の図1上方にはスクリュコンベヤ9が、除去されるべき覆工3aのガラと、拡大掘削されるべき覆工3aの周囲の地盤2のズリを、外殻5のガーダー部52より後方側である矢印B方向側に搬送し得る形で設けられており、スクリュコンベヤ9には採土口9aが、前方側である図1矢印A方向側に開口する形で設けられている。
【0010】ところで、シールド装置1には、図1に示すように、その外殻5の前端部であるフード部53が既に述べたように既設管路3の覆工3a後端部を包囲する形で円筒状に形成されているところから、該外殻5の前面側である矢印A方向側に、該覆工3aの外径L3より大なる径L4の開放部5sが形成されており、外殻5の開放部5sには覆工3a周囲の地盤2を掘削するためのインペラーカッタ式の地盤掘削手段12が、その回転本体15の最小内径部分が前記既設管路3の未だ解体撤去されていない覆工3aの後端部である矢印B方向側端部近傍において該覆工3a外周との間に所定幅のズリ出し空間33を環状に形成し、該外殻5の内周の全周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設けられている。即ち、地盤掘削手段12は、図1及び図4に示すように、開放部5sの径L4より若干だけ小さな外径をなし且つ除去すべき覆工3aの外径L3より若干大きな内径L5をなす形の輪状に形成された回転本体15を有しており、回転本体15は駆動モータ13を介してその全体が図1CT1で示すシールド軸心を回転中心として図4矢印M又はN方向に回転駆動自在な形で、開放部5sにおいて外殻5の前端部を構成しているフード部53の内周に沿って配設されている。回転本体15は複数のカッタユニット16が、該本体15として一体に回転自在な形で連結されて構成されており、実施例においては図2に示すように、8片のカッタユニット16が周方向である図4矢印G、H方向に沿って相互に連結される形で組み合わせられることにより、地盤掘削手段12が輪状に形成されている。
【0011】地盤掘削手段12の回転本体15を構成している複数のカッタユニット16のそれぞれには、該掘削手段12の掘削面である刃支持面16aが、図1に示すように、外殻5のフード部53の前側から後側に向けて縮径する形をなすよう設けられており、各々の刃支持面16aには、図4に示すように、該刃支持面16aと交差方向にリブ状をなす形の一対のインペラープレート17P、17Pが、それぞれ円弧を描きつつ互いに対向する形で、該支持面16aに対して突出後退自在に設けられている。インペラープレート17P、17Pには、それぞれが地盤を掘削し得る形でその刃先を放射方向内側の前方に向けた、図4実線で示す正回転用の刃17Aと、図4点線で示す逆回転用の刃17Bが、複数並列して、各複数の刃17A、17B列毎に該プレート17Pの突出後退動作により刃支持面16aに対して突出後退駆動自在な形で装着支持されている。地盤掘削手段12の刃17A、17Bは、回転本体15が矢印N又はMのいずれかの方向に示す正回転動作を行うとき、正回転用の刃17Aがこれが装着されたインペラープレート17Pと共に刃支持面16aに対して突出状態を呈すると共に、これと連動して逆回転用の刃17Bがこれが装着されたインペラープレート17Pと共に後退状態を呈し、また、回転本体15が逆回転動作を行うとき、逆回転用の刃17Bが刃支持面16aに対して突出状態を呈すると共にこれと連動して正回転用の刃17Aが後退状態を呈するように、駆動制御されている。従って、地盤掘削手段12は、各カッタユニット16において複数の刃17A、17Bのいずれかが、該刃17A又は17Bを支持するインペラープレート17Pと共に刃支持面16aのそれぞれから突出して、図5に示すように、フード部53の内周側に近いその最外方側から放射方向内側に向けて円弧をなす形で並列配置することにより、回転本体15の回転時に、該回転動作により掘削される地盤2の掘削ズリを、開放部5sにおいて覆工3aと該回転本体15内周との間に形成配置されるズリ出し空間33を経由させる形で、外殻5内の後側である図1矢印B方向側に渦巻状に搬送し得るようになっている。
【0012】一方、シールド装置1の外殻5の前方である図1矢印A方向側には、覆工3aを切断するためのコンクリートカッタ6が、既設管路3の後端即ち矢印B端部における覆工3a上にここを走行可能な形で配置されており、コンクリートカッタ6には、該覆工3aの全周を既設管路3の周長方向に沿って切断し得る鋸刃6aと軸方向に沿って切断し得る鋸刃6bが、それぞれ周長方向(図2矢印G、H方向)に移動自在で且つ放射方向(矢印I、J方向)に突出後退自在な形で、回転駆動自在に設けられている。コンクリートカッタ6の前方である矢印A方には、地盤改良機7が、図1左右一対に示すそのグリッパ7b、7bを介して該改良機7の支持本体であるビーム7a部分が覆工3aの内周に支持され得る形で、該覆工3aの内底部分にここを走行自在に配設されており、地盤改良機7には薬注ガン7cが、該ガン7cに接続されるパイプ19等を介して地盤2中にこれを改良強化するための薬材を供給注入し得る形で設けられている。
【0013】シールド装置1は、以上のような構成を有しているので、該シールド装置1を用いて既設管路3の改修を行うには、該既設管路3の通水切替、ヘドロ処理、管内洗浄、枝管撤去等と、該管路3の上方における地表面2a部分の陥没対策として路面仮覆工を行う等の事前処理を施して後、適宜な発進立坑からシールド装置1を発進させる。そして、図1に示すように、その外殻5を未だ解体除去されていない既設管路3の後端部からその後側にかけて覆工3aの外方を包囲する形にしてシールド装置1を配置させ、外殻5内部におけるその前半分である矢印A方向側において覆工3aの解体除去作業を行い、一方外殻5内部の後半分では、新設管路30を形成するためのセグメント31を建て込む作業を行いながら、該装置1を図1矢印A方向側に推進させて、既設管路3をこれより一回り大きな新設管路30に更新していく。
【0014】シールド推進に際しては、まず図6に示すように、地盤改良機7のビーム7aを、グリッパ7b、7bを介して既設管路3の覆工3aに支持させた状態にしておいて、薬注ガン7cに薬注用のパイプ19を接続し、該パイプ19が所定の長さになるまで(即ち地盤改良すべき地盤2の深さに対応した長さ分だけ)適宜継ぎ足し延長させつつ、地盤2中に貫入させる。そして、地盤2を改良安定化させるに適した公知の地盤改良用薬液を、薬注用のパイプ19を引き戻しつつ、図示しない注入用ポンプフィーダ等から薬注ガン7cを介して地盤2中に圧送注入する。すると、シールド装置1の前方側である矢印A方側に配置している外殻5の前端部より先行する部分の地盤2は、既設管路3の覆工3aの放射方向外側を包囲する部分の地盤2が地下水も含めて薬液により固められて所定の地盤強度をなす形で、その改良安定化が図られる。従って、シールド装置1の外殻5は常に、その推進に先立ち、改良安定化が図られて該外殻5内への土砂流入が防止された形の地盤2中を推進していく形になる。
【0015】こうして地盤改良用薬液の注入完了により、外殻5より先行する地盤2を補強して地盤2の改良安定化を図る一方で、図6に示すように、既設管路3の未だ解体除去されていない覆工3aを、その後端部である矢印B方向側端部からシールド装置1の1推進ピッチに対応した距離分だけ前方位置において、コンクリートカッタ6の鋸刃6aを放射方向外側である矢印J方向側に突出させた状態で全周方向に亙って回転駆動させる形で、周方向に切断する。なお、こうしてコンクリートカッタ6の鋸刃6aにより周方向に切断されて所定長さの環状になった覆工3aの後端部は、該覆工3aの外周囲の地盤2に未だ定着支持されていることにより、単に鋸刃6aと対応する切断位置において分割された形で環状をなすまま、ここに残留配置している。
【0016】こうしておいて、次に図7に示すように地盤改良機7を既設管路3の前方側である矢印A方向側に前進させる形で、覆工3aのうち次の工程で解体除去される後端部分上から退避させる。そして、推進ジャッキ11のラム11aを介して既に建て込み覆工されて地盤2に定着支持されている形の新設のセグメント31の前端部31aに推進反力を求める形で、シールド装置1の外殻5を矢印A方向に向けて所定距離、即ち例えば新設されるセグメント31のリング幅L2と対応する形の推進ジャッキ11のストローク分だけ推進させる。この際、これと同時に、既に建て込み定着された新設管路30のセグメント31の前端部31aに推進ジャッキ11のラム11aを当接させた状態において、推進補助手段12を、駆動モータ13を介して回転本体15を外殻5のフード部53に対して、その開放部5sにおいてシールド軸心CT1を回転中心として該回転本体15の正回転方向である例えば矢印M方向(又はN方向)に回転させる形で駆動させる。すると、既に地盤改良用薬液により改良安定化が図られて所定の強度に到達している地盤2は、複数のカッタユニット16の回転刃17Aの回転動作と外殻5の推進距離に対応した形で、筒状に掘削される。
【0017】即ち、地盤掘削手段12の正回転動作時には、図5に示すように、各カッタユニット16の刃17A、17Bのうち正回転用の刃17Aのみが刃支持面16aに対して突出配置し、逆回転用の刃17Bは後退配置するように(図5においては省略)、これを駆動制御する。すると、推進ジャッキ11により矢印A方向に押されつつ、例えば矢印M方向に示す正回転方向に回転する回転本体15は、図9に示すように、各カッタユニット16毎に列をなす複数の刃17Aがスクリュ状に旋回する形で、該刃17Aが当接する範囲の地盤2を掘削する。そして、掘削されてズリとなった地盤2は、回転本体15の回転及び移動動作により、インペラープレート17Pとここに列状に装着された複数の刃17Aにより渦巻状に押されて、刃支持面16aと既設の覆工3aの外周との間の間隙であるズリ出し空間33を順に送られる形で、即ち刃支持面16a部分の外周16b側から内周16c側に向けて押圧搬送されて、開放部5sの前側から後側へ向けて搬送される。こうして、開放部5sの前側から後側に向けて渦巻状に押圧搬送される地盤2の掘削ズリは、該開放部5sからズリ出し空間33を介して外殻5内の地盤掘削手段12の後側に円滑に送られる。そして地盤掘削手段12の後側に搬送された地盤2の掘削ズリは、該地盤掘削手段12の掘進及びズリ搬送動作とその自重により、外殻5内の底部近傍に一旦集積貯留される形になる。そこでスクリュコンベヤ9を駆動させれば、これにより、その採土口9aを介して、シールド装置1の外殻5内よりさらに後方側である、既に建て込み構築された新設管路30中に掘削ズリを効率的に搬出することが出来る。
【0018】こうして、覆工3a周囲の地盤2は、開放部5sの径L4より若干小さな外径をなし且つ除去すべき覆工3aの外径L3より若干大きな内径L5をなす形の輪状に形成された地盤掘削手段12の、回転本体15の各刃支持面16aに装着された複数の刃17A及びインペラープレート17Pの回転及び推進ジャッキ11を介しての移動動作により筒状に掘削されて、当該掘削ズリが順次外殻5内における地盤掘削手段12の後側に搬送される形で、既設管路3aが、外殻5の推進距離分だけ径略L4をなすように拡径掘削される。そして、これにより、外殻5全体がその内部の装置と共に、図7矢印で示すように前進し、即ちシールド装置1は、その地盤掘削手段12を介して、新設されるセグメント31のリング幅L2と対応する形の推進ジャッキ11のストローク分だけ、地盤2を矢印A方向に向けて円滑に掘進する。すると、シールド装置1は、図7に示すように、その外殻5の前方側である矢印A方向側から該外殻5内部に、未だ解体除去されていない既設の覆工3aの後端部を所定の距離分だけ飲込み配置させた形になり、これにより、以下に述べるように覆工3aの後端部を解体する際の解体及び除去作業の安全が確保される。従って、こうしてシールド装置1が1ピッチ分推進する際に、地盤2を新設管路30の径に対応させた形で拡大掘削し、当該掘削により形成される土砂を外殻5内部において集積搬送し、外殻5を地盤2中に貫入推進させる動作を、地盤掘削手段12の回転本体15の回転及び推進ジャッキ11を介しての移動による一連の動作で、同時に効率良く行うことが出来ると共に、これに引き続き行われる既設の覆工3aの解体作業に関る作業空間の支保も同時に図られる。また、シールド装置1は、前述したように地盤改良機7を用いて、その外殻5が推進すべき先行部分の地盤2を一旦所定の強度をなすように改良強化して後、回転掘削方式の地盤掘削手段12により、その複数のカッタユニット16が構成している回転本体15の前面形状に対応させて限定的且つ円滑に地盤2を筒状に掘削することにより、常に安定した掘削速度を維持することが出来ると共に、地盤掘削手段12が掘削すべき新設管路30の切羽2b(図8に図示)の安定がまた確保されているところから、該切羽2bが崩れて土砂等が外殻5内に流入する危険性なく、円滑且つ安全に解体及び掘削作業が行われ得る。また、シールド掘進時に地盤2における外殻5より外側の部分を不要に掻き乱すことなく、地盤2の緩みや延いては地盤沈下の危険性を極力回避することが出来、既設の覆工3a以外の他の埋設構造物へ影響を与える懸念もない。
【0019】シールド推進作業を1ピッチ分行ったところで次に、図7に示すように、既にその後端部である矢印B方向側端部から所定の距離をなす位置において周方向に切断されている覆工3aを構成している鉄筋コンクリート等を、コンクリートカッタ6の鋸刃6bを放射方向外側である矢印J方向側に突出させて適宜回転及び移動させる形で、既設管路3の軸方向に沿って切断する。すると、これにより覆工3aは適宜な塊状に分割されるので、そこで、図8に示すように切断作業を終えたコンクリートカッタ6を既設管路3の前方側である矢印A方向側へ移動させる形で、解体除去すべき覆工3a上から退避させて後、該覆工3aの外周囲に地盤掘削手段12により掘削されずに若干残された地盤2と、塊状に切断分割された覆工3aのガラを、適宜な掘削搬送手段を用いて集積除去する。即ち、解体済み覆工3aと地盤2の掘削ズリは、既に更新敷設された新設管路30を介して、該新設管路30の後方側であるシールド装置1の発進坑口側、即ち図1矢印B方向側に搬送し、適宜坑外へ排出処理する。なお、既設管路3の覆工3aは、そのうちシールド装置1の外殻5内に取り込まれた後端部分である矢印B方向側端部のみが切断解体されるところから、解体作業時に覆工3aの予期しない部分が土圧により破壊することはなく、従って既設管路3内の作業に係る安全性は、これが解体除去される直前まで確保されている。
【0020】こうして、所定の掘進ピッチ、例えばセグメント31のリング幅L2と対応する距離だけ覆工3aの解体除去と地盤2の掘削を行うと、該掘進ピッチに対応した分だけ新設管路30の切羽2b(図8に図示)が矢印A方向に前進する。そこで次に、推進ジャッキ11のラム11aを矢印A方向に後退駆動させてから、エレクタ10を介して、新設管路30の図1右方の図示しない坑口側から搬送されたセグメントピースを組立作業台10aを介して把持部10bに把持させて、これをガイドローラ10dを介してガイドリング10cを図2矢印G、H方向に回転させ、又把持部10bを矢印I、J方向に突出乃至後退させる形で、セグメントピースを円筒状にジョイントして、図8に示すように、既に構築されているセグメント31の前端部31aに継ぎ足すように建て込む。即ち新設管路30の覆工部材であるセグメント31を1リング分延長構築し、これを地盤2に定着支持させる。するとこれにより、既設管路3は所定距離、例えばセグメント31のリング幅L2と対応する距離だけが新設管路30に置き換えられる形で、拡大更新される。
【0021】そこで、再び前述して図6に示すように、地盤改良機7を介して地盤改良用の薬液を注入することにより地盤2を改良安定化してから図7に示すようにシールド装置1を推進させ、覆工3aの解体除去作業と、既設の覆工3aの周りの地盤2を地盤掘削手段12を用いて除去する形の拡大掘削作業を行い、セグメント31を建て込み延長させる一連の作業を、所定の施工サイクルで繰り返していく。するとこれにより、老朽化した既設管渠である既設管路3を新設管渠である新設管路31に拡大敷設替えするための一連の作業を、地表面2aに何等影響を与えることなく、シールド装置1の外殻5内で行うことが、効率的且つ安全確実に行われる。なお、こうして地盤掘削手段12を用いてシールド装置1に地盤2を掘進させる際に、該地盤掘削手段12はその回転本体15部分全体が回転する方式の回転機械掘削方式であるところから、シールド掘進を進めるうちに、地盤2に対して外殻5が周方向である矢印G又はH方向に次第に回転して、その上下平衡状態が位相ずれした状態のまま推進することがあるが、その際には、回転本体15を実施例においては矢印N方向に示す逆回転方向に回転駆動させる形で、当該外殻5の位相ずれを修正することがある。こうして、回転本体15を逆回転させる際には、各カッタユニット16においては、上述した正回転用の刃17Aをこれを支持するインペラープレート17Pと共に刃支持面16aに対して後退させて、逆回転用の刃17Bをこれを支持するインペラープレート17Pと共に突出させることにより、該刃17Bを正回転用の刃17Aと全く同一の条件で地盤2を掘削する為の掘削刃として利用することが出来る。従って、回転式の掘削装置を用いる際に避け難い形で生じる位相ずれを修正する際に、単に刃17A、17B等を空転させる形でこれを行わずとも、掘削作業サイクル中に適宜回転本体15を逆回転させる形の反転サイクルを組み込んでやる形で、掘進を休めることなく位相ずれを修正して、常時外殻5の上下平衡状態を維持した状態で、良好な掘進及び拡大敷設替え作業を行うことが出来る。
【0022】なお、上述した実施例においては、横断面形状円形をなす既設管路3を横断面形状円形をなす新設管路30に拡大敷設替えする例を述べたが、本発明においては、回転本体15が回転することにより既設管路3の覆工3a周囲の地盤2を新設管路30のセグメント31が建て込み配設され得る大きさに拡大掘削することが出来れば良く、当該拡大掘削の意味するところは必ずしも地盤2の全てをカッタユニット16の刃17Aのみによって掘削するものではない。従って、地盤掘削手段12の刃17A(又は17B)が上述したように地盤2を円滑に掘削するために、刃支持面16aがその前側から後側に向けて縮径していて且つ該刃支持面16aと既設の覆工3aとの間にズリ出し空間33が形成されることが出来れば、地盤支持手段12及び既設管路3は実施例以外の断面形状であっても何等差し支えなく、当然新設管路30の断面形状も任意である。即ち既設管路3が若干の楕円断面に形成されていて、地盤掘削手段12の回転本体15による掘削のみによっては該既設管路3の覆工3a周囲に地盤2が残されてしまう場合には他の掘削補助手段を用いたり、或いは、新設管路30の断面形状が円形以外の形状で、これに対応する為の何等かの処置を施す場合もあり、管路3、30の断面形状は必ずしも円形に限定されるものではない。また、地盤掘削手段12の回転本体15を構成している複数のカッタユニット16の回転駆動が可能であるならば、これ等は例えばリンク機構により連結される形で、シールド装置1の外殻5もまた、円形以外の断面形状に形成されて何等差し支るものではない。
【0023】なお、前述したように地盤改良機7を用いてシールド装置1が推進すべき外殻5より先行する部分の地盤2の改良安定化を図る際、さらに外殻5の放射方向外側の地盤2をも改良強化する必要があれば、外殻5内等から他の薬注ガン7cを介して、さらに広範囲に地盤改良用薬液を地盤2中に注入し、後に新設されるセグメント31の周囲も補強して、地盤2の改良安定化を図り、これによりシールド装置1の後方側からの漏水を防止し、新設されるセグメント31の水密性を期することも勿論可能である。また、本発明の適用は、実施例において述べたような、下水管等の管渠である既設管路3の拡大敷設替えに限定されるものではなく、地盤2中に掘削形成された坑道中に建て込まれた管渠状の構造体であれば、例えばこれより大断面をなす電車線、道路等のトンネルや、ダム取水路、その他、その大小及び使用目的に拘らず任意の既設管渠を、任意の形状、構成の新設管渠に更新するのに適用されて何等差し支えない。さらに、シールド装置1において既設管路3を拡大敷設替えするために用いるコンクリートカッタ6、地盤改良機7、スクリュコンベヤ9等は、同様の働きをし得る他の機械設備を用いてこれを行っても全く構わない。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、地盤2中を推進自在な外殻5等の殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側に、除去すべき覆工3a等の既設管の径L3より大なる径L4の開放部5sを形成し、前記殻体の開放部5sに、前記既設管の周囲の地盤2を掘削する地盤掘削手段12を、該殻体の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段12に複数の刃17A、17B等の掘削ビットが装着された刃支持面16a等の掘削面を、前記殻体の前側から後側に向けて縮径する形で形成して構成したので、シールド掘進に際し掘削ビットが地盤2を掘削することにより生じた掘削ズリは、地盤掘削手段12がその回転動作とシールド前進動作により、掘削面を介して開放部5sの前側から後側に搬送することが出来る。従って、本発明による拡大シールド装置は、殻体の推進動作と地盤掘削手段12の回転動作により、常に地盤2を円滑に掘削し、当該掘削により形成される掘削ズリを開放部5sから、掘削面と既設管の外周との間に形成されるズリ出し空間33等の空間を介して、殻体内に効率的に搬送集積することが出来るので、その推進に先立ち除去すべき既設管の周囲を任意の強度に地盤改良しておくことが出来る。即ち、除去すべき既設管の周囲の地盤条件や、その土被りの大小に制約を受けることなく、常に良好な掘進作業が保証される。また、シールド推進によって、殻体が貫入する領域以外の不要の範囲の地盤がかき乱されることがない。故に、老朽化した既設管渠を新設管渠に拡大敷設替えする際に、開放部を介して既設管渠を取り囲む形で殻体を推進させて、該殻体内の前部で既設管渠の解体除去作業を行いながら、後部で既設のものより一回り大きな断面の新設セグメント、現場打設覆工等の新設管渠の構築作業を行うようにすれば、除去すべき既設管周囲の地盤に緩みを生じさせたり、延いては地盤沈下を生じさせる危険性なく、効率的且つ安全な拡大敷設替え作業が、地上構造物並びに地盤、地下水位等に影響を何等与えることなく円滑に行われ得る。そして、本発明によるシールド装置は、殻体の前側に除去すべき既設管の径より大なる開放部が形成されて、該開放部を介して掘削ズリが殻体内部に搬送される形の、開放型シールド装置であるところから、施工の自由度が高く、即ち、既設管の外周と殻体との間に隔壁を設ける必要がなく、従って、その装置構成が簡単で、また施工途中における既設管径の大小にも十分対応して、適切なる対処を施すことが自在に出来る。故に、広範な施工条件に対応することが出来、汎用性が高い拡大敷設替えシールド施工を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による拡大シールド装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1に示す拡大シールド装置のII、II矢視図である。
【図3】図1に示す拡大シールド装置のIII、III矢視図である。
【図4】図1に示す拡大シールド装置のIV、IV矢視図である。
【図5】本発明による拡大シールド装置における地盤掘削手段のカッタ刃の回転動作を示す正面図である。
【図6】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図7】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図8】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図9】図5に示す地盤掘削手段のカッタ刃による地盤掘削状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1……拡大シールド装置(シールド装置)
2……地盤
3a……既設管(覆工)
5……殻体(外殻)
5s……開放部
12……地盤掘削手段
16a……掘削面
17A、17B……掘削ビット(刃)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、老朽化した既設管渠を新設管渠に拡大敷設替えするに用いるに好適な、拡大シールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、老朽化したり、或いは機能不足に陥った既設管渠を改修、即ちこれを新設管渠に更新する際には、地上から土留め用杭を用いて撤去、新設作業を行う開削工法や、或いは既設管渠より一回り大きな断面のシールド機をその周囲を取り囲む形で推進させて、該シールド機内で既設管渠の解体撤去作業と、既設のものよりサイズアップした新設セグメントの建て込み作業を行うシールド工法等により、拡大敷設替えする方法がある。このうち、開削工法は公知のように道路事情、周辺環境を悪化させるために、こういった地上環境に影響を与えたくない地域においてはシールド工法の採用が多く望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、シールド工法には掘削すべき地盤の性状に応じて、密閉型、開放型等の各種の拡大シールド装置が用いられるが、密閉型シールドは、他の埋設物との離隔や土被りが小さい場合には切羽の圧力管理が難しく、またカッタビットの切削効率が全体作業の能率を左右するために、極めて緻密な施工計画及び管理が必要とされる、という施工上の問題点を抱えている。しかも、回転式の掘削機構を用いて、既設管渠周囲の地盤を拡大更新される新設管渠の径に合わせて環状に掘り抜く形で掘削するために、該既設管渠周囲の環状部分にここを密閉する形でシールド隔壁を設けなければならず、その装置構成が複雑になると共に、既設管渠の外径が大小していると密閉すべき環状部分の間隙幅が大小してしまうので、このような場合には、隔壁部分の密閉性の維持が難しくこれに対応することが出来ないために、施工の自由度が低い、という難点がある。一方、開放型シールドは施工の自由度が高く、任意の掘削機を選択的に用いることが出来る反面で、例えば既設管渠が開削工法で敷設されてその周りに埋め戻し土が用いられていたり或いは地下水が多い場合には地盤が軟弱になっているのでこれを緩ませて地盤沈下を引き起こす危険性が有り、これに反して、既設管渠周りに薬液注入が施されている場合には地盤が硬化してシールドスキンプレートの貫入抵抗があまりにも大になってしまうために、このような開放型シールドを適用可能な地盤条件は極めて限定されているという不都合がある。そこで本発明は、上記事情に鑑み、地盤条件に限定されることなく円滑な掘進が可能で、且つ施工の自由度が高い、開放型の拡大シールド装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、地盤(2)中を推進自在な殻体(5)を有し、前記殻体(5)の推進方向前面側に、除去すべき既設管(3a)の径L3より大なる径L4の開放部(5s)を形成し、前記殻体(5)の開放部(5s)に、前記既設管(3a)の周囲の地盤(2)を掘削する地盤掘削手段(12)を、該殻体(5)の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段(12)に複数の掘削ビット(17A)、(17B)が装着された掘削面(16a)を、前記殻体(5)の前側から後側に向けて縮径する形で形成して、構成される。なお、( )内の番号等は、図面における対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以下の作用の欄についても同様である。
【0005】
【作用】上記した構成により、本発明は、シールド掘進に際し掘削ビット(17A)、(17B)が地盤(2)を掘削することにより生じた掘削ズリは、地盤掘削手段(12)がその回転動作とシールド前進動作により、掘削面(16a)を介して開放部(5s)の前側から後側に搬送するように作用する。
【0006】
【実施例】図1は本発明による拡大シールド装置の一実施例を示す側面図、図2は図1に示す拡大シールド装置のII、II矢視図、図3は図1に示す拡大シールド装置のIII、III矢視図、図4は図1に示す拡大シールド装置のIV、IV矢視図、図5は本発明による拡大シールド装置における地盤掘削手段のカッタ刃の回転動作を示す正面図、図6乃至図8は図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図、図9は図5に示す地盤掘削手段のカッタ刃による地盤掘削状態を示す斜視図である。
【0007】拡大シールド装置であるシールド装置1は、図1に示すように、所定の外径L1をなす形で全体形状円筒形に形成されたスキンプレート、即ち外殻5を有しており、外殻5は、地盤2の地表面2aから所定の深さP1をなしその伸延方向を図1矢印A、B方向に向けた形で埋設供用されていて除去すべき既設管である下水本管等の横断面形状円形をなす既設管路3のうち、既に撤去更新された部分を除く図1矢印B方向端部において、該既設管路3を形成している鉄筋コンクリート等からなり外径L3をなす円筒状の覆工3aを、該外殻5の前端部であるフード部53が包囲する形で配設されている。一方、外殻5の後側である図1矢印B方向側には、新設管路3を拡大敷設替えした形の横断面形状円形をなす新設管路30が、例えば鉄筋コンクリート、或いはスチール等からなるセグメント31を、該セグメント31を構成している各々のセグメントピースを1リングの幅L2をなす形で円筒状にジョイントして、これを地盤2中に埋設させることにより、既に敷設更新されており、セグメント31の前端部31aは、シールド装置1の外殻5内に、1乃至2リング分(図1においては1リング分強)入り込み配置した形になっている。セグメント31の外周と外殻5の内周との間にはテールシール51が、該外殻5の後端部である矢印B方向側端部において、両者31、5間の間隙をシールする形で設けられており、また、外殻5内の後部には、セグメント31を組立て建て込みするためのリンク式のエレクタ10が設けられている。
【0008】エレクタ10は、図2に示すように、外殻5の内周との間に所定の間隙L6をなす形で板輪状に形成されたガイドリング10cを有しており、ガイドリング10cは、外殻5の内周に装着された複数のガイドローラ10dを介して、該外殻5に対してシールド内周方向である矢印G、H方向に回転自在な形でこれに支持されている。ガイドリング10cには、セグメントピースを把持し得る把持部10bが、該ガイドリング10cを介してシールド内周方向に回転自在で且つ放射方向である矢印I、J方向に突出後退自在な形で(即ち各セグメントピースを移動位置決め自在な形で)支持されており、また、ガイドリング10cの図1矢印B方向側に示す後方側には、矢印A、B方向に伸延する梁状部材である組立作業台10aが、図示されない新設管路30の矢印B方側から適宜な搬送手段を介して搬送される、セグメント31を構成しているセグメントピースを適宜に向き替えして把持部10bに受け渡し自在な形で、ガーダー部52を介して外殻5に支持装着されている。
【0009】エレクタ10の前方である図1左方には、シールド装置1の外殻5をその推進方向である矢印A方向側に向けて地盤2中に推進させ得る推進ジャッキ11が、図3に示すように、該外殻5の内周に沿ってここに複数装着固定されており、推進ジャッキ11の後側である図1矢印B方向側には、該ジャッキ11のラム11aが、セグメント31の前端部31aに推進反力を求めて、矢印A、B方向に突出後退駆動自在な形で、図2に示すように、外殻5の内周に沿って矢印G、H方向に並んで配設されている。エレクタ10の図1上方にはスクリュコンベヤ9が、除去されるべき覆工3aのガラと、拡大掘削されるべき覆工3aの周囲の地盤2のズリを、外殻5のガーダー部52より後方側である矢印B方向側に搬送し得る形で設けられており、スクリュコンベヤ9には採土口9aが、前方側である図1矢印A方向側に開口する形で設けられている。
【0010】ところで、シールド装置1には、図1に示すように、その外殻5の前端部であるフード部53が既に述べたように既設管路3の覆工3a後端部を包囲する形で円筒状に形成されているところから、該外殻5の前面側である矢印A方向側に、該覆工3aの外径L3より大なる径L4の開放部5sが形成されており、外殻5の開放部5sには覆工3a周囲の地盤2を掘削するためのインペラーカッタ式の地盤掘削手段12が、その回転本体15の最小内径部分が前記既設管路3の未だ解体撤去されていない覆工3aの後端部である矢印B方向側端部近傍において該覆工3a外周との間に所定幅のズリ出し空間33を環状に形成し、該外殻5の内周の全周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設けられている。即ち、地盤掘削手段12は、図1及び図4に示すように、開放部5sの径L4より若干だけ小さな外径をなし且つ除去すべき覆工3aの外径L3より若干大きな内径L5をなす形の輪状に形成された回転本体15を有しており、回転本体15は駆動モータ13を介してその全体が図1CT1で示すシールド軸心を回転中心として図4矢印M又はN方向に回転駆動自在な形で、開放部5sにおいて外殻5の前端部を構成しているフード部53の内周に沿って配設されている。回転本体15は複数のカッタユニット16が、該本体15として一体に回転自在な形で連結されて構成されており、実施例においては図2に示すように、8片のカッタユニット16が周方向である図4矢印G、H方向に沿って相互に連結される形で組み合わせられることにより、地盤掘削手段12が輪状に形成されている。
【0011】地盤掘削手段12の回転本体15を構成している複数のカッタユニット16のそれぞれには、該掘削手段12の掘削面である刃支持面16aが、図1に示すように、外殻5のフード部53の前側から後側に向けて縮径する形をなすよう設けられており、各々の刃支持面16aには、図4に示すように、該刃支持面16aと交差方向にリブ状をなす形の一対のインペラープレート17P、17Pが、それぞれ円弧を描きつつ互いに対向する形で、該支持面16aに対して突出後退自在に設けられている。インペラープレート17P、17Pには、それぞれが地盤を掘削し得る形でその刃先を放射方向内側の前方に向けた、図4実線で示す正回転用の刃17Aと、図4点線で示す逆回転用の刃17Bが、複数並列して、各複数の刃17A、17B列毎に該プレート17Pの突出後退動作により刃支持面16aに対して突出後退駆動自在な形で装着支持されている。地盤掘削手段12の刃17A、17Bは、回転本体15が矢印N又はMのいずれかの方向に示す正回転動作を行うとき、正回転用の刃17Aがこれが装着されたインペラープレート17Pと共に刃支持面16aに対して突出状態を呈すると共に、これと連動して逆回転用の刃17Bがこれが装着されたインペラープレート17Pと共に後退状態を呈し、また、回転本体15が逆回転動作を行うとき、逆回転用の刃17Bが刃支持面16aに対して突出状態を呈すると共にこれと連動して正回転用の刃17Aが後退状態を呈するように、駆動制御されている。従って、地盤掘削手段12は、各カッタユニット16において複数の刃17A、17Bのいずれかが、該刃17A又は17Bを支持するインペラープレート17Pと共に刃支持面16aのそれぞれから突出して、図5に示すように、フード部53の内周側に近いその最外方側から放射方向内側に向けて円弧をなす形で並列配置することにより、回転本体15の回転時に、該回転動作により掘削される地盤2の掘削ズリを、開放部5sにおいて覆工3aと該回転本体15内周との間に形成配置されるズリ出し空間33を経由させる形で、外殻5内の後側である図1矢印B方向側に渦巻状に搬送し得るようになっている。
【0012】一方、シールド装置1の外殻5の前方である図1矢印A方向側には、覆工3aを切断するためのコンクリートカッタ6が、既設管路3の後端即ち矢印B端部における覆工3a上にここを走行可能な形で配置されており、コンクリートカッタ6には、該覆工3aの全周を既設管路3の周長方向に沿って切断し得る鋸刃6aと軸方向に沿って切断し得る鋸刃6bが、それぞれ周長方向(図2矢印G、H方向)に移動自在で且つ放射方向(矢印I、J方向)に突出後退自在な形で、回転駆動自在に設けられている。コンクリートカッタ6の前方である矢印A方には、地盤改良機7が、図1左右一対に示すそのグリッパ7b、7bを介して該改良機7の支持本体であるビーム7a部分が覆工3aの内周に支持され得る形で、該覆工3aの内底部分にここを走行自在に配設されており、地盤改良機7には薬注ガン7cが、該ガン7cに接続されるパイプ19等を介して地盤2中にこれを改良強化するための薬材を供給注入し得る形で設けられている。
【0013】シールド装置1は、以上のような構成を有しているので、該シールド装置1を用いて既設管路3の改修を行うには、該既設管路3の通水切替、ヘドロ処理、管内洗浄、枝管撤去等と、該管路3の上方における地表面2a部分の陥没対策として路面仮覆工を行う等の事前処理を施して後、適宜な発進立坑からシールド装置1を発進させる。そして、図1に示すように、その外殻5を未だ解体除去されていない既設管路3の後端部からその後側にかけて覆工3aの外方を包囲する形にしてシールド装置1を配置させ、外殻5内部におけるその前半分である矢印A方向側において覆工3aの解体除去作業を行い、一方外殻5内部の後半分では、新設管路30を形成するためのセグメント31を建て込む作業を行いながら、該装置1を図1矢印A方向側に推進させて、既設管路3をこれより一回り大きな新設管路30に更新していく。
【0014】シールド推進に際しては、まず図6に示すように、地盤改良機7のビーム7aを、グリッパ7b、7bを介して既設管路3の覆工3aに支持させた状態にしておいて、薬注ガン7cに薬注用のパイプ19を接続し、該パイプ19が所定の長さになるまで(即ち地盤改良すべき地盤2の深さに対応した長さ分だけ)適宜継ぎ足し延長させつつ、地盤2中に貫入させる。そして、地盤2を改良安定化させるに適した公知の地盤改良用薬液を、薬注用のパイプ19を引き戻しつつ、図示しない注入用ポンプフィーダ等から薬注ガン7cを介して地盤2中に圧送注入する。すると、シールド装置1の前方側である矢印A方側に配置している外殻5の前端部より先行する部分の地盤2は、既設管路3の覆工3aの放射方向外側を包囲する部分の地盤2が地下水も含めて薬液により固められて所定の地盤強度をなす形で、その改良安定化が図られる。従って、シールド装置1の外殻5は常に、その推進に先立ち、改良安定化が図られて該外殻5内への土砂流入が防止された形の地盤2中を推進していく形になる。
【0015】こうして地盤改良用薬液の注入完了により、外殻5より先行する地盤2を補強して地盤2の改良安定化を図る一方で、図6に示すように、既設管路3の未だ解体除去されていない覆工3aを、その後端部である矢印B方向側端部からシールド装置1の1推進ピッチに対応した距離分だけ前方位置において、コンクリートカッタ6の鋸刃6aを放射方向外側である矢印J方向側に突出させた状態で全周方向に亙って回転駆動させる形で、周方向に切断する。なお、こうしてコンクリートカッタ6の鋸刃6aにより周方向に切断されて所定長さの環状になった覆工3aの後端部は、該覆工3aの外周囲の地盤2に未だ定着支持されていることにより、単に鋸刃6aと対応する切断位置において分割された形で環状をなすまま、ここに残留配置している。
【0016】こうしておいて、次に図7に示すように地盤改良機7を既設管路3の前方側である矢印A方向側に前進させる形で、覆工3aのうち次の工程で解体除去される後端部分上から退避させる。そして、推進ジャッキ11のラム11aを介して既に建て込み覆工されて地盤2に定着支持されている形の新設のセグメント31の前端部31aに推進反力を求める形で、シールド装置1の外殻5を矢印A方向に向けて所定距離、即ち例えば新設されるセグメント31のリング幅L2と対応する形の推進ジャッキ11のストローク分だけ推進させる。この際、これと同時に、既に建て込み定着された新設管路30のセグメント31の前端部31aに推進ジャッキ11のラム11aを当接させた状態において、推進補助手段12を、駆動モータ13を介して回転本体15を外殻5のフード部53に対して、その開放部5sにおいてシールド軸心CT1を回転中心として該回転本体15の正回転方向である例えば矢印M方向(又はN方向)に回転させる形で駆動させる。すると、既に地盤改良用薬液により改良安定化が図られて所定の強度に到達している地盤2は、複数のカッタユニット16の回転刃17Aの回転動作と外殻5の推進距離に対応した形で、筒状に掘削される。
【0017】即ち、地盤掘削手段12の正回転動作時には、図5に示すように、各カッタユニット16の刃17A、17Bのうち正回転用の刃17Aのみが刃支持面16aに対して突出配置し、逆回転用の刃17Bは後退配置するように(図5においては省略)、これを駆動制御する。すると、推進ジャッキ11により矢印A方向に押されつつ、例えば矢印M方向に示す正回転方向に回転する回転本体15は、図9に示すように、各カッタユニット16毎に列をなす複数の刃17Aがスクリュ状に旋回する形で、該刃17Aが当接する範囲の地盤2を掘削する。そして、掘削されてズリとなった地盤2は、回転本体15の回転及び移動動作により、インペラープレート17Pとここに列状に装着された複数の刃17Aにより渦巻状に押されて、刃支持面16aと既設の覆工3aの外周との間の間隙であるズリ出し空間33を順に送られる形で、即ち刃支持面16a部分の外周16b側から内周16c側に向けて押圧搬送されて、開放部5sの前側から後側へ向けて搬送される。こうして、開放部5sの前側から後側に向けて渦巻状に押圧搬送される地盤2の掘削ズリは、該開放部5sからズリ出し空間33を介して外殻5内の地盤掘削手段12の後側に円滑に送られる。そして地盤掘削手段12の後側に搬送された地盤2の掘削ズリは、該地盤掘削手段12の掘進及びズリ搬送動作とその自重により、外殻5内の底部近傍に一旦集積貯留される形になる。そこでスクリュコンベヤ9を駆動させれば、これにより、その採土口9aを介して、シールド装置1の外殻5内よりさらに後方側である、既に建て込み構築された新設管路30中に掘削ズリを効率的に搬出することが出来る。
【0018】こうして、覆工3a周囲の地盤2は、開放部5sの径L4より若干小さな外径をなし且つ除去すべき覆工3aの外径L3より若干大きな内径L5をなす形の輪状に形成された地盤掘削手段12の、回転本体15の各刃支持面16aに装着された複数の刃17A及びインペラープレート17Pの回転及び推進ジャッキ11を介しての移動動作により筒状に掘削されて、当該掘削ズリが順次外殻5内における地盤掘削手段12の後側に搬送される形で、既設管路3aが、外殻5の推進距離分だけ径略L4をなすように拡径掘削される。そして、これにより、外殻5全体がその内部の装置と共に、図7矢印で示すように前進し、即ちシールド装置1は、その地盤掘削手段12を介して、新設されるセグメント31のリング幅L2と対応する形の推進ジャッキ11のストローク分だけ、地盤2を矢印A方向に向けて円滑に掘進する。すると、シールド装置1は、図7に示すように、その外殻5の前方側である矢印A方向側から該外殻5内部に、未だ解体除去されていない既設の覆工3aの後端部を所定の距離分だけ飲込み配置させた形になり、これにより、以下に述べるように覆工3aの後端部を解体する際の解体及び除去作業の安全が確保される。従って、こうしてシールド装置1が1ピッチ分推進する際に、地盤2を新設管路30の径に対応させた形で拡大掘削し、当該掘削により形成される土砂を外殻5内部において集積搬送し、外殻5を地盤2中に貫入推進させる動作を、地盤掘削手段12の回転本体15の回転及び推進ジャッキ11を介しての移動による一連の動作で、同時に効率良く行うことが出来ると共に、これに引き続き行われる既設の覆工3aの解体作業に関る作業空間の支保も同時に図られる。また、シールド装置1は、前述したように地盤改良機7を用いて、その外殻5が推進すべき先行部分の地盤2を一旦所定の強度をなすように改良強化して後、回転掘削方式の地盤掘削手段12により、その複数のカッタユニット16が構成している回転本体15の前面形状に対応させて限定的且つ円滑に地盤2を筒状に掘削することにより、常に安定した掘削速度を維持することが出来ると共に、地盤掘削手段12が掘削すべき新設管路30の切羽2b(図8に図示)の安定がまた確保されているところから、該切羽2bが崩れて土砂等が外殻5内に流入する危険性なく、円滑且つ安全に解体及び掘削作業が行われ得る。また、シールド掘進時に地盤2における外殻5より外側の部分を不要に掻き乱すことなく、地盤2の緩みや延いては地盤沈下の危険性を極力回避することが出来、既設の覆工3a以外の他の埋設構造物へ影響を与える懸念もない。
【0019】シールド推進作業を1ピッチ分行ったところで次に、図7に示すように、既にその後端部である矢印B方向側端部から所定の距離をなす位置において周方向に切断されている覆工3aを構成している鉄筋コンクリート等を、コンクリートカッタ6の鋸刃6bを放射方向外側である矢印J方向側に突出させて適宜回転及び移動させる形で、既設管路3の軸方向に沿って切断する。すると、これにより覆工3aは適宜な塊状に分割されるので、そこで、図8に示すように切断作業を終えたコンクリートカッタ6を既設管路3の前方側である矢印A方向側へ移動させる形で、解体除去すべき覆工3a上から退避させて後、該覆工3aの外周囲に地盤掘削手段12により掘削されずに若干残された地盤2と、塊状に切断分割された覆工3aのガラを、適宜な掘削搬送手段を用いて集積除去する。即ち、解体済み覆工3aと地盤2の掘削ズリは、既に更新敷設された新設管路30を介して、該新設管路30の後方側であるシールド装置1の発進坑口側、即ち図1矢印B方向側に搬送し、適宜坑外へ排出処理する。なお、既設管路3の覆工3aは、そのうちシールド装置1の外殻5内に取り込まれた後端部分である矢印B方向側端部のみが切断解体されるところから、解体作業時に覆工3aの予期しない部分が土圧により破壊することはなく、従って既設管路3内の作業に係る安全性は、これが解体除去される直前まで確保されている。
【0020】こうして、所定の掘進ピッチ、例えばセグメント31のリング幅L2と対応する距離だけ覆工3aの解体除去と地盤2の掘削を行うと、該掘進ピッチに対応した分だけ新設管路30の切羽2b(図8に図示)が矢印A方向に前進する。そこで次に、推進ジャッキ11のラム11aを矢印A方向に後退駆動させてから、エレクタ10を介して、新設管路30の図1右方の図示しない坑口側から搬送されたセグメントピースを組立作業台10aを介して把持部10bに把持させて、これをガイドローラ10dを介してガイドリング10cを図2矢印G、H方向に回転させ、又把持部10bを矢印I、J方向に突出乃至後退させる形で、セグメントピースを円筒状にジョイントして、図8に示すように、既に構築されているセグメント31の前端部31aに継ぎ足すように建て込む。即ち新設管路30の覆工部材であるセグメント31を1リング分延長構築し、これを地盤2に定着支持させる。するとこれにより、既設管路3は所定距離、例えばセグメント31のリング幅L2と対応する距離だけが新設管路30に置き換えられる形で、拡大更新される。
【0021】そこで、再び前述して図6に示すように、地盤改良機7を介して地盤改良用の薬液を注入することにより地盤2を改良安定化してから図7に示すようにシールド装置1を推進させ、覆工3aの解体除去作業と、既設の覆工3aの周りの地盤2を地盤掘削手段12を用いて除去する形の拡大掘削作業を行い、セグメント31を建て込み延長させる一連の作業を、所定の施工サイクルで繰り返していく。するとこれにより、老朽化した既設管渠である既設管路3を新設管渠である新設管路31に拡大敷設替えするための一連の作業を、地表面2aに何等影響を与えることなく、シールド装置1の外殻5内で行うことが、効率的且つ安全確実に行われる。なお、こうして地盤掘削手段12を用いてシールド装置1に地盤2を掘進させる際に、該地盤掘削手段12はその回転本体15部分全体が回転する方式の回転機械掘削方式であるところから、シールド掘進を進めるうちに、地盤2に対して外殻5が周方向である矢印G又はH方向に次第に回転して、その上下平衡状態が位相ずれした状態のまま推進することがあるが、その際には、回転本体15を実施例においては矢印N方向に示す逆回転方向に回転駆動させる形で、当該外殻5の位相ずれを修正することがある。こうして、回転本体15を逆回転させる際には、各カッタユニット16においては、上述した正回転用の刃17Aをこれを支持するインペラープレート17Pと共に刃支持面16aに対して後退させて、逆回転用の刃17Bをこれを支持するインペラープレート17Pと共に突出させることにより、該刃17Bを正回転用の刃17Aと全く同一の条件で地盤2を掘削する為の掘削刃として利用することが出来る。従って、回転式の掘削装置を用いる際に避け難い形で生じる位相ずれを修正する際に、単に刃17A、17B等を空転させる形でこれを行わずとも、掘削作業サイクル中に適宜回転本体15を逆回転させる形の反転サイクルを組み込んでやる形で、掘進を休めることなく位相ずれを修正して、常時外殻5の上下平衡状態を維持した状態で、良好な掘進及び拡大敷設替え作業を行うことが出来る。
【0022】なお、上述した実施例においては、横断面形状円形をなす既設管路3を横断面形状円形をなす新設管路30に拡大敷設替えする例を述べたが、本発明においては、回転本体15が回転することにより既設管路3の覆工3a周囲の地盤2を新設管路30のセグメント31が建て込み配設され得る大きさに拡大掘削することが出来れば良く、当該拡大掘削の意味するところは必ずしも地盤2の全てをカッタユニット16の刃17Aのみによって掘削するものではない。従って、地盤掘削手段12の刃17A(又は17B)が上述したように地盤2を円滑に掘削するために、刃支持面16aがその前側から後側に向けて縮径していて且つ該刃支持面16aと既設の覆工3aとの間にズリ出し空間33が形成されることが出来れば、地盤支持手段12及び既設管路3は実施例以外の断面形状であっても何等差し支えなく、当然新設管路30の断面形状も任意である。即ち既設管路3が若干の楕円断面に形成されていて、地盤掘削手段12の回転本体15による掘削のみによっては該既設管路3の覆工3a周囲に地盤2が残されてしまう場合には他の掘削補助手段を用いたり、或いは、新設管路30の断面形状が円形以外の形状で、これに対応する為の何等かの処置を施す場合もあり、管路3、30の断面形状は必ずしも円形に限定されるものではない。また、地盤掘削手段12の回転本体15を構成している複数のカッタユニット16の回転駆動が可能であるならば、これ等は例えばリンク機構により連結される形で、シールド装置1の外殻5もまた、円形以外の断面形状に形成されて何等差し支るものではない。
【0023】なお、前述したように地盤改良機7を用いてシールド装置1が推進すべき外殻5より先行する部分の地盤2の改良安定化を図る際、さらに外殻5の放射方向外側の地盤2をも改良強化する必要があれば、外殻5内等から他の薬注ガン7cを介して、さらに広範囲に地盤改良用薬液を地盤2中に注入し、後に新設されるセグメント31の周囲も補強して、地盤2の改良安定化を図り、これによりシールド装置1の後方側からの漏水を防止し、新設されるセグメント31の水密性を期することも勿論可能である。また、本発明の適用は、実施例において述べたような、下水管等の管渠である既設管路3の拡大敷設替えに限定されるものではなく、地盤2中に掘削形成された坑道中に建て込まれた管渠状の構造体であれば、例えばこれより大断面をなす電車線、道路等のトンネルや、ダム取水路、その他、その大小及び使用目的に拘らず任意の既設管渠を、任意の形状、構成の新設管渠に更新するのに適用されて何等差し支えない。さらに、シールド装置1において既設管路3を拡大敷設替えするために用いるコンクリートカッタ6、地盤改良機7、スクリュコンベヤ9等は、同様の働きをし得る他の機械設備を用いてこれを行っても全く構わない。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、地盤2中を推進自在な外殻5等の殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側に、除去すべき覆工3a等の既設管の径L3より大なる径L4の開放部5sを形成し、前記殻体の開放部5sに、前記既設管の周囲の地盤2を掘削する地盤掘削手段12を、該殻体の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段12に複数の刃17A、17B等の掘削ビットが装着された刃支持面16a等の掘削面を、前記殻体の前側から後側に向けて縮径する形で形成して構成したので、シールド掘進に際し掘削ビットが地盤2を掘削することにより生じた掘削ズリは、地盤掘削手段12がその回転動作とシールド前進動作により、掘削面を介して開放部5sの前側から後側に搬送することが出来る。従って、本発明による拡大シールド装置は、殻体の推進動作と地盤掘削手段12の回転動作により、常に地盤2を円滑に掘削し、当該掘削により形成される掘削ズリを開放部5sから、掘削面と既設管の外周との間に形成されるズリ出し空間33等の空間を介して、殻体内に効率的に搬送集積することが出来るので、その推進に先立ち除去すべき既設管の周囲を任意の強度に地盤改良しておくことが出来る。即ち、除去すべき既設管の周囲の地盤条件や、その土被りの大小に制約を受けることなく、常に良好な掘進作業が保証される。また、シールド推進によって、殻体が貫入する領域以外の不要の範囲の地盤がかき乱されることがない。故に、老朽化した既設管渠を新設管渠に拡大敷設替えする際に、開放部を介して既設管渠を取り囲む形で殻体を推進させて、該殻体内の前部で既設管渠の解体除去作業を行いながら、後部で既設のものより一回り大きな断面の新設セグメント、現場打設覆工等の新設管渠の構築作業を行うようにすれば、除去すべき既設管周囲の地盤に緩みを生じさせたり、延いては地盤沈下を生じさせる危険性なく、効率的且つ安全な拡大敷設替え作業が、地上構造物並びに地盤、地下水位等に影響を何等与えることなく円滑に行われ得る。そして、本発明によるシールド装置は、殻体の前側に除去すべき既設管の径より大なる開放部が形成されて、該開放部を介して掘削ズリが殻体内部に搬送される形の、開放型シールド装置であるところから、施工の自由度が高く、即ち、既設管の外周と殻体との間に隔壁を設ける必要がなく、従って、その装置構成が簡単で、また施工途中における既設管径の大小にも十分対応して、適切なる対処を施すことが自在に出来る。故に、広範な施工条件に対応することが出来、汎用性が高い拡大敷設替えシールド施工を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による拡大シールド装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1に示す拡大シールド装置のII、II矢視図である。
【図3】図1に示す拡大シールド装置のIII、III矢視図である。
【図4】図1に示す拡大シールド装置のIV、IV矢視図である。
【図5】本発明による拡大シールド装置における地盤掘削手段のカッタ刃の回転動作を示す正面図である。
【図6】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図7】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図8】図1に示す拡大シールド装置を用いて既設管渠の拡大敷設替え作業を行う際の施工手順を示す一連の図である。
【図9】図5に示す地盤掘削手段のカッタ刃による地盤掘削状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1……拡大シールド装置(シールド装置)
2……地盤
3a……既設管(覆工)
5……殻体(外殻)
5s……開放部
12……地盤掘削手段
16a……掘削面
17A、17B……掘削ビット(刃)
【特許請求の範囲】
【請求項1】地盤中を推進自在な殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側に、除去すべき既設管の径より大なる径の開放部を形成し、前記殻体の開放部に、前記既設管の周囲の地盤を掘削する地盤掘削手段を、該殻体の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段に複数の掘削ビットが装着された掘削面を、前記殻体の前側から後側に向けて縮径する形で形成して構成した、拡大シールド装置。
【請求項1】地盤中を推進自在な殻体を有し、前記殻体の推進方向前面側に、除去すべき既設管の径より大なる径の開放部を形成し、前記殻体の開放部に、前記既設管の周囲の地盤を掘削する地盤掘削手段を、該殻体の内周に沿って回転駆動自在な形で輪状に設け、前記地盤掘削手段に複数の掘削ビットが装着された掘削面を、前記殻体の前側から後側に向けて縮径する形で形成して構成した、拡大シールド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開平6−288181
【公開日】平成6年(1994)10月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−97116
【出願日】平成5年(1993)3月31日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000140982)株式会社間組 (11)
【出願人】(000174943)三井建設株式会社 (346)
【公開日】平成6年(1994)10月11日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)3月31日
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000140982)株式会社間組 (11)
【出願人】(000174943)三井建設株式会社 (346)
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