説明

指紋認識装置

【課題】 指紋を検出する指紋認識センサを有する指紋認識装置に関し、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去できる指紋認識装置を実現する。
【解決手段】 指紋認識センサ2の検出面2a上を摺動可能な残留指紋清掃部材5であって、少なくとも指紋の検出時には、指紋認識センサ2の検出面2a上から退避可能な残留指紋清掃部材5を設ける。指紋認識センサ2の検出面2aを覆うカバー3は、指紋認識センサ2の検出面2aと平行な平面上でスライド可能に設けられ、該カバー3の表面側であって開蓋時に指が接触する部位には、アースされた電極が設けられていると共に、カバー3の裏面側には、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2aを押接可能に係止され、カバー3の閉扉時において、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2a上を摺動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋を検出する指紋認識センサを有する指紋認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置において、使用権限のある者以外のオペレーションを排除するためのセキュリティ対策として、種々の方式が知られている。この中で、指紋認識による方式は、小型で簡単な方式であると共に安価な方式であることから、広く一般に普及してきている。
【0003】
しかし、指紋認識センサはLSI化された半導体素子であり、人体に蓄積された静電気により、指がセンサ部に触れた際に放電が起き、素子が破壊されてしまうという問題があった。
【0004】
このため、指が検出面に触れる前に、指をアースされた電極等に触れさせることにより、人体に蓄積された静電気を放出させ、指紋認識センサを静電破壊から保護することが一般に行われている。例えば、アースされた金属プレートでなる蓋を半導体指紋センサの検出面近傍に配置し、指で蓋を開ける動作を通して、人体の静電気を放電させるようにした指紋認識装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、認識対象の指が指紋認識センサに触れる前に鉄製のグランドプレートに触れるように構成し、人体の静電気を放電させるようにした指紋認識装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。更に、指紋センサ部を保護する蓋部の操作時に、操作者の指が接触可能な接触部を設け、この接触部を接地することにより、人体の静電気を放電させるようにした指紋認識装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−353235公報(図5〜図7)
【特許文献2】特開2001−357390公報(図2〜図7)
【特許文献3】特開2002−123821公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体式(容量式)のように指紋の凹凸を静電容量の大小で検出する指紋認識センサ等では、指紋検出時に指を検出面に接触させるため、指紋が検出面に残ることになる。指紋認識センサの検出面に残留する指紋跡は、指紋と犯罪捜査との結びつきを連想させ、指紋採取自体にも抵抗感を覚えさせる一面が存在することは否めない。しかも、指紋認識センサはその検出面が上方に開放された構造のものが多く、指紋認識センサの検出面に残留した指紋跡をそのままに放置することは、不特定多数の人に指紋情報を取得されてしまう危険性もあり、不安感を抱く人も少なくない。このような不安を解消する為には、指紋認識センサの検出面に指紋跡が残らない状態にしておくことが必要となる。よって、指紋認識装置では、静電気対策として人体に蓄積された電荷を除去するだけでなく、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去することが重要になる。
【0007】
しかし、静電気から指紋認識センサを保護する方法については、特許文献1〜3にも開示されているように、数多くの提案がなされているが、指を検出面に接触させる指紋採取方式での残留指紋の除去については、何ら提案がなされていない。
【0008】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、第1の発明は、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去できる指紋認識装置を実現しようとするものである。又、第2の発明は、人体に蓄積された電荷を除去できるだけでなく、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去できる指紋認識装置を実現しようとするものである。更に、第3の発明は、人体に蓄積された電荷を除去できるだけでなく、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去でき、且つ、指紋認識センサの検出面を外部から視覚的に遮蔽できる指紋認識装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、指紋を検出する指紋認識センサを有する指紋認識装置において、前記指紋認識センサの検出面上を摺動可能な残留指紋清掃部材であって、少なくとも指紋の検出時には、前記指紋認識センサの検出面上から退避可能な残留指紋清掃部材が設けられていることを特徴とする指紋認識装置である。
【0010】
この発明では、残留指紋清掃部材が指紋認識センサの検出面上を摺動する。このため、検出面上の残留指紋はクリーニングされる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記指紋認識センサの検出面を覆うカバーが、前記指紋認識センサの検出面と平行な平面上でスライド可能に設けられ、該カバーの表面側であって開蓋時に指が接触する部位には、アースされた電極が設けられていると共に、前記カバーの裏面側には、前記残留指紋清掃部材が前記指紋認識センサの検出面を押接可能に係止され、前記カバーの閉扉時において、前記残留指紋清掃部材が前記指紋認識センサの検出面上を摺動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明では、少なくともカバーの開蓋時には、指が電極に接触することになる。一方、カバーの裏面側に残留指紋清掃部材が係止されているので、カバーの閉蓋時に、残留指紋清掃部材が指紋認識センサの検出面上を摺動し、検出面上の残留指紋はクリーニングされる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の発明において、前記カバーは、前記電極の機能をも有する導電性で不透明のカバーでなり、指に押されて直線スライドすることにより開蓋されるものであることを特徴とするものである。この発明では、カバーが不透明であるため、指紋認識センサの検出面を外部から見ることはできない。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の発明において、前記カバーを開蓋位置に停止させるストッパを有し、該ストッパによる前記カバーの停止時には、前記カバーを押動する指が指紋検出位置に到達するように構成されていることを特徴とするものである。この発明では、カバーを開蓋位置に停止させた時に、カバーを押動する指が指紋検出位置に到達する。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項2又は3又は4記載の発明において、前記カバーを閉蓋位置方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とするものである。この発明では、カバーが付勢手段により閉蓋位置に自動的に戻る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜5に係る発明によれば、残留指紋清掃部材により指紋認識センサの検出面上の残留指紋がクリーニングされ、その紋様の特徴が消滅若しくは崩れるため、検出面上から残留指紋が除去される。
【0016】
請求項2〜5に係る発明によれば、カバー上の開蓋時に指が接触する部位に、アースされた電極が設けられ、カバーの開蓋時には、指がこの電極に接触するため、人体に蓄積された電荷は除去される。一方、カバーの閉蓋時には、カバーの裏面側に係止された残留指紋清掃部材が指紋認識センサの検出面上を摺動するので、指紋認識センサの検出面上の残留指紋を除去できる。
【0017】
請求項3〜5に係る発明によれば、電極を別部材で設ける必要がないため、部品点数を削減できる。又、不透明のカバーの存在により、指紋認識センサの検出面を外部から見ることはできないため、被指紋採取者に安心感を与えることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、カバーを開蓋位置に停止させた時に、カバーを押動する指が指紋検出位置に到達しているので、指紋採取操作が容易になる。
請求項5に係る発明によれば、カバーが付勢手段により閉蓋位置に自動的に戻るので、確実且つ速やかに残留指紋をクリーニングできるだけでなく、クリーニング操作も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図3を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。ここで、図1は本発明の形態例を示す側面構成図、図2は平面構成図、図3は図1の形態例の他の作動状態を示す側面構成図である。
【0020】
これらの図において、指紋認識装置の基体1には、緩い下降カーブ部1aが形成され、その終端部に指紋認識センサ2が固定されている。この指紋認識センサ2は、検出面2aに認識対象である指10が押し付けられるもので、例えば、半導体式の指紋認識センサである。半導体式の指紋認識センサは、表面(検出面)が硬い保護膜で形成され、この保護膜の下に、微小電極が二次元的に多数配列され、検出面に載置された指の紋様(凹凸)に応じて各電極にたまった電荷量を電圧に変換し、指紋の画像情報を得るものである。
【0021】
直方体状のカバー3は、指紋認識センサ2の検出面2aに対向するように設けられている。本形態例のカバー3は、金属製で不透明のカバーであり、指紋認識センサ2の検出面2aと平行な平面上でスライド可能に設けられている。具体的には、カバー3の四つの角部にそれぞれ摺接する4本の断面L字形の金属製のレール4が前後方向に平行に配置され、これらレール4がカバー3を前後方向にスライド可能に支持している。レール4は接地されている。
【0022】
カバー3の表面側であって開蓋時に指が接触する部位3aは、指が接触する電極として機能する。カバー3及びレール4が共に金属製であるため、両者は電気的に導通しており、レール4が接地されていることにより、カバー3の部位3a(電極)も、アースに接続されていることになる。
【0023】
カバー3を金属ではなく合成樹脂等で構成することも可能であるが、この場合には、外部から指紋認識センサ2の検出面2aが見えないように、カバー3を不透明な材料で構成するか、カバー3の表面若しくは裏面に不透明膜を形成する必要がある。更にこの場合には、開蓋時に指10が接触する部位3aに電極として導電性膜を露出形成し、且つ、この導電性膜をレール4に電気的に導通させ、導電性膜がアースされた状態を確保する必要がある。カバー3は指10で部位3aを押動されることにより開くものであるため、その部位3aは、指の先端形状に合うように凹状に形成されている。
【0024】
カバー3の裏面側には、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2aを押接可能に係止されている。この係止方法は、本形態例では、残留指紋清掃部材5の交換を可能にするように、着脱可能に取り付けられている。残留指紋清掃部材5は、少なくともカバー3の閉扉時には、指紋認識センサ2の検出面2a上を摺動する。
【0025】
残留指紋清掃部材5は、その先端が指紋認識センサ2の検出面2a上を、押圧状態で摺動できるできるものであればどのようなものであってもよい。例えば、機能性繊維材料である、日本バイリーン株式会社製の不織布「CV6850」(商品名)や東レ株式会社製の繊維「エクセーヌ」(商品名)を用いることができる。更に、残留指紋清掃部材5をスポンジ等で形成してもよいし、このスポンジを用いる場合には、その摺動側表面を布で覆うようにしてもよい。
【0026】
基体1に設けられた2個のストッパ6は、カバー3を一定の開蓋位置に停止させるためのもので、このストッパ6にカバー3が当接して停止した時には、カバー3を押動する指10が指紋検出位置(指紋認識センサ2の検出面2a上の最適位置)に到達するように、ストッパ6は位置決めされている。
【0027】
更に、本形態例では、カバー3を閉蓋位置方向に常時付勢する付勢手段7が設けられている。この付勢手段7としては、例えば、コイルスプリングが用いられる。尚、付勢手段7の付勢力を受けても、カバー3が所定の閉蓋位置に停止するように、図示しないが、閉蓋位置側にもストッパが設けられている。
【0028】
次に、本形態例における指紋採取について説明する。先ず、初期状態(図1参照)では、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2aに当接した静止状態にあり、指紋認識センサ2は、不透明なカバー3や残留指紋清掃部材5により表面を覆われている。指紋採取に際しては、指紋を採取する指10の先端部をカバー3の部位3a(電極)に押し付けて、付勢手段7の付勢力に抗して、カバー3をストッパ6側に押動する。
【0029】
これによって、カバー3がレール4に案内されて直線スライドし、ストッパ6に当接したところで停止する。図3はこの停止状態を示しており、指10は指紋検出位置に到達している。この停止位置は、指紋認識センサ2の検出面2a上での前後方向の最適位置であり、そのまま指10を指紋認識センサ2の検出面2aに押し付け、指紋を採取できる。
【0030】
この指紋検出時の状態において、指10は、導電性のカバー3に接触しながら指紋認識センサ2の検出面2aを押圧しているため、指紋認識センサ2が例えば半導体式指紋認識センサの場合は、指10は常に基準となる接地電位に保たれており、安定した容量検出が可能になり、より高精度の指紋検出が可能となる。なぜなら、半導体式の指紋検出原理は、指10を対向電極として用いているからである。
【0031】
指紋採取後は、指10をカバー3から離す。これにより、カバー3は、付勢手段7の付勢力でもって、自動的に閉蓋位置に戻る。残留指紋清掃部材5は指紋認識センサ2の検出面2a上を接触しながら移動するので、指紋認識センサ2の検出面2aに残された指紋跡はクリーニングされることとなる。この場合、完全にクリーニングされる必要はなく、紋様の状態が、特徴がわからない程に崩れている状態であっても、クリーニングの目的は達成される。なぜなら、紋様の特徴が崩れれば指紋の識別がつかず、又、外部からは見えないようにカバー3に覆われているからである。
【0032】
本形態例では、カバー3の表面側であって開蓋時に指が接触する部位3aには、アースされた電極が設けられているので、カバー3の開蓋時には、指10がこの電極に接触するため、人体に蓄積された電荷は除去され、指紋認識センサ2を静電破壊から保護することができる。
【0033】
一方、カバー3の裏面側には、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2aを押接可能に係止され、カバー3の閉扉時において、残留指紋清掃部材5が指紋認識センサ2の検出面2a上を摺動するように構成されているので、カバー3の閉蓋時に検出面2a上の残留指紋はクリーニングされ、その紋様の特徴が消滅若しくは崩れるため、検出面2a上から残留指紋が除去される。
【0034】
又、カバー3は、電極の機能をも有する導電性で不透明のカバーでなり、指10に押されて直線スライドすることにより開蓋されるものであるため、電極(指が接触する部位3a)を導電性の別部材で設ける必要がなく、部品点数を削減できる。更に、カバー3の内側に位置する指紋認識センサ2の検出面2aを外部から見ることはできないため、被指紋採取者に視覚的に安心感を与えることができる。
【0035】
加えて、カバー3を開蓋位置に停止させるストッパ6を設け、該ストッパ6によるカバー3の停止時には、カバー3を押動する指10が指紋検出位置に到達しているので、指紋採取の操作が容易になる。又、カバーを閉蓋位置方向に付勢する付勢手段が設けられているので、カバー3が付勢手段7により閉蓋位置に自動的に戻り、確実且つ速やかに残留指紋をクリーニングできるだけでなく、クリーニング操作も容易になる。
【0036】
尚、本発明は上記形態例に限られるものではない。例えば、上記形態例では、ストッパ6や付勢手段7を設けたが、これらは必ずしも必要ではない。又、カバー3として、直線スライドするものを示したが、指紋認識センサ2の検出面2aと平行な平面上で回転スライドするもの等であってもよい。更に、カバー3の部位3aをレール4を介さずに直接接地するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態例を示す側面構成図である。
【図2】本発明の実施の形態例を示す平面構成図である。
【図3】図1の実施の形態例の他の作動状態を示す側面構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 : 基体
2 : 指紋認識センサ
2a : 検出面
3 : カバー
3a : 指が接触する部位(電極)
4 : レール
5 : 残留指紋清掃部材
6 : ストッパ
7 : 付勢手段
10 : 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋を検出する指紋認識センサを有する指紋認識装置において、
前記指紋認識センサの検出面上を摺動可能な残留指紋清掃部材であって、少なくとも指紋の検出時には、前記指紋認識センサの検出面上から退避可能な残留指紋清掃部材が設けられていることを特徴とする指紋認識装置。
【請求項2】
前記指紋認識センサの検出面を覆うカバーが、前記指紋認識センサの検出面と平行な平面上でスライド可能に設けられ、該カバーの表面側であって開蓋時に指が接触する部位には、アースされた電極が設けられていると共に、前記カバーの裏面側には、前記残留指紋清掃部材が前記指紋認識センサの検出面を押接可能に係止され、前記カバーの閉扉時において、前記残留指紋清掃部材が前記指紋認識センサの検出面上を摺動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の指紋認識装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記電極の機能をも有する導電性で不透明のカバーでなり、指に押されて直線スライドすることにより開蓋されるものであることを特徴とする請求項2記載の指紋認識装置。
【請求項4】
前記カバーを開蓋位置に停止させるストッパを有し、該ストッパによる前記カバーの停止時には、前記カバーを押動する指が指紋検出位置に到達するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の指紋認識装置。
【請求項5】
前記カバーを閉蓋位置方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項2又は3又は4記載の指紋認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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