説明

指紋採取用シート

【課題】本発明は、指紋像発色濃度の低下を招くこと無く、耐にじみ性に優れた指紋採取用シートを提供することにある。
【解決手段】支持体上に、電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を加熱時発色させる電子受容性顕色剤を含有する指紋採取層を設けた指紋採取用シートにおいて、該指紋採取層中に、水酸化アルミニウムを該染料前駆体に対して400〜800質量%含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐にじみ性に優れた指紋採取用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、指紋は、指頭の掌側面にみられる皮膚隆線のなす紋様であり、胎生三〜四か月で形成され、その形態は全く同じものは二つとなく、また一生不変である。したがって、従来から、指紋を採取保管することにより個人の識別に利用することが広く行われている。今日、電子的手法により、指紋認証が普及しつつあるが、不正や誤認の余地があってはならぬ分野、例えば、警察等の捜査機関の鑑識用途などでは、電子的手法は採用出来ない。
【0003】
従来の指紋採取方法としては、朱肉や黒色顔料インクを指紋面に付着させ、これを上質紙等の所定のシートに押捺する方法が良く知られており、またこの方法は内外の警察等において現在も採用されている。インクとしては墨汁が一般的である。
【0004】
しかしながら、墨汁を用いた方法は、今日では、警察等の捜査機関への協力者(多くの場合、犯罪被害者である。)に必要上、指紋採取をお願いする場合、手が汚れる事への心理的抵抗が大きく、人権上の問題となる恐れもある。そのため、最悪の場合には、指紋採取を拒否される可能性があり、無色ないし淡色のインクが望まれていた。昨今の出入国管理機関において、テロ対策や犯罪履歴照会等の目的で指紋採取をお願いする場合も事情は同様である。
【0005】
無色インキによる方法としては、例えば、電子供与性染料前駆体を何かの溶剤に溶解したインクを指につけ、その指を、電子受容性顕色剤を含有する指紋採取用シートに押し当てる方法がある。しかし、これには複雑な構造の芳香族化合物である電子供与性染料前駆体を溶剤に溶解した状態で指に付けるという衛生上の問題があった。個々の化合物に実害が無くとも指紋採取対象者に不安を持たせる事を避け、円滑に指紋採取に応じていただく事が捜査機関における担当者の要望である。この問題は、溶剤を水とのエマルジョンにしても解決しない。(例えば、特許文献1参照)
【0006】
そこで、感圧複写紙の技術を応用し、染料前駆体を、マイクロカプセル化し、水に分散したものをインクとする方法が提案されている。機器を使わず、指の圧力のみで指紋が得られる。(例えば、特許文献2参照)
【0007】
しかし、この方法では微弱な圧力で破壊されるマイクロカプセルを用いるため、マイクロカプセル含有インキが長期保管に耐えられないという問題があった。例えば、交番などにインクと指紋採取用シートとを置いてから、実際に使用すべき時(事件や事故等の発生した時)までに相当の長期間が経過する事が多い。また、指紋採取用シートないしインクは、交番内などに常備されるが、温度変化や湿度等の環境条件により指紋採取用シートないしインクは使用前に経時劣化していく。そのため、定期交換するが、インク等の耐用年数が短いと、定期交換頻度が多くなったり、使用時に指紋採取に支障が出る。
【0008】
現状では、インクの無色化、衛生面への配慮、耐用年数のすべてを満足させる提案は無く、インクまたは、指紋採取用シートのいずれかに新たな技術が必要である。また、インク中の溶剤により、採取した指紋がにじむという問題も残っていた。
【特許文献1】特開2002−585号公報
【特許文献2】特開2002−28151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐にじみ性に優れた指紋採取用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、課題を解決することができる本発明の指紋採取シートを発明するに到った。即ち、支持体上に、電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を接触時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する指紋採取層を設けた指紋採取用シートにおいて、該指紋採取層中に、水酸化アルミニウムを該染料前駆体に対して400〜800質量%含有することにより達成された。
【発明の効果】
【0011】
水酸化アルミニウムを、指紋採取層中に、染料前駆体に対して400〜800質量%と含有量を規定することによって、耐にじみ性や筆記性の向上が達成される。また、指紋像の発色濃度も高く、指紋照合が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の内容を具体的に説明する。本発明は、支持体上に、電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を接触時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する指紋採取層を設けた指紋採取用シートにおいて、該指紋採取層中に、水酸化アルミニウムを該染料前駆体に対して400〜800質量%含有させたものである。必要に応じて、各種の記録用シート分野で従来より公知の接着剤、熱溶融化合物、保存性改良剤、各種顔料などを含有させた指紋採取層を、支持体上に形成させる。
【0013】
本発明において、指紋採取層中に含有する水酸化アルミニウムは、白色の無機粉体であり、例えば、商品名「ハイジライト」(昭和電工(株)社製)、商品名「B703」、「B1403」(以上、日本軽金属(株)社製)として市販されている。本発明では、水酸化アルミニウムは、染料前駆体に対して400〜800質量%、より好ましくは450〜650質量%含有して用いられる。含有量が400質量%よりも少ないと、耐にじみ性能の向上効果が発現せず、逆に、含有量が800質量%よりも多いと、耐にじみ性能を十分に有するものの指紋像発色濃度の低下が激しい。含有量が450〜650質量%のときには、耐にじみ性能と指紋像発色濃度のバランスが最も優れている。
【0014】
また、本発明では、水酸化アルミニウム粉体の大きさは、特に制限されるものではないが、50%累積平均粒径が0.10〜3.00μmであることが好ましく、本範囲の市販品が利用でき、例えば、「ハイジライトH42」、「ハイジライトH42M」(以上、50%累積平均粒径1.10μm)、「ハイジライトH43」、「ハイジライトH43M」(以上、50%累積平均粒径0.75μm)、「B703」(50%累積平均粒径2.00μm)、「B1403」(50%累積平均粒径1.00μm)などである。さらに、これらをサンドミル、ボールミル等の既知の粉砕装置を用いて湿式分散して微粒子化して利用することもできる。50%累積平均粒径が本範囲に入るとき、耐にじみ性能と指紋像発色濃度のバランス面で有利となる。
【0015】
本発明における、電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録材料などに用いられる化合物を使用することができ、その発色色調についても特に制限されるものではない。具体例としては、下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。但し、墨汁の色相の継承及び採取した指紋の識別容易性の点から、特に捜査機関においては、黒色が好ましく用いられる場合が多い。(但し、例えば、緑系と赤系の混色により黒色を得てもよい。)
【0016】
黒系の染料前駆体としては、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−カルボメトキシフェニルアミノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロペンチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−4−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−4−トルイジノ)−6−メチル−7−(4−トルイジノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−ブチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0017】
赤系の染料前駆体としては、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)テトラクロロフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−プロピル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、ローダミンB−アニリノラクタム、ローダミンB−(o−クロロアニリノ)ラクタム、ローダミンB−(p−ニトロアニリノ)ラクタム、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロ−8−ベンジルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(N−アセチル−N−メチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルエトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−メチルフェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノベンゾ[a]フルオラン、3−ジエチルアミノベンゾ[c]フルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−n−オクチル)アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−n−オクチル)アミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エチル−N−n−オクチル)アミノ−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−n−オクチル)アミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−4−メチルフェニル)アミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エトキシエチル−N−エチル)アミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エトキシエチル−N−エチル)アミノ−7−クロロフルオラン、3−n−ジブチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−n−ジブチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−n−ジブチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−n−ジブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジアリルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジアリルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ピロリジルアミノ−7−メチルフルオラン、3−エチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−ベンゾ[a]フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3,6−ビス(ジエチルアミノフルオラン)−γ−(4′−ニトロ)アニリノラクタム、
【0018】
緑系の染料前駆体としては、3−(N−エチル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−(N−フェニル−N−メチル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−メチルフェニル)アミノ−7−(N−メチル−N−フェニル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−6−メチル−7−(N−メチル−ベンジル)アミノフルオラン、3−(N−メチル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−プロピル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エトキシ−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ペンチル−N−アリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ペンチル−N−アリル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−n−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−クロロベンジルアニリノ)フルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノ−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(N−シクロヘキシル−N−ベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチルエトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、
【0019】
緑系の染料前駆体としては更に、3−ジエチルアミノ−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−クロルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−メチルフェニルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(N−シクロヘキシル−N−ベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロベンジルアニリノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−[p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ]−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−アニリノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−アニリノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−(7−シクロヘキシルアニリノ)フルオラン、3−ジベンジルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,7−ビス(ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジベンジルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0020】
青系の染料前駆体としては、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−アミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−エチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ブチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ペンチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジヒドロキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジクロロアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジブロモアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジアリルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジヒドロキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルブトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
【0021】
青系の染料前駆体としては更に、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメトキシシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ピロリジルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2,3−ジエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−クロロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−クロロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ブロモ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−ブロモ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−n−プロピル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ニトロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−アリル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シアノ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シクロヘキシルエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチルエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シクロヘキシルエチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−クロロインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−ブロモインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−エチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−プロピルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メトキシインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−エトキシインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4,7−ジアザフタリド、3−(1−エチル−4,5,6,7−テトラクロロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
【0022】
青系の染料前駆体の例示を更に続けて述べると、3−(1−エチル−4−ニトロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メチルアミノ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−クロロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−ブロモ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−プロピル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ブチル−2−インドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4,7−ジアザフタリド、3−(1−n−ノニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−フェニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−ヘプチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−ノニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル)−4−アザフタリドなどが挙げられる。
これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0023】
また、機能性の染料前駆体として、発色時に近赤外領域に吸収を有するものがある。この染料前駆体を近赤外領域に吸収を有するもの単独または、他の染料前駆体と併用して用いると、採取した指紋像を近赤外領域に吸収のある、近赤外ランプでの自動読み取りが可能な画像とすることが出来、採取した指紋像を電子データ化するのに好適である。もちろん、最終的に電子化しても、原本としての指紋採取したシートの重要性に変わりはない。
【0024】
このような、発色時に近赤外領域に吸収を有する染料前駆体としては、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3−〔1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチルフルオラン、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(p−n−ブチルアミノアニリノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6,8,8−トリメチル−9−エチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6,8,8−トリメチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3′−フェニル−7−N−ジエチルアミノ−2,2′−スピロジ−(2H−1−ベンゾピラン)、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−p−トリスルホニルメタン、3、7−ビス(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノチアジンなどが挙げられる。
これらの染料前駆体は必要に応じて単独、または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0025】
次に、本発明における、電子受容性顕色剤としては、室温で固体の酸性化合物を使用することができる。指紋採取用シートの作製と保管の必要上、水に難溶または不溶のものが好ましい。具体例としては、下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス−〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ビス−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス[3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド]ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−[3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル]ウレア、ウレアウレタン系化合物、スルホニルウレア系化合物などが挙げられる。
これらの電子受容性顕色剤は必要に応じて単独、または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0027】
また、染料前駆体と電子受容性顕色剤の含有比率は、これらの種類とその組合わせによって適宜決められるものであるが、染料前駆体の総量に対して電子受容性化合物の総量を100〜500質量%、好ましくは150〜350質量%を含有して使用される。
【0028】
本発明における指紋採取層には、以上の主要成分に加えて、各種記録用シート分野で従来より公知の接着剤、熱溶融化合物、保存性改良剤、各種顔料などを含有させる事ができる。更に必要に応じて、溶剤可溶化合物、界面活性剤などを含有させてもよく、特に限定されないが、指紋像の発色濃度に与える影響がより少ないものが特に好ましい。
【0029】
接着剤の具体例としては、澱粉類、デキストリン類、シクロデキストリン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、リン酸基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、キトサン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩またはアンモニウム塩、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0030】
溶剤可溶化合物は、十分な指紋像発色濃度を速やかに得るために用いられ、例えば、ステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−フェノキシビフェニル、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α、α′−ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−クロルベンジル)エステル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンジルパラベン、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、4,4′−ジアリルオキシジフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類、サリチルアニリドなどの溶剤可溶化合物が挙げられる。これらの化合物は単独もしくは2種以上併用して使用することもできる。
【0031】
保存性改良剤は、指紋像の保存性を高めるためや、指紋像の発色濃度を高めるために好ましく用いられ、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−(2,2−プロピリデン)ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(5−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−クロロ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1−〔α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4′−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、N,N′−ビス(2−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ソーダ、イソシアネート化合物などを添加することができる。
【0032】
本発明において、水酸化アルミニウム以外として、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、白色度向上などの目的に応じて、各種顔料を併用することができる。例えば、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等の白色無機顔料、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等の単量体を主成分とする樹脂または、これらの単量体を主成分とする共重合樹脂等を殻とする有機中空粒子、貫通孔を有する有機顔料、開口部を有する有機顔料等公知の顔料が挙げられる。
【0033】
また、耐にじみ性向上のために、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、カスターワックスなどのワックス類を、耐水性を持たせるために各種の硬膜剤、架橋剤を、ジオクチルスルホこはく酸ナトリウムなどの分散剤、界面活性剤、蛍光染料、着色染料、ブルーイング剤などを含有させることができる。
【0034】
その他、耐光性を向上させるために酸化防止剤、紫外線吸収剤を含有させることができる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びスルフィド系酸化防止剤などが挙げられるが特に限定はされない。また、紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの有機化合物、及び酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機物が挙げられるが特に限定はされない。
【0035】
本発明において、指紋採取層を設ける支持体は、透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板、石板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
以上の中では、汎用性やクッション性の面から紙を用いる場合が多い。紙としては上質紙、中質紙、あるいは塗工紙などが用いられる。指紋像とのコントラストの点から白色の紙がよい。一定の品質の紙を得るため、認証林から得た林材を用いた認証紙、例えば、SFC認証紙を用いる事が好ましい。認証林では、同じ環境条件の場所に同一樹種を植林し、一定期間後伐採するので、結果として天然林からの場合より、得られる原木もより一定したものとなる。逆に、汎用性を重視するなら、再生紙を用いてもよい。再生紙は、古紙ないし故紙とも称される。印刷済み印刷用紙から再生紙を得る場合には、古紙パルプを得る際、脱墨しておくのが白色度を高めるため好ましい。使用済みのコピー用紙や各種記録用紙を原料とする場合も同様である。
或いは、指紋像を他の指紋像と重ね合わせ照合する時の都合を考えれば、坪量が100g/m2以下、より好ましくは坪量が80g/m2以下の紙、又は、トレーシングペーパーや透明PETフィルムの様に、透明ないし半透明の支持体を選択するとよい場合もある。但し、照合する他の指紋像が透明支持体上に設けられている場合はこの限りではない。
【0036】
本発明において、支持体上に直接指紋採取層を設けてもよいが、必要に応じて、指紋採取層と支持体の間に、指を押し当てる際のクッション性、指紋を鮮明に得るための平滑性、指からの余分なインクの吸収性などを向上させるために中間層を設けても良い。中間層には、各種樹脂、有機顔料、無機顔料、各種中空粒子などを含有させることができる。
【0037】
本発明では、多くの場合、指紋採取層が最上層である。しかし、指紋採取層の上に、指紋像の画像保存性の向上、スクラッチ傷の防止、耐水性の向上、光沢性の付与などを目的として保護層を設けても良い。保護層には、各種樹脂、有機顔料、無機顔料、各種中空粒子、各種硬化剤、各種架橋剤、紫外線吸収剤などを含有させ、単層または二層以上を積層させることができる。また、指紋採取層または保護層の表面にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0038】
本発明において、指紋採取層が設けられている面と反対側の面には、カール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けても良く、さらに粘着加工などを行ってもよい。また、指紋採取層が設けられている面または、反対側の面に、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含む層やインクジェット記録層、熱転写受像層などを設けても良い。あるいは、支持体中などに、ICチップを埋め込む事も出来る。
なお、本発明の指紋採取用シートには関連事項や担当者、対象者等を、記録ないし書証として残すためなどの目的で捺印したり、署名やメモを各種文具で行なったりする使用状況も多くあるが指紋採取に好適であれば通常の捺印や署名等にも好適である。
【0039】
以上述べた染料前駆体や電子受容性顕色剤など水に難溶又は不溶の化合物は、各種サンドミル、ボールミル等の既知の粉砕装置を用いて湿式分散して微粒子化して利用することもできる。分散剤は接着剤と同種のものを利用しても差し支えない。なお、採取対象の通常の指紋の線の間隔や凹凸との兼ね合いで、指紋採取層における固体粒子成分の体積平均粒径は10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下が指紋像の鮮明さを保つ上で好ましい。
【0040】
本発明における各層の形成方式については、特に限定されることなく、塗工紙製造において周知の技術を用いて形成することができ、例えば、エアーナイフコーター、各種ブレードコーター、各種バーコーター、各種カーテンコーター等の塗布装置や、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン等の各種印刷方式等を用いることができる。さらに、表面平滑性を改良するために、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ブラッシング等の装置を利用することができる等、塗工紙製造に於ける種々の公知技術を用いることができる。指紋採取層の乾燥質量としては、2〜10g/m2が好ましく、また、指紋採取層と支持体の間に中間層を設ける場合、中間層の乾燥質量としては、4〜15g/m2が好ましい。
【0041】
本発明の指紋採取用シートは、ベック平滑度が100秒以上、2000秒以下であると、好ましい。好ましい下限を下回ると指紋像の鮮明さに悪影響が出る恐れがある。好ましい上限を上回ると、光沢が強すぎ、指紋像を凝視しずらい場合がある。
【0042】
次に、本発明の指紋採取用シートに指から指紋を採取する方法について述べる。最も簡単なのは、指に何も付けないで指を指紋採取用シートに押し当てる事である。指からは汗と共に若干の油脂成分も分泌されているためと想像されるが、指を離してしばらくすると指紋像が発色してくる。指紋採取用シートを加温すると発色が促進される。
【0043】
しかし、上記の方法では、個人差が生じ、指紋が得られにくい対象者も居る。また、指をしばらくの間、指紋採取用シート上で動かさないことも必要であるが、どうしても動いてしまう場合があり、指紋像の鮮明さが損なわれる恐れがある。
【0044】
そこで、指にインクを付けてから、指を指紋採取用シートに触れる採取方法がより好ましい。インクとしては、特に特殊なものは必要なく、各種の有機溶剤や界面活性剤、プラスチック用可塑剤、それらの混合物を用いて無色のものが得られる。
【0045】
インク中に含有される有機溶剤としては、エチルアルコール、エーテル、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、軽油、灯油などの揮発性溶剤が挙げられる。これらを用いる場合は、火気や静電気が無い事を確認し、通気を良くしておくのが火災防止のため好ましい。静電気対策としては、インキ中に導電性化合物を溶解ないし分散して含有しておくことも効果がある。また、不揮発性の、ひまし油、水添ひまし油、大豆油、ラード、ヘッド、エチレングリコール、グリセリン、フタル酸ジブチルなども用いてよい。また、インク中に含有されていてもよい界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0046】
インクは通常の液体として扱ってもよいが、指へ万遍なく付けるために、朱肉と同じ様にスポンジ状のものに吸い込ませておいてもよい。指をインクを吸い込ませたスポンジ状のものに触れるとインクが効率よく指に付く。また、インクにポリマーなどを含有させ、インクの粘度を高めることも指への効率的なインク付着方法である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の各実施例、各比較例において、部は、質量基準である。
【0048】
(実施例1)
以下の様にして、実施例1で使用する指紋採取用シートを作製し、特性評価を実施した。
(1)指紋採取層塗工液の調製
以下の通り調製した(A)〜(C)の分散液を、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて、各々、体積平均粒径1.0μmになるまで湿式粉砕した。
(A)黒色発色性染料前駆体分散液
10質量%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、商品名ゴーセランL3266) 80.0部
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 80.0部
水 70.0部
(B)電子受容性顕色剤分散液
10質量%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、商品名ゴーセランL3266) 130.0部
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン 130.0部
水 110.0部
(C)溶剤可溶化合物分散液
10質量%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、商品名ゴーセランL3266) 100.0部
1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン 80.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド 20.0部
水 100.0部
【0049】
下記成分からなる指紋採取層塗工液を調製した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して600質量%含有されている。
A液 230.0部
B液 370.0部
C液 300.0部
40質量%水酸化アルミニウム分散液(昭和電工(株)社製、商品名ハイジライトH42、50%累積粒径1.10μm) 1200.0部
20質量%非晶質シリカ分散液(水澤化学工業(株)社製、商品名ミズカシルP527、50%累積粒径1.60μm) 150.0部
50質量%ステアリン酸亜鉛分散液 90.0部
10質量%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、商品名NM−11) 1100.0部
水 540.0部
【0050】
(2)中間層塗工液の調製
下記成分からなる中間層塗工液を調製した。
10質量%ヘキサメタリン酸ソーダ 10.0部
焼成カオリン(エンゲルハード社製、商品名アンシレックス) 100.0部
12質量%酸化澱粉溶液 50.0部
48質量%SBRラテックス分散液 25.0部
水 79.0部
【0051】
(3)中間層の形成
得られた中間層塗工液を、50g/m2の上質紙にブレードコーターにて固形分塗布量が9g/m2となるように塗布乾燥して中間層を形成した。
【0052】
(4)指紋採取層の形成
(1)で調製した指紋採取層塗工液を、上記中間層上に固形分塗布量7g/m2となるように塗工、乾燥した後、この塗工紙をカレンダー処理して、ベック平滑度600秒になるように仕上げ、実施例1の指紋採取用シートを得た。
作製した指紋採取用シートを以下の評価に供した。評価結果を表1に示す。
【0053】
評価1 [指紋像発色濃度]
20才台から60才台までの男女を合計50人、モニターとして指紋を採取した。インクとしては、エチルアルコール90部とジイソプロピルエーテル10部とを混合した無色液体を用いた。これを親指に付けた後、指紋採取用シートにその指を押し当ててもらった。評価は、指紋読み取りの容易性を基準にした。指紋照合用の対照試料は、OHP用透明フィルムに、墨汁による方法で別途採取しておいた。個々の照合結果の評価基準は次の様に設定した。
◎ 濃度が高く、ルーペを用いて観察すると指紋の線の中の汗腺まで認められた。
○ 濃度が高く、照合に十分であるが、指紋の線の中の汗腺は認められなかった。
△ 濃度が薄いが、凝視により照合出来た。
× 指紋の線が切れたり、線がにじむなどなど照合が確かに出来なかった。
それぞれの評価基準に何名が相当するか集計した。
【0054】
評価2 [耐にじみ性]
指紋を採取した指紋採取用シートを3日間、室温(空調で28℃に保った。)条件で保管後、指紋照合にて対象者の同一性確認が出来るか試験した。評価基準は評価1の場合と同様にし、それぞれの評価基準に何名が相当するか集計した。
【0055】
評価3 [捺印性]
指紋採取用シートに、捺印する状況を想定した。モニターの中から、捺印する強さやていねいさが平均的な5名を選んで、その中での最低の評価基準になったものを評価結果とした。次に方法と評価基準とを述べる。
シヤチハタ(株)製インキ内蔵型印鑑(商品名Xスタンパー)を用いて、指紋採取面の白紙部へ捺印し、その10秒後に、(株)クレシア製拭き取り紙(商品名キムワイプ)で拭き取り、そのときの印影の明瞭さ及びインキの擦れ汚れ具合を確認した。評価基準は、 ○ 印影が明瞭であり、インキ擦れ汚れが発生しなかった。
△ 印影が明瞭だがインキ擦れ汚れが認められた。
× 印影が不明瞭でインキ擦れ汚れも激しく発生した。
【0056】
評価4 [鉛筆筆記性]
モニターの中から、筆記をする筆圧が平均的な5名を選んで、その中での最低の評価基準になったものを評価結果とした。次に方法と評価基準とを述べる。
三菱鉛筆(株)製2H黒鉛筆(商品名ユニ)を用いて、指紋採取面の白紙部へ筆記し、筆記の滑らかさ及び筆記文字の濃さを確認した。評価基準は、
○ 筆記が滑らかであり、文字が濃いもの
△ 筆記が滑らかだが文字が薄いもの
× 筆記が滑らかではなく文字が薄いもの
【0057】
(実施例2)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液の部数を、800部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して400質量%含有されている。
【0058】
(実施例3)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液の部数を、1600部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して800質量%含有されている。
【0059】
(実施例4)
実施例1で用いた電子受容性顕色剤分散液(B液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して600質量%含有されている。
10質量%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、商品名ゴーセランL3266) 130.0部
2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン 130.0部
水 110.0部
【0060】
(比較例1)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液の部数を、400部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して200質量%含有されている。
【0061】
(比較例2)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液の部数を、700部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して350質量%含有されている。
【0062】
(比較例3)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液の部数を、1700部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して850質量%含有されている。
【0063】
(比較例4)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液を、700部に変更し、20質量%非晶質シリカ分散液の部数を、1150部に変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。このとき、水酸化アルミニウムは染料前駆体に対して350質量%含有されている。
【0064】
(比較例5)
実施例1で用いた指紋採取層塗工液の組成中、40質量%水酸化アルミニウム分散液を、40質量%炭酸カルシウム分散液(白石工業(株)社製、商品名ブリリアント−15、50%累積粒径0.22μm)と変更した以外は、実施例1と同様にして指紋採取用シートを作製し、評価1〜4を実施した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4は、指紋像発色濃度、耐にじみ性、捺印性及び鉛筆筆記性のいずれの評価項目も優れていた。これに対し、本発明の規定よりも水酸化アルミニウムの含有量が少ない比較例1、2では、耐にじみ性、捺印性及び鉛筆筆記性が悪かった。また、本発明の規定よりも水酸化アルミニウムの含有量が多い比較例3では、指紋像発色濃度が低かった。また、水酸化アルミニウム、シリカを含めた総顔料の比率が染料前駆体に対して400〜800質量%であるが、水酸化アルミニウム単独での比率が本発明の規定外である比較例4は、指紋像発色濃度が悪かった。また、染料前駆体に対する顔料の含有比率が400〜800質量%であるが、顔料に水酸化アルミニウムを含まない比較例5は、指紋像発色濃度が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の指紋採取用シートによれば、指紋採取が容易に行え、衛生上の不安や対象者への着色物質(例えば、従来の墨汁成分)による汚染の心配もなく清潔である。採取した指紋像の発色濃度も高く、にじみによる難点もない。捺印性や筆記性にも優れている。
本発明の活用例として、指紋同様に掌紋、足の指や足の裏の紋など個人を識別する皮膚の紋様採取が可能である。一部の動物では個体を識別出来る紋様、例えば、鼻紋などを持つ場合、墨汁等による汚染の心配もなく紋様採取が可能であり、牧畜業者、ペット店などでの個体管理にも利用出来る。
更には、セキュリティ分野において指紋認証などの生体認証を行なう場合に機器が手元に無い場合に、元データを指紋採取用シートに採取しておき、後で電子化する事も可能である。
以上の如き、実用的分野ばかりでなく、例えば、探偵ごっこや手相占い、魚拓作成の様な遊戯的用途に本発明を用いても不快感や汚染がないので存分に楽しめる。
また、最近では、少子化のため、かえって子供の誕生祝いに手型、足型などを記念に採取する事も広まっているが、その分野でも本発明を活用して、対象者の衛生や汚染を心配せず、望む紋様を採取して祝う事が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を接触時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する指紋採取層を設けた指紋採取用シートにおいて、該指紋採取層中に、水酸化アルミニウムが該染料前駆体に対して400〜800質量%含有されていることを特徴とする指紋採取用シート。

【公開番号】特開2008−86457(P2008−86457A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269140(P2006−269140)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】