説明

持久力増強剤および抗疲労剤

【課題】ヒトおよび動物に対して、持久力増強作用および抗疲労作用を有する医薬品、飲食品、飼料を提供する。
【解決手段】ツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズを原料として得られる成分を有効成分として含有する持久力増強剤および/または抗疲労剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シマミミズ(Eisenia fetida)等のツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズを有効成分とする、ヒトおよび動物の持久力増強作用および抗疲労作用を目的とした医薬品、飲食品、飼料に用いられる持久力増強剤および抗疲労剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向が高まっている近年、スポーツと栄養・生理機能との関係についての認識が深まっている。このような中で、エネルギー補給、疲労回復、さらに瞬発力や持久力増強、身体作り等様々な場面でスポーツ食品や健康補助食品が利用されている。中でも、持久力増強剤および抗疲労剤は、スポーツ選手の成績向上のためのみならず、一般の人が仕事をする上での持久力維持や、活力あふれる生活を送るためのものとして多く使用されている。これらの持久力増強剤および抗疲労剤の中には、ビタミン類と生薬から成り、古くからの伝承により効果を謳っている科学的根拠の不明瞭なものや、カフェインやエタノールを合有して、興奮、不眠等を伴うものも多い。このような実情で、持久力増強剤および抗疲労剤は、はっきりとした有効性が認められ、科学的根拠のあるものが求められている。
また、動物においても同様であり、家畜、競走馬等のレース用の動物、動物園等の施設で飼育されている動物、家庭で飼育されているペット等においても持久力増強作用および抗疲労作用のあるものが求められている。
【0003】
健康補助食品等の有効成分の対象のひとつにミミズがある。例えば、シマミミズ(学名:Eisenia fetida)は、ツリミミズ科(Lumbricidae)シマミミズ属に属し、世界に広く分布している。これまでの研究からシマミミズに血栓溶解作用等が認められたという臨床報告がなされている(非特許文献1)。血栓溶解作用については、シマミミズ以外にも同じツリミミズ科のLumbricus bimastusにも認められたという報告がなされている(非特許文献2)。また、シマミミズが食品廃棄物を分解することから、シマミミズから生デンプン分解酵素を抽出する技術が開示されている(特許文献1)。さらに、シマミミズ、アカミミズ等のツリミミズ科のミミズだけでなく、フトミミズ科のフツウミミズやジュズイミミズ科のハッタミミズ等も含めて、血圧調整剤(特許文献2)や抗高脂血症剤(特許文献3)を製造する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−82472号公報
【特許文献2】特開平2−215723号公報
【特許文献3】特開平2−215725号公報
【非特許文献1】Dong Qiang,Wang Xi,Chang Shen−di,Zhouzhong−xing,Chinese Journal of New Drugs 2004,13(3),257−260
【非特許文献2】Ge T,Sun ZJ,Fu SH,Liang GD.Cloning of thrombolytic enzyme(lumbrokinase)from earthworm and its expression in the yeast Pichia pastoris.Protein Expr Purif 2005,42(1),20−28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献および非特許文献では、シマミミズ等のツリミミズ科のミミズが持久力増強作用および抗疲労作用に有効であるという報告はない。本発明は、ヒトおよび動物に対して、持久力増強作用および抗疲労作用を有する医薬品、飲食品または飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために研究を重ねた結果、ツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズには顕著な持久力増強作用および抗疲労作用があることを見出した。すなわち、請求項1に係る持久力増強剤および/または抗疲労剤は、ツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズの成分を含有し、前記成分が持久力増強作用および抗疲労作用を有することを特徴とする。
【0006】
このように、ミミズの成分を含有することで、持久力増強剤および抗疲労剤が得られる。
【0007】
さらに、請求項2に係る持久力増強剤および/または抗疲労剤は、請求項1に記載の持久力増強剤および/または抗疲労剤において、前記成分が、前記ミミズを原料として得られたものであることを特微とする。
【0008】
このように、ミミズを原料とすることで、そのミミズの成分を有効に含有させることができる。
【0009】
また、請求項3に係る食品または飼料は、請求項1または請求項2に記載の持久力増強剤または抗疲労剤を含有することを特徴とする。
【0010】
このように、ミミズの成分を含有する持久力増強剤または抗疲労剤により、顕著な持久力増強作用および抗疲労作用を有する食品または飼料が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る持久力増強剤、抗疲労剤およびこれらを含有する食品または飼料によれば、ミミズを有効成分とする持久力増強作用および抗疲労作用を有する医薬品、飲食品、飼料をヒトおよび動物に対して提供することができる。
【0012】
木発明における「持久力」とは、ある一定の運動状態を継続して行うことができる能力を示し、「持久力増強作用」とは、その継続してできる能力が増強される作用、例えば、具体的には継続時間が延びることにより確認することができる。本発明における抗疲労作用および持久力増強作用は、例えば後述する実施例のようにマウスを用いた遊泳疲労試験等により評価することができる。「疲労」とは、生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象をいう。これらに限定されるものではないが、例えば、「水泳をした後の筋肉疲労」「長時間にわたり仕事をした時の疲労」「毎日の通常生活において蓄積する疲労」等を挙げることができる。「抗疲労作用」とは、例えば本発明のミミズを精製して得られた粉末を飲食服用することにより、そのような「疲労」状態を軽減させる作用および「疲労」状態からの回復を促進する作用、あるいは「疲労」を予防し、疲れにくくする作用等をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る持久力増強剤、抗疲労剤を実現するための最良の形態について説明する。本発明におけるミミズはツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズであり、シマミミズ属シマミミズ(学名:Eisenia fetida)、オーシュウツリミミズ属アカミミズ(学名:Lumbricus rubellus)、ツチミミズ(学名:Lumbricus terrestris)、ムラサキツリミミズ属ムラサキツリミミズ(学名:Dendrobaena octaedra)、ツリミミズ属カッショクツリミミズ(学名:Allolobophora caliginosa)、サクラミミズ(学名:Allolobophora japonica)等が挙げられる。特に、シマミミズおよびアカミミズは、世界に広く分布し、養殖の容易なミミズであるので、安定して生産できる。これらのミミズを水で洗浄し、消化管中の内容物を吐き出させた後、除菌等の処理を行って精製したものを乾燥させた乾燥体もしくは乾燥後に粉砕した粉末を用いる。
【0014】
本発明に係る持久力増強剤および抗疲労剤を製造するには、上記の方法で製造したミミズの精製物を用いることができ、常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせて製剤化すればよい。木発明に係る持久力増強剤および抗疲労剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては錠剤、穎粒剤、散剤、力プセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳化剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられ、非経口投与剤としては、注射剤の他、坐剤、噴霧剤、経皮吸収剤等が挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、デンプン、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
【0015】
また、従来から、ミミズの精製物は、日本国内で飲食品として食されている。また海外でもミミズの食経験があることから、持久力増強作用および抗疲労作用を目的とした飲食品として摂取することもできる。また本発明に係るミミズを含有することを特徴とする機能性食品は、特定保健用食品、栄養機能性食品、または健康食品等として位置づけることができる。機能性食品としては、例えば、ミミズを精製し、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、穎粒状、粒状、錠剤、力プセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この飲食品は、そのまま食用に供してもよく、また、種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子等)に添加して食したり、水、酒類、果汁、牛乳、滑涼飲料水等の飲物に添加して飲用してもよい。
【0016】
また、本発明に係るミミズの精製物は、ペット用食品や飼料として食されていることから、動物に対しても同様に、ミミズを精製し、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、穎粒状、粒状、錠剤、力プセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。また、ペット用食品や飼料に添加したり、水等の飲料水等の飲物に添加してもよい。
【0017】
本発明に係る持久力増強剤および抗疲労剤において、係る医薬品または飲食品の形態に含有するミミズの精製物の投与量は、患者、患畜の種別(ヒト、ウマ、マウス等)、年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤または飲食品の形態等により、適宜選択、決定されるが、1日当たり0.0001〜10g/kg(体重)程度が好ましく、さらに、1日当たり0.03〜0.3g/kg(体重)程度がより好ましい。また、1日数回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0018】
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0019】
ミミズの持久力増強作用および抗疲労作用を調べるために以下の実験を行った。被検試料として、シマミミズを洗浄、殺菌してから、消化管中の内容物を排出させ、再度殺菌、洗浄、凍結乾燥工程、濾過等数種の加工を経て精製した粉末を用いた。この試料を4週齢の雄性Std:ddYマウス1群12匹に投与し、静水遊泳運動を行わせた。実施例1として、14日間の予備飼育後のマウスの1群に、1回分で0.03g/kg(マウスの体重)の試料を水道水0.2mlに混合して、1日1回、5日/週、経口投与した。また、実施例2として、1回分で0.3g/kg(マウスの体重)の試料を水道水0.2mlに混合して、実施例1と同様に、別の1群のマウスに投与した。静水遊泳運動は、開始日(投与前)を初回とし、週に1回、マウスに体重の10%の重りを負荷して強制水泳させ、疲労困憊し、頭部が完全に5秒間以上水中に沈むようになるまでの時間を測定した。投与開始から5週間後までの結果を表1に示す。数値は群における平均値±標準誤差で示した。また、比較例として、試料の代わりに水道水をさらに別の1群12匹のマウスに経口投与し、同様の静水遊泳運動を行わせた。
【0020】
【表1】

【0021】
シマミミズの精製粉末を投与された実施例1,2の各群は、投与開始の2週間後から遊泳時間の延長効果が認められ、5週間後までに比較例の群と比較して顕著な延長効果が認められた。この結果から、明らかに、持久力増強作用および抗疲労作用が示された。また、実施例2に示すように、実施例1の10倍量を投与しても持久力増強作用および抗疲労作用は保たれ、副作用は認められなかった。したがって、処方せんを必要とする医療用医薬品ではなく、一般用医薬品やいわゆる健康食品として容易に扱えるものとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツリミミズ科(Lumbricidae)に属するミミズの成分を含有する持久力増強剤および/または抗疲労剤であって、
前記成分が持久力増強作用および抗疲労作用を有することを特徴とする持久力増強剤および/または抗疲労剤。
【請求項2】
前記成分が、前記ミミズを原料として得られたものであることを特微とする請求項1に記載の持久力増強剤および/または抗疲労剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の持久力増強剤または抗疲労剤を含有する食品または飼料。

【公開番号】特開2009−51775(P2009−51775A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220470(P2007−220470)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(399015207)株式会社 皇漢薬品研究所 (4)
【Fターム(参考)】