説明

拡散板用ポリエステルフィルム

【課題】 フィルム自体のたわみが大きくなったり、熱膨張によるたわみが大きくなったりするという問題点を改良し、液晶ディスプレー(LCD)等の拡散板用のベース基材フィルムとして好適に使用することのできるポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 同時二軸延伸されたポリエステルフィルムであって、フィルム縦方向の屈折率とフィルム横方向の屈折率との差Δnが25×10−3以下であることを特徴とする拡散板用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面性にすぐれた拡散板用ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、ねじれの少ない拡散板用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性などに優れ、従来種々の工業用途に利用されており、その用途はますます拡大、多様化している。このような多様化に際し、その要求特性もますます厳しくなってきたが、これを十分満足させるに至っていないのが現状である。
【0003】
例えば、ポリエステルフィルムは液晶ディスプレー(LCD)用拡散板のベース基材として使用されており(特許文献1)、LCD用拡散板フィルム使用上の問題点として、LCDの画面が大型化するにつれて、拡散板も大型化し拡散板がねじれることによる表示画面の不均一不具合を生じることが挙げられる。拡散板がねじれを生じる原因は、ベースフィルムのポリエステルフィルムの腰の強さがフィルムの縦方向(MD)と横方向(TD)で異なるため、拡散板が大きくなるに従い、たわみの絶対値が大きくなるために光線が均一に拡散されなくなるためと考えられる。
【0004】
また、近年LCDが大型化することに伴い、バックライトの輝度を上げる必要性が高くなり、このため、LCDの中で拡散板の温度が室温より上昇する場合が多くなり、MD方向とTD方向で異なる熱膨張により、拡散板がねじれることによる表示画面の不均一性という不具合を生じる。また、車の中に設置するカーナビゲーションシステムに用いられているLCDについても、夏に社内の温度があがることにより同様な不具合を生じる。
【0005】
従来拡散板用途に使用されているポリエステルフィルムとしては、二軸延伸されたものが用いられているが、二軸延伸された場合、通常、縦および横のポリエステル分子の配向が、同一の程度に配向しているわけではなくではなく、縦あるいは横のどちらか一方に、比較的大きく配向されている。また、寸法安定性を得るために、延伸後、熱でフィルムを結晶化させる工程を経る結果、製膜幅方向に対し物性差を生ずるのが普通である。これらにより、ポリエステルフィルムの腰であるヤング率、温度膨張係数等のねじれの原因となる物性についても、製膜されたフィルムのどの範囲をとってもバランスしておらず、ねじれが生じるのが現状である。
【特許文献1】特開平10−10304号公報
【特許文献2】特開2001−220432号公報
【特許文献3】特開2004−67853号公報
【特許文献4】特開2004−133021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、フィルム自体のたわみおよび熱膨張によるたわみが大きくなるという問題を改良し、LCD等の拡散板用のフィルムとして好適なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、同時二軸延伸されたポリエステルフィルムであって、フィルム縦方向の屈折率とフィルム横方向の屈折率との差Δnが25×10−3以下であることを特徴とする拡散板用ポリエステルフィルムに存する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、単層押出法あるいは全ての層が口金から単あるいは共溶融押出される共押出法により押し出されたものを同時二軸延伸後、必要に応じて熱固定したものを指す。以下、単層フィルムについて説明するが、本発明においては、その目的を満たす限り、単層ポリエステルフィルムに限定されるものではなく、2層以上の多層であってもよい。
【0009】
本発明において、フィルムの各層を構成する重合体は芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、繰り返し構造単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件下に他の第三成分を含有していてもよい。芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、、4,4’−ジフェニルカルボン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。またグリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を用いることができる。
【0010】
本ポリエステル組成物の極限粘度(IV)は、通常0.52〜0.75、好ましくは0.55〜0.70、さらに好ましくは0.58〜0.67である。IV値が0.52未満では、フィルムとした際のポリエステルフィルムが持つ優れた特徴である耐熱性、機械的強度等が劣るようになる傾向がある。また、IV値が0.75を超えると、ポリエステルフィルム製造時の押出工程で負荷が大きくなりすぎ生産性が低下するようになることがある。
【0011】
本発明のフィルムは、MD方向とTD方向との屈折率の差が25×10ー3以下であることが必要である。25×10ー3以下を満たさないとMD方向とTD方向の異方性が大きく、拡散板のサイズが大きくなった際、ねじれが大きくなり、また、温度があがった際にねじれを生じることになる。
【0012】
また、MD方向とTD方向との線膨張係数の比(αTR)が0.6〜1.5の範囲にあることが望ましい。0.6未満では、MD方向と、TD方向の熱膨張係数の差が大きく、温度を上げた際にねじれを生じる原因となることがある。一方、1.5を超えても同様の問題があり、ねじれが少ないという寸法安定性を損なう原因となることがある。線膨張係数が大きくなると、LCD周りの温度の変化により拡散板の寸法が変化し、LCDのフレームとの寸法変化の差がある場合、フレームとの接触によりたわみ、ねじれが発生し、寸法安定性を損なう原因となるためMD方向の線膨張係数は、5×10-5/℃以下であることが望ましい。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムのフィルム全厚みは通常25〜250μmであり、一般的には100μm前後であるが厚さが厚くなるほどたわみがすくなくなり厚さが150μm以上であることが望ましい。
【0014】
本発明におけるフィルム縦横方向の熱収縮率(SMD、STD)は、好ましくは縦横ともに−5.0〜3.0%の範囲であり、さらに好ましくは縦横ともに−0.5〜0.5%の範囲である。SMD、STDが、3.0%を超えると、拡散板加工時に熱あるいは光源の熱が加わった際に収縮が発生することがある。
【0015】
本発明における厚みふれは平均厚さの5%以下が好ましい。厚みふれが5%を超えると、加工後にふくれ、たるみが生じ、平面性が悪くなり、拡散板として使用に耐えなくなることがある。
【0016】
本発明のフィルムには、作業性を向上させるため、表面を粗面化してフィルムに適度な滑り性を付与させることが好ましく、そのためには微細な不活性粒子を添加すればよい。滑り性を付与させるための微細な不活性粒子としては、平均粒径が0.5〜3.0μmのものが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の粒子では、作業性が劣る傾向がある。また平均粒径が3.0μmを超える粒子では、フィルム表面の平面性が損なわれたり、透明性が損なわれたりすることがある。不活性粒子は複数の粒子を添加してもよい。さらに不活性粒子の総添加量は、通常0.005〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.7重量%である。不活性粒子の添加量が0.005重量%未満では、フィルムの巻き特性が劣る傾向がある。また、不活性粒子の添加量が1.0重量%を超えると、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎ、フィルム透明性が損なわれる傾向がある。
【0017】
フィルムの全光線透過率として88%以上であることが望ましく、88%未満であると拡散板としての光の透過量が少なくなり、LCDの輝度が不足する原因となる場合がある。同様に、ヘーズは2.0%以下であることが望ましく、2.0%以上であればLCDの明るさを損なう原因となることがある。
【0018】
また、本発明では、滑り性を付与させることに加えて、ヘーズと光線透過率の関係を調整するために添加する不活性粒子の平均粒径を0.5μm以下の粒子とし、添加量を100ppm以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明で用いることのできる不活性粒子の例としては、酸化ケイ素、酸化チタン、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、セライト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリン、タルク、カーボンブラック、窒化ケイ素、窒化ホウ素および特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明においては、配合する不活性粒子は単成分でもよく、また2成分以上を同時に用いてもよい。
【0020】
なお、フィルム製造時の巻上げ工程および拡散板用のコーティング剤易接着あるいは静防性付与等のためにフィルムに放電処理や塗布層を施してもよい。
【0021】
本発明の製版用ポリエステルフィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
【0022】
必要に応じ不活性粒子を所定量含有したポリエステルを溶融押出装置に供給し、ポリエステルポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融したポリマーをスリット状のダイから押出し、あるいは、添加物などが異なるポリエステルをそれぞれ溶融し、溶融したポリマーを押出口金内において層流状で接合積層させてスリット状のダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。かくして得られた熱可塑性ポリエステル樹脂シートは、次に延伸工程に供される。
【0023】
本発明における延伸工程は、連続的に同時二軸延伸を行う工程である。ここで言う連続的にとは、前の成形加工工程で作られた樹脂シートをそのまま同時二軸延伸機のテンターに導くことを意味するものであり、例えば一旦成形シートを巻き取って再度延伸工程に戻すこと、あるいはこの成型シートをバッチ式で行われる同時二軸延伸を行うことは本発明の対象外である。
【0024】
本発明で用いることのできる同時二軸延伸方法としては、テンター内でクリップをパンタグラフで連結しクリップ間隔を開く形態、クリップをスクリュー形状の軸で駆動しスクリュー溝の間隔を調整することでクリップ間隔を開く形態などで、縦方向および横方向に同時に延伸を行う方式のものを用いることができる。さらに同時二軸延伸方式でより好ましい形態としては、リニアモーターを利用した駆動方式によるものである。この方式のものは、クリップは個々に連結されることなく、リニアモーターにより発生する磁界で各クリップは独自に速度制御され、クリップ間隔を広げる特徴を有している。また、磁界の制御のみでクリップの広げ方が制御できるので、前述したパンタグラフ方式やスクリュー方式の同時二軸延伸機では延伸倍率などの条件変更が困難な場合があるのに対して、条件変更等はもちろんのこと、延伸を多段階に行うことも容易であり、延伸条件を細かく制御してより適切な条件を選択しながら縦方向および横方向への延伸を行うことができる利点がある。
【0025】
またラインスピードに関しても、パンタグラフ方式やスクリュー方式の同時二軸延伸機では、速いラインスピードを得るのが困難なのに対して、リニアモーター駆動方式の同時二軸延伸機であれば、通常の逐次二軸延伸機と同等のラインスピードまで高速化できる利点も有する。
【0026】
本発明における同時二軸延伸の延伸温度は、延伸する樹脂シートの温度が、ポリエステルのガラス転移点温度(Tg)℃−5℃から昇温結晶化温度(Tc)−10℃の範囲内で選択して行うことが好ましい。 本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂シートの延伸倍率は、縦および横方向への同時二軸延伸により面積倍率で1.2〜50倍、好ましくは4〜30倍の範囲で延伸を行うことがよい。また縦方向と横方向との延伸倍率の比率には特に限定はないが、通常の縦・横がバランスした二軸配向フィルムを得るために1.0±0.3、好ましくは1.0±0.1とするのがよい。
【0027】
本発明においては、延伸そのものを、一回の延伸で所定倍率まで延伸することも可能だが、特にリニアモーター駆動方式の二軸延伸装置を用いた場合には、延伸を二回以上に振り分けて所定倍率まで延伸することも可能である。この際には各々の延伸段階での延伸温度や延伸速度を変更して、樹脂シートの状態に合わせて条件を設定することが可能となる。
【0028】
こうして延伸されたフィルムは、平面性、耐熱寸法安定性等を改善するために、次に熱固定を行うことができる。この熱固定には延伸工程で用いた同時二軸延伸機内で熱固定することが好ましい。
【0029】
この熱固定は、通常150℃以上フィルムの融点未満の温度範囲で、1〜30秒間行われる。さらにその後、熱固定温度と同じかあるいは冷却過程の任意の温度範囲で、縦、横あるいはその両方向に各々1〜10%の弛緩処理を行うことができる。
【0030】
本発明の単層あるいは積層フィルムを拡散板に加工する際、その要求特性に応じて必要な特性、例えば印刷易接着性、帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、必要に応じて同時二軸延伸のテンター入口前で塗布しテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、積層フィルムの製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ねじれの少ない、拡散板用として好適なポリエステルフィルムを容易に提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における諸特性の測定および判定は次に示す方法にて行った。
【0033】
(1)屈折率、屈折率差
アタゴ社製アッベ式屈折計を用い、フィルムのMD方向の屈折率nMD、TD方向の屈折率nTDを測定し、次式より屈折率差Δnを算出した。なお、屈折率の測定はナトリウムD線を用い、23℃で行った。
【0034】
屈折率差Δn=nMD−nTD
【0035】
(2)線膨張係数比(αTR)、線膨張係数
(株)インテスコ製膨張係数測定装置を用い、フィルムのMD方向(αMD)、TD方向(αTD)に10mm幅×250mm長のサンプルを採取し、標点間200mm、荷重20gのもとで下記(I)〜(IV)の工程を恒温漕内で行い、(III )〜(IV)の間のフィルム長さ変化(膨張)の最大の傾きを求め、下記式(1)により線膨張係数(αMD、αTD)とした。
【0036】
(I)試料付近温度20℃、10%R.H.で30分放置
(II)試料付近温度70℃、5%R.Hで30分放置
(III )試料付近温度20℃、10%R.H.で60−90分放置し、試料の長さが一定になるまで待つ
(IV)試料付近温度60℃、5%R.H.
線膨張係数=長さ変化量(mm)/原長(15mm)/測定温度変化量(℃)…(1)
また、次式より線膨張係数比(αTR)を算出した。
【0037】
線膨張係数比(αTR)=αMD/αTD
【0038】
(3)フィルムヘーズ、全光線透過率
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製分球式濁度計 NDH−1001DPによりフィルムの濁度および全光線透過率を測定した。
【0039】
(4)加熱収縮率(SMD、STD)
田葉井製作所製の熱風循環炉を用い、フィルム縦方向(SMD)、横方向(STD)に各5本無張力状態で150℃の雰囲気中で5分間熱処理し、その前後のサンプルの長さを測定し、フィルム縦方向(SMD)、横方向(STD)を下記式にて計算し、各5本の平均値で表した。
加熱収縮率(%)=(l0−l1)/l0×100
(上記式中、l0 は熱処理前のサンプル長さ(mm)、l1 は熱処理後のサンプル長さ(mm)を表す)
なお、l0 がl1 よりも小さくなる場合(膨張の場合)は−(マイナス)で表した。
【0040】
(5)フィルムの厚さ斑
アンリツ社製連続フィルム厚さ測定器(電子マイクロメーター使用)により、二軸延伸フィルムの縦方向、および横方向に沿って測定し、3mの長さについて、次式より算出した。
厚さ斑=(フィルム最大厚さ−フィルム最小厚さ)÷フィルム平均厚さ×100
【0041】
(6)フィルム厚さ
マイクロメータ−により求めた。
【0042】
(7)たわみ、たわみ比
試料フィルムを、幅12.7mm、長さ150mmに切り出し、長手方向に127mm、宙にはみだすように片側を固定し、はみだした試験片の先端を垂れ下げる。30mm以上垂れ下がらない場合は、30mm以上垂れ下がる重さのおもりをつけ垂れ下げる。固定点より垂直に30mm下がった点から、水平方向に垂れ下がったフィルムまでの距離Ammを試験片の側面から測定し、次の式によって、垂れ下がり角度θ(deg.)を計算し、たわみとした。
tanθ=A/30
たわみ比は、MDのたわみ/TDのたわみとし、下記にて評価した。
×:たわみ比が0.6以下あるいは1.5以上のもの
○:たわみ比が0.6より大きく、1.5より小さいもの
(8)加工後の寸法変化
加熱収縮率(SMD、STD)の値に対し、下記判定とした。
○:SMD≧3.0 かつ STD≦3.0
△SMD<3.0 またはSTD>3.0
【0043】
(9)熱たわみ
内径がA3カット版の大きさとなるステンレスで作られた枠を作り、A3カット版に切り取ったフィルムを当該枠内に固定する。温度23℃、湿度50%R.H.でステンレスの枠にフラットに固定したフィルムを恒温恒湿槽に入れ、温度43℃、湿度70%R.H.に上げた状態にて12時間保持し、取り出した直後にフィルムの状態を観察し、下記判定とした。
○:枠内のフィルムがフラットのままでたるみやふくれ見られない
△:枠内のフィルムにわずかにたるみまたはふくれが見られる
×:枠内のフィルムにたるみまたはふくれが見られる
【0044】
(10)明るさ
電通産業(株)製フラットイルミネーターの上にフィルムを載せ、光の透過の仕方を目視で検査して下記判定とした。
○:フィルムを載せた場合でも、透過光がほとんどフラットイルミネーターと同一の明るさを保持するもの
△:フィルムを載せた場合、少し白っぽく濁った感じで光が見えるもの
×;フィルムを載せた場合、光が濁った感じとなるもの
【0045】
(ポリエステルAの製造方法)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に除々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応を終了したこの反応混合物、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。即ち温度を230℃から除々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より除々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの極限粘度は、0.65であった。
【0046】
(ポリエステルBの製造方法)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に除々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応の終了したこの反応混合物に、エチレングリコールスラリーに分散させた平均粒径が3.0μmのシリカ粒子を0.45部添加し、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から除々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より除々に減じ最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの極限粘度は、0.65であった。
【実施例1】
【0047】
上記ポリエステルA,Bをそれぞれ5%、95%の割合で混合した混合原料を押出機に供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に冷却したキャスティングドラム上に押出し、冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、リニアモーター駆動式の同時二軸延伸機を有するテンターに導いて、さらに95℃の熱風で予熱・加温を行い、95℃で縦方向3.1倍、横方向3.1倍に同時二軸延伸を行った。この後同じテンター内で240℃の熱風雰囲気下で熱固定を行い、同じ温度で縦方向および横方向に各々3%弛緩処理を行った後、フィルムをロール状に巻き上げ、厚さ188μmのポリエステルフィルムを得た。
【実施例2】
【0048】
実施例1において、縦方向3.4倍、横方向3.4倍に同時二軸延伸を行った以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例3】
【0049】
実施例1において、縦方向3.5倍、横方向3.5倍に同時二軸延伸を行った以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例4】
【0050】
実施例1において、テンター内で200℃の熱風雰囲気下で熱固定を行った以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例5】
【0051】
実施例1においてポリエステルA,Bをそれぞれ40%、60%の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例6】
【0052】
実施例1において、ポリエステルA,Bをそれぞれ20%、80%の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例7】
【0053】
実施例1において、テンター内で150℃の熱風雰囲気下で熱固定を行った以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例8】
【0054】
実施例1において、熱固定後に横方向に3%再横延伸した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例9】
【0055】
実施例1において縦方向2.8倍、横方向に2.8倍同時二軸延伸した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
【実施例10】
【0056】
実施例1において、キャスティングドラムに単位時間当たりに押し出す樹脂量を調整した以外は、実施例1と同様にして100μm厚みのポリエステルフィルムを得た。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、縦方向3.5倍、横方向4.3倍に同時二軸延伸を行った以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。
採取したポリエステルフィルムの特性をまとめて下記表1に示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のフィルムは、例えば、拡散板用のフィルムとして好適に利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時二軸延伸されたポリエステルフィルムであって、フィルム縦方向の屈折率とフィルム横方向の屈折率との差Δnが25×10−3以下であることを特徴とする拡散板用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−181746(P2006−181746A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375188(P2004−375188)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】