説明

指示具および情報処理装置

【課題】シングルタッチ入力に加えてマルチタッチ入力が可能な指示具を提供する。
【解決手段】指示具10は、タッチパネル8を接触または押圧して指示する指示部28が棒状部材の一方の端部にそれぞれ形成された一対の把持部20と、一対の把持部を近接または分離可能に案内する案内部26と、一対の把持部20に挟持され、案内部26が案内する方向に沿って作用する弾性体29と、一対の把持部20が接した様態を保持する留め具24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示具および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター等の情報処理装置に対する座標入力装置の1つとしてタッチパネルを介した入力装置がある。このような入力装置は、座標入力装置としての機能を有する透明なタッチパネル面と、このタッチパネル面の背後に設けられ、タッチパネル面の方向に向けて画像を表示する表示手段とを有する。ユーザーは、下記特許文献1に示すような入力具や指でシングルタッチ、即ち、タッチパネル上の1つの領域を押圧することで、コンピューターに対して座標入力を行うことができると共に、タッチパネルを介して表示手段が表示する画面を閲覧することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−176720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、iPhone(登録商標)等に代表されるように、ユーザーがタッチパネルに対してピンチ動作等のマルチタッチ入力が可能な情報処理装置が普及している。
しかしながら、特許文献1に示すような入力具は指示部が1つであり、マルチタッチ入力に対応していないため、ユーザーは自身の指で入力する必要があり、入力操作を繰り返すうちにタッチパネル面は指脂等で汚れ、タッチパネル面を視認しにくくなったり、マルチタッチ入力を滑らかに行うことができなくなった。従って、ユーザーはタッチパネル面に対して定期的なクリーニングを行う必要があった。
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、シングルタッチ入力に加えてマルチタッチ入力が可能な指示具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例にかかる指示具は、接触または押圧して指示する指示部が棒状部材の一方の端部にそれぞれ形成された一対の把持部と、一対の前記把持部を近接または分離可能に案内する案内部と、一対の前記把持部に挟持され、前記案内部が案内する方向に沿って作用する弾性体と、一対の前記把持部が接した様態を保持する保持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、一対の把持部は、案内部に案内されて接したり離れたりするため、一対の把持部が接した様態では指示部はシングルタッチ入力を行い、一対の把持部が離れた様態では指示部はマルチタッチ入力を行うことができる。更に、シングルタッチ入力時には、接した一対の把持部が保持部により保持され、マルチタッチ入力時には、弾性体の復元力で把持部を案内する方向に指示部を容易に移動させることができる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例にかかる指示具において、前記棒状部材の他方の端部を中心として一対の前記把持部を回転可能に支持する支持部を備えても良い。
【0009】
[適用例3]
上記適用例にかかる指示具において、前記案内部は、一対の前記把持部を、対向状態を保ったまま近接または分離可能に案内しても良い。
【0010】
[適用例4]
上記適用例にかかる指示具において、前記弾性体は、前記案内部の案内に従って一対の前記把持部が接近した場合、一対の前記把持部を離す方向に復元力を発生させても良い。
【0011】
[適用例5]
上記適用例にかかる指示具において、前記案内部は、一対の前記把持部が接した場合、前記把持部から突出しないように収納可能であることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、指示具の収納や携帯が容易になる。
【0013】
[適用例6]
上記適用例にかかる指示具において、前記指示部は、被指示面と接する金属製の刷毛および球体の何れかを備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、タッチパネルの入力精度が向上する。
【0015】
[適用例7]
タッチパネルを介して情報を入力する情報処理装置に対して、上述した指示具を用いて情報を入力することにより、タッチパネルを指で触れることなくシングルタッチ入力およびマルチタッチ入力を1本の指示具で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る指示具の外観を示す図。
【図2】案内部を伸ばした様態を示す図。
【図3】留め具による係着を解除した様態を示す図。
【図4】本発明の実施形態2に係る指示具の外観を示す図。
【図5】案内部を伸ばした様態を示す図。
【図6】留め具による係着を解除した様態を示す図。
【図7】指示部の先端部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、タッチパネル面に触れて指示する指示具について図面を参照して説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、指示具10の外観を示す図であり、(A)は正面を示し、(B)は側面を示す。この指示具10はユーザーにより把持され、被指示面である情報処理装置5のタッチパネル8上の1つの指示領域を指示部28で押圧して指示する際(シングルタッチ入力)に使用される。尚、この図1では、指示具10はスタイラスペンのように一本に一体化した様態を示している。
指示具10は、一対の把持部(20A,20B)と、支持部22と、案内部26と、弾性体29と、留め具24と、を備える。
把持部(20A,20B)は、それぞれの一方の端部に指示部28が形成された2本の棒状部材で構成され、材質は限定されないが、タッチパネル8が静電容量方式の場合には導電体が好ましい。尚、指示具10が一体化した様態を示している際には、指示部28も一体化した様態を示す。
支持部22は、棒状部材の他方の端部を中心として一対の把持部(20A,20B)を回転可能に支持する。
【0019】
案内部26は、一方の把持部20Aに対して他方の把持部20Bが支持部22の回転軸を中心に回転する場合に回転を案内する。この案内部26は、指示部28が一体化した様態である場合、指示部28方向に折り曲げることで、先端が突出することなく収納が可能であり、図1は案内部26が折り曲げられた様態を示している。また、図2は、案内部26が伸ばされた様態を示している。案内部26の端部には、他方の把持部20Bの回転の終端を規定するストッパー25が設けられている。また、図示は略すが、他方の把持部20Bには、案内部26が案内可能な貫通した長穴が形成されている。
留め具24は、一方の把持部20Aに設置され、他方の把持部20Bを係着することで他方の把持部20Bの回転を規制し、指示部28が一体化した様態を保持する(保持部)。
指示部28は、タッチパネル8を指示する際に所望の領域を確実に接触すべく、タッチパネル8と接触する先端部の面積が狭くなるように形成されている。また、先端部をタッチパネル8上で滑らせた場合、なめらかに滑るように摩擦係数が小さい材質が使用されている。
【0020】
弾性体29は、一対の把持部(20A,20B)に挟まれて支持されている。この弾性体29は、案内部26の案内方向に沿って作用する。この弾性体29は、バネやゴム等の弾性部材を想定する。本実施形態1では、圧縮させると復元力を発生する圧縮バネのようなコイルバネを想定する。また、弾性体29は、案内部26を巻き込むように配置され、人間の握力により容易に収縮可能な特性を有すると共に、一対の把持部(20A,20B)が一体化した様態であってもバネが外部に突出しないように構成されている。
尚、弾性体29は、ピンセットのように板バネで案内部26を構成することで、案内部26と弾性体29を1つにまとめた様態も想定できる。
図3は、留め具24による係着を解除した様態を示す図である。指示部28が一体化した様態で留め具24による係着を解除した場合、弾性体29の作用により、他方の把持部20Bは、案内部26に従って一方の把持部20Aから離れる方向に回転し、他方の把持部20Bはストッパー25と接した様態で止まる。この結果、一対の把持部(20A,20B)は所定の角度で開いた様態になり、指示部28は2つに分離される。
【0021】
ユーザーは、図3のように一対の把持部(20A,20B)が開いた様態の指示具10を把持し、一対の把持部(20A,20B)を閉じる方向に力を加えることで所定角度だけ閉じ、情報処理装置5のタッチパネル8上に所定領域をそれぞれの指示部28で押圧した後、加えた力を解除する。この結果、弾性体29の復元力により一対の把持部(20A,20B)は所定角度だけ開き、これに伴い、それぞれの指示部28はタッチパネル8上を互いに遠ざかる方向に滑って移動する。この結果、情報処理装置5の制御部(図示は略す。)は、タッチパネル8上の指示領域に対してピンチ動作が実行されたと認識し、例えば、タッチパネル8上での2つの指示部28の移動量に応じて、タッチパネル8に表示している画像等の拡大処理を実行する。
【0022】
尚、本実施形態1では、弾性体29は圧縮させることで発生する復元力を用いたが、端部を一対の把持部(20A,20B)にそれぞれ固定した引っ張りバネのように、引っ張ることで発生する復元力も用いても良い。即ち、図3のような様態で、他方の把持部20Bがストッパー25と接しない状態で安定するような弾性体29を採用する。ユーザーは一対の把持部(20A,20B)を開く方向に力を加えることで所定角度だけ開き、指示部28をそれぞれ情報処理装置5のタッチパネル8上に接触させた後、加えた力を解除することができる。
この結果、弾性体29の復元力により一対の把持部(20A,20B)はタッチパネル8上で所定角度だけ閉じ、これに伴い、それぞれの指示部28はタッチパネル8上を互いに近づく方向に滑って移動する。この結果、情報処理装置5の制御部(図示は略す。)は、タッチパネル8上の指示領域に対してピンチ動作が実行されたと認識し、例えば、タッチパネル8上での2つの指示部28の移動量に応じて、タッチパネル8に表示している画像等の縮小処理を実行する。
【0023】
以上述べた実施形態1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)ユーザーは指示具10を使うことで、自身の指をタッチパネル8に触れることなくマルチタッチ入力を行うことができるため、タッチパネル8が指脂等により汚れることを回避できる。
(2)一対の把持部(20A,20B)は弾性体29の復元力で移動できるため、タッチパネル8上でスムーズなピンチ動作を行うことができる。
(3)指示具10の留め具24を使うことで、シングルタッチ入力およびマルチタッチ入力の何れも対応できる。
(4)シングルタッチ入力時には、案内部26を折り曲げることができるため、指示具10の収納や携帯が容易になる。
【0024】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図4、図5および図6を参照して説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同じ部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
実施形態1では、指示具10は、一対の把持部(20A,20B)を回転可能に支持する支持部22を備えることにより、一対の把持部(20A,20B)は支持部22を中心に回転することにより開閉したが、実施形態2では、他方の把持部20Bは一方の把持部20Aに対して平行状態を維持して移動する。
【0025】
図4は、指示具10の外観を示す図であり、(A)は正面を示し、(B)は側面を示す。尚、この図4では、指示部28は一体化された様態を示している。
指示具10は、把持部(20A,20B)と、一方の把持部20Aに対して他方の把持部20Bが移動する場合、移動方向を案内する2つの案内部(26A,26B)と、端部が一対の把持部(20A,20B)にそれぞれ固定され、案内部(26A,26B)の周囲にそれぞれ配置されて案内部(26A,26B)の案内方向に抗して作用する弾性体(29A,29B)と、留め具24と、を備える。
案内部(26A,26B)は、指示部28が一体化した様態である場合、それぞれが離れ合う方向に折り曲げ可能であり、図4は案内部(26A,26B)が折り曲げられた様態を示している。また、図5は、案内部(26A,26B)が伸ばされた様態を示している。案内部(26A,26B)の端部には、他方の把持部20Bの移動の終端を規定するストッパー(25A,25B)が設けられている。
【0026】
弾性体(29A,29B)は、圧縮バネのように圧縮させることで発生する復元力を用いる。尚、これらの弾性体(29A,29B)は、人間の握力により容易に収縮可能な特性を有する。
図6は、留め具24による係着を解除した様態を示す図である。指示部28が一体化した様態で留め具24による係着を解除した場合、弾性体(29A,29B)の作用により、他方の把持部20Bは、案内部(26A,26B)に従って、一方の把持部20Aと対向状態を維持したまま離れるように移動し、他方の把持部20Bはストッパー(25A,25B)と接した様態で止まる。この結果、一対の把持部(20A,20B)は所定の間隔で離れた様態になり、指示部28は2つに分離される。
【0027】
ユーザーは、図6のように一対の把持部(20A,20B)が離れた様態の指示具10を把持し、一対の把持部(20A,20B)を近づける方向に力を加えることで所定間隔だけ近づき、指示部28をそれぞれ情報処理装置5のタッチパネル8上に接触させた後、加えた力を解除することができる。この結果、弾性体(29A,29B)の復元力により一対の把持部(20A,20B)はタッチパネル8上で離れる方向に所定量だけ移動し、情報処理装置5の制御部(図示は略す。)は、タッチパネル8上の指示領域に対してピンチ動作が実行されたと認識し、例えば、タッチパネル8上での指示部28の移動量に応じて、タッチパネル8に表示している画像等の拡大処理を実行する。
本実施形態2では、実施形態1と同様な効果を奏することができる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、実施形態1および実施形態2に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0029】
(変形例1)
被指示領域を有するタッチパネル8に対する入力精度を向上させるべく、図7の(A)に示すように、指示部28の先端部には所定の長さを有する金属製の刷毛30が設けられた様態でもよい。また、図7の(B)に示すように、指示部28の先端部には、自在に回転可能な金属製のボール35が埋設され、ボール35の一部がタッチパネル8と接触可能に露出した様態でも良い。これらの様態により、指示部28が被指示領域に接触または押圧した場合、タッチパネル8の認識率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
5…情報処理装置、8…タッチパネル、10…指示具、20,20A,20B…把持部、22…支持部、24…留め具、25,25A,25B…ストッパー、26,26A,26B…案内部、28…指示部、29,29A,29B…弾性体、30…刷毛、35…ボール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触または押圧して指示する指示部が棒状部材の一方の端部にそれぞれ形成された一対の把持部と、
一対の前記把持部を近接または分離可能に案内する案内部と、
一対の前記把持部に挟持され、前記案内部が案内する方向に沿って作用する弾性体と、
一対の前記把持部が接した様態を保持する保持部と、を備えることを特徴とする指示具。
【請求項2】
請求項1に記載の指示具において、
前記棒状部材の他方の端部を中心として一対の前記把持部を回転可能に支持する支持部を備えることを特徴とする指示具。
【請求項3】
請求項1に記載の指示具において、
前記案内部は、一対の前記把持部を、対向状態を保ったまま近接または分離可能に案内することを特徴とする指示具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の指示具において、
前記弾性体は、前記案内部の案内に従って一対の前記把持部が接近した場合、一対の前記把持部を離す方向に復元力を発生させることを特徴とする指示具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の指示具において、
前記案内部は、一対の前記把持部が接した場合、前記把持部から突出しないように収納可能であることを特徴とする指示具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の指示具において、
前記指示部は、被指示面と接する金属製の刷毛および球体の何れかを備えることを特徴とする指示具。
【請求項7】
タッチパネルを介して情報を入力する情報処理装置であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の指示具を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−150693(P2012−150693A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9492(P2011−9492)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】