説明

指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合したシステム

【課題】軍に採用されている指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合して、リアルタイムのリソース必要量に応じて、ネットワークのリソースを動的に再割当する。
【解決手段】衛星通信回線などのネットワークのリソースである帯域幅の割当量を司令官が必要とするリアルタイムの帯域幅割当必要量に応じて動的に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載したところの指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
軍に採用されている指揮統制システム(以下C2システムという)は、指揮官が隷下部隊及び配属部隊の作戦行動を立案し、指揮し、統制するために使用する工学的システムである。C2システムでは、例えば無人航空機(UAV)や地上偵察システムなどのようなデータ伝送機能を備えたアセット(軍装備)が利用され、そのデータはネットワーク上の通信回線を介してC2センター(指揮統制センター)へ伝送される。指揮官はこのC2センターにおいて、隷下部隊の作戦行動の統制とアセットの制御とを行うことができる。
【0003】
C4ISTARシステムは、C2システムの様々な派生システムのうちの1つであり、C4ISTARという用語は、コンピュータ技術並びにネットワーク技術に基づいて構築されるC2システムのインフラストラクチャを表している。C4ISTARは、C4Iという頭字語とSTARという頭字語とを組合せたものである。そのうちのC4Iは、指揮(Command)、統制(Control)、コンピュータ(Computers)、通信(Communications)、及び、情報((軍事的な) Intelligence)の頭文字を連ねた頭字語であり、指揮官がネットワーク化されたコンピュータシステムを用いて部隊に命令を発するための種々の機能要素を表している。またSTARは、敵並びに作戦領域の観測に関する事項を表しており、監視(Surveillance)、目標捕捉(Target Acquisition)、及び、偵察(Reconnaissance)の頭文字を連ねた頭字語である。
【0004】
C2システムでは、また様々なC2システムのうちでも特にC4ISTARシステムでは、様々な種類の通信メディアが利用され、その通信メディアを介して上述したデータ伝送が行われる。例えば、移動体(航空機、車両、等々)などのアセットとC2センターとの間のデータ転送に、衛星通信回線が利用されることもある。
【0005】
C2システムにおけるデータ伝送の具体的な事例を挙げるならば、例えば、無人航空機(UAV)に搭載されたカメラからC2センターへ、衛星通信回線を介して、ライブ・ビデオのストリーミング信号が伝送される。衛星通信回線のリソースは限られており、また特に、ライブ・ビデオのストリーミング信号の伝送に使用し得る帯域幅は限られているため、ライブ・ビデオのストリーミング信号の送信元が複数存在している場合には、通常、衛星通信回線のリソースをそれら複数の送信元で分け合って使用するようにしている。例えば、衛星通信回線の帯域幅が12Mbpsであって、その帯域幅を12機のUAVで分け合って使用するのであれば、その帯域幅をそれら12機のUAVの間で等分に分け合うと、各々のUAVが1Mbpsずつの帯域幅を使用することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、例えばC4ISTARシステムなどのC2システムに改良を加えることにあり、また特に、そのシステム内のデータ伝送に改良を加えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載した主題により達成される。尚、従属請求項は、本発明の実施の形態に関する特徴を記載したものである。
【0008】
本発明の最も重要な概念は、例えばC4ISTARシステムなどのC2システムとネットワーク管理システムとを統合して、C2システムにおけるリアルタイムのリソース必要量に応じてネットワークのリソースを動的に再割当できるようにし、もって、C2システムにおけるデータ伝送量を、カスタマー(システム利用者)のリアルタイムのデータ伝送必要量に、よりよく適合させ得るようにすることにあり、その具体的な事例を挙げるならば、例えば、衛星通信回線などのネットワークのリソースである帯域幅の割当量を、司令官が必要とするリアルタイムの帯域幅割当必要量に応じて動的に変更することなどを可能にするものである。
【0009】
本発明の1つの実施の形態は、指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合したシステムに関するものであり、このシステムは、前記指揮統制システムにより制御される複数のアセットの夫々に割当てるリソースの割当量をネットワーク内において管理するようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記ネットワーク管理システムは、アプリケーション・レイヤにおいて前記指揮統制システムと統合されているようにするとよく、また、前記ネットワーク管理システムは、前記指揮統制システムからプライオリティ・コマンドと共に受取ったリソース・リクエストを処理するようにしておくとよく、該リソース・リクエストはネットワーク内においてリソースをアセットに割当てることを要求するものである。
【0011】
前記ネットワーク管理システムは、プライオリティ・コマンドに動的に応答して、例えばアセットに対応した帯域幅の再割当てをネットワーク内において行うなどの当該プライオリティ・コマンドに関連したサービスをイネーブルするようにしておくとよい。
【0012】
前記ネットワーク管理システムは更に、プライオリティ・コマンドと共に受取ったリソース・リクエストがネットワークの制約条件を満たしているか否かを調べる有効性検証を行うようにしておくとよい。
【0013】
前記ネットワーク管理システムは更に、プライオリティ・コマンドと共に受取ったリソース・リクエストの要求が充足されたか否かを通知するためのリザルト・メッセージを前記指揮統制システムへ送信するようにしておくとよい。
【0014】
前記システムにおいて、前記ネットワーク管理システムと前記指揮統制システムとの間を接続するインターフェースは、ダイレクト・インターフェースとして構築されるか、または、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムを経由するインターフェースとして構築されたものとするとよく、該マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、個々の管理システムと指揮統制システムとの間の共通インターフェース機能を提供するものであると共に、個々の管理システムが送出したリソース・リクエストの認可及びルーティングを実行する単一ハブを構成するものである。
【0015】
前記マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、管理対象のアセットの動的ディレクトリを保持し、そして、指揮統制システムから受取るプライオリティ・コマンドに含まれているリソース・リクエストの受取時に、当該動的ディレクトリを参照するようにしておくとよい。
【0016】
前記マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは更に、指揮統制システムから受取るプライオリティ・コマンドに含まれているリソース・リクエストを、当該プライオリティ・コマンドに含まれている付加的供給データに従ってルーティングするようにしておくとよい。
【0017】
前記ネットワーク管理システムは、指揮統制システムにとってのサービス・プロバイダとして構築されているようにするとよい。
【0018】
前記ネットワーク管理システムは更に、例えばSOAPプロトコル及びHTTPプロトコルなどを用いて構築されるサービス指向アーキテクチャを採用しているものとするとよい。
【0019】
更に、前記ネットワーク管理システムはウェブ・サービスを利用したインターフェースを備えているものとするとよい。
【0020】
前記指揮統制システムは1つまたは複数のC4ISTARシステムから成るようにするとよい。
【0021】
前記アセットは、無人航空機、地上移動体、及び/または、テレビ電話端末とするとよく、そして、例えばビデオ・ストリーミング信号及び/またはオーディオ・ストリーミング信号などのストリーミング方式のデータ信号を、ネットワークを介して前記指揮統制システムへ供給するものとするとよい。
【0022】
本発明の以上の様々な局面、並びに、本発明のその他の種々の局面について、以下に実施の形態に即して詳述し、明らかにして行く。
【0023】
以下に示す本発明の詳細な説明は、具体的な実施の形態に即した説明であるが、ただし本発明は、以下に示す具体的な実施の形態のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合したシステムの、その1つの実施の形態を示した概念図である。
【図2】本発明に係る指揮統制システムとネットワーク管理システムとを統合したシステムが用いられる、その具体的な状況を例示した図であり、無人航空機(UAV)が送信しているビデオ・ストリーミング信号のビット・レートを増大させることを要求する場合を示している。
【図3】本発明に用いられる、指揮統制システムとネットワーク管理システムとの間を接続するインターフェースの2つの実施の形態を示した図である。
【図4】本発明に用いられる、複数の指揮統制システムと複数のネットワーク管理システムとの間を接続するインターフェースであるところの、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムの1つの実施の形態を示した図である。
【図5】本発明に用いられる、指揮統制システムとネットワーク管理システムとの間を接続するインターフェースの1つの実施の形態であるところの、ウェブ・サービスを利用した同期型インターフェースを示した図である。
【図6】本発明に用いられる、指揮統制システムとネットワーク管理システムとの間を接続するインターフェースの1つの実施の形態であるところの、ウェブ・サービスを利用した非同期型インターフェースを示した図である。
【図7】本発明に用いられる、2つの指揮統制システムと2つのネットワーク管理システムとの間を接続するインターフェースの1つの実施の形態であるところの、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に説明する本発明の数々の実施の形態は、C4ISTARシステムとネットワーク管理システムとを統合して、C4ISTARシステムが必要とするリアルタイムの必要量に応じたネットワークのリソースの動的な再割当てを行うように構成したシステムを具体例として示したものである。ただし、具体例として示すシステムはC4ISTARシステムを用いたものだけであるが、本発明はC4ISTARシステムを用いたもののみに限定されない。また、以下に説明する本発明の実施の形態は、通信制御を行うことにより、司令官などのカスタマー(システム利用者)が、衛星通信回線の(またはその他のネットワークの)リソースである帯域幅の割当量を、司令官みずからが必要と考えるリアルタイムの帯域幅必要量に応じて動的に変更できるよう、C4ISTARシステムの機能を拡張したものである。
【0026】
本発明の実施の形態における特に重要な概念として以下の2つの概念がある。
・第1に、C4ISTARシステムとネットワーク管理システム(以下NMSという)とをアプリケーション・レイヤにおいて統合して、C4ISTARシステムが、独立したネットワーク内において行われるアセットへの帯域幅の割当てに対して所望のプライオリティを付与できるようにすること。
・第2に、NMSが、プライオリティ・リクエストに動的に応答してサービスをイネーブルにすること。ここでいうサービスとは、具体的には、サービス・リクエストに応答してネットワーク内において帯域幅の動的な割当てを行うことである。
【0027】
図1に示した概念図は、以上の2つの概念を図解して示すと共に、更に、サービスをリクエストするプロセスとサービスをイネーブルするプロセスとを時系列的に示した図であり、C2システムであるC4ISTARシステムと、NMSとを統合したシステムを示す。この統合したシステムのうちのC4ISTARシステム18は、複数のアセット(軍装備)14の制御を行っており、それらアセット14は、例えば無人航空機(UAV)などであって、衛星通信回線ネットワークを介してC4ISTARシステム18へ、ISTAR伝送信号(情報収集、監視、目標捕捉、及び偵察のための伝送信号)を送信している。C4ISTARシステム18は、あるアセットに割当てられている帯域幅の割当量を増大させることを要求するリソース・リクエスト16を送信する機能を備えている(ステップ1において、C4ISTARシステム18からNMS12へ帯域幅プライオリティ・リクエストのコマンドが送出されている)。NMS12はステップ2(図1の参照番号22)において、そのリソース・リクエストが要求している帯域幅の割当量の増大が、ネットワークの制約条件を満たしているか否かを調べる有効性検証を行う。ステップ2での有効性検証の結果、そのリソース・リクエストの有効性が否定された場合には、ステップ3及びステップ4は実行されず、そのリソース・リクエストの要求が充足されなかったことを通知するリザルト・メッセージ24がC4ISTARシステム18へ送信される(ステップ5)。一方、ステップ2での有効性検証の結果、そのリソース・リクエストの有効性が肯定された場合には、ステップ3において、帯域幅の再割当てをイネーブルするためのコマンド20がNMS12からアセット14へ送信される。続くステップ4においては、アセット14が、そのコマンドに対する応答として、帯域幅の再割当てに成功したか否かを示すリザルト・メッセージ26をNMS12へ送信する。このステップ4においてNMS12へ送信されたリザルト・メッセージは、続くステップ5において、NMS12からC4ISTARシステム18へ転送され、それによって、帯域幅の再割当てに成功したか否かがC4ISTARシステム18に通知される。尚、このリザルト・メッセージは、再割当てによって新たに設定されたデータ・レート(データ伝送速度)などの付加情報を含むものとするのもよい。C4ISTARシステム18から要求された通りの帯域幅の再割当てに成功したならば、アセット14はその要求によって増大した帯域幅に応じてデータ・レートを変更し、これによって、アセット14からC4ISTARシステム18へ伝送されているISTAR伝送信号28のデータ・レートが変化する。
【0028】
図2は、以上にその概要を説明した図1のシステムが実行するプロセスを具体的に説明するための、1つの状況例を示した図であり、この状況例について以下に説明する。
【0029】
図2の状況例において、衛星通信回線のリソース(以下サットコム・リソースという)は、複数の(例えば12個の)アセットから成る1つのアセット群のネットワークを構築するよう計画され、且つ、設定(コンフィギュレーション)がなされており、それらアセットは、ISR(情報収集、監視、及び偵察)を実行するための、ある1つの展開形態で展開配備されており、サットコム・リソースの12Mbpsの帯域幅を分け合って使用している。各々のアセットは、C4ISTARシステムのコマンド・ステーションへ、ライブ・ビデオのストリーミング信号を伝送している。図2には、それらアセットの具体例として、2機のUAV(参照符号uav01及びuav02を付した)と、1台の衛星通信回線用のテレビ電話端末(参照符号mp05を付した)とが示されている。通常の状態では、複数のアセットが、ビデオのストリーミング信号の伝送に使用可能な帯域幅を等分に分け合って使用している。
【0030】
C4ISTARシステムは、地図表示式のユーザ・インターフェースを備えており、その地図上に、伝送信号を送信している12個のアセットの現在位置がリアルタイムで表示され、地図上に表示されているアセットのうちの1つを選択することで、その選択したアセットが送信している伝送信号によるビデオ画像を表示させることができる。ただし、限られた帯域幅を複数のアセットの間で分け合って使用しているため、各々のアセットがストリーミング方式で伝送するビデオの画像は、約1Mbpsの帯域幅でも伝送可能な、低画質ないし中画質(通常解像度)の画像とならざるを得ない。
【0031】
かかる状況において、C4ISTARシステムを使用している司令官が、複数のアセットのうち、ある特定の1つのアセットが送信している伝送信号によるビデオ画像を、より詳しく観察したいと考えた場合には、できる限り迅速に当該アセットからのビデオ画像を高画質にすることが求められる。
【0032】
そのためには、サットコム・リソースの設定変更(リコンフィギュレーション)を行うことにより、当該アセットが使用する帯域幅を例えば6Mbpsに増大させて高解像度のビデオ画像をストリーミング方式で伝送可能にする一方で、その他の11個のアセットには残余の6Mbpsの帯域幅を分け合って使用させるようにすればよく、そうした場合には、その他の11個のアセットの各々が使用する帯域幅が1Mbpsから約512Kbpsに減少する。更に、図2に例示した状況例は、リアルタイムの対応を必要とする状況であるため、このサットコム・リソースの設定の変更は、動的に且つ迅速に行えなければならない。
【0033】
当該アセットがより高画質のビデオ画像を伝送できるようにするために必要な帯域幅の増大は、C4ISTARシステムから命令を発することによって行われる。この帯域幅の再割当のサービスをイネーブルするために、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)による操作を可能にするソフトウェアをC4ISTARシステムに組込んでおき、そのGUIの「シングル・クリック」操作によって命令を発することができるようにしておくとよい。より具体的には、例えばそのユーザ・インターフェース画面上の、無人航空機uav02が表示される位置に、「HD(高解像度)ストリーミング・ビデオ」ボタンが表示されるようにしておき、そのボタンを「シングル・クリック」することによって命令が発せられるようにしておくとよい。
【0034】
この操作が行われたならば、C4ISTARシステムからNMSへ電子メッセージが送出され(図1のステップ1)、その電子メッセージは例えば「uav02からの画像を高解像度にせよ」という内容のものであり、それに必要な設定変更を要求するものである。また、その電子メッセージは(少なくとも)当該アセットの一義的なIDと命令内容とを含むものであり、その具体例を挙げるならば、例えば次のようなメッセージである。
【0035】
<assetID>uav02</assetID><dataRate>max</dataRate>
【0036】
NMSは、この電子メッセージに示されている要求事項(リクエスト)の処理を実行し(図1のステップ2)、そして、展開配備されネットワークを構成している複数のアセットに、無線通信回線を介して即座に設定変更を施す(図1のステップ3)。これにより、ある特定のアセット(上述した当該アセット)が送信している伝送信号によるビデオ画像を高解像度にすることができる。
【0037】
以上のようにして当該アセットからコマンド・ステーションへストリーミング方式で供給されているビデオ画像を高解像度としたときに、もし、衛星通信回線の全体としての帯域幅に余裕分がなかったならば、展開配備されているアセット群に含まれているその他のアセットから供給されているビデオ画像は低画質になる。
【0038】
ビデオ画像が高解像度に切り替わったならば、そのことがGUIの表示に反映されて、表示されているデータ・レートの現在値が更新される。一方、要求された設定変更を実行できなかった場合には、当該アセットからNMSへ、そして、NMSからコマンド・ステーションへと、その旨を示した電子メッセージが応答として返され(図1のステップ4及びステップ5)、そして、その旨がGUIに表示されて操作者に通知される。
【0039】
当該アセットからの伝送信号のデータ・レートを高速にしておく必要がなくなったならば、ビデオ画像を通常解像度に切り替えることを命令するコマンドを発することにより、以上に説明した高解像度に切り替えるためのコマンドの場合と同様にして、ネットワークの設定を所定の通常時の状態に戻すことができる。
【0040】
基本的に、ネットワークの設定変更は、以上の状況例に示したように、1つの独立したネットワークの1つのエレメントの変更にとどめるようにするのがよい。更に、通信衛星のペイロードを変更せずに済むようなものとするのがよく、また、1つの展開単位を構成する1つのアセット群の内部での設定変更にとどめて、当該アセット群以外の用に供されている残余のネットワーク・リソースには影響を及ぼさないようなものとするのがよい。即ち、ネットワークの設定変更は、同じ1つの独立したネットワークに含まれている複数のアセットに対する設定変更に限定して行われるものとするのがよい。
【0041】
ただし別法として、もし、衛星通信回線の全体としての帯域幅の上限量が、展開配備されている1つのアセット群の使用可能な帯域幅の上限量より大きく、且つ、ネットワークの運用規模の拡大が許容されている場合には、特定のアセットに割当てる帯域幅を増大させるよう要求するリクエストを受取ったときに、ネットワークの運用規模を変更するようにしてもよい。
【0042】
C4ISTARシステム18とNMS12との間を接続するインターフェースは、図3に示したように、それらシステムを直接的に接続するダイレクト・インターフェースとして構築してもよく、或いは、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムを経由するインターフェースとして構築してもよく、いずれの形式とするかは個々の必要条件に応じて決めればよい。電子回路で構成するダイレクト・インターフェース30は、完全に自動化したインターフェースとすることができる。一方、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム32を経由するインターフェースでは、その自動化のレベルは様々なものとなり、インターフェースをどこまで電子回路で構成するか、操作者の介入をどれほどまで必要とするか、それに、手動操作によるプロセスをどれほど含むかなどが、その自動化のレベルを決定する要因となり、また、その自動化のレベルは応答性に影響を及ぼす。C4ISTARシステム18に接続されるNMS12がただ1つしかない場合には、ダイレクト・インターフェース30を用いれば充分である。一方、C4ISTARシステム18が使用するネットワーク・リソースが複数のNMS12によって管理されている場合には、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム32を経由するインターフェースにそのC4ISTARシステム18を接続しておけば、メッセージの交換の相手先となるNMS12の選択をマネジャー・オブ・マネジャーズ・システム32が管理するようになるため、C4ISTARシステム18はメッセージの交換相手先について関知する必要がない。
【0043】
マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム32を経由するインターフェースを用いる場合には、図4に示したように、複数のC2システムと複数のNMSとをどのようにでも組合せて接続することができる。図示例では、複数のC2システムとして、第1番C4ISTARシステム18−1〜第n番C4ISTARシステム18−nと、C4ISTAR以外のC2システム19とが示され、また、複数のNMSとして、衛星通信回線用NMS12−1と、地上通信回線用NMS12−2と、その他の通信回線用NMS12−3とが示されている。マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム32がアクセス制御を行うことによって、複数のC2システムのうちのどのC2システムからでも、複数のNMSのうちのどのNMSにでもアクセスすることが可能となっている。
【0044】
マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、個々の管理システムとの間の共通インターフェースとして機能し、また、リソース・リクエストの認可及びルーティングを実行する単一ハブを構成するものである。
【0045】
更に、アプリケーションどうしの間でメッセージの交換を行えるようにするために、また特に、メッセージの交換をおおむねオープン・スタンダードに則って行えるようにするために、数々の機構を備えている。ここで言うメッセージの交換は、実質的に、NMSがC4ISTARシステム(場合によってはその他のC2システム)に、サービスを提供するためのものであるため、そのメッセージの交換のためのアーキテクチャとしては、例えば、HTTPプロトコル上で更にSOAPプロトコルを用いて構築されるサービス指向アーキテクチャ(SOA)などを採用するとよい(これはウェブ・サービスを利用したインターフェースである)。
【0046】
かかるアーキテクチャにおいては、NMSはサービス・プロバイダのインスタンスとして、そしてC4ISTARシステムはサービス・コンシューマーのインスタンスとして扱われ、これを図示したのが図5である。図中の「リクエスト」は、例えば「このアセットにより大きな帯域幅を割当てることを要求する」という内容のものであり、これに対する図中の「レスポンス」は、例えば「当該要求は充足され、当該アセットに6Mbpsの帯域幅が割当てられた」という内容のものである。これらリクエスト及びレスポンスのインターフェース定義は、通常、サービス・プロバイダが規定してサービス・コンシューマーに遵守させる、XML形式で書かれるインターフェース定義とすることができる。
【0047】
サービス・プロバイダがリクエストを受取ってからレスポンスを返すまでにある程度の時間を要する場合には、サービス・プロバイダとサービス・コンシューマーとの間のインターアクションを互いに非同期的なリクエストとレスポンスとのペアによって行わねばならないこともあり、これを図示したのが図6である。同図において、最初にリクエストを送出したサービス・コンシューマーは、それに対する返信としてアクノリッジメントを受取り、このアクノリッジメントは、当該リクエストの要求事項が充足されたか否かの結果を表すものではなく、当該リクエストが受信され、有効性検証され、現在処理中であることを表すものである。NMSは、リクエストの要求事項の処理が完了した時点でリクエストとは非同期的にレスポンスを送信するために、C4ISTARシステムにサービスを提供する必要がある。NMSはレスポンスを送信し、それに対する返信としてアクノリッジメントを受取る。このアクノリッジメントは、C4ISTARシステムがそのレスポンスを受信して有効性検証を行ったことを示すものである。
【0048】
このサービス指向アーキテクチャを用いた方式が特に良好に機能するのは、分散して設置されている複数のC4ISTARシステムが同一のサービスを要求する場合、及び/または、ある1つのC4ISTARシステムが複数のNMSにサービスを要求する場合である。マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムを用いてこれらの場合に対応するには、例えば図7に示したアーキテクチャを用いるとよい。
【0049】
様々なアセットのうちには、常に決まった1つのNMSによってのみ管理されるものもあり、そのようなアセットに関しては、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、管理対象のアセットを表示した動的ディレクトリを保持し、そして、そのディレクトリを参照してサービス・リクエストのルーティングを行うようにするとよい。また、様々なアセットのうちには、そのときどきで異なったNMSによって管理されるものもあり、例えばUAVは、飛行中にLOS(Line Of Sight)からBLOS(Beyond Line Of Sight)へ移行したとき、及び、その逆の移行を行ったときに、それまでとは異なるNMSによって管理されるようになる。そのようなアセットに関しては、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、制御メッセージに含まれている付加的供給データ(制御メッセージに付加されて供給されるデータ)に基づいて、或いは、その他のソースから供給されるデータに基づいて、サービス・リクエストのルーティングを行うようにするとよい。尚、そのような付加的供給データを含む制御メッセージは、例えば次のようなものである。
【0050】
<assetID>uav02</assetID><dataRate>max</dataRate><source>BLOS</source>
【0051】
以下に、本発明に関して実行されるNMS内におけるリソースの動的な再割当ての具体例について手短に説明する。
【0052】
NMS内においてリソースの動的な再割当てを実行する方法としては、幾つもの方法が採用可能であり、例えば、DAMA(Demand Assigned Multiple Access)コントローラを利用する方法やACM(Adaptive Coding and Modulation)コントローラを利用する方法があり、それらはVBR(可変ビットレート)やCBR(固定ビットレート)で端末の帯域幅使用量を制御するものである。
【0053】
また、これらの方法を採用する場合には、1つの端末群に含まれる複数の端末のうちの(1つまたは複数の)優先端末に、帯域幅の優先使用権を付与し、優先端末が使用しない残余の帯域幅を、その他の端末の間で分け合って使用するようにするとよい。
【0054】
この点に関して考慮すべき2通りの状況があり、その1つは、リソースが予め必要量より多く用意されており、割当てられていないスペアのリソース容量が存在しているという状況であり、もう1つは、用意されているリソース容量の全てが割当てられており、使用可能な帯域幅を複数の端末の間で分け合って使用しているという状況である。第1の状況では、ある端末に割当てられている帯域幅を増大させても、その他の端末には影響が及ばないようにすることができる。第2の状況では、その他の端末のデータ・レートを低下させることが必要になることがある。
【0055】
本発明の中核的な概念は、C4ISTARシステムとネットワーク管理システム(NMS)とを統合し、C4ISTARシステムが電子回路からなるインターフェースを介して動的な通信制御を行えるように、C4ISTARシステムの制御機能を拡張することにある。また本発明のその他の局面として、(衛星通信回線ないし一般通信回線の)帯域幅の動的な再割当てを行うという概念、かかる動的な再割当てのための高精度のメカニズム、サービス指向アーキテクチャ(SOA)を用いてアプリケーション・レイヤを構築するという概念、システム・アーキテクチャにマネジャー・オブ・マネジャーズ・システムを組込むという概念、それに、操作者が「シングル・クリック」操作によってインターアクションを行えるようにするという概念がある。
【符号の説明】
【0056】
12 NMS(ネットワーク管理システム)
12−1 衛星通信回線用NMS
12−2 地上通信回線用NMS
12−3 その他の通信回線用NMS
14 アセット(軍装備)
16 帯域幅プライオリティ・コマンド
18 C4ISTARシステム
18−1 C4ISTARシステム
18−n C4ISTARシステム
19 C4ISTAR以外のC2システム(指揮統制システム)
20 帯域幅の再割当てをイネーブルするコマンド
22 制約条件に対する帯域幅の再割当ての有効性検証
24 NMSからC4ISTARシステムへ送信されるリザルト・メッセージ
26 アセットからNMSへ送信されるリザルト・メッセージ
28 アセットからC4ISTARシステムへ伝送されているISTAR伝送信号
30 ダイレクト・インターフェース(XML)
32 マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指揮統制システム(18)とネットワーク管理システム(12)とを統合したシステムにおいて、前記指揮統制システム(18)により制御される複数のアセット(14)の夫々に割当てるリソースの割当量をネットワーク内において管理するようにしたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ネットワーク管理システム(12)は、アプリケーション・レイヤにおいて前記指揮統制システム(18)と統合されており、また、前記ネットワーク管理システム(12)は、前記指揮統制システム(18)からプライオリティ・コマンド(16)と共に受取ったリソース・リクエストを処理するようにしてあり、該リソース・リクエストはネットワーク内においてリソースをアセット(14)に割当てることを要求するものであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記ネットワーク管理システム(12)は、プライオリティ・コマンド(16)に動的に応答して、アセット(14)に対応した帯域幅の再割当てをネットワーク内において行うなどの当該プライオリティ・コマンド(16)に関連したサービス(20)をイネーブルするようにしてあることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記ネットワーク管理システム(12)は、プライオリティ・コマンド(16)と共に受取ったリソース・リクエストがネットワークの制約条件を満たしているか否かを調べる有効性検証(22)を行うようにしてあることを特徴とする請求項2又は3記載のシステム。
【請求項5】
前記ネットワーク管理システム(12)は、プライオリティ・コマンド(16)と共に受取ったリソース・リクエストの要求が充足されたか否かを通知するためのリザルト・メッセージ(24)を前記指揮統制システム(18)へ送信するようにしてあることを特徴とする請求項2、3、又は4記載のシステム。
【請求項6】
前記ネットワーク管理システム(12;12−1、12−2、12−3)と前記指揮統制システム(18;18−1、18−n、19)との間を接続するインターフェースは、ダイレクト・インターフェース(30)として構築されるか、または、マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム(32)を経由するインターフェースとして構築されており、該マネジャー・オブ・マネジャーズ・システムは、個々の管理システム(12−1、12−2、12−3)と指揮統制システム(18−1、18−n、19)との間の共通インターフェース機能を提供するものであると共に、個々の管理システム(12−1、12−2、12−3)が送出したリソース・リクエストの認可及びルーティングを実行する単一ハブを構成するものであることを特徴とする請求項2、3、4、又は5記載のシステム。
【請求項7】
前記マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム(32)は、管理対象のアセット(14)の動的ディレクトリを保持し、指揮統制システム(18)から受取るプライオリティ・コマンドに含まれているリソース・リクエストの受取時に、当該動的ディレクトリを参照するようにしてあることを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記マネジャー・オブ・マネジャーズ・システム(32)は、指揮統制システム(18)から受取るプライオリティ・コマンドに含まれているリソース・リクエストを、当該プライオリティ・コマンドに含まれている付加的供給データに従ってルーティングするようにしてあることを特徴とする請求項6又は7記載のシステム。
【請求項9】
前記ネットワーク管理システム(12)は、指揮統制システム(18)にとってのサービス・プロバイダとして構築されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記ネットワーク管理システム(12)は、SOAPプロトコル及びHTTPプロトコルなどを用いて構築されるサービス指向アーキテクチャを採用していることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記ネットワーク管理システム(12)は、ウェブ・サービスを利用したインターフェースを備えていることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記指揮統制システムは1つまたは複数のC4ISTARシステム(18、18−1、18−n)から成ることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記アセット(14)は、無人航空機、地上移動体、及び/または、テレビ電話端末であり、ビデオ・ストリーミング信号及び/またはオーディオ・ストリーミング信号などのストリーミング方式のデータ信号を、ネットワークを介して前記指揮統制システム(18)へ供給するものであることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項記載のシステム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−257249(P2012−257249A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129609(P2012−129609)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(512149798)アストリウム・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Astrium Ltd.
【住所又は居所原語表記】Anchorage Road,Portsmouth,Hampshire,PO3 5PU United Kingdom
【Fターム(参考)】