説明

指運動支援キーボードシート及び指運動支援システム

【課題】キーボードの入力作業により、ユーザの指の運動を促進させつつ、一方で、高速に入力作業が要求される等の指にかかる負荷を必要としない場合には、ユーザの入力作業の妨げとならない、運動支援キーボードシートを提供する。
【解決手段】押圧検知部54から出力される信号により、押圧頻度算出手段63aが、キースイッチ72の押圧頻度が一定以下であると判断した場合には、硬度制御手段63bが電圧制御部65に電圧印加用電極55に電圧を印加させる命令を出力する。電圧印加用電極55に電圧が印加されると、キーボードシート50内に封入された電気レオロジー流体の硬度が高くなり、ユーザの指の運動が促進される。一方で、押圧頻度算出手段63aが、押圧頻度が一定以上であると判断した場合には、硬度制御手段63bが電圧制御部65に電圧印加用電極55に印加している電圧を解除する命令を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボードを操作することにより、指の運動を促進することができる指運動支援キーボードシート及び指運動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デスクワークにおいて、キーボードを操作する時間は長いが、通常の入力作業では負荷がかかりにくく、指の運動とならない。一方で、入力荷重を、常時、重くした場合には、入力速度が要求される等、負荷を必要としない場合に使いづらい。なお、特許文献1には、打鍵時に指にかかる負担を軽減する押しボタンスイッチが提示されているが、上記問題を解決する技術は開示されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平10−40773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決し、キーボードの入力作業により、ユーザの指の運動を促進させつつ、一方で、高速に入力作業が要求される等の指にかかる負荷を必要としない場合には、ユーザの入力作業の妨げとならない、運動支援キーボードシート及び指運動支援システムを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、キーボードのキーに覆着され、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、
前記シート状部材の硬度を変更する硬度可変機構とを有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、
前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、
前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、
前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、キーボードのキーに覆着される、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、
前記シート状部材の硬度を変更する硬度可変機構と、
前記キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、
前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、
前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、
前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、シート状部材に、キーの押圧を検知し、押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜請求項6に記載の発明において、指の運動量情報を、ユーザに報知する報知手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、キーボードのキーに覆着され、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、前記キーボードシートの硬度を変更する硬度可変機構とを有することを特徴とする。
このため、シート状部材の硬度を高くすることにより、キーを押圧するのに、より大きい押圧力が必要となり、ユーザの指の運動が促進される。一方、シート状部材の硬度を低くすることにより、キーの押下がより小さな押圧力で可能になるので、指にかかる負荷を必要としない場合にはユーザの入力作業の妨げとならない。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする。
このため、電気レオロジー流体に印加する電圧を制御することにより、キーボードシートを任意の硬度に変更することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段とを有することを特徴とする。
このため、押圧頻度に応じて、指運動の促進と入力作業を妨げないこととの切り替えが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、キーボードのキーに覆着される、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、前記シート状部材の硬度を変更する硬度可変機構と、前記キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段とを有することを特徴とする。
このため、指の運動を促進させつつ、一方で、高速の入力作業が要求される場合に、入力作業の妨げとならない。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、
前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする。
このため、指の運動を促進させつつ、一方で、高速の入力作業が要求される場合に、入力作業の妨げとならない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、シート状部材に、キーの押圧を検知し、押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段を設けたことを特徴とする。
このため、確実にキーの押圧を検知することができ、キーの押圧頻度の算出が正確となる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜請求項6に記載の発明において、指の運動量情報を、ユーザに報知する報知手段を設けたことを特徴とする。
このため、ユーザが指の運動量情報を把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明の実施の形態を示す概要図である。コンピュータ装置80は、内部にCPU、RAM、ROM、補助記憶装置等を有している。このコンピュータ装置80には、ウインドウズ(登録商標)、マッキントッシュ(登録商標)等のOS(オペレーティングシステム)を用いた、いわゆるパーソナルコンピュータ(デスクトップ型、ノート型の両方を含む)や、ワークステーション、大型汎用コンピュータ等も含めることができる。90はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、DVI(Digital Visual Interface)等の規格の画像信号出力ケーブル91でコンピュータ装置80と接続している。
【0020】
入力装置の一つである所謂キーボード70は、PS/2やUBS(Universal Serial Bus)等の規格のケーブル75や無線でコンピュータ装置80と接続している。キーボード70は、多数のキー71を有していて、ユーザがキー71を押下すると、各キー71に対応する操作信号がコンピュータ装置80に出力されるようになっている。本発明では、可撓性の指運動支援キーボードシート50(以下、単にキーボードシート50とする)が、キーボード70の複数のキー71に覆着される。
【0021】
図2はキーボードシート50の断面図である。図2に示されるように、キーボードシート50は、対向して配設された可撓性のシート状部材51、52内に、ER流体(電気レオロジー流体)53を封入している。シート状部材51には、複数のキー71の上面に対応した形状で、上方に突出する突出部51aと、複数のキー71の周面(側面)に対応する形状で、下方に凹陥する凹陥部51bが形成されている。同様に、シート状部材52には、複数のキー71の上面に対応した形状で、上方に突出する突出部52aと、複数のキー71の周面(側面)に対応する形状で、下方に凹陥する凹陥部52bが形成されている。シート状部材51とシート状部材52は一定間隔をおいて離間している。シート状部材51、52は、キーボード70の複数のキー71に跨って覆着されている。
【0022】
ER流体は、各キー71ごとに独立して可撓性のシート状部材51、52内に封入されているのではなく、複数のキー71に跨るように、可撓性のシート状部材51、52内に封入されている。
【0023】
シート状部材51、52の、各キー71の上面に対応する位置には、押圧検知部54が設けられている。図2に示される実施形態では、押圧検知部54は、シート状部材51、52内に対向して配設された、一対の接点54aからなるメンブレンスイッチである。一対の接点54aは、常時は、離間しているが、押圧検知部54が押圧されると、一対の接点54aが接触し、「押圧信号」がケーブル59を介してコンピュータ装置80に出力されるようになっている。
【0024】
キーボードシート50内には、互いに対向する一対の電圧印加用電極55(電圧印加部)が配設されている。本実施形態では、電圧印加用電極55は、各キー71の上面に対応する位置のシート状部材51、52の内面に貼設されている。本発明では、電圧印加用電極55への電圧印加によって発生する電界がER流体53に印加されることで、複数のキー71に跨るように、シート状部材51、52内に封入されているER流体53の硬度が上がることから、キーボードシート50が変形し難くなり、キーボード70を入力するユーザの指の運動が促進される。以下に、図面を参照しつつ、本発明の詳細について説明をする。
【0025】
(第1の実施形態のブロック図)
図3に第1の実施形態のブロック図を示し、以下、当該ブロック図について説明をする。コンピュータ装置80は、CPU81、RAM82、ROM83、補助記憶装置84、画像信号出力部85、インターフェース86を有していて、これらは相互にバス87で接続している。CPU(Central Processing Unitの略)81は、RAM(Random Access Memoryの略)82、ROM(Read Only Memoryの略)83と協動して、各種演算、処理を行う。RAM82は、CPU81で処理されるプログラムや、CPU81が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。ROM83には、BIOS(Basic Input/Output System)等のコンピュータ装置80を制御する各種プログラムやパラメータが記憶されている。補助記憶装置84は、所謂ハードディスクや不揮発性メモリー等で構成され、オペレーティングシステムや、アプリケーションソフト、その他データが記憶されるようになっている。画像信号出力部85は、GPU(Graphics Processing Unit)、VRAM(Video RAM)、DVI等の画像出力端子を有している。画像信号出力部85の画像出力端子は、表示装置90と、画像信号出力ケーブル91で接続している。
【0026】
インターフェース86は、信号の物理的、論理的な形式を変換するものであり、PS/2、USB(UnverSal Serial BuSの略)等の通信インターフェースが含まれる。なお、インターフェース86には、所謂マウス等のポインティングディバイス(図示せず)が接続されている。
【0027】
キーボードシート50は、CPU61、RAM62、ROM63、押圧信号処理部64、電圧制御部65、インターフェース66を有していて、これらは相互にバス67で接続される。更に、キーボードシート50は、押圧検知部54、電圧印加用電極55を有していて、押圧検知部54は押圧信号処理部64に接続し、電圧印加用電極55は電圧制御部65に接続している。
【0028】
CPU61は、RAM62、ROM63と協動して、各種演算、処理を行う。RAM62は、CPU61で処理されるプログラムや、CPU61が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。なお、RAM62は、後述する押圧回数記憶領域62aを有している。
【0029】
ROM83には、キーボードシート50を制御する各種プログラムやパラメータが記憶されている。ROM63には、押圧頻度算出手段63a、硬度制御手段63bが記憶されている。当該各種プログラムが、CPU61で処理されることにより、各種機能を実現している。
【0030】
押圧頻度算出手段63aは、押圧検知部54が検知した(ユーザの)キー71の「押圧回数」を積算して、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶する。押圧頻度算出手段63aは、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶された「押圧回数」から、単位時間当たりの「押圧回数」(以下、「押圧頻度」とする)を算出する。
【0031】
硬度制御手段63bは、押圧頻度算出手段63aが算出したキー71の「押圧頻度」に基づいて、電圧制御部65に、電圧を電圧印加用電極55に印加/解除する命令を出力する。
【0032】
なお、押圧頻度算出手段63a、硬度制御手段63bを、ASIC(ApplicationSpecific Integrated Circuit)として構成することとしても差し支えない。
【0033】
押圧信号処理部64は、押圧検知部54が出力した「押圧信号」の物理的、論理的な形式を変換し、「押圧検知情報」としてバス67に引き渡す。第1の実施形態では、キー71の「押圧検知情報」を取得する「押圧検知情報取得手段」は、押圧検知部54と押圧信号処理部64とから構成されている。
【0034】
電圧制御部65は、硬度制御手段63aの命令に基づいて、電圧を発生させ、電圧印加用電極55にその電圧を印加/遮断する制御を行う。
【0035】
インターフェース66は、ケーブル59又は無線で、インターフェース86と接続している。インターフェース66は、信号の物理的、論理的な形式を変換する。インターフェース66は、インターフェース86に対応した、PS/2、USB等のインターフェースである。なお、インターフェース86から、インターフェース66に、キーボードシート50作動させる電源が供給される構成であっても差し支えない。
【0036】
キースイッチ72は、各キー71の下側に配設されていて、各キー71の押圧を検知し、「キー押圧信号」を、インターフェース73に引き渡す。インターフェース73は、ケーブル75で、インターフェース86と接続している。インターフェース73は、キースイッチ72から出力された「キー押圧信号」の物理的、論理的な形式を変換する。インターフェース73は、インターフェース86に対応した、PS/2、USB等のインターフェースである。
【0037】
ER流体53、電圧印加用電極55、電圧制御部65とから、キーボードシート50の硬度を変更する「硬度可変機構」が構成されている。
【0038】
(本発明のフロー)
図4に本発明のフローを示して、以下当該フロー(第1の実施形態)について説明をする。コンピュータ装置80が起動し、インターフェース86からキーボードシート50に電源が投入されることにより、本発明のフローが開始すると、S12「初期化」の処理に進む。S12の処理において、「判断間隔」、「判断基準頻度」、「結果表示間隔」が設定される。なお、これらの設定は、予め決定されている設定又は前回の設定が設定されるが、ユーザがキーボード70やコンピュータ装置80に接続されたポインティングディバイスを操作し、コンピュータ装置80にインストールされたデバイスドライバソフトが前記操作を処理することにより前記設定処理を行うように構成しても差し支えない。或いは、キーボードシート50に、前記設定をするための操作部を設けても差し支えない。S12の処理が終了すると、S13「押圧回数積算」の処理に進む。
【0039】
S13「押圧回数積算」の処理において、押圧頻度算出手段63aは、各押圧検知部54での「押圧回数」を積算して、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶する。S13の処理が終了すると、S14「判断間隔経過?」の判断処理に進む。
【0040】
S14「判断間隔経過?」の判断処理において、押圧頻度算出手段63aは、S12の処理で設定された「判断間隔」が経過したか否かを判断する。押圧頻度算出手段63aが、「判断間隔」が経過したと判断した場合には(S14がYes)、S15「押圧頻度が判断基準頻度以上?」の判断処理に進む。
【0041】
S15「押圧頻度が判断基準頻度以上?」の判断処理において、押圧頻度算出手段63aは、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶された「押圧回数」をS13の処理が開始してからの時間で除して、「押圧頻度」を算出し、当該「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であるか否かを判断する。押圧頻度算出手段63aが、「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であると判断した場合には(S15がYes)、S31「結果表示間隔経過?」の処理に進む。一方で、押圧頻度算出手段63aが、「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」より少ないと判断した場合には(S15がNo)、S21「電圧印加」の処理に進む。
【0042】
S21「電圧印加」の処理において、硬度制御手段63bは、電圧制御部65に、電圧を電圧印加用電極55に印加する命令を出力する。電圧印加用電極55に電圧が印加されると、ER流体53の硬度が上がり、キー71の押圧操作の負荷が上がり、ユーザの指の運動が促進される。S21の処理が終了すると、S22「押圧回数積算」の処理に進む。
【0043】
S22「押圧回数積算」の処理において、押圧頻度算出手段63aは、S21の処理以降の、各押圧検知部54での「押圧回数」を積算して、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶する。S22の処理が終了すると、S23「判断間隔経過?」の判断処理に進む。
【0044】
S23「判断間隔経過?」の判断処理において、押圧頻度算出手段63aは、S12の処理で設定された「判断間隔」が経過したか否かを判断する。押圧頻度算出手段63aが、「判断間隔」が経過したと判断した場合には(S23がYes)、S24「押圧頻度が判断基準頻度以上?」の判断処理に進む。
【0045】
S24「押圧頻度が判断基準頻度以上?」の判断処理において、押圧頻度算出手段63aは、RAM62の押圧回数記憶領域62aに記憶された「押圧回数」をS22の処理が開始してからの時間で除して、「押圧頻度」を算出し、当該「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であるか否かを判断する。押圧頻度算出手段63aが、「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であると判断した場合には(S24がYes)、S25「電圧解除」の処理に進む。一方で、押圧頻度算出手段63aが、「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」より少ないと判断した場合には(S24がNo)、S31「結果表示間隔経過?」の判断処理に進む。
【0046】
S25「電圧解除」の処理において、硬度制御手段63bは、電圧制御部65に、電圧印加用電極55に印加している電圧を解除する命令を出力する。電圧印加用電極55に印加されている電圧が解除されると、ER流体53の硬度が下がり、キー71の押圧操作の負荷が軽減され、入力作業の妨げとならなくなる。S25の処理が終了すると、S31「結果表示間隔経過?」の判断処理に進む。
【0047】
S31「結果表示間隔経過?」の判断処理において、CPU61は、S12の処理から経過した時間が、S12の処理で設定された「結果表示間隔」を経過したか否かを判断する。CPU61が、S12の処理から経過した時間が、「結果表示間隔」を経過したと判断した場合には(S31がYes)、S32「結果を表示?」の判断処理に進む。一方で、CPU61が、S12の処理から経過した時間が、「結果表示間隔」を経過していないと判断した場合には(S31がNo)、S13の処理に戻る。
【0048】
S32「結果を表示?」の判断処理において、CPU81は、ユーザが結果を表示することを選択したか否かを判断する。CPU81が、ユーザが結果を表示することを選択したと判断した場合には(S32がYes)、S33「結果を表示」の処理に進む。一方で、CPU81が、ユーザが結果を表示することを選択したと判断しない場合には(S32がNo)、S34「終了?」の判断処理に進む。なお、ユーザは、キーボード70や、コンピュータ装置80に接続されているポインティングディバイスを操作することにより、結果を表示することを選択することができ、コンピュータ装置80の補助記憶装置84に予めインストールされたデバイスドライバソフトがCPU81で処理されることにより、前記操作を認識し、判断するようになっている。或いは、キーボードシート50に操作部を設け、ユーザが当該操作部を操作することにより、ユーザが結果を表示することを選択することができる構成にしても差し支えない。
【0049】
S33「結果を表示」の処理において、CPU81は、「押圧頻度」及び電圧印加用電極55に電圧を印加した頻度から算出される「ユーザの指の運動量」を表した画像を生成し、当該画像を表示装置90で表示させる命令を画像信号出力部85に出力する。なお、「押圧頻度」や、電圧印加用電極55に電圧を印加したか否かの情報(キーボードシート50の硬度の変更情報)を表した画像を表示装置90で表示させることにしても差し支えない。S33の処理が終了すると、S34「終了?」の判断処理に進む。
【0050】
S34「終了?」の判断処理において、CPU61は、ユーザが本発明のフローを終了させることを選択したか否かを判断する。CPU61が、ユーザが本発明のフローを終了させることを選択したと判断した場合には(S34がYes)、本発明のフローが終了する。一方で、CPU61が、ユーザが本発明のフローを終了させることを選択したと判断しない場合には(S34がNo)、S13の処理に戻る。なお、コンピュータ装置80の電源をOFFにした場合にも、インターフェース86から、キーボードシート50への電源の供給が遮断され、本発明のフローが終了する。
【0051】
(第2の実施形態のブロック図)
図5に第2の実施形態のブロックを示し、以下、第2の実施形態の指運動支援システムについて、第1の実施形態と異なる点について説明をする。第2の実施形態では、押圧頻度算出手段84a、硬度制御手段84b、結果表示手段84cを、補助記憶装置84に記憶させて、これらのプログラムが、CPU81で処理されることにより、本発明の機能を実現した実施形態である。押圧頻度算出手段84a、硬度制御手段84bは、図3に示される押圧頻度算出手段63a、硬度制御手段63bと同様の処理を行う。
【0052】
第2の実施形態のキーボードシート50には、CPU61、RAM62、ROM63は不要である。インターフェース66は、押圧検知部54、電圧制御部65と接続している。電圧制御部65は、電圧印加用電極55と接続している。第2の実施形態では、キー71の「押圧検知情報」を取得する「押圧検知情報取得手段」は、押圧検知部54とインターフェース66から構成されている。第2の実施形態では、キー71が押圧されると、押圧検知部54が「キー押圧信号」をインターフェース66に出力し、インターフェース66が「キー押下信号」を「押圧検知情報」に変換してインターフェース86に出力することにより、「押圧検知信号」がバス87に入力されるようになっている。
【0053】
以下、第2の実施形態のフローについて、第1の実施形態と異なる点について説明する。図4に示されるフローのS13の処理において、押圧頻度算出手段84aが、バス87に入力された「キー押下信号」に基づいて、各押圧検知部54での「押圧回数」を積算して、当該「押圧回数」をRAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶する。
【0054】
S14の処理において、押圧頻度算出手段84aは、S12の処理で設定された「判断間隔」が経過したか否かを判断する。S15の処理において、押圧頻度算出手段84aは、RAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶された「押圧回数」をS13の処理が開始してからの時間で除して、「押圧頻度」を算出し、当該「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であるか否かを判断する。
【0055】
S21の処理において、硬度制御手段84aは、インターフェース86、66を介して、電圧制御部65に、電圧を電圧印加用電極55に印加する命令を出力する。S22の処理において、押圧頻度算出手段84aは、S21の処理以降の、各押圧検知部54での「押圧回数」を積算して、当該「押圧回数」をRAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶する。
【0056】
S23の判断処理において、押圧頻度算出手段84aは、S12の処理で設定された「判断間隔」が経過したか否かを判断する。S24の判断処理において、押圧頻度算出手段84aは、RAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶された「押圧回数」をS22の処理が開始してからの時間で除して、「押圧頻度」を算出し、当該「押圧頻度」が、S12の処理で設定された「判断基準頻度」以上であるか否かを判断する。
【0057】
S25の処理において、硬度制御手段84bは、インターフェース86、66を介して、電圧制御部65に、電圧印加用電極55に印加している電圧を解除する命令を出力する。S31の判断処理において、結果表示手段84cは、S12の処理から経過した時間が、S12の処理で設定された「結果表示間隔」を経過したか否かを判断する。
【0058】
S32の判断処理において、結果表示手段84cは、ユーザが結果を表示することを選択したか否かを判断する。S33の処理において、結果表示手段84cは、「押圧頻度」及び電圧印加用電極55に電圧を印加した頻度から算出される「ユーザの指の運動量」を表した画像を生成し、当該画像を表示装置90で表示させる命令を画像信号出力部85に出力する。なお、「押圧頻度」や、電圧印加用電極55に電圧を印加したか否かの情報(キーボードシート50の硬度の変更情報)を表した画像を表示装置90で表示させることにしても差し支えない。S34の判断処理において、CPU81は、ユーザが本発明のフローを終了させることを選択したか否かを判断する。
【0059】
(第3の実施形態)
図6に第3の実施形態のブロック図を示す。第3の実施形態は、第2の実施形態の押圧検知部54を、キーボード70のキースイッチ72で代用した実施形態である。このため、第3の実施形態のキーボードシート50には、押圧検知部54は不要である。第3の実施形態では、キー71の「押圧検知情報」を取得する「押圧検知情報取得手段」は、キースイッチ72とインターフェース73から構成されている。第3の実施形態では、キー71が押圧されると、キースイッチ72が「キー押圧信号」をインターフェース73に出力し、インターフェース73が、「キー押下信号」を「押圧検知情報」に変換してインターフェース86に出力し、「押圧検知情報」がバス87に入力されるようになっている。押圧頻度算出手段84aは、バス87に入力された「押圧検知情報」を、積算してRAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶するとともに、RAM82の押圧回数記憶領域82aに記憶された「押圧回数」から、「押圧頻度」を算出する。
【0060】
(総括)
以上の説明では、キーボードシート50の硬度の変更情報等の情報を、表示装置90で表示させて、ユーザに当該情報を報知することにしているが、コンピュータ装置80にスピーカを接続し、或いは、キーボードシート50にスピーカを設け、これらスピーカで前記情報をユーザに報知することにしても差し支えない。
【0061】
また、「押圧頻度」に応じて、硬度制御手段63b(第1の実施形態)、硬度制御手段84b(第2の実施形態、第3の実施形態)は、電圧制御部65に印加する電圧の電圧値を制御することにしても差し支えない。
【0062】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う指運動支援キーボードシート及び指運動支援システムもまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態を示す概要図である。
【図2】キーボードシートの断面図である。
【図3】第1の実施形態のブロック図である。
【図4】本発明のフロー図である。
【図5】第2の実施形態のブロック図である。
【図6】第3の実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
50 指運動支援キーボードシート
51 シート状部材
51a 突出部
51b 凹陥部
52 シート状部材
52a 突出部
52b 凹陥部
53 ER流体
54 押圧検知部
54a 接点
55 電圧印加用電極
61 CPU
62 RAM
62a 押圧回数記憶領域
63 ROM
63a 押圧頻度算出手段
63b 硬度制御手段
64 押圧信号処理部
65 電圧制御部
66 インターフェース
67 バス
59 ケーブル
70 キーボード
71 キー
72 キースイッチ
73 インターフェース
75 ケーブル
80 コンピュータ装置
81 CPU
82 RAM
82a 押圧回数記憶領域
83 ROM
84 補助記憶装置
84a 押圧頻度算出手段
84b 硬度制御手段
84c 結果表示手段
85 画像信号出力部
86 インターフェース
87 バス
90 表示装置
91 画像信号出力ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボードの複数のキーに跨って覆着され、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、
前記シート状部材の硬度を変更する硬度可変機構とを有することを特徴とする指運動支援キーボードシート。
【請求項2】
硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、
前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする請求項1に記載の指運動支援キーボードシート。
【請求項3】
キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、
前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、
前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の指運動支援キーボードシート。
【請求項4】
キーボードの複数のキーに跨って覆着される、硬度可変部材を含むことで硬度を変更可能に構成した可撓性のシート状部材と、
前記シート状部材の硬度を変更する硬度可変機構と、
前記キーの押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段と、
前記押圧検知情報取得手段が取得した押圧検知情報に基づき、キーの押圧頻度を算出する押圧頻度算出手段と、
前記押圧頻度算出手段が算出したキーの押圧頻度に基づいて、前記硬度可変機構を制御する硬度制御手段と、
を有することを特徴とする指運動支援システム。
【請求項5】
硬度可変部材は、シート状部材内に封入された電気レオロジー流体であり、
前記電気レオロジー流体に電圧を印加する電圧印加部と、前記電気レオロジー流体の硬度を制御するために前記電気レオロジー流体に印加する電圧を制御する電圧制御部とから硬度可変機構を構成したことを特徴とする請求項4に記載の指運動支援システム。
【請求項6】
シート状部材に、キーの押圧を検知し、押圧検知情報を取得する押圧検知情報取得手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の指運動支援システム。
【請求項7】
指の運動量情報を、ユーザに報知する報知手段を設けたことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の指運動支援システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−140126(P2010−140126A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313886(P2008−313886)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】